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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074671
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】含フッ素化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 41/22 20060101AFI20240524BHJP
   C07C 67/287 20060101ALI20240524BHJP
   C07C 69/708 20060101ALI20240524BHJP
   C07C 43/12 20060101ALI20240524BHJP
   C08G 65/32 20060101ALI20240524BHJP
   C07B 39/00 20060101ALN20240524BHJP
【FI】
C07C41/22
C07C67/287
C07C69/708 A
C07C43/12
C08G65/32
C07B39/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185987
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉田 大地
(72)【発明者】
【氏名】川上 貴史
(72)【発明者】
【氏名】柳本 亘
【テーマコード(参考)】
4H006
4J005
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC30
4H006BB12
4H006BC13
4H006BC14
4H006BE53
4H006BM10
4H006BM71
4H006GP01
4H006GP20
4H006KA30
4J005AA21
4J005BA00
4J005BD04
(57)【要約】
【課題】目的物である含フッ素化合物の収率に優れる含フッ素化合物の製造方法の提供。
【解決手段】フッ素化可能な原子又は結合を1つ以上有する有機化合物及び有機溶媒を含む液相と、フッ素ガスを含む混合ガスを含む気相とを含む容器中において、上記フッ素化可能な原子又は結合を1つ以上有する有機化合物をフッ素化し、上記フッ素化可能な原子又は結合を1つ以上有する有機化合物のフッ素化において、上記気相は、含ハロゲン有機化合物を含み、且つ上記気相における上記含ハロゲン有機化合物のモル分率が0.065以下である、含フッ素化合物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化可能な原子又は結合を1つ以上有する有機化合物及び有機溶媒を含む液相と、フッ素ガスを含む混合ガスを含む気相とを含む容器中において、前記フッ素化可能な原子又は結合を1つ以上有する有機化合物をフッ素化し、
前記フッ素化可能な原子又は結合を1つ以上有する有機化合物のフッ素化において、前記気相は、含ハロゲン有機化合物を含み、且つ前記気相における前記含ハロゲン有機化合物のモル分率が0.065以下である、
含フッ素化合物の製造方法。
【請求項2】
前記フッ素化可能な原子又は結合を1つ以上有する有機化合物のフッ素化において、前記混合ガスの総体積に対する前記フッ素ガスの含有率が70体積%以下である、請求項1に記載の含フッ素化合物の製造方法。
【請求項3】
前記フッ素化可能な原子又は結合を1つ以上有する有機化合物のフッ素化後、前記容器から前記混合ガスを排出し、且つ排出される前記混合ガスの総体積に対する前記フッ素ガスの含有率が60体積%以下である、請求項1又は2に記載の含フッ素化合物の製造方法。
【請求項4】
前記有機溶媒の沸点が50~500℃以上である、請求項1又は2に記載の含フッ素化合物の製造方法。
【請求項5】
前記含ハロゲン有機化合物が、フッ素を有する、請求項1又は2に記載の含フッ素化合物の製造方法。
【請求項6】
前記有機溶媒が、ペルハロゲノ化合物である、請求項1又は2に記載の含フッ素化合物の製造方法。
【請求項7】
前記有機溶媒の炭素数が4以上である、請求項1又は2に記載の含フッ素化合物の製造方法。






【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、含フッ素化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素原子等のフッ素化可能な原子又は結合を1つ以上有する化合物をフッ素化する方法は種々知られており、例えば、フッ素ガスを用いてフッ素化する方法が知られている。特許文献1では、フッ素化可能な原子又は結合を1つ以上有する化合物及び有機溶媒を含む液相を含むオートクレーブ等の容器へフッ素ガスを供給し、フッ素化可能な原子又は結合を1つ以上有する化合物をフッ素化する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2000/056694号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において開示されるフッ素化方法では、フッ素化可能な原子を1つ以上有する化合物の沸点を高めることにより、フッ素化可能な原子を1つ以上有する化合物が気化してフッ素ガスとの接触により分解することを抑制し、目的物(含フッ素化合物)の収率を向上させることが行われている。
しかしながら、本発明者らは、フッ素化可能な原子を1つ以上有する化合物の分解の抑制には更なる改善の余地があり、目的物の収率をより向上できるとの知見を得た。
【0005】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、目的物である含フッ素化合物の収率に優れる含フッ素化合物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は以下の態様を含む。
<1> フッ素化可能な原子又は結合を1つ以上有する有機化合物及び有機溶媒を含む液相と、フッ素ガスを含む混合ガスを含む気相とを含む容器中において、上記フッ素化可能な原子又は結合を1つ以上有する有機化合物をフッ素化し、
上記フッ素化可能な原子又は結合を1つ以上有する有機化合物のフッ素化において、上記気相は、含ハロゲン有機化合物を含み、且つ上記気相における上記含ハロゲン有機化合物のモル分率が0.065以下である、
含フッ素化合物の製造方法。
<2> 上記フッ素化可能な原子又は結合を1つ以上有する有機化合物のフッ素化において、上記混合ガスの総体積に対する上記フッ素ガスの含有率が70体積%以下である、上記<1>に記載の含フッ素化合物の製造方法。
<3> 上記フッ素化可能な原子又は結合を1つ以上有する有機化合物のフッ素化後、上記容器から上記混合ガスを排出し、且つ排出される上記混合ガスの総体積に対する上記フッ素ガスの含有率が60体積%以下である、上記<1>又は<2>に記載の含フッ素化合物の製造方法。
<4> 上記有機溶媒の沸点が50~500℃以上である、上記<1>~<3>のいずれか1つに記載の含フッ素化合物の製造方法。
<5> 上記含ハロゲン有機化合物が、フッ素を有する、上記<1>~<4>のいずれか1つに記載の含フッ素化合物の製造方法。
<6> 上記有機溶媒が、ペルハロゲノ化合物である、上記<1>~<5>のいずれか1つに記載の含フッ素化合物の製造方法。
<7> 上記有機溶媒の炭素数が4以上である、上記<1>~<6>のいずれか1つに記載の含フッ素化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施形態によれば、目的物である含フッ素化合物の収率に優れる含フッ素化合物の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。但し、本開示の実施形態は以下の実施形態に限定されない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示の実施形態を制限するものではない。
【0009】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率は、特に記載しない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
【0010】
