(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074133
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】水アトマイズ装置の排気装置および水アトマイズ装置の排気方法
(51)【国際特許分類】
B22F 9/08 20060101AFI20240523BHJP
F27D 7/06 20060101ALI20240523BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
B22F9/08 A
F27D7/06 C
F27D17/00 104A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185223
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】石川 進太郎
【テーマコード(参考)】
4K017
4K056
4K063
【Fターム(参考)】
4K017AA02
4K017BA01
4K017BA03
4K017BA05
4K017BB01
4K017BB05
4K017EB05
4K017EB25
4K017FA17
4K056AA05
4K056AA06
4K056AA12
4K056BB01
4K056CA01
4K056DB04
4K056DB07
4K063AA04
4K063AA15
4K063BA02
4K063BA03
4K063CA02
4K063DA02
4K063DA15
4K063DA24
4K063DA34
(57)【要約】
【課題】水アトマイズ装置で発生する排気ガスを安全に排気することができる水アトマイズ装置の排気装置および水アトマイズ装置の排気方法を提供する。
【解決手段】貯留容器2内において熔融金属に水を噴きつけて粒状体を製造する水アトマイズ装置1の排気装置10であって、駆動気体が不活性ガスであるエジェクタ12と、
一端が貯留容器2内と連通され他端がエジェクタ12の吸い込み口に連通された配管11と、を備えている。駆動気体が不活性ガスであるエジェクタ12によって貯留容器2の排気ガスを排出しているので、排気ガスに水素ガスが含まれていても、エジェクタ12から排出されるガスにおける水素ガスの濃度を低下させることができる。したがって、貯留容器2の排気ガスに水素ガスが含まれていても、安全に排気ガスを排出できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留容器内において熔融金属に水を噴きつけて粒状体を製造する水アトマイズ装置の排気装置であって、
駆動気体が不活性ガスであるエジェクタと、
一端が前記貯留容器内と連通され他端が前記エジェクタの吸い込み口に連通された配管と、を備えている
ことを特徴とする水アトマイズ装置の排気装置。
【請求項2】
前記配管の一端と他端の間には、
前記エジェクタから前記貯留容器への気体の流れを防止する逆止弁が設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の水アトマイズ装置の排気装置。
【請求項3】
前記配管の一端と他端との間には、
前記貯留容器内から排出される気体を一旦貯留する中継槽が設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の水アトマイズ装置の排気装置。
【請求項4】
前記貯留容器内に不活性ガスを供給するガス供給部が設けられており、
該ガス供給部は、
前記貯留容器内の圧力が外気よりも高くなるように該貯留容器に供給する不活性ガスの量を調整する供給量調整機能を有している
ことを特徴とする請求項1記載の水アトマイズ装置の排気装置。
【請求項5】
前記配管の一端と他端との間には、
前記貯留容器内から排出される気体を一旦貯留する中継槽が設けられており、
前記ガス供給部の供給量調整機能は、
前記中継槽内の圧力が外気よりも高くなり、かつ、前記中継槽内の圧力が前記貯留容器内の圧力よりも低くなるように該貯留容器に供給する不活性ガスの量を調整する機能を有している
