(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074672
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】含フッ素化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 41/22 20060101AFI20240524BHJP
C07C 43/12 20060101ALI20240524BHJP
C07B 39/00 20060101ALN20240524BHJP
【FI】
C07C41/22
C07C43/12
C07B39/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185989
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 貴史
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 卓也
(72)【発明者】
【氏名】林 知広
(72)【発明者】
【氏名】酒井 貴行
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC30
4H006BB12
4H006BE53
4H006BM10
4H006BM71
4H006BP10
4H006GP01
4H006GP20
(57)【要約】
【課題】溶媒の選択幅が広がり、かつ目的化合物の良好な収率が得られる含フッ素化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】含フッ素化合物の製造方法は、反応器内に、フッ素化可能な原子又は結合を少なくとも1つ有する有機化合物、溶媒、及びフッ素ガスを導入して、前記フッ素化可能な原子又は結合を少なくとも1つ有する有機化合物をフッ素化し、前記フッ素化可能な原子又は結合の一部又はすべてがフッ素化された目的化合物を得ることを含み、前記溶媒は、前記目的化合物である主成分と、前記目的化合物におけるフッ素原子の少なくとも1つが水素原子若しくは塩素原子に置き換えられた構造を有する化合物又はその置換基の位置が異なる異性体である副成分と、を含み、前記溶媒中の前記副成分の合計含有率が、前記溶媒の全質量に対して0.1~15質量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器内に、フッ素化可能な原子又は結合を少なくとも1つ有する有機化合物、溶媒、及びフッ素ガスを導入して、前記フッ素化可能な原子又は結合を少なくとも1つ有する有機化合物をフッ素化し、前記フッ素化可能な原子又は結合の一部又はすべてがフッ素化された目的化合物を得ることを含み、
前記溶媒は、前記目的化合物である主成分と、前記目的化合物におけるフッ素原子の少なくとも1つが水素原子若しくは塩素原子に置き換えられた構造を有する化合物又はその置換基の位置が異なる異性体である副成分と、を含み、
前記溶媒中の前記副成分の合計含有率が、前記溶媒の全質量に対して0.1~15質量%である、含フッ素化合物の製造方法。
【請求項2】
前記フッ素化可能な原子又は結合を少なくとも1つ有する有機化合物は、前記フッ素化可能な原子又は結合を少なくとも1つ有する有機化合物を原料化合物として含む原料溶液として、前記反応器内に導入され、
前記原料溶液は、前記原料化合物以外の化合物を含まないか、前記原料化合物以外の化合物を前記原料溶液に対して15質量%以下含む、
請求項1に記載の含フッ素化合物の製造方法。
【請求項3】
前記副成分がハロゲン原子を含む、請求項1に記載の含フッ素化合物の製造方法。
【請求項4】
前記副成分が塩素原子を含み、分子中の塩素原子の数が炭素原子の数以下である、請求項1に記載の含フッ素化合物の製造方法。
【請求項5】
前記副成分が水素原子を含み、分子中の水素原子の数が炭素原子の数よりも少ない、請求項1に記載の含フッ素化合物の製造方法。
【請求項6】
前記副成分が水素原子を含み、分子中の水素原子の数が1~3個である、請求項1に記載の含フッ素化合物の製造方法。
【請求項7】
前記溶媒は、精製工程を経ずに供給される、請求項1~6のいずれか1項に記載の含フッ素化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、含フッ素化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素化合物には産業上有用な化合物が多く存在し、従来から様々な製造方法が開発されてきた。フッ素化可能な構造を有する化合物のフッ素化の方法の1つとして、フッ素ガスを用いて液相中でフッ素化反応を行う方法が知られている。例えば、特許文献1には、水酸基を有する化合物とアシルフルオリド基を有する化合物とのエステルであってフッ素化されうる構造を有するエステル化合物を、液相中でフッ素化して含フッ素エステル化合物を製造する際に、エステル化合物と前記アシルフルオリド基を有する化合物との液状混合物においてフッ素化を行うことを特徴とする含フッ素エステル化合物の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液相中でのフッ素化を伴う含フッ素化合物の合成では、反応溶媒として有機溶媒を用いる。容易に入手可能な有機溶媒の中には不純物を含有するものがあり、かかる有機溶媒を精製して反応溶媒として用いる場合がある。一方、目的化合物の良好な収率を維持しつつ、工程の簡略化の観点から精製工程を省略できたり、入手容易性の観点から溶媒の選択幅を広げたりすることが好ましい。かかる事情に鑑み、本開示は、溶媒の選択幅が広がり、かつ目的化合物の良好な収率が得られる含フッ素化合物の製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
<1> 反応器内に、フッ素化可能な原子又は結合を少なくとも1つ有する有機化合物、溶媒、及びフッ素ガスを導入して、前記フッ素化可能な原子又は結合を少なくとも1つ有する有機化合物をフッ素化し、前記フッ素化可能な原子又は結合の一部又はすべてがフッ素化された目的化合物を得ることを含み、
前記溶媒は、前記目的化合物である主成分と、前記目的化合物におけるフッ素原子の少なくとも1つが水素原子若しくは塩素原子に置き換えられた構造を有する化合物又はその置換基の位置が異なる異性体である副成分と、を含み、
前記溶媒中の前記副成分の合計含有率が、前記溶媒の全質量に対して0.1~15質量%である、含フッ素化合物の製造方法。
<2> 前記フッ素化可能な原子又は結合を少なくとも1つ有する有機化合物は、前記フッ素化可能な原子又は結合を少なくとも1つ有する有機化合物を原料化合物として含む原料溶液として、前記反応器内に導入され、
前記原料溶液は、前記原料化合物以外の化合物を含まないか、前記原料化合物以外の化合物を前記原料溶液に対して15質量%以下含む、
<1>に記載の含フッ素化合物の製造方法。
<3> 前記副成分がハロゲン原子を含む、<1>又は<2>に記載の含フッ素化合物の製造方法。
<4> 前記副成分が塩素原子を含み、分子中の塩素原子の数が炭素原子の数以下である、<1>~<3>のいずれか1項に記載の含フッ素化合物の製造方法。
<5> 前記副成分が水素原子を含み、分子中の水素原子の数が炭素原子の数よりも少ない、<1>~<4>のいずれか1項に記載の含フッ素化合物の製造方法。
<6> 前記副成分が水素原子を含み、分子中の水素原子の数が1~3個である、<1>~<5>のいずれか1項に記載の含フッ素化合物の製造方法。
<7> 前記溶媒は、精製工程を経ずに供給される、<1>~<6>のいずれか1項に記載の含フッ素化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、溶媒の選択幅が広がり、かつ目的化合物の良好な収率が得られる含フッ素化合物の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の実施形態を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示の実施形態は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示の実施形態を制限するものではない。
【0008】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において、「有機基」とは、炭素原子を必須とする基をいう。
本開示において、「炭化水素基」は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよく、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、及び芳香族炭化水素基のいずれでもよい。
本開示において、「部分ハロゲン化」とは、化合物のハロゲン化可能な部位のうち一部のみがハロゲン化していることを意味する。
【0009】
[含フッ素化合物の製造方法]
本開示の含フッ素化合物の製造方法(以下、「本製造方法」とも記す。)は、反応器内に、フッ素化可能な原子又は結合を少なくとも1つ有する有機化合物(以下、「原料化合物」とも記す。)、溶媒、及びフッ素ガスを導入して、前記原料化合物をフッ素化し、前記フッ素化可能な原子又は結合の一部又はすべてがフッ素化された目的化合物を得ることを含み、前記溶媒は、前記目的化合物である主成分と、前記目的化合物におけるフッ素原子の少なくとも1つが水素原子若しくは塩素原子に置き換えられた構造を有する化合物又はその置換基の位置が異なる異性体である副成分と、を含み、前記溶媒中の前記副成分の合計含有率が、前記溶媒の全質量に対して0.1~15質量%である。以下、「目的化合物におけるフッ素原子の少なくとも1つが水素原子若しくは塩素原子に置き換えられた構造を有する化合物又はその置換基の位置が異なる異性体である副成分」を「特定副成分」とも記す。
【0010】
