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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074652
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】エステル化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/14 20060101AFI20240524BHJP
   C07C 69/708 20060101ALI20240524BHJP
   C08G 65/32 20060101ALI20240524BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240524BHJP
【FI】
C07C67/14
C07C69/708 A
C08G65/32
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185954
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉田 大地
(72)【発明者】
【氏名】青山 元志
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
4J005
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC48
4H006BA02
4H006BA37
4H006KA14
4H039CA66
4J005AA21
4J005BA00
4J005BD04
(57)【要約】
【課題】収率良くエステル化合物を製造するエステル化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】フッ化ナトリウムの存在下で、水酸基を有する化合物とカルボン酸ハロゲン化物とを反応させて、エステル化合物を得る工程を含み、フッ化ナトリウムの使用量は、水酸基を有する化合物の使用量に対して、0.5~25当量である、エステル化合物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化ナトリウムの存在下で、水酸基を有する化合物とカルボン酸ハロゲン化物とを反応させて、エステル化合物を得る工程を含み、
前記フッ化ナトリウムの使用量は、前記水酸基を有する化合物の使用量に対して、0.5~25当量である、エステル化合物の製造方法。
【請求項2】
前記フッ化ナトリウムの平均一次粒子径が1μm以上である、請求項1に記載のエステル化合物の製造方法。
【請求項3】
前記水酸基を有する化合物は、下記式(1)又は式(2)で表される化合物である、請求項1又は請求項2に記載のエステル化合物の製造方法。
CHOH …(1)
HO-R-OH …(2)
式(1)中、
及びRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、エーテル性酸素原子を有する1価の炭化水素基、又はエーテル性酸素原子を有する1価のハロゲン化炭化水素基であり、
式(2)中、
は、2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、エーテル性酸素原子を有する2価の炭化水素基、又はエーテル性酸素原子を有する2価のハロゲン化炭化水素基である。
【請求項4】
前記カルボン酸ハロゲン化物は、下記式(3)で表される化合物である、請求項1又は請求項2に記載のエステル化合物の製造方法。
COX …(3)
式(3)中、
は、炭素数1~20のフルオロアルキル基、又は、エーテル性酸素原子を有する炭素数2~2,000のフルオロアルキル基であり、
Xは、ハロゲン原子である。
【請求項5】
前記水酸基を有する化合物は、前記式(1)で表され、Rは、エーテル性酸素原子を有する1価のハロゲン化炭化水素基であり、Rは、水素原子である、請求項3に記載のエステル化合物の製造方法。
【請求項6】
前記水酸基を有する化合物はフッ素化可能な原子を有する、請求項1又は請求項2に記載のエステル化合物の製造方法。
【請求項7】
前記カルボン酸ハロゲン化物は、前記式(3)で表され、Rは、炭素数1~20のペルフルオロアルキル基、又は、エーテル性酸素原子を有する炭素数2~2,000のペルフルオロアルキル基である、請求項4に記載のエステル化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エステル化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素エステル化合物には産業上有用な化合物が多く存在し、従来から様々な製造方法が開発されてきた。また、含フッ素エステル化合物を得るための原料として、エステル化合物が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、RCHOHとRCOXとを反応させて、RCHOCORを得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2002/026679号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、さらなる収率の向上が求められる場合がある。
【0006】
本発明の一実施形態における課題は、収率良くエステル化合物を製造するエステル化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示には、以下の態様が含まれる。
<1>
フッ化ナトリウムの存在下で、水酸基を有する化合物とカルボン酸ハロゲン化物とを反応させて、エステル化合物を得る工程を含み、
フッ化ナトリウムの使用量は、水酸基を有する化合物の使用量に対して、0.5~25当量である、エステル化合物の製造方法。
<2>
フッ化ナトリウムの平均一次粒子径が1μm以上である、<1>に記載のエステル化合物の製造方法。
<3>
水酸基を有する化合物は、下記式(1)又は式(2)で表される化合物である、<1>又は<2>に記載のエステル化合物の製造方法。
CHOH …(1)
HO-R-OH …(2)
式(1)中、
及びRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、エーテル性酸素原子を有する1価の炭化水素基、又はエーテル性酸素原子を有する1価のハロゲン化炭化水素基であり、
式(2)中、
は、2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、エーテル性酸素原子を有する2価の炭化水素基、又はエーテル性酸素原子を有する2価のハロゲン化炭化水素基である。
