(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074577
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】OFDM変調器及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 27/26 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
H04L27/26 310
H04L27/26 200
H04L27/26 114
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185836
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(71)【出願人】
【識別番号】591053926
【氏名又は名称】一般財団法人NHKエンジニアリングシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100143568
【弁理士】
【氏名又は名称】英 貢
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 一彦
(72)【発明者】
【氏名】岡野 正寛
(72)【発明者】
【氏名】竹内 知明
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】土田 健一
(72)【発明者】
【氏名】本田 円香
(57)【要約】
【課題】ACE法に係るフィルタ特性の誤差の影響を低減させて、ACE法を適用するOFDM変調器及びプログラムを提供する。
【解決手段】本発明のOFDM変調器101は、OFDMフレーム構成後のキャリアシンボルについてACE法に基づく誤差値を生成するACE前処理部1と、その誤差値を基に生成したACE法に基づく拡張後の所定の拡張対象キャリアシンボルを用いてOFDMフレームを再構成するOFDMフレーム再構成手段(1d又は2d、或いは1d,2d,1S)と、再構成後のOFDMフレームの信号に対して逆高速フーリエ変換処理を施してOFDM信号を生成するOFDM信号生成部(124)と、を備える。ACE前処理部1は、ACE前処理に用いる補間フィルタ部13及び前置フィルタ部15におけるフィルタ特性の誤差によって生じる信号の誤差を補正するように構成されるフィルタ特性補正部10(10‐1,10‐2)を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ACE法を適用するOFDM変調器であって、
OFDMフレーム構成後の信号における周波数領域のキャリアシンボルについて、ACE法に基づく誤差値を生成するACE前処理部と、
ACE法の拡張ルールに従ってキャリアシンボルに含まれる拡張対象とする予め定めた拡張対象キャリアシンボルとして所定の信号点位置のデータシンボル、TMCCキャリアシンボル及びLchキャリアシンボルのうちいずれか1種以上について拡張可能として判定した場合に、前記誤差値を基に生成したACE法に基づく拡張後の拡張対象キャリアシンボルを用いて、OFDMフレームを再構成するOFDMフレーム再構成手段と、
当該OFDMフレームを再構成した後の信号に対して逆高速フーリエ変換処理を施すことにより、時間領域波形に変換するOFDM変調を行ってOFDM信号を生成するOFDM信号生成部と、を備え、
前記ACE前処理部は、
OFDMフレーム構成後の信号における周波数領域のキャリアシンボルについて、予め定めた第1のフィルタ特性補正データを用いて補正処理を施す第1のフィルタ特性補正部と、
当該補正処理後のキャリアシンボルについて、逆高速フーリエ変換処理を施すことにより時間領域波形に変換するIFFT部と、
当該時間領域波形に変換した信号のサンプリング周波数について、ゼロ内挿による所定の整数倍に変換するアップサンプリングを施すアップサンプリング部と、
当該ゼロ内挿によるアップサンプリング後の信号について、内挿補間するフィルタ処理を施す補間フィルタ部と、
当該内挿補間したアップサンプリング後の信号について、時間領域で予め定めた信号振幅値によるクリップ処理を施す時間領域クリップ処理部と、
当該クリップ処理後の信号について、周波数領域のキャリアシンボルに変換するための前処理として所定帯域外の不要成分を除去するフィルタ処理を施す前置フィルタ部と、
該フィルタ処理後の時間領域波形の信号のサンプリング周波数について、当該所定の整数倍の逆数となる逆数倍に変換するダウンサンプリングを施すダウンサンプリング部と、
当該ダウンサンプリング後の時間領域波形の信号について、高速フーリエ変換処理を施すことにより周波数領域に変換することで、当該時間領域でクリップ処理した後に周波数領域に変換したキャリアシンボルを生成するFFT部と、
該キャリアシンボルについて、予め定めた第2のフィルタ特性補正データを用いて補正処理を施す第2のフィルタ特性補正部と、
前記第1のフィルタ特性補正部による補正処理前のキャリアシンボルと、前記第2のフィルタ特性補正部による補正処理後のキャリアシンボルとを比較して、当該比較によるシンボル単位の差分を示す誤差値を生成する減算部と、を有し、
前記第1及び第2のフィルタ特性補正部は、それぞれ前記補間フィルタ部及び前記前置フィルタ部におけるフィルタ特性の誤差によって生じる信号の誤差を補正するように構成されていることを特徴とするOFDM変調器。
【請求項2】
前記第1のフィルタ特性補正部は、当該周波数領域のキャリアシンボルについて、当該第1のフィルタ特性補正データを用いて、前記補間フィルタ部におけるフィルタ特性の通過域の歪みの逆特性を加えて補正する補正処理を施すように構成され、
前記第2のフィルタ特性補正部は、当該時間領域でクリップ処理した後に周波数領域に変換したキャリアシンボルについて、当該第2のフィルタ特性補正データを用いて、前記前置フィルタ部におけるフィルタ特性の通過域の歪みの逆特性を加えて補正する補正処理を施すように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のOFDM変調器。
【請求項3】
前記第1のフィルタ特性補正部で用いる当該第1のフィルタ特性補正データは、当該周波数領域のキャリアシンボルについて、前記補間フィルタ部におけるフィルタ特性の通過域の歪みに起因する周波数特性の誤差に該当する複素係数で除算するものとして構成されているか、又は前記補間フィルタ部におけるフィルタ特性の通過域の歪みに起因する周波数特性の誤差の逆数に該当する複素係数を乗算するものとして構成され、
前記第2のフィルタ特性補正部で用いる当該第2のフィルタ特性補正データは、当該時間領域でクリップ処理した後に周波数領域に変換したキャリアシンボルについて、前記前置フィルタ部におけるフィルタ特性の通過域の歪みに起因する周波数特性の誤差に該当する複素係数で除算するものとして構成されているか、又は前記前置フィルタ部におけるフィルタ特性の通過域の歪みに起因する周波数特性の誤差の逆数に該当する複素係数を乗算するものとして構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のOFDM変調器。
【請求項4】
前記補間フィルタ部におけるフィルタ特性と、前記前置フィルタ部におけるフィルタ特性とを同一とし、
前記第1のフィルタ特性補正部で用いる当該第1のフィルタ特性補正データは、前記第2のフィルタ特性補正部で用いる当該第2のフィルタ特性補正データと同一とし、
当該第1及び第2のフィルタ特性補正データは、
前記IFFT部により、予め用意した補正データ用パイロットシンボルについて、逆高速フーリエ変換処理を施すことにより時間領域波形に変換し、
前記アップサンプリング部により、該時間領域波形に変換した信号のサンプリング周波数について、ゼロ内挿による所定の整数倍に変換するアップサンプリングを施し、
前記補間フィルタ部により、該ゼロ内挿によるアップサンプリング後の信号について補間フィルタ処理を施し、
前記時間領域クリップ処理部によるクリップ処理をスルーして、
前記前置フィルタ部により、該内挿補間したアップサンプリング後の信号についてフィルタ処理を施し、
前記ダウンサンプリング部により、該フィルタ処理後の時間領域波形の信号のサンプリング周波数について、該所定の整数倍の逆数となる逆数倍に変換するダウンサンプリングを施し、
前記FFT部により、該ダウンサンプリング後の時間領域波形の信号について、高速フーリエ変換処理を施すことにより周波数領域に変換することで、変換後の補正データ用パイロットシンボルを生成し、
伝送路応答算出処理として、該変換後の補正データ用パイロットシンボルを前記予め用意した補正データ用パイロットシンボルで複素除算する処理を施すことにより当該フィルタ特性の誤差値をサブキャリア単位で算出し、
ルート処理として、該誤差値に対しその平方根を計算し、該平方根の計算結果の逆数を計算することにより生成されていることを特徴とする、請求項1に記載のOFDM変調器。
【請求項5】
前記第1のフィルタ特性補正部及び前記第2のフィルタ特性補正部の各々は、それぞれの当該第1及び第2のフィルタ特性補正データとして、処理するOFDMフレーム構成後の信号のサブキャリアの数分の複素データメモリを備え、
前記第1のフィルタ特性補正部における複素データメモリには、前記補間フィルタ部の周波数特性の誤差、もしくは前記補間フィルタ部の周波数特性の誤差の逆数が当該第1のフィルタ特性補正データとして格納され、
前記第2のフィルタ特性補正部における複素データメモリには、前記前置フィルタの周波数特性の誤差、もしくは前記前置フィルタの周波数特性の誤差の逆数が当該第2のフィルタ特性補正データとして格納されていることを特徴とする、請求項1に記載のOFDM変調器。
【請求項6】
前記OFDMフレーム再構成手段は、1D‐ACE処理部として、
前記ACE前処理部によって得られた各キャリアシンボルに対する当該誤差値を予め定めた拡張利得で拡大する利得拡張部と、
当該予め定めた拡張利得で拡大後の誤差値を、対応する前記第1のフィルタ特性補正部による補正処理前のキャリアシンボルに加算することにより、利得拡張後のキャリアシンボルを生成する加算部と、
当該利得拡張後のキャリアシンボルについて、1D‐ACE法に基づく所定の拡張ルールに従って、I軸とQ軸で独立に拡張制限したキャリアシンボルへと更新するIQ独立拡張制限部と、
1D‐ACE法に基づく所定の拡張ルールに従ってキャリアシンボルに含まれる当該拡張対象キャリアシンボルについて拡張可能として判定した場合に、当該I軸とQ軸で独立に拡張制限した拡張対象キャリアシンボルで、対応する前記第1のフィルタ特性補正部による補正処理前の拡張対象キャリアシンボルを置き換えて、OFDMフレームを再構成するIQ独立信号選択部と、
を備えることを特徴とする、請求項1に記載のOFDM変調器。
【請求項7】
前記OFDMフレーム再構成手段は、2D‐ACE処理部として、
前記ACE前処理部によって得られたキャリアシンボルに対する当該誤差値を予め定めた拡張利得で拡大する利得拡張部と、
2D-ACE法に基づく所定の拡張ルールに従ってキャリアシンボルに含まれる当該拡張対象キャリアシンボルについて拡張可能と判定した場合に、当該予め定めた拡張利得で拡大後の誤差値を、IQ平面上で振幅及び角度について拡張制限した当該拡張対象キャリアシンボルに対応する誤差値へと更新する拡張領域制限処理部と、
2D‐ACE法に基づく所定の拡張ルールに従って、当該拡張制限した拡張対象キャリアシンボルに対応する誤差値を、対応する前記第1のフィルタ特性補正部による補正処理前の拡張対象キャリアシンボルに加算することにより、拡張制限した拡張対象キャリアシンボルを生成する加算部と、
2D‐ACE法に基づく所定の拡張ルールに従って、当該拡張可能として判定しIQ平面上で拡張制限した拡張対象キャリアシンボルで、対応する前記第1のフィルタ特性補正部による補正処理前の拡張対象キャリアシンボルを置き換えて、OFDMフレームを再構成するキャリアシンボル選択部と、
を備えることを特徴とする、請求項1に記載のOFDM変調器。
【請求項8】
前記OFDMフレーム再構成手段は、
1D‐ACE法に基づく所定の拡張ルールに従ってOFDMフレームを再構成する1D‐ACE処理部と、
2D‐ACE法に基づく所定の拡張ルールに従ってOFDMフレームを再構成する2D‐ACE処理部と、
前記1D‐ACE処理部から得られるUC又は1D‐NUCの変調方式が適用される第1の階層の当該拡張対象キャリアシンボルと、前記2D‐ACE処理部から得られる2D‐NUCの変調方式が適用される第2の階層の当該拡張対象キャリアシンボルと、を階層別にキャリア選択してOFDMフレームを再構成するキャリア選択部と、
を備えることを特徴とする、請求項1に記載のOFDM変調器。
【請求項9】
請求項1に記載のOFDM変調器として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル信号の伝送に係り、特にOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式を用いる地上デジタル放送のOFDM変調及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般に地上デジタル放送では、伝送方式として、マルチパス妨害に強いOFDM方式が採用されている。地上デジタル放送のOFDM信号は、数千~数万という非常に多くの互いに直交するキャリア(サブキャリア)で構成されており、伝送帯域内で矩形な形状のスペクトルを有する。一方、OFDM信号の時間波形は、白色ガウス雑音とほぼ同じであり、平均電力とピーク電力の比が大きい、すなわちピーク率の高い波形になっている。次に、こうした多数のサブキャリアで構成され、ピーク率が高いOFDM信号を増幅する場合、OFDM信号の送信装置の出力段に設けられる電力増幅器の直線性が悪い(非線形特性を有する場合)と、それぞれのサブキャリアの間に相互変調が生じて干渉妨害を引き起こすため、直線性の優れた電力増幅器を使用する必要がある。
