(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074667
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】含フッ素化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/287 20060101AFI20240524BHJP
C07C 69/708 20060101ALI20240524BHJP
C07B 39/00 20060101ALN20240524BHJP
【FI】
C07C67/287
C07C69/708 A
C07B39/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185981
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 貴史
(72)【発明者】
【氏名】上牟田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】青山 元志
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC30
4H006BC15
4H006BE53
4H006BM10
4H006BM71
4H006KA30
(57)【要約】
【課題】液体中におけるフッ素ガスによる直接フッ素化において高いフッ素化率が得られる含フッ素化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】フッ素化可能な原子を少なくとも1つ有する有機化合物を含有する液体に、フッ素ガスを含有する気体を導入し、平均径が1~2,000μmである前記気体の気泡を前記液体中に存在させることで、前記有機化合物をフッ素化することを含む、含フッ素化合物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化可能な原子を少なくとも1つ有する有機化合物を含有する液体に、フッ素ガスを含有する気体を導入し、平均径が1~2,000μmである前記気体の気泡を前記液体中に存在させることで、前記有機化合物をフッ素化することを含む、含フッ素化合物の製造方法。
【請求項2】
前記有機化合物は、酸素原子及び硫黄原子の少なくとも一方を含有する2価以上の官能基を有する、請求項1に記載の含フッ素化合物の製造方法。
【請求項3】
前記有機化合物は、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、及びスルホニル基からなる群より選択される少なくとも1つを有する、請求項1に記載の含フッ素化合物の製造方法。
【請求項4】
前記液体の粘度は、0.30~100mPa・sである、請求項1~3のいずれか1項に記載の含フッ素化合物の製造方法。
【請求項5】
フッ素化可能な原子を少なくとも1つ有する有機化合物を含有する液体に、平均孔径が1~500μmである多孔質フィルタを介して、フッ素ガスを含有する気体を導入し、前記気体の気泡を前記液体中に存在させることで、前記有機化合物をフッ素化することを含む、含フッ素化合物の製造方法。
【請求項6】
前記気泡の平均径が1~2,000μmである、請求項5に記載の含フッ素化合物の製造方法。
【請求項7】
前記有機化合物は、酸素原子及び硫黄原子の少なくとも一方を含有する2価以上の官能基を有する、請求項5又は請求項6に記載の含フッ素化合物の製造方法。
【請求項8】
前記有機化合物は、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、及びスルホニル基からなる群より選択される少なくとも1つを有する、請求項5又は請求項6に記載の含フッ素化合物の製造方法。
【請求項9】
前記液体の粘度は、0.30~100mPa・sである、請求項5又は請求項6に記載の含フッ素化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、含フッ素化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素化可能な原子を少なくとも1つ有する有機化合物をフッ素化する方法として、液体中においてフッ素ガスによる直接フッ素化を行う方法が知られている(例えば特許文献1)。液体中におけるフッ素ガスによる直接フッ素化では、例えば、前記有機化合物を含有する液体に、フッ素ガスを含有する気体を吹き込んでバブリングを行う。それにより、液体中において前記有機化合物とフッ素ガスとを反応させ、前記有機化合物が有するフッ素化可能な原子をフッ素原子に置き換える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、液体中におけるフッ素ガスによる直接フッ素化では、フッ素化可能な原子がフッ素原子に置き換わる割合であるフッ素化率が、低くなることがある。そこで、高いフッ素化率が得られるフッ素化方法が求められている。
【0005】
本発明の一実施形態における課題は、液体中におけるフッ素ガスによる直接フッ素化において高いフッ素化率が得られる含フッ素化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示には、以下の態様が含まれる。
<1>
フッ素化可能な原子を少なくとも1つ有する有機化合物を含有する液体に、フッ素ガスを含有する気体を導入し、平均径が1~2,000μmである前記気体の気泡を前記液体中に存在させることで、前記有機化合物をフッ素化することを含む、含フッ素化合物の製造方法。
<2>
前記有機化合物は、酸素原子及び硫黄原子の少なくとも一方を含有する2価以上の官能基を有する、<1>に記載の含フッ素化合物の製造方法。
<3>
前記有機化合物は、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、及びスルホニル基からなる群より選択される少なくとも1つを有する、<1>に記載の含フッ素化合物の製造方法。
<4>
前記液体の粘度は、0.30~100mPa・sである、<1>~<3>のいずれか1つに記載の含フッ素化合物の製造方法。
<5>
フッ素化可能な原子を少なくとも1つ有する有機化合物を含有する液体に、平均孔径が1~500μmである多孔質フィルタを介して、フッ素ガスを含有する気体を導入し、前記気体の気泡を前記液体中に存在させることで、前記有機化合物をフッ素化することを含む、含フッ素化合物の製造方法。
<6>
前記気泡の平均径が1~2,000μmである、<5>に記載の含フッ素化合物の製造方法。
<7>
前記有機化合物は、酸素原子及び硫黄原子の少なくとも一方を含有する2価以上の官能基を有する、<5>又は<6>に記載の含フッ素化合物の製造方法。
<8>
前記有機化合物は、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、及びスルホニル基からなる群より選択される少なくとも1つを有する、<5>又は<6>に記載の含フッ素化合物の製造方法。
<9>
前記液体の粘度は、0.30~100mPa・sである、<5>~<8>のいずれか1つに記載の含フッ素化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、液体中におけるフッ素ガスによる直接フッ素化において高いフッ素化率が得られる含フッ素化合物の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において、式(1)で表される化合物を化合物1と記す。他の式で表される化合物、基等もこれに準ずる。
以下、本開示の一例として、第一実施形態及び第二実施形態について説明する。
【0009】
[含フッ素化合物の製造方法]
<第一実施形態>