<4>
カルボン酸ハロゲン化物は、下記式(3)で表される化合物である、<1>~<3>のいずれか1つに記載のエステル化合物の製造方法。
COX …(3)
式(3)中、
は、炭素数1~20のフルオロアルキル基、又は、エーテル性酸素原子を有する炭素数2~2,000のフルオロアルキル基であり、
Xは、ハロゲン原子である。
<5>
水酸基を有する化合物は、下記式(1)で表される化合物である、<1>~<4>のいずれか1つに記載のエステル化合物の製造方法。
CHOH …(1)
式(1)中、
は、エーテル性酸素原子を有する1価のハロゲン化炭化水素基であり、Rは、水素原子である。
<6>
水酸基を有する化合物はフッ素化可能な原子を有する、<1>~<5>のいずれか1項に記載のエステル化合物の製造方法。
<7>
カルボン酸ハロゲン化物は、式(3)で表される化合物である、<1>~<6>のいずれか1つに記載のエステル化合物の製造方法。
COX …(3)
式(3)中、
は、炭素数1~20のペルフルオロアルキル基、又は、エーテル性酸素原子を有する炭素数2~2,000のペルフルオロアルキル基であり、
Xは、ハロゲン原子である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、収率良くエステル化合物を製造するエステル化合物の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において、「ハロゲン化炭化水素基」とは、ハロゲン原子により、炭化水素基中に存在する水素原子の1個以上が置換された基を意味する。ハロゲン化炭化水素基は、部分ハロゲン化炭化水素基であってもよく、ペルハロゲン化炭化水素基であってもよい。
本開示において、「ハロゲン化」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子により、基中に存在する水素原子の1個以上が置換されたことを意味する。基中には、水素原子が存在していてもよく、存在しなくてもよい。
本開示において、「部分ハロゲン化」とは、基中にハロゲン原子に置換されない水素原子が存在することを意味する。「ペルハロゲン化」とは、基中に水素原子が存在しないことを意味する。
本開示において、「フルオロアルキル基」とは、フッ素原子により、アルキル基中に存在する水素原子の1個以上が置換された基を意味する。フルオロアルキル基は、部分フルオロアルキル基であってもよく、ペルフルオロアルキル基であってもよい。
本開示において、「部分フルオロアルキル基」とは、アルキル基中に存在する水素原子の一部がフッ素原子に置換された基を意味する。
本開示において、「ペルフルオロアルキル基」とは、アルキル基中に存在する水素原子の全部がフッ素原子に置換された基を意味する。
本開示において、式(1)で表される化合物を化合物1と記す。他の式で表される化合物、基等もこれに準ずる。
【0010】
[エステル化合物の製造方法]
本開示のエステル化合物の製造方法は、フッ化ナトリウムの存在下で、水酸基を有する化合物とカルボン酸ハロゲン化物とを反応させて、エステル化合物を得る工程を含み、フッ化ナトリウムの使用量は、水酸基を有する化合物の使用量に対して、0.5~25当量である。
【0011】
従来、エステル化合物の製造方法では、フッ化ナトリウムの使用量には着目されていなかった。
【0012】
<フッ化ナトリウム>
本開示のエステル化合物の製造方法に用いられるフッ化ナトリウムは、粒子の形態で用いられることが好ましい。粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、紡錘状、角柱状、円柱状、平板状、及び不定形状が挙げられる。粘度の上昇を抑制し、収率を向上させる観点から、平均一次粒子径が1μm以上であることが好ましい。
【0013】
フッ化ナトリウムの平均一次粒子径の上限値は、収率を向上させる観点から、150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましく、10μm以下であることが特に好ましい。
【0014】
本開示において、フッ化ナトリウムの平均一次粒子径は以下の方法で測定される。
フッ化ナトリウムの粉末を、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて5,000倍で観察し、任意の10個の粒子を選択する。選択した粒子の直径を測定し、平均値を算出して、平均一次粒子径とする。
【0015】
フッ化ナトリウムは、市販品であってもよく、市販品を粉砕処理等によって加工したものであってもよい。
【0016】
本開示のエステル化合物の製造方法において、フッ化ナトリウムの使用量は、水酸基を有する化合物の使用量に対して、0.5~25当量であり、1~15当量であることが好ましく、1~10当量がより好ましい。フッ化ナトリウムの使用量が0.5当量以上であると、収率を向上させる効果が高い。一方、フッ化ナトリウムの使用量が25当量以下であると、精製処理におけるフッ化ナトリウムの除去が簡便である。
【0017】
<水酸基を有する化合物>
本開示のエステル化合物の製造方法に用いられる水酸基を有する化合物は、水酸基(-OH)を有していればよく、特に限定されない。水酸基を有する化合物に含まれる水酸基の数は1つのみであってもよく、2つ以上であってもよい。
【0018】
本開示のエステル化合物の製造方法によって得られるエステル化合物は、フッ素化に用いられることが好ましい。すなわち、エステル化合物は、フッ素化可能な原子を有することが好ましい。
【0019】
フッ素化に用いられるエステル化合物を製造する観点から、水酸基を有する化合物及びカルボン酸ハロゲン化物のうち少なくとも一方は、フッ素化可能な原子を有することが好ましい。フッ素化可能な原子としては、例えば、水素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。中でも、フッ素化可能な原子は、水素原子が好ましい。
【0020】
水酸基を有する化合物は、フッ素化可能な原子を1つのみ有してもよく、2つ以上有してもよい。エステル化合物の1分子中に含まれるフッ素化可能な原子の数としては、例えば、1~1,000が挙げられ、1~500が好ましく、1~100がより好ましい。
【0021】
水酸基を有する化合物は、下記式(1)又は式(2)で表される化合物であることが好ましい。
CHOH …(1)
HO-R-OH …(2)
式(1)中、
及びRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、エーテル性酸素原子を有する1価の炭化水素基、又はエーテル性酸素原子を有する1価のハロゲン化炭化水素基である。
式(2)中、
は、2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、エーテル性酸素原子を有する2価の炭化水素基、又はエーテル性酸素原子を有する2価のハロゲン化炭化水素基である。
【0022】
本開示において、「ハロゲン化」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子により、基中に存在する水素原子の1個以上が置換されたことを意味する。基中には、水素原子が存在していてもよく、存在しなくてもよい。
【0023】
本開示において、「部分ハロゲン化」とは、基中にハロゲン原子に置換されない水素原子が存在することを意味する。「ペルハロゲン化」とは、基中に水素原子が存在しないことを意味する。
【0024】
本開示において、「ハロゲン化炭化水素基」とは、ハロゲン原子により、炭化水素基中に存在する水素原子の1個以上が置換された基を意味する。ハロゲン化炭化水素基は、部分ハロゲン化炭化水素基であってもよく、ペルハロゲン化炭化水素基であってもよい。
【0025】
〔R、R〕〕
及びRで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましい。
【0026】
及びRで表される1価の炭化水素基は、1価の飽和炭化水素基であってもよく、1価の不飽和炭化水素基であってもよいが、1価の飽和炭化水素基であることが好ましい。1価の飽和炭化水素基は、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、及びシクロアルキル基のいずれであってもよい。直鎖状アルキル基及び分岐鎖状アルキル基には、脂環構造が含まれていてもよい。1価の飽和炭化水素基の炭素数は1~500が好ましく、1~100がより好ましく、1~50がさらに好ましく、1~10が特に好ましい。1価の飽和炭化水素基は、反応性に優れる観点から、直鎖状アルキル基がより好ましい。すなわち、1価の飽和炭化水素基としては、炭素数1~500の直鎖状アルキル基が好ましく、炭素数1~100の直鎖状アルキル基がより好ましく、炭素数1~50の直鎖状アルキル基がさらに好ましく、炭素数1~10の直鎖状アルキル基が特に好ましい。
【0027】
1価の飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0028】
及びRで表される1価のハロゲン化炭化水素基としては、ハロゲノアルキル基が好ましい。1価のハロゲン化炭化水素基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましい。
【0029】
及びRで表されるエーテル性酸素原子を有する1価の炭化水素基としては、エーテル性酸素原子を有するアルキル基が好ましい。エーテル性酸素原子を有する1価の炭化水素基の炭素数は1~500が好ましく、1~100がより好ましい。エーテル性酸素原子を有する1価の炭化水素基としては、エーテル性酸素原子を有する直鎖状アルキル基がより好ましい。すなわち、エーテル性酸素原子を有する1価の炭化水素基としては、炭素数1~500のエーテル性酸素原子を有する直鎖状アルキル基が好ましく、炭素数1~100のエーテル性酸素原子を有する直鎖状アルキル基がより好ましい。
【0030】
及びRで表されるエーテル性酸素原子を有する1価のハロゲン化炭化水素基としては、エーテル性酸素原子を含むハロゲン化アルキル基が好ましい。エーテル性酸素原子を有する1価のハロゲン化炭化水素基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましい。
【0031】
反応性に優れるため、R及びRのうち一方は、水素原子であることが好ましく、例えば、Rは、水素原子、ハロゲン原子、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、エーテル性酸素原子を有する1価の炭化水素基、又はエーテル性酸素原子を有する1価のハロゲン化炭化水素基であり、Rは水素原子であることが好ましい。
【0032】
また、Rは、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、エーテル性酸素原子を有する1価の炭化水素基、又はエーテル性酸素原子を有する1価のハロゲン化炭化水素基であり、Rは水素原子であることがより好ましい。
【0033】
また、Rは、エーテル性酸素原子を有する1価のハロゲン化炭化水素基であり、Rは、水素原子であることがさらに好ましい。
【0034】
通常、Rがエーテル性酸素原子を有しない場合には、エーテル性酸素原子を有する場合よりも反応が進行しにくい傾向にあるが、本開示の含フッ素エステル化合物の製造方法では、フッ素ナトリウムを0.5~25当量用いることにより、反応が促進され、収率の向上効果が高い。
【0035】
また、Rがハロゲン原子(特に、フッ素原子)を有する場合には、ハロゲン原子を有しない場合よりも反応が進行しにくい傾向にあるが、本開示の含フッ素エステル化合物の製造方法では、フッ素ナトリウムを0.5~25当量用いることにより、反応が促進され、収率の向上効果が高い。
【0036】
さらに、水酸基を有する化合物の分子量が1,000以上である場合には、分子量が1,000未満である場合よりも反応が進行しにくい傾向にあるが、本開示の含フッ素エステル化合物の製造方法では、フッ素ナトリウムを0.5~25当量用いることにより、反応が促進され、収率の向上効果が高い。
【0037】
また、Rがエーテル性酸素原子を有する1価の炭化水素基、又はエーテル性酸素原子を有する1価のハロゲン化炭化水素基である場合、Rは、下記式(X1)で表されることが好ましい。
11O-(R12O)m1-R13- …(X1)
【0038】
式(X1)中、R11は、フッ素原子を有していてもよいアルキル基であり、R12はそれぞれ独立に、炭素数1~6のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、R13は、炭素数1~6のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、m1は0~500の整数である。
【0039】
式(X1)中、R11としては、例えば、アルキル基及びフルオロアルキル基が挙げられる。
【0040】
11の炭素数は、溶媒への溶解性に優れる観点から、1~1,000が好ましく、1~500がより好ましく、1~100がさらに好ましく、1~50が特に好ましく、1~10が最も好ましい。
