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特開2024-74704エステル化合物の製造方法、含フッ素エステル化合物の製造方法、及び含フッ素エステル化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074704
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】エステル化合物の製造方法、含フッ素エステル化合物の製造方法、及び含フッ素エステル化合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/14 20060101AFI20240524BHJP
   C07C 69/63 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
C07C67/14 CSP
C07C69/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186034
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇野 誠人
(72)【発明者】
【氏名】上牟田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】青山 元志
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB60
4H006AB68
4H006AC48
4H006KA14
(57)【要約】
【課題】フッ素化を収率良く進行できるエステル化合物の製造方法等を提供する。
【解決手段】水酸基を有する化合物とカルボン酸ハロゲン化物とを反応させて、エステル化合物を得る工程を含み、カルボン酸ハロゲン化物は、塩素原子の数が1分子当たり3以上である、エステル化合物の製造方法及びその応用。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有する化合物とカルボン酸ハロゲン化物とを反応させて、エステル化合物を得る工程を含み、
前記カルボン酸ハロゲン化物は、塩素原子の数が1分子当たり3以上である、エステル化合物の製造方法。
【請求項2】
前記カルボン酸ハロゲン化物は、下記式(1)で表される化合物である、請求項1に記載のエステル化合物の製造方法。
COX …(1)
式(1)中、
は、炭素数1~20のハロゲン化アルキル基、又は、エーテル性酸素原子を有する炭素数2~20のハロゲン化アルキル基であり、
Xは、ハロゲン原子である。
【請求項3】
前記式(1)中、
は、炭素数1~10のペルクロロアルキル基である、請求項2に記載のエステル化合物の製造方法。
【請求項4】
前記式(1)中、
Xは、塩素原子である、請求項2に記載のエステル化合物の製造方法。
【請求項5】
前記式(1)中、
は、炭素数1~10のペルクロロアルキル基であり、
Xは、塩素原子である、請求項2に記載のエステル化合物の製造方法。
【請求項6】
前記水酸基を有する化合物は、下記式(2)又は式(3)で表される化合物である、請求項1に記載のエステル化合物の製造方法。
CHOH …(2)
HO-R-OH …(3)
式(2)中、
及びRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、1価の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、エーテル性酸素原子を有する炭化水素基、又はエーテル性酸素原子を有するハロゲン化炭化水素基であり、
式(3)中、
は、2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、エーテル性酸素原子を有する2価の炭化水素基、又はエーテル性酸素原子を有する2価のハロゲン化炭化水素基である。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のエステル化合物の製造方法により、1分子当たり2つ以上の水素原子を有するエステル化合物を得る工程と、
前記エステル化合物を液相中でフッ素化して、前記2つ以上の水素原子を2つ以上のフッ素原子に変換し、含フッ素エステル化合物を得る工程と、を含む、含フッ素エステル化合物の製造方法。
【請求項8】
請求項3又は請求項5に記載のエステル化合物の製造方法により、エステル化合物を得る工程と、
前記エステル化合物を液相中でフッ素化して、含フッ素エステル化合物を得る工程と、
前記含フッ素エステル化合物を熱分解して、カルボン酸ハロゲン化物を得る工程と、
水酸基を有する化合物と、熱分解によって得られたカルボン酸ハロゲン化物とを反応させて、エステル化合物を得る工程を含む、エステル化合物の製造方法。
【請求項9】
下記式(4)又は式(5)で表される、含フッ素エステル化合物。
AFBFCFOC(=O)-Rh1 …(4)
h2-(O=)CO-RCF-OC(=O)-Rh3 …(5)
式(4)中、
AF及びRBFはそれぞれ独立に、フッ素原子、ペルハロゲン化アルキル基、又はエーテル性酸素原子を有するペルハロゲン化アルキル基であり、
h1は、ペルクロロアルキル基である。
式(5)中、
CFは、ペルフルオロアルキレン基、又はエーテル性酸素原子を有するペルフルオロアルキレン基であり、
h2及びRh3はそれぞれ独立に、ペルクロロアルキル基である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エステル化合物の製造方法、含フッ素エステル化合物の製造方法、及び含フッ素エステル化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素エステル化合物には産業上有用な化合物が多く存在し、従来から様々な製造方法が開発されてきた。また、含フッ素エステル化合物を得るための原料として、エステル化合物が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、RCHOH等の化合物IとXCOR等の化合物IIを反応させてRCHOCOR等の化合物IIIとし、液相中でフッ素化してRAFCFOCORBF等の化合物IVとし、RAFCOF等の化合物Vおよび/またはRBFCOF等の化合物VIに変換する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2000/56694号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エステル化合物のフッ素化において、さらなる収率の向上が求められる場合があった。
【0006】
本発明の一実施形態における課題は、フッ素化を収率良く進行できるエステル化合物の製造方法を提供することにある。
本発明の別の実施形態における課題は、上記エステル化合物を用いて含フッ素エステル化合物を製造する含フッ素エステル化合物の製造方法、及び、含フッ素エステル化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示には、以下の態様が含まれる。
<1>
水酸基を有する化合物とカルボン酸ハロゲン化物とを反応させて、エステル化合物を得る工程を含み、
カルボン酸ハロゲン化物は、塩素原子の数が1分子当たり3以上である、エステル化合物の製造方法。
<2>
カルボン酸ハロゲン化物は、下記式(1)で表される化合物である、<1>に記載のエステル化合物の製造方法。
COX …(1)
式(1)中、
は、炭素数1~20のハロゲン化アルキル基、又は、エーテル性酸素原子を有する炭素数2~20のハロゲン化アルキル基であり、
Xは、ハロゲン原子である。
<3>
式(1)中、
は、炭素数1~10のペルクロロアルキル基である、<2>に記載のエステル化合物の製造方法。
<4>
式(1)中、
Xは、塩素原子である、<2>又は<3>に記載のエステル化合物の製造方法。
<5>
式(1)中、
は、炭素数1~10のペルクロロアルキル基であり、
Xは、塩素原子である、<2>~<4>のいずれか1つに記載のエステル化合物の製造方法。
<6>
水酸基を有する化合物は、下記式(2)又は式(3)で表される化合物である、<1>~<5>のいずれか1つに記載のエステル化合物の製造方法。
CHOH …(2)
HO-R-OH …(3)
式(2)中、
及びRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、1価の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、エーテル性酸素原子を有する炭化水素基、又はエーテル性酸素原子を有するハロゲン化炭化水素基であり、
式(3)中、
は、2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、エーテル性酸素原子を有する2価の炭化水素基、又はエーテル性酸素原子を有する2価のハロゲン化炭化水素基である。
<7>
