(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073333
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240522BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240522BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H01L29/78 652J
H01L29/78 652T
H01L29/78 652H
H01L29/78 652Q
H01L29/78 653A
H01L29/78 652P
H01L29/06 301M
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/06 301D
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184487
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】成田 舜基
(72)【発明者】
【氏名】原田 信介
(57)【要約】
【課題】破壊耐量を向上させることができる炭化珪素半導体装置を提供すること。
【解決手段】活性領域10およびエッジ終端領域20は、ドリフト層を並列pn層3とした同一のSJ構造である。エッジ終端領域20において、活性領域10とJTE構造21との間に、JTE構造21をソース電極18の電位に固定するp
+型延在部14aが設けられている。p
+型延在部14aは、p型ベース延在部4aと並列pn層3との間に、これらの領域に接して設けられている。p
+型延在部14aは、ゲートトレンチ7底面付近の電界緩和用に活性領域10に設けられたp
+型領域12の上部14の延在部である。p型ベース延在部4aと並列pn層3との間に、p
+型領域12の下部13の延在部は設けられていない。このため、エッジ終端領域20のp型カラム領域32の深さ方向Zの長さは、活性領域10のp型カラム領域32の深さ方向Zの長さよりも長くなっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素からなる半導体基板に設けられた活性領域と、
前記活性領域の周囲を囲む終端領域と、
前記活性領域から前記終端領域にわたって前記半導体基板の内部に設けられた、前記半導体基板のおもて面に平行な第1方向に第1導電型カラム領域と第2導電型カラム領域とを交互に繰り返し隣接して配置された並列pn層と、
前記半導体基板の第1主面と前記並列pn層との間に設けられ、前記活性領域から前記終端領域へ延在する第2導電型の第1半導体領域と、
前記活性領域において前記第1主面と前記第1半導体領域との間に選択的に設けられた第1導電型の第2半導体領域と、
深さ方向に前記第2半導体領域および前記第1半導体領域を貫通して前記第1導電型カラム領域に達するトレンチと、
前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、
前記活性領域および前記終端領域において前記第1半導体領域と前記並列pn層との間に選択的に設けられた、前記第2半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型高濃度領域と、
前記第1半導体領域および前記第2導電型高濃度領域よりも外側において前記第1主面と前記並列pn層との間に選択的に設けられ、前記活性領域の周囲を同心状に囲む1つ以上の第2導電型耐圧領域で構成された耐圧構造と、
前記第2半導体領域、前記第1半導体領域および前記第2導電型高濃度領域に電気的に接続された第1電極と、
前記半導体基板の第2主面に電気的に接続された第2電極と、
を備え、
前記第2導電型高濃度領域は、
前記活性領域の部分で前記トレンチの底面よりも前記第2主面側に深い位置に達し、
前記活性領域の部分よりも前記終端領域の部分で前記第2主面側の面が前記第1主面側に浅い位置にあることを特徴とする炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記第2導電型高濃度領域の前記活性領域の部分は、
前記トレンチの底面よりも前記第2主面側に深い第1部分と、
前記トレンチの底面よりも前記第1主面側に浅い第2部分と、を有し、
前記第2導電型高濃度領域の前記終端領域の部分は、前記第2部分が前記終端領域に延在してなることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記第2導電型高濃度領域の前記第1部分は、前記トレンチの前記終端領域に隣り合う最外周の側壁との所定距離を保って前記活性領域の周囲を囲むことを特徴とする請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記第2導電型高濃度領域の前記第1部分は、前記トレンチの前記終端領域に隣り合う最外周の側壁から0.35μm以下の所定幅だけ外側で終端していることを特徴とする請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記第2導電型高濃度領域の前記第1部分は、前記耐圧構造の内周と所定距離を保って前記活性領域の周囲を囲むことを特徴とする請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記第2導電型高濃度領域の前記終端領域の部分は、前記活性領域と前記耐圧構造との間の全域に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記第2導電型高濃度領域の前記終端領域の部分は選択的に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
前記第2導電型高濃度領域の前記終端領域の部分は、前記第1半導体領域と前記第2導電型カラム領域との間にのみ設けられていることを特徴とする請求項7に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項9】
前記第1導電型カラム領域および前記第2導電型カラム領域は、前記半導体基板のおもて面に平行でかつ前記第1方向と直交する第2方向にストライプ状に延在し、
前記第2導電型高濃度領域の前記終端領域の部分は、前記第2方向にストライプ状に設けられていることを特徴とする請求項8に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項10】
前記第1導電型カラム領域および前記第2導電型カラム領域は、前記半導体基板のおもて面に平行でかつ前記第1方向と直交する第2方向にストライプ状に延在し、
前記第2導電型高濃度領域の前記終端領域の部分は、前記第2方向に点在し、前記活性領域と前記耐圧構造との間にマトリクス状に配置されていることを特徴とする請求項8に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項11】
前記第2導電型高濃度領域の前記終端領域の部分の前記第1方向の幅は、前記第2導電型カラム領域の前記第1方向の幅よりも狭いことを特徴とする請求項7に記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭化珪素半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドリフト層を、n型領域とp型領域とを半導体基板(半導体チップ)の主面に平行な方向に交互に繰り返し隣接して配置してなる並列pn層とした超接合(SJ:Super Junction)構造のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:金属-酸化膜-半導体の3層構造からなる絶縁ゲートを備えたMOS型電界効果トランジスタ)が公知である。
【0003】
ドリフト層をSJ構造とすることで、n-型領域のみで構成される通常のドリフト層と比べて、ドリフト層の不純物濃度を高くすることができ、オン抵抗が大幅に低減される。また、ドリフト層をSJ構造とすることで、高温動作時のオン抵抗増加が抑制される。高温動作時とは、高温度環境下や高電圧印加、大電流の通電等により半導体基板(半導体チップ)が高温度となっている状態で半導体装置が動作することである。
【0004】
パワー半導体装置の耐圧構造は、活性領域と半導体基板の端部との間のエッジ終端領域において半導体基板のおもて面の表面領域に選択的に設けられた複数のp型領域で構成される。SiC-MOSFETでは、耐圧構造として、不純物濃度の異なる2つのp型領域で構成されたダブルゾーン接合終端拡張(JTE:Junction Termination Extension)構造が用いられることが公知である。
【0005】
図11は、従来の炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
図12は、