【0041】
11で表されるアルキル基は、直鎖状アルキル基であってもよく、分岐鎖状アルキル基であってもよく、環構造を有するアルキル基であってもよい。
【0042】
11で表されるフルオロアルキル基は、直鎖状フルオロアルキル基であってもよく、分岐鎖状フルオロアルキル基であってもよく、環構造を有するフルオロアルキル基であってもよい。
【0043】
中でも、R11は、アルキル基であることが好ましく、直鎖状アルキル基であることがより好ましく、炭素数1~6の直鎖状アルキル基であることがさらに好ましい。
【0044】
式(X1)中、m1は1~500の整数が好ましく、1~300の整数がより好ましく、5~200の整数がさらに好ましく、10~150の整数が特に好ましい。
【0045】
式(X1)中、-(R12O)m1-は、下記式(X2)で表されることが好ましい。
-[(Rf1O)k1(Rf2O)k2(Rf3O)k3(Rf4O)k4(Rf5O)k5(Rf6O)k6]- …(X2)
ただし、
f1は、炭素数1のフルオロアルキレン基であり、
f2は、炭素数2のフルオロアルキレン基であり、
f3は、炭素数3のフルオロアルキレン基であり、
f4は、炭素数4のフルオロアルキレン基であり、
f5は、炭素数5のフルオロアルキレン基であり、
f6は、炭素数6のフルオロアルキレン基である。
k1、k2、k3、k4、k5、及びk6は、それぞれ独立に0又は1以上の整数を表し、k1+k2+k3+k4+k5+k6は0~500の整数である。
【0046】
溶媒への溶解性に優れる観点から、k1+k2+k3+k4+k5+k6は、1~500の整数が好ましく、1~300の整数がより好ましく、5~200の整数がさらに好ましく、10~150の整数が特に好ましい。
【0047】
なお、式(X2)における(Rf1O)~(Rf6O)の結合順序は任意である。式(X2)のk1~k6は、それぞれ、(Rf1O)~(Rf6O)の個数を表すものであり、配置を表すものではない。例えば、(Rf5O)k5は、(Rf5O)の数がk5個であることを表し、(Rf5O)k5のブロック配置構造を表すものではない。同様に、(Rf1O)~(Rf6O)の記載順は、それぞれの単位の結合順序を表すものではない。
【0048】
f3~Rf6において、フルオロアルキレン基は、直鎖状フルオロアルキレン基であってもよく、分岐鎖状フルオロアルキレン基であってもよく、環構造を有するフルオロアルキレン基であってもよい。
【0049】
f1の具体例としては、-CF-及び-CHF-が挙げられる。
【0050】
f2の具体例としては、-CFCF-、-CFCHF-、-CHFCF-、-CHFCHF-、-CHCF-、及び-CHCHF-が挙げられる。
【0051】
f3の具体例としては、-CFCFCF-、-CFCHFCF-、-CFCHCF-、-CHFCFCF-、-CHFCHFCF-、-CHFCHFCHF-、-CHFCHCF-、-CHCFCF-、-CHCHFCF-、-CHCHCF-、-CHCFCHF-、-CHCHFCHF-、-CHCHCHF-、-CF(CF)-CF-、-CF(CHF)-CF-、-CF(CHF)-CF-、-CF(CH)-CF-、-CF(CF)-CHF-、-CF(CHF)-CHF-、-CF(CHF)-CHF-、-CF(CH)-CHF-、-CF(CF)-CH-、-CF(CHF)-CH-、-CF(CHF)-CH-、-CF(CH)-CH-、-CH(CF)-CF-、-CH
(CHF)-CF-、-CH(CHF)-CF-、-CH(CH)-CF-、-CH(CF)-CHF-、-CH(CHF)-CHF-、-CH(CHF)-CHF-、-CH(CH)-CHF-、-CH(CF)-CH-、-CH(CHF)-CH-、及び-CH(CHF)-CH-が挙げられる。
【0052】
f4の具体例としては、-CFCFCFCF-、-CFCFCFCHF-、-CFCFCFCH-、-CFCHFCFCF-、-CHFCHFCFCF-、-CHCHFCFCF-、-CFCHCFCF-、-CHFCHCFCF-、-CHCHCFCF-、-CHFCFCHFCF-、-CHCFCHFCF-、-CFCHFCHFCF-、-CHFCHFCHFCF-、-CHCHFCHFCF-、-CFCHCHFCF-、-CHFCHCHFCF-、-CHCHCHFCF-、-CFCHCHCF-、-CHFCHCHCF-、-CHCHCHCF-、-CHFCHCHCHF-、-CHCHCHCHF-、及び-cycloC-が挙げられる。
【0053】
f5の具体例としては、-CFCFCFCFCF-、-CHFCFCFCFCF-、-CHCHFCFCFCF-、-CFCHFCFCFCF-、-CHFCHFCFCFCF-、-CFCHCFCFCF-、-CHFCHCFCFCF-、-CHCHCFCFCF-、-CFCFCHFCFCF-、-CHFCFCHFCFCF-、-CHCFCHFCFCF-、-CHCFCFCFCH-、及び-cycloC-が挙げられる。
【0054】
f6の具体例としては、-CFCFCFCFCFCF-、-CFCFCHFCHFCFCF-、-CHFCFCFCFCFCF-、-CHFCHFCHFCHFCHFCHF-、-CHFCFCFCFCFCH-、-CHCFCFCFCFCH-、及び-cycloC10-が挙げられる。
ここで、-cycloC-は、ペルフルオロシクロブタンジイル基を意味し、その具体例としては、ペルフルオロシクロブタン-1,2-ジイル基が挙げられる。-cycloC-は、ペルフルオロシクロペンタンジイル基を意味し、その具体例としては、ペルフルオロシクロペンタン-1,3-ジイル基が挙げられる。-cycloC10-は、ペルフルオロシクロヘキサンジイル基を意味し、その具体例としては、ペルフルオロシクロヘキサン-1,4-ジイル基が挙げられる。
【0055】
中でも、-(R12O)m1-は、下記式(F1)~(F3)で表される構造からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、式(F2)で表される構造を含むことがより好ましい。
-(Rf1O)k1-(Rf2O)k2- …(F1)
-(Rf2O)k2-(Rf4O)k4- …(F2)
-(Rf3O)k3- …(F3)
ただし、式(F1)~式(F3)の各符号は、上記式(X2)と同様である。
【0056】
式(F1)及び式(F2)において、(Rf1O)と(Rf2O)、(Rf2O)と(Rf4O)の結合順序は各々任意である。例えば(Rf1O)と(Rf2O)が交互に配置されてもよく、(Rf1O)と(Rf2O)が各々ブロックに配置されてもよく、またランダムであってもよい。式(F2)においても同様である。
