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特開2024-74717弾性体、バウンドストッパ及び電磁誘導装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074717
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】弾性体、バウンドストッパ及び電磁誘導装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 35/02 20060101AFI20240524BHJP
   H01F 7/02 20060101ALI20240524BHJP
   H01F 7/20 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
H02K35/02
H01F7/02 B
H01F7/20 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186062
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】牧原 伸征
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 久
(72)【発明者】
【氏名】井門 康司
(72)【発明者】
【氏名】岩本 悠宏
(57)【要約】
【課題】従来とは異なる原理で磁場を変化させることが可能な技術を提案する。
【解決手段】本開示の弾性体は、発泡エラストマーと、前記発泡エラストマー内に分散配置されかつ着磁されている磁性粉体と、を備える弾性体であって、前記弾性体は対称軸を有し、前記弾性体の外表面に、前記対称軸に交差する溝を備える弾性体である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡エラストマーと、前記発泡エラストマー内に分散配置されかつ着磁されている磁性粉体と、を備える弾性体であって、
前記弾性体は対称軸を有し、
前記弾性体の外表面に、前記対称軸に交差する溝を備える弾性体。
【請求項2】
前記溝は、環状をなし、前記弾性体のうち前記対称軸の方向の中央部に少なくとも配置されている請求項1に記載の弾性体。
【請求項3】
前記溝は、前記対称軸の方向に複数並んでいる請求項1又は2に記載の弾性体。
【請求項4】
前記溝は、前記対称軸の方向で3箇所以上に設けられている請求項3に記載の弾性体。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の弾性体を備えるバウンドストッパ。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の弾性体を備える電磁誘導装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、弾性体、バウンドストッパ及び電磁誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、磁石を移動又は回転させて磁場を変化させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登実第3051758号(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示では、従来とは異なる原理で磁場を変化させることが可能な技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、発泡エラストマーと、前記発泡エラストマー内に分散配置されかつ着磁されている磁性粉体と、を備える弾性体であって、前記弾性体は対称軸を有し、前記弾性体の外表面に、前記対称軸に交差する溝を備える弾性体である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る弾性体の断面図
図2】弾性体が備えられた電気機器の概念図
図3】弾性体の斜視図
図4】(A)圧縮変形前の弾性体の断面図、(B)圧縮変形されているときの弾性体の断面図
図5】第2実施形態に係る電気機器の回路図
図6】電気機器の斜視図
図7】電気機器の側断面図
図8】第3実施形態に係る電気機器の回路図
図9】第4実施形態の電気機器の概念図
図10】第5実施形態の電気機器の断面図
図11】試験装置の概念図
図12】(A)試験サンプルの断面図、(B)試験サンプルの断面図
図13】(A)実施例と比較例を示す表、(B)周波数と誘導起電力のグラフ
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1実施形態]
図1及び図2には、第1実施形態に係る電磁誘導装置100Aが示されている。本実施形態の電磁誘導装置100Aは、発電機であって、車両60のサスペンション61に組付けられ、車両60のバッテリー90を充電するためのものである。
【0008】
車両60のサスペンション61は、図1に示すように、ショックアブソーバ62とサスペンションばね63を有する。サスペンションばね63は、ショックアブソーバ62のシリンダ65から外側に張り出した環状突部65Tと車体60Bとの間に挟まれている。本実施形態の電磁誘導装置100Aに含まれる弾性体20(図1及び図3参照)は、ショックアブソーバ62のピストンロッド64に嵌合されてサスペンションばね63の内側に配置され、例えば、車体60Bやシリンダ65に固定される。そして、道路の凹凸等による振動でショックアブソーバ62が縮むことで、弾性体20がシリンダ65と車体60Bとの間で弾性変形(圧縮)され、車両60のバウンドを抑えるバウンドストッパとして機能する(図4(A)から図4(B)への変化を参照)。