本製造方法は液相中でのフッ素化工程(以下、「液相フッ素化」とも記す。)を含む。本製造方法は、目的化合物を主成分として含む溶媒中で液相フッ素化を行う方法である。かかる方法によれば、例えば、フッ素化後の液相を循環させてさらなるフッ素化の溶媒に用い得るため、製造の効率化が可能である。また、フッ素化後の液相には目的化合物が高濃度で存在するため、目的化合物の回収が容易である。一般的に、液相フッ素化は、反応溶媒として、フッ素とは反応せずフッ素を溶解する溶媒(例えばペルフルオロ化合物)が用いられる。これは、溶媒のフッ素化により副反応が起こったり、フッ素化の効率が低下したりすることを抑制するためである。一方、発明者らは、目的化合物である主成分と上記含有率の特定副成分とを含む溶媒中で液相フッ素化を行うと、予期せぬことに、目的化合物の収率が良好であることを見出した。したがって、例えば溶媒が特定副成分を不純物として含んでいても、精製工程を経ずにフッ素化溶媒として用い得る。また、かかる溶媒をフッ素化溶媒として用い得るため、溶媒の選択幅が広がる。
溶媒が特定副成分を含んでいても良好な収率が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。特定副成分は目的化合物におけるフッ素原子の少なくとも1つが水素原子若しくは塩素原子に置き換えられた構造を有する化合物又はその置換基の位置が異なる異性体であるため、フッ素化により目的化合物に変換され得ると考えられる。液相フッ素化中の溶媒では、特定副成分の含有率が上記範囲であれば、かかる特定副成分のフッ素化反応が意外にも良好に起こるものと推測される。また、特定副成分は原料化合物とも目的化合物とも親和性が高いため、特定副成分は前記構造を有することで、原料化合物の分散性を向上させると考えられる。これにより、原料化合物の濃度の均一性を向上でき、例えば局所的に原料化合物の濃度が高い部位での分解反応が発生することを抑制でき、良好な収率が得られると考えられる。
【0011】
一態様において、本製造方法によれば、溶媒を効率的に使用して目的化合物を製造できる。一般的に、目的化合物を溶媒として用いる液相フッ素化では、フッ素化反応中に溶媒が一部分解して微量の副生物が発生する。しかしながら、純度の高い目的化合物を用いる場合と比べて、特定副成分が0.1~15質量%含まれる溶媒を用いても、フッ素化反応後の不純物(副生物及び特定副成分)の量はほぼ変わらないことが見出されている。したがって、本製造方法によれば、目的化合物を溶媒として効率的に利用できると考えられる。
【0012】
本製造方法の具体例を以下に示す。なお以下の例は本製造方法を制限するものではない。
【0013】
一例において、HCFE-473を、液相中でフッ素ガスと窒素ガスとの混合ガスによりフッ素化してCFE-419を製造する。フッ素化における溶媒として、CFE-419とHCFE-428の90:10(質量比)混合物を用いる。
【0014】
【0015】
溶媒中のHCFE-428は、CFE-419におけるフッ素原子の1つが水素原子で置き換えられた構造を有する化合物又はその置換基の位置が異なる異性体である下記3種類の化合物を包括的に表す。
【0016】
【0017】
溶媒中のHCFE-428はフッ素化工程においてCFE-419に変換され得る。また、HCFE-428は原料化合物であるHCFE-473の分散性にも寄与すると考えられる。これにより、目的化合物であるCFE-419のみを溶媒として用いる場合と比べて、HCFE-429を10質量%含有する場合であっても、収率が大きく低下することなく、良好に目的化合物であるCFE-419が得られる。
【0018】
HCFE-473を液相フッ素化してCFE-419を製造するさらなる一例において、溶媒として、CFE-419とCFE-418の90:10(質量比)混合物を用いる。
【0019】
【0020】
溶媒中のCFE-418は、CFE-419におけるフッ素原子の1つが塩素原子で置き換えられた構造を有する化合物又はその置換基の位置が異なる異性体である下記2種類の化合物を包括的に表す。
【0021】
【0022】
溶媒中のCFE-418はフッ素化工程においてCFE-419に変換され得る。また、CFE-418は原料化合物であるHCFE-473の分散性にも寄与すると考えられる。これにより、目的化合物であるCFE-419のみを溶媒として用いる場合と比べて、CFE-418を10質量%含有する場合であっても、収率が大きく低下することなく、良好に目的化合物であるCFE-419が得られる。
【0023】
(原料化合物)
液相フッ素化の原料化合物として、フッ素化可能な原子又は結合を少なくとも1つ有する有機化合物を用いる。原料化合物は、市販で入手可能なものでも合成したものでもよい。
フッ素化可能な原子としては、炭素原子に結合する水素原子、炭素原子に結合する塩素原子、炭素原子に結合する臭素原子、炭素原子に結合するヨウ素原子が挙げられる。
フッ素化可能な結合としては、炭素-炭素不飽和二重結合及び炭素-炭素不飽和三重結合が挙げられる。
原料化合物中のフッ素化可能な原子又は結合の個数は1個以上であればよい。分解反応防止の観点からは、フッ素化可能な原子の個数は1~10が好ましく、1~3個がより好ましい。分解反応防止の観点からは、フッ素化可能な結合の個数は1~5個が好ましく、1~3個がより好ましい。
【0024】
原料化合物の炭素数は、目的化合物に応じて選択すればよく、4以上が好ましく、一態様において、4~1,000がより好ましく、4~500がさらに好ましく、4~100が特に好ましく、4~50が極めて好ましく、4~20がよりさらに好ましく、4~15でもよく、4~10でもよい。
【0025】
一態様において、目的化合物の収率を向上する観点から、原料化合物はハロゲン原子を有することが好ましく、フッ素原子及び塩素原子からなる群より選択される少なくとも1つを有することがより好ましく、フッ素原子を有することがさらに好ましい。溶媒への溶解性及び目的化合物の収率を向上させる観点からは、原料化合物中のフッ素含量(すなわち、分子中のフッ素原子の割合)は、30質量%以上が好ましく、30~84質量%がより好ましく、30~76質量%がさらに好ましい。
【0026】
原料化合物としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル化合物、エステル化合物、アミド化合物、チオエーテル化合物、チオエステル化合物等が挙げられる。これらの化合物は部分ハロゲン化されていてもよく、ハロゲン化されていなくてもよい。原料化合物はこれらの化合物の炭素骨格にフッ素化反応により変化しないへテロ原子又はヘテロ原子団を含む化合物であってもよい。以下、便宜上、原料化合物においてエステル結合とエーテル結合を両方有する化合物はエステル化合物に分類するものとする。
【0027】
原料化合物である脂肪族炭化水素の炭素数は、4以上が好ましく、一態様において、4~1,000がより好ましく、4~500がさらに好ましく、4~100が特に好ましく、4~50が極めて好ましく、4~20がよりさらに好ましく、4~10でもよく、4~8でもよい。脂肪族炭化水素は飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよい。脂肪族炭化水素はハロゲン原子以外の置換基を有しても有しなくてもよく、有しないことが好ましい。
【0028】
原料化合物である芳香族炭化水素の炭素数は、4以上が好ましく、一態様において、4~1,000がより好ましく、4~500がさらに好ましく、4~100が特に好ましく、4~50が極めて好ましく、4~20がよりさらに好ましく、4~10でもよく、4~8でもよい。芳香族炭化水素はハロゲン原子以外の置換基を有しても有しなくてもよい。置換基としては、炭素数1~100の脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0029】
原料化合物であるアミド化合物の炭素数は、4以上が好ましく、一態様において、4~1,000がより好ましく、4~500がさらに好ましく、4~100が特に好ましく、4~50が極めて好ましく、4~20がよりさらに好ましく、7~15でもよく、7~12でもよい。アミド化合物はアミド基を1つ又は複数有する化合物である。アミド化合物はポリアミド化合物であってもよい。
【0030】
原料化合物であるチオエーテル化合物の炭素数は、4以上が好ましく、一態様において、4~1,000がより好ましく、4~500がさらに好ましく、4~100が特に好ましく、4~50が極めて好ましく、4~20がよりさらに好ましく、4~15でもよく、4~10でもよい。チオエーテル化合物はチオエーテル結合を1つ又は複数有する化合物である。チオエーテル化合物はポリチオエーテル化合物であってもよい。
【0031】
原料化合物であるチオエステル化合物の炭素数は、4以上が好ましく、一態様において、4~1,000がより好ましく、4~500がさらに好ましく、4~100が特に好ましく、4~50が極めて好ましく、4~20がよりさらに好ましく、4~15でもよく、4~10でもよい。チオエステル化合物はチオエステル結合を1つ又は複数有する化合物である。チオエステル化合物はポリチオエステル化合物であってもよい。
【0032】
原料化合物であるエステル化合物の炭素数は、4以上が好ましく、一態様において、4~1,000がより好ましく、4~500がさらに好ましく、4~100が特に好ましく、4~50が極めて好ましく、4~20がよりさらに好ましく、4~15でもよく、4~10でもよい。エステル化合物はエステル結合を1つ又は複数有する化合物である。エステル化合物はポリエステル化合物であってもよい。エステル化合物は、モノエステル化合物又はジエステル化合物が好ましい。
【0033】
エステル化合物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物等が挙げられる。
RA1-O-(C=O)-RB1 …(1)
RB2-(C=O)-O-RA2-O-(C=O)-RB3 …(2)
【0034】
式(1)及び(2)中、
RA1、RB1、RB2、及びRB3はそれぞれ独立に、1価飽和炭化水素基、ハロゲノ1価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基であり、