ことを特徴とする請求項4記載の水アトマイズ装置の排気装置。
【請求項6】
貯留容器内において熔融金属に水を噴きつけて粒状体を製造する水アトマイズ装置の排気方法であって、
前記貯留容器内とエジェクタの吸い込み口とを連通し、その状態で不活性ガスを駆動気体として前記エジェクタを作動する
ことを特徴とする水アトマイズ装置の排気方法。
【請求項7】
前記貯留容器内と前記エジェクタの吸い込み口との間に、該貯留容器から排出される排気ガスを一旦貯留する中継槽を設け、該中継槽内の排気ガスを前記エジェクタに供給する
ことを特徴とする請求項6記載の水アトマイズ装置の排気方法。
【請求項8】
前記貯留容器内の圧力が外気よりも高くなるように、該貯留容器内に不活性ガスを供給する
ことを特徴とする請求項6記載の水アトマイズ装置の排気方法。
【請求項9】
前記貯留容器内とエジェクタの吸い込み口との間に、該貯留容器から排出される排気ガスを一旦貯留する中継槽を設け、
前記中継槽内の圧力が外気よりも高くなり、かつ、前記中継槽内の圧力が前記貯留容器内の圧力よりも低くなるように該貯留容器に不活性ガスを供給する
ことを特徴とする請求項8記載の水アトマイズ装置の排気方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水アトマイズ装置の排気装置および水アトマイズ装置の排気方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含油軸受等の機械部品では、粉体を焼結して得られる焼結金属に潤滑油を含侵させて製造される。かかる焼結金属に使用される金属粉末を製造する方法としてアトマイズ装置を用いた金属粉末の製造方法が使用される(特許文献1参照)。例えば、水アトマイズ装置を用いた金属粉末の製造では、金属材料を溶かした金属の液体(以下熔融金属という)が水アトマイズ装置に供給され、熔融金属に高圧水を噴射衝突させる。すると、細かな金属粉(アトマイズ粉)が製造され、製造された金属粉は水とともに回収ポットに回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水アトマイズ装置では、熔融金属が非常に高温であるため、製造された金属粉の表面が水分子の酸素によって酸化される。このとき、水分子の残りの水素によって水素ガスが発生する可能性があり、水アトマイズ装置から排出される排気ガスに水素ガスが含まれる可能性がある。排気ガスに水素ガスが含まれている場合には、排気ガスを安全に排出するためには、排気ガス中の水素ガスの濃度を爆発下限濃度以下(4%以下)として排出することが必要になる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、水アトマイズ装置で発生する排気ガスを安全に排気することができる水アトマイズ装置の排気装置および水アトマイズ装置の排気方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<水アトマイズ装置の排気装置>
第1発明の水アトマイズ装置の排気装置は、貯留容器内において熔融金属に水を噴きつけて粒状体を製造する水アトマイズ装置の排気装置であって、駆動気体が不活性ガスであるエジェクタと、一端が前記貯留容器内と連通され他端が前記エジェクタの吸い込み口に連通された配管と、を備えていることを特徴とする。
第2発明の水アトマイズ装置の排気装置は、第1発明において、前記配管の一端と他端の間には、前記エジェクタから前記貯留容器への気体の流れを防止する逆止弁が設けられていることを特徴とする。
第3発明の水アトマイズ装置の排気装置は、第1発明において、前記配管の一端と他端との間には、前記貯留容器内から排出される気体を一旦貯留する中継槽が設けられていることを特徴とする。
第4発明の水アトマイズ装置の排気装置は、第1発明において、前記貯留容器内に不活性ガスを供給するガス供給部が設けられており、該ガス供給部は、前記貯留容器内の圧力が外気よりも高くなるように該貯留容器に供給する不活性ガスの量を調整する供給量調整機能を有していることを特徴とする。