<1>~<6>のいずれか1つに記載のエステル化合物の製造方法により、1分子当たり2つ以上の水素原子を有するエステル化合物を得る工程と、
エステル化合物を液相中でフッ素化して、2つ以上の水素原子を2つ以上のフッ素原子に変換し、含フッ素エステル化合物を得る工程と、を含む、含フッ素エステル化合物の製造方法。
<8>
<1>~<7>のいずれか1つに記載のエステル化合物の製造方法により、エステル化合物を得る工程と、
エステル化合物を液相中でフッ素化して、含フッ素エステル化合物を得る工程と、
含フッ素エステル化合物を熱分解して、カルボン酸ハロゲン化物を得る工程と、
水酸基を有する化合物と、熱分解によって得られたカルボン酸ハロゲン化物とを反応させて、エステル化合物を得る工程を含む、エステル化合物の製造方法。
<9>
下記式(4)又は式(5)で表される、含フッ素エステル化合物。
AFBFCFOC(=O)-Rh1 …(4)
h2-(O=)CO-RCF-OC(=O)-Rh3 …(5)
式(4)中、
AF及びRBFはそれぞれ独立に、フッ素原子、ペルハロゲン化アルキル基、又はエーテル性酸素原子を有するペルハロゲン化アルキル基であり、
h1は、ペルクロロアルキル基である。
式(5)中、
CFは、ペルフルオロアルキレン基、又はエーテル性酸素原子を有するペルフルオロアルキレン基であり、
h2及びRh3はそれぞれ独立に、ペルクロロアルキル基である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、フッ素化を収率良く進行できるエステル化合物の製造方法が提供される。
本発明の別の実施形態によれば、上記エステル化合物を用いて含フッ素エステル化合物を製造する含フッ素エステル化合物の製造方法、及び、含フッ素エステル化合物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において、式(1)で表される化合物を化合物1と記す。他の式で表される化合物、基等もこれに準ずる。
【0010】
[エステル化合物の製造方法]
本開示のエステル化合物の製造方法は、水酸基を有する化合物とカルボン酸ハロゲン化物とを反応させて、エステル化合物を得る工程を含み、カルボン酸ハロゲン化物は、塩素原子の数が3以上である。
【0011】
従来、エステル化合物の製造方法では、カルボン酸ハロゲン化物の具体的な構造には着目されていなかった。
【0012】
<カルボン酸ハロゲン化物>
本開示のエステル化合物の製造方法に用いられるカルボン酸ハロゲン化物は、塩素原子の数が1分子当たり3以上であること以外、カルボン酸のカルボキシ基がハロゲン化された化合物であれば特に限定されない。カルボキシ基のハロゲン化に基づくハロゲン原子は、反応性の観点から、フッ素原子又は塩素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0013】
カルボン酸ハロゲン化物に含まれる塩素原子が3以上であると、得られるエステル化合物には、少なくとも2つの塩素原子が含まれることとなり、沸点が高くなる傾向にある。エステル化合物をフッ素化する場合に、エステル化合物の沸点が高いと、揮発しにくいという点で有利である。また、塩素原子を含むエステル化合物は、フッ素化に用いられる溶媒(特に、含フッ素溶媒)への溶解性が高いため、フッ素化により、高い収率で含フッ素エステル化合物が得られる。
【0014】
カルボン酸ハロゲン化物に含まれる塩素原子の数は、3~20が好ましく、3~10がより好ましく、3~7がさらに好ましい。
【0015】
カルボン酸ハロゲン化物は、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
COX …(1)
【0016】
式(1)中、Rは、炭素数1~20のハロゲン化アルキル基、又は、エーテル性酸素原子を有する炭素数2~20のハロゲン化アルキル基であり、Xは、ハロゲン原子である。
【0017】
〔R
式(1)中、Rで表されるハロゲン化アルキル基は、直鎖状ハロゲン化アルキル基であってもよく、分岐鎖状ハロゲン化アルキル基であってもよく、環構造を有するハロゲン化アルキル基であってもよい。
【0018】
本開示において、「ハロゲン化」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子により、基中に存在する水素原子の1個以上が置換されたことを意味する。基中には、水素原子が存在していてもよく、存在しなくてもよい。
【0019】
本開示において、「部分ハロゲン化」とは、基中にハロゲン原子に置換されない水素原子が存在することを意味する。「ペルハロゲン化」とは、基中に水素原子が存在しないことを意味する。
【0020】
本開示において、「ハロゲン化アルキル基」とは、ハロゲン原子により、アルキル基中に存在する水素原子の1個以上が置換された基を意味する。ハロゲン化アルキル基は、部分ハロゲン化アルキル基であってもよく、ペルハロゲン化アルキル基であってもよい。
本開示において、「部分ハロゲン化アルキル基」とは、アルキル基中に存在する水素原子の一部がハロゲン原子に置換された基を意味する。
本開示において、「ペルハロゲン化アルキル基」とは、アルキル基中に存在する水素原子の全部がハロゲン原子に置換された基を意味する。
【0021】
で表されるハロゲン化アルキル基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、塩素原子及び臭素原子からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、塩素原子であることがさらに好ましい。
【0022】
で表されるハロゲン化アルキル基の炭素数は1~20が好ましく、1~10がより好ましい。
【0023】
で表されるハロゲン化アルキル基としては、例えば、-CCl、-CClCCl、-CCl(CCl、-CHCl、-CBrCl、及び-CClCHClが挙げられる。
【0024】
で表されるエーテル性酸素原子を有するハロゲン化アルキル基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、塩素原子及び臭素原子からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、塩素原子であることがさらに好ましい。
【0025】
で表されるエーテル性酸素原子を有するハロゲン化アルキル基の炭素数は2~20が好ましく、2~10がより好ましい。
【0026】
中でも、エステル化合物のフッ素化における収率をより向上させる観点から、Rは、炭素数1~10のペルクロロアルキル基であることが好ましく、炭素数1~5のペルクロロアルキル基であることがより好ましい。
【0027】
〔X〕
式(1)中、Xはフッ素原子又は塩素原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。
【0028】
中でも、エステル化合物のフッ素化における収率をより向上させる観点から、式(1)中、Rは、炭素数1~10のペルクロロアルキル基であり、Xは、塩素原子であることが好ましい。
【0029】
本開示のエステル化合物の製造方法において、カルボン酸ハロゲン化物の使用量は、水酸基を有する化合物の使用量に対して、0.1~10当量が好ましく、0.5~5当量がより好ましい。
【0030】
<水酸基を有する化合物>
本開示のエステル化合物の製造方法に用いられる水酸基を有する化合物は、水酸基(-OH)を有していればよく、特に限定されない。水酸基を有する化合物に含まれる水酸基の数は1つのみであってもよく、2つ以上であってもよい。
【0031】
本開示のエステル化合物の製造方法によって得られるエステル化合物は、フッ素化に用いられることが好ましい。すなわち、エステル化合物は、フッ素化可能な原子を有することが好ましい。
【0032】
フッ素化に用いられるエステル化合物を製造する観点から、水酸基を有する化合物及びカルボン酸ハロゲン化物のうち少なくとも一方は、フッ素化可能な原子を有することが好ましい。フッ素化可能な原子としては、例えば、水素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。中でも、フッ素化可能な原子は、水素原子が好ましい。
【0033】
水酸基を有する化合物は、フッ素化可能な原子を1つのみ有してもよく、2つ以上有してもよい。エステル化合物の1分子中に含まれるフッ素化可能な原子の数としては、例えば、1~1,000が挙げられ、1~500が好ましく、1~100がより好ましい。
【0034】
水酸基を有する化合物は、下記式(2)又は式(3)で表される化合物であることが好ましい。
CHOH …(2)
HO-R-OH …(3)
式(2)中、
及びRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、エーテル性酸素原子を有する1価の炭化水素基、又はエーテル性酸素原子を有する1価のハロゲン化炭化水素基である。
式(3)中、
