(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074758
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】光学部材の製造方法、及び発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/02 20060101AFI20240524BHJP
H01L 33/54 20100101ALI20240524BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20240524BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
H01L23/02 F
H01L33/54
G02B3/00 A
G02B5/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098165
(22)【出願日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2022185409
(32)【優先日】2022-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】武藏 直樹
【テーマコード(参考)】
2H042
5F142
【Fターム(参考)】
2H042BA04
2H042BA11
2H042BA13
2H042BA15
2H042BA18
5F142AA13
5F142BA32
5F142CA02
5F142CA16
5F142CD02
5F142CD16
5F142CG04
5F142CG05
5F142CG22
5F142DA02
5F142DA12
5F142DA73
5F142DB16
5F142FA18
5F142FA42
5F142FA46
5F142FA48
5F142HA01
(57)【要約】
【課題】表面に凹凸を形成する光学部材の製造方法、及び発光装置の製造方法を提供する。
【解決手段】
周辺部と、前記周辺部に囲まれ前記周辺部から凹んだ複数の凹部と、を備える上面を有し、前記周辺部は、3以上の前記凹部と外接する円で規定される複数の第1領域と、前記第1領域に挟まれた複数の第2領域と、を備える透光性の光学部材中間体を準備する工程と、
前記光学部材中間体の上面に、酸素ラジカル、CF
4、CHF
3、SF
6から選択される少なくともいずれか1つを含む雰囲気下においてプラズマを照射することにより、前記第1領域の中心の高さを第2領域の高さよりも高くする工程と、
を含む光学部材の製造方法。
【選択図】
図2C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺部と、前記周辺部に囲まれ前記周辺部から凹んだ複数の凹部と、を備える上面を有し、前記周辺部は、3以上の前記凹部と外接する円で規定される複数の第1領域と、前記第1領域に挟まれた複数の第2領域と、を備える透光性の光学部材中間体を準備する工程と、
前記光学部材中間体の上面に、酸素ラジカル、CF4、CHF3、SF6から選択される少なくともいずれか1つを含む雰囲気下においてプラズマを照射することにより、前記第1領域の中心の高さを第2領域の高さよりも高くする工程と、
を含む光学部材の製造方法。
【請求項2】
前記凹部は、上面視において開口部の形状が円形である、請求項1に記載の光学部材の製造方法。
【請求項3】
前記凹部は、上面視において開口部の形状が四角形である、請求項1に記載の光学部材の製造方法。
【請求項4】
前記凹部は、上面視において前記凹部の中心が三角格子の格子点に配置される、請求項1に記載の光学部材の製造方法。
【請求項5】
前記凹部は、上面視において前記凹部の中心が四角格子の格子点に配置される、請求項1に記載の光学部材の製造方法。
【請求項6】
前記凹部の開口径は、0.2μm~50μmである、請求項1に記載の光学部材の製造方法。
【請求項7】
前記凹部間の距離は、前記凹部の開口径の101%~150%である、請求項6に記載の光学部材の製造方法。
【請求項8】
上面と、前記上面に形成され互いに離隔する複数の凹部と、を備える光学部材中間体と、発光素子と、を備える発光装置中間体であって、前記光学部材中間体の前記上面は、前記凹部の周囲において、3以上の前記凹部と外接する円で規定される複数の第1領域と、前記第1領域に挟まれた複数の第2領域と、を備える発光装置中間体を準備する工程と、
前記光学部材中間体の表面に、酸素ラジカル、CF4、CHF3、SF6から選択される少なくともいずれか1つを含む雰囲気下においてプラズマを照射することにより、前記第1領域の中心の高さを前記第2領域の高さよりも高くする工程と、
を含む発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学部材の製造方法、及び発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透光性部材の表面に凹凸形状を形成する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-032806号公報
【特許文献2】特開2016-001639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表面に凹凸を形成する光学部材の製造方法、及び発光装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の構成を含む。
周辺部と、前記周辺部に囲まれ前記周辺部から凹んだ複数の凹部と、を備える上面を有し、前記周辺部は、3以上の前記凹部と外接する円で規定される複数の第1領域と、前記第1領域に挟まれた複数の第2領域と、を備える透光性の光学部材中間体を準備する工程と、
