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特開2024-74685積層体の製造方法、印刷装置及びデータ生成装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074685
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】積層体の製造方法、印刷装置及びデータ生成装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20240524BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240524BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20240524BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240524BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20240524BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240524BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240524BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
H05K9/00 R
B41J2/01 451
B41J2/01 401
H05K3/00 D
B05C11/10
B05C11/00
B05C5/00 101
B05D3/00 D
B05D1/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186004
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100153822
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 重之
(72)【発明者】
【氏名】京相 忠
(72)【発明者】
【氏名】沢野 充
【テーマコード(参考)】
2C056
4D075
4F041
4F042
5E321
【Fターム(参考)】
2C056EB27
2C056EB37
2C056FB05
2C056FD10
2C056FD20
2C056HA44
2C056HA58
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC88
4D075AE03
4D075BB29Z
4D075BB42Z
4D075BB46Z
4D075BB48Y
4D075BB91X
4D075BB91Y
4D075BB95Y
4D075CA22
4D075CA23
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DC21
4D075EA05
4D075EA15
4D075EA21
4D075EA33
4D075EB01
4F041AA05
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA38
4F041BA46
4F041BA56
4F042AA06
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA11
4F042BA12
4F042BA19
4F042BA25
4F042CB01
4F042CB26
4F042DB18
4F042DB25
4F042DB42
4F042DF09
4F042DF22
4F042DF29
4F042DH09
4F042ED02
5E321AA17
5E321AA22
5E321BB21
5E321BB23
5E321GG05
(57)【要約】
【課題】設計通りの正確な形状の積層体を形成する積層体の製造方法、印刷装置及びデータ生成装置を提供する。
【解決手段】基板の表面に液体を積層塗布して第1の積層体を形成する際に、基板の表面に第2の積層体を形成し、第2の積層体を計測し、計測した結果に基づいて基板の表面に第1の積層体を形成する。第2の積層体は、第1の積層体を形成する過程の途中の積層体であってもよいし、第1の積層体とは異なるチェック用パターンであってもよい。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に液体を積層塗布して第1の積層体を形成する積層体の製造方法であって、
基板の表面に第2の積層体を形成し、
前記第2の積層体を計測し、
前記計測した結果に基づいて基板の表面に第1の積層体を形成する、
積層体の製造方法。
【請求項2】
前記第2の積層体は、前記第1の積層体を形成する過程の途中の積層体である、
請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記計測した結果に基づいて前記第2の積層体に液体を積層塗布して前記第1の積層体を形成する、
請求項2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記第1の積層体の設計値と前記計測した結果との差分である第1の差分、及び前記第2の積層体の設計値と前記計測した結果との差分である第2の差分のうちの少なくとも一方に基づいて前記第1の積層体を形成する、
請求項2に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記第1の積層体の設計値の3次元データを取得し、
前記3次元データを基板の表面に平行な方向に分割して2次元の複数のスライスデータに変換し、
前記複数のスライスデータのうちの一部である第1のスライスデータに基づいて前記第2の積層体を形成し、
前記計測した結果に基づいて前記複数のスライスデータのうちの前記第1のスライスデータとは異なる第2のスライスデータを補正する、
請求項2に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記第1のスライスデータ及び前記補正した第2のスライスデータに基づいて、新規の基板の表面に前記第1の積層体を形成する、
請求項5に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記以後に製造する第1の積層体の形成において、前記補正した第2のスライスデータ以外の第3のスライスデータに基づく積層体の形成から開始する、
請求項6に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
前記第2の積層体を形成する基板の表面を計測し、
前記表面の計測結果と第2の積層体の計測結果とを比較し、各積層塗布位置における積層量を求め、
前記積層量から前記液体の積層塗布回数に応じた各積層塗布位置における積層速度を求め、
前記積層速度に基づいて前記第1の積層体を形成する、
請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
前記第2の積層体を形成する過程の途中の積層体である第3の積層体を形成し、
前記第3の積層体を計測し、
前記第3の積層体に液体を積層塗布して前記第2の積層体を形成し、
前記第3の積層体の計測結果と第2の積層体の計測結果とを比較し、各積層塗布位置における積層量を求め、
前記積層量から前記液体の積層塗布回数に応じた各積層塗布位置における積層速度を求め、
前記積層速度に基づいて第1の積層体を形成する、
請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
基板の表面に第1の液体を積層塗布して前記第2の積層体を形成し、
前記計測した結果に基づいて前記第2の積層体に前記第1の液体とは異なる第2の液体を積層塗布して前記第1の積層体を形成する、
請求項3に記載の積層体の製造方法。
【請求項11】
前記第2の積層体は、前記第1の積層体とは異なるチェック用パターンである、
請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項12】
前記第2の積層体の計測は、レーザを用いた測長を含む、
請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項13】
前記基板の表面には電子部品が実装されており、
前記電子部品に絶縁性を有する前記第1の積層体を形成し、
前記第1の積層体に電磁波シールドとして機能する導電パターンを形成する、
請求項1から12のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項14】
液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドと基板とを前記基板の表面に平行な方向に相対移動させる相対移動機構と、
前記基板に対して前記ノズルから液体を吐出させて前記相対移動ごとに前記表面に液体を積層塗布し、積層体を形成する制御装置と、
前記表面に形成された積層体を計測する計測装置と、
少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサに実行させるための命令を記憶する少なくとも1つのメモリと、
を備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