【0003】
電力増幅器の直線性を確保する方法としては、電力増幅器の入力バックオフ(電力増幅器の出力が飽和する入力レベルと実際に入力する信号レベルの比、dB表示では差)を大きくとって、電力増幅器の入出力特性の直線性の良い領域を使用する方法がある。しかし、この方法では、電力増幅器の効率(電力増幅器に与える電力と取り出される出力信号電力の比)が低下してしまい、電力増幅器の消費電力が大きく、発熱量も多い。この問題を解決する方法として、プリディストーション方式やフィードフォーワード方式の非線形歪み補償機能付きの電力増幅器が開発されて、ISDB-T方式による日本の地上デジタル放送の送信機で使用されている。
【0004】
一方、こうした電力増幅器の非線形特性による特性劣化を軽減するアプローチとして、信号処理によりOFDM信号のピーク率を抑制する様々な手法(PAPR(Peak to Average Power Ratio)低減技術と呼ばれている。)が考案されている。その代表的な手法として、TR(Tone Reservation)法とACE(Active Constellation Extension)法があり、欧州の次世代地上デジタル放送方式であるDVB-T2や米国の次世代地上デジタル放送方式であるATSC‐3.0などで、実際に採用されている。日本の次世代地上デジタル放送方式(「地上放送高度化方式」とも呼ばれている。)においても、こうしたPAPR低減技術の導入が望まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“地上デジタルテレビジョン放送の伝送方式 標準規格 ARIB STD-B31 2.2版”、平成26年3月18日改定、一般社団法人 電波産業会(ARIB)
【非特許文献2】DVB Document A133 Implementation guidelines for a second generation digital terrestrial television broadcasting system (DVB-T2)
【非特許文献3】DVB Document A122 Frame structure channel coding and modulation for a second generation digital terrestrial television broadcasting system (DVB-T2)
【非特許文献4】ATSC Standard: Physical Layer Protocol Doc. A/322:2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
まず、
図10は、典型的なOFDM信号の送信装置100の概略構成を示すブロック図である。
図10に例示する送信装置100は、OFDM変調器101、周波数変換器102、ローカル発振器103、電力増幅器104、及び送信フィルタ105を備える。
【0007】
OFDM変調器101は、送信データを入力し、その主信号について変調した所定数のデータシンボルを構成するとともに、SP(Scattered Pilot)やCP(Continual Pilot)のようなパイロット信号のシンボル、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration and Control)信号として知られる制御信号のシンボル(TMCCキャリアシンボル)、及びLLch(Low Latency channel)としても使用されるLchのシンボル(Lchキャリアシンボル)を付加することでOFDMフレームを構成し、逆高速フーリエ変換処理を施すことにより時間領域波形に変換するOFDM変調を行ってOFDM信号を生成する。そして、OFDM変調器101は、そのOFDM信号に対して所定期間毎に有効シンボルを区分する所定のガードインターバルを付加して、直交変調処理を施すことにより、IF(Intermediate Frequency)信号を生成し、デジタル/アナログ変換によりアナログIF信号に変換して、周波数変換器102に出力する。
【0008】
周波数変換器102は、OFDM変調器101から得られるアナログIF信号をローカル発振器103からの局発信号を用いて放送用のRF(Radio Frequency)信号に変換し、電力増幅器104に出力する。
【0009】
ローカル発振器103は、アナログIF信号を放送用のRF信号に変換するための局発信号を周波数変換器102に供給する。
【0010】
電力増幅器104は、周波数変換器102から得られるRF信号を電力増幅して、送信フィルタ105に出力する。
【0011】
送信フィルタ105は、電力増幅器104から得られる電力増幅後のRF信号について不要波成分を除去し、送信アンテナTxを介して地上の受信装置(中継装置を含む。)に向けて放射する。
【0012】
ここで、上述したように、電力増幅器104の非線形特性による特性劣化を軽減するアプローチとしてTR法やACE法などのPAPR低減技術が知られており、ACE法に基づく信号処理系統を構成するACE処理部123は、OFDM変調器101内に配置される。
【0013】
図11は、ACE法に基づくOFDM変調器101の概略構成を示すブロック図である。
図11に例示するOFDM変調器101は、入力部111、A階層のデータキャリアを生成するための誤り訂正符号化部112A、ビットインターリーブ部113A、及びマッピング部114A、B階層のデータキャリアを生成するための誤り訂正符号化部112B、ビットインターリーブ部113B、及びマッピング部114B、C階層のデータキャリアを生成するための誤り訂正符号化部112C、ビットインターリーブ部113C、及びマッピング部114C、階層合成部115、時間・周波数インターリーブ部116、Lchキャリアを生成するための誤り訂正符号化部117、及びLch信号生成部118、制御信号として知られるTMCC信号のキャリアを生成するためのTMCC情報ビット生成部119、SPやCPのようなパイロット信号を生成するためのパイロット信号生成部120、及びTMCC信号生成部121、OFDMフレーム構成部122、ACE処理部123、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)部124、GI付加部125、及び直交変調部126を備える。
【0014】
入力部111は、送信データとして、伝送する主信号データ、Lch用のLLchデータ、及びTMCC情報を入力し、主信号データについては予め指定して用いる階層の信号系統(A階層の誤り訂正符号化部112A、B階層の誤り訂正符号化部112B、C階層の誤り訂正符号化部112C)に出力し、LLchデータについては誤り訂正符号化部117に出力し、TMCC情報についてはTMCC情報ビット生成部119、及びパイロット信号生成部120に出力する。
【0015】
誤り訂正符号化部112A、ビットインターリーブ部113A、及びマッピング部114Aは、A階層のデータシンボルを構成するための信号系統として主要な信号処理部のみを示しているが、誤り訂正符号化部112Aによって入力部111からA階層用に入力される主信号データについて所定サイズの誤り訂正符号化フレームに区切り、誤り訂正符号化処理によってパリティビットを付加した後、ビットインターリーブ部113Aによって所定数の誤り訂正符号化フレーム間でビット入れ替えを行うビットインターリーブ処理を施し、さらにマッピング部114Aによって所定の変調方式に従ってOFDM用にキャリア変調を施し、マッピングしたA階層のデータシンボルを構成し、階層合成部115に出力する。
【0016】
誤り訂正符号化部112B、ビットインターリーブ部113B、及びマッピング部114Bは、B階層のデータシンボルを構成するための信号系統として主要な信号処理部のみを示しているが、誤り訂正符号化部112Bによって入力部111からB階層用に入力される主信号データについて所定サイズの誤り訂正符号化フレームに区切り、誤り訂正符号化処理によってパリティビットを付加した後、ビットインターリーブ部113Bによって所定数の誤り訂正符号化フレーム間でビット入れ替えを行うビットインターリーブ処理を施し、さらにマッピング部114Bによって所定の変調方式に従ってOFDM用にキャリア変調を施し、マッピングしたB階層のデータシンボルを構成し、階層合成部115に出力する。
【0017】
誤り訂正符号化部112C、ビットインターリーブ部113C、及びマッピング部114Cは、C階層のデータシンボルを構成するための信号系統として主要な信号処理部のみを示しているが、誤り訂正符号化部112Cによって入力部111からC階層用に入力される主信号データについて所定サイズの誤り訂正符号化フレームに区切り、誤り訂正符号化処理によってパリティビットを付加した後、ビットインターリーブ部113Cによって所定数の誤り訂正符号化フレーム間でビット入れ替えを行うビットインターリーブ処理を施し、さらにマッピング部114Cによって所定の変調方式に従ってOFDM用にキャリア変調を施し、マッピングしたC階層のデータシンボルを構成し、階層合成部115に出力する。
【0018】
階層合成部115は、マッピング部114A,114B,114Cからそれぞれ得られる各階層のデータシンボルを合成し、時間・周波数インターリーブ部116に出力する。
【0019】
時間・周波数インターリーブ部116は、階層合成部115から得られる階層合成後のデータシンボルについて、まずシンボル方向(時間方向)に信号を入れ替える時間インターリーブ処理を施した後、サブキャリア方向(周波数方向)に信号を入れ替える周波数インターリーブ処理を施し、OFDMフレーム構成部122に出力する。
【0020】
誤り訂正符号化部117、及びLch信号生成部118は、Lchキャリアのシンボルを構成するための信号系統として主要な信号処理部のみを示しているが、誤り訂正符号化部117によって入力部111から入力される本例ではLLchデータについて所定サイズの誤り訂正符号化フレームに区切り、誤り訂正符号化処理によってパリティビットを付加した後、Lch信号生成部118により差動基準ビットの付加、及び、それを位相基準としたDBPSK(Differential Binary Phase Shift Keying)変調を施し、Lchキャリアのシンボルを構成し、OFDMフレーム構成部122に出力する。
【0021】
TMCC情報ビット生成部119、及びTMCC信号生成部121は、TMCCキャリアのシンボルを構成するための信号系統として主要な信号処理部のみを示しているが、TMCC情報ビット生成部119によって入力部111から入力されるTMCC情報(各階層のデータキャリアにおける誤り訂正符号化処理における符号化率や変調方式、SP,CP等のパイロット信号の挿入位置を指定する情報を含む。)についてTMCC信号用のフレームを構成するビットを生成した後、TMCC信号生成部121により差動基準ビットの付加、及び、それを基準としたDBPSK変調を施し、TMCCキャリアのシンボルを構成し、OFDMフレーム構成部122に出力する。尚、TMCC情報ビット生成部119において、誤り訂正符号化処理を施す構成とすることができる。
【0022】
パイロット信号生成部120は、入力部111から入力されるTMCC情報からSP,CP等のパイロット信号の挿入位置の指定情報を抽出し、その指定情報に応じてSP,CP等のパイロット信号のシンボルをOFDMフレーム構成部122に出力する。
【0023】
OFDMフレーム構成部122は、時間・周波数インターリーブ部116から得られる所定数のデータシンボルを入力するとともに、パイロット信号生成部120から得られるSPやCPのようなパイロット信号のシンボル、TMCC信号生成部121から得られるTMCCキャリアとして知られる制御信号のシンボル、及びLch信号生成部118から得られるLchキャリアのシンボルを付加することでOFDMフレームを構成する。そして、OFDMフレーム構成部122は、そのOFDMフレーム構成後の信号をACE処理部123に出力する。
【0024】
ACE処理部123は、OFDMフレーム構成部122からOFDMフレーム構成後の信号を入力し、そのOFDMフレームにおけるデータシンボルについて(パイロット信号、制御信号及びLchのシンボルを除く)、OFDM信号のピーク率を抑制するACE法に基づく信号処理を施し、そのACE法に基づく信号処理を施した後のデータシンボルを含むOFDMフレームを再構成してIFFT部124に出力する。
【0025】
IFFT部124は、OFDM信号生成部として機能し、ACE処理部123からOFDMフレーム再構成後の信号を入力し、逆高速フーリエ変換処理を施すことにより時間領域波形に変換するOFDM変調を行ってOFDM信号を生成し、GI付加部125に出力する。
【0026】
GI付加部125は、OFDM変調器101から得られるOFDM信号に対して所定期間毎に有効シンボルを区分する所定のガードインターバルを付加して、直交変調部126に出力する。
【0027】
直交変調部126は、GI付加部125から得られる所定のガードインターバルを付加したOFDM信号に対して直交変調処理を施すことにより、IF信号を生成し、さらにデジタル/アナログ変換を行ったアナログのIF信号を外部出力する。
【0028】
ところで、上述したACE処理部123で用いるACE法には、1D‐ACE法と2D‐ACE法の二つがある。1D‐ACE法はコンスタレーションがUC(Uniform Constellation)と1D‐NUC(1 dimension Non Uniform Constellation)のOFDM信号に適用され、2D‐ACE法はコンスタレーションが2D‐NUC(2 dimension Non Uniform Constellation)のOFDM信号に適用される。1D‐ACE法と2D‐ACE法のいずれも、SPやCPのようなパイロット信号、TMCCのような制御信号、Lch等のシンボルを除くデータシンボルのみに適用される。
