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  • 特開-有機電界発光素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007334
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/15 20230101AFI20240110BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20240110BHJP
   H10K 50/17 20230101ALI20240110BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240110BHJP
   H10K 85/30 20230101ALI20240110BHJP
【FI】
H10K50/15
H10K50/16
H10K50/17
H10K85/60
H10K85/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088916
(22)【出願日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2022106810
(32)【優先日】2022-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】上原 史成
(72)【発明者】
【氏名】尾池 華奈
(72)【発明者】
【氏名】高橋 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】野村 真太朗
(72)【発明者】
【氏名】太田 恵理子
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107BB04
3K107CC04
3K107CC12
3K107CC21
3K107DD72
3K107DD75
3K107DD76
3K107DD78
(57)【要約】      (修正有)
【課題】駆動電圧特性および電流効率特性を両立し、効率変化が小さい有機電界発光素子を提供すること。
【解決手段】陽極と発光層との間の正孔輸送領域と、前記発光層と陰極との間の電子輸送領域とを有し、前記正孔輸送領域が式(3)で表されるラジアレン化合物を含有し、前記電子輸送領域が式(2)で表されるトリアジン化合物を含有する有機電界発光素子。


【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、
陽極に対向する陰極と、
前記陽極と陰極との間に配置された発光層と、
前記陽極と発光層との間に配置された正孔輸送領域を有し、
前記発光層と陰極との間に配置された電子輸送領域を有し、
前記正孔輸送領域が式(3)で表されるラジアレン化合物を含有し、
前記電子輸送領域が式(2)で表されるトリアジン化合物を含有する有機電界発光素子。
【化1】
式(3)中、
は、各々独立に、シアノ基、ハロゲン原子、フルオロアルキル基、アシル基、スルホニル基、ホスフォリル基、置換されてもよい芳香族炭化水素基、または置換されてもよい芳香族複素環基を表す。
【化2】

式(2)中、
Arは、炭素数1~6のアルキル基で置換されてもよい、フェニル基、ナフチル基、またはビフェニリル基を表し、
Arは、炭素数1~4のアルキル基で置換されてもよい、フェニル基、ピリジル基、フェニルピリジル基、ピリジルフェニル基、またはビフェニリル基を表す。
Arは、炭素数1~4のアルキル基で置換されてもよい、フェニル基、またはビフェニリル基を表す。
【請求項2】
前記正孔輸送領域が、第1の正孔輸送層と、
第1の正孔輸送層と発光層との間に配置された第2の正孔輸送層とを少なくとも有し、
前記第1の正孔輸送層が式(3)で表されるラジアレン化合物を含有する請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
式(3)で表されるラジアレン化合物が式(3-a)である請求項1または2に記載の有機電界発光素子。
【化3】
式中、
は、各々独立に、シアノ基、ハロゲン原子、フルオロアルキル基、アシル基、スルホニル基、ホスフォリル基、置換されてもよい芳香族炭化水素基、置換されてもよい芳香族複素環基を表す。
Arは、各々独立に、置換されてもよい芳香族炭化水素基、または置換されてもよい芳香族複素環基を表す。
およびArで表される置換されてもよい芳香族炭化水素基、置換されてよい芳香族複素環基が有する置換基は、各々独立に、
重水素、シアノ基、ハロゲン原子、フルオロアルキル基、アシル基、スルホニル基、ホスフォリル基、から選択される。
【請求項4】
式(3)で表されるラジアレン化合物が式(3-b)である請求項1または2に記載の有機電界発光素子。
【化4】
式中、
31は、各々独立に、重水素、シアノ基、ハロゲン原子、フルオロアルキル基、アシル基、スルホニル基、ホスフォリル基、から選択される。
sは各々独立に、1~5の整数である。
【請求項5】
式(3)で表されるラジアレン化合物が下記である、請求項1または2に記載の有機電界発光素子。
【化5】
【請求項6】
前記電子輸送領域が、第1の電子輸送層と、第1の電子輸送層と陰極との間に配置された第2の電子輸送層とを少なくとも有し、
前記第2の電子輸送層が式(2)で表されるトリアジン化合物を含有する請求項1または2に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
式(2)で表されるトリアジン化合物が下記である、請求項1または2に記載の有機電界発光素子。
【化6】
【請求項8】
前記第2電子輸送層が式(2)で表される化合物と、リチウムキノラート(Liq)とを含有する、請求項6に記載の有機電界発光素子。
【化7】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は、適切な発光材料を使用することで、任意の波長の光を取り出すことが可能であり、その有用性から小型の表示機器だけでなく照明等の用途へ応用展開されており、その開発が精力的に行われている。いずれの用途においても、赤色、緑色、青色の発光を、適切な強度で組み合わせることで任意の色調を表現することが可能となる。
【0003】
従来から、有機電界発光素子は低い電圧で駆動し、高い効率で発光することが望まれており、近年の有機電界発光素子用材料は徐々に改良されている。
【0004】
例えば特許文献1および2は、駆動電圧が低く、効率が高く、長寿命な有機電界発光素子を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/117026号
【特許文献2】特開2020-033264
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、近年の有機電界発光素子に対する市場からの要求は益々高くなり、優れた駆動電圧特性および電流効率特性のみならず、色調の精密な制御が可能な有機電界発光素子の開発が求められている。そして、色調の細かい調整や制御を可能とするためには、低輝度から高輝度に至るまで幅広い領域においても効率が高く、且つ効率の変化が小さいことが望まれる(以下、当該効率の変化を単に「効率変化」ともいう)。さらに色調の細かい調整や制御を可能とするためには素子を連続で駆動させた前後で効率に変化がないことが望まれている(以下、当該効率の変化を単に「連続駆動後効率変化」ともいう)
本開示の一態様は、優れた駆動電圧特性および電流効率特性、ならびに効率変化および連続駆動後効率変化が小さい有機電界発光素子を提供することに向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様による有機電界発光素子は 、
1.
陽極と、
陽極に対向する陰極と、
前記陽極と陰極との間に配置された発光層と、
前記陽極と発光層との間に配置された正孔輸送領域を有し、
前記発光層と陰極との間に配置された電子輸送領域を有し、
前記正孔輸送領域が式(3)で表されるラジアレン化合物を含有し、
前記電子輸送領域が式(2)で表されるトリアジン化合物を含有する有機電界発光素子。
【0008】
【化1】
【0009】
式(3)中、
は、各々独立に、シアノ基、ハロゲン原子、フルオロアルキル基、アシル基、スルホニル基、ホスフォリル基、置換されてもよい芳香族炭化水素基、または置換されてもよい芳香族複素環基を表す。
【0010】
【化2】
【0011】
式(2)中、
Arは、炭素数1~6のアルキル基で置換されてもよい、フェニル基、ナフチル基、またはビフェニリル基を表し、
Arは、炭素数1~4のアルキル基で置換されてもよい、フェニル基、ピリジル基、フェニルピリジル基、ピリジルフェニル基、またはビフェニリル基を表す。
Arは、炭素数1~4のアルキル基で置換されてもよい、フェニル基、またはビフェニリル基を表す。
2.
前記正孔輸送領域が、第1の正孔輸送層と、
第1の正孔輸送層と発光層との間に配置された第2の正孔輸送層とを少なくとも有し、
前記第1の正孔輸送層が式(3)で表されるラジアレン化合物を含有する1.に記載の有機電界発光素子。
3.