基板の表面に第2の積層体を形成させ、
前記第2の積層体を計測させ、
前記計測した結果に基づいて基板の表面に第1の積層体を形成させる、
印刷装置。
【請求項15】
データに基づいて基板の表面に液体を積層塗布して第1の積層体を形成する積層体の製造装置の前記データを生成するデータ生成装置であって、
少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサに実行させるための命令を記憶する少なくとも1つのメモリと、
を備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記第1の積層体を形成する過程の途中の積層体である第2の積層体を計測した結果を取得し、
前記計測した結果に基づいて前記第1の積層体を形成するためのデータを生成する、
データ生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層体の製造方法、印刷装置及びデータ生成装置に係り、特に液体を積層塗布して積層体を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式により吐出したインクを積層させて、積層体を形成する技術が知られている。
【0003】
また、積層体を形成する際に、積層体の厚みを補正する技術が知られている。特許文献1には、インクジェット方式を用いた記録部で形成する画像の画像データに基づいて、吐出後のインク厚を画素ごとに算出し、算出したインク厚と目標厚との差分を画素ごとに算出し、差分に対応する厚みを実現するための追加液滴の吐出量を画素ごとに規定した補完データを生成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-187936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
積層体を形成する際の装置の状態、環境の変化、及びインクの特性等により、理想通りにインクを積層できない場合もある。しかしながら、特許文献1に記載された技術では、積層体が理想通りにできていない場合に補正することができないという問題点があった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、設計通りの正確な形状の積層体を形成する積層体の製造方法、印刷装置及びデータ生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の第1態様に係る積層体の製造方法は、基板の表面に液体を積層塗布して第1の積層体を形成する積層体の製造方法であって、基板の表面に第2の積層体を形成し、第2の積層体を計測し、計測した結果に基づいて基板の表面に第1の積層体を形成する積層体の製造方法である。本態様によれば、設計通りの正確な形状の積層体を形成することができる。
【0008】
本開示の第2態様に係る積層体の製造方法は、第1態様に係る積層体の製造方法において、第2の積層体は、第1の積層体を形成する過程の途中の積層体であることが好ましい。
【0009】
本開示の第3態様に係る積層体の製造方法は、第2態様に係る積層体の製造方法において、計測した結果に基づいて第2の積層体に液体を積層塗布して第1の積層体を形成することが好ましい。
【0010】
本開示の第4態様に係る積層体の製造方法は、第2態様に係る積層体の製造方法において、第1の積層体の設計値と計測した結果との差分である第1の差分、及び第2の積層体の設計値と計測した結果との差分である第2の差分のうちの少なくとも一方に基づいて第1の積層体を形成することが好ましい。
【0011】
本開示の第5態様に係る積層体の製造方法は、第2態様に係る積層体の製造方法において、第1の積層体の設計値の3次元データを取得し、3次元データを基板の表面に平行な方向に分割して2次元の複数のスライスデータに変換し、複数のスライスデータのうちの一部である第1のスライスデータに基づいて第2の積層体を形成し、計測した結果に基づいて複数のスライスデータのうちの第1のスライスデータとは異なる第2のスライスデータを補正することが好ましい。
【0012】
本開示の第6態様に係る積層体の製造方法は、第5態様に係る積層体の製造方法において、第1のスライスデータ及び補正した第2のスライスデータに基づいて、新規の基板の表面に第1の積層体を形成することが好ましい。「新規の基板」とは、第2の積層体を形成し、第2の積層体を計測した基板とは異なる基板を指す。
【0013】
本開示の第7態様に係る積層体の製造方法は、第6態様に係る積層体の製造方法において、以後に製造する第1の積層体の形成において、補正した第2のスライスデータ以外の第3のスライスデータに基づく積層体の形成から開始することが好ましい。
【0014】
本開示の第8態様に係る積層体の製造方法は、第1態様に係る積層体の製造方法において、第2の積層体を形成する基板の表面を計測し、表面の計測結果と第2の積層体の計測結果とを比較し、各積層塗布位置における積層量を求め、積層量から液体の積層塗布回数に応じた各積層塗布位置における積層速度を求め、積層速度に基づいて第1の積層体を形成することが好ましい。
【0015】
本開示の第9態様に係る積層体の製造方法は、第1態様に係る積層体の製造方法において、第2の積層体を形成する過程の途中の積層体である第3の積層体を形成し、第3の積層体を計測し、第3の積層体に液体を積層塗布して第2の積層体を形成し、第3の積層体の計測結果と第2の積層体の計測結果とを比較し、各積層塗布位置における積層量を求め、積層量から液体の積層塗布回数に応じた各積層塗布位置における積層速度を求め、積層速度に基づいて第1の積層体を形成することが好ましい。
【0016】
本開示の第10態様に係る積層体の製造方法は、第3態様に係る積層体の製造方法において、基板の表面に第1の液体を積層塗布して第2の積層体を形成し、計測した結果に基づいて第2の積層体に第1の液体とは異なる第2の液体を積層塗布して第1の積層体を形成することが好ましい。
【0017】
本開示の第11態様に係る積層体の製造方法は、第1態様に係る積層体の製造方法において、第2の積層体は、第1の積層体とは異なるチェック用パターンであることが好ましい。
【0018】
本開示の第12態様に係る積層体の製造方法は、第1態様に係る積層体の製造方法において、第2の積層体の計測は、レーザを用いた測長を含むことが好ましい。
【0019】
本開示の第13態様に係る積層体の製造方法は、第1態様から第12態様のいずれかに係る積層体の製造方法において、基板の表面には電子部品が実装されており、電子部品に絶縁性を有する第1の積層体を形成し、第1の積層体に電磁波シールドとして機能する導電パターンを形成することが好ましい。
【0020】
上記目的を達成するために、本開示の第14態様に係る印刷装置は、液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、液体吐出ヘッドと基板とを基板の表面に平行な方向に相対移動させる相対移動機構と、基板に対してノズルから液体を吐出させて相対移動ごとに表面に液体を積層塗布し、積層体を形成する制御装置と、表面に形成された積層体を計測する計測装置と、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプロセッサに実行させるための命令を記憶する少なくとも1つのメモリと、を備え、少なくとも1つのプロセッサは、基板の表面に第2の積層体を形成させ、第2の積層体を計測させ、計測した結果に基づいて基板の表面に第1の積層体を形成させる印刷装置である。本態様によれば、設計通りの正確な形状の積層体を形成することができる。
【0021】
上記目的を達成するために、本開示の第15態様に係るデータ生成装置は、データに基づいて基板の表面に液体を積層塗布して第1の積層体を形成する積層体の製造装置のデータを生成するデータ生成装置であって、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプロセッサに実行させるための命令を記憶する少なくとも1つのメモリと、を備え、少なくとも1つのプロセッサは、第1の積層体を形成する過程の途中の積層体である第2の積層体を計測した結果を取得し、計測した結果に基づいて第1の積層体を形成するためのデータを生成するデータ生成装置である。本態様によれば、設計通りの正確な形状の積層体を形成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、設計通りの正確な形状の積層体を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、電子基板の斜視図である。
図2図2は、電子基板の立体構造を示す断面図である。
図3図3は、プリント基板の製造プロセスの一例を示すフローチャートである。
図4図4は、インクジェット印刷装置の平面図である。
図5図5は、インクジェット印刷装置の側面図である。
図6図6は、インクジェットヘッドの先端部分の構成を示す斜視図である。
図7図7は、ノズル面の一部拡大図である。
図8図8は、ヘッドモジュールのノズル面の平面図である。
図9図9は、イジェクタの立体構造を示す断面図である。
図10図10は、測長センサを示す図である。
図11図11は、インクジェット印刷装置の電気的構成を示す機能ブロック図である。
図12図12は、表面実装リフロー工程後の電子基板を示す図である。
図13図13は、電子基板に対して形成したい3次元積層体設計情報を示す図である。
