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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075017
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】医療用ガス供給装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/12 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
A61M16/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186109
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】橋 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】三木 仲七海
(57)【要約】
【課題】流量が変動する人工呼吸器からの吸気ガスに対して、高精度な制御をすることなく一定流量で医療用ガスを供給しても、適切な医療用ガスを提供できるとともに、医療用ガス濃度を安定させることができる医療用ガス供給装置を提供する。
【解決手段】吸気ガスに水素ガスを供給する医療用ガス供給装置1であって、人工呼吸器側の吸気ライン2aに接続する吸気ガス経路L1と、水素ガス供給手段に接続する水素ガス導入経路L2と、これら2つの経路が合流する合流点4と、合流点の下流側に設けられ、ガス入口6aとガス出口6bを備え、吸気ガス経路よりも大径であって、吸気ガスと水素ガスを混合して混合ガスとするタンク5と、ガス出口と患者側の吸気ライン2bとを接続する混合ガス供給路L4と、吸気ガス経路に設けられる流量計7と、医療用ガス導入経路に設けられる流量制御手段8と、流量計と流量制御手段に接続される制御部9とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工呼吸器からの吸気ガスに医療用ガスを供給する医療用ガス供給装置であって、
人工呼吸器側の吸気ラインに接続する吸気ガス経路と、
医療用ガス供給手段に接続する医療用ガス導入経路と、
前記吸気ガス経路と前記医療用ガス導入経路とが合流する合流点と、
前記合流点の下流側に設けられ、ガス入口とガス出口を備え、前記吸気ガス経路の流路径よりも大径であって、吸気ガスと医療用ガスを混合して混合ガスとするタンク状構造部と、
前記ガス出口と患者側の吸気ラインとを接続する混合ガス供給路と、
前記吸気ガス経路に設けられる流量計と、
前記医療用ガス導入経路に設けられる流量制御手段と、
前記流量計と前記流量制御手段に接続される制御部とを備え、
前記制御部は、前記流量計で計測された所定時間の流量に基づいて、前記混合ガスが所定の濃度になるように前記流量制御手段を制御することを特徴とする医療用ガス供給装置。
【請求項2】
前記流量計が、ガスが流れる方向も検知できることを特徴とする請求項1記載の医療用ガス供給装置。
【請求項3】
前記吸気ガス経路に逆止弁を設けたことを特徴とする請求項1記載の医療用ガス供給装置。
【請求項4】
前記医療用ガスの分子量が前記吸気ガスの分子量よりも小さく、
前記タンク状構造部の上面に前記ガス入口を、下面に前記ガス出口を設けたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載の医療用ガス供給装置。
【請求項5】
前記医療用ガスは水素であることを特徴とする請求項4記載の医療用ガス供給装置。
【請求項6】
前記医療用ガスの分子量が前記吸気ガスの分子量よりも大きく、
前記タンク状構造部の下面に前記ガス入口を、上面に前記ガス出口を設けたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載の医療用ガス供給装置。
【請求項7】
前記医療用ガスは二酸化炭素であることを特徴とする請求項6記載の医療用ガス供給装置。
【請求項8】
前記タンク状構造部の前記ガス入口側にガス拡散部を設けたことを特徴とする請求項1記載の医療用ガス供給装置。
【請求項9】
前記ガス拡散部は、前記タンク状構造部のガス入口に隙間を介して面する邪魔板であることを特徴とする請求項8記載の医療用ガス供給装置。
【請求項10】
前記ガス拡散部は、前記タンク状構造部のガス入口に隙間を介して面するパンチングメタルであることを特徴とする請求項8記載の医療用ガス供給装置。
【請求項11】