【0009】
なお、本実施形態では、車両60として自動車を例示するが、例えば、二輪車や電車等の車両サスペンションに適用してもよい。また、自動車としては、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車等の電動車両が挙げられる。
【0010】
図1に示すように、電磁誘導装置100Aは、電磁誘導コイル12と、その電磁誘導コイル12の内側に配置される上述の弾性体20とを備える。
【0011】
本実施形態の例では、電磁誘導コイル12は、サスペンションばね63の内側に配置され、例えば、電磁誘導コイル12の一端部が車体60Bに固定される。なお、電磁誘導コイル12の1対のリード線12Aは、車体60Bの内部に引き出されて整流部91を介してバッテリー90に接続される(図2参照)。
【0012】
本実施形態の例では、弾性体20は、その中心軸Jが電磁誘導コイル12の中心軸上に配置されるように設けられる。弾性体20は、回転対象な形状になっていてもよく、さらに軸対称な形状になっていてもよい(これらの場合、弾性体20の中心軸Jは対称軸となる)。本実施形態では、弾性体20は、円筒状になっているが、例えば、弾性体20は、円柱状、角柱状(例えば断面が正多角形状のもの)、円錐台形状、角錐台形状、角筒状、球状等になっていてもよい。なお、弾性体20は、回転対象な形状になっていなくてもよく、例えば、断面台形状になっていて、その台形の中心(重心)に中心軸Jが位置する形状になっていてもよい。
【0013】
本実施形態の例では、弾性体20は、中心軸J方向に(即ち、電磁誘導コイル12の軸方向に)磁化されている(即ち、弾性体20の中心軸J方向の一端部がN極、他端部がS極となっている)。変形していない自然長状態での弾性体20の軸長は、電磁誘導コイル12の軸長よりも長くてもよいし、短くてもよいし、略同じであってもよい。
【0014】
弾性体20は、弾性材料(本実施形態では、発泡エラストマー21)に、着磁された磁性粉体が分散してなる。弾性体20では、磁性粉体の粒子の磁気モーメント(詳細には、粒子内の合成磁気モーメント)が、弾性体20の中心軸J方向に沿っている。なお、実際には、磁性粉体の粒子の中には、磁気モーメントの方向が中心軸J方向と交差するものが含まれ得るが、本実施形態では、磁性粉体の粒子の磁気モーメントを合成した合成磁気モーメントの方向が、中心軸J方向となっている。
【0015】
発泡エラストマー21としては、ポリウレタンエラストマーの発泡体や、ゴムの発泡体や、ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂の発泡体等が挙げられる。発泡エラストマー21は、連続気泡構造や半連続気泡構造であることが、成形性や弾性変形容易性の観点から好ましい。発泡エラストマー21は、少なくとも連続気泡構造となる部分を有することが好ましい。このように、発泡エラストマー21が連続気泡構造となる部分を有することで、成形後に発泡エラストマー21が縮む(いわゆる、シュリンクする)ことを抑制可能となる。また、発泡エラストマー21の発泡倍率は、1.4~6倍であることが好ましく、1.7~5倍であることがより好ましく、2~4倍であることがさらに好ましい。ここで、発泡エラストマー21の発泡倍率が1.4以上であることで、クッション性が特に良好となり、発泡倍率が6倍以下であることで、成形性と耐久性が特に良好となる。
【0016】
上述の磁性粉体としては、ネオジム系磁性粉体、サマリウム系磁性粉体、アルニコ系磁性粉体、フェライト系磁性粉体等、公知の硬質磁性材料が挙げられ、強磁性材料が好ましい。磁性粉体は、特に、永久磁石化した際に強い磁力を有するネオジム系磁性粉体からなることが好ましい。磁性粉体の粒子23の形状としては、例えば、鱗片状、球状、針状等が挙げられる。磁性粉体の粒子径は、3~200μmが好ましく、5~100μmがさらに好ましい。磁性粉体の粒子径を大きくすることで、弾性体20の表面磁束密度を高くすることが可能となる。磁性粉体が、磁石粒子に表面処理がされてなる場合には、磁性粉体の粒子径を大きくすることで、磁性粉体における磁性成分の割合を大きくすることができ、弾性体20の表面磁束密度をより高めることが可能となる。また、磁性粉体の粒子径は、200μm以下であることが、弾性体20の成形性や変形容易性の観点から好ましい。なお、粒子径は、JIS Z 8815:1994に準拠したふるい分け試験により測定することができる。ここで、磁性粉体の粒子径が3μm以上であることで作業性が特に良好となる。また、磁性粉体の粒子径が200μm以下であることで成形性が特に良好となると共に、磁性粉体が発泡エラストマー21から脱落することを一層防止可能となる。
【0017】
なお、弾性体20は、磁性粉体が硬質の強磁性材料からなり、発泡エラストマー21に対する磁性粉体の質量濃度(質量比率)が40~80%であり、発泡エラストマー21に対する磁性粉体の体積濃度(体積比率)が1.0~3.5%であることが好ましい。これにより、弾性体20を弾性変形させ易くしつつ、弾性体20の磁束密度の変化を大きくすることが可能となる。弾性体20は、JIS K 6262:2013 A法に準拠した圧縮永久ひずみが、30%以下であることが好ましい。また、弾性体20は、23℃において1Hzで10万回50%圧縮を繰返した場合の繰返し圧縮ひずみが、20%以下であることが好ましい。これらの構成によれば、発泡エラストマー21を弾性変形させた後の復元が良好である。これにより、弾性体20が繰返し圧縮されて使用される用途に用いられる場合であっても、発泡エラストマー21のヘタリが低減され、弾性体20が繰返しの使用に一層好適となる。
【0018】