【0029】
そこで、従来技術における1D‐ACE法の信号処理を行う場合と、従来技術における2D‐ACE法の信号処理を行う場合のACE処理部123について、それぞれ
図12及び
図13を参照して説明する。
【0030】
図12は、従来技術における全階層で1D‐ACE法を適用する場合のACE前処理部1p、及び1D‐ACE法に基づく1D‐ACE処理部1dを有するACE処理部123の概略構成を示すブロック図である。
図13は、従来技術における全階層で2D‐ACE法を適用する場合のACE前処理部1p、及び2D‐ACE法に基づく2D‐ACE処理部2dを有するACE処理部123の概略構成を示すブロック図である。
図12及び
図13において、同様な構成要素には同一の参照番号を付している。以下、
図12に示す従来技術における1D‐ACE法に基づくACE処理部123、及び
図13に示す従来技術における2D‐ACE法に基づくACE処理部123について、順に説明する。
【0031】
(従来技術における1D‐ACE法に基づくACE処理部)
まず、
図12を参照して、従来技術における全階層で1D‐ACE法を適用する場合の1D‐ACE法に基づくACE処理部123について説明する。
図12に示すACE処理部123は、ACE前処理部1p、及び1D‐ACE処理部1dを有する。そして、ACE前処理部1pは、IFFT部11、アップサンプリング部12、補間フィルタ部13、時間領域クリップ処理部14、前置フィルタ部15、ダウンサンプリング部16、FFT(Fast Fourier Transform)部17、及び減算部18を備え、1D‐ACE処理部1dは、利得拡張部19、加算部20、IQ独立拡張制限部21、及びIQ独立信号選択部22を備える。
【0032】
IFFT部11は、OFDMフレーム構成部122からパイロット信号、制御信号、Lch、及び送信データの主信号を構成するUC又は1D‐NUCのコンスタレーションを有するデータシンボル(ここでは、「原キャリアシンボル」と呼ぶ。)で構成されるOFDMフレームの信号を入力し、逆高速フーリエ変換処理を施すことにより時間領域波形に変換する処理を施して、アップサンプリング部12に出力する。
【0033】
アップサンプリング部12は、IFFT部11から原キャリアシンボルを時間領域波形に変換した信号を入力し、その時間領域波形の信号のサンプリング周波数について、ゼロ内挿による所定の整数倍(例えば、4倍)に変換するアップサンプリングを施して、補間フィルタ部13に出力する。
【0034】
補間フィルタ部13は、アップサンプリング部12から入力される当該ゼロ内挿によるアップサンプリング後の信号について、より正確に波形のピークを検出するために内挿補間するフィルタ処理を施して、時間領域クリップ処理部14に出力する。
【0035】
時間領域クリップ処理部14は、補間フィルタ部13から入力される当該内挿補間したアップサンプリング後の信号について、時間領域で予め定めた信号振幅値(ここでは、「クリップレベル」と呼ぶ。)によるクリップ処理を施して、前置フィルタ部15に出力する。
【0036】
前置フィルタ部15は、時間領域クリップ処理部14から入力される当該クリップ処理後の信号について、周波数領域のキャリアシンボルに変換するための前処理として、クリップ処理で生じた所定帯域外の不要成分を除去するフィルタ処理(前置フィルタ処理)を施して、ダウンサンプリング部16に出力する。
【0037】
ダウンサンプリング部16は、前置フィルタ部15から前置フィルタ処理後の時間領域波形の信号を入力し、その前置フィルタ処理後の時間領域波形の信号のサンプリング周波数について、当該所定の整数倍の逆数となる逆数倍(本例では、1/4)に変換するダウンサンプリング(間引き処理)を施して、FFT部17に出力する。
【0038】
FFT部17は、ダウンサンプリング部16から入力される当該ダウンサンプリング後の時間領域波形の信号について、高速フーリエ変換処理を施すことにより周波数領域に変換することで、当該時間領域でクリップ処理した後に周波数領域に変換したキャリアシンボル(ここでは、「クリップ後キャリアシンボル」と呼ぶ。)を生成し、減算部18に出力する。
【0039】
減算部18は、FFT部17から入力されるクリップ後キャリアシンボルから、OFDMフレーム構成部122から入力される対応する原キャリアシンボルを差分することで比較する処理を施し、原キャリアシンボルに対する当該比較によるキャリアシンボル単位(サブキャリア番号単位)の差分(ずれた量)を示す誤差値を生成し、利得拡張部19に出力する。
【0040】
ここで、利得拡張部19、加算部20、IQ独立拡張制限部21、及びIQ独立信号選択部22を有する1D‐ACE処理部1dは、1D‐ACE法に基づく所定の拡張ルール(
図14を参照して後述する。)に従ってキャリアシンボルに含まれる所定の信号点位置のデータシンボルについて拡張可能として判定した場合に、当該誤差値を基に生成した1D‐ACE法に基づく拡張後のデータシンボルを用いて、OFDMフレームを再構成するOFDMフレーム再構成手段として構成される。尚、利得拡張部19、加算部20、及びIQ独立拡張制限部21は、データシンボルのみに対して上述した動作を行うものであり、パイロット信号のシンボル、制御信号のシンボル、Lchのシンボルに対しては、如何なる動作も行わない。
【0041】
より具体的には、利得拡張部19は、減算部18から得られる原キャリアシンボルに対する誤差値を予め定めた拡張利得Gで拡大し、加算部20に出力する。
【0042】
加算部20は、利得拡張部19から入力される当該予め定めた拡張利得で拡大後の誤差値を、対応する原信号点のキャリアシンボルに加算することにより、利得拡張後のキャリアシンボルを生成し、IQ独立拡張制限部21に出力する。
【0043】
IQ独立拡張制限部21は、加算部20から当該利得拡張後のキャリアシンボルを入力し、その利得拡張後のキャリアシンボルの絶対値をI軸とQ軸とで独立に、予め定められた振幅値を示す拡張制限値Lで制限するようにして、拡張制限したキャリアシンボルへと更新し、拡張後キャリアシンボル信号としてIQ独立信号選択部22に出力する。
【0044】
IQ独立信号選択部22は、OFDMフレーム構成部122からデータシンボル、並びにパイロット信号、制御信号、及びLchの各シンボルを含むOFDMフレームの信号(原信号)と、IQ独立拡張制限部21から拡張制限したキャリアシンボル(拡張信号)とを入力し、データシンボルについては、1D‐ACE法のルールに従って、I軸成分とQ軸成分を独立に拡張可能であるか否かを判定し、拡張可能と判定した場合にIQ独立拡張制限部21からの拡張制限したデータシンボルで対応する原キャリアシンボルにおけるデータシンボルを置き換えて出力する。また、IQ独立信号選択部22は、1D‐ACE法のルールに従う拡張が不可と判定した場合には、原データシンボルをそのまま出力する。この一連の拡張可否判定と拡張データシンボルへの置き換えは、1D‐ACE法のルールでは、I軸とQ軸で独立に行う。すなわち、I軸が拡張可能でQ軸が拡張不可、或いは逆にI軸が拡張不可で、Q軸が拡張可能という状態が普通にあるということになる。また、データシンボル以外のパイロット信号、制御信号及びLLchの各シンボルは、OFDMフレーム構成部122からの原シンボルを、そのまま出力する。このようにして、1D‐ACE処理部1dは、1D‐ACE法に基づくデータシンボルを含むOFDMフレームを再構成してIFFT部124に出力する。
【0045】
そして、1D‐ACE法に基づくACE処理部123を有するOFDM変調器101は、IFFT部124により、ACE処理部123から1D‐ACE処理部1dによるOFDMフレーム再構成後の信号について逆高速フーリエ変換処理を施すことによりOFDM変調を行ってOFDM信号を生成する。
【0046】
図14に、原キャリアシンボルにおけるデータシンボルの変調方式が16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)の場合を例に、1D‐ACE法の拡張ルールを示している。
図14において、IQ平面上において、当該1D‐ACE法の拡張可能判定処理により拡張可能として判定した信号点(拡張可能信号点)は白丸で、当該1D‐ACE法の拡張可能判定処理により拡張不可として判定した信号点(拡張不可信号点)は黒丸で示している。また、実線矢印は、拡張可能信号点(原信号点)を基準に時間波形のクリップ処理で生じた誤差値を誤差ベクトルとして示している。更に、破線矢印は、拡張可能信号点(原信号点)を基準にした当該信号点の拡張後の信号点を拡張ベクトルとして示している。
【0047】
図14から理解されるように、1D‐ACE法における信号点の拡大は、その信号点が属する外周の直線(正方形のコンスタレーションの最外周を構成している4つの直線のうちのいずれか)に対して直角方向に行う。ただし、最外周の4隅の点は、斜め方向の拡張が許容される。拡張後の信号点の絶対値はI軸とQ軸で独立に、予め定められた振幅値(拡張制限値L)で制限される。一方、拡張不可の信号点(1D‐ACE法では、正方形のコンスタレーションの最外周より内側の信号点)は、原キャリアシンボルにおけるデータシンボルが、そのまま選択される。また、拡張可能信号点でも、クリップ後キャリアシンボルにおけるデータシンボルが原キャリアシンボルにおけるデータシンボルよりコンスタレーションの内側に向かってずれている場合(すなわち、当該拡張可能信号点において、拡張可能な軸の成分の振幅が原キャリアシンボルのデータシンボルより減少している場合)には、原キャリアシンボルにおけるデータシンボルが選択される。
【0048】
(従来技術における2D‐ACE法に基づくACE処理部)
次に、
図13を参照して、従来技術における全階層で2D‐ACE法を適用する場合の2D‐ACE法に基づくACE処理部123について説明する。
図13に示すACE処理部123は、ACE前処理部1p、及び2D‐ACE処理部2dを有する。そして、ACE前処理部1pは、IFFT部11、アップサンプリング部12、補間フィルタ部13、時間領域クリップ処理部14、前置フィルタ部15、ダウンサンプリング部16、FFT部17、及び減算部18を備え、2D‐ACE処理部2dは、利得拡張部23、拡張領域制限処理部24、加算部25、及びキャリアシンボル選択部26を備える。
【0049】
図13に示すACE前処理部1pにおけるIFFT部11、アップサンプリング部12、補間フィルタ部13、時間領域クリップ処理部14、前置フィルタ部15、ダウンサンプリング部16、FFT部17、及び減算部18の動作は、データシンボルの変調方式がUC又は1D‐NUCではなく、代わりに2D‐NUCである点を除き、
図12に示すACE前処理部1pにおける同一の参照番号を付した対応する各構成要素と同様に動作し、その更なる詳細な説明は省略する。
【0050】
即ち、ACE前処理部1pにおけるIFFT部11、アップサンプリング部12、補間フィルタ部13、時間領域クリップ処理部14、前置フィルタ部15、ダウンサンプリング部16、FFT部17、及び減算部18により、2D‐NUCのコンスタレーションを有するデータシンボルを含む原キャリアシンボルについてクリップ後キャリアシンボルを生成し、原キャリアシンボルに対する誤差値を生成する。
【0051】
ここで、利得拡張部23、拡張領域制限処理部24、加算部25、及びキャリアシンボル選択部26を有する2D‐ACE処理部2dは、2D‐ACE法においても1D‐ACE法と同様にキャリアシンボルに含まれるデータシンボルのみがACE法の対象となるので、2D‐ACE法に基づく所定の拡張ルール(
図15を参照して後述する。)に従ってキャリアシンボルに含まれる所定の信号点位置のデータシンボルについて拡張可能として判定した場合に、当該誤差値を基に生成した2D‐ACE法に基づく拡張後のデータシンボルを用いて、OFDMフレームを再構成するOFDMフレーム再構成手段として構成される。
【0052】
まず、利得拡張部23は、
図12に示す利得拡張部19と同様に動作する。即ち、利得拡張部23は、減算部18から得られる原キャリアシンボルに対する誤差値を予め定めた拡張利得Gで拡大し、拡張領域制限処理部24に出力する。
【0053】
拡張領域制限処理部24は、利得拡張部23から利得拡張後の誤差値を入力するとともに、OFDMフレーム構成部122から原データシンボルを入力し、まず、当該原データシンボルの信号点が、2D‐NUCのコンスタレーションの最外周を構成する信号点であるか否かを判定する。そして、拡張領域制限処理部24は、当該原データシンボルの信号点が、最外周を構成する信号点ではないと判定した場合は、拡張不可信号点として、I軸、Q軸共に振幅ゼロのゼロ誤差信号を加算部25に出力する。一方、拡張領域制限処理部24は、最外周を構成する信号点であると判定した場合には、拡張可能信号点とし、当該原データシンボルの信号点に対応する利得拡張後の誤差ベクトルの絶対値については拡張制限値L以下になるようにクリップ処理を施し、利得拡張後の誤差ベクトルの位相については、当該原データシンボルの信号点の位相と誤差ベクトルの位相との位相差の絶対値が90度以上である場合は、拡張不可信号点と同じ扱いで、ゼロ誤差信号を出力し、当該原データシンボルの信号点の位相と誤差ベクトルの位相との位相差の絶対値が90度未満であり、且つ、拡張する角度についての拡張制限値θとして、当該位相差が±θ/2を超える場合はその位相差が±θ/2になるようにクリップし、当該位相差が±θ/2以下であれば、利得拡張後の誤差ベクトルの位相はそのままとする。こうして得られた誤差ベクトルを当該原データシンボルに対応する拡張制限後の誤差信号、すなわち拡張ベクトルとして、加算部25に出力する。