前記光学部材中間体の上面に、酸素ラジカル、CF4、CHF3、SF6から選択される少なくともいずれか1つを含む雰囲気下においてプラズマを照射することにより、前記第1領域の中心の高さを第2領域の高さよりも高くする工程と、
を含む光学部材の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本開示のある実施形態によれば、表面に凹凸を形成する光学部材の製造方法、光学部材を備える発光装置及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】実施形態に係る光学部材中間体を示す模式斜視図である。
【
図1B】実施形態に係る光学部材中間体の一部を示す模式上面図である。
【
図1C】実施形態に係る光学部材中間体の一部を示す模式上面図である。
【
図1D】
図1CのID-ID線における切断面を示す模式端面図である。
【
図1E】実施形態に係る光学部材中間体の一部を示す模式上面図である。
【
図1F】
図1EのIF-IF線における切断面を示す模式端面図である。
【
図2A】実施形態に係る光学部材の一部を示す模式上面図である。
【
図2B】実施形態に係る光学部材の一部を示す模式上面図である。
【
図2C】
図2BのIIC-IIC線における切断面を示す模式端面図である。
【
図2D】実施形態に係る光学部材中間体の一部を示す模式上面図である。
【
図2E】
図2DのIIE-IIE線における切断面を示す模式端面図である。
【
図3A】実施形態に係る光学部材の一部を示す模式上面図である。
【
図3B】実施形態に係る光学部材の一部を示す模式上面図である。
【
図3C】
図3BのIIIC-IIIC線における切断面を示す模式端面図である。
【
図3D】実施形態に係る光学部材の一部を示す写真である。
【
図3E】実施形態に係る光学部材の一部を示す写真である。
【
図4】実施形態に係る光学部材中間体の一部を示す模式上面図である。
【
図5】実施形態に係る光学部材中間体の一部を示す模式上面図である。
【
図6】実施形態に係る光学部材中間体の一部を示す模式上面図である。
【
図7】実施形態に係る発光装置を示す模式断面図である。
【
図8A】実施形態に係る発光装置の製造方法を示す図である。
【
図8B】実施形態に係る発光装置の製造方法を示す図である。
【
図8C】実施形態に係る発光装置の製造方法を示す図である。
【
図8D】実施形態に係る発光装置の製造方法を示す図である。
【
図8E】実施形態に係る発光装置の製造方法を示す図である。
【
図9A】実施形態に係る発光装置を示す模式断面図である。
【
図10A】実施形態に係る発光装置中間体を示す模式斜視図である。
【
図10B】実施形態に係る発光装置中間体を示す模式上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。また、各部材は、例えば硬化の前後において、あるいは、切断の前後等において、状態や形状等が異なる場合であっても同じ名称を用いる場合がある。
【0009】
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための光学部材又は発光装置を例示するものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態において説明する内容は、他の実施の形態にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0010】
本実施形態に係る製造方法において、準備した中間体にプラズマを照射することで、光学部材又は発光装置を得ることができる。本明細書において、プラズマを照射することで光学部材となる中間体のことを「光学部材中間体」と称する場合がある。また、中間体のうち、プラズマを照射することで発光装置となる中間体のことを「発光装置中間体」と称する場合がある。
【0011】
準備する中間体の上面は、周辺部と、周辺部から凹んだ複数の凹部と、を備える。各凹部は互いに離隔している。周辺部は、平坦面である。ここで「平坦面」とは、製造工程等において不可避に形成される微小な凹凸等を有する面を含むものとする。例えば、面粗さRaが20nm以下程度の面を平坦面とする。凹部は、中間体を準備する工程において、凹部を形成する工程を経て形成することができる。また、あらかじめ複数の凹部を有する中間体を購入して準備する場合は、凹部を形成する工程を省略することができる。
【0012】
周辺部は、3以上の凹部と外接する円形の第1領域と、第1領域に囲まれた第2領域と、を備える。第2領域は、隣接する2つの凹部の中心を結ぶ直線上に位置する部分を領域であると定義することができる。あるいは、第2領域は、1つの凹部の周囲に位置し、隣接する2つの第1領域の中心を結ぶ直線上に位置する部分を含む領域であると定義することができる。中間体において、第1領域と第2領域とは同一平面上にあり、換言すると、同じ高さに位置する。なお、第1領域の外縁であり、第1領域と第2領域との間の境界となる円は、上記のように定義される位置に存在する仮想円であり、視認できるものではない。
【0013】
プラズマを照射することで光学部材の凹部の深さ又は発光装置の凹部の深さは、それぞれの中間体の凹部の深さよりも深い。また、光学部材の凹部の開口径又は発光装置の凹部の開口径は、それぞれの中間体の凹部の開口径よりも大きい。そして、上述のように、光学部材又は発光装置は、それぞれの凹部(光学部材の凹部又は発光装置の凹部)を取り囲む上面において、第1領域の中心の高さが、第2領域の高さよりも高い。
【0014】
