(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073933
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】半導体基板の製造方法、半導体基板、及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20240523BHJP
C30B 29/36 20060101ALI20240523BHJP
C30B 33/06 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
H01L21/02 B
C30B29/36 A
C30B33/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184924
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】大槻 剛
(72)【発明者】
【氏名】松原 寿樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 温
(72)【発明者】
【氏名】阿部 達夫
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AA03
4G077BE08
4G077FF07
4G077HA12
(57)【要約】
【課題】
H
+注入による剥離技術において4H-SiCの順方向劣化を抑制できる半導体装置の製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】
4H-SiC基板の表面にH
+を含むイオンを注入してイオン注入層2を形成するイオン注入工程と、イオン注入工程を行った4H-SiC基板の表面に、別の支持基板3を接合して接合基板10を得る接合工程と、接合基板10に、水素を含む雰囲気で熱処理をおこない、イオン注入層2で4H-SiC基板を剥離することで、4H-SiC基板の表層が4H-SiC層として支持基板3上に転写された結合基板12と、4H-SiC基板から表層が剥離された後の基板である剥離基板11に分離する剥離工程と、を含むことを特徴とする半導体基板の製造方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4H-SiC基板の表面にH+を含むイオンを注入してイオン注入層を形成するイオン注入工程と、
前記イオン注入工程を行った前記4H-SiC基板の表面に、別の支持基板を接合して接合基板を得る接合工程と、
前記接合基板に、水素を含む雰囲気で熱処理をおこない、前記イオン注入層で前記4H-SiC基板を剥離することで、前記4H-SiC基板の表層が4H-SiC層として前記支持基板上に転写された結合基板と、前記4H-SiC基板から表層が剥離された後の基板である剥離基板に分離する剥離工程と、
を含むことを特徴とする半導体基板の製造方法。
【請求項2】
前記剥離工程は、
前記イオン注入層で前記4H-SiC基板が剥離する温度未満で所定の時間、前記接合基板を加熱して、前記イオン注入工程で注入したH+を内方拡散させた後に、剥離温度以上に昇温して前記イオン注入層で前記4H-SiC基板を剥離する工程であることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項3】
前記4H-SiC基板はバルク4H-SiCであり、
前記イオン注入工程は、前記バルク4H-SiCの表面にH+を含むイオンを注入する工程であることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項4】
前記剥離工程後に、
前記結合基板の前記4H-SiC層上に4H-SiCのエピタキシャル成長をおこないエピタキシャル層を形成するエピタキシャル工程を含むことを特徴とする、請求項3に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項5】
前記4H-SiC基板は、バルク4H-SiCの表面に4H-SiCのエピタキシャル成長をおこないエピタキシャル層を形成したエピタキシャル基板であり、
前記イオン注入工程は、前記エピタキシャル層の表面にH+を含むイオンを注入する工程であることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項6】
前記イオン注入工程は、H+の注入量が5×1016atoms/cm2以上となるようにイオンを注入する工程であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項7】
支持基板と、
前記支持基板の表面に接合された、H+を含むイオンを含有する4H-SiC層と、
を備えることを特徴とする半導体基板。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体基板を備えることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体基板の製造方法、半導体基板、及び半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SiCは、2.2~3.3eVという広いバンドギャップを有することから高い絶縁破壊強度を有し、また熱伝導率も大きいためパワーデバイスや高周波用デバイスなどの各種半導体デバイス用の半導体材料として期待されている材料である。
