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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007363
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】水分量センサー及び水分量測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/22 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
G01N27/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097252
(22)【出願日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2022106946
(32)【優先日】2022-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】西本 壮志
(72)【発明者】
【氏名】青木 稔
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA14
2G060AC01
2G060AF03
2G060AF10
2G060AG04
2G060CA01
2G060GA01
2G060HA02
2G060HC10
2G060JA03
(57)【要約】
【課題】含まれる成分の状況による抵抗値の影響を抑制して水分量を求める。
【解決手段】試料に接触する電極端子21a、21bに印加される交流電流の位相、及び、交流電流が印加された際の電極端子22a、22bの電圧の位相の差である位相差を導出し、位相差に基づいて静電容量を求め、静電容量に基づいて試料に含まれる水分量を判断する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中隔離部材が埋設された環境材の水分量を検出する水分量センサーにおいて、
前記環境材に接触する電極端子と、
前記電極端子に交流電流を供給する交流電流印加手段と、
前記電極端子の電流の位相、前記電極端子の電圧の位相の差である位相差を導出する位相差導出手段と、
前記位相差導出手段で導出された前記位相差の指標に基づいて水分量を判断する水分判断手段とを備えた
ことを特徴とする水分量センサー。
【請求項2】
請求項1に記載の水分量センサーにおいて、
前記電極端子は、
前記環境材に配され、電流測定手段に接続される一対の電流電極端子と、
前記環境材に配され、電圧測定手段に接続される一対の電圧電極端子とを有し、
前記電流測定手段では、
前記一対の電流電極端子の間の電流の値が測定され、
前記電圧測定手段では、
前記一対の電圧電極端子の間の電圧の値が測定される
ことを特徴とする水分量センサー。
【請求項3】
請求項2に記載の水分量センサーにおいて、
前記一対の電流電極端子が前記交流電流印加手段に接続され、
前記一対の電流電極端子は、互いに対向する平面を有し、
前記一対の電圧電極端子は、前記一対の電流電極端子の対向する平面の間に配されている
ことを特徴とする水分量センサー。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の水分量センサーにおいて、
前記水分判断手段は、
前記位相差の指標として、前記位相差に基づいて静電容量を求める機能を有している
ことを特徴とする水分量センサー。
【請求項5】
請求項4に記載の水分量センサーにおいて、
前記電極端子は、
前記地中隔離部材が埋設された前記環境材が容器に収容され、前記容器を保持して遠心力により前記容器に収容された前記環境材に応力を加え、遠心力場の相似則により前記地中隔離部材の挙動を把握・評価する装置における前記容器の中の前記環境材に配される
ことを特徴とする水分量センサー。
【請求項6】
被検出材に含まれる水の状況を判断する水分量測定方法において、
被検出材に交流電流を印加して電圧を測定し、印加した前記交流電流の位相と測定された前記電圧の位相との差である位相差を評価し、前記位相差に基づいた指標により前記被検出材に含まれる水分量を判断する
ことを特徴とする水分量測定方法。
【請求項7】
請求項6に記載の水分量測定方法において、
前記位相差に基づいた指標は、前記位相差を基にして導出される静電容量である
ことを特徴とする水分量測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物等の地中隔離部材が埋設される環境材の水分量を測定する水分量センサー、及び、水分量測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性廃棄物を地下深部の岩盤中に埋設処分する処分施設が知られている。放射性廃棄物を埋設処分する施設では、放射性廃棄物が容器に密閉されて地中隔離部材とされ、地中隔離部材が地下数百メートルの岩盤に埋設されている。
