(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074514
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】積層シート、剥離方法及び貼合方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
B32B27/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185724
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】高田 晃右
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AG00C
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AK42
4F100AK42A
4F100AK42C
4F100AK52
4F100AK52B
4F100AR00B
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA07
4F100DC13
4F100DC13A
4F100DC13B
4F100DC13C
4F100EJ30
4F100EJ30A
4F100EJ30C
4F100EJ52
4F100EJ52A
4F100EJ52B
4F100EJ52C
4F100GB41
4F100JB12
(57)【要約】
【課題】剥離欠点を抑制できる積層シートを提供し、積層シートの剥離方法及び、積層シートを用いた貼合方法を提供する。
【解決手段】積層シートは、第1の樹脂基板と中間層と第2の樹脂基板とが、この順で積層された積層シートであって、第1の樹脂基板の表面の法線方向から見た外形が四角形であり、周縁領域に切込み線により区画された少なくとも2つの切取り部を有し、各切取り部は、頂点を含んでおり、切込み線は、第1の樹脂基板と中間層とを貫通し、かつ第2の樹脂基板の厚み方向の途中まで達する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂基板と中間層と第2の樹脂基板とが、この順で積層された積層シートであって、
前記第1の樹脂基板の表面の法線方向から見た外形が四角形であり、
周縁領域に切込み線により区画された少なくとも2つの切取り部を有し、
前記各切取り部は、頂点を含んでおり、
前記切込み線は、前記第1の樹脂基板と前記中間層とを貫通し、かつ前記第2の樹脂基板の厚み方向の途中まで達する、積層シート。
【請求項2】
前記切込み線は、前記切込み線が延びる方向と直交する方向における前記中間層及び前記第2の樹脂基板の断面においてテーパー状であり、かつ前記第2の樹脂基板の厚み方向における切込み長さが前記中間層の厚みよりも長い、請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
第1の樹脂基板と中間層と第2の樹脂基板とが、この順で積層された積層シートであって、
前記第1の樹脂基板の表面の法線方向から見た外形が四角形であり、
直線状の第1の切込み線と、前記第1の切込み線と結合し、かつ前記第1の切込み線と直交する方向に延びる直線状の第2の切込み線とで区画された切取り部を有し、
前記第1の切込み線は、前記積層シートの外縁の一辺まで延び、
前記第2の切込み線は、前記積層シートの前記一辺とは異なる前記外縁の他の辺まで延びており、
前記第1の切込み線及び前記第2の切込み線は、前記第1の樹脂基板と前記中間層とを貫通し、かつ前記第2の樹脂基板の厚み方向の途中まで達する、積層シート。
【請求項4】
前記第1の切込み線は、前記第1の切込み線が延びる方向と直交する方向における前記中間層及び前記第2の樹脂基板の断面においてテーパー状であり、前記第2の切込み線は、前記第2の切込み線が延びる方向と直交する方向における前記中間層及び前記第2の樹脂基板の断面においてテーパー状であり、かつ前記第1の切込み線及び前記第2の切込み線は、前記第2の樹脂基板の厚み方向における切込み長さが前記中間層の厚みよりも長い、請求項3に記載の積層シート。
【請求項5】
前記中間層は、シリコーン樹脂層である、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項6】
前記第1の樹脂基板及び前記第2の樹脂基板は、ポリエチレンテレフタレート基板である、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の積層シートから、前記切取り部を剥離する工程を有し、
前記剥離する工程は、前記切取り部を前記積層シートの外縁から内側の方向に向かって剥離する、剥離方法。
【請求項8】
第1の樹脂基板と中間層と第2の樹脂基板とが、この順で積層され、前記第1の樹脂基板の表面の法線方向から見た外形が四角形である積層シートに対して、前記第1の樹脂基板と前記中間層とを貫通し、かつ前記第2の樹脂基板の厚み方向の途中まで達する切込み線を周縁領域に形成し、前記切込み線により、頂点を含む切取り部を少なくとも2つ形成する工程と、
前記切取り部を剥離する工程とを有し、
前記剥離する工程は、前記切取り部を前記積層シートの外縁から内側の方向に向かって剥離する、剥離方法。
【請求項9】
第1の樹脂基板と中間層と第2の樹脂基板とが、この順で積層され、前記第1の樹脂基板の表面の法線方向から見た外形が四角形である積層シートに対して、前記積層シートの外縁の一辺まで延びる直線状の第1の切込み線と、前記第1の切込み線と結合し、かつ前記第1の切込み線と直交する方向に延び、前記積層シートの前記一辺とは異なる前記外縁の他の辺まで延びる直線状の第2の切込み線とにより切取り部を形成する工程と、
前記切取り部を剥離する工程とを有し、
前記第1の切込み線及び前記第2の切込み線は、前記第1の樹脂基板と前記中間層とを貫通し、かつ前記第2の樹脂基板の厚み方向の途中まで達するものであり、
前記剥離する工程は、前記切取り部を前記積層シートの外縁から内側の方向に向かって剥離する、剥離方法。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか1項に記載の積層シートから、前記切取り部を剥離する工程と、
前記第2の樹脂基板を剥離し、前記中間層を露出させて、前記露出した前記中間層をガラス基板に貼合する工程とを有する、貼合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層シート、剥離方法及び貼合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池;液晶パネル(LCD);有機ELパネル(OLED);電磁波、X線、紫外線、可視光線、赤外線等を感知する受信センサーパネル;等の電子デバイスを製造する際に、ポリイミド樹脂層が基板として用いられる。ポリイミド樹脂層は、ガラス基板上に設けられた積層体の状態で用いられ、積層体が電子デバイスの製造に提供されている。
ポリイミド樹脂層を有する積層体は、例えば、ガラス基板上に、シリコーン樹脂層等の吸着層が設けられ、この吸着層上にポリイミド樹脂層が形成されている。
ポリイミド樹脂層を有する積層体を形成する場合、ガラス基板上のシリコーン樹脂層等の吸着層上に保護フィルムが設けられている。
ポリイミド樹脂層を有する積層体の製造には、例えば、離型フィルムと吸着層と保護フィルムとの積層体が用いられる。この積層体において、離型フィルムと吸着層とを切断した後、不要部を取り除いた後、保護フィルムを剥離して、吸着層をガラス基板に貼合して、吸着層をガラス基板上に設ける。ガラス基板上に吸着層がある状態で、上述のように吸着層上にポリイミド樹脂層が形成される。
【0003】
