(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007484
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 23/02 20060101AFI20240110BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20240110BHJP
C08L 101/06 20060101ALI20240110BHJP
C08L 23/24 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C08L23/02
C08K7/02
C08L101/06
C08L23/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107424
(22)【出願日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2022104779
(32)【優先日】2022-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】成田 和章
(72)【発明者】
【氏名】上田 雅博
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA053
4J002AA063
4J002AB012
4J002AB042
4J002AH002
4J002BB011
4J002BB021
4J002BB093
4J002BB111
4J002BB161
4J002BB193
4J002BB203
4J002BB213
4J002BG003
4J002BH003
4J002FA042
4J002FD012
4J002FD030
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD100
4J002FD130
4J002FD160
4J002FD170
4J002FD200
4J002GC00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】本発明は、植物由来のフィラーを使用しても加工性に優れ、かつ、外観性に優れた成形体を得ることができる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】ポリオレフィン樹脂と、平均繊維長が300μm以上かつ平均繊維径が50μm未満の植物由来のフィラーと、主鎖にカルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体由来の構成単位を有する重合体と、を含む樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂と、平均繊維長が300μm以上かつ平均繊維径が50μm未満の植物由来のフィラーと、主鎖にカルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体由来の構成単位を有する重合体と、を含む樹脂組成物。
【請求項2】
前記カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体が、ジカルボン酸無水物である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記重合体の酸価が50mg・KOH/g以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記重合体の酸価が140mg・KOH/g以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記重合体の質量平均分子量が1,000以上400,000以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記重合体が炭素原子数30以上のα-オレフィン由来の構成単位を含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリオレフィン樹脂100質量部に対する前記植物由来のフィラーの割合が、5質量部以上400質量部以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記植物由来のフィラー100質量部に対する前記重合体の割合が1質量部以上100質量部以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂は、力学的特性(曲げ特性、引張特性等)、耐薬品性、成形加工性等に優れており、また、安価であることから、機械、電気・電子機器、OA機器、自動車内外装材、電気自動車等の様々な用途に使用されている。
【0003】
一方、現在のところポリオレフィンは石油原料を由来とするものが多く利用されており、環境への影響も懸念されていることから、近年、石油由来のポリオレフィンからバイオ由来のポリオレフィンのニーズが高まっている。また、石油由来のポリオレフィンを使用した場合でも、該ポリオレフィンにバイオ原料を併用して、得られる成形体のバイオ原料の割合を大きくする試みも検討されている。
【0004】
