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特開2024-73404結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材、その他熱交配管被覆部材とダクト被覆部材、これらを用いた配管構造とダクト被覆構造、前記保温カバー部材に用いる不織布及びその不織布の保温カバー部材への使用方法、並びに前記保温カバー部材の熱交配管被覆部材への使用方法
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  • 特開-結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材、その他熱交配管被覆部材とダクト被覆部材、これらを用いた配管構造とダクト被覆構造、前記保温カバー部材に用いる不織布及びその不織布の保温カバー部材への使用方法、並びに前記保温カバー部材の熱交配管被覆部材への使用方法 図1
  • 特開-結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材、その他熱交配管被覆部材とダクト被覆部材、これらを用いた配管構造とダクト被覆構造、前記保温カバー部材に用いる不織布及びその不織布の保温カバー部材への使用方法、並びに前記保温カバー部材の熱交配管被覆部材への使用方法 図2
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  • 特開-結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材、その他熱交配管被覆部材とダクト被覆部材、これらを用いた配管構造とダクト被覆構造、前記保温カバー部材に用いる不織布及びその不織布の保温カバー部材への使用方法、並びに前記保温カバー部材の熱交配管被覆部材への使用方法 図4
  • 特開-結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材、その他熱交配管被覆部材とダクト被覆部材、これらを用いた配管構造とダクト被覆構造、前記保温カバー部材に用いる不織布及びその不織布の保温カバー部材への使用方法、並びに前記保温カバー部材の熱交配管被覆部材への使用方法 図5A
  • 特開-結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材、その他熱交配管被覆部材とダクト被覆部材、これらを用いた配管構造とダクト被覆構造、前記保温カバー部材に用いる不織布及びその不織布の保温カバー部材への使用方法、並びに前記保温カバー部材の熱交配管被覆部材への使用方法 図5B
  • 特開-結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材、その他熱交配管被覆部材とダクト被覆部材、これらを用いた配管構造とダクト被覆構造、前記保温カバー部材に用いる不織布及びその不織布の保温カバー部材への使用方法、並びに前記保温カバー部材の熱交配管被覆部材への使用方法 図6
  • 特開-結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材、その他熱交配管被覆部材とダクト被覆部材、これらを用いた配管構造とダクト被覆構造、前記保温カバー部材に用いる不織布及びその不織布の保温カバー部材への使用方法、並びに前記保温カバー部材の熱交配管被覆部材への使用方法 図7
  • 特開-結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材、その他熱交配管被覆部材とダクト被覆部材、これらを用いた配管構造とダクト被覆構造、前記保温カバー部材に用いる不織布及びその不織布の保温カバー部材への使用方法、並びに前記保温カバー部材の熱交配管被覆部材への使用方法 図8
  • 特開-結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材、その他熱交配管被覆部材とダクト被覆部材、これらを用いた配管構造とダクト被覆構造、前記保温カバー部材に用いる不織布及びその不織布の保温カバー部材への使用方法、並びに前記保温カバー部材の熱交配管被覆部材への使用方法 図9
  • 特開-結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材、その他熱交配管被覆部材とダクト被覆部材、これらを用いた配管構造とダクト被覆構造、前記保温カバー部材に用いる不織布及びその不織布の保温カバー部材への使用方法、並びに前記保温カバー部材の熱交配管被覆部材への使用方法 図10
  • 特開-結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材、その他熱交配管被覆部材とダクト被覆部材、これらを用いた配管構造とダクト被覆構造、前記保温カバー部材に用いる不織布及びその不織布の保温カバー部材への使用方法、並びに前記保温カバー部材の熱交配管被覆部材への使用方法 図11
  • 特開-結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材、その他熱交配管被覆部材とダクト被覆部材、これらを用いた配管構造とダクト被覆構造、前記保温カバー部材に用いる不織布及びその不織布の保温カバー部材への使用方法、並びに前記保温カバー部材の熱交配管被覆部材への使用方法 図12
  • 特開-結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材、その他熱交配管被覆部材とダクト被覆部材、これらを用いた配管構造とダクト被覆構造、前記保温カバー部材に用いる不織布及びその不織布の保温カバー部材への使用方法、並びに前記保温カバー部材の熱交配管被覆部材への使用方法 図13
  • 特開-結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材、その他熱交配管被覆部材とダクト被覆部材、これらを用いた配管構造とダクト被覆構造、前記保温カバー部材に用いる不織布及びその不織布の保温カバー部材への使用方法、並びに前記保温カバー部材の熱交配管被覆部材への使用方法 図14
  • 特開-結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材、その他熱交配管被覆部材とダクト被覆部材、これらを用いた配管構造とダクト被覆構造、前記保温カバー部材に用いる不織布及びその不織布の保温カバー部材への使用方法、並びに前記保温カバー部材の熱交配管被覆部材への使用方法 図15
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073404
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材、その他熱交配管被覆部材とダクト被覆部材、これらを用いた配管構造とダクト被覆構造、前記保温カバー部材に用いる不織布及びその不織布の保温カバー部材への使用方法、並びに前記保温カバー部材の熱交配管被覆部材への使用方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/34 20110101AFI20240522BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20240522BHJP
   D04H 1/4382 20120101ALI20240522BHJP
   D04H 1/54 20120101ALI20240522BHJP
   F24F 13/22 20060101ALI20240522BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
F24F1/34
B32B5/24 101
D04H1/4382
D04H1/54
F24F13/22
F24F13/02 H
F24F1/0007 361Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023196245
(22)【出願日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2022184456
(32)【優先日】2022-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】小澤 英史
(72)【発明者】
【氏名】河井 功一
(72)【発明者】
【氏名】海野 太郎
(72)【発明者】
【氏名】三本 大貴
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊司
(72)【発明者】
【氏名】竹内 剛
【テーマコード(参考)】
3L050
3L054
3L080
4F100
4L047
【Fターム(参考)】
3L050BD00
3L054BA10
3L054BC02
3L054BC03
3L054BC10
3L080AE01
3L080AE05
4F100AK01A
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK07B
4F100AK42B
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA08A
4F100DA11
4F100DG15B
4F100DG15C
4F100DG18B
4F100DJ01A
4F100DJ02A
4F100EC032
4F100EC182
4F100EJ17
4F100GB07
4F100GB51
4F100JB16B
4F100JB16C
4F100JD15B
4F100JL01
4F100JL07
4F100YY00B
4F100YY00C
4L047AA14
4L047AA17
4L047AA21
4L047AA27
4L047AA28
4L047AB02
4L047AB07
4L047BA08
4L047BA09
4L047BB01
4L047BB06
4L047BB09
4L047CA05
4L047CA07
4L047CA19
4L047CB06
4L047CB07
4L047CC14
(57)【要約】
【課題】エアコン等の冷媒用配管が縦配管であったりする場合にも、配管表面における結露水の滴下を抑制ないし防止することを目的とする。
【解決手段】樹脂発泡体の一方の表面に不織布が融着または接着により固定されていて、前記不織布は、熱可塑性樹脂繊維に高吸水性樹脂繊維を所定量混合した不織布から構成され、前記熱可塑性樹脂繊維の少なくも一部が相互に融着または接着されているものであり、さらに前記高吸水性樹脂繊維を10質量%以上80質量%以下で、前記熱可塑性樹脂繊維を20質量%以上90質量%以下含むことを特徴する樹脂発泡体の表面に不織布を接合した結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂発泡体の表面に不織布を配置した結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材であって、前記樹脂発泡体が独立気泡を有するポリエチレン系樹脂発泡体であり、当該樹脂発泡体の一方の表面に前記不織布が融着または接着により固定されていて、
前記不織布は、熱可塑性樹脂繊維に高吸水性樹脂繊維を所定量混合した単層の不織布から構成され、前記熱可塑性樹脂繊維の少なくも一部が相互に融着または接着されているものであり、
前記不織布は前記高吸水性樹脂繊維を10質量%以上80質量%以下含み、さらに残部として前記熱可塑性樹脂繊維を20質量%以上90質量%以下含むことを特徴する樹脂発泡体の表面に不織布を接合した結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
【請求項2】
前記不織布に用いる前記熱可塑性樹脂繊維の繊維径が5~30μmの範囲であり、前記不織布の製品厚さは、0.5~2.0mmで、前記不織布の目付量は30~300g/mであることを特徴とする請求項1に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
【請求項3】
前記不織布の総質量に対して、前記不織布の基材樹脂繊維である熱可塑性樹脂繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、もしくはポリプロピレンの単繊維、またはこれらの芯鞘構造繊維、あるいはこれらいずれかの繊維に他の繊維を混合した繊維からなり、前記不織布は当該熱可塑性樹脂繊維の少なくとも一部が相互に融着または接着されているものであり、前記ポリエチレン系樹脂発泡体は難燃剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
【請求項4】
前記不織布の重力に対抗して水分を保持する水分保持力パラメータが0.70以上で、所定の条件により求めた保水量が7.0g以上を満足する不織布であって、
前記保持力パラメータは、寸法 長さ200mm×幅25mmの短冊状試験片の長手方向の中間位置の表面に幅方向に横断する標線を設け、試験片を水平にした状態で標線部分に着色した試験液400μLを滴下して、
さらに滴下後直ぐに試験片を垂直方向5分間保持した後、
試験片の標線からの上昇距離と試験片の標線からの下降距離を用いた指標値である試験片の標線からの上方への試験液の到達点までの上昇距離の試験片幅方向の平均値を、試験片の標線からの下方への試験液の到達点までの下降距離の幅方向の平均値で割ったパラメータであり、
さらに、保水量は、長さ150mm×直径25mmの冷媒用配管の外周に前記保温カバー部材を貼り付けた冷媒用配管を水20gを加えた容器中に挿入後保持して、さらにこの容器を恒温恒湿槽中にて23℃×30%で、6時間保持後容器を取り出して、
除水して除水後の質量から求めた保水量であることを特徴とする、
請求項1に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
【請求項5】
樹脂発泡体の表面に不織布を配置した結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材であって、前記樹脂発泡体が独立気泡を有するポリエチレン系樹脂発泡体であり、当該樹脂発泡体の一方の表面に前記不織布が融着または接着により固定されていて、
前記不織布は、2層の積層構造を有する積層構造不織布であって、
前記不織布の第1層は、熱可塑性樹脂繊維のみから構成され、前記熱可塑性樹脂繊維の少なくも一部が相互に融着または接着され、
前記不織布の第2層は、熱可塑性樹脂繊維に高吸水性樹脂繊維を所定量混合した不織布から構成され、前記熱可塑性樹脂繊維の少なくも一部が相互に融着または接着されているものであり、
前記第2層の不織布は、前記第2層を構成する不織布の総質量に対して、高吸水性樹脂繊維を10質量%以上80質量%以下含み、さらに残部として前記熱可塑性樹脂繊維を20質量%以上90質量%以下含むものであり、
前記不織布の第1層または第2層のいずれかが前記樹脂発泡体の表面に接合される、
ことを特徴とする結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
【請求項6】
前記不織布の第1層と第2層の合計の不織布厚さは0.5~2.0mmで、前記第1層と第2層の合計の目付量は30~300g/mであり、
前記第1層の不織布の厚さと目付量が前記第2層の不織布の厚さと目付量より小さく、
前記第1層または第2層の不織布に用いる前記熱可塑性樹脂繊維の繊維径が5~30μmの範囲であることを特徴とする請求項5に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
【請求項7】
前記不織布の第1層と第2層の合計の不織布厚さは0.5~2.0mmで、前記第1層と第2層の合計の目付量は30~300g/mであり、前記第1層の不織布厚さは0.1~0.5mmで、前記第1層の目付量は5~50g/mであり、前記第2層の目付量は25~250g/mであり、前記第2層の不織布の厚さは、0.4~1.5mmであり、
前記第1層の不織布の厚さと目付量が前記第2層の不織布の厚さと目付量より小さく、
前記第1層または第2層の不織布に用いる前記熱可塑性樹脂繊維の繊維径が5~30μmの範囲であることを特徴とする請求項5に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
【請求項8】
前記不織布の基材樹脂繊維である熱可塑性樹脂繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、もしくはポリプロピレンの単繊維、またはこれらの芯鞘構造繊維、あるいはこれらいずれかの繊維に他の繊維を混合した繊維のいずれかからなり、前記不織布は当該熱可塑性樹脂繊維の少なくとも一部が相互に融着または接着されているものであり、前記ポリエチレン系樹脂発泡体は難燃剤を含むことを特徴とする請求項5に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
【請求項9】
前記不織布の重力に対抗して水分を保持する水分保持力パラメータが0.70以上で、所定の条件により求めた保水量が7.0g以上を満足する不織布であって、
前記保持力パラメータは、寸法 長さ200mm×幅25mmの短冊状試験片の長手方向の中間位置の表面に幅方向に横断する標線を設け、試験片を水平にした状態で標線部分に着色した試験液400μLを滴下して、
さらに滴下後直ぐに試験片を垂直方向で5分間保持した後、
試験片の標線からの上昇距離と試験片の標線からの下降距離を用いた指標値である試験片の標線からの上方への試験液の到達点までの上昇距離の試験片幅方向の平均値を、試験片の標線からの下方への試験液の到達点までの下降距離の幅方向の平均値で割ったパラメータであり、
さらに、保水量は、長さ150mm×直径25mmの冷媒管の外周に前記保温カバー部材を貼り付けた冷媒管を、水20gを加えた容器中に挿入後保持して、さらにこの容器を恒温恒湿槽中にて23℃×30%で、6時間保持後容器を取り出して、
除水して除水後の質量から求めた保水量であることを特徴とする、請求項5に結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
【請求項10】
請求項5~請求項9のいずれかに記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材により配管を被覆した場合の、前記保温用カバー部材とこれと配管の長手方向に隣接して配置される保温用カバー部材との前記保温用カバー部材同士の隙間を覆うように配置することが可能な継ぎ目用被覆部材であって、前記継ぎ目用被覆部材は発泡体の一方の面の粘着剤上に離型紙が貼合され、発泡体の他方の面に不織布が被覆されていて、前記継ぎ目用被覆部材は、前記不織布の発泡体への貼合面を外周にして前記粘着剤層を保温用カバー部材の外周に貼合させてカバー部材の継ぎ目に用いて結露水の滴下防止または滴下抑制を行うことが可能なことを特徴とする継ぎ目用被覆部材。
【請求項11】
請求項5~請求項9のいずれかに記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材を配管の90°曲がり部を被覆できるように、所定の大きさの相互に背中合わせの形状に対向して折り曲げ後に略L字状の形状になるようにプレス成形することで得ることができる部材の不織布の発泡体に対する貼合面を外表面として前記90°曲がり部のエルボー部または配管を直接90°曲げを行なった90°曲がり部の近傍を被覆することで結露水の滴下防止または滴下抑制を行うことが可能なことを特徴とするエルボー被覆部材。
【請求項12】