式(F1)において、k1は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。またk2は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
式(F2)において、k2は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。またk4は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
式(F3)において、k3は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
【0057】
式(X1)中、R13としては、上記Rf1~Rf6と同様のものが挙げられる。
中でも、R13は、炭素数1~6のフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0058】
式(1)で表される化合物の具体例として、例えば、以下の構造が挙げられる。構造式中、aは1~500が好ましく、例えば、7である。bは1~30が好ましく、例えば、13である。
【0059】
【化1】
【0060】
〔R
で表される2価の炭化水素基は、2価の飽和炭化水素基であってもよく、2価の不飽和炭化水素基であってもよいが、2価の飽和炭化水素基であることが好ましい。2価の飽和炭化水素基は、直鎖状アルキレン基、分岐鎖状アルキレン基、及びシクロアルキレン基のいずれであってもよい。直鎖状アルキレン基及び分岐鎖状アルキレン基には、脂環構造が含まれていてもよい。2価の飽和炭化水素基の炭素数は1~500が好ましく、1~100がより好ましく、1~50がさらに好ましく、1~10が特に好ましい。2価の飽和炭化水素基は、反応性に優れる観点から、直鎖状アルキレン基がより好ましい。すなわち、2価の飽和炭化水素基としては、炭素数1~500の直鎖状アルキレン基が好ましく、炭素数1~100の直鎖状アルキレン基がより好ましく、炭素数1~50の直鎖状アルキレン基がさらに好ましく、炭素数1~10の直鎖状アルキレン基が特に好ましい。
【0061】
で表される2価のハロゲン化炭化水素基としては、ハロゲン化アルキレン基が好ましい。2価のハロゲン化炭化水素基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましい。
【0062】
で表されるエーテル性酸素原子を有する2価の炭化水素基としては、エーテル性酸素原子を有するアルキレン基が好ましい。エーテル性酸素原子を有する2価の炭化水素基の炭素数は1~500が好ましく、1~100がより好ましい。エーテル性酸素原子を有する2価の炭化水素基としては、エーテル性酸素原子を有する直鎖状アルキレン基がより好ましい。すなわち、エーテル性酸素原子を有する1価の炭化水素基としては、炭素数1~500のエーテル性酸素原子を有する直鎖状アルキレン基が好ましく、炭素数1~100のエーテル性酸素原子を有する直鎖状アルキレン基がより好ましい。
【0063】
で表されるエーテル性酸素原子を有する2価のハロゲン化炭化水素基としては、エーテル性酸素原子を含むハロゲン化アルキレン基が好ましい。エーテル性酸素原子を有する2価のハロゲン化炭化水素基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましい。
【0064】
また、Rがエーテル性酸素原子を有する2価の炭化水素基、又はエーテル性酸素原子を有する2価のハロゲン化炭化水素基である場合、Rは、下記式(C1)で表されることが好ましい。
-(R31O)m3-R32- …(C1)
【0065】
式(C1)中、R31及びR32はそれぞれ独立に、フッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、m3は1~500の整数である。
【0066】
式(C1)中、-(R31O)m3-は、上記式(X2)で表されることが好ましい。
【0067】
式(C1)中、m3は1~300の整数が好ましく、5~200の整数がより好ましく、10~150の整数がさらに好ましい。
【0068】
式(C1)中、R32としては、上記R13と同様のものが挙げられる。
【0069】
式(2)で表される化合物の具体例として、例えば、以下の構造が挙げられる。構造式中、cは1~500が好ましく、例えば、7である。dは1~30が好ましく、例えば、13である。
【0070】
【化2】

【0071】
<カルボン酸ハロゲン化物>
カルボン酸ハロゲン化物は、カルボン酸のカルボキシ基がハロゲン化された化合物であれば特に限定されない。カルボキシ基のハロゲン化に基づくハロゲン原子は、反応性の観点から、フッ素原子又は塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0072】
また、溶媒への溶解性に優れる観点から、カルボン酸ハロゲン化物は、ハロゲン化されたカルボキシ基以外の基が、フッ素原子を含むことが好ましい。
【0073】
具体的に、カルボン酸ハロゲン化物は、下記式(3)で表される化合物であることが好ましい。
COX …(3)
【0074】
式(3)中、Rは、炭素数1~20のフルオロアルキル基、又は、エーテル性酸素原子を有する炭素数2~2,000のフルオロアルキル基であり、Xは、ハロゲン原子である。
【0075】
〔R
式(3)中、Rで表されるフルオロアルキル基は、直鎖状フルオロアルキル基であってもよく、分岐鎖状フルオロアルキル基であってもよく、環構造を有するフルオロアルキル基であってもよい。
【0076】
で表されるフルオロアルキル基は、ペルフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0077】
で表されるフルオロアルキル基の炭素数は、1~500が好ましく、1~250がより好ましく、1~100がさらに好ましく、1~50が特に好ましく、1~10が最も好ましい。
【0078】
で表される、エーテル性酸素原子を有するフルオロアルキル基は、下記式(D1)で表されることが好ましい。
41O-(R42O)m4-R43- …(D1)
【0079】
式(D1)中、R41は、フッ素原子を有していてもよいアルキル基であり、R42はそれぞれ独立に、炭素数1~6のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、R43は、炭素数1~6のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、m4は0~500の整数であり、R41、R42、及びR43のうち少なくとも1つは、少なくとも1つのフッ素原子を有する。
【0080】