【0003】
地中隔離部材は、放射性廃棄物が格納容器に密閉され、格納容器の周囲に難透水層を構築するために、透水性が極めて低いベントナイト系の材料、例えば、ベントナイトの緩衝材(環境材)、もしくは、ベントナイトと砂を混合した緩衝材(環境材)で格納容器が包まれて構成されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
地中隔離部材は、廃棄物の発熱による緩衝材や岩盤の変形、地下水の影響、地圧による岩盤の変形等、熱、水理、力学の複合的な現象の影響を受けることになる。このため、地中隔離部材は、長年の隔離により埋設環境が変化する。
【0005】
長期に亘り地中隔離部材を安定して埋設するためには、熱、水理、力学の相互作用の影響を考慮して相当の長期に亘り埋設環境の評価を行い地中隔離部材の挙動を評価する必要がある。例えば、ベントナイト系の材料は、水分の量により膨潤挙動が左右されるため、埋設環境の評価を行う一つに、水分量を把握することが知られている。
【0006】
水分量を把握するためには、入力される電流と出力電圧とに応じて電気抵抗を求め、電気抵抗に応じて水分量を推定することが行われている。即ち、電気抵抗の大小により水分量の多い少ないが判断されている。一方、水に金属成分などが含まれると電気抵抗が小さくなり、同じ水分量であっても、含まれる成分(例えば、塩分)により電気抵抗が小さくなるのが現状である。
【0007】
このため、例えば、塩分がわずかに含まれるだけで電気抵抗が小さくなって、電流に対する電圧の出力値が上限に達して水分量を正確に測定できなくなる虞があった。大掛かりな機器を用いた水分量センサー(測定レンジが大きいセンサー)を用いることで、電気抵抗が異なっても水分量をある程度正確に測定することができる。
【0008】
しかし、地中隔離部材の埋設環境場での挙動評価を行う評価装置では、スペース上の制約があり、大掛かりな水分量センサーを適用することができず、電気抵抗に影響を及ぼす成分が含まれる水分量の測定を行うためには、種々検討を行う必要があるのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003―211113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、大掛かりな機器を用いることなく、水に含まれる成分の影響を抑制した状態で水分量を求めることができる水分量センサーを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、水に含まれる成分の影響を抑制した状態で水分量を容易に求めることができる水分量測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の水分量センサーは、地中隔離部材が埋設された環境材の水分量を検出する水分量センサーにおいて、前記環境材に接触する電極端子と、前記電極端子に交流電流を供給する交流電流印加手段と、前記電極端子の電流の位相、前記電極端子の電圧の位相の差である位相差を導出する位相差導出手段と、前記位相差導出手段で導出された前記位相差の指標に基づいて水分量を判断する水分判断手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項1に係る本発明では、電流の位相と電圧の位相の差である位相差の指標に基づいて水分量を判断するので、水に含まれる成分の状況による抵抗値の影響を抑制して水分量を求めることができる。電流電圧の条件が同じであれば、位相差の指標は位相差そのものを用いることも可能である。
【0014】
したがって、大掛かりな機器を用いることなく、水に含まれる成分の影響を抑制した状態で水分量を求めることが可能になる。
【0015】
そして、請求項2に係る本発明の水分量センサーは、請求項1に記載の水分量センサーにおいて、前記電極端子は、前記環境材に配され、電流測定手段に接続される一対の電流電極端子と、前記環境材に配され、電圧測定手段に接続される一対の電圧電極端子とを有し、前記電流測定手段では、前記一対の電流電極端子の間の電流の値が測定され、前記電圧測定手段では、前記一対の電圧電極端子の間の電圧の値が測定されることを特徴とする。
【0016】
請求項2に係る本発明では、一対の電流電極端子と一対の電圧電極端子とで構成される4端子のセンサーを用いることで、電極と試料(環境材)の接触による電気抵抗の影響を低減することができる。
