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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073943
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】成膜装置及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/52 20060101AFI20240523BHJP
   H10K 71/16 20230101ALI20240523BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240523BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240523BHJP
【FI】
C23C14/52
H10K71/16
H10K50/10
H10K59/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184940
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 洋紀
(72)【発明者】
【氏名】石井 博
(72)【発明者】
【氏名】松本 行生
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107GG04
3K107GG33
3K107GG56
4K029AA02
4K029AA06
4K029AA09
4K029AA11
4K029BA31
4K029BA62
4K029BB03
4K029CA01
4K029DA03
4K029DA12
4K029DB23
4K029EA01
4K029HA01
4K029HA04
4K029KA01
4K029KA09
(57)【要約】
【課題】製造効率を大きく低下させることなく、膜厚を測定可能な技術を提供する。
【解決手段】チャンバ内において支持手段に支持された基板に、マスクを介して蒸着物質を放出し、該基板に膜を成膜する蒸着手段を備えた成膜装置であって、前記基板が前記支持手段に支持された状態で、前記基板に成膜された膜の膜厚を測定する膜厚測定手段を備え、前記蒸着手段は、前記基板の第一の領域に前記マスクを重ねた状態で前記基板に膜を成膜し、前記蒸着手段は、前記基板が前記チャンバ内にある状態のまま、前記基板の第二の領域に前記マスクが重なるように前記マスクと前記基板とが相対的に移動された後に、前記基板に膜を成膜し、前記膜厚測定手段は、前記第一の領域の成膜後、前記第二の領域の成膜完了までに、前記第一の領域の膜厚を測定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内において基板を支持する支持手段と、
前記支持手段に支持された前記基板に、マスクを介して蒸着物質を放出し、該基板に膜を成膜する蒸着手段と、
を備えた成膜装置であって、
前記基板が前記支持手段に支持された状態で、前記基板に成膜された膜の膜厚を測定する膜厚測定手段を備え、
前記蒸着手段は、前記基板の第一の領域に前記マスクを重ねた状態で前記基板に膜を成膜し、
前記蒸着手段は、前記基板が前記チャンバ内にある状態のまま、前記基板の第二の領域に前記マスクが重なるように前記マスクと前記基板とが相対的に移動された後に、前記基板に膜を成膜し、
前記膜厚測定手段は、前記第一の領域の成膜後、前記第二の領域の成膜完了までに、前記第一の領域の膜厚を測定する、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜装置であって、
前記膜厚測定手段は、前記第二の領域の成膜中に、前記第一の領域の膜厚を測定する、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項3】
請求項2に記載の成膜装置であって、
前記第二の領域の成膜中に、前記第一の領域を前記蒸着手段に対して遮蔽する遮蔽手段を備える、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項4】
請求項2に記載の成膜装置であって、
前記膜厚測定手段の測定結果に基づいて、別の基板の成膜条件が設定される、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項5】
請求項1に記載の成膜装置であって、
前記膜厚測定手段は、前記第一の領域の成膜後、前記第二の領域の成膜開始前に、前記第一の領域の膜厚を測定し、
前記膜厚測定手段の測定結果に基づいて、前記第二の領域の成膜条件が設定される、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項6】
請求項1に記載の成膜装置であって、
前記膜厚測定手段は、
前記第一の領域に光を照射する発光素子と、
前記第一の領域からの反射光を受光素子と、を含む、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項7】
マスクを介して基板に蒸着物質を放出し、該基板に膜を成膜する成膜工程と、
前記基板に成膜された膜の膜厚を測定する膜厚測定工程と、
を備えた成膜方法であって、
前記成膜工程は、
前記基板の第一の領域に前記マスクを重ねた状態で前記基板に膜を成膜する第一領域成膜工程と、
前記第一領域成膜工程の後に、前記基板がチャンバ内にある状態のまま、前記基板の第二の領域に前記マスクが重なるように前記マスクと前記基板とを相対的に移動する移動工程と、
前記移動工程の後に、前記基板の前記第二の領域に前記マスクを重ねた状態で前記基板に膜を成膜する第二領域成膜工程と、を含み
前記膜厚測定工程では、前記第一の領域の成膜後、前記第二の領域の成膜完了までに、前記第一の領域の膜厚を測定する、