【0054】
加算部25は、拡張領域制限処理部24から入力される振幅及び角度について拡張制限値L,θで制限した誤差値、すなわち拡張ベクトルを対応する原信号点のシンボルに加算することにより、拡張制限した拡張後キャリアシンボルを生成し、拡張信号としてキャリアシンボル選択部26に出力する。
【0055】
キャリアシンボル選択部26は、OFDMフレーム構成部122からデータシンボル、並びにパイロット信号、制御信号、及びLchの各キャリアシンボルを含むOFDMフレームの信号(原信号)と、加算部25から拡張制限したデータシンボル(拡張信号)とを入力し、パイロット信号、制御信号、及びLchの各キャリアシンボルについては原信号のキャリアシンボルをそのまま出力し、データシンボルについては、2D‐ACE法のルールに従って、拡張可能であるか否かを判定し、拡張可能と判定した場合に加算部25からの拡張制限したデータシンボル(拡張信号)で対応する原キャリアシンボルにおけるデータシンボルを置き換えて出力する。また、キャリアシンボル選択部26は、2D‐ACE法のルールに従う拡張が不可と判定した場合には、原データシンボルをそのまま出力する。このようにして、2D‐ACE処理部2dは、2D‐ACE法に基づくデータシンボルを含むOFDMフレームを再構成してIFFT部124に出力する。
【0056】
そして、2D‐ACE法に基づくACE処理部123を有するOFDM変調器101は、IFFT部124により、ACE処理部123から2D‐ACE処理部2dによるOFDMフレーム再構成後の信号について逆高速フーリエ変換処理を施すことによりOFDM変調を行ってOFDM信号を生成する。
【0057】
図15に、キャリアシンボルの変調方式がNUC64QAMの場合を例に、2D‐ACE法の拡張ルールを示している。尚、
図15では、第1象限のみを代表して図示しており、第2、第3及び第4象限も同様である。
図15において、IQ平面上において、当該2D‐ACE法の拡張可能判定処理により拡張可能として判定した信号点(拡張可能信号点)は白丸で、当該2D‐ACE法の拡張可能判定処理により拡張不可として判定した信号点(拡張不可信号点)は黒丸で示している。また、実線矢印は、拡張可能信号点(原信号点)を基準に時間波形のクリップ処理で生じた誤差値を誤差ベクトルとして示している。更に、破線矢印は、拡張可能信号点(原信号点)を基準にした振幅及び角度について拡張制限値L,θで制限した拡張後シンボルに対応する信号点を拡張ベクトルとして示している。
【0058】
図15から理解されるように、2D‐ACE法における信号点の拡大は、原キャリアシンボルのコンスタレーションにおける最外周上の信号点のシンボルが対象となる。そして、2D‐ACE法に基づく所定の拡張ルールでは、原データシンボルの信号点を基準としたクリップ後キャリアシンボルのずれ(誤差)のベクトルの位相と、IQ平面の原点を基準とした原データシンボルの信号点の位相の差が、±90以内で拡張可能であるか否かの拡張可能判定処理を行う。また、拡張後の誤差ベクトル、すなわち拡張ベクトルの絶対値は振幅に関する拡張制限値Lで制限し、位相は、IQ平面の原点を基準とした原データシンボルの信号の位相との差を角度に関する拡張制限値θを基に±θ/2で制限している。
【0059】
即ち、
図15において、IQ平面上の原点に対する原シンボル(原信号点)の位相をφ、原シンボルとクリップ後キャリアシンボルの差分ベクトルの位相をφ+Δφとすると、-90度<Δφ<90度の場合にのみ、予め定めた拡張利得Gで、その差分のベクトル(誤差ベクトル)を拡張する。Δφは原シンボルと誤差ベクトルの相対位相差である。この時、2D‐ACE法では、拡張ベクトルの最大値が規定(拡張制限値Lで制限)されるだけではなく、拡張する角度範囲が規定(角度θで制限)されており、拡張された誤差ベクトルの大きさと相対位相差Δφが制限された結果が最終的な拡張ベクトルとなる。拡張ベクトルの相対位相差は、誤差ベクトルの相対位相差Δφが、-θ/2より小さい場合は-θ/2に、θ/2より大きい場合はθ/2にクリップされる。
【0060】
例えば、
図15において、(※1),(※3)を示す箇所のように、相対位相差Δφが、「Δφ<90度、且つ、Δφ>θ/2」の場合、Δφ=θ/2として、Δφをθ/2にクリップする。一方「Δφ>-90度、且つ、Δφ<-θ/2」の場合は、Δφ=-θ/2として、Δφを-θ/2にクリップする。また、(※2)を示す箇所のように、誤差ベクトルの相対位相差Δφが拡張可能領域EAに入っている場合は、拡張利得で絶対値を増幅するのみとする。また、(※4)を示す箇所のように、誤差ベクトルの相対位相差Δφが「Δφ≧90度、又は、Δφ≦-90度」の場合は、拡張信号点とはしない(拡張ベクトルをゼロとする)。
【0061】
結果として、
図15に示すように、2D‐ACE法における拡張ベクトルは原シンボルの信号点を扇頂とした扇状の領域に分布することになる。尚、SP信号、CP信号、TMCC信号及びLchなどのシンボルは1D‐ACE法及び2D‐ACE法のいずれにおいても拡張対象とはしない。
【0062】
このようにして従来技術におけるACE法に基づくOFDM変調器101が構成され、OFDM信号のピーク率を抑制することができ、送信装置102の出力段に設けられる電力増幅器104の非線形特性による特性劣化を軽減させるようにしている。
【0063】
ところで、上記の
図12乃至
図15に示すACE法の信号処理では、アップサンプリング用の補間フィルタ部13とダウンサンプリング用の前置フィルタ部15は、その特性として、通過域内では、高い平坦性、遮断域では、大きな減衰量が要求される。また、地上デジタル放送のような近年のOFDMシステムでは、FFT利用率(FFTサイズに対する有効キャリア数の割合)が、かなり高くなり、補間フィルタ部13と前置フィルタ部15に要求されるフィルタ特性(周波数特性における、通過域の歪低減性能、遮断域の大きな減衰量、及び非常に狭い遷移域)は非常に厳しくなっている。
【0064】
例えば、
図16及び
図17には、補間フィルタ部13と前置フィルタ部15の特性例を示している。
図16は、ACE処理部123に用いる補間フィルタ部13及び前置フィルタ部15の特性例の全体を示す図である。こうしたフィルタは同じタップ数で、なるべく急峻な遮断特性を得るために等リップル特性の設計が、一般的に用いられる。
図17は、ACE処理部123に用いる通過域振幅偏差が0.1dB以下、阻止域減衰量が80dB以上のFIR(Finite Impulse Response)型等リップル特性で設計したものであり、
図16における補間フィルタ部13及び前置フィルタ部15の特性例の通過域を拡大した図である。
図17に示すような通過域の振幅偏差が0.1dB以下というのは、この種のフィルタとしては、高性能のものとなっている。
【0065】
次に、
図18及び
図19を参照して、補間フィルタ部13及び前置フィルタ部15の通過域の周波数特性の誤差の影響を説明する。
図18は、変調方式がUC256QAMであり、分かり易くするべく時間領域クリップ処理部14による時間領域波形のクリップ処理を行わないで、ACE処理部123におけるACE法に基づく信号処理を行った後のキャリアシンボルのコンスタレーション(図中、SP,CPは含んでいるが、TMCC,Lchのシンボルは含んでいない。)の例を示す図であり、補間フィルタ部13と前置フィルタ部15のフィルタ特性の誤差による影響を示す図である。ここで、補間フィルタ部13及び前置フィルタ部15には、
図16に示す特性のデジタルFIRフィルタを用いている。
図18に示す例において、変調方式はUC256QAMであり、拡張利得Gは、誤差が分かり易いように10.0としている。また、
図19は、変調方式がUC256QAMの場合の原シンボルのコンスタレーション(図中、SP,CPは含んでいるが、TMCC,Lchのシンボルは含んでいない。)を示す図である。
【0066】
図18から分かるように、コンスタレーションの外周の信号点が外側に向かって一様に広がっている。
図18に示す例においては時間領域波形のクリップ処理を行っていないので、本来であれば、
図18に示す各シンボルの信号点は、
図19に示す原シンボルの信号点と同一でなくてはならないが、実際には、補間フィルタ部13と前置フィルタ部15による通過域の周波数特性が理想特性からずれた影響で、誤差が生じていることが分かる。もともと、ACE法において、時間領域波形のクリップ処理によって生ずる、原キャリアシンボルとクリップ後キャリアシンボルとの間の誤差は、そのクリップ処理におけるクリップレベルにも依存するが、小さいのが一般的である。このため、こうした補間フィルタ部13及び前置フィルタ部15の通過域の周波数特性の誤差の影響は無視できず、ACE法によるPAPR低減効果を妨げてしまうという問題があった。
【0067】
そこで、ACE法に係るフィルタ特性(補間フィルタ部13及び前置フィルタ部15の通過域の周波数特性)の誤差の影響を低減させて、ACE法を適用するOFDM変調器101及びプログラムを構成することが望まれる。
【0068】
従って、本発明の目的は、上述の問題に鑑みて、ACE法に係るフィルタ特性の誤差の影響を低減させて、ACE法を適用するOFDM変調器及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0069】
本発明のOFDM変調器は、ACE法を適用するOFDM変調器であって、OFDMフレーム構成後の信号における周波数領域のキャリアシンボルについて、ACE法の拡張ルールに従ってキャリアシンボルに含まれる拡張対象とする予め定めた拡張対象キャリアシンボルとして所定の信号点位置のデータシンボル、TMCCキャリアシンボル及びLchキャリアシンボルのうちいずれか1種以上について拡張可能として判定した場合に、前記誤差値を基に生成したACE法に基づく拡張後の拡張対象キャリアシンボルを用いて、OFDMフレームを再構成するOFDMフレーム再構成手段と、当該OFDMフレームを再構成した後の信号に対して逆高速フーリエ変換処理を施すことにより、時間領域波形に変換するOFDM変調を行ってOFDM信号を生成するOFDM信号生成部と、を備え、前記ACE前処理部は、OFDMフレーム構成後の信号における周波数領域のキャリアシンボルについて、予め定めた第1のフィルタ特性補正データを用いて補正処理を施す第1のフィルタ特性補正部と、当該補正処理後のキャリアシンボルについて、逆高速フーリエ変換処理を施すことにより時間領域波形に変換するIFFT部と、当該時間領域波形に変換した信号のサンプリング周波数について、ゼロ内挿による所定の整数倍に変換するアップサンプリングを施すアップサンプリング部と、当該ゼロ内挿によるアップサンプリング後の信号について、内挿補間するフィルタ処理を施す補間フィルタ部と、当該内挿補間したアップサンプリング後の信号について、時間領域で予め定めた信号振幅値によるクリップ処理を施す時間領域クリップ処理部と、当該クリップ処理後の信号について、周波数領域のキャリアシンボルに変換するための前処理として所定帯域外の不要成分を除去するフィルタ処理を施す前置フィルタ部と、該フィルタ処理後の時間領域波形の信号のサンプリング周波数について、当該所定の整数倍の逆数となる逆数倍に変換するダウンサンプリングを施すダウンサンプリング部と、当該ダウンサンプリング後の時間領域波形の信号について、高速フーリエ変換処理を施すことにより周波数領域に変換することで、当該時間領域でクリップ処理した後に周波数領域に変換したキャリアシンボルを生成するFFT部と、該キャリアシンボルについて、予め定めた第2のフィルタ特性補正データを用いて補正処理を施す第2のフィルタ特性補正部と、前記第1のフィルタ特性補正部による補正処理前のキャリアシンボルと、前記第2のフィルタ特性補正部による補正処理後のキャリアシンボルとを比較して、当該比較によるシンボル単位の差分を示す誤差値を生成する減算部と、を有し、前記第1及び第2のフィルタ特性補正部は、それぞれ前記補間フィルタ部及び前記前置フィルタ部におけるフィルタ特性の誤差によって生じる信号の誤差を補正するように構成されていることを特徴とする。
【0070】
また、本発明のOFDM変調器において、前記第1のフィルタ特性補正部は、当該周波数領域のキャリアシンボルについて、当該第1のフィルタ特性補正データを用いて、前記補間フィルタ部におけるフィルタ特性の通過域の歪みの逆特性を加えて補正する補正処理を施すように構成され、前記第2のフィルタ特性補正部は、当該時間領域でクリップ処理した後に周波数領域に変換したキャリアシンボルについて、当該第2のフィルタ特性補正データを用いて、前記前置フィルタ部におけるフィルタ特性の通過域の歪みの逆特性を加えて補正する補正処理を施すように構成されていることを特徴とする。
【0071】
また、本発明のOFDM変調器において、前記第1のフィルタ特性補正部で用いる当該第1のフィルタ特性補正データは、当該周波数領域のキャリアシンボルについて、前記補間フィルタ部におけるフィルタ特性の通過域の歪みに起因する周波数特性の誤差に該当する複素係数で除算するものとして構成されているか、又は前記補間フィルタ部におけるフィルタ特性の通過域の歪みに起因する周波数特性の誤差の逆数に該当する複素係数を乗算するものとして構成され、前記第2のフィルタ特性補正部で用いる当該第2のフィルタ特性補正データは、当該時間領域でクリップ処理した後に周波数領域に変換したキャリアシンボルについて、前記前置フィルタ部におけるフィルタ特性の通過域の歪みに起因する周波数特性の誤差に該当する複素係数で除算するものとして構成されているか、又は前記前置フィルタ部におけるフィルタ特性の通過域の歪みに起因する周波数特性の誤差の逆数に該当する複素係数を乗算するものとして構成されていることを特徴とする。
【0072】