【0003】
しかしながら、半導体としてのSiCにはダイオードなど実際の素子を作製した場合に順方向に通電した場合に多数のキャリアが基板に注入されることで、転位が拡張して順方向特性が変動してしまい(Vf変動)、動作が不安定になり信頼性が損なわれる、順方向劣化と呼ばれる現象が知られており、大きな問題である(非特許文献1)。
【0004】
この転位の拡張を止める方法として、Cuイオンを注入する方法(非特許文献2)が2010年に提案されたのち、最近になってH+でも同様の効果があることが報告されている(非特許文献3、4)。具体的には非特許文献3、4ではH+を1.0×1015atоms/cm2程度注入する方法が提案されている。
【0005】
このH+のSiCへの注入に関しては他にもいくつかの先行技術が報告されている。特許文献1には、2枚のSiC単結晶ウェーハを準備し、それぞれに酸化膜を形成したのち、片方の基板に水素イオンを注入し、さらに酸化層を介して室温で接合一体化した後、500℃以上に加熱処理することにより水素イオン注入された箇所でSiC単結晶ウェーハを2分割し半導体電子素子用基板を作製する方法が記載されている。この方法では、接合部に酸化膜が存在しており、縦方向デバイスとする際に、この酸化膜が絶縁層として機能しパワーデバイス基板としての機能が大きく制限されてしまう。また、特許文献2には、H+注入した単結晶と多結晶のSiC基板を貼り合わせたのちに、単結晶および多結晶それぞれを剥離する方法が開示されている。一方で2回剥離をおこなうことによるコストの増加とそれぞれ所定の工程で剥離をおこなう難しさ、また順方向劣化については特許文献2には言及がされていない。さらに、特許文献3には、不純物濃度と欠陥密度に注目しており欠陥密度の少ない高抵抗基板をH+注入を用いて転写する方法が記載されている。この方法は、もともとの基板に存在する欠陥を低減する方法ではあるが、その後の信頼性に関わる順方向劣化については言及がない。さらに、特許文献4は、H+による基板剥離のもととなる技術についてであり、拡散バリア(酸素拡散バリア)機能については言及があるが、こちらも順方向劣化については言及がない。特許文献5はH+による分離への記述はあるが、同じく順方向劣化に対する解決策は示されていない。さらに特許文献6には、多種多様な基板をH+の剥離技術にて作製する方法が述べられている。このように、先行技術では、H+注入による順方向劣化の抑制や、H+注入による剥離技術を用いて基板を作製することはそれぞれで述べられているが、H+注入による剥離技術において順方向劣化を抑制することについては言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-003842号公報
【特許文献2】特開2016-018890号公報
【特許文献3】特開2014-022711号公報
【特許文献4】特開2007-329470号公報
【特許文献5】特開2007-227415号公報
【特許文献6】特表2022-510822号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】M. Skowronski and S. Ha, “Degradation of hexagonal silicon-carbide-based bipolar devices”, J. Appl., Phys., 99, 01101(2006).
【非特許文献2】B. Chen, H. Matsuhara, T. Sekiguchi, T. Ohyanagi, A. Kinoshita and H. Okumura, “Pinning of recombination-enhanced dislocation mition in 4H-SiC : Role of Cu and EH1 complex”, Appl. Phys. Lett., 96, 212110(2010).
【非特許文献3】M. Kato, O. Watanabe, T. Mii, H. Sakane, S. Harada, “Suppression of stacking fault expansion in SiC PiN diodes by H+ implantation”, Abstract of 19th International Conference on Silicon Carbide and Related Materials, 453(2022).