上述の離型フィルムと吸着層と保護フィルムとの積層体の切断方法が提案されている(特許文献1)。より具体的には、特許文献1では、四角の枠状にハーフカット処理して、ハーフカット処理された部分が剥離ロールにより連続的にカス取りが行われ、カス取りロールで巻き取られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、四角の枠状にハーフカット処理された部分をカスとしてカス取りを行う際、すなわち、不要部を剥離する際に、取り除く不要部が残る部分に接触する等して剥離欠点が生じやすく、その改善が必要であった。
本発明は、剥離欠点を抑制できる積層シートを提供することを目的とする。
また、本発明は、積層シートの剥離方法及び、積層シートを用いた貼合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の構成により上述の課題を解決できることを見出した。
(1)第1の樹脂基板と中間層と第2の樹脂基板とが、この順で積層された積層シートであって、第1の樹脂基板の表面の法線方向から見た外形が四角形であり、周縁領域に切込み線により区画された少なくとも2つの切取り部を有し、各切取り部は、頂点を含んでおり、切込み線は、第1の樹脂基板と中間層とを貫通し、かつ第2の樹脂基板の厚み方向の途中まで達する、積層シート。
(2)切込み線は、切込み線が延びる方向と直交する方向における中間層及び第2の樹脂基板の断面においてテーパー状であり、かつ第2の樹脂基板の厚み方向における切込み長さが中間層の厚みよりも長い、(1)に記載の積層シート。
【0007】
(3)第1の樹脂基板と中間層と第2の樹脂基板とが、この順で積層された積層シートであって、第1の樹脂基板の表面の法線方向から見た外形が四角形であり、直線状の第1の切込み線と、第1の切込み線と結合し、かつ第1の切込み線と直交する方向に延びる直線状の第2の切込み線とで区画された切取り部を有し、第1の切込み線は、積層シートの外縁の一辺まで延び、第2の切込み線は、積層シートの一辺とは異なる外縁の他の辺まで延びており、第1の切込み線及び第2の切込み線は、第1の樹脂基板と中間層とを貫通し、かつ第2の樹脂基板の厚み方向の途中まで達する、積層シート。
(4)第1の切込み線は、第1の切込み線が延びる方向と直交する方向における中間層及び第2の樹脂基板の断面においてテーパー状であり、第2の切込み線は、第2の切込み線が延びる方向と直交する方向における中間層及び第2の樹脂基板の断面においてテーパー状であり、かつ第1の切込み線及び第2の切込み線は、第2の樹脂基板の厚み方向における切込み長さが中間層の厚みよりも長い、(3)に記載の積層シート。
(5)中間層は、シリコーン樹脂層である、(1)~(4)のいずれか1つに記載の積層シート。
(6)第1の樹脂基板及び第2の樹脂基板は、ポリエチレンテレフタレート基板である、(1)~(5)のいずれか1つに記載の積層シート。
【0008】
(7)(1)~(6)のいずれか1つに記載の積層シートから、切取り部を剥離する工程を有し、剥離する工程は、切取り部を積層シートの外縁から内側の方向に向かって剥離する、剥離方法。
(8)第1の樹脂基板と中間層と第2の樹脂基板とが、この順で積層され、第1の樹脂基板の表面の法線方向から見た外形が四角形である積層シートに対して、第1の樹脂基板と中間層とを貫通し、かつ第2の樹脂基板の厚み方向の途中まで達する切込み線を周縁領域に形成し、切込み線により、頂点を含む切取り部を少なくとも2つ形成する工程と、切取り部を剥離する工程とを有し、剥離する工程は、切取り部を積層シートの外縁から内側の方向に向かって剥離する、剥離方法。
(9)第1の樹脂基板と中間層と第2の樹脂基板とが、この順で積層された積層シートに対して、積層シートの外縁の一辺まで延びる直線状の第1の切込み線と、第1の切込み線と結合し、かつ第1の切込み線と直交する方向に延び、積層シートの一辺とは異なる外縁の他の辺まで延びる直線状の第2の切込み線とにより切取り部を形成する工程と、切取り部を剥離する工程とを有し、第1の切込み線及び第2の切込み線は、第1の樹脂基板と中間層とを貫通し、かつ第2の樹脂基板の厚み方向の途中まで達するものであり、剥離する工程は、切取り部を積層シートの外縁から内側の方向に向かって剥離する、剥離方法。
【0009】
(10)(1)~(6)のいずれか1つに記載の積層シートから、切取り部を剥離する工程と、第2の樹脂基板を剥離し、中間層を露出させて、露出した中間層をガラス基板に貼合する工程とを有する、貼合方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、不要部を取り除く際に、剥離欠点を抑制できる積層シートを提供できる。また、本発明によれば、積層シートの剥離方法及び、積層シートを用いた貼合方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態の積層シートの第1の例を示す模式的断面図である。
【
図2】本発明の実施形態の積層シートの第1の例を示す模式的平面図である。
【
図3】本発明の実施形態の積層シートの第2の例を示す模式的平面図である。
【
図4】本発明の実施形態の積層シートの第3の例を示す模式的平面図である。
【
図5】本発明の実施形態の積層シートの第4の例を示す模式的平面図である。
【
図6】本発明の実施形態の積層シートの第5の例を示す模式的平面図である。
【
図7】本発明の実施形態の積層シートの第1の例の貼合方法を示す模式的側面図である。
【
図8】本発明の実施形態の積層シートの第1の例の貼合方法を示す模式的側面図である。
【
図9】本発明の実施形態の積層シートの第1の例の貼合方法を示す模式的側面図である。
【
図10】本発明の実施形態の積層シートの第1の例の貼合方法を示す模式的平面図である。
【
図11】本発明の実施形態の積層シートの第1の例の貼合方法を示す模式的平面図である。
【
図12】本発明の実施形態の積層シートの第1の例の貼合方法を示す模式的平面図である。
【
図13】本発明の実施形態の積層シートの第1の例の貼合方法で得られた積層体の一例を示す模式的断面図である。
【
図14】例8の積層シートを示す模式的平面図である。
【
図15】例9の積層シートを示す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ただし、以下の実施形態は本発明を説明するための例示的なものであり、本発明は以下に示す実施形態に制限されることはない。なお、本発明の範囲を逸脱することなく、以下の実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
以下において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、以下において、「直交」及び「平行」は、特に記載がなければ、一般的に許容される誤差範囲を含む。
【0013】
本発明の積層シートの特徴点としては、第1の樹脂基板と中間層と第2の樹脂基板とが、この順で積層された積層シートであって、第1の樹脂基板の表面の法線方向から見た外形が四角形であり、周縁領域に切込み線により区画された4つの切取り部を有し、各切取り部は、頂点を含んでおり、切込み線は、第1の樹脂基板と中間層とを貫通し、かつ第2の樹脂基板の厚み方向の途中まで達することにより、不要部として、4つの切取り部を剥離する際に、剥離欠点を抑制できることを知見している。これにより、所望の効果が得られる。
また、本発明の積層シートの特徴点としては、第1の樹脂基板と中間層と第2の樹脂基板とが、この順で積層された積層シートであって、第1の樹脂基板の表面の法線方向から見た外形が四角形であり、直線状の第1の切込み線と、第1の切込み線と結合し、かつ第1の切込み線と直交する方向に延びる直線状の第2の切込み線とで区画された切取り部を有し、第1の切込み線は、積層シートの外縁の一辺まで延び、第2の切込み線は、積層シートの一辺とは異なる外縁の他の辺まで延びており、第1の切込み線及び第2の切込み線は、第1の樹脂基板と中間層とを貫通し、かつ第2の樹脂基板の厚み方向の途中まで達することにより、不要部として、切取り部を剥離する際に、剥離欠点を抑制できることを知見している。これにより、所望の効果が得られる。