ここで、プラズマ照射後に得られる光学部材又は発光装置における「第2領域の高さ」は、隣接する2つの凹部の中心を結ぶ直線と、1つの凹部の周囲に位置し隣接する2つの第1領域の中心を結ぶ直線と、が交差する部分に位置する部分の高さである、と、定義することができる。
【0015】
プラズマ照射の前後において、中間体の上面の形状が変化することで、周辺部と凹部との境界の位置が変化するとともに、周辺部の第1領域と第2領域の境界があいまいになる。詳細には、プラズマを照射することで、周辺部の少なくとも一部は、平坦面からプラズマで削られて凹んだ面へと変化し、それらの凹んだ面の一部又は全部は、プラズマ照射前の凹部と一体化されて新たな凹部の一部を構成するようになるためである。
【0016】
ただし、凹部の中心及び第1領域の中心は、プラズマ照射の前後において、平面視における位置は変わらない。つまり、隣接する2つの凹部の中心を結ぶ直線と、1つの凹部の周囲に位置し隣接する2つの第1領域の中心を結ぶ直線と、が交差する部分に位置する第2領域の位置も、変わらない。そのため、このように、プラズマの照射前後において平面視における位置が変わらない第2領域における高さを定義することで、プラズマの照射前後で形状が変化してしまったとしても、その位置を特定することができる。
【0017】
中間体は、プラズマを照射することで、その表面がプラズマに含まれる成分と反応し、除去される。そのため、プラズマを照射するに従って反応が進むことで、中間体の周辺部は厚さ方向において高さが低くなる。
【0018】
本実施形態にいて用いられるプラズマは容量結合プラズマであり、これを用いてドライエッチングを行う際の反応の進行は、異方性ではなく等方性である。つまり、上面に対して垂直な方向だけでなく、上面に対して平行な方向(水平方向)に向いても反応が進行する。これにより、凹部の開口径よりも大きな開口径の光学部材の凹部又は発光装置の凹部が形成される。このようなドライエッチングを行うことで、プラズマを照射した表面が荒れやすくなり、光の拡散効果を得られやすくなる。
【0019】
凹部の開口径が、反応の進行により大きくなっていくことは、平坦面、つまり周辺部の面積が小さくなっていくことを意味する。特に、凹部の上端(開口部)は、垂直方向への反応と水平方向への反応の両方が同時に進行し、凹部に
近い位置にある周辺部ほど除去されやすい。つまり、上面視において、反応前は周辺部の一部であった部分が、反応の進行によって凹部の一部分に組み込まれる。換言すると、反応前は周辺部の第1領域の中心を除く領域の少なくとも一部と、第2領域の少なくとも一部は、反応後において凹部の一部となる。
【0020】
周辺部のうち、3以上の凹部と外接する円形の第1領域の中心は、凹部から最も遠い位置にある。そして、第1領域に挟まれた第2領域は、その全ての領域が、第1領域の中心よりも凹部に近い位置にある。つまり、第2領域に比べて、第1領域の中心は水平方向に進む反応の影響を受けにくい。換言すると、第1領域の中心は、第2領域よりも除去されにくい。そのため、第2領域よりも、第1領域の中心の高さは高くなりやすい。第1領域の周辺部(中心以外の部分)も、第1領域の中心よりも除去されやすい。そのため、第1領域の中心部は、第1領域の周辺部よりも高さは高くなりやすい。
【0021】
このように、等方性に反応が進行するプラズマを利用することで、マスクを用いたエッチング等で部分的に除去して高低差を設ける方法のみでは困難な形状の光学部材を得ることができる。
【0022】
このようにして得られる光学部材は、光学部材中間体とは異なる光学特性を示す。同様に、発光装置は、発光装置中間体と異なる光学特性を示す。
【0023】
ここで、平板状透光部材と、光学部材中間体と、光学部材とを比較する。なお、平板状透光部材を加工して得られるものが光学部材中間体であり、その光学部材中間体を加工して得られるものが光学部材である。つまり、これら3つは同じ材料で構成されている。
【0024】
一例として、光学部材中間体の凹部の開口径(直径)が0.5μm~1μm程度、深さが0.1μm~0.5μm程度、ピッチ(凹部の中心間の距離)が0.8~1.2μm程度の極微細な凹部である場合について説明する。光学部材はこれより開口径が大きく、かつ、深さが深い凹部となっており、周辺部(平坦な面)はほぼ存在していない。これらの透過率を比較すると、光学部材中間体及び光学部材の透過率は、全ての波長において、つまり、赤外光、可視光、紫外光において、平板状透光部材の透過率よりも高い。また、500nm程度より短い波長においては、光学部材の透過率は、光学部材中間体の透過率よりも高い。例えば、480nmより短い波長域において、光学部材の透過率は、光学部材中間体の透過率よりも0.1%~3%程度高い。特にこの範囲において波長がより短いほど、光学部材の透過率は、光学部材中間体の透過率よりも1%~3%程度高い。さらに、560nm程度より長い波長においては、光学部材の透過率は、光学部材中間体の透過率よりも低い。さらに、580nm程度より長い波長においては、光学部材の透過率は、光学部材中間体の透過率よりも0.1%~1%程度低い。つまり、光学部材は、短波長側において光学部材中間体よりも光が透過し易く、長波長側において光学部材中間体よりも光が透過し難い。
【0025】