請求項5~請求項9のいずれかに記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材により、表面にポリエチレンフィルムが貼合された既設配管を覆うカバー部材が中央で両端部が対向するように熱交換器配管に略円筒状に巻き付けられて、さらに前記保温用カバー部材が不織布表面を外表面として両端部が対向するように、前記既設の従来型配管カバーに被せる被覆部材の外表面を覆うように巻きつけられることで結露水の滴下防止または滴下抑制を行うことが可能なことを特徴とする既設の従来型配管カバーに被せる被覆部材。
【請求項13】
請求項5~請求項9のいずれかに記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材によりダクト外表面を覆うことが可能なことを特徴するダクト被覆部材。
【請求項14】
請求項1または請求項5に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材が冷媒用配管の外周に被覆された少なくとも水平配管、斜め配管、垂直配管、曲がり配管のいずれかの配管を含む配管構造において、前記結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材が前記単層の不織布の表面または積層構造の不織布の第1層または第2層のいずれかの表面を外表面として、それぞれの前記保温カバー部材により、冷媒用配管が被覆されていることを特徴とする配管構造。
【請求項15】
請求項1または請求項5に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材が2本の冷媒用配管のそれぞれの配管の外周に被覆され、前記保温カバー部材を相互に熱融着または接着しためがね型断面配管における少なくとも水平配管、斜め配管、垂直配管、曲がり配管のいずれかの配管を含む配管構造において、前記配管構造のそれぞれの冷媒用配管の外周に前記結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材の前記単層の不織布の表面または積層構造の不織布の第1層または第2層のいずれかの表面を外表面としてそれぞれ前記それぞれの冷媒用配管が被覆され、前記それぞれの冷媒用配管を相互に対向させて前記不織布の外表面を熱融着または接着させることで、2本の配管をめがね型に一体化させたものであることを特徴とする配管構造。
【請求項16】
1本または複数本の冷媒用配管、ドレン管と配線が用意され、請求項1または請求項5に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材の内部に1または複数本の冷媒用配管、ドレン管と配線の配管が収納された少なくとも水平配管、斜め配管、垂直配管、曲がり配管のいずれかの配管を含む配管構造において、
前記単層の不織布の表面または積層構造の不織布の第1層または第2層のいずれかの表面を外表面として、前記結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材の外周面形状が断面略円筒形状となるように前記冷媒用配管、ドレン管と配線とを結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材の内部に収納できるように前記保温カバー部材で囲うことで、前記配管に内装される部品を前記結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材の内部に収納することを特徴とする冷媒用配管の配管構造。
【請求項17】
請求項5~請求項9の記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材を断面略矩形状の熱交換器用鉄製ダクトの外表面全体に、前記外表面全体の外周を覆うように被覆したことを特徴とする熱交換器用ダクトの結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材による被覆構造。
【請求項18】
不織布は、熱可塑性樹脂繊維に高吸水性樹脂繊維を所定量含む不織布から構成され、前記不織布の重力に対抗して水分を保持する保持力パラメータが0.70以上で、所定の条件により求めた保水量が7.0g以上を満足する不織布であって、
前記不織布の製品厚さは、0.5~2.0mmで、前記不織布の目付量は30~300g/mで、
前記不織布は、繊維径が5~30μmの範囲の少なくも一部が相互に融着または接着された熱可塑性樹脂繊維に高吸水性樹脂繊維を所定量混合した不織布から構成され、
前記不織布は、前記不織布の総質量に対して高吸水性繊維を10質量%以上80質量%以下含み、残部として前記熱可塑性樹脂繊維の割合が20質量%以上90質量%以下含む不織布であり、
前記保持力パラメータは、寸法 長さ200mm×幅25mmの短冊状試験片の長手方向の中間位置の表面に幅方向に横断する標線を設け、試験片を水平にした状態で標線部分に着色した試験液400μLを滴下して、
さらに滴下後直ぐに試験片を垂直方向5分間保持した後、
試験片の標線からの上昇距離と試験片の標線からの下降距離を用いた指標値である試験片の標線からの上方への試験液の到達点までの上昇距離の試験片幅方向の平均値を、試験片の標線からの下方への試験液の到達点までの下降距離の幅方向の平均値で割ったパラメータであり、
さらに、保水量は、長さ150mm×直径25mmの冷媒管の外周に前記保温カバー部材を貼り付けた冷媒管を、水20gを加えた容器中に挿入後保持して、さらにこの容器を恒温恒湿槽中にて23℃×30%で、6時間保持後容器を取り出して、
除水して除水後の質量から求めた保水量であることを特徴とする、
結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材に用いる不織布。
【請求項19】
不織布は、熱可塑性樹脂繊維に高吸水性樹脂繊維を所定量含む不織布から構成され、前記不織布の重力に対抗して水分を保持する保持力パラメータが0.70以上で、所定の条件により求めた保水量が7.0g以上を満足する不織布であって、
前記不織布は、第1層と第2層の不織布からなる積層構造を有する積層構造不織布であって、
前記不織布全体の厚さは、0.5~2.0mmで、前記不織布全体の目付量は30~300g/mで、さらに、前記第1層の不織布の厚さは、0.1~0.5mmで、前記第1層の不織布の目付量は5~50g/mであり、
前記第1層の不織布の厚さと目付量が前記第2層の不織布の厚さと目付量より小さく、
前記不織布の第1層は、繊維径が5~30μmの範囲の少なくも一部が相互に融着または接着された熱可塑性樹脂繊維のみから構成され、
さらに第2層を構成する不織布が第1層と同様の熱可塑性樹脂繊維を基材繊維として
前記第2層の不織布は、繊維径が5~30μmの範囲の少なくも一部が相互に融着または接着された熱可塑性樹脂繊維である基材樹脂繊維に高吸水性樹脂繊維を所定量混合した不織布から構成され、
前記第2層を形成する不織布は、前記第2層の不織布の繊維の総質量に対して高吸水性樹脂繊維を10質量%以上80質量%含み、残部として前記熱可塑性樹脂繊維を20質量%以上90質量%以下含む不織布であり、
前記保持力パラメータは、寸法 長さ200mm×幅25mmの短冊状試験片の長手方向の中間位置の表面に幅方向に横断する標線を設け、試験片を水平にした状態で標線部分に着色した試験液400μLを滴下して、
さらに滴下後直ぐに試験片を垂直方向5分間保持した後、
試験片の標線からの上昇距離と試験片の標線からの下降距離を用いた指標値である試験片の標線からの上方への試験液の到達点までの上昇距離の試験片幅方向の平均値を、試験片の標線からの下方への試験液の到達点までの下降距離の幅方向の平均値で割ったパラメータであり、
さらに、保水量は、長さ150mm×直径25mmの冷媒管の外周に前記保温カバー部材を貼り付けた冷媒管を、水20gを加えた容器中に挿入後保持して、さらにこの容器を恒温恒湿槽中にて23℃×30%で、6時間保持後容器を取り出して、
除水して除水後の質量から求めた保水量であることを特徴とする、
結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材に用いる不織布。
【請求項20】
前記熱可塑性樹脂繊維は、ポリエチレン、ポリプロピレン、もしくはポリエチレンテレフタレートの繊維、またはこれらの芯鞘構造繊維、あるいはこれらのいずれかの繊維に他の熱可塑性樹脂繊維を混合した繊維のいずれかからなるこれらの樹脂繊維の少なくとも一部が相互に融着または接着されている繊維からなることを特徴とする請求項18または請求項19に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材に用いる不織布。
【請求項21】
請求項18に記載の積層構造の不織布を、前記樹脂発泡体が独立気泡を有するポリエチレン系樹脂発泡体の表面に接合して結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材として使用する使用方法であり、前記不織布の第1層または第2層のいずれかを外側に向けて、前記外側に向けた層の残りの層を接合面として、当該樹脂発泡体の一方の表面に、融着または接着により固定されるように前記不織布と前記樹脂発泡体が接合されることを特徴とする積層構造不織布の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材への使用方法。
【請求項22】
請求項5~請求項9のいずれかに記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材を、保温用カバー部材同士の隙間に用いる継ぎ目用被覆部材、エルボー被覆部材、既設の従来型配管カバーに被せるカバー部材に使用することを特徴とする結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材の熱交配管被覆部材への使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材、その他熱交配管被覆部材とダクト被覆部材、これらを用いた配管構造とダクト被覆構造、前記保温カバー部材に用いる不織布、及びその不織布の保温カバー部材への使用方法、並びに前記保温カバー部材の熱交配管被覆部材への使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の暑熱化とエアコン空調の効率化によって、隠蔽部冷媒配管において発生した結露水の滴下による問題が顕在化している。これは、結露水の滴下によって、天井クロスや床に剥がれや黒ずみができるという問題である。このような熱交換器の配管のカバー部材としては、ポリエチレン発泡体の少なくとも一方の表面にポリエチレンやポリプロピレンフィルムを貼合して、貼合した樹脂発泡体の表面をエンボス加工した材料が空調機器の冷媒などの配管用保温カバー部材として使用されていた。しかし、このような保温カバー部材の場合には、冷媒用配管の外周に使用される保温カバー部材の表面に結露が生じる。この結露水は、天井裏の配管スペース等に滴下することで、天井裏などの配管スペースにカビが発生する原因となる。対策の目的や用途は異なるが、参考となるカバー部材や不織布の技術として下記の各発明が挙げられる。
【0003】
特許文献1の発明には、金属製ダクト本体や合成樹脂製可撓管やアルミニウム製可撓管や周囲に被覆層を有するダクト本体や可撓管などの周囲の被覆層に所望厚さの被覆材を収容した被覆体をダクト本体や可撓管などの周囲に被覆し、その被覆体が収容した所望厚さのグラスクロス、不織布ウール、綿状パルプなどの結露防止または抑制可能な保温保冷用被覆材に吸水性が強い高分子吸水材を滲み込ませて、保水率を高めて結露を無くすようにした結露防止または抑制可能な保温保冷用被覆層を有するダクトなどの管構造体が開示されている。
特許文献1の構造体は、前記保温保冷用被覆層としてのグラスクロス、不織布ウール、綿状パルプなどの結露防止または抑制可能な保温保冷用被覆層に弗素樹脂、ジルコニウムなどの耐火性の強い素材を含ませて防火性を強化した表面被覆層で保温保冷用被覆層を覆う管構造体である。特許文献1の管構造体は、高吸水性樹脂を含侵させた不織布を使用して構造体の表面を不織布で覆ったものであるが、本願発明のように、ポリエチレン系樹脂発泡体の表面に不織布を貼合したものでないし、本願発明のように高吸水性樹脂繊維を使用したものでもないため、両者は被覆材の構造が相違する。したがって、不織布の水分保持力パラメータのような結露水の所定箇所への凝集を防止して拡散により水分の蒸散を促進することに関する記載はない。
【0004】
特許文献2には、四角形状の熱可塑性樹脂発泡体表面に合成樹脂シートからなる外皮が積層されたシートであって、該積層シートの該外皮は、該発泡体シートの一方の端部で、該発泡体シート端部から突出して設けられてオーバーラップ部を形成している。このオーバーラップ部は該外皮に塗布された粘着剤層で接着可能に、離型シートを介して積層された構造を有し、該粘着剤層の一部は保護層で被覆されていることを特徴とする断熱パイプカバーが開示されている。
ここで、特許文献2の発明は、配管への断熱パイプカバー取付け施工時、作業用手袋をした状態でも、保護層と離型シートとの相乗効果により容易に施工できる上に、施工後の切れ目部分の熱劣化を著しく改善した構造を有する断熱パイプカバーおよびそれを用いた被覆方法および断熱パイプ被覆構造体を提供しようとするものである。
特許文献2の断熱パイプカバーの目的は、断熱パイプカバーの取り付けの簡素化と耐熱性の向上を目的とするものであり、結露水の滴下防止または滴下抑制を目的としたものでもない。そのため、明細書には、保護層として熱可塑性樹脂フィルムや熱可塑性樹脂シートのみが開示されているが、不織布に関する記載は全く存在しない。
すなわち、特許文献2には、保護層または離型シートとして使用できる可能性のある材料の1例として不織布を1に記載したものの、吸水性のない熱可塑性樹脂シート樹脂や樹脂フィルムと紙、織編物、不織布などの吸水性のある材料を同列に取り扱っており、保護層を形成する表面被覆材として使用できる材料であれば、いずれの材料でも良いことから、不織布の構造、材料の特徴に関する記載は一切存在しない。
特許文献2の発明には、発泡体を用いた断熱パイプカバーが開示されているものの、施工が簡便で、発泡体の切れ目(端部の接合部)の熱劣化を防止することを目的としたものであり、合成繊維に高吸水性樹脂繊維を混合した不織布を発泡体の表面に貼合することで結露水の滴下防止または滴下抑制を目的とした保温カバー部材ではない。まして、不織布に関しては具体的な構成が全く開示されておらず、保護層の表面被材としての樹脂フィルムと同列に扱っており、不織布の構造や材料特性に配慮して不織布に特別の機能を付与することなどは意図した発明ではない。したがって、特許文献2には、結露水の凝集を防止して拡散により水分の蒸散を促進する不織布の水分保持力パラメータにより、不織布の保水性と拡散蒸発性のバランスを図ることは全く開示されておらず、そのような動機付けもない。
【0005】
特許文献3には、各種フィルムと不織布とを組み合わせ、保温カバー部材の保温効果と吸水性を研究した結果、ポリオレフィン製の多孔性フィルムと高吸水性ポリマーを含む不織布が積層され、フィルム面に滴下した水滴を多孔性フィルムの孔から滴下させて、その結露水吸収速度が60秒以内であることを特徴とする農業用の吸水性保温カバー部材が開示されている。
特許文献3の農業用の吸水性保温カバー部材は主として、温室栽培の苺の畝の苺の間に重ねて敷き、その上に苺が結実するように設置されるもので、地面からの水分の蒸発を抑制するものであり、主として保水性を重視した発明である。
特許文献3の保温カバー部材は、多孔性樹脂フィルムに高吸水性ポリマーを含む不織布を積層した農業用の保温材の発明で、苺の品質を維持するために、フィルム面に滴下した水滴の吸収速度が60秒以内とすることで結露水の蒸散を防止して結露水の保水を図るものであるが、本願発明のように、不織布による結露水の保水と蒸散のバランスを図ったものではない。
すなわち、特許文献3の発明は、不織布の表面を多孔性樹脂フィルムにて覆うことで、不織布にて、結露水を保水すると同時に結露水の蒸散を防止して苺の品質低下を防止するものである。
特許文献3の発明は、樹脂発泡体と不織布との積層構造でなく、多孔性樹脂フィルムと不織布の積層構造であり、両者は発明品の構造が相違する。さらに、特許文献3の発明は、表面が樹脂フィルムで覆われているため、吸水した水分を保水しやすいことはあっても、樹脂フィルムの被覆層が蒸発を防止するため、本願のような結露の防止のために蒸発を促進する目的に使用するには阻害要因がある。そのため、不織布の水分保持力パラメータのような結露水の凝集を防止して拡散により水分の蒸散を促進することに関する記載は全くない。また、特許文献3では、高吸水樹脂性繊維であるベルオアシスの混合率が1質量%~10質量%の範囲内であるのに対して、本願発明の製品は、後述するように、高吸水樹脂性繊維を含む層における高吸水樹脂性繊維の混合率が10質量%~80質量%であることでも相違する。
【0006】
特許文献4には、高吸水性樹脂を主たる成分とする吸収層、高吸水性樹脂を担持する不織布状基材、及び高吸水性樹脂相互間と前記高吸水性樹脂及び基材間とを結合する結合剤成分の3成分からなる多機能シート状吸収体が記載されている。この特許文献4の発明は、複層構造を有する多機能吸収体で、例えば子供用オムツ、大人用オムツ、女性用失禁用品、血液吸収剤、母乳パット等の吸収体製品に利用されるものである。
特許文献4の吸収シートは、シート状吸収体の表面上において、吸収層とそれを担持する不織布状基材とからなる吸収領域相(A相)と、前記高吸水性樹脂がほとんど存在しない、前記不織布状基材のみからなる拡散・アクイジション領域相(B相)とが相互に区分できるように分布させたことを特徴とする複相構造を有する多機能シート状吸収体であることが開示されている。特許文献4は、2層の積層構造不織布であり、1層は高吸水性樹脂を含むこととこれと積層する不織布は合成樹脂繊維から構成される。
これに対して、特許文献4のA層の高吸水性樹脂層には、粒状の高吸水性樹脂を用いるため、不織布構成繊維と粒状の高吸水性樹脂とを結合剤により結合する必要があるが、本願発明は、高吸水性樹脂繊維を使用するため、骨格繊維と高吸水性樹脂繊維同士の絡み合いにより結合剤を用いる必要がない。B層の不織布層には、水分の透過性を向上させるため、嵩高でレジリエンス値(弾性回復率)の高いアクイジション層で構成され、水分の拡散・取得を目的としているのに対して、本願発明の高吸水性樹脂を含まない層は、水分を拡散・蒸発させることを目的としている。さらに結露水の凝集を防止して拡散により水分の蒸散を促進する不織布の水分保持力パラメータにより、不織布の保水性と拡散蒸発性のバランスを図ることを目的としているが、特許文献4には、このような記載はなく、水分の拡散と高吸水性樹脂層への取得を目的としている点が相違する。吸水性を有する不織布自体の構造が異なるとともに、保温カバー部材として、不織布のみを用いるとした場合には、樹脂発泡体による断熱効果が得られないため、不織布層における結露水の量が増加する点が相違する。
【0007】
特許文献5には、水分に対して表面濡れ特性をもつ合成繊維を主成分とする不織布ウェブからなる第一層と、第一層よりも著しく水分保有度の高い、形態安定化された高吸水性ポリマーシートからなる第二層とが一体化されて、厚さ方向に吸水能力勾配をもつ吸水性複合体が開示されている。
また、特許文献5には、第一層に供給された液体は第一層に瞬間的に受容されるが、ここに保有されることなく速やかに通過し、第二層に吸い込まれて安定に吸収されるので、第一層は常に次の排泄を待機している状態になり、オムツおよび生理用ナプキンを含む多くの用途に有利に利用できることが記載されている。
特許文献5によれば、多層化シートの層の相互間を連結して、第二層の主吸収体層を繊維化して、積層構造の不織布の形態安定性が向上することで、液体の吸収効率がきわめて高い液体吸収後にも優れた形態安定性を保持することができるシート状複合吸収体を提供することが可能になる。