式(D1)中、R41としては、例えば、アルキル基及びフルオロアルキル基が挙げられる。
【0081】
41の炭素数は、溶媒への溶解性に優れる観点から、1~500が好ましく、1~100がより好ましく、1~50がさらに好ましく、1~10が特に好ましい。
【0082】
41で表されるアルキル基は、直鎖状アルキル基であってもよく、分岐鎖状アルキル基であってもよく、環構造を有するアルキル基であってもよい。
【0083】
41で表されるフルオロアルキル基は、直鎖状フルオロアルキル基であってもよく、分岐鎖状フルオロアルキル基であってもよく、環構造を有するフルオロアルキル基であってもよい。
【0084】
中でも、R41は、フルオロアルキル基であることが好ましく、ペルフルオロアルキル基であることがより好ましく、直鎖状ペルフルオロアルキル基であることがさらに好ましく、炭素数1~6の直鎖状ペルフルオロアルキル基であることが特に好ましい。
【0085】
式(D1)中、-(R42O)m4-は、上記式(X2)で表されることが好ましい。
【0086】
式(D1)中、m4は0~300の整数が好ましく、0~200の整数がより好ましく、0~150の整数がさらに好ましい。
【0087】
式(D1)中、R43としては、上記R13と同様のものが挙げられる。
【0088】
中でも、R43は、炭素数1~3のフルオロアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~3のペルフルオロアルキレン基であることがより好ましい。
【0089】
式(3)中、Rは、エステル化合物をフッ素化する際に、溶媒への溶解性に優れる観点から、炭素数1~20のペルフルオロアルキル基、又は、エーテル性酸素原子を有する炭素数2~2,000のペルフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0090】
の具体例として、例えば、以下の構造が挙げられる。*は、-COXとの結合部位を表す。
【0091】
【化3】
【0092】
〔X〕
式(3)中、Xはフッ素原子又は塩素原子であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。
【0093】
本開示のエステル化合物の製造方法において、カルボン酸ハロゲン化物の使用量は、水酸基を有する化合物の使用量に対して、0.5~25当量が好ましく、0.5~20当量がより好ましく、0.5~10当量がさらに好ましく、1~10が特に好ましく、3~8が最も好ましい。
【0094】
本開示のエステル化合物の製造方法では、反応溶媒として有機溶媒を用いてもよい。
有機溶媒としては、フッ素系有機溶媒及び非フッ素系有機溶媒が挙げられる。
【0095】
フッ素系有機溶媒としては、例えば、フッ素化アルカン、フッ素化芳香族化合物、フルオロアルキルエーテル、及びフッ素化アルキルアミンが挙げられる。
【0096】
フッ素化アルカンは、炭素数4~8の化合物が好ましく、例えば、C13H(製品名「AC-2000」、AGC社製)、C13(製品名「AC-6000」、AGC社製)、及びCCHFCHFCF(製品名「バートレル」、デュポン社製)が挙げられる。
フッ素化芳香族化合物としては、例えば、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ペルフルオロトルエン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンが挙げられる。
フルオロアルキルエーテルは、炭素数4~12の化合物が好ましく、例えば、CFCHOCFCFH(製品名「AE-3000」、AGC社製)、COCH(製品名「ノベック-7100」、3M社製)、COC(製品名「ノベック-7200」、3M社製)、及びCCF(OCH)C(製品名「ノベック-7300」、3M社製)が挙げられる。
フッ素化アルキルアミンとしては、例えば、ペルフルオロトリプロピルアミン及びペルフルオロトリブチルアミンが挙げられる。
【0097】
非フッ素系有機溶媒としては、例えば、炭化水素系有機溶媒、ケトン系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、及びエステル系有機溶媒が挙げられる。
【0098】
炭化水素系有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、へプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、及びキシレンが挙げられる。
ケトン系有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノンが挙げられる。
エーテル系有機溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフランが挙げられる。
エステル系有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル及び酢酸ブチルが挙げられる。
【0099】
また、有機溶媒としては、ハロゲン系有機溶媒、含窒素化合物、及び含硫黄化合物が挙げられる。
【0100】
ハロゲン系有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、及びジクロロエタンが挙げられる。
含窒素化合物としては、例えば、ニトロベンゼン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、及びジメチルホルムアミドが挙げられる。
含硫黄化合物としては、例えば、二硫化炭素及びジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0101】
本開示のエステル化合物の製造方法において、反応時間は特に限定されないが、0.5~100時間が好ましく、0.5~50時間がより好ましい。また、反応温度は特に限定されないが、0~200℃が好ましく、0~100℃がより好ましい。
【実施例0102】
以下、本開示を実施例によりさらに具体的に説明するが、本開示はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0103】
以下、19F-NMRの定量には、内部標準試料としてペルフルオロベンゼンを用いた。また、テトラメチルシランを「TMS」と記載し、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサン(製品名「アサヒクリンAC-2000」、AGC社製)を「AC-2000」と記載した。
NMRデータは、みかけの化学シフト範囲として示した。