式(3)で表されるラジアレン化合物が式(3-a)である1.または2.に記載の有機電界発光素子。
【0012】
【化3】
【0013】
式中、
は、各々独立に、シアノ基、ハロゲン原子、フルオロアルキル基、アシル基、スルホニル基、ホスフォリル基、置換されてもよい芳香族炭化水素基、または置換されてもよい芳香族複素環基を表す。
【0014】
Arは、各々独立に、置換されてもよい芳香族炭化水素基、または置換されてもよい芳香族複素環基を表す。
【0015】
およびArで表される置換されてもよい芳香族炭化水素基、置換されてよい芳香族複素環基が有する置換基は、各々独立に、
重水素、シアノ基、ハロゲン原子、フルオロアルキル基、アシル基、スルホニル基、ホスフォリル基から選択される。
4.
式(3)で表されるラジアレン化合物が式(3-b)である請求項1.~3.のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【0016】
【化4】
【0017】
式中、
31は、各々独立に、重水素、シアノ基、ハロゲン原子、フルオロアルキル基、アシル基、スルホニル基、ホスフォリル基から選択される。
【0018】
sは各々独立に、1~5の整数である。
5.
式(3)で表されるラジアレン化合物が下記である、1.~4.のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【0019】
【化5】
【0020】
6.
前記電子輸送領域が、第1の電子輸送層と、第1の電子輸送層と陰極との間に配置された第2の電子輸送層とを少なくとも有し、
前記第2の電子輸送層が式(2)で表されるトリアジン化合物を含有する1.~5.のいずれかに記載の有機電界発光素子。
7.
式(2)で表されるトリアジン化合物が下記である、1.~6.のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【0021】
【化6】
【0022】
8.
前記第2電子輸送層が式(2)で表される化合物と、リチウムキノラート(Liq)とを含有する、6.または7.に記載の有機電界発光素子。
【0023】
【化7】
【発明の効果】
【0024】
本開示の一態様である有機電界発光素子は、優れた駆動電圧特性および電流効率特性を両立し、更には、効率変化および連続駆動後効率変化を小さくすることができ、表示装置や照明装置における色調の再現に好適な素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本開示の一態様にかかる環状アジン化合物を含む有機電界発光素子の積層構成の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の一態様にかかる有機電界発光素子について詳細に説明する。
<有機電界発光素子>
本開示の一態様にかかる有機電界素子は、
陽極と、
陽極に対向する陰極と、
前記陽極と陰極との間に配置された発光層と、
前記陽極と発光層との間に配置された正孔輸送領域を有し、
前記発光層と陰極との間に配置された電子輸送領域を有し、
前記正孔輸送領域が式(3)で表されるラジアレン化合物を含有し、
前記電子輸送領域が式(2)で表されるトリアジン化合物を含有する有機電界発光素子。
【0027】
【化8】
【0028】
式(3)中、
は、各々独立に、シアノ基、ハロゲン原子、フルオロアルキル基、アシル基、スルホニル基、ホスフォリル基、置換されてもよい芳香族炭化水素基、または置換されてもよい芳香族複素環基を表す。
【0029】
【化9】
【0030】
式(2)中、
Arは、炭素数1~6のアルキル基で置換されてもよい、フェニル基、ナフチル基、またはビフェニリル基を表し、
Arは、炭素数1~4のアルキル基で置換されてもよい、フェニル基、ピリジル基、フェニルピリジル基、ピリジルフェニル基、またはビフェニリル基を表す。
Arは、炭素数1~4のアルキル基で置換されてもよい、フェニル基、またはビフェニリル基を表す。
[有機電界発光素子の構成について]
陽極と発光層の間の領域を、正孔輸送領域とする。正孔輸送領域は、陽極より注入された正孔、または正孔輸送領域内で発生させた正孔を発光層に伝達する機能を有し、この正孔輸送領域を陽極と発光層との間に介在させることによって、より低い電界で多くの正孔が発光層に注入される。
【0031】
正孔輸送領域は複数の層によって形成されていてもよい。正孔輸送領域は2層以上の積層構造であることが好ましく、4層以下の積層構造であることが更に好ましく、3層の積層構造であることが特に好ましい。正孔輸送領域が3層の積層構造を形成する場合、陽極側から順に、第1正孔輸送層、第2正孔輸送層、第3正孔輸送層とし、これらは各々独立に正孔注入層、正孔発生層、正孔輸送層、電子阻止層からなる群から選択される1つ以上の機能を有することが好ましい。
【0032】
陰極と発光層の間の領域を、電子輸送領域とする。電子輸送領域は、陰極より注入された電子、または電子輸送領域内で発生させた電子を発光層に伝達する機能を有し、この電子輸送領域を発光層と陰極との間に介在させることによって、より低い電界で多くの電子が発光層に注入される。
【0033】
電子輸送領域は複数の層によって形成されていてもよい。電子輸送領域は2層以上の積層構造であることが好ましく、4層以下の積層構造であることが更に好ましく、3層以下の積層構造であることが特に好ましい。電子輸送領域が3層の積層構造を形成する場合、陽極側から順に、第1電子輸送層、第2電子輸送層、第3電子輸送層とし、これらは各々独立に正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層からなる群から選択される1つ以上の機能を有する。
【0034】
また、陽極と陰極との間に電荷発生層を有し、別のユニットとして更に発光層や電子輸送領域などを有してもよい。
【0035】
本開示の一態様にかかる有機電界発光素子の構成については特に限定されるものではないが、例えば、以下に示す(i)~(vi)の構成等が挙げられる。
(i):陽極/正孔輸送領域/発光層/陰極
(ii):陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(iii):陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(iv):陽極/正孔注入層/正孔発生層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(v):陽極/正孔注入層/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(vi):陽極/正孔輸送領域/発光層/電子輸送領域/電荷発生層/正孔輸送領域/発光層/電子輸送領域/陰極
以下、本開示の一態様にかかる有機電界発光素子を、図1を参照しながらより詳細に説明する。図1は、本開示の一態様にかかる有機電界発光素子の積層構成の一例を示す概略断面図である。
本開示の一態様にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子は、ボトムエミッション型の素子構成であっても、トップエミッション型の素子構成であってもよく、その他の公知の素子構成であってもよい。
【0036】
有機電界発光素子100は、基板1、陽極2、正孔輸送領域3、発光層4、電子輸送領域5、および陰極6をこの順で備える。正孔輸送領域3は、陽極2側から順に第1正孔輸送層31、第2正孔輸送層32、第3正孔輸送層33の積層構造を形成してもよい。電子輸送領域5は、陽極2側から順に第1電子輸送層51、第2電子輸送層52、第3電子輸送層53の積層構造を形成してもよい。
ただし、これらの層および/または領域のうちの一部の層および/または領域が省略されていてもよく、また逆に他の層が追加されていてもよい。例えば、電子輸送領域5と陰極6との間に電荷発生層が設けられていてもよい。また、例えば電子注入層の機能と電子輸送層の機能とを単一の層で併せ持つ電子注入・輸送層のような、複数の層が有する機能を併せ持った単一の層を、当該複数の層の代わりに備えた構成であってもよい。さらに、例えば単層の正孔輸送層5、単層の電子輸送層7が、それぞれ複数層からなっていてもよい。
[基板1]
基板としては特に限定はなく、例えばガラス板、石英板、プラスチック板、プラスチックフィルムなどが挙げられる。また、基板1側から発光が取り出される構成の場合、基板1は発光層4からの発光の波長に対して透明である。また、陰極6側から発行が取り出される構成の場合、基盤1は発光層4からの発光を陰極6側に反射する反射板を備えていてもよい。
【0037】
光透過性を有するプラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。
[陽極2]
基板1と正孔輸送領域3との間には陽極2が設けられている。陽極2は本開示の一態様である有機電界発光素子に電流を流す際の陽極としての機能を為しえる。
【0038】
基板1側から発光が取り出される構成の場合、陽極2は当該発光を通すかまたは実質的に通す材料、または当該発光を十分で透過できる膜厚に形成される。また、陰極6側から発行が取り出される構成の場合、陽極2は発光層4からの発光を陰極6側に反射する機能を備えていてもよい。具体的には、発光層4からの発光波長を十分に反射出来る材料で陽極2を形成するか、反射率の高い材料と適切な透過率の高い材料との積層構造を形成してもよい。