第一実施形態の含フッ素化合物の製造方法は、フッ素化可能な原子を少なくとも1つ有する有機化合物を含有する液体に、フッ素ガスを含有する気体を導入し、平均径が1~2,000μmである前記気体の気泡を前記液体中に存在させることで、前記有機化合物をフッ素化することを含む。
以下、フッ素化可能な原子を少なくとも1つ有する有機化合物を「原料化合物」ともいう。
【0010】
第一実施形態の含フッ素化合物の製造方法では、液体中におけるフッ素ガスによる直接フッ素化において、液体中に存在させる気泡の平均径を上記範囲とすることにより、上記範囲よりも小さい場合及び大きい場合の両方に比べ、高いフッ素化率が得られる。
具体的には、気泡の平均径が上記範囲の上限値以下であると、液体と気泡との接触面積が大きく、気泡中のフッ素ガスが液体に溶け込みやすくなることで、フッ素化率が高くなると推測される。
また、気泡の平均径が上記範囲の下限値以上であると、気泡同士が合一して消滅しやすく、気泡中のフッ素ガスが液体に溶け込みやすくなることで、フッ素化率が高くなると推測される。
【0011】
ここで、気泡の平均径は、液体中の気泡を高速度カメラにより撮影して画像解析を行い、画像中の気泡像を無作為に10点抽出し、各気泡像の直径を個数平均することで求める。
第一実施形態において、気泡の平均径は、1~2,000μmであり、高いフッ素化率を得る観点から、1~1,500μmが好ましく、1~1,000μmがより好ましい。
【0012】
第一実施形態において、気泡の平均径を上記範囲に制御する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、気体と液体との接触部に多孔質フィルタを設置し、多孔質フィルタを介して気体を液体に導入する方法が挙げられる。
気体を液体に導入する方法として一般的に用いられている方法のうち、例えば口径が4.8mmの管から気体を直接液体に吹き込んでバブリングする方法においては、形成される気泡の平均径が5,000~10,000μmの範囲となる。これに対して、多孔質フィルタを介して気体を液体に導入すると、多孔質フィルタを介さない場合に比べて平均径の小さな気泡が形成される。そして、多孔質フィルタの平均孔径を調整することで、形成される気泡の平均径を上記範囲に制御できる。
【0013】
設置する多孔質フィルタの平均孔径は、気泡の平均径を上記範囲に制御しやすくする観点から、1~500μmが好ましく、1~300μmがより好ましく、1~100μmがさらに好ましい。
多孔質フィルタの平均孔径は、例えば、バブルポイント法による分析装置(例えば、Porometer社製「POROLUX1000」)で測定・解析して求めることができる。
【0014】
第一実施形態において、気泡の平均径を制御する方法は、多孔質フィルタを用いる方法に限定されず、例えば、エジェクタを用い、気体の流速を調整する方法でもよく、スタティックミキサ、プレミキサ等を用いる方法でもよい。
【0015】
<第二実施形態>
第二実施形態の含フッ素化合物の製造方法は、フッ素化可能な原子を少なくとも1つ有する有機化合物を含有する液体に、平均孔径が1~500μmである多孔質フィルタを介して、フッ素ガスを含有する気体を導入し、前記気体の気泡を前記液体中に存在させることで、前記有機化合物をフッ素化することを含む。
【0016】
第二実施形態の含フッ素化合物の製造方法では、液体中におけるフッ素ガスによる直接フッ素化において、平均孔径が1~500μmである多孔質フィルタを介して気体を液体に導入することにより、高いフッ素化率が得られる。
前述のように、平均孔径が前記範囲の多孔質フィルタを介して気体を液体に導入することで、多孔質フィルタを介さない場合に比べて平均径の小さな気泡が形成される。そのため、液体と気泡との接触面積が大きく、気泡中のフッ素ガスが液体に溶け込みやすくなることで、フッ素化率が高くなると推測される。
【0017】
第二実施形態において、多孔質フィルタの平均孔径は、1~500μmであり、高いフッ素化率を得る観点から、1~300μmが好ましく、1~100μmがより好ましい。
第二実施形態において、気泡の平均径は、高いフッ素化率を得る観点から、1~2,000μmが好ましく、1~1,500μmがより好ましく、1~1,000μmがさらに好ましい。
【0018】
以下、第一実施形態及び第二実施形態の両方に該当する形態を本実施形態と称して説明する。ただし、本開示の含フッ素化合物の製造方法はこれに限定されるものではなく、第一実施形態及び第二実施形態の少なくとも一方に該当すればよい。
【0019】
<気体>
液体に導入する気体は、少なくともフッ素ガスを含有していればよい。気体は、フッ素ガスからなるものでもよく、フッ素ガス以外のガスを含有するものでもよい。
フッ素ガス以外のガスとしては、例えば不活性ガスが挙げられる。不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス等が挙げられ、窒素ガス又はヘリウムガスが好ましく、コストを低く抑える観点から窒素ガスが好ましい。
【0020】
気体全体に対するフッ素ガスの含有率は、高いフッ素化率を得る観点から、10体積%以上が好ましく、15体積%以上がより好ましく、20体積%以上がさらに好ましい。また、気体全体に対するフッ素ガスの含有率は、安全性に優れる観点から、60体積%以下が好ましく、50体積%以下がより好ましく、40体積%以下がさらに好ましい。
【0021】
前述のように、多孔質フィルタを用いて気泡の平均径を制御する場合、用いる多孔質フィルタの材質は特に限定されるものではない。
多孔質フィルタとしては、焼結金属フィルタ、樹脂製の多孔質フィルタ、セラミック製の多孔質フィルタ等が挙げられる。樹脂製の多孔質フィルタとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の多孔質フィルタ、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)製の多孔質フィルタ等が挙げられる。
【0022】
<液体>
気体が導入される液体は、少なくとも、フッ素化可能な原子を少なくとも1つ有する有機化合物である原料化合物を含有し、必要に応じて溶媒、その他添加剤等をさらに含有してもよい。
【0023】
(原料化合物)
原料化合物は、フッ素化可能な原子を少なくとも1つ有する有機化合物であればよく、特に限定されるものではない。
フッ素化可能な原子としては、水素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
原料化合物は、フッ素化可能な原子を1つのみ有してもよく、2つ以上有してもよい。原料化合物の1分子中に含まれるフッ素化可能な原子の数としては、例えば1~1,000が挙げられ、1~500が好ましく、1~100がより好ましい。
【0024】
原料化合物は、酸素原子及び硫黄原子の少なくとも一方を含有する2価以上の官能基を有する化合物が好ましい。以下、酸素原子及び硫黄原子の少なくとも一方を含有する2価以上の官能基を「特定官能基」ともいう。
原料化合物が有するフッ素化可能な原子のうち、特定官能基に結合する炭素原子に結合する原子は、フッ素化されにくいことがある。特に原料化合物が、エステル結合を有し、かつ、エステル結合の酸素原子に結合する炭素原子にフッ素化可能な原子が結合している場合、前記フッ素化可能な原子がよりフッ素化されにくい。一方、本実施形態では、原料化合物として、特定官能基を有し、特定官能基に結合する炭素原子にフッ素化可能な原子が結合した化合物を用いても、液体中におけるフッ素ガスによる直接フッ素化において高いフッ素化率が得られる。
【0025】
特定官能基は、酸素原子及び硫黄原子の少なくとも一方を含有する2価以上の官能基であり、酸素原子及び硫黄原子の少なくとも一方を含有する2価の官能基が好ましく、酸素原子を含有する2価の官能基がより好ましい。
特定官能基としては、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、スルホニル基等が挙げられる。また、特定官能基としては、エステル結合及びアミド結合以外のカルボニル基、イミド結合等も挙げられる。