また、他の例として、光学部材中間体の凹部の開口径(直径)が3μm~5μm程度、深さが1μm~3μm程度、ピッチ(凹部の中心間の距離)が4.8μm~5.2μm程度の微細な凹部である場合について説明する。この場合も、光学部材はこれより開口径が大きく、かつ、深さが深い凹部となっており、周辺部(平坦な面)はほぼ存在していない。これらの透過率を比較すると、まず、短波長側において、光学部材および光学部材中間体の透過率は、平板状光学部材の透過率よりも低い。光学部材中間体の透過率は、700nm程度以下の波長において、平板状光学部材の透過率よりも低い。光学部材の透過率は、650nm程度以下の波長において、平板状光学部材の透過率よりも低い。また、500nm程度より短い波長においては、光学部材の透過率は、光学部材中間体の透過率よりも低い。例えば、光学部材の透過率は、650nm程度以下の波長において、平板状光学部材の透過率よりも低い。さらに、550nm程度より長い波長においては、光学部材の透過率は、光学部材中間体の透過率よりも高い。また、500nm程度より短い波長においては、光学部材の透過率は、光学部材中間体の透過率よりも2~10%程度低い。さらに、550nm程度より長い波長においては、光学部材の透過率は、光学部材中間体の透過率よりも高い。例えば、550nm程度より長い波長においては、光学部材の透過率は、光学部材中間体の透過率よりも0.1~10%程度高い。
【0026】
上記のように、凹部の大きさによって、各波長における透過率が変化することを利用して、発光装置の光学特性を調整することができる。
【0027】
<実施形態1>
実施形態1に係る光学部材の製造方法は、以下の工程を備える。
(1-1)上面に凹部を備えた光学部材中間体を準備する工程
(1-2)光学部材中間体にプラズマを照射する工程
【0028】
以下、各工程について詳説する。
【0029】
(1-1)複数の凹部を備えた光学部材中間体を準備する工程
図1Aは、光学部材中間体10Aの一例を示す模式斜視図である。
図1B~
図1Fは、
図1Aの部分Pを拡大した模式拡大図及び模式端面図である。光学部材中間体10Aは、例えばシート状の部材である。光学部材中間体10Aの上面視形状は、例えば、
図1に示すような四角形のほか、三角形、五角形、六角形等の多角形、円形、楕円形、さらに、これらの一部が欠けた形状や、これらを組み合わせた形状等とすることができる。光学部材中間体10Aの大きさは、例えば、一辺又は直径が1cm~30cmとすることができる。光学部材中間体10Aの厚さ(周辺部における上面と下面との距離)は、例えば、0.1mm~5mmとすることができる。
【0030】
光学部材中間体10Aは、上面10Uと下面10Lと、を備える。上面10Uは、周辺部10Sと、少なくとも3以上の凹部10Rと、を備える。各凹部10Rは、周辺部10Sに囲まれており、隣接する凹部10Rとは離隔している。
【0031】
図1Bに示す例では、凹部10Rは、上面視における開口部形状が円形である。各凹部10Rは、凹部10Rの中心が、上面視において三角格子の格子点に位置するように配置されている。この場合、1つの凹部10Rは、その周りの周辺部10Sを介して、6つの凹部10Rで囲まれている。
【0032】
凹部10Rの開口径(直径)は、例えば、0.2μm~50μmとすることができる。凹部10R間の距離(上面視において凹部の中心間の距離)は、例えば、凹部10Rの開口径の101%~150%の長さとすることができる。
【0033】
また、凹部10Rは、その全てが同じ開口径であってもよく、あるいは、異なる開口径であってもよい。例えば、開口径が0.2μm~1μm、深さが0.5μm~1.5μmの第1凹部と、開口径が3μm~5μm、深さが4.5μm~5.5μmの第2凹部と、を備えていてもよい。例えば、第1凹部を備える領域を円形とし、その円形の周囲に第2凹部を備える領域を備えることができる。あるいは、第2凹部を備える領域を円形とし、その円形の周囲に第1凹部を備える領域を備えることができる。このように、異なる開口径を有する領域を複数備える場合、それらの領域の境界においては、3位以上の凹部と外接する円が、規定できない領域が存在する。その場合は、円に換えて3以上の凹部を外接する楕円とすることができる。また、開口径の異なる凹部を交互に配置してもよく、そのような場合も、3位以上の凹部と外接する円が規定できない場合は、円に換えて3以上の凹部を外接する楕円とすることができる。
【0034】
凹部10Rは、例えば、柱状、錐体状、錐体台状又はこれらを組み合わせた形状や一部が変形した形状等に凹んだ部分である。凹部10Rを規定する内側面は、上面10Uに対して垂直及び/又は傾斜した面とすることができる。
図1D、
図1F等に示す例では、凹部10Rを規定する内側面は、開口部から連続する部分が上面10Uに対して垂直な面であり、その下側の部分が上面10Uに対して傾斜した面である。凹部10Rの最深部は、例えば、上面視において凹部10Rの中心に位置することができる。凹部10Rの最深部の深さは、例えば、0.1μm~10μmとすることができる。また、別の観点から、凹部10Rの最深部の深さは、例えば、光学部材中間体10Aの厚さの1%~90%とすることができる。
【0035】
光学部材中間体10Aの周辺部10Sは、第1領域Fと、第2領域Sと、を備える。第1領域Fは、
図1Eに示すように、3つの凹部10Rと外接する円で規定される領域である。第1領域Fは、
図1C及び
図1Eにおいて、ハッチングされた円形の領域として図示している。第1領域Fと第2領域Sとは、
図1D等に示すように同一面に位置している。
【0036】
第2領域Sは、周辺部10Sのうち、第1領域Fに挟まれる領域である。各凹部10Rは、6つの第1領域Fと、6つの第2領域Sと接している。各第1領域Fは、3つの第2領域Sと、3つの凹部10Rと接している。各第2領域Sは、2つの凹部10Rと、2つの第1領域Fと接している。第1領域Fの中心Cは、円形の開口を有する凹部10Rの周囲において等間隔に配置されている。6つの第1領域Fの中心Cは、凹部10Rの中心と一致する仮想円の円周上に位置する。1つの凹部10Rの周りに位置する第1領域Fの数と第2領域Sの数は同じである。
【0037】