図11の切断線AA-AA’における断面構造を示す断面図である。
図13は、
図12のエッジ終端領域の内側部分を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
図14は、
図13の矩形枠BB内を拡大して示す平面図である。
図14には、半導体基板140の直線部におけるp
+型延在部111aのレイアウトを示す。
【0006】
図15,16は、
図11の矩形枠CC-CC’内を拡大して示す平面図である。
図15,16には、それぞれ半導体基板140のコーナー(チップコーナー)におけるp
+型延在部111aおよびp
+型延在部114aのレイアウトを示す。
図11では、p型カラム領域132をハッチングで示す。
図12,13では、JTE構造の内周(p
-型領域122の内周)124aを破線で示す。
図12では、n型カラム領域131およびp型カラム領域132の個数が簡略化され、
図16と異なっている。
【0007】
図13,14では、ゲートトレンチ107を破線で示す。
図14,15では、p
+型領域111、p
+型領域112の下部113、p
+型延在部111aおよびp
+型連結部の下部115を同一のハッチングで示す。
図16では、p
+型領域112の上部114、p
+型延在部114aおよびp
+型連結部の上部116を同一のハッチングで示す。
図15,16では、ゲートトレンチ107を太線で示し、JTE構造121の内周124aを破線で示す。符号124bはJTE構造121の外周(p
--型領域123の外周)である。
【0008】
図11~16に示す従来の炭化珪素半導体装置150は、炭化珪素(SiC)を半導体材料とした半導体基板140の内部に、ドリフト層となる並列pn層103を備えたSJ構造のトレンチゲート型SiC-MOSFETである。半導体基板140は、SiCを半導体材料としたn
+型出発基板141上に並列pn層103およびp型ベース領域104となる各エピタキシャル層142,143を順にエピタキシャル成長させてなる。
【0009】
並列pn層103は、n型領域(以下、n型カラム領域とする)131とp型領域(以下、p型カラム領域とする)132とを半導体基板140の主面に平行な第1方向Xに交互に繰り返し隣接して配置してなる。n型カラム領域131およびp型カラム領域132は、半導体基板140の全域にわたって、半導体基板140の主面に平行でかつ第1方向Xと直交する第2方向Yにストライプ状に延在する。
【0010】
活性領域110およびエッジ終端領域120ともに同一のSJ構造でドリフト層が構成されている。n型カラム領域131およびp型カラム領域132ともに、略同じ幅(短手方向の幅)Wn101,Wp101であり、略同じ不純物濃度を有する。略同じ幅および略同じ不純物濃度とは、それぞれ、プロセスばらつきによる許容誤差を含む範囲で同じ幅および同じ不純物濃度であることを意味する。
【0011】
活性領域110およびエッジ終端領域120のいずれにおいても隣接するn型カラム領域131とp型カラム領域132とは概ねチャージバランスが保たれている。チャージバランスとは、n型カラム領域131のキャリア濃度(不純物濃度)と幅Wn101との積で表されるチャージ量と、p型カラム領域132のキャリア濃度と幅Wp101との積で表されるチャージ量と、の釣り合いの度合を示す指標である。
【0012】
活性領域110において、半導体基板140のおもて面(p型エピタキシャル層143側の主面)と並列pn層103との間に、トレンチゲート構造が設けられている。トレンチゲート構造は、n+型ソース領域105、p++型コンタクト領域106、ゲートトレンチ107、ゲート絶縁膜108およびゲート電極109で構成される。ゲートトレンチ107の底面よりもn+型ドレイン領域101側に深い位置に、p+型領域111,112が選択的に設けられている。
【0013】
p+型領域111,112は、ゲートトレンチ107の底面のゲート絶縁膜108にかかる電界を緩和する機能を有する。p+型領域111は、p型ベース領域104と離れて設けられ、ゲートトレンチ107の底面に対向する。p+型領域112は、互いに隣り合うゲートトレンチ107間に、p型ベース領域104に接し、かつp+型領域111およびゲートトレンチ107と離れて設けられている。
【0014】
p+型領域112は、並列pn層103上にドリフト層となるn型エピタキシャル層142を2段(2回)に分けてエピタキシャル成長させるごとに各層にそれぞれp型不純物のイオン注入を行うことで形成され深さ方向Zに隣接する下部(n+型ドレイン領域101側の部分)113および上部(n+型ソース領域105側の部分)114で構成された拡散領域である。p+型領域111は、p+型領域112の下部113と同時に形成される。
【0015】
エッジ終端領域120は、活性領域110の周囲を囲む。p型エピタキシャル層143の外側(半導体基板140の端部側:チップ端部側)部分が除去され、エッジ終端領域120内において半導体基板140のおもて面に段差144が形成されている。半導体基板140のおもて面は、段差144を境に、チップ中央(半導体基板140の中央)側の第1面140aよりも外側の第2面140bでドレイン電極119側に凹んでいる。
【0016】
この段差144により、半導体基板140のおもて面においてチップ中央にp型エピタキシャル層143がメサ状(凸状)に残っている。半導体基板140のおもて面の第1面140aはp型エピタキシャル層143で形成され、第2面140bはエッジ終端領域120でp型エピタキシャル層143が除去されることによって露出したn型エピタキシャル層142で形成されている。
【0017】
エッジ終端領域120において、段差144よりも外側には、耐圧構造として、不純物濃度の異なる複数のp型領域(ここでは2つ:p-型領域122、p--型領域123)で構成されたJTE構造121が設けられている。p-型領域122およびp--型領域123は、半導体基板140のおもて面の第2面140bと並列pn層103との間に、並列pn層103に接して設けられ、活性領域110の周囲を同心状に囲む。
【0018】
並列pn層103は、JTE構造121よりも外側まで設けられている。半導体基板140の端部と並列pn層103との間の部分はSJ構造でない通常のn型ドリフト領域133である。半導体基板140のおもて面の第2面140bは、絶縁層(層間絶縁膜117の単層構造か、またはフィールド酸化膜(不図示)および層間絶縁膜117を順に積層した積層構造)で覆われている。
【0019】
また、エッジ終端領域120において、段差144よりも内側には、半導体基板140のおもて面の第1面140aと並列pn層103との間に、p+型延在部111a、p+型延在部114aおよびp型ベース延在部104aが設けられている。p+型延在部111a、p+型延在部114aおよびp型ベース延在部104aは、それぞれp+型領域111、p+型領域112の上部114およびp型ベース領域104の延在部である。
【0020】
p+型延在部111a,114aおよびp型ベース延在部104aは、第1方向Xに内側に、第1方向Xに最も外側のゲートトレンチ107(以下、最外ゲートトレンチ107aとする)に達し、かつ第2方向Yにすべてのゲートトレンチ107の長手方向の端部に達するとともに、外側へ延在して半導体基板140のおもて面の第1面140aと第2面140bとをつなぐ第3面(段差のメサエッジ)140cに達する。
【0021】
p
+型延在部111a、p
+型延在部114aおよびp型ベース延在部104aは、活性領域110から段差144までの全域にわたって設けられ、活性領域110の周囲を囲む(
図15,16)。p
+型延在部111a,114aの少なくともp
+型延在部111aは、外周124cがJTE構造121の内周124aよりも外側まで達し、JTE構造121の最も内側のp
-型領域122の内側端部に重なっている(
図12,13)。
【0022】
JTE構造121は、エッジ終端領域120の内側部分120aに設けられたp+型延在部111aに接し、p+型延在部111a,114aおよびp型ベース延在部104aを介してソース電極118の電位に固定されている。活性領域110のp型カラム領域132は、p+型領域112に接し、p+型領域112、p型ベース領域104およびp++型コンタクト領域106を介してソース電極118の電位に固定されている。
【0023】
エッジ終端領域120のJTE構造121よりも内側のp型カラム領域132は、p+型延在部111aに接し、p+型延在部111a,114aおよびp型ベース延在部104aを介して、ソース電極118の電位に固定されている。JTE構造121に接するp型カラム領域132は、JTE構造121を介してソース電極118の電位に固定されている。JTE構造121よりも外側のp型カラム領域132は電気的に浮遊している。
【0024】