は、2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、エーテル性酸素原子を有する2価の炭化水素基、又はエーテル性酸素原子を有する2価のハロゲン化炭化水素基である。
【0035】
本開示において、「ハロゲン化炭化水素基」とは、ハロゲン原子により、炭化水素基中に存在する水素原子の1個以上が置換された基を意味する。ハロゲン化炭化水素基は、部分ハロゲン化炭化水素基であってもよく、ペルハロゲン化炭化水素基であってもよい。
【0036】
〔R、R〕〕
及びRで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましい。
【0037】
及びRで表される1価の炭化水素基は、1価の飽和炭化水素基であってもよく、1価の不飽和炭化水素基であってもよいが、1価の飽和炭化水素基であることが好ましい。1価の飽和炭化水素基は、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、及びシクロアルキル基のいずれであってもよい。直鎖状アルキル基及び分岐鎖状アルキル基には、脂環構造が含まれていてもよい。1価の飽和炭化水素基の炭素数は1~500が好ましく、1~100がより好ましく、1~50がさらに好ましく、1~10が特に好ましい。1価の飽和炭化水素基は、反応性に優れる観点から、直鎖状アルキル基がより好ましい。すなわち、1価の飽和炭化水素基としては、炭素数1~500の直鎖状アルキル基が好ましく、炭素数1~100の直鎖状アルキル基がより好ましく、炭素数1~50の直鎖状アルキル基がさらに好ましく、炭素数1~10の直鎖状アルキル基が特に好ましい。
【0038】
1価の飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0039】
及びRで表される1価のハロゲン化炭化水素基としては、ハロゲン化アルキル基が好ましい。1価のハロゲン化炭化水素基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましい。
【0040】
及びRで表されるエーテル性酸素原子を有する1価の炭化水素基としては、エーテル性酸素原子を有するアルキル基が好ましい。エーテル性酸素原子を有する1価の炭化水素基の炭素数は1~500が好ましく、1~100がより好ましい。エーテル性酸素原子を有する1価の炭化水素基としては、エーテル性酸素原子を有する直鎖状アルキル基がより好ましい。すなわち、エーテル性酸素原子を有する1価の炭化水素基としては、炭素数1~500のエーテル性酸素原子を有する直鎖状アルキル基が好ましく、炭素数1~100のエーテル性酸素原子を有する直鎖状アルキル基がより好ましい。
【0041】
及びRで表されるエーテル性酸素原子を有する1価のハロゲン化炭化水素基としては、エーテル性酸素原子を含むハロゲン化アルキル基が好ましい。エーテル性酸素原子を有する1価のハロゲン化炭化水素基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましい。
【0042】
反応性に優れるため、R及びRのうち一方は、水素原子であることが好ましく、例えば、Rは、水素原子、ハロゲン原子、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、エーテル性酸素原子を有する1価の炭化水素基、又はエーテル性酸素原子を有する1価のハロゲン化炭化水素基であり、Rは水素原子であることが好ましい。
【0043】
また、Rは、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、エーテル性酸素原子を有する1価の炭化水素基、又はエーテル性酸素原子を有する1価のハロゲン化炭化水素基であり、Rは水素原子であることがより好ましい。
【0044】
また、Rがエーテル性酸素原子を有する1価の炭化水素基、又はエーテル性酸素原子を有する1価のハロゲン化炭化水素基である場合、Rは、下記式(X1)で表されることが好ましい。
11O-(R12O)m1-R13- …(X1)
【0045】
式(X1)中、R11は、フッ素原子を有していてもよいアルキル基であり、R12はそれぞれ独立に、炭素数1~6のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、R13は、炭素数1~6のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、m1は0~500の整数である。
【0046】
式(X1)中、R11としては、例えば、アルキル基及びフルオロアルキル基が挙げられる。
【0047】
11の炭素数は、フッ素化工程におけるエステル化合物の液相への溶解性に優れる点から、1~1,000が好ましく、1~500がより好ましく、1~100がさらに好ましく、1~50が特に好ましく、1~10が最も好ましい。
【0048】
11で表されるアルキル基は、直鎖状アルキル基であってもよく、分岐鎖状アルキル基であってもよく、環構造を有するアルキル基であってもよい。
【0049】
11で表されるフルオロアルキル基は、直鎖状フルオロアルキル基であってもよく、分岐鎖状フルオロアルキル基であってもよく、環構造を有するフルオロアルキル基であってもよい。
【0050】
中でも、R11は、アルキル基であることが好ましく、直鎖状アルキル基であることがより好ましく、炭素数1~6の直鎖状アルキル基であることがさらに好ましい。
【0051】
式(X1)中、m1は1~500の整数が好ましく、1~300の整数がより好ましく、5~200の整数がさらに好ましく、10~150の整数が特に好ましい。
【0052】
式(X1)中、-(R12O)m1-は、下記式(X2)で表されることが好ましい。
-[(Rf1O)k1(Rf2O)k2(Rf3O)k3(Rf4O)k4(Rf5O)k5(Rf6O)k6]- …(X2)
ただし、
f1は、炭素数1のフルオロアルキレン基であり、
f2は、炭素数2のフルオロアルキレン基であり、
f3は、炭素数3のフルオロアルキレン基であり、
f4は、炭素数4のフルオロアルキレン基であり、
f5は、炭素数5のフルオロアルキレン基であり、
f6は、炭素数6のフルオロアルキレン基である。
k1、k2、k3、k4、k5、及びk6は、それぞれ独立に0又は1以上の整数を表し、k1+k2+k3+k4+k5+k6は0~500の整数である。
【0053】
フッ素化工程におけるエステル化合物の液相への溶解性に優れる点から、k1+k2+k3+k4+k5+k6は、1~500の整数が好ましく、1~300の整数であることがより好ましく、5~200の整数であることがさらに好ましく、10~150の整数であることが特に好ましい。
【0054】
なお、式(X2)における(Rf1O)~(Rf6O)の結合順序は任意である。式(X2)のk1~k6は、それぞれ、(Rf1O)~(Rf6O)の個数を表すものであり、配置を表すものではない。例えば、(Rf5O)k5は、(Rf5O)の数がk5個であることを表し、(Rf5O)k5のブロック配置構造を表すものではない。同様に、(Rf1O)~(Rf6O)の記載順は、それぞれの単位の結合順序を表すものではない。
【0055】
f3~Rf6において、フルオロアルキレン基は、直鎖状フルオロアルキレン基であってもよく、分岐鎖状フルオロアルキレン基であってもよく、環構造を有するフルオロアルキレン基であってもよい。
【0056】
f1の具体例としては、-CF-及び-CHF-が挙げられる。
【0057】
f2の具体例としては、-CFCF-、-CFCHF-、-CHFCF-、-CHFCHF-、-CHCF-、及び-CHCHF-が挙げられる。
【0058】
f3の具体例としては、-CFCFCF-、-CFCHFCF-、-CFCHCF-、-CHFCFCF-、-CHFCHFCF-、-CHFCHFCHF-、-CHFCHCF-、-CHCFCF-、-CHCHFCF-、-CHCHCF-、-CHCFCHF-、-CHCHFCHF-、-CHCHCHF-、-CF(CF)-CF-、-CF(CHF)-CF-、-CF(CHF)-CF-、-CF(CH)-CF-、-CF(CF)-CHF-、-CF(CHF)-CHF-、-CF(CHF)-CHF-、-CF(CH)-CHF-、-CF(CF)-CH-、-CF(CHF)-CH-、-CF(CHF)-CH-、-CF(CH)-CH-、-CH(CF)-CF-、-CH
(CHF)-CF-、-CH(CHF)-CF-、-CH(CH)-CF-、-CH(CF)-CHF-、-CH(CHF)-CHF-、-CH(CHF)-CHF-、-CH(CH)-CHF-、-CH(CF)-CH-、-CH(CHF)-CH-、及び-CH(CHF)-CH-が挙げられる。
【0059】