上述のような複数の凹部10Rを備える光学部材中間体10は、上面に凹部を備えないシート状の部材を準備し、その上面の一部を除去又は変形させて凹部10Rを形成することで準備することができる。あるいは、支持部材上に液状の樹脂材料を配置して硬化させることでシート状の部材を形成した後、その上面の一部を除去又は変形して凹部を形成することで準備することができる。また、光学部材中間体は、金型を用いて射出成形、圧縮成形等により成形して準備することができる。あるいは、凹部を備える光学部材中間体を購入して準備することができる。シート状の部材に凹部を形成する方法としては、マスクを用いたウェットエッチング若しくはドライエッチング、レーザ加工、スタンプ加工、又はエンボス加工等が挙げられる。
【0038】
(1-2)光学部材中間体にプラズマを照射する工程
次に、光学部材中間体10Aの上面10Uに、プラズマを照射する。プラズマを照射する条件を調整することで、凹部10R及び周辺部10Sの加工状態を調整することができる。
【0039】
そして、反応性物質として、酸素ラジカル、CF4、CHF3、SF6から選択される少なくともいずれか1つを含む雰囲気下において、中間体の上面に、プラズマを照射する。これにより、上面視において第1領域の中心に位置する部分の高さを、第2領域の高さよりも高くすることができる。
【0040】
プラズマの照射条件としては、例えば、気圧100Pa~300Paにおいて、反応性物質の濃度が、40体積%~100体積%とすることができる。また、プラズマとしては高周波で励起する高周波プラズマ(RFプラズマ)が好ましく、その際の電源出力の強度は、500W~1000Wとすることができる。また、プラズマの照射時間は、例えば、60秒~1800秒とすることができる。プラズマ照射時の温度は、25℃~100℃とすることができる。また、1つの中間体に対して、1つの照射条件でプラズマの照射を行ってもよく、あるいは、異なる2以上の照射条件でプラズマの照射を行ってもよい。また、中間体の上面の全面に対してプラズマを照射してもよく、あるいは、中間体の上面の一部に対してプラズマを照射してもよい。
【0041】
図2A~
図2Eに示す光学部材100Aと、
図3A~
図3Cに示す光学部材100Bとは、いずれも、同じ形状の光学部材中間体10Aから得られたものである。これらは、異なる条件でプラズマを照射することで得られる。100Bは、光学部材100Aよりも凹部10Rの深さが深くなっている。また、光学部材100Bは、光学部材100Aよりも、周辺部10Sの第1領域Fの幅が狭くなっている。
【0042】
プラズマの照射は、所望の形状の光学部材を得るために、連続して行ってもよく、あるいは、数回に分けて行ってもよい。例えば、
図1A~
図1Fに示す光学部材中間体10Aにプラズマを条件Aで照射することで
図2Aに示す形状の光学部材100Aを得た後に、一度プラズマの照射を中止し、その後に、再度、同じ条件Aでプラズマを照射することで、
図3Aに示す光学部材100Bを得ることができる。あるいは、
図1A~
図1Fに示す光学部材中間体10Aに、条件Aとは異なる条件Bで照射することで
図3Aに示す光学部材100Bを得ることができる。
【0043】
上述のように、プラズマを照射することで得られる光学部材100A及び光学部材100Bは、それぞれの上面10Uにおいて、凹部10Rと、周辺部10Sと、を備える。そして、それぞれの周辺部10Sは、第2領域Sの高さが第1領域Fの高さよりも低い点において共通している。第1領域Fは、
図2B、
図2D、及び
図3Bにおいて、ハッチングされた円形の領域として図示している。
【0044】
まず、光学部材100Aについて説明する。光学部材100Aの凹部10Rは、
図2Aに示すように、上面視形状は略円形であり、その直径は光学部材中間体10Aの凹部10Rよりも大きい。換言すると、光学部材100Aは、上面視において周辺部10Sの占める割合が、光学部材中間体10Aにおける周辺部10Sよりも小さくなっている。隣接する凹部10Rの中心を結ぶ直線上に位置する第2領域Sは、光学部材中間体10Aでは
図1Fに示すように平坦面を備えており、プラズマを照射することで、
図2Eに示すように幅が小さくなっている。
【0045】
そして、
図2Cに示すように、光学部材100Aの周辺部10Sにおいて、第1領域Fの中心Cの高さが、第2領域Sよりも高い。周辺部10Sは、2つの第1領域Fの中心Cから徐々に深くなっており、2つの第2領域Sの略中央において最も深くなるように凹んでいる。第2領域Sを含む凹みの深さは、凹部10Rの深さよりも浅い。
【0046】
光学部材100Bは、
図3A、
図3Dに示すように、光学部材100Bの凹部10Rは、上面視形状が六角形に近い形状である。これは、光学部材中間体10Aの各凹部10Rの中心が、三角格子の格子点に位置するように配置されているためである。光学部材100Bの凹部10Rは、光学部材100Bの凹部10Rは、
図2Aに示す光学部材100Aの凹部10Rよりも面積が大きい。
【0047】
そして、
図3C、
図3Eに示すように、光学部材100Bの周辺部10Sにおいても光学部材100Aと同様に、第1領域Fの中心Cの高さが、第2領域Sよりも高い。第1領域Fの中心Cを含むごくわずかな領域のみが突出して高さが高くなっている。
図2Cと
図3Cとは、隣接する2つの凹部10Rに挟まれた第2領域Sを含む部分の断面視である。
図2Cでは、2つの中心Cに挟まれた領域において、その中心付近が最も深くなるように徐々に深くなる形状となっている。これに対し、
図3Cでは、2つの中心Cを含むごくわずかな領域が突出し、これらに挟まれた第2領域Sを含む部分は、ほとんど高さが変わっていない。これは、