従来のSJ構造の縦型炭化珪素半導体装置として、並列pn層のp型カラム領域として、半導体基板のおもて面から底部までの長さが相対的に長い長p型カラム領域か、または半導体基板のおもて面から底部までの長さが相対的に短い短p型カラム領域が配置され、短p型カラム領域を配置した領域でn型不純物の多いチャージバランスとし、アバランシェ発生の位置を短p型カラム領域の底部に誘導して、チャネルへの電流集中をなくすことで、アバランシェ耐圧低下を抑制した装置が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかしながら、上述したように、従来のSJ構造のSiC-MOSFET(
図11~16参照)では、活性領域110およびエッジ終端領域120ともに同一のSJ構造(n型カラム領域131およびp型カラム領域132)でドリフト層が構成される。このため、エッジ終端領域120の耐圧が活性領域110の耐圧よりも低くなり、エッジ終端領域120でアバランシェ降伏しやすい。これによって、半導体基板140の大半の面積(表面積)を占める面積の広い活性領域110でアバランシェ降伏する場合と比べて破壊耐量が小さくなるという問題がある。
【0027】
この発明は、上述した従来技術による課題を解消するため、破壊耐量を向上させることができる炭化珪素半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、次の特徴を有する。活性領域は、炭化珪素からなる半導体基板に設けられている。終端領域は、前記活性領域の周囲を囲む。並列pn層は、前記活性領域から前記終端領域にわたって前記半導体基板の内部に設けられている。前記並列pn層は、前記半導体基板のおもて面に平行な第1方向に第1導電型カラム領域と第2導電型カラム領域とを交互に繰り返し隣接して配置されてなる。前記半導体基板の第1主面と前記並列pn層との間に、前記活性領域から前記終端領域へ延在する第2導電型の第1半導体領域が設けられている。
【0029】
前記活性領域において前記第1主面と前記第1半導体領域との間に、第1導電型の第2半導体領域が選択的に設けられている。トレンチは、深さ方向に前記第2半導体領域および前記第1半導体領域を貫通して前記第1導電型カラム領域に達する。前記トレンチの内部に、ゲート絶縁膜を介してゲート電極が設けられている。前記活性領域および前記終端領域において前記第1半導体領域と前記並列pn層との間に、第2導電型高濃度領域が選択的に設けられている。前記第2導電型高濃度領域は、前記第2半導体領域よりも不純物濃度が高い。
【0030】
耐圧構造は、前記第1半導体領域および前記第2導電型高濃度領域よりも外側において前記第1主面と前記並列pn層との間に選択的に設けられ、前記活性領域の周囲を同心状に囲む1つ以上の第2導電型耐圧領域で構成されている。第1電極は、前記第2半導体領域、前記第1半導体領域および前記第2導電型高濃度領域に電気的に接続されている。第2電極は、前記半導体基板の第2主面に電気的に接続されている。前記第2導電型高濃度領域は、前記活性領域の部分で前記トレンチの底面よりも前記第2主面側に深い位置に達し、前記活性領域の部分よりも前記終端領域の部分で前記第2主面側の面が前記第1主面側に浅い位置にある。
【0031】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2導電型高濃度領域の前記活性領域の部分は、前記トレンチの底面よりも前記第2主面側に深い第1部分と、前記トレンチの底面よりも前記第1主面側に浅い第2部分と、を有する。前記第2導電型高濃度領域の前記終端領域の部分は、前記第2部分が前記終端領域に延在してなることを特徴とする。
【0032】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2導電型高濃度領域の前記第1部分は、前記トレンチの前記終端領域に隣り合う最外周の側壁との所定距離を保って前記活性領域の周囲を囲むことを特徴とする。
【0033】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2導電型高濃度領域の前記第1部分は、前記トレンチの前記終端領域に隣り合う最外周の側壁から0.35μm以下の所定幅だけ外側で終端していることを特徴とする。
【0034】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2導電型高濃度領域の前記第1部分は、前記耐圧構造の内周と所定距離を保って前記活性領域の周囲を囲むことを特徴とする。
【0035】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2導電型高濃度領域の前記終端領域の部分は、前記活性領域と前記耐圧構造との間の全域に設けられていることを特徴とする。
【0036】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2導電型高濃度領域の前記終端領域の部分は選択的に設けられていることを特徴とする。
【0037】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2導電型高濃度領域の前記終端領域の部分は、前記第1半導体領域と前記第2導電型カラム領域との間にのみ設けられていることを特徴とする。
【0038】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1導電型カラム領域および前記第2導電型カラム領域は、前記半導体基板のおもて面に平行でかつ前記第1方向と直交する第2方向にストライプ状に延在する。前記第2導電型高濃度領域の前記終端領域の部分は、前記第2方向にストライプ状に設けられていることを特徴とする。
【0039】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1導電型カラム領域および前記第2導電型カラム領域は、前記半導体基板のおもて面に平行でかつ前記第1方向と直交する第2方向にストライプ状に延在する。前記第2導電型高濃度領域の前記終端領域の部分は、前記第2方向に点在し、前記活性領域と前記耐圧構造との間にマトリクス状に配置されていることを特徴とする。
【0040】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2導電型高濃度領域の前記終端領域の部分の前記第1方向の幅は、前記第2導電型カラム領域の前記第1方向の幅よりも狭いことを特徴とする。
【0041】
上述した発明によれば、終端領域の耐圧を向上させることができるため、アバランシェ降伏の発生個所を半導体基板の大半の面積(表面積)を占める面積の広い活性領域に変更することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明にかかる炭化珪素半導体装置によれば、破壊耐量を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
【
図2】
図1の切断線A-A’における断面構造を示す断面図である。
【
図3】
図2のエッジ終端領域の内側部分を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
【
図4】
図3の矩形枠B内を拡大して示す平面図である。
【
図5】
図1の矩形枠C1-C1’内を拡大して示す平面図である。
【
図6】
図1の矩形枠C1-C1’内を拡大して示す平面図である。
【
図7】
図1の矩形枠C1-C1’内を拡大して示す平面図である。
【
図8】実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図9】
図1の矩形枠C1-C1’内を拡大して示す平面図である。
【
図10】実施例1,2の耐圧特性を示す特性図である。
【
図11】従来の炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
【
図12】
図11の切断線AA-AA’における断面構造を示す断面図である。
【
図13】
図12のエッジ終端領域の内側部分を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
【
図15】
図11の矩形枠CC-CC’内を拡大して示す平面図である。
【
図16】
図11の矩形枠CC-CC’内を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0045】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
図2は、
図1の切断線A-A’における断面構造を示す断面図である。
図3は、
図2のエッジ終端領域の内側(チップ中央側)部分を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
図4は、
図3の矩形枠B内を拡大して示す平面図である。
図5~7は、
図1の矩形枠C1-C1’内を拡大して示す平面図である。
【0046】
図3,4(a)には、半導体基板40の直線部(辺)におけるp
+型領域11aのレイアウトを示す。
図4(b)には、n