図14図14は、積層体を形成するためのデータ処理の一例を示す図である。
図15図15は、積層体を形成途中の電子基板を示す図である。
図16図16は、積層体の上に積層すべき形状の算出を説明するための図である。
図17図17は、第1の実施形態の変形例1のデータの補正を説明するための図である。
図18図18は、第1の実施形態の変形例2のデータの補正を説明するための図である。
図19図19は、形成した積層体と理想の積層体との比較を説明するための図である。
図20図20は、積層体を形成するためのデータの補正を説明するための図である。
図21図21は、大基板の平面図である。
図22図22は、導電化液体を塗布して補正する例を説明するための図である。
図23図23は、2種類の絶縁インクを塗布して補正する例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。本実施形態では、プリント基板に絶縁インク及び導電化液体を積層塗布してプリント基板に電磁波シールドの機能を有する積層体を付与する場合について説明する。プリント基板上の必要な箇所に絶縁インク及び導電化液体を積層塗布することにより、プリント基板上に存在する電極間のショートを防ぎつつ、導電化液体により電気配線を接続したり、電磁波シールドの機能を付与したりすることができる。
【0025】
<プリント基板の構成>
図1は、電子基板1000の斜視図である。図1に示すように、電子基板1000は、配線基板1002の部品実装面1004に、IC1006、抵抗器1008、及びコンデンサ1010が実装されたものである。電子基板1000、及び配線基板1002は、プリント基板の一例である。
【0026】
電子基板1000には、IC1006に対して導電パターン1020が形成され、抵抗器1008、及びコンデンサ1010に対して絶縁被覆1022が形成される。また、電子基板1000には、配線基板1002の電子部品が実装されずに露出する電極1009に対して絶縁被覆1022が形成される。
【0027】
図1には、配線基板1002の一方の面が部品実装面1004である例を示したが、配線基板1002の両面が部品実装面であってもよい。
【0028】
配線基板1002には、4つのアライメントマーク1005が設けられる。アライメントマーク1005は、配線基板1002の基準となる位置を示すものである。アライメントマーク1005の数、位置、及び形状は、適宜決めることができる。
【0029】
IC1006は、半導体集積回路が樹脂等のパッケージに封入された電子部品である。IC1006は、パッケージの外部に電極が露出される。なお、ICはIntegrated Circuitの省略語である。
【0030】
抵抗器1008は、電気抵抗素子を含む。また、抵抗器1008は、集積化された複数の電気抵抗素子が樹脂等のパッケージに封入された抵抗アレイ1008Aを含む。コンデンサ1010は、電解コンデンサ、及びセラミックコンデンサ等の各種のコンデンサを含む。
【0031】
配線基板1002に実装される電子部品のうち、IC1006の配置領域は、絶縁インクを用いて絶縁パターン1024(図2参照)が形成され、更に、絶縁パターン1024の少なくとも一部に対して、導電化液体を用いて導電パターン1020が形成される。
【0032】
導電パターン1020は、導電パターン1020の形成領域に導電化液体を配置し、配置した導電化液体を乾燥させ、硬化させることで形成される。
【0033】
絶縁被覆1022及び絶縁パターン1024は、絶縁被覆1022及び絶縁パターン1024の形成領域に絶縁インクを配置し、配置した絶縁インクを乾燥させ、硬化させることで形成される。
【0034】
導電パターン1020は、IC1006が受ける電磁波の抑制、及びIC1006から放出される電磁波の抑制を目的とする電磁波シールドとして機能する。絶縁パターン1024は、導電パターン1020とIC1006との電気的絶縁を確保する絶縁部材、導電パターン1020とIC1006と密着性を確保する接着部材、及び導電パターン1020の下地の平坦性を確保する部材等として機能する。
【0035】
配線基板1002のうち、電磁波シールドを不要とする電子部品が配置される部品領域の少なくとも一部は、導電パターン1020は形成されず、絶縁被覆1022を用いて被覆される。電磁波シールドを不要とする電子部品は、抵抗器1008、コンデンサ1010の他、ダイオード、コイル、トランス、及びスイッチ等を含む。
【0036】
また、電極1009が配置される電極領域は、絶縁被覆1022を用いて被覆される。絶縁被覆1022は、導電パターン1020が形成される際に微粒子化された導電化液体が抵抗器1008等へ付着して生じる電気回路の短絡を抑制する。
【0037】
図2は、電子基板1000の立体構造を示す断面図である。図2は、図1に示した任意のIC1006について、絶縁パターン1024、及び導電パターン1020が形成された状態の断面を模式的に示している。
【0038】
配線基板1002の部品実装面1004は、ソルダレジスト層1003によって覆われている。ソルダレジスト層1003は、部品実装面1004に形成される基板側電極1030の位置が開口されている。基板側電極1030、及びIC1006の素子側電極1032は、半田バンプ1034を介して電気接続される。
【0039】
絶縁パターン1024は、IC1006の4つの側面1006Aを囲むIC1006の周囲であり、IC1006の素子側電極1032が形成される裏面1006Bよりも配線基板1002の側に形成される。絶縁パターン1024は、IC1006の側面1006Aと接触する位置に形成されてもよい。絶縁パターン1024は、IC1006の裏面1006B、及び配線基板1002の部品実装面1004の間に形成されてもよい。
【0040】
導電パターン1020は、絶縁パターン1024の少なくとも一部に重ねて形成される。図2は、導電パターン1020が絶縁パターン1024の全面に重ねて形成される例を示している。
【0041】
また、導電パターン1020は、IC1006の側面1006A、及びIC1006の上面1006Cを覆う領域に形成されてもよい。IC1006の側面1006A、及びIC1006の上面1006Cは、導電パターン1020の下地となる絶縁パターン1024が形成されてもよい。
【0042】
IC1006が、側面1006AからIC1006の外側へ突出する電極を備える場合は、少なくとも、全ての電極を被覆する領域に絶縁パターン1024が形成される。
【0043】
図2には、導電パターン1020が露出する電子基板1000を示したが、導電パターン1020に重ねて保護膜が形成されてもよい。保護膜は、絶縁性を有していてもよい。
【0044】
<プリント基板の製造方法>
図3は、図1に示した電子基板1000の製造プロセスの一例を示すフローチャートである。なお、図3では、主要なプロセスのみを示し、前後のプロセスは省略している。
【0045】
ステップS1のクリーム半田塗布工程は、不図示のクリーム半田塗布装置において配線基板1002の部品実装面1004にクリーム半田を印刷するプロセスである。
【0046】
ステップS2の表面実装リフロー工程は、不図示のマウンターにおいて、部品実装面1004のクリーム半田が印刷された位置にIC、電気抵抗素子、コンデンサ等の各種電子部品を載置し、不図示のリフロー炉において配線基板を加熱することで、加熱された高温の半田を溶融し、プリント基板と電子部品とを接続させるプロセスである。
【0047】
ステップS3の絶縁液体塗布工程は、印刷装置(例えば、図4に示すインクジェット印刷装置100)によりプリント基板に絶縁性を有する絶縁インク(「液体」の一例、「第1の液体」の一例)を積層塗布するプロセスである。塗布とは、液体を付着させることを指し、印刷を含む。また、積層塗布とは、液体を塗布、乾燥して1つの層を形成した後、その層の上に液体を塗布、乾燥して次の層を形成する工程を繰り返すことを指す。
【0048】
絶縁液体塗布工程では、印刷装置は、絶縁インクの塗布と、塗布した絶縁インクの乾燥とを繰り返すことで、絶縁インクを積層塗布する。絶縁インクは、乾燥後に絶縁性を有するインクであり、ここでは紫外線の照射(露光)により粘度が上がり、完全硬化する紫外線硬化型インクである。なお、絶縁インクは、紫外線硬化型インクに限定されない。水性インクを塗布して熱風、又は近赤外線(Near InfraRed:NIR)等で乾燥させてもよいし、常温では固体のホットメルトインクを加熱溶融して塗布した後に常温に戻してもよい。
【0049】
ステップS4の導電化液体塗布工程は、印刷装置(例えば、図4に示すインクジェット印刷装置100)によりプリント基板に導電性物質を含む導電化液体(「液体」の一例、「第2の液体」の一例)を積層塗布するプロセスである。印刷装置は、導電化液体の塗布と、塗布した導電化液体の乾燥とを繰り返すことで、絶縁インクを積層塗布してもよい。導電化液体とは、塗布後の導電化処理により導電性になる液体のことを意味する。本実施例においては、後述する導電化液体焼結工程を実施することにより、導電化液体が導電性を有するようになる。導電化液体としては、例えば、銀ナノインク及び銀錯体インク、銅ナノインク及び銅錯体インクのような金属系のインクが挙げられる。導電化液体は、紫外線硬化型インクであってもよい。
【0050】
ステップS5の導電化液体焼結工程は、ステップS4においてプリント基板に塗布した導電化液体を焼結するプロセスである。焼結とは、導電化液体を硬化させることができればよく、加熱することに限定されず、紫外線硬化型インクに紫外線を照射すること、及び水性インクを乾燥させることを含む。