図2Cに示す第2領域Sにさらにプラズマを照射することで、第2領域Sの幅がより狭まり、横方向からの反応が進みやすくなることによる。これにより、横方向からの反応の影響を受けにくい第1領域Fの中心Cを含むごくわずかな領域のみが、このような突出した形状となるためである。
【0048】
光学部材100は、プラズマ照射により、凹部10Rのまわりの周辺部10Sにおいて高低差がある領域、つまり平坦ではない領域を備えている。これにより、光学部材100の上面から出射される光は、平坦面を備える光学部材と比べると、より拡散された光として出射される。そのため、光学部材100を出射面として備える発光装置は、出射光の色ムラ又は輝度ムラを低減することができる。
【0049】
(変形例)
図4~
図6に、光学部材中間体の変形例を示す。
図4に示す光学部材中間体10Bは、上面視における凹部10Rの開口部形状が四角形である。各凹部10Rは、凹部10Rの中心が、三角格子の格子点に位置するように配置されている。1つの凹部10Rは、その周りの周辺部10Sを介して6つの凹部10Rで囲まれている。
【0050】
周辺部10Sの第1領域Fは、ハッチングされた円形の領域として図示している。各第1領域Fは、3つの凹部10Rと外接する円で規定される領域である。1つの凹部10Rの周りの周辺部10Sは、6つの第1領域Fと6つの第2領域Sを含む。6つの第1領域Fの面積は全て同じである。6つの第1領域Fの中心Cは、その全てが等間隔に配置されているものではない。詳細には、6つの第1領域Fは、
図4に示すように、四角形の1辺に2つ配置されているものと、1辺に3つ配置されているものと、がある。1辺に3つ配置されている第1領域Fは等間隔に配置されている。1辺に3つ配置されている第1領域Fの中心Cの間隔は、1辺に2つ配置されている第1領域Fの中心Cの間隔よりも小さい。つまり、第1領域Fに挟まれた6つの第2領域Sは、面積の小さい4つの第2領域Sと、それよりも面積の大きい2つの第2領域Sと、を含む。
【0051】
図5に示す光学部材中間体10Cは、上面視における凹部10Rの開口部形状が円形である。各凹部10Rは、凹部10Rの中心が、四角格子の格子点に位置するように配置されている。1つの凹部10Rは、その周りの周辺部10Sを介して8つの凹部10Rで囲まれている。
【0052】
周辺部10Sの第1領域Fは、ハッチングされた円形の領域として図示している。各第1領域Fは、4つの凹部10Rと外接する円で規定される領域である。1つの凹部10Rの周りの周辺部10Sは、4つの第1領域Fと4つの第2領域Sとを含む。4つの第1領域Fの面積は全て同じであり、第1領域Fの中心Cは、等間隔に配置されている。4つの第2領域Sの面積は全て同じである。
【0053】
図6に示す光学部材中間体10Dは、上面視における凹部10Rの開口部形状が四角形である。各凹部10Rは、凹部10Rの中心が、四角格子の格子点に位置するように配置されている。1つの凹部10Rは、その周りの周辺部10Sを介して8つの凹部10Rで囲まれている。
【0054】
周辺部10Sの第1領域Fは、ハッチングされた円形の領域として図示している。各第1領域Fは、4つの凹部10Rと外接する円で規定される領域である。1つの凹部10Rの周りの周辺部10Sは、4つの第1領域Fと4つの第2領域Sとを含む。4つの第1領域Fの面積は全て同じであり、第1領域Fの中心Cは、等間隔に配置されている。4つの第2領域Sの面積は全て同じである。
【0055】
以上のような形状の光学部材中間体を用いても、プラズマを照射することで、第1領域の中心の高さが第2領域の高さよりも高い光学部材を得ることができる。
【0056】
<実施形態2>
実施形態2に係る発光装置の製造方法は、以下の工程を主に備える。
(2-1)実施形態1で得られた光学部材を準備する工程
(2-2)光学部材と発光素子とを接合する工程
【0057】
図7は、本実施形態に係る発光装置の製造方法を用いて得られる発光装置の一例である。発光装置200は、発光素子21と、光学部材100と、を備える。光学部材100は、実施形態1に係る光学部材の製造方法を用いて得られたものである。さらに、発光装置200は、接合部材22と、被覆部材23を備えることができる。
【0058】
(2-1)実施形態1で得られた光学部材を準備する工程
図8Aに示すように、光学部材100を準備する。ここでは、実施形態1で得られた光学部材100Aを一例として挙げて説明する。光学部材100Aは、凹部を備える上面10Uと、その反対側の下面10Lと、を備える。
【0059】
まず、
図8Aに示すように、上面10Uを下側に向け、下面10Lが上側に向くように配置する。次に、
図8Bに示すように、光学部材100Aの下面10L上に未硬化の接合部材22を配置する。配置する方法は、例えば、ポッティングが挙げられる。
【0060】
(2-2)光学部材と発光素子とを接合する工程
発光素子21を準備する。発光素子21は、半導体積層体211と、正負一対の電極212と、を備える。
図8Cに示すように、電極212を上側にして発光素子21を接合部材22上に載置する。このとき、接合部材22は半導体積層体211の側面を覆うように這い上がる。
【0061】
次に、
図8Dに示すように、発光素子21及び接合部材22を被覆部材23で被覆する。ここでは、電極212の全てを埋設するように被覆部材23を配置している。そのため、
図8Eに示すように、被覆部材23の一部を除去して電極212を露出させる工程が必要である。なお、あらかじめ電極212が露出するように被覆部材23を配置する場合は、被覆部材23の一部を除去する工程は省略することができる。また、被覆部材23から露出する電極212を覆う金属膜を形成する工程を備えていてもよい。その後、被覆部材23と光学部材100Aとを切断線ラインLにおいて切断することで、