【0039】
陽極2に用いられる材料としては、基盤1側から発光が取り出される構成の場合、特に限定されるものではないが、例えば、インジウム-錫酸化物(ITO;Indium Tin Oxide)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO;Indium Zinc Oxide)、酸化錫、アルミニウム・ドープ型酸化錫、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物、その他の金属酸化物、窒化ガリウム等の金属窒化物、セレン化亜鉛等の金属セレン化物、および硫化亜鉛等の金属硫化物などが当面電極材料として挙げられる。
【0040】
なお、陰極6側のみから光を取り出す構成の有機電界発光素子の場合、陽極の透過特性は重要ではない。したがって、この場合の陽極に用いられる材料の一例としては、金、銀、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金、またはこれらの合金が挙げられる。
[正孔輸送領域3]
陽極2と後述する発光層4との間には、正孔輸送領域3が設けられており、陽極2側から、第1正孔輸送層31、第2正孔輸送層32、第3正孔輸送層33がこの順に設けられた積層構造を形成してもよい。
【0041】
正孔輸送領域には後述のラジアレン化合物が含まれる。
【0042】
正孔輸送領域3を形成する第1正孔輸送層31、第2正孔輸送層32、第3正孔輸送層33は各々独立に、正孔注入層、正孔発生層、正孔輸送層、電子阻止層からなる群から選択される1つ以上の機能を有する。これらの機能について詳細を後述する。 正孔注入層は、陽極2から効率よく正孔を注入する機能を有し、且つ隣接する層に効率的に正孔を注入する機能を担う。
【0043】
正孔注入層の材料の具体例としては、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、導電性高分子オリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物などが挙げられる。これらの中でも、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物が好ましく、特に芳香族第三級アミン化合物が好ましい。また、正孔注入層に後述のラジアレン化合物(3)が含まれていてもよい。また上記材料と後述のラジアレン化合物(3)を含む組成物であってもよい。
【0044】
正孔発生層は、電界を印加することで隣接層を形成する化合物の被占軌道から電子を得て、当該隣接層内に正孔を発生し(当該隣接層に正孔を注入すると同義)、かつ自身が得た電子を陽極2側に輸送する機能を担う。
【0045】
正孔発生層の材料の具体例としては、ラジアレン化合物(3)やジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)、7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(F4-TCNQ)、11,11,12,12-テトラシアノ-2,6-ナフトキノジメタン(TNAP)、15,15,16,16-テトラシアノアントラキノジメタン(TCAQ)などが挙げられる。また正孔発生層に後述のラジアレン化合物(3)が含まれていてもよい。また上記材料と後述のラジアレン化合物(3)を含む組成物であってもよい。
【0046】
正孔輸送層は、陽極2、正孔注入層、正孔発生層から注入された正孔を輸送し、隣接する層に正孔を注入する機能を担う。
【0047】
電子阻止層は、隣接層から当該層内に電子が注入されることを阻止する機能を担う。特に発光層からの電子注入を阻止することで、発光層内で発光に寄与する電荷の総数を多くすることが可能であり、ひいては有機電界発光素子の発光効率を高めることに寄与する。
【0048】
正孔輸送層および電子阻止層の材料の具体例としては、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、導電性高分子オリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物などが挙げられる。これらの中でも、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物が好ましく、特に芳香族第三級アミン化合物が好ましい。また正孔輸送層または電子阻止層に後述のラジアレン化合物(3)が含まれていてもよい。
【0049】
第1正孔輸送層31は正孔注入層および/または正孔発生層の機能を担うことが好ましく、正孔注入層の機能を担うことが更に好ましい。
【0050】
第2正孔輸送層32は正孔発生層、正孔輸送層および/または電子阻止層の機能を担うことが望ましく、正孔輸送層の機能を担うことが更に好ましい。
【0051】
第3正孔輸送層33は正孔輸送層および/または電子阻止層の機能を担うことが好ましく、電子阻止層の機能を担うことが更に好ましい。
【0052】
正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層に用いられる芳香族第三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物の具体例としては、N,N,N’,N’-テトラフェニル-4,4’-ジアミノフェニル、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-〔1,1’-ビフェニル〕-4,4’-ジアミン(TPD)、2,2-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラ-p-トリル-4,4’-ジアミノビフェニル、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン、ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)フェニルメタン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(4-メトキシフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニル、N,N,N’,N’-テトラフェニル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル、N,N,N-トリ(p-トリル)アミン、4-(ジ-p-トリルアミノ)-4’-〔4-(ジ-p-トリルアミノ)スチリル〕スチルベン、4-N,N-ジフェニルアミノ-(2-ジフェニルビニル)ベンゼン、3-メトキシ-4’-N,N-ジフェニルアミノスチルベンゼン、N-フェニルカルバゾール、4,4’-ビス〔N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、4,4’,4’’-トリス〔N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)および下記化合物などが挙げられる。
【0053】
【化10】
【0054】
【化11】
【0055】
<ラジアレン化合物>
本開示の一態様にかかる正孔輸送領域に含まれるラジアレン化合物は、式(3)で示される:
【0056】
【化12】
【0057】
式(3)中、
は、各々独立に、シアノ基、ハロゲン原子、フルオロアルキル基、アシル基、スルホニル基、ホスフォリル基、置換されてもよい芳香族炭化水素基、または置換されてもよい芳香族複素環基を表す。
【0058】
以下、式(3)で示されるラジアレン化合物を、ラジアレン化合物(3)と称することもある。ラジアレン化合物(3)の好ましい形態、置換基の定義、およびその好ましい具体例は、それぞれ以下のとおりである。
【0059】
で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示され、この内、フッ素原子、塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0060】
で表されるアシル基としては、カルボニル部位の炭素を含む炭素数2~10のアシル基が好ましく、フッ素原子で置換された炭素数2~10のアシル基がより好ましく、全ての水素原子がフッ素原子で置換された炭素数2~10のアシル基が更に好ましく、全ての水素原子がフッ素原子で置換された炭素数2~6のアシル基が特に好ましい。
【0061】
で表されるフルオロアルキル基としては、アルキル基の水素原子が1つ以上フッ素原子で置換された炭素数1~20のアルキル基であり、全ての水素原子がフッ素原子に置換された、炭素数1~20のフルオロアルキル基が好ましく、炭素数1~10のフルオロアルキル基がより好ましく、炭素数1~6のフルオロアルキル基が更に好ましく、炭素数1~3のフルオロアルキル基が特に好ましい。
【0062】
で表される置換されてもよい芳香族炭化水素基としては、1つ以上のシアノ基、ハロゲン原子、アシル基、スルホニル基、またはホスフォリル基で置換されてもよい環構成炭素数6~20の連結または縮環してもよい芳香族炭化水素基が好ましく、シアノ基および/またはハロゲン原子で置換されてもよい環構成炭素数6~20の連結または縮環してもよい芳香族炭化水素基がより好ましく、シアノ基および/またはフッ素原子で置換されたフェニル基、ビフェニリル基が特に好ましい。
【0063】