【0051】
以上のように、絶縁インク塗布後に、導電化液体を塗布して焼結させることで、プリント基板に電磁波シールドの機能を有する積層体を形成する。
【0052】
<印刷装置>
プリント基板に機能性インクを塗布して機能性インクの積層体を製造する製造装置の一例である印刷装置について説明する。機能性インクとして絶縁インクを塗布する印刷装置の構成と、機能性インクとして導電化液体を塗布する印刷装置の構成とは、同様であってよいし、機能性インクの特性に応じた印刷装置を準備してもよい。ここでは、配線基板1002に機能性インクとして紫外線硬化型インクを塗布する印刷装置を説明する。
【0053】
図4は、インクジェット印刷装置100の平面図であり、図5は、インクジェット印刷装置100の側面図である。図4及び図5に示すように、インクジェット印刷装置100は、搬送装置102、アライメント用カメラ110、インクジェットヘッド112、紫外線露光機114、測長センサ116、及び基台118を備える。
【0054】
〔搬送装置〕
搬送装置102は、配線基板1002の部品実装面1004を+Z方向に向けた状態で電子基板1000をY方向に搬送する。アライメント用カメラ110、インクジェットヘッド112、紫外線露光機114、測長センサ116は、搬送装置102による電子基板1000の搬送経路に沿って、それぞれ搬送経路の+Z方向側に配置される。
【0055】
搬送装置102は、電子基板1000を支持する搬送ステージ104、及び搬送ステージ104をY方向に沿って移動させる移動機構106を備える。
【0056】
搬送ステージ104は、配線基板1002の部品実装面1004を+Z方向に向けた状態で電子基板1000を固定する固定機構を備える。固定機構は、電子基板1000を機械的に固定してもよし、電子基板1000に対して負圧を付与して吸着してもよい。
【0057】
搬送ステージ104は、インクジェットヘッド112と電子基板1000との間のZ方向の距離を調整する調整機構を備えてもよい。搬送ステージ104は、電子基板1000のX方向の位置を調整する調整機構を備えてもよい。
【0058】
移動機構106(「相対移動機構」の一例)は、不図示のモータを備え、ボールネジ駆動機構、及びベルト駆動機構等がモータの回転軸に連結される。移動機構106は、リニアモータを備えてもよい。
【0059】
〔アライメント用カメラ〕
インクジェット印刷装置100は、2つのアライメント用カメラ110を備える。2つのアライメント用カメラ110は、それぞれ配線基板1002に設けられたアライメントマーク1005を撮影するための撮影装置である。撮影されたアライメントマーク1005は、電子基板1000の位置の同定(アライメント)、設置補正(重心合わせ、姿勢合わせ)、及びリフロー工程によって膨張した電子基板1000自体の大きさの補正(倍率補正)に使用される。
【0060】
2つのアライメント用カメラ110は、X方向に沿って配置される。また、2つのアライメント用カメラ110は、それぞれX方向に移動可能に支持される。
【0061】
アライメント用カメラ110は、不図示の撮影レンズ、及び不図示の撮像素子を備える。撮影レンズは、被写体光である電子基板1000からの反射光を撮像素子の結像面に結像させる。撮像素子は、結像面に結像した被写体光を受光して電子基板1000の画像信号を出力する。撮像素子は、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサ、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサが用いられる。
【0062】
X方向に移動可能な2つのアライメント用カメラ110によって、配線基板1002のX方向のいずれの位置に配置されたアライメントマーク1005であっても、撮影することができる。
【0063】
〔インクジェットヘッド〕
インクジェットヘッド112(「液体吐出ヘッド」の一例)は、搬送装置102による電子基板1000の搬送経路の紫外線露光機114よりも-Y方向側に配置される。
【0064】
図6は、インクジェットヘッド112の先端部分の構成を示す斜視図である。インクジェットヘッド112は、電子基板1000の幅方向(X方向)に関して、電子基板1000の全印刷領域を、1回の走査で規定の印刷解像度による印刷が可能なノズル列を有するライン型のインクジェットヘッドである。
【0065】
インクジェットヘッド112の先端部分は、ノズル面148を有する。ノズル面148には、紫外線硬化型インクを吐出するノズル162(図8参照)が配置される。なお、吐出とは、液体を液滴として飛翔させることを指し、噴射、及び滴下を含む。
【0066】
また、インクジェットヘッド112は、複数のヘッドモジュール150-iを、長手方向に沿って一列に繋ぎ合わせた構造を有している。なお、iは1からnまでの整数である。ヘッドモジュール150-iは、支持フレーム152に取り付けられて一体化される。各ヘッドモジュール150-iは、電気接続用のケーブル154を備える。
【0067】
図7は、ノズル面148の一部拡大図である。ヘッドモジュール150-iのノズル面148-iは、平行四辺形である。支持フレーム152の両端は、ダミープレート156が取り付けられる。インクジェットヘッド112のノズル面148は、ダミープレート156の表面156Aと合わせて、全体として長方形である。
【0068】
ヘッドモジュール150-iのノズル面148-iの中央部分には、帯状のノズル配置部158-iが備えられる。ノズル配置部158-iは、実質的なノズル面148-iとして機能する。ノズル162はノズル配置部158-iに備えられる。なお、図7ではノズル162を個別に図示せず、複数のノズルから構成されるノズル列160を図示している。
【0069】
図8は、ヘッドモジュール150-iのノズル面148-iの平面図である。ヘッドモジュール150-iのノズル面148-iには、複数のノズル162が2次元配列される。
【0070】
ヘッドモジュール150-iは、X方向に対して角度βの傾きを有するV方向に沿った長辺側の端面と、Y方向に対して角度αの傾きを持つW方向に沿った短辺側の端面とを有する平行四辺形の平面形状を有する。
【0071】
ヘッドモジュール150-iは、V方向に沿う行方向、及びW方向に沿う列方向について、複数のノズル162がマトリクス配置される。インクジェットヘッド112の場合、各ノズル162をX方向に沿って投影した投影ノズル列は、X方向について最大の印刷解像度を達成するノズル密度で各ノズル162が概ね等間隔で並ぶ一列のノズル列と等価な
ものと考えることができる。
【0072】
なお、概ね等間隔とは、インクジェット印刷装置100において印刷可能な打滴点が実質的に等間隔であることを意味している。例えば、製造上の誤差、及び着弾干渉による電子基板1000上での液滴の移動の少なくともいずれか一方を考慮して僅かに間隔を異ならせたもの等が含まれている場合も、等間隔の概念に含まれる。
【0073】
インクジェットヘッド112のノズル162の配列形態は限定されず、様々なノズル配列の形態を採用することができる。例えば、一列の直線配列、V字状配列、及びV字状配列を繰り返し単位とするW字状のようなジグザグ配列等であってもよい。
【0074】
図9は、インクジェットヘッド112が備えるイジェクタ164の立体構造を示す断面図である。イジェクタ164は、ノズル162、ノズル162に通じる圧力室166、及び圧電素子168を備える。ノズル162は、ノズル流路170を介して圧力室166と通じている。圧力室166は個別供給路172を介して共通支流路174に通じている。
【0075】
圧力室166の天面を構成する振動板176は、圧電素子168の下部電極に相当する共通電極として機能する不図示の導電層を備える。圧力室166、その他の流路部分の壁部、及び振動板176はシリコンによって作製することができる。
【0076】
振動板176の材質はシリコンに限らず、樹脂等の非導電性材料によって形成してもよい。振動板176自体をステンレス鋼等の金属材料によって構成し、共通電極を兼ねる振動板としてもよい。
【0077】
振動板176に対して圧電体180及び個別電極178を含む圧電素子168が積層された構造により、圧電ユニモルフアクチュエータが構成される。圧電素子168の上部電極である個別電極178に駆動電圧が印加されると、圧電体180が変形し、振動板176が撓むことで圧力室166の容積が変化する。圧力室166の容積変化に伴う圧力変化が紫外線硬化型インクに作用して、ノズル162から紫外線硬化型インクが吐出される。
【0078】
紫外線硬化型インクを吐出後に圧電体180が元の状態に戻る際に、共通支流路174から個別供給路172を通って新しい紫外線硬化型インクが圧力室166に充填される。圧力室166に紫外線硬化型インクが充填される動作をリフィルという。
【0079】
圧力室166の平面視形状については、特に限定はなく、四角形、その他の多角形、円形、又は楕円形等であってもよい。個別電極178の上方には、カバープレート182が設けられる。カバープレート182は、圧電素子168の可動空間184を保持し、かつ、圧電素子168の周囲を封止する部材である。
【0080】
カバープレート182の上方には、不図示のインク室が形成される。インク室は、不図示の連通路を介して、不図示の共通本流路に連結される。
【0081】
このように構成されたインクジェットヘッド112は、複数のノズル162から紫外線硬化型インクを吐出させる。複数のノズル162は、それぞれ複数のサイズの紫外線硬化型インクを吐出可能であり、電子基板1000に複数のサイズのインクドットを配置可能である。