RA2は、2価飽和炭化水素基、ハロゲノ2価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素)基である。
【0035】
本開示において、「1価飽和炭化水素基」は、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、及びシクロアルキル基のいずれであってもよい。「2価飽和炭化水素基」は、直鎖状アルキレン基、分岐鎖状アルキレン基、及びシクロアルキレン基のいずれであってもよい。直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、直鎖状アルキレン基、及び分岐鎖状アルキレン基には、脂環構造が含まれていてもよい。
【0036】
本開示において、「ハロゲノ」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子により、基中に存在する水素原子の1個以上が置換されたことを意味する。基中には、水素原子が存在していてもよく、存在しなくてもよい。
【0037】
本開示において、「ハロゲノ1価飽和炭化水素基」とは、ハロゲン原子により、1価飽和炭化水素基中に存在する水素原子の1個以上が置換された基を意味する。「ハロゲノ2価飽和炭化水素基」とは、ハロゲン原子により、2価飽和炭化水素基中に存在する水素原子の1個以上が置換された基を意味する。
【0038】
本開示において、「ヘテロ原子」とは、炭素原子及び水素原子以外の原子を意味し、例えば、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子が挙げられる。
【0039】
本開示において、「ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基」とは、1価飽和炭化水素基中に、2価のヘテロ原子、又はヘテロ原子を含む2価の基が含まれている基を意味する。「ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素基」とは、2価飽和炭化水素基中に、2価のヘテロ原子、又はヘテロ原子を含む2価の基が含まれている基を意味する。2価のヘテロ原子としては、例えば、-O-及び-S-が挙げられる。また、ヘテロ原子を含む2価の基としては、例えば、-NH-、-C(=O)-、及び-SO2-が挙げられる。
【0040】
本開示において、「ハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基」とは、上記ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基中の水素原子の1個以上がハロゲン原子に置換された基を意味する。「ハロゲノ(ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素)基」とは、上記ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素基中の水素原子の1個以上がハロゲン原子に置換された基を意味する。
【0041】
式(1)において、RA1及びRB1の少なくとも一方が水素原子を含むことが好ましい。また、式(2)において、RA2、RB2、及びRB3からなる群より選択される少なくとも一つが水素原子を含むことが好ましい。
【0042】
〔RA1〕
式(1)中、RA1は、1価飽和炭化水素基、ハロゲノ1価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基である。
【0043】
RA1で表される1価飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0044】
RA1で表されるハロゲノ1価飽和炭化水素基としては、ハロゲノアルキル基が好ましい。ハロゲノ1価飽和炭化水素基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0045】
RA1で表されるヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基は、エーテル性酸素原子(すなわち、-O-)を含む1価飽和炭化水素基が好ましく、エーテル性酸素原子を含むアルキル基がより好ましい。
【0046】
RA1で表されるハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基としては、ハロゲノ(ヘテロ原子含有アルキル基)が好ましい。ハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましい。ハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基は、エーテル性酸素原子を含むハロゲノ1価飽和炭化水素基が好ましく、エーテル性酸素原子を含むハロゲノアルキル基がより好ましい。
【0047】
RA1の炭素数は、溶媒への溶解性に優れる点から、1~200が好ましく、3~100がより好ましい。
【0048】
中でも、溶媒中への溶解性に優れる観点から、RA1は、下記式(A1)で表されることが好ましい。つまり、RA1は、エーテル結合をさらに有することが好ましく、ポリエーテル鎖及びフルオロポリエーテル鎖からなる群より選択される少なくとも一つを含むことがより好ましい。
R11O-(R12O)m1-R13- …(A1)
【0049】
式(A1)中、R11は、フッ素原子を有していてもよいアルキル基であり、R12はそれぞれ独立に、炭素数1~6のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、R13は、炭素数1~6のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、m1は0~500の整数である。
【0050】
式(A1)中、R11としては、例えば、アルキル基及びフルオロアルキル基が挙げられる。
【0051】
R11の炭素数は、溶媒への溶解性に優れる点から、1~100が好ましく、1~50がより好ましく、1~10がさらに好ましく、1~6が特に好ましい。
【0052】
R11で表されるアルキル基は、直鎖状アルキル基であってもよく、分岐鎖状アルキル基であってもよく、環構造を有するアルキル基であってもよい。
【0053】
R11で表されるフルオロアルキル基は、直鎖状フルオロアルキル基であってもよく、分岐鎖状フルオロアルキル基であってもよく、環構造を有するフルオロアルキル基であってもよい。
【0054】
中でも、R11は、アルキル基であることが好ましく、直鎖状アルキル基であることがより好ましく、炭素数1~6の直鎖状アルキル基であることがさらに好ましい。
【0055】
式(A1)中、-(R12O)m1-は、下記式(A2)で表されることが好ましい。
-[(Rf1O)k1(Rf2O)k2(Rf3O)k3(Rf4O)k4(Rf5O)k5(Rf6O)k6]- …(A2)
ただし、
Rf1は、炭素数1のフルオロアルキレン基であり、
Rf2は、炭素数2のフルオロアルキレン基であり、
Rf3は、炭素数3のフルオロアルキレン基であり、
Rf4は、炭素数4のフルオロアルキレン基であり、
Rf5は、炭素数5のフルオロアルキレン基であり、
Rf6は、炭素数6のフルオロアルキレン基である。
k1、k2、k3、k4、k5、及びk6は、それぞれ独立に0又は1以上の整数を表し、k1+k2+k3+k4+k5+k6は0~500の整数である。
【0056】
溶媒中への溶解性に優れる観点から、k1+k2+k3+k4+k5+k6は、1~500の整数が好ましく、1~300の整数がより好ましく、5~200の整数がさらに好ましく、10~150の整数が特に好ましい。
【0057】
なお、式(A2)における(Rf1O)~(Rf6O)の結合順序は任意である。式(A2)のk1~k6は、それぞれ、(Rf1O)~(Rf6O)の個数を表すものであり、配置を表すものではない。例えば、(Rf5O)k5は、(Rf5O)の数がk5個であることを表し、(Rf5O)k5のブロック配置構造を表すものではない。同様に、(Rf1O)~(Rf6O)の記載順は、それぞれの単位の結合順序を表すものではない。
【0058】
Rf3~Rf6において、フルオロアルキレン基は、直鎖状フルオロアルキレン基であってもよく、分岐鎖状フルオロアルキレン基であってもよく、環構造を有するフルオロアルキレン基であってもよい。
【0059】
Rf1の具体例としては、-CF2-及び-CHF-が挙げられる。
【0060】
Rf2の具体例としては、-CF2CF2-、-CF2CHF-、-CHFCF2-、-CHFCHF-、-CH2CF2-、及び-CH2CHF-が挙げられる。
【0061】
Rf3の具体例としては、-CF2CF2CF2-、-CF2CHFCF2-、-CF2CH2CF2-、-CHFCF2CF2-、-CHFCHFCF2-、-CHFCHFCHF-、-CHFCH2CF2-、-CH2CF2CF2-、-CH2CHFCF2-、-CH2CH2CF2-、-CH2CF2CHF-、-CH2CHFCHF-、-CH2CH2CHF-、-CF(CF3)-CF2-、-CF(CHF2)-CF2-、-CF(CH2F)-CF2-、-CF(CH3)-CF2-、-CF(CF3)-CHF-、-CF(CHF2)-CHF-、-CF(CH2F)-CHF-、-CF(CH3)-CHF-、-CF(CF3)-CH2-、-CF(CHF2)-CH2-、-CF(CH2F)-CH2-、-CF(CH3)-CH2-、-CH(CF3)-CF2-、-CH
(CHF2)-CF2-、-CH(CH2F)-CF2-、-CH(CH3)-CF2-、-CH(CF3)-CHF-、-CH(CHF2)-CHF-、-CH(CH2F)-CHF-、-CH(CH3)-CHF-、-CH(CF3)-CH2-、-CH(CHF2)-CH2-、及び-CH(CH2F)-CH2-が挙げられる。
【0062】