[含フッ素化合物の製造方法]
本開示の含フッ素化合物の製造方法(以下、「本製造方法」とも記す。)は、フッ素化可能な原子又は結合を1つ以上有する有機化合物(以下、「特定有機化合物」とも記す。)及び有機溶媒を含む液相と、フッ素を含む混合ガスを含む気相とを含む容器中において、特定有機化合物をフッ素化し、
特定有機化合物のフッ素化において、上記気相は、含ハロゲン有機化合物を含み、且つ気相における上記含ハロゲン有機化合物のモル分率が0.065以下である。
【0011】
本製造方法によれば、目的物である含フッ素化合物の収率を向上できる。上記効果が奏される理由は明らかではないが以下のように推定される。
本製造方法は、液相及び気相を含む容器中での特定有機化合物のフッ素化を行う。そして、フッ素化時、気相における上記含ハロゲン有機化合物のモル分率が0.065以下である。これにより、気相の温度が過度に高くなることを抑制できるため、特定有機化合物の分解を抑制でき、目的物である含フッ素化合物の収率が向上すると推定される。
【0012】
含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、上記モル分率は、0.050以下が好ましく、0.035以下がより好ましく、0.030以下が更に好ましい。上記モル分率の下限は、特に限定されるものではなく、0であってもよい。
【0013】
本開示において、含ハロゲン有機化合物のモル分率は、特定有機化合物のフッ素化における容器内での含ハロゲン有機化合物の蒸気圧を、特定有機化合物のフッ素化における容器内の圧力で除することにより求める。
【0014】
上記含ハロゲン有機化合物のモル分率は、使用する特定有機化合物の沸点、分子量、炭素数、構造、使用量等、液相及び気相の温度、使用する有機溶媒の構造、フッ素ガスの使用量などにより調整できる。
【0015】
(液相)
含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、特定有機化合物は有機溶媒に溶解していることが好ましい。
含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、25℃の有機溶媒に特定有機化合物が1質量%以上溶解していることが好ましく、5質量%以上溶解していることがより好ましい。
【0016】
含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、特定有機化合物のフッ素化における液相の温度は、10~80℃が好ましく、15~70℃がより好ましく、15~40℃が更に好ましい。
上記液相の温度は、容器内の液相部に設置した温度計より測定する。
【0017】
-特定有機化合物-
特定有機化合物は、フッ素化可能な原子又は結合を1つ以上有する。
フッ素化可能な原子としては、炭素原子に結合する水素原子、炭素原子に結合する塩素原子、炭素原子に結合する臭素原子、及び炭素原子に結合するヨウ素原子が挙げられる。
フッ素化可能な結合としては、炭素-炭素不飽和二重結合及び炭素-炭素不飽和三重結合が挙げられる。
フッ素化可能な結合としては、炭素-炭素不飽和二重結合及び炭素-炭素不飽和三重結合における炭素原子が挙げられる。
【0018】
含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、特定有機化合物の沸点は、30℃以上が好ましく、50~500℃以上がより好ましく、70~450℃以上が更に好ましい。
本開示において、「沸点」は、常圧における沸点であり、「常圧」とは0.1MPaである。
本開示において、沸点は、消防法危険物第4類の沸点測定法の規定と同様の方法で測定する。
【0019】
含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、特定有機化合物の炭素数は、4以上が好ましく、4~1,000がより好ましく、4~500が更に好ましい。
【0020】
含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、特定有機化合物の分子量は、200以上が好ましく、400~50,000がより好ましく、400~25,000が更に好ましい。
分子量に分布がある場合、分子量は、質量平均分子量(Mw)を表す。Mwはテトラヒドロフラン(THF)を溶離液として用いるゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)測定により、ポリスチレン換算として測定される。
【0021】
含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、特定有機化合物の粘度は、2,000mPa・s以下が好ましく、1,000mPa・s以下がより好ましい。
有機化合物の粘度の下限は特に限定されないが、0.1mPa・s以上とすることができる。
本開示において、粘度はJIS Z 8803(2011)に準拠して測定する。
【0022】
有機溶媒への溶解性、含フッ素化合物の収率を向上させる等の観点から、特定有機化合物は、フッ素原子を有することが好ましい。有機溶媒への溶解性、含フッ素化合物の収率を向上させる等の観点から、特定有機化合物の総質量に対するフッ素原子の含有率は、5~80%が好ましく、10~70%がより好ましい。
【0023】
特定有機化合物としては、フルオロアルカン化合物、フルオロエーテル化合物、フルオロポリエーテル化合物、クロロフルオロカーボン化合物、クロロフルオロエーテル化合物、クロロフルオロポリエーテル化合物等が挙げられる。
【0024】
特定有機化合物の具体例を以下に列挙するが、これらに限定されるものではない。
CFO(CFCFHOCFCFCFCHO)CFCFHOCFCFCFCHOCOCF(CF)OCFCFCF
CHClCHClCHOCFCHFCl、
CFCFCFOCF(CF)COOCHCHCHCHOCOCF(CF)OCFCFCF
CHCHOCHCHOCHCHOCOCF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCF
(CFCFCOOCHCHCHCHCHOCOCF(CF
【0025】
また、上記した特定有機化合物の他に、下記化学式(1)又は(2)で表されるフッ素化可能な原子又は結合を1つ以上有する原料エステル化合物を使用できる。
A1-O-(C=O)-RB1 …(1)
B2-(C=O)-O-RA2-O-(C=O)-RB3 …(2)
【0026】
式(1)及び(2)中、
A1、RB1、RB2、及びRB3はそれぞれ独立に、1価飽和炭化水素基、ハロゲノ1価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基であり、
A2は、2価飽和炭化水素基、ハロゲノ2価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素)基である。
【0027】
本開示において、「1価飽和炭化水素基」は、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、及びシクロアルキル基のいずれであってもよい。「2価飽和炭化水素基」は、直鎖状アルキレン基、分岐鎖状アルキレン基、及びシクロアルキレン基のいずれであってもよい。直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、直鎖状アルキレン基、及び分岐鎖状アルキレン基には、脂環構造が含まれていてもよい。
【0028】
本開示において、「ハロゲノ」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子により、基中に存在する水素原子の1個以上が置換されたことを意味する。基中には、水素原子が存在していてもよく、存在しなくてもよい。
【0029】
本開示において、「ハロゲノ1価飽和炭化水素基」とは、ハロゲン原子により、1価飽和炭化水素基中に存在する水素原子の1個以上が置換された基を意味する。「ハロゲノ2価飽和炭化水素基」とは、ハロゲン原子により、2価飽和炭化水素基中に存在する水素原子の1個以上が置換された基を意味する。
【0030】
本開示において、「ヘテロ原子」とは、炭素原子及び水素原子以外の原子を意味し、例えば、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子が挙げられる。