【非特許文献4】S. Harada, T. Mii, H. Sakane, M. Kato, “Suppression of recombination enhanced dislocation glide motion in 4HSiC by hydrogen ion implantation”, Abstract of 19th International Conference on Silicon Carbide and Related Materials, 459(2022).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のSiC素子の順方向劣化の問題を基板レベルで解決し、さらに、デバイス工程で薄膜化されてしまいロスとされしまう貴重なバルクSiC基板を効率よく使用するためになされたものである。より詳しくは高耐圧デバイス基板として期待されている4H-SiCが、通電によりキャリアが注入されることで転位が拡張して電気特性が変化する順方向劣化(通電劣化)を抑制するとともに、先ほどのべたようなH+イオンを使用した基板剥離技術を両立させることを目的とする。
つまり、本発明は信頼性で問題となる転位の拡張による順方向特性の劣化の抑制とより安価なSiC基板の提供を両立することを最終的な目的とする。
そのために、本発明は、H+注入による剥離技術において4H-SiCの順方向劣化を抑制できる半導体装置の製造方法、半導体基板、及び半導体装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、4H-SiC基板の表面にH+を含むイオンを注入してイオン注入層を形成するイオン注入工程と、前記イオン注入工程を行った前記4H-SiC基板の表面に、別の支持基板を接合して接合基板を得る接合工程と、前記接合基板に、水素を含む雰囲気で熱処理をおこない、前記イオン注入層で前記4H-SiC基板を剥離することで、前記4H-SiC基板の表層が4H-SiC層として前記支持基板上に転写された結合基板と、前記4H-SiC基板から表層が剥離された後の基板である剥離基板に分離する剥離工程と、を含むことを特徴とする半導体基板の製造方法を提供する。
【0010】
この方法では、4H-SiC基板の表面に水素をイオン注入しておき、その後に別の支持基板と接合をおこなったあとに、水素を含む雰囲気で剥離処理を行うことで、結合基板を作製する。さらにこのようにして作製した結合基板にエピタキシャル成長を行ってもよい。こうすることで、エピタキシャル成長界面にHが存在でき、かつ剥離処理も同時に行うことができる。
より具体的には、この方法では表面にH+を注入した4H-SiC基板に支持基板を接合後に剥離して支持基板に4H-SiC基板の表層を転写する際に、水素を含む雰囲気で熱処理を行って剥離することで、注入したH+が剥離の際の熱処理で外方拡散されるのを抑制する。また、剥離工程で支持基板に4H-SiCを転写した後の4H-SiC基板である剥離基板は、再度のイオン注入工程、接合工程、剥離工程を繰り返すことで、支持基板に4H-SiCを転写するための基板として再利用できる。そのため、4H-SiC基板が高コストなバルク4H-SiCの場合でも製造時に無駄になる部分がなく、製造コストの面で有利となり、安価な製造方法になる。
よって本発明の半導体装置の製造方法では、水素雰囲気で熱処理をしない場合よりも、支持基板に転写された4H-SiC基板の表層が多くの水素を含有でき、転写された表層が含有する水素によって4H-SiC基板の転位が拡張するのを防ぐことで、H+注入による剥離技術においても4H-SiCの順方向劣化を抑制できるとともに、製造コストの低減を図ることができる。
【0011】
前記剥離工程は、前記イオン注入層で前記4H-SiC基板が剥離する温度未満で所定の時間、前記接合基板を加熱して、前記イオン注入工程で注入したH+を内方拡散させた後に、剥離温度以上に昇温して前記イオン注入層で前記4H-SiC基板を剥離する工程であってもよい。
この場合、イオン注入工程で注入したH+を、4H-SiC基板を剥離する前に内方拡散させるため、4H-SiC基板内で、イオン注入層の外側にH+を拡散させることができ、4H-SiC基板内で、転位が拡張するのをより広範囲で防ぐことができる。
【0012】
前記4H-SiC基板はバルク4H-SiCであってもよく、この場合、前記イオン注入工程は、前記バルク4H-SiCの表面にH+を含むイオンを注入する工程である。
この構成ではバルク4H-SiCの表面にH+を含むイオンを注入するため、予め4H-SiCをエピタキシャル成長させた基板を用意する必要がない。また、剥離工程で支持基板に4H-SiCを転写した後の4H-SiC基板である剥離基板は、再度のイオン注入工程、接合工程、剥離工程を繰り返すことで、支持基板に4H-SiCを転写するための基板として再利用できる。そのため、4H-SiC基板が高コストなバルク4H-SiCの場合でも製造時に無駄になる部分がなく、製造コストの面で安価となる。
【0013】
前記4H-SiC基板がバルク4H-SiCの場合、前記剥離工程後に、前記結合基板の前記4H-SiC層上に4H-SiCのエピタキシャル成長をおこないエピタキシャル層を形成するエピタキシャル工程を含んでもよい。
この構成では4H-SiC基板がバルク4H-SiCの場合、結合基板に転写された、H+を含む4H-SiC層上に4H-SiCのエピタキシャル成長をおこなうので、通電時にエピタキシャル層内の転位が拡張するのをH+が防ぐことができるとともに、高品質のエピタキシャル層をデバイス層として用いることができる。
【0014】