Rf4の具体例としては、-CF2CF2CF2CF2-、-CF2CF2CF2CHF-、-CF2CF2CF2CH2-、-CF2CHFCF2CF2-、-CHFCHFCF2CF2-、-CH2CHFCF2CF2-、-CF2CH2CF2CF2-、-CHFCH2CF2CF2-、-CH2CH2CF2CF2-、-CHFCF2CHFCF2-、-CH2CF2CHFCF2-、-CF2CHFCHFCF2-、-CHFCHFCHFCF2-、-CH2CHFCHFCF2-、-CF2CH2CHFCF2-、-CHFCH2CHFCF2-、-CH2CH2CHFCF2-、-CF2CH2CH2CF2-、-CHFCH2CH2CF2-、-CH2CH2CH2CF2-、-CHFCH2CH2CHF-、-CH2CH2CH2CHF-、及び-cycloC4F6-が挙げられる。
【0063】
Rf5の具体例としては、-CF2CF2CF2CF2CF2-、-CHFCF2CF2CF2CF2-、-CH2CHFCF2CF2CF2-、-CF2CHFCF2CF2CF2-、-CHFCHFCF2CF2CF2-、-CF2CH2CF2CF2CF2-、-CHFCH2CF2CF2CF2-、-CH2CH2CF2CF2CF2-、-CF2CF2CHFCF2CF2-、-CHFCF2CHFCF2CF2-、-CH2CF2CHFCF2CF2-、-CH2CF2CF2CF2CH2-、及び-cycloC5F8-が挙げられる。
【0064】
Rf6の具体例としては、-CF2CF2CF2CF2CF2CF2-、-CF2CF2CHFCHFCF2CF2-、-CHFCF2CF2CF2CF2CF2-、-CHFCHFCHFCHFCHFCHF-、-CHFCF2CF2CF2CF2CH2-、-CH2CF2CF2CF2CF2CH2-、及び-cycloC6F10-が挙げられる。
ここで、-cycloC4F6-は、ペルフルオロシクロブタンジイル基を意味し、その具体例としては、ペルフルオロシクロブタン-1,2-ジイル基が挙げられる。-cycloC5F8-は、ペルフルオロシクロペンタンジイル基を意味し、その具体例としては、ペルフルオロシクロペンタン-1,3-ジイル基が挙げられる。-cycloC6F10-は、ペルフルオロシクロヘキサンジイル基を意味し、その具体例としては、ペルフルオロシクロヘキサン-1,4-ジイル基が挙げられる。
【0065】
中でも、-(R12O)m1-は、下記式(F1)~(F3)で表される構造からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、式(F2)で表される構造を含むことがより好ましい。
-(Rf1O)k1-(Rf2O)k2- …(F1)
-(Rf2O)k2-(Rf4O)k4- …(F2)
-(Rf3O)k3- …(F3)
ただし、式(F1)~式(F3)の各符号は、上記式(A2)と同様である。
【0066】
式(F1)及び式(F2)において、(Rf1O)と(Rf2O)、(Rf2O)と(Rf4O)の結合順序は各々任意である。例えば(Rf1O)と(Rf2O)が交互に配置されてもよく、(Rf1O)と(Rf2O)が各々ブロックに配置されてもよく、またランダムであってもよい。式(F2)においても同様である。
式(F1)において、k1は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。またk2は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
式(F2)において、k2は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。またk4は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
式(F3)において、k3は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
【0067】
式(A1)中、R13としては、上記、Rf1~Rf6と同様のものが挙げられる。
【0068】
中でも、R13は、炭素数1~4のフルオロアルキレン基が好ましい。
【0069】
RA1の具体例として、例えば、以下の構造が挙げられる。*は、-O-との結合部位を表し、n1は0~60の整数、n2は0~500の整数を表す。n1としては例えば13が挙げられ、n2としては例えば7が挙げられる。
【0070】
【0071】
〔RB1〕
式(1)中、RB1は、1価飽和炭化水素基、ハロゲノ1価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基である。
【0072】
RB1で表される1価飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0073】
RB1で表されるハロゲノ1価飽和炭化水素基としては、ハロゲノアルキル基が好ましい。ハロゲノ1価飽和炭化水素基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましい。
【0074】
RB1で表されるヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基は、エーテル性酸素原子(すなわち、-O-)を含む1価飽和炭化水素基が好ましく、エーテル性酸素原子を含むアルキル基がより好ましい。つまり、RB1は、エーテル結合をさらに有することが好ましい。
【0075】
RB1で表されるハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基としては、ハロゲノ(ヘテロ原子含有アルキル基)が好ましい。ハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましい。ハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基は、エーテル性酸素原子を含むハロゲノ1価飽和炭化水素基が好ましく、エーテル性酸素原子を含むハロゲノアルキル基がより好ましい。
【0076】
RB1の炭素数は、溶媒への溶解性に優れる点から、1~100が好ましく、2~50がより好ましく、2~20がさらに好ましい。
【0077】
RB1は、溶媒への溶解性に優れる点から、少なくとも1つのフッ素原子を含むことが好ましく、水素原子を含まないことが好ましい。
【0078】
中でも、溶媒への溶解性に優れる観点から、RB1は、下記式(B1)で表されることが好ましい。
R21O-(R22O)m2-R23- …(B1)
【0079】
式(B1)中、R21は、フッ素原子を有していてもよいアルキル基であり、R22はそれぞれ独立に、炭素数1~6のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、R23は、炭素数1~6のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、m2は0~20の整数である。
【0080】
式(B1)中、R21としては、例えば、アルキル基及びフルオロアルキル基が挙げられる。
【0081】
R21の炭素数は、溶媒への溶解性に優れる点から、1~50が好ましく、1~10がより好ましく、1~6がさらに好ましい。
【0082】
R21で表されるアルキル基は、直鎖状アルキル基であってもよく、分岐鎖状アルキル基であってもよく、環構造を有するアルキル基であってもよい。
R21で表されるフルオロアルキル基は、直鎖状フルオロアルキル基であってもよく、分岐鎖状フルオロアルキル基であってもよく、環構造を有するフルオロアルキル基であってもよい。
【0083】
中でも、R21は、フルオロアルキル基が好ましく、直鎖状フルオロアルキル基がより好ましく、炭素数1~6の直鎖状フルオロアルキル基がさらに好ましく、炭素数1~6の直鎖状ペルフルオロアルキル基が特に好ましい。
【0084】
式(B1)中、-(R22O)m2-は、上記式(A2)で表されることが好ましい。
【0085】
式(B1)中、m2は0~15が好ましく、0~10がより好ましく、0~4がさらに好ましく、0~2が特に好ましい。
【0086】
式(B1)中、R23としては、上記、Rf1~Rf6と同様のものが挙げられる。
【0087】
中でも、R23は、炭素数1~3のフルオロアルキレン基が好ましく、炭素数1~3のペルフルオロアルキレン基がより好ましい。
【0088】
RB1の具体例として、例えば、以下の構造が挙げられる。*は、-O-(C=O)-との結合部位を表す。
【0089】
【0090】
〔RA2〕
式(2)中、RA2は、2価飽和炭化水素基、ハロゲノ2価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素)基である。
【0091】
RA2で表される2価飽和炭化水素基、ハロゲノ2価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有2価飽和炭化水素)基としては、式(1)中のRA1で表される1価飽和炭化水素基、ハロゲノ1価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基から水素原子又はハロゲン原子を1つ除いた基が挙げられる。
【0092】
RA2の炭素数は、溶媒への溶解性に優れる点から、1~200が好ましく、3~100がより好ましい。
【0093】
中でも、溶媒への溶解性に優れる観点から、RA2は、下記式(A5)で表されることが好ましい。つまり、RA2は、エーテル結合をさらに有することが好ましく、ポリエーテル鎖及びフルオロポリエーテル鎖からなる群より選択される少なくとも一つを含むことがより好ましい。
-R31O-(R32O)m5-R33- …(A5)
【0094】
式(A5)中、R31及びR33は、それぞれ独立に、炭素数1~6のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、R32はそれぞれ独立に、炭素数1~6のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、m5は0~500の整数である。
【0095】
