(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074465
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】めっき装置及びめっき方法
(51)【国際特許分類】
C25D 17/10 20060101AFI20240524BHJP
C25D 17/00 20060101ALI20240524BHJP
C25D 21/12 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
C25D17/10 A
C25D17/00 K
C25D21/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185620
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 達己
(72)【発明者】
【氏名】菊池 剛臣
(57)【要約】
【課題】様々なシード厚及び/又はパターンを持つ基板をめっきする際の電場の均一化を図り、めっき膜厚分布の均一化を図ることを1つの目的とする。
【解決手段】めっき液を保持するためのめっき槽と、前記めっき槽内に配置されるアノードと、前記アノードに対向して配置され基板を保持する基板ホルダと、前記アノードと前記基板との間に配置された抵抗体であり、導電性の容器と、前記容器の内部に保持された電解液とを有する抵抗体と、を備えるめっき装置。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液を保持するためのめっき槽と、
前記めっき槽内に配置されるアノードと、
前記アノードに対向して配置され基板を保持する基板ホルダと、
前記アノードと前記基板との間に配置された抵抗体であり、導電性の容器と、前記容器の内部に保持された電解液とを有する抵抗体と、
を備えるめっき装置。
【請求項2】
請求項1に記載のめっき装置であって、
前記容器には、前記容器内に前記電解液を供給する第1電解液供給流路と、前記容器内の電解液を排出する第1電解液排出流路とが接続されている、めっき装置。
【請求項3】
請求項2に記載のめっき装置であって、
前記第1電解液供給流路及び前記第1電解液排出流路に接続されたリザーバと、
前記リザーバに純水を供給する純水供給流路と、
前記リザーバに電解液を供給する第2電解液供給流路と、
を更に備え、
前記第2電解液供給流路からの電解液が前記リザーバで純水と混合された後に、前記第1電解液供給流路を介して前記容器に供給される、めっき装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載のめっき装置であって、
前記容器内の電解液は、前記めっき液を希釈した液体、又は、前記めっき液の母酸を希釈した液体である、めっき装置。
【請求項5】
請求項1から3の何れかに記載のめっき装置であって、
前記容器の前記基板側の壁及び/又は前記アノード側の壁の外周部には、電場遮蔽部材が配置されている、めっき装置。
【請求項6】
請求項1から3の何れかに記載のめっき装置であって、
前記容器の前記アノード側の壁及び前記基板側の壁は、異なる形状である、めっき装置。
【請求項7】
請求項1から3の何れかに記載のめっき装置であって、
前記容器の前記アノード側の壁及び前記基板側の壁は、異なる厚さを有する、めっき装置。
【請求項8】
請求項1から3の何れかに記載のめっき装置であって、
前記容器の前記アノード側の壁及び/又は前記基板側の壁は、前記容器の外側に向かって突出する凸形状、又は前記容器の内部に向かってへこむ凹形状である、めっき装置。
【請求項9】
請求項1から3の何れかに記載のめっき装置であって、
前記容器の前記アノード側の壁及び/又は前記基板側の壁は、複数の突起部を有する、めっき装置。
【請求項10】
請求項1から3の何れかに記載のめっき装置において、
めっき中に、前記容器内の前記電解液の濃度を調整することにより、前記抵抗体の抵抗値を変更可能である、めっき装置。
【請求項11】
請求項1から3の何れかに記載のめっき装置であって、
前記抵抗体は、前記容器内に配置された1又は複数の多孔プレートを更に有する、めっき装置。
【請求項12】
請求項11に記載のめっき装置であって、
前記抵抗体は、複数の多孔プレートを有し、
前記複数の多孔プレートの少なくとも一部の多孔プレートを変位させるアクチュエータを備え、
前記アクチュエータにより前記複数の多孔プレートの少なくとも一部が変位されることで前記複数の多孔プレートの孔の開放量が調節され、前記抵抗体の抵抗値が調整される、
めっき装置。
【請求項13】
請求項12に記載のめっき装置において、
めっき中に、前記容器内の前記電解液の濃度を調整すること、及び/又は、前記複数の多孔プレートの少なくとも一部を変位させることで、孔の開放量を調節することにより、前記抵抗体の抵抗値を変更可能である、めっき装置。
【請求項14】
めっきする方法であって、
基板とアノードとの間に配置される抵抗体を準備する工程であり、前記抵抗体が電解液を保持する容器を有する工程と、
前記容器内の前記電解液の濃度を調整することにより、前記抵抗体の抵抗値を変更する工程と、
を含む、めっき方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置及びめっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ等の基板に電解めっきを施すことが可能なめっき装置として、特許第6937974号明細書(特許文献1)、特開2021-138995号公報(特許文献2)に記載されたようなめっき装置が知られている。このようなめっき装置は、めっき液を貯留するとともにアノードが配置されためっき槽と、アノードに対向して配置されてカソードとしての基板を保持する基板ホルダとを備えている。特許文献1及び特許文献2に記載のめっき装置では、アノードと基板との間にイオンの移動を調整するための多孔構造(パンチングプレート、多孔質体等)の抵抗体を設け、アノードと基板との間の抵抗値を大きくして電場の広がりを抑制し、基板に形成されるめっき膜厚分布の均一化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6937974号明細書
【特許文献2】特開2021-138995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のめっき装置では、基板のシード厚及び/又はパターン等に応じて、基板と抵抗体との間の距離を変更すること、異なる孔パターンを有する抵抗体に交換すること等により、基板に形成されるめっき膜厚分布の均一化を図っている。また、様々な基板のシード厚及び/又は基板上のめっきパターンに応じて、電場の均一性を確保することが困難な場合がある。
【0005】