+型ソース領域5およびp
++型コンタクト領域6のレイアウトを示す。
図5,6には、半導体基板40のコーナー(チップコーナー:頂点部)におけるp
+型領域11aのレイアウト例を示す。
図5,6の上図には
図1の矩形枠C1-C1’内を拡大して示し、下図には上図の矩形枠C2,C3内を拡大して示す。
図7には、半導体基板40のコーナーにおけるp
+型延在部14aのレイアウトを示す。
【0047】
図2では、p型カラム領域32をハッチングで示す。
図2では、JTE構造21の内周(p
-型領域22の内周)24aの、p
+型延在部14aと重なる部分を破線で示し、ゲートランナー45を図示省略する。
図2では、n型カラム領域31およびp型カラム領域32の個数が簡略化され、
図7と異なっている。
図3~6では、n型カラム領域31およびp型カラム領域32を図示省略する。
図3では、JTE構造21の内周24aを破線で示す。
図3,4(a)ではゲートトレンチ7を破線で示す。
【0048】
図4(b)ではp
++型コンタクト領域6をハッチングで示す。
図4(a),5,6では、p
+型領域11,11a、p
+型領域12の下部13およびp
+型連結部の下部15を同一のハッチングで示す。
図5の上部、
図6の上図および
図7では、ゲートトレンチ7を太線で示し、JTE構造21の内周24aおよび外周(p
--型領域23の外周)24bを破線で示す。
図7では、p
+型領域12の上部14、p
+型延在部14aおよびp
+型連結部の上部16を同一のハッチングで示す。
【0049】
図1~7に示す実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置50は、活性領域10において、炭化珪素(SiC)からなる半導体基板(半導体チップ)40のおもて面(第1主面)側にトレンチゲート構造(素子構造)を備え、ドリフト層(ドリフト領域)を並列pn層3としたSJ構造の縦型SiC-MOSFETである。活性領域10は、MOSFETがオン状態のときに主電流が流れる領域である。活性領域10は、半導体基板40の略中央(チップ中央)に配置されている。
【0050】
活性領域10は、後述する第1方向Xに最も外側(半導体基板40の端部側:チップ端部側)のゲートトレンチ7(最外ゲートトレンチ7a)の中心よりも内側(チップ中央側)で、かつ後述する第2方向Yにn+型ソース領域5の端部(不図示)よりも内側の部分である。活性領域10には、同一構造(トレンチゲート構造)の複数の単位セル(素子の構成単位)が隣接して配置されている。トレンチゲート構造は、活性領域10において半導体基板40のおもて面と並列pn層3との間に設けられている。
【0051】
活性領域10と半導体基板40の端部(チップ端部)との間は、エッジ終端領域20である。エッジ終端領域20は、活性領域10の周囲を囲む。エッジ終端領域20は、ドリフト層の、半導体基板40のおもて面側の電界を緩和して耐圧を保持する機能を有する。耐圧とは、リーク電流が過度に増大せず、素子が誤動作や破壊を起こさない限界の電圧である。エッジ終端領域20には、半導体基板40のおもて面と並列pn層3との間に、耐圧構造として後述するJTE構造21が配置されている。
【0052】
半導体基板40は、炭化珪素からなるn+型出発基板41のおもて面上に並列pn層3およびp型ベース領域(第1半導体領域)4となる各エピタキシャル層42,43を順に堆積してなるエピタキシャルである。半導体基板40は、p型エピタキシャル層43側の主面をおもて面として、n+型出発基板41側の主面を裏面(第2主面)とする。n+型出発基板41は、n+型ドレイン領域1である。並列pn層3は、例えば後述する多段エピタキシャル方式やトレンチ埋め込みエピタキシャル方式を用いて、n+型出発基板41上に形成される。
【0053】
並列pn層3は、n型領域(n型カラム領域:第1導電型カラム領域)31とp型領域(p型カラム領域:第2導電型カラム領域)32とを半導体基板40の主面に平行な第1方向Xに交互に繰り返し隣接して配置してなる。n型カラム領域31およびp型カラム領域32は、半導体基板40の略全域にわたって、半導体基板40の主面に平行でかつ第1方向Xと直交する第2方向Yにストライプ状に延在している。活性領域10およびエッジ終端領域20ともに同一のSJ構造でドリフト層が構成されている。隣接するn型カラム領域31とp型カラム領域32とは概ねチャージバランスが保たれている。
【0054】
チャージバランスとは、n型カラム領域31のキャリア濃度(不純物濃度)と幅Wn1との積で表されるチャージ量と、p型カラム領域32のキャリア濃度と幅Wp1との積で表されるチャージ量と、の釣り合いの度合を示す指標である。例えば、n型カラム領域31およびp型カラム領域32ともに略同じ幅(短手方向の幅)Wn1,Wp1で、略同じ不純物濃度を有する。略同じ幅および略同じ不純物濃度とは、それぞれ製造プロセスばらつきによる許容誤差を含む範囲で同じ幅および同じ不純物濃度であることを意味する。
【0055】
n型エピタキシャル層42の、並列pn層3とn+型ドレイン領域1との間の部分を、n型バッファ領域(SJ構造でないn型領域)2としてもよい。n型バッファ領域2は、並列pn層3、n+型ドレイン領域1および後述するSJ構造でない通常のn型ドリフト領域33に接する。n型バッファ領域2の不純物濃度は、n型カラム領域31の不純物濃度以下である。n型カラム領域31およびp型カラム領域32は、深さ方向Zにn型バッファ領域2(n型バッファ領域2を設けない場合はn+型ドレイン領域1)に達する。
【0056】
活性領域10のp型カラム領域32は、後述するp+型領域12に接し、p+型領域12、p型ベース領域4およびp++型コンタクト領域6を介してソース電極18の電位に固定されている。エッジ終端領域20のp型カラム領域32は、後述するp+型延在部14aに接し、p+型延在部14aおよび後述するp型ベース延在部4aを介して、またはこれらの領域およびJTE構造21を介してソース電極18に電気的に接続されている。JTE構造21よりも外側に配置されたp型カラム領域32は電気的に浮遊している。
【0057】
トレンチゲート構造は、p型ベース領域4、n+型ソース領域(第2半導体領域)5、p++型コンタクト領域6、ゲートトレンチ(トレンチ)7、ゲート絶縁膜8およびゲート電極9で構成される。p型ベース領域4は、半導体基板40のおもて面と並列pn層3との間に設けられている。p型ベース領域4は、p型エピタキシャル層43の、n+型ソース領域5およびp++型コンタクト領域6を除く部分である。p型ベース領域4は、活性領域10から外側へ後述する段差44まで延在している。
【0058】
n+型ソース領域5およびp++型コンタクト領域6は、活性領域10において半導体基板40のおもて面とp型ベース領域4との間にそれぞれ選択的に設けられている。n+型ソース領域5およびp++型コンタクト領域6は、p型ベース領域4に接し、かつ半導体基板40のおもて面に露出されている。n+型ソース領域5およびp++型コンタクト領域6が半導体基板40のおもて面に露出とは、これらの領域が半導体基板40のおもて面の後述する第1面40aで後述するソース電極(第1電極)18に接することである。
【0059】
n+型ソース領域5およびp++型コンタクト領域6は、互いに隣り合うゲートトレンチ7間において例えば第2方向Yに直線状に延在している。n+型ソース領域5は、p++型コンタクト領域6よりもゲートトレンチ7側に配置され、ゲートトレンチ7の側壁のゲート絶縁膜8に接する。p++型コンタクト領域6は設けられていなくてもよい。p++型コンタクト領域6を設けない場合、p++型コンタクト領域6に代えて、p型ベース領域4が半導体基板40のおもて面の第1面40aに露出される。
【0060】
ゲートトレンチ7は、半導体基板40のおもて面の第1面40aから、深さ方向Zにn+型ソース領域5およびp型ベース領域4を貫通してn型カラム領域31(後述するn型電流拡散領域を設けた場合にはn型電流拡散領域)に達する。ゲートトレンチ7は、第2方向Yにストライプ状に延在している。各ゲートトレンチ7の長さ(長手方向の長さ)は、活性領域10とエッジ終端領域20との境界付近でゲートトレンチ7の短手方向の端部が終端するように設定されている。
【0061】
したがって、活性領域10のコーナーで終端するゲートトレンチ7は、活性領域10のコーナーの曲率に応じて、第1方向Xに外側に配置されるほど段階的に長さが短くなっている(
図5~7)。活性領域10のコーナーで終端するゲートトレンチ7の、第1方向Xに外側に他のゲートトレンチ7に隣り合っていない部分は最外ゲートトレンチ7aとなる。最外ゲートトレンチ7aの外側には、n
+型ソース領域5は設けられていない。ゲートトレンチ7の内部に、ゲート絶縁膜8を介してゲート電極9が設けられている。
【0062】