で表される置換されてもよい芳香族複素環基としては、1つ以上のシアノ基、ハロゲン原子、アシル基、スルホニル基、またはホスフォリル基で置換されてもよい環構成原子数6~20の連結または縮環してもよい芳香族複素環基が好ましく、シアノ基および/またはハロゲン原子で置換されてもよい環構成原子数6~20の連結または縮環してもよい芳香族複素環基がより好ましく、シアノ基および/またはフッ素原子で置換されたピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジニル基が特に好ましい。
[式(3-1)について]
ラジアレン化合物(3)は式(3-a)で表される構造であることが好ましい。
【0064】
【化13】
【0065】
式(3-a)中、
Arは、各々独立に、置換されてもよい芳香族炭化水素基、または置換されてもよい芳香族複素環基を表す。
【0066】
およびArで表される置換されてもよい芳香族炭化水素基、置換されてよい芳香族複素環基が有する置換基は、各々独立に、
重水素、シアノ基、ハロゲン原子、フルオロアルキル基、アシル基、スルホニル基、ホスフォリル基から選択される。
【0067】
の好ましい形態は式(3)と同じである。
【0068】
Arで表される置換されて基芳香族炭化水素基としては、1つ以上のシアノ基、ハロゲン原子、アシル基、スルホニル基、またはホスフォリル基で置換されてもよい環構成炭素数6~20の連結または縮環してもよい芳香族炭化水素基が好ましく、シアノ基および/またはハロゲン原子で置換されてもよい環構成炭素数6~20の連結または縮環してもよい芳香族炭化水素基がより好ましく、シアノ基および/またはフッ素原子で置換されたフェニル基、ビフェニリル基が特に好ましい。
【0069】
Arで表される置換されてもよい芳香族複素環基としては、1つ以上のシアノ基、ハロゲン原子、アシル基、スルホニル基、またはホスフォリル基で置換されてもよい環構成原子数6~20の連結または縮環してもよい芳香族複素環基が好ましく、シアノ基および/またはハロゲン原子で置換されてもよい環構成原子数6~20の連結または縮環してもよい芳香族複素環基がより好ましく、シアノ基および/またはフッ素原子で置換されたピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジニル基が特に好ましい。
[式(3-b)について]
ラジアレン化合物(3)および(3-a)は、式(3-b)で表される構造であることが好ましい。
【0070】
【化14】
【0071】
式(3-b)中、
31は、各々独立に、重水素、シアノ基、ハロゲン原子、フルオロアルキル基、アシル基、スルホニル基、ホスフォリル基から選択される。
【0072】
sは各々独立に、1~5の整数である。
【0073】
31で表されるハロゲン原子、フルオロアルキル基、アシル基の好ましい形態はRと同様である。
【0074】
31はシアノ基、フッ素原子、フルオロアルキル基から選択されることが好ましく、シアノ基および/またはフッ素原子であることがより好ましく、シアノ基およびフッ素原子であることが更に好ましい。
[ラジアレン化合物(3)、(3-a)および(3-b)の好ましい例]
本開示の一態様であるラジアレン化合物(3)は下記化合物3-1から3-148のいずれか1つで表されるラジアレン化合物がより好ましい。
【0075】
【化15】
【0076】
【化16】
【0077】
【化17】
【0078】
【化18】
【0079】
【化19】
【0080】
【化20】
【0081】
【化21】
【0082】
【化22】
【0083】
【化23】
【0084】
【化24】
【0085】
【化25】
【0086】
【化26】
【0087】
【化27】
【0088】
中でも、式3-1で示されるラジアレン化合物は、特に素子の優れた駆動電圧特性、電流効率特性、効率変化特性を両立する点で好ましい。
[ラジアレン化合物(3)の有機電界発光素子への適用について]
本開示の一態様にかかるラジアレン化合物(3)は、正孔輸送領域に用いられる。正孔輸送領域は複数の層からなる積層構造を形成していることが好ましく、この内、ラジアレン化合物(3)を含む層は発光層に接していない層に用いられることが好ましく、前述の正孔注入層、正孔発生層、正孔輸送層として機能する層に用いられることがより好ましく、正孔注入層、正孔発生層に用いられることが更に好ましい。
【0089】
ラジアレン化合物(3)を含む層は、ラジアレン化合物(3)のみで形成されてもよく、他の化合物とラジアレン化合物(3)との組成物で形成されてもよい。特に素子の優れた駆動電圧を示す点で、他の化合物との組成物で形成されていることが好ましく、その際ラジアレン化合物の組成率は0.1~20%がより好ましく、0.5~10%が更に好ましく、0.5~5%が特に好ましい。
【0090】
ラジアレン化合物(3)と他の化合物との組成物によって形成される層は、ラジアレン化合物(3)と他の化合物のそれぞれ単体を加熱し、同時に蒸着する共蒸着法で形成されてもよく、ラジアレン化合物(3)と他の化合物との混合物を加熱して蒸着してもよい。形成した層内のラジアレン化合物(3)の組成率を制御する観点で、共蒸着法で層を形成することが好ましい。
【0091】
ラジアレン化合物(3)と共に蒸着され、組成物を形成する化合物としては、前述の正孔注入材料、正孔輸送材料の具体例として示した化合物が好ましく、芳香族第三級アミン化合物がより好ましい。
[発光層4]
正孔輸送領域3と後述する電子輸送領域5との間には、発光層4が設けられている。
【0092】
発光層の材料としては、燐光発光材料、蛍光発光材料、熱活性化遅延蛍光発光材料が挙げられる。発光層では電子・正孔対が再結合することで電気的に励起子が発生し、その励起子が失活する際に光が生じる。
【0093】
発光層4は、単一の低分子材料または単一のポリマー材料からなっていてもよいが、より一般的には、ゲスト化合物でドーピングされたホスト材料からなっている。ゲスト材料としては蛍光性化合物、燐光性化合物、遅延蛍光性化合物等が挙げられる。発光は主としてゲスト材料から生じ、任意の色を発することができる。また発光層4は、詳細を後述するホウ素化合物(1)を含み得る。
【0094】
ホスト材料としては、例えば、ビフェニル基、フルオレニル基、トリフェニルシリル基、カルバゾール基、ピレニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、アントリル基を有する化合物が挙げられる。より具体的には、DPVBi(4,4’-ビス(2,2-ジフェニルビニル)-1,1’-ビフェニル)、BCzVBi(4,4’-ビス(9-エチル-3-カルバゾビニレン)1,1’-ビフェニル)、TBADN(2-ターシャルブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン)、ADN(9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン)、CBP(4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル)、CDBP(4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)-2,2’-ジメチルビフェニル)、2-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-9-[4-(4-フェニルフェニルキナゾリン-2-イル)カルバゾール、9,10-ビス(ビフェニル)アントラセン等が挙げられる。
【0095】
蛍光性化合物としては、例えば、ホウ素化合物(1)、アントラセン、ピレン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドン、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム、チアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタン化合物、カルボスチリル化合物、等が挙げられる。蛍光ドーパントはこれらから選ばれる2種以上を組み合わせたものであってもよい。
【0096】
燐光性化合物としては、例えば、イリジウム錯体、白金錯体、パラジウム錯体、オスミウム錯体等の金属錯体が挙げられる。
【0097】
蛍光性化合物、燐光性化合物の具体例としては、Alq3(トリス(8-ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム)、DPAVBi(4,4’-ビス[4-(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]ビフェニル)、ペリレン、ビス[2-(4-n-ヘキシルフェニル)キノリン](アセチルアセトナート)イリジウム(III)、Ir(PPy)(トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III))、およびFIrPic(ビス(3,5-ジフルオロ-2-(2-ピリジル)フェニル-(2-カルボキシピリジル)イリジウム(III)))等が挙げられる。
【0098】
熱活性化遅延蛍光発光材料は、前述のホスト材料またはゲスト材料いずれとしても用いることができる。また、熱活性化遅延蛍光発光材料は、それ自身が発光せず、熱活性化遅延蛍光発光材料と同時に発光層を形成する蛍光性化合物に効率的に励起エネルギーを受け渡す役割を担うこともできる。