本発明は、上記のことを鑑みてなされたものであり、様々なシード厚及び/又はパターンを持つ基板をめっきする際の電場の均一化を図り、めっき膜厚分布の均一化を図ることを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によれば、めっき液を保持するためのめっき槽と、 前記めっき槽内に配置されるアノードと、前記アノードに対向して配置され基板を保持する基板ホルダと、
前記基板と前記アノードとの間に配置された抵抗体であり、導電性の容器と、前記容器の内部に保持された電解液とを有する抵抗体と、を備える、めっき装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係るめっき装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】一実施形態に係るめっき装置の全体構成を示す平面図である。
【
図3】第1実施形態に係るめっき装置のめっきモジュールの構成を説明するための断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る抵抗体を説明するための断面図である。
【
図7】抵抗体の容器内の電解液の濃度調整機構の例である。
【
図8】第2実施形態に係るめっき装置のめっきモジュールの構成を説明するための断面図である。
【
図9A】第2実施形態に係る抵抗体を説明するための断面図である。
【
図9B】第2実施形態に係る抵抗体を説明するための断面図である。
【
図10B】多孔プレートユニットの一部を拡大した平面図である。
【
図11B】多孔プレートユニットの一部を拡大した平面図である。
【
図12】多孔プレートユニットの孔の側面形状の例である。
【
図13】多孔プレートユニットの孔寸法の調整を説明する説明図である。
【
図15】他の実施形態に係るめっきモジュールの断面図である。
【
図16】他の実施形態に係るめっきモジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態に係るめっき装置1000について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面は、物の特徴の理解を容易にするために模式的に図示されており、各構成要素の寸法比率等は実際のものと同じであるとは限らない。また、いくつかの図面には、参考用として、X-Y-Zの直交座標が図示されている。この直交座標のうち、Z方向は上方に相当し、-Z方向は下方(重力が作用する方向)に相当する。
【0009】
図1は、本実施形態のめっき装置1000の全体構成を示す斜視図である。
図2は、本実施形態のめっき装置1000の全体構成を示す平面図である。
図1及び
図2に示すように、めっき装置1000は、ロードポート100、搬送ロボット110、アライナ120、プリウェットモジュール200、プリソークモジュール300、めっきモジュール400、洗浄モジュール500、スピンリンスドライヤ600、搬送装置700、及び、制御モジュール800を備える。
【0010】
ロードポート100は、めっき装置1000に図示していないFOUPなどのカセットに収容されたウェハ(基板)を搬入したり、めっき装置1000からカセットに基板を搬出するためのモジュールである。本実施形態では4台のロードポート100が水平方向に並べて配置されているが、ロードポート100の数及び配置は任意である。搬送ロボット110は、基板を搬送するためのロボットであり、ロードポート100、アライナ120、プリウェットモジュール200及びスピンリンスドライヤ600の間で基板を受け渡すように構成される。搬送ロボット110及び搬送装置700は、搬送ロボット110と搬送装置700との間で基板を受け渡す際には、仮置き台(図示せず)を介して基板の受け渡しを行うことができる。
【0011】
アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせるためのモジュールである。本実施形態では2台のアライナ120が水平方向に並べて配置されているが、アライナ120の数及び配置は任意である。プリウェットモジュール200は、めっき処理前の基板の被めっき面を純水または脱気水などの処理液で濡らすことで、基板表面に形成されたパターン内部の空気を処理液に置換する。プリウェットモジュール200は、めっき時にパターン内部の処理液をめっき液に置換することでパターン内部にめっき液を供給しやすくするプリウェット処理を施すように構成される。
本実施形態では2台のプリウェットモジュール200が上下方向に並べて配置されているが、プリウェットモジュール200の数及び配置は任意である。
【0012】
プリソークモジュール300は、例えばめっき処理前の基板の被めっき面に形成したシード層表面等に存在する電気抵抗の大きい酸化膜を硫酸や塩酸等の処理液でエッチング除去してめっき下地表面を洗浄または活性化するプリソーク処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリソークモジュール300が上下方向に並べて配置されているが、プリソークモジュール300の数及び配置は任意である。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。本実施形態では、上下方向に3台かつ水平方向に4台並べて配置された12台のめっきモジュール400のセットが2つあり、合計24台のめっきモジュール400が設けられているが、めっきモジュール400の数及び配置は任意である。
【0013】
洗浄モジュール500は、めっき処理後の基板に残るめっき液等を除去するために基板に洗浄処理を施すように構成される。本実施形態では2台の洗浄モジュール500が上下方向に並べて配置されているが、洗浄モジュール500の数及び配置は任意である。スピンリンスドライヤ600は、洗浄処理後の基板を高速回転させて乾燥させるためのモジュールである。本実施形態では2台のスピンリンスドライヤ600が上下方向に並べて配置されているが、スピンリンスドライヤ600の数及び配置は任意である。搬送装置700は、めっき装置1000内の複数のモジュール間で基板を搬送するための装置である。制御モジュール800は、めっき装置1000の複数のモジュールを制御するように構成され、例えばオペレータとの間の入出力インターフェースを備える一般的なコンピュータまたは専用コンピュータから構成することができる。
【0014】
めっき装置1000による一連のめっき処理の一例を説明する。まず、ロードポート100にカセットに収容された基板が搬入される。続いて、搬送ロボット110は、ロードポート100のカセットから基板を取り出し、アライナ120に基板を搬送する。アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。搬送ロボット110は、アライナ120で方向を合わせた基板をプリウェットモジュール200へ受け渡す。
【0015】