図7に示す発光装置200を得ることができる。
【0062】
以上に説明したように、発光装置200は、光学部材100A上に発光素子21を載置する方法のほか、発光素子21上に、光学部材100Aを配置する方法を用いることができる。
【0063】
<実施形態3>
実施形態3に係る発光装置の製造方法は、以下の工程を主に備える。
(3-1)光学部材中間体と発光素子を含む発光装置中間体を準備する工程
(3-2)発光装置中間体にプラズマを照射する工程
【0064】
図9A及び
図9Bは、本実施形態に係る発光装置の製造方法を用いて得られる発光装置の一例である。発光装置300は、発光素子33と、光学部材32と、を備える。光学部材100は、実施形態1に係る光学部材の製造方法を用いて得られたものである。さらに、発光装置200は、パッケージ31と、パッケージ31上に配置される発光素子33と、発光素子33を封止する光学部材32と、を備える。パッケージ31は、絶縁性の基体311と、導電部材312と、を備える。ここでは、凹部を備えるパッケージ31を例示しており、パッケージ31としては凹部を備えない平板状のパッケージを用いてもよい。発光素子33と導電部材312とはワイヤ34を介して電気的に接続されている。
【0065】
発光素子33を封止する光学部材32の上面は、
図1A~
図6等に示すような、凹部と、周辺部と、を備えている。
【0066】
(3-1)光学部材中間体と発光素子を含む発光装置中間体を準備する工程
発光装置中間体30の一例を
図10A、
図10Bに示す。ここでは、発光装置中間体30は、
図9Aに示すような発光装置300を複数含んでおり、後の工程で切断することで個片化された発光装置300を得ることができる。なお、あらかじめ個片化された発光装置中間体を用いてもよい。
【0067】
1つの発光装置となる発光装置中間体は、
図7に示す発光装置300の構造と基本的には同じであり、光学部材32となる光学部材中間体32Aを備えている点において異なる。すなわち、発光装置中間体30の光学部材中間体32Aの上面Uは、例えば、
図1C等に示すように、周辺部と、周辺部に囲まれ周辺部から凹んだ複数の凹部と、を備える。そして、周辺部は、3以上の凹部と外接する円で規定される複数の第1領域と、第1領域に挟まれた複数の第2領域と、を備える。
【0068】
(3-2)発光装置中間体にプラズマを照射する工程
発光装置中間体30に、プラズマを照射する。このとき、光学部材中間体32A以外の領域のもプラズマを照射することができる。例えば、パッケージ31にもプラズマを照射することができる。あるいは、光学部材中間体32A以外の領域をマスクし、光学部材中間体32Aのみにプラズマを照射することができる。プラズマの照射条件は、実施形態1と同様である。プラズマを照射後、個片化することで、
図9A、
図9Bに示すような発光装置300を得ることができる。
【0069】
(変形例)
光学部材32は、凹部の大きさが異なる2つの領域を備えることができる。例えば、
図9Aに示すように、上面視が四角形の光学部材32(光学部材中間体32A)において、発光素子33の直上に位置する部分を含む第1領域32Bと、その周辺の第2領域32Cと、を備えることができる。
【0070】
発光装置300が、例えば、発光ピーク波長が440nm~470nmの発光素子33と、発光素子33からの光の一部を吸収して黄色光に変換するYAG系蛍光体を含む光学部材32と、を備え、白色系の光を出射可能であるとする。このような発光装置300において、光学部材32の第1領域32Bの凹部は第2領域32Cの凹部よりも、大きくすることができる。例えば、第1領域32Bの凹部の開口径は0.2μm~1μm、第2領域32Cの開口径は3μm~10μmとすることができる。
【0071】
これにより、発光素子33の直上を含む第1領域32Bから出射する光のうち、特に青色光を取り出し易くすることができる。また、第2領域32Cから出射する光のうち、黄色光を出射しにくくすることができる。
【0072】
光学部材及び発光装置を構成する各部材について、以下に詳述する。
【0073】
(光学部材)
光学部材は、可視光又は紫外光を透過させる透光性であり、これらの波長の光の60%以上を透過し、好ましくは90%以上を透過する。光学部材の材料としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の透光性の熱硬化性の樹脂材料等を用いることができる。
【0074】
光学部材は、上記の樹脂材料中に、蛍光体等の波長変換部材を含むことができる。蛍光体は光学部材に入射された光を異なる波長の光に変換することができる。
【0075】
蛍光体としては、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体、ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体、テルビウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体、CCA系蛍光体、SAE系蛍光体、クロロシリケート系蛍光体、シリケート系蛍光体、βサイアロン系蛍光体等の酸窒化物系蛍光体、LSN系蛍光体、BSESN系蛍光体、SLA系蛍光体、CASN系蛍光体若しくはSCASN系蛍光体等の窒化物系蛍光体、KSF系蛍光体、KSAF系蛍光体若しくはMGF系蛍光体等のフッ化物系蛍光体、ペロブスカイト構造を有する量子ドット、II-VI族量子ドット、III-V族量子ドット、又はカルコパイライト構造を有する量子ドット等を用いることができる。
【0076】
蛍光体は、光学部材の内部において、上面から離隔した位置に配置されていることが好ましい。これにより、プラズマを照射することで光学部材の上面の一部が除去される際に、蛍光体が樹脂材料と一緒に除去させることを低減することができる。ただし、蛍光体は光学部材の上面側に配置されていてもよい。