f4の具体例としては、-CFCFCFCF-、-CFCFCFCHF-、-CFCFCFCH-、-CFCHFCFCF-、-CHFCHFCFCF-、-CHCHFCFCF-、-CFCHCFCF-、-CHFCHCFCF-、-CHCHCFCF-、-CHFCFCHFCF-、-CHCFCHFCF-、-CFCHFCHFCF-、-CHFCHFCHFCF-、-CHCHFCHFCF-、-CFCHCHFCF-、-CHFCHCHFCF-、-CHCHCHFCF-、-CFCHCHCF-、-CHFCHCHCF-、-CHCHCHCF-、-CHFCHCHCHF-、-CHCHCHCHF-、及び-cycloC-が挙げられる。
【0060】
f5の具体例としては、-CFCFCFCFCF-、-CHFCFCFCFCF-、-CHCHFCFCFCF-、-CFCHFCFCFCF-、-CHFCHFCFCFCF-、-CFCHCFCFCF-、-CHFCHCFCFCF-、-CHCHCFCFCF-、-CFCFCHFCFCF-、-CHFCFCHFCFCF-、-CHCFCHFCFCF-、-CHCFCFCFCH-、及び-cycloC-が挙げられる。
【0061】
f6の具体例としては、-CFCFCFCFCFCF-、-CFCFCHFCHFCFCF-、-CHFCFCFCFCFCF-、-CHFCHFCHFCHFCHFCHF-、-CHFCFCFCFCFCH-、-CHCFCFCFCFCH-、及び-cycloC10-が挙げられる。
ここで、-cycloC-は、ペルフルオロシクロブタンジイル基を意味し、その具体例としては、ペルフルオロシクロブタン-1,2-ジイル基が挙げられる。-cycloC-は、ペルフルオロシクロペンタンジイル基を意味し、その具体例としては、ペルフルオロシクロペンタン-1,3-ジイル基が挙げられる。-cycloC10-は、ペルフルオロシクロヘキサンジイル基を意味し、その具体例としては、ペルフルオロシクロヘキサン-1,4-ジイル基が挙げられる。
【0062】
中でも、-(R12O)m1-は、下記式(F1)~(F3)で表される構造からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、式(F2)で表される構造を含むことがより好ましい。
-(Rf1O)k1-(Rf2O)k2- …(F1)
-(Rf2O)k2-(Rf4O)k4- …(F2)
-(Rf3O)k3- …(F3)
ただし、式(F1)~式(F3)の各符号は、上記式(X2)と同様である。
【0063】
式(F1)及び式(F2)において、(Rf1O)と(Rf2O)、(Rf2O)と(Rf4O)の結合順序は各々任意である。例えば(Rf1O)と(Rf2O)が交互に配置されてもよく、(Rf1O)と(Rf2O)が各々ブロックに配置されてもよく、またランダムであってもよい。式(F2)においても同様である。
式(F1)において、k1は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。またk2は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
式(F2)において、k2は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。またk4は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
式(F3)において、k3は1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
【0064】
式(X1)中、R13としては、上記Rf1~Rf6と同様のものが挙げられる。
【0065】
式(2)で表される化合物の具体例として、例えば、以下の構造が挙げられる。構造式中、aは1~500が好ましく、例えば、7である。bは1~30が好ましく、例えば、13である。
【0066】
【化1】
【0067】
〔R
で表される2価の炭化水素基は、2価の飽和炭化水素基であってもよく、2価の不飽和炭化水素基であってもよいが、2価の飽和炭化水素基であることが好ましい。2価の飽和炭化水素基は、直鎖状アルキレン基、分岐鎖状アルキレン基、及びシクロアルキレン基のいずれであってもよい。直鎖状アルキレン基及び分岐鎖状アルキレン基には、脂環構造が含まれていてもよい。2価の飽和炭化水素基の炭素数は1~500が好ましく、1~100がより好ましく、1~50がさらに好ましく、1~10が特に好ましい。2価の飽和炭化水素基は、反応性に優れる観点から、直鎖状アルキレン基がより好ましい。すなわち、2価の飽和炭化水素基としては、炭素数1~500の直鎖状アルキレン基が好ましく、炭素数1~100の直鎖状アルキレン基がより好ましく、炭素数1~50の直鎖状アルキレン基がさらに好ましく、炭素数1~10の直鎖状アルキレン基が特に好ましい。
【0068】
で表される2価のハロゲン化炭化水素基としては、ハロゲン化アルキレン基が好ましい。2価のハロゲン化炭化水素基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましい。
【0069】
で表されるエーテル性酸素原子を有する2価の炭化水素基としては、エーテル性酸素原子を有するアルキレン基が好ましい。エーテル性酸素原子を有する2価の炭化水素基の炭素数は1~500が好ましく、1~100がより好ましい。エーテル性酸素原子を有する2価の炭化水素基としては、エーテル性酸素原子を有する直鎖状アルキレン基がより好ましい。すなわち、エーテル性酸素原子を有する1価の炭化水素基としては、炭素数1~500のエーテル性酸素原子を有する直鎖状アルキレン基が好ましく、炭素数1~100のエーテル性酸素原子を有する直鎖状アルキレン基がより好ましい。
【0070】
で表されるエーテル性酸素原子を有する2価のハロゲン化炭化水素基としては、エーテル性酸素原子を含むハロゲン化アルキレン基が好ましい。エーテル性酸素原子を有する2価のハロゲン化炭化水素基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましい。
【0071】
また、Rがエーテル性酸素原子を有する2価の炭化水素基、又はエーテル性酸素原子を有する2価のハロゲン化炭化水素基である場合、Rは、下記式(C1)で表されることが好ましい。
-(R31O)m3-R32- …(C1)
【0072】
式(C1)中、R31及びR32はそれぞれ独立に、フッ素原子を有していてもよいアルキレン基であり、m3は1~500の整数である。
【0073】
式(C1)中、-(R31O)m3-は、上記式(X2)で表されることが好ましい。
【0074】
式(C1)中、m3は1~300の整数が好ましく、1~200の整数がより好ましく、1~150の整数がさらに好ましい。
【0075】
式(C1)中、R32としては、上記、Rf1~Rf6と同様のものが挙げられる。
【0076】
式(2)で表される化合物及び式(3)で表される化合物において、水素原子の数に対するハロゲン原子の数の比率は、1以下が好ましく、0.5以下がより好ましい。なお、式(2)で表される化合物及び式(3)で表される化合物にハロゲン原子は含まれていなくてもよく、上記比率は0であってもよい。
【0077】
式(3)で表される化合物の具体例として、例えば、以下の構造が挙げられる。構造式中、cは1~500が好ましく、例えば、7である。dは1~30が好ましく、例えば、13である。
【0078】
【化2】

【0079】
本開示のエステル化合物の製造方法では、反応溶媒として有機溶媒を用いてもよい。
【0080】
有機溶媒としては、フッ素系有機溶媒及び非フッ素系有機溶媒が挙げられる。
【0081】
フッ素系有機溶媒としては、例えば、フッ素化アルカン、フッ素化芳香族化合物、フルオロアルキルエーテル、及びフッ素化アルキルアミンが挙げられる。
【0082】
フッ素化アルカンは、炭素数4~8の化合物が好ましく、例えば、C13H(製品名「AC-2000」、AGC社製)、C13(製品名「AC-6000」、AGC社製)、及びCCHFCHFCF(製品名「バートレル」、デュポン社製)が挙げられる。
【0083】
フッ素化芳香族化合物としては、例えば、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ペルフルオロトルエン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンが挙げられる。
【0084】
フルオロアルキルエーテルは、炭素数4~12の化合物が好ましく、例えば、CFCHOCFCFH(製品名「AE-3000」、AGC社製)、COCH(製品名「ノベック-7100」、3M社製)、COC(製品名「ノベック-7200」、3M社製)、及びCCF(OCH)C(製品名「ノベック-7300」、3M社製)が挙げられる。
【0085】
フッ素化アルキルアミンとしては、例えば、ペルフルオロトリプロピルアミン及びペルフルオロトリブチルアミンが挙げられる。
【0086】
非フッ素系有機溶媒としては、例えば、炭化水素系有機溶媒、ケトン系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、及びエステル系有機溶媒が挙げられる。
【0087】