【0031】
本開示において、「ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基」とは、1価飽和炭化水素基中に、2価のヘテロ原子、又はヘテロ原子を含む2価の基が含まれている基を意味する。「ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素基」とは、2価飽和炭化水素基中に、2価のヘテロ原子、又はヘテロ原子を含む2価の基が含まれている基を意味する。2価のヘテロ原子としては、例えば、-O-及び-S-が挙げられる。また、ヘテロ原子を含む2価の基としては、例えば、-NH-、-C(=O)-、及び-SO-が挙げられる。
【0032】
本開示において、「ハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基」とは、上記ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基中の水素原子の1個以上がハロゲン原子に置換された基を意味する。「ハロゲノ(ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素)基」とは、上記ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素基中の水素原子の1個以上がハロゲン原子に置換された基を意味する。
【0033】
式(1)において、RA1及びRB1の少なくとも一方が水素原子を含むことが好ましい。また、式(2)において、RA2、RB2、及びRB3からなる群より選択される少なくとも一つが水素原子を含むことが好ましい。
【0034】
〔RA1
式(1)中、RA1は、1価飽和炭化水素基、ハロゲノ1価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基である。
【0035】
A1で表される1価飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0036】
A1で表されるハロゲノ1価飽和炭化水素基としては、ハロゲノアルキル基が好ましい。ハロゲノ1価飽和炭化水素基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0037】
A1で表されるヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基は、エーテル性酸素原子(すなわち、-O-)を含む1価飽和炭化水素基が好ましく、エーテル性酸素原子を含むアルキル基がより好ましい。
【0038】
A1で表されるハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基としては、ハロゲノ(ヘテロ原子含有アルキル基)が好ましい。ハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましい。ハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基は、エーテル性酸素原子を含むハロゲノ1価飽和炭化水素基が好ましく、エーテル性酸素原子を含むハロゲノアルキル基がより好ましい。
【0039】
A1の炭素数は、溶媒への溶解性に優れる点から、1~500が好ましく、1~200がより好ましく、3~100が更に好ましい。
【0040】
中でも、溶媒中への溶解性に優れる観点から、RA1は、下記式(A1)で表されることが好ましい。つまり、RA1は、エーテル結合を更に有することが好ましく、ポリエーテル鎖及びフルオロポリエーテル鎖からなる群より選択される少なくとも一つを含むことがより好ましい。
11O-(R12O)m1-R13- …(A1)
【0041】
式(A1)中、R11は、フッ素原子を有していてもよいアルキル基であり、R12はそれぞれ独立に、炭素数1~6のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、R13は、炭素数1~6のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、m1は0~500の整数である。
【0042】
式(A1)中、R11としては、例えば、アルキル基及びフルオロアルキル基が挙げられる。
【0043】
11の炭素数は、溶媒への溶解性に優れる点から、1~100が好ましく、1~50がより好ましく、1~10が更に好ましく、1~6が特に好ましい。
【0044】
11で表されるアルキル基は、直鎖状アルキル基であってもよく、分岐鎖状アルキル基であってもよく、環構造を有するアルキル基であってもよい。
【0045】
11で表されるフルオロアルキル基は、直鎖状フルオロアルキル基であってもよく、分岐鎖状フルオロアルキル基であってもよく、環構造を有するフルオロアルキル基であってもよい。
【0046】
中でも、R11は、アルキル基であることが好ましく、直鎖状アルキル基であることがより好ましく、炭素数1~6の直鎖状アルキル基であることが更に好ましい。
【0047】
式(A1)中、-(R12O)m1-は、下記式(A2)で表されることが好ましい。
-[(Rf1O)k1(Rf2O)k2(Rf3O)k3(Rf4O)k4(Rf5O)k5(Rf6O)k6]- …(A2)
ただし、
f1は、炭素数1のフルオロアルキレン基であり、
f2は、炭素数2のフルオロアルキレン基であり、
f3は、炭素数3のフルオロアルキレン基であり、
f4は、炭素数4のフルオロアルキレン基であり、
f5は、炭素数5のフルオロアルキレン基であり、
f6は、炭素数6のフルオロアルキレン基である。
k1、k2、k3、k4、k5、及びk6は、それぞれ独立に0又は1以上の整数を表し、k1+k2+k3+k4+k5+k6は0~500の整数である。
【0048】
溶媒中への溶解性に優れる観点から、k1+k2+k3+k4+k5+k6は、1~500の整数が好ましく、1~300の整数がより好ましく、5~200の整数が更に好ましく、10~150の整数が特に好ましい。
【0049】
なお、式(A2)における(Rf1O)~(Rf6O)の結合順序は任意である。式(A2)のk1~k6は、それぞれ、(Rf1O)~(Rf6O)の個数を表すものであり、配置を表すものではない。例えば、(Rf5O)k5は、(Rf5O)の数がk5個であることを表し、(Rf5O)k5のブロック配置構造を表すものではない。同様に、(Rf1O)~(Rf6O)の記載順は、それぞれの単位の結合順序を表すものではない。
【0050】
f3~Rf6において、フルオロアルキレン基は、直鎖状フルオロアルキレン基であってもよく、分岐鎖状フルオロアルキレン基であってもよく、環構造を有するフルオロアルキレン基であってもよい。
【0051】
f1の具体例としては、-CF-及び-CHF-が挙げられる。
【0052】
f2の具体例としては、-CFCF-、-CFCHF-、-CHFCF-、-CHFCHF-、-CHCF-、及び-CHCHF-が挙げられる。
【0053】
f3の具体例としては、-CFCFCF-、-CFCHFCF-、-CFCHCF-、-CHFCFCF-、-CHFCHFCF-、-CHFCHFCHF-、-CHFCHCF-、-CHCFCF-、-CHCHFCF-、-CHCHCF-、-CHCFCHF-、-CHCHFCHF-、-CHCHCHF-、-CF(CF)-CF-、-CF(CHF)-CF-、-CF(CHF)-CF-、-CF(CH)-CF-、-CF(CF)-CHF-、-CF(CHF)-CHF-、-CF(CHF)-CHF-、-CF(CH)-CHF-、-CF(CF)-CH-、-CF(CHF)-CH-、-CF(CHF)-CH-、-CF(CH)-CH-、-CH(CF)-CF-、-CH
(CHF)-CF-、-CH(CHF)-CF-、-CH(CH)-CF-、-CH(CF)-CHF-、-CH(CHF)-CHF-、-CH(CHF)-CHF-、-CH(CH)-CHF-、-CH(CF)-CH-、-CH(CHF)-CH-、及び-CH(CHF)-CH-が挙げられる。
【0054】