【0017】
また、請求項3に係る本発明の水分量センサーは、請求項2に記載の水分量センサーにおいて、前記一対の電流電極端子が前記交流電流印加手段に接続され、前記一対の電流電極端子は、互いに対向する平面を有し、前記一対の電圧電極端子は、前記一対の電流電極端子の対向する平面の間に配されていることを特徴とする。
【0018】
請求項3に係る本発明では、一対の電流電極端子は互いに対向する平面を有し、一対の電流電極端子の対向する平面の間に一対の電圧電極端子が配されるので、平面同士の指向性により、対向する平面の間に電場が安定して形成され、一対の電圧電極端子の配置の範囲に電場を確実に形成することができる。
【0019】
また、請求項4に係る本発明の水分量センサーは、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の水分量センサーにおいて、前記水分判断手段は、前記位相差の指標として、前記位相差に基づいて静電容量を求める機能を有していることを特徴とする。
【0020】
請求項4に係る本発明では、静電容量により水分量が求められる。位相差に対し、印加電流の周波数などを加味して静電容量を求めることができる。静電容量は、多数のデータ(種々の印加周波数に対する位相差と静電容量との関係など)により作成されたマップから求めることができ、また、位相差の値に対して演算により算出することもできる。
【0021】
また、請求項5に係る本発明の水分量センサーは、請求項4に記載の水分量センサーにおいて、前記電極端子は、前記地中隔離部材が埋設された環境材が容器に収容され、前記容器を保持して遠心力により前記容器に収容された前記環境材に応力を加え、遠心力場の相似則により前記地中隔離部材の挙動を把握・評価する装置における前記容器の中の前記環境材に配されることを特徴とする。
【0022】
請求項5に係る本発明では、設置スペースに制約がある埋設環境場の評価装置の遠心力場の試料の水分量を測定することができる。
【0023】
上記目的を達成するための請求項6に係る本発明の水分量測定方法は、被検出材に含まれる水の状況を判断する水分量測定方法において、被検出材に交流電流を印加して電圧を測定し、印加した前記交流電流の位相と測定された前記電圧の位相との差である位相差を評価し、前記位相差に基づいた指標により前記被検出材に含まれる水分量を判断することを特徴とする。
【0024】
請求項6に係る本発明では、交流電流を印加した際の電流と電圧との位相差に基づいた指標により被検出材に含まれる水分量を判断するので、水に含まれる成分の電気抵抗の影響を排除した状態で水分量を判断することができる。
【0025】
そして、請求項7に係る本発明の水分量測定方法は、請求項6に記載の水分測定方法において、前記位相差に基づいた指標は、前記位相差を基にして導出される静電容量であることを特徴とする。
【0026】
請求項7に係る本発明では、位相差を基にして導出される静電容量により水分量を測定することができる。
【0027】
したがって、水に含まれる成分の影響を抑制した状態で水分量を容易に求めることが可能になる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の水分量センサーは、大掛かりな機器を用いることなく、水に含まれる成分の影響を抑制した状態で水分量を求めることが可能になる。
【0029】
また、本発明の水分量測定方法は、水に含まれる成分の影響を抑制した状態で水分量を容易に求めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施例に係る水分量センサーが用いられる埋設環境場の挙動評価装置の全体構成を表す概略側面図である。
図2】本発明の一実施例に係る水分量センサーを構成する電極センサーの概略構成の外観図である。
図3】電極センサーの装着状況の説明図である。
図4】電流値と電圧値の経時変化を表すグラフである。
図5】本発明の一実施例に係る水分量センサーのブロック構成図である。
図6】塩の成分が含まれない水の水分量に対する電流値の関係を表すグラフである。
図7】塩の成分が含まれない水の水分量に対する静電容量の関係を表すグラフである。
図8】塩の成分が含まれる水の水分量に対する電流値の関係を表すグラフである。
図9】塩の成分が含まれる水の水分量に対する静電容量の関係を表すグラフである。
図10】本発明の他の実施例に係る水分量センサーを構成する電極センサーの概略構成の外観図である。
図11】水分量に対する位相差の関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1に基づいて本発明の一実施例に係る水分量センサーが用いられる埋設環境場の挙動評価装置を説明する。