ことを特徴とする成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板の成膜技術に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイ等の製造においては、マスクを用いて基板上に蒸着物質が成膜される。製造装置の一例として、特許文献1には、蒸着室と検査室とを備えたクラスタ型の製造装置が開示されている。蒸着室で基板に成膜を行った後、基板を検査室に搬送して膜厚が測定される。測定結果はその後の成膜条件に反映される。また、基板の大型化に伴い、基板全面の成膜を同時に行うことが困難な場合がある。特許文献2には、基板の複数の領域毎に成膜を行うこと装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-322612号公報
【特許文献2】特開2021-102812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように膜厚を測定することにより、その後の成膜における成膜条件を改善することができる。しかし、特許文献1の装置では、膜厚測定のために蒸着室から検査室に基板を搬送する必要があり、検査に要する時間が長くなって、製造効率が低下する。
【0005】
本発明は、製造効率を大きく低下させることなく、膜厚を測定可能な技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
チャンバ内において基板を支持する支持手段と、
前記支持手段に支持された前記基板に、マスクを介して蒸着物質を放出し、該基板に膜を成膜する蒸着手段と、
を備えた成膜装置であって、
前記基板が前記支持手段に支持された状態で、前記基板に成膜された膜の膜厚を測定する膜厚測定手段を備え、
前記蒸着手段は、前記基板の第一の領域に前記マスクを重ねた状態で前記基板に膜を成膜し、
前記蒸着手段は、前記基板が前記チャンバ内にある状態のまま、前記基板の第二の領域に前記マスクが重なるように前記マスクと前記基板とが相対的に移動された後に、前記基板に膜を成膜し、
前記膜厚測定手段は、前記第一の領域の成膜後、前記第二の領域の成膜完了までに、前記第一の領域の膜厚を測定する、
ことを特徴とする成膜装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、製造効率を大きく低下させることなく、膜厚を測定可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電子デバイスの製造ラインの一部の模式図。
図2】本発明の一実施形態に係る成膜装置の概略図。
図3図2のIII-III線断面図。
図4】(A)及び(B)は図2の成膜装置の動作説明図。
図5】(A)及び(B)は図2の成膜装置の動作説明図。
図6】(A)及び(B)は図2の成膜装置の動作説明図。
図7】(A)及び(B)は図2の成膜装置の動作説明図。
図8】(A)及び(B)は図2の成膜装置の動作説明図。
図9】(A)及び(B)は図2の成膜装置の動作説明図。
図10】(A)及び(B)は図2の成膜装置の動作説明図。
図11】(A)及び(B)は図2の成膜装置の動作説明図。
図12】(A)~(D)は別の成膜装置の動作説明図。
図13】(A)は有機EL表示装置の全体図、(B)は1画素の断面構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<第一実施形態>
<電子デバイスの製造ライン>
図1は、本発明の成膜装置が適用可能な電子デバイスの製造ラインの構成の一部を示す模式図である。図1の製造ラインは、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられるもので、基板101が成膜ブロック301に順次搬送され、基板101に有機ELの成膜が行われる。
【0011】
成膜ブロック301には、平面視で八角形の形状を有する搬送室302の周囲に、基板101に対する成膜処理が行われる複数の成膜室303a~303dと、使用前後のマスクが収納されるマスク格納室304、305とが配置されている。搬送室302には、基板101を搬送する搬送ロボット302aが配置されている。搬送ロボット302aは、基板101を保持するハンドと、ハンドを水平方向に移動する多関節アームとを含む。換言すれば、成膜ブロック301は、搬送ロボット302aの周囲を取り囲むように複数の成膜室303a~303dが配置されたクラスタ型の成膜ユニットである。なお、成膜室303a~303dを総称する場合、或いは、区別しない場合は成膜室303と表記する。
【0012】
基板101の搬送方向(矢印方向)で、成膜ブロック301の上流側、下流側には、それぞれ、バッファ室306、旋回室307、受渡室308が配置されている。製造過程において、各室は真空状態に維持される。なお、図1においては成膜ブロック301を1つしか図示していないが、本実施形態に係る製造ラインは複数の成膜ブロック301を有しており、複数の成膜ブロック301が、バッファ室306、旋回室307、受渡室308で構成される連結装置で連結された構成を有する。なお、連結装置の構成はこれに限定はされず、例えばバッファ室306又は受渡室308のみで構成されていてもよい。
【0013】
搬送ロボット302aは、上流側の受渡室308から搬送室302への基板101の搬入、成膜室303間での基板101の搬送、マスク格納室305と成膜室303との間でのマスクの搬送、及び、搬送室302から下流側のバッファ室306への基板101の搬出、を行う。
【0014】
バッファ室306は、製造ラインの稼働状況に応じて基板101を一時的に格納するための室である。バッファ室306には、複数枚の基板101を基板101の被処理面(被成膜面)が重力方向下方を向く水平状態を保ったまま収納可能な多段構造の基板収納棚(カセットとも呼ばれる)と、基板101を搬入又は搬出する段を搬送位置に合わせるために基板収納棚を昇降させる昇降機構とが設けられる。これにより、バッファ室306には複数の基板101を一時的に収容し、滞留させることができる。