図1及び図3に示すように、弾性体20の外周面には、溝22Kが形成されている。溝22Kは、弾性体20の外周面の周方向に延び、中心軸Jと交差(立体交差)している。本実施形態の例では、溝22Kは、弾性体20の周方向全体に延びた環状をなしている。
【0019】
溝22Kは、弾性体20の中心軸J方向の複数位置に設けられていてもよい。この場合溝22K同士が、中心軸J方向で間隔を空けて配置されても良いし、中心軸J方向で隣接していてもよい。溝22Kは、弾性体20の中心軸J方向の中央部に少なくとも配置されていることが好ましい。また、溝22Kは、弾性体20の中心軸J方向に3つ以上並んでいてもよい。この場合、弾性体20に設けられる溝22Kが、等間隔に配置されていてもよい。
【0020】
本実施形態の例では、溝22Kは、三角溝(V字溝)になっている(図1及び図4参照)。なお、溝22Kは、丸溝であってもよいし、角溝(例えば断面四角形状の溝)であってもよい。弾性体20が複数の溝22Kを有する場合、他の溝22Kとは異なる形状の溝22Kが含まれていてもよい。
【0021】
弾性体20は、例えば以下のようにして製造される。弾性体20を製造するには、まず、ポリオールとイソシアネートを混合してプレポリマー化した第1液を用意する。第1液のプレポリマーは、イソシアネート基(NCO)を末端に有するものである。その後、第1液に磁性粉体を混合し、均一に分散させる。また、触媒、発泡剤等を含む第2液を用意する。その後、第1液と第2液とを混合し、その混合液を得る。ここで、イソシアネート基を末端に有するプレポリマーのNCO%は、3~7%とすることが好ましく、本実施形態の例では、6%とした。これにより、成形性や耐久性に優れた弾性体20を得ることが可能となる。
【0022】
次に、上記混合液を、あらかじめ温調された成形型に注入して発泡硬化させ、例えば円筒状をなした発泡成形体を形成する。この発泡成形体では、磁性粉体が、発泡エラストマー21内に分散している。また、上記発泡成形体では、磁性粉体の各粒子の磁気モーメントがランダムな方向を向いている。なお、上記混合液の成形型での発泡硬化工程では、閉型状態で所定時間キュア(一次キュア)を行った後、得られた発泡成形体を成形型から取り出す。一次キュアは、例えば60~120℃で10~120分間、行われる。一次キュアを行って成形型から取り出された発泡成形体については、さらに二次キュアを行うことが好ましく、二次キュアは、例えば90~180℃で8~24時間、行われる。本実施形態の例では、磁性粉体が内部に分散配置される弾性材料が、ポリウレタンエラストマーであるので、原料が硬化するまでの時間が短く、磁性粉体が原料内で沈降する前に原料を硬化させることが可能となる。これにより、磁性粉体を均一に分散配置することが容易となる。従って、100μm以上の粒子径の磁性粉体であっても弾性体20内に容易に分散させることが可能となり、弾性体20の磁束密度を高くすることが可能となる。なお、本実施形態では、磁性粉体を第1液に混合した後に第2液に混合するので、磁性粉体を第2液に混合した後に第1液に混合する場合に比べて、磁性粉体を発泡エラストマー21内に均一に分散することができる。
【0023】
次に、上記発泡成形体を着磁する。この工程では、発泡成形体内の磁性粉体の粒子の磁気モーメントを、外部磁場を印加することにより揃える。本実施形態では、外部磁場を、円筒状の発泡エラストマー21の中心軸J方向に印加する。ここで、着磁は、発泡成形体が変形していない自然長状態で行ってもよいし、自然長状態に対して中心軸J方向に圧縮した状態(例えば50%圧縮した50%圧縮状態)で行ってもよい。以上により、発泡成形体から弾性体20が得られる。なお、弾性体20は、中心軸J方向に10%圧縮されたときに、磁束密度(表面磁束密度)が自然長状態よりも5%以上大きくなるものであることが特に好ましい。このような弾性体20は、例えば、磁性粉体を分散させた発泡エラストマー21を圧縮した状態(例えば50%圧縮した状態)で、その圧縮方向に磁性粉体を着磁することで製造することが可能である。
【0024】
ここで、本実施形態の弾性体20は、変形(弾性変形)することによって磁束密度を変化させることができる。そして、本実施形態の電磁誘導装置100Aでは、弾性体20を変形させることにより、電磁誘導コイル12内を軸方向に貫く磁束を変化させて、誘導電流を発生させることができる。これは主に、弾性体20の磁化の変化に起因すると考えられる。詳細には、弾性体20が電磁誘導コイル12の軸方向で圧縮されると(図4(B))、弾性体20における磁性粉体の粒子の分布密度が上がり、中心軸J方向の磁化が大きくなると考えられる。この磁化が大きくなると、弾性体20中の中心軸J方向の磁束密度が大きくなるので、電磁誘導コイル12内を貫く磁束が大きくなる。その結果、この磁束の変化を打ち消す向きに磁場を発生させるように、電磁誘導コイル12に誘導電流が流れると考えられる。
【0025】
本実施形態では、弾性体20が発泡体で構成される。従って、弾性体20が圧縮されたときに、気泡が潰れて弾性体20における磁性粉体の粒子の分布密度を上げやすくなり、弾性体20中の磁束密度の変化を大きくすることが容易となる。これにより、上記誘導電流を容易に発生させることが可能となる。
【0026】
また、本実施形態では、回路に誘導電流を発生させるための着磁体(弾性体20)が、弾性を有するので、振動等により弾性体20に力がかかった場合に、従来のフェライト磁石からなるものに比べて、着磁体が破損し難くなる。また、弾性体20を圧縮して電磁誘導コイル12に誘導電流を発生させることができるので、弾性体20の代わりに剛体が用いられる場合よりも、電磁誘導装置100Aを電磁誘導コイル12の軸方向にコンパクトにすることができる。また、弾性体20が発泡体を含むので、弾性体20が非発泡の弾性体からなる場合に比べて、大きなストロークの伸縮が可能となる。その結果、弾性体20の大きなストロークの変形によって往復移動させて磁束密度を大きく変化させることができるので、短いストロークでしか磁束密度を変化させることができないものに比べて、1ストローク当りの発電量を多くすることができる。