前記4H-SiC基板は、バルク4H-SiCの表面に4H-SiCのエピタキシャル成長をおこないエピタキシャル層を形成したエピタキシャル基板であってもよく、この場合、前記イオン注入工程は、前記エピタキシャル層の表面にH+を含むイオンを注入する工程である。
この構成ではエピタキシャル基板のエピタキシャル層の表面にH+を含むイオンを注入するため、剥離後に改めて結合基板の4H-SiC層上に4H-SiCのエピタキシャル層を成長させる必要がない点で有利である。
【0015】
前記イオン注入工程は、H+の注入量が5×1016atoms/cm2以上となるようにイオンを注入する工程であってもよい。
この構成ではH+の注入量が5×1016atoms/cm2以上なので、剥離工程で4H-SiC基板を剥離させるのに十分な量のH+を注入工程で4H-SiC基板に注入することができる。
【0016】
また本発明によれば、支持基板と、前記支持基板の表面に接合された、H+を含むイオンを含有する4H-SiC層と、を備えることを特徴とする半導体基板が提供される。
この構成では支持基板の表面に接合された4H-SiC層が含有するH+が、通電時の4H-SiC層内の転位の拡張を阻止する。
そのため、H+注入による剥離技術においても順方向劣化を抑制できるものとなる。
【0017】
さらに本発明によれば、上記に記載の4H-SiC基板を備えることを特徴とする半導体装置が提供される。
この構成では、半導体装置が備える4H-SiC層が含有するH+が、通電時の転位の拡張を阻止する。
そのため、4H-SiCの順方向劣化を抑制でき、信頼性の高い半導体装置となる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の構成により、4H-SiCで問題となる順方向劣化を効果的に抑制し、かつ、バルクSiCを用いる場合でも剥離基板を有効利用することが可能となる。
より具体的には本発明の半導体装置の製造方法によれば、H+注入による剥離技術においても4H-SiCの順方向劣化を抑制できる。本発明の4H-SiC基板、及び半導体装置によれば、H+注入による剥離技術においても4H-SiCの順方向劣化を抑制できるものとなる。また、剥離した4H-SiC基板は再利用できるので、コスト面で著しく有利である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る4H-SiC基板および半導体装置を示す。
【
図2】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法のプロセスフローを示す図であって、剥離する基板がバルク4H-SiCの場合を示す。
【
図3】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法のプロセスフローを示す図であって、剥離する基板がエピタキシャル基板の場合を示す。
【
図4】実施例のおよび比較例の順方向劣化試験の試験方法の手順を示す。
【
図5】順方向劣化試験の結果から求めた実施例1、実施例2、および比較例のΔVfを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
上述のように、H+注入による剥離技術においても4H-SiCの順方向劣化を抑制できる半導体装置の製造方法、半導体基板、および半導体装置が求められていた。
【0022】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、4H-SiC基板の表面にH+を含むイオンを注入してイオン注入層を形成するイオン注入工程と、前記イオン注入工程を行った前記4H-SiC基板の表面に、別の支持基板を接合して接合基板を得る接合工程と、前記接合基板に、水素を含む雰囲気で熱処理をおこない、前記イオン注入層で前記4H-SiC基板を剥離することで、前記4H-SiC基板の表層が4H-SiC層として前記支持基板上に転写された結合基板と、前記4H-SiC基板から表層が剥離された後の基板である剥離基板に分離する剥離工程と、を含むことを特徴とする半導体基板の製造方法により、H+注入による剥離技術においても4H-SiCの順方向劣化を抑制できる半導体装置の製造方法を提供できることを見出し、本発明を完成した。
また、本発明者らは上記課題について鋭意検討を重ねた結果、支持基板と、前記支持基板の表面に接合された、H+を含むイオンを含有する4H-SiC層と、を備えることを特徴とする半導体基板により、H+注入による剥離技術においても4H-SiCの順方向劣化を抑制できるものとなることを見出し、本発明を完成した。
さらに、本発明者らは上記課題について鋭意検討を重ねた結果、上記に記載の4H-SiC基板を備えることを特徴とする半導体装置によって、H+注入による剥離技術を用いた結合基板において4H-SiCの順方向劣化を抑制でき、信頼性の高いものとなることを見出し、本発明を完成した。
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
まず、
図1を参照しながら本発明の実施形態に係る半導体基板5および半導体装置6の構成について説明する。
【0024】
まず、半導体基板5の構成について
図1を参照して説明する。