活性領域10におけるp型ベース領域4と並列pn層3との間において、ゲートトレンチ7の底面よりもn+型ドレイン領域1側(半導体基板30の裏面側)に深い位置に、p+型領域(第2導電型高濃度領域)11,12がそれぞれ選択的に設けられている。p+型領域11,12は、第2方向Yにストライプ状に延在する。互いに隣り合うp+型領域11,12間のJFET(Junction FET)部分には、n+型ドレイン領域1側からp型ベース領域4まで達するようにn型カラム領域31(または後述するn型電流拡散領域)が介在している。
【0063】
p+型領域11,12は、ソース電極18の電位の固定されており、MOSFETのオフ時に空乏化して(もしくはJFET部分を空乏化させて、またはその両方)、ゲートトレンチ7の底面のゲート絶縁膜8にかかる電界を緩和させる機能を有する。JFET部分とは、n型カラム領域31(または後述するn型電流拡散領域)の、互いに隣り合うp+型領域11,12間の部分であり、MOSFETのオン状態のときにドレイン・ソース間に流れるドリフト電流の電流経路に形成されるチャネルに隣接する。
【0064】
p+型領域12は、n型エピタキシャル層42の表面領域に形成される。具体的には、p+型領域12は、ドリフト層(並列pn層3)となるn型エピタキシャル層42を2段(2回)に分けてエピタキシャル成長させるごとに各層にそれぞれp型不純物のイオン注入を行うことで形成され深さ方向Zに隣接する下部(n+型ドレイン領域1側の部分:第1部分)13および上部(n+型ソース領域5側(半導体基板30のおもて面側)の部分:第2部分)14で構成された拡散領域である。p+型領域(第1部分)11は、p+型領域12の下部13と同時に形成される。
【0065】
具体的には、p
+型領域11は、p型ベース領域4と離れて配置され、深さ方向Zにゲートトレンチ7の底面および底面コーナー部に対向する。ゲートトレンチ7の底面コーナー部とは、ゲートトレンチ7の側壁と底面との境界である。p
+型領域11は、深さ方向Zにn型カラム領域31に隣接する。p
+型領域11は、ゲートトレンチ7の底面でゲート絶縁膜8に接してもよい。p
+型領域11の幅は、ゲートトレンチ7の側壁(短手方向(第1方向X)の両側壁および長手方向(第2方向Y)の両端部)からゲートトレンチ7の幅よりも所定幅W11だけ広く設定される(
図4(a)参照)。
【0066】
ゲートトレンチ7直下(n
+型ドレイン領域1側)のp
+型領域11はすべて同じ幅に設定される。このため、p
+型領域11は、ゲートトレンチ7の長手方向の端部から第2方向Yに所定幅W11だけ外側で終端しており、JTE構造21に接していない。複数のp
+型領域11のうち、最外ゲートトレンチ7a直下のp
+型領域11aについてもゲートトレンチ7の側壁から第1方向Xに幅W11だけ外側で終端しており、JTE構造21に接していない(
図3,4(a)参照)。
【0067】
p+型領域11の幅は、例えば、短手方向(第1方向X)および長手方向(第2方向Y)ともにゲートトレンチ7の側壁(短手方向の両側壁および長手方向の両端部)から略同じ幅W11で広くなっている。具体的には、例えば、ゲートトレンチ7の短手方向の幅W10が0.8μm程度である場合、p+型領域11の幅は、ゲートトレンチ7の短手方向の両側壁および長手方向の両端部からそれぞれ第1方向Xおよび第2方向Yに0.35μm以下程度の幅W11だけ広くなるように設定されてもよい。
【0068】
このように、p+型領域11,11aは、ゲートトレンチ7のエッジ終端領域20に隣り合う最外周の側壁から外側へ若干延在して、当該側壁と底面との境界(底面コーナー部)を囲む。ゲートトレンチ7のエッジ終端領域20に隣り合う最外周の側壁とは、最外ゲートトレンチ7aの外側の側壁、および、ゲートトレンチ7の長手方向の両端部の側壁である。最外ゲートトレンチ7a直下のp+型領域11aは、活性領域10の周囲を囲み、活性領域10においてn+型ドレイン領域1側に最も深い位置に設けられたすべてのp+型領域11およびp+型領域12の下部13を連結する。
【0069】
このようにp
+型領域11,11aおよびp
+型領域12の下部13は、ゲートトレンチ7のエッジ終端領域20に隣り合う最外周の側壁と底面との境界を囲むようにエッジ終端領域20と活性領域10との境界付近で終端しており、エッジ終端領域20にはほぼ設けられていない。p
+型領域11aの外周24cは、半導体基板40のコーナーにおいて、JTE構造21の内周24aに対して所定距離を保った曲線状であってもよいし(
図5参照)、セルの最外周に対して所定距離を保った階段状であってもよい(
図6参照)。
【0070】
p+型領域11aの外周24cは、半導体基板40の直線部において、セルの最外周に対して所定距離を保った直線状である。セルの最外周とは、活性領域10において隣接して配置された複数の単位セルのうちの最も外側に配置された単位セルとエッジ終端領域20との境界であり、活性領域10の外周と略同じである。セルの最外周に対して所定距離を保つとは、ゲートトレンチ7のエッジ終端領域20に隣り合う最外周の側壁から幅W11だけ広くすることである。
【0071】
p+型領域11aの外周24cをJTE構造21の内周24aに対して所定距離を保った曲線状とすることで、半導体基板40のコーナーにおいてp+型領域11aの外周24cのコーナーの曲率半径を大きくすることができる。これによって、MOSFETのオフ時に、p+型領域11aの外周24cのコーナー付近においてゲートトレンチ7の底面のゲート絶縁膜8に電界が集中しにくくなるため、エッジ終端領域20の耐圧を向上させることができる。
【0072】
p+型領域11aの外周24cをセルの最外周に沿ったに対して所定距離を保った階段状とすることで、p+型領域11aの外周24cとJTE構造21の内周24aとの間において後述するp+型延在部14aに接するp型カラム領域32の個数を増やすことができる。これによって、エッジ終端領域20において、活性領域10のp型カラム領域32よりも深さ方向Zの長さを長くしたp型カラム領域32が増えるため、後述する本実施の形態1の効果(破壊耐量の向上)がより得られる。
【0073】
また、p
+型領域11の短手方向の幅は、n型カラム領域31の短手方向の幅Wn1よりも狭い。p
+型領域11は、例えば、p
+型領域12側へ部分的に延在するか、または他のp
+型領域(以下、p
+型連結部とする)を介して、p
+型領域12に連結されている。
図5,6には、p
+型領域11とp
+型領域12の下部13とがp
+型連結部の下部15によって格子状をなして連結されている状態を示す。
図7には、p
+型領域12の上部14とp
+型連結部の上部16とが格子状をなすように配置されている状態を示す。
【0074】
p+型領域12は、互いに隣り合うゲートトレンチ7間においてp型ベース領域4に接し、p+型領域11およびゲートトレンチ7と離れて設けられている。p+型領域12は、深さ方向Zにp型カラム領域32に隣接する。p+型領域12の短手方向の幅をp型カラム領域32の短手方向の幅Wp1と略同じにして、p+型領域12がn型カラム領域31に接していてもよい。p+型領域12の下部13は、p型カラム領域32へのp型不純物のイオン注入により形成されて、p型カラム領域32に重なって設けられている。
【0075】
p+型領域12の下部13がp型カラム領域32と重なっていることで、p+型領域12の下部13の不純物濃度はp+型領域12の上部14の不純物濃度よりも高くなる。これによって、ソース電極18に対して正の電圧(順方向電圧)がドレイン電極19に印加されたときに、p+型領域11とp+型領域12の下部13との間のJFET部分が空乏化しやすくなる。このため、ドレイン・ソース間電流が遮断されるまでの時間を短くなり、短絡耐量を向上させることができる。
【0076】
また、p+型領域12の下部13がp型カラム領域32と重なっていることで、ソース電極18に対して正の電圧がドレイン電極19に印加されたときにp型カラム領域32内に空乏層が広がりにくくなる。このため、p+型領域12の下部13がp型カラム領域32に重ならない場合と比べて、p型カラム領域32の深さ方向Zの実効的な長さが短くなる。したがって、p+型領域12の下部13がp型カラム領域32に重ならない場合と比べて、活性領域10の耐圧を意図的に低下させることができる。
【0077】
互いに隣り合うゲートトレンチ7間において、p+型領域11,12、p型ベース領域4およびn型カラム領域31との間に、これらの領域に接して、かつ第1方向Xにゲートトレンチ7の側壁に達するように、n型電流拡散領域(不図示)が設けられていてもよい。n型電流拡散領域は、キャリアの広がり抵抗を低減させる、いわゆる電流拡散層(CSL:Current Spreading Layer)である。n型電流拡散領域の不純物濃度は、n型カラム領域31の不純物濃度以上である。
【0078】
層間絶縁膜17は、半導体基板40のおもて面の全面に設けられ、ゲート電極9を覆う。ソース電極18は、層間絶縁膜17のコンタクトホールにおいて半導体基板40のおもて面の第1面40aにオーミック接触して、p型ベース領域4、n+型ソース領域5およびp++型コンタクト領域6に電気的に接続されている。ドレイン電極(第2電極)19は、半導体基板40の裏面(n+型出発基板41の裏面)の全面に設けられ、n+型ドレイン領域1に電気的に接続されている。