一方、ポリオレフィンにこのようなバイオ原料を併用した場合、得られる成形体の機械的強度が低下してしまう場合があるために、さらに添加剤等を加えて、得られる成形体の機械的強度の低下を防ぐことも検討されている。例えば、特許文献1には、優れた機械的強度を有する成形体を得るために、未変性ポリオレフィンとセルロース系材料に、特定量のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の酸化物および酸変性ポリオレフィン樹脂を併用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されるような酸変性ポリオレフィンを使用した場合、得られる成形体の表面に凹凸が生じて外観性が著しく損なわれる場合があることが判明した。加えて、セルロース系材料の形態によっては押出機などで溶融混錬する際に加工性が低下する場合があった。
【0007】
そこで、本発明は、植物由来のフィラーを使用しても加工性に優れ、かつ、外観性に優れた成形体を得ることができる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明者等が鋭意検討したところ、ポリオレフィン樹脂に対して特定の植物由来のフィラーを併用する際に、さらに特定の化合物を併用することにより上記問題を解決することができ、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下を要旨とする。
【0009】
[1]ポリオレフィン樹脂と、平均繊維長が300μm以上かつ平均繊維径が50μm未満である植物由来のフィラーと、主鎖にカルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体由来の構成単位を有する重合体と、を含む樹脂組成物。
[2]前記カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体が、ジカルボン酸無水物である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記重合体の酸価が50mg・KOH/g以上である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記重合体の酸価が140mg・KOH/g以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]前記重合体の質量平均分子量が5,000以上200,000以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]前記重合体が炭素原子数30以上のα-オレフィン由来の構成単位を含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]前記ポリオレフィン樹脂100質量部に対する前記植物由来のフィラーの割合が、5質量部以上80質量部以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]前記植物由来のフィラー100質量部に対する前記重合体の割合が10質量部以上100質量部以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9][1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、植物由来のフィラーを使用した際に、加工性に優れるとともに外観性に優れた成形体を得ることができる樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は目的を逸脱しない範囲において以下の実施形態に限定されるわけではない。なお、本明細書において「~」は、下限と上限を含むものとする。また、各好ましい範囲については、上限と下限を任意で組み合わせて使用することができる。
【0012】
<1.樹脂組成物>
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂(以下、ポリオレフィン樹脂(A)と称す場合がある)と、平均繊維長が300μm以上かつ平均繊維径が50μm未満の植物由来のフィラーと、主鎖にカルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体由来の構成単位を有する重合体(以下、重合体(C)と称す場合がある)と、を含む。樹脂組成物がこれらを有することにより、樹脂組成物の製造時の加工性に優れ、リサイクル可能な植物由来のフィラーを用いつつも、外観性を損なうことのない成形体を得ることができる。この理由は明らかではないが下記の理由が考えられる。
【0013】
ポリオレフィン樹脂に対して植物由来のフィラーを添加して成形体を得た場合、ポリオレフィン樹脂中に該植物由来のフィラーを適切に分散させないと、得られる成形体の表面に凹凸が発生してしまい外観性が著しく損なうことになる。そのため、ポリオレフィン樹脂に該植物由来のフィラーを適切に分散させることが必要となる。ここで、多くの分散剤では植物由来のフィラーが適切に分散せずに十分な効果が期待できないが、本実施形態のように主鎖にカルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体由来の構成単位を有する重合体を分散剤として使用することで、ポリオレフィン樹脂と植物由来のフィラーの双方に親和性を示す界面活性剤的な作用を発揮することにより、得られる成形体に良好な外観性が得られるものと考えられる。
【0014】