プリウェットモジュール200は、基板にプリウェット処理を施す。搬送装置700は、プリウェット処理が施された基板をプリソークモジュール300へ搬送する。プリソークモジュール300は、基板にプリソーク処理を施す。搬送装置700は、プリソーク処理が施された基板をめっきモジュール400へ搬送する。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。
【0016】
搬送装置700は、めっき処理が施された基板を洗浄モジュール500へ搬送する。洗浄モジュール500は、基板に洗浄処理を施す。搬送装置700は、洗浄処理が施された基板をスピンリンスドライヤ600へ搬送する。スピンリンスドライヤ600は、基板に乾燥処理を施す。搬送ロボット110は、スピンリンスドライヤ600から基板を受け取り、乾燥処理を施した基板をロードポート100のカセットへ搬送する。最後に、ロードポート100から基板を収容したカセットが搬出される。
【0017】
なお、
図1や
図2で説明しためっき装置1000の構成は、一例に過ぎず、めっき装置1000の構成は、
図1や
図2の構成に限定されるものではない。
【0018】
制御モジュール800は、マイクロコンピュータを備えており、このマイクロコンピュータは、プロセッサとしてのCPU(Central Processing Unit)、非一時的な記憶媒体としての記憶部等を備えている。制御モジュールは、記憶部に記憶されたプログラムの指令に基づいてCPUが動作することで、めっきモジュールの被制
御部を制御する。プログラムは、例えば、搬送ロボット110、搬送装置700の搬送制御、各処理モジュールにおける処理の制御、めっきモジュールにおけるめっき処理の制御、洗浄処理の制御を実行するプログラム、各種機器の異常を検出するプログラムを含む。記憶媒体は、不揮発性及び/又は揮発性の記憶媒体を含むことが可能である。記憶媒体としては、例えば、コンピュータで読み取り可能なROM、RAM、フラッシュメモリなどのメモリや、ハードディスク、CD-ROM、DVD-ROMやフレキシブルディスクなどのディスク状記憶媒体などの公知のものが使用され得る。制御モジュール800は、めっき装置及びその他の関連装置を統括制御する図示しない上位コントローラと通信可能に構成され、上位コントローラが有するデータベースとの間でデータのやり取りをすることができる。制御モジュール800の一部又は全部の機能は、ASIC等のハードウェアで構成することができる。制御モジュール800の一部又は全部の機能は、PLC、シーケンサ等で構成してもよい。制御モジュール800の一部又は全部は、めっき装置の筐体の内部及び/又は外部に配置することができる。制御モジュール800の一部又は全部は、有線及び/又は無線によりめっき装置の各部と通信可能に接続される。
【0019】
[めっきモジュール]
以下、めっきモジュール400について説明する。なお、本実施形態に係るめっき装置1000が有する複数のめっきモジュール400は同様の構成を有しているので、1つのめっきモジュール400について説明する。
【0020】
図3は、第1実施形態に係るめっき装置のめっきモジュールの構成を説明するための断面図である。ここでは、フェースダウン式又はカップ式と称されるタイプのめっきモジュール400を例に挙げて説明するが、本明細書で説明する実施形態は、フェースアップ式と称されるタイプのめっきモジュールにも適用可能であり、また、縦型又はディップ式と称されるタイプのめっきモジュールにも適用可能である(
図15参照)。
【0021】
図3に示すように、めっきモジュール400は、主として、めっき槽10と、基板Wfを保持するめっきヘッドとも称される基板ホルダ11と、アノード12と、抵抗体14と、を備えている。このめっきモジュール400では、アノード12と基板Wfとの間に電源40によって電圧を印加することで、めっき液中の金属イオンを基板Wfの表面に析出させて、基板をめっきする。
【0022】
めっき槽10は、上方に開口を有する有底の容器によって構成されている。めっき槽10は、底壁と、この底壁の外周縁から上方に延在する側壁とを有しており、この側壁の上部が開口している。めっき槽10は、めっき液Q1、Q2を貯留する例えば円筒形状の内部空間を有する。めっき液Q1、Q2は、めっき皮膜を構成する金属元素のイオンを含む溶液であればよく、その具体例は特に限定されるものではない。本実施形態においては、めっき処理の一例として、銅めっき処理を用いており、めっき液の一例として、硫酸銅溶液を用いている。また、本実施形態において、めっき液には所定の添加剤が含まれている。但し、この構成に限定されるものではなく、めっき液は添加剤を含んでいない構成とすることもできる。また、基板(カソード)側のめっき液Q1と、アノード側のめっき液Q2とで、添加剤の有無、添加剤の濃度が別々に選択されてもよい。
【0023】
基板ホルダ11は、被めっき対象である半導体ウェハ等の基板Wfを保持するものであり、基板Wfの外周部を2つの保持部材で挟んだ状態で基板Wfの外周部をめっき液から保護するように密閉するシールを有している。基板ホルダ11は、基板Wfの外周部において基板Wf上のシード層に接触して給電する複数のコンタクト(図示略)を有する。複数のコンタクトは、シールで密閉された空間に配置される。複数のコンタクトは、電源40の低電位側に接続されている。
【0024】
アノード12は、アノードホルダ13に保持されて、めっき槽10の内部の下部に配置されている。アノード12は、図示しない配線を介して、電源40の高電位側に接続されている。この例では、アノード12は、アノードホルダ13に支持された状態で図示されているが、アノードホルダ13を省略して、任意の支持構造でアノード12を支持してもよい。アノード12の具体的な種類は特に限定されるものではなく、溶解アノードや不溶解アノードを用いることができる。本実施形態においては、アノード12として不溶解アノードを用いている。この不溶解アノードの具体的な種類は特に限定されるものではなく、白金や酸化イリジウム等を用いることができる。
【0025】
抵抗体14は、基板Wfとアノード12との間に配置されている。抵抗体14は、アノード12から基板Wfに向かう電場の広がりを調整するものである。抵抗体14は、任意の支持部材15によってめっき槽10の内壁に固定される。
【0026】
めっき槽10の内部において基板Wfの近傍(本実施形態では、抵抗体14と基板Wfとの間)にはパドル16が配置されている。パドル16は、モータ、エアシリンダ等の公知の動力源により作動されるアクチュエータ(図示略)により駆動され、基板Wfの被めっき面に対して概ね平行方向に往復運動して、基板Wf表面に強いめっき液の流れを発生させる。これにより、基板Wfの表面近傍のめっき液中のイオンを均一化し、基板Wf表面に形成されるめっき膜の面内均一性を向上させる。
【0027】