また、本発明のOFDM変調器において、前記補間フィルタ部におけるフィルタ特性と、前記前置フィルタ部におけるフィルタ特性とを同一とし、前記第1のフィルタ特性補正部で用いる当該第1のフィルタ特性補正データは、前記第2のフィルタ特性補正部で用いる当該第2のフィルタ特性補正データと同一とし、当該第1及び第2のフィルタ特性補正データは、前記IFFT部により、予め用意した補正データ用パイロットシンボルについて、逆高速フーリエ変換処理を施すことにより時間領域波形に変換し、前記アップサンプリング部により、該時間領域波形に変換した信号のサンプリング周波数について、ゼロ内挿による所定の整数倍に変換するアップサンプリングを施し、前記補間フィルタ部により、該ゼロ内挿によるアップサンプリング後の信号について補間フィルタ処理を施し、前記時間領域クリップ処理部によるクリップ処理をスルーして、前記前置フィルタ部により、該内挿補間したアップサンプリング後の信号についてフィルタ処理を施し、前記ダウンサンプリング部により、該フィルタ処理後の時間領域波形の信号のサンプリング周波数について、該所定の整数倍の逆数となる逆数倍に変換するダウンサンプリングを施し、前記FFT部により、該ダウンサンプリング後の時間領域波形の信号について、高速フーリエ変換処理を施すことにより周波数領域に変換することで、変換後の補正データ用パイロットシンボルを生成し、伝送路応答算出処理として、該変換後の補正データ用パイロットシンボルを前記予め用意した補正データ用パイロットシンボルで複素除算する処理を施すことにより当該フィルタ特性の誤差値をサブキャリア単位で算出し、ルート処理として、該誤差値に対しその平方根を計算し、該平方根の計算結果の逆数を計算することにより生成されていることを特徴とする。
【0073】
また、本発明のOFDM変調器において、前記第1のフィルタ特性補正部及び前記第2のフィルタ特性補正部の各々は、それぞれの当該第1及び第2のフィルタ特性補正データとして、処理するOFDMフレーム構成後の信号のサブキャリアの数分の複素データメモリを備え、前記第1のフィルタ特性補正部における複素データメモリには、前記補間フィルタ部の周波数特性の誤差、もしくは前記補間フィルタ部の周波数特性の誤差の逆数が当該第1のフィルタ特性補正データとして格納され、前記第2のフィルタ特性補正部における複素データメモリには、前記前置フィルタの周波数特性の誤差、もしくは前記前置フィルタの周波数特性の誤差の逆数が当該第2のフィルタ特性補正データとして格納されていることを特徴とする。
【0074】
また、本発明のOFDM変調器において、前記OFDMフレーム再構成手段は、1D‐ACE処理部として、前記ACE前処理部によって得られた各キャリアシンボルに対する当該誤差値を予め定めた拡張利得で拡大する利得拡張部と、当該予め定めた拡張利得で拡大後の誤差値を、対応する前記第1のフィルタ特性補正部による補正処理前のキャリアシンボルに加算することにより、利得拡張後のキャリアシンボルを生成する加算部と、当該利得拡張後のキャリアシンボルについて、1D‐ACE法に基づく所定の拡張ルールに従って、I軸とQ軸で独立に拡張制限したキャリアシンボルへと更新するIQ独立拡張制限部と、1D‐ACE法に基づく所定の拡張ルールに従ってキャリアシンボルに含まれる当該拡張対象キャリアシンボルについて拡張可能として判定した場合に、当該I軸とQ軸で独立に拡張制限した拡張対象キャリアシンボルで、対応する前記第1のフィルタ特性補正部による補正処理前の拡張対象キャリアシンボルを置き換えて、OFDMフレームを再構成するIQ独立信号選択部と、を備えることを特徴とする。
【0075】
また、本発明のOFDM変調器において、前記OFDMフレーム再構成手段は、2D‐ACE処理部として、前記ACE前処理部によって得られたキャリアシンボルに対する当該誤差値を予め定めた拡張利得で拡大する利得拡張部と、2D-ACE法に基づく所定の拡張ルールに従ってキャリアシンボルに含まれる当該拡張対象キャリアシンボルについて拡張可能と判定した場合に、当該予め定めた拡張利得で拡大後の誤差値を、IQ平面上で振幅及び角度について拡張制限した当該拡張対象キャリアシンボルに対応する誤差値へと更新する拡張領域制限処理部と、2D‐ACE法に基づく所定の拡張ルールに従って、当該拡張制限した拡張対象キャリアシンボルに対応する誤差値を、対応する前記第1のフィルタ特性補正部による補正処理前の拡張対象キャリアシンボルに加算することにより、拡張制限した拡張対象キャリアシンボルを生成する加算部と、2D‐ACE法に基づく所定の拡張ルールに従って、当該拡張可能として判定しIQ平面上で拡張制限した拡張対象キャリアシンボルで、対応する前記第1のフィルタ特性補正部による補正処理前の拡張対象キャリアシンボルを置き換えて、OFDMフレームを再構成するキャリアシンボル選択部と、を備えることを特徴とする。
【0076】
また、本発明のOFDM変調器において、前記OFDMフレーム再構成手段は、1D‐ACE法に基づく所定の拡張ルールに従ってOFDMフレームを再構成する1D‐ACE処理部と、2D‐ACE法に基づく所定の拡張ルールに従ってOFDMフレームを再構成する2D‐ACE処理部と、前記1D‐ACE処理部から得られるUC又は1D‐NUCの変調方式が適用される第1の階層の当該拡張対象キャリアシンボルと、前記2D‐ACE処理部から得られる2D‐NUCの変調方式が適用される第2の階層の当該拡張対象キャリアシンボルと、を階層別にキャリア選択してOFDMフレームを再構成するキャリア選択部と、を備えることを特徴とする。
【0077】
また、本発明のプログラムは、本発明のOFDM変調器として機能させるためのプログラムとして構成する。
【発明の効果】
【0078】
本発明によれば、ACE法を適用するOFDM変調器を構成する際に、ACE法に係るフィルタ特性の誤差の影響を低減させることができ、PAPR低減性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】本発明による一実施例の全階層で1D‐ACE法を適用する場合のACE前処理部、及び1D‐ACE法に基づく1D‐ACE処理部を有するACE処理部の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明による一実施例の全階層で2D‐ACE法を適用する場合のACE前処理部、及び2D‐ACE法に基づく2D‐ACE処理部を有するACE処理部の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明による一実施例の階層別(本例ではA階層及びB階層)で1D‐ACE法、2D‐ACE法を適用する場合のACE法に基づくACE前処理部、1D‐ACE処理部、2D‐ACE処理部、及びキャリア選択部を有するACE処理部の概略構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明による一実施例のOFDM変調器のACE処理部におけるフィルタ特性補正部の概略構成を示す図である。
【
図5】本発明による一実施例のOFDM変調器におけるフィルタ特性補正部に係るフィルタ特性補正データを生成するフィルタ特性補正データ生成装置の概略構成(又はその生成方法)を例示するブロック図である。
【
図6】本発明による一実施例のOFDM変調器について、変調方式がUC256QAMのときに、本発明に係るフィルタ特性補正部におけるフィルタ特性の補正処理の有無による比較として、拡張利得対PAPR特性の違いを示す図である。
【
図7】本発明による一実施例のOFDM変調器について、変調方式がUC256QAMのときに、本発明に係るフィルタ特性補正部におけるフィルタ特性の補正処理の有無による比較として、PAPR最小点でのCCDF特性を示す図である。
【
図8】本発明による一実施例のOFDM変調器について、変調方式がUC256QAMのときに、本発明に係るフィルタ特性補正部により、補間フィルタ部と前置ファイルタ部の周波数特性の歪みを補正した場合のACE処理後のコンスタレーションを示す図である。
【
図9】本発明による一実施例のOFDM変調器について、変調方式がUC256QAMのときに、本発明に係るフィルタ特性補正部による補間フィルタ部と前置ファイルタ部の周波数特性の歪みを補正しなかった場合のACE処理後のコンスタレーションを示す図である。
【
図10】典型的なOFDM信号の送信装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図11】ACE法に基づくOFDM変調器の概略構成を示すブロック図である。
【
図12】従来技術における全階層で1D‐ACE法を適用する場合のACE前処理部、及び1D‐ACE法に基づく1D‐ACE処理部を有するACE処理部の概略構成を示すブロック図である。
【
図13】従来技術における全階層で2D‐ACE法を適用する場合のACE前処理部、及び2D‐ACE法に基づく2D‐ACE処理部を有するACE処理部の概略構成を示すブロック図である。
【
図14】1D‐ACE法の拡張ルールを示す図である。
【
図15】2D‐ACE法の拡張ルールを示す図である。
【
図16】ACE処理部に用いる補間フィルタ部及び前置フィルタ部の特性例の全体を示す図である。
【
図17】ACE処理部に用いる補間フィルタ部及び前置フィルタ部の特性例の通過域を拡大した図である。
【
図18】変調方式がUC256QAMであり、時間領域クリップ処理部による時間領域波形のクリップ処理を行わないで、ACE処理部におけるACE法に基づく信号処理を行った後のキャリアシンボルのコンスタレーションの例を示す図であり、補間フィルタ部と前置フィルタ部の特性の誤差による影響を示す図である。
【
図19】変調方式がUC256QAMの場合の原シンボルのコンスタレーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
以下、
図1乃至
図9を参照しながら、本発明による一実施例のACE法を適用するOFDM変調器101について説明する。尚、本発明に係る
図1乃至
図3において、説明の便宜上、
図10乃至
図13に示すものと同様な構成要素には同一の参照番号を付している。つまり、本発明による一実施例のOFDM変調器101においても、
図11に示すように構成される。また、本発明による一実施例のOFDM変調器101を備える送信装置100は、
図10に示すものと同様の構成要素からなる。ただし、本発明による一実施例のOFDM変調器101は、
図1乃至
図3を参照して以下に説明するように、ACE処理部123の機能を一部改良したものとなっている。
【0081】
まず、上述したように、ACE法には、1D‐ACE法と2D‐ACE法の二つがある。1D‐ACE法はコンスタレーションがUCと1D‐NUCのOFDM信号に適用され、2D‐ACE法はコンスタレーションが2D‐NUCのOFDM信号に適用される。1D‐ACE法と2D‐ACE法のいずれも、SPやCPのようなパイロット信号、TMCCのような制御信号、Lch等のキャリアシンボルを除くデータシンボルのみに適用される。
【0082】
そこで、本発明による一実施例のOFDM変調器101に係るACE処理部123は、全階層で1D‐ACE法を適用する場合には
図1に例示するように構成され、全階層で2D‐ACE法を適用する場合には
図2に例示するように構成され、階層別(本例ではA階層及びB階層)で1D‐ACE法、2D‐ACE法を適用する場合には
図3に例示するように構成される。
【0083】
図1は、本発明による一実施例の全階層で1D‐ACE法を適用する場合のACE前処理部1、及び1D‐ACE法に基づく1D‐ACE処理部1dを有するACE処理部123の概略構成を示すブロック図である。また、
図2は、本発明による一実施例の全階層で2D‐ACE法を適用する場合のACE前処理部1、及び2D‐ACE法に基づく2D‐ACE処理部2dを有するACE処理部123の概略構成を示すブロック図である。また、
図3は、本発明による一実施例の階層別(本例ではA階層及びB階層)で1D‐ACE法、2D‐ACE法を適用する場合のACE法に基づくACE前処理部1、1D‐ACE処理部1d、2D‐ACE処理部2d、及びキャリア選択部1Sを有するACE処理部123の概略構成を示すブロック図である。
図1乃至
図3において、同様な構成要素には同一の参照番号を付しており、更に、
図12及び
図13と比較して同様な構成要素には同一の参照番号を付している。
【0084】
(本発明に係る1D‐ACE法に基づくACE処理部)
まず、
図1を参照して、本発明による一実施例の全階層で1D‐ACE法を適用する場合の1D‐ACE法に基づくACE処理部123について説明する。
図1に示す本実施例のACE処理部123は、ACE前処理部1、及び1D‐ACE処理部1dを有する。そして、ACE前処理部1は、第1のフィルタ特性補正部10‐1、IFFT部11、アップサンプリング部12、補間フィルタ部13、時間領域クリップ処理部14、前置フィルタ部15、ダウンサンプリング部16、FFT部17、第2のフィルタ特性補正部10‐2、及び減算部18を備え、1D‐ACE処理部1dは、利得拡張部19、加算部20、IQ独立拡張制限部21、及びIQ独立信号選択部22を備える。
【0085】
即ち、
図1に示す本実施例のACE処理部123は、
図12に示す従来技術のACE処理部123と比較して、1D‐ACE処理部1dを有する点は同様であるが、
図12に示すACE前処理部1pの代わりに、
図1に示すACE前処理部1を備える点で相違している。さらに、
図1に示すACE前処理部1は、
図12に示すACE前処理部1pと比較して、第1のフィルタ特性補正部10‐1、及び第2のフィルタ特性補正部10‐2を更に備える点で相違しており、その他の構成要素は同様である。第1のフィルタ特性補正部10‐1、及び第2のフィルタ特性補正部10‐2は、それぞれ同様に構成されるため(
図4を参照して詳細に後述する。)、本願明細書中、総括するときは、「フィルタ特性補正部10」とも称する。
【0086】