【0099】
熱活性化遅延蛍光発光の具体例としては、ホウ素化合物(1)、4Cz-IPN(2,4,5,6-テトラ(9-カルバゾリル)-イソフタロニトリル)、5Cz-BN(2,3,4,5,6-ペンタ(9-カルバゾリル)-ベンゾニトリル)、DACTII(2-[3,6-ビス(ジフェニルアミノ)カルバゾール-9-イルフェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン)等が挙げられる。
【0100】
また、発光材料は発光層のみに含有されることに限定されるものではない。例えば、発光材料は、発光層に隣接した層(正孔輸送層5、または電子輸送層7)が含有していてもよい。これによってさらに有機電界発光素子の電流効率を高めることができる。
【0101】
発光層は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
<ホウ素化合物>
本開示の一態様にかかる、発光層に含まれ得るホウ素化合物は式(1)で示される。
【0102】
【化28】
【0103】
式(1)中、
環A、環B、環Cは、各々独立に、置換基を有していてもよい、
環構成原子数6~20の芳香族炭化水素環、
または環構成原子数5~20の芳香族複素環を表す;
Ra、Rb、Rcは、各々独立に、
重水素、
シアノ基、
炭素数1~20のアルキル基、
環構成原子数6~20の芳香族炭化水素基、
または環構成原子数5~20の複素芳香族基を表す;
a、b、cは、各々独立に、0~4の整数であり、
環Aと環Bは、酸素原子、硫黄原子、N-R’、RaまたはRbを介して連結してもよく、
、R、R’は、各々独立に、置換基を有していてもよい、
炭素数1~20のアルキル基、
環構成原子数6~20の芳香族炭化水素基、
または環構成原子数5~20の複素芳香族基を表す;
は、酸素原子、硫黄原子、置換してもよい窒素原子、Ra、またはRcを介して環Aまたは環Cと連結して環構造を形成してもよく、
は、酸素原子、硫黄原子、置換してもよい窒素原子、Rb、またはRcを介して環Bはたは環Cと連結して環構造を形成してもよい。
【0104】
以下、式(1)で示されるホウ素化合物を、化合物(1)と称することもある。化合物(1)に形成する環構造、置換基の定義、およびその好ましい具体例は、それぞれ以下のとおりである。
[環A~Cについて]
環A、環B、環Cは、各々独立に、置換基を有していてもよい、
環構成原子数6~20の芳香族炭化水素環、
環構成原子数5~20の芳香族複素環から選択される。
【0105】
環A、環B、環Cは、各々独立に、置換基を有していてもよい、環構成原子数6~18の芳香族炭化水素環または環構成原子数5~18の芳香族複素環が好ましく、環構成原子数6~12の芳香族炭化水素環または環構成原子数5~12の芳香族複素環がより好ましく、環構成原子数6~9の芳香族炭化水素環または環構成原子数5~9の芳香族複素環が更に好ましく、ベンゼン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾールがより好ましく、ベンゼンが特に好ましい。
【0106】
環Aと環Bは、酸素原子、硫黄原子、N-R’、後述のRaまたはRbを介して連結してもよく、環Aと環BはN-R’で連結しているか、連結されていない状態が好ましく、環Aと環Bは連結されていない構造がより好ましい。
[Ra、Rb、Rcについて]
Ra、Rb、Rcは、各々独立に、
重水素、
シアノ基、
炭素数1~20のアルキル基、
環構成原子数6~20の芳香族炭化水素基、
環構成原子数5~20の複素芳香族基から選択される。
【0107】
Ra、Rb、Rcは、各々独立に、重水素、炭素数1~20のアルキル基、環構成原子数5~20の複素芳香族基が好ましく、重水素、炭素数1~20のアルキル基がより好ましく、炭素数1~20のアルキル基が更に好ましい。
[a、b、cについて]
a、b、cは、各々独立に、0~4の整数であり、各々独立に0~2が好ましく、各々独立に0~1がより好ましく、1が更に好ましい。
[R、R、R’について]
、R、R’は、各々独立に、置換基を有していてもよい、
炭素数1~20のアルキル基、
環構成原子数6~20の芳香族炭化水素基、
または環構成原子数5~20の複素芳香族基を表す;
、R、R’は、各々独立に、置換基を有していてもよい環構成原子数6~20の芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい環構成原子数5~20の複素芳香族基が好ましく、置換基を有していてもよい環構成原子数6~20の芳香族炭化水素基がより好ましく、アルキル基で置換された環構成原子数6~20の芳香族炭化水素基が更に好ましく、アルキル基で置換されたフェニル基が特に好ましい。
【0108】
は、酸素原子、硫黄原子、置換してもよい窒素原子、Ra、またはRcを介して環Aまたは環Cと連結して環構造を形成してもよく、
は、酸素原子、硫黄原子、置換してもよい窒素原子、Rb、またはRcを介して環Bまたは環Cと連結して環構造を形成してもよい。
[電子輸送領域5]
発光層4と後述する陰極6との間には、電子輸送領域5が設けられており、陽極2側から、第1電子輸送層51、第2電子輸送層52、第3電子輸送層53がこの順に設けられた積層構造を形成してもよい。
【0109】
電子輸送領域5には、式(2)で表されるトリアジン化合物が含まれる。当該トリアジン化合物は、電子輸送領域に存在する複数の層にわたって含まれていてもよい。
【0110】
電子輸送領域5を形成する第1電子輸送層51、第2電子輸送層52、第3電子輸送層53は各々独立に、電子注入層、電子発生層、電子輸送層、正孔阻止層からなる群から選択される1つ以上の機能を有する。これらの機能については詳細を後述する。
【0111】
電子注入層は、陰極または電荷発生層から効率よく電子を注入する機能を有し、且つ隣接する層に効率的に電子を注入する機能を担う。
【0112】
電子注入層の材料の具体例としては、リチウム(Li)、カリウム(K)、セシウム(Cs)、イッテルビウム(Yb)等の金属、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF),フッ化カリウム(KF)、炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)等の無機塩、8-ヒドロキシキノリノラトリチウム(Liq)、ビス(8-ヒドロキシキノリノラト)亜鉛等の有機金属錯体、またはこれらと式(2)で表されるトリアジン化合物との組成物が挙げられる。
【0113】
電子輸送層は、電荷発生層、陰極、電子注入層から注入された電子を輸送し、隣接する層に電子を注入する機能を担う。
【0114】
正孔阻止層は、隣接層から当該層内に正孔が注入されることを阻止する機能を担う。特に発光層からの正孔注入を阻止することで、発光層内で発光に寄与する電荷の総数を多くすることが可能であり、ひいては有機電界発光素子の発光効率を高めることに寄与する。
【0115】
電子輸送層および正孔阻止層は式(2)で表されるトリアジン化合物を含み得る。電子輸送層および正孔阻止層の材料の具体例としては、トリアジン化合物(2)に加えてさらに従来公知の電子輸送材料を含んでいてもよい。従来公知の電子輸送材料としては、例えば、8-ヒドロキシキノリノラトリチウム(Liq)、ビス(8-ヒドロキシキノリノラト)亜鉛、ビス(8-ヒドロキシキノリノラト)銅、ビス(8-ヒドロキシキノリノラト)マンガン、トリス(8-ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム、トリス(8-ヒドロキシキノリノラト)ガリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリノラト)ベリリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリノラト)亜鉛、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)クロロガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(o-クレゾラート)ガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)-1-ナフトラートアルミニウム、またはビス(2-メチル-8-キノリノラト)-2-ナフトラートガリウム、2-[3-(9-フェナントレニル)-5-(3-ピリジニル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、および2-(4,’’-ジ-2-ピリジニル[1,1’:3’,1’’-テルフェニル]-5-イル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Bphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、BAlq(ビス(2-メチル-8-キノリノラト)-4-(フェニルフェノラート)アルミニウム)、およびビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリノラト)ベリリウム)、およびこれらの組成物等が挙げられる。また、これらの化合物とLiqをドープした組成物であってもよい。
<トリアジン化合物>
本開示の一態様にかかる、電子輸送領域に含まれるトリアジン化合物は、式(2)で示される:
【0116】
【化29】
【0117】
式(2)中、
Arは、炭素数1~6のアルキル基で置換されてもよい、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基を表し、
Arは、炭素数1~4のアルキル基で置換されてもよい、フェニル基、ピリジル基、フェニルピリジル基、ピリジルフェニル基、ビフェニリル基を表す。
Arは、炭素数1~4のアルキル基で置換されてもよい、フェニル基、ビフェニリル基を表す。
【0118】
以下、式(2)で示されるトリアジン化合物を、トリアジン化合物(2)と称することもある。トリアジン化合物(2)における置換基の定義、およびその好ましい具体例は、それぞれ以下のとおりである。
[Arについて]
Arは、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基から選択される。
Arは、優れた駆動電圧特性、電流効率特性を両立する点で、フェニル基、ビフェニリル基が好ましく、フェニル基、ビフェニル-4-イル基が更に好ましい。
[Arについて]
Arは、炭素数1~4のアルキル基で置換されてもよい、フェニル基、ピリジル基、フェニルピリジル基、ピリジルフェニル基、ビフェニリル基から選択される。
Arは、優れた駆動電圧特性、電流効率特性を両立する点で、フェニル基、ピリジル基、ビフェニリル基が好ましく、フェニル基、ビフェニリル基が更に好ましく、フェニル基が特に好ましい。
[Arについて]
Arは、炭素数1~4のアルキル基で置換されてもよい、フェニル基、ビフェニリル基から選択される。
Arは、優れた駆動電圧特性および電流効率特性を両立する点で、フェニル基、ビフェニル-2-イル基、ビフェニル-4-イル基が好ましい。
[トリアジン化合物(2)の好ましい例]
本開示の一態様であるトリアジン化合物(2)は下記化合物2-1から2-80のいずれか1つで表されるトリアジン化合物がより好ましい。
【0119】
【化30】
【0120】
【化31】
【0121】
【化32】
【0122】
【化33】
【0123】
中でも、式2-1、2-2、2-4、2-5、2-9、2-22、2-24で示されるトリアジン化合物は、特に素子の優れた駆動電圧特性、電流効率特性、効率変化特性を両立する点で好ましい。
[トリアジン化合物(2)の有機電界発光素子への適用について]
本開示の一態様にかかるトリアジン化合物(2)は、電子輸送領域に用いられる。電子輸送領域は複数の層からなる積層構造を形成していることが好ましく、この内、トリアジン化合物(2)は前述の電子輸送層、正孔阻止層として機能する層に用いられることがより好ましく、電子輸送層に用いられることが更に好ましい。
【0124】
トリアジン化合物(2)が電子輸送層に用いられる際、電子輸送層はトリアジン化合物(2)のみで形成されてもよく、他の化合物との組成物によって形成されてもよい。特に素子の優れた駆動電圧を示す点で、他の化合物との組成物で形成されていることが好ましく、その際トリアジン化合物(2)の重量組成率は20~80%がより好ましく、30~70%が更に好ましく、40~60%が特に好ましい。
【0125】
トリアジン化合物(2)と他の化合物との組成物によって形成される層は、トリアジン化合物(2)と他の化合物のそれぞれ単体を加熱し、同時に蒸着する共蒸着法で形成されてもよく、トリアジン化合物(2)と他の化合物との混合物を加熱して蒸着してもよい。形成した層内のトリアジン化合物(2)の組成率を制御する観点で、共蒸着法で層を形成することが好ましい。
【0126】
トリアジン化合物(2)と共に蒸着され、組成物を形成する化合物としては、前述の電子輸送および正孔阻止層に用いられる材料の具体例として示した化合物またはLiqが好ましく、Liqがより好ましい。
【0127】
なお、本開示の一態様にかかるトリアジン化合物(2)は、既知の反応(例えば、鈴木-宮浦クロスカップリング反応など)を適切に組み合わせることにより合成可能である。
【0128】
例えば、本開示の一態様にかかるトリアジン化合物(2)は、以下に示す反応式(a)~(c)のいずれか1つで示される製法に従って合成可能であるが、これらの例により何ら限定して解釈されるものではない。
【0129】
【化34】
【0130】
【化35】
【0131】
【化36】
【0132】
反応式(a)~(c)中、Ar、Ar、およびArは、式(1)と同じ定義である。
【0133】
Xは、各々独立して、脱離基を表す。脱離基としては、特に限定されるものではないが、例えば塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等が挙げられる。このうち、反応収率がよい点で臭素原子または塩素原子が好ましい。但し、原料の入手性からトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を用いた方が好ましい場合もある。
【0134】
Mは、各々独立して、金属含有基であるZnR、MgR、もしくはSn(R;または、ホウ素含有基であるB(OR;を表す。但し、RおよびRは、各々独立に、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表し;Rは、炭素数1から4のアルキル基またはフェニル基を表し;Rは水素原子、炭素数1から4のアルキル基またはフェニル基を表し;B(ORの2つのRは同一または異なっていてもよい。また、2つのRは一体となって酸素原子およびホウ素原子を含んで環を形成することもできる。
【0135】
ZnR、MgRとしては、ZnCl、ZnBr、ZnI、MgCl、MgBr、MgI等が例示できる。
【0136】
Sn(Rとしては、Sn(Me)、Sn(Bu)等が例示できる。
【0137】
B(ORとしては、B(OH)、B(OMe)、B(OPr)、B(OBu)等が例示できる。また、2つのRが一体となって酸素原子およびホウ素原子を含んで環を形成した場合のB(ORの例としては、特に限定されるものではないが、次の(I)~(VI)で表される基が例示でき、収率がよい点で(II)で表される基が望ましい。
【0138】
【化37】
【0139】
反応式(a)~(c)で示される製法について、反応式(b)で示される製法を例に挙げて、より詳細に説明する。反応式(b)で示される製法は、パラジウム触媒存在下、ArまたはArを含む有機金属化合物を順次反応に用いることでトリアジン化合物(2)を得ることを表している。ここで反応に用いるArまたはArを含む有機金属化合物は同時に用いて反応することも可能であり、またArを含む有機金属化合物用いて反応することで得られる中間生成物を一度単離し、その後、パラジウム触媒存在下、Arを含む有機金属化合物を用いて反応することでトリアジン化合物(2)を得ることもできる。また、Arを含む有機金属化合物を先に反応に用いることでもトリアジン化合物(2)を得ることもできる。
[陰極6]
電子輸送領域5を挟んで、陽極2と対抗する陰極6が設けられている。陰極6は本開示の一態様である有機電界発光素子に電流を流す際の陰極としての機能を為しえる。
【0140】
陽極2を通過した発光のみが取り出される構成の有機電界発光素子の場合、陰極6は任意の導電性材料から形成することができる。
【0141】
陰極6の材料としては、リチウム、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム、銀、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、インジウム-亜鉛酸化物(IZO;Indium Zinc Oxide)、リチウム/アルミニウム混合物、イッテルビウム等の希土類金属等が挙げられる。
【0142】
陰極6側のみから光を取り出す構成の有機電界発光素子の場合、インジウム-亜鉛酸化物(IZO;Indium Zinc Oxide)等の透明電極材料を用いるか、もしくは銀、アルミニウム、銀/マグネシウム混合物等の金属材料を、当該発光を十分に透過できる膜厚に形成することが挙げられる。
[各層の形成方法]
以上説明した電極(陽極、陰極)を除く各層は、それぞれの層の材料(必要に応じて結着樹脂などの材料、溶剤と共に)を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB(Langmuir-Blodgett method)法などの公知の方法によって薄膜化することにより、形成することができる。
【0143】
このようにして形成された各層の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、通常は1nm~5μmの範囲である。
【0144】
陽極および陰極は、電極材料を蒸着やスパッタリングなどの方法によって薄膜化することにより、形成することができる。蒸着やスパッタリングの際に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよく、蒸着やスパッタリングなどによって薄膜を形成した後、フォトリソグラフィーで所望の形状のパターンを形成してもよい。
【0145】
陽極2および陰極6の膜厚は、1μm以下であることが好ましく、5nm以上200nm以下であることがより好ましい。一般的に透過率の低い材料を、発光を取り出す側の電極に用いる場合、30nm以下に成膜することで透過率を確保でき、透明電極として作用させることが可能である。
【0146】