めっき槽10内に、めっき膜厚を計測するセンサ140を配置してもよい。センサ140は、めっき処理中に一定の時間間隔で、光学、電場、磁場、電位など任意の手法を用いて複数のモニタ点におけるめっき膜厚または電流密度などの情報を取得する。センサ140による検出信号は、制御モジュール800に出力される。
【0028】
図4は、第1実施形態に係る抵抗体14を説明するための断面図である。本実施形態の抵抗体14は、導電性の容器141と、容器141内に保持される電解液145と、を有する。抵抗体14は、電解液145の濃度(電解液に含まれるイオンの濃度)を変更することにより、抵抗値(抵抗体で生じる電圧/電圧降下)を変更可能な可変抵抗体/可変抵抗器である。電解液145の濃度は、導電性の容器141及び電解液145を介して、アノード12からカソード(基板Wf)に電流が流れる程度の導電率(伝導度)をもつようにする。本実施形態の抵抗体14は、抵抗体14を介してアノード側から基板側にめっき液中のイオンを通過させないタイプの抵抗器である。
【0029】
容器141は、本実施形態では、概ね円筒状/円盤状に形成されている。容器141の壁142は、円形又は円盤状の基板側の壁(上壁又はカソード側壁と称す)と、円形又は円盤状のアノード側の壁(下壁又はアノード側壁と称す)と、円筒状の側壁とを有する。容器141の壁142は、導電性であり且つ液体を通さない不溶解の材料からなる板、膜等とすることができる。このような材料としては、例えば、Ti、Ti/Pt等の金属を用いることができる。壁142の厚さは、例えば、1.5mm程度とすることができる。また、本実施形態では、容器141の壁142の外面に、めっき液中の添加剤の消耗を抑制するためのネフィオン膜を設けている。装置の構成によっては、ネフィオン膜を省略してもよい。
【0030】
本実施形態では、抵抗体14の容器141の壁142は、めっき液を通さないので、抵抗体14によってめっき槽10の内部が上下の室に仕切られる。このため、カソード側からアノード側にめっき液中の添加剤が透過することを防止する、イオン交換膜等からなる隔膜を、抵抗体14とアノード12との間に配置することを省略することができる。但し、抵抗体14とアノード12との間にイオン交換膜等からなる隔膜を更に設けてもよい。本明細書では、便宜上、抵抗体14の上側の室をカソード室と称し、抵抗体14の下側の
室をアノード室と称す場合がある。
【0031】
抵抗体14の電解液145は、抵抗体14の抵抗値が所望の抵抗値になるように、事前にその濃度が調整されて容器141内に封入されている。電解液145は、めっき液のイオン濃度、めっき液の母酸のイオン濃度よりも低い濃度を有する、つまり薄い電解液である。電解液145の濃度は、電解液145を介してアノード12から基板(カソード)Wfに電流が流れる程度の導電率をもつようにする。電解液145は、めっき液と同じ液体、めっき液中の母酸を薄めたものとすることができる。例えば、めっき液が硫酸銅の場合、電解液145は、めっき液、硫酸、及び/又は塩酸を薄めたものとすることができる。めっき液がスルファミン酸ニッケルである場合には、電解液145は、めっき液及び/又はスルファミン酸を薄めたものとすることができる。電解液145をめっき液及び/又は母酸を薄めたものとすることにより、電解液145が容器141から漏れたとしても、めっき液への悪影響を抑制することができる。なお、容器141中の電解液145の量は、めっき槽10内のめっき液の量と比較して微々たる量であるので、容器145から電解液145が漏れたとしても、めっき液の濃度変化は殆ど生じない。
【0032】
また、電解液145は、めっき液、母酸以外の他の電解液とすることも可能である。但し、電解液145が容器141から漏れた際に、めっき液に実害を与えないような(つまり、めっき品質への影響が少ない)電解液を選択することが好ましい。
【0033】
容器141内に電解液145の濃度を測定する濃度計155を設けてもよい。濃度計155による濃度の測定値に基づいて容器141内の電解液145の濃度が所望の濃度であるかを確認することができる。
【0034】
抵抗体14では、容器141のアノード12側が基板Wf側よりも高電位となり、電解液145を介して容器141のアノード側から基板側に電流が流れ、抵抗体14において電圧降下を生じる抵抗体/抵抗器として機能する。容器141の壁142(アノード側壁、カソード側壁)では電子が移動することにより、容器141内では電解液145中のイオンが移動することにより、抵抗体14に電流が流れる。なお、抵抗体14は、ジュール熱を発生する抵抗器として配置されるので、抵抗体14が発生させるジュール熱によってめっき液の温度調整も可能である。
【0035】
図4に示すように、抵抗体14の容器141には、電解液供給流路143と、電解液排出流路144とが接続されている。電解液供給流路143は、容器141の外部の電解液供給源(図示せず)から容器141の内部に電解液145を供給する。電解液排出流路144は、容器141の内部の電解液を容器141の外部に排出する。電解液供給流路143から所望の濃度の電解液145を容器141内に供給することにより、容器141内部の電解液145を所望の濃度に調整することができる。
【0036】
支持部材15は、非導電性の材料で構成されている。支持部材15には、導電性材料である容器141の外周部(側壁の部分)の低抵抗位置からの電場の漏れを防ぐ目的で、非導電材からなる電場遮蔽部材15Aが設けられている。電場遮蔽部材15Aは、容器141のカソード側壁及び/又はアノード側壁の外周部に設けられる。電場遮蔽部材15Aは、支持部材15と別部材として設けてもよいし、非導電性の支持部材15を容器141のカソード側壁及びアノード側壁の外周部を覆うように延長して、支持部材15と一体に設けてもよい。
【0037】
図5は、抵抗体14の容器141の壁142の断面形状の例である。同図では、容器141のアノード側壁及びカソード側壁の断面形状の例を示している。本実施形態では、アノード側壁及びカソード側壁の板の厚さ形状、カソード/アノードの上下位置を変えるこ
と、及び/又は、アノード側壁及びカソード側壁の形状を組み合わせによって、基板上の多様なパターンやシード厚にも対応すること、気泡流れを制御すること、及びめっき液の流れを制御することを行うことができる。なお、
図5の各断面形状の例は、上下を反転させてもよい。
【0038】
壁142aは、比較的薄い、均一な厚さの壁の形状の例である。壁142bは、比較的厚い、均一な厚さの壁の形状の例である。
【0039】
壁142cは、容器141外側に向かって突出する凸形状であり、中央部に向かって直線的に突出し、中央ほど壁の厚さが厚くなる壁の形状の例である。壁142dは、容器141外側に向かって突出する凸形状であり、中央部に向かって直線的に突出し、均一な厚さを有する壁の形状の例である。
【0040】