図1に示すように本発明の実施形態に係る半導体基板5は、支持基板3と、支持基板3の表面に接合された、H
+を含むイオンを含有する4H-SiC層1aとを備える。
支持基板3は4H-SiC層1aを支持する基板であり、4H-SiC層1aを支持するのに十分な強度と4H-SiC層1aと意図しない反応を起こさないものであれば材料や寸法は適宜選択できる。具体的には4H-SiC層1aと同じ材料を用いたバルク4H-SiCを例示できるが、価格を考慮してバルク4H-SiCよりも安価なSiC基板であるSiCポリウェーハを使用してもよい。
【0025】
4H-SiC層1aは、H+を含むイオンを含有する4H-SiCの単結晶層であり、支持基板3の表面に接合されている。
4H-SiC層1aが、H+を含むイオンを含有することで、支持基板である4H-SiC基板や4H-SiC層1a内に転位があっても、通電時に、その転位が拡張するのをH+が防ぐ。
そのため、4H-SiC層1aの順方向劣化を抑制できる。
4H-SiC層1aは単結晶層であればバルク4H-SiCでもよいし、4H-SiCを支持基板3上に成長させたエピタキシャル層でもよい。
4H-SiC層1aの厚さは最低限、層としての形状を保持でき、デバイスの形成ができ、その際のエッチングや研磨等で消失しない厚さであればよい。一方で膜厚の最大値は例えばデバイスを形成する際に利用されない無駄な部分が出てこない厚さである。膜厚は例えば0.01μm~400μmとすることができる。
【0026】
このように、本発明の半導体基板5は、支持基板3の表面に接合された4H-SiC層1aが含有するH+が、通電時の転位の拡張を阻止する。
そのため、半導体基板5がH+注入による剥離技術で製造された場合でも順方向劣化を抑制できるものとなる。
【0027】
次に、半導体装置6の構成について
図1を参照しながら説明する。
図1に示す半導体装置6は半導体基板5を備える。
具体的な半導体装置6としては、半導体基板5、特に4H-SiC層1aに何らかの半導体デバイスを形成したものを例示できる。例えば
図1に示すように半導体基板5の表面である4H-SiC層1aにデバイスを作製した後にAl/Pt電極7を蒸着し、裏面である半導体基板5にAu電極8を蒸着することで、ショットキーバリアダイオード(SBD)を形成できる。よって半導体基板5を備える半導体装置6としては、ショットキーバリアダイオードを形成した半導体基板5を例示できる。もちろん、ダイシングすることで、半導体装置6をチップ化することもできる。
【0028】
次に、本発明の実施形態に係る半導体基板の製造方法について、
図2および
図3を参照して、説明する。ここではH
+注入による剥離技術を用いて
図1に示す半導体基板5を製造する製造方法を例に説明する。
【0029】
まず、剥離する4H-SiC基板がバルク4H-SiCの場合、具体的には製造される半導体基板5の4H-SiC層1aがバルク4H-SiCの場合について、
図2を参照して説明する。
【0030】
図2はこの実施形態を示したものである。まず、
図2(a)に示すように4H-SiC基板としてバルク4H-SiC1を準備し、
図2(b)に示すように、この基板表面にイオン注入装置を使用して、例えばH
+の注入量が1.0×10
17atoms/cm
2の条件でイオン注入してイオン注入層2を形成する(イオン注入工程)。この際のイオン注入量を1.0×10
17atoms/cm
2とすることで、この後の剥離工程で確実にバルク4H-SiC1を剥離できる。また、剥離工程で確実にバルク4H-SiC1を剥離するという観点からは、イオン注入量を5.0×10
16atoms/cm
2以上とするのが好ましい。一方で、注入量の上限は特に限定されないが、例えばイオン注入工程に使える作業時間の上限で注入できる量である。
なお、注入するイオンはH
+を含むイオンであればクラスターイオン等でもよいし、H
+のみを注入してもよい。
【0031】
次に
図2(c)に示すように、支持基板3としてバルク4H-SiC1とは別の基板を用意し、
図2(d)に示すように注入工程後のバルク4H-SiC1のイオン注入を行った表面に接合して接合基板10を得る(接合工程)。接合方法としては、例えば先行技術にあるような常温接合をおこなう。この接合の際に温度を上げてしまわないことが重要であり、そのために常温接合を採用するのが好ましい。特に300℃以上の温度に上げないことが重要である。接合時の温度を高くしないことで、H
+注入をしたところから接合工程中に剥離が起こるのを防止できる。以下の説明では常温で接合を行った場合を例に説明する。この際の支持基板3は、イオン注入を行ったバルク4H-SiCと同じ材料である単結晶のバルク4H-SiCでもよいし、価格を考慮してSiCポリウェーハを使用してもよいが、ここでは製造される半導体基板5の4H-SiC層1aがバルク4H-SiCの場合を説明しているので、支持基板3はバルク4H-SiCである。なお、接合前にN
2プラズマ等でバルク4H-SiC1の表面を活性化させてもよい。
【0032】
つぎに、この常温で接合済みの接合基板10を、