特許文献5の不織布を積層したシート状複合吸収体は、第一層が水分に対して表面濡れ特性をもつ合成繊維を主成分とする不織布ウェブから形成され、第二層は、ポリプロピレン繊維を主成分とする骨格に前駆体繊維を水流交絡により結合することにより得られた複合不織布に高吸収性処理を施すことで、水分保有度の高い形態安定化された高吸水性ポリマーシートを形成したものである。
その結果、特許文献5の吸水性複合体は、第一層と第二層との間には吸水能力勾配を有し、この吸水能力勾配により、排泄された液体は第一層に瞬間的に受容されるが、ここに保有されることなく速やかに通過し、第二層に吸い込まれて安定に吸収される。
特許文献5は、積層構造体としてみた場合に、第一層が第二層への浸透性が高い方が好ましく、第一層の不織布表面方向への拡散性に関しては記載がない。
特許文献5の発明は、本願発明のエアコン等の冷媒配管に結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材とは異なり、積層構造不織布のみからなる吸水性の良いおむつの発明であり、両者は発明の目的が異なる。
また、両者は、樹脂発泡体と不織布の積層構造であるか、不織布のみにより構成される構造であるかという構造的相違を有している。本願発明は、樹脂発泡体と不織布の積層構造であるため、不織布のみの発明である特許文献5の発明に対して、樹脂発泡体による保護効果と断熱効果が重畳される点が相違する。また、特許文献5に記載の吸水性樹脂繊維は、明細書に記載の給水量からすると、本願で規定する自重の10倍以上の吸水能力を有する高吸水性樹脂ではない。さらに、特許文献5の不織布は、保水性のみではなく、結露水の凝集を防止して拡散により水分の蒸散を促進する不織布の水分保持力パラメータにより、不織布の保水性と拡散蒸発性のバランスを図ることが考慮されるが、特許文献5の不織布は、第一層と第二層との間の吸水能力勾配と第二層の保水性に関する記載はあるものの、水分を拡散させて蒸散する作用機構に関する記載はなく保護部材外表面からの拡散を促進して水分を蒸発させることで結露防止を目的とすることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09-049587号公報
【特許文献2】特開平09-001710号公報
【特許文献3】特開平09-300511号公報
【特許文献4】特開2000-201975号公報
【特許文献5】特開平07-155594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
エアコンなどの熱交換器の冷媒用配管やドレン管には、表面にポリエチレンフィルムを貼合して貼合面をエンボス加工したポリエチレン樹脂発泡体が、これらの配管を被覆する保温カバー部材として使用されることが考慮される。しかし、この場合には、使用環境が厳しい場合には結露する問題がある。ダクトや配管に高吸水性樹脂を含む不織布を直接貼合することで結露を防止する方法が提案されうるが、不織布のみのカバー部材の場合には、発泡体表面に貼合するポリエチレンフィルムの代わりに断熱性に優れる不織布を貼合した構造体として、断熱性と保水能力を高めて配管の結露防止または抑制対策とすることが考えられた。
しかしながら、このような発泡体の表面に不織布を配置してエンボス加工を行った保温カバー部材であっても、縦配管の長さが厳しい部分では、マンションやビルの梁や立壁を乗り越えるような場合、重力の影響で結露水が滴下することがある。結露水が滴下すると、その部分や滴下部の近傍にカビ類や菌類が発生して周囲の環境が不衛生になる。
そこで本発明は、エアコン等の冷媒用配管が縦配管のような結露水が滴下しやすい配管の場合や、ダクトカバーにおいて、表面における結露水の滴下を抑制ないし防止することができる結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材、熱交配管被覆部材とダクト被覆部材、これらを用いた配管構造とダクト被覆構造、前記保温カバー部材に用いる不織布及びその不織布の保温カバー部材への使用方法、並びに前記保温カバー部材の熱交配管被覆部材への使用方法を提供する。
ここで、本発明においては、熱交配管チーズ被覆部材とは、継ぎ目用被覆部材、エルボー被覆部材、既設従来型配管カバーに被せる被覆部材などの配管部材を意味する。必要に応じて、チーズ被覆部材を含めてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の目的に鑑み、実用配管において結露水が滴下する過酷な使用環境においても、少なくとも骨格構造を構成する熱可塑性樹脂繊維に高吸水性樹脂繊維を混合した不織布(好ましくは本発明において規定した水分保持力パラメータと保水性試験における保水量が所定の値を満足する不織布)を、ポリエチレン系樹脂発泡体の表面に貼合して使用した場合に結露水が滴下しにくくなることを見出した。この理由は必ずしも明らかではないが、不織布に高吸水性樹脂繊維を配合することで、保水性が高まることに加え、不織布内での水分の拡散や蒸発性が好適化され、上記のような優れた効果につながったものと推定される。本発明はこの新規な知見に基づいてなされたものであり、
結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材、熱交配管被覆部材とダクト被覆部材、これらを用いた配管構造とダクト被覆構造、前記保温カバー部材に用いる不織布及びその不織布の前記保温カバー部材への使用方法、並びに前記保温カバー部材の熱交配管被覆部材としての継ぎ目用被覆部材、エルボー被覆部材、チーズ被覆部材、既設の従来型配管カバーに被せる被覆部材などの使用方法を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の手段からなる。
【0011】
(1)樹脂発泡体の表面に不織布を配置した結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材であって、前記樹脂発泡体が独立気泡を有するポリエチレン系樹脂発泡体であり、当該樹脂発泡体の一方の表面に前記不織布が融着または接着により固定されていて、
前記不織布は、熱可塑性樹脂繊維に高吸水性樹脂繊維を所定量混合した単層の不織布から構成され、前記熱可塑性樹脂繊維の少なくも一部が相互に融着または接着されているものであり、
前記不織布は前記高吸水性樹脂繊維を10質量%以上80質量%以下含み、さらに残部として前記熱可塑性樹脂繊維を20質量%以上90質量%以下含むことを特徴する樹脂発泡体の表面に不織布を接合した結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
ここで、(1)において、発明に使用する不織布が高吸水性樹脂繊維を10質量%以上80質量%以下含むことで結露水の滴下防止または滴下抑制が可能になり、さらに前記不織布が熱可塑性樹脂繊維を20質量%以上90質量%以下含むことで、前記不織布が吸水した水分を拡散・蒸発させるとともに、高吸水性樹脂繊維を含む不織布の機械的強度や樹脂発泡体との融着または接着強度を確保することができる。
(2)前記不織布に用いる前記熱可塑性樹脂繊維の繊維径が5~30μmの範囲であり、前記不織布の製品厚さは、0.5~2.0mmで、前記不織布の目付量は30~300g/mであることを特徴とする(1)に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
(3)前記不織布の総質量に対して、前記不織布の基材樹脂繊維である熱可塑性樹脂繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、もしくはポリプロピレンの単繊維、またはこれらの芯鞘構造繊維、あるいはこれらいずれかの繊維に他の繊維を混合した繊維からなり、前記不織布は当該熱可塑性樹脂繊維の少なくとも一部が相互に融着または接着されているものであり、前記ポリエチレン系樹脂発泡体は難燃剤を含むことを特徴とする(1)に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
(4)前記不織布の重力に対抗して水分を保持する水分保持力パラメータが0.70以上で、所定の条件により求めた保水量が7.0g以上を満足する不織布であって、
前記保持力パラメータは、寸法 長さ200mm×幅25mmの短冊状試験片の長手方向の中間位置の表面に幅方向に横断する標線を設け、試験片を水平にした状態で標線部分に着色した試験液400μLを滴下して、
さらに滴下後直ぐに試験片を垂直方向5分間保持した後、
試験片の標線からの上昇距離と試験片の標線からの下降距離を用いた指標値である試験片の標線からの上方への試験液の到達点までの上昇距離の試験片幅方向の平均値を、試験片の標線からの下方への試験液の到達点までの下降距離の幅方向の平均値で割ったパラメータであり、
さらに、保水量は、長さ150mm×直径25mmの冷媒用配管の外周に前記保温カバー部材を貼り付けた冷媒用配管を水20gを加えた容器中に挿入後保持して、さらにこの容器を恒温恒湿槽中にて23℃×30%で、6時間保持後容器を取り出して、除水して除水後の質量から求めた保水量であることを特徴とする、
(1)に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
【0012】
(5)樹脂発泡体の表面に不織布を配置した結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材であって、前記樹脂発泡体が独立気泡を有するポリエチレン系樹脂発泡体であり、当該樹脂発泡体の一方の表面に前記不織布が融着または接着により固定されていて、
前記不織布は、2層の積層構造を有する積層構造不織布であって、
前記不織布の第1層は、熱可塑性樹脂繊維のみから構成され、前記熱可塑性樹脂繊維の少なくも一部が相互に融着または接着され、
前記不織布の第2層は、熱可塑性樹脂繊維に高吸水性樹脂繊維を所定量混合した不織布から構成され、前記熱可塑性樹脂繊維の少なくも一部が相互に融着または接着されているものであり、
前記第2層の不織布は、前記第2層を構成する不織布の総質量に対して、高吸水性樹脂繊維を10質量%以上80質量%以下含み、さらに残部として前記熱可塑性樹脂繊維を20質量%以上90質量%以下含むものであり、
前記不織布の第1層または第2層のいずれかが前記樹脂発泡体の表面に接合される、
ことを特徴とする結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
ここで、(5)において、発明に使用する第2層を形成する不織布が第2層を構成する不織布の総質量に対して、高吸水性樹脂繊維を10質量%以上80質量%以下含むことで結露水の滴下防止または滴下抑制が可能になり、さらに前記不織布が熱可塑性樹脂繊維を20質量%以上90質量%以下含むことで、第2層において不織布が吸水した水分を拡散・蒸発させるとともに、第2層の不織布の機械的強度や樹脂発泡体との融着または接着強度を確保することができる。
(6)前記不織布の第1層と第2層の合計の不織布厚さは0.5~2.0mmで、前記第1層と第2層の合計の目付量は30~300g/mであり、
前記第1層の不織布の厚さと目付量が前記第2層の不織布の厚さと目付量より小さく、
前記第1層または第2層の不織布に用いる前記熱可塑性樹脂繊維の繊維径が5~30μmの範囲であることを特徴とする(5)に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
(7)前記不織布の第1層と第2層の合計の不織布厚さは0.5~2.0mmで、前記第1層と第2層の合計の目付量は30~300g/mであり、前記第1層の不織布厚さは0.1~0.5mmで、前記第1層の目付量は5~50g/mであり、前記第2層の目付量は25~250g/mであり、前記第2層の不織布の厚さは、0.4~1.5mmであり、
前記第1層の不織布の厚さと目付量が前記第2層の不織布の厚さと目付量より小さく、
前記第1層または第2層の不織布に用いる前記熱可塑性樹脂繊維の繊維径が5~30μmの範囲であることを特徴とする(5)に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
(8)前記不織布の基材樹脂繊維である熱可塑性樹脂繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、もしくはポリプロピレンの単繊維、またはこれらの芯鞘構造繊維、あるいはこれらいずれかの繊維に他の繊維を混合した繊維のいずれかからなり、前記不織布は当該熱可塑性樹脂繊維の少なくとも一部が相互に融着または接着されているものであり、前記ポリエチレン系樹脂発泡体は難燃剤を含むことを特徴とする(5)に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
【0013】
(9)前記不織布の重力に対抗して水分を保持する水分保持力パラメータが0.70以上で、所定の条件により求めた保水量が7.0g以上を満足する不織布であって、
前記保持力パラメータは、寸法 長さ200mm×幅25mmの短冊状試験片の長手方向の中間位置の表面に幅方向に横断する標線を設け、試験片を水平にした状態で標線部分に着色した試験液400μLを滴下して、
さらに滴下後直ぐに試験片を垂直方向で5分間保持した後、
試験片の標線からの上昇距離と試験片の標線からの下降距離を用いた指標値である試験片の標線からの上方への試験液の到達点までの上昇距離の試験片幅方向の平均値を、試験片の標線からの下方への試験液の到達点までの下降距離の幅方向の平均値で割ったパラメータであり、
さらに、保水量は、長さ150mm×直径25mmの冷媒管の外周に前記保温カバー部材を貼り付けた冷媒管を、水20gを、加えた容器中に挿入後保持して、さらにこの容器を恒温恒湿槽中にて23℃×30%で、6時間保持後容器を取り出して、
除水して除水後の質量から求めた保水量であることを特徴とする、(5)に結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
(10)(5)~(9)のいずれかに記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材により配管を被覆した場合の、前記保温用カバー部材とこれと配管の長手方向に隣接して配置される保温用カバー部材との前記保温用カバー部材同士の隙間を覆うように配置することが可能な継ぎ目用被覆部材であって、前記継ぎ目用被覆部材は発泡体の一方の面の粘着剤上に離型紙が貼合され、発泡体の他方の面に不織布が貼合されていて、前記継ぎ目用被覆部材は、前記不織布の発泡体への貼合面を外周にして前記粘着剤層を保温用カバー部材の外周に貼合させてカバー部材の継ぎ目に用いて結露水の滴下防止または滴下抑制を行うことが可能なことを特徴とする継ぎ目用被覆部材。
(11)(5)~(9)のいずれかに記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材を配管の90°曲がり部を被覆できるように、所定の大きさの相互に背中合わせの形状に対向して折り曲げ後に略L字状の形状になるようにプレス成形することで得ることができる部材の不織布の発泡体に対する貼合面を外表面として前記90°曲がり部のエルボー部または配管を直接90°曲げを行なった90°曲がり部の近傍を被覆することで結露水の滴下防止または滴下抑制を行うことが可能なことを特徴とするエルボー被覆部材。
(12)(5)~(9)のいずれかに記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材により、表面にポリエチレンフィルムが貼合された既設配管を覆うカバー部材が中央で両端部が対向するように熱交換器配管に略円筒状に巻き付けられて、さらに前記保温用カバー部材が不織布表面を外表面として両端部が対向するように、前記既設の従来型配管カバーに被せる被覆部材の外表面を覆うように巻きつけられることで結露水の滴下防止または滴下抑制を行うことが可能なことを特徴とする既設の従来型配管カバーに被せる被覆部材。
(13)(5)~(9)のいずれかに記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材によりダクト外表面を覆うことが可能なことを特徴するダクト被覆部材。
(14)(1)または(5)に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材が冷媒用配管の外周に被覆された少なくとも水平配管、斜め配管、垂直配管、曲がり配管のいずれかの配管を含む配管構造において、前記結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材が前記単層の不織布の表面または積層構造の不織布の第1層または第2層のいずれかの表面を外表面として、それぞれの前記保温カバー部材により、冷媒用配管が被覆されていることを特徴とする配管構造。
(15)(1)または(5)に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材が2本の冷媒用配管のそれぞれの配管の外周に被覆され、前記保温カバー部材を相互に熱融着または接着しためがね型断面配管における少なくとも水平配管、斜め配管、垂直配管、曲がり配管のいずれかの配管を含む配管構造において、前記配管構造のそれぞれの冷媒用配管の外周に前記結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材の前記単層の不織布の表面または積層構造の不織布の第1層または第2層のいずれかの表面を外表面としてそれぞれ前記それぞれの冷媒用配管が被覆され、前記それぞれの冷媒用配管を相互に対向させて前記不織布の外表面を熱融着または接着させることで、2本の配管をめがね型に一体化させたものであることを特徴とする配管構造。
(16)1本または複数本の冷媒用配管、ドレン管と配線が用意され、(1)または(5)に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材の内部に1または複数本の冷媒用配管、ドレン管と配線の配管が収納された少なくとも水平配管、斜め配管、垂直配管、曲がり配管のいずれかの配管を含む配管構造において、
前記単層の不織布の表面または積層構造の不織布の第1層または第2層のいずれかの表面を外表面として、前記結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材の外周面形状が断面略円筒形状となるように前記冷媒用配管、ドレン管と配線とを結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材の内部に収納できるように前記保温カバー部材で囲うことで、前記配管に内装される部品を前記結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材の内部に収納することを特徴とする冷媒用配管の配管構造。
【0014】
(17)(5)~(9)のいずれかに記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材を断面略矩形状の熱交換器用鉄製ダクトの外表面全体に前記外表面全体の外周を覆うように被覆したことを特徴とする熱交換器用ダクトの結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材による被覆構造。
(18)不織布は、熱可塑性樹脂繊維に高吸水性樹脂繊維を所定量含む不織布から構成され、前記不織布の重力に対抗して水分を保持する保持力パラメータが0.70以上で、所定の条件により求めた保水量が7.0g以上を満足する不織布であって、
前記不織布の製品厚さは、0.5~2.0mmで、前記不織布の目付量は30~300g/mで、
前記不織布は、繊維径が5~30μmの範囲の少なくも一部が相互に融着または接着された熱可塑性樹脂繊維に高吸水性樹脂繊維を所定量混合した不織布から構成され、
前記不織布は、前記不織布の総質量に対して高吸水性繊維を10質量%以上80質量%以下含み、残部として前記熱可塑性樹脂繊維の割合が20質量%以上90質量%以下含む不織布であり、