壁142eは、容器141外側に向かって突出する凸形状であり、中央部に向かって緩やかに突出し、中央ほど壁の厚さが厚くなる壁の形状の例である。中央部において湾曲が緩やかで平坦な面に近く、外周部で湾曲が強く傾斜が大きい形状である。壁142fは、容器141外側に向かって突出する凸形状であり、中央に向かって緩やかに突出し、均一な厚さを有する壁の形状の例である。中央部において湾曲が緩やかで平坦な面に近く、外周部で湾曲が強く傾斜が大きい形状である。
【0041】
壁142gは、容器141外側面に、先端が尖った複数の突起部147を有する壁の形状の例である。壁142hは、容器141外側面に、先端が曲線的に湾曲した複数の突起部148を有する壁の形状の例である。
【0042】
図6Aから
図6Hは、抵抗体14の容器141の形状の例である。これらの例は、容器141のアノード側壁及びカソード側壁に、
図5に例示する壁の断面形状から選択したものを組み合わせたものである。
【0043】
図6Aの抵抗体14では、容器141のカソード側壁及びアノード側壁の両方が、壁142aで形成されている。
図6Bの抵抗体14では、カソード側壁が壁142aで構成され、アノード側壁が壁142bで構成されている。このように、アノード側壁の厚さを調整することにより、アノードから基板(カソード)に向かう電場をコントロールすることができる。なお、カソード側壁を壁142bで構成し、アノード側壁を壁142aで構成しても良いし、カソード側壁及びアノード側壁の両方を壁142bで構成してもよい。つまり、カソード側壁及び/又はアノード側壁の厚さを調整することにより、電場をコントロールすることができる。
【0044】
図6Cの抵抗体14では、カソード側壁が壁142aで構成され、アノード側壁が壁142cで構成されている。
図6Dの抵抗体14では、カソード側壁が壁142aで構成され、アノード側壁が壁142dで構成されている。このように、アノード側の壁142を中央部に向かって直線的に容器外側に突出する形状とすることにより、容器(基板)の中心側と外周側でめっき液の流速を制御(中心側の流速を大きく)して、アノード12で発生する気泡がアノード側壁に溜まることを抑制することができる。なお、カソード側壁を壁142c又は壁142dで構成してもよい。この場合、基板Wfの中央部のめっき液の流速を速くし、めっき液に乱流を発生させ、基板全体に均一にイオンが届くようにすることができる。また、カソード側壁及びアノード側壁を壁142c又は壁142dで構成してもよい。この場合、上述した両方の効果が期待できる。なお、
図6C及び
図6Dの例では、容器外側に向かって突出する凸形状であるが、容器内側に向かって凹む凹形状としてもよい。
【0045】
図6Eの抵抗体14では、カソード側壁が壁142aで構成され、アノード側壁が壁142eで構成されている。
図6Fの抵抗体14では、カソード側壁が壁142aで構成され、アノード側壁が壁142fで構成されている。このように、アノード側壁を中央部の湾曲を緩やかに且つ外周部の湾曲を強くすることにより、アノード側壁の外周部のめっき液の流速を速くすることができる。これにより、アノード室のめっき液から発生する気泡がアノード側壁に溜まることを抑制することができる。なお、カソード側壁を壁142e又は壁142fで構成してもよい。この場合、基板Wfの外周部のめっき液の流速を速くし、めっき液に乱流を発生させ、基板全体に均一にイオンが届くようにすることができる。また、カソード側壁及びアノード側壁を壁142e又は壁142fで構成してもよい。この場合、上述した両方の効果が期待できる。なお、
図6E及び
図6Fの例では、容器外側に向かって突出する凸形状であるが、容器内側に向かって凹む凹形状としてもよい。
【0046】
図6Gの抵抗体14では、カソード側壁が壁142aで構成され、アノード側壁が壁142gで構成されている。
図6Hの抵抗体14では、カソード側壁が壁142aで構成され、アノード側壁が壁142hで構成されている。このように、アノード側壁に複数の突起部を有する壁の形状とすることにより、パドル16の運動方向が変わる位置でめっき膜厚が薄くなる、いわゆるパドルの影と称される現象を抑制することができる。
【0047】
図7は、抵抗体14の容器141内の電解液145の濃度調整機構の例である。この濃度調整機構は、抵抗体14の電解液145を、濃度の異なる電解液に適宜交換することで、抵抗体14を可変抵抗体(多段抵抗、又は連続可変型抵抗)として機能させる。この例では、電解液供給流路143及び電解液排出流路144がリザーバ150に接続されている。リザーバ150は、DIW供給流路151からの純水の供給、及び、薬液供給流路(第2電解液供給流路)152からの電解液の供給を受けるように構成されている。また、リザーバ150内の電解液は、排出流路153を介して排出されるようになっている。なお、容器141内に濃度計155を設けて、及び/又は、リザーバ150内に濃度計156を設けて電解液の濃度を測定するように構成してもよい。電解液供給流路143、電解液排出流路144、DIW供給流路151、薬液供給流路152、及び排出流路153には、必要に応じて、開閉弁及び/又は流量調整弁が設けられる。開閉弁及び/又は流量調整弁は、制御モジュール800によって制御されることができる。
【0048】
この構成では、DIW供給流路151及び薬液供給流路152から純水及び電解液をリザーバ150に供給して、リザーバ150内で電解液と純水を混合する(電解液を希釈する)。また、リザーバ150から電解液供給流路143を介して電解液を容器141内に供給し、電解液排出流路144を介して容器141内の電解液を排出し、及び排出流路153を介してリザーバ150内の電解液を排出する。そして、濃度計155及び/又は濃度計156により検出される濃度が所望の濃度になったときに、容器141内の電解液の濃度が所望の濃度になったとして、電解液供給流路143及び電解液排出流路144による電解液の供給及び排出を停止する。このようにすれば、容器141に接続する流路の数を抑制しつつ、電解液の濃度を広い範囲で調整し、抵抗体14の抵抗値を広い範囲で調整することができる。なお、リザーバ150内で電解液の濃度を所望の濃度に調整した後に、リザーバ150から容器141に電解液を供給してもよいし、リザーバ150内で電解液の濃度が所望の濃度に到達する前に、リザーバ150から容器141への電解液の供給を開始してもよい。
【0049】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係るめっき装置のめっきモジュールの構成を説明するための断面図である。
図9A及び
図9Bは、第2実施形態に係る抵抗体を説明するための断面図である。ここでは、フェースダウン式又はカップ式と称されるタイプのめっきモジュール400を例に挙げて説明するが、本明細書で説明する実施形態は、フェースアップ式と称さ
れるタイプのめっきモジュールにも適用可能であり、また、縦型又はディップ式と称されるタイプのめっきモジュールにも適用可能である(
図16参照)。
【0050】
本実施形態では、抵抗体14Aの容器141の内部に多孔プレートユニット170(