また、ポリオレフィン樹脂に対して平均繊維長が300μm以上で平均繊維径が50μm未満のような細長い形状(綿状)の植物由来フィラーを添加して樹脂組成物を得る場合、樹脂組成物の製造時、即ち押出機などで溶融混錬する際に植物由来フィラーが綿状のために押出機の原料投入口または出口で詰まりやすく、加工性が低下する傾向がある。そのため、ポリオレフィン樹脂に該植物由来のフィラーを均一に混ぜたり、該植物由来のフィラーの回転体への噛みこみ性を改善したりするなどの工夫が必要となる。ここで、多くの分散剤では綿状の平均繊維長の大きい植物由来のフィラーが均一に混ぜ合わさらずに十分な効果が期待できないが、本実施形態のように主鎖にカルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体由来の構成単位を有する重合体を分散剤として使用することで、ポリオレフィン樹脂と植物由来のフィラーの双方に親和性を示す界面活性剤的な作用を発揮することにより押出機の原料投入口または出口での詰まりを抑制し、良好な加工性が得られるものと考えられる。
【0015】
<1-1.ポリオレフィン樹脂(A)>
上述の通り、本実施形態に係る樹脂組成物はポリオレフィン樹脂を含む。なお、本発明において「ポリオレフィン樹脂」とは、樹脂を構成する全ての構成単位100mol%に対し、オレフィン単位及び/又はシクロオレフィン単位が占める割合が80mol%以上であり、重合体(C)とは異なる樹脂である。なかでも、ポリオレフィン樹脂を構成する全ての構成単位100mol%に対し、オレフィン単位及びシクロオレフィン単位の合計割合は、85mol%以上が好ましく、90mol%以上が特に好ましい。
【0016】
ポリオレフィン樹脂の具体例としては、α-オレフィンの単独重合体又は共重合体が挙げられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ(3-メチル-1-ブテン)、ポリ(3-メチル-1-ペンテン)、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)等のα-オレフィン重合体;エチレン-プロピレンブロック又はランダム共重合体、炭素原子数4以上のα-オレフィン-プロピレンブロック又はランダム共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のα-オレフィン共重合体;ポリシクロヘキセン、ポリシクロペンテン等のシクロオレフィン重合体等が挙げられる。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。ポリプロピレンとしては、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ヘミアイソタクチックポリプロピレン、ステレオブロックポリプロピレン等が挙げられる。炭素原子数4以上のα-オレフィン-プロピレンブロック又はランダム共重合体において、炭素原子数4以上のα-オレフィンとしては、ブテン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。樹脂組成物中、ポリオレフィン樹脂は1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0017】
上記のなかでも、ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリブテンが好ましい。
【0018】
ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートは特段の制限はないが、機械特性のために、0.1g/10min以上であることが好ましく、0.2g/10min以上であることがさらに好ましく、0.3g/10min以上であることが特に好ましく、一方、加工性のために、70g/10min以下であることが好ましく、65g/10min以下であることがさらに好ましく、60g/10min以下であることが特に好ましい。ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートはJIS K7210により算出することができる。
【0019】
なお、ポリオレフィン樹脂の市販品としては、例えば、日本ポリプロ株式会社製のノバテックMA3、ノバテックMA3H、ノバテックMA1B、ノバテックMG03D、ノバテックMG05ES、ノバテックBC6C、ノバテック4BSW、ノバテックBC3AD、ノバテックBC3L、ノバテックBC2E、ノバテックBC03C、ノバテックBC03GS、ノバテックBC05B、ノバテックBC06C、ノバテックBC08F、ノバテックBC10HRF、ノバテックEA9、ノバテックEA9HD、ノバテックEA9FTD、ノバテックEA7AD、ノバテックFY6H、ノバテックEA6A、ノバテックFY6、ノバテックFY6CノバテックFY4、ノバテックSA3A、株式会社プライムポリマー製のプライムポリプロJ105G、プライムポリプロJ106G、プライムポリプロJ106MG、プライムポリプロ107G、プライムポリプロJ137G、プライムポリプロJ108M、エボリューSP2320、エボリューSP2520、エボリューSP2510、エボリューSP3010、エボリューSP4020、エボリューSP1071C、ハイゼックス1300J、ハイゼックス2100J、ハイゼックス2100JH、ハイゼックス2200J、ハイゼックス2208J、ハイゼックス3300F、ハイゼックス3600F、ハイゼックス7000F、ハイゼックス8000F、日本ポリエチレン株式会社製のノバテックLL UF420、ノバテックLL UF421、ノバテックLL UF621、ノバテックLL UF524、ノバテックLL UF622、ノバテックLL UF230、ノバテックLL