原料化合物は、特定官能基として、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、及びスルホニル基からなる群より選択される少なくとも1つを有する化合物が好ましく、エステル結合及びエーテル結合の少なくとも1つを有する化合物がより好ましく、エステル結合を有する化合物がさらに好ましく、エステル結合及びエーテル結合の両方を有する化合物が特に好ましい。
【0026】
原料化合物は、特定官能基としてエステル結合を有し、かつ、エステル結合の酸素原子に結合する炭素原子にフッ素化可能な原子が結合した化合物でもよい。また、原料化合物は、特定官能基としてエステル結合及びエーテル結合を有し、かつ、エステル結合の酸素原子に結合する炭素原子にフッ素化可能な原子が結合した化合物でもよい。
【0027】
原料化合物の数平均分子量は、特に限定されるものではなく、例えば100~100,000が挙げられ、後述する溶媒への溶解性に優れる観点から、100~20,000が好ましく、300~10,000がより好ましく、400~6,000がさらに好ましい。
上記原料化合物の数平均分子量は、1H-NMR及び19F-NMRによって特定された分子構造から算出される各分子の分子量の数平均値である。
【0028】
原料化合物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物等が挙げられる。
RA1-O-(C=O)-RB1 …(1)
RB2-(C=O)-O-RA2-O-(C=O)-RB3 …(2)
【0029】
式(1)及び(2)中、
RA1、RB1、RB2、及びRB3はそれぞれ独立に、1価飽和炭化水素基、ハロゲノ1価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基であり、
RA2は、2価飽和炭化水素基、ハロゲノ2価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素)基である。
【0030】
本開示において、「1価飽和炭化水素基」は、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、及びシクロアルキル基のいずれであってもよい。「2価飽和炭化水素基」は、直鎖状アルキレン基、分岐鎖状アルキレン基、及びシクロアルキレン基のいずれであってもよい。直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、直鎖状アルキレン基、及び分岐鎖状アルキレン基には、脂環構造が含まれていてもよい。
【0031】
本開示において、「ハロゲノ」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子により、基中に存在する水素原子の1個以上が置換されたことを意味する。基中には、水素原子が存在していてもよく、存在しなくてもよい。
【0032】
本開示において、「ハロゲノ1価飽和炭化水素基」とは、ハロゲン原子により、1価飽和炭化水素基中に存在する水素原子の1個以上が置換された基を意味する。「ハロゲノ2価飽和炭化水素基」とは、ハロゲン原子により、2価飽和炭化水素基中に存在する水素原子の1個以上が置換された基を意味する。
【0033】
本開示において、「ヘテロ原子」とは、炭素原子及び水素原子以外の原子を意味し、例えば、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子が挙げられる。
【0034】
本開示において、「ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基」とは、1価飽和炭化水素基中に、2価のヘテロ原子、又はヘテロ原子を含む2価の基が含まれている基を意味する。「ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素基」とは、2価飽和炭化水素基中に、2価のヘテロ原子、又はヘテロ原子を含む2価の基が含まれている基を意味する。2価のヘテロ原子としては、例えば、-O-及び-S-が挙げられる。また、ヘテロ原子を含む2価の基としては、例えば、-NH-、-C(=O)-、及び-SO2-が挙げられる。
【0035】
本開示において、「ハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基」とは、上記ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基中の水素原子の1個以上がハロゲン原子に置換された基を意味する。「ハロゲノ(ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素)基」とは、上記ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素基中の水素原子の1個以上がハロゲン原子に置換された基を意味する。
【0036】
式(1)において、RA1及びRB1の少なくとも一方が水素原子を含むことが好ましい。また、式(2)において、RA2、RB2、及びRB3からなる群より選択される少なくとも一つが水素原子を含むことが好ましい。
【0037】
〔RA1〕
式(1)中、RA1は、1価飽和炭化水素基、ハロゲノ1価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基である。
【0038】
RA1で表される1価飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0039】
RA1で表されるハロゲノ1価飽和炭化水素基としては、ハロゲノアルキル基が好ましい。ハロゲノ1価飽和炭化水素基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0040】
RA1で表されるヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基は、エーテル性酸素原子(すなわち、-O-)を含む1価飽和炭化水素基が好ましく、エーテル性酸素原子を含むアルキル基がより好ましい。
【0041】
RA1で表されるハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基としては、ハロゲノ(ヘテロ原子含有アルキル基)が好ましい。ハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましい。ハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基は、エーテル性酸素原子を含むハロゲノ1価飽和炭化水素基が好ましく、エーテル性酸素原子を含むハロゲノアルキル基がより好ましい。
【0042】
RA1の炭素数は、後述する溶媒への溶解性に優れる点から、1~200が好ましく、3~100がより好ましい。
【0043】
中でも、液体中への溶解性に優れる観点から、RA1は、下記式(A1)で表されることが好ましい。つまり、RA1は、エーテル結合をさらに有することが好ましく、ポリエーテル鎖及びフルオロポリエーテル鎖からなる群より選択される少なくとも一つを含むことがより好ましい。
R11O-(R12O)m1-R13- …(A1)
【0044】
式(A1)中、R11は、フッ素原子を有していてもよいアルキル基であり、R12はそれぞれ独立に、炭素数1~6のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、R13は、炭素数1~6のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、m1は0~500の整数である。
【0045】
式(A1)中、R11としては、例えば、アルキル基及びフルオロアルキル基が挙げられる。
【0046】