図9A、
図9B)が配置される以外は、第1実施形態と同様の構成を有する。従って、以下の説明では、第1実施形態と異なる点を主に説明し、他の構成についての説明を省略する。なお、
図8では、抵抗体14Aの多孔プレートユニット170の多孔プレートがめっき液Q1、Q2に露出しているように描画されているが、これは多孔プレートを備える点を模式的に表現したものであり、実際には、
図9A及び
図9Bに示すように、多孔プレートユニット170の各多孔プレート171a~cは、抵抗体14Aの容器141内に収容されてめっき液Q1、Q2から隔離されている。
【0051】
図9A及び
図9Bに示すように、抵抗体14Aの容器141内には、第1実施形態と同様に、所望の濃度の電解液145が保持されている。また、本実施形態では、容器141内には、多孔プレートユニット170が収容されており、多孔プレートユニット170が電解液145中に浸されている。多孔プレートユニット170は、複数の多孔プレート171(この例では、3枚の多孔プレート171a~c)を有する。多孔プレート171aには複数の孔172aが設けられ、多孔プレート171bには複数の孔172bが設けられ、多孔プレート171cには複数の孔172cが設けられている。この例では、3枚の多孔プレートを備える場合を説明するが、多孔プレートの枚数は2枚であっても、4枚以上であってもよい。多孔プレート171は、例えば、パンチングプレート、メッシュプレート、多孔質体、その他任意の多孔構造体とすることができる。孔は、結晶や気泡が詰まることを抑制するために、比較的大きい寸法(例えば、孔径2.0mm~2.5mm)とすることができる。
【0052】
本実施形態では、アノード12と基板Wfとの間に設置した複数枚の多孔プレート171a~cの少なくとも一部を動かして孔172の開放量(複数の多孔プレートの孔の重なり)/気孔率を調整することで、抵抗体14Aの抵抗値を調整し、電場の均一化及びめっき膜厚分布の均一化を図る。ここで、孔172の開放量とは、複数の多孔プレート171a~cの孔172a~cの重なりによって決定される、複数の多孔プレート171a~cの孔172a~c全体としての開放量、言い換えれば多孔プレートユニット170としての孔172の開放量を意味する。複数の多孔プレート171a~cの孔172a~cによって形成される多孔プレートユニット170全体としての孔を、孔172と称する。
【0053】
なお、多孔プレート171a~cを動かす方向は、例えば、
図10Aに示すように、多孔プレート平面内の直交するX軸方向、Y軸方向、及び/又は、回転方向Θとすることができる。多孔プレートを動かす方向は、これらの方向に限らず、任意の1又は複数の方向とすることができる。本実施形態は、第1実施形態の構成が前提であるので、上述した電解液145の濃度を調整する構成、その他第1実施形態の構成を備えることができる。また、上述した電解液の濃度を調整する構成を省略することもできる。
【0054】
図9Aは、各多孔プレート171a~cの孔172a~cが整合し、多孔プレートユニット170の孔172の開放量(孔172a~cの重なりで決定される)が最大の場合を示す。一方、
図9Bは、多孔プレート171a~cのうち少なくとも一部の多孔プレートを動かして、多孔プレートユニット170の孔172の開放量(孔172a~cの重なりで決定される)を小さく調整した場合を示す。本実施形態では、1又は複数の多孔プレート171a~cの移動量を調整することで、連続的又は段階的に多孔プレートユニット170の孔172の開放量を調整することができる。このように複数の多孔プレート171a~cの孔172a~cの重なり(開放量)を調整することにより、電解液145中のイオンの移動を調整し、抵抗体14Aの抵抗値を調整することができる。従って、本実施形
態では、電解液145の濃度の調整、及び/又は、多孔プレートユニット170の孔の開放量の調整によって、抵抗体14Aの抵抗値を調整することができる。
【0055】
なお、
図9A及び
図9Bの例では、説明の便宜上、各多孔プレート171a~cの孔172a~cは、同一の寸法を有するものとしたが、各多孔プレート171a~cの孔172a~cの一部又は全部の寸法が互いに異なってもよい。
【0056】
多孔プレート171a~cのうち1又は複数は、アクチュエータ160(
図8)に接続されており、アクチュエータ160によって動かされる。アクチュエータ160は、制御モジュール800により制御されることができる。アクチュエータ160は、磁力によるスライド機構、エアシリンダ、機械式クランクを採用することができる。本実施形態では、1又は複数の多孔プレートを動かすことにより、多孔プレートユニット170の孔の開放量の制御を行うことができる。また、本実施形態では、1又は複数の多孔プレートを動かすことにより、孔内部の泡抜き(気泡除去)を行うことができる。
【0057】
多孔プレート171a~cの孔172a~cの形状は、円形、多角形(例えば、長方形等の四角形)、長孔、その他任意の形状とすることができる。多孔プレート171a~cの部位によって、孔の形状を変更し、基板の対応する部位における電場の強弱をコントロールしてもよい。例えば、基板の外周部に対応する多孔プレートの外周部において孔の気孔率(開放量)を大きくしたい場合には、多孔プレートの外周部における孔を長孔とすることができる。
【0058】
多孔プレートユニット170の孔172(複数の多孔プレート171a~cの孔172a~cの重なりで形成される孔)は、筒状でテーパー及び/又は上下左右斜めに向きを付ける形状(
図12)とすることにより、泡抜き効果(気泡を除去する効果)を奏することができる。また、複数の多孔プレートの孔の孔径及び孔の位置の組み合わせにより、基板の各部位に対応する位置での開口濃度(抵抗)を変えることができる。また、孔の配置を調整することにより、電場の軸(センター)を変化させることができる。また、多孔プレートの枚数を調整することにより、基板と多孔プレート間の距離の調整が可能である。
【0059】
図10Aから
図11Aは、多孔プレートユニット170の平面図である。
図10B及び
図11Bは、多孔プレートユニット170の一部を拡大した平面図である。これらの図では、複数の多孔プレート171a~cが重なっている状態を上方からみた図で示している。また、上方から見た水平面内の互いに直交する方向をX軸、Y軸で示し、多孔プレートの回転方向をΘで示している。多孔プレートユニット170の複数の多孔プレート171a~cの少なくとも一部を、X軸、Y軸、及びΘ方向に動かすことにより、多孔プレートユニット170の孔172の開放量を調整する。
【0060】
図10Aは、多孔プレートユニット170の孔172の開放量(複数の多孔プレート171a~cの孔の重なり)が最大の場合の多孔プレートユニット170の平面図を示す。
図10Bは、