フッ化ナトリウムの平均一次粒子径は、SEM画像を5,000倍に拡大し、粒子を任意に10個選択して、測定した粒子径の平均値とした。
【0104】
[例1]
国際公開第2013/121984号の例6-1に記載の方法を用い、下記化合物A1を得た。
【0105】
【化4】
【0106】
フラスコに50.1gの化合物A1、1.34gのフッ化ナトリウム(製品名「鹿特級37174-00」、関東化学社製、平均一次粒子径5μm、化合物A1に対して2.5当量)を入れた。さらに、AC-2000を25.0g、CFCFCFOCF(CF)COF(製品名「QC-2788」、富士フイルム和光純薬社製、以下、「(HFPO)」とも記す。)を21.1g追加し、混合した。混合した後、フラスコを密閉し、50℃で10時間撹拌した。10時間後に放冷し、濾過によってフッ化ナトリウムを取り除いた。その後、(HFPO)及びAC-2000を減圧留去した。
シリカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒:AC-2000)で高極性の不純物を除去し、エステル化合物B1を53.9g得た(収率99.9%)。
【0107】
H-NMR及び19F-NMRの分析により、エステル化合物B1は、以下の構造であることを確認した。
【0108】
【化5】
【0109】
H-NMR(300.4MHz,Chloroform-d,基準TMS) δ(ppm):3.7(3H)、4.7(32H)、5.2(2H)、6.7~6.9(8H)
19F-NMR(282.7MHz,Chloroform-d,基準CFCl) δ(ppm):-79.0(1F)、-81.1(3F)、-81.9(3F)、-83.7~-85.0(28F)、-86.0(1F)、-89.0~-92.0(28F)、-119.8(2F)、-120.2(26F)、-126.6(28F)、-129.3(2F)、-131.5(1F)、-145.0(14F)
【0110】
[例2]
フッ化ナトリウムの使用量を化合物A1に対して5当量に変更し、50℃での撹拌時間を5時間に変更したこと以外は、例1と同様の方法で反応及び精製を行い、エステル化合物B1を53.9g得た(収率99.9%)。
【0111】
[例3]
フッ化ナトリウムの種類を、フッ化ナトリウム(製品名「000-71535」、キシダ化学社製、平均一次粒子径100μm)に変更し、50℃での撹拌時間を20時間に変更したこと以外は、例2と同様の方法で反応及び精製を行い、エステル化合物B1を17.3g得た(収率32.1%)。
【0112】
[例C1]
フッ化ナトリウムを用いなかったこと以外は、例3と同様の方法で反応及び精製を行い、エステル化合物B1を9.12g得た(収率16.9%)。
【0113】
[例4]
化合物A1を化合物A2(1,5-ペンタンジオール)に変更し、50℃での撹拌時間を1時間に変更したこと以外は、例2と同様の方法で反応及び精製を行い、エステル化合物B2を349.7g得た(収率99.9%)。
【0114】
H-NMR及び19F-NMRの分析により、エステル化合物B2は、以下の構造であることを確認した。
【0115】
CFCFCFOCF(CF)COO(CHOCOCF(CF)OCFCFCF …(B2)
【0116】
H-NMR(300.4MHz,Chloroform-d,基準TMS) δ(ppm):1.6(4H)、1.9(2H)、4.1(4H)
19F-NMR(282.7MHz,Chloroform-d,基準CFCl) δ(ppm):-81.7(6F)、-82.0(6F)、-85.6(4F)、-130.0(4F)、-131.8(2F)
【0117】
[例5]
フッ化ナトリウムの種類を、フッ化ナトリウム(製品名「000-71535」、キシダ化学社製、平均一次粒子径100μm)に変更し、50℃での撹拌時間を2.5時間に変更したこと以外は、例4と同様の方法で反応及び精製を行い、エステル化合物B2を339.9g得た(収率97.1%)。
【0118】
[例C2]
フッ化ナトリウムを用いず、さらに、(HFPO)の使用量を2.1当量に変更したこと以外は、例5と同様の方法で反応及び精製を行い、エステル化合物B1を332.5g得た(収率95.0%)。
【0119】
[例6]
化合物A1を化合物A3(1,6-ヘキサンジオール)に変更し、50℃での撹拌時間を1時間に変更したこと以外は、例2と同様の方法で反応及び精製を行い、エステル化合物B3を356.4g得た(収率99.9%)。
【0120】
H-NMR及び19F-NMRの分析により、エステル化合物B3は、以下の構造であることを確認した。
【0121】
CFCFCFOCF(CF)COO(CHOCOCF(CF)OCFCFCF …(B3)
【0122】
H-NMR(300.4MHz,Chloroform-d,基準TMS) δ(ppm):1.3(4H)、1.6(4H)、4.1(4H)
19F-NMR(282.7MHz,Chloroform-d,基準CFCl) δ(ppm):-81.7(6F)、-82.0(6F)、-85.6(4F)、-130.0(4F)、-131.8(2F)
【0123】
[例7]
フッ化ナトリウムの種類を、フッ化ナトリウム(製品名「000-71535」、キシダ化学社製、平均一次粒子径100μm)に変更し、50℃での撹拌時間を2.5時間に変更したこと以外は、例6と同様の方法で反応及び精製を行い、エステル化合物B3を345.7g得た(収率96.9%)。
【0124】
[例C3]
フッ化ナトリウムを用いず、さらに、(HFPO)の使用量を2.1当量に変更したこと以外は、例7と同様の方法で反応及び精製を行い、エステル化合物B3を342.5g得た(収率96.0%)。
【0125】
[例8]
化合物A1を化合物A4(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)に変更し、50℃での撹拌時間を1時間に変更したこと以外は、例2と同様の方法で反応及び精製を行い、エステル化合物B4を166.3g得た(収率99.9%)。
【0126】
H-NMR及び19F-NMRの分析により、エステル化合物B4は、以下の構造であることを確認した。
【0127】
CHCHOCHCHOCHCHOCOCF(CF)OCFCFCF …(B4)
【0128】
H-NMR(300.4MHz,Chloroform-d,基準TMS) δ(ppm):1.3(3H)、3.5(2H)、3.6(4H)、3.7(2H)、4.9(2H)
19F-NMR(282.7MHz,Chloroform-d,基準CFCl) δ(ppm):-81.7(3F)、-82.0(3F)、-85.6(2F)、-130.0(2F)、-131.8(1F)
【0129】
[例9]