【0027】
ここで、本実施形態では、弾性体20が圧縮されると、上述のように発泡エラストマー21の気泡が潰れる。従って、弾性体20は、電磁誘導コイル12の軸方向に圧縮されても電磁誘導コイル12の径方向に膨らみ難くなる(図4(B)参照)。これにより、磁性粉体の粒子の磁気モーメントの向きが、弾性体20の径方向への変形に起因して変化することが抑制される。即ち、弾性体20が電磁誘導コイル12の軸方向に変形しても、磁性粉体の粒子の磁化方向を電磁誘導コイル12の軸方向に保持し易くすることが可能となる。これにより、弾性体20の軸方向の変形による磁束密度の変化を大きくすることが可能となり、誘導起電力を大きくすることが可能となる。
【0028】
さらに、本実施形態では、弾性体20の外周面に溝22Kが形成されている。従って、弾性体20が圧縮されたときの径方向の膨らみを溝22Kによりさらに抑えることが可能となる。特に、弾性体20のうち中心軸J方向の中央部は、弾性体20の圧縮時に最も膨らみ易い部分となるが、この中央部に溝22Kが設けられることで、弾性体20の圧縮時の径方向への膨らみを一層抑制可能となる。これにより、電磁誘導装置10を電磁誘導コイル12の径方向にコンパクトにすることが可能となり、弾性体20とその外側の電磁誘導コイル12との干渉が抑えられ、弾性体20と電磁誘導コイル12との間のクリアランスを狭くして発電効率の向上を図ることが可能となる。また、溝22Kが設けられることで、弾性体20を伸縮し易くすることが可能となり、弾性体20の変形ストロークを大きくして、誘導起電力を大きくすることが可能となる。弾性体20の圧縮時の膨らみや圧縮し易さ、クッション性等を考慮すると、弾性体20の半径に対する溝22Kの深さの比は、0.033~0.33であることが好ましく、0.05~0.17であることがより好ましく、0.06~0.13であることがさらに好ましく、弾性体20の軸長に対する溝22Kの幅の比は、0.02~0.20であることが好ましく、0.04~0.13であることがより好ましく、0.06~0.10であることがさらに好ましい。
【0029】
また、弾性体20を、バウンドストッパとして車両60に搭載すれば、道路の凹凸等によりショックアブソーバ62が伸縮することで、バウンドストッパ66、即ち、磁性弾性体20を電磁誘導コイル12の軸方向で弾性変形させることができ、電磁誘導コイル12や回路に誘導電流を発生させることができる。電磁誘導装置100Aで発生した誘導電流は、車両60に搭載された整流部91を通してバッテリー90に付与されてバッテリー90が充電される。本実施形態の電磁誘導装置100Aによれば、車両60の振動によって電磁誘導コイル12に発生した誘導電流でバッテリー90を充電することができ、車両の振動エネルギーの有効利用が図られる(バウンドストッパを、発電に利用することができる)。
【0030】
なお、電磁誘導装置100Aは、弾性体20と電磁誘導コイル12とから構成され、外付けの整流部91及び負荷部としてのバッテリー90に接続される構成となっていてもよいし、弾性体20及び電磁誘導コイル12に加えて整流部及び負荷部を一体に備えた構成としてもよい。
【0031】
[第2実施形態]
本実施形態の電磁誘導装置100Bは、図5図7に示されている。上記第1実施形態では、発電機としての電磁誘導装置100Aを例示したが、本実施形態では、センサーとしての電磁誘導装置100Bを説明する。本実施形態の電磁誘導装置100Bは、図5に示すように、発電部10と整流部91と負荷部92とを有する。なお、以下では、第1実施形態と異なる構成に関してのみ説明する。
【0032】
負荷部92は、例えば、無線モジュール92Aを含んでいる。その無線モジュール92Aは、例えば、RFIDを変形させたものであり、RFIDタグが無線で電力を受電し、その受電の度に識別番号を近距離無線通信のキャリアに変調して無線送信するものであるところを、無線モジュール92Aは、発電部10から整流部91を通して有線で電力を受電し、その受電の度に識別番号を所定の無線通信のキャリア波に変調して送信するようになっている。その所定の無線通信として、例えば、遠距離無線通信、Wi-Fi、赤外線通信、近距離無線通信等が挙げられる。
【0033】
なお、無線モジュール92Aは、識別番号以外の情報をキャリア波に変調して無線送信するものでもよく、また、情報をキャリア波に変調せず、情報を含まない特定の周波数の無線波のみを送信し、その無線波が送信されたこと自体が電磁誘導装置100Bからの情報であるようにしてもよい。
【0034】
整流部91は、例えば公知な倍圧整流回路になっていて、その入力側に発電部10の次述する電磁誘導コイル12が接続され、出力側に前述の無線モジュール92Aが接続されている。そして、電磁誘導コイル12に誘起される誘導電流が整流部91で整流されて無線モジュール92Aに付与される。
【0035】
なお、図5に示す整流部91には、3倍圧整流回路が例示されているが、所望の電圧に応じたn倍圧整流回路を用いればよい。
【0036】
発電部10は、電磁誘導コイル12と、その内側に配置される弾性体20と、それらを収容する伸縮ケース30とを備える。図6及び図7に示すように、伸縮ケース30は、一端有底、他端開放の円筒状の筒体31と、その筒体31より外径が大きい一端有底、他端開放の円筒状の筒体32とを開口端同士を向かい合わせて嵌合させた構造をなしている。また、両筒体31,32の軸長は略同一になっていて、両筒体31,32の開口端には、互いに係合して離脱を防ぐ返し部31A,32Aが設けられている。そして、伸縮ケース30は、返し部31A,32A同士が係合する最長状態と、一方の筒体31の開口端が他方の筒体32の底部に当接する最短状態とに変化する。なお、最短状態の伸縮ケース30は、最長状態の伸縮ケース30の例えば略1/2の軸長になる。