第5発明の水アトマイズ装置の排気装置は、第4発明において、前記配管の一端と他端との間には、前記貯留容器内から排出される気体を一旦貯留する中継槽が設けられており、前記ガス供給部の供給量調整機能は、前記中継槽内の圧力が外気よりも高くなり、かつ、前記中継槽内の圧力が前記貯留容器内の圧力よりも低くなるように該貯留容器に供給する不活性ガスの量を調整する機能を有していることを特徴とする。
<水アトマイズ装置の排気方法>
第6発明の水アトマイズ装置の排気方法は、貯留容器内において熔融金属に水を噴きつけて粒状体を製造する水アトマイズ装置の排気方法であって、前記貯留容器内とエジェクタの吸い込み口とを連通し、その状態で不活性ガスを駆動気体として前記エジェクタを作動することを特徴とする。
第7発明の水アトマイズ装置の排気方法は、第6発明において、前記貯留容器内と前記エジェクタの吸い込み口との間に、該貯留容器から排出される排気ガスを一旦貯留する中継槽を設け、該中継槽内の排気ガスを前記エジェクタに供給することを特徴とする。
第8発明の水アトマイズ装置の排気方法は、第6発明において、前記貯留容器内の圧力が外気よりも高くなるように、該貯留容器内に不活性ガスを供給することを特徴とする。
第9発明の水アトマイズ装置の排気方法は、第8発明において、前記貯留容器内とエジェクタの吸い込み口との間に、該貯留容器から排出される排気ガスを一旦貯留する中継槽を設け、前記中継槽内の圧力が外気よりも高くなり、かつ、前記中継槽内の圧力が前記貯留容器内の圧力よりも低くなるように該貯留容器に不活性ガスを供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
<水アトマイズ装置の排気装置>
第1発明によれば、駆動気体が不活性ガスであるエジェクタによって貯留容器の排気ガスを排出しているので、排気ガスに水素ガスが含まれていても、エジェクタから排出されるガスにおける水素ガスの濃度を低下させることができる。したがって、貯留容器の排気ガスに水素ガスが含まれていても、安全に排気ガスを排出できる。
第2発明によれば、エジェクタ側から貯留容器に向かって気体が流れないので、エジェクタの駆動気体が貯留容器内の状態に影響を与えることを防止できる。
第3発明によれば、貯留容器内から排出される排気ガスに液体や固体が含まれていても、中継槽において液体や固体を排気ガスから除去できる。
第4発明によれば、貯留容器内の水素ガス濃度を低くできるので、排気ガスに含まれる水素ガスの濃度も低くできる。貯留容器内の圧力を外気よりも高くするので、酸素を含む気体等が貯留容器内に進入することを防止できる。
第5発明によれば、中継槽内の圧力を外気よりも高くするので、酸素を含む気体等が中継槽内に進入することを防止できる。中継槽内の圧力が貯留容器内の圧力よりも低くなるように貯留容器に供給する不活性ガスの量を調整しているので、中継槽内の気体等が貯留容器内に進入することを防止できる。
<水アトマイズ装置の排気方法>
第6発明によれば、駆動気体が不活性ガスであるエジェクタによって貯留容器の排気ガスを排出しているので、排気ガスに水素ガスが含まれていても、エジェクタから排出されるガスにおける水素ガスの濃度を低下させることができる。したがって、貯留容器の排気ガスに水素ガスが含まれていても、安全に排気ガスを排出できる。
第7発明によれば、貯留容器内から排出される排気ガスに液体や固体が含まれていても、中継槽において液体や固体を排気ガスから除去できる。
第8発明によれば、貯留容器内の水素ガス濃度を低くできるので、排気ガスに含まれる水素ガスの濃度も低くできる。貯留容器内の圧力を外気よりも高くするので、酸素を含む気体等が貯留容器内に進入することを防止できる。
第9発明によれば、中継槽内の圧力を外気よりも高くするので、酸素を含む気体等が中継槽内に進入することを防止できる。また、中継槽内の圧力が貯留容器内の圧力よりも低くなるように貯留容器に供給する不活性ガスの量を調整しているので、中継槽内の気体等が貯留容器内に進入することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の水アトマイズ装置1の排気装置10の概略説明図である。