【0015】
旋回室307は基板101の向きを変更する装置を備えている。本実施形態では、旋回室307は、旋回室307に設けられた搬送ロボットによって基板101の向きを180度回転させる。旋回室307に設けられた搬送ロボットは、バッファ室306で受け取った基板101を支持した状態で180度旋回し受渡室308に引き渡すことで、バッファ室306内と受渡室308とで基板の前端と後端が入れ替わる。これにより、成膜室303に基板101を搬入する際の向きが、各成膜ブロック301で同じ向きになるため、基板Sに対する成膜のスキャン方向やマスクの向きを各成膜ブロック301において一致させることができる。このような構成とすることで、各成膜ブロック301においてマスク格納室305にマスクを設置する向きを揃えることができ、マスクの管理が簡易化されユーザビリティを高めることができる。
【0016】
製造ラインの制御系は、ホストコンピュータとしてライン全体を制御する上位装置300と、各構成を制御する制御装置10a~10d、309、310とを含み、これらは有線又は無線の通信回線300aを介して通信可能である。制御装置10a~10dは、成膜室303a~303dに対応して設けられ、後述する成膜装置1を制御する。なお、制御装置10a~10dを総称する場合、或いは、区別しない場合は制御装置10と表記する。
【0017】
制御装置309は搬送ロボット302aを制御する。制御装置310は旋回室307の装置を制御する。上位装置300は、基板101に関する情報や搬送タイミング等の指示を各制御装置14、309、310に送信し、各制御装置14、309、310は受信した指示に基づき各構成を制御する。
【0018】
<成膜装置>
図2は本発明の一実施形態に係る成膜装置1の概略図であり、図3図2のIII-III線に沿う断面図である。なお、各図において、矢印Xと矢印Yは互いに直交する水平方向を示し、矢印Zは垂直方向を示す。
【0019】
成膜装置1は、マスク102を介して基板101に蒸着物質を成膜する装置であり、基板101に所定のパターンの蒸着物質の薄膜を形成する。成膜装置1で成膜が行われる基板101の材質は、ガラス、樹脂、金属等の材料を適宜選択可能である。特に本実施形態では、基板101は、例えば、TFT(Thin Film Transistor)が形成されたガラス基板や半導体素子が形成されたシリコンウエハである。
【0020】
蒸着物質としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの物質である。成膜装置1は、例えば表示装置(フラットパネルディスプレイなど)や薄膜太陽電池、有機光電変換素子(有機薄膜撮像素子)等の電子デバイスや、光学部材等を製造する製造装置に適用可能であり、特に、有機ELパネルを製造する製造装置に適用可能である。以下の説明においては成膜装置1が真空蒸着によって基板101に成膜を行う例について説明するが、本発明はこれに限定はされず、スパッタやCVD等の各種成膜方法を適用可能である。
【0021】
成膜装置1は、箱型の真空チャンバ2を有する。真空チャンバ2の内部空間は、真空雰囲気か、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持されている。本実施形態では、真空チャンバ2は不図示の真空ポンプに接続されている。真空チャンバ2の側壁の一部には、開閉されるゲート21が設けられている。搬送ロボット302aはゲート21を通過して真空チャンバ2内に基板101やマスク102を搬送する。
【0022】
真空チャンバ2の内部空間には、基板101を水平姿勢で支持する基板支持プレート3が設けられている。本実施形態の場合、基板支持プレート3は静電チャックであり、その下面に静電気力により基板101を吸着し、保持する。基板支持プレート3上には冷却プレート4が固定されている。冷却プレート4は例えば水冷機構等を備えており、基板支持プレート3を介して成膜時に基板101を冷却する。
【0023】
基板支持プレート3と冷却プレート4とは、支持部5aを介してZ方向に変位可能に磁石プレート5に吊り下げられている。磁石プレート5は、磁力によってマスク102を引き寄せるプレートである。成膜時に基板101は磁石プレート5とマスク102との間に磁力によって挟まれるので、基板101とマスク102の密着性を向上することができる。
【0024】
成膜装置1は、搬送ロボット302aのハンド部と基板支持プレート3との間で基板101を移載する2組の移載ユニット6を備える。2組の移載ユニット6は、X方向に離間して配置され、各移載ユニット6は基板101のX方向の各端部を支持する。
【0025】
各移載ユニット6は、本実施形態の場合、複数の支持部材6aと、複数の支持部材6aを支持する梁部材6bと、梁部材6bを昇降する複数のアクチュエータ6cとを備える。アクチュエータ6cは例えば電動シリンダや、電動ボールねじ機構である。各アクチュエータ6cは同期的に駆動される。複数の支持部材6aは、Y方向に離間して配置されている。各支持部材6aは、その下端部に爪部Fを備えている。基板101は、その周縁部が爪部F上に載置される。図2は搬送ロボット302aのハンド部上に基板101が載置されている状態を示しており、図3は爪部F上に基板101が載置されている状態を示している。
【0026】
真空チャンバ2の内部空間には、成膜ユニット7が配置されている。成膜ユニット7は、基板支持プレート3に支持された基板101に、マスク102を介して蒸着物質を放出し、基板101に膜を成膜する。成膜ユニット7は、上方が開放した直方体形状の支持体70を備える。中空の支持体70の上部の開口部の周縁には、マスク102を支持する支持台70aが一体に形成されている。マスク102は、その周縁部が支持台70aに載置される。支持体70の側壁の一部には、搬送ロボット302aがマスク102を支持台70a上に搬入・搬出可能な開口部70bが形成されている。