【0037】
筒体32の外面には、上記した整流部91と負荷部92とを収容した回路ケース33が固定されている。また、一方の筒体31の底壁側端部には、周方向における複数位置から側方に張り出す複数の突片31Bが備えられ、それら各突片31Bに取付孔31Cが形成されている。また、他方の筒体32の先端部には、例えば、アジャスト機構35が備えられている。アジャスト機構35は、筒体32の底壁の外面中央から突出して内面に雌螺子部35Bを有する支持筒35Aと、その雌螺子部35Bに螺合する雄螺子部35Cを外面に有するシャフト部35Dと、シャフト部35Dの先端部に回転可能に取り付けられた当接板35Eとを備えてなる。
【0038】
なお、本実施形態の伸縮ケース30は、例えば、樹脂又はステンレス等の非磁性体であるが、伸縮ケース30及び後述するスペーサ34を鉄等の磁性体で形成して後述する弾性体20と共に伸縮ケース30が磁路を形成するようにしてもよい。また、本実施形態の筒体31,32は、弾性体20を介して接続されることで互いに回転不能に連結されているが、筒体31,32の一方に縦長の係合溝を設けると共に、他方に係合溝に係合する突部を設けて、筒体31,32同士の相対的な回転を規制してもよい。
【0039】
図7に示すように、電磁誘導コイル12は、例えば一方の筒体31の内側に丁度収まる外径、軸長の円筒状をなして、筒体31内に固定されている。また、電磁誘導コイル12の1対のリード線12Aは、筒体31のうち底壁に近い側壁を貫通する貫通孔31Dを通して筒体31の側方に引き出されている。そして、それら1対のリード線12Aが回路ケース33に取り込まれて整流部91に接続されている。そして、1対のリード線12Aは、伸縮ケース30の伸縮に伴って屈曲する。なお、筒体32の開口側の端部には、1対のリード線12Aとの干渉を回避するための切り欠き32B(図6参照)が形成されている。
【0040】
弾性体20は、電磁誘導コイル12の内側に隙間を介して嵌合される円柱状をなし、伸縮ケース30の同心軸上に配置されて、両端面を筒体31,32の各底面に例えば接着材にて固定される。また、弾性体20の一端面と筒体32の底面との間には、必要に応じて弾性体20と同一外径の円柱状のスペーサ34が配置されて弾性体20の圧縮率が調整される。具体的には、スペーサ34を設けない場合には、伸縮ケース30が最長状態から最短状態に変化することで伸縮ケース30内の弾性体20は、伸縮ケース30と同様に1/2に圧縮される。これに対し、上記スペーサ34を設ければ、弾性体20を、1/2以上の任意の圧縮率になるまで圧縮率を高くすることができる。なお、図7には、スペーサ34を備えた弾性体20が1/3まで圧縮される構造が例示されている。
【0041】
弾性体20は、伸縮ケース30の最長状態で筒体31,32の両底面の間で僅かに圧縮されるようになっている。これにより、伸縮ケース30が外力を受けていない状態での筒体31,32同士の間のガタ止めが図られている。
【0042】
なお、弾性体20は、筒体31,32に接着材によって固定されていたが、固定されていなくてもよい。また、筒体31,32の各底面と、弾性体20の両端面とには、互いに凹凸嵌合して弾性体20を伸縮ケース30に対して芯出しするための凹凸を備えてもよい。
【0043】
本実施形態の電磁誘導装置100Bの構造に関する説明は以上である。次に、電磁誘導装置100Bの作用効果について説明する。図7に示すように、電磁誘導装置100Bは、相互間の間隔が変動し得る1対の対向部材201,202の間の隙間にセットされて、それら1対の対向部材201,202の変形・動作等の検出を行うために使用される。そのためには、電磁誘導装置100Bは、伸縮ケース30の軸方向(電磁誘導コイル12及び弾性体20の軸方向でもある)が、1対の対向部材201,202の対向方向を向くように配置される。そして、例えば、1対の対向部材201,202の間隔が通常状態であるときに、伸縮ケース30が所望の状態になるようにアジャスト機構35が調整される。具体的には、1対の対向部材201,202が通常状態から離間する場合と接近する場合の両方の検出を行う場合には、伸縮ケース30が最長状態の略1/2程度の圧縮状態になるようにアジャスト機構35が調整される。また、1対の対向部材201,202が通常状態から接近したことのみを検出したい場合には、通常状態の1対の対向部材201,202の間で伸縮ケース30が僅かに圧縮した状態になるか、アジャスト機構35の当接板35Eが一方の対向部材202から僅かに離れた状態になるようにアジャスト機構35が調整される。また、電磁誘導装置100Bが1対の対向部材201,202から横ずれしないようにするために、必要に応じて、伸縮ケース30の取付孔31Cに通したボルトを一方の対向部材201の螺子孔に締め付ける等して伸縮ケース30を一方の対向部材201に固定することが好ましい。
【0044】
上述の如く、電磁誘導装置100Bが1対の対向部材201,202の間にセットされた状態で、1対の対向部材201,202の間隔が変化すると、伸縮ケース30と共に弾性体20が軸方向で伸縮される。すると、弾性体20による磁界の磁束のうち電磁誘導コイル12を貫通する磁束の密度が変化し、発電部10にて発電が行われる。そして、発電部10で発生した誘導電流は、整流部91で整流されて負荷部92に受電される。すると、負荷部92の無線モジュール92Aから識別番号の情報を含んだ無線信号が出力される。これにより、電磁誘導装置100Bから離れた場所の無線端末で電磁誘導装置100Bからの無線信号を受信して1対の対向部材201,202が受ける負荷や挙動を監視することができる。