【0014】
<積層シートの第1の例>
図1は本発明の実施形態の積層シートの第1の例を示す模式的断面図であり、
図2は本発明の実施形態の積層シートの第1の例を示す模式的平面図である。
図1に示す積層シートの第1の例の模式的断面図は、切込み線17が延びる方向と直交する方向における断面を示している。
図1の模式的断面図では切込み線17を、第1の樹脂基板12から第2の樹脂基板16に向って幅が徐々に狭くなっている楔状に示しているが、
図2の模式的平面図では破線で示している。
図2以外でも、模式的平面図では切込み線17を破線で示す。
図1に示す第1の例の積層シート10は、第1の樹脂基板12と、中間層14と、第2の樹脂基板16とをこの順に積層されたものである。
積層シート10は、第2の樹脂基板16の表面16aに中間層14が配置され、中間層14の表面14aに第1の樹脂基板12が配置されている。
積層シート10は、
図2に示すように第1の樹脂基板12の表面12aの法線方向から見た外形が四角形である。第1の樹脂基板12、中間層14、及び第2の樹脂基板16は、第1の樹脂基板12の表面12aの法線方向から見た外形が四角形である。第1の樹脂基板12と、中間層14と、第2の樹脂基板16とは、同じ大きさであり、互いに辺を平行にして配置されている。
【0015】
図2に示す積層シート10は、互いに平行な2つの辺10a、10bと、互いに平行かつ、辺10aと直交する2つの辺10c、10dとを有する。辺10aの長さL
1は、辺10bの長さL
2よりも短い。
なお、積層シート10において、辺10aの長さL
1は、辺10bの長さL
2よりも長くてもよく、また、辺10aの長さL
1と、辺10bの長さL
2とは同じでもよい。辺10aの長さL
1と、辺10bの長さL
2とが同じ場合、第1の樹脂基板12の表面12aの法線方向から見た外形が正方形である。
【0016】
積層シート10は、4本の切込み線17があり、4本の切込み線17により区画された4つの切取り部19を有する。各切取り部19は、不要部として剥離される部分であり、それぞれ積層シート10の頂点10eを含んでいる。切取り部19は矩形状である。
具体的には、辺10aに平行、かつ、辺10aよりも短い切込み線17が設けられており、端が辺10dまで延びている。
辺10bに平行、かつ、辺10bよりも短い切込み線17が設けられており、端が辺10cまで延びている。
辺10cに平行、かつ、辺10cよりも短い切込み線17が設けられており、一方の端が辺10bに平行な切込み線17と結合し、他方の端が辺10aまで延びている。
辺10dに平行、かつ、辺10dよりも短い切込み線17が設けられており、一方の端が辺10aに平行な切込み線17と結合し、他方の端が辺10bまで延びている。
切取り部19が不要部として剥離された際に、4本の切込み線17で囲まれた製品部18が剥離されずに残る領域である。製品部18の中間層14が後述のようにガラス基板に貼合される。
辺10aに平行な2本の切込み線17の辺10cの長さL2方向における間隔と、辺10cに平行な切込み線17の辺10aの長さL1方向における間隔とにより、製品部18の大きさが決定される。すなわち、切取り部19の幅dにより、製品部18の大きさが決定される。切取り部19の幅dは、4mm~19mmが好ましい。
【0017】
図1に示す切込み線17は、第1の樹脂基板12と中間層14とを貫通し、かつ第2の樹脂基板16の厚み方向の途中まで達する。切込み線17は、例えば、楔状である。切込み線17は、第1の樹脂基板12と中間層14とに対してはフルカットであり、第2の樹脂基板16に対してハーフカットである。このような切込み線17により、切取り部19の中間層14と、製品部18の中間層14とが離間され、切取り部19の剥離の際に中間層14が引き千切られることが抑制される。これにより、製品部18の中間層14が欠損したり、中間層14が第2の樹脂基板16上に残存する等の剥離欠点の発生が抑制される。第2の樹脂基板16上に残存する中間層14は、脱落すると工程内汚染に繋がるが、このようなことも抑制される。
図1及び
図2に示す積層シート10から、切取り部19を不要部として剥離する際、切取り部19を、製品部18の周辺と接触しない方向に剥離する。具体的には、切取り部19を頂点10eから製品部18の中央に向って剥離する。これにより、切取り部19と製品部18との接触が抑制されて、中間層と第1の樹脂基板又は第2の樹脂基板との界面での剥離等の剥離欠点の発生を抑制できる。
さらには、切取り部19の中間層14と、製品部18の中間層14とが接触することで発塵することがあるが、この発塵も抑制され、工程内汚染も抑制できる。
【0018】
<積層シートの第2の例~第5の例>
図3は本発明の実施形態の積層シートの第2の例を示す模式的平面図である。
図4は本発明の実施形態の積層シートの第3の例を示す模式的平面図である。
図5は本発明の実施形態の積層シートの第4の例を示す模式的平面図である。
図6は本発明の実施形態の積層シートの第5の例を示す模式的平面図である。
なお、
図3~
図6において、
図1及び
図2に示す積層シート10と同一構成物には、同一符号付して、その詳細な説明は省略する。
図3に示す第2の例の積層シート11は、
図1及び
図2に示す積層シート10に比して、切込み線17の構成が異なり、それ以外の構成は、
図1及び
図2に示す積層シート10と同様の構成である。
【0019】
図3に示す積層シート11は、周縁領域に切込み線17により区画された2つの切取り部19を有する。積層シート11は、切込み線17が2本設けられている。切取り部19は矩形状である。
具体的には、辺10dに平行、かつ、辺10dと同じ長さの切込み線17が設けられており、一方の端が辺10aまで延び、他方の端が辺10bまで延びている。
辺10bに平行、かつ、辺10bよりも短い切込み線17が設けられており、一方の端が、辺10dに平行な切込み線17に結合し、他方の端が辺10cまで延びている。
積層シート11では切取り部19の幅dにより、製品部18の大きさが決定される。
図3に示す積層シート11から、切取り部19を不要部として剥離する際、切取り部19を、製品部18の周辺と接触しない方向に剥離する。例えば、切取り部19を頂点10eから製品部18の中央に向って剥離する。これにより、切取り部19と製品部18との接触が抑制されて、上述のように剥離欠点の発生を抑制でき、工程内汚染も抑制できる。
なお、
図1及び
図2に示す積層シート10のように、4つの切取り部19を有する構成に限定されるものではなく、積層シートとしては、少なくとも2つの切取り部19を有する構成であればよい。切取り部19が2つの場合、2つの切取り部19は、対向する辺ではなく、直交する2つの辺に設けることが好ましい。
【0020】
図4に示す第3の例の積層シート11aは、
図1及び
図2に示す積層シート10に比して、切取り部19の構成が異なり、それ以外の構成は、
図1及び
図2に示す積層シート10と同様の構成である。
図4に示す積層シート11aは、周縁領域に、直線状の第1の切込み線20と直線状の第2の切込み線22とにより区画された切取り部19を有する。切取り部19は、不要部として剥離される部分であり、L字状である。
積層シート11aは、直線状の第1の切込み線20と、第1の切込み線20と結合し、かつ第1の切込み線20と直交する方向に延びる直線状の第2の切込み線22とで切取り部19を区画している。第1の切込み線20は、辺10dに平行であり、かつ積層シート11aの外縁の一辺まで延びている。すなわち、第1の切込み線20は辺10aまで延びている。第2の切込み線22は、辺10bに平行であり、かつ積層シート11aの一辺、すなわち、辺10aとは異なる外縁の他の辺まで伸びている。すなわち、第2の切込み線22は辺10cまで延びている。
辺10dから第1の切込み線20の距離d
1と、辺10bから第2の切込み線22の距離d
2とにより製品部18の大きさが決定される。距離d