式(A5)中、R31及びR33としては、それぞれ独立に、式(A1)中のR13と同様のものが挙げられる。
式(A5)中、-(R32O)m5-としては、式(A1)中の-(R12O)m1-と同様のものが挙げられる。
【0096】
RA2の具体例として、例えば、以下の構造が挙げられる。*は、-O-との結合部位を表し、n2は0~500の整数を表す。
【0097】
【0098】
〔RB2及びRB3〕
式(2)中、RB2及びRB3は、それぞれ独立に、1価飽和炭化水素基、ハロゲノ1価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基である。
【0099】
RB2又はRB3で表される1価飽和炭化水素基、ハロゲノ1価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基としては、式(1)中のRB1で表される1価飽和炭化水素基、ハロゲノ1価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基と同様の基が挙げられる。
【0100】
エステル化合物の例としては、下記化合物T1等も挙げられる。
【0101】
【0102】
原料化合物であるエーテル化合物の炭素数は、4以上が好ましく、一態様において、4~1,000がより好ましく、4~500がさらに好ましく、4~100が特に好ましく、4~50が極めて好ましく、4~20がよりさらに好ましく、4~15でもよく、4~10でもよい。エーテル化合物はエーテル結合を1つ又は複数有する化合物である。エーテル化合物はポリエーテル化合物であってもよい。
【0103】
一態様において、エーテル化合物は下記構造を有する。
Rx-O-RY
【0104】
式中、
Rx及びRYはそれぞれ独立に、1価飽和炭化水素基、ハロゲノ1価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基である。ただし、Rx及びRYの少なくとも一方はフッ素化可能な原子又は結合を少なくとも1つ有する。
【0105】
1価飽和炭化水素基、ハロゲノ1価飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基、又はハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基の詳細は、それぞれ原料化合物であるエステル化合物である式(1)で表される化合物の項で説明されたそれぞれの詳細と同様である。
【0106】
Rx及びRYで表される1価飽和炭化水素基としては、それぞれ独立に、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0107】
Rx及びRYで表されるハロゲノ1価飽和炭化水素基としては、それぞれ独立に、ハロゲノアルキル基が好ましい。ハロゲノ1価飽和炭化水素基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0108】
Rx及びRYで表されるヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基としては、それぞれ独立に、エーテル性酸素原子(すなわち、-O-)を含む1価飽和炭化水素基が好ましく、エーテル性酸素原子を含むアルキル基がより好ましい。
【0109】
Rx及びRYで表されるハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基としては、それぞれ独立に、ハロゲノ(ヘテロ原子含有アルキル)基が好ましい。ハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましい。ハロゲノ(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基は、エーテル性酸素原子を含むハロゲノ1価飽和炭化水素基が好ましく、エーテル性酸素原子を含むハロゲノアルキル基がより好ましい。
【0110】
Rx及びRYの炭素数は、溶媒への溶解性に優れる観点から、それぞれ独立に、1~200が好ましく、2~100がより好ましく、2~50がさらに好ましく、2~20が特に好ましく、2~10が極めて好ましく、2~5がよりさらに好ましい。
【0111】
原料化合物の具体例としては、例えば、国際公開第2000/056694号、及び国際公開第2002/004397号に挙げられる下記化合物が挙げられる。式中、Cyはシクロヘキシル基、Phはフェニル基を表し、n、m、p、k、rは1以上の整数を表す。
【0112】
CF3CF2COOCH2CH2CH3、
CF3CF2COOCH2CH(OCH2CH2CH3)CH3、
CF3CF2COOCH2CH(OCH2CH2CHClCH2Cl)CH3、
CF3CF2COO(CH2)4OCHClCH2Cl
CF3CF2COO(CH2)5OCHClCH2Cl、
CF3(CF3CF2CF2O)CFCOO(CH2)4OCHClCH2Cl、
CF3(CF3CF2CF2O)CFCOO(CH2)5OCHClCH2Cl、
CF3(CF2ClCFClCF2CF2O)CFCOOCH2CH(OCH2CH2CHClCH2Cl)CH3、
CF2ClCFClOCF2CF2CF2COO(CH2)4OCHClCH2Cl、
CClF2COOCH2CH2Cl、
CBrF2COOCH2CH2Br、
CF2BrCF2OCF(CF3)COOCH2CH(OCH2CH2Br)CH3、
CF2ClCFClCF2CF(CF3)OCF(CF3)COOCH2CH[OCH(CH3)CHClCH2Cl]CH3、
CH2ClCHClCH2COOCH2CF2CFClCF2Cl、
CF3(CH3CH2CH2O)CFCOOCH2CF(OCF2CF2CF3)CF3、
CF3(CH3CH2CH2O)CFCOOCH2CF(OCH2CH2CH3)CF3。
【0113】
CF3(CF3CF2CF2O)CFCOOCH2CH(OCH2CH2CH3)CH3、
CF3(CF3CF2CF2O)CFCOOCH2CH(OCH2CH2CHClCH2Cl)CH3、
CF3(CF3CF2CF2O)CFCOOCH2CH(OCH2Cy)CH3、
CF3(CF3CF2CF2O)CFCOOCH2CH(OCH2Ph)CH3、
CF3(CF3CF2CF2O)CFCOOCH2CH(O(CH2)9CH3)CH3、
CF3(CF3CF2CF2O)CFCOO(CH2)3OCH2Ph、
CF3(CF3CF2CF2O)CFCOO(CH2)3OCH2CH=CH2、
CF3CF2COOCH2CH2CHClCH2Cl、
CF2ClCFClCF2COOCH2CH2CHClCH2Cl、
CF2ClCF2CFClCOOCH2CH2CHClCH2Cl、
【0114】
【0115】
CF3CF2COO(CH2)nOCOCF2CF3、
CF3CF2COO[CH2CH(CH3)O]m(CH2)pOCOCF2CF3、
CF3CF2COO(CH2CH2O)k(CH2)rOCOCF2CF3、
CF3CF2COO(CH2)2O(CH2)2OCOCF2CF3、
CF3CF2CF2OCF(CF3)COOCH2CH(CH3)O(CH2)5OCOCF(CF3)OCF2CF2CF3、
CF3CF2COO(CH2)2O(CH2)2OCH(CH3)CH2OCOCF2CF3。
【0116】
CF3O(CF2CFHOCF2CF2CF2CH2O)nCF2CFHOCF2CF2CF2CH2OCOCF(CF3)OCF2CF2CF3、
CH2ClCHClCH2OCF2CHFCl(HCFE-473)、
CF3CF2CF2OCF(CF3)COOCH2CH2CH2CH2OCOCF(CF3)OCF2CF2CF3、
CH3CH2OCH2CH2OCH2CH2OCOCF(CF3)OCF2CF(CF3)OCF2CF2CF3、
(CF3)2CFCOOCH2CH2CH2CH2CH2OCOCF(CF3)2。
【0117】
目的化合物の収率を向上させる観点から、原料化合物の沸点は、30℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。原料化合物の沸点は、350℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましく、250℃以下がさらに好ましい。本開示において、「沸点」は、常圧(760mmHg)における沸点である。
【0118】
原料化合物の数平均分子量(Mn)は、100~100,000が好ましく、100~20,000がより好ましく、300~10,000でもよく、400~6,000でもよい。一態様において、原料化合物のMnは100~1,000が好ましく、200~800がより好ましく、200~700でもよい。Mnが前記下限値以上であると、液相フッ素化において気相中での分解反応が抑制されやすい。平均分子量が前記上限値以下であると、目的化合物の精製が行いやすい。Mnは1H-NMR及び19F-NMRによって特定された分子構造から算出される各分子の分子量の数平均値である。
【0119】
フッ素化工程で反応器に供する原料溶液は、純粋な原料化合物でもよく、本開示の目的が損なわれない範囲で不純物が含まれる原料溶液を用いてもよい。本開示の目的が損なわれない範囲とは、目的化合物の収率が大きく(例えば15%以上)低下しないことをいう。例えば、HCFE-473をフッ素化してCFE-419を製造する場合、反応器内に供給する原料溶液は、純度100質量%のHCFE-473でもよく、不純物(例えば、下記構造を有するHCFE-463)が含まれていてもよい。
【0120】
【0121】
一態様において、原料化合物は、当該原料化合物を含む原料溶液として反応器内に導入され、前記原料溶液は、前記原料化合物以外の化合物を含まないか、前記原料化合物以外の化合物を前記原料溶液に対して15質量%以下含む。原料溶液中の原料化合物以外の化合物は、10質量%以下でもよく、5質量%以下でもよく、0質量%でもよい。