前記保持力パラメータは、寸法 長さ200mm×幅25mmの短冊状試験片の長手方向の中間位置の表面に幅方向に横断する標線を設け、試験片を水平にした状態で標線部分に着色した試験液400μLを滴下して、
さらに滴下後直ぐに試験片を垂直方向5分間保持した後、
試験片の標線からの上昇距離と試験片の標線からの下降距離を用いた指標値である試験片の標線からの上方への試験液の到達点までの上昇距離の試験片幅方向の平均値を、試験片の標線からの下方への試験液の到達点までの下降距離の幅方向の平均値で割ったパラメータであり、
さらに、保水量は、長さ150mm×直径25mmの冷媒管の外周に前記保温カバー部材を貼り付けた冷媒管を、水20gを加えた容器中に挿入後保持して、さらにこの容器を恒温恒湿槽中にて23℃×30%で、6時間保持後容器を取り出して、
除水して除水後の質量から求めた保水量であることを特徴とする、
結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材に用いる不織布。
(19)不織布は、熱可塑性樹脂繊維に高吸水性樹脂繊維を所定量含む不織布から構成され、前記不織布の重力に対抗して水分を保持する保持力パラメータが0.70以上で、所定の条件により求めた保水量が7.0g以上を満足する不織布であって、
前記不織布は、第1層と第2層の不織布からなる積層構造を有する積層構造不織布であって、
前記不織布全体の厚さは、0.5~2.0mmで、前記不織布全体の目付量は30~300g/mで、さらに、前記第1層の不織布の厚さは、0.1~0.5mmで、前記第1層の不織布の目付量は5~50g/mであり、
前記第1層の不織布の厚さと目付量が前記第2層の不織布の厚さと目付量より小さく、
前記不織布の第1層は、繊維径が5~30μmの範囲の少なくも一部が相互に融着または接着された熱可塑性樹脂繊維のみから構成され、
さらに第2層を構成する不織布が第1層と同様の熱可塑性樹脂繊維を基材繊維として
前記第2層の不織布は、繊維径が5~30μmの範囲の少なくも一部が相互に融着または接着された熱可塑性樹脂繊維である基材樹脂繊維に高吸水性樹脂繊維を所定量混合した不織布から構成され、
前記第2層を形成する不織布は、前記第2層の不織布の繊維の総質量に対して高吸水性樹脂繊維を10質量%以上80質量%含み、残部として前記熱可塑性樹脂繊維を20質量%以上90質量%以下含む不織布であり、
前記保持力パラメータは、寸法 長さ200mm×幅25mmの短冊状試験片の長手方向の中間位置の表面に幅方向に横断する標線を設け、試験片を水平にした状態で標線部分に着色した試験液400μLを滴下して、
さらに滴下後直ぐに試験片を垂直方向5分間保持した後、
試験片の標線からの上昇距離と試験片の標線からの下降距離を用いた指標値である試験片の標線からの上方への試験液の到達点までの上昇距離の試験片幅方向の平均値を、試験片の標線からの下方への試験液の到達点までの下降距離の幅方向の平均値で割ったパラメータであり、
さらに、保水量は、長さ150mm×直径25mmの冷媒管の外周に前記保温カバー部材を貼り付けた冷媒管を、水20gを加えた容器中に挿入後保持して、さらにこの容器を恒温恒湿槽中にて23℃×30%で、6時間保持後容器を取り出して、
除水して除水後の質量から求めた保水量であることを特徴とする、
結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材に用いる不織布。
【0015】
(20)前記熱可塑性樹脂繊維は、ポリエチレン、ポリプロピレン、もしくはポリエチレンテレフタレートの繊維、またはこれらの芯鞘構造繊維、あるいはこれらのいずれかの繊維に他の熱可塑性樹脂繊維を混合した繊維のいずれかからなるこれらの樹脂繊維の少なくとも一部が相互に融着または接着されている繊維からなることを特徴とする(18)または(19)に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材に用いる不織布。
(21)(18)に記載の積層構造の不織布を、前記樹脂発泡体が独立気泡を有するポリエチレン系樹脂発泡体の表面に接合して結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材として使用する使用方法であり、前記不織布の第1層または第2層のいずれかを外側に向けて、前記外側に向けた層の残りの層を接合面として、当該樹脂発泡体の一方の表面に、融着または接着により固定されるように前記不織布と前記樹脂発泡体が接合されることを特徴とする積層構造不織布の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材への使用方法。
(22)(5)~(9)のいずれかに記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材を、保温用カバー部材同士の隙間に用いる継ぎ目用被覆部材、エルボー被覆部材、チーズ被覆部材、既設の従来型配管カバーに被せる被覆部材に使用することを特徴とする結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材の熱交配管被覆部材への使用方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材、継ぎ目用被覆部材、エルボー被覆部材、既設の従来型配管カバーに被せる被覆部材、及びダクト被覆部材とこれを用いた配管構造及び被覆構造、これに用いる前記保温カバー部材への使用方法、並びに前記保温カバー部材の、熱交用配管部品(継ぎ目用被覆部材、エルボー被覆部材、既設の従来型配管カバーに被せる被覆部材)への使用方法によれば、エアコンなどの冷媒用配管が縦配管のような結露水が滴下しやすい配管や、金属ダクト(鉄製ダクト)の場合にも結露水の滴下を抑制または防止することができる。なお、本発明の効果は、重力の影響に抗して、不織布に吸水した水分を拡散・蒸発させることで生ずる結露水の蒸散による水分の減少作用と、骨格構造繊維に混合された高吸水性樹脂繊維による保水作用との両者を好適化することで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の好ましい実施形態に係る配管構造(単管)10を模式的に示した一部切欠斜視図(a)およびX-X矢視断面図(b)である。
図2】本発明の別の好ましい実施形態に係る配管構造(めがね型配管)20を模式的に示した一部切欠斜視図(a)およびY-Y矢視断面図(b)である。
図3】本発明のさらに別の好ましい実施形態に係る2層の不織布層を有する配管構造30を模式的に示した断面図である。
図4図1に示した実施形態の滴下防止または抑制用保温カバー部材の内部構造を模式的に(特に繊維と気泡の構造を誇張して)示した拡大断面図である。
図5A図3に示した2層の不織布を有する実施形態の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材の内部構造を模式的に(特に繊維と気泡の構造を誇張して)示した拡大断面図であり、(a)高吸水性樹脂繊維を内層に含む態様を示す。
図5B図3に示した2層の不織布を有する実施形態の変形例に係る滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材の内部構造を模式的に(特に繊維と気泡の構造を誇張して)示した拡大断面図であり、(b)高吸水性樹脂繊維を外層に含む態様を示す。
図6】本発明のさらに別の好ましい実施形態に係る配管構造40(冷媒用配管、ドレン管、電線管を含む配管)を模式的に示した断面図である。
図7】保持力パラメータの測定器具を模式的に示した正面図である。
図8】保水量の測定試験体と装置を模式的に示した断面図である。
図9】試験材のめがね型配管を用いた縦配管による過酷環境条件における結露水の滴下確認試験を模式的に示した配管構成図である。
図10】離型シートを適用した継ぎ目用被覆部材を模式的に示す断面図である。
図11】配管構造の接合部に生じた保護部材の継ぎ目を継ぎ目用被覆部材で覆った状態を模式的に示す斜視図である。
図12】配管の90°曲がり部に使用するエルボー被覆部材(曲がり継手)を展開した状態を模式的に示す正面図である。
図13】既設の従来型配管カバーに被せる被覆部材を従来型配管カバーに装着したときの態様を模式的に示す断面図である。
図14】鉄製ダクトの外周面にダクト被覆部材を貼り付けた状態を模式的に示す断面図である。
図15】試験材の代表例によるめがね型配管を用いた縦配管による温度35℃×湿度90%の過酷環境による結露水滴下試験における結露水の滴下量の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
図1は本発明の好ましい実施形態に係る結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材5を具備する配管構造10を模式的に示した一部切欠斜視図(a)およびX-X矢視断面図(b)である。本実施形態に係る滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材5は、空洞(流路)6を内包する冷媒用配管1を覆う樹脂発泡体2の表面に不織布3を配置した構造を有し、不織布の表面に結露した結露水の滴下を抑制ないし防止するものである。この樹脂発泡体2は、独立気泡を有するポリエチレン系樹脂発泡体である。樹脂発泡体1の一方の表面には、不織布3が融着または接着により固定されている。
以下、本発明においては、拡散蒸発または拡散蒸散なる文言の両者を使用しているが、両者は本願発明においては実質的に同義に解するものとする。
【0019】
[各種のパラメータ]
本実施形の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材5において、その不織布3は、高吸水性樹脂繊維を10質量%以上80質量%以下で含み、15質量%以上75質量%以下が好ましく、25質量%以上75質量%以下がさらに好ましい。高吸水性樹脂繊維の含有量が上記下限値を下回ると結露水の滴下防止または滴下抑制性が劣ることとなる。高吸水性樹脂繊維の含有量が上記上限値を上回ると不織布の接合性および形状安定性が劣ることとなる。なお、不織布が複数の層で構成されている場合には、高吸水性樹脂繊維が含まれる層において、上記の配合量(混率)の範囲である。
【0020】
本発明に使用する不織布の基材繊維の平均繊維径は、5~30μmの範囲が好ましく、通常不織布の繊維はこの範囲のものが使用されることが多い。この理由は、繊維径が上記下限値未満では、不織布の強度が不足するため、保護部材表面の使用時の耐久性が低下しがちである。また、繊維径が上限値を超えると、不織布の直径増加により、基材樹脂の絡み合いや融着構造の安定性が得られなくなる傾向にある。従って、平均繊維径は、10~25μmまたは12~23μmの範囲とすることが望ましい。さらに望ましくは、15~20μmである。後述する各実施例の各試験材において、各試験材の繊維径の測定値は簡略化のため繊維径と記載したが、これらの繊維径の測定値は平均繊維径を意味する。なお、ここで規定する不織布の基材繊維(熱可塑性樹脂繊維)の繊維径(後述する高吸水性樹脂繊維を除く繊維径)は、2層の不織布とするときの第1層および第2層の繊維径においても同様であり、好ましい範囲も同様に平均繊維径を意味する。また、本発明において使用する高吸水性樹脂繊維は、高吸水性樹脂繊維の繊維径が熱可塑性樹脂繊維より大きくてもよいが、高吸水性樹脂繊維の繊維径が大きくなりすぎると、高吸水性樹脂繊維の膨張量が大きくなりすぎて、基材樹脂の不織布構造が不安定になるとともに、不織布内の吸水箇所に偏りが生じる問題があるため、高吸水性樹脂繊の直径の最大値は100μm以下、高吸水性樹脂繊維の可塑性樹脂繊維に対する直径の比率は4倍以内とすることが望ましく、さらに高吸水性樹脂繊の直径の最大値は80μm以下、高吸水性樹脂繊維の可塑性樹脂繊維に対する直径の比率は3倍以内とすることがさらに望ましい。
【0021】
本実施形態の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材5において、不織布3の製品厚さは、0.5~2.0mmであることが好ましく、0.6~1.6mmがより好ましく、0.7~1.4mmがさらに好ましい。なお、不織布3が2層以上の積層品である場合は、その合計の厚さが上記の範囲であることが好ましい。不織布厚さが上記の下限値未満であると、基材樹脂繊維が高吸水性樹繊維を安定して保持できなくなる。一方、製品厚さが上記上限値を超えると、吸水後の不織布の形状安定性が低下する。
不織布が2層で構成されている場合には、不織布3の製品厚さは2層の合計が上記の値の範囲内であることが好ましい。2層を区別して示すと、第1層(高吸水性樹脂繊維を含まない層)が0.05~0.6mmであることが好ましく、0.1~0.5mmがより好ましく、0.2~0.4mmがさらに好ましい。第2層(高吸水性樹脂繊維を含む層)の製品厚さが0.3~1.5mmであることが好ましく、0.4~1.2mmがより好ましく、0.5~1.0mmがさらに好ましい。相対的には、前記第1層の厚さが第2層の厚さより小さいことが好ましい。
【0022】
不織布3の目付量は30g/m以上であることが好ましく、35g/m以上であることがより好ましく、40g/m以上であることがさらに好ましい。上限値としては、300g/m以下であることが好ましく、250g/m以下であることがより好ましく、200g/m以下であることがさらに好ましく、150g/m以下であることがさらに好ましい。不織布3が2層で構成されているとき、2層をそれぞれに規定すると、第2層(高吸水性樹脂繊維を含む層)の目付量が10~250g/mであり、15~200g/mであることが好ましく、15~150g/mであることがより好ましく、20~150g/mであることがさらに好ましい。第1層(高吸水性樹脂繊維を含まない層)の目付量は5~50g/mであり、10~30g/mであることが好ましく、15~25g/mであることがより好ましい。
なお、不織布3が2層以上の積層品である場合は、その合計の目付量が上記の範囲であることが好ましい。本発明において不織布の目付量は上記下限値未満であると、保水性が十分確保できなくなる。一方、目付量が上記上限値を超えると融着部の吸水後の融着性に影響を与えたり、吸水後の不織布の形状が不安定になり、さらに成形加工性が低下する。
また、不織布が2層で形成されている場合の高吸水性樹脂繊維を含む第2層の上下限値も同様の理由による。ここで、第1層は、吸水した水分の拡散や蒸発による蒸散効果を促進する層であるため、目付量は第2層ほど大きくする必要がなく、第1層の目付量は第2層より小さいことが望ましく上記の範囲であればよい。また、単層品と積層品の目付量は、ランシールの場合には、第2層の目付量が多い場合の積層品の不織布の特性を知るために目付量を敢えて多くしたが、その他の場合で分かるとように、積層品の場合には、合計の目付量を少なくすることが可能である。
単層品の不織布の場合には、不織布における高吸水性樹脂繊維の混率が10%~80%であるため、基材樹脂の混率は20%~90%になる。そこで、不織布の目付量が300g/mの場合に、基材樹脂繊維の目付量は、60~270g/m、不織布の目付量が200g/mの場合に、基材樹脂繊維の目付量は、40~180g/m、不織布の目付量が150g/mの場合に、基材樹脂繊維の目付量は、30~135g/m、不織布の目付量が50g/mの場合に、基材樹脂繊維の目付量は、10~45g/mの範囲とすることが可能である。
【0023】
不織布3に混在させる高吸水性樹脂繊維の繊維径は特に限定されないが、不織布を構成する熱可塑性樹脂繊維の繊維径より大きいことが好ましい。具体的に高吸水性樹脂繊維の繊維径は10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましい。上限値としては、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。
【0024】
本実施形態の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材5においては、不織布3の重力に対抗して水分を保持する水分保持力パラメータが0.70以上であることが好ましく、0.80以上であることがさらに好ましく、1.00以上であることがさらに好ましい。上限は特に設けないが、重力に対抗して水分を保持するパラメータの性格上1.3を超えることが事実以上困難であり、最大でも1.3以下であるものと考えられる。この水分保持力パラメータが上記下限値以上となることで、拡散機能や蒸散機能の向上という効果が期待できる。
【0025】
本実施形態の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材5においては、不織布3の保水性試験における保水量が7.0g以上であることが好ましく、7.5g以上であることがより好ましく、8.0g以上であることがさらに好ましく、8.5g以上であることがさらに好ましく、9.0g以上であることがさらに好ましい。上限は、注水した水量の他、試験環境雰囲気からの吸水を考慮しても、20g以下である可能性が高いと推定される。この保水量が上記下限値以上となることで、保水機能が向上することで結果結露水の滴下防止または滴下抑制効果が期待できる。
ここで、本発明の不織布は、水分保持力パラメータと保水性の両者の相乗効果を期待するものであるため、少なくとも、水分保持力パラメータが0.70以上、蒸発環境下での保水量が7.0g以上の両者を満足すること必要であり、両者を満足することが特に好ましい。
【0026】
図2は、本発明の別の好ましい実施形態に係る結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材5を具備する配管構造20を模式的に示した一部切欠斜視図(a)およびY-Y矢視断面図(b)である。本実施形態の配管構造20は2つの配管(空洞(流路)6を内包する冷媒用配管1)が連結された、断面においてめがね型の配管構造とされている(図2(b)参照)。配管の連結は、図示したように不織布3の熱融着によってもよく、あるいは一部において樹脂発泡体2が熱融合しより強固な連結構造となっていてもよい。本実施形態においても、不織布3を構成する熱可塑性樹脂繊維や、そこに混在させる高吸水性樹脂繊維の量ないし繊維径等の各パラメータは図1に係る実施形態で規定した値と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0027】
図3は、本発明のさらに別の好ましい実施形態に係る結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材5を具備する配管構造30を模式的に示した断面図である。本実施形態においては、結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材5を構成する不織布3が第1層31と第2層32との2層構造とされている。本実施形態においても、不織布3に混在させる高吸水性樹脂繊維の量や繊維径等の各パラメータは図1に係る実施形態で規定した値と同義であり、好ましい範囲も同じである。なお、不織布の厚さや目付量に関する第1層と第2層との好ましい範囲は、すでに上記の[各種のパラメータ]の項で述べたとおりである。
【0028】
図4は、図1に示した実施形態の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材5の内部構造を模式的に示した拡大断面図である。本図はあくまで模式的に微視的な構造を示したものであり、本発明において実際の製品が図示したものと完全に一致するものではなくてもよい。本実施形態においては、図視したもののように不織布3を構成する熱可塑性樹脂繊維35とそこに混合した高吸水性樹脂繊維36が適用されている。熱可塑性樹脂繊維35は、相互に交絡しその一部において融着または接着した繊維構造をとっていてもよい。
【0029】