【0032】
図1には埋設環境場の挙動評価装置の概略構成を示してある。埋設環境場の挙動評価を行う図示の挙動評価装置1の試料(被検出材)に対し本発明の水分量センサーが適用され、限られたスペースに配置された挙動評価装置1の試料の水分量が測定される。
【0033】
尚、本願発明の水分量センサーは、図示の挙動評価装置1の試料以外の試料に対する水分量の測定に適用することができる。
【0034】
挙動評価装置1は、鉛直方向に延びる中心軸S(軸心)を中心に中心回転軸2が回転自在に設けられている。中心回転軸2は図示しない駆動手段により所定の回転速度で駆動回転される。中心回転軸2の下部には、水平方向(軸方向に直交する方向)に延びる回転アーム3の基端が設けられている。
【0035】
中心回転軸2を挟んで回転アーム3の反対側にはカウンターアーム4の基端が設けられ、カウンターアーム4の先端にはカウンターウエイト5が回動自在に吊り下げ支持されている。回転アーム3の先端には保持部6が回動自在に吊り下げ支持され、保持部6には埋設環境部材模型(環境材:例えば、放射性廃棄物が密閉された格納容器である地中隔離部材の周囲に構築され、地中隔離部材が埋設された状態になるもの)としての試料7が収容された容器8が保持される。容器8は、例えば、内径が50mm程度の筒状の部材で構成され、筒内に試料7が収容される。
【0036】
中心回転軸2が中心軸Sを中心に駆動回転されることにより、回転アーム3及びカウンターアーム4が所定の速度で旋回する。回転アーム3及びカウンターアーム4の旋回により、遠心力が働いてカウンターウエイト5及び保持部6の底部が外側に回動し、回転アーム3及びカウンターアーム4と、カウンターウエイト5及び保持部6とが一直線上に配された状態で旋回する。これにより、容器8(試料7)の自重方向に遠心力が加えられる。
【0037】
試料7には所定量の水が供給され、自重方向に遠心力が加えられた試料7の水の挙動が再現される。試料7に本発明の電極センサー11が配され、自重方向に遠心力が加えられた試料7の水の挙動に応じた水分量の状況が測定される。
【0038】
電極センサー11の検出情報は制御装置12に送られ、制御装置12では、自重方向に遠心力が加えられた状況の下での試料7の所定部位の水分量が評価される。つまり、電極センサー11と制御装置12により水分量センサー13が構成されている。具体的には、試料7の所定部位の水の挙動が遠心力場の相似則により加速されて評価され、例えば、地中隔離部材の埋設環境場での水の挙動に基づく水分量の状態が評価される。
【0039】
具体的には後述するが、制御装置12には電流測定手段15、電圧測定手段16が備えられ、電流測定手段15で測定された電流の状況、電圧測定手段16で測定された電圧の状況に基づいて、含まれる成分の影響を抑制した状態で水分量が評価される。
【0040】
本発明の水分量センサー13は、図示の挙動評価装置1の試料7の水分量を測定することに限定されず、他の構造の評価装置の環境部材模型や、実際の埋設環境場における環境材に配して水分量を測定することが可能である。
【0041】
図2から図8に基づいて本発明の水分量センサー13を具体的に説明する。
【0042】
図2には本発明の一実施例に係る水分量センサー13を構成する電極センサー11の概略構成を説明する外観状況、図3には電極センサー11の装着状況を示してあり、図3(a)は斜視状況、図3(b)は平面視状況である。また、図4には印加電流と検出された電圧の経時変化を表すグラフを示してある。
【0043】
図2図3に基づいて電極センサー11の構成を具体的に説明する。
【0044】
図に示すように、環境材としての試料7に接触する電流計測用の電極端子21a、21b(電流を測定する電極端子:電流電極端子)、及び、電圧計測用の電極端子22a、22b(電圧を測定する電極端子:電圧電極端子)が備えられている。電極端子21a、21b、電極端子22a、22bは、基材23に取り付けられている。
【0045】
電極端子21a、21bは電流測定手段15に接続され、電極端子21a、21bの回路には交流電流印加手段18(交流電源)から交流電流が印加される。電極端子22a、22bは電圧測定手段16に接続され、電極端子21a、21bの回路に交流電流印加手段18から交流電流が印加された際に、電極端子22a、22bの回路における電圧の状況が電圧測定手段16で測定される。
【0046】
電極センサー11は、電流を測定する電極端子21a、21b、電圧を測定する電極端子22a、22bで構成される4端子のセンサーを用いているので、電極と試料7(環境材)の接触により生じる電気抵抗の影響を低減することができる。
【0047】