図2(e)に示すように水素を含む雰囲気で例えば400℃以上、好ましくは500℃で熱処理することで、イオン注入層2でバルク4H-SiC1を剥離する。これにより、バルク4H-SiC1の表層が4H-SiC層1aとして支持基板3上に転写された結合基板12(ここでは半導体基板5)と、バルク4H-SiC1から表層が剥離された後の基板である剥離基板11に接合基板10を分離する(剥離工程)。ここで、イオン注入層2のH
+の厚さ方向の分布は裾引きのあるブロードな分布をもつため、H
+濃度の高いところで剥離しても、転写されたバルク4H-SiC1にはH
+が残っている。そこで、水素を含む雰囲気で熱処理をおこなうことで、水素の外方拡散を抑制することができて、注入されたH
+のうち、裾引きのH
+が転写されたバルク4H-SiC1に残留することで、転位の拡張の抑制に寄与することが可能になる。なお、温度の上限は例えば、熱処理を行う装置が耐えられる温度の上限で、かつ結合基板12と剥離基板11を構成する材料が変質しない温度の上限である。
以上の工程で結合基板12としての半導体基板5が得られる。
【0033】
このように、本発明の半導体装置の製造方法では、表面にH+を注入したバルク4H-SiC1に支持基板3を接合後に剥離して支持基板3にバルク4H-SiC1の表層を転写して半導体基板5を得る際に、水素を含む雰囲気で熱処理を行うことで、注入したH+が剥離の際の熱処理で外方拡散されるのを抑制する。
そのため、この方法では、水素雰囲気で熱処理をしない場合よりも、支持基板3に転写されたバルク4H-SiC1の表層が多くの水素を含有でき、転写された表層が含有する水素によって半導体基板5の転位が拡張するのを防ぐことで、H+注入による剥離技術においても半導体基板5の順方向劣化を抑制できる。
また、剥離工程で支持基板3に4H-SiCを転写した後のバルク4H-SiC1である剥離基板11は、再度のイオン注入工程、接合工程、剥離工程を繰り返すことで、これ以上剥離できない厚さになるまで、支持基板3に4H-SiCを転写するための基板として再利用できる。そのため、4H-SiC基板が高コストなバルク4H-SiC1の場合でも製造時に無駄になる部分がなく、製造コストの面で有利となる。
【0034】
なお、剥離工程では、イオン注入層2でバルク4H-SiC1が剥離する温度未満で所定の時間、接合基板10を加熱して、イオン注入工程で注入したH+を内方拡散させた後に、剥離温度以上に昇温してイオン注入層2でバルク4H-SiC1を剥離してもよい。
このように、剥離工程における、バルク4H-SiC1が剥離する温度未満の熱処理を以下の説明では低温熱処理と称す。
低温熱処理を行うことで、イオン注入工程で注入したH+が、バルク4H-SiC1を剥離する前に接合基板10内で内方拡散する。そのため、バルク4H-SiC1内で、イオン注入層2の外側にH+を拡散させることができ、結合基板12としての半導体基板5内で、通電時に転位が拡張するのを、より広範囲で防ぐことができる。
低温熱処理の温度はH+を確実に内方拡散させるという観点からは100℃以上が好ましい。また低温熱処理の温度は、低温熱処理時に半導体基板5が剥離するのを確実に防止するという観点からは300℃未満が好ましい。さらに、低温熱処理時間はH+を確実に内方拡散させるためには10分以上であるのが好ましい。一方で、H+の拡散は非常に早く、短時間で基板内を拡散するため、低温熱処理時間はH+が通電時の転位の拡張を十分に防止できる程度に内方拡散する時間であれば十分なので、60分以下とするのが好ましい。
【0035】
剥離工程が終わると、剥離工程で分離された基板のうち、結合基板12(ここでは半導体基板5)の4H-SiC層1a上に、必要に応じて
図2(f)に示すように4H-SiCのエピタキシャル成長をおこないエピタキシャル層4を形成する(エピタキシャル工程)。
このように、結合基板12(ここでは半導体基板5)に転写された、H
+を含む4H-SiC層1a上に4H-SiCのエピタキシャル成長をおこなうことで、通電時にエピタキシャル層4の転位が拡張するのを4H-SiC層1a内のH
+が防ぐことができる。
以上が、剥離する基板がバルク4H-SiC1の場合の半導体基板の製造方法の説明である。
【0036】
次に、剥離する4H-SiC基板がエピタキシャル基板の場合、具体的には製造される半導体基板5の4H-SiC層1aがエピタキシャル層の場合の半導体基板の製造方法について、
図3を参照して説明する。
【0037】
まず、
図3(a)に示すように4H-SiC基板としてエピタキシャル基板5aを準備する。エピタキシャル基板5aは、4H-SiC単結晶基板1bと、4H-SiC単結晶基板1b上に形成された4H-SiCのエピタキシャル層1cを備える。次に
図3(b)に示すように、エピタキシャル層1cの表面にイオン注入をしてイオン注入層2を形成する(イオン注入工程)。イオン注入量はバルク4H-SiC1に注入するイオン注入量と同じでよい。
【0038】
次に
図3(c)に示すように、支持基板3としてエピタキシャル基板5aとは別の基板を用意し、
図3(d)に示すように注入工程後のエピタキシャル基板5aのイオン注入を行ったエピタキシャル層の表面に接合して接合基板10を得る(接合工程)。支持基板3の種類や接合の際の温度は、剥離する基板がバルク4H-SiC1の場合と同じでよい。