f4の具体例としては、-CFCFCFCF-、-CFCFCFCHF-、-CFCFCFCH-、-CFCHFCFCF-、-CHFCHFCFCF-、-CHCHFCFCF-、-CFCHCFCF-、-CHFCHCFCF-、-CHCHCFCF-、-CHFCFCHFCF-、-CHCFCHFCF-、-CFCHFCHFCF-、-CHFCHFCHFCF-、-CHCHFCHFCF-、-CFCHCHFCF-、-CHFCHCHFCF-、-CHCHCHFCF-、-CFCHCHCF-、-CHFCHCHCF-、-CHCHCHCF-、-CHFCHCHCHF-、-CHCHCHCHF-、及び-cycloC-が挙げられる。
【0055】
f5の具体例としては、-CFCFCFCFCF-、-CHFCFCFCFCF-、-CHCHFCFCFCF-、-CFCHFCFCFCF-、-CHFCHFCFCFCF-、-CFCHCFCFCF-、-CHFCHCFCFCF-、-CHCHCFCFCF-、-CFCFCHFCFCF-、-CHFCFCHFCFCF-、-CHCFCHFCFCF-、-CHCFCFCFCH-、及び-cycloC-が挙げられる。
【0056】
f6の具体例としては、-CFCFCFCFCFCF-、-CFCFCHFCHFCFCF-、-CHFCFCFCFCFCF-、-CHFCHFCHFCHFCHFCHF-、-CHFCFCFCFCFCH-、-CHCFCFCFCFCH-、及び-cycloC10-が挙げられる。
ここで、-cycloC-は、ペルフルオロシクロブタンジイル基を意味し、その具体例としては、ペルフルオロシクロブタン-1,2-ジイル基が挙げられる。-cycloC-は、ペルフルオロシクロペンタンジイル基を意味し、その具体例としては、ペルフルオロシクロペンタン-1,3-ジイル基が挙げられる。-cycloC10-は、ペルフルオロシクロヘキサンジイル基を意味し、その具体例としては、ペルフルオロシクロヘキサン-1,4-ジイル基が挙げられる。
【0057】
中でも、-(R12O)m1-は、下記式(F1)~(F3)で表される構造からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、式(F2)で表される構造を含むことがより好ましい。
-(Rf1O)k1-(Rf2O)k2- …(F1)
-(Rf2O)k2-(Rf4O)k4- …(F2)
-(Rf3O)k3- …(F3)
ただし、式(F1)~式(F3)の各符号は、上記式(A2)と同様である。
【0058】
式(F1)及び式(F2)において、(Rf1O)と(Rf2O)、(Rf2O)と(Rf4O)の結合順序は各々任意である。例えば(Rf1O)と(Rf2O)が交互に配置されてもよく、(Rf1O)と(Rf2O)が各々ブロックに配置されてもよく、またランダムであってもよい。式(F2)においても同様である。
式(F1)において、k1は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。またk2は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
式(F2)において、k2は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。またk4は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
式(F3)において、k3は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
【0059】
式(A1)中、R13としては、上記、Rf1~Rf6と同様のものが挙げられる。
【0060】
中でも、R13は、炭素数1~4のフルオロアルキレン基が好ましい。
【0061】
A1の具体例として、例えば、以下の構造が挙げられる。*は、-O-との結合部位を表し、n1は0~60の整数、n2は0~500の整数を表す。n1としては例えば13が挙げられ、n2としては例えば7が挙げられる。
【0062】
【化5】
【0063】
〔RB1
式(1)中、RB1は、1価飽和炭化水素基、ハロゲノ1価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基である。
【0064】
B1で表される1価飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0065】
B1で表されるハロゲノ1価飽和炭化水素基としては、ハロゲノアルキル基が好ましい。ハロゲノ1価飽和炭化水素基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましい。
【0066】
B1で表されるヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基は、エーテル性酸素原子(すなわち、-O-)を含む1価飽和炭化水素基が好ましく、エーテル性酸素原子を含むアルキル基がより好ましい。つまり、RB1は、エーテル結合を更に有することが好ましい。
【0067】
B1で表されるハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基としては、ハロゲノ(ヘテロ原子含有アルキル基)が好ましい。ハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましい。ハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基は、エーテル性酸素原子を含むハロゲノ1価飽和炭化水素基が好ましく、エーテル性酸素原子を含むハロゲノアルキル基がより好ましい。
【0068】
B1の炭素数は、溶媒への溶解性に優れる点から、1~100が好ましく、2~50がより好ましく、3~20が更に好ましい。
【0069】
B1は、溶媒への溶解性に優れる点から、少なくとも1つのフッ素原子を含むことが好ましく、水素原子を含まないことが好ましい。
【0070】
中でも、溶媒への溶解性に優れる観点から、RB1は、下記式(B1)で表されることが好ましい。
21O-(R22O)m2-R23- …(B1)
【0071】
式(B1)中、R21は、フッ素原子を有していてもよいアルキル基であり、R22はそれぞれ独立に、炭素数1~6のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、R23は、炭素数1~6のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、m2は0~20の整数である。
【0072】
式(B1)中、R21としては、例えば、アルキル基及びフルオロアルキル基が挙げられる。
【0073】
21の炭素数は、溶媒への溶解性に優れる点から、1~50が好ましく、1~10がより好ましく、1~6が更に好ましい。
【0074】
21で表されるアルキル基は、直鎖状アルキル基であってもよく、分岐鎖状アルキル基であってもよく、環構造を有するアルキル基であってもよい。
21で表されるフルオロアルキル基は、直鎖状フルオロアルキル基であってもよく、分岐鎖状フルオロアルキル基であってもよく、環構造を有するフルオロアルキル基であってもよい。
【0075】
中でも、R21は、フルオロアルキル基が好ましく、直鎖状フルオロアルキル基がより好ましく、炭素数1~6の直鎖状フルオロアルキル基が更に好ましく、炭素数1~6の直鎖状ペルフルオロアルキル基が特に好ましい。
【0076】
式(B1)中、-(R22O)m2-は、上記式(A2)で表されることが好ましい。
【0077】
式(B1)中、m2は0~15が好ましく、0~10がより好ましく、0~4が更に好ましく、0~2が特に好ましい。
【0078】
式(B1)中、R23としては、上記、Rf1~Rf6と同様のものが挙げられる。
【0079】
中でも、R23は、炭素数1~3のフルオロアルキレン基が好ましく、炭素数1~3のペルフルオロアルキレン基がより好ましい。
【0080】
B1の具体例として、例えば、以下の構造が挙げられる。*は、-O-(C=O)-との結合部位を表す。
【0081】
【化6】
【0082】
〔RA2
式(2)中、RA2は、2価飽和炭化水素基、ハロゲノ2価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素)基である。
【0083】
A2で表される2価飽和炭化水素基、ハロゲノ2価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素)基としては、式(1)中のRA1で表される1価飽和炭化水素基、ハロゲノ1価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基から水素原子又はハロゲン原子を1つ除いた基が挙げられる。