R11の炭素数は、後述する溶媒への溶解性に優れる点から、1~100が好ましく、1~50がより好ましく、1~10がさらに好ましく、1~6が特に好ましい。
【0047】
R11で表されるアルキル基は、直鎖状アルキル基であってもよく、分岐鎖状アルキル基であってもよく、環構造を有するアルキル基であってもよい。
【0048】
R11で表されるフルオロアルキル基は、直鎖状フルオロアルキル基であってもよく、分岐鎖状フルオロアルキル基であってもよく、環構造を有するフルオロアルキル基であってもよい。
【0049】
中でも、R11は、アルキル基であることが好ましく、直鎖状アルキル基であることがより好ましく、炭素数1~6の直鎖状アルキル基であることがさらに好ましい。
【0050】
式(A1)中、-(R12O)m1-は、下記式(A2)で表されることが好ましい。
-[(Rf1O)k1(Rf2O)k2(Rf3O)k3(Rf4O)k4(Rf5O)k5(Rf6O)k6]- …(A2)
ただし、
Rf1は、炭素数1のフルオロアルキレン基であり、
Rf2は、炭素数2のフルオロアルキレン基であり、
Rf3は、炭素数3のフルオロアルキレン基であり、
Rf4は、炭素数4のフルオロアルキレン基であり、
Rf5は、炭素数5のフルオロアルキレン基であり、
Rf6は、炭素数6のフルオロアルキレン基である。
k1、k2、k3、k4、k5、及びk6は、それぞれ独立に0又は1以上の整数を表し、k1+k2+k3+k4+k5+k6は0~500の整数である。
【0051】
液体中への溶解性に優れる観点から、k1+k2+k3+k4+k5+k6は、1~500の整数が好ましく、1~300の整数がより好ましく、5~200の整数がさらに好ましく、10~150の整数が特に好ましい。
【0052】
なお、式(A2)における(Rf1O)~(Rf6O)の結合順序は任意である。式(A2)のk1~k6は、それぞれ、(Rf1O)~(Rf6O)の個数を表すものであり、配置を表すものではない。例えば、(Rf5O)k5は、(Rf5O)の数がk5個であることを表し、(Rf5O)k5のブロック配置構造を表すものではない。同様に、(Rf1O)~(Rf6O)の記載順は、それぞれの単位の結合順序を表すものではない。
【0053】
Rf3~Rf6において、フルオロアルキレン基は、直鎖状フルオロアルキレン基であってもよく、分岐鎖状フルオロアルキレン基であってもよく、環構造を有するフルオロアルキレン基であってもよい。
【0054】
Rf1の具体例としては、-CF2-及び-CHF-が挙げられる。
【0055】
Rf2の具体例としては、-CF2CF2-、-CF2CHF-、-CHFCF2-、-CHFCHF-、-CH2CF2-、及び-CH2CHF-が挙げられる。
【0056】
Rf3の具体例としては、-CF2CF2CF2-、-CF2CHFCF2-、-CF2CH2CF2-、-CHFCF2CF2-、-CHFCHFCF2-、-CHFCHFCHF-、-CHFCH2CF2-、-CH2CF2CF2-、-CH2CHFCF2-、-CH2CH2CF2-、-CH2CF2CHF-、-CH2CHFCHF-、-CH2CH2CHF-、-CF(CF3)-CF2-、-CF(CHF2)-CF2-、-CF(CH2F)-CF2-、-CF(CH3)-CF2-、-CF(CF3)-CHF-、-CF(CHF2)-CHF-、-CF(CH2F)-CHF-、-CF(CH3)-CHF-、-CF(CF3)-CH2-、-CF(CHF2)-CH2-、-CF(CH2F)-CH2-、-CF(CH3)-CH2-、-CH(CF3)-CF2-、-CH
(CHF2)-CF2-、-CH(CH2F)-CF2-、-CH(CH3)-CF2-、-CH(CF3)-CHF-、-CH(CHF2)-CHF-、-CH(CH2F)-CHF-、-CH(CH3)-CHF-、-CH(CF3)-CH2-、-CH(CHF2)-CH2-、及び-CH(CH2F)-CH2-が挙げられる。
【0057】
Rf4の具体例としては、-CF2CF2CF2CF2-、-CF2CF2CF2CHF-、-CF2CF2CF2CH2-、-CF2CHFCF2CF2-、-CHFCHFCF2CF2-、-CH2CHFCF2CF2-、-CF2CH2CF2CF2-、-CHFCH2CF2CF2-、-CH2CH2CF2CF2-、-CHFCF2CHFCF2-、-CH2CF2CHFCF2-、-CF2CHFCHFCF2-、-CHFCHFCHFCF2-、-CH2CHFCHFCF2-、-CF2CH2CHFCF2-、-CHFCH2CHFCF2-、-CH2CH2CHFCF2-、-CF2CH2CH2CF2-、-CHFCH2CH2CF2-、-CH2CH2CH2CF2-、-CHFCH2CH2CHF-、-CH2CH2CH2CHF-、及び-cycloC4F6-が挙げられる。
【0058】
Rf5の具体例としては、-CF2CF2CF2CF2CF2-、-CHFCF2CF2CF2CF2-、-CH2CHFCF2CF2CF2-、-CF2CHFCF2CF2CF2-、-CHFCHFCF2CF2CF2-、-CF2CH2CF2CF2CF2-、-CHFCH2CF2CF2CF2-、-CH2CH2CF2CF2CF2-、-CF2CF2CHFCF2CF2-、-CHFCF2CHFCF2CF2-、-CH2CF2CHFCF2CF2-、-CH2CF2CF2CF2CH2-、及び-cycloC5F8-が挙げられる。
【0059】
Rf6の具体例としては、-CF2CF2CF2CF2CF2CF2-、-CF2CF2CHFCHFCF2CF2-、-CHFCF2CF2CF2CF2CF2-、-CHFCHFCHFCHFCHFCHF-、-CHFCF2CF2CF2CF2CH2-、-CH2CF2CF2CF2CF2CH2-、及び-cycloC6F10-が挙げられる。
ここで、-cycloC4F6-は、ペルフルオロシクロブタンジイル基を意味し、その具体例としては、ペルフルオロシクロブタン-1,2-ジイル基が挙げられる。-cycloC5F8-は、ペルフルオロシクロペンタンジイル基を意味し、その具体例としては、ペルフルオロシクロペンタン-1,3-ジイル基が挙げられる。-cycloC6F10-は、ペルフルオロシクロヘキサンジイル基を意味し、その具体例としては、ペルフルオロシクロヘキサン-1,4-ジイル基が挙げられる。
【0060】
中でも、-(R12O)m1-は、下記式(F1)~(F3)で表される構造からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、式(F2)で表される構造を含むことがより好ましい。
-(Rf1O)k1-(Rf2O)k2- …(F1)
-(Rf2O)k2-(Rf4O)k4- …(F2)
-(Rf3O)k3- …(F3)
ただし、式(F1)~式(F3)の各符号は、上記式(A2)と同様である。
【0061】
式(F1)及び式(F2)において、(Rf1O)と(Rf2O)、(Rf2O)と(Rf4O)の結合順序は各々任意である。例えば(Rf1O)と(Rf2O)が交互に配置されてもよく、(Rf1O)と(Rf2O)が各々ブロックに配置されてもよく、またランダムであってもよい。式(F2)においても同様である。
式(F1)において、k1は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。またk2は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
式(F2)において、k2は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。またk4は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
式(F3)において、k3は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
【0062】
式(A1)中、R13としては、上記、Rf1~Rf6と同様のものが挙げられる。
【0063】