図5Aの(a)は、図3に示した実施形態の滴下防止または抑制用保温カバー部材5の内部構造を模式的に示した拡大断面図である。本実施形態においては、第1層31と第2層32との間で任意の接着構造を取っていてもよく、熱可塑性樹脂繊維35が相互に絡み合うか、一部が熱融着または接着されていてもよい。図5(a)の実施形態においては、第2層32に高吸水性樹脂繊維36が混合され、下層に配置されている例を示している。図5Bの(b)の実施形態は、図5Aの(a)の不織布を上下層反転した例である。すなわち、図5Bの(b)においては、第2層32に高吸水性樹脂繊維36が混合され、これが上層に配置されている。本発明においては、特に限定されるものではないが、外側の層(第1層)31に高吸水性樹脂繊維が配合されておらず、内側の層(第2層)に高吸水性樹脂繊維を含む形態(図5A(a))が好ましい。
【0030】
[樹脂発泡体]
本発明においては、樹脂発泡体2が独立した気泡21(図4、5)を包含している。本発明において、樹脂発泡体2は、ポリエチレン系樹脂発泡体である。すなわち、樹脂発泡体2に用いられる樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)などのポリエチレン樹脂を単独あるいは、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとの混合樹脂を用いることができる。また、これらのポリエチレン系樹脂発泡体に必要に応じて耐熱性や難燃性を付与することもできる。低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンの混合樹脂とする場合には、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンを所定の混合割合、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンを所定の割合、例えば、低密度ポリエチレン40質量部に対して高密度ポリエチレン60質量部を混合した混合樹脂とすることができる。ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンの他、酢酸ビニル共重合ポリエチレン(EVA)などのポリエチレン系変性樹脂を用いることができる。酢酸ビニル共重合ポリエチレンをポリエチレンに代わって用いる理由は、柔軟性と弾力性が高いため、多様な製品用途に使用することが可能なためである。
例えば、低密度ポリエチレンには、宇部丸善ポリエチレン株式会社製:F120N、高密度ポリエチレンには、日本ポリエチレン株式会社製HD1300等を用いることができ、酢酸ビニル共重合ポリエチレンには、株式会社ENEOSNUC社製 DQDJ-1868を用いることができる。
【0031】
また、発泡体の難燃性を向上させるため、難燃化する場合には、難燃剤を加えるが、難燃剤を樹脂100質量部に対して、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどのアンチモン系難燃剤や水酸化物系難燃剤、臭素系難燃剤を所定量加えることができる。その他、上記のアンチモン系難燃剤や臭素系難燃剤、水酸化物系難燃剤の他、無機充てん剤を加えても良い。また、耐熱性を付与する場合には、さらにカーボン、酸化チタンを所定の範囲で加えてもよい。上記の他、無機充填剤、酸化防止剤、安定剤を必要に応じて所定量加えることができる。
【0032】
例えば、難燃剤を加える場合の難燃剤の添加量は、100質量部を超えると効果が飽和すると同時に発泡性が阻害されるため、合計で100質量部以下である。難燃剤の添加量が100質量部を超えると、難燃剤により発泡性が阻害されるため、上限は、100質量部以下とする必要がある。ここで、アンチモン系難燃剤や臭素系難燃剤の好ましい添加量はそれぞれ20質量部以下であり、水酸化物系難燃剤の好ましい添加量は80質量部以下である。なお、難燃剤はいずれの難燃剤も樹脂成分に比べると比重が大きいため、混合する体積割合に直すと樹脂成分に対する混合割合は、質量割合いに比べると著しく小さくなるため、上記の添加量範囲であれば、特に問題はない。
【0033】
ここで、ポリエチレン系樹脂発泡体の製造方法を、基材樹脂に低密度ポリエチレンを用いる場合で説明する。まず、基材樹脂として低密度ポリエチレンに対して、有機系分解型発泡剤、架橋剤を配合して、加圧式ニーダーにて混錬、ペレタイズして、発泡性樹脂組成物のペレットを得た。このようにして得たペレットを短軸式押出機のホッパーより投入して、所定幅のダイスにより押出して、所定厚さの発泡用母材シートを得ることができる。
【0034】
樹脂発泡体は、発泡用母材シートの加熱押出に続いて、連続的に加熱炉中で加熱し所定倍率に発泡させ、さらにその後ロールを通過させることで、発泡体の寸法と表面性状を整えた後、巻き付ける配管の直径に応じた所定幅に切断される。
【0035】
発泡倍率は、断熱性、クッション性を考慮して制御する必要がある。また、エンボス加工を行う場合には、発泡倍率が高すぎると、不織布貼合後のエンボス加工を安定して均一に行うことが難しくなり、発泡倍率が低すぎると、樹脂の剛性が強すぎて、所望のエンボス高さが得られないし、断熱性が低下する問題がある。そのため、樹脂発泡体の発泡倍率は、20~40倍が望ましく、この範囲であれば、特段の問題はない。クッション性については、発泡倍率が20倍~40倍の範囲であれば特に問題がない。また、樹脂発泡体の厚さは、15mmや20mmとすることも可能であるが、通常10mmが多く用いられる。この理由は、樹脂発泡体の厚さが厚くなると、カバー部材を取り付けた後の熱交換用配管の曲げ加工性など成形性の低下と製品断面積の増加による配管作業時の作業性の低下などを考慮して厚さ10mmの樹脂発泡体がカバー部材として多く用いられる。
【0036】
本実施形態においては、樹脂発泡体の一方の表面に前記不織布が融着または接着により固定し、樹脂発泡体の他方の表面は冷媒管に巻かれて使用される。樹脂発泡体と冷媒管とは当接していることが好ましいが、これらの間に他の部材が介在していてもよい。ポリエチレン系樹脂発泡体の少なくとも一方の表面に不織布を融着または接着により接合することで、本発明の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温材を得ることができる。
【0037】
[不織布およびその基材繊維(熱可塑性樹脂繊維)]
本発明では、不織布の繊維としては、基材繊維となる熱可塑性樹脂繊維に高吸水樹脂繊維を所定量混合したものを用いるが、熱可塑性樹脂繊維のみからなる不織布と、熱可塑性樹脂繊維に高吸水性樹脂繊維を所定の混率で混合した繊維からなる不織布とを組み合わせて用いてもよい。まず基材繊維を構成する熱可塑性樹脂繊維について述べる。
【0038】
熱可塑性樹脂繊維は、基材繊維のみからなる不織布に用いる場合は拡散蒸散機能を目的としている。そのため、吸水機能は必要がない。他方、基材繊維に高吸水性樹脂繊維を所定の混率で混合した繊維からなる不織布に使用する場合も、これらの不織布の骨格を形成して高吸水性樹脂繊維を保持するために用いられることから、不織布の形状安定性や所定の強度を付与するとともに、表面張力により不織布表面に吸着した水分を拡散蒸発させることが期待されているため、基材繊維自体が吸水性を有している必要がない。なお、本発明において不織布は、熱可塑性樹脂繊維の少なくも一部が相互に融着または接着されているものである。
【0039】
これらの熱可塑性樹脂繊維を、高吸水性樹脂繊維と混合して使用する場合は、不織布の骨格構造を形成し、熱可塑性樹脂繊維のみからなる不織布の役割は、骨格構造を形成する熱可塑性樹脂繊維が後述する保持力パラメータ試験の結果から推定されるように、水の拡散性や重力下での水の保持力として作用し、毛細管現象による吸水拡散性を向上させることができるが、水分の蒸発促進には、不織布の保水性が高すぎない方がよく、不織布中に水分を化学的結合により保持したり、高吸水性樹脂繊維のようにゲル中に取り込むことで保水するのではなく、表面張力で保持することが好ましい。また、熱可塑性樹脂繊維層を高吸水性樹脂繊維層の後に配置すると、熱可塑性樹脂繊維層の表面が高吸水性樹脂繊維層により覆われてしまうことで、熱可塑性樹脂繊維層を外表面として使用することが望ましい。
かかる観点から、不織布を構成する繊維には、化学素材系合成繊維を用いることができる。化学素材系合成繊維としては熱可塑性樹脂繊維が用いられ、ポリエステル系繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維などを用いることができる。より具体的には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、もしくはポリエチレンテレフタレート(PET)の単繊維、またはこれらの芯鞘構造の繊維(具体的には、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエチレンの芯鞘構造の繊維)、あるいはこれらいずれかの繊維に他の繊維を混合した繊維等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂繊維の少なくとも一部が相互に融着または接着されている不織布が挙げられる。なお、前記他の繊維としては、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0040】
アクリル繊維は、アクリロニトリル基の繰り返し単位が質量比で85%以上含む直鎖状合成高分子からなる繊維である。アクリル系繊維は、吸湿により僅かに強度低下するものの、乾湿強度比は0.9以上で、天然素材系繊維であるレーヨンやビニロンに比べて強度低下は僅かであるため、他の吸水性のない繊維との混合繊維としてアクリル繊維を使用するような場合には、特に大きな問題はない。
【0041】
熱可塑性樹脂繊維としては、2種の繊維を混合して用いる他、芯鞘構造の繊維を用いた不織布を使用することができる。このような芯鞘構造の繊維を不織布に使用するメリットは、繊維同士を相互に融着する場合に、たとえば、芯部にポリエチレンテレフタレート繊維やポリプロピレン繊維を使用し、さや部にポリエチレン繊維を使用することで、120~140℃の比較的低温での繊維同士の相互融着を可能にすることができ、不織布の製造を容易にすることが可能になると同時に、芯部に鞘部より高強度繊維を使用することで、不織布に使用する繊維の剛性を高めることができ、これにより不織布を構成する繊維の繊維径をその分小さくすることが可能になる。
【0042】
熱可塑性樹脂繊維としては、融点の異なる複数の繊維を用いて、融点の低い繊維を溶融させて、バインダーとして用いることで、不織布を構成する。ここで、PET繊維とポリエチレン繊維を混合して、所定割合で用いると、ポリエチレン繊維がバインダーとして作用する。例えば、PET樹脂を主構成繊維に用いて、バインダーとしての低融点繊維には、共重合ポリエステル(Co-PET)樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂などを使用することができる。上記の構造とすることにより、不織布の強度などの制御がしやすくなる。
【0043】
ここで、熱可塑性樹脂繊維として、融点の異なる芯鞘構造の繊維と、他の繊維を組み合わせた繊維を用いた不織布とすることもできる。例えば、芯部に鞘部より高強度繊維を使用することで、不織布に使用する繊維の剛性を高めると、同時に他の繊維に高強度繊維や中空繊維などを用い両者の混合割合を制御することで、不織布の力学特性を向上させたり、不織布に柔軟性を付与したりすることが可能になる。
【0044】
また、熱可塑性樹脂繊維として、長繊維を用いた場合に、不織布の製造時の主方向であるMD方向に繊維が配向しやすく、その影響で方向の力学特性がTD方向の力学特性に比べて高剛性になりやすい。したがって、高吸水性樹脂繊維と混合して骨格を形成する基材繊維として用いる場合には、骨格構造が安定する。そのため、長繊維を用いることが望ましい。長繊維に加えて短繊維を所定量加えて混合繊維として用いることもできる。このように一部短繊維を用いることで、繊維の配向のMD方向への配向の影響を緩和し、TD方向の配向を改善することが可能になり、異方性の改善効果が期待できる。
【0045】
[熱可塑性樹脂繊維を用いた不織布の製造方法]
次に、熱可塑性樹脂繊維を用いた不織布の製造方法について確認する。通常不織布は、繊維だけで構成された薄い膜状のウェブと呼ばれる膜状のシートを形成し、形成されたウェブを形成する各繊維を必要に応じて相互に必要な部分だけ結合することで形成される。
【0046】
熱可塑性樹脂繊維で構成される不織布の形成方法は、種々の方法があるが、例えば、ウェブの形成方法としては、湿式法、乾式法の両方があり、湿式法は、繊維を製紙工程と同様の方法で、不織布にする方法であり、乾式法におけるウェブの形成方法は、後述するように種々の方法があり、いずれの方法でウェブを形成してもよいが、本発明の結露水の滴下防止または滴下抑制の用途には、長繊維を使用する場合には、繊維を屈曲させて不織布の立体構造を形成する必要があるため、不織布の繊維が屈曲する捲縮性を有していることが望ましい。
【0047】
また、熱可塑性樹脂繊維のウェブから不織布を得るには、ウェブを形成する繊維を所定位置で結合する必要がある。ここで、ウェブの繊維結合方法としては、浸漬法、スプレー法などのケミカルボンド法、サーマルボンド法、スパンボンド法、メルトブロー法、メルトプレーン法、エアーレィ法、スパンレース法(水交流法)、ニードルパンチ法などの種々の方法がある。ここで、長繊維を用いた不織布を形成する方法としては、下記のケミカルボンド法、サーマルボンド法、スパンボンド法、メルトブロー法、メルトプレーン法などの方法が用いられる。短繊維を用いた不織布を形成する方法としては、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、エアーレィ法、ニードルパンチ法を用いることができる。なお、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、エアーレィ法などは長繊維、短繊維いずれの方法にも用いることができる。
【0048】
具体的に各方法について説明すると、ケミカルボンド法はウェブを接着剤で部分接着する方法であり、サーマルボンド法は、低融点の熱融着繊維を混合して熱ロールの間を、通過させて熱圧着するか、熱風を当てて、溶融する繊維で繊維の加熱部分を接着して、繊維同士を接着させる方法である。スパンボンド法は、紡糸と直結して繊維を並べ、自己融着熱で布にする方法である。メルトブロー法は、紡糸と直結して繊維を並べ、極細繊維を絡ませる方法である。メルトブレーン法は、樹脂を溶融して紡糸ノズルの周囲から噴射する高温エアにより、繊維を細くしてシート状に集積する方法である。
【0049】
エアーレィ法は、空気とバインダーでパルプを接着して不織布にする方法である。また、スパンレース法は高圧水流で繊維を絡みあわせる方法である。ニードルパンチ法は、ウェブを高速で上下する特殊な針(ニードル)で繰り返し突き刺して、ニードルに形成した突起により繊維を絡ませることで、不織布を製造する方法である。なお、不織布を積層する場合にその積層方法は特に限定されないが、第1層と第2層の積層には、第2層に高吸水性樹脂繊維が所定割合で含有されているため、スパンレース法などの湿式法は好ましくなく、サーマルボンド法やケミカルボンド法、ニードルパンチ法のいずれかにより積層されたものであること好ましい。ただし、本発明において不織布ないしその積層体の製造方法が限定されるものではない。また、異なる繊維の混合は、通常カード機を使用するが、湿式法以外の方法であれば、公知の他の任意の方法が適用できる。
【0050】
[高吸水性樹脂繊維]
高吸水性樹脂は、高い吸水性を有し、給水した水分を、ポリマーが架橋したゲル構造中に保水すると効果を有すると同時に平衡吸湿率を有することから、高湿度条件下では吸湿し、低湿度条件下では放湿するという性質を有している。高吸水性樹脂繊維としては、例えば架橋アクリル酸塩系繊維、アクリル繊維を後加工によりその表面を加水分解させて得られた繊維、ポリエステル等の繊維にアクリル酸やメタクリル酸をグラフト重合した繊維等があげられるが、これらのなかでも、架橋アクリル酸塩系繊維が特に高吸水性であるため、好適である。
【0051】
高吸水性ポリマーの吸水作用について、ポリビニルアルコールとポリアクリル酸系の例により説明する。ポリビニルアルコール/ポリアクリル酸系高吸水性ポリマーの場合には、ポリビニルアルコールの海の中に、ポリアクリル酸ナトリウムの島が存在する構造であり、結晶化されたポリビニルアルコールがポリアクリル酸ナトリウムの橋かけ点として作用する。この吸水性ポリマーは、ポリビニルアルコール成分に富んだ部分とポリアクリル酸部分の二組の層からなり、前者が後者を包含するミクロ相分離構造を取る。
また、ポリビニルアルコール相はいくらかの水膨張性を示すが、主として吸水力はポリアクリル酸塩相によるもので、ビニルアルコール相はポリアクリル酸塩相の数100倍に膨張する時に延伸され、いわゆる配向下の結晶化を受ける。
ここで、結晶化したポリビニルアルコールの強度は非常に大きく、高分子の中でも強靭な部類に属する。このため、ポリビニルアルコール/ポリアクリル酸系高吸水性ポリマーは、結晶化したポリビニルアルコール部分が高吸水状態にあるポリアクリル酸部分を支える複合構造を示し、吸水状態においても剛性を示すゲルが得られると考えられる。
【0052】
ここで、高吸水性樹脂繊維と対比される「吸水性繊維」について述べておく。吸水性繊維として、セルロース繊維、パルプ、レーヨン繊維などでは、吸水性はあるが、高吸水性樹脂繊維を用いた不織布と比べると、給水量は繊維の自重を超えるような吸水性はない。そのため、高吸水性樹脂繊維を用いた不織布と比べると吸水性、保水性ともに劣ることになる。逆に言うと、高吸水性樹脂繊維を、自重を超える吸水性を発揮する繊維またはその集合体と定義でき、好ましくは自重の2倍以上を吸水し、より好ましくは自重の5倍以上を吸水し、さらに好ましくは自重の10倍以上を吸水する。
【0053】
高吸水性樹脂繊維は、優れた吸水性と吸水により膨張する性質を有する樹脂で構成され、親水性基を有する重合体を含む繊維が好適に用いられ、親水性基を有する重合体を含む繊維の代表的なものとしては、架橋アクリル酸系繊維がある。このような架橋アクリル酸塩系繊維は、アクリル酸系モノマーと、これと架橋結合を形成しうる官能基を有するモノマーとを反応させて得られるポリマーを架橋処理することで得られる。これらのモノマーは、単独で用いても複数種類を組み合わせて用いてもよいが、アクリル酸系モノマーと官能基モノマーとは、アクリル酸に対し官能基が当量以下に設定することが好適である。そして、これらを反応させる際には、可塑性を付与するために、他のビニルモノマー、例えば酢酸ビニル(VA)、アクリロニトリル等を配合することができる。
【0054】
このような架橋アクリル酸系繊維の好適な市販品の代表的なものとしては、帝人ファイバー社製の「ベルオアシス」(登録商標)や、東洋紡績社製の「ランシール」登録商標)等をあげることができる。例えば、上記「ベルオアシス」(登録商標)の場合、自重の80倍まで水分を吸収することができるという優れた吸水性能を示す。ここで、高吸水性樹脂繊維は、短繊維不織布の場合は、主としてエアレイド法、カード法によりウェブが形成され、ウェブを形成する繊維同士の結合は、サーマルボンド法、ケミカルボンド法が用いられるが、場合によりニードルパンチ方を用いて製造することができる。
【0055】
[不織布のポリエチレン系樹脂発泡体への貼合方法]
不織布と樹脂発泡体との接合方法は特に限定されないが、例えば、樹脂発泡体の一方の表面に不織布を配置し、熱ロール成形を行うことで、不織布とポリエチレン系樹脂発泡体を融着または接着することができる。このとき、エンボスを表面に形成する形で熱融着させてもよい。あるいは、ポリエチレン系樹脂発泡体の一方の表面に、接着剤を塗付して、さらにこの状態で、不織布をポリエチレン系樹脂発泡体の表面に配置した状態で熱ロール成形を行うことで、不織布をポリエチレン系樹脂発泡体の表面に固定することができる。