【0077】
光学部材は、光拡散物質を含むことができる。光拡散物質としては、例えばSiO2、TiO2、Al2O3、ZnO等の微粒子が挙げられる。
【0078】
(発光素子)
発光素子は、公知の半導体発光素子を利用することができる。本実施形態においては、発光素子として発光ダイオードを例示する。発光素子は、例えば、青色、緑色の光を出射する素子としては、窒化物系半導体(InxAlyGa1-x-yN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いた発光素子を用いることができる。発光素子の平面視における形状は、正方形、長方形等の四角形や、三角形、六角形等の多角形とすることができる。
【0079】
(その他の部材)
パッケージは、樹脂パッケージ、セラミックパッケージ、ガラスエポキシパッケージ、COBパッケージ等、公知のものを用いることができる。ワイヤは、Au、Ag、Al等を主成分としたものを用いることができる。
【実施例0080】
まず、光学部材中間体を準備する。光学部材中間体は、エポキシ樹脂からなり、10cm×10cm、厚さが2mmの平板状透光性部材を加工したものである。光学部材中間体は、複数の凹部を備えており、各凹部の中心が三角格子点に配置されるように並んでいる。各凹部は全て同じ大きさ及び深さであり、それぞれ開口部が円形で半球状に凹んでいる。
【0081】
(実施例1)
実施例1では、光学部材中間体の凹部の開口径は0.75μm、深さは0.2μm、ピッチは1μmである。このような光学部材中間体に、酸素ラジカルを含む雰囲気下においてプラズマを照射した。処理条件は、RF(プラズマ源の高周波出力)600W、酸素流量200sccm(標準状態での1分間当たりのガス流量)、圧力150Pa、温度70℃、であり、時間10分照射した。これにより得られた光学部材の透過率を
図11Aに示す。光学部材は、全ての波長において、平板状透光部材の透過率よりも高い。また、500nm程度より短い波長においては、光学部材の透過率は、光学部材中間体の透過率よりも高い。さらに、560nm程度より長い波長においては、光学部材の透過率は、光学部材中間体の透過率よりも低い。つまり、単に凹部を形成するだけでも凹部の無い平板状透光性部材よりも透過率を向上させることができ、更にプラズマを照射することで、短波長の光の透過率を向上させることができる。
【0082】
(実施例2)
実施例2では、光学部材中間体の凹部の開口径は3.5μm、深さは1.5μm、ピッチは5μmである。このような光学部材中間体に、酸素ラジカルを含む雰囲気下においてプラズマを照射した。処理条件は、RF600W、酸素流量200sccm、圧力150Pa、温度70℃、であり、時間10分照射した。これにより得られた光学部材の透過率を
図11Bに示す。光学部材の透過率は、650nm程度以下の波長において、平板状光学部材の透過率よりも低い。また、500nm程度より短い波長においては、光学部材の透過率は、光学部材中間体の透過率よりも低い。さらに、550nm程度より長い波長においては、光学部材の透過率は、光学部材中間体の透過率よりも高い。つまり、単に凹部を形成するだけで、720nm以上の長波長領域において、凹部を備えない平板状透光性部材よりも透過率が向上し、更にプラズマを照射することでそれよりも短い640nm以上の長波長の光の透過率を向上させることができる。
【0083】
実施形態は、以下の態様を含む。
【0084】
(付記1)
周辺部と、前記周辺部に囲まれ前記周辺部から凹んだ複数の凹部と、を備える上面を有し、前記周辺部は、3以上の前記凹部と外接する円で規定される複数の第1領域と、前記第1領域に挟まれた複数の第2領域と、を備える透光性の光学部材中間体を準備する工程と、
前記光学部材中間体の上面に、酸素ラジカル、CF4、CHF3、SF6から選択される少なくともいずれか1つを含む雰囲気下においてプラズマを照射することにより、前記第1領域の中心の高さを第2領域の高さよりも高くする工程と、
を含む光学部材の製造方法。
【0085】
(付記2)
前記凹部は、上面視において開口部の形状が円形である、付記1に記載の光学部材の製造方法。
【0086】
(付記3)
前記凹部は、上面視において開口部の形状が四角形である、付記1に記載の光学部材の製造方法。
【0087】
(付記4)
前記凹部は、上面視において前記凹部の中心が三角格子の格子点に配置される、付記1~付記3のいずれか1に記載の光学部材の製造方法。
【0088】
(付記5)
前記凹部は、上面視において前記凹部の中心が四角格子の格子点に配置される、付記1~付記3のいずれか1に記載の光学部材の製造方法。
【0089】
(付記6)
前記凹部の開口径は、0.2μm~50μmである、付記1~付記5のいずれか1に記載の光学部材の製造方法。
【0090】
(付記7)
前記凹部間の距離は、前記凹部の開口径の101%~150%である、付記6に記載の光学部材の製造方法。
【0091】
(付記8)
上面と、前記上面に形成され互いに離隔する複数の凹部と、を備える光学部材中間体と、発光素子と、を備える発光装置中間体であって、前記光学部材中間体の上面は、前記凹部の周囲において、3以上の前記凹部と外接する円で規定される複数の第1領域と、前記第1領域に挟まれた複数の第2領域と、を備える発光装置中間体を準備する工程と、
前記光学部材中間体の表面に、酸素ラジカル、CF4、CHF3、SF6から選択される少なくともいずれか1つを含む雰囲気下においてプラズマを照射することにより、前記第1領域の中心の高さを前記第2領域の高さよりも高くする工程と、
を含む発光装置の製造方法。