中でも、R13は、炭素数1~4のフルオロアルキレン基が好ましい。
【0064】
RA1の具体例として、例えば、以下の構造が挙げられる。*は、-O-との結合部位を表し、n1は0~60の整数、n2は0~500の整数を表す。n1としては例えば13が挙げられ、n2としては例えば7が挙げられる。
【0065】
【0066】
〔RB1〕
式(1)中、RB1は、1価飽和炭化水素基、ハロゲノ1価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基である。
【0067】
RB1で表される1価飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0068】
RB1で表されるハロゲノ1価飽和炭化水素基としては、ハロゲノアルキル基が好ましい。ハロゲノ1価飽和炭化水素基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましい。
【0069】
RB1で表されるヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基は、エーテル性酸素原子(すなわち、-O-)を含む1価飽和炭化水素基が好ましく、エーテル性酸素原子を含むアルキル基がより好ましい。つまり、RB1は、エーテル結合をさらに有することが好ましい。
【0070】
RB1で表されるハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基としては、ハロゲノ(ヘテロ原子含有アルキル基)が好ましい。ハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましい。ハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基は、エーテル性酸素原子を含むハロゲノ1価飽和炭化水素基が好ましく、エーテル性酸素原子を含むハロゲノアルキル基がより好ましい。
【0071】
RB1の炭素数は、後述する溶媒への溶解性に優れる点から、1~100が好ましく、2~50がより好ましく、3~20がさらに好ましい。
【0072】
RB1は、後述する溶媒への溶解性に優れる点から、少なくとも1つのフッ素原子を含むことが好ましく、水素原子を含まないことが好ましい。
【0073】
中でも、後述する溶媒への溶解性に優れる観点から、RB1は、下記式(B1)で表されることが好ましい。
R21O-(R22O)m2-R23- …(B1)
【0074】
式(B1)中、R21は、フッ素原子を有していてもよいアルキル基であり、R22はそれぞれ独立に、炭素数1~6のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、R23は、炭素数1~6のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、m2は0~20の整数である。
【0075】
式(B1)中、R21としては、例えば、アルキル基及びフルオロアルキル基が挙げられる。
【0076】
R21の炭素数は、後述する溶媒への溶解性に優れる点から、1~50が好ましく、1~10がより好ましく、1~6がさらに好ましい。
【0077】
R21で表されるアルキル基は、直鎖状アルキル基であってもよく、分岐鎖状アルキル基であってもよく、環構造を有するアルキル基であってもよい。
R21で表されるフルオロアルキル基は、直鎖状フルオロアルキル基であってもよく、分岐鎖状フルオロアルキル基であってもよく、環構造を有するフルオロアルキル基であってもよい。
【0078】
中でも、R21は、フルオロアルキル基が好ましく、直鎖状フルオロアルキル基がより好ましく、炭素数1~6の直鎖状フルオロアルキル基がさらに好ましく、炭素数1~6の直鎖状ペルフルオロアルキル基が特に好ましい。
【0079】
式(B1)中、-(R22O)m2-は、上記式(A2)で表されることが好ましい。
【0080】
式(B1)中、m2は0~15が好ましく、0~10がより好ましく、0~4がさらに好ましく、0~2が特に好ましい。
【0081】
式(B1)中、R23としては、上記、Rf1~Rf6と同様のものが挙げられる。
【0082】
中でも、R23は、炭素数1~3のフルオロアルキレン基が好ましく、炭素数1~3のペルフルオロアルキレン基がより好ましい。
【0083】
RB1の具体例として、例えば、以下の構造が挙げられる。*は、-O-(C=O)-との結合部位を表す。
【0084】
【0085】
〔RA2〕
式(2)中、RA2は、2価飽和炭化水素基、ハロゲノ2価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素)基である。
【0086】
RA2で表される2価飽和炭化水素基、ハロゲノ2価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素)基としては、式(1)中のRA1で表される1価飽和炭化水素基、ハロゲノ1価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基から水素原子又はハロゲン原子を1つ除いた基が挙げられる。
【0087】
RA2の炭素数は、後述する溶媒への溶解性に優れる点から、1~200が好ましく、3~100がより好ましい。
【0088】
中でも、後述する溶媒への溶解性に優れる観点から、RA2は、下記式(A5)で表されることが好ましい。つまり、RA2は、エーテル結合をさらに有することが好ましく、ポリエーテル鎖及びフルオロポリエーテル鎖からなる群より選択される少なくとも一つを含むことがより好ましい。
-R31O-(R32O)m5-R33- …(A5)
【0089】
式(A5)中、R31及びR33は、それぞれ独立に、炭素数1~6のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、R32はそれぞれ独立に、炭素数1~6のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、m5は0~500の整数である。
【0090】
式(A5)中、R31及びR33としては、それぞれ独立に、式(A1)中のR13と同様のものが挙げられる。
式(A5)中、-(R32O)m5-としては、式(A1)中の-(R12O)m1-と同様のものが挙げられる。
【0091】
RA2の具体例として、例えば、以下の構造が挙げられる。*は、-O-との結合部位を表し、n2は0~500の整数を表す。
【0092】
【0093】
〔RB2及びRB3〕
式(2)中、RB2及びRB3は、それぞれ独立に、1価飽和炭化水素基、ハロゲノ1価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基である。
【0094】
RB2又はRB3で表される1価飽和炭化水素基、ハロゲノ1価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基としては、式(1)中のRB1で表される1価飽和炭化水素基、ハロゲノ1価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基と同様の基が挙げられる。
【0095】
原料化合物の例としては、下記化合物T1等も挙げられる。
【0096】
【0097】
液体中に含有される原料化合物の含有率は、高いフッ素化率を得る観点から、液体全体に対し、1~100質量%が好ましく、3~100質量%がより好ましく、5~100質量%がさらに好ましく、5~70質量%が特に好ましく、5~50質量%が極めて好ましい。
【0098】
(溶媒)
液体は、必要に応じて溶媒を含有してもよい。溶媒は、原料化合物を溶解可能な溶媒であれば特に限定されない。溶媒は、液体の粘度が後述する範囲に入るものが好ましい。
【0099】