1及び距離d
2は、4mm~19mmが好ましい。
距離d
1は、辺10dと第1の切込み線20との距離に相当する任意の10箇所の距離の平均値である。
距離d
2は辺10bと第2の切込み線22との距離に相当する任意の10点の箇所の距離の平均値である。
【0021】
第1の切込み線20及び第2の切込み線22は、
図1に示す切込み線17と同様に、第1の樹脂基板12と中間層14とを貫通し、かつ第2の樹脂基板16の厚み方向の途中まで達する。切込み線17は、第1の樹脂基板12と中間層14とに対してはフルカットであり、第2の樹脂基板16に対してハーフカットである。
図4に示す積層シート11aから、切取り部19を不要部として剥離する際、切取り部19を、製品部18の周辺と接触しない方向に剥離する。具体的には、切取り部19を頂点10e(積層シートの外側)から製品部18の中央に向って剥離する。これにより、切取り部19が製品部18の周辺に沿って剥がれ、切取り部19と製品部18との接触が抑制されて、上述のように剥離欠点の発生を抑制でき、工程内汚染も抑制できる。
【0022】
図5に示す第3の例の積層シート11bは、
図1及び
図2に示す積層シート10に比して、切取り部19の構成が異なり、それ以外の構成は、
図1及び
図2に示す積層シート10と同様の構成である。
図5に示す積層シート11bは、辺10c及び辺10d直交し、かつ辺10a及び辺10bと平行な切込み線23が、辺10cの長さ方向の中間の位置に設けられている。切込み線23は辺10a及び辺10bと同じ長さであり、辺10cから辺10dまで達する。
切込み線23により、積層シート11bは、第1領域13aと第2領域13bとに区画される。
【0023】
第1領域13aに、直線状の第1の切込み線24と直線状の第2の切込み線25とにより区画された切取り部19が形成されている。第1の切込み線24と、第2の切込み線25とは直交し、かつ結合している。
第1の切込み線24は、積層シート11bの外縁の一辺まで延び、すなわち、辺10bまで延びている。第2の切込み線25は、積層シート11bの一辺、すなわち、辺10bとは異なる外縁の他の辺、すなわち、辺10cまで延びている。
また、辺10cに平行な直線状の第3の切込み線26と、第3の切込み線26と結合し、かつ第3の切込み線26と直交する方向に延びる第4の切込み線27とを有する。第3の切込み線26と第4の切込み線27とにより切取り部19aが区画される。
具体的には、第3の切込み線26は、一方の端が第4の切込み線27と結合し、他方の端が第2の切込み線25と結合している。
第4の切込み線27は、一方の端が第3の切込み線26と結合し、他方の端が第1の切込み線24と結合している。
第1領域13aでは、切取り部19と切取り部19aとで囲まれた領域が製品部18となる。
【0024】
第2領域13bに、第1領域13aと同様に、直線状の第1の切込み線24と直線状の第2の切込み線25とにより区画された切取り部19が形成されている。第1の切込み線24と、第2の切込み線25とが結合している。
第1の切込み線24は、積層シート11bの外縁の一辺まで延び、すなわち、辺10aまで延びている。第2の切込み線25は、積層シート11bの一辺、すなわち、辺10aとは異なる外縁の他の辺、すなわち、辺10cまで延びている。
辺10cに平行な直線状の第3の切込み線26と、第3の切込み線26と結合し、かつ第3の切込み線26と直交する方向に延びる第4の切込み線27とを有する。第3の切込み線26と第4の切込み線27とにより切取り部19aが区画される。
具体的には、第3の切込み線26は、一方の端が第4の切込み線27と結合し、他方の端が第2の切込み線25と結合している。
第4の切込み線27は、一方の端が第3の切込み線26と結合し、他方の端が第1の切込み線24と結合している。
第2領域13bでは、第1領域13aと同様に、切取り部19と切取り部19aとで囲まれた領域が製品部18となる。
【0025】
積層シート11bでは、切取り部19、19aはL字状である。
また、積層シート11bでは、辺10dから第1の切込み線24の距離d1と、切込み線23と第2の切込み線25の距離d3と、辺10cから第3の切込み線26の距離d4と、辺10bから第4の切込み線27の距離d5とにより、第1領域13aの製品部18の大きさが決定される。
また、辺10dから第1の切込み線24の距離d1と、切込み線23と第2の切込み線25の距離d3と、辺10cから第3の切込み線26の距離d4と、辺10aから第4の切込み線27の距離d6とにより、第2領域13bの製品部18の大きさが決定される。
距離d1、距離d3、距離d4、距離d5及び距離d6は、4mm~19mmが好ましい。
距離d1は、辺10dと第1の切込み線24との距離に相当する任意の10箇所の距離の平均値である。
距離d3は切込み線23と第2の切込み線25との距離に相当する任意の10点の箇所の距離の平均値である。
距離d4は、辺10dと第3の切込み線26との距離に相当する任意の10箇所の距離の平均値である。
距離d5は、辺10bと第4の切込み線27との距離に相当する任意の10箇所の距離の平均値である。
距離d6は、辺10aと第4の切込み線27との距離に相当する任意の10箇所の距離の平均値である。
【0026】
切込み線23、第1の切込み線24、第2の切込み線25、第3の切込み線26及び第4の切込み線27は、
図1に示す切込み線17と同様に、第1の樹脂基板12と中間層14とを貫通し、かつ第2の樹脂基板16の厚み方向の途中まで達する。切込み線17は、第1の樹脂基板12と中間層14とに対してはフルカットであり、第2の樹脂基板16に対してハーフカットである。
切込み線17と同様に、このような切込み線23、第1の切込み線24、第2の切込み線25、第3の切込み線26及び第4の切込み線27により、切取り部19の中間層14と、製品部18の中間層14とが離間され、切取り部19の剥離の際に中間層14が引き千切られることが抑制される。これにより、製品部18の中間層14が欠損したり、中間層14が第2の樹脂基板16上に残存する等の剥離欠点の発生が抑制される。第2の樹脂基板16上に残存する中間層14は、脱落すると工程内汚染に繋がるが、工程内汚染も抑制される。
【0027】
図5に示す積層シート11bから、切取り部19と切取り部19aとを不要部として剥離する際、切取り部19を、製品部18の周辺と接触しない方向に剥離する。具体的には、切取り部19を、切込み線23と辺10dの交点部10f(積層シートの外側)から製品部18の中央に向って剥離する。また、例えば、切取り部19aを頂点10e(積層シートの外側)から製品部18の中央に向って剥離する。これにより、切取り部19が製品部18の周辺に沿って剥がれ、切取り部19と製品部18との接触が抑制されて、上述のように剥離欠点の発生を抑制でき、工程内汚染も抑制できる。
なお、積層シート11bでは、切取り部19と切取り部19aと剥離することで、製品部18の全周囲の不要部を取り除くことができ、
図1及び
図2に示す積層シート10に比して剥離回数が少ない。
【0028】
図6に示す第3の例の積層シート11cは、
図5に示す積層シート11bに比して、切取り部19aがない点が異なり、それ以外の構成は、
図1及び
図2に示す積層シート10と同様の構成である。
図6に示す第3の例の積層シート11cは、
図5に示す積層シート11bの第3の切込み線26と、第4の切込み線27とがない構成である。
積層シート11cでは、辺10dから第1の切込み線24の距離d
1と、切込み線23と第2の切込み線25の距離d
3とにより製品部18の大きさが決定される。
図6に示す積層シート11cから、切取り部19を不要部として剥離する際、切取り部19を、製品部18の周辺と接触しない方向に剥離する。例えば、切取り部19を、切込み線23と辺10dの交点部10f(積層シートの外側)から製品部18の中央に向って剥離する。これにより、切取り部19が製品部18の周辺に沿って剥がれ、切取り部19と製品部18との接触が抑制されて、上述のように剥離欠点の発生を抑制でき、工程内汚染も抑制できる。