【
図2】(A)はガス供給部5を有する排気装置10を設けた水アトマイズ装置1の排気装置10の概略説明図であり、(B)中継槽15を有しない排気装置10を設けた排気装置10の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態の水アトマイズ装置の排気装置は、水アトマイズ装置における粒状体形成の際に発生するガスを排出する装置であって、排出するガス(排気ガス)に水素が含まれていても排気ガスを安全に排出することができるようにしたことに特徴を有している。
【0010】
本実施形態の水アトマイズ装置で製造される粒状体はとくに限定されない。例えば、銅や錫などの合金等の金属粉等を挙げることができる。なお、以下では、本実施形態の水アトマイズ装置で製造される粒状体を、単に金属粉という場合がある。
【0011】
<水アトマイズ装置1>
図1に示すように、水アトマイズ装置1は、熔融された金属に高圧水を噴射衝突させる貯留容器2と、この貯留容器2で発生するガスを排気装置10と、を備えている。
【0012】
<貯留容器2>
図1に示すように、貯留容器2には、熔融された金属(熔融金属)を貯留容器2内に落下させる(流下する)金属供給部3と、金属供給部3から貯留容器2内に落下する熔融金属に高圧水を噴射する高圧水供給部(図示せず)と、が設けられている。したがって、貯留容器2内において、金属供給部3から熔融金属に高圧水供給部から供給される高圧水を噴射衝突させれば、細かな金属粉を製造することができる。なお、製造された金属粉は、貯留容器2の下端に設けられている容器2aに落下して回収される。
【0013】
<排気装置10>
排気装置10は、貯留容器2内のガス、具体的には、熔融金属に高圧水を噴射した際に発生した貯留容器2で発生したガスを排出するものである。貯留容器2内では、熔融金属と水とが接触することによって、蒸発した水蒸気や水分子に起因する水素ガスが発生する。排気装置10は、これらの水蒸気や水素ガスを外部に排出するものである。
【0014】
なお、水分子に起因する水素ガスは、銅合金やニッケル合金などの金属粉の表面が水分子中の酸素によって酸化された際に発生するものである。例えば、貯留容器2の250-500Lの水アトマイズ装置1であって、処理量 5 kg/min、得られた金属粉の酸素含有率 0.1 wt%の場合には、貯留容器2内の水素濃度は1-4vol%程度になる。
【0015】
図1に示すように、排気装置10は、配管11と、エジェクタ12と、逆止弁13と、中継槽15と、を備えている。
【0016】
図1に示すように、エジェクタ12は、公知のエジェクタと同等の構造を有するものである。具体的には、エジェクタ12は、本体部12bとノズル12nとを備えている。本体部12bは、中空な空間hと、中空な空間hと連通されたディフューザーdとを備えている。本体部12bには、中空な空間hと外部とを連通する吸い込み口cが設けられている。この吸い込み口cは、吸い込み口cから導入される気体の流入方向がディフューザーdの軸方向と交差するように設けられている。この本体部12bの中空な空間hには、ノズル12nの先端aが配置されている。ノズル12nは、その中心軸がディフューザーdの中心軸と同軸になるように配設されており、その基端eは本体部12b外に配置されている。このノズル12nの基端eは、ノズル12nに対して駆動気体を供給する駆動気体供給部12fが接続されている。この駆動気体供給部12fは、高圧の不活性ガス、例えば、窒素やアルゴン、ヘリウムなどの酸素を含まない中圧(例えば0.2MPa以上)の気体をノズル12nに供給する機能を有している。エジェクタ12は、かかる構造を有しているので、ノズル12nに対して駆動気体を供給すれば、駆動気体の流れによって吸い込み口cから気体が吸引され、吸い込み口cから吸引された気体と駆動気体とをディフューザーd内で混合して、ディフューザーdから外部に排出することができる。