【0045】
なお、本実施形態の電磁誘導装置100Bを、高架橋の橋桁と橋本体との間の隙間や、免震構造を有する建物の床下等の隙間や、道路の路面下の隙間等に複数セットして、それら各電磁誘導装置100Bの設置場所と識別番号とを対応付けて記憶しておき、監視端末で複数の電磁誘導装置100Bから無線信号を監視することで、高架橋や建物の台風や地震等による挙動や異常の有無等を監視することができる。
【0046】
本実施形態の弾性体20においても、溝22Kが設けられることで、圧縮時の弾性体20の径方向の膨らみを抑えることができ、電磁誘導装置100Bを電磁誘導コイル12の径方向にコンパクトにすることが可能となる。
【0047】
[第3実施形態]
本実施形態の電気機器100Cは、図8に示されており、整流部91Vと負荷部92Vの構成が前記第2実施形態と異なる。即ち、整流部91Vは、2倍圧整流回路になっていて、整流部91Vの1対の出力端末の間には二次電池91Aが接続されている。また、負荷部92Vには、検出回路92Bと無線回路92Cとが備えられ、負荷部92Vには、電磁誘導コイル12に流れる誘導電流を検出するための電流検出部92Dが接続されている。さらに、検出回路92Bには、A/Dコンバータとマイコンとが含まれている。そして、電磁誘導コイル12で生成される誘導電流に基づいて電気機器100Cが受ける外力を特定するための検出データを生成し、その検出データを無線回路92Cにて無線送信する。なお、検出データとしては、例えば、誘導電流のFFTデータやスペクトルデータや誘導電流の波形に含まれるピーク値のデータ等、様々なものが挙げられる。
【0048】
本実施形態の電気機器100Cでは、発電部10にて生成される誘導電流に基づいて外力を特定するための検出データを生成してから無線送信するので、電気機器100Cから離れた遠隔値において無線送信によるノイズの影響を受け難いデータ収集が可能になる。また、二次電池91Aを備えたことで負荷部92Vへの給電が安定する。
【0049】
[第4実施形態]
第4実施形態の電気機器100Dは、図9に示されており、前記第1実施形態の電磁誘導装置100Aに、前記第3実施形態の電気機器100Cと同様の整流部91Vと負荷部としての検出回路92Bを付加した構成となっている。そして、検出回路92Bで生成した検出データを車両60の制御装置86に付与する。制御装置86は、付与された検出データに基づき、車両60の過搭載やサスペンション61の故障等の異常の有無を判別し、異常があったときには警告灯85を点灯して運転者に異常を報知する。
【0050】
なお、車両60としてトラックの荷台に電気機器100Dを備え、荷台の積み荷の過搭載や積み荷の重量バラスンに関する異常を検知する構成であってもよい。また、車両60に電気機器100Dを備えて車両60に関する異常を検知する構成に限らず、例えば、工場プラントにおけるタンクや配管に上記電気機器100Dを備え、タンクや配管の異常を検出する構成であってもよい。
【0051】
[第5実施形態]
本実施形態の電気機器100Eは、図10に示されており、建物や乗り物の床構造71に組み込まれている。具体的には、この床構造71は、土台72の上に床パネル73が敷かれた構造となっていて、土台72と床パネル73の間には、複数の緩衝材78が敷き詰められている。床パネル73に荷重がかかると、緩衝材78が弾性変形する。そして、複数の緩衝材78の1つ又は一部複数が、弾性体20になっていて、その弾性体20を囲むように電磁誘導コイル12が備えられている。また、電気機器100Eは、第2実施形態と同様の整流部と無線モジュールとを回路ケース33に収容して備える。
【0052】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態において、電磁誘導装置100Aは、電磁誘導コイル12を有していなくてもよく、弾性体20の変形に伴う磁束密度の変化によって誘導電流が流れる回路を備えていればよい。
【0053】
(2)弾性体20の溝22Kが、上記実施形態では、弾性体20の外周面の周方向全体に延びた環状のものであったが、弾性体20の外周面の周方向の一部にのみ延びるものであってもよい。この場合、溝22Kは、弾性体20の中心軸J方向で複数位置に設けられていてもよいし、弾性体20の周方向に並んで複数設けられていてもよい。
【0054】
(3)上記実施形態では、溝22Kが、弾性体20のうち中心軸J方向の中央部に配置されていたが、該中央部からずれた位置にのみ設けられていてもよい。
【0055】
(4)電磁誘導装置10において、弾性体20は、電磁誘導コイル12の径方向で電磁誘導コイル12の内側に配置されていればよく、電磁誘導コイル12の軸方方向では電磁誘導コイル12の外側に配置されていてもよい。この場合、例えば、弾性体20を、自然長の状態では電磁誘導コイル12内に一部が収まり、圧縮されたときには電磁誘導コイル12の全体が外側にはみ出るように配置してもよい。
【0056】
(5)上記実施形態では、弾性体20の磁化方向が、電磁誘導コイル12の軸方向と同じであったが、電磁誘導コイル12の軸方向に対して傾斜していてもよい。また、弾性体20の磁化方向が、中心軸J方向でなくてもよい。
【0057】
(6)上記実施形態では、電磁誘導コイル12(回路)に誘導電流を発生させる弾性体20の弾性変形が、圧縮であったが、伸長であってもよいし、ねじりであってもよいし、曲げであってもよい。
【0058】
(7)上記実施形態では、弾性体20の原料のイソシアネートとして1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)を用いたが、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いてもよい。