【0039】
次に接合済みの接合基板10を、
図3(e)に示すように水素を含む雰囲気で熱処理することで、イオン注入層2でエピタキシャル基板5aを剥離する。これにより、エピタキシャル層1cの表層が支持基板3上に転写された結合基板12(ここでは半導体基板5)と、エピタキシャル基板5aのエピタキシャル層1cから表層が剥離された後の基板である剥離基板11に接合基板10を分離する(剥離工程)。熱処理の温度は剥離する基板がバルク4H-SiC1の場合と同じでよい。また必要に応じて低温熱処理をおこなってもよい。
以上の工程で支持基板3上にエピタキシャル層1cが転写された半導体基板5が得られる。この半導体基板5は既にエピタキシャル層1cが転写されているので、剥離する基板がバルク4H-SiC1の場合と異なり、
図2(f)に示すような半導体基板5に改めてエピタキシャル層4を成長させる工程は必ずしも必要ない。また、剥離工程で支持基板3にエピタキシャル層1cを転写した後のエピタキシャル基板5aである剥離基板11は、再度のイオン注入工程、接合工程、剥離工程を繰り返すことで、これ以上エピタキシャル層1cを剥離できない厚さになるまで、支持基板3に4H-SiCのエピタキシャル層1cを転写するための基板として再利用できる。
【0040】
剥離する4H-SiC基板をバルク4H-SiC1とするか、エピタキシャル基板5aとするかは、各々の利点を考慮して適宜選択すればよい。
例えば剥離する基板をバルク4H-SiC1とする方法は、剥離工程後にエピタキシャル成長をおこなうので、予め4H-SiCをエピタキシャル成長させた基板を用意する必要がない。そのため、エピタキシャル工程を剥離工程の後に行いたい場合に有利である。
【0041】
一方で、剥離する基板をエピタキシャル基板5aとする場合は、剥離工程で得られた半導体基板5は既にエピタキシャル層1cが転写されているので剥離工程後に改めて基板に4H-SiCのエピタキシャル層4を成長させる必要がない点で有利である。
【実施例0042】
以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0043】
本発明の半導体基板の製造方法で製造した、支持基板3上に4H-SiCエピタキシャル層を形成した接合基板10と、H+を注入せずに4H-SiCエピタキシャル層を形成した基板とで、順方向特性を比較した。具体的な手順は以下の通りである。
【0044】
(実施例1)
バルク4H-SiC1として、直径150mm、厚さ355μmで、n型、抵抗率0.01Ω・cmで(0001)面に対して4°オフの4H-SiCの単結晶基板を準備し、これに注入工程としてH
+を50keVで注入量1.0×10
17atoms/cm
2で注入した(注入は室温)。次に支持基板3として、バルク4H-SiC1と同じものを準備して、N
2プラズマで表面を活性化したのちに、接合工程として常温で接合をおこなった。この次に、剥離工程として体積比で3%水素を含むN
2雰囲気下、500℃で30分熱処理を行い、4H-SiCの単結晶基板の剥離をおこない、結合基板12と剥離基板11を得た。次にエピタキシャル成長工程として、結合基板12の4H-SiC層1a上に、ホットウォール型CVD装置を用いて、H
2をキャリアガスとして、SiH
4、C
3H
8を原料ガスとして4H-SiCエピタキシャル成長をおこない、エピタキシャル層4を形成した。このときの温度は1600℃で炉内圧力は7kPaとした。この基板の表面であるエピタキシャル層4上に、直径1mmのAl/Pt電極7を蒸着しショットキーバリアダイオード(SBD)を形成した(裏面である支持基板3にはAu電極8を蒸着した)。その後、
図4のストレスシーケンスに従って順方向ストレスを20A/cm
2から100分ごとに段階的に増加させて印加し、初期(「Vf測定Init.」)と「Vf測定4」で測定したVfの差をΔVfと定義(このときの電流値は0.0002A)し、この値を、Vf変動を示す値とした。
【0045】
(実施例2)
4H-SiC単結晶基板1bとして直径150mm、厚さ355μm、n型、抵抗率0.01Ω・cmで(0001)面に対して4°オフの4H-SiCの単結晶基板を準備し、この基板上にホットウォール型CVD装置を用いて、H
2をキャリアガスとして、SiH
4、C
3H
8を原料ガスとして4H-SiCのエピタキシャル成長をおこなってエピタキシャル層1cを形成した。このときの温度は1600℃で炉内圧力は7kPaとした。このエピタキシャル層1cにH
+を50keVで注入量1.0×10
17atoms/cm
2で注入した(注入は室温)。次に支持基板3として、4H-SiC基板を準備して、N
2プラズマで表面を活性化したのちに、接合工程として常温で接合をおこなった。この次に、剥離工程として体積比で3%水素を含むN
2雰囲気下、500℃で30分熱処理を行って、4H-SiC単結晶基板1bの剥離をおこない、結合基板12と剥離基板11を得た。この結合基板12の表面であるエピタキシャル層1cに、直径1mmのAl/Pt電極7を蒸着しショットキーバリアダイオード(SBD)を形成した(裏面である支持基板3にはAu電極8を蒸着した)。その後、
図4のストレスシーケンスに従って順方向ストレスを20A/cm