図3に示すように、例えば、内径が50mm程度の筒状の部材で構成された容器8の筒面にはセンサー保持部8aが形成され、電極センサー11の基材23がセンサー保持部8aに嵌め込まれ、電極端子21a、21b、及び、電極端子22a、22bが試料7に差し込まれる(例えば、10mm)。これにより、電極端子21a、21b、及び、電極端子22a、22bが試料7に接触する。
【0048】
交流電流印加手段18から交流電流が印加されると、電極端子21a、21bの回路には、図4に実線で示すように、正弦波の交流電流が生じる。そして、電極端子21a、21bの回路に交流電流印加手段18から交流電流が印加された際に、電極端子22a、22bの回路には、図4に一点鎖線で示すように、位相差θをもって正弦波の電圧が測定される。
【0049】
本実施例では、電極端子21a、21bの電流の位相、電極端子22a、22bの電圧の位相の差である位相差θを導出し、位相差θに基づいての指標(静電容量)を求め、静電容量に基づいて試料7に含まれる水分量を判断するようになっている。
【0050】
図5から図9に基づいて水分量センサー13を説明する。
【0051】
図5には水分量センサー13のブロック構成、図6には塩の成分が含まれない水の水分量に対する電流値の関係を表すグラフ、図7には塩の成分が含まれない水の水分量に対する静電容量の関係を表すグラフ、図8には塩の成分が含まれる水の水分量に対する電流値の関係を表すグラフ、図9には塩の成分が含まれる水の水分量に対する静電容量の関係を表すグラフを示してある。
【0052】
図5に基づいて制御装置12のブロック構成を説明する。
【0053】
制御装置12には、電流の信号が入力される電流測定手段15、電圧の信号が入力される電圧測定手段16が備えられている。電流測定手段15、電圧測定手段16で測定された電流の状況(図4参照)、及び、電圧の状況(図4参照)は位相算出手段としてのθ導出機能31に入力され、電流と電圧の位相差θ(図4参照)が求められる。
【0054】
θ導出機能31で求められた位相差θは、静電容量導出機能32(水分量判断手段)に送られる。静電容量導出機能32では、印加した電流の位相と測定された電圧の位相との差である位相差θに基づいて静電容量(位相差θに基づいての指標)が求められる。静電容量導出機能32で求められた静電容量(位相差θに基づいての指標)は水分量判断機能33(水分量判断手段)に送られ、水分量判断機能33では試料7の水分量が判断される。
【0055】
つまり、電流と電圧の関係である電気抵抗の大小だけではなく、静電容量の大小により試料7の水分量が判断される。静電容量により水分量を判断するので、大掛かりな機器を用いることなく(小さな電極センサー11により)、水に含まれる成分の影響を抑制した状態で(電気の通しやすさの影響を抑制した状態で)試料7の水分量を求めることができる。
【0056】
図6に示すように、塩の成分が含まれない水の場合、水分量に対して電流値はほぼ比例した状態で大きくなっている。図7に示すように、塩の成分が含まれない水の場合、水分量に対して静電容量の値もほぼ比例した状態で大きくなっている。
【0057】
このため、塩の成分が含まれない水が試料7に含有されていた場合、静電容量に基づいて水分量を的確に求めることができる。
【0058】
図8に示すように、塩の成分が含まれる水の場合、電気抵抗が真水に比べて極めて低いので、少ない水分量であっても電流値が急激に大きくなる。これに対し、図9に示すように、塩の成分が含まれる水であっても、水分量に対して静電容量の値はほぼ比例した状態で大きくなっている。
【0059】
このため、塩の成分が含まれる水が試料7に含有されていた場合であっても、静電容量に基づいて水分量を測定することで、試料7に含有される水分量を的確に求めることができる。
【0060】
図6から図9の結果を基に、制御装置12(水分量判断機能33)には、周波数に応じて、図7図9に対応するデータが多数記憶され(マップ化され)、静電容量に応じた水分量が判断される。即ち、含まれる成分(例えば、Na、Cl)の影響を抑制して(電気の通しやすさの影響を抑制して)水分量を判断することができる。
【0061】
尚、静電容量は、多数のデータ(種々の印加周波数に対する位相差θと静電容量との関係など)により作成されたマップから求めることができ、また、位相差の値に対して演算により算出することもできる。
【0062】
上述した水分量センサー13では、試料7(被検出材である環境材)に交流電流を印加して電圧を測定し、印加した電流の位相と測定された電圧の位相との差である位相差θに基づいて静電容量を求め、静電容量を評価して試料7に含まれる水分量を判断している。このため、大掛かりな機器を用いることなく、水に含まれる成分の影響を抑制した状態で(電気の通しやすさの影響を抑制した状態で)、試料7の水分量を求めることができる。