UF320、ノバテックLL UF332、ノバテックLL UA421、ノバテックLL UF240、ノバテックLL UF442、ノバテックLL UF641、ノバテックLL UF943、ノバテックLL UJ960、ノバテックLL UJ370、ノバテックLL UJ580、ノバテックLL UJ480、ノバテックLL UJ990、ノバテックLL UJ790、ノバテックLL UE320、ノバテックLL UR951、ノバテックC6 SF720、ノバテックC6 SF941、ノバテックC6 SF8402、ノバテックHD HJ360、ノバテックHD 362N、ノバテックHD HJ560、ノバテックHD HJ580N、ノバテックHD HJ490、ノバテックHD HJ590N、ノバテックHD HY420、ノバテックHD HY530、ノバテックHD HY430、ノバテックHD HY331、ノバテックHD HY540、ノバテックHD HE122R、ノバテックHD HF313、ノバテックHD HF111K、ノバテックHD HF560、ノバテックHD HE121、ノバテックHD HE212W、ノバテックHD HE421、ノバテックHD HB420R、ノバテックHD HB338RE、ノバテックHD HB332E、ノバテックHD HB432E、ノバテックHD HB530、ノバテックHD HB216R、ノバテックHDHB111Rが挙げられる。
【0020】
<1-2.植物由来のフィラー(B)>
上述の通り、本実施形態に係る樹脂組成物は植物由来のフィラーを含有する。該植物由来のフィラー及び後述の重合体(C)の存在により成形体の外観性を向上することができる。なお、本発明において植物由来のフィラーとは、生物分類における植物界に属する生物の器官に破砕等の処理を加えた物質又は器官から抽出された成分から構成された物質を意味するものとする。なお、植物由来のフィラーとしては、ポリオレフィン樹脂と混合して成形体を得ることができる限りにおいて特段の制限はない。すなわち、固体であればどのような植物由来のフィラーも使用することができる。
【0021】
植物由来のフィラーとしては、なかでも、炭水化物を含むものが好ましく、なかでも、多糖類を含むものが好ましい。このような植物フィラーの例としては、例えば、パルプ、バガス、もみ殻、茶殻、木粉、竹粉、藁粉、葦粉、セルロース粉、紙粉、でん粉、穀物粉、又は麻が挙げられる。
【0022】
植物由来のフィラーの平均繊維長は特段の制限はないが、機械物性向上のために、300μm以上であることが好ましく、400μm以上であることがさらに好ましく、500μm以上であることが特に好ましい。一方、分散性向上のために、10,000μm以下であることが好ましく、7,500μm以下であることがさらに好ましく、5,000μm以下であることがさらに好ましく、3,000μm以下であることがさらに好ましく、2,000μm以下であることがさらに好ましく、1,000μm未満であることが特に好ましい。
【0023】
植物由来のフィラーの平均繊維径は特段の制限はないが、機械物性向上のために、0.1μm以上であることが好ましく、0.3μm以上であることがさらに好ましく、0.5μm以上であることがさらに好ましく、5μm以上であることがさらに好ましく、10μm以上であることが特に好ましい。一方、分散性向上のために、50μm未満であることが好ましく、45μm以下であることがさらに好ましく、40μm以下であることが特に好ましい。なお、植物由来のフィラーの平均繊維長および平均繊維径は、光学顕微鏡または電子顕微鏡で測定することができる。
【0024】
植物由来のフィラーに含まれる含水量は特段の制限はないが、加工性向上のために50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがさらに好ましく、30質量部以下であることが特に好ましく、下限は0質量部である。
【0025】
植物由来のフィラーのアスペクト比は特段の制限はないが、アスペクト比が大きくなるにつれてポリオレフィン樹脂中での該フィラーの分散性が低下する傾向があるために、本発明は、該フィラーのアスペクト比が1.1以上の場合により有効であり、3.0以上の場合にさらに有効であり、5.0以上の場合に特に有効であり、一方、上限は特にないが、通常、100,000以下であり、好ましくは150以下であり、より好ましくは100以下である。
【0026】
<1-3.重合体(C)>
本実施形態に係る樹脂組成物は、主鎖にカルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体由来の構成単位を有する重合体を含有する。なお、本発明において、主鎖にカルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体由来の構成単位を有する重合体とは、主鎖にカルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体をモノマー単位として有する重合体、すなわち、カルボン酸又はカルボン酸誘導体の単独重合体、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体と、他のモノマーとの共重合体を意味するものとする。すなわち、カルボン酸で変性されたポリオレフィンのような重合体は、本発明における重合体(C)には該当しない。言い換えると、側鎖にカルボン酸由来の構成単位を有する一方で、主鎖に、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体由来の構成単位を有さない重合体は本発明における重合体(C)には該当しない。なかでも、該重合体(C)は、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体と、他のモノマーとの共重合体であることが好ましい。すなわち、重合体(C)は、主鎖に繰り返し単位としてカルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体由来の構成単位と、他のモノマー由来の構成単位とを有する共重合体であることが好ましい。なお、他のモノマーとしては後述のα-オレフィンが好ましい。