【0082】
〔紫外線露光機〕
図4及び図5の説明に戻り、紫外線露光機114は、搬送装置102による電子基板1000の搬送経路の測長センサ116よりも-Y方向側に配置される。
【0083】
紫外線露光機114は、搬送装置102によって搬送される電子基板1000のX方向の全体に紫外線を照射する紫外線光源を備える。紫外線光源は、例えば紫外線ランプである。紫外線露光機114は、インクジェットヘッド112によって電子基板1000に塗布された紫外線硬化型インクに紫外線を照射することで、紫外線硬化型インクの硬化を促進させる。
【0084】
〔測長センサ〕
測長センサ116は、搬送装置102によって搬送される電子基板1000のXY平面の各位置のZ方向高さを計測(「測長」の一例)する計測装置である。測長センサ116は、不図示の出射部から出射したレーザ光と不図示の受光部で受光したレーザ光との位相差を用いて距離を検出するレーザセンサ116Aを含む。
【0085】
図10は、測長センサ116を示す図である。測長センサ116は、-Z方向に向けられた複数のレーザセンサ116AがX方向に一定間隔で一列に配置される。測長センサ116は、レーザセンサ116Aに限らず、3次元形状計測用のカメラを用いてもよい。
【0086】
測長センサ116は、配線基板1002の部品実装面1004を計測してもよいし、部品実装面1004に形成された紫外線硬化型インクの積層体を計測してもよい。測長センサ116は、レーザセンサ116Aを用いることで、精度よく計測することができる。
【0087】
〔電気的構成〕
図11は、インクジェット印刷装置100の電気的構成を示す機能ブロック図である。図11に示すように、インクジェット印刷装置100は、システム制御部130、通信部132、データ処理部134、搬送制御部136、アライメントカメラ制御部138、ヘッド制御部140、紫外線露光制御部142、計測制御部144、及びメモリ146を備える。
【0088】
システム制御部130(「制御装置」の一例)は、通信部132、搬送制御部136、アライメントカメラ制御部138、ヘッド制御部140、紫外線露光制御部142、及び計測制御部144へ指令信号を送信し、インクジェット印刷装置100の動作を統括制御する。
【0089】
通信部132は、ホストコンピュータ等の上位システム200から、電子基板1000に形成する紫外線硬化型インクの積層体の3次元データを取得する。システム制御部130は、取得した3次元データをメモリ146に記憶させる。
【0090】
データ処理部134は、取得した3次元データを配線基板1002の部品実装面1004に平行な方向に分割して積層順の2次元の複数のスライスデータに変換する。また、データ処理部134は、各スライスデータに対してハーフトーン処理等の画像処理を施し、スライスデータに対応するドットの位置、及びドットのサイズが規定される吐出データを生成する。さらに、データ処理部134は、測長センサ116の計測結果に基づいて3次元データ、又はスライスデータを補正するデータ生成装置として機能する。
【0091】
搬送制御部136は、搬送装置102の動作を制御する。すなわち、搬送制御部136は、搬送ステージ104に載置された電子基板1000を搬送させる。
【0092】
アライメントカメラ制御部138は、アライメント用カメラ110の動作を制御する。すなわち、アライメントカメラ制御部138は、アライメント用カメラ110にアライメントマーク1005を撮影させ、アライメントマーク1005の撮影画像を取得する。
【0093】
データ処理部134は、取得したアライメントマーク1005の撮影画像から搬送ステージ104に載置されている電子基板1000の位置を測定し、測定した位置に応じて、スライスデータを変形する。データ処理部134は、測定した位置に応じてスライスデータを2次元面内で角度回転させてもよいし、スライスデータを伸縮させてもよい。
【0094】
ヘッド制御部140は、インクジェットヘッド112の動作を制御する。すなわち、ヘッド制御部140は、吐出データに基づいてインクジェットヘッド112のノズル162からの紫外線硬化型インクの吐出を制御する。
【0095】
ヘッド制御部140は、インクジェットヘッド112の圧電素子168(図9参照)に印加する駆動波形を制御し、ノズル162から電子基板1000に打滴するインクドットの大きさを制御する。インクドットの大きさは、相対的にインク量の少ない小滴、小滴よりも相対的にインク量の多い中滴、及び中滴よりも相対的にインク量の多い大滴、の3種類がある。なお、インクドットの大きさは、同じ箇所に打滴するインクドットの数で制御してもよい。
【0096】
紫外線露光制御部142は、紫外線露光機114の動作を制御する。すなわち、紫外線露光制御部142は、電子基板1000に塗布された紫外線硬化型インクに紫外線露光機114によって紫外線を照射させる。
【0097】
計測制御部144は、測長センサ116の動作を制御する。すなわち、計測制御部144は、測長センサ116に紫外線硬化型インクの積層体を計測させ、計測した結果を取得する。
【0098】
システム制御部130、データ処理部134、搬送制御部136、アライメントカメラ制御部138、ヘッド制御部140、紫外線露光制御部142、及び計測制御部144は、プロセッサにより構成される。プロセッサは、メモリ146に記憶された命令を実行する。プロセッサのハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の機能部として作用する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、画像処理に特化したプロセッサであるGPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるPLD(Programmable Logic Device)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0099】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサ(例えば、複数のFPGA、又はCPUとFPGAの組み合わせ、あるいはCPUとGPUの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の機能部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の機能部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント又はサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の機能部として作用させる形態がある。第2に、SoC(System On Chip)等に代表されるように、複数の機能部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の機能部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0100】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0101】
メモリ146は、プロセッサに実行させるための命令を記憶する。メモリ146は、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)を含む。プロセッサは、RAMを作業領域とし、ROMに記憶された各種のプログラム及びパラメータを使用してソフトウェアを実行し、かつROM等に記憶されたパラメータを使用することで、印刷装置の各種の処理を実行する。
【0102】
また、メモリ146は、インクジェット印刷装置100の制御に使用される各種のデータ、各種のパラメータ、及び各種のプログラム等を記憶する。システム制御部130は、メモリ146が記憶する各種のパラメータ等を適用して、インクジェット印刷装置100の各部の制御を実施する。
【0103】
〔作用〕
以上のように構成されたインクジェット印刷装置100によれば、電子基板1000を搬送ステージ104に載置し、インクジェットヘッド112、及び紫外線露光機114の下側(-Z方向側)を通過(走査、「相対移動」の一例)させる。インクジェットヘッド112は、通過する電子基板1000の必要な箇所に紫外線硬化型インクを吐出する。また、紫外線露光機114は、通過する電子基板1000に紫外線を照射する。これにより、インクジェット印刷装置100は、シングルパス方式で電子基板1000に紫外線硬化型インクを塗布し、塗布した紫外線硬化型インクを硬化させることができる。
【0104】
さらに、インクジェット印刷装置100は、電子基板1000をインクジェットヘッド112、及び紫外線露光機114の下側を複数回通過させる。これにより、インクジェット印刷装置100は、通過ごと(「相対移動ごと」の一例)に電子基板1000に紫外線硬化型インクを積層させ、3次元積層体を形成することができる。
【0105】
例えば、部品実装面1004の電子部品の配置領域に紫外線硬化型インクとして絶縁インクを塗布することで、絶縁被覆1022を形成することができる。また、部品実装面1004のIC1006の配置領域に絶縁インクを塗布することで、絶縁パターン1024を形成することができる。さらに、絶縁パターン1024の少なくとも一部に紫外線硬化型インクとして導電化液体を塗布することで、導電パターン1020を形成することができる。