原料化合物及び原料化合物がフッ素化された含フッ素化合物の溶解性に優れる観点から、溶媒は、含塩素溶媒及び含塩素溶媒以外の含フッ素溶媒からなる群より選択される少なくとも一方を含むことが好ましく、含塩素溶媒を含むことがより好ましい。含塩素溶媒は、塩素原子を含む溶媒である。含塩素溶媒は、塩素原子以外にフッ素原子を含むことが好ましい。
【0100】
含塩素溶媒としては、例えば、CClF2CClFCF2OCF2CClF2(CFE-419)、CH2ClCHClCH2OCF2CHFCl(HCFE-473)、CF2ClCFClCHFOCF2CF2Cl(HCFE-428a,b)、CFHClCFClCF2OCF2CF2Cl(HCFE-428c,d)、CF2ClCHClCF2OCF2CF2Cl(HCFE-428e)、1,2,3,4-テトラクロロパーフルオロブタン(R-113)、CF2Cl-CFCl-CFCl-O-CF2-CF2Cl(CFE-418)、CClHFCClFCHFOCF2CClF2(HCFE-437a、b)、CClF2CClHCHFOCF2CClF2(HCFE-437c)、CClHFCClFCH2OCF2CClF2(HCFE-446a)、CF2ClCCl2CF2OCF2CFHCl(HCFE-427a,b)、CF2HCClFCF2OCF2CF2Cl(HCFE-429)等が挙げられる。
含塩素溶媒以外の含フッ素溶媒としては、ペルフルオロアルカン類(FC-72等)、ペルフルオロエーテル類(FC-75、FC-77等)、ペルフルオロポリエーテル類(商品名:クライトックス、フォンブリン、ガルデン、デムナム等)、不活性流体(商品名:フロリナート)、ペルフルオロカルボン酸フッ化物等が挙げられる。
【0101】
溶媒の沸点は、含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、10~500℃が好ましく、30~250℃がより好ましく、50~150℃がさらに好ましい。
溶媒の炭素数は、含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、4以上が好ましく、4~1,000がより好ましく、4~500が更に好ましく、4~100が特に好ましく、4~50が最も好ましい。
溶媒の分子量は、含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、200以上が好ましく、200~50,000がより好ましく、200~25,000が更に好ましく、200~10,000が特に好ましく、200~1,000が最も好ましい。分子量に分布がある場合、分子量は、質量平均分子量(Mw)を表す。Mwはテトラヒドロフラン(THF)を溶離液として用いるゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)測定により、ポリスチレン換算として測定される。
【0102】
(その他添加剤)
液体は、必要に応じてその他添加剤を含有してもよい。その他添加剤としては、例えば、原料化合物のフッ素化を促進する助剤が挙げられる。
助剤としては、例えば、原料化合物以外のC-H結合含有化合物及び炭素-炭素二重結合含有化合物が挙げられる。C-H結合含有化合物としては、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。炭素-炭素二重結合含有化合物としては、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロブタジエン等が挙げられる。助剤は、その中でも、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素が好ましい。
なお、本実施形態では、液体が助剤を含有しなくても、液体中におけるフッ素ガスによる直接フッ素化において高いフッ素化率が得られる。そのため、液体は、上記助剤を含有しなくてもよい。
【0103】
(液体の特性)
液体の粘度は、特に限定されるものではなく、例えば0.30~100mPa・sの範囲が挙げられ、0.50~100mPa・sの範囲であってもよく、0.50~50mPa・sの範囲であってもよい。
液体の粘度が高いと、気泡の分散性が低下し、原料化合物とフッ素ガスとの接触が起こりにくくなるが、本実施形態では、液体の粘度が前記範囲であっても、液体中におけるフッ素ガスによる直接フッ素化において高いフッ素化率が得られる。
液体の粘度は、測定対象の液体に応じて、差圧式微量粘度計、回転式粘度計、EMS(電磁スピニング)粘度計等を用いて測定でき、3~5回の平均値を算出して粘度とする。
【0104】
<フッ素化反応>
原料化合物のフッ素化における反応温度としては、例えば、-60℃以上かつ原料化合物の沸点以下の範囲が挙げられ、-50~100℃の範囲でもよく、-20~50℃の範囲でもよい。
原料化合物のフッ素化における圧力としては、例えば、0~2MPaが挙げられる。
原料化合物のフッ素化は、バッチ方式であってもよく、連続方式であってもよい。
【0105】
原料化合物のフッ素化におけるフッ素化率は、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましく、100%が特に好ましい。
上記フッ素化率は、以下のようにして求める。
具体的には、反応生成物の内部標準物質を用いたNMR測定により、反応生成物をフッ素化可能な原子が完全にフッ素化された化合物と仮定して、下記式によりフッ素化率を算出する。
式:フッ素化率(%)={1-(反応生成物1分子あたりのフッ素化可能な原子数)/(原料化合物1分子あたりのフッ素化可能な原子数)}×100
【0106】
<含フッ素化合物>
原料化合物のフッ素化により得られる含フッ素化合物は、原料化合物が有するフッ素化可能な原子の少なくとも1つがフッ素原子に置き換わった化合物である。
含フッ素化合物は、原料化合物が有するすべてのフッ素化可能な原子がフッ素原子に置き換わった化合物であることが好ましい。
【0107】
原料化合物が前記式(1)で表される化合物である場合、含フッ素化合物は、下記式(6)で表される化合物が好ましい。また、原料化合物が前記式(2)で表される化合物である場合、含フッ素化合物は、下記式(7)で表される化合物が好ましい。
RAF1-O-(C=O)-RBF1 …(6)
RBF2-(C=O)-O-RAF2-O-(C=O)-RBF3 …(7)
式(6)及び(7)中、
RAF1、RBF1、RAF2、RBF2、及びRBF3は、それぞれ、RA1、RB1、RA2、RB2、及びRB3に対応する基であり、
RA1、RB1、RA2、RB2、及びRB3がそれぞれ独立に水素原子を含まない基である場合、RAF1、RBF1、RAF2、RBF2、及びRBF3は、RA1、RB1、RA2、RB2、及びRB3と同一の基であり、
RA1、RB1、RA2、RB2、及びRB3がそれぞれ独立に水素原子を含む基である場合、RAF1、RBF1、RAF2、RBF2、及びRBF3は、RA1、RB1、RA2、RB2、及びRB3に存在するすべての水素原子がフッ素原子に置換された基である。
【0108】
〔RAF1〕
式(6)中、RAF1はRA1に対応する基である。
RA1が水素原子を含む場合には、RAF1は、RA1に存在する全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。RA1が水素原子を含まない場合には、RAF1は、RA1と同一の基である。
溶媒への溶解性に優れる観点から、RAF1は、下記式(A3)で表されることが好ましい。
R14O-(R15O)m3-R16- …(A3)
【0109】
式(A3)中、R14は、ペルフルオロアルキル基であり、R15はそれぞれ独立に、炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基であり、R16は、炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基であり、m3は0~500の整数である。
【0110】