炭化水素系有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、へプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、及びキシレンが挙げられる。
【0088】
ケトン系有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノンが挙げられる。
【0089】
エーテル系有機溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフランが挙げられる。
【0090】
エステル系有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル及び酢酸ブチルが挙げられる。
【0091】
また、有機溶媒としては、ハロゲン系有機溶媒、含窒素化合物、及び含硫黄化合物が挙げられる。
【0092】
ハロゲン系有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、及びジクロロエタンが挙げられる。
含窒素化合物としては、例えば、ニトロベンゼン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、及びジメチルホルムアミドが挙げられる。
含硫黄化合物としては、例えば、二硫化炭素及びジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0093】
本開示のエステル化合物の製造方法において、反応時間は特に限定されないが、0.5~100時間が好ましく、0.5~50時間がより好ましい。また、反応温度は特に限定されないが、0~200℃が好ましく、0~100℃がより好ましい。
【0094】
[含フッ素エステル化合物の製造方法]
本開示の含フッ素エステル化合物の製造方法は、上記エステル化合物の製造方法により、2つ以上の水素原子を有するエステル化合物を得る工程と、エステル化合物を液相中でフッ素化して、前記2つ以上の水素原子を2つ以上のフッ素原子に変換し、含フッ素エステル化合物を得る工程と、を含むことが好ましい。
【0095】
<エステル化合物を得る工程>
エステル化合物を得る工程では、上記エステル化合物の製造方法により、2つ以上の水素原子を有するエステル化合物を得る。上記エステル化合物の製造方法では、水酸基を有する化合物とカルボン酸ハロゲン化物との反応によって、エステル化合物が得られる。
【0096】
2つ以上の水素原子を有するエステル化合物を得る方法として、例えば、以下に示す水酸基を有する化合物とカルボン酸ハロゲン化物とを用いる。
【0097】
水酸基を有する化合物として、水酸基以外の基が1つ以上の水素原子を有する化合物を用い、カルボン酸ハロゲン化物として、1つ以上の水素原子を有する化合物を用いる。
水酸基を有する化合物として、水酸基以外の基が水素原子を有しない化合物を用い、カルボン酸ハロゲン化物として、2つ以上の水素原子を有する化合物を用いる。
水酸基を有する化合物として、水酸基以外の基が2つ以上の水素原子を有する化合物を用い、カルボン酸ハロゲン化物として、水素原子を有しない化合物を用いる。
【0098】
エステル化合物を得る工程の好ましい態様は、上記エステル化合物の製造方法における好ましい態様と同様であるため、説明を省略する。
【0099】
<含フッ素エステル化合物を得る工程>
含フッ素エステル化合物を得る工程では、エステル化合物を液相中でフッ素化して、前記2つ以上の水素原子を2つ以上のフッ素原子に変換し、含フッ素エステル化合物を得る。
【0100】
エステル化合物を液相中でフッ素化する方法としては、例えば、ECF法、コバルトフッ素化法、及びフッ素と反応させる方法が挙げられる。中でも、エステル化合物のフッ素化を有利に進行させることが可能な、液相中でフッ素と反応させる方法が好ましい。
【0101】
含フッ素エステル化合物を得る工程では、フッ素ガスをそのまま用いてもよく、不活性ガスで希釈されたフッ素ガスを用いてもよい。不活性ガスとしては、窒素又はヘリウムが好ましく、窒素がより好ましい。窒素及びフッ素の混合ガス中、フッ素の含有量は、フッ素化の効率の観点から、10体積%以上が好ましく、20体積%以上がより好ましい。フッ素の含有量の上限値は特に限定されないが、安全性に優れる観点から、60体積%が好ましく、50体積%がより好ましく、40体積%がさらに好ましい。
【0102】
含フッ素エステル化合物を得る工程は、液相中で行われる。液相に用いられる溶媒は、エステル化合物を溶解可能な溶媒であれば特に限定されない。
【0103】
エステル化合物及びフッ素化エステル化合物の溶解性の観点から、液相は、含塩素溶媒と含フッ素溶媒の少なくとも一方を含むことが好ましく、含塩素溶媒を含むことがより好ましい。含塩素溶媒は、塩素原子を含む溶媒である。含塩素溶媒は、塩素原子以外にフッ素原子を含むことが好ましい。
含塩素溶媒としては、例えば、CClFCClFCFOCFCClF(CFE-419)、CHClCHClCHOCFCHFCl(HCFE-473)、CFClCFClCHFOCFCFCl(HCFE-428a,b)、CFHClCFClCFOCFCFCl(HCFE-428c,d)、CFClCHClCFOCFCFCl(HCFE-428e)、1,2,3,4-テトラクロロパーフルオロブタン(R-113)、CFCl-CFCl-CFCl-O-CF-CFCl(CFE-418)、CClHFCClFCHFOCFCClF(HCFE-437a、b)、CClFCClHCHFOCFCClF(HCFE-437c)、CClHFCClFCHOCFCClF(HCFE-446a)、CFClCClCFOCFCFHCl(HCFE-427a,b)、CFHCClFCFOCFCFCl(HCFE-429)等が挙げられる。
【0104】
含塩素溶媒以外の含フッ素溶媒としては、ペルフルオロアルカン類(FC-72等)、ペルフルオロエーテル類(FC-75、FC-77等)、ペルフルオロポリエーテル類(商品名:クライトックス、フォンブリン、ガルデン、デムナム等)、不活性流体(商品名:フロリナート)、ペルフルオロカルボン酸フッ化物等が挙げられる。
【0105】
液相は、必要に応じてその他添加剤を含有してもよい。その他添加剤としては、例えば、原料化合物のフッ素化を促進する助剤が挙げられる。助剤としては、例えば、原料化合物以外のC-H結合含有化合物及び炭素-炭素二重結合含有化合物が挙げられる。
C-H結合含有化合物としては、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。
炭素-炭素二重結合含有化合物としては、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロブタジエン等が挙げられる。
【0106】
含フッ素エステル化合物を得る工程では、液相中、エステル化合物の含有量は、10~70質量%であることが好ましく、30~50質量%であることがより好ましい。
【0107】
本開示のエステル化合物の製造方法の別の態様を以下に示す。
別の態様は、上記エステル化合物の製造方法により、エステル化合物を得る工程(以下、「第1のエステル化工程」という)と、エステル化合物を液相中でフッ素化して、含フッ素エステル化合物を得る工程と、含フッ素エステル化合物を熱分解して、カルボン酸ハロゲン化物を得る工程と、水酸基を有する化合物と、熱分解によって得られたカルボン酸ハロゲン化物とを反応させて、エステル化合物を得る工程(以下、「第2のエステル化工程」という)を含む。第1のエステル化工程では、水酸基を有する化合物とカルボン酸ハロゲン化物とを反応させて、エステル化合物を得る。カルボン酸ハロゲン化物は、塩素原子の数が1分子当たり3以上であって、上記式(1)で表される化合物であり、式(1)中、Rは、炭素数1~10のペルクロロアルキル基である。
【0108】
<第1のエステル化工程>
第1のエステル化工程の好ましい態様は、上記エステル化合物の製造方法における好ましい態様と同様であるため、説明を省略する。
【0109】
<含フッ素エステル化合物を得る工程>
含フッ素エステル化合物を得る工程の好ましい態様は、上記含フッ素エステル化合物の製造方法における好ましい態様と同様であるため、説明を省略する。
【0110】
<カルボン酸ハロゲン化物を得る工程>
カルボン酸ハロゲン化物を得る工程では、含フッ素エステル化合物を熱分解して、カルボン酸ハロゲン化物を得る。
【0111】
熱分解は、例えば、含フッ素エステル化合物をアルカリ金属フッ化物と反応させることにより行われる。アルカリ金属フッ化物としては、例えば、フッ化ナトリウム及びフッ化カリウムが挙げられる。
【0112】
アルカリ金属フッ化物の使用量は特に限定されないが、含フッ素エステル化合物の使用量に対して、1~100当量が好ましく、1~50当量がより好ましく、1~10当量がさらに好ましい。
反応温度は特に限定されず、例えば、0~200℃である。
反応時間は特に限定されず、例えば、1~24時間である。
【0113】
含フッ素エステル化合物をアルカリ金属フッ化物と反応させると、RCOFで表されるカルボン酸ハロゲン化物が得られる。Rは、上記式(1)におけるRと同じである。