【0106】
<インク積層体の製造方法:第1の実施形態>
絶縁液体塗布工程を例に、インク積層体の製造方法を説明する。
【0107】
図12は、表面実装リフロー工程後の電子基板10を示す図である。図12のF12Aは、電子基板10の平面図であり、図12のF12Bは、F12Aの12-12断面図である。電子基板10は、配線基板12の部品実装面13に、クリーム半田塗布工程、及び表面実装リフロー工程を経て電子部品18、及び隣接導電性部品20が実装されたものである。電子基板10,及び配線基板12は、プリント基板の一例である。
【0108】
また、配線基板12の部品実装面13には、配線基板12のグランド電位に接続されるグランド電極16が設けられている。配線基板12のグランド領域14Aは、グランド電極16に囲まれた領域である。
【0109】
図13は、図12に示した電子基板10に対して絶縁液体塗布工程において形成したい3次元積層体設計情報(設計形状、「設計値」の一例)を示す図である。図13のF13Aは、電子基板10の平面図であり、図13のF13Bは、F13Aの13-13断面図である。ここでは、形成したい3次元積層体は絶縁性を有する積層体30(「第1の積層体」の一例)である。すなわち、インクジェット印刷装置100は、配線基板12の部品実装面13(「基板の表面」の一例)のグランド領域14Aに絶縁インクを積層塗布して積層体30を形成する。
【0110】
図14は、積層体30を形成するためのデータ処理の一例を示す図である。F14Aは、形成したい積層体30の3次元データ30AのXZ平面における断面を示している。また、F14Bは、配線基板12の部品実装面13に平行な方向(Z方向に垂直な方向)に分割した3次元データ30Aを示す図である。F14Bでは、3次元データ30Aを、1回の走査あたりの絶縁インクの積層厚みで分割している。1回の走査あたりの絶縁インクの積層厚みとは、インクジェットヘッド112と電子基板10との1回の走査で積層可能な絶縁インクの高さである。
【0111】
さらに、F14Cは、F14Bに示すように分割した3次元データ30Aから生成した積層順の2次元の複数のスライスデータ32A、32B、32C、32D、32E、32Fを示す図である。
【0112】
インクジェット印刷装置100は、電子基板10とインクジェットヘッド112及び紫外線露光機114との走査毎に、それぞれスライスデータ32A、32B、32C、32D、32E、32Fに基づいてインクジェットヘッド112から絶縁インクを塗布し、紫外線露光機114によって硬化させる。これにより、スライスデータ32A、32B、32C、32D、32E、32Fに対応する層が順に積層され、積層体30が形成される。
【0113】
なお、インクジェットヘッド112における絶縁インクの塗布は、スライスデータ32A、32B、32C、32D、32E、32Fの順でなくてもよい。インクジェット印刷装置100は、スライスデータの順を問わず、インクジェットヘッド112からすべてのスライスデータ32A、32B、32C、32D、32E、32Fに基づいて絶縁インクを塗布することで、積層体30を形成することができる。
【0114】
図15は、積層体30を形成途中の電子基板10を示す図である。図15のF15Aは、電子基板10の平面図であり、図15のF15Bは、F15Aの15-15断面図である。ここでは、図12に示した電子基板10に、積層体30を形成する過程の途中の積層体である積層体34(「第2の積層体」の一例)が形成されている。積層体34は、例えばスライスデータ32A、32B、32C(「第1のスライスデータ」の一例)に基づいた絶縁インクの塗布によって形成された積層体である。
【0115】
図15に示す例では、積層体34は、Z方向の高さ(厚み)がX方向の端部よりも中央部の方が高く(厚く)なっている。このような原因はいくつか考えられるが、例えばX方向の中央部に絶縁インクを吐出するノズルが、相対的に絶縁インクを吐出しやすく吐出量が増加している、又はX方向の中央部以外のノズルからの絶縁インクの吐出量が減少している可能性がある。
【0116】
本実施形態では、積層体30を形成する過程の途中の積層体34を計測することで、積層体34の上に積層すべき形状を求め、求めた形状に基づいて3次元データ又はスライスデータを補正することで、設計通りの正確な形状の積層体30を形成する。
【0117】
図16は、積層体34の上に積層すべき形状の算出を説明するための図である。図16のF16Aは、図14と同様の、形成したい積層体30の3次元データ30Aの断面を示している。図16のF16Bは、図15のF15Bに示した積層体34を測長センサ116によって計測した結果である計測データ34AのF16Aと同じ位置の断面を示している。また、図16のF16Cは、3次元データ30Aと計測データ34Aとの差分である差分データ36A(「第1の差分」の一例)を示している。差分データ36Aは、F16CではF16Aと同じ位置の断面を示しているが、積層体30を形成するために積層体34の上のXY平面の各位置に積層すべき積層体の3次元データである。
【0118】
インクジェット印刷装置100は、この差分データ36Aに基づいて積層体34の上に絶縁インクを塗布することで、設計通りの積層体30を形成することができる。すなわち、インクジェット印刷装置100は、データ処理部134において3次元の差分データ36Aから補正後のスライスデータを生成し、補正後のスライスデータに基づいてインクジェットヘッド112から絶縁インクを吐出する。この補正後のスライスデータは、スライスデータ32D、32E、32F(「第2のスライスデータ」の一例)を補正したスライスデータに相当する。このように、積層体を形成する途中の過程において理想通り(設計通り)にできていない場合に、計測した結果に基づいてデータを補正することで、理想通りの積層体を形成することができる。
【0119】
積層体30を形成する過程の途中の積層体34は、完成した積層体30を100%とした場合に、10%以上90%以下の状態であることが好ましく、20%以上80%以下の状態であることがより好ましく、30%以上70%以下の状態であることがさらに好ましい。
【0120】
生産ラインにおいては、積層体34を計測した電子基板10は、調整用として処分することも考えられる。この場合、計測した結果に基づいて生成したデータを、以後に製造する積層体30の形成に適用することができる。以後に製造する積層体30とは、差分データ36Aに基づいて補正後のスライスデータを生成した後に製造する積層体30を指す。以後に製造する積層体30は、例えば、処分された電子基板10よりも後に絶縁インクが塗布される電子基板10に形成される積層体30であってもよい。
【0121】
例えば、積層体34の3次元データ(「第2の積層体の設計値」の一例)に差分データ36Aを追加した新たな3次元データを作成し、新たな3次元データから新たな2次元の複数のスライスデータを作成し、新たな複数のスライスデータに基づいて新規の電子基板10に対して積層体を形成する。新規の電子基板10とは、積層体34を形成し、積層体34を計測した電子基板10とは異なる電子基板10を指す。新たな2次元の複数のスライスデータは、積層体34の複数のスライスデータ(「第2の積層体の設計値」の一例)と、差分データ36Aに基づくスライスデータとから作成してもよい。新たな複数のスライスデータにより、新規の電子基板10に対して理想通りの積層体30を形成することができる。
【0122】
なお、新規の電子基板10に対する積層体30の形成において、差分データ36Aから生成された補正後のスライスデータ以外のスライスデータ(「第3のスライスデータ」の一例)に基づく積層体の形成から開始することが好ましい。補正後のスライスデータを作成した際の状況は、積層体34の複数のスライスデータに基づいて形成した後の状況であり、電子基板10に積層体が形成されていない状況ではない。このため、差分データ36Aから生成された補正後のスライスデータに基づいて積層体の形成を開始すると、最終的に完成する積層体30が理想通りでないものになる可能性がある。したがって、補正後のスライスデータを使う状況は、補正データを作成した際の状態に近いことが望ましい。
【0123】
このように、計測した結果に基づいて生成したデータを、以後に製造する積層体30の形成に使用することができる。測長センサ116による計測と画像データの補正は、電子基板10の1枚毎に実施してもよいし、10枚毎に1回実施してもよいし、100枚毎に1回実施してもよい。
【0124】
ここでは、積層体の3次元データから2次元の複数のスライスデータを生成する方法について説明しているが、これは当然滴種に関する考え方も含まれている。すなわち、不足している領域に厚みを持たせるために、吐出する絶縁インクを小滴から中滴に変更することで、形成すべき積層体を実現することができる。これは積層体の3次元データからスライスデータを生成する際に、同じインク滴サイズで塗布する場合のスライス方法、及び小滴、中滴、大滴を使い分けて実現する場合のスライス方法に含まれる。
【0125】
<第1の実施形態の変形例1>
インクジェットヘッド112の1回の吐出あたりの積層量によってデータを補正することで、より正確な形状の積層体を形成することができる。ここでは、XY平面の各位置(「各積層塗布位置」の一例)の絶縁インクの積層量を算出してデータを補正する。
【0126】