【0027】
支持体70内には、蒸着源71が配置されている。蒸着源71は、蒸着物資を上方に放出する。蒸着源71の上方には蒸着物質の放出の規制と規制解除を行うシャッタ72が配置されている。シャッタ72はX1方向に移動可能に設けられており、不図示の開閉機構により開閉される。X1方向はX方向と平行である。図2及び図3はシャッタ72が閉状態の場合を示しており、蒸着源71からの蒸着物質の放出が規制される。蒸着源71の周囲には、防着板73が配置されている。また、支持体70の側壁部は防着板を兼ねている。防着板73及び支持体70の側壁部は、蒸着物質が不必要な部位に付着することを防止する遮蔽部材として機能する。
【0028】
本実施形態の成膜ユニット7は搬送ユニット75によってY1方向に移動可能な移動式のユニットである。Y1方向はY方向と平行である。搬送ユニット75は、真空チャンバ2の底部に配置され、X方向に離間した一対のレール部材76を備える。各レール部材76はY方向に延設されている。搬送ユニット75は、一対のレール部材76上を移動するスライダ77を備える。支持体70はスライダ77に搭載されている。スライダ77は、不図示の駆動機構により、Y1方向に移動される。駆動機構は、例えば、電動シリンダ、電動ボールねじ機構、電動ラック-ピニオン機構である。
【0029】
本実施形態では、基板101上の複数の領域毎に膜を成膜する。一例として、図1に示すように、基板101上が領域101a、101bの2つ領域に区別される。成膜ユニット7は、2つ領域の一方に膜を成膜した後、移動して他方の領域にも膜を成膜する。このように基板101上の複数の領域毎に膜を成膜することで、比較的大型な基板に対して、相対的に小型で精度が高いマスク102を用いて成膜を行うことができる。
【0030】
成膜装置1は、基板101とマスク102とのアライメントを行うアライメントユニット8を備える。アライメント装置8は、駆動機構80と、複数の計測ユニットSRとを備える。駆動機構80は、距離調整ユニット81と、支持軸82と、架台83と、位置調整ユニット84と、を備える。
【0031】
距離調整ユニット81は、支持軸82をZ方向に昇降する機構であり、例えば、電動シリンダや、電動ボールねじ機構を備える。支持軸82の下端部には磁石プレート5が固定されており、支持軸82の昇降によって、磁石プレート5を介して基板支持プレート3が昇降される。基板支持プレート3を昇降することで、基板101とマスク102との距離を調整し、基板支持プレート3に支持された基板101とマスク102とを基板101の厚み方向(Z方向)に接近及び離隔(離間)させる。換言すれば、距離調整ユニット81は、基板101とマスク102とを重ね合わせる方向に接近させたり、その逆方向に離隔させたりする。なお、距離調整ユニット81によって調整する「距離」はいわゆる垂直距離(又は鉛直距離)であり、距離調整ユニット81は、基板101の垂直位置を調整するユニットであるとも言える。距離調整ユニット81は、架台83を介して位置調整ユニット84に搭載されている。
【0032】
位置調整ユニット84は、基板支持プレート3をX-Y平面上で変位することにより、マスク102に対する基板101の相対位置を調整する。すなわち、位置調整ユニット80は、マスク102と基板101の水平位置を調整するユニットであるとも言える。位置調整ユニット80は、基板支持プレート6をX方向、Y方向及びZ方向の軸周りの回転方向(θ方向)に変位することができる。
【0033】
位置調整ユニット84は、固定プレート84aと、可動プレート84bとを備える。固定プレート84aと、可動プレート84bは矩形の枠状のプレートであり、固定プレート84aは真空チャンバ2の上壁部20上に固定されている。固定プレート84aと、可動プレート84bとの間には、固定プレート84aに対して可動プレート84bをX方向、Y方向、及び、Z方向の軸周りの回転方向に変位させるアクチュエータが設けられている。
【0034】
可動プレート84b上には、フレーム状の架台83が搭載されており、架台83には距離調整ユニット81が支持されている。可動プレート84bが変位すると、架台83及び距離調整ユニット81が一体的に変位する。これにより基板101をX方向、Y方向、及び、Z方向の軸周りの回転方向に変位させることができる。上壁部20には、支持軸82、アクチュエータ6cの昇降軸等が通過する開口部が形成されている。これらの開口部は不図示のシール部材(ベローズ等)によってシールされ、真空チャンバ2内の気密性が維持される。
【0035】
計測ユニットSRは、基板101とマスク102の位置ずれを計測する。本実施形態の計測ユニットSRは画像を撮像する撮像装置(カメラ)である。計測ユニットSRは、上壁部20に配置され、真空チャンバ2内の画像を撮像可能である。基板101とマスク102にはそれぞれアライメントマーク(不図示)が形成されている。計測ユニットSRは、基板101とマスク102の各アライメントマークを撮影する。各アライメントマークの位置により基板101とマスク102との位置ずれ量を演算し、位置調整ユニット84によって位置ずれ量を解消するように基板101とマスク102との相対位置を調整する。
【0036】
膜厚測定ユニット9は、基板101に成膜された膜の膜厚を測定する。膜厚測定ユニット9は、測定器90と測定器90を移動するアクチュエータ91とを備える。測定器90は、発光素子E1と受光素子E2とを備えた光学式の測定器であり、発光素子E1から基板101の成膜面に光を照射し、受光素子E2でその反射光を受光する。反射光の受光強度によって膜厚を測定する。アクチュエータ91は例えば電動シリンダであり、測定器90をX方向に移動する。図2は測定器90が待機位置に位置した状態を示している。待機位置は、測定器90が支持体70と干渉しない位置である。
【0037】