特に、前記原料化合物以外の化合物としては、目的化合物におけるフッ素原子の少なくとも1つが水素原子若しくは塩素原子に置き換えられた構造を有する化合物又はその置換基の位置が異なる異性体、すなわち特定副成分が好ましい。この場合、例えば原料全体の15質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下のかかる特定副成分が含まれていても、収率が大きく低下しない。これは、前述の理由と同じ理由により特定副成分が目的化合物の収率に寄与することが一因と考えられる。原料化合物以外の化合物の含有率の下限値は特に制限されず、例えば原料溶液に対して0.1質量%、2質量%、4質量%、6質量%、又は8質量%でもよい。
【0122】
原料溶液中の原料化合物の含有率は、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが好ましく、100質量%であってもよい。
【0123】
(目的化合物)
目的化合物である含フッ素化合物は、原料化合物のフッ素化可能な原子又は結合の一部又はすべてがフッ素化された化合物である。液相フッ素化では、原料化合物の炭素骨格に対応する構造を有する含フッ素化合物が生成する。ただし、原料化合物中に炭素-炭素不飽和結合がある場合には、当該不飽和結合の1個以上にフッ素原子が付加して結合状態が変化していてもよい。
【0124】
目的化合物としては、原料化合物の項で例示した化合物のフッ素化物が挙げられる。したがって、目的化合物としては、フッ素化した、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル化合物、エステル化合物、アミド化合物、チオエーテル化合物、チオエステル化合物等が挙げられる。目的化合物はこれらの化合物の炭素骨格にフッ素化反応により変化しないへテロ原子又はヘテロ原子団を含む化合物であってもよい。
なかでも有用な目的化合物の具体例としては、ペルフルオロアルカン、ペルフルオロエーテル化合物、ペルフルオロポリエーテル化合物、クロロフルオロカーボン、クロロフルオロエーテル化合物(CFE-419等)、クロロフルオロポリエーテル化合物等が挙げられる。
【0125】
「目的化合物」は、必ずしも最終的な目的物であることを意味するものではない。目的化合物である含フッ素化合物は、そのまま、又は他の化合物に化学変換されることにより有用に用いうる。
原料化合物が前記式(1)で表されるエステル化合物である場合、目的化合物は、下記式(6)で表される化合物が好ましい。また、原料化合物が前記式(2)で表される化合物である場合、目的化合物は、下記式(7)で表される化合物が好ましい。
RAF1-O-(C=O)-RBF1 …(6)
RBF2-(C=O)-O-RAF2-O-(C=O)-RBF3 …(7)
式(6)及び(7)中、
RAF1、RBF1、RAF2、RBF2、及びRBF3は、それぞれ、RA1、RB1、RA2、RB2、及びRB3に対応する基であり、
RA1、RB1、RA2、RB2、及びRB3がそれぞれ独立に水素原子を含まない基である場合、RAF1、RBF1、RAF2、RBF2、及びRBF3は、RA1、RB1、RA2、RB2、及びRB3と同一の基であり、
RA1、RB1、RA2、RB2、及びRB3がそれぞれ独立に水素原子を含む基である場合、RAF1、RBF1、RAF2、RBF2、及びRBF3は、RA1、RB1、RA2、RB2、及びRB3に存在するすべての水素原子がフッ素原子に置換された基である。
【0126】
〔RAF1〕
式(6)中、RAF1はRA1に対応する基である。
RA1が水素原子を含む場合には、RAF1は、RA1に存在する全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。RA1が水素原子を含まない場合には、RAF1は、RA1と同一の基である。
溶媒への溶解性に優れる観点から、RAF1は、下記式(A3)で表されることが好ましい。
R14O-(R15O)m3-R16- …(A3)
【0127】
式(A3)中、R14は、ペルフルオロアルキル基であり、R15はそれぞれ独立に、炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基であり、R16は、炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基であり、m3は0~500の整数である。
【0128】
式(A3)中、R14は、式(A1)中のR11に対応する。R11が水素原子を含む場合、R14は、R11に含まれる全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。R11が水素原子を含まない場合、R14は、R11と同じである。
【0129】
式(A3)中、-(R15O)m3-は、式(A1)中の-(R12O)m1-に対応する。R12が水素原子を含む場合、R15は、R12に含まれる全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。R12が水素原子を含まない場合、R15は、R12と同じである。
【0130】
式(A3)中、-(R15O)m3-は、下記式(A4)で表されることが好ましい。
-[(Rff1O)k7(Rff2O)k8(Rff3O)k9(Rff4O)k10(Rff5O)k11(Rff6O)k12]- …(A4)
ただし、
Rff1は、炭素数1のペルフルオロアルキレン基であり、
Rff2は、炭素数2のペルフルオロアルキレン基であり、
Rff3は、炭素数3のペルフルオロアルキレン基であり、
Rff4は、炭素数4のペルフルオロアルキレン基であり、
Rff5は、炭素数5のペルフルオロアルキレン基であり、
Rff6は、炭素数6のペルフルオロアルキレン基である。
k7、k8、k9、k10、k11、及びk12は、それぞれ独立に0又は1以上の整数を表し、k7+k8+k9+k10+k11+k12は0~500の整数である。
【0131】
式(A4)中、Rff1~Rff6は、式(A2)中のRf1~Rf6に対応する。例えば、Rf1が水素原子を含む場合、Rff1は、Rf1に含まれる全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。Rf1が水素原子を含まない場合、Rff1は、Rf1と同じである。Rff2~Rff6に関しても、Rff1と同様である。
【0132】
溶媒への溶解性に優れる観点から、k7+k8+k9+k10+k11+k12は、1~500の整数が好ましく、1~300の整数がより好ましく、5~200の整数がさらに好ましく、10~150の整数が特に好ましい。
【0133】
中でも、-(R15O)m3-は、下記式(G1)~(G3)で表される構造からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、式(G2)で表される構造を含むことがより好ましい。
-(Rff1O)k7-(Rff2O)k8- …(G1)
-(Rff2O)k8-(Rff4O)k10- …(G2)
-(Rff3O)k9- …(G3)
ただし、式(G1)~式(G3)の各符号は、上記式(A4)と同様である。
【0134】
式(G1)及び式(G2)において、(Rff1O)と(Rff2O)、(Rff2O)と(Rff4O)の結合順序は各々任意である。例えば(Rff1O)と(Rff2O)が交互に配置されてもよく、(Rff1O)と(Rff2O)が各々ブロックに配置されてもよく、またランダムであってもよい。式(G2)においても同様である。
式(G1)において、k7は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。またk8は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
式(G2)において、k8は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。またk10は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
式(G3)において、k9は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
【0135】
式(A3)中、R16は、式(A1)中のR13に対応する。R13が水素原子を含む場合、R16は、R13に含まれる全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。R13が水素原子を含まない場合、R16は、R13と同じである。
【0136】
R16としては、上記、Rff1~Rff6と同様のものが挙げられる。
【0137】
中でも、R16は、炭素数1~3のペルフルオロアルキレン基が好ましい。
【0138】
式(A3)中、m3は、式(A1)中のm1に対応する。m3はm1と同じである。
【0139】
RAF1の具体例として、例えば、以下の構造が挙げられる。*は、-O-との結合部位を表し、n1は0~60の整数、n2は0~500の整数を表す。n1としては例えば13が挙げられ、n2としては例えば7が挙げられる。
【0140】
【0141】
〔RBF1〕
式(6)中、RBF1はRB1に対応する基である。
RB1が水素原子を含む場合には、RBF1は、RB1に存在する全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。RB1が水素原子を含まない場合には、RBF1は、RB1と同一の基である。
溶媒への溶解性に優れる観点から、RBF1は、下記式(B2)で表されることが好ましい。
R24O-(R25O)m4-R26- …(B2)
【0142】
式(B2)中、R24は、ペルフルオロアルキル基であり、R25はそれぞれ独立に、炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基であり、R26は炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基であり、m4は0~20の整数である。
【0143】
式(B2)中、R24は、式(B1)中のR21に対応する。R21が水素原子を含む場合、R24は、R21に含まれる全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。R21が水素原子を含まない場合、R24は、R21と同じである。