【0017】
図1に示すように、貯留容器2とエジェクタ12の吸い込み口cとの間には、両者間を連通する配管11が設けられている。この配管11は、貯留容器2と中継槽15とを連通する第一配管11aと、中継槽15とエジェクタ12の吸い込み口cとの間を連通する第二配管11bと、を有している。
【0018】
中継槽15は、ある程度の容積を有する中空な容器であり、配管11の第一配管11aを通して供給される排気ガスを一旦貯留する機能、言い換えれば、配管11の第一配管11aから供給される排気ガスの流速を低下させる機能を有している。
【0019】
配管11の第二配管11bには、逆止弁13が設けられている。この逆止弁13は、中継槽15からエジェクタ12に向かう流れのみを許容するように設けられている。つまり、第二配管11bを通してエジェクタ12から中継槽15や貯留容器2に向かう気体の流れを防止するように逆止弁13は設けられている。
【0020】
排気装置10が以上のような構成であるので、貯留容器2内の圧力が中継槽15や外気よりも高ければ、貯留容器2内の排気ガスは配管11の第一配管11aを通って中継槽15内に流入し、中継槽15内には排気ガスが貯留される。
【0021】
その状態で、エジェクタ12のノズル12nに対して駆動気体供給部12fから駆動気体を供給すれば、吸い込み口cから気体を吸引するようになるので、中継槽15内の排気ガスは第二配管11bを通ってエジェクタ12の吸い込み口cから本体部12bの中空な空間h内に吸い込まれる。吸い込まれた排気ガスは、ディフューザーd内において駆動気体と混合して外部に排出される。つまり、ディフューザーdから排出される気体は、排気ガスと不活性ガスである駆動気体とが混合したものになるので、排気ガス中に水素ガスが含まれていても、水素ガスの濃度が低下した状態、つまり、水素ガスの濃度を爆発下限濃度以下(4%以下)とした気体として排出することができる。
【0022】
したがって、上述した排気装置10を設ければ、貯留容器2の気体(排気ガス)に水素ガスが含まれていても、安全に排気ガスを排出できる。
【0023】
なお、排気装置10には必ずしも中継槽15を設けなくてもよい(
図2(B)参照)。しかし、中継槽15を設けることによって、貯留容器2内の水(液体)や配管11の第一配管11a内で水(液体)となった水蒸気が第二配管11bに流入しても、その水がエジェクタ12や逆止弁13に流入することを防止できるので、エジェクタ12や逆止弁13の詰りを防止できる。とくに、貯留容器2から排出される排気ガスに細かいアトマイズ金属分等の固形物が含まれている場合には、固形物がエジェクタ12や逆止弁13に詰まることを効果的に防止できる。
【0024】
なお、
図2(A)に示すように、中継槽15内に水などの液体Wを貯留しておき、排気ガスが一旦液体中を通ってからエジェクタ12や逆止弁13に供給されるようにすれば、エジェクタ12や逆止弁13の詰まりをより効果的に防止できる。例えば、配管11の第一配管11aの中継槽15側の端部の開口が中継槽15内の液体W内に配置されるようにしておけば、排気ガスを確実に液体に通すことができる。すると、排気ガスに含まれる固形物や液体を液体Wで捕捉できる。
【0025】
また、配管11の第二配管11bには、必ずしも逆止弁13は設けなくてもよい。しかし、逆止弁13を設ければ、エジェクタ12側から貯留容器11内に駆動気体である不活性ガスや外気が流入しないので、エジェクタ12の駆動気体や外気が貯留容器2内や中継槽15内の状態に影響を与えることを防止できる。例えば、駆動流体の供給停止などが生じた場合に、貯留容器11内や中継槽15内の圧力よりもエジェクタ12側の圧力が高くなる状態が生じても、エジェクタ12の駆動気体や外気が貯留容器2内や中継槽15内に流入することを防止できる。
【0026】
<ガス供給部5について>
貯留容器2には、貯留容器2内に不活性ガスを供給するガス供給部5を設けてもよい(