【0056】
[配管構造]
上述した本発明の好ましい実施形態に係る結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材5は、冷媒用配管1の外周に被覆された少なくとも水平配管、斜め配管、垂直配管、曲がり配管のいずれかの配管を含む配管構造をなす(図1~3参照)。このとき、結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材が単層の不織布の表面または積層構造の不織布の第1層または第2層のいずれかの表面を外表面として、それぞれの保温カバー部材により、冷媒用配管が被覆されている(図1、3参照)。あるいは、結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材5は、2本の冷媒用配管1のそれぞれの配管1,1の外周に被覆され、前記保温カバー部材5を相互に熱融着または接着しためがね型断面配管20をなす態様が挙げられる(図2)。このとき、水平配管、斜め配管、垂直配管、曲がり配管のいずれかの配管を含む配管構造において、配管構造のそれぞれの冷媒用配管の外周に結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材の単層の不織布の表面または積層構造の不織布の第1層または第2層のいずれかの表面を外表面としてそれぞれそれ前記それぞれの冷媒用配管が被覆され、それぞれの冷媒用配管を相互に対向させて不織布の外表面を熱融着または接着させることで、2本の配管をめがね型に一体化させたものである。また、不織布が積層構造を有し、第2層(高吸水性樹脂繊維を含む層)32もしくは第1層(高吸水性樹脂繊維を含まない層)31のいずれかの表面を外表面として樹脂発泡体2に配設され前記保温カバー部材5をなし、冷媒用配管1が被覆されている配管構造30をなす態様が挙げられる(図3、5A、5B)。後述する垂直な縦配管による結露水の滴下確認試験では、水平配管、斜め配管、曲がり配管などと較べて垂直配管が最も重力の影響を受けやすく、さらに、配管構造的にも単管よりもめがね型配管の接続部近傍の凹部に結露水が保水され、その保水された結露水が水滴となって滴下しやすいため、試験条件はより過酷なものになるため、結露水の滴下確認試験は、めがね型配管を縦配管に配管して試験を行った。
【0057】
図6は、本発明のさらに別の好ましい実施形態に係る配管構造40(集合配管)を模式的に示した断面図である。本実施形態においては、2本の樹脂発泡体2を配設した冷媒用配管1と、ドレン管12と、配線の配管13とが本発明の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー材5の内部に収納されている。このとき、結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材の内部に1または複数本の冷媒用配管、ドレン管と配線の配管が収納された少なくとも水平配管、斜め配管、垂直配管、曲がり配管のいずれかの配管を含む配管構造であることが好ましい。さらにこのとき、本実施形態においては、単層の不織布の表面または積層構造の不織布の第1層または第2層のいずれかの表面を外表面として、結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材の外周面形状が断面略円筒形状となるように冷媒用配管、ドレン管と配線とを結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材の内部に収納できるように保温カバー部材で囲うことで、配管に内装される部品を前記結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材の内部に収納する形態が挙げられる。これにより、配管構造40の最外層にあたる結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材5の外表面に結露水が生じても、結露水の滴下を好適に抑制ないし防止することができる。
【0058】
以上は、熱交換器の配管構造に関して説明したが、本発明のカバー部材は、熱交換器の配管に限らず、熱交換器用のダクトの外側にポリエチレン系樹脂発泡体面をダクトの外周面を覆うように貼り付けて使用して、カバー部材をダクトの外周に張り付けた構造体として使用することもできる。このように、ダクトの外周面に本発明のカバー部材を貼り付けでダクト構造体として使用しても、熱交換器の配管の場合と同様にダクト表面における結露水の滴下防止または滴下抑制効果が期待できる。
【実施例0059】
<不織布の製品特性及び基礎物性の測定方法>
(不織布厚さ)
試験に用いた不織布、0.66mmから1.22mmの厚さのものを用いた。試験に用いた不織布厚さは、JIS一般不織布測定方法(JISL1913:2010)に記載された測定方法のA法と同じ測定が可能な不織布厚み測定器(φ56.4mmの円盤平面測定子)によりJIS法に基づいて測定したものである。不織布の厚さの測定は、3回行い平均値を測定値とした。積層品の第1層の厚さは、積層不織布を剥離すると不織布が剥離時に変形して、積層時の不織布厚さが維持でない。このことから、試験材をファインカッターで切断し、その断面の不織布の厚さ方向面のSEM観察を行いSEMにおけるスケールとの対比により測定した。測定は試験片を3枚用意して、3枚の測定結果を第1層の不織布厚さとした。第2層の厚さは、不織布の全体厚さから、第1層の厚さを引くことで求めた。
【0060】
(繊維径、目付量)
不織布の繊維径は、SEMの繊維の画像から任意に20カ所を選び、画像処理ソフトを用いて平均繊維径(数平均)を算出した。ここで、本発明に使用した不織布の平均繊維径は16.67μm~35.25μmである。目付量は、10cm×10cmの正方形の試験片を原材料から切り取り、それぞれの質量と面積を計測して、次式により求めることができる。測定は、繰り返し3回行いその平均値を目付量とした。
目付量(g/m)=10000×試験片質量(g)/試験片面積(cm
【0061】
(水分保持力パラメータ:図7
不織布表面に結露した水分は、表面張力による拡散と吸水が競合する。そのため、特に、重力下での結露水の滴下を防止するためには、水分を重力に抗して上方に吸い上げる吸水拡散能力が重要であり、これらの機能のバランスが問題となる。本発明では、これを評価するため、独自の試験方法を開発して試験に供して重力下での水分の吸い上げ能力を含めた水分保持力パラメータを求めた。
ここで、水分保持力パラメータ試験とは、長手方向の中間位置の表面に幅方向に横断する標線を設けた所定寸法の各混率の高吸水性樹脂繊維等を含む不織布からなる短冊状試験片を水平にした状態で標線部分に着色した試験液所定量滴下して、さらに滴下後直ぐに試験片を垂直方向に5分間保持した後、試験片の標線からの上方への試験液の到達点までの上昇距離と試験片の標線からの下方への試験液の到達点までの下降距離を測定により求め、この平均上昇距離を平均下降距離で割ってその比率を水分保持力パラメータとした。
この値は、上昇分と下降分の長さの比率を表したもので、大きければ大きいほど、「重力に対抗して水分を保持する保持力」の性能がよいことになる。この保持力が高ければ、低い位置での結露水滴下を抑制することができると考えられる。
水分保持力パラメータは、実施例および比較例で作成した不織布(必要により実施例および比較例で採用した各混率の高吸水性樹脂繊維等を含む)を、寸法 長さ200mm×幅25mmの短冊状試験片41(図7)とし、その長手方向の中間位置の表面に幅方向に横断する標線45を設けた。このとき、不織布の厚さについては、実施例および比較例で採用した各試験材の厚さとした。上記試験片を水平にした状態で標線部分に着色した試験液400μLを滴下して、さらに滴下後直ぐに試験片41を垂直方向に5分間保持した後、試験片の標線からの上方への試験液の到達点までの上昇距離43と試験片の標線からの下方への試験液の到達点までの下降距離44を測定により求めた。
さらに、試験片の標線からの上方への上昇距離(上方への試験液の到達点までの上昇距離)43の試験片幅方向の平均値(#1~#5の上昇距離の平均値)を、試験片の標線45からの下方への下降距離(下方への試験液の到達点までの下降距離)44の試験片幅方向の平均値(#1~#5の下降距離の平均値)で割って、この平均上昇距離を平均下降距離で割ってその比率を水分保持力パラメータとした。なお、図7のように幅方向に分布があるので、測定位置を幅方向に等分して、5カ所の平均値を求め、上昇分平均長さ[mm]を下降分平均長さ[mm]で割った値を算出してこれを重力に対する保持力パラメータと定義した。なお、表中の測定値はこの測定を5回繰り返した平均値である。
この値は、上昇分43と下降分44の長さの比率を表したもので、大きければ大きいほど、「重力に対抗して水分を保持する保持力」の性能がよいことになる。この保持力が高ければ、低い位置での結露水滴下を抑制することができると考えられる。
したがって、結露水の滴下防止または滴下抑制のような性能に関しては、水分の保持力パラメータが大きい方が望ましい。ただし、実際には、結露水の滴下防止または滴下抑制には、水分の保持力パラメータの他、不織布の保水力が相互に補完的に効果があると考えられる。
【0062】
(蒸発環境下での保水量評価:図8
本発明においては、高吸水性樹脂繊維を含む不織布での保水機能を考慮し、先の水分保持力パラメータ試験に加え、蒸発環境下での、保水量を求める試験に関しては試験規格がないために下記の蒸発環境下での保水性試験を考案してこれを行った。
保水性の評価方法は以下のとおりである(図8参照)。まず、150mmに切った直径25mmのパイプ11の外周に、樹脂発泡体2と不織布3とからなる保温カバー部材5を巻き付けて保温カバー部材5とし、保温カバー部材5の両端部を融着して、保水性試験材100を作成した。このときの樹脂発泡体2の厚さを10mmとした。不織布については、実施例および比較例及び従来例材1で作成した各試験材の厚さとし、必要により各試験材の混率と同率の高吸水性樹脂繊維等を含むものとした。次に、長さ150mmの試験が挿入できるよう所定のクリアランスを有する透明樹脂製の容器51に試験材100を図示したように入れ、電子天秤(測り)53で「容器+試験材質量」を計測した。試験材100が中に入った容器51に水52を20g入れ,電子天秤で「容器+試験材+水20g質量」の総質量を計測した。恒温恒湿槽を23℃×30%に設定し、水52と試験材100が入った容器を恒温恒湿槽に挿入し、恒温恒湿槽で6時間保持して、6時間経過後に、試験材100を浸漬した容器51を取り出し、「取り出し時の質量」、「残存水量」、「除水後の質量」を電子天秤53で計測した。ここで、保水量は、試験終了時点での取り出し時の質量から容器を傾けて除水することで、除水後の質量を求めて、これから、容器と試験前のサンプル質量を差し引くことで、保水量を求めることができる。蒸発量は、試験開始前の全質量から取り出し時質量を引き算した値である。
【0063】
(試験材の各諸元、水分保持力パラメータと保水性試験の試験結果)
試験材の試験結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
(表の注釈)
SAF:Super Absorbent Fiber(高吸水性樹脂繊維)
ベルオアシス(商品名) 帝人フロンティア社製
ランシール(商品名) 東洋紡社製
PE:ポリエチレン
PET:ポリエチレンテレフタレート
発泡体:ポリエチレン樹脂発泡体 発泡倍率30倍、厚さ10mm
SAFの混率(%)で示した数値または%はいずれも質量%の意味である。
【0066】
(試験材の説明)
以下、試験材の説明を行うが、試験材の説明の他、これらの試験材の評価試験結果の記載において、繊維を構成する樹脂の名称は、簡単のため一部PE,PP,PET,SAF等の簡略表記をする。本発明における混率は、高吸水性樹脂繊維を含有する層の全体重量に対する高吸水性樹脂繊維の混合比率を混率とする。
【0067】
まず、樹脂発泡体の製造について述べる。
ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンを、4:6の質量比で混合した混合樹脂を準備した。低密度ポリエチレンには、宇部丸善ポリエチレン株式会社製:F120Nを、高密度ポリエチレンには、日本ポリエチレン株式会社製 HD1300を用いた。さらに、発泡剤として、永和化成株式会社製 商品名ビニホールAC♯LQ 16質量部、架橋剤として、日本油脂株式会社製、商品名パークミルD 0.8質量部をそれぞれ加えた。得られた原料組成物を120~150℃の押出により発泡用母材シートを得て、さらに連続的に200~230℃の加熱炉中で厚さ10mmで倍率30倍に発泡させた。さらにその後ロールを通過させることで、発泡体の寸法と表面性状を整えた後、巻き付ける配管の直径に応じた所定幅に切断した。
【0068】
発明例材は、熱可塑性樹脂繊維と高吸水性樹脂繊維を所定の混率で混合した単層の不織布からなる単層品とこの単層品に高吸水性繊維を含まない骨格樹脂繊維層のみを積層した積層品があり、単層品は、骨格樹脂繊維として、PET/PEのPETを芯部、PEを鞘部に用いた芯鞘構造繊維に対して、高吸水性樹脂繊維(ベルオアシス)を所定の割合で変えてポリエチレン樹脂発泡体の表面に熱融着したものを用意して、それぞれ高吸水性繊維含有層に対する高吸水性樹脂繊維の含有比率である混率10質量%、25質量%、40質量%、75質量%を実施例の試験材1,2,3,4とした。ここで、単層品であるが、骨格樹脂繊維を、PETとPP/PEの芯鞘構造の繊維として、高吸水性樹脂繊維としてベルオアシス以外のランシールを50質量%用いたものを発明例材5とした。なお、表中、試験材5のSAFの混率(%)の項目で、30%、20%、50%とされたのは、上述のとおり、混率を表しており、それぞれ、30質量%、20質量%、50質量%であることを示している。
【0069】
これに対して積層品は、上記単層の不織布に骨格樹脂繊維層のみからなる不織布を積層したものである。ここで、骨格樹脂繊維のみからなる層を第1層とし、積層構造の不織布の高吸水性樹脂を含む不織布層を第2層とした。
積層品の不織布における高吸水性樹脂繊維を含む不織布である第2層の混率は、単層品と同様で、それぞれ混率10質量%、25質量%、40質量%、75質量%として、これにPET/PEの芯鞘構造からなる骨格構造不織布のみからなる第1層を貼り付けたものをそれぞれ発明例材6,7,8,9とした。発明例材10は、積層品の不織布における高吸水性樹脂繊維を含む不織布である第2層の混率は40質量%で発明例材8と同様であるが、不織布の目付量を発明例材8の48g/mより63g/mと多くしたものである。
発明例材11は、PETとPET/PP芯鞘構造繊維の混合繊維を骨格樹脂繊維として、ベルオアシスに変えて、ランシールを混率50質量%で加えて、更に不織布の目付量を168g/mと大きくしたものである。
各積層品の不織布の配設形態としては、第1層(高吸水性樹脂繊維を含まない)を外層、第2層(高吸水性樹脂繊維を含む)を内層とする場合(配置A)と、これとは反対に第1層(高吸水性樹脂繊維を含まない)を内層、第2層(高吸水性樹脂繊維を含む)を外層とする場合(配置B)の両方について評価した。
【0070】
従来例材は、ポリエチレン樹脂発泡体の表面に厚さ100μmのPEフィルム(自社製)を融着した保温カバー部材を従来例材1とした。また、比較例材として、発明例材と同様の構造で、単層品と同様の構造で、不織布の高吸水性樹脂(ベルオアシス)の混率が5質量%のものと、積層品で前記のベルオアシスの混率が5質量%、85質量%のものを、それぞれ、比較例材1と比較例材2,3とした。
ここで、比較例材として、単層品と積層品の両者に関して、混率が少ない5質量%でも結露防止または抑制効果があるかどうかを確認するためのものであり、また、混率が85質量%のものは、高吸水性不織布が多いために、結露防止または抑制効果は十分であるが、ポリエチレン発泡体との融着性や発泡性に問題がないかどうか確認するためのものである。また、比較例材で混率が高い方の材料は、単層品と積層品が同様の挙動を示すものと考えられるため、積層品のみの確認を行った。さらに、比較例材には、高吸水性樹脂を含まない骨格樹繊維脂のみからなる汎用されている不織布を3種加えて、これを比較例材4から比較例材6とした。ここで、比較例材5,6の不織布には、骨格樹脂繊維に加えて、通常の熱可塑性樹脂繊維の他、レーヨン、パルプなどの吸水性繊維や吸水性材料を加えた不織布を通常の吸水性繊繊維や吸水性材料と高吸水性樹脂繊維との対比のために用意した。具体的には、PET/PEの芯鞘構造の不織布で、鞘部のPEの表面を親水性処理したものを比較例材4とした。また、PE繊維とレーヨン繊維の混合繊維からなる不織布でレーヨン繊維の混率40質量%としたものを、比較例材5とした。さらに、PET/PE芯鞘構造繊維とパルプの混合繊維からなる不織布で、パルプの混率が30質量%であるものを比較例材6とした。
【0071】
(不織布の測定評価項目とその内容)
試験に使用した不織布の測定評価項目は、繊維径、製品厚さ、目付量、水分保持力パラメータ、保水性の各項目である。ここで、試験材の繊維径は、基材骨格樹脂繊維の繊維径と高吸水性樹脂繊維(SAF)の繊維径の両者を記載した。製品厚さは、不織布が単層の場合には、不織布の全体厚さを記載し、不織布が積層品の場合には、積層した不織布の全体厚さと第1層である拡散層の厚さを全体厚さの下側に括弧を付けて記載した。そのため、第2層の厚さは、前記のように全体厚さから第1層の厚さを引くことで求めることができることから、第2層の厚さは表中には、記載を行っていない。また、目付量は、単層品の場合には、不織布全体の目付量を表し、積層品の場合には、上段に不織布全体の目付量を記載し、下段に第1層と第2層の目付量を記載した。左側が第2層、右側が第1層である。
これは(A)外側に第1層を配置し内側に第2層を配置する場合と、(B)外側に第2層を配置し、内側の融着または接着面側に第1層を配置する場合とがある。ここで、不織布の外側に高吸水性樹脂繊維を含まない骨格樹脂繊維のみからなる第1層を配置する方が、第1層の拡散蒸発層としての効果が優位に作用すると思われるが、一部は高吸水性樹脂層を通過することもあり得るし、保水性のみを考慮した場合には、逆の配置である拡散層を内側の融着または接着層側に配置した場合の方が高吸水性樹脂繊維を外側に配置した方が優位であるとも考えられるので両方の配置について評価した。
以下、積層品の配置に関して、PE樹脂発泡体の表面に不織布を貼合する際の不織布の各層の配置として、外層に基材骨格樹脂のみで形成された不織布である第1層が配置される場合の配置を配置(A)(図5(a))、外層に第2層の高吸水性繊維を含む層が配置される場合の配置を配置(B)(図5(b))と記載するものとする。
表1の水分保持力パラメータと保水量は、上段は外層が第1層の配置(A)、下段は外層が第2層の配置(B)の場合の試験結果を示す。
また混率は、前記のように高吸水性樹脂含有層の全体重量に対する高吸水性樹脂繊維の混合比率を混率とした。
【0072】
(繊維径、製品厚さ、目付量の範囲)
熱可塑性樹脂繊維の繊維径は、実施例では、16.67μm~25.41μmで試験された。SAFの繊維径は、実施例では、23.74μm~35.25μmで試験された。具体的には、高吸水性樹脂繊維であるSAFの繊維径は、ベルオアシスが35.25μmで、ランシールの繊維径が23.74μmで、ランシールはアクリル系繊維の芯材として、芯材の外周部にSAFを形成した芯鞘構造を有している。
製品厚さは、実施例では、0.77mm~1.22mmの範囲で試験された。なお、積層品については、上記のとおり、第1層(SAFのない層)の厚さをカッコ内に示している。目付量については、実施例では、38g/m~168g/mが試験された。積層品の場合には、上記のとおり、上段に不織布全体の目付量を記載し、下段の右側に第1層(SAFのない層)の目付量を記載し、左側に第2層(SAFのある層)の目付量を順に記載した。