2から100分ごとに段階的に増加させて印加し、初期(「Vf測定Init.」)と「Vf測定4」で測定したVfの差をΔVfと定義(このときの電流値は0.0002A)し、この値を、Vf変動を示す値とした。
【0046】
(比較例1)
直径150mm、厚さ355μm、n型、抵抗率0.01Ω・cmで(0001)面に対して4°オフの4H-SiCの単結晶基板を準備し、ホットウォール型CVD装置を用いて、H
2をキャリアガスとして、SiH
4、C
3H
8を原料ガスとして基板上に4H-SiCのエピタキシャル成長をおこない、エピタキシャル層を形成した。このときの温度は1600℃で炉内圧力は7kPaとした。この基板のエピタキシャル層の表面に、直径1mmのAl/Pt電極7を蒸着しショットキーバリアダイオード(SBD)を形成した(裏面である4H-SiCの単結晶基板にはAu電極8を蒸着した)。その後、
図4のストレスシーケンスに従って順方向ストレスを20A/cm
2から100分ごとに段階的に増加させて印加し、初期(「Vf測定Init.」)と「Vf測定4」で測定したVfの差をΔVfと定義(このときの電流値は0.0002A)し、この値を、Vf変動を示す値とした。
【0047】
実施例1、実施例2、および比較例で算出されたΔVfの値を
図5に示す。
図5から明らかなようにH
+注入を行った実施例1、2は比較例と比べてΔVfが3V近く低く、比較例ほどのVf変動がみられず、順方向劣化が抑制されることがわかった。
一方でH
+注入を行わなかった比較例では、ΔVfが実施例1、2よりも高く、Vf変動がみられ、順方向劣化が発生していた。
【0048】
(比較例2、3)
水素を含まない雰囲気で剥離を行ったこと以外は、実施例1と同じ条件で結合基板12を得た(比較例2)。また、水素を含まない雰囲気で剥離を行ったこと以外は、実施例2と同じ条件で結合基板12を得た(比較例3)。次に、比較例2、3の結合基板12に実施例1、2と同じ条件で順方向ストレスを印加してΔVfを求めた。
その結果、水素を含まない雰囲気で剥離を行った比較例2、3のΔVfは0.5V程度と、水素を含む雰囲気で剥離を行った実施例1、2の2倍以上の値となり、Vf変動がみられ、順方向劣化が発生していた。
【0049】
以上のとおり、本発明の実施例によれば、本発明の製造方法を用いて半導体基板5を製造することで、順方向劣化を抑制できることがわかった。
【0050】
本明細書は、以下の態様を包含する。
[1]:4H-SiC基板の表面にH+を含むイオンを注入してイオン注入層を形成するイオン注入工程と、
前記イオン注入工程を行った前記4H-SiC基板の表面に、別の支持基板を接合して接合基板を得る接合工程と、
前記接合基板に、水素を含む雰囲気で熱処理をおこない、前記イオン注入層で前記4H-SiC基板を剥離することで、前記4H-SiC基板の表層が4H-SiC層として前記支持基板上に転写された結合基板と、前記4H-SiC基板から表層が剥離された後の基板である剥離基板に分離する剥離工程と、
を含むことを特徴とする半導体基板の製造方法。
[2]:前記剥離工程は、
前記イオン注入層で前記4H-SiC基板が剥離する温度未満で所定の時間、前記接合基板を加熱して、前記イオン注入工程で注入したH+を内方拡散させた後に、剥離温度以上に昇温して前記イオン注入層で前記4H-SiC基板を剥離する工程であることを特徴とする上記[1]に記載の半導体基板の製造方法。
[3]:前記4H-SiC基板はバルク4H-SiCであり、
前記イオン注入工程は、前記バルク4H-SiCの表面にH+を含むイオンを注入する工程であることを特徴とする上記[1]又は上記[2]に記載の半導体基板の製造方法。
[4]:前記剥離工程後に、
前記結合基板の前記4H-SiC層上に4H-SiCのエピタキシャル成長をおこないエピタキシャル層を形成するエピタキシャル工程を含むことを特徴とする、上記[3]に記載の半導体基板の製造方法。
[5]:前記4H-SiC基板は、バルク4H-SiCの表面に4H-SiCのエピタキシャル成長をおこないエピタキシャル層を形成したエピタキシャル基板であり、
前記イオン注入工程は、前記エピタキシャル層の表面にH+を含むイオンを注入する工程であることを特徴とする上記[1]又は上記[2]に記載の半導体基板の製造方法。
[6]:前記イオン注入工程は、H+の注入量が5×1016atoms/cm2以上となるようにイオンを注入する工程であることを特徴とする上記[1]~上記[5]のいずれかに記載の半導体基板の製造方法。
[7]:支持基板と、前記支持基板の表面に接合された、H+を含むイオンを含有する4H-SiC層と、を備えることを特徴とする4H-SiC基板。
[8]:上記[7]に記載の半導体基板を備えることを特徴とする半導体装置。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
1…バルク4H-SiC、 1a…4H-SiC層、 1b…4H-SiC単結晶基板、 1c…エピタキシャル層、 2…イオン注入層、 3…支持基板、 4…エピタキシャル層、 5…半導体基板、 6…半導体装置、 7…Al/Pt電極、 8…Au電極、 10…接合基板、 11…剥離基板、 12…結合基板。