図10Aの多孔プレートユニット170の一部(符号Aで示す部分)を拡大した図である。同図に示すように、孔172a~cの重なりが最大、つまり孔172a~c(172)の塞ぎ量が最小であることが分かる。
【0061】
一方、
図11Aは、多孔プレートユニット170の孔172の開放量(複数の多孔プレート171a~cの孔の重なり)が最小の場合の多孔プレートユニット170の平面図を示す。
図11Bは、
図11Aの多孔プレートユニット170の一部(上記符号Aと同様の部分)を拡大した図である。同図に示すように、孔172a~cの重なりが最小、つまり孔172a~c(172)の塞ぎ量が最大であることが分かる。
【0062】
図12は、多孔プレートユニット170の孔の側面形状の例である。同図に示すように、各多孔プレートの移動量を調整することにより、孔172a~cで形成される多孔プレートユニット170の孔172の側面形状を様々な形状にすることができる。
【0063】
孔側面形状(a)は、孔172が基板側とアノード側との間で真っすぐに延びる例である。これは、各多孔プレート171a~cの孔172a~cがアノードから基板に向かう方向で整列するように、複数の多孔プレート171a~cを重ねた場合である。
【0064】
孔側面形状(b)、(c)は、孔172が、基板側とアノード側との間で斜めに傾いて延びる例である。これは、隣接する多孔プレート171a~cの孔172a~cを順次同一方向にずらすように、複数の多孔プレート171a~cを重ねた場合である。
【0065】
孔側面形状(d)、(e)は、孔172の面積が一方側から他方側に向かって拡大する例である。これは、一方側から他方側に向かって孔172~cの面積が大きくなるように、複数の多孔プレート171a~cを重ねた場合である。
【0066】
孔側面形状(f)、(g)は、孔172の一方側から他方側に斜めに傾いて延びると共に、孔172の面積が一方側から他方側に向かって拡大する例である。これは、隣接する多孔プレート171a~cの孔172a~cを順次同一方向にずらすとともに、一方側から他方側に向かって孔172a~cの面積が大きくなるように、複数の多孔プレートを重ねた場合である。なお、各多孔プレートの孔の寸法を変えることにより、一方側から他方側に向かって孔の面積が変化するようにしてもよい。また、各多孔プレートの移動と、各多孔プレートの孔の寸法を変えることを組み合わせて、一方側から他方側に向かって孔の面積が変化するように、及び/又は、孔の延びる方向が傾くようにしてもよい。
【0067】
図13は、多孔プレートユニットの孔寸法の調整を説明する説明図である。ここでは、多孔プレート171aの孔172aの開放量が、多孔プレート171b及び/又は171cのパンチング173b、173c(孔172b、172c以外の部分)によって調整される場合を例に挙げて説明する。同図(a)では、多孔プレート171b及び/又は171cのパンチング173b、173cが孔172aに重なっておらず、孔172aの開放量が最大(全開)である場合を示す。同図(b)から(d)に向かうに従い、孔172aが多孔プレート171b及び/又は171cのパンチング173b、173cで塞がれる量が増加し、孔172aの開放量が減少する。
【0068】
(フローチャート)
図14は、めっき処理のフローチャートである。この処理は、制御モジュール800により実施することができる。ステップS11では、めっき前に、抵抗体14、14Aの抵抗値を所望の抵抗値に調整する。抵抗体14、14Aの抵抗値の調整は、上述した容器141内の電解液145の濃度の調整により実施する。また、容器内141内に複数の多孔プレート171が配置されている場合には、抵抗体14Aの抵抗値の調整は、電解液145の濃度の調整、及び/又は、多孔プレートユニット170の孔172の開放量の調整により、実施される。なお、容器内141内に1枚の多孔プレートが配置される場合には、抵抗体14Aの抵抗値の調整は、電解液145の濃度の調整、及び/又は、複数の孔の配置及び寸法が調整された1枚の多孔プレートを配置することにより、実施される。
【0069】
抵抗体14,14Aの抵抗値の調整後、基板Wfをめっき槽10に投入し(ステップS12)、アノード12と基板Wfとの間に電源40から電流を流し、基板Wfをめっきする(ステップS13)。なお、めっき中に、容器141内の電解液145の濃度の調整(
図4、
図7:電解液145の交換又は一部交換)により、抵抗体14、14Aの抵抗値を調整することができる。また、抵抗体14Aが多孔プレートユニット170を備える場合
には、めっき中に、電解液145の濃度調整(
図4、
図7)、及び/又は多孔プレートユニット170の開放量の調整(
図9A、
図9B)の一方又は両方により、抵抗体14Aの抵抗値を調整することができる。抵抗体14、14Aは、任意の抵抗値に変更可能な多段抵抗ないし連続可変型の抵抗として機能させることができる。なお、センサ140により計測されるめっき膜厚分布又は電流密度分布に基づいて、抵抗体の抵抗値の調整を実施してもよい。
【0070】
めっきが完了すると(ステップS14)、基板Wfをめっき槽10から取り出す(ステップS15)。
【0071】
(他の実施形態)
(1)上記では、抵抗体の容器の全体的な形状が円筒状又は円盤状である場合を説明したが、抵抗体の容器の全体的な形状は、基板の形状に応じて、四角形等の多角形、その他任意の形状とすることができる。
(2)上記では、複数の多孔プレートの孔の開放量を調整する例を示したが、多孔プレート1枚を抵抗体14Aの容器141内に配置し、抵抗体14Aの抵抗値を調整することも可能である。例えば、めっき前に、電解液145の濃度、及び1枚の多孔プレートの複数の孔の配置、開口寸法により、抵抗体14Aの抵抗値を設定することができる。この場合も、めっき中に電解液145の濃度を調整して、抵抗体14Aの抵抗値を調整してもよい。
(3)基板ホルダを移動させる機構(ホルダ昇降機構)及び/又は抵抗体を移動させる機構(抵抗体昇降機構)を設け、基板と抵抗体との間の距離の調整と、抵抗体の抵抗値の調整とを組み合わせれば、更に、精度良く電場を調整することができる。
【0072】
上述した実施形態から少なくとも以下の形態が把握される。
[1]一形態によれば、めっき液を保持するためのめっき槽と、 前記めっき槽内に配置されるアノードと、前記アノードに対向して配置され基板を保持する基板ホルダと、 前記基板と前記アノードとの間に配置された抵抗体であり、導電性の容器と、前記容器の内部に保持された電解液とを有する抵抗体と、を備える、めっき装置が提供される。
【0073】
この形態によれば、容器内の電解液の濃度を選択又は調整することにより、抵抗体の抵抗値を変更することができる。基板のシード厚及び/又はパターンに応じて、容器内の電解液の濃度を選択又は調整して抵抗体の抵抗値を調整することにより、アノードから基板に向かう電場を均一にし、基板に形成されるめっき膜厚分布の均一化を図ることができる。
【0074】