【0084】
A2の炭素数は、溶媒への溶解性に優れる点から、1~200が好ましく、3~100がより好ましい。
【0085】
中でも、溶媒への溶解性に優れる観点から、RA2は、下記式(A5)で表されることが好ましい。つまり、RA2は、エーテル結合を更に有することが好ましく、ポリエーテル鎖及びフルオロポリエーテル鎖からなる群より選択される少なくとも一つを含むことがより好ましい。
-R31O-(R32O)m5-R33- …(A5)
【0086】
式(A5)中、R31及びR33は、それぞれ独立に、炭素数1~6のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、R32はそれぞれ独立に、炭素数1~6のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、m5は0~500の整数である。
【0087】
式(A5)中、R31及びR33としては、それぞれ独立に、式(A1)中のR13と同様のものが挙げられる。
式(A5)中、-(R32O)m5-としては、式(A1)中の-(R12O)m1-と同様のものが挙げられる。
【0088】
A2の具体例として、例えば、以下の構造が挙げられる。*は、-O-との結合部位を表し、n2は0~500の整数を表す。
【0089】
【化7】
【0090】
〔RB2及びRB3
式(2)中、RB2及びRB3は、それぞれ独立に、1価飽和炭化水素基、ハロゲノ1価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基である。
【0091】
B2又はRB3で表される1価飽和炭化水素基、ハロゲノ1価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基としては、式(1)中のRB1で表される1価飽和炭化水素基、ハロゲノ1価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基と同様の基が挙げられる。
【0092】
原料エステル化合物の例としては、下記化合物T1等も挙げられる。
【0093】
【化8】
【0094】
さらなる原料エステル化合物の例としては、CH-O(CFCFHO-CFCFCFCHO)n1-C(=O)-CF(CF)OCFCFCFも挙げられる。ここで、n1は1以上の数を表し、1~50が好ましく、1~40がより好ましく、1~30が更に好ましい。
【0095】
含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、原料エステル化合物の沸点は、30℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、100℃以上がより好ましい。同様の観点から、原料エステル化合物の沸点は、500℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましく、300℃以下が更に好ましい。本開示において、「沸点」は、常圧(760mmHg)における沸点である。
【0096】
原料エステル化合物の数平均分子量(Mn)は、100~100,000が好ましく、100~20,000がより好ましく、300~10,000が更に好ましく、400~6,000が特に好ましい。Mnが前記下限値以上であると、液相フッ素化において気相中での分解反応が抑制されやすい。平均分子量が前記上限値以下であると、含フッ素化合物の精製が行いやすい。MnはH-NMR及び19F-NMRによって特定された分子構造から算出される各分子の分子量の数平均値である。
【0097】
特定有機化合物は、市販されるものを使用してもよく、従来公知の方法により合成してもよい。
【0098】
-有機溶媒-
含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、有機溶媒は、(ペル)ハロゲノ化合物が好ましく、(ペル)フルオロ化合物がより好ましい。
含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、有機溶媒は、ペルハロゲノ化合物が好ましく、ペルフルオロ化合物がより好ましい。
なお、本開示において、「(ペル)ハロゲノ化合物」とは、ハロゲン化可能な原子又は結合を1つ以上有するハロゲノ化合物(部分ハロゲノ化合物)と、ハロゲン化可能な原子又は結合を有しないハロゲノ化合物(ペルハロゲノ化合物)とを包含する。
【0099】
含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、有機溶媒は、塩素原子、窒素原子及び酸素原子からなる群より選択される1つ以上の原子を有することが好ましい。
【0100】
有機溶媒としては、(ペル)フルオロアルカン化合物、(ペル)フルオロエーテル化合物、(ペル)フルオロポリエーテル化合物、クロロ(ペル)フルオロカーボン化合物、クロロ(ペル)フルオロエーテル化合物、クロロ(ペル)フルオロポリエーテル化合物、不活性流体(例えば、3M社製のフロリナート)化合物が挙げられる。
なお、本開示において、「(ペル)フルオロ化合物」とは、フッ素化可能な原子又は結合を1つ以上有するフルオロ化合物(部分フルオロ化合物)と、フッ素化可能な原子又は結合を有しないフルオロ化合物(ペルフルオロ化合物)とを包含する。
【0101】
含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、有機溶媒の沸点は、50℃以上が好ましく、50~500℃がより好ましく、50~300℃が更に好ましく、50~250℃が特に好ましい。
【0102】
含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、有機溶媒の炭素数は、4以上が好ましく、4~1,000がより好ましく、4~500が更に好ましく、4~100が特に好ましく、4~50が最も好ましい。
【0103】
含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、有機溶媒の分子量は、200以上が好ましく、200~50,000がより好ましく、200~25,000が更に好ましく、200~10,000が特に好ましく、200~1,000が最も好ましい。
分子量に分布がある場合、分子量は、質量平均分子量Mwを表す。
【0104】
含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、有機溶媒の粘度は、0.5~2,000mPa・sが好ましく、0.5~1,000mPa・sがより好ましく、1~500mPa・sが更に好ましい。
【0105】
含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、容器内での有機溶媒の蒸気圧は、0.009MPa以下が好ましく、0.007MPa以下がより好ましく、0.006MPa以下が更に好ましく、0.005MPa以下が特に好ましく、0.003MPa以下が最も好ましい。
蒸気圧の下限は、特に限定されるものではなく、0.001MPa以上にできる。
なお、本開示において、容器内での有機溶媒の蒸気圧は、特定有機化合物のフッ素化における有機溶媒の温度において、蒸気圧測定装置(例えば、日本サイエンスコア社製の蒸気圧測定装置)により測定する。
【0106】
有機溶媒の具体例を以下に列挙するが、これらに限定されるものではない。
CFClCFOCFCFClCFCl、
CFCFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COF、
CFCFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CFOCF(CF)COF
CFCFOCFCFOCFCFOCOCF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCF
(CFCFCOOCFCFCFCFCFOCOCF(CF
CFClCFClCFClCFCl、
CFCFCFOCF(CF)COF、
CFCFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COF、
CFCFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CFOCF(CF)COF
【0107】
また、上記した有機溶媒の他に、国際公開第02/004397号、国際公開第02/010107号、特表2003-508374号公報、国際公開第01/094285号、国際公開第00/56694号等に記載される溶媒を使用できる。
【0108】
なお、有機溶媒は、含ハロゲン有機化合物と同一の化合物であってもよい。また、有機溶媒は、含フッ素化合物と同一の化合物であってもよく、異なる化合物であってもよい。
【0109】
有機溶媒は、市販されるものを使用してもよく、従来公知の方法により合成してもよい。
【0110】
(気相)
気相は、フッ素ガスを含む混合ガスを含む。
また、特定有機化合物のフッ素化において、気相は、含ハロゲン有機化合物を含み、且つ気相における含ハロゲン有機化合物のモル分率が0.065以下である。
【0111】
含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、特定有機化合物のフッ素化における気相の温度は、上記含ハロゲン有機化合物のモル分率、特定有機化合物のフッ素化における混合ガスのフッ素ガス含有率等に応じて適宜変更することが好ましい。具体的には、10~80℃が好ましく、15~70℃がより好ましく、15~40℃が更に好ましい。
上記気相の温度は、容器内の気相部に設置した温度計より測定する。
【0112】
-混合ガス-
混合ガスは、フッ素ガスを含む。
含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、特定有機化合物のフッ素化において、混合ガスの総体積に対するフッ素ガスの含有率は、特定有機化合物のフッ素化における気相の温度等に応じて適宜変更することが好ましい。具体的には、99体積%以下が好ましく、80体積%以下がより好ましく、70体積%以下が更に好ましい。フッ素ガスの含有率は100体積%であってもよい。
上記含有率の下限値は特に限定されるものではなく、1体積%以上とすることができる。
【0113】
本製造方法は、特定有機化合物のフッ素化後、容器から混合ガスを排出してもよい。容器から排出される混合ガスの総体積に対するフッ素ガスの含有率は、上記含ハロゲン有機化合物のモル分率、特定有機化合物のフッ素化における気相の温度等に応じて適宜変更することが好ましい。具体的には、60体積%以下が好ましく、50体積%以下がより好ましく、30体積%以下が更に好ましく、20体積%以下が特に好ましい。
上記含有率の下限値は特に限定されるものではなく、0.1体積%以上とすることができる。
【0114】
混合ガスは、不活性ガスを含んでもよい。不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス等が挙げられる。
含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、混合ガスの総体積に対する不活性ガスの含有率は、1体積%以上が好ましく、20体積%以上がより好ましく、30体積%以上が更に好ましい。
上記含有率の上限値は特に限定されるものではなく、99体積%以下とすることができる。
【0115】
-含ハロゲン有機化合物-
含ハロゲン有機化合物は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子からなる群より選択される1種以上を有し得る。上記した中でも、フッ素原子が好ましい。
また、含ハロゲン有機化合物は、(ペル)ハロゲノ化合物であってもよく、(ペル)フルオロ化合物であってもよい。含ハロゲン有機化合物は、ペルハロゲノ化合物が好ましく、ペルフルオロ化合物がより好ましい。
【0116】
一実施形態において、含ハロゲン有機化合物は、有機溶媒が気化することにより生じる化合物である。
【0117】
-含フッ素化合物-
本製造方法により製造される含フッ素化合物は、特定有機化合物のフッ素化物である。含フッ素化合物は、ペルフルオロ化合物が好ましい。
【0118】
含フッ素化合物としては、ペルフルオロアルカン化合物、ペルフルオロエーテル化合物、ペルフルオロポリエーテル化合物、クロロペルフルオロカーボン化合物、クロロペルフルオロエーテル化合物、クロロペルフルオロポリエーテル化合物等が挙げられる。
【0119】
含フッ素化合物の具体例を以下に列挙するが、これらに限定されるものではない。
CFO(CFCFOCFCFCFCFO)CFCFOCFCFCFCFOCOCF(CF)OCFCFCF
CFClCFClCFOCFCFCl、
CFCFCFOCF(CF)COOCFCFCFCFOCOCF(CF)OCFCFCF
CFCFOCFCFOCFCFOCOCF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCF
(CFCFCOOCFCFCFCFCFOCOCF(CF
上記以外にも、式(1)で表される有機化合物のフッ素物であってもよい。
【0120】
-容器-
容器は、特定有機化合物及び有機溶媒を含む液相と、フッ素ガスを含む混合ガスを含む気相とを含むことができるものであれば、特に限定されるものではない。容器としては、オートクレーブ等を使用できる。
容器は、混合ガスを供給するための供給部を有していてもよい。また、容器は、混合ガスを排出するための排出部を有していてもよい。
上記排出部には、混合ガスを冷却し、凝集液とするための冷却器が設けられてもよい。また、容器は、上記凝集液を容器に返送するための液体返送管を有していてもよい。
容器は、特定有機化合物のフッ素化により副生されるHFを補足するための補足剤を充填した層を有していてもよい。一実施形態において、容器は、排出部に、第1冷却器、HF補足剤層及び第2冷却器を連結したものを有していてもよい。HF補足剤としては、NaF、KF、トリアルキルアミン等が挙げられる。
【0121】
特定有機化合物のフッ素化は、バッチ方式により行ってもよく、連続方式により行ってもよい。含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、連続方式が好ましい。
【0122】
連続方式の特定有機化合物のフッ素化方法の一実施形態としては、容器に有機溶媒を供給し、次いで、有機溶媒及び特定有機化合物の混合物、並びに混合ガスを容器へ供給する方法が挙げられる。なお、混合物及び混合ガスの供給前に、容器に混合ガスを別途供給してもよく、これにより、含フッ素化合物の収率を向上できる。
連続方式の特定有機化合物のフッ素化方法の他の実施形態としては、容器に有機溶媒及び特定有機化合物の混合物を供給し、次いで、混合ガスを容器へ供給する方法が挙げられる。
【0123】
含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、特定有機化合物が有するフッ素化可能な原子1モルに対する特定有機化合物のフッ素化に使用するフッ素の使用量は、50~2,000モルが好ましく、100~1,000モルがより好ましく、100~800モルが更に好ましい。
【0124】
含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、特定有機化合物のフッ素化は、加圧条件下において行うことが好ましい。加圧時の容器内の圧力は、0.01~5MPaが好ましく、0.05~3MPaがより好ましく、0.1~1MPaが更に好ましい。
上記圧力は、容器内の気相部に設置した圧力計より測定する。
【0125】
含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、特定有機化合物のフッ素化は、C-H結合含有化合物及び炭素-炭素二重結合含有化合物の少なくとも一方の存在下で行うことが好ましい。
【0126】
C-H結合含有化合物としては、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。
特定有機化合物が有するフッ素化可能な原子に対するC-H結合含有化合物の量は、0.1~10モル%が好ましく、0.1~5モル%がより好ましい。
【0127】
炭素-炭素二重結合含有化合物としては、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロブタジエン等が挙げられる。