【0073】
(不織布の水分保持力パラメータ試験と保水性試験結果)
・発明例材の試験結果:
発明例材の結果を見ると、発明例材1から発明例材5の単層品の試験結果は、水分保持力パラメータは、0.78~1.06であり、保水試験における保水量は、7.89g~19.98gである。
また、発明例材6~発明例材9は、積層品であるため、水分保持力試験における試験液の滴下層面を第1層(基材樹脂繊維のみからなる拡散蒸散促進層)とするか、第2層(基材樹脂繊維中に高吸水性樹脂繊維を含む層)のいずれにするかによっても相違する。本試験においては、滴下面は、製品の保温カバー部材における外表面に相当する。
水分保持力パラメータは、滴下面を第2層の基材樹脂繊維中に高吸水性樹脂繊維を含む層とする場合は、水分保持力パラメータは0.74~0.98で単層品における試験結果に近い結果を示す。この理由は、滴下面である第2層の不織布の構造が基材樹脂繊維中に高吸水性樹脂繊維を含み単層品と同様の構造を有するため、高吸水性樹脂繊維の混率が同じ場合は、不織布が吸水した水分の拡散蒸発及び保水性がほぼ同様の挙動を示すものと考えられる。逆に言うと、水分保持力パラメータに対しては、滴下面に第1層を配置しないで高吸水性樹脂繊維を含む不織布層の背面に配置した場合は、第1層である高吸水性樹脂繊維を含まない基材樹脂繊維のみの拡散促進層の影響が少ないことが分かる。
逆に、滴下面を第1層の基材樹脂繊維のみからなる拡散蒸散促進層とする場合の水分保持力パラメータは、1.02~1.16であり、水分保持力パラメータは、前記の滴下面を第2層とする場合の0.74~0.98より大きい。このとから、不織布の樹脂発泡体との配置関係でいうと、拡散蒸散性の観点からすると、第1層(基材樹脂繊維のみからなる拡散蒸散促進層)を外面に向けて配置することが望ましいことが分かる。また、単層品と滴下面を第2層とする場合の水分保持力パラメータを比較すると、単層品の水分保持力パラメータは0.78~1.06で、滴下面を第2層とする場合は、0.74~0.98であり、若干の相違はあるがほぼ同等と考えられる。この理由は、滴下面が両者とも骨格を形成する基材樹脂繊維と高吸水樹脂繊維により形成される高吸水性樹脂を含む不織布層により形成されるためであると考えられる。
ここで、発明例材6~発明例材9の保水性についてみると、発明例材1から発明例材5(7.89g~19.98g)に比べて、これらの材料の水分保持力パラメータは優れるものの、発明例材1から発明例材5より、保水性は少し低下することが分かった。また、第1層と第2層のいずれを製品の外側に向けて配置するかでいうと、第1層を外側に向けて配置した場合の方が第2層を外側に向けて配置した場合よりも、拡散蒸発層が外側に向けて配置されるため水分保持力パラメータは大きく優れるが、保水性を有する層が裏面に配置されるため、保水性は水分保持力パラメータの結果とは逆に僅に劣っていた。(第1層外側の配置:7.22~15.88g、第2層外側の配置:7.58~16.45g)
さらに、発明例材10は、発明例材8と同様の高吸水性樹脂繊維が混率40質量%で、高吸水性樹脂繊維を含む層の目付量を30g/mから45g/mに増やしたものであるが、発明例材10は発明例材8より、高吸水性樹脂繊維層の目付量の増加効果により、水分保持力パラメータ、保水性ともに発明例材8より向上することが分かる。
また、発明例材11は、PETとPET/PP芯鞘構造繊維の混合繊維を樹脂繊維として、高吸水性樹脂繊維をベルオアシスに変えて、ランシールを混率50質量%で加えて、更に不織布の目付量を168g/mとしたものである。この場合には、目付量が大きいため、発明例材9よりも、高吸水性樹脂繊維の含有量が多くなり、他の積層品に比べて保水量が著しく増加した。
以上より、発明例材1~5の単層品、発明例材6~11の積層品の第1層を外表面とする配置(表中の各欄の上部に記載)と積層品の第2層を外表面とする配置(表中の各欄の下部に記載)、17種のカバー部材に関しては、いずれの材料も不織布の水分保持力パラメータ試験の結果0.70以上を満足すると同時に、保水性試験結果の結果は、7.0g以上を満足する結果となった。また、上記の試験結果によると、第1層を外表面に配置する積層品が水分保持力パラメータは最も大きくなることが分かるが、逆に本発明の保水性試験の結果の保水量は、単層品が積層品より少し大きくなる結果となった。ここで、単層品と積層品を比較すると、積層品は単層品より、不織布全体の目付量が少なく100g/m2以下でも、水分保持力パラメータと保水性試験結果の結果はともに上記値を満足する結果となった。
【0074】
・従来例材:
従来例材1は、PEフィルムで不織布でないため、水分保持力パラメータ試験と保水性試験は行わなかった。
・比較例材の試験結果:
次に比較例材の結果を見ると、比較例材1は、高吸水性樹脂繊維の混率が5質量%と少なく吸水による水分保持力パラメータの向上効果は期待できないが、基本的な拡散蒸散能力を有しているため、水分保持力パラメータは、0.70をぎりぎり上回る結果となったが、保水性試験の結果は高吸水性樹脂繊維の混率が低いために7.0gを下回った。比較例材2は、積層体であるが、比較例材1と同様に高吸水性樹脂繊維の混率が5質量%と少なかった。結果として、比較例材1と同様に水分保持力パラメータは閾値を少し上回るが、保水性は閾値である7gを下回った。
これに対して、比較例材3は、高吸水性樹脂繊維の混率が85質量%と多いため、水分保持力パラメータ0.70を上回り、保水性試験の結果も7.0gを上回ったが、骨格となる基材樹脂繊維の混率が85質量%と多すぎるため、PE樹脂発泡体との融着面または接着面が不安定であり、さらに吸水後の高吸水性樹脂繊維の膨張ゲル化により、カバー部材の不織布の表面の形状が変化して不安定になった。その結果、比較例材3は不合格とした。
比較例材4は、PET/PEの芯鞘構造の繊維のみから構成される不織布で、高吸水性樹脂繊維を含まないが繊維の表面に親水性処理を施しているため、水分保持力パラメータは閾値を上回ったが、保水量は閾値を下回った。また、比較例材5は、PE繊維とレーヨン繊維の混合繊維からなる不織布でレーヨン繊維の混率40質量%とした。この比較例材5は、水分保持力パラメータは目標を下回ったが、保水性はレーヨンが混合されているため、目標を超えたものと考えられる。結果として、水分保持力パラメータと保水性の両者が目標を超えるものとはならなかった。
また、PET/PE芯鞘構造繊維とパルプの混合繊維からなる不織布である比較例材6は、水分保持力パラメータは目標を上回ったが、パルプが混合されているものの保水性は目標に到達しなかった。
以上のように、高吸水性樹脂繊維の含有量が多い比較例材3を除く、比較例材は水分保持力パラメータと保水性試験の保水量のいずれかまたは少なくとも一方が閾値を満足せずに不合格になった。比較例材3は、高吸水性樹脂繊維の含有量が多く骨格となる基材樹脂繊維の含有量が少ないため、PE樹脂発泡体との界面の融着面または接着面が不安定になり、不織布の表面形状も不安定になることから不合格となった。
【0075】
結露水の滴下防止には、保水性の他、不織布表面からの蒸散がある。特に表1には示さないが、試験例材の蒸発量は、単層品の発明例材1~5は、5.08g~11.48gであり、発明例材6~11で、外層が第1層(基材樹脂繊維のみからなる拡散蒸散促進層)の場合には、9.24g~10.76gであり、さらに外層が第2層(基材樹脂繊維中に高吸水性樹脂繊維を含む層)の場合には、8.88g~10.24gであり、不織布が保水するだけでなく、不織布表面からの蒸散効果が結露水の抑制に寄与していることが分かる。発明例材は少なくとも5.0g以上の蒸散効果があり、積層品のみの場合の蒸散効果は8g以上であり、さらに第1層を外面に配置した場合は9g以上の蒸散効果が認められる。しかも積層品の蒸散効果が大きいが、この効果が保水効果に重畳されることで、結露水の滴下防止または滴下抑制効果を向上させていると考えられる。
【0076】
(結露水の滴下確認試験の目的及び内容)
不織布の水分保持力パラメータ試験と保水性試験結果の結果から、不織布の水分保持力パラメータは、0.70以上、本発明で規定する所定の条件で求めた放水性試験における保水量が7.0g以上を同時に満足する不織布を樹脂発泡体の表面に融着または接着した結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材が結露防止性能に優れるものと考えられることから、これらのカバー部材を用いて、従来例材と対比することで、結露水の滴下性能確認試験を行った。
ここで、本発明の製品は、水平配管では結露水の滴下が起こらないことはすでに確認済みであるが、水平配管以外の配管での結露水の滴下性能を確認する必要がある。結露水の滴下確認試験は、水平配管、斜め配管、垂直配管、曲がり配管の内で、最も重力の影響を受けやすい垂直な縦配管を選んで試験を行うことにした。
さらに、めがね型配管を用いると、配管構造的にも単管よりもめがね型配管の接続部近傍に形成される凹部に結露水が保水され、その保水された結露水が重力の影響を受けて水滴となって滴下しやすいため、試験条件はより過酷なものになることから、この構造を選択することにした。
また、実際の結露水の滴下量の測定試験は、めがね型配管を縦配管として、大型の恒温恒湿槽内に設置して、冷媒を配管内に流して熱交換器の実際の運転環境下で、恒温恒湿層の設定条件を35℃×90%RHの高湿度の過酷環境条件に設定して1080分(18時間)の暴露試験を行った。
この理由は、実際の熱交換器を設置する環境は施工現場毎に結露水の滴下が生じる環境条件が異なるため、所定の設定環境で結露水の滴下が起こらない場合でも、それより厳しい環境条件では結露水の滴下が起こることが考えられることと、さらには、実際の設置環境として低湿度環境で試験を行った場合には、滴下が生じないで材料間の結露水の滴下防止あるいは滴下抑制性能が評価できない可能性あるが、過酷環境において滴下が生じるため材料間の結露水の滴下防止または滴下抑制性能が評価できること、さらには、本発明品は水平配管では結露水の滴下が起こらないことによる。
【0077】
(室内機側のめがね型配管を用いた縦配管による過酷環境条件における結露水の滴下確認試験:図9
室内機側のめがね型配管を用いた縦配管の過酷環境条件における結露水の滴下確認試験を模式的に示した配管構成図である。具体的には、天井裏からの室内機側への600mmの立下げ配管(室内機側配管)71(図9)、中間配管73、下降配管(室外機側配管)72を連結し、大型の恒温恒湿層中に装置を作成した。装置は、恒温恒湿相の設定条件を35℃×90%RHの高湿度の条件に設定して1080分(18時間)の暴露試験を配管の冷媒温度5℃にて、結露水の滴下を確認する過酷試験を行った。ここで、試験には、直径6.35φ×肉厚0.85mmと直径9.52φ×0.80mmのペア管を使用し、それぞれの管の外周に本発明の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材5を巻き付けて、カバー部材の樹脂発泡体2と不織布3のそれぞれ端面の当接部を相互に熱融着した後、さらに2つの配管同士を熱融着することでめがね型配管20(図2参照)を完成して試験に供した。この際、結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材を巻き付けのそれぞれの管の外径は約28mm、31mmとなる。また、結露水は、配管の長さ方向に400mmの長さのトレイにて滴下質量を電子天秤(測り)75にて計測した。
なお、縦配管の試験結果から、従来例材1の縦配管の試験結果48gに対して、少なくとも発明例材は30%以上の改善効果を示し、結露水量の滴下量は33.6g以下になった。
【0078】
(不織布の接合性及び形状安定性試験)
成形された保温カバー部材の不織布(熱可塑性樹脂繊維)と樹脂発泡体(ポリエチレン樹脂発泡体)との接合界面の状態を目視にて確認した。これにより、接合界面に浮きが発生していないものは合格、界面に浮きあるいは極く僅かでも剥離が発生する等界面の接着状態に問題があるものは不合格とした。試験後の高吸水性樹脂繊維にする水分の吸水による不織布の形状変化がそれほど大きくないものは「○」合格とし、不織布の形状変化が大きく吸水前の不織布形状が大きく変化したものは、不合格「×」とした。
【0079】
(試験材の過酷環境条件における縦配管の結露水の滴下試験と不織布の接合安定性及び形状安定性試験結果)
試験材の過酷環境条件における結露水の滴下試験と不織布の接合安定性及び形状安定性の試験結果を表2に示す。
【表2】
【0080】
表中の「縦配管結露水滴下試験」の結果において、不織布が積層品であるが、試験結果が一段に表記されたもの(発明例材7,9,10,11)は配置A(高吸水性樹脂繊維を含まない層を外層、高吸水性樹脂繊維を含む層を内層とする場合)のときの試験結果を示している。発明例材6,8の試験結果が2段に表記されているのは、不織布が積層品であるが、上記と同じ層構成の配置Aのものを上段に、上記の外層と内層を反転した試験した配置B(高吸水性樹脂繊維を含む層を外層、高吸水性樹脂繊維を含まない層を外層に配置する場合)の試験結果を下段に示したものである。これは、比較例材2,3についても同様である。
【0081】
前記のように、「縦配管結露水滴下試験」は、温度35℃×湿度90%の環境条件で16時間暴露する過酷試験における結露水の滴下量の質量を測定して実施した結果、発明例材の結露水の滴下量は、いずれも従来例材に比べて、少なくとも30%を超える改善効果が認められるが、これに対して、高吸水性樹脂繊維85%を含む比較例材3を除いた、比較例材の結露水の滴下量の改善効果は30%に満たなかった。
・従来例材の試験結果:
基準となる従来例材の結露水の滴下量についてみると、従来例材1は、PE樹脂発泡体の表面にPE樹脂フィルムを融着させただけなので、48gの結露水の滴下が発生した。
・発明例材の試験結果:
発明例材1~発明例材11の結露水の滴下試験の結果は、単層品、積層品ともに高吸水性樹脂を含有する不織布層を有し、この不織布層における高吸水性樹脂繊維の含有量が10質量%~80質量%、この不織布の残部の骨格構造を形成する繊維である熱可塑性樹脂繊維の含有量が20質量%~90質量%なる組成を満足する場合に、単層品の結露水の滴下量が3.8g~32.5gで、その従来例材1に対する改善率は、32.3%~92.1%の改善が認められ、また積層品の場合には、0.8g~28.4gで、その従来例材1に対する改善率は、40.8%~98.3%であり、単層品、積層品ともに最低でも30%を超えていた。この際、積層品と単層品の比較では、積層品の方が結露水の滴下量が少なく優れていた。この理由は、積層品の方が別途高吸水性樹脂繊維を含まない層を拡散蒸発促進する層として配置しているため、結露水の拡散及び蒸発が促進されるためと考えられる。また、単層品、積層品ともに、高吸水性樹脂繊維含有量の増加につれて、結露水の滴下量が減少する傾向が認められるが、これは、高吸水性樹脂繊維含有量の増加による高吸水性樹脂繊維の保水量の増加による効果と、これにより保水されていない結露水が減少することで結露水の拡散蒸散効果の促進効果が2次的に誘発され、これらの効果が重畳されるとためと考えられる。
積層品における、拡散蒸発促進する層と高吸水性樹脂繊維を含有する層の配置に関しては、試験例材6,8の結果より、拡散蒸発を促進する層(第1層)を外側に配置する方が拡散蒸発促進する層を内側に配置するよりも結露水の滴下量が少なく優れていたが、第1層を外側に配置する方が、保水性は僅かに低下するが、水分保持力パラメータの向上により蒸発効果を大きくすることができるため、結果として結露水の滴下量が減少したものと考えられる。
・比較例材の試験結果:
比較例材1は、単層の基材樹脂繊維に高吸水性樹脂繊維を混率5質量%混合したものであるため、高吸水性樹脂繊維の混合量が少なく、42.5g(改善率:11.4%)の結露水の滴下が発生した。
比較例材2では、積層の基材樹脂繊維に高吸水性樹脂繊維を混率5質量%混合した。結果、43.9g(改善率:8.5%)の結露水の滴下が発生した。以上のように、改善前の基準に用いた従来例材1は不織布がないという、構造的な理由により、断熱性と保水性がともに不足することで試験結果が悪い結果となった。また、比較例材1と比較例材2は、単層品、積層品ともに高吸水性樹脂繊維の混率5質量%で発明例品と比較すると、これらの試験材の高吸水性樹脂繊維の混率が低いこと保水性が不足し、結露水の滴下量が発明例材の改善率の下限値である30%を上回り結露水の滴下量が多くなった。
比較例材3では、積層の基材樹脂繊維に高吸水性樹脂繊維を混率85質量%混合した。結果、高吸水性樹脂繊維の混率が発明例材より高い。そのため、縦配管の試験では2.6g(改善率:94.6%)の結露水の発生量であり、結露水の発生量が発明例と同様であり、結露水の滴下防止またまたは抑制効果が大きい。しかし、高吸水性樹脂繊維の混率が多いことから保水量が大きいのに対して、基材樹脂の含有割合が低下するため、発泡体と不織布の融着または接着界面の接合性が不安定であり、さらに吸水後の不織布表面の形状も不安定になることから不合格「×」とした。
比較例材4の場合、PET/PEの芯鞘構造の不織布で、高吸水性樹脂繊維を含まないが芯鞘構造の繊維の表面に親水性処理を行った不織布を発泡体の表面に接合したものであった。この場合には垂直配管試験の場合の滴下量は、44.5g(改善率:7.3%)であり、親水性処理の効果が多少認められるものと推定されるもの試験結果は発明例材の改善率30%を満足しなかった。
比較例材5は、PE繊維とレーヨン繊維の混合繊維からなる不織布で、不織布の全重量に対して40質量%レーヨン繊維を含んでいた。この材料の、滴下量は、41.1g(改善率:14.4%)で、滴下量が発明例材の改善率30%に及ばなかった。
比較例材6は、PET/PE芯鞘構造繊維とパルプの混合繊維からなる不織布で、不織布の全重量の30質量%パルプを含むものとした。結果、垂直配管試験の場合の滴下量は、38.8g(改善率:19.1%)であった。比較例材6では、他の従来例材より優れていたが、発明例材の最低の改善率30%には及ばなかった。
【0082】
なお、不織布を積層した形態のものでは、発明例材8が参考になる。すなわち、第1層(SAFのない層)が外側に配置され、第2層(SAFがある層)が内側に配置されたものが(配置(A))縦配管試験においては、第1層が外層になる配置(A)で、11.5gだったのに対して、反転したものでは14.3gで、改善率は、それぞれ76.0%と70.2%であった。この結果から、第1層が外層になる配置(A)のものの方が、第1層が内側で第2層が外側のもの(配置(B))より、若干良化する傾向が見られた。
【0083】

(保温カバー部材のその他熱交配管被覆部材への応用)
本発明の保温カバー部材を用いて、他の保温カバー部材への応用例について述べる。ここでの、応用例としては、保温カバー部材同士の隙間を覆う継ぎ目用被覆部材を作成して継ぎ目用被覆部材として使用すること、保温カバー部材を熱交配管の曲がり部のエルボー被覆部材として使用すること、既設配管の上に巻き付けて使用する既設配管カバーに対する被覆部材などに使用することが考えられる。そのため、本発明の保温カバー部材をこれらの部材に使用する目的で製造して使用したが、これらの部材の構造について説明する。
【0084】
・継ぎ目用被覆部材
ここで、本願発明における実験結果を基に、所定の保温カバー部材とこれと配管の長手方向に隣接して配置される保温カバー部材との前記保温カバー部材同士の隙間を覆うように配置することが可能な継ぎ目用被覆部材(保温カバー部材)65を製作した(図10参照)。この継ぎ目用被覆部材は発泡体の不織布3の反対側)の一方の面に粘着剤層63が設けられ、その上に離型シート62が貼合され、発泡体の他方の面に不織布が被覆されている。なお、前記不織布には所定量の高吸水性樹脂繊維(図示省略)が含まれている。