制御装置10は、成膜装置1の全体を制御する。制御装置10は、処理部11、記憶部12、入出力インタフェース(I/O)13及び通信部14を備える。処理部11は、CPUに代表されるプロセッサであり、記憶部12に記憶されたプログラムを実行して成膜装置1を制御する。記憶部12は、ROM、RAM、HDD等の記憶デバイスであり、処理部11が実行するプログラムの他、各種の制御情報を記憶する。I/O13は、処理部11と外部デバイスとの間の信号を送受信するインタフェースである。通信部14は通信回線を介して上位装置又は他の制御装置等と通信を行う通信デバイスである。
【0038】
<制御例>
制御ユニット10の処理部11が実行する成膜装置1の制御例について説明する。図4(A)~図11(A)は成膜装置1の動作説明図であり、基板101の搬入から、成膜完了までの例を示す。マスク102は事前に支持台70aに載置される。測定器90は待機位置に位置している。
【0039】
図4(A)は基板101を真空チャンバ2内に搬入した状態を示す。基板101は搬送ロボット302aにより基板支持プレート3の下方に搬送される。次に移載ユニット6によって搬送ロボット302aから基板支持プレート3へ基板101を移載する。図4(B)はその動作を示している。支持部材6aを上昇することにより、基板101の周縁が爪部Fに載置され、基板101は搬送ロボット302aから上昇し、かつ、基板支持プレート3の下面(基板吸着面)に押し付けられる。基板支持プレート3の静電チャックを作動して基板101を吸着し、保持する。その後、爪部Fが邪魔にならないように、支持部材6aが図5(A)に示すように退避位置に降下される。
【0040】
基板101の領域101aに対する成膜の準備を行う。成膜ユニット7は蒸着源71が領域101aに対向する位置(図3の位置)に位置される。そして、アライメント動作を行う。図5(B)に示すように、距離調整ユニット81により基板支持プレート3を降下させて基板101をマスク102に近づける。この段階では基板101とマスク102とはZ方向に離間している。続いて、計測ユニットSRにより、基板101のアライメントマークとマスク102のアライメントマークの相対位置が計測される。計測結果(基板101とマスク102の位置ずれ量)が許容範囲内であればアライメント動作を終了する。計測結果が許容範囲外であれば、計測結果に基づいて位置ずれ量を許容範囲内に収めるための制御量(基板101の変位量)が設定される。
【0041】
「位置ずれ量」とは、位置ずれの距離と方向(X、Y、θ)で定義される。設定された制御量に基づいて、位置調整ユニット80が作動される。これにより、基板支持プレート3がX-Y平面上で変位され、マスク102に対する基板101の相対位置が調整される。
【0042】
計測結果が許容範囲内であるか否かの判定は、例えば、アライメントマーク間の距離をそれぞれ算出し、その距離の平均値や二乗和を、予め設定された閾値と比較することで行うことができる。
【0043】
相対位置の調整後、再度、計測ユニットSRにより、基板101のアライメントマークとマスク102のアライメントマークの相対位置が計測される。計測結果が許容範囲内であればアライメント動作を終了する。計測結果が許容範囲外であれば、マスク102に対する基板101の相対位置が再度調整される。以降、計測結果が許容範囲内となるまで、計測と相対位置調整が繰り返される。
【0044】
次に、基板101をマスク102と重ね合わせる。図6(A)はその動作を示している。距離調整ユニット81により基板支持プレート3を降下させると、基板101はマスク102上に載置され、基板101の領域101aがマスク102と接触する。磁石プレート5が冷却プレート4上に当接し、上から順に磁石プレート5、冷却プレート4、基板支持プレート3、基板101及びマスク102が密着した状態になる。磁石プレート5の磁力によりマスク102を引き寄せ、マスク102と基板101の領域101aとを全体的に密着させることができる。
【0045】
以上により成膜の準備が整い、次に図6(B)及び図7(A)に示すように、シャッタ72を開状態とし、蒸着源71から蒸着物質71aを放出する。蒸着物質はマスク102を介して基板101に蒸着される。防着板73や支持体70の側壁部によって、蒸着物質の飛散範囲が制約され、特に、基板101の領域101bは、蒸着源71に対して遮蔽される。したがって、現在の成膜対象ではない領域101bに蒸着物質が付着することを防止できる。
【0046】
こうして領域101aに対する成膜が完了すると、領域101bに対する成膜に移る。図8(A)に示すように、シャッタ72を閉状態とし、距離調整ユニット81により基板支持プレート3を上昇し、基板101をマスク102から離間する。図7(B)に示すように搬送ユニット75によって成膜ユニット7を、蒸着源71が領域101aに対向する位置(図3の位置)へY1方向に移動する。そして、アライメント動作を行う。
【0047】
アライメント動作は、領域101aの成膜の際と同様である。距離調整ユニット81により基板支持プレート3を降下させて基板101をマスク102に近づける。この段階では基板101とマスク102とはZ方向に離間している。続いて、図8(B)に示すように計測ユニットSRにより、基板101のアライメントマークとマスク102のアライメントマークの相対位置が計測される。計測結果が許容範囲内であればアライメント動作を終了する。計測結果が許容範囲外であれば、計測結果に基づいて位置ずれ量を許容範囲内に収めるための制御量が設定される。
【0048】
設定された制御量に基づいて、位置調整ユニット80が作動される。これにより、基板支持プレート3がX-Y平面上で変位され、マスク102に対する基板101の相対位置が調整される。相対位置の調整後、再度、計測ユニットSRにより、基板101のアライメントマークとマスク102のアライメントマークの相対位置が計測される。計測結果が許容範囲内であればアライメント動作を終了する。計測結果が許容範囲外であれば、マスク102に対する基板101の相対位置が再度調整される。以降、計測結果が許容範囲内となるまで、計測と相対位置調整が繰り返される。