【0079】
p型エピタキシャル層43は、エッジ終端領域20の外側部分がエッチングにより除去され、半導体基板40のおもて面の中央にメサ状(凸状)に残っている。p型エピタキシャル層43が半導体基板40のおもて面の中央にメサ状に残ることで、半導体基板40のおもて面に段差44が形成されている。この段差44により、半導体基板40のおもて面は、この段差44を境に、チップ中央側の第1面40aよりも外側の第2面40bでドレイン電極19側に凹んでいる。
【0080】
半導体基板40のおもて面の第1面40aは、p型エピタキシャル層43で形成される。半導体基板40のおもて面の第2面40bは、エッジ終端領域20の外側部分にp型エピタキシャル層43が除去されることで露出したn型エピタキシャル層42の露出面である。段差44よりも外側において、半導体基板40のおもて面の第2面40bと並列pn層3との間に、耐圧構造として、不純物濃度の異なる複数のp型領域で構成されたJTE構造21が設けられている。
【0081】
JTE構造21は、半導体基板40のおもて面の第1面40aと第2面40bとをつなぐ第3面(段差のメサエッジ)40cで活性領域10と素子分離されている。JTE構造21は、不純物濃度の異なる複数のp型領域(第2導電型耐圧領域)を、活性領域10から外側へ離れるほど不純物濃度の低いp型領域が配置されるように、活性領域10の周囲を囲む同心状に互いに隣接して配置してなる。
図2には、JTE構造21として、不純物濃度の異なる2つのp型領域(p
-型領域22およびp
--型領域23)で構成されたダブルゾーンJTE構造を示す。
【0082】
JTE構造21を構成するp型領域(p-型領域22およびp--型領域23)の下面(n+型ドレイン領域1側の面)は、p+型領域11の下面およびp+型領域12の下部13の下面よりもn+型ソース領域5側に浅い位置にあり、かつp+型領域12の上部14の下面および後述するp+型延在部14aの下面よりもn+型ドレイン領域1側に深い位置にある。JTE構造21を構成するp型領域の上面(n+型ソース領域5側の面)は、p+型領域12の上部14の下面およびp+型延在部14aの下面よりもn+型ソース領域5側に浅い位置にある。
【0083】
JTE構造21を構成するp型領域の上面は、半導体基板40のおもて面の第2面40bに露出されている。半導体基板40のおもて面の第2,3面40b,40cは、絶縁層(層間絶縁膜17の単層構造か、またはフィールド酸化膜(不図示)および層間絶縁膜17を順に積層した積層構造)で覆われている。半導体基板40のおもて面の第2,3面40b,40cに露出とは、半導体基板40のおもて面の第2,3面40b,40c上の当該絶縁層に接することである。
【0084】
並列pn層3は、JTE構造21よりも外側まで設けられている。並列pn層3は、第1方向Xに最も外側にp型カラム領域32が配置される。半導体基板40の端部と並列pn層3との間の部分は、SJ構造でない通常のn型ドリフト領域33である。通常のn型ドリフト領域33の不純物濃度は、並列pn層3のn型カラム領域31の不純物濃度以下である。並列pn層3は、JTE構造21と通常のn型ドリフト領域33との間において半導体基板40のおもて面の第2面40bに露出されている。
【0085】
半導体基板40のおもて面と通常のn型ドリフト領域33との間に、並列pn層3と離れて、n+型チャネルストッパ領域25が選択的に設けられている。通常のn型ドリフト領域33およびn+型チャネルストッパ領域25は、半導体基板40の外周に沿って設けられ、並列pn層3の周囲を囲む。通常のn型ドリフト領域33およびn+型チャネルストッパ領域25は、半導体基板40の側面に露出されている。n+型チャネルストッパ領域25に代えて、p+型チャネルストッパ領域が設けられてもよい。
【0086】
エッジ終端領域20の段差44よりも内側において、半導体基板40のおもて面の第1面40aと並列pn層3との間に、p型ベース延在部4aが設けられている。p型ベース延在部4aと並列pn層3との間に、p型ベース延在部4aおよび並列pn層3(n型カラム領域31およびp型カラム領域32)に接して、p+型延在部(第2導電型高濃度領域)14aが設けられている。p+型延在部14aおよびp型ベース延在部4aは、それぞれp+型領域12の上部14およびp型ベース領域4の延在部である。
【0087】
p
+型延在部14aおよびp型ベース延在部4aは、第1方向Xに内側に最外ゲートトレンチ7aに達し、かつ第2方向Yにすべてのゲートトレンチ7の長手方向の端部に達するとともに、外側へ延在して半導体基板40のおもて面の第3面40cに達する。p
+型延在部14aおよびp型ベース延在部4aは、活性領域10から段差44までの全域にわたって設けられ、活性領域10の周囲を囲む(
図7)。p
+型延在部14aには、すべてのp
+型領域12がp
+型領域12の上部14の第2方向Yの端部で連結されている。
【0088】
p
+型延在部14aの下面は、半導体基板40のおもて面の第2面40bよりもn
+型ドレイン領域1側に深い位置にある。p
+型延在部14aは、段差44よりも外側へ延在して、半導体基板40のおもて面の第2面40bに露出されている。p
+型延在部14aは、JTE構造21の最も内側のp
-型領域22の内側端部に重なっている(
図2,6)。JTE構造21は、p
+型延在部14aに接し、p
+型延在部14aおよびp型ベース延在部4aを介してソース電極18の電位に固定されている。
【0089】
エッジ終端領域20のJTE構造21よりも内側のp型カラム領域32は、p+型延在部14aに接し、p+型延在部14aおよびp型ベース延在部4aを介して、ソース電極18の電位に固定されている。JTE構造21に接するp型カラム領域32は、JTE構造21を介してソース電極18の電位に固定されている。JTE構造21よりも外側のp型カラム領域32は、半導体基板40のおもて面の第2面40bに露出されている。JTE構造21よりも外側のp型カラム領域32は電気的に浮遊している。
【0090】
エッジ終端領域20において、p+型延在部14aの下面、JTE構造21を構成するp型領域(p-型領域22およびp--型領域23)の下面、および半導体基板40のおもて面の第2面40bは、活性領域10のp+型領域12の下面(p+型領域12の下部13の下面)よりもn+型ソース領域5側に浅い位置にある。このため、エッジ終端領域20のp型カラム領域32の深さ方向Zの長さは、活性領域10のp型カラム領域32の深さ方向Zの長さよりも長くなっている。
【0091】
エッジ終端領域20のp型カラム領域32の深さ方向Zの長さを活性領域10のp型カラム領域32の深さ方向Zの長さよりも長くすることで、エッジ終端領域20の耐圧が活性領域10の耐圧よりも高くなる。これによって、SiC-MOSFET(炭化珪素半導体装置50)を、半導体基板40の大半の面積(表面積)を占める面積の広い活性領域10でアバランシェ降伏する構造とすることができる。このため、破壊耐量を向上させることができる。
【0092】
JTE構造21に代えて、フローティングのp型領域であるフィールドリミッティングリング(FLR:Field Limiting Ring)を設けてもよい。この場合おいても、p+型延在部14aの下面、FLRの下面を活性領域10のp+型領域11,11aおよびp+型領域12の下部13の下面よりもn+型ソース領域5側に浅い位置にすることで、エッジ終端領域20のp型カラム領域32の深さ方向Zの長さが活性領域10のp型カラム領域32の深さ方向Zの長さよりも長くなり、破壊耐量が向上する。
【0093】
活性領域10とJTE構造21との間に、ゲートランナー45(
図1参照)が設けられている。ゲートランナー45は、例えば、半導体基板40のおもて面の第1面40a上にフィールド酸化膜(不図示)を介して設けられたゲートポリシリコン配線層を含む。このゲートポリシリコン配線層は、層間絶縁膜17に覆われている。ゲートポリシリコン配線層には、活性領域10のすべてゲート電極9が連結されている。ゲートランナーは、ゲート電極9とゲートパッド46(電極パッド:
図1参照)とを電気的に接続する。
【0094】
実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置50の動作について説明する。ソース電極18に対して正の電圧(順方向電圧)がドレイン電極19に印加された状態で、ゲート電極9にゲート閾値電圧以上の電圧が印加されると、p型ベース領域4のゲートトレンチ7の側壁に沿った部分にチャネル(n型の反転層)が形成される。それによって、n+型ドレイン領域1からチャネルを通ってn+型ソース領域5へ向かって主電流(ドリフト電流)が流れ、SiC-MOSFET(炭化珪素半導体装置50)がオンする。
【0095】