フッ化ナトリウムの種類を、フッ化ナトリウム(製品名「000-71535」、キシダ化学社製、平均一次粒子径100μm)に変更し、50℃での撹拌時間を2.5時間に変更したこと以外は、例8と同様の方法で反応及び精製を行い、エステル化合物B4を165.9g得た(収率99.7%)。
【0130】
[例C4]
フッ化ナトリウムを用いず、さらに、(HFPO)の使用量を1.2当量に変更し、50℃での撹拌時間を3時間に変更したこと以外は、例8と同様の方法で反応及び精製を行い、エステル化合物B4を165.7g得た(収率99.6%)。
[例10]
化合物A1を化合物A5(CHO(CO)H、製品名「ユニオックスM-400」、日油社製)に変更したこと以外は、例2と同様の方法で反応及び精製を行い、エステル化合物B5を95.8g得た(収率99.9%)。
【0131】
H-NMR及び19F-NMRの分析により、エステル化合物B5は、以下の構造であることを確認した。
【0132】
CHO(CO)-COCF(CF)OCFCFCF …(B5)
【0133】
H-NMR(300.4MHz,Chloroform-d,基準TMS) δ(ppm):3.4(3H)、3.5(2H)、3.7(24H)、4.9(2H)
19F-NMR(282.7MHz,Chloroform-d,基準CFCl) δ(ppm):-81.7(3F)、-82.0(3F)、-85.6(2F)、-130.0(2F)、-131.8(1F)
【0134】
[例11]
フッ化ナトリウムの種類を、フッ化ナトリウム(製品名「000-71535」、キシダ化学社製、平均一次粒子径100μm)に変更し、50℃での撹拌時間を10時間に変更したこと以外は、例10と同様の方法で反応及び精製を行い、エステル化合物B5を92.1g得た(収率96.1%)。
【0135】
[例C5]
フッ化ナトリウム使用量を0.4当量に変更し、さらに、(HFPO)の使用量を1.3当量に変更し、50℃での撹拌時間を20時間に変更したこと以外は、例11と同様の方法で反応及び精製を行い、エステル化合物B5を89.3g得た(収率93.2%)。
【0136】
[例12]
化合物A1を化合物A6(n-プロパノール)に変更し、50℃での撹拌時間を0.5時間に変更したこと以外は、例2と同様の方法で反応及び精製を行い、エステル化合物B6を309.7g得た(収率99.9%)。
【0137】
H-NMR及び19F-NMRの分析により、エステル化合物B6は、以下の構造であることを確認した。
【0138】
CHCHCHOCOCF(CF)OCFCFCF …(B6)
【0139】
H-NMR(300.4MHz,Chloroform-d,基準TMS) δ(ppm):0.9(3H)、1.8(2H)、4.1(2H)
19F-NMR(282.7MHz,Chloroform-d,基準CFCl) δ(ppm):-81.7(3F)、-82.0(3F)、-85.6(2F)、-130.0(2F)、-131.8(1F)
【0140】
[例13]
フッ化ナトリウムの種類を、フッ化ナトリウム(製品名「000-71535」、キシダ化学社製、平均一次粒子径100μm)に変更し、50℃での撹拌時間を1.5時間に変更したこと以外は、例12と同様の方法で反応及び精製を行い、エステル化合物B6を309.1g得た(収率99.7%)。
【0141】
[例C6]
フッ化ナトリウムを用いず、さらに、(HFPO)の使用量を1.0当量に変更し、50℃での撹拌時間を2時間に変更したこと以外は、例12と同様の方法で反応及び精製を行い、エステル化合物B6を308.5g得た(収率99.5%)。
【0142】
[例14]
カルボン酸ハロゲン化物の種類を(CFCFC(=O)Fに変更し、50℃での撹拌時間を2.5時間に変更したこと以外は、例4と同様の方法で反応及び精製を行い、(CFCFCOO(CHOCOCF(CFを233.4g得た(収率97.3%)。
【0143】
[例15]
カルボン酸ハロゲン化物の種類を(CFCFC(=O)Fに変更し、50℃での撹拌時間を2.5時間に変更したこと以外は、例6と同様の方法で反応及び精製を行い、(CFCFCOO(CHOCOCF(CFを210.7g得た(収率97.1%)。
【0144】
[例16]
カルボン酸ハロゲン化物の種類をCFCFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COF(以下、「(HFPO)」と記す)に変更し、50℃での撹拌時間を2.5時間に変更したこと以外は、例8と同様の方法で反応及び精製を行い、CHCHO(CHO(CHOCOCF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCFを210.7g得た(収率99.8%)。
【0145】
[例17]
カルボン酸ハロゲン化物の種類を(HFPO)に変更し、50℃での撹拌時間を2.5時間に変更したこと以外は、例10と同様の方法で反応及び精製を行い、CHO(CO)-OCOCF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCFを116.5g得た(収率96.5%)。
【0146】
表1~7に、エステル化合物の収率を記載した。表中、「カルボン酸ハロゲン化物の使用量」は、水酸基を有する化合物の使用量に対するカルボン酸ハロゲン化物の使用量を意味する。「NaF使用量」は、水酸基を有する化合物の使用量に対するNaFの使用量を意味する。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
【表3】
【0150】
【表4】
【0151】
【表5】
【0152】
【表6】
【0153】
【表7】
【0154】
表1に示すように、例1~17では、フッ化ナトリウムの存在下で、水酸基を有する化合物とカルボン酸ハロゲン化物とを反応させて、エステル化合物を得る工程を含み、フッ化ナトリウムの使用量は、水酸基を有する化合物の使用量に対して、0.5~25当量であるため、収率良くエステル化合物が得られることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本開示のエステル化合物の製造方法は、従来と比較して収率良くエステル化合物を製造できる。得られたエステル化合物は、フッ素化することにより、含フッ素エステル化合物とすることができる。含フッ素エステル化合物は、種々の官能基(例えば、水酸基、エチレン性不飽和基、エポキシ基、カルボキシ基等)を有する含フッ素化合物に誘導できる。また、得られた含フッ素エステル化合物及び含フッ素化合物は、表面処理剤、乳化剤、ゴム、界面活性剤、溶媒、熱媒体、医薬品、農薬、潤滑油、これらの中間体等に利用可能である。