【0049】
アライメント動作に並行して、膜厚測定ユニット9の動作が開始される。図8(B)に示すように、領域101aに対向する測定位置に測定器90が移動される。
【0050】
次に、基板101をマスク102と重ね合わせる。図9(A)、図10(A)はその動作を示している。距離調整ユニット81により基板支持プレート3を降下させると、基板101はマスク102上に載置され、基板101の領域101bがマスク102と接触する。磁石プレート5が冷却プレート4上に当接し、上から順に磁石プレート5、冷却プレート4、基板支持プレート3、基板101及びマスク102が密着した状態になる。磁石プレート5の磁力によりマスク102を引き寄せ、マスク102と基板101の領域101bとを全体的に密着させることができる。
【0051】
以上により成膜の準備が整い、次に図9(B)及び図10(B)に示すように、シャッタ72を開状態とし、蒸着源71から蒸着物質71aを放出する。蒸着物質はマスク102を介して基板101に蒸着される。防着板73や支持体70の側壁部によって、蒸着物質の飛散範囲が制約され、特に、基板101の領域101aは、蒸着源71に対して遮蔽される。したがって、現在の成膜対象ではない領域101aに蒸着物質が付着することを防止できる。
【0052】
図10(B)や図11(A)に示すように、基板101が基板支持プレート3に支持された様態で、領域101bの成膜中に、基板101の領域101aに成膜された膜の膜厚を測定する。測定器90をX方向に移動しつつ測定を行うことで、領域101aの複数の位置の膜厚を測定できる。本実施形態では、測定器90を、領域101aのX方向の中央付近から端部にわたって移動し、膜厚をスキャンしている。測定器90は膜厚の測定が完了すると待機位置に戻る。
【0053】
膜厚の測定結果は、記憶部12に保存され、別の基板101(例えば次に成膜の対象となる基板等)に対する成膜条件(例えば蒸着物質の放出時間による膜厚の制御等)の設定に用いることができる。成膜精度を向上できる。膜厚の測定結果は、上位装置300を介して別の成膜室に配置された成膜装置1の制御ユニット10に提供されて、その成膜装置1が製膜する基板101における成膜条件の設定に用いられてもよい。また、同じ基板101に対する異なる膜が成膜される場合、下層の膜の膜厚測定結果を上層の膜の成膜条件の設定に活用してもよい。
【0054】
領域101bに対する成膜が完了すると、基板101全体の成膜が完了したことになる。その後、基板101は真空チャンバ2から搬出される。搬出の際には、移載ユニット6を利用して基板支持ユニット3から搬送ロボット302aに基板101を移載し、搬送ロボット302aによって真空チャンバ2外へ基板を搬送する。
【0055】
以上のように本実施形態では、領域101bの成膜中に、成膜済みの領域101aの膜の膜厚を測定するので、製造効率を大きく低下させることなく、膜厚を測定可能な技術を提供することができる。
【0056】
<第二実施形態>
第一実施形態では、領域101bの成膜中に、成膜済みの領域101aの膜の膜厚を測定したが、領域101aの膜の膜厚の測定は、領域101aの成膜後、基板101の成膜完了までの任意の期間に行うことができる。
【0057】
例えば、図11(B)の例では、領域101bとマスク102とのアライメント中に、領域101aの膜厚を測定している。この例の場合、領域101bの成膜開始前に領域101aの膜厚の測定を終えることで、領域101aの膜厚の測定結果を同じ基板101の領域101bの成膜条件の設定に活用することも可能である。
【0058】
<第三実施形態>
第一実施形態では、2つの領域101a、101bを順次成膜する際、蒸着源71(成膜ユニット7)を移動する方式としたが、基板101を移動する方式としてもよい。言い換えると、基板101とマスク102とを相対的に移動できればよい。図12(A)~図12(D)は基板101を移動する方式を模式的に示す図である。図示の例では、領域101bを成膜し、その後、領域101aを成膜する。基板101は不図示の基板支持機構により支持されている。
【0059】
図12(A)は、領域101bを成膜する段階を示している。領域101bに蒸着源71及びマスク102が対向するように基板101が配置され、領域101bとマスク102とのアライメントが行われる。その後、図12(B)に示すように蒸着源71から蒸着物質71aが放出され、領域101bが成膜される。マスク102の周囲には、防着板78が配置され、基板101の領域101aは、蒸着源71に対して遮蔽される。したがって、現在の成膜対象ではない領域101aに蒸着物質が付着することを防止できる。
【0060】
領域101bに対する成膜が完了すると、図12(C)に示すように領域101aの成膜に移る。基板101は、領域101bに蒸着源71及びマスク102が対向するように移動される。そして、領域101aとマスク102とのアライメントが行われる。その後、図12(D)に示すように蒸着源71から蒸着物質71aが放出され、領域101aが成膜される。基板101の領域101bは、防着板78によって蒸着源71に対して遮蔽される。したがって、現在の成膜対象ではない領域101bに蒸着物質が付着することを防止できる。領域101aの成膜に並行して、領域101bの膜厚が測定器90によって測定される。
【0061】
以上のように本実施形態では、領域101aの成膜中に、成膜済みの領域101bの膜の膜厚を測定するので、製造効率を大きく低下させることなく、膜厚を測定可能な技術を提供することができる。領域101bの膜厚測定のタイミングは、図12(C)に示す基板101の移動のタイミングであってもよく、この場合、測定器90を移動せず、その位置を固定した状態であっても、基板101が移動するので、測定器90によって広範囲にわたって領域101bの膜厚の測定ができる。
【0062】
<第四実施形態>