【0027】
カルボン酸としては、特段の制限はないが、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、メチルフマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、グルタコン酸、コハク酸、ノルボルナン-5-エン-2,3-ジカルボン酸等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸又はメタクリル酸を示す。
【0028】
カルボン酸誘導体としては、特段の制限はなく、例えば、カルボン酸エステル、カルボン酸無水物、カルボン酸イミド等が挙げられる。
【0029】
カルボン酸エステルとしては、特段の制限はなく、上記カルボン酸のエステル化合物が挙げられ、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0030】
カルボン酸無水物としては、特段の制限はなく、例えば、上記カルボン酸の無水物が挙げられ、好ましくは、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物等のジカルボン酸無水物が挙げられる。
【0031】
カルボン酸イミドとしては、特段の制限はなく、例えば、上記カルボン酸のイミド化合物が挙げられ、例えば、マレイミド、N-エチルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド化合物が挙げられる。
【0032】
なお、これらは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。上記の中でも、共重合反応性の点から、カルボン酸エステル又はジカルボン酸無水物が好ましく、ジカルボン酸無水物がより好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0033】
重合体(C)100mol%におけるカルボン酸及びカルボン酸誘導体の合計割合は、特段の制限はないが、ポリオレフィン樹脂と植物由来のフィラーの分散性改善のために、20mol%以上であることが好ましく、30mol%以上であることがさらに好ましく、一方、成形品の外観性向上のために80mol%以下であることが好ましく、70mol%以下がさらに好ましい。
【0034】
重合体(C)は、さらにα-オレフィン由来の構成単位を有することが好ましい。すなわち、重合体(C)は、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体と、α-オレフィンと、の共重合体であることが好ましい。
【0035】
α-オレフィンとしては、特段の制限はないが、炭素原子数10以上80以下のα-オレフィンが好ましい。α-オレフィンの炭素原子数が10以上であれば、加工時の取扱い(加工性)により優れる傾向があり、80以下であれば、ポリオレフィン樹脂との相溶性により優れる傾向がある。なかでも、α-オレフィンの炭素原子数は、12以上が好ましく、18以上がより好ましく、30以上が最も好ましい。一方、α-オレフィンの炭素原子数は、70以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、50以下であることが特に好ましい。
【0036】
重合体(C)が、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体と、α-オレフィンとの共重合体の場合、重合体(C)100mol%におけるα-オレフィン単位の割合は、特段の制限はないが、ポリオレフィン樹脂と植物由来のフィラー分散性改善のために、20mol%以上であることが好ましく、30mol%以上であることがさらに好ましく、一方、成形品の外観性向上のために80mol%以下であることが好ましく、70mol%以下がさらに好ましい。
【0037】
重合体(C)が、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体と、α-オレフィンとの共重合体の場合、重合体(C)100mol%におけるカルボン酸及びカルボン酸誘導体の合計割合は、特段の制限はないが、ポリオレフィン樹脂と植物由来のフィラー分散性改善のために、20mol%以上であることが好ましく、30mol%以上であることがさらに好ましく、一方、成形品の外観性向上のために80mol%以下であることが好ましく、70mol%以下がさらに好ましい。
【0038】
重合体(C)の酸価は、特段の制限はないが、植物由来のフィラーとの親和性を向上させるために、50mg・KOH/g以上であることが好ましく、60mg・KOH/g以上であることがより好ましく、70mg・KOH/g以上であることがさらに好ましく、80mg・KOH/g以上であることが特に好ましく、90mg・KOH/g以上であることが最も好ましく、一方、加工性向上のために、該酸価は、140mg・KOH/g以下であることが好ましく、135mg・KOH/g以下であることがより好ましく、130mg・KOH/g以下であることがさらに好ましい。なお、酸価はカルボン酸及びカルボン酸誘導体由来の構成単位の合計含有量に対し、指示薬にフェノールフタレイン、滴定試薬に水酸化カリウムで滴定することにより測定することができる。