式(A3)中、R14は、式(A1)中のR11に対応する。R11が水素原子を含む場合、R14は、R11に含まれる全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。R11が水素原子を含まない場合、R14は、R11と同じである。
【0111】
式(A3)中、-(R15O)m3-は、式(A1)中の-(R12O)m1-に対応する。R12が水素原子を含む場合、R15は、R12に含まれる全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。R12が水素原子を含まない場合、R15は、R12と同じである。
【0112】
式(A3)中、-(R15O)m3-は、下記式(A4)で表されることが好ましい。
-[(Rff1O)k7(Rff2O)k8(Rff3O)k9(Rff4O)k10(Rff5O)k11(Rff6O)k12]- …(A4)
ただし、
Rff1は、炭素数1のペルフルオロアルキレン基であり、
Rff2は、炭素数2のペルフルオロアルキレン基であり、
Rff3は、炭素数3のペルフルオロアルキレン基であり、
Rff4は、炭素数4のペルフルオロアルキレン基であり、
Rff5は、炭素数5のペルフルオロアルキレン基であり、
Rff6は、炭素数6のペルフルオロアルキレン基である。
k7、k8、k9、k10、k11、及びk12は、それぞれ独立に0又は1以上の整数を表し、k7+k8+k9+k10+k11+k12は0~500の整数である。
【0113】
式(A4)中、Rff1~Rff6は、式(A2)中のRf1~Rf6に対応する。例えば、Rf1が水素原子を含む場合、Rff1は、Rf1に含まれる全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。Rf1が水素原子を含まない場合、Rff1は、Rf1と同じである。Rff2~Rff6に関しても、Rff1と同様である。
【0114】
溶媒への溶解性に優れる観点から、k7+k8+k9+k10+k11+k12は、1~500の整数が好ましく、1~300の整数がより好ましく、5~200の整数がさらに好ましく、10~150の整数が特に好ましい。
【0115】
中でも、-(R15O)m3-は、下記式(G1)~(G3)で表される構造からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、式(G2)で表される構造を含むことがより好ましい。
-(Rff1O)k7-(Rff2O)k8- …(G1)
-(Rff2O)k8-(Rff4O)k10- …(G2)
-(Rff3O)k9- …(G3)
ただし、式(G1)~式(G3)の各符号は、上記式(A4)と同様である。
【0116】
式(G1)及び式(G2)において、(Rff1O)と(Rff2O)、(Rff2O)と(Rff4O)の結合順序は各々任意である。例えば(Rff1O)と(Rff2O)が交互に配置されてもよく、(Rff1O)と(Rff2O)が各々ブロックに配置されてもよく、またランダムであってもよい。式(G2)においても同様である。
式(G1)において、k7は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。またk8は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
式(G2)において、k8は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。またk10は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
式(G3)において、k9は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
【0117】
式(A3)中、R16は、式(A1)中のR13に対応する。R13が水素原子を含む場合、R16は、R13に含まれる全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。R13が水素原子を含まない場合、R16は、R13と同じである。
【0118】
R16としては、上記、Rff1~Rff6と同様のものが挙げられる。
【0119】
中でも、R16は、炭素数1~3のペルフルオロアルキレン基が好ましい。
【0120】
式(A3)中、m3は、式(A1)中のm1に対応する。m3はm1と同じである。
【0121】
RAF1の具体例として、例えば、以下の構造が挙げられる。*は、-O-との結合部位を表し、n1は0~60の整数、n2は0~500の整数を表す。n1としては例えば13が挙げられ、n2としては例えば7が挙げられる。
【0122】
【0123】
〔RBF1〕
式(6)中、RBF1はRB1に対応する基である。
RB1が水素原子を含む場合には、RBF1は、RB1に存在する全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。RB1が水素原子を含まない場合には、RBF1は、RB1と同一の基である。
溶媒への溶解性に優れる観点から、RBF1は、下記式(B2)で表されることが好ましい。
R24O-(R25O)m4-R26- …(B2)
【0124】
式(B2)中、R24は、ペルフルオロアルキル基であり、R25はそれぞれ独立に、炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基であり、R26は炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基であり、m4は0~20の整数である。
【0125】
式(B2)中、R24は、式(B1)中のR21に対応する。R21が水素原子を含む場合、R24は、R21に含まれる全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。R21が水素原子を含まない場合、R24は、R21と同じである。
【0126】
式(B2)中、-(R25O)m4-は、式(B1)中の-(R22O)m2-に対応する。R22が水素原子を含む場合、R25は、R22に含まれる全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。R22が水素原子を含まない場合、R25は、R22と同じである。
【0127】
式(B2)中、-(R25O)m4-は、上記式(A4)で表されることが好ましい。
【0128】
式(B2)中、R26は、式(B1)中のR23に対応する。R23が水素原子を含む場合、R26は、R23に含まれる全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。R23が水素原子を含まない場合、R26は、R23と同じである。
【0129】
式(B2)中、m4は、式(B1)中のm2に対応する。m4はm2と同じである。
【0130】
RBF1の具体例として、例えば、以下の構造が挙げられる。*は、-O-(C=O)-との結合部位を表す。
【0131】
【0132】
〔RAF2〕
式(7)中、RAF2はRA2に対応する基である。
RA2が水素原子を含む場合には、RAF2は、RA2に存在する全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。RA2が水素原子を含まない場合には、RAF2は、RA2と同一の基である。
【0133】
溶媒への溶解性に優れる観点から、RAF2は、下記式(A6)で表されることが好ましい。つまり、RAF2は、エーテル結合をさらに有することが好ましい。
-R34O-(R35O)m6-R36- …(A6)
【0134】
式(A6)中、R34及びR36は、それぞれ独立に、炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基であり、R35はそれぞれ独立に、炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基であり、m6は0~500の整数である。