【0029】
切込み線17、第1の切込み線20、24、第2の切込み線22、25、切込み線23、第3の切込み線26及び第4の切込み線27は、いずれもレーザー又は打抜きにより形成できる。
切込み線17、第1の切込み線20、24、第2の切込み線22、25、切込み線23、第3の切込み線26及び第4の切込み線27は、いずれも各切込み線17、第1の切込み線20、24、第2の切込み線22、25、切込み線23、第3の切込み線26及び第4の切込み線27が延びる方向と直交する方向における中間層14及び第2の樹脂基板16の断面においてテーパー状(
図1参照)である。かつ切込み線17、第1の切込み線20、24、第2の切込み線22、25、切込み線23、第3の切込み線26及び第4の切込み線27は。それぞれ第2の樹脂基板16の厚み方向Dt(
図1参照)における切込み長さt
2(
図1参照)が中間層14の厚みtc(
図1参照)よりも長いことが好ましい。このような構成により、製品部18の中間層14と、切取り部19の中間層14とを離すことができ、ひいては剥離欠点の発生をより確実に抑制できる。
なお、上述のテーパー状とは、上述の断面において
図1に示すように第1の樹脂基板12から第2の樹脂基板16に向って切込み線17の幅が徐々に狭くなる形態のことをいう。
切込み線17、第1の切込み線20、24、第2の切込み線22、25、切込み線23、第3の切込み線26及び第4の切込み線27の形成にレーザーを用いることにより、各切込み線17、第1の切込み線20、24、第2の切込み線22、25、切込み線23、第3の切込み線26及び第4の切込み線27が延びる方向と直交する方向における中間層14及び第2の樹脂基板16の断面において、切込み線17、第1の切込み線20、24、第2の切込み線22、25、切込み線23、第3の切込み線26及び第4の切込み線27を、それぞれテーパー状にできる。
【0030】
<積層シートの剥離方法>
積層シートの剥離方法では、上述のように切取り部を積層シートの外縁から内側の方向に向かって剥離する。
(積層シートの切取り部の形成方法)
積層シートの剥離方法では、上述の各積層シート10、11、11a、11b、11cの切取り部19、19aを形成する工程を有していてもよい。切取り部19、19aを形成する工程の後に、切取り部19、19aを剥離する工程を実施する。上述のように切取り部19、19aはレーザー又は打抜きにより形成できる。
切取り部19の形成する工程については、例えば、
図2に示す積層シート10及び
図3に示す積層シート11では、第1の樹脂基板12と中間層14と第2の樹脂基板16とが、この順で積層され、第1の樹脂基板12の表面12aの法線方向から見た外形が四角形である積層シートに対して、第1の樹脂基板12と中間層14とを貫通し、かつ第2の樹脂基板16の厚み方向Dtの途中まで達する切込み線17を周縁領域に形成し、切込み線17により、頂点10eを含む切取り部19を少なくとも2つ形成する。
また、例えば、
図4に示す積層シート11a、
図5に示す積層シート11b及び
図6に示す積層シート11cでは、第1の樹脂基板12と中間層14と第2の樹脂基板16とが、この順で積層され、第1の樹脂基板12の表面12aの法線方向から見た外形が四角形である積層シートに対して、積層シートの外縁の一辺まで延びる直線状の第1の切込み線20、24と、第1の切込み線20、24と結合し、かつ第1の切込み線20、24と直交する方向に延び、積層シートの一辺とは異なる外縁の他の辺まで延びる直線状の第2の切込み線22、25とにより切取り部を形成する。
【0031】
<積層シートの貼合方法>
次に、積層シートの貼合方法について説明する。
積層シートの貼合方法では、
図1及び
図2に示す積層シート10を例にして説明する。
図7~
図9は本発明の実施形態の積層シートの第1の例の貼合方法を工程順に示す模式的側面図である。
図10~
図12は本発明の実施形態の積層シートの第1の例の貼合方法を工程順に示す模式的平面図である。
なお、
図7~
図12において、
図1及び
図2に示す積層シート10と同一構成物には、同一符号付して、その詳細な説明は省略する。
図7~
図12において、
図7と
図10とが対応し、
図8と
図11とが対応し、
図9と
図12とが対応している。
積層シートの貼合方法は、積層シートの切取り部19(不要部)を剥離する工程(剥離工程)と、第2の樹脂基板を剥離し、中間層を露出させて、露出した中間層をガラス基板に貼合する工程(貼合工程)とを有する。以下、積層シートの貼合方法について、具体的に説明する。
【0032】
積層シートの貼合方法では、まず、
図1及び
図2に示す積層シート10から、切取り部19を剥離する(剥離工程)。この場合、切取り部19を積層シート10の外縁から内側の方向に向かって剥離する。
具体的には、まず、
図1及び
図2に示す積層シート10をステージ30(
図7及び
図10参照)に載置する。積層シート10に対して、例えば、4つの切取り部19において、各頂点10eに粘着テープ(図示せず)を貼り付ける。そして、粘着テープをもって切取り部19が製品部18に接触しない方向に剥離する。より具体的には、切取り部19を頂点10eから積層シート10の製品部18の中央に向って剥離する。
これにより、
図7及び
図10に示すように切取り部19が取り除かれ、第2の樹脂基板16の表面16aが露出する。
【0033】
次に、
図7及び
図10に示す切取り部19が剥離された状態の積層シート10から、第2の樹脂基板16を剥離し、中間層14を露出させる。より具体的には、
図8に示すように、切取り部19が剥離された積層シート10を、第1の樹脂基板12を下にしてステージ32上に固定する。ステージ32は、例えば、吸引ステージであり、吸引により切取り部19が剥離された積層シート10をステージ32上に固定する。この状態で第2の樹脂基板16を剥離する。
これにより、
図8及び
図11に示すように第2の樹脂基板16が取り除かれ、中間層14が露出する。
次に、露出した中間層14をガラス基板36に貼合する(貼合工程)。より具体的には、
図9に示すように、基板ステージ34に固定されたガラス基板36の表面36aに、露出した中間層14の裏面14bを接触させる。中間層14をガラス基板36に接触させた状態でステージ32の裏面32bに配置された貼合ロール35を、ステージ32の裏面32bに沿って移動させて、中間層14をガラス基板36に
図9及び
図12に示すように貼合する。
これにより、
図13に示す積層体38が得られる。積層体38では、ガラス基板36の表面36aに中間層14が配置され、中間層14の表面14aに第1の樹脂基板12が配置されている。
積層シートの貼合方法では、
図1及び
図2に示す積層シート10を例にして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、製品部18が2つある
図5に示す積層シート11b及び
図6に示す積層シート11cについても、
図1及び
図2に示す積層シート10と同様にガラス基板36に貼合できる。
【0034】
以下、積層シート10を構成する第1の樹脂基板12、中間層14及び第2の樹脂基板16について詳述する。
【0035】
(第1の樹脂基板及び第2の樹脂基板)
第1の樹脂基板12及び第2の樹脂基板16は、中間層14を保護するものであり、保護層として機能するものであり、保護フィルムとも呼ばれる。また、第1の樹脂基板12及び第2の樹脂基板16は、ガラス基板への貼合の際に、いずれかが中間層14から剥離される。このため、第1の樹脂基板12及び第2の樹脂基板16のうち、中間層14から剥離されるものは離型フィルムとも呼ばれる。
第1の樹脂基板12及び第2の樹脂基板16を構成する材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリウレタン樹脂が挙げられる。なかでも、ポリエステル樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)がより好ましい。このため、第1の樹脂基板12及び第2の樹脂基板16は、ポリエチレンテレフタレート基板であることがより好ましい。