【0114】
<第2のエステル化工程>
第2のエステル化工程では、水酸基を有する化合物と、熱分解によって得られたカルボン酸ハロゲン化物とを反応させて、エステル化合物を得る。
【0115】
水酸基を有する化合物は、第1のエステル化工程で用いた水酸基を有する化合物と同じであってもよく、異なっていてもよい。水酸基を有する化合物の好ましい態様は、上記エステル化合物の製造方法における水酸基を有する化合物の好ましい態様と同様であるため、説明を省略する。
【0116】
水酸基を有する化合物と、熱分解によって得られたカルボン酸ハロゲン化物とを反応させる際の反応条件は、第1エステル化工程における反応条件と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0117】
また、第2エステル化工程の後に、さらに、含フッ素エステル化合物を得る工程、及びカルボン酸ハロゲン化物を得る工程を実施してもよい。この製造方法により、エステル化合物、及び、含フッ素エステル化合物を効率的に製造できる。
【0118】
[含フッ素エステル化合物]
本開示の含フッ素エステル化合物は、下記式(4)又は式(5)で表される。
AFBFCFOC(=O)-Rh1 …(4)
h2-(O=)CO-RCF-OC(=O)-Rh3 …(5)
【0119】
式(4)中、
AF及びRBFはそれぞれ独立に、フッ素原子、ペルハロゲン化アルキル基、又はエーテル性酸素原子を有するペルハロゲン化アルキル基であり、Rh1は、ペルクロロアルキル基である。
【0120】
式(5)中、RCFは、ペルフルオロアルキレン基、又はエーテル性酸素原子を有するペルフルオロアルキレン基であり、Rh2及びRh3はそれぞれ独立に、ペルクロロアルキル基である。
【0121】
〔RAF、RBF
AF及びRBFで表されるペルハロゲン化アルキル基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子と塩素原子との組み合わせ、又は、フッ素原子のみであることが好ましい。ペルハロゲン化アルキル基の炭素数は、1~20が好ましい。
【0122】
AF及びRBFで表されるエーテル性酸素原子を有するペルハロゲン化アルキル基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子のみであることが好ましい。エーテル性酸素原子を有するペルハロゲン化アルキル基の炭素数は、1~200であることが好ましい。
【0123】
フッ素系溶媒への溶解性の観点から、RAF及びRBFのうち一方は、フッ素原子であることが好ましく、例えば、RAFは、フッ素原子、ペルハロゲン化アルキル基、又はエーテル性酸素原子を有するペルハロゲン化アルキル基であり、RBFはフッ素原子であることが好ましい。
【0124】
また、RAFがエーテル性酸素原子を有するペルハロゲン化アルキル基である場合、RAFは、下記式(B1)で表されることが好ましい。
21O-(R22O)m2-R23- …(B1)
【0125】
式(B1)中、R21は、ペルフルオロアルキル基であり、R12はそれぞれ独立に、炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基であり、R23は、炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基であり、m2は0~500の整数である。
【0126】
21の炭素数は、フッ素化工程におけるエステル化合物の液相への溶解性に優れる点から、1~100が好ましく、1~50がより好ましく、1~10がさらに好ましい。
【0127】
21で表されるペルフルオロアルキル基は、直鎖状ペルフルオロアルキル基であってもよく、分岐鎖状ペルフルオロアルキル基であってもよく、環構造を有するペルフルオロアルキル基であってもよい。
【0128】
式(B1)中、-(R22O)m2-は、下記式(A2)におけるフルオロアルキレン基をペルフルオロアルキレン基に置き換えた態様が好ましい。
【0129】
23としては、R22と同様のものが挙げられる。
【0130】
〔RCF
CFで表されるペルフルオロアルキレン基の炭素数は、1~50であることが好ましい。
CFで表されるエーテル性酸素原子を有するペルフルオロアルキレン基の炭素数は、2~500であることが好ましい。
【0131】
〔Rh1、Rh2、Rh3
h1、Rh2、及びRh3で表されるペルクロロアルキル基は、炭素数1~10のペルクロロアルキル基であることが好ましく、炭素数1~5のペルクロロアルキル基であることがより好ましい。
【0132】
h1、Rh2、及びRh3で表されるペルクロロアルキル基としては、例えば、-CCl、-CClCCl、及び-CCl(CClが挙げられる。
【実施例0133】
以下、本開示を実施例によりさらに具体的に説明するが、本開示はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。例1~16のうち、例1~14が実施例、例15及び16は比較例である。
【0134】
以下、19F-NMRの定量には、内部標準試料としてペルフルオロベンゼンを用いた。また、テトラメチルシランを「TMS」と記載した。
【0135】
[例1-1]
30gのn-ブタノールをフラスコに入れ、窒素ガスをバブリングさせながら攪拌した。81gのClCOCClを、フラスコ内の温度が25℃±2.5℃となるよう滴下した。滴下終了後、25℃で2時間撹拌し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mLを加えた。さらに、水50mL及びクロロホルム50mLを加え、有機相を得た。有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムを用いて脱水した。ろ過を行った後、ろ液をエバポレータにて濃縮して、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製することにより、エステル化合物A1を80g得た。
【0136】
H-NMRの分析により、エステル化合物A1は以下の構造であることを確認した。
【0137】
CHCHCHCHOCOCCl …(A1)
【0138】
H-NMR(399.8MHz,Chloroform-d,基準TMS) δ(ppm):0.9(t、J=8.0Hz、3H)、1.3(m、2H)、1.6(m、2H)、4.2(t、J=7.1Hz、2H)
【0139】
[例1-2]
例1-1で得られたエステル化合物A1の5.0gを80mLのCFCFCFOCF(CF)CFOCFCFに溶解させ、溶液A1とした。500mLのニッケル製オートクレーブに、300gのCFCFCFOCF(CF)CFOCFCFを入れて撹拌し、0℃に冷却した。窒素ガスを1時間吹き込んだ後、フッ素ガスと窒素ガスの混合ガス(F:N=20:80(体積%))を流速5L/時間で1時間吹き込んだ。さらに、上記混合ガスを同じ流速を保持して吹き込みながら、溶液A1を13時間かけて注入した。さらに、同じ流速を保持して上記混合ガスを吹き込みながら、ベンゼンの0.2質量%トリクロロトリフルオロエタン溶液を15分間注入した。その後、15分間熟成させた。溶液A1の注入操作及びベンゼンの注入操作を5回繰り返した。窒素ガスを1時間吹き込んだ後、反応溶液を抜き出した。得られた粗液をエバポレータで濃縮して、含フッ素エステル化合物B1を7.0g得た(収率81%)。
【0140】
19F-NMRの分析により、含フッ素エステル化合物B1は、以下の構造であることを確認した。
【0141】
CFCFCFCFOCOCCl …(B1)
【0142】
19F-NMR(376.2MHz,Chloroform-d,基準CFCl) δ(ppm):-81(3F)、-92(2F)、-119(2F)、-125(2F)
【0143】
[例2-1]
n-ブタノールをイソブチルアルコールに変更したこと以外は、例1-1と同様の方法で反応を行い、エステル化合物A2を81g得た。
【0144】
H-NMRの分析により、エステル化合物A2は以下の構造であることを確認した。
【0145】
CHCH(CH)CHOCOCCl …(A2)
【0146】
H-NMR(399.8MHz,Chloroform-d,基準TMS) δ(ppm):0.8(d、J=8.0Hz、2H)、1.9(m、1H)、4.0(d、J=7.0Hz、2H)
【0147】
[例2-2]
例2-1で得られたエステル化合物A2を用いたこと以外は、例1-2と同様の方法で反応を行い、含フッ素エステル化合物B2を7.0g得た(収率81%)。
【0148】
19F-NMRの分析により、含フッ素エステル化合物B2は、以下の構造であることを確認した。
【0149】
CFCF(CF)CFOCOCCl …(B2)
【0150】
19F-NMR(376.2MHz,Chloroform-d,基準CFCl) δ(ppm):-72(6F)、-87(2F)、-182(1F)
【0151】