上記各実施形態では、基板101を2つの領域101a、101bに分けて成膜を行ったが、3つ以上の領域に分けて成膜を行ってもよい。この場合、1番目に成膜した領域を膜厚の測定対象としてもよいし、2番目以降に成膜した領域を膜厚の測定対象としてもよい。また、1番目に成膜した領域を膜厚の測定対象とする場合、測定のタイミングは、2番目の領域の成膜中であってもよいし、3番目以降の領域の成膜中であってもよい。
【0063】
また、上記各実施形態では、基板101をY方向に2つの領域101a、101bに分けて成膜を行ったが、X方向に複数の領域に分けて成膜を行ってもよく、或いは、X方向とY方向の双方で複数の領域に分けて成膜を行ってもよい。
【0064】
<第五実施形態>
第一実施形態では、領域101aの膜厚の測定範囲を、領域101aのX方向の中央付近から端部にわたる範囲としたが、これに限られず、より狭い範囲でもよいし広い範囲でもよい。広い範囲の場合、例えば、領域101aのX方向の全域であってもよい。また、測定範囲は、X方向の範囲ではなくY方向の範囲であってもよい。或いは、X方向及びY方向の双方の範囲であってもよい。
【0065】
<第六実施形態>
第一実施形態では、基板101を支持する機構として、静電チャックを有する基板支持プレート3を例示したが、基板101を支持する機構はこれに限られない。例えば、基板101の周縁部を機械的に挟持するクランプ形式であってもよい。或いは、基板101を下から支持し、基板101の支持機能に加えて搬送機能を有するローラであってもよい。
【0066】
また、第一実施形態では、基板101とマスク102とのアライメントの際、基板101を変位してマスク102との相対位置調整を行ったが、マスク102を変位して基板101との相対位置調整を行う構成であってもよい。
【0067】
<第七実施形態:電子デバイスの製造方法>
次に、電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。この例の場合、図1に例示した成膜ブロック301が、製造ライン上に、例えば、3か所、設けられる。
【0068】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。図13(A)は有機EL表示装置50の全体図、図13(B)は1画素の断面構造を示す図である。
【0069】
図13(A)に示すように、有機EL表示装置50の表示領域51には、発光素子を複数備える画素52がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。
【0070】
なお、ここでいう画素とは、表示領域51において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。カラー有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子52R、第2発光素子52G、第3発光素子52Bの複数の副画素の組み合わせにより画素52が構成されている。画素52は、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子の3種類の副画素の組み合わせで構成されることが多いが、これに限定はされない。画素52は少なくとも1種類の副画素を含めばよく、2種類以上の副画素を含むことが好ましく、3種類以上の副画素を含むことがより好ましい。画素52を構成する副画素としては、例えば、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子と黄色(Y)発光素子の4種類の副画素の組み合わせでもよい。
【0071】
図13(B)は、図13(A)のA-B線における部分断面模式図である。画素52は、基板53上に、第1の電極(陽極)54と、正孔輸送層55と、赤色層56R・緑色層56G・青色層56Bのいずれかと、電子輸送層57と、第2の電極(陰極)58と、を備える有機EL素子で構成される複数の副画素を有している。これらのうち、正孔輸送層55、赤色層56R、緑色層56G、青色層56B、電子輸送層57が有機層に当たる。赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。
【0072】
また、第1の電極54は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層55と電子輸送層57と第2の電極58は、複数の発光素子52R、52G、52Bにわたって共通で形成されていてもよいし、発光素子ごとに形成されていてもよい。すなわち、図13(B)に示すように正孔輸送層55が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成された上に赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bが副画素領域ごとに分離して形成され、さらにその上に電子輸送層57と第2の電極58が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成されていてもよい。
【0073】
なお、近接した第1の電極54の間でのショートを防ぐために、第1の電極54間に絶縁層59が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層60が設けられている。
【0074】
図13(B)では正孔輸送層55や電子輸送層57が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を有する複数の層で形成されてもよい。また、第1の電極54と正孔輸送層55との間には第1の電極54から正孔輸送層55への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成してもよい。同様に、第2の電極58と電子輸送層57の間にも電子注入層を形成してもよい。
【0075】
赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bのそれぞれは、単一の発光層で形成されていてもよいし、複数の層を積層することで形成されていてもよい。例えば、赤色層56Rを2層で構成し、上側の層を赤色の発光層で形成し、下側の層を正孔輸送層又は電子ブロック層で形成してもよい。あるいは、下側の層を赤色の発光層で形成し、上側の層を電子輸送層又は正孔ブロック層で形成してもよい。このように発光層の下側又は上側に層を設けることで、発光層における発光位置を調整し、光路長を調整することによって、発光素子の色純度を向上させる効果がある。
【0076】
なお、ここでは赤色層56Rの例を示したが、緑色層56Gや青色層56Bでも同様の構造を採用してもよい。また、積層数は2層以上としてもよい。さらに、発光層と電子ブロック層のように異なる材料の層が積層されてもよいし、例えば発光層を2層以上積層するなど、同じ材料の層が積層されてもよい。
【0077】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。ここでは、赤色層56Rが下側層56R1と上側層56R2の2層からなり、緑色層56Gと青色層56Bは単一の発光層からなる場合を想定する。
【0078】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)及び第1の電極54が形成された基板53を準備する。なお、基板53の材質は特に限定はされず、ガラス、プラスチック、金属などで構成することができる。本実施形態においては、基板53として、ガラス基板上にポリイミドのフィルムが積層された基板を用いる。
【0079】
第1の電極54が形成された基板53の上にアクリル又はポリイミド等の樹脂層をバーコートやスピンコートでコートし、樹脂層をリソグラフィ法により、第1の電極54が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層59を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。なお、本実施形態では、絶縁層59の形成までは大型基板に対して処理が行われ、絶縁層59の形成後に、基板53を分割する分割工程が実行される。
【0080】
絶縁層59がパターニングされた基板53を第1の成膜室303に搬入し、正孔輸送層55を、表示領域の第1電極54の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層55は、最終的に1つ1つの有機EL表示装置のパネル部分となる表示領域51ごとに開口が形成されたマスクを用いて成膜される。
【0081】
次に、正孔輸送層55までが形成された基板53を第2の成膜室303に搬入する。基板53とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、正孔輸送層55の上の、基板53の赤色を発する素子を配置する部分(赤色の副画素を形成する領域)に、赤色層56Rを成膜する。ここで、第2の成膜室で用いるマスクは、有機EL表示装置の副画素となる基板53上における複数の領域のうち、赤色の副画素となる複数の領域にのみ開口が形成された高精細マスクである。これにより、赤色発光層を含む赤色層56Rは、基板53上の複数の副画素となる領域のうちの赤色の副画素となる領域のみに成膜される。換言すれば、赤色層56Rは、基板53上の複数の副画素となる領域のうちの青色の副画素となる領域や緑色の副画素となる領域には成膜されずに、赤色の副画素となる領域に選択的に成膜される。
【0082】
赤色層56Rの成膜と同様に、第3の成膜室303において緑色層56Gを成膜し、さらに第4の成膜室303において青色層56Bを成膜する。赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bの成膜が完了した後、第5の成膜室303において表示領域51の全体に電子輸送層57を成膜する。電子輸送層57は、3色の層56R、56G、56Bに共通の層として形成される。
【0083】
電子輸送層57までが形成された基板を第6の成膜室303に移動し、第2電極58を成膜する。本実施形態では、第1の成膜室303~第6の成膜室303では真空蒸着によって各層の成膜を行う。しかし、本発明はこれに限定はされず、例えば第6の成膜室303における第2電極58の成膜はスパッタによって成膜するようにしてもよい。その後、第2電極68までが形成された基板を封止装置に移動してプラズマCVDによって保護層60を成膜して(封止工程)、有機EL表示装置50が完成する。なお、ここでは保護層60をCVD法によって形成するものとしたが、これに限定はされず、ALD法やインクジェット法によって形成してもよい。
【0084】
ここで、第1の成膜室303~第6の成膜室303での成膜は、形成されるそれぞれの層のパターンに対応した開口が形成されたマスクを用いて成膜される。成膜の際には、基板53とマスクとの相対的な位置調整(アライメント)を行った後に、マスクの上に基板53を載置して成膜が行われる。ここで、各成膜室において行われるアライメント工程は、上述のアライメント工程の通り行われる。
【0085】
<他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0086】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0087】
1 成膜装置、71 蒸着源、91 測定器、101 基板、101a 領域、101b 領域、102 マスク
図1
図2
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図5
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図8
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図10
図11
図12
図13