一方、ソース・ドレイン間に順方向電圧が印加された状態で、ゲート電極9にゲート閾値電圧未満の電圧が印加されると、p+型領域11,12およびp型ベース領域4と並列pn層3のn型カラム領域31とのpn接合(活性領域10の主接合)が逆バイアスされることで、主電流が流れなくなり、SiC-MOSFETはオフ状態を維持する。活性領域10の主接合(pn接合)が逆バイアスされることで、当該pn接合から空乏層が広がり、活性領域10の所定耐圧が確保される。
【0096】
また、SiC-MOSFETのオフ時、p型カラム領域32とn型カラム領域31とのpn接合が逆バイアスされ、当該pn接合から空乏層が広がることで、並列pn層3で耐圧が負担される。これによって、ドリフト層の不純物濃度(n型カラム領域31)で実現可能な耐圧を超える所定耐圧が確保される。また、p型カラム領域32の深さ方向Zの長さが活性領域10よりもエッジ終端領域20で長くなっていることで、活性領域10でアバランシェ降伏しやすくなる。
【0097】
実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置50の製造方法について説明する。まず、n+型ドレイン領域1となるn+型出発基板(半導体ウエハ)41のおもて面上に、並列pn層3を含むドリフト層を形成する。このとき、例えば、多段エピタキシャル方式を用いて、ドリフト層となるn型エピタキシャル層42を複数段(複数回)に分けて多段にエピタキシャル成長させるごとに各n型エピタキシャル層にアルミニウム(Al)等のp型不純物をイオン注入することで、並列pn層3のp型カラム領域32となる部分を選択的に形成する。
【0098】
n型エピタキシャル層42の互いに隣り合うp型カラム領域32間にイオン注入されずにn型のまま残る部分は、並列pn層3のn型カラム領域31となる。n型エピタキシャル層42の、並列pn層3とn+型出発基板41との間の部分の全域にイオン注入を行わずにn型バッファ領域2として残してもよい。以下、n型バッファ領域2を設ける場合を例に説明する。並列pn層3とチップ端部(半導体チップとなる部分の端部)との間にイオン注入されずにn型のまま残る部分は、通常のn型ドリフト領域33となる。
【0099】
n型カラム領域31をn型不純物のイオン注入により形成してもよい。この場合、n型エピタキシャル層42に代えて、ノンドープのエピタキシャル層やn-型エピタキシャル層を複数段に分けて多段にエピタキシャル成長させる。この場合、n型バッファ領域2や通常のn型ドリフト領域33は不純物濃度に応じてn型不純物のイオン注入を適宜行えばよい。このため、例えば、n型カラム領域31よりも不純物濃度の低いn型バッファ領域2や通常のn型ドリフト領域33を形成することができる。
【0100】
次に、p型不純物のイオン注入により、並列pn層3の表面領域に、深さ方向Zに並列pn層3のn型カラム領域31およびp型カラム領域32にそれぞれ隣接してp+型領域11およびp+型領域12の下部13を選択的に形成する。p+型領域12の下部13は、p型カラム領域32の表面領域へのp型不純物のイオン注入により、p型カラム領域32に重なるように形成される。また、p+型領域11と同時に、p+型領域11とp+型領域12の下部13とのp+型連結部の下部15を選択的に形成する。
【0101】
さらにエピタキシャル成長させてn型エピタキシャル層42を所定厚さまで厚くする。次に、p型不純物のイオン注入により、n型エピタキシャル層42の厚さを増した部分に、深さ方向Zにp+型領域12の下部13およびp+型連結部の下部15にそれぞれ隣接して、p+型領域12の上部14およびp+型連結部の上部16をそれぞれ選択的に形成する。また、p+型領域12の上部14と同時に、エッジ終端領域20の内側部分20aに、深さ方向Zに並列pn層3に隣接してp+型延在部14aを形成する。
【0102】
次に、n型エピタキシャル層42の上に、p型ベース領域4となるp型エピタキシャル層43をエピタキシャル成長させる。これにより、n+型出発基板41上にエピタキシャル層42,43が順に積層され、n型エピタキシャル層42内に並列pn層3を含む半導体基板(半導体ウエハ)40が作製される。次に、エッジ終端領域20の外側部分においてp型エピタキシャル層43(またはさらにn型エピタキシャル層42の表面領域)をエッチングにより除去して、エッジ終端領域20の外側部分に並列pn層3を露出させる。
【0103】
これによって、半導体基板40のおもて面に段差44が形成され、エッジ終端領域20の内側部分20aおよび活性領域10にp型エピタキシャル層43がメサ状に残る。エッジ終端領域20の外側部分において新たに半導体基板40のおもて面となった第2面40bに並列pn層3が露出される。半導体基板40のおもて面の段差44のメサエッジ(第3面40c)は、例えば半導体基板40のおもて面の第2面40bに対して鈍角(傾斜面)をなしてもよいし、略直角(垂直面)をなしてもよい。
【0104】
次に、イオン注入により、半導体基板40のおもて面の表面領域に、n+型ソース領域5、p++型コンタクト領域6、JTE構造21(p-型領域22、p--型領域23)およびn+型チャネルストッパ領域25をそれぞれ選択的に形成する。n+型ソース領域5およびp++型コンタクト領域6は、p型エピタキシャル層43の表面領域にそれぞれ選択的に形成する。p++型コンタクト領域6と同時に、エッジ終端領域20の内側部分20aにp++型外周コンタクト領域(不図示)を形成してもよい。
【0105】
JTE構造21およびn+型チャネルストッパ領域25は、半導体基板40のおもて面の第2面40bに露出された並列pn層3の表面領域にそれぞれ選択的に形成する。JTE構造21は、p+型領域11,12およびp+型延在部14aと異なるタイミングで形成する。JTE構造21の最も内側のp-型領域22の内側端部は、半導体基板40のおもて面の段差44付近でp+型延在部14aに重なように形成される。n+型チャネルストッパ領域25は、n+型ソース領域5と同時に形成されてもよい。p型エピタキシャル層43の、イオン注入されずにエピタキシャル成長時の不純物濃度のまま残る部分がp型ベース領域4およびp型ベース延在部4aとなる。
【0106】
次に、エピタキシャル層42,43にイオン注入した不純物を活性化させるための熱処理を行う。次に、半導体基板40のおもて面からn
+型ソース領域5およびp型ベース領域4を貫通して、p
+型領域11に対向するゲートトレンチ7を形成する。次に、一般的な方法により、ゲート絶縁膜8、ゲート電極9、層間絶縁膜17、ソース電極18およびドレイン電極19を形成する。その後、半導体ウエハ(半導体基板40)をダイシング(切断)して個々のチップ状に個片化することで、
図1~7に示す炭化珪素半導体装置50が完成する。
【0107】
上述した実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置50の製造方法において、多段エピタキシャル方式に代えて、トレンチ埋め込みエピタキシャル方式を用いて並列pn層3を形成してもよい。トレンチ埋め込みエピタキシャル方式を用いる場合、n型エピタキシャル層42に、p型カラム領域32の深さ方向Zの長さと同じ深さのトレンチ(SJトレンチ)を形成してn型カラム領域31となる部分を残し、これらのSJトレンチをp型カラム領域32となるp型エピタキシャル層で埋め込んで並列pn層3を形成する。
【0108】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、エッジ終端領域に設けられJTE構造をソース電極の電位に固定するp+型延在部の下面は、活性領域においてn+型ドレイン領域側に最も深い位置に設けられたp+型領域(ゲートトレンチ直下のp+型領域)の下面よりもn+型ソース領域側に浅い位置にある。これにより、エッジ終端領域のp型カラム領域の深さ方向の長さが活性領域のp型カラム領域の深さ方向の長さよりも長くなり、エッジ終端領域の耐圧が向上するため、エッジ終端領域の耐圧を活性領域の耐圧よりも高くすることができる。したがって、アバランシェ降伏の発生個所が半導体基板の大半の面積(表面積)を占める面積の広い活性領域となり、破壊耐量を向上させることができる。
【0109】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造について説明する。
図8は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置60を半導体基板40のおもて面側から見たレイアウトは
図1と同様である。
図8には、
図1の切断線A-A’における断面構造を示す。
図9は、
図1の矩形枠C1-C1’内を拡大して示す平面図である。
図9には、
図8のp
+型延在部64aの半導体基板40のコーナーにおけるレイアウトを示す。
【0110】
図8では、p型カラム領域32をハッチングで示す。
図8では、JTE構造21の内周24aの、p
+型延在部64aと重なる部分を破線で示し、ゲートランナー45を図示省略する。
図8では、n型カラム領域31およびp型カラム領域32の個数が簡略化され、