【0144】
式(B2)中、-(R25O)m4-は、式(B1)中の-(R22O)m2-に対応する。R22が水素原子を含む場合、R25は、R22に含まれる全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。R22が水素原子を含まない場合、R25は、R22と同じである。
【0145】
式(B2)中、-(R25O)m4-は、上記式(A4)で表されることが好ましい。
【0146】
式(B2)中、R26は、式(B1)中のR23に対応する。R23が水素原子を含む場合、R26は、R23に含まれる全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。R23が水素原子を含まない場合、R26は、R23と同じである。
【0147】
式(B2)中、m4は、式(B1)中のm2に対応する。m4はm2と同じである。
【0148】
RBF1の具体例として、例えば、以下の構造が挙げられる。*は、-O-(C=O)-との結合部位を表す。
【0149】
【0150】
〔RAF2〕
式(7)中、RAF2はRA2に対応する基である。
RA2が水素原子を含む場合には、RAF2は、RA2に存在する全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。RA2が水素原子を含まない場合には、RAF2は、RA2と同一の基である。
【0151】
溶媒への溶解性に優れる観点から、RAF2は、下記式(A6)で表されることが好ましい。つまり、RAF2は、エーテル結合をさらに有することが好ましい。
-R34O-(R35O)m6-R36- …(A6)
【0152】
式(A6)中、R34及びR36は、それぞれ独立に、炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基であり、R35はそれぞれ独立に、炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基であり、m6は0~500の整数である。
【0153】
式(A6)中、R34及びR36は、それぞれ式(A5)中のR31及びR33に対応する。R31が水素原子を含む場合、R34はR31に含まれる全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。R31が水素原子を含まない場合、R34はR31と同じである。R33が水素原子を含む場合、R36はR33に含まれる全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。R33が水素原子を含まない場合、R36はR34と同じである。
【0154】
式(A6)中、-(R35O)m6-は、式(A5)中の-(R32O)m5-に対応する。R32が水素原子を含む場合、R35は、R32に含まれる全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。R32が水素原子を含まない場合、R35は、R32と同じである。
【0155】
式(A6)中、R34及びR36としては、それぞれ独立に、式(A5)中のR31及びR33と同様のものが挙げられる。
式(A6)中、-(R35O)m6-としては、式(A5)中の-(R32O)m5-と同様のものが挙げられる。
【0156】
RAF2の具体例として、例えば、以下の構造が挙げられる。*は、-O-との結合部位を表し、n2は0~500の整数を表す。
【0157】
【0158】
〔RBF2及びRBF3〕
式(7)中、RBF2及びRBF3は、それぞれ、RB2及びRB3に対応する基である。
RB2が水素原子を含む場合には、RBF2は、RB2に存在する全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。RB2が水素原子を含まない場合には、RBF2は、RB2と同一の基である。
RB3が水素原子を含む場合には、RBF3は、RB3に存在する全ての水素原子がフッ素原子に置換された基である。RB3が水素原子を含まない場合には、RBF3は、RB3と同一の基である。
【0159】
RBF2又はRBF3で表される基は、式(6)中のRBF1で表される基と同様の基が挙げられる。
【0160】
原料化合物が前記Rx-O-RYで表されるエーテル化合物である場合、目的化合物は、下記式で表される化合物が好ましい。
RXF-O-RYF
式中、RXF及びRYFは、それぞれ、RX及びRYに対応する基であり、
RX及びRYがそれぞれ独立に水素原子を含まない基である場合、RXF及びRYFは、RX及びRYと同一の基であり、
RX及びRYがそれぞれ独立に水素原子を含む基である場合、RXF及びRYFは、RX及びRYに存在するすべての水素原子がフッ素原子に置換された基である。
【0161】
目的化合物の数平均分子量は、特に限定されるものではなく、100~100,000が好ましく、100~20,000がより好ましく、300~10,000がさらに好ましく、400~6,000が特に好ましい。一態様において、原料化合物のMnは100~1,000が好ましく、200~800がより好ましく、300~700がさらに好ましい。
【0162】
(溶媒)
溶媒は目的化合物である主成分と特定副成分とを含む。
特定副成分は、目的化合物におけるフッ素原子の少なくとも1つが水素原子若しくは塩素原子に置き換えられた構造を有する化合物又はその置換基の位置が異なる異性体である。したがって、特定副成分は水素原子又は塩素原子を少なくとも1つ有する。前記「置換基の位置が異なる異性体」とは、炭素骨格が共通しており置換基の位置のみが異なる異性体である。特定副成分はフッ素化されて目的化合物に変換可能なものであることが好ましい。溶媒は特定副成分を1種含んでもよく複数種含んでもよい。
【0163】
目的化合物の収率を向上する観点からは、特定副成分はハロゲン原子を含むことが好ましく、フッ素原子及び塩素原子からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、フッ素原子を含むことがさらに好ましい。特定副成分において炭素原子に理論的に結合可能な最大置換基数に対するハロゲン原子数の割合は50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であってもよい。
【0164】
特定副成分が水素原子を含む場合、目的化合物の収率を向上する観点からは、分子中の水素原子の数は炭素原子の数よりも少ないことが好ましく、1~10個がより好ましく、1~5個がさらに好ましく、1~3個が特に好ましい。
特定副成分が水素原子を含む場合、特定副成分は、目的化合物におけるフッ素原子の1~10個、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個が水素原子に置き換えられた構造を有する化合物又はその置換基の位置が異なる異性体であってよい。
【0165】
特定副成分が塩素原子を含む場合、目的化合物の収率を向上する観点からは、分子中の塩素原子の数は炭素原子の数以下であることが好ましく、1~10個がより好ましく、1~5個がさらに好ましく、1~3個が特に好ましい。
特定副成分が塩素原子を含む場合、特定副成分は、目的化合物におけるフッ素原子の1~10個、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個が塩素原子に置き換えられた構造を有する化合物又はその置換基の位置が異なる異性体であってよい。
【0166】
特定副成分は、入手可能な溶媒にもともと含まれるものでもよく、入手可能な溶媒に添加したものでもよい。
【0167】
特定副成分の合計含有率は溶媒の全質量に対して0.1~15質量%であり、0.1~10質量%が好ましい。特定副成分の合計含有率の下限値は、例えば溶媒の全質量に対して2質量%、4質量%、6質量%、又は8質量%でもよい。特定副成分が1種である場合には前記合計含有率は当該1種の特定副成分の含有率であり、特定副成分が複数種である場合には当該複数種の特定副成分の合計含有率である。前記含有率が前記上限値以下であると、原料化合物の収率が良好に維持できる。前記含有率が前記下限値以上であると、例えば容易に入手可能な溶媒に含まれる特定副成分の除去を省略できる場合がある。したがって、例えば溶媒が精製工程を経ずにフッ素化工程に供給できる場合がある。特定副成分の合計含有率はガスクロマトグラフィにより確認できる。
【0168】
溶媒は、目的化合物及び特定副成分以外の化合物を含んでいても含んでいなくてもよい。目的化合物の収率を向上させる観点からは、溶媒中の目的化合物及び特定副成分以外の化合物の含有率は、0~5質量%が好ましく、0~3質量%がより好ましく、0~1質量%がさらに好ましい。
目的化合物の収率を向上させる観点からは、溶媒中の目的化合物の含有量は、85~99.9質量%が好ましく、87~99.9質量%がより好ましく、89~99.9質量%がさらに好ましく、90~99.9質量%が特に好ましい。
【0169】
溶媒は、全体として、原料化合物の溶解度が高いことが好ましく、25℃において原料化合物を1質量%以上溶解可能であることが好ましく、5質量%以上溶解可能であることがより好ましい。
【0170】
収率を向上させる観点から、溶媒の25℃における粘度は、全体として、2,000mPa・s以下が好ましく、1,000mPa・s以下がより好ましい。粘度は低いほど好ましいが、粘度の下限値は、0.5mPa・sでもよく、1mPa・sでもよい。有機溶媒の粘度は、JISZ8803:2011に従い、レオメータ(例えば、装置名RE-215L、東機産業社)により測定できる。
【0171】
溶媒の合計量は、原料化合物に対して、1質量倍以上が好ましく、2質量倍以上がより好ましい。溶媒の量は、原料化合物に対して2000質量倍以下でもよく、1000質量倍以下でもよく、500質量倍以下でもよい。
【0172】