【0036】
第1の樹脂基板12及び第2の樹脂基板16の厚みは、外部から受けた力の影響を低減するために、20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましい。第1の樹脂基板12及び第2の樹脂基板16の厚みの上限値としては、500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。
【0037】
(中間層)
中間層14は、第1の樹脂基板12及び第2の樹脂基板16の間に設けられる。
中間層14は、中間層14上にポリイミド膜(図示せず)が配置された場合、ポリイミド膜の剥離を防止するための膜である。
【0038】
中間層14は、有機層であっても、無機層であってもよい。
有機層の材質としては、例えば、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂、フッ素樹脂が挙げられる。また、いくつかの種類の樹脂を混合して中間層14を構成することもできる。
無機層の材質としては、例えば、酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、炭窒化物、珪化物、弗化物が挙げられる。酸化物(好ましくは、金属酸化物)、窒化物(好ましくは、金属窒化物)、酸窒化物(好ましくは、金属酸窒化物)としては、例えば、Si、Hf、Zr、Ta、Ti、Y、Nb、Na、Co、Al、Zn、Pb、Mg、Bi、La、Ce、Pr、Sm、Eu、Gd、Dy、Er、Sr、Sn、In及びBaから選ばれる1種以上の元素の酸化物、窒化物、酸窒化物が挙げられる。
炭化物(好ましくは、金属炭化物)、炭窒化物(好ましくは、金属炭窒化物)としては、例えば、Ti、W、Si、Zr、及び、Nbから選ばれる1種以上の元素の炭化物、炭窒化物、炭酸化物が挙げられる。
珪化物(好ましくは、金属珪化物)としては、例えば、Mo、W、及び、Crから選ばれる1種以上の元素の珪化物が挙げられる。
弗化物(好ましくは、金属弗化物)としては、例えば、Mg、Y、La、及び、Baから選ばれる1種以上の元素の弗化物が挙げられる。
【0039】
中間層14は、プラズマ重合膜であってもよい。
中間層14がプラズマ重合膜である場合、プラズマ重合膜を形成する材料は、CF4、CHF3、C2H6、C3H6、C2H2、CH3F、C4H8等のフルオロカーボンモノマー、メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、アセチレン、ベンゼン、トルエン等のハイドロカーボンモノマー、水素、SF6等が挙げられる。
【0040】
なかでも、耐熱性や剥離性の点から、中間層14の材質として、シリコーン樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂が好ましく、シリコーン樹脂がより好ましく、縮合反応型シリコーンより形成されるシリコーン樹脂がより好ましい。
以下では、中間層14がシリコーン樹脂層である態様について詳述する。
【0041】
シリコーン樹脂とは、所定のオルガノシロキシ単位を含む樹脂であり、通常、硬化性シリコーンを硬化させて得られる。硬化性シリコーンは、その硬化機構により付加反応型シリコーン、縮合反応型シリコーン、紫外線硬化型シリコーン及び電子線硬化型シリコーンに分類されるが、いずれも使用できる。なかでも、縮合反応型シリコーンが好ましい。
縮合反応型シリコーンとしては、モノマーである加水分解性オルガノシラン化合物若しくはその混合物(モノマー混合物)、又は、モノマー又はモノマー混合物を部分加水分解縮合反応させて得られる部分加水分解縮合物(オルガノポリシロキサン)を好適に用いることができる。
この縮合反応型シリコーンを用いて、加水分解・縮合反応(ゾルゲル反応)を進行させることにより、シリコーン樹脂を形成できる。
【0042】
中間層14は、硬化性シリコーンを含む硬化性組成物を用いて形成されることが好ましい。
硬化性組成物は、硬化性シリコーンのほかに、溶媒、白金触媒(硬化性シリコーンとして付加反応型シリコーンを用いる場合)、レベリング剤、金属化合物等を含んでいてもよい。金属化合物に含まれる金属元素としては、例えば、3d遷移金属、4d遷移金属、ランタノイド系金属、ビスマス(Bi)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)が挙げられる。金属化合物の含有量は、特に制限されず、適宜調整される。
【0043】
中間層14は、ヒドロキシ基を有することが好ましい。中間層14のシリコーン樹脂を構成するSi-O-Si結合の一部が切れて、ヒドロキシ基が現れ得る。また、縮合反応型シリコーンを用いる場合には、そのヒドロキシ基が、中間層14のヒドロキシ基になり得る。
【0044】
中間層14の第1の樹脂基板12の表面12aの法線方向の厚みは、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、12μm以下がさらに好ましい。一方、中間層14の厚みは、1μm超が好ましく、異物埋め込み性がより優れる点で、6μm以上がより好ましい。上記厚みは、5点以上の任意の位置における中間層14の厚みを接触式膜厚測定装置で測定し、それらを算術平均したものである。
なお、異物埋め込み性に優れるとは、中間層14と他の基板等の間に異物があっても、中間層14によって異物が埋め込まれことを意味する。異物の埋め込み性が優れると、中間層に異物による凸部が生じにくく、ポリイミド膜上に電子デバイス用部材を形成した際に、凸部による電子デバイス用部材中での断線等のリスクが抑制される。なお、上記凸部の発生の際に形成される空隙が気泡として観察されるため、気泡の発生の有無により異物埋め込み性を評価できる。
【0045】
ここで、例えば、ガラス基板(図示せず)上にポリイミド膜を形成し、高温熱処理を行うと、ポリイミド膜が黄変するため、透明な電子デバイスへの適用が難しくなる。ところが、メカニズムは不明だが、ガラス基板上に中間層14を形成し、中間層14上にポリイミド膜を形成することで、高温熱処理によるポリイミド膜の黄変を抑制できる。
【0046】
(ガラス基板)
中間層14が貼合されるガラス基板36は、第1の樹脂基板12及び中間層14を支持して補強する部材である。また、ガラス基板36は搬送基板として機能する。
ガラスの種類としては、無アルカリホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、高シリカガラス、その他の酸化ケイ素を主な成分とする酸化物系ガラスが好ましい。酸化物系ガラスとしては、酸化物換算による酸化ケイ素の含有量が40~90質量%のガラスが好ましい。
ガラス板として、より具体的には、無アルカリホウケイ酸ガラスからなるガラス板(AGC株式会社製商品名「AN100」、及び線膨張係数38×10-7/℃、AGC株式会社製 商品名「AN-Wizus」)が挙げられる。
ガラス板の製造方法は、通常、ガラス原料を溶融し、溶融ガラスを板状に成形して得られる。このような成形方法は、一般的なものであってよく、例えば、フロート法、フュージョン法、スロットダウンドロー法が挙げられる。
ガラス基板36は、フレキシブルでないことが好ましい。そのため、ガラス基板36の厚みは、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましい。
一方、ガラス基板36の厚みは、1.0mm以下が好ましい。
ガラス基板36は、表面粗さRaが0.4nm未満が好ましく、0.25nm未満がより好ましい。ガラス基板36の表面租度が大きいと、シリコーン樹脂層とガラス基板表面との接触面積が増え、ガラス基板からシリコーン樹脂層に水分子が移行しやすくなり、ポリイミド樹脂層が黄変しやすくなる。そのため、ガラス基板36の表面粗度は一定値以下であることが好ましい。