【0063】
したがって、機器を小型化することができ、遠心力場における埋設環境場の挙動評価装置1のように、スペース上の制約があり、大掛かりな水分量センサーを適用することができない装置に対しても、小型の電極センサー11で構成される水分量センサー13を容易に適用することができる。これにより、遠心力場における埋設環境場の挙動評価装置1であっても、電気抵抗に影響を及ぼす成分が含まれる水が含有されていても、試料7の水分量を容易に判断することができる。
【0064】
図10図11に基づいて本発明の他の実施例に係る電極センサーを説明する。
【0065】
図10には本発明の他の実施例に係る電極センサーの概略構成を説明する外観状況、図11には水分量に対する位相差の関係を示してある。尚、図2図3に示した部材と同一部材には同一の符号を付してある。
【0066】
図10に示すように、本実施例の水分量センサー40は、基材23には、電圧計測用の電極端子22a、22b(電圧を測定する電極端子:電圧電極端子)が取り付けられ、電極端子22a、22bの外側には、絶縁ピン41a、41bを介して電流計測用の矩形電極端子42a、42b(電流を測定する電極端子:電流電極端子)が取り付けられている。
【0067】
矩形電極端子42a、42bは電流測定手段15(図2参照)に接続され、矩形電極端子42a、42bの回路には交流電流印加手段18(図2参照)から交流電流が印加される。
【0068】
矩形電極端子42a、42bは、矩形状の端子であり、互いに対向する平面45を有している。そして、電極端子22a、22b(電圧電極端子)は、一対の矩形電極端子42a、42bの対向する平面45の間に配されている。一対の矩形電極端子42a、42bは互いに対向する平面45を有し、平面45の間に一対の電極端子22a、22b(電圧電極端子)が配されるので、平面45同士の指向性により、対向する平面45の間に電場が安定して形成され、一対の電極端子22a、22b(電圧電極端子)の配置の範囲に電場を確実に形成することができる。
【0069】
電極端子22a、22b(電圧電極端子)は、例えば、径が0.5mmのピン状の部材であり、矩形電極端子42a、42bの短辺の幅hは、電極端子22a、22b(電圧電極端子)の径の4倍から8倍の寸法(例えば、2mmから4mm:3mm)で形成されている。
【0070】
尚、対向する平面45を有する電流電極端子として矩形状の矩形電極端子42a、42bを例に挙げて説明したが、電流電極端子としては、断面が半円状の端子の平面を対向させた構成にしたり、角材状の端子の平面を対向させた構成にしたりすることができる。また、矩形面を適宜湾曲させた構成にすることも可能である。
【0071】
交流電流印加手段18(図2参照)から交流電流が印加されると、矩形電極端子42a、42bの回路には正弦波の交流電流が生じ、電極端子22a、22b(電圧電極端子)の回路には、位相差θをもって正弦波の電圧が測定される。一対の電極端子22a、22b(電圧電極端子)の配置の範囲に電場が安定して形成されるので、位相差θに対してバラツキのない状態で静電容量が導出される。
【0072】
図11に示すように、水分量が多くなるに従い位相差θが小さく変化する(リニアに変化する)ようになっている。一対の矩形電極端子42a、42bの対向する平面45の間には電場が安定して形成されるため、水分量に係わらず位相差θを確実に計測することができ、図11に示した状態での位相差θを計測することができる(リニアの変化に対してバラツキなく位相差θを計測することができる)。
【0073】
上述した実施例の水分量センサー40を用いることで、大掛かりな機器を用いることなく、水に含まれる成分の影響を抑制した状態で(電気の通しやすさの影響を抑制した状態で)、試料の水分量を求めることができ、しかも、広範囲の水分量であっても、位相差θを適切に計測することができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、水分量センサー、水分量測定方法の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 挙動評価装置
2 中心回転軸
3 回転アーム
4 カウンターアーム
5 カウンターウエイト
6 保持部
7 試料
8 容器
11 電極センサー
12 制御装置
13、40 水分量センサー
15 電流測定手段
16 電圧測定手段
18 交流電流印加手段
21 電流を測定する電極端子
22 電圧を測定する電極端子
23 基材
31 θ導出機能
32 静電容量導出機能
33 水分量判断機能
41 絶縁ピン
42 矩形電極端子
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
図11