図17は、第1の実施形態の変形例1のデータの補正を説明するための図である。図17のF17Aは、図16と同様であり、積層体30の3次元データ30Aと積層体34の計測データ34Aとの差分である差分データ36Aの算出を示している。
【0127】
図17のF17Bは、積層体34の計測データ34Aと電子基板10の絶縁インクの塗布前における部品実装面13の測長センサ116による計測データ13Aとの差分である差分データ34Bの算出(「比較」の一例)を示している。すなわち、差分データ34Bは、部品実装面13に積層したXY平面の各位置の絶縁インクの積層量を示している。
【0128】
図17のF17Cは、積層体34を形成した際のXY平面の各位置の積層速度の算出を示している。すなわち、積層体34のXY平面の各位置の絶縁インクの積層量を示す差分データ34Bを、積層体34を形成した際のXY平面の各位置のインクジェットヘッド112による絶縁インクの打滴数(「積層塗布回数」の一例)で除算することで、積層体34を形成した際のXY平面の各位置の積層速度=積層量/打滴数を求めている。打滴数と吐出回数とは、同じ数である。
【0129】
図17のF17Dは、積層体34から積層体30を形成する際のXY平面の各位置にインクジェットヘッド112により打滴すべき回数の算出を示している。すなわち、積層体34の上に積層すべき積層体の3次元データである差分データ36Aを、XY平面の各位置の積層速度で除算することで、XY平面の各位置に打滴すべき回数(塗布層数、「積層塗布回数」の一例)を求めている。
【0130】
このように、積層体34を積層した際の1回の吐出あたりの積層量に基づいて積層体34の上に形成すべき積層体のデータを補正する。インクジェット印刷装置100は、求めた塗布層数だけXY平面の各位置に電子基板10とインクジェットヘッド112及び紫外線露光機114との走査によって絶縁インクを積層する。これにより、インクジェット印刷装置100のばらつきに応じた塗布が可能となり、より高精度に最終的な品質がよい積層体30を形成することができる。
【0131】
<第1の実施形態の変形例2>
第1の実施形態の変形例1では、XY平面の各位置の絶縁インクの積層量の算出に部品実装面13の計測データ13Aを用いたが、積層体34を形成する過程の途中の積層体の計測データを用いてもよい。
【0132】
図18は、第1の実施形態の変形例2のデータの補正を説明するための図である。図18のF18Aは、図16と同様であり、積層体30の3次元データ30Aと積層体34の計測データ34Aとの差分である差分データ36Aの算出を示している。
【0133】
図18のF18Bは、積層体34の計測データ34Aと、積層体34を形成する過程の途中の積層体(「第3の積層体」の一例)の測長センサ116による計測データ38Aとの差分である差分データ40Aの算出(「比較」の一例)を示している。すなわち、差分データ40Aは、途中の積層体に積層したXY平面の各位置の絶縁インクの積層量を示している。
【0134】
図18のF18Cは、途中の積層体から積層体34を形成した際のXY平面の各位置の積層速度の算出を示している。すなわち、途中の積層体に積層したXY平面の各位置の絶縁インクの積層量を示す差分データ40Aを、途中の積層体から積層体34を形成した際のXY平面の各位置のインクジェットヘッド112による絶縁インクの打滴数で除算することで、途中の積層体から積層体34を形成した際のXY平面の各位置の積層速度を求めている。
【0135】
図18のF18Dは、積層体34から積層体30を形成する際のXY平面の各位置にインクジェットヘッド112により打滴すべき回数の算出を示している。すなわち、積層体34の上に積層すべき積層体の3次元データである差分データ36Aを、XY平面の各位置の積層速度で除算することで、XY平面の各位置に打滴すべき回数(塗布層数、「積層塗布回数」の一例)を求めている。
【0136】
このように、途中の積層体から積層体34を積層した際の1回の吐出あたりの積層量に基づいて積層体34の上に形成すべき積層体のデータを補正する。インクジェット印刷装置100は、求めた塗布層数だけXY平面の各位置に電子基板10とインクジェットヘッド112及び紫外線露光機114との走査によって絶縁インクを積層する。これにより、インクジェット印刷装置100のばらつきに応じた塗布が可能となり、より高精度に最終的な品質がよい積層体30を形成することができる。
【0137】
<第1の実施形態の変形例3>
第1の実施形態では、積層体30を形成する過程の途中の積層体である積層体34の計測データ34Aと形成したい積層体30の3次元データ30Aとを比較しているが、積層体34の計測データ34Aと積層体34の理想状態とを比較してもよい。
【0138】
図19は、形成した積層体34と理想の積層体34との比較を説明するための図である。図19のF19Aは、積層体30を形成する過程の途中の積層体である積層体34の3次元データ34Cの断面を示している。3次元データ34Cは、例えば積層体30の3次元データ30Aの下側50%(積層順の前半50%)のデータである。また、図19のF19Bは、3次元データ34Cに基づいて実際に形成された積層体34の測長センサ116による計測データ34AのF19Aと同じ位置の断面を示している。図19では、F19A及びF19Bは、Z方向の位置を合わせて示している。
【0139】
F19Bに示すように、積層体34は、図示の断面においてX方向のX2の位置より左側及びX4の位置より右側は、3次元データ34CよりZ方向の高さが低い。すなわち、積層体34は、X方向のX2の位置より左側及びX4の位置より右側は絶縁インクの量が不足している。また、積層体34は、X方向のX2の位置より右側かつX4の位置より左側は、3次元データ34CよりZ方向の高さが高い。すなわち、積層体34は、X方向のX2の位置より右側かつX4の位置より左側は絶縁インクの量が過剰である。さらに、積層体34は、X方向のX1の位置からX3の位置にかけてZ方向の高さが漸増し、X方向のX3の位置からX5の位置にかけてZ方向の高さが漸減している。
【0140】
図19のF19Cは、3次元データ34Cと計測データ34Aとの差分(「第2の差分」の一例)を示している。F19Cでは、横軸をF19A及びF19Bの断面のX方向位置、縦軸の原点を適正インク量、縦軸上方向をインクの不足量、縦軸下方向をインクの過剰量として示している。
【0141】
F19Cに示すように、X方向のX2の位置より左側及びX4の位置より右側は絶縁インクの量が不足している。また、X方向のX2の位置より右側かつX4の位置より左側は絶縁インクの量が過剰である。さらに、X方向のX1の位置からX3の位置にかけてインク量が漸増しており、X方向のX3の位置からX5の位置にかけてインク量が漸減している。差分は、F19CではF19Aと同じ位置の断面を示しているが、積層体30を形成するXY平面の各位置で算出する。
【0142】
このように、形成したい積層体の3次元データ34Cと実際に形成された計測データ34Aとを比較することで、XY平面の各位置におけるインク不足、又はインク過剰を判断することができる。
【0143】
図20は、積層体30を形成するためのデータの補正を説明するための図である。図20のF20Aは、積層体34の3次元データ34Cと、積層体34の上に積層する積層体の3次元データ42Aとの断面を示している。3次元データ42Aは、積層体30の3次元データの上側50%(積層順の後半50%)のデータである。
【0144】
図20のF20Bは、図19のF19Cと同様に、3次元データ34Cと計測データ34Aとの差分を示している。
【0145】
図20のF20Cは、F20Aに示した3次元データ42AをF20Bに示した差分で補正した3次元データ42Bを示している。3次元データ42Bは、3次元データ42Aにおいて、インク不足の領域のインク量を増やし、インク過剰の領域のインク量を減らしたデータである。このように、新たに作成した3次元データ42Bから2次元スライスデータを作成し、2次元スライスデータに基づいて絶縁インクを積層することで、積層体34の上に3次元データ42Bに基づく積層体を積層して、設計通りの積層体30を形成することができる。
【0146】
この方法の他にも、50%から100%に積層するためのデータに対して、インク不足の領域について塗布層数(スライスデータ数)を増やしたり、インク吐出量を増やしたり(例えばインクドットを大きく)する補正ができる。これとは逆に、インク過剰の領域については塗布層数を減らしたり、インク吐出量を減らしたりする補正ができる。このような補正をすることにより、最終的に積層される積層体を適切にすることができる。
【0147】
ここで説明したように、完成形の理想状態からの差分だけでなく、途中状態の理想状態と比較して補正することも可能である。例えば、50%のデータにおける形成状態を確認して、75%における理想状態と比較して、その差分で形成する積層体を決めることもできる。
【0148】
<第1の実施形態の変形例4>
1つの積層体を形成する場合に、複数回データを補正してもよい。例えば、全体の50%のデータにおける形成状態を調べる。そして完成形の状態と比較して、今後形成すべき積層体を決定する。そこから2次元のスライスデータを作成して、作成したスライスデータに基づいて絶縁インクを塗布する。
【0149】
その後、例えば全体の75%のデータまで塗布し、同様にその時点で形成された積層体の状態を調べる。そして完成形の状態と比較して、今後形成すべき積層体を決定する。そこから2次元のスライスデータを作成して、作成したスライスデータに基づいて絶縁インクを塗布する。
【0150】