[例3-1]
n-ブタノールをCHCHCHOCH(CH)CHOHに変更し、ClCOCClの使用量を51gに変更したこと以外は、例1-1と同様の方法で反応を行い、エステル化合物A3を60g得た。
【0152】
H-NMRの分析により、エステル化合物A3は以下の構造であることを確認した。
【0153】
CHCHCHOCH(CH)CHOCOCCl …(A3)
【0154】
H-NMR(399.8MHz,Chloroform-d,基準TMS) δ(ppm):0.8(t、J=8.0Hz、3H)、1.3(d、J=6.8Hz、3H)、1.5(m、2H)、3.4-3.6(m、2H)、3.9(m、1H)、4.2-4.5(m、2H)
【0155】
[例3-2]
例3-1で得られたエステル化合物A3を用い、エステル化合物A3を含む溶液の注入時間を16時間に変更したこと以外は、例1-2と同様の方法で反応を行い、含フッ素エステル化合物B3を7.0g得た(収率74%)。
【0156】
19F-NMRの分析により、含フッ素エステル化合物B3は、以下の構造であることを確認した。
【0157】
CFCFCFOCF(CF)CFOCOCCl …(B3)
【0158】
19F-NMR(376.2MHz,Chloroform-d,基準CFCl) δ(ppm):-80(3F)、-81(3F)、-82(4F)、-130(2F)、-145(1F)
【0159】
[例4-1]
n-ブタノールをジエチレングリコールモノエチルエーテルに変更し、ClCOCClの使用量を44gに変更したこと以外は、例1-1と同様の方法で反応を行い、エステル化合物A4を54g得た。
【0160】
H-NMRの分析により、エステル化合物A4は以下の構造であることを確認した。
【0161】
CHCHOCHCHOCHCHOCOCCl …(A4)
【0162】
H-NMR(399.8MHz,Chloroform-d,基準TMS) δ(ppm):1.2(t、J=8.0Hz、3H)、3.5(q、J=8.0Hz、2H)、3.6-3.7(m、4H)、3.8(t、J=7.1Hz、2H)、4.5(t、J=7.1Hz、2H)
【0163】
[例4-2]
例4-1で得られたエステル化合物A4を用い、エステル化合物A4を含む溶液の注入時間を16時間に変更したこと以外は、例1-2と同様の方法で反応を行い、含フッ素エステル化合物B4を6.0g得た(収率64%)。
【0164】
19F-NMRの分析により、含フッ素エステル化合物B4は、以下の構造であることを確認した。
【0165】
CFCFOCFCFOCFCFOCOCCl …(B4)
【0166】
19F-NMR(376.2MHz,Chloroform-d,基準CFCl) δ(ppm):-85(2F)、-90(5F)、-92(4F)、-93(2F)
【0167】
[例5-1]
n-ブタノールをトリエチレングリコールモノエチルエーテルに変更し、ClCOCClの使用量を34gに変更したこと以外は、例1-1と同様の方法で反応を行い、エステル化合物A5を44g得た。
【0168】
H-NMRの分析により、エステル化合物A5は以下の構造であることを確認した。
【0169】
CHCHOCHCHOCHCHOCHCHOCOCCl …(A5)
【0170】
H-NMR(399.8MHz,Chloroform-d,基準TMS) δ(ppm):1.2(t、J=8.0Hz、3H)、3.5(q、J=8.0Hz、2H)、3.6-3.7(m、8H)、3.8(t、J=7.1Hz、2H)、4.5(t、J=7.1Hz、2H)
【0171】
[例5-2]
例5-1で得られたエステル化合物A5を用い、エステル化合物A5を含む溶液の注入時間を20時間に変更したこと以外は、例1-2と同様の方法で反応を行い、含フッ素エステル化合物B5を6.0g得た(収率62%)。
【0172】
19F-NMRの分析により、含フッ素エステル化合物B5は、以下の構造であることを確認した。
【0173】
CFCFOCFCFOCFCFOCFCFOCOCCl …(B5)
【0174】
19F-NMR(376.2MHz,Chloroform-d,基準CFCl) δ(ppm):-85(2F)、-90(5F)、-91(8F)、-93(2F)
【0175】
[例6-1]
n-ブタノールを1,5-ペンタンジオールに変更し、ClCOCClの使用量を115gに変更したこと以外は、例1-1と同様の方法で反応を行い、エステル化合物A6を103g得た。
【0176】
H-NMRの分析により、エステル化合物A6は以下の構造であることを確認した。
【0177】
ClCC(=O)OCHCHCHCHCHOCOCCl …(A6)
【0178】
H-NMR(399.8MHz,Chloroform-d,基準TMS) δ(ppm):1.6(m、2H)、1.7(m、4H)、4.3(t、J=7.1Hz、4H)
【0179】
[例6-2]
例6-1で得られたエステル化合物A6を用い、エステル化合物A6を含む溶液の注入時間を8時間に変更したこと以外は、例1-2と同様の方法で反応を行い、含フッ素エステル化合物B6を6.0g得た(収率82%)。
【0180】
19F-NMRの分析により、含フッ素エステル化合物B6は、以下の構造であることを確認した。
【0181】
ClCC(=O)OCFCFCFCFCFOCOCCl …(B6)
【0182】
19F-NMR(376.2MHz,Chloroform-d,基準CFCl) δ(ppm):-93(4F)、-122(6F)
【0183】
[例7-1]
n-ブタノールを1,6-ヘキサンジオールに変更し、ClCOCClの使用量を101gに変更したこと以外は、例1-1と同様の方法で反応を行い、エステル化合物A7を94g得た。
【0184】
H-NMRの分析により、エステル化合物A7は以下の構造であることを確認した。
【0185】
ClCC(=O)OCHCHCHCHCHCHOCOCCl …(A7)
【0186】
H-NMR(399.8MHz,Chloroform-d,基準TMS) δ(ppm):1.2(m、4H)、1.7(m、4H)、4.3(t、J=7.1Hz、4H)
【0187】
[例7-2]
例7-1で得られたエステル化合物A7を用い、エステル化合物A7を含む溶液の注入時間を10時間に変更したこと以外は、例1-2と同様の方法で反応を行い、含フッ素エステル化合物B7を6.0g得た(収率79%)。
【0188】
19F-NMRの分析により、含フッ素エステル化合物B7は、以下の構造であることを確認した。
【0189】
ClCC(=O)OCFCFCFCFCFCFOCOCCl …(B7)
【0190】
19F-NMR(376.2MHz,Chloroform-d,基準CFCl) δ(ppm):-93(4F)、-122(4F)、-126(4F)
【0191】
[例8-1]
n-ブタノールを3,4-ジクロロ-1-ブタノールに変更し、ClCOCClの使用量を42gに変更したこと以外は、例1-1と同様の方法で反応を行い、エステル化合物A8を55g得た。
【0192】
H-NMRの分析により、エステル化合物A8は以下の構造であることを確認した。
【0193】
【化3】
【0194】
H-NMR(399.8MHz,Chloroform-d,基準TMS) δ(ppm):2.0-2.3(m、2H)、3.6-3.8(m、2H)、4.1(m、1H)、4.2-4.4(m、2H)
【0195】
[例8-2]
例8-1で得られたエステル化合物A8を用い、エステル化合物A8を含む溶液の注入時間を9時間に変更したこと以外は、例1-2と同様の方法で反応を行い、含フッ素エステル化合物B8を6.0g得た(収率84%)。
【0196】
19F-NMRの分析により、含フッ素エステル化合物B8は、以下の構造であることを確認した。
【0197】
【化4】
【0198】
19F-NMR(376.2MHz,Chloroform-d,基準CFCl) δ(ppm):-64(2F)、-93(2F)、-117(2F)、-131(1F)
【0199】
[例9-1]
ClCOCClをClCOCClCClに変更し、ClCOCClCClの使用量を118gとしたこと以外は、例1-1と同様の方法で反応を行い、エステル化合物A9を111g得た。
【0200】
H-NMRの分析により、エステル化合物A9は以下の構造であることを確認した。
【0201】
CHCHCHCHOCOCClCCl …(A9)
【0202】
H-NMR(399.8MHz,Chloroform-d,基準TMS) δ(ppm):0.9(t、J=8.0Hz、3H)、1.4(m、2H)、1.6(m、2H)、4.3(t、J=7.1Hz、2H)
【0203】
[例9-2]
例9-1で得られたエステル化合物A9を用い、エステル化合物A9を含む溶液の注入時間を10時間に変更したこと以外は、例1-2と同様の方法で反応を行い、含フッ素エステル化合物B9を6.0g得た(収率78%)。
【0204】
19F-NMRの分析により、含フッ素エステル化合物B9は、以下の構造であることを確認した。
【0205】
CFCFCFCFOCOCClCCl …(B9)