本開示の一態様にかかる有機電界発光素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。また、異なる発光色を有する本態様の有機電界発光素子を2種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。
【実施例0147】
以下、本開示を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例により何ら限定して解釈されるものではない。
【0148】
H-NMRスペクトルの測定は、Gemini200(バリアン社製)またはBruker ASCEND 400(400MHz;BRUKER製)を用いて行った。
【0149】
有機電界発光素子の発光特性は、室温下、作製した素子に直流電流を印加し、輝度計(製品名:BM-9,トプコンテクノハウス社製)を用いて評価した。
合成例-1(化合物2-1の合成)
【0150】
【化38】
【0151】
アルゴン雰囲気下、2-クロロ-4,6-ビス(ビフェニル-4-イル)-1,3,5-トリアジン(11.0g,26.2mmol)、5’-(5,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサボリナン-2-イル)-1,1’:3’,1’’:2’’,1’’’-クアテルフェニル(12.1g,28.8mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.91g,0.79mmol)および2M-リン酸カリウム水溶液(39.3mL)、をTHF(349mL)に懸濁し、3時間還流した。放冷後、反応混合物に水およびメタノールを加えて固体をろ取し、水およびメタノールで洗浄することで2-(1,1’:3’,1’’:2’’,1’’’-クアテルフェニル-5’-イル)-4,6-ビス(ビフェニル-4-イル)-1,3,5-トリアジン(2-1)を得た(収量17.9g,収率99%)。
合成例-2(化合物2-2の合成)
【0152】
【化39】
【0153】
アルゴン雰囲気下、2-(3-ブロモ-5-クロロフェニル)-4,6-ビス(ビフェニル-4-イル)-1,3,5-トリアジン(5.75g,10.0mmol)、2-ビフェニルボロン酸(4.75g,24.0mmol)、3M-炭酸カリウム水溶液(16mL)、酢酸パラジウム(22.4mg,0.1mmol)および2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(XPhos,95.3mg,0.2mmol)をTHF(100mL)に懸濁し、96時間還流した。放冷後、反応混合物に水およびメタノールを加えて固体をろ取し、水およびメタノールで洗浄することで2-(1,1’:2’,1’’:3’’,1’’’:2’’’,1’’’’-クインクフェニル-5’’-イル)-4,6-ビス(ビフェニル-4-イル)-1,3,5-トリアジン(2-2)を得た(収量7.18g,収率94%)。
合成例-3(化合物2-22の合成)
【0154】
【化40】
【0155】
アルゴン雰囲気下、1,3-ジブルモ-5-クロロベンゼン(20.0g,74.0mmol)、2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-ビフェニル(42.5g,151.7mmol)、3M-炭酸カリウム水溶液(110mL)およびテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(2.56g,2.22mmol)をTHF(245mL)に懸濁し、122時間還流した。放冷後、反応混合物にトルエンを加えて有機層を分液抽出した。得られた有機層を減圧留去し、を得られた固体をトルエンで再結晶することですることで5’’-クロロ-(1,1’:2’,1’’:3’’,1’’’:2’’’,1’’’’-クインクフェニルを得た(収量29.7g,収率96%)。
【0156】
【化41】
【0157】
アルゴン雰囲気下、5’’-クロロ-(1,1’:2’,1’’:3’’,1’’’:2’’’,1’’’’-クインクフェニル(29.7g,71.2mmol)、ビス(ネオペンチルグリコラート)ジボロン(17.7g,78.3mmol)、酢酸カリウム(0.16g,0.71mmol)、酢酸パラジウム(20.9g,213.5mmol)および2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(XPhos,0.67mg,1.42mmol)をTHF(356mL)に懸濁し、27時間還流した。その後、溶媒を減圧留去し、得られた残差にメタノールで加えた。得られた固体をろ取し、減圧乾燥することで、目的の5’’-(5,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサボリナン-2-イル)-1,1’:2’,1’’:3’’,1’’’:2’’’,1’’’’-クインクフェニルを得た(収量14.7g、42収率)。
【0158】
【化42】
【0159】
アルゴン雰囲気下、2-クロロ-4-(ビフェニル-4-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(5.56g,16.2mmol)、5’’-(5,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサボリナン-2-イル)-1,1’:2’,1’’:3’’,1’’’:2’’’,1’’’’-クインクフェニル(24.0g,48.5mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.56g,0.49mmol)および2M-リン酸カリウム水溶液(24.0mL)、をTHF(324mL)に懸濁し、23時間還流した。放冷後、反応混合物に水およびメタノールを加えて固体をろ取し、水およびメタノールで洗浄した。得られた固体をトルエンで再結晶することで2-(1,1’:2’,1’’:3’’,1’’’:2’’’,1’’’’-クインクフェニル-5’’-イル)-4-(ビフェニル-4-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(2-22)を得た(収量11.1g,収率99%)。
合成例-4(化合物2-24の合成)
【0160】
【化43】
【0161】
アルゴン雰囲気下、3-ブロモ-5-クロロ-1,1’:2’,1’’-ターフェニル(g,mmol)、4-ビフェニルボロン酸(g,mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(g,mmol)および2M-リン酸カリウム水溶液(58.9mL)、をTHF(393mL)に懸濁し、21時間還流した。放冷後、有機層を分液抽出し、得られた有機層を減圧留去した。得られた残渣にエタノールを添加して得られた固体をろ取することで、目的の5’’-クロロ-1,1’:2’,1’’:3’’,1’’’:4’’’,1’’’’-クインクフェニルを得た(収量24g、収率100%)
【0162】
【化44】
【0163】
アルコン雰囲気下、5’’-クロロ-1,1’:2’,1’’:3’’,1’’’:4’’’,1’’’’-クインクフェニル(23.1g,55.5mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(16.9g,66.5mmol)、酢酸カリウム(16.3g,166.4mmol)、酢酸パラジウム(0.25g,1.11mmol)および2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(XPhos,1.06mg,2.22mmol)をTHF(555mL)に懸濁し、19時間還流した。その後、溶媒を減圧留去し、得られた残渣にメタノールで加えた。得られた固体をろ取し、減圧乾燥することで、目的の5’’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1,1’:2’,1’’:3’’,1’’’:4’’’,1’’’’-クインクフェニルを得た(収量22.0g、収率78%)
【0164】
【化45】
【0165】
アルゴン雰囲気下、2-クロロ-4-(ビフェニル-4-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(13.5g,39.3mmol)、5’’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1,1’:2’,1’’:3’’,1’’’:4’’’,1’’’’-クインクフェニル(22.0g,43.2mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.91g,0.79mmol)および2M-リン酸カリウム水溶液(58.9mL)、をTHF(393mL)に懸濁し、21時間還流した。放冷後、反応混合物に水およびメタノールを加えて固体をろ取し、水およびメタノールで洗浄した。得られた固体をトルエンで再結晶することで2-(1,1’:2’,1’’:3’’,1’’’:4’’’,1’’’’-クインクフェニル-5’’-イル)-4-(ビフェニル-4-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(2-24)を得た(収量21.1g,収率85%)。
【0166】