特定有機化合物が有するフッ素化可能な原子に対する炭素-炭素二重結合含有化合物の量は、0.1~100モル%が好ましく、0.1~50モル%がより好ましい。
【0128】
含フッ素化合物の収率を向上させる観点から、特定有機化合物のフッ素化において、紫外線を照射してもよい。
【0129】
本製造方法は、特定有機化合物のフッ素化後に、特定有機化合物のフッ素化により製造される含フッ素化合物及び有機溶媒を含む液相と、フッ素ガスを含む混合ガスとを分離してもよい。
本製造方法は、分離した液相を濃縮し、回収してもよい。液相の濃縮には、エバポレータ等を使用できる。
本製造方法は、分離した混合ガスを冷却し、凝集液とし、容器へ返送してもよい。
【実施例0130】
以下、実施例によって本開示の実施形態を詳細に説明する。ただし、本開示の実施形態はこれらに限定されない。本開示において、例1~12は実施例、例13~14は比較例である。
【0131】
(使用した化合物)
特定有機化合物1:CFO(CFCFHOCFCFCFCHO)CFCFHOCFCFCFCHOCOCF(CF)OCFCFCF(nの平均値13、粘度500mPa・s、分子量4,236)、国際公開第2013/121984号の例6-2に記載の方法により合成。
特定有機化合物2:CHClCHClCHOCFCHFCl(沸点84℃、粘度4.4mPa・s、分子量246)、J.Org.Chem.1961,26,6,2085-2088に記載の方法により合成。
特定有機化合物3:CFCFCFOCF(CF)COOCHCHCHCHOCOCF(CF)OCFCFCF(沸点410℃、粘度781mPa・s、分子量714)、国際公開第2015/029839号の例6-1に記載の方法により合成。
特定有機化合物4:CHCHOCHCHOCHCHOCOCF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCF(沸点255℃、粘度660mPa・s、分子量612)、国際公開第2008/026707号の(工程1-1)に記載の方法により合成。
特定有機化合物5:(CFCFCOOCHCHCHCHCHOCOCF(CF(沸点241℃、粘度748mPa・s、分子量496)、国際公開第2015/029839号の例1-1に記載の方法により合成。
CFE-419:1,2-ジクロロ-1,1,2,3,3-ペンタフルオロ-3-[2-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ]-プロパン(CFClCFOCFCFClCFCl)。沸点115.5℃、粘度1.9mPa・s。
(HFPO):東京化成工業社製B1698。2,4,4,5,7,7,8,8,9,9,9-ウンデカフルオロ-2,5-ビストリフルオロメチル-3,6-ジオキサン-ノナノイルフルオリド(CFCFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COF)。沸点114℃、粘度2.2mPa・s。
(HFPO):富士フイルム和光純薬製PC6220K。ペルフルオロ(2,5,8-トリメチル-3,6,9-トリオキサドデカノイル)フルオリド(CFCFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CFOCF(CF)COF)。沸点166℃、粘度2.5mPa・s。
EEA-FE:CFCFOCFCFOCFCFOCOCF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCF(沸点205℃、粘度462mPa・s)、国際公開第2008/026707号の(工程1-2)に記載の方法によりにより合成。
BVE-FE:(CFCFCOOCFCFCFCFCFOCOCF(CF(沸点189℃、粘度606mPa・s)、国際公開第2015/029839号の例1-2に記載の方法により合成。
【0132】
(例1)
ベンゼン溶液注入口を備えるオートクレーブ(ニッケル製、内容積500mL)を用意し、オートクレーブのガス出口に、0℃に保持した冷却器A、NaFペレット充填層及び-10℃に保持した冷却器Bを直列に設置した。
また、冷却器Bにおいて得られる凝集液を、オートクレーブに戻すための液体返送管を設置した。
オートクレーブのガス出口には、KOH水溶液を充填した槽を設置した。
【0133】
オートクレーブに、302gのCFE-419を供給し、22℃に保持しながら撹拌した。オートクレーブに窒素ガスを22℃で1時間吹き込んだ後、窒素ガスで30体積%に希釈したフッ素ガスを22℃、流速2.0L/時間で1時間吹き込んだ。
【0134】
8.4gの特定有機化合物1を84.0gのCFE-419に溶解させ溶液Aを得た。
窒素ガスで30体積%に希釈したフッ素ガスを流速2.0L/時間で吹き込みながら、オートクレーブに、溶液Aを、5.3時間かけて注入した。
【0135】
22℃におけるCFE-419の蒸気圧(0.003MPa)、及びオートクレーブ内の圧力(0.1MPa[abs])を下記式に代入し、気相における含ハロゲン有機化合物のモル分率を求めたところ、0.034であった。
なお、有機溶媒の蒸気圧は、特定有機化合物のフッ素化における有機溶媒の温度である22℃において測定した。
なお、例1において、有機溶媒及び含ハロゲン有機化合物は共に、CFE-419である。
含ハロゲン有機化合物のモル分率=(特定有機化合物のフッ素化における容器内での有機溶媒の蒸気圧/特定有機化合物のフッ素化における容器内の圧力)
【0136】
オートクレーブのガス出口に設置した槽に充填されるKOH水溶液を、1NのHClを使用して、ガス出口から排出される混合ガスのフッ素ガス濃度を滴定したところ、15体積%であった。
【0137】
CFE-419にベンゼンを添加し、ベンゼンの濃度が0.017体積%であるベンゼン溶液Aを調製した。
オートクレーブ内に、ベンゼン溶液注入口からベンゼン溶液Aを9mL注入し、ベンゼン溶液注入口を閉めた。
次いで、窒素ガスで30体積%に希釈したフッ素ガスを流速2.0L/時間で吹き込みながら、1時間撹拌をした。次いで、窒素ガスを1時間吹き込んだ
【0138】
オートクレーブ内の液相をエバポレータにより濃縮後、19F-NMRから液相に含まれる含フッ素化合物を特定し、特定有機化合物1が有する水素原子に由来するピークが消失した(転化率>99.9%)を確認し、9.85gの含フッ素化合物を回収した(収率99.5%)。含フッ素化合物の構造及び19F-NMRの結果を以下に示す。
含フッ素化合物:CFO(CFCFOCFCFCFCFO)CFCFOCFCFCFCFOCOCF(CF)OCFCFCF
単位数(n)の平均値:13
19F-NMR(282.7MHz、溶媒CDCl、基準CFCl) δ(ppm):-55.2(3F)、-80.0(1F)、-82.0~-82.5(6F)、-84.1(54F)、-86.7~-87.8(3F)、-89.3(54F)、-91.3(2F)、-126.5(56F)、-130.4(2F)、-132.4(1F)
【0139】
(例2)
フッ素化における液相の温度及び気相の温度を表1の通りに変更した以外は例1と同様にフッ素化を行った。添加率及び収率を表2に示す。
なお、32℃におけるCFE-419の蒸気圧は、0.005MPaである。
【0140】
(例3)
8.4gの特定有機化合物2を84.1gのCFE-419に溶解させ溶液Cを得た。
溶液Aを溶液Cに変更し、窒素ガスで30体積%に希釈したフッ素ガスを窒素ガスで20体積%に希釈したフッ素ガスに変更し、且つフッ素化における液相の温度及び気相の温度を表1の通りに変更した以外は例1と同様にフッ素化を行った。添加率及び収率を表2に示す。
【0141】
例1と同様に、含フッ素化合物の構造及び19F-NMRの結果を以下に示す。
含フッ素化合物:CFClCFClCFOCFCFCl
19F-NMR(282.7MHz、溶媒CDCl、基準CFCl) δ(ppm):-62.5(2F)、-73.9(2F)、-82.5(2F)、-84.1(2F)、-125.6(1F)
【0142】
(例4)
8.4gの特定有機化合物3を84.1gの(HFPO)に溶解させ溶液Dを得た。
(HFPO)にベンゼンを添加し、ベンゼンの濃度が0.017体積%であるベンゼン溶液Bを調製した。