図2(A)参照)。かかるガス供給部5を設けて、不活性ガス、例えば、窒素やアルゴン、ヘリウムなどの酸素を含まない気体を貯留容器2内に供給すれば、排気ガス中の水素ガスの濃度を低下させることができるので、より安全に排気ガスを排出することができる。
【0027】
なお、貯留容器2内の水素ガスの槽内平均濃度が概ね4vol%以下程度であれば必ずしも貯留容器2内に不活性ガスを供給する必要はない。しかし、ガス供給部5を設けて不活性ガスを供給するようにしておけば、より安全に排気ガスを排出することができる。例えば、貯留容器2内の槽内平均濃度が低くても、低比重の水素が貯留容器2の上方に滞留して局所的に水素ガスの濃度が高まる可能性がある。この場合でも、貯留容器2内に不活性ガスを供給するようにしておけば、貯留容器2内の気体を希釈しながら排気できるので、貯留容器2内の気体を安全に排気することができる。
【0028】
また、ガス供給部5から供給する不活性ガスはとくに限定されない。しかし、エジェクター12の駆動気体と同じ気体とすれば、駆動気体として比較的高価な不活性ガス(例えばヘリウムなど)を使用した場合でも、不活性ガスを回収して循環利用すればコストの面で有効になるという点で望ましい。
【0029】
また、ガス供給部5は、貯留容器2内を外気よりも高い圧力(以下単に陽圧という)に維持するように、貯留容器2内に供給する不活性ガスの量を調整する供給量調整機能を有していてもよい。かかる供給量機能を有していれば、貯留容器2内を常時陽圧に維持できるので、外気が貯留容器2内に進入することも防止できる。すると、水素ガスと反応する酸素等の気体が貯留容器2内に入ることを防止できる。例えば、貯留容器2内に設けられたセンサ等によって貯留容器2内の圧力を検出し、その圧力に応じて貯留容器2内に供給する不活性ガスの量を調整して、貯留容器2内を所定の圧力に維持するようにしてもよい。また、事前の試験などの結果などに基づいて、貯留容器2内を所定の圧力に維持するようにしてもよい。つまり、水アトマイズ装置1の操業状態とエジェクタ12の作動状態に応じて貯留容器2内の圧力が推定できる場合であれば、現在の水アトマイズ装置1の操業状態とエジェクタ12の作動状態に応じて貯留容器2内に供給する不活性ガスの量を調整して、貯留容器2内を所定の圧力に維持するようにしてもよい。
【0030】
なお、中継槽15が設けられている場合には、ガス供給部5は、貯留容器2内だけでなく中継槽15内も外気よりも高い圧力(以下単に陽圧という)に維持することが望ましい。この場合には、ガス供給部5の供給量調整機能は、貯留容器2内と中継槽15内の両方が陽圧に維持されるように、貯留容器2内に供給する不活性ガスの量を調整する。つまり、センサ等により検出される貯留容器2内の圧力や中継槽15内の圧力、または、現在の水アトマイズ装置1の操業状態とエジェクタ12の作動状態に基づいて、貯留容器2内と中継槽15内の両方が陽圧に維持されるように、貯留容器2内に供給する不活性ガスの量を調整する。この場合には、中継槽15から貯留容器2内への逆流を防ぐために中継槽15内の圧力が貯留容器2の圧力よりも低くなるように(言い換えれば、中継槽15内の圧力よりも貯留容器2の圧力が高くなるように)、ガス供給部5の供給量調整機能は貯留容器2内に供給する不活性ガスの量を調整する。
【0031】
また、ガス供給部5は、水アトマイズ装置1における粒状体の製造を開始する前に、貯留容器2の気体を不活性ガスに置換する置換機能を有していてもよい。かかる置換機能によって留容器2の気体を不活性ガスに置換して粒状体の製造を開始すれば、水アトマイズ装置1における粒状体の製造において貯留容器2内に水素ガスが発生しても、水素ガス濃度を低く維持できる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の水アトマイズ装置の排気装置は、水アトマイズ装置において水素を含む排気ガスを安全に排気する装置として適している。
【符号の説明】
【0033】
1 水アトマイズ装置
2 貯留容器
2a 容器
3 金属供給部
4 高圧水供給部
5 ガス供給部
10 排気装置
11 配管
11a 第一配管
11b 第二配管
12 エジェクタ
13 逆止弁
15 中継槽