【0039】
重合体(C)の質量平均分子量は、特段の制限はないが、機械物性維持のために1,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましく、7,500以上が特に好ましく、一方、加工性向上のために400,000以下が好ましく、300,000以下がより好ましく、200,000以下がさらに好ましく、100,000以下が殊更好ましく、50,000以下が特に好ましく、なかでも20,000以下がさらに好ましく、15,000以下が最も好ましい。すなわち、重合体(C)の質量平均分子量は、上記の上限下限を組み合わせた範囲であることが好ましい。例えば、2,000以上400,000以下であってよく、7,500以上150,00以下であってよい。なお、重合体(C)の質量平均分子量は、重合体(C)をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0040】
重合体(C)の市販品としては、例えば、ダイヤカルナ30M(三菱ケミカル(株)製)が挙げられる。
【0041】
<1-4.樹脂組成物の組成>
樹脂組成物中、ポリオレフィン樹脂(A)100質量部に対する植物由来のフィラー(B)の割合は特段の制限はないが、機械物性維持のために、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましく、15質量部以上であることが特に好ましく、一方、加工性向上のために、400質量部以下であることが好ましく、250質量部以下であることがさらに好ましく、150質量部以下であることが特に好ましい。
【0042】
樹脂組成物中、植物由来のフィラー(B)100質量部に対する重合体(C)の割合は特段の制限はないが、機械物性維持のために、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましく、10質量部以上であることが特に好ましく、15質量部以上であることが最も好ましく、一方、加工性向上のために、100質量部以下であることが好ましく、90質量部以下であることがさらに好ましく、80質量部以下であることが特に好ましい。
【0043】
樹脂組成物100質量部におけるポリオレフィン樹脂(A)の割合は特段の制限はないが、加工性向上のために、20質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましく、40質量部以上であることが特に好ましく、一方、機械物性維持のために、95質量部以下であることが好ましく、92.5質量部以下であることがさらに好ましく、90質量部以下であることが特に好ましい。
【0044】
樹脂組成物100質量部における植物由来のフィラー(B)の割合は特段の制限はないが、機械物性維持のために、5質量部以上であることが好ましく、7.5質量部以上であることがさらに好ましく、10質量部以上であることが特に好ましく、一方、加工性向上のために、80質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがさらに好ましく、60質量部以下であることが特に好ましい。
【0045】
樹脂組成物100質量部における重合体(C)の割合は特段の制限はないが、機械物性維持のために、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがさらに好ましく、1.5質量部以上であることが特に好ましく、一方、加工性向上のために、15質量部以下であることが好ましく、12.5質量部以下であることがさらに好ましく、10質量部以下であることが特に好ましい。
【0046】
樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂(A)、植物由来のフィラー(B)及び重合体(C)以外の他の成分を含有していてもよい。
【0047】
他の成分としては、ポリオレフィン以外の樹脂が挙げられる。ポリオレフィン以外の樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリブチレンサクシネート等が挙げられる。
【0048】
また、他の成分として、熱可塑性エラストマー(D)が挙げられる。熱可塑性エラストマー(D)としては、例えば、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、アミド系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、動的架橋型熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0049】
これらの中でも、熱可塑性エラストマー(D)としては、本発明の樹脂組成物の機械的物性をより向上させる観点から、オレフィン系エラストマーが好ましい。
【0050】