CFE-419を(HFPO)に変更し、溶液Aを溶液Dに変更し、ベンゼン溶液Aをベンゼン溶液Bに変更し、窒素ガスで30体積%に希釈したフッ素ガスを窒素ガスで20体積%に希釈したフッ素ガスに変更し、且つフッ素化における液相の温度及び気相の温度を表1の通りに変更した以外は例1と同様にフッ素化を行った。添加率及び収率を表2に示す。
なお、例4において、有機溶媒及び含ハロゲン有機化合物は共に、(HFPO)である。
25℃における(HFPO)の蒸気圧は、0.002MPaである。
【0143】
例1と同様に、含フッ素化合物の構造及び19F-NMRの結果を以下に示す。
含フッ素化合物:CFCFCFOCF(CF)COOCFCFCFCFOCOCF(CF)OCFCFCF
19F-NMR(282.7MHz、溶媒CDCl、基準CFCl) δ(ppm):-80.5(6F)、-80.9(4F)、-83.1(6F)、-122.6(4F)、-126.6(4F)、-130.7(4F)、-145.2(2F)
【0144】
(例5)
窒素ガスで20体積%に希釈したフッ素ガスを窒素ガスで30体積%に希釈したフッ素ガスに変更し、且つフッ素化における液相の温度及び気相の温度を表1の通りに変更した以外は例4と同様にフッ素化を行った。添加率及び収率を表2に示す。
15℃における(HFPO)の蒸気圧は、0.002MPaである。
【0145】
(例6)
8.4gの特定有機化合物4を84.0gのEEA-FEに溶解させ溶液Fを得た。
EEA-FEにベンゼンを添加し、ベンゼンの濃度が0.017体積%であるベンゼン溶液Cを調製した。
CFE-419をEEA-FEに変更し、溶液Aを溶液Fに変更し、ベンゼン溶液Aをベンゼン溶液Cに変更し、窒素ガスで30体積%に希釈したフッ素ガスを窒素ガスで60体積%に希釈したフッ素ガスに変更し、且つフッ素化における液相の温度及び気相の温度を表1の通りに変更した以外は例1と同様にフッ素化を行った。添加率及び収率を表2に示す。
なお、例6において、有機溶媒及び含ハロゲン有機化合物は共に、EEA-FEである。
25℃におけるEEA-FEの蒸気圧は、0.001MPaである。
【0146】
例1と同様に、含フッ素化合物の構造及び19F-NMRの結果を以下に示す。
含フッ素化合物:CFCFOCFCFOCFCFOCOCF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCF
19F-NMR(282.7MHz、溶媒CDCl、基準CFCl) δ(ppm):-81.7(3F)、-80.8(3F)、-82.0(3F)、-82.6(2F)、-85.6(2F)、-86.3(2F)、-89.6(3F)、-91.6(6F)、-92.2(2F)、-130.6(2F)、-131.8(1F)、-145.3(1F)
【0147】
(例7)
8.3gの特定有機化合物5を84.1gのBVE-FEに溶解させ溶液Gを得た。
BVE-FEにベンゼンを添加し、ベンゼンの濃度が0.017体積%であるベンゼン溶液Dを調製した。
CFE-419をBVE-FEに変更し、溶液Aを溶液Gに変更し、ベンゼン溶液Aをベンゼン溶液Dに変更し、且つフッ素化における液相の温度及び気相の温度を表1の通りに変更した以外は例1と同様にフッ素化を行った。添加率及び収率を表2に示す。
なお、例7において、有機溶媒及び含ハロゲン有機化合物は共に、BVE-FEである。
50℃におけるBVE-FEの蒸気圧は、0.001MPaである。
【0148】
例1と同様に、含フッ素化合物の構造及び19F-NMRの結果を以下に示す。
含フッ素化合物:(CFCFCOOCFCFCFCFCFOCOCF(CF
19F-NMR(282.7MHz、溶媒CDCl、基準CFCl) δ(ppm):-74.3(12F)、-86.1(4F)、-122.6(2F)、-125.7(4F)、-181.9(2F)
【0149】
(例8)
窒素ガスで30体積%に希釈したフッ素ガスを窒素ガスで50体積%に希釈したフッ素ガスに変更し、且つフッ素化における液相の温度及び気相の温度を表1の通りに変更した以外は例7と同様にフッ素化を行った。添加率及び収率を表2に示す。
なお、40℃におけるBVE-FEの蒸気圧は、0.007MPaである。
【0150】
(例9)
8.4gの特定有機化合物3を84.1gの(HFPO)に溶解させ溶液Iを得た。
(HFPO)にベンゼンを添加し、ベンゼンの濃度が0.017体積%であるベンゼン溶液Eを調製した。
CFE-419を(HFPO)に変更し、溶液Aを溶液Iに変更し、ベンゼン溶液Aをベンゼン溶液Eに変更し、窒素ガスで30体積%に希釈したフッ素ガスを窒素ガスで45体積%に希釈したフッ素ガスに変更し、且つフッ素化における液相の温度及び気相の温度を表1の通りに変更した以外は例1と同様にフッ素化を行った。添加率及び収率を表2に示す。
なお、例9において、有機溶媒及び含ハロゲン有機化合物は共に、(HFPO)である。
なお、21℃における(HFPO)の蒸気圧は、0.0002MPaである。
【0151】
(例10)
窒素ガスで45体積%に希釈したフッ素ガスを窒素ガスで10体積%に希釈したフッ素ガスに変更し、且つフッ素化における液相の温度及び気相の温度を表1の通りに変更した以外は例9と同様にフッ素化を行った。添加率及び収率を表2に示す。

なお、70℃における(HFPO)の蒸気圧は、0.003MPaである。
【0152】
(例11)
米国特許出願公開第2914514号に記載の方法により、CFClCFClCFClCFClを合成した。
なお、CFClCFClCFClCFClの沸点は151℃、粘度は2.4mPa・sである。
8.4gの特定有機化合物3を84.1gのCFClCFClCFClCFClに溶解させ溶液Kを得た。
CFClCFClCFClCFClにベンゼンを添加し、ベンゼンの濃度が0.015g/mLであるベンゼン溶液Fを調製した。
CFE-419をCFClCFClCFClCFClに変更し、溶液Aを溶液Kに変更し、ベンゼン溶液Aをベンゼン溶液Fに変更し、窒素ガスで30体積%に希釈したフッ素ガスを窒素ガスで20体積%に希釈したフッ素ガスに変更し、且つフッ素化における液相の温度及び気相の温度を表1の通りに変更した以外は例1と同様にフッ素化を行った。添加率及び収率を表2に示す。
なお、例11において、有機溶媒及び含ハロゲン有機化合物は共に、CFClCFClCFClCFClである。
なお、44℃におけるCFClCFClCFClCFClの蒸気圧は、0.003MPaである。
【0153】
(例12)
フッ素化における液相の温度及び気相の温度を表1の通りに変更した以外は例11と同様にフッ素化を行った。添加率及び収率を表2に示す。
なお、52℃におけるCFClCFClCFClCFClの蒸気圧は、0.005MPaである。
【0154】
(例13)
窒素ガスで30体積%に希釈したフッ素ガスを窒素ガスで20体積%に希釈したフッ素ガスに変更し、且つフッ素化における液相の温度及び気相の温度を表1の通りに変更した以外は例1と同様にフッ素化を行った。添加率及び収率を表2に示す。
なお、45℃におけるCFE-419の蒸気圧は、0.008MPaである。
【0155】
(例14)
CFE-419を(HFPO)に変更し、溶液Aを溶液Dに変更し、ベンゼン溶液Aをベンゼン溶液Bに変更し、窒素ガスで30体積%に希釈したフッ素ガスを窒素ガスで20体積%に希釈したフッ素ガスに変更し、且つフッ素化における液相の温度及び気相の温度を表1の通りに変更した以外は例1と同様にフッ素化を行った。添加率及び収率を表2に示す。
なお、44℃における(HFPO)の蒸気圧は、0.007MPaである。
【0156】
【表1】


【0157】
【表2】

【0158】
気相における含ハロゲン有機化合物のモル分率を0.065以下とした例1~12の含フッ素化合物の製造方法は、上記モル分率を0.065超とした例13~14に比べて、含フッ素化合物の収率が優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本開示の含フッ素化合物の製造方法は、従来と比較して高いフッ素化の収率で含フッ素化合物を製造できる。得られた含フッ素化合物は、種々の官能基(例えば、水酸基、エチレン性不飽和基、エポキシ基、カルボキシ基等)を有する含フッ素化合物に誘導できる。また、得られた含フッ素化合物及び当該含フッ素化合物から誘導できる含フッ素化合物は、表面処理剤、乳化剤、ゴム、界面活性剤、溶媒、熱媒体、医薬品、農薬、潤滑油、これらの中間体等に利用可能である。