収率を向上させる観点から、容器内での溶媒の蒸気圧は、0.009MPa以下が好ましく、0.007MPa以下がより好ましく、0.006MPa以下(49mmHg)がさらに好ましく、0.005MPa以下(38mmHg)が特に好ましく、0.003MPa以下(23mmHg)が極めて好ましい。
【0173】
〔液相フッ素化の工程〕
本製造方法では、反応器内に原料化合物、溶媒、及びフッ素ガスを導入して、原料化合物をフッ素化し、原料化合物のフッ素化可能な原子又は結合の一部又はすべてがフッ素化された目的化合物を得る。
フッ素化反応の反応形式は、バッチ方式及び連続方式が挙げられ、連続方式が好ましい。フッ素化方法としては、以下に説明するフッ素化法1及び2が挙げられる。
【0174】
フッ素化法1:反応器に、原料化合物と溶媒とを仕込み、攪拌を開始する。所定の反応温度と反応圧力下で、フッ素ガスを、連続的に供給しながら反応させる。
フッ素化法2:反応器に溶媒を仕込み、攪拌を開始する。所定の反応温度と反応圧力下で、原料化合物とフッ素ガスとを所定のモル比で連続的かつ同時期に供給する。
【0175】
フッ素化法2において原料化合物を供給する際には、原料化合物を溶媒で希釈せずに、そのまま供給してもよい。原料化合物を溶媒で希釈する場合には、原料化合物に対する溶媒の量を1質量倍以上とすることが好ましく、2質量倍以上とすることがより好ましい。
【0176】
本製造方法では目的化合物を液相フッ素化の溶媒に用いるため、液相フッ素化後に生成した目的化合物を含む粗液を一部回収し、一部反応器に循環させて新たな原料化合物のフッ素化に用い得る。一態様において、本製造方法によれば、目的化合物を含む粗液の精製工程を経なくても、粗液を循環させて液相フッ素化に再度用い得るため、工程を簡略化させ得る。
【0177】
液相フッ素化では、フッ素ガスをそのまま用いてもよく、フッ素ガスを不活性ガスで希釈した混合ガスを用いてもよい。不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス等が挙げられ、窒素ガス又はヘリウムガスが好ましく、窒素ガスがより好ましい。混合ガス中のフッ素ガスの濃度は、転化率の観点からは、10体積%以上が好ましく、15体積%以上がより好ましく、20体積%以上がさらに好ましい。原料化合物の分解を抑制する観点からは、前記濃度は60体積%以下が好ましく、50体積%以下がより好ましく、40体積%以下がさらに好ましい。
【0178】
液相フッ素化に用いるフッ素の量は、転化率の観点からは、原料化合物中の水素原子に対して、フッ素の量が過剰当量となる量であることが好ましく、1.5倍当量(すなわち1.5倍モル)以上となる量であることがより好ましい。フッ素の量は、液相フッ素化の最初から最後まで過剰当量が保たれるようにすることが好ましい。
【0179】
液相フッ素化の反応温度は、-60℃以上かつ原料化合物の沸点以下が好ましく、反応収率、選択率、及び工業的実施のしやすさの観点からは、-50℃~100℃がより好ましく、-20℃~50℃がさらに好ましい。
液相フッ素化の反応圧力は特に限定されず、反応収率、選択率、工業的な実施のしやすさの観点からは、0~2MPaが好ましい。
【0180】
液相フッ素化における反応時間(すなわち、原料化合物の反応場通過時間)は、200時間以下が好ましく、190時間以下がより好ましく、170時間以下がさらに好ましく、150時間以下が特に好ましく、100時間以下が極めて好ましい。前記反応時間は、0.3時間以上が好ましく、0.6時間以上がより好ましく、1時間以上がさらに好ましい。反応時間が前記下限値以上であると反応が十分となりやすく、前記上限値以下であると製造時間及びコストを低減しやすい。
【0181】
フッ素化工程では、液相中の原料化合物の含有率は、10~70質量%が好ましく、20~50質量%がより好ましい。
【0182】
液相フッ素化を効率的に進行させるために、C-H結合を有する化合物(ただし、特定副成分とは異なる化合物)、又は炭素-炭素二重結合を有する化合物を助剤として添加してもよい。また、助剤は使用しなくてもよい。
助剤であるC-H結合を有する化合物としては、芳香族炭化水素が好ましく、ベンゼン、トルエン等がより好ましい。C-H結合を有する化合物の添加量は、原料化合物の水素原子に対して0.1~10モル%が好ましく、0.1~5モル%がより好ましい。
助剤である炭素-炭素二重結合を有する化合物としては、CF3CF=CF2、CF2=CF-CF=CF2が挙げられる。
炭素-炭素二重結合を有する化合物の添加量は、原料化合物中の水素原子に対して0.1~100モル%が好ましく、0.1~50モル%がより好ましい。
【0183】
例えば、バッチ方式反応においては、液相フッ素化後期に助剤を反応系中に添加してもよい。助剤は、反応系中にフッ素が存在する状態で添加することが好ましい。助剤を加えた場合には、反応系を加圧することが好ましい。加圧時の圧力としては、0.01~5MPaが好ましい。
【0184】
原料エステル化の液相フッ素化において、水素原子をフッ素原子に置換する反応がおきた場合には、HFが副生する。HFを捕捉するために、反応系中にHFの捕捉剤を共存させるか、反応器ガス出口でHF捕捉剤と出口ガスとを接触させることが好ましい。HF捕捉剤としては、例えばNaFが好ましい。
【0185】
液相フッ素化で得た含フッ素化合物を含む粗生成物は、そのまま次の工程に用いてもよく、精製して高純度のものにしてもよい。精製方法としては、粗生成物をそのまま常圧又は減圧下に蒸留する方法等が挙げられる。
【実施例0186】
次に本開示の実施形態を実施例により具体的に説明するが、本開示の実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0187】
[例1-1~1-7]
容器に呼び径25A、長さ3mの循環配管を取り付けた反応装置(SUS304製)を用意する。この循環配管には循環ポンプ、内液抜出配管、原料フィード配管、原料ガスフィード配管が取り付けられており、容器にはガス排出配管が取り付けられている。この装置に表1に示す成分を含有する初期溶媒の3Lを仕込み、300L/時間で循環させる。表1に示す純度でHCFE-473を含む原料溶液を原料フィード配管より0.1kg/時間で供給する。窒素ガスで40体積%に希釈したフッ素ガスを原料ガスフィード配管より200NL/時間で供給する。反応装置内液温度を、コンデンサにより15℃にする。容器から排出された循環液を、循環液量が3Lに保たれるように容器に循環させ、残りの循環液を連続的に抜き出して回収する。回収した循環液の合計を「回収液」とする。容器からの排出ガスは、気相部はコンデンサで-10℃に冷やし、凝縮液は反応器に戻し、ガスは除害塔へ送る。
【0188】
なお、原料化合物であるHCFE-473の沸点は196℃である。初期溶媒の粘度は約1.4mPa・sである。
【0189】
原料溶液、初期溶媒、及び回収液の各成分濃度はガスクロマトグラフィにより求める。
【0190】
回収液中に含まれるCFE-419の収率は以下のように求める。
(回収液量×回収液中CFE-419濃度/CFE-419分子量)/(原料液量×原料中HCFE-473濃度/HCFE-473分子量)
【0191】
各例における原料溶液、初期溶媒、及び回収液の成分濃度、並びにCFE-419の収率を表1に示す。
【0192】
【0193】
上記例1-1は参照例、例1-2、1-4、及び1-6は実施例であり、その他は比較例である。表1に示されるように、目的化合物であるCFE-419に加えて、HCFE-428及びCFE-418が15質量%以下含まれる溶媒を初期溶媒に用いた例では、純粋なCFE-419を初期溶媒に用いた例と比べて、溶媒中のCFE-419濃度が低いにもかかわらず、同様の収率が得られている。
例1-1では、純度の高いCFE-419を溶媒として用いていても、回収液中に微量のHCFE-428及びCFE-418が残存している。一方、例1-2、1-4、及び1-6では、生成物中のHCFE-428及びCFE-418は例1-1と同程度である。このことから、特定副成分を15質量%以下含む溶媒を用いると、溶媒を効率利用して目的化合物を生産できることがわかる。
【0194】
[例2-1~2-9]
原料溶液及び初期溶媒を、表2に示すものに変更した以外は、例1-1~1-7と同様の方法で原料化合物の液相フッ素化及び評価を行った。
【0195】
【0196】
上記例2-1~2-7は、原料溶液中に原料化合物以外の成分が含まれていても本製造方法が適用可能であることを示す例であり、例2-1は参照例、例2-2、2-4、及び2-6は実施例であり、その他は比較例である。例2-1~2-7では、原料溶液として、原料化合物であるHCFE-473に加えて、不純物であるHCFE-463が所定量含まれている。原料溶液中のHCFE-463の量が15質量%以下であれば、目的化合物であるCFE-419に加えて、HCFE-428及びCFE-418が15質量%以下含まれる溶媒を初期溶媒に用いても、高い収率が得られている。HCFE-463はフッ素化又は塩素転移を起こし、その一部がCFE-419に変換されることによって、高い収率を維持できると考えられる。
上述の通り、例1-1では、純度の高いCFE-419を溶媒として用いていても、回収液中に微量のHCFE-428及びCFE-418が残存している。一方、例2-2、2-4、2-6では、生成物中のHCFE-428及びCFE-418は例1-1と同程度である。このことから、原料溶液が15質量%以下のHCFE-463を含む場合であっても、特定副成分を15質量%以下含む溶媒を用いると、溶媒を効率利用して目的化合物を生産できることがわかる。
本開示の含フッ素化合物の製造方法によれば、溶媒の選択幅が広がり、かつ目的化合物の良好な収率が得られる。得られた含フッ素化合物は、種々の官能基(例えば、水酸基、エチレン性不飽和基、エポキシ基、カルボキシ基等)を有する含フッ素化合物に誘導できる。また、得られた含フッ素化合物及び当該含フッ素化合物から誘導できる含フッ素化合物は、表面処理剤、乳化剤、ゴム、界面活性剤、溶媒、熱媒体、医薬品、農薬、潤滑油、これらの中間体等に利用可能である。