オレフィン系エラストマーは、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン等のオレフィンを主成分としたオレフィン系熱可塑性エラストマーである。オレフィン系エラストマーとしては、例えば、ポリプロピレンとエチレン-プロピレン共重合体ゴムとのブレンド物又はその架橋物、ポリエチレンとエチレン-プロピレン共重合体ゴムとのブレンド物又はその架橋物、ポリプロピレンとエチレン-プロピレン-非共役ポリエン共重合体ゴムとのブレンド物又はその架橋物、ポリエチレンとエチレン-プロピレン-非共役ポリエン共重合体ゴムとのブレンド物又はその架橋物、ポリプロピレンとエチレン-1-オクテン共重合体ゴムとのブレンド物又はその架橋物、ポリエチレンとエチレン-1-オクテン共重合体ゴムとのブレンド物又はその架橋物等が挙げられる。架橋は公知の方法で行うことができる。
【0051】
オレフィン系エラストマーの市販品としては、例えば、「ミラストマー」、「タフマー」(以上、三井化学株式会社製)、「サントプレーン」、「ビスタマックス」(以上、エクソンモービル・ジャパン合同会社製)、「エスプレンEPDM」、「エスポレックスTPE」(以上、住友化学株式会社製)、「エンゲージ」(ダウ・ケミカル社製)、「サーモラン」(三菱ケミカル株式会社製)、「Modic」(三菱ケミカル株式会社製)、「プライムTPO」(株式会社プライムポリマー製)等が挙げられる。
【0052】
樹脂組成物100質量部における熱可塑性エラストマー(D)の割合は特段の制限はないが、機械物性維持のために、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましく、10質量部以上であることが特に好ましく、一方、加工性向上のために、60質量部以下であることが好ましく、55質量部以下であることがさらに好ましく、50質量部以下であることが特に好ましい。
【0053】
さらに、他の成分として植物由来のフィラーに該当しない各種添加剤が挙げられる。各種添加剤としては、例えば、難燃剤(燐系、ブロム系、シリコーン系、有機金属塩系等)、ドリップ防止剤(例えば、フッ素化ポリオレフィン、シリコーン及びアラミド繊維)、滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム等の長鎖脂肪酸金属塩等)、離型剤(例えば、ペンタエリスリトールテトラステアレート等)、成核剤、帯電防止剤、安定剤(例えば、フェノール系安定剤、硫黄系安定剤、リン系安定剤、紫外線吸収剤、アミン系光安定剤等)、可塑剤、色素及び顔料等が挙げられる。なお、これらのその他の成分は周知の材料を使用することができ、また、該樹脂組成物を使用する用途に合わせて任意で選択して使用することができ、また、樹脂組成物における各その他の成分も任意で選択すればよい。
【0054】
樹脂組成物100質量部におけるその他の成分の割合は特段の制限はないが、通常、0質量部以上であり、一方、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。
【0055】
樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えば、ポリオレフィン樹脂(A)と、植物由来のフィラー(B)と、重合体(C)と、必要に応じて他の成分を、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機等の予備混合手段を用いて充分に混合し、場合により押出造粒器やブリケッティングマシーン等により造粒し、その後、溶融混練機で溶融混練し、押し出す方法が挙げられる。
【0056】
溶融混練機としては、ベント式二軸押出機等の二軸押出機、バンバリーミキサー、混練ロール、単軸押出機、3軸以上の多軸押出機等が挙げられる。溶融混練する際の温度は、例えば170~260℃である。上記の如く押し出された樹脂組成物は、直接、ペレタイザー等の機器により切断されてペレット化されるか、又は冷却されてストランドを形成した後、かかるストランドをペレタイザー等の機器により切断されてペレット化される。
【0057】
上記樹脂組成物を成形することにより成形体を得ることができる。なお、樹脂組成物の用途としては、自動車、オートバイ、船の部品や電機電子部品、雑貨、フィルムおよび成形品等をリサイクルして得られる成形体、その他の分野で有用な成形体等が挙げられる。
【0058】
成形体は、上記樹脂組成物を含有する。すなわち、成形体はポリオレフィン樹脂(A)と、植物由来のフィラー(B)と、重合体(C)と、を含有し、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。なお、成形体において各成分の好ましい比率は、上述の樹脂組成物に記載した好ましい比率と同じである。成形体の形状は特に限定されず、樹脂板、シート、フィルム、ケーブル、異形品等の種々の形状をとり得る。
【0059】
成形体は、本樹脂組成物を成形することにより得られる。成形方法は、特に限定されるものではなく、押し出し加工、カレンダー加工、射出成形、ロール、圧縮成形、ブロー成形等が挙げられる。本樹脂組成物を成形する際の温度は、例えば、170~260℃である。
【0060】
<実施例>
以下、本発明を実施例により、具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例により何ら制限されるものではない。尚、以下の実施例等において、%は特に記載が無い限り質量基準である。
【0061】
[実施例1~11、比較例1~19]
表1~3に示す比率で各原料を配合し、ハンドブレンドで混合した。その後、φ30mm異方向二軸押出機(機種名「PCM-30」、(株)池貝製)を用い、スクリュー回転数150rpm、シリンダー温度180~200℃の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。