第1のフィルタ特性補正部10‐1は、IFFT部11に対して前置して、補間フィルタ部13におけるフィルタ特性の誤差によって生じる信号の誤差を補正する補正処理を行う機能部であり、予め定めたフィルタ特性補正データを用いて、周波数領域のデータシンボル(原キャリアシンボル)に、補間フィルタ部13におけるフィルタ特性の通過域の歪みの逆特性を加えて補正するように構成される。
【0087】
より具体的には、第1のフィルタ特性補正部10‐1は、OFDMフレーム構成部122からOFDMフレームの信号を入力し、パイロット信号、制御信号及びLch、及びUC又は1D‐NUCのコンスタレーションを有するデータシンボル(原キャリアシンボル)、すなわち全てのキャリアシンボルについて、予め定めたフィルタ特性補正データを用いて、後段の補間フィルタ部13におけるフィルタ特性の通過域の歪みの逆特性を加えて補正する補正処理を施し、補正処理後の全てのキャリアシンボルを生成し、IFFT部11に出力する。
【0088】
IFFT部11は、第1のフィルタ特性補正部10‐1から入力した補正処理後のキャリアシンボルについて、逆高速フーリエ変換処理を施すことにより時間領域波形に変換する処理を施して、アップサンプリング部12に出力する。
【0089】
アップサンプリング部12は、IFFT部11から当該補正処理後のキャリアシンボルを時間領域波形に変換した信号を入力し、その時間領域波形の信号のサンプリング周波数について、ゼロ内挿による所定の整数倍(例えば、4倍)に変換するアップサンプリングを施して、補間フィルタ部13に出力する。
【0090】
補間フィルタ部13は、アップサンプリング部12から入力される当該ゼロ内挿によるアップサンプリング後の信号について、より正確に波形のピークを検出するために内挿補間するフィルタ処理を施して、時間領域クリップ処理部14に出力する。
【0091】
時間領域クリップ処理部14は、補間フィルタ部13から入力される当該内挿補間したアップサンプリング後の信号について、時間領域で予め定めた信号振幅値(クリップレベル)によるクリップ処理を施して、前置フィルタ部15に出力する。
【0092】
前置フィルタ部15は、時間領域クリップ処理部14から入力される当該クリップ処理後の信号について、周波数領域のキャリアシンボルに変換するための前処理として、クリップ処理で生じた所定帯域外の不要成分を除去するフィルタ処理(前置フィルタ処理)を施して、ダウンサンプリング部16に出力する。
【0093】
ダウンサンプリング部16は、前置フィルタ部15から前置フィルタ処理後の時間領域波形の信号を入力し、その前置フィルタ処理後の時間領域波形の信号のサンプリング周波数について、当該所定の整数倍の逆数となる逆数倍(本例では、1/4)に変換するダウンサンプリング(間引き処理)を施して、FFT部17に出力する。
【0094】
FFT部17は、ダウンサンプリング部16から入力される当該ダウンサンプリング後の時間領域波形の信号について、高速フーリエ変換処理を施すことにより周波数領域に変換することで、当該時間領域でクリップ処理した後に周波数領域に変換したキャリアシンボル(クリップ後キャリアシンボル)を生成し、第2のフィルタ特性補正部10‐2に出力する。
【0095】
第2のフィルタ特性補正部10‐2は、FFT部17に対して後置して、前置フィルタ部15におけるフィルタ特性の誤差によって生じる信号の誤差を補正する補正処理を行う機能部であり、予め定めたフィルタ特性補正データを用いて、周波数領域のクリップ後キャリアシンボルに、前置フィルタ部15におけるフィルタ特性の通過域の歪みの逆特性を加えて補正するように構成される。
【0096】
より具体的には、第2のフィルタ特性補正部10‐2は、FFT部17からクリップ後キャリアシンボルを入力し、そのクリップ後キャリアシンボルについて、予め定めたフィルタ特性補正データを用いて、前段の前置フィルタ部15におけるフィルタ特性の通過域の歪みの逆特性を加えて補正する補正処理を施し、補正処理後のクリップ後キャリアシンボルを生成し、減算部18に出力する。
【0097】
減算部18は、FFT部17から入力される補正処理後のクリップ後キャリアシンボルから、OFDMフレーム構成部122から入力される対応する原キャリアシンボルを差分することで比較する処理を施し、原キャリアシンボルに対する当該比較によるキャリアシンボル単位(サブキャリア番号単位)の差分(ずれた量)を示す誤差値を生成し、利得拡張部19に出力する。即ち、減算部18は、第1のフィルタ特性補正部10‐1による補正処理前のキャリアシンボルと、第2のフィルタ特性補正部10‐2による補正処理後のキャリアシンボルとを比較して、当該比較によるキャリアシンボル単位の差分を示す誤差値を生成する。
【0098】
ここで、利得拡張部19、加算部20、IQ独立拡張制限部21、及びIQ独立信号選択部22は、1D‐ACE法に基づく所定の拡張ルール(
図14参照)に従ってキャリアシンボルに含まれる所定の信号点位置のデータシンボルについて拡張可能として判定した場合に、当該誤差値を基に生成した1D‐ACE法に基づく拡張後のデータシンボルを用いて、OFDMフレームを再構成するOFDMフレーム再構成手段として構成される。尚、利得拡張部19、加算部20、及びIQ独立拡張制限部21は、データシンボルのみに対して上述した動作を行うものであり、パイロット信号のシンボル、制御信号のシンボル、Lchのシンボルに対しては、如何なる動作も行わない。
【0099】
より具体的には、利得拡張部19は、減算部18から得られる原キャリアシンボルに対する誤差値を予め定めた拡張利得Gで拡大し、加算部20に出力する。
【0100】
加算部20は、利得拡張部19から入力される当該予め定めた拡張利得で拡大後の誤差値を、対応する原信号点のキャリアシンボルに加算することにより、利得拡張後のキャリアシンボルを生成し、IQ独立拡張制限部21に出力する。
【0101】
IQ独立拡張制限部21は、加算部20から当該利得拡張後のキャリアシンボルを入力し、その利得拡張後のキャリアシンボルの絶対値をI軸とQ軸とで独立に、予め定められた振幅値を示す拡張振幅制限値Lで制限するようにして、拡張制限したキャリアシンボルへと更新し、拡張後キャリアシンボル信号としてIQ独立信号選択部22に出力する。
【0102】
IQ独立信号選択部22は、OFDMフレーム構成部122からデータシンボル、並びにパイロット信号、制御信号、及びLchの各シンボルを含むOFDMフレームの信号(原信号)と、IQ独立拡張制限部21から拡張制限したキャリアシンボル(拡張信号)とを入力し、データシンボルについては、1D‐ACE法のルールに従って、I軸成分とQ軸成分を独立に拡張可能であるか否かを判定し、拡張可能と判定した場合にIQ独立拡張制限部21からの拡張制限したデータシンボルで対応する原キャリアシンボルにおけるデータシンボルを置き換えて出力する。また、IQ独立信号選択部22は、1D‐ACE法のルールに従う拡張が不可と判定した場合には、原データシンボルをそのまま出力する。この一連の拡張可否判定と拡張データシンボルへの置き換えは、1D‐ACE法のルールでは、I軸とQ軸で独立に行う。すなわち、I軸が拡張可能でQ軸が拡張不可、或いは逆にI軸が拡張不可で、Q軸が拡張可能という状態が普通にあるということになる。また、データシンボル以外のパイロット信号、制御信号及びLLchの各シンボルは、OFDMフレーム構成部122からの原シンボルを、そのまま出力する。このようにして、1D‐ACE処理部1dは、1D‐ACE法に基づくデータシンボルを含むOFDMフレームを再構成してIFFT部124に出力する。
【0103】
このようなフィルタ特性補正部10(第1のフィルタ特性補正部10‐1、及び第2のフィルタ特性補正部10‐2)による周波数領域の歪補正処理機能を有する1D‐ACE法に基づくACE処理部123を有するOFDM変調器101は、IFFT部124により、ACE処理部123の1D‐ACE処理部1dによるOFDMフレーム再構成後の信号について逆高速フーリエ変換処理を施すことによりOFDM変調を行ってOFDM信号を生成する。
【0104】
(本発明に係る2D‐ACE法に基づくACE処理部)
次に、
図2を参照して、本発明による一実施例の全階層で2D‐ACE法を適用する場合のACE処理部123について説明する。
図2に示す本実施例のACE処理部123は、ACE前処理部1、及び2D‐ACE処理部2dを有する。そして、ACE前処理部1は、第1のフィルタ特性補正部10‐1、IFFT部11、アップサンプリング部12、補間フィルタ部13、時間領域クリップ処理部14、前置フィルタ部15、ダウンサンプリング部16、FFT部17、第2のフィルタ特性補正部10‐2、及び減算部18を備え、2D‐ACE処理部2dは、利得拡張部23、拡張領域制限処理部24、加算部25、及びキャリアシンボル選択部26を備える。
【0105】
即ち、
図2に示す本実施例のACE処理部123は、
図13に示す従来技術のACE処理部123と比較して、2D‐ACE処理部2dを有する点は同様であるが、
図13に示すACE前処理部1pの代わりに、
図2に示すACE前処理部1を備える点で相違している。さらに、
図2に示すACE前処理部1は、
図13に示すACE前処理部1pと比較して、第1のフィルタ特性補正部10‐1、及び第2のフィルタ特性補正部10‐2を更に備える点で相違しており、その他の構成要素は同様である。
【0106】
図2に示すACE前処理部1における第1のフィルタ特性補正部10‐1、IFFT部11、アップサンプリング部12、補間フィルタ部13、時間領域クリップ処理部14、前置フィルタ部15、ダウンサンプリング部16、FFT部17、第2のフィルタ特性補正部10‐2、及び減算部18の動作は、データシンボルの変調方式が、UC又は1D‐NUCではなく、代わりに2D‐NUCである点を除き、
図1に示すACE前処理部1における同一の参照番号を付した対応する各構成要素と同様に動作し、その更なる詳細な説明は省略する。
【0107】
即ち、ACE前処理部1における第1のフィルタ特性補正部10‐1、IFFT部11、アップサンプリング部12、補間フィルタ部13、時間領域クリップ処理部14、前置フィルタ部15、ダウンサンプリング部16、FFT部17、第2のフィルタ特性補正部10‐2、及び減算部18により、OFDMフレーム構成部122からOFDMフレームの信号について、フィルタ特性補正部10(第1のフィルタ特性補正部10‐1、及び第2のフィルタ特性補正部10‐2)による周波数領域の歪補正処理機能により、2D‐NUCのコンスタレーションを有するデータシンボルを含む原キャリアシンボルについて、補正処理後のクリップ後キャリアシンボルを生成し、原キャリアシンボルに対する誤差値を生成する。
【0108】
また、
図2に示す2D‐ACE処理部2dにおける利得拡張部23、拡張領域制限処理部24、加算部25、及びキャリアシンボル選択部26は、
図13に示すものと同様に動作する。
【0109】
つまり、利得拡張部23、拡張領域制限処理部24、加算部25、及びキャリアシンボル選択部26を有する2D‐ACE処理部2dは、2D‐ACE法においても1D‐ACE法と同様にキャリアシンボルに含まれるデータシンボルのみがACE法の対象となるので、2D‐ACE法に基づく所定の拡張ルール(
図15参照)に従ってキャリアシンボルに含まれる所定の信号点位置のデータシンボルについて拡張可能として判定した場合に、当該誤差値を基に生成した2D‐ACE法に基づく拡張後のデータシンボルを用いて、OFDMフレームを再構成するOFDMフレーム再構成手段として構成される。
【0110】
より具体的には、
図2に示す利得拡張部23は、減算部18から得られる原キャリアシンボルに対する誤差値を予め定めた拡張利得Gで拡大し、拡張領域制限処理部24に出力する。
【0111】
拡張領域制限処理部24は、利得拡張部23から利得拡張後の誤差値を入力するとともに、OFDMフレーム構成部122から原データシンボルを入力し、まず、当該原データシンボルの信号点が、2D‐NUCのコンスタレーションの最外周を構成する信号点であるか否かを判定する。そして、拡張領域制限処理部24は、当該原データシンボルの信号点が、最外周を構成する信号点ではないと判定した場合は、拡張不可信号点として、I軸、Q軸共に振幅ゼロのゼロ誤差信号を加算部25に出力する。一方、拡張領域制限処理部24は、最外周を構成する信号点であると判定した場合には、拡張可能信号点とし、当該原データシンボルの信号点に対応する利得拡張後の誤差ベクトルの絶対値については拡張制限値L以下になるようにクリップ処理を施し、利得拡張後の誤差ベクトルの位相については、当該原データシンボルの信号点の位相と誤差ベクトルの位相との位相差の絶対値が90度以上である場合は、拡張不可信号点と同じ扱いで、ゼロ誤差信号を出力し、当該原データシンボルの信号点の位相と誤差ベクトルの位相との位相差の絶対値が90度未満であり、且つ、拡張する角度についての拡張制限値θとして、当該位相差が±θ/2を超える場合はその位相差が±θ/2になるようにクリップし、当該位相差が±θ/2以下であれば、利得拡張後の誤差ベクトルの位相はそのままとする。こうして得られた誤差ベクトルを当該原データシンボルに対応する拡張制限後の誤差信号、すなわち拡張ベクトルとして、加算部25に出力する。
【0112】
加算部25は、拡張領域制限処理部24から入力される振幅及び角度について拡張制限値L,θで制限した誤差値、すなわち拡張ベクトルを対応する原信号点のシンボルに加算することにより、拡張制限した拡張後キャリアシンボルを生成し、拡張信号としてキャリアシンボル選択部26に出力する。
【0113】