図9と異なっている。
図9の上図では、ゲートトレンチ7を太線で示し、JTE構造21の内周24aおよび外周24bを破線で示す。
図9では、p
+型領域12の上部14、p
+型延在部64aおよびp
+型連結部の上部16を同一のハッチングで示す。
【0111】
実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置60が実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置50(
図2,7参照)と異なる点は、エッジ終端領域20の内側部分20aに、p
+型延在部64aが選択的に設けられている点である。p
+型延在部64aは、p
+型領域12の上部14と同時に形成された、p
+型領域12の上部14の延在部である。例えば、p
+型延在部64aは、p型ベース延在部4aとp型カラム領域32との間にのみ設け、かつp型ベース延在部4aとn型カラム領域31との間に設けないレイアウトとしてもよい。
【0112】
この場合、互いに隣り合うp
+型延在部64a間には、n型カラム領域31がp型ベース延在部4aまで延在する。このため、活性領域10と段差44との間において、n型カラム領域31の深さ方向Zの長さは、p型カラム領域32の深さ方向Zの長さよりも長くなる。p
+型延在部64aの短手方向の幅は、p型カラム領域32の短手方向の幅Wp1よりも狭くてもよい(不図示)。p
+型延在部64aは、p型ベース延在部4aとp型カラム領域32との間を、第2方向Yに直線状に延在してもよいし(
図9)、第2方向Yに点在してもよい(不図示)。
【0113】
p+型延在部64aが第2方向Yに直線状に延在する場合、p+型延在部64aの長手方向(第2方向Y)の端部は、JTE構造21のp-型領域22の内側端部に重なっている。p+型延在部64aの長手方向の端部は、p型カラム領域32の第2方向Yの端部よりも内側で終端している。p+型延在部64aが第2方向Yに点在する場合、p+型延在部64aは、半導体基板30のおもて面側から見て、活性領域10と段差44との間にマトリクス状に設けられる。第2方向Yに最も外側のp+型延在部64aは、JTE構造21のp-型領域22の内側端部に重なっている。第2方向Yに最も外側のp+型延在部64aは、p型カラム領域32の第2方向Yの端部よりも内側に位置する。
【0114】
p
+型延在部64aのレイアウトに依らず、第1方向Xに最も外側のp
+型延在部64aは、JTE構造21の最も内側のp
-型領域22の内側端部に重なっている(
図8)。p
+型延在部64aの最外ゲートトレンチ7aに隣り合う部分は、p
+型連結部の上部16と、p
+型連結部の下部15(
図8,9には不図示)と、によって最外ゲートトレンチ7a直下のp
+型領域11aに連結されてもよい。最外ゲートトレンチ7aとは、第1方向Xに最も外側のゲートトレンチ7と、活性領域10のコーナーで終端するゲートトレンチ7の、第1方向Xに外側に他のゲートトレンチ7に隣り合っていない部分と、である。
【0115】
実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置60の製造方法は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置50の製造方法において、p+型延在部64aのレイアウトを変更すればよい。
【0116】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、エッジ終端領域の内側部分において、p型ベース延在部とp型カラム領域との間にのみp+型延在部を設けることで、実施の形態1と同様の効果を得ることができ、当該効果をさらに向上させることができる。
【0117】
(実施例)
上述した実施の形態1,2にかかる炭化珪素半導体装置50,60の耐圧について検証した。
図10は、実施例1,2の耐圧特性を示す特性図である。
図10の横軸に試料名(実施例1,2、従来例および比較例)を示し、縦軸に耐圧BVdssを示す。棒グラフ上の数値は各試料の耐圧値である。実施の形態1,2にかかる炭化珪素半導体装置50,60(以下、実施例1,2とする)のエッジ終端領域20の耐圧と、活性領域10の耐圧(以下、比較例とする)と、をシミュレーションした結果を
図10に示す。
【0118】
比較として、従来の炭化珪素半導体装置150(以下、従来例とする)のエッジ終端領域120の耐圧をシミュレーションした結果も
図10に示す。従来例が実施例1,2と異なる点は、エッジ終端領域120の内側部分120aにJTE構造121に接して設けられたp
+型延在部111aと、p型カラム領域132と、の境界が活性領域110のp
+型領域112とp型カラム領域132との境界と同じ深さ位置となっている点である。従来例の活性領域110の耐圧は、実施例1,2の活性領域10の耐圧と同じである。
【0119】
図10に示す結果から、従来例では、エッジ終端領域120の耐圧が活性領域110の耐圧よりも低くなることが確認された。一方、実施例1,2においては、エッジ終端領域20の耐圧を活性領域10の耐圧よりも高くすることができることが確認された。また、実施例2においては、実施例1と比べて、エッジ終端領域20の耐圧を50V程度高くすることができることが確認された。
【0120】
したがって、実施例1,2のように、JTE構造21をエッジ終端領域20においてソース電極18の電位に固定するp+型延在部14aの底面の深さ位置をn+型ソース領域5側に浅くして、エッジ終端領域20のp型カラム領域32の深さ方向Zの長さを活性領域10のp型カラム領域32の深さ方向Zの長さよりも長くすることで、エッジ終端領域20の耐圧を向上させることができることが確認された。
【0121】
さらに、実施例2のようにJTE構造21をエッジ終端領域20においてソース電極18の電位に固定するp+型延在部64aをp型ベース延在部4aと並列pn層3のp型カラム領域32との間にのみ設けることで、JTE構造21をソース電極18の電位に固定するp+型延在部14aをエッジ終端領域20の内側部分20aの全域に設ける場合と比べて、エッジ終端領域20の耐圧をさらに高くすることができることが確認された。
【0122】
以上において本発明は、上述した各実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、エッジ終端領域のp型カラム領域の深さ方向の長さを活性領域のp型カラム領域の深さ方向の長さよりも長くして、エッジ終端領域の耐圧を活性領域の耐圧よりも高くすることができればよく、互いに隣り合うゲートトレンチ間のp+型領域の下部と並列pn層のp型カラム領域とは重なっていなくてもよい。また、本発明は、MOSFETに限らず、ドリフト層を並列pn層としたさまざまな構成のSJ構造の炭化珪素半導体装置に適用可能である。また、上述した各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0123】
以上のように、本発明にかかる炭化珪素半導体装置は、電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置などに使用されるパワー半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0124】
1 n+型ドレイン領域
2 n型バッファ領域
3 並列pn層
4 p型ベース領域
4a p型ベース延在部
5 n+型ソース領域
6 p++型コンタクト領域
7 ゲートトレンチ
7a 最外ゲートトレンチ
8 ゲート絶縁膜
9 ゲート電極
10 活性領域
11 ゲートトレンチ直下の電界緩和用のp+型領域
11a 最外ゲートトレンチ直下の電界緩和用のp+型領域
12 互いに隣り合うゲートトレンチ間の電界緩和用のp+型領域
13 互いに隣り合うゲートトレンチ間の電界緩和用のp+型領域の下部
14 互いに隣り合うゲートトレンチ間の電界緩和用のp+型領域の上部
14a,64a p+型延在部
15 p+型連結部の下部
16 p+型連結部の上部
17 層間絶縁膜
18 ソース電極
19 ドレイン電極
20 エッジ終端領域
20a エッジ終端領域の内側部分
21 JTE構造
22 JTE構造のp-型領域
23 JTE構造のp--型領域
24a JTE構造の内周
24b JTE構造の外周
24c 最外ゲートトレンチ直下の電界緩和用のp+型領域の外周
25 n+型チャネルストッパ領域
31 n型カラム領域
32 p型カラム領域
33 通常のn型ドリフト領域
40 半導体基板
40a~40c 半導体基板のおもて面
41 n+型出発基板
42 n型エピタキシャル層
43 p型エピタキシャル層
44 半導体基板のおもて面の段差
45 ゲートランナー
46 ゲートパッド
50,60 炭化珪素半導体装置
Wn1 n型カラム領域の短手方向の幅
Wp1 p型カラム領域の短手方向の幅
X 半導体基板のおもて面に平行な第1方向
Y 半導体基板のおもて面に平行でかつ第1方向と直交する第2方向
Z 深さ方向