【0047】
ガラス基板36は、ガラス基板36の表面36aの法線方向から観察した際の形状は、特に制限されず、四角形でも円形でもよいが、四角形が好ましい。
【0048】
ガラス基板36は、中間層14及び第1の樹脂基板12よりも大きく、ガラス基板36の表面36aには中間層14及び第1の樹脂基板12が配置されていない周辺領域があり、ガラス基板36の周縁領域の表面36a(
図9参照)は露出している。
ガラス基板36の周縁領域の幅は特に制限されないが、1mm~30mmが好ましく、3mm~10mmがより好ましい。周縁領域の幅とは、第1の樹脂基板12の外周縁からガラス基板36の外縁までの距離に該当する。
ガラス基板36の周縁領域の幅が30mm以下であれば、電子デバイス等を形成する際の有効面積がより広くなり、電子デバイスの作製効率が向上する。また、周縁領域の幅が1mm以上であることにより、中間層14上にポリイミド膜を作製する場合に、ポリイミド膜の剥離がより生じにくくなる。
【0049】
(積層体の用途)
貼合により得られた積層体は、種々の用途に使用でき、例えば、後述する表示装置用パネル、PV、薄膜2次電池、表面に回路が形成された半導体ウエハ、受信センサーパネル等の電子部品を製造する用途が挙げられる。これらの用途では、積層体が大気雰囲気下にて、高温条件(例えば、450℃以上)で曝される(例えば、20分以上)場合もある。
表示装置用パネルは、LCD、OLED(Organic Light Emitting Diode)、電子ペーパー、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションパネル、量子ドットLED(Light Emitting Diode)パネル、マイクロLEDディスプレイパネル、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)シャッターパネル等を含む。
受信センサーパネルは、電磁波受信センサーパネル、X線受光センサーパネル、紫外線受光センサーパネル、可視光線受光センサーパネル、及び赤外線受光センサーパネル等を含む。受信センサーパネルに用いる基板は、樹脂等の補強シート等によって補強されていてもよい。
【実施例0050】
以下に、実施例等により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって制限されるものではない。
以下に示す例1~9のうち、例1~例7は実施例であり、例8及び9は比較例である。
【0051】
[積層シートの作製]
<硬化性シリコーンの調製>
1L(リットル)のフラスコに、トリエトキシメチルシラン(179g)、トルエン(300g)、酢酸(5g)を加えて、混合物を25℃で20分間撹拌後、さらに、60℃に加熱して12時間反応させて、反応粗液を得た。
得られた反応粗液を25℃に冷却後、水(300g)を用いて、反応粗液を3回洗浄した。洗浄された反応粗液にクロロトリメチルシラン(70g)を加えて、混合物を25℃で20分間撹拌後、さらに、50℃に加熱して12時間反応させた。得られた反応粗液を25℃に冷却後、水(300g)を用いて、反応粗液を3回洗浄した。
洗浄された反応粗液からトルエンを減圧留去し、スラリー状態にした後、真空乾燥機で終夜乾燥することにより、白色のオルガノポリシロキサン化合物である硬化性シリコーン1を得た。
硬化性シリコーン1は、M単位とT単位とのモル比が13:87、有機基は全てメチル基、平均OX基数が0.02であった。M単位は(R)3SiO1/2で表されるオルガノシロキシ単位を意味し、T単位はRSiO3/2で表されるオルガノシロキシ単位を意味し、各式におけるRは水素原子又は有機基を表す。平均OX基数は、Si原子1個に平均で何個のOX基(Xは水素原子又は炭化水素基)が結合しているかを表した数値である。
【0052】
<硬化性組成物の調製>
硬化性シリコーン1(20g)と、金属化合物としてオクチル酸ジルコニウム化合物(「オルガチックスZC-200」、マツモトファインケミカル株式会社製)(0.16g)と、2-エチルヘキサン酸セリウム(III)(Alfa Aesar社製、金属含有率12質量%)(0.17g)、溶媒としてIsoper G(東燃ゼネラル石油株式会社製)(19.7g)とを混合し、得られた混合液を、孔径0.45μmのフィルタを用いてろ過することにより、硬化性組成物1を得た。
【0053】
<例1 積層シート>
第1の樹脂基板(離型フィルム)としてPETフィルム(東洋紡株式会社製、東洋紡エステル(登録商標)フィルム HPE、厚さ50μm)を準備し、この第1の樹脂基板の表面上に調製した硬化性組成物1を塗布し、ホットプレートを用いて140℃で10分間加熱することにより、第1の樹脂基板(離型フィルム)上にシリコーン樹脂層を形成した。
塗布したシリコーン樹脂層の上に第2の樹脂基板(保護フィルム)として、PETフィルム(東洋紡株式会社製、エステル(登録商標)フィルム HPE、厚さ50μm)を貼合した。次に、第1の樹脂基板(離型フィルム)であるPETフィルム側からカッターを挿入し、サイズ950(L
2)mm×760(L
1)mmに切断した。
このようにして、第1の樹脂基板(離型フィルム)、シリコーン樹脂層(中間層)及び第2の樹脂基板(保護フィルム)がこの順に積層された積層シート1を得た。得られた積層シート1の厚さは、110μmであった。
さらにレーザー加工機として、CO
2リニアモーションプロッターレーザーを用いた。レーザー加工機のステージに積層シート1を載置した。次に、製品部の寸法が912(D
2)mm×722(D
1)mmとなるように、第1の樹脂基板(離型フィルム)であるPETフィルム側からレーザーを照射した。そして、第1の樹脂基板(離型フィルム)であるPETフィルム及びシリコーン樹脂層(中間層)をフルカット切断し、第2の樹脂基板(保護フィルム)であるPETフィルムを、その厚みの途中までハーフカット切断した。レーザー加工機を用いた積層シートのハーフカットの切断方式のことを「レーザー方式」とする。なお、例1は、切込み線17が
図2に示すパターンであり、切取り部19の形状は矩形である。切取り部19は4つがあるが、全て同じ幅であり、幅を19mmとした。
【0054】
<例2~9>
上記切断の際に、積層シート寸法と積層シートの製品部の寸法、積層シートの製品部の数、積層シートのハーフカット切断方式、積層シート周縁部のハーフカッ形状、ハーフカット片の最小幅とを、下記表1に示す例2~9の関係となるように、積層シートを切断した以外は、上記例1と同様の手順に従って積層シートを得た。
例2は、切込み線が
図2に示すパターンである。例2では、切取り部19の形状は矩形である。切取り部19は4つがあるが、全て同じ幅であり、幅を19mmとした。
例2では、積層シート1をカッターを用いて950(L
2)mm×760(L
1)mmのサイズに切断した。さらに製品部18の形状が四角形で、製品部の寸法が912(D
2)mm×722(D
1)mmになるように打抜き機を用いて切断した。打抜き機を用いた積層シートのハーフカットの切断方式のことを「打抜き方式」とする。
【0055】
例3は、切込み線が
図4に示すパターンである。例3では、切取り部19の形状はL字で、幅が一定であり、幅を19mmとした。
例3では、積層シート1をカッターを用いて931(L
2)mm×741(L
1)mmのサイズに切断した。さらに製品部18の形状が四角形で、製品部の寸法が912(D
2)mm×722(D
1)mm、積層シート周縁部の不要部の形状がL字の形状になるようにレーザー加工機を用いて切断した。
例4は、切込み線が
図4に示すパターンである。例4では、切取り部19の形状はL字で、幅が一定であり、幅を19mmとした。
例4では、積層シート1をカッターを用いて931(L
2)mm×741(L
1)mmのサイズに切断した。さらに製品部18の形状が四角形で、製品部の寸法が912(D