【0059】
(8)上記実施形態では、検出装置が、電磁誘導コイル12(回路)に生じた誘導起電力(誘導電流)に基づいて検出を行う構成であったが、磁気センサーによって弾性体20の磁束密度の変化を検出する構成であってもよい。磁気センサーとしては、例えば、ホール素子、TMR素子(トンネル磁気抵抗効果素子)、GMR素子(巨大磁気抵抗効果素子)、AMR素子(異方性磁気抵抗効果素子)等が挙げられる。
【0060】
[確認実験]
溝22Kの数が異なる弾性体20について、弾性変形による電磁誘導コイル12への誘導電流の発生を確認すると共に、圧縮時の弾性体20の膨らみを確認した。誘導電流の代用値として電磁誘導コイル12に発生する誘導起電力を確認した。
【0061】
1.電磁誘導装置の構成
電磁誘導コイル12としては、銅線からなり、コイルの巻き径(内径)が36mm(36Φ)、軸長が70mm、線径が0.5mm、巻き数が1395回、抵抗が13Ωであるものを用いた。また、弾性体20としては、ポリウレタンの発泡エラストマー21にネオジム系磁性粉体(粒子径5μm)を分散させたものを用いた。弾性体20は、円筒状であり、その外径は60mm、内径は17mm、軸長は60mmである。弾性体20の着磁は、自然長状態で行い、その着磁条件は、4テスラで1秒間とした。そして、本実験では、弾性体20を電磁誘導コイル12と同軸に配置すると共に、弾性体20を、自然長状態で電磁誘導コイル12との中心位置が一致するように配置した。弾性体20は、電磁誘導コイル12内に全体が収まっており、中心軸J方向が上下方向となるように配置され、中心軸J方向の一端側から(下方から)圧縮することで弾性体20を弾性変形させた。
【0062】
2.各実験例の弾性体の詳細
(1)弾性体20の溝22K
弾性体20の溝22Kは、弾性体20の外周面の周方向全体に延びる環状をなす三角溝である(溝深さは2.5mmであり、溝の開口幅は5mmである)。図13(A)に示すように、弾性体20の各試験サンプルの溝22Kの数は、0個(溝22K無し。比較例1)、1個(実施例1)、3個(実施例2)、5個(実施例3)、7個(実施例4)、9個(実施例5)とした(1個、5個の例が、それぞれ図12(A)、図12(B)に示されている)。溝22Kは、溝22Kにより弾性体20が中心軸J方向で等分される位置に形成した。従って、弾性体20に溝22Kが奇数個ある場合には、溝22Kは、弾性体20の中心軸J方向の中央部には少なくとも配置されることになる。
【0063】
(2)弾性体20の配合
弾性体20の原料の詳細は、以下の通りである。
<第1液>
ポリオール;ポリエステルポリオール(分子量:2000、官能基数:2、水酸基価:56mgKOH/g、品名:「ポリライト OD-X-102」、DIC社製
イソシアネート;1,5-ナフタレンジイソシアネート(NCO%:40%、品名:「コスモネートND」、三井化学株式会社製)
ネオジム系磁性粉体;MQFP(5μm)、マグネクエンチ社製
<第2液>
触媒;アミン触媒、品名:「Addocat PP」、ラインケミージャパン社製
発泡剤; ヒマシ油と水を含む混合液、品番:「アドベードSV」(ヒマシ油と水の重量比50:50)、ラインケミージャパン社製
【0064】
発泡エラストマー21の発泡倍率は2.5倍、発泡エラストマー21に対するネオジム系磁性粉体の質量比率は50wt%、ネオジム系磁性粉体の体積比率は3Vol%である。
【0065】
3.試験方法
<発泡エラストマーの密度、発泡倍率>
発泡エラストマー21の発泡倍率は、ネオジム系磁性粉体を含まない第1液と第2液とから、上記形状の弾性体20の試験サンプルを作製し、JIS K6268:1998に基づき密度を測定し、この密度から発泡倍率を計算した。
【0066】
<ネオジム系磁性粉体の質量比率、体積比率>
ネオジム系磁性粉体の質量比率は、第1液の質量に対するネオジム系磁性粉体の質量を、秤を用いて測定することで求めた。ネオジム系磁性粉体の体積比率は、ネオジム系磁性粉体の質量比率、ネオジム系磁性粉体の密度、発泡エラストマー21の密度から、以下の式を用いて算出した。ここで、ネオジム系磁性粉体の密度は、7.6g/cmとした。
ネオジム系磁性粉体の体積比率(%)=(ネオジム系磁性粉体の質量比率×発泡エラストマーの密度)/(ネオジム系磁性粉体の密度)
【0067】
<誘導起電力>
誘導起電力は、図11に示す試験装置40により、電磁誘導コイル12の軸方向で圧縮と復元を繰り返すように弾性体20を振動変形させて、電磁誘導コイル12の両端間の電圧を測定して評価した。具体的には、振幅は±5mmであり、周波数は10Hzである。なお、この振動試験の最初に10mmの初期圧縮を弾性体20の各試験サンプルに行った。溝22Kの数が同じである同種の弾性体20を、3個ずつ測定し、平均値を求めた。
【0068】
試験装置40の詳細は、以下のようになっている。試験装置40は、電磁誘導コイル12の内側で、弾性体20を電磁誘導コイル12の軸方向で挟むピストン41と固定部材42とを有する。ピストン41は、駆動源43からの動力を受けて電磁誘導コイル12の軸方向に振動し、弾性体20を振動変形させる。固定部材42とピストン41の間隔は、ピストン41が振動のストロークにおいて最も固定部材42から遠ざかったときに、弾性体20の自然長と同じになるように設定されている。即ち、本実験では、固定部材42とピストン41が、弾性体20に常に接する。
【0069】