キャリアシンボル選択部26は、OFDMフレーム構成部122からデータシンボル、並びにパイロット信号、制御信号、及びLchの各キャリアシンボルを含むOFDMフレームの信号(原信号)と、加算部25から拡張制限したデータシンボル(拡張信号)とを入力し、パイロット信号、制御信号、及びLchの各キャリアシンボルについては原信号のキャリアシンボルをそのまま出力し、データシンボルについては、2D‐ACE法のルールに従って、拡張可能であるか否かを判定し、拡張可能と判定した場合に加算部25からの拡張制限したデータシンボル(拡張信号)で対応する原キャリアシンボルにおけるデータシンボルを置き換えて出力する。また、キャリアシンボル選択部26は、2D‐ACE法のルールに従う拡張が不可と判定した場合には、原データシンボルをそのまま出力する。ただし、拡張領域制限処理部24において、当該データシンボルが拡張可能であるか拡張不可であるかを判定し、拡張不可である場合には、ゼロ誤差信号を生成して、加算部25に出力している。このため、従来技術では想定されていないが、より効率的な変形例として、キャリアシンボル選択部26は、あえて当該データシンボルの拡張可否を判定せず、単にデータシンボルは拡張信号を、パイロット信号、制御信号、及びLchの各キャリアシンボルについては原信号のキャリアシンボルを、選択し出力するという構成にしてもよい。このようにして、2D‐ACE処理部2dは、2D‐ACE法に基づくデータシンボルを含むOFDMフレームを再構成してIFFT部124に出力する。
【0114】
このようなフィルタ特性補正部10(第1のフィルタ特性補正部10‐1、及び第2のフィルタ特性補正部10‐2)による周波数領域の歪補正処理機能を有する2D‐ACE法に基づくACE処理部123を有するOFDM変調器101は、IFFT部124により、ACE処理部123から2D‐ACE処理部2dによるOFDMフレーム再構成後の信号について逆高速フーリエ変換処理を施すことによりOFDM変調を行ってOFDM信号を生成する。
【0115】
(本発明に係る1D‐ACE法、2D‐ACE法のキャリア選択に基づくACE処理部)
次に、
図3を参照して、本発明による一実施例の階層別で1D‐ACE法、2D‐ACE法を適用する場合のACE処理部123について説明する。
図3に示す本実施例のACE処理部123は、ACE前処理部1、1D‐ACE処理部1d、2D‐ACE処理部2d、及びキャリア選択部1Sを有する。そして、ACE前処理部1は
図1及び
図2に示すものと同様に構成され、1D‐ACE処理部1dは
図1及び
図12に示すものと同様に構成され、2D‐ACE処理部2dは
図2及び
図13に示すものと同様に構成されることから更なる説明は省略する。
【0116】
ただし、
図3に示す本実施例のACE処理部123は、階層別で1D‐ACE法、2D‐ACE法を適用するために、キャリア選択部1Sが設けられている。ここで、
図3に示す例では、限定するものではないが、代表的に、A階層のデータシンボルには2D‐NUCの変調方式が適用され、B階層のデータシンボルにはUC又は1D‐NUCの変調方式が適用され、C階層については未使用とする例を示している。
【0117】
キャリア選択部1Sは、1D‐ACE処理部1dから得られるUC又は1D‐NUCの変調方式が適用されるB階層のデータシンボルと、2D‐ACE処理部2dから得られる2D‐NUCの変調方式が適用されるA階層のデータシンボルと、を階層別にキャリア選択してOFDMフレームを再構成し、IFFT部124に出力する。このため、
図3に示す本実施例のACE処理部123における1D‐ACE処理部1d、2D‐ACE処理部2d、及びキャリア選択部1Sは、1D‐ACE法、及び2D‐ACE法に基づく所定の拡張ルール(
図14及び
図15参照)に従って、階層別に生成したACE法に基づく拡張後のデータシンボルを用いて、OFDMフレームを再構成するOFDMフレーム再構成手段として構成される。
【0118】
このように、階層別で1D‐ACE法、2D‐ACE法を適用するように構成したACE処理部123の場合でも、フィルタ特性補正部10(第1のフィルタ特性補正部10‐1、及び第2のフィルタ特性補正部10‐2)による周波数領域の歪補正処理機能を有するものとすることができる。尚、従来技術においては、階層別で1D‐ACE法と2D‐ACE法を併用する場合では、OFDMフレーム構成部122の直後から1D‐ACE法と2D‐ACE法の切り替え回路を設けることが想定されるが、その場合、回路規模が大きくなり、その用途も限定されるものとなる。一方、
図3に示す本実施例のACE処理部123では、1D‐ACE法と2D‐ACE法を併用する際にACE前処理部1については共通利用できるようにして、ACE前処理部1、1D‐ACE処理部1d、及び2D‐ACE処理部2dで機能分離しつつ、最終段でキャリア選択部1Sを設けるようにしたので、種々の用途に応用できる。例えば、
図3に示す本実施例において、A階層、B階層、及びC階層のうち2以上の階層を用いることができ、用いる全ての階層で1D‐ACE法と2D‐ACE法のいずれか一方を任意に指定して伝送途中でも切り替え適用することや、1D‐ACE法及び2D‐ACE法の双方を用いる際に階層別に任意に指定して伝送途中でも切り替え適用する用途にも応用できる。
【0119】
以下、フィルタ特性補正部10(第1のフィルタ特性補正部10‐1、及び第2のフィルタ特性補正部10‐2)について、より具体的に説明する。
【0120】
(フィルタ特性補正部)
まず、補間フィルタ部13、及び前置フィルタ15のフィルタ特性の通過域の歪み(周波数特性の歪み)は、OFDM変調器101が出力するOFDM信号のACE法に基づく拡張ベクトルの部分の歪となって現れる。そこで、
図1乃至
図3に係る本発明による各実施例のACE処理部123であれば、IFFT部11の前段とFFT部17の後段に、フィルタ特性補正部10(第1のフィルタ特性補正部10‐1、及び第2のフィルタ特性補正部10‐2)を追加して、補間フィルタ部13と前置フィルタ15の周波数特性の歪み(理想特性である周波数振幅特性が1、位相特性が直線、群遅延特性が一定の理想特性からのずれ)を補正するように構成される。
【0121】
図4は、本発明による一実施例のOFDM変調器101のACE処理部123におけるフィルタ特性補正部10(第1のフィルタ特性補正部10‐1、及び第2のフィルタ特性補正部10‐2)の概略構成を示す図である。
【0122】
図4に示すフィルタ特性補正部10は、フィルタ特性補正データメモリ151、アドレス発生カウンタ152、及び複素乗算器153を備える。
【0123】
フィルタ特性補正データメモリ151は、当該予め定めたフィルタ特性補正データとして、処理するOFDMフレーム構成後の信号のサブキャリアの数分の複素データメモリを備える。そして、サブキャリア数分の複素データメモリには、第1のフィルタ特性補正部10‐1用には補間フィルタ部13のフィルタ特性(通過域の周波数特性)の誤差の逆数が、第2のフィルタ特性補正部10‐2用には前置フィルタ15のフィルタ特性(通過域の周波数特性)の誤差の逆数が当該予め定めたフィルタ特性補正データを構成する複素データとして格納されている。
【0124】
アドレス発生カウンタ152は、処理するOFDMフレーム構成後の信号の最初のサブキャリアのシンボルデータが入力されるタイミングでリセットするタイミング信号に基づいて、フィルタ特性補正データメモリ151のアドレス信号を発生させるカウンタ回路で構成され、複素乗算器153において処理するOFDMフレーム構成後の信号のキャリアシンボルと、そのキャリアシンボルに該当するフィルタ特性補正データとの間のサブキャリア番号順の同期を取るように作動する。
【0125】
従って、アドレス発生カウンタ152は、キャリアシンボルのデータが複素乗算器153に入力される度に、サブキャリア番号単位のクロックでカウントアップしてフィルタ特性補正データメモリ151のアドレス信号を発生させ、フィルタ特性補正データメモリ151からそのキャリアシンボルに該当するフィルタ特性補正データ(補間フィルタ部13又は前置フィルタ15のフィルタ特性の逆数)を複素乗算器153に出力させる。
【0126】
複素乗算器153は、4つの乗算器1531、減算器1532、及び加算器1533を有し、補正前のキャリアシンボルのデータについて、I,Q形式の信号(I軸成分及びQ軸成分)としてサブキャリア番号順に入力し、フィルタ特性補正データメモリ11から得られるそのキャリアシンボルに該当するフィルタ特性補正データ(補間フィルタ部13又は前置フィルタ15のフィルタ特性の逆数)を、図示するように4つの乗算器1531、減算器1532、及び加算器1533を用いてI軸成分及びQ軸成分の複素乗算を行う処理を施して、補正後のキャリアシンボルのデータを生成し、サブキャリア番号順に出力する。
【0127】
ただし、
図4に示した実施例の変形例として、フィルタ特性補正データメモリ151におけるサブキャリアの数分の複素データメモリには、第1のフィルタ特性補正部10‐1用には補間フィルタ部13のフィルタ特性(通過域の周波数特性)の誤差が、第2のフィルタ特性補正部10‐2用には前置フィルタ15のフィルタ特性(通過域の周波数特性)の誤差が、当該予め定めたフィルタ特性補正データを構成する複素データとして格納されているものとしてもよい。この場合には、複素乗算器153の代わりに複素除算器(図示略)を用いる。
【0128】
従って、第1のフィルタ特性補正部10‐1で用いる当該予め定めたフィルタ特性補正データは、当該周波数領域のキャリアシンボルについて、補間フィルタ部13におけるフィルタ特性の通過域の歪みに起因する周波数特性の誤差に該当する複素係数で除算するものとして構成されているか、又は補間フィルタ部13におけるフィルタ特性の通過域の歪みに起因する周波数特性の誤差の逆数に該当する複素係数を乗算するものとして構成されているものとすることができる。
【0129】
同様に、第2のフィルタ特性補正部10‐2で用いる当該予め定めたフィルタ特性補正データは、当該時間領域でクリップ処理した後に周波数領域に変換したキャリアシンボルについて、前置フィルタ部15におけるフィルタ特性の通過域の歪みに起因する周波数特性の誤差に該当する複素係数で除算するものとして構成されているか、又は前置フィルタ部15におけるフィルタ特性の通過域の歪みに起因する周波数特性の誤差の逆数に該当する複素係数を乗算するものとして構成されているものとすることができる。
【0130】
ここで、上述した本実施例のフィルタ特性補正部10(第1のフィルタ特性補正部10‐1、及び第2のフィルタ特性補正部10‐2)を備えるACE前処理部1は、第1のフィルタ特性補正部10‐1、及び第2のフィルタ特性補正部10‐2の処理対象として、SP、CP、Lch及びTMCCのシンボルと、データシンボルとを含むキャリアシンボルとしている。この変形例として、第2のフィルタ特性補正部10‐2だけは、処理対象として、SP、CP、Lch及びTMCCのシンボルであるか、データシンボルであるかを判断してデータシンボルについてのみACE法の処理対象とする構成とすることもできる。ただし、この場合、回路規模を増やす可能性もある。そこで、本実施例のACE処理部123は、最終段で、ACE法に係る拡張信号と原信号の選択を行うようにしている。
【0131】
以上のように、本発明による
図1乃至
図3に例示する一実施例のOFDM変調器101は、ACE前処理部1において、補間フィルタ部13に起因する周波数特性の歪みについてはIFFT部11の前段の第1のフィルタ特性補正部10‐1で、その補間フィルタ部13のフィルタ特性の通過域の歪みの逆特性を予めキャリアシンボルに加えることで、時間領域波形のクリップ処理を行う前に補正しておく。一方、前置フィルタ部15に起因する周波数特性の歪みについては、FFT部17の後段の第2のフィルタ特性補正部10‐2で、その前置フィルタ部15のフィルタ特性の通過域の歪みの逆特性をキャリアシンボルに加えることで補正する。
【0132】
(フィルタ特性のフィルタ特性補正データ生成装置/生成方法)
次に、
図5を参照して、補間フィルタ部13の周波数特性の歪みを打ち消すためのIFFT部11の前段の第1のフィルタ特性補正部10‐1でキャリアシンボルに加えるフィルタ特性の通過域の歪みの逆特性と、前置フィルタ部15の周波数特性の歪みを補正するためのFFT部17の後段の第2のフィルタ特性補正部10‐2でキャリアシンボルに加えるフィルタ特性の通過域の歪みの逆特性と、を示すフィルタ特性補正データの生成について説明する。ここでは、補間フィルタ部13と前置フィルタ部15に同じ特性のフィルタを用いることを前提としている。
【0133】
図5は、本発明による一実施例のOFDM変調器101におけるフィルタ特性補正部10に係るフィルタ特性補正データを生成するフィルタ特性補正データ生成装置3の概略構成(又はその生成方法)を例示するブロック図である。
図5は、全体として自動で作動する1つの装置を構成した例を示しており、これを説明するが、フィルタ特性補正データ生成装置3の各機能部を独立したデバイスで構成し、組み合わせる操作を伴ってフィルタ特性補正データを生成する生成方法として構成したものでもよい。あるいは、一般に、こうした補間フィルタ処理や前置フィルタ処理はデジタル信号処理で実現されており、これらフィルタの特性は、FIRフィルタであれば、タップ係数で規定される。従って、
図4に示した構成をハードウエアとしての装置ではなく、計算機上のシミュレーションでフィルタ補正データを生成する方法でもよい。
【0134】
図5に示すフィルタ特性補正データ生成装置3は、全キャリアパイロット信号生成部30、IFFT部31、アップサンプリング部32、補間フィルタ部33、前置フィルタ部34、ダウンサンプリング部35、FFT部36、伝送路応答算出部37、及び1/√処理部38を備える。
【0135】
図5に示すフィルタ特性補正データ生成装置3における各構成要素は、
図1乃至
図3に示す「IFFT部11、アップサンプリング部12、補間フィルタ部13、時間領域クリップ処理部14、前置フィルタ部15、ダウンサンプリング部16、FFT部17」の信号処理系統と比較して、そのIFFT11に対応するIFFT部31へ入力する全てのキャリアシンボルが補正データ用パイロットシンボル(振幅と位相が既知で、この場合、振幅が1.0、位相を0度とする)である点、及び時間領域クリップ処理部14が無い点を除くと、同様になっている。