【0062】
なお、表1~3に示す各原料の詳細は下記の通りである。
【0063】
(ポリオレフィン樹脂(A-1))
FY4:ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ(株)製、ノバテックPP FY4、メルトマスフローレート5.0g/10min)
(ポリオレフィン樹脂(A-2))
MA1B:ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ(株)製、ノバテックPP MA1B、メルトマスフローレート21.0g/10min)
(ポリオレフィン樹脂(A-3))
BC05B:ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ(株)製、ノバテックPP BC05B、メルトマスフローレート50.0g/10min)
【0064】
(植物由来のフィラー(B-1))
茶殻:REDXバイオマスフィラーグリーンティ(乾燥緑茶粕)(グレンカル・シナリ―(株))であり、平均繊維長50μm~1cm、平均繊維径は50~500μm、含水率は0.1~15質量%である。
【0065】
(植物由来のフィラー(B-2))
B800:セルロースファイバー(レッテンマイヤージャパン(株)製、ARBOCEL B800、平均繊維長130μm、平均繊維径20μm、かさ比重155~185g/L)であり、含水率は0.1~15質量%、である。
【0066】
(植物由来のフィラー(B-3))
BE600-10TG:セルロースファイバー(レッテンマイヤージャパン(株)製、ARBOCEL BE600-10TG、平均繊維長18μm、平均繊維径15μm、かさ比重230~300g/L)であり、含水率は0.1~15質量%である。
【0067】
(植物由来のフィラー(B-4))
BC1000:セルロースファイバー(レッテンマイヤージャパン(株)製、ARBOCEL BC1000、平均繊維長700μm、平均繊維径20μm、かさ比重35~55g/L)であり、含水率は0.1~15質量%、である。
【0068】
(植物由来のフィラー(B-5))
B400:セルロースファイバー(レッテンマイヤージャパン(株)製、ARBOCEL B400、平均繊維長900μm、平均繊維径20μm、かさ比重20~40g/L)であり、含水率は0.1~15質量%、である。
【0069】
(共重合体(C-1))
ダイヤカルナ30M(三菱ケミカル(株)製、α-オレフィンと無水マレイン酸の共重合体(主鎖に無水マレイン酸由来の構成単位を含有し、α-オレフィンの炭素原子数は30以上である)、酸価80mg・KOH/g、重量平均分子量12,000)
(共重合体(C-2))
ユーメックス1010(三洋化成(株)製、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(側鎖に無水マレイン酸由来の構成単位を含有する)、酸価52mg・KOH/g、重量平均分子量30,000)
(共重合体(C-3))
Modic P908(三菱ケミカル(株)製、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、酸価12mg・KOH/g、重量平均分子量100,000)
【0070】
(熱可塑性エラストマー(D-1))
αオレフィンコポリマー(三井化学(株)製、タフマー A-0550S)
【0071】
(他の成分)
イルガノックス1076(BASF社製、ヒンダードフェノール系酸化防止剤)
【0072】
得られた樹脂組成物を、100t射出成形機(機種名「SE-100DU」、住友重機械工業(株)製)を用い、成形温度180~200℃の条件で射出成形して成形体(長さ100mm×幅50mm×厚み2mmの平板、長さ80mm×幅10mm×厚み4mmの衝撃試験用成形片)を得た。得られた成形体(2mm厚の平板)の外観評価を行った。なお、各測定及び評価は下記の通り行った。得られた結果を表1~3に示す。
【0073】
[外観評価]
得られた成形体(平板)の平明部を目視観察し、色むらがある場合を×、色むらが無い場合を〇と判断した。
【0074】
[加工性]
φ30mm異方向二軸押出機(機種名「PCM-30」、(株)池貝製)に20~40g/分の速度でハンドブレンドした各原料の混合物を供給し、押出機投入口または出口で閉塞が発生した場合を×、閉塞が発生しなかった場合を○と判断した。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
比較例1に対して植物由来のフィラーを用いた比較例2、5、8、10、13、15、16及び18では、組成物中の植物由来の成分の割合は増加する一方で、外観性が低下することが分かる。
【0079】
また、比較例2に対して重合体C-1を添加した比較例3、4や、比較例5に対して重合体C-1を添加した比較例6、7、また、比較例8に対して重合体C-1を添加した比較例9では、植物由来のフィラーの平均繊維長が300μm未満または平均繊維径が50μm以上であるため、加工性に問題はないことが分かる。
【0080】
一方、比較例10、13、15、16及び18では、外観性の低下と、加工性に課題があることがわかる。これに対して、比較例11、12、14、17及び19では、重合体C-2又はC-3を添加したが、特に改善はみられていない。
【0081】
しかしながら、重合体C-1を添加した実施例1~11ではいずれも外観性が良好となるとともに、加工性の改善が見られたことが分かる。