[2]一形態によれば、 前記容器には、前記容器内に前記電解液を供給する第1電解液供給流路と、前記容器内の電解液を排出する第1電解液排出流路とが接続されている。
【0075】
この形態によれば、抵抗体を組み立てた後に、第1電解液供給流路から所望の濃度の電解液を容器内に供給することにより、容器内に所望の濃度の電解液で満たすことができる。また、第1電解液排出流路から容器内の電解液を排出すると共に、第1電解液供給流路から別の濃度の電解液を容器内に供給することで、容器内の電解液の濃度を調整することができる。また、めっき前及びめっき中に電解液の濃度の調整を行うことができる。
【0076】
[3]一形態によれば、 前記第1電解液供給流路及び前記第1電解液排出流路に接続されたリザーバと、 前記リザーバに純水を供給する純水供給流路と、 前記リザーバに電解液を供給する第2電解液供給流路と、を更に備え、 前記第2電解液供給流路からの電解液が前記リザーバで純水と混合された後に、前記第1電解液供給流路を介して前記容器に供給される。
【0077】
この形態によれば、リザーバで濃度を調整された後の電解液を容器内に供給することができる。また、容器に接続する流路の数を低減しつつ、電解液の濃度を柔軟に調整することができる。
【0078】
[4]一形態によれば、 前記容器内の電解液は、前記めっき液を希釈した液体、又は、前記めっき液の母酸を希釈した液体である。
【0079】
この形態によれば、容器内の電解液がめっき液中に漏れたとしても、めっき液の濃度に影響を与えることを抑制し、めっき品質への提供を低減することができる。
【0080】
[5]一形態によれば、 前記容器の前記基板側の壁及び/又は前記アノード側の壁の外周部には、電場遮蔽部材が配置されている。
【0081】
この形態によれば、抵抗値が低い容器の側壁部においてアノード側から基板側に電場が漏れることを抑制することができる。
[6]一形態によれば、 前記容器の前記アノード側の壁及び前記基板側の壁は、異なる形状である。
【0082】
この形態によれば、容器のアノード側壁及び基板側壁の形状を独立に設計することにより、アノード側壁及び基板側壁に要求される性能(アノードから発生するガスの気泡がアノード側壁に溜まることを抑制する性能、アノード側壁に沿って流れるめっき液の流速を制御する性能、基板近傍でめっき液の乱流を発生させる性能等)を実現することができる。
【0083】
[7]一形態によれば、 前記容器の前記アノード側の壁及び前記基板側の壁は、異なる厚さを有する。
【0084】
この形態によれば、容器のアノード側壁及び基板側壁の厚さを独立に設計することにより、電場を調整することができる。
【0085】
[8]一形態によれば、 前記容器の前記アノード側の壁及び/又は前記基板側の壁は、前記容器の外側に向かって突出する凸形状、又は前記容器の内部に向かってへこむ凹形状である。
【0086】
この形態によれば、アノード側壁及び/又は基板側壁の中心部及び外周部におけるめっき液の流速を制御し、これにより、アノード側壁に気泡が溜まることを抑制し、及び/又は基板近傍にめっき液の乱流を発生させることができる。
[9]一形態によれば、 前記容器の前記アノード側の壁及び/又は前記基板側の壁は、複数の突起部を有する。
【0087】
この形態によれば、パドルの影と称される現象を抑制し、めっき膜厚分布の均一化を図ることができる。
【0088】
[10]一形態によれば、 めっき中に、前記容器内の前記電解液の濃度を調整することにより、前記抵抗体の抵抗値を変更可能である。めっき膜厚分布または電流密度分布を計測可能なセンサをめっき槽内に設け、センサによる計測結果に基づいて電解液の濃度を調整してもよい。
【0089】
この形態によれば、めっき中における基板上のめっき膜厚分布に応じて、抵抗体の抵抗
値を調整することにより、めっき膜厚分布の均一化を更に図ることができる。また、簡易な構成で、めっき中の抵抗体の抵抗値を調整することができる。
【0090】
[11]一形態によれば、 前記抵抗体は、前記容器内に配置された1又は複数の多孔プレートを更に有する。
【0091】
この形態によれば、多孔プレートの孔により電解液中のイオンの流れを調整することによっても、抵抗体の抵抗値を調整することができる。
【0092】
[12]一形態によれば、 前記抵抗体は、複数の多孔プレートを有し、 前記複数の多孔プレートの少なくとも一部の多孔プレートを変位させるアクチュエータを備え、 前記アクチュエータにより前記複数の多孔プレートの少なくとも一部が変位されることで前記複数の多孔プレートの孔の開放量が調節され、前記抵抗体の抵抗値が調整される。
【0093】
この形態によれば、複数の多孔プレートの少なくとも一部を変位させることで、複数の多孔プレートの孔の開放量(複数の多孔プレートの孔の重なりで決まる)を調整して抵抗体の抵抗値を調整することができる。
【0094】
[13]一形態によれば、 めっき中に、前記容器内の前記電解液の濃度を調整すること、及び/又は、前記複数の多孔プレートの少なくとも一部を変位させることで、孔の開放量を調節することにより、前記抵抗体の抵抗値を変更可能である。
【0095】
この形態によれば、必要に応じて、電解液の濃度調整、多孔プレートの孔の開放量の調整、及びそれらの調整の組み合わせにより、抵抗体の抵抗値の調整の自由度を向上させることができる。
【0096】
[14]一形態によれば、 めっきする方法であって、 基板とアノードとの間に配置される抵抗体を準備する工程であり、前記抵抗体が電解液を保持する容器を有する工程と、 前記容器内の前記電解液の濃度を調整することにより、前記抵抗体の抵抗値を変更する工程と、を含む、めっき方法が提供される。
【0097】
この形態によれば、基板のシード厚及び/又はパターンに応じて、容器内の電解液の濃度を選択又は調整して抵抗体の抵抗値を調整することにより、アノードから基板に向かう電場を均一にし、基板に形成されるめっき膜厚分布の均一化を図ることができる。また、めっき中における基板上のめっき膜厚分布に応じて、抵抗体の抵抗値を調整することにより、めっき膜厚分布の均一化を更に図ることができる。
【0098】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、実施形態および変形例の任意の組み合わせが可能であり、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0099】
10 めっき槽
11 基板ホルダ
12 アノード
13 アノードホルダ
14、14A 抵抗体
15 支持部材
15A 電場遮蔽部材
16 パドル
40 電源
141 容器
142 壁
143 電解液供給流路
144 電解液排出流路
145 電解液
147 突起部
148 突起部
150 リザーバ
151 DIW供給流路
152 薬液供給流路
153 排出流路
155、156 濃度計
160 アクチュエータ
170 多孔プレートユニット
171 多孔プレート
172 孔
400 めっきモジュール
1000 めっき装置