2)mm×722(D
1)mm、積層シート周縁部の不要部の形状がL字の形状になるように打抜き機を用いて切断した。
【0056】
例5は、切込み線が
図3に示すパターンである。例5では、切取り部19の形状は矩形である。切取り部19は2つがあるが、全て同じ幅であり、幅を19mmとした。
例5では、積層シート1をカッターを用いて931(L
2)mm×741(L
1)mmのサイズに切断した。さらに製品部18の形状が四角形で、製品部の寸法が912(D
2)mm×722(D
1)mm、積層シート周縁部の不要部の形状が矩形の形状になるようにレーザー加工機を用いて切断した。
【0057】
例6は、切込み線が
図5に示すパターンである。例6では、切取り部19、19aの形状はL字であり、切取り部19の最小幅δを4mmとし、それ以外の切取り部19、19aの幅を19mmとした。
例6では、積層シート1をカッターを用いて950(L
2)mm×760(L
1)mmのサイズに切断した。さらに製品部18の形状が四角形で、製品部の寸法452(D
2)mm×722(D
1)mm、積層シート周縁部の不要部の形状がL字の形状、積層シートの製品部の数が2個、不要部の最小幅δが4mm、それ以外の切取り部19、19aが19mmになるようにレーザー加工機を用いて切断した。
【0058】
例7は、切込み線が
図6に示すパターンである。例7では、切取り部19の形状はL字であり、切取り部19の最小幅δを4mmとし、それ以外の切取り部19の幅を19mmとした。
例7では、積層シート1をカッターを用いて912(L
2)mm×741(L
1)mmのサイズに切断した。さらに製品部18の形状が四角形で、製品部の寸法が452(D
2)mm×722(D
1)mm、積層シート周縁部の不要部の形状がL字の形状、積層シートの製品部の数が2個、不要部の最小幅δが4mm、それ以外の切取り部19の幅が19mmになるようにレーザー加工機を用いて切断した。
【0059】
例8の積層シートは、切込み線17が
図14に示す積層シート100のパターンである。例8では、切取り部19は積層シート100の周縁を囲む1つの部材で構成した。切取り部19の形状はロの字で幅が一定である。切取り部19の幅を19mmとした。
例8では、積層シート1をカッターを用いて950(L
2)mm×760(L
1)mmのサイズに切断した。さらに製品部18の形状が四角形で、製品部の寸法が912(D
2)mm×722(D
1)mm、積層シート周縁部の不要部の形状がロ字の形状になるように、かつ切取り部19の幅が19mmになるようにレーザー加工機を用いて切断した。
【0060】
例9の積層シートは、切込み線17が
図15に示す積層シート101のパターンである。例9では、切取り部19は、2つの製品部18の周縁を囲む1つの部材で構成した。切取り部19の形状は日の字であり、切取り部19の最小幅δを8mmとし、それ以外の幅を19mmとした。
例9では、積層シート1をカッターを用いて950(L
2)mm×760(L
1)mmのサイズに切断した。さらに製品部18の形状が四角形で、製品部の寸法が452(D
2)mm×722(D
1)mm、積層シート周縁部の不要部の形状がL字の形状、積層シートの製品部の数が2個、不要部の最小幅δが8mm、それ以外の切取り部19の幅が19mmになるようにレーザー加工機を用いて切断した。
【0061】
<離型フィルムのPETフィルムとシリコーン樹脂層の剥離>
(例1)
例1の積層シートを、テーブルに載置し、積層シートの第1の樹脂基板(離型フィルム)であるPETフィルムの頂点の位置に、メンディングテープ(3M社製スコッチ、CM-12)を貼り付けた。その後、手で、メンディングテープを引っ張り積層シートの不要部(周縁部の離型フィルムのPETフィルムとシリコーン樹脂層)を、積層シートの製品部の周辺と接触しない方向に剥離した。製品部の周辺には、製品部の周りの露出した第2の樹脂基板(保護フィルム)の表面が含まれる。
(例2~5)
例2~5の積層シートを、それぞれテーブルに載置し、例1と同様に、積層シートの第1の樹脂基板(離型フィルム)であるPETフィルムの頂点の位置に、メンディングテープ(3M社製スコッチ、CM-12)を貼り付けた。その後、手で、メンディングテープを引っ張り積層シートの不要部(周縁部の離型フィルムのPETフィルムとシリコーン樹脂層)を、積層シートの製品部の周辺と接触しない方向に剥離した。
【0062】
(例6、7)
例6、7の積層シートを、それぞれテーブルに載置し、例1と同様に、積層シートの第1の樹脂基板(離型フィルム)であるPETフィルムの頂点の位置に、メンディングテープ(3M社製スコッチ、CM-12)を貼り付けた。さらに、例6、7はPETフィルムの交点部10f(
図5、
図6参照)の位置にメンディングテープを貼り付けた。その後、手で、メンディングテープを引っ張り積層シートの不要部(周縁部の離型フィルムのPETフィルムとシリコーン樹脂層)を、積層シートの製品部の周辺と接触しない方向に剥離した。
例8、9の積層シートを、それぞれテーブルに載置し、積層シートの第1の樹脂基板(離型フィルム)であるPETフィルムの頂点の位置に、メンディングテープを貼り付けた。その後、手で、メンディングテープを積層シートの内側に引っ張り積層シートの不要部を剥離した。
【0063】
<切込み線の観察>
例1と例2の積層シートの切込線部をマイクロスコープを用いて観察した。切込線の開口部の5箇所を観察し、開口部の大きさの平均値を測定した。その結果を下記表1の「切り込み部の開口部」に示す。
【0064】
<剥離欠点の評価>
積層シートの不要部を剥離した後、製品部の周辺を光学顕微鏡を用いて、透過光により、倍率50倍の観察条件で観察した。観察の結果に基づいて、以下の評価基準にしたがって剥離欠点の評価を行った。剥離欠点の結果を下記表1に示す。
剥離欠点とは、製品部の周縁部に生じる第1の樹脂基板とシリコーン樹脂層の界面剥がれのことである。剥離欠点は、上述の光学顕微鏡を用いた観察により干渉縞のように視認される。
評価基準
A:不要部を剥離した積層シート10枚のうち、積層シートの製品部の周辺に剥離欠点が視認されなかったものが8枚以上であった。
B:不要部を剥離した積層シート10枚のうち、積層シートの製品部の周辺に剥離欠点が視認されなかったものが6枚以上7枚以下であった。
C:不要部を剥離した積層シート10枚のうち、積層シートの製品部の周辺に剥離欠点が視認されなかったものが5枚以下であった。
【0065】
<積層体の作製>
水系ガラス洗浄剤(株式会社パーカーコーポレーション製「PK―LCG213」)で洗浄後、純水で洗浄した920mm×730mm、厚み0.5mmのガラス基板「AN Wizus」(支持基板、ヤング率85GPa)と、離型フィルムのPETフィルムとシリコーン樹脂層が剥離された積層シート1から保護フィルムのPETフィルムを剥離し、積層シート1のシリコーン樹脂層が形成された離型フィルムのPETフィルムとガラス基板を貼合して、ガラス基板、シリコーン樹脂層及びPETフィルムがこの順で配置された積層体を作製した。
剥離欠点評価で積層シート1の製品部の周辺に剥離欠点が視認された例8と例9では、積層体でも同じ位置にシリコーン樹脂とガラス基板の未接着の欠点が視認された。
【0066】
【0067】
表1に示す例1~例9の比較から、例1~7は、例8、9に比して剥離欠点がなく剥離評価が良好であった。また、例1と例2の比較から、積層シートのハーフカットの切断方式がレーザー方式の方が剥離評価が良好であった。これは切込線の開口部が打ち抜き方式よりもレーザー方式の方が大きいため、不要部の剥離の際に、不要部が製品部の周辺と接触しにくいためと考える。
例8、9は、いずれも切込み線が積層シートの辺まで達していない構成である。このため、不要部の剥離の際に、不要部が製品部の周辺と接触してしまい剥離欠点が発生した。
なお、上述のように例8及び例9を用いて積層体を作製した場合、剥離欠点の位置と同じ位置にシリコーン樹脂とガラス基板の未接着の欠点が視認された。