【0136】
より具体的には、全キャリアパイロット信号生成部30は、
図1乃至
図3に示すACE処理部123において処理対象とすることが想定されるOFDM信号のキャリアシンボルについて全て、補正データ用パイロットシンボル(振幅と位相が既知で、この場合、振幅が1.0、位相を0度とする)として生成し、IFFT部31及び伝送路応答算出部37に出力する。
【0137】
IFFT部31は、
図1乃至
図3に示すIFFT部11に対応する機能部であり、全キャリアパイロット信号生成部30から入力した補正データ用パイロットシンボルについて、逆高速フーリエ変換処理を施すことにより時間領域波形に変換する処理を施して、アップサンプリング部32に出力する。
【0138】
アップサンプリング部32は、
図1乃至
図3に示すアップサンプリング部12に対応する機能部であり、IFFT部31から補正データ用パイロットシンボルを時間領域波形に変換した信号を入力し、その時間領域波形の信号のサンプリング周波数について、ゼロ内挿による所定の整数倍(例えば、4倍)に変換するアップサンプリングを施して、補間フィルタ部33に出力する。
【0139】
補間フィルタ部33は、
図1乃至
図3に示す補間フィルタ部13に対応する機能部であり、アップサンプリング部32から入力される当該ゼロ内挿によるアップサンプリング後の信号について、より正確に波形のピークを検出するために内挿補間するフィルタ処理を施して、前置フィルタ部34に出力する。
【0140】
前置フィルタ部34は、
図1乃至
図3に示す前置フィルタ部15に対応する機能部であり、補間フィルタ部33から入力される当該内挿補間したアップサンプリング後の信号について、周波数領域のキャリアシンボルに変換するための前処理として、実動作の前置フィルタ部15の通過帯域特性を作用させるために、フィルタ処理(前置フィルタ処理)を施して、ダウンサンプリング部35に出力する。
【0141】
ダウンサンプリング部35は、
図1乃至
図3に示すダウンサンプリング部16に対応する機能部であり、前置フィルタ部34から前置フィルタ処理後の時間領域波形の信号を入力し、その前置フィルタ処理後の時間領域波形の信号のサンプリング周波数について、当該所定の整数倍の逆数となる逆数倍(本例では、1/4)に変換するダウンサンプリング(間引き処理)を施して、FFT部36に出力する。
【0142】
FFT部36は、
図1乃至
図3に示すFFT部17に対応する機能部であり、ダウンサンプリング部35から入力される当該ダウンサンプリング後の時間領域波形の信号について、高速フーリエ変換処理を施すことにより周波数領域に変換することで、変換後の補正データ用パイロットシンボルを生成し、伝送路応答算出部37に出力する。
【0143】
伝送路応答算出部37は、伝送路応答算出処理として、FFT部36から得られる当該変換後の補正データ用パイロットシンボルを、全キャリアパイロット信号生成部30から得られる元の補正データ用パイロットシンボルで複素除算する処理を施すことにより、補間フィルタ部33(
図1乃至
図3に示す補間フィルタ部13に対応する。)と、前置フィルタ部34(
図1乃至
図3に示す前置フィルタ部15に対応する。)において生じるフィルタ特性の誤差値(通過域の歪みを示す。)をサブキャリア単位で算出し、1/√処理部38に出力する。
【0144】
1/√処理部38は、ルート処理として、伝送路応答算出部37からフィルタ特性の誤差値を入力し、ここでは補間フィルタ部13と前置フィルタ部15に同じ特性のフィルタを用いることを前提としているので当該フィルタ特性の誤差値に対しその平方根を計算(振幅は√計算、位相は1/2とする)し、この平方根の計算結果の逆数を計算(振幅は逆数、位相は符号反転)することにより、フィルタ特性補正データを生成する。ここで、補間フィルタ部13と前置フィルタ部15とは、必ずしも同じフィルタ特性とする必要はないが、同じにしておくとフィルタ特性の通過域の歪みの逆特性を算出する上で好都合であり、OFDM信号のようにスペクトルが平坦な信号では、補間フィルタ部13と前置フィルタ部15で同じフィルタ特性とすることは、自然なことと思われる。
【0145】
つまり、1/√処理部38は、補間フィルタ部13の周波数特性の歪みを打ち消すためのIFFT部11の前段の第1のフィルタ特性補正部10‐1でキャリアシンボルに加えるフィルタ特性の通過域の歪みの逆特性と、前置フィルタ部15の周波数特性の歪みを補正するためのFFT部17の後段の第2のフィルタ特性補正部10‐2でキャリアシンボルに加えるフィルタ特性の通過域の歪みの逆特性と、を示すフィルタ特性補正データを生成する。生成したフィルタ特性補正データは、
図4に示すフィルタ特性補正データメモリ151に格納される。
【0146】
(シミュレーション結果)
本発明の効果を確認するために計算機シミュレーションを実施した。表1に本発明に係るACE法に関する計算機シミュレーションの諸元を示す。
【0147】
【0148】
計算機シミュレーションでは、モンテカルロ法に基づいてランダムなビット列を発生させ、そのビットデータでデータシンボルをUC256QAMの変調を行った後にOFDMフレーム化し、得られた信号に対して1D‐ACE法の処理を適用、処理後の信号の相補累積分布関数(CCDF:Complementary Cumulative Distribution Function)を計算して、PAPR値を求めた。
【0149】
図6は、本発明による一実施例のOFDM変調器101について、変調方式がUC256QAMのときに、本発明に係るフィルタ特性補正部10におけるフィルタ特性の補正処理の有無による比較として、拡張利得対PAPR特性の違いを示す図である。つまり、
図6には、拡張利得に対するPAPR(ここでは、CCDFが10
-6点になる横軸の値としている)の値を、本発明に係るフィルタ特性補正部10による補正処理を行った場合と、その補正処理を行わなかった場合の2通りについて比較して示している。一般に、拡張利得を大きくしていくと、PAPRの値は下がっていき、特定の拡張利得で最小値になる。その後、さらに拡張利得を大きくして行くと、今度は逆にPAPRの値は上がっていく。
【0150】
図6から分かるように、PAPRの値の最小値は、本発明に係るフィルタ特性補正部10による補正処理を行った場合、その補正処理を行わなかった場合より小さくなり、本発明の効果が容易に確認できる。一方、PAPRの値の最小値が得られる拡張利得は、本発明に係るフィルタ特性補正部10による補正処理を行わなかった場合に比べて、その補正処理を行った場合は、より大きくなっている。これは、時間領域波形のクリップ処理で生じ、拡大することでPAPRの低減に寄与するコンスタレーション上の信号点の位置のずれとは異なり、補間フィルタ部13と前置ファイルタ部15の周波数特性の歪みによって生じて、PAPRの低減をむしろ妨害するコンスタレーション上の信号点の位置のずれが、拡張利得で増大してしまうためである。
【0151】
また、
図7は、本発明による一実施例のOFDM変調器101について、変調方式がUC256QAMのときに、本発明に係るフィルタ特性補正部10におけるフィルタ特性の補正処理の有無による比較として、PAPR最小点でのCCDF特性を示す図である。つまり、
図7には、本発明に係るフィルタ特性補正部10におけるフィルタ特性の補正処理を行った場合と、その補正処理を行わなかった場合の、PAPRの値が最小となる拡張利得におけるCCDF特性を示している。併せて、
図8は、本発明による一実施例のOFDM変調器101について、変調方式がUC256QAMのときに、本発明に係るフィルタ特性補正部10により、補間フィルタ部13と前置ファイルタ部15の周波数特性の歪みを補正した場合のACE処理後のコンスタレーション(図中、SP,CPは含んでいるが、TMCC,Lchのシンボルは含んでいない。)を示す図である。また、
図9は、本発明による一実施例のOFDM変調器101について、変調方式がUC256QAMのときに、本発明に係るフィルタ特性補正部10による補間フィルタ部13と前置ファイルタ部15の周波数特性の歪みを補正しなかった場合のACE処理後のコンスタレーション(図中、SP,CPは含んでいるが、TMCC,Lchのシンボルは含んでいない。)を示す図である。
【0152】
図7、並びに
図8及び
図9から理解されるように、本発明に係るフィルタ特性補正部10におけるフィルタ特性の補正処理を行った場合の
図8と、その補正処理を行わなかった場合の
図9を比べてみると、
図9に示す補正処理を行わなかった場合では拡張利得G=18として、
図8に示す補正処理を行なった場合の拡張利得G=38より小さいにも関わらず、コンスタレーションの広がりが大きく、補間フィルタ部13と前置フィルタ部15の周波数特性の歪みの影響を強く受けていることが分かる。
【0153】
このように、本発明に係るフィルタ特性補正部10におけるフィルタ特性の補正処理は、ACE法による本来のPAPR低減効果を実現するとともに、補間フィルタと前置フィルタの周波数特性の歪みの許容値を下げることに寄与し、補間フィルタ部13と前置フィルタ部15の回路規模の削減を可能にすることができる。
【0154】
上述の実施例については代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換することができることは当業者に明らかである。例えば、ACE処理部123において、上述した各実施例に対し種々の変形した構成が可能であり、利得拡張対象とするのはデータシンボルのみであるから、1D‐ACE法及び2D‐ACE法のそれぞれの拡張ルールに従う限り、OFDMフレーム構成後の信号における少なくともデータキャリアを構成する周波数領域のキャリアシンボルについて利得拡張の対象とする構成であればよい。
【0155】
更に、上述の実施例については、従来技術に合わせて、OFDMフレーム構成後の信号におけるデータキャリアのみを拡張対象とする例を説明したが、本発明ではさらに応用して、OFDMフレーム構成後の信号におけるTMCCキャリアシンボル及び/又はLchキャリアシンボルを拡張対象としてもよい。即ち、本発明に係るACE法を適用するOFDM変調器101は、OFDMフレーム構成後の信号における周波数領域のキャリアシンボルについて、ACE法に基づく誤差値を生成するACE前処理部1と、ACE法の拡張ルールに従ってキャリアシンボルに含まれる拡張対象とする予め定めた拡張対象キャリアシンボルとして所定の信号点位置のデータシンボル、TMCCキャリアシンボル及びLchキャリアシンボルのうちいずれか1種以上について拡張可能として判定した場合に、その誤差値を基に生成したACE法に基づく拡張後の拡張対象キャリアシンボルを用いて、OFDMフレームを再構成するOFDMフレーム再構成手段(1d又は2d、或いは1d,2d,1S)と、当該OFDMフレームを再構成した後の信号に対して逆高速フーリエ変換処理を施すことにより、時間領域波形に変換するOFDM変調を行ってOFDM信号を生成するOFDM信号生成部(124)と、を備える構成とすることができる。この応用構成した本発明に係るACE法を適用するOFDM変調器101は、データシンボルのみ、TMCCキャリアシンボルのみ、Lchキャリアシンボルのみを拡張対象とするだけでなく、これらのうち複数種を拡張対象とすることができ、即ちデータシンボル、TMCCキャリアシンボル及びLchキャリアシンボルのうち1種以上を拡張対象とする拡張対象キャリアシンボルとして処理する構成とすることができる。
【0156】
従って、本発明は、上述の実施例によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明によれば、ACE法に係るフィルタ特性の誤差の影響を低減させることができ、PAPR低減性能を向上させることができるので、ACE法を適用するOFDM変調器の用途に有用である。
【符号の説明】
【0158】
1 本発明に係るACE前処理部
1d 1D‐ACE処理部
2d 2D‐ACE処理部
1S 本発明に係るキャリア選択部
1p 従来技術のACE前処理部
3 フィルタ特性補正データ生成装置
10 フィルタ特性補正部
10‐1 第1のフィルタ特性補正部
10‐2 第2のフィルタ特性補正部
11 IFFT部
12 アップサンプリング部
13 補間フィルタ部
14 時間領域クリップ処理部
15 前置フィルタ部
16 ダウンサンプリング部
17 FFT部
18 減算部
19 利得拡張部
20 加算部
21 IQ独立拡張制限部
22 IQ独立信号選択部
23 利得拡張部
24 拡張領域制限処理部
25 加算部
26 キャリアシンボル選択部
30 全キャリアパイロット信号生成部
31 IFFT部
32 アップサンプリング部
33 補間フィルタ部
34 前置フィルタ部
35 ダウンサンプリング部
36 FFT部
37 伝送路応答算出部
38 1/√処理部
100 送信装置
101 OFDM変調器
102 周波数変換器
103 ローカル発振器
104 電力増幅器
105 送信フィルタ
111 入力部
112A,112B,112C 誤り訂正符号化部
113A,113B,113C ビットインターリーブ部
114A,114B,114C マッピング部
115 階層合成部
116 時間・周波数インターリーブ部
117 誤り訂正符号化部
118 Lch信号生成部
119 TMCC情報ビット生成部
120 パイロット信号生成部
121 TMCC信号生成部
122 OFDMフレーム構成部
123 ACE処理部
124 IFFT部
125 GI付加部
126 直交変調部
151 フィルタ特性補正データメモリ
152 アドレス発生カウンタ
153 複素乗算器
124 IFFT部
1531 乗算器
1532 減算器
1533 加算器
Tx 送信アンテナ