このように、複数回補正を実施することで、設計通りの正確な形状の積層体を形成することができる。
【0151】
<第2の実施形態>
シングルパス方式のインクジェット印刷装置の場合、インクジェットヘッドの吐出ムラは、走査方向(相対移動方向)の傾向は同じになり、走査方向のばらつきは発生しにくい。このため、走査方向に交差する断面だけを調べることで、インクジェットヘッドの吐出ムラについての特徴を十分把握可能である。
【0152】
図21は、大基板12Aの平面図である。大基板12Aは、多面付け基板であり、ここでは縦5個×横4個の計20個の配線基板12が割り付けられている。大基板12Aは、プリント基板の一例である。
【0153】
大基板12Aには、インクジェットヘッド112において吐出ムラチェック用パターンPTが形成されている。吐出ムラチェック用パターンPTは、例えば複数回の走査によって絶縁インクが積層された積層体である。
【0154】
測長センサ116によって吐出ムラチェック用パターンPTのX方向の各位置におけるZ方向高さを計測することで、各ノズル162の1回の吐出あたりの高さへの影響を算出することができる。したがって、第1の実施形態及びその変形例と同様に、絶縁インクによって積層体を形成するためのデータを補正して、設計通りの正確な形状の積層体を形成することができる。
【0155】
ここでは、多面付け基板である大基板12Aに吐出ムラチェック用パターンPTを形成する例を説明したが、吐出ムラチェック用パターンPTはそれぞれの配線基板12に形成されてもよい。また、絶縁インクで吐出ムラチェック用パターンPTを形成して、絶縁インクによって形成する積層体のデータを補正する例を説明したが、導電化液体で吐出ムラチェック用パターンPTを形成して、導電化液体によって形成する積層体のデータを補正してもよい。
【0156】
<第3の実施形態>
ここまでは、絶縁インクの積層体を形成する過程の途中の積層体を計測し、さらに絶縁インクを塗布して補正する例を説明したが、絶縁インクの積層体を計測し、さらに絶縁インクとは異なる導電化液体を塗布して補正してもよい。
【0157】
図22は、導電化液体を塗布して補正する例を説明するための図である。図22のF22Aは、電子基板10に形成したい絶縁インクの積層体30の3次元データ30A及び導電化液体の積層体の3次元データ44Aの断面を示している。絶縁インクの積層体30を形成し、その後3次元データ44Aに基づく導電化液体の積層体を形成し、導電化液体の積層体がグランド電極16と接続されることで、電磁波シールドが形成される。
【0158】
図22のF22Bは、実際に形成した積層体30の測長センサ116による計測データ30BのF22Aと同じ位置の断面を示している。また、図22のF22Cは、3次元データ30Aと計測データ30Bとの差分である差分データ46Aを示している。差分データ46Aは、F22CではF22Aと同じ位置の断面を示しているが、形成した積層体30におけるXY平面の各位置の絶縁インクの不足量を示す3次元データである。
【0159】
図22のF22Dは、導電化液体の積層体の3次元データ44Aを絶縁インクの不足量を示す差分データ46Aで補正した、補正後の導電化液体の積層体の3次元データ44Bを示している。
【0160】
3次元データ44Bに基づいて導電化液体を塗布することで、絶縁インクの不足分について導電化液体を積層することができ、設計通りの形状の電磁波シールドを形成することができる。
【0161】
<第3の実施形態の変形例>
積層体30の形成に、複数種類の絶縁インクを使用する場合がある。例えば、第1の絶縁インクにより形成した積層体の上に第1の絶縁インクとは異なる第2の絶縁インクを積層して積層体30を形成することができる。第2の絶縁インクを使用することで、例えば積層体30の表面に、光沢感、色、硬度、導電インクへの密着性等の特別な特徴を付与することができる。この場合、第1の絶縁インクの積層体を計測し、第2の絶縁インクを塗布して補正することができる。
【0162】
図23は、2種類の絶縁インクを塗布して補正する例を説明するための図である。図23のF23Aは、電子基板10に形成したい第1の絶縁インク(「第1の液体」の一例)の積層体(「第2の積層体」の一例)の3次元データ48A及び第2の絶縁インク(「第2の液体」の一例)の積層体の3次元データ50Aの断面を示している。3次元データ48Aに基づく第1の絶縁インクの積層体を形成し、その後3次元データ50Aに基づく第2の絶縁インクの積層体を形成することで、絶縁性を有する積層体(「第1の積層体」の一例)が形成される。
【0163】
図23のF23Bは、3次元データ48Aに基づいて実際に形成した第1の絶縁インクの積層体の測長センサ116による計測データ48Bの断面を示している。また、図23のF23Cは、3次元データ50Aを3次元データ48Aと計測データ48Bとの差分で補正した、補正後の第2の絶縁インクの積層体の3次元データ50Bの断面を示している。すなわち、3次元データ50Bは、第1の絶縁インクが3次元データ48Aより不足している領域はその分だけ第2の絶縁インクを増加させ、第1の絶縁インクが3次元データ48Aより過剰な領域は第2の絶縁インクをその分だけ減少させたデータである。
【0164】
3次元データ48Aに基づいて形成した第1の絶縁インクの積層体の上に3次元データ50Bに基づいて第2の絶縁インクを塗布することで、設計通りの形状の積層体を形成することができる。
【0165】
電子基板10毎に補正する場合、第1の絶縁インクを塗布し、第1の絶縁インクで補正して再度第1の絶縁インクを塗布して、さらに第2の絶縁インクを塗布すると、3回の印刷が必要となる。本変形例によれば、第1の絶縁インクを塗布し、第2の絶縁インクで補正して補正データを含めて第2の絶縁インクを塗布するので、2回の印刷で済み、印刷回数を減らせるという効果がある。
【0166】
<その他>
ここではインク積層体の製造方法として、プリント基板に電磁波シールドを形成するプリント基板の製造方法について説明したが、製造目的物としてプリント基板は必須ではない。すなわち、積層後にプリント基板から切り離したインクの積層体を製造目的物とした積層体の製造方法も本発明に含まれる。
【0167】
測長センサ116の解像度は、インクジェットヘッド112の印刷解像度と同じでなくてよい。測長センサ116の解像度がインクジェットヘッド112の印刷解像度よりも低い場合、計測データを補間することでインクジェットヘッド112の印刷解像度と同じ計測データを得ることができる。
【0168】
また、測長センサ116は、積層体のXY平面のすべての位置を計測しなくてもよい。測長センサ116において積層体のXY平面の一部を計測し、内挿又は外挿により積層体のXY平面の全体の計測データを算出してもよい。
【0169】
本発明の技術的範囲は、上記の実施形態に記載の範囲には限定されない。各実施形態における構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各実施形態間で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0170】
10…電子基板
12…配線基板
12A…大基板
13…部品実装面
13A…計測データ
14A…グランド領域
16…グランド電極
18…電子部品
20…隣接導電性部品
30…積層体
30A…3次元データ
30B…計測データ
32A…スライスデータ
32B…スライスデータ
32C…スライスデータ
32D…スライスデータ
32E…スライスデータ
32F…スライスデータ
34…積層体
34A…計測データ
34B…差分データ
34C…3次元データ
36A…差分データ
38A…計測データ
40A…差分データ
42A…3次元データ
42B…3次元データ
44A…3次元データ
44B…3次元データ
46A…差分データ
48A…3次元データ
50A…3次元データ
50B…3次元データ
100…インクジェット印刷装置
102…搬送装置
104…搬送ステージ
106…移動機構
110…アライメント用カメラ
112…インクジェットヘッド
114…紫外線露光機
116…測長センサ
116A…レーザセンサ
118…基台
130…システム制御部
132…通信部
134…データ処理部
136…搬送制御部
138…アライメントカメラ制御部
140…ヘッド制御部
142…紫外線露光制御部
144…計測制御部
146…メモリ
148…ノズル面
148-i…ノズル面
150-i…ヘッドモジュール
152…支持フレーム
154…ケーブル
156…ダミープレート
156A…表面
158-i…ノズル配置部
160…ノズル列
162…ノズル
164…イジェクタ
166…圧力室
168…圧電素子
170…ノズル流路
172…個別供給路
174…共通支流路
176…振動板
178…個別電極
180…圧電体
182…カバープレート
184…可動空間
200…上位システム
1000…電子基板
1002…配線基板
1003…ソルダレジスト層
1004…部品実装面
1005…アライメントマーク
1006A…側面
1006B…裏面
1006C…上面
1008…抵抗器
1008A…抵抗アレイ
1009…電極
1010…コンデンサ
1020…導電パターン
1022…絶縁被覆
1024…絶縁パターン
1030…基板側電極
1032…素子側電極
1034…半田バンプ
PT…吐出ムラチェック用パターン
S1~S5…プリント基板の製造プロセスのステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23