【0135】
式(A6)中、R34及びR36は、それぞれ式(A5)中のR31及びR33に対応する。R31が水素原子を含む場合、R34はR31に含まれる全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。R31が水素原子を含まない場合、R34はR31と同じである。R33が水素原子を含む場合、R36はR33に含まれる全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。R33が水素原子を含まない場合、R36はR34と同じである。
【0136】
式(A6)中、-(R35O)m6-は、式(A5)中の-(R32O)m5-に対応する。R32が水素原子を含む場合、R35は、R32に含まれる全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。R32が水素原子を含まない場合、R35は、R32と同じである。
【0137】
式(A6)中、R34及びR36としては、それぞれ独立に、式(A5)中のR31及びR33と同様のものが挙げられる。
式(A6)中、-(R35O)m6-としては、式(A5)中の-(R32O)m5-と同様のものが挙げられる。
【0138】
RAF2の具体例として、例えば、以下の構造が挙げられる。*は、-O-との結合部位を表し、n2は0~500の整数を表す。
【0139】
【0140】
〔RBF2及びRBF3〕
式(7)中、RBF2及びRBF3は、それぞれ、RB2及びRB3に対応する基である。
RB2が水素原子を含む場合には、RBF2は、RB2に存在する全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。RB2が水素原子を含まない場合には、RBF2は、RB2と同一の基である。
RB3が水素原子を含む場合には、RBF3は、RB3に存在する全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。RB3が水素原子を含まない場合には、RBF3は、RB3と同一の基である。
【0141】
RBF2又はRBF3で表される基は、式(6)中のRBF1で表される基と同様の基が挙げられる。
【0142】
含フッ素化合物の数平均分子量は、特に限定されるものではなく、例えば100~101,000が挙げられ、溶媒への溶解性に優れる観点から、100~21,000が好ましく、300~11,000がより好ましく、400~7,000がさらに好ましい。
上記含フッ素化合物の数平均分子量は、1H-NMR及び19F-NMRによって特定された分子構造から算出される各分子の分子量の数平均値である。
【実施例0143】
以下、本開示を実施例によりさらに具体的に説明するが、本開示はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。例1~5は実施例であり、例6~8は比較例である。
【0144】
以下、CClF2CClFCF2OCF2CClF2を「CFE-419」と記載する。
【0145】
[例1]
下記化合物1-1の10gをCFE-419の140gに溶解し、原料溶液とした。得られた原料溶液の粘度は、1.7mPa・sであった。
【0146】
【0147】
500mLのニッケル製オートクレーブにおける3/16’’の差込管出口に、平均孔径1μmの焼結金属フィルタ(耐圧硝子工業株式会社製)を設置した。これにより、ガスは上記焼結金属フィルタを通してオートクレーブ内に供給される。
上記オートクレーブに、CFE-419の250gを加えて撹拌し、差込管より窒素ガスを1時間吹き込んだ。次に、窒素ガスで20体積%に希釈したフッ素ガスを、流速5.66L/時間で1時間吹き込み、同じ流速を保って上記ガスを吹き込みながら、上記原料溶液を3時間かけて注入した。窒素ガスで20体積%に希釈したフッ素ガスを、同じ流速を保って2時間吹き込み続けた後、窒素ガスを2時間吹き込んだ。
以上のようにして、化合物1のフッ素化を行い、生成物を得た。上記化合物1のフッ素化における反応温度は20℃、圧力は常圧とした。
得られた生成物を19F-NMRで定量し、前述の方法により求めたフッ素化率を、表1に示す。
【0148】
例1における、窒素ガスで20体積%に希釈したフッ素ガスの気泡の平均径を、以下のようにして求めた。
500mLのガラス製オートクレーブにおける3/16’’の差込管出口に、平均孔径1μmの上記焼結金属フィルタを設置し、CFE-419の250gを加えて撹拌し、差込管より窒素ガスを1時間吹き込んだ。ガス流通中の反応器内の様子を、高速度カメラを用いて撮影し、画像解析を行った。画像中の気泡像を無作為に10点抽出し、その平均径を算出した。結果を表1に示す。
【0149】
[例2~4、7]
平均孔径1μmの焼結金属フィルタの代わりに、平均孔径が表1に示す値の焼結金属フィルタを設置した以外は、例1と同様にして、化合物1のフッ素化を行い、フッ素化率を求めた。結果を表1に示す。
また、例1と同様にして、例2~4、7における、窒素ガスで20体積%に希釈したフッ素ガスの気泡の平均径を、それぞれ求めた。結果を表1に示す。
【0150】
[例5]
500mLのニッケル製オートクレーブにおける3/16’’の差込管出口に、平均孔径10μmの焼結金属フィルタ(耐圧硝子工業株式会社製)を設置した。これにより、ガスは上記焼結金属フィルタを通してオートクレーブ内に供給される。
上記オートクレーブに、CFE-419の250gを加えて撹拌し、差込管より窒素ガスを1時間吹き込んだ。次に、窒素ガスで20体積%に希釈したフッ素ガスを、流速5.66L/時間で1時間吹き込み、同じ流速を保って上記ガスを吹き込みながら、上記原料溶液を3時間かけて注入した。続いて、窒素ガスで20体積%に希釈したフッ素ガスを、同じ流速を保って吹き込みながら、ベンゼンの0.10gとCFE-419の50gとの混合液を1時間かけて注入した。窒素ガスで20体積%に希釈したフッ素ガスを、同じ流速を保って2時間吹き込み続けた後、窒素ガスを2時間吹き込んだ。
以上のようにして、化合物1のフッ素化を行い生成物を得た。上記化合物1のフッ素化における反応温度は20℃、圧力は常圧であった。
得られた生成物を19F-NMRで定量し、前述の方法により求めたフッ素化率を、表1に示す。
また、例1と同様にして、例5における、窒素ガスで20体積%に希釈したフッ素ガスの気泡の平均径を求めた。結果を表1に示す。
【0151】
[例6]
平均孔径1μmの焼結金属フィルタを設置しない以外は、例1と同様にして、化合物1のフッ素化を行い、フッ素化率を求めた。結果を表1に示す。
また、例1と同様にして、例6における、窒素ガスで20体積%に希釈したフッ素ガスの気泡の平均径を求めた。結果を表1に示す。
【0152】
[例8]
平均孔径1μmの焼結金属フィルタを設置しない以外は、例5と同様にして、化合物1のフッ素化を行い、フッ素化率を求めた。結果を表1に示す。
また、例1と同様にして、例8における、窒素ガスで20体積%に希釈したフッ素ガスの気泡の平均径を求めた。結果を表1に示す。
【0153】
【0154】
上記表中「-」は、焼結金属フィルタを用いていないことを示す。
表1に示されるように、例1~5では、例6~8に比べて、液体中におけるフッ素ガスによる直接フッ素化において高いフッ素化率が得られている。
本開示の含フッ素化合物の製造方法は、従来と比較して高いフッ素化率で含フッ素化合物を製造できる。得られた含フッ素化合物は、種々の官能基(例えば、水酸基、エチレン性不飽和基、エポキシ基、カルボキシ基等)を有する含フッ素化合物に誘導できる。また、得られた含フッ素化合物及び誘導された含フッ素化合物は、表面処理剤、乳化剤、ゴム、界面活性剤、溶媒、熱媒体、医薬品、農薬、潤滑油、これらの中間体等として使用できる。