また、トリアジン化合物2-4については、合成例-1で示される製造法と同様の手段により合成した。
【0167】
有機電界発光素子の作製と性能評価に用いる化合物の構造式およびその略称を以下に示した。
【0168】
【化46】
【0169】
実施例-1(図1参照)
(基板1、陽極2の用意)
陽極をその表面に備えた基板として、2mm幅の酸化インジウム-スズ(ITO)膜(膜厚110nm)がストライプ状にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用意した。ついで、この基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄にて表面処理を行った。
(真空蒸着の準備)
洗浄後の表面処理が施された基板上に、真空蒸着法で各層の真空蒸着を行い、各層を積層形成した。
【0170】
まず、真空蒸着槽内に前記ガラス基板を導入し、1.0×10-4Paまで減圧した。そして、以下の順で、各層の成膜条件に従ってそれぞれ作製した。
(第1正孔輸送層31の作製)
昇華精製したHTL-1と本開示の一態様である化合物3-1を0.15nm/秒の速度で10nm成膜し、第1正孔輸送層31を作製した。
(第2正孔輸送層32の作製)
昇華精製したHTL-1を0.15nm/秒の速度で85nm成膜し、第2正孔輸送層32を作製した。
(第3正孔輸送層33の作製)
昇華精製したEBL-1を0.15nm/秒の速度で5nm成膜し、第3正孔輸送層33を作製した。
(発光層4の作製)
昇華精製したBH-1と化合物1-1とを95:5(質量比)の割合で20nm成膜し、発光層4を作製した。成膜速度は0.18nm/秒であった。
(第1電子輸送層51の作製)
昇華精製したHBL-1を0.05nm/秒の速度で6nm成膜し、第1電子輸送層51を作製した。
(第2電子輸送層52の作製)
化合物2-1およびLiqを50:50(質量比)の割合で25nm成膜し、第2電子輸送層52を作製した。成膜速度は0.15nm/秒であった。
(第3電子輸送層53の作製)
イッテルビウムを2nm成膜し、第3電子輸送層53を作製した。成膜速度は0.01nm/秒であった。
(陰極6の作製)
最後に、基板上のITOストライプと直交するようにメタルマスクを配し、陰極6を成膜した。陰極は、銀/マグネシウム(質量比9/1)と銀とを、この順番で、それぞれ12nmと90nmとで成膜し、2層構造とした。銀/マグネシウムの成膜速度は0.5nm/秒、銀の成膜速度は成膜速度0.2nm/秒であった。
【0171】
以上により、図1に示すような発光面積4mm有機電界発光素子100を作製した。なお、それぞれの膜厚は、触針式膜厚測定計(DEKTAK、Bruker社製)で測定した。
【0172】
さらに、この素子を酸素および水分濃度1ppm以下の窒素雰囲気グローブボックス内で封止した。封止は、ガラス製の封止キャップと成膜基板(素子)とを、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製)を用いて行った。
【0173】
上記のようにして作製した有機電界発光素子に直流電流を印加し、輝度計(製品名:BM-9、トプコンテクノハウス社製)を用いて発光特性を評価した。発光特性として、電圧を印加し、輝度1000cd/mを示した時の駆動電圧(V)、電流効率(cd/A)を測定した。なお、駆動電圧、電流効率は、後述の比較例-1における結果を基準値(100)とした相対値である。また、下記定義に基づいて効率変化を算出した。
【0174】
効率変化=(1000cd/m時の電流効率)/(10cd/m時の電流効率)

上式で算出される数値が1.0に近いほど広い輝度領域において効率の変化が小さいことを示している。
【0175】
さらに上記のようにして作製した素子を輝度1000cd/mから50時間連続駆動した後に、再度電圧を印加し、輝度1000cd/mを示した時の連続駆動後電流効率(cd/A)測定した。また、下記定義に基づいて連続駆動後効率変化を算出した。
【0176】
連続駆動後効率変化=
(1000cd/m時の連続駆動後電流効率)/(1000cd/m時の電流効率)

上式で算出される数値が1.0に近いほど連続駆動させた前後で素子の効率の変化が小さいことを示している。

得られた測定結果を表1に示す。
実施例-2
素子実施例-1において、化合物2-1代わりに化合物2-2を用いた以外は、実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表1に示す。
実施例-3
素子実施例-1において、化合物2-1代わりに化合物2-22を用いた以外は、実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表1に示す。
実施例-4
素子実施例-1において、化合物2-1代わりに化合物2-24を用いた以外は、実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表1に示す。
実施例-6
素子実施例-1において、化合物2-1代わりに化合物2-4を用いた以外は、実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表1に示す。
比較例-1
素子実施例-1において、化合物2-1代わりにETL-1を用いた以外は、実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表1に示す。
比較例-5
素子実施例-1において、化合物2-1代わりにETL-2を用いた以外は、実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表1に示す。
比較例-6
素子実施例-1において、化合物2-1代わりにETL-3を用いた以外は、実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表1に示す。
比較例-7
素子実施例-1において、化合物2-1代わりにETL-4を用いた以外は、実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表1に示す。
比較例-8
素子実施例-1において、化合物2-1代わりにETL-5を用いた以外は、実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表1に示す。
比較例-9
素子実施例-1において、化合物2-1代わりにETL-6を用いた以外は、実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表1に示す。
【0177】
【表1】
【0178】

実施例-5
実施例-1において、EBL-1の代わりにEBL-2を、化合物1-1の代わりにBD-1を、化合物2-1の代わりに化合物2-4を、イッテルビウムの代わりにLiqを用いた以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表2に示す。
実施例-6
実施例-5において、化合物2-4の代わりに2-24を用いた以外は実施例-5と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた結果を表2に示す。
比較例-2
実施例-5において、化合物2-4の代わりにETL-1を用いた以外は実施例-5と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた結果を表2に示す。
比較例-3
実施例-5において、化合物2-4の代わりにETL-2を用いた以外は実施例-5と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた結果を表2に示す。
比較例-4
実施例-5において、化合物2-4の代わりにETL-3を用いた以外は実施例-5と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた結果を表2に示す。
比較例-4
実施例-5において、化合物2-4の代わりにETL-3を用いた以外は実施例-5と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた結果を表2に示す。
比較例-10
実施例-5において、BD-1の代わりにHIL-1を用いた以外は実施例-5と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた結果を表2に示す。
比較例-11
実施例-5において、BD-1の代わりにHIL-1を、化合物2-4の代わりに2-24を用いた以外は実施例-5と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0179】
【表2】
【0180】

表1~2より、本開示の一態様にかかる正孔輸送領域が前記式(3)で表されるラジアレン化合物を含有し、電子輸送領域が前記式(2)で表されるトリアジン化合物を含有する構成は従来公知の構成と比べて優れた駆動電圧特性および電流効率特性だけでなく、効率変化および連続駆動後効率変化が小さいことを両立する有機電界発光素子を提供することができる。
【符号の説明】
【0181】
1 基板
2 陽極
3 正孔輸送領域
31 第1正孔輸送層
32 第2正孔輸送層
33 第3正孔輸送層
4 発光層
5 電子輸送領域
51 第1電子輸送層
52 第2電子輸送層
53 第3電子輸送層
6 陰極
100 有機電界発光素子
図1