図11は2つの配管構造10が長手方向で連続する形で配設されている。この配管構造の間には細い継ぎ目66が形成されている。本実施形態では、この継ぎ目を図10で示した継ぎ目用被覆部材(粘着剤付保温カバー部材)65を巻き付けて固定している。このようにすることで、カバー部材で被覆されていない継ぎ目において結露することがなく、またこの部分での結露水の滴下も防止・抑制することができる。
【0085】
・エルボー被覆部材
図12はエルボー被覆部材(曲がり継手)25の一実施形態を模式的に示す正面図である。ハッチングの入った部分には粘着剤または接着剤を付与する。この曲がり継手には、細めの管収納部22と太めの管収納部23が形成されている。この管収納部22、23に冷媒用配管を配置し、さらにその中間には90°曲げの冷媒用配管曲げ部材が設置される。この際、エルボー被覆部材はシート状の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材をプレス成形して作成されるため、プレス成形により、保温用カバー部材の板厚は、成形部位により1-2mm減少するが、その分気泡が微細化するため、断熱性能はさほど変わらない。製品を使用する場合には、折り曲げ部24を谷折りに折り曲げて粘着剤同士を突き合わせて固定する。図示を省略しているが、本発明のエルボー被覆部材は、配管との接触面を発泡体面、エルボー被覆部材の外表面を本発明の不織布面として使用しているが、エルボー被覆部材(曲がり継手)25の表面には高吸水性樹脂繊維を含む不織布が配置されている。なお、エルボー被覆部材の場合も、結露水の滴下抑制または防止に関して、直管状の熱交換器配管の外周に被覆する結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材の場合と同様の効果を得ることができる。
【0086】
・チーズ部材被覆部材
また、同様の部材としては、曲がり部に使用するエルボー被覆部材の他、配管をT字状に分岐するチーズ部材がある。チーズ部材には、チーズ部材に対しても、T字状の頭の部分に相当する部分から下側または上側に分岐する金属製の部材である。このチーズ部材に対しても、特に図示しないがエルボー被覆部材と同様に、T字状の頭の部分を折り曲げ部として、下側または上側に分岐する分岐部を有し、折り曲げ部と分岐部にて分岐部材全体を囲うようにして、折り曲げ部を開口のためのヒンジとするチーズ部材被覆部材を形成することができる。ここで、チーズ部材被覆部材の場合も、結露水の滴下抑制または防止に関して、直管状の熱交換器配管の外周に被覆する結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材の場合と同様の効果を得ることができる。
【0087】
・既設の従来型配管カバーに被せる被覆部材
図13は既設配管カバーに被せる被覆部材68であって、冷媒用配管を覆う樹脂発泡体をフィルムで隔てられた二重巻きにした態様を示す断面図である。本実施形態の配管構造について断面の円の中心からいうと、既設の従来型配管カバー76は、冷媒用配管1が最も内部に位置し、それを樹脂発泡体2が覆う。その樹脂発泡体2をPE等の樹脂フィルム27が覆う構造になっている。この発泡体にPEフィルムを使用した構造では、PEフィルムは保水性がないため、配管の周囲の環境条件によっては結露が発生し、その結露が滴下しやすい。
さらにその樹脂フィルム27の外側を樹脂発泡体2が覆い、次いで最外層を不織布3が覆っている。つまり、樹脂発泡体2、樹脂フィルム27、樹脂発泡体2、及び不織布3が全体で既設の従来型配管カバー76に被せる被覆部材68を用いた被覆構造を構成している。このような既設の従来型配管カバー76に対して発泡体表面に高吸水性高分子を含む不織布を配置したカバー部材を、さらに被覆することで、結露水の滴下防止または滴下抑制することが可能になる。
本実施形態においては、上層の樹脂発泡体の最外層の不織布3の発泡体から延出した部分の裏面に粘着剤層63(層の厚みは図示省略)が配置されており、さらに、前記粘着剤層63の裏面には、フィルム状の離型シート62が貼合されており、この離型シート62を剥離して樹脂発泡体2と接着することができる。同図に示した従来型配管カバー被せる被覆部材68によれば、既設の従来型配管カバーで被覆された冷媒用配管に適用し、結露水の滴下を防止ないし抑制することができる。具体的には、図13に示した従来型配管カバーに被せる被覆部材68は隙間69を有し、ここの部分で保温カバー部材を観音開きに開いて、既設の配管に被せるようにして装着することができる。従来型配管カバー76に被せる被覆部材68の一方の端部から延出した不織布3は粘着剤層63が付されており、離型シートを剥がして接着しながら巻き付けることができる。この不織布3には、結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材を使用しているため、高吸水性樹脂繊維(図示省略)が本発明と同量含有されているので、結露水の滴下防止または滴下抑制する効果を発揮することができる。
【0088】
(保温カバー部材のダクト被覆部材及び被覆構造への応用)
断面略矩形状の熱交換機用金属製ダクトの外表面にも水蒸気が結露しダクトの表面を伝って水滴が滴下することがある。これに対し、図14は金属(特に鉄製)ダクト67に本発明に係る保温カバー部材をダクト被覆部材70として適用した態様を示している。具体的には、樹脂発泡体2の不織布3とは反対側に粘着剤層あるいは接着剤層(図示省略)を設け、この粘着剤層を介して保温カバー部材がダクト被覆部材70として鉄製ダクト67に貼り付けられている。ここで、不織布3には高吸水性樹脂繊維(図示省略)が含まれている。この際、粘着剤付き保温カバー部材は、ダクト被覆部材70として使用される。
ここで、ダクト被覆部材70は、ダクト67のコーナー部を跨いで、巻き付けられても良いが、この場合にコーナー部が均等な肉厚に巻き付けられないので、ダクトの外周面の各辺に対応する所定の大きさに切断したシートをダクト被覆部材70として、ダクト各外表面に貼り付けてもよい。以上のようにすることで、ダクトの外周面全体に渡り、保温カバー部材をダクト被覆部材70を被覆することができる。これにより、ダクト外周面にダクト被覆部材70を貼り付けたダクトの被覆構造を得ることができる。そのため、結露水の滴下防止または滴下抑制する効果を発揮することが期待される。
【0089】
(実施例、比較例などの材料、試験結果その他の追記)
前記の熱可塑性樹脂繊維としては、例えば、PP,PE,PETの繊維、あるいはPET/PE、PP/PEの芯鞘構造の繊維等がある。実施例においては、これらの繊維の内、不織布が単層、複層の場合ともに、基材樹脂としてPET/PEの芯鞘構造の不織布を用いて、試験結果を示したが、基材樹脂としては、PET/PEの芯鞘構造の他、PP/PEの芯鞘構造を用いてもよい。ここで、芯鞘構造の繊維を用いる理由は、芯部に高融点のPETやPPを用いて、鞘部にPEなどの低融点の繊維を用いることが望ましい。
なお、もちろん、PP,PE,PETなどの芯鞘構造でない通常の繊維を用いることも可能であるが、芯部に高融点の材料を用いて、鞘部に低融点の材料を用いることで、不織布の強度と融着性の両方を高めることができる。つまり、芯鞘構造の繊維を使用するか、通常の繊維を使用するかは、使用状況により判断すればよい。
【0090】
本発明の実施品(発明例材)は、樹脂発泡体に適用する不織布が単層であっても複層(2層)であっても、少なくとも高吸水性樹脂繊維を含有する不織布層を有し、この不織布層が高吸水性樹脂繊維を10質量%~80質量%含有し、残部として熱可塑性樹脂繊維を20質量%~90質量%含有することで、水分保持力パラメータと保水性とが所定の値を満足することになった。結果として、発明例材は、縦配管結露水滴下試験において、結露水の滴下量の従来例材に対する改善率が30%を上回る改善効果を示し、これを閾値と考えると、結露水の滴下量が33.6gを下回る良好な結果を発揮していた。このような良好な結果は、高吸水性樹脂繊維の種類によらず、ベルオアシス(発明例材1~4、6~10)のみでなく、ランシール(発明例材5、11)でも確認された。また、不織布が積層(2層)であるとき(発明例材6~11)のみならず、不織布が単層のときも(発明例材1~5)、所定量の高吸水性樹脂繊維を含むことで、めがね型配管を用いた縦配管による過酷温湿条件での結露水滴下試験において良好な結果を示すことが確認された。
【0091】
また、不織布が積層構造の場合には、高吸水性樹脂繊維を含有しない第1層を外層に、高吸水性樹脂繊維を含有する第2層を内層に配置する積層構造とこの構造を上下反転した高吸水性樹脂繊維を含有する第2層を外層に配置し、高吸水性樹脂繊維を含有しない第1層を内層に配置した構造の不織布の基本性能と結露防止または抑制試験結果からは、高吸水性樹脂繊維を含有しない第1層を外層に配置した積層構造のカバー部材の方が結露水の滴下防止または滴下抑制性能に優れ、積層品と単層品を比べると、積層品の方が単層品より、結露防止または抑制性能に優れることが分かる。
上記の積層品と単層品における結露防止または滴下抑制性能の差異は、上下反転構造を含めて積層構造とすることで、積層品において高吸水性樹脂繊維を含まない熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層である第1層を設けることで結露水を幅広く拡散させる効果を付与することができ、さらに第1層が外層に配置されることで結露水の蒸散効果が促進されためと推定される。これに対して、上下反転した第2層を外層にして配置した場合には、外層である第2層を浸透して第1層に到達した結露水を拡散させる効果はある程度と有するが、第2層を外層に形成した場合の結露水の蒸散効果は弱いため、第1層を外層とする積層品が第2層を外層とする積層品より結露水の滴下防止または滴下抑制効果が優れるものと考えられる。このことは、段落[0075]に記載の第1層を外面に配置した場合の蒸散効果が、第2層を外面に配置した場合や単層品における蒸散効果より大きいことから理解することができる。以上より、結露水の滴下防止または滴下抑制には、不織布における拡散蒸散効果と高吸水性樹脂繊維による保水効果のバランスが重要であり、第1層を外面に配置した不織布を樹脂発泡体に積層した保温カバー部材が結露水の滴下防止または滴下抑制には最も有効がものと考えられる。
【0092】
発明例材の中では、高吸水性樹脂繊維の混率が上がるほど、水分保持力パラメータおよび保水性が上がる傾向があり、縦配管結露水滴下試験において、結露水の滴下防止または滴下抑制の効果が見られた。具体的に、縦配管結露水滴下試験では、ベルオアシスの混率が10質量%のとき32.5gであるが、混率が75質量%に上がると3.8gまで抑えられることが分かった。また、混率が25%以上では、縦配管試験では、24g以下の0.8~23.3gに抑えることができ、改善率が50%を超えるので、高吸水性樹脂を含む層の混率は、25%以上とすることが望ましい。
また、図15には試験材の代表例によるめがね型配管を用いた縦配管による温度35℃×湿度90%の過酷環境による結露水滴下試験における結露水の滴下量の時間変化を示す。試験結果は、表2に示す従来例材1と発明例材8(高吸水性樹脂ベルオアシスの混率が40%)の経時変化を示したものである。従来例材1と発明例材8を対比すると、従来例材1は、経過時間6時間を少し過ぎると、急激に結露水の滴下が進行する傾向を示すが、本発明例材8は、11時間まで結露水の滴下が発生せずにその後の結露水が発生するが、その増加傾向も弱いことが見て取れる。また、これに対して、特に図示はしないが、水平配管の場合には、本願発明例材8を含めてすべての発明例材(発明例材1~発明例材11)は、いずれの材料も結露水の滴下は生じないが、従来例材1では水平配管の場合であっても、結露水の滴下が生じる。
【0093】
上記の結果から、本発明の滴下防止または抑制用保温カバー部材によれば、これを適用した配管構造において、エアコン等の冷媒用配管が水平配管でなく縦配管の場合にも、配管表面における結露水の滴下を効果的に抑制ないし防止することができることが分かる。したがって、本発明によれば、冷媒配管から滴下される水滴により天井裏や室内の垂直配管の周囲に水が溜まり、カビや細菌が発生したり、木材が腐食したりすることで生活環境が悪化するといったことを抑えることができ、従来のものに比し、生活環境の悪化を防止して家屋の健全性をより長期にわたり維持することができることが分かる。
【0094】
本発明に係る熱交換配管被覆部品において、結露水の滴下防止効果を有する。すなわち、本発明の保温カバー部材を用いて、保温カバー部材同士の隙間を覆う継ぎ目用被覆部材、保温カバー部材を熱交配管の曲がり部に適用したエルボー被覆部材、既設配管の上に巻き付けて使用する既設の従来型配管カバーを被覆する被覆部材のいずれかの保護部材を用いた場合において、結露水の生成を抑え、あるいは結露水が生成したとしてもその滴下を防止ないし抑制することが期待される。
ここで、上記の継ぎ目用被覆部材、エルボー被覆部材、既設配管カバーに対する被覆部材などに使用することが考えられる。これらのいずれの用途の場合にも、本発明の樹脂発泡体の表面に不織布を接合した結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材をそのまま使用した構造を基本的には利用し、さらに、熱交配管被覆部材としての保護部材の隙間や、発泡体を使用した既設の断熱構造上に、これらの外周に被覆するため、本発明と同等の効果が期待できる。また、厳密には、エルボー被覆部材の場合には、上記結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材をプレス成形して使用しているために、見かけ上のカバー部材としての板厚は、20%程度薄くなっている部分もあるが、その部分気泡が微細化しており、断熱性に差がないことが分かった。以上より、上記の継ぎ目用被覆部材、エルボー被覆部材、既設配管カバーに対する被覆部材は、いずれも本発明の樹脂発泡体の表面に不織布を接合した結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材と同様の結露防止または結露抑制性能を有するものと考えられた。ここで、これらの熱交配管被覆部材において、製品化して市場投入した結果、結露水の滴下防止または抑制効果が十分であることを確認している。
【0095】
銅製冷媒管と金属製(鉄製)ダクトの結露のし易さを考える。環境温度をそれぞれ同条件の35℃、冷媒管内を流れる流体温度を同等のそれぞれ5℃一定の定常状態で流れていると仮定すると、流体温度は共に一定であり、更にダクトの断面方向は発泡体に高吸水性繊維を含む所定厚さの不織布が表面側に貼合される同様の構成であるため、厚さを含む同一の発泡体を使用している条件では断面方向の熱移動に関して銅管とダクトは共にほぼ同様の表面温度になると考えられる。
【0096】
しかし、この場合には冷媒管を流れる冷媒温度とダクトを流れる空気の温度が同一であり、定常状態で管軸方向に流れる流体温度が一定となる前提において、両者間の不織布表面の温度は等しくなる。一方、現在検討している銅製冷媒管を流れる冷媒温度は5℃前後、ダクト内を流れる空気の温度は13~17℃である。この場合、ダクト内を流れる空気の方が、銅管を流れる冷媒温度よりも一般的に高くなるため、熱移動はダクトの方が少なくなる。
【0097】
また、冷媒管の材料である銅とダクトの材料である鉄の熱伝導率を比べると鉄の熱伝導率の方が低く、厚さを共に1mm程度とした場合での熱抵抗は後者の方が高くなる。このため、それぞれの流体からの熱移動についてダクト表面に被覆した発泡体と不織布の表面温度に対するダクト内の空気温度の影響は、銅管に発泡体と不織布を被覆したものよりも小さくなり、その結果、この観点でも不織布表面温度の低下が銅管の場合よりもダクトの方が小さくなり、ダクトに被覆する構造の方が、銅管に被覆する構造よりも内部の流体からの不織布表面温度に対する影響が少ないことになる。したがって、本発明の銅製冷媒配管での結露試験の評価結果は、ダクトの場合の発泡体と不織布の表面温度が過酷であるということがなく、むしろ緩和される傾向にあるものと考えられる。そのため、結露発生、滴下の評価に関しては、本発明の結露水の滴下防止、または滴下抑制用保温カバー部材の試験結果の傾向をそのまま適用することが可能であると考えられる。
【0098】
念のため、このことを確認するため、単層の不織布である試験材1(目付量を145g/mで、SAFの混率10%)、2層の積層不織布である試験材6(表層のPET/PEの目付量を18g/m、第2層のSAFを含む層の目付量を30g/m、SAFの混率10%)の発明品としてのSAFの混率の最も少ない試験材1,試験材6を用いて、幅10cm×高さ10cm×長さ30cmの直方体形状のダクトを作成して、試験材の不織布面側がダクトの表面に配置されるように試験材の発泡体表面側を接着剤でダクトに貼合することでダクトの全表面を、試験材で被覆された構造体を作製した。この構造体を空気の流れが鉛直方向となる様に設置した上で、前記ダクト内の空気温度を下限値である13℃±1℃となるように調整し、温度35℃×湿度90%の過酷環境下での結露水滴下確認試験を行った結果、表2に示す銅管の場合と同等以上の評価結果が得られた。その結果、ダクト用カバー部材としても、充分な結露防止、抑制効果を有することが確認された。
この際、不織布の重力に対抗して水分を保持する水分保持力パラメータが0.70以上で、所定の条件により求めた保水量が7.0g以上を満足する不織布であることは、表1より明らかである。
【0099】
ここで、本発明における結露水の滴下防止でなく、結露水の滴下防止または滴下抑制と記載したが、その理由は通常の使用環境では結露水の滴下防止は可能であるが、実際の施工現場においてはどのような過酷環境に遭遇するかはわからないし、今回結露水の滴下防止試験を行ったような過酷な温度湿度条件に該当する設置環境に遭遇しないまでも、種々の温度湿度条件が想定される。また、実際の敷設環境においては、過酷環境条件ではないにしても、温度湿度条件は時間とともに変動を伴うものであることから、個々の現場における設置環境と必ずしも完全な対比を行うことはできないという問題もある。そのため、本願においてはこのような配慮に基づいて本願の目的や課題において、結露水の滴下防止でなく、結露水の滴下防止または滴下抑制と敢えて記載した。また、恒温恒湿槽を用いためがね型配管を用いた縦配管による過酷温湿環境試験において、本発明の高吸水性樹脂繊維の混率を10%以上80%以下の混率で含むカバー部材は、従来例材1(現在使用されている製品:発泡体の表面にポリエチレンフィルムを貼合した製品)に対して、結露水の発生量少なくとも30%の改善効果があること、また、高吸水性樹脂繊維の混率を25%以上80%以下とすれば、50%の以上の改善効果があることを確認した。以上より、本願発明における試験結果をみれば、本発明例材は、従来例材や比較例材に比べて少なくも過酷環境においても結露水の滴下を大幅に抑制することは可能であることは明らかであり、実際の使用環境においても結露水の滴下防止または滴下抑制のいずれかを達成できることは明らかである。
【符号の説明】
【0100】
1 冷媒用配管
11 パイプ
12 ドレン管
13 配線の配管
2 樹脂発泡体
21 気泡
22,23 管収納部
25 エルボー被覆部材(曲がり継手)
26 エルボー収納部
27 樹脂フィルム
3 不織布
31 不織布第1層
32 不織布第2層
35 熱可塑性樹脂繊維
36 高吸水性樹脂繊維
5 保温カバー部材
6 空洞、流路
10、20、30、40 配管構造
41 試験片
42 水滴の移行範囲
43 上方の水滴移行量
44 下方の水滴移行量
51 容器
52 水
53 測り(電子天秤)
62 離型シート
63 粘着剤層
65 継ぎ目用被覆部材
66 継ぎ目
67 金属ダクト(鉄製ダクト)
68 既設の従来型配管カバーに被せる被覆部材
69 隙間
70 ダクト被覆部材
71 室内機側配管
72 室外機側配管
73 中間配管
75 測り(電子天秤)
76 従来型配管カバー
100 保水性試験材

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15