【0206】
19F-NMR(376.2MHz,Chloroform-d,基準CFCl) δ(ppm):-81(3F)、-93(2F)、-120(2F)、-125(2F)
【0207】
[例10-1]
ClCOCClをClCOCCl(CClに変更し、ClCOCCl(CClの使用量を155gとしたこと以外は、例1-1と同様の方法で反応を行い、エステル化合物A10を141g得た。
【0208】
H-NMRの分析により、エステル化合物A10は以下の構造であることを確認した。
【0209】
CHCHCHCHOCOCCl(CCl …(A10)
【0210】
H-NMR(399.8MHz,Chloroform-d,基準TMS) δ(ppm):0.9(t、J=8.0Hz、3H)、1.4(m、2H)、1.6(m、2H)、4.3(t、J=7.1Hz、2H)
【0211】
[例10-2]
例10-1で得られたエステル化合物A10を用い、エステル化合物A10を含む溶液の注入時間を8時間に変更したこと以外は、例1-2と同様の方法で反応を行い、含フッ素エステル化合物B10を6.0g得た(収率84%)。
【0212】
19F-NMRの分析により、含フッ素エステル化合物B10は、以下の構造であることを確認した。
【0213】
CFCFCFCFOCOCCl(CCl …(B10)
【0214】
19F-NMR(376.2MHz,Chloroform-d,基準CFCl) δ(ppm):-81(3F)、-93(2F)、-120(2F)、-125(2F)
【0215】
[例11-1]
ClCOCClをClCOCHClに変更し、ClCOCHClの使用量を66gとしたこと以外は、例1-1と同様の方法で反応を行い、エステル化合物A11を68g得た。
【0216】
H-NMRの分析により、エステル化合物A11は以下の構造であることを確認した。
【0217】
CHCHCHCHOCOCHCl …(A11)
【0218】
H-NMR(399.8MHz,Chloroform-d,基準TMS) δ(ppm):0.9(t、J=8.0Hz、3H)、1.4(m、2H)、1.6(m、2H)、4.2(t、J=7.1Hz、2H)、6.1(s、1H)
【0219】
[例11-2]
例11-1で得られたエステル化合物A11を用い、エステル化合物A11を含む溶液の注入時間を20時間に変更したこと以外は、例1-2と同様の方法で反応を行い、含フッ素エステル化合物B11を7.0g得た(収率71%)。
【0220】
19F-NMRの分析により、含フッ素エステル化合物B11は、以下の構造であることを確認した。
【0221】
CFCFCFCFOCOCFCl …(B11)
【0222】
19F-NMR(376.2MHz,Chloroform-d,基準CFCl) δ(ppm):-69(1F)、-81(3F)、-93(2F)、-120(2F)、-125(2F)
【0223】
[例12-1]
ClCOCClをClCOCClCHClに変更し、ClCOCClCHClの使用量を103gとしたこと以外は、例1-1と同様の方法で反応を行い、エステル化合物A12を98g得た。
【0224】
H-NMRの分析により、エステル化合物A12は以下の構造であることを確認した。
【0225】
CHCHCHCHOCOCClCHCl …(A12)
【0226】
H-NMR(399.8MHz,Chloroform-d,基準TMS) δ(ppm):0.9(t、J=8.0Hz、3H)、1.4(m、2H)、1.6(m、2H)、4.2(t、J=7.1Hz、2H)、6.5(s、1H)
【0227】
[例12-2]
例12-1で得られたエステル化合物A12を用い、エステル化合物A12を含む溶液の注入時間を13時間に変更したこと以外は、例1-2と同様の方法で反応を行い、含フッ素エステル化合物B12を6.0g得た(収率72%)。
【0228】
19F-NMRの分析により、含フッ素エステル化合物B12は、以下の構造であることを確認した。
【0229】
CFCFCFCFOCOCClCFCl …(B12)
【0230】
19F-NMR(376.2MHz,Chloroform-d,基準CFCl) δ(ppm):-73(1F)、-81(3F)、-93(2F)、-120(2F)、-125(2F)
【0231】
[例13-1]
ClCOCClをClCOCBrClに変更し、ClCOCBrClの使用量を101gとしたこと以外は、例1-1と同様の方法で反応を行い、エステル化合物A13を94g得た。
【0232】
H-NMRの分析により、エステル化合物A13は以下の構造であることを確認した。
【0233】
CHCHCHCHOCOCBrCl …(A13)
【0234】
H-NMR(399.8MHz,Chloroform-d,基準TMS) δ(ppm):0.9(t、J=8.0Hz、3H)、1.4(m、2H)、1.6(m、2H)、4.2(t、J=7.1Hz、2H)
【0235】
[例13-2]
例13-1で得られたエステル化合物A13を用い、エステル化合物A13を含む溶液の注入時間を11時間に変更したこと以外は、例1-2と同様の方法で反応を行い、含フッ素エステル化合物B13を5.0g得た(収率72%)。
【0236】
19F-NMRの分析により、含フッ素エステル化合物B13は、以下の構造であることを確認した。含フッ素エステル化合物B13は、含フッ素エステル化合物B11と同じである。
【0237】
CFCFCFCFOCOCFCl …(B13)
【0238】
[例14]
フラスコに、例1-2で得られた含フッ素エステル化合物B1の5gと、フッ化ナトリウム粉末の0.1gとを入れ、激しく撹拌しながら、120℃で5時間、さらに、140℃で12時間加熱した。加熱中、フラスコ上部には還流管を設置し、冷却水を流した。反応終了後に冷却し、化合物C14と化合物D14を含むサンプル5gを回収した。
【0239】
19F-NMRの分析により、化合物C14は、以下の構造であることを確認し、収率は81%であることが分かった。
【0240】
CFCFCFCFCOF …(C14)
【0241】
19F-NMR(376.2MHz,Chloroform-d,基準CFCl) δ(ppm):-24(1F)、-81(3F)、-118(2F)、-122(2F)、-127(2F)
【0242】
19F-NMRの分析により、化合物D14は、以下の構造であることを確認し、収率は75%であることが分かった。
【0243】
FCOCCl …(D14)
【0244】
19F-NMR(376.2MHz,Chloroform-d,基準CFCl) δ(ppm):-7(1F)
【0245】
[例15]
30gのn-ブタノール、18gのフッ化ナトリウムをフラスコに入れ、窒素ガスをバブリングさせながら攪拌した。74gの化合物D14(FCOCCl)をフラスコ内の温度が25℃±2.5℃となるよう滴下した。滴下終了後、25℃で2時間撹拌し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mLを加えた。さらに、水50mL及びクロロホルム50mLを加え、有機相を得た。有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムを用いて脱水した。ろ過を行った後、ろ液をエバポレータにて濃縮して、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製することにより、エステル化合物A1を79g得た。
【0246】
[例16-1]
化合物D14(FCOCCl)をCFCFCFOCF(CF)COFに変更し、CFCFCFOCF(CF)COFの使用量を221gとしたこと以外は、例15と同様の方法で反応を行い、エステル化合物A16を201g得た。
CHCHCHCHOCOCF(CF)CFCFCF …(A16)
【0247】
[例16-2]
例16-1で得られたエステル化合物A16を用い、エステル化合物A16を含む溶液の注入時間を5時間に変更したこと以外は、例1-2と同様の方法で反応を行い、含フッ素エステル化合物B16を2.6g得た(収率36%)。
CFCFCFCFOCOCF(CF)CFCFCF …(B16)
【0248】
例1-1~例13-2では、水酸基を有する化合物とカルボン酸ハロゲン化物とを反応させて、エステル化合物を得る工程を含み、カルボン酸ハロゲン化物は、塩素原子の数が3以上であることから、その後のフッ素化において、収率良く含フッ素エステル化合物が得られることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0249】
本開示のエステル化合物の製造方法は、その後のフッ素化において従来よりも収率良く含フッ素エステル化合物を製造できる。含フッ素エステル化合物は、種々の官能基(例えば、水酸基、エチレン性不飽和基、エポキシ基、カルボキシ基等)を有する含フッ素化合物に誘導できる。また、得られた含フッ素エステル化合物及び含フッ素化合物は、表面処理剤、乳化剤、ゴム、界面活性剤、溶媒、熱媒体、医薬品、農薬、潤滑油、これらの中間体等に利用可能である。