また、電磁誘導コイル12の両端は、オシロスコープ44に接続され、オシロスコープ44には、電磁誘導コイル12に発生した誘導起電力が表示される。さらに、試験装置40には、ピストン41の振動を検出するためのレーザー変位計45が設けられている。レーザー変位計45からは、ピストン41の振幅や周波数等に関する信号がアンプユニット46を介してオシロスコープ44に出力され、オシロスコープ44でピストン41の振動の振幅や周波数を確認できるようになっている。
【0070】
<圧縮時の弾性体の径方向の膨らみ>
圧縮時の弾性体20の径方向の膨らみを、溝22Kの数を異ならせて測定し、評価した。具体的には、弾性体20のうち、20%圧縮時(軸長が自然長の80%になるまで圧縮したとき)に最も径方向に膨らんだ部分の膨らみを測定し、弾性体の自然長状態の軸長(上述のように60mm)に対するその膨らみの比を、横膨れ率[%]として評価した。
【0071】
4.試験結果
図13(A)及び図13(B)に示すように、弾性体20の溝22Kの個数が増えると、誘導起電力も向上することがわかった(図13(B)に破線で示す近似直線の傾きが正になっている)。これは、溝22Kの個数が多い程、弾性体20を中心軸J方向に圧縮させ易くなり、その結果、圧縮のストロークが大きくなり、誘導起電力も大きくなるためと考えられる。なお、溝22Kの数が7個の弾性体20では、誘導起電力のばらつきも小さかった(図13(B)には、各実施例及び比較例の標準偏差がエラーバーで示されている)。
【0072】
圧縮時の弾性体20の径方向の膨らみは、溝22Kが無いものよりも、溝22Kがあるものの方が小さくなった。上記膨らみは、溝22Kが3個の場合、特に小さくなり、溝22Kが5個以上の場合、より一層小さくなった。なお、横膨れ率は、8%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。
【0073】
[付記]
以下、上記実施形態及び上記実施例から抽出される特徴群について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお、以下では、理解の容易のため、上記実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、これら特徴群は、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0074】
例えば、以下の特徴群は、弾性体、バウンドストッパ及び電磁誘導装置に関し、「従来から、磁石を移動又は回転させて磁場を変化させる技術が知られている(例えば、登実第3051758号(図1)参照)。」という背景技術について、「本開示では、従来とは異なる原理で磁場を変化させることが可能な技術を提案する。」という課題をもって想到されたものと考えることができる。
【0075】
また、例えば、以下の特徴群は、弾性体、バウンドストッパ及び電磁誘導装置に関し、「従来から、フェライト磁石は、様々な用途に用いられ、例えば回路に誘導電流を発生させる電磁誘導装置等に用られる(例えば、登実第3051758号(図1)参照)。」という背景技術について、「しかしながら、フェライト磁石では、脆くて割れ易いため、破損し易いという問題があった。」という課題をもって想到されたものと考えることもできる。また、従来から、新規な弾性体やバウンドストッパ、電磁誘導装置が求められている。
【0076】
[特徴1]
発泡エラストマーと、前記発泡エラストマー内に分散配置されかつ着磁されている磁性粉体と、を備える弾性体であって、
前記弾性体は対称軸(中心軸J)を有し、
前記弾性体の外表面(弾性体20の外周面)に、前記対称軸に交差する溝を備える弾性体。
【0077】
本特徴によれば、従来とは異なる原理で磁場を変化させることが可能な技術を提案することができる。また、溝が設けられることで、弾性体の対称軸の方向への圧縮時の膨らみを抑えることが可能となる。
【0078】
[特徴2]
前記溝は、環状をなし、前記弾性体のうち前記対称軸の方向の中央部に少なくとも配置されている特徴1に記載の弾性体。
【0079】
本特徴では、圧縮時の弾性体において最も膨らむ軸方向の中央部に溝が設けられるので、圧縮時の弾性体の膨らみを一層抑制可能となる。
【0080】
[特徴3]
前記溝は、前記対称軸の方向に複数並んでいる特徴1又は2に記載の弾性体。
【0081】
[特徴4]
前記溝は、前記対称軸の方向で3箇所以上に設けられている特徴3に記載の弾性体。
【0082】
[特徴5]
複数の前記溝は、等間隔に配置されている特徴4に記載の弾性体。
【0083】
[特徴6]
前記溝は、三角溝である特徴1から5の何れか1の特徴に記載の弾性体。
【0084】
[特徴7]
特徴1から6の何れか1の特徴に記載の弾性体を備えるバウンドストッパ。
【0085】
[特徴8]
特徴1から6の何れか1の特徴に記載の弾性体を備える電磁誘導装置。
【0086】
[特徴9]
前記回路に前記誘導電流が流れたことを検出する検出部を備える特徴8に記載の電磁誘導装置。
【0087】
[特徴10]
発泡エラストマーと、前記発泡エラストマー内に分散配置されかつ着磁されている磁性粉体と、を備える弾性体であって、
前記弾性体の中心軸周りに延びる溝を外周面に備える弾性体。
【0088】
[特徴11]
着磁された磁性粉体を含み、第1方向に力を受けて弾性変形することで磁束密度が変化して回路に誘導電流を発生させる弾性体の製造方法であって、
着磁前の前記磁性粉体が分散配置された発泡エラストマーを金型内で発泡成形してから、前記第1方向に延びる軸周りの溝を、前記発泡エラストマーの外周面に形成する弾性体の製造方法。
【0089】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0090】
12 電磁誘導コイル
20 弾性体
22K 溝
100A 電磁誘導装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13