前記ガス拡散部は、前記ガス出口から前記ガス入口側に延出し、先端面が前記ガス入口に隙間を介して面する円筒部と、前記円筒部の側面に設けられた開口部とを備えていることを特徴とする請求項8記載の医療用ガス供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用ガス供給装置に関し、詳しくは、人工呼吸器からの吸気ガスに、医療用ガスを供給して混合させる医療用ガス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人工呼吸器からの吸気ガスに、医療用ガスとしての水素をタンクで合流させて混合し、この水素混合ガスを患者に供給する水素混合ガス供給装置があった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5631524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、人工呼吸器からの吸気ガス流量は、患者の呼吸状態に応じて、換気モードが定められ、例えば、図5に示すように吸気ガス流量は定められたサイクルで変動を繰り返している。このため、水素混合ガスを患者に供給しようとする場合、吸気ガスと水素とを合流点で単純に合流させて混合するだけでは、混合ガス中の医療用ガス濃度にムラが生じるおそれがあり、高精度な制御が必要となっていた。
【0005】
特に、医療用ガスとして水素を用いる場合では、酸素を含む吸気ガスと水素とを混合させることから、爆発性ガスが発生するおそれがあり、水素濃度を爆発下限界の4vol%を超えない濃度で安定させる必要があった。
【0006】
そこで本発明は、流量が変動する人工呼吸器からの吸気ガスに対して、高精度な制御をすることなく一定流量で医療用ガスを供給しても、適切な医療用ガスを提供できるとともに、医療用ガス濃度を安定させることができる医療用ガス供給装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の医療用ガス供給装置は、人工呼吸器からの吸気ガスに医療用ガスを供給する医療用ガス供給装置であって、人工呼吸器側の吸気ラインに接続する吸気ガス経路と、医療用ガス供給手段に接続する医療用ガス導入経路と、前記吸気ガス経路と前記医療用ガス導入経路とが合流する合流点と、前記合流点の下流側に設けられ、ガス入口とガス出口を備え、前記吸気ガス経路の流路径よりも大径であって、吸気ガスと医療用ガスを混合して混合ガスとするタンク状構造部と、前記ガス出口と患者側の吸気ラインとを接続する混合ガス供給路と、前記吸気ガス経路に設けられる流量計と、前記医療用ガス導入経路に設けられる流量制御手段と、前記流量計と前記流量制御手段に接続される制御部とを備え、前記制御部は、前記流量計で計測された所定時間の流量に基づいて、前記混合ガスが所定の濃度になるように前記流量制御手段を制御することを特徴としている。
【0008】
また、流量計が、ガスが流れる方向も検知できると好ましい。
【0009】
また、吸気ガス経路に逆止弁を設けると好ましい。
【0010】
さらに、前記医療用ガスの分子量が前記吸気ガスの分子量よりも小さく、前記タンク状構造部の上面に前記ガス入口を、下面に前記ガス出口を設けることを特徴とし、そのような場合の医療用ガスが水素であると好適である。
【0011】
さらに、医療用ガスの分子量が前記吸気ガスの分子量よりも大きく、前記タンク状構造部の下面に前記ガス入口を、上面に前記ガス出口を設けることを特徴とし、そのような場合の医療用ガスが二酸化炭素であると好適である。
【0012】
さらに、タンク状構造部の前記ガス入口側にガス拡散部を設けると好ましい。
【0013】
また、ガス拡散部は、前記タンク状構造部のガス入口に隙間を介して面する邪魔板、または、パンチングメタルであると好適であり、さらに、ガス拡散部は、前記ガス出口から前記ガス入口側に延出し、先端面が前記ガス入口に隙間を介して面する円筒部と、前記円筒部の側面に設けられた開口部とを備えていると好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の医療用ガス供給装置によれば、吸気ガス経路に流量計を、医療用ガス導入経路に流量制御手段をそれぞれ設けるとともに、流量計で計測された所定時間の吸気ガス流量に基づいて、混合ガス中の水素ガス濃度が所定の濃度になるように流量制御手段を制御する制御部を設けたことにより、変動を繰り返す吸気ガスに対して、医療用ガスを適切な流量で供給することができる。
【0015】
詳しくは、制御部によって流量計で計測された所定時間の吸気ガス流量に基づいて、一定時間の吸気ガス流量の平均値を算出するとともに、該平均値から供給する医療用ガス流量を算出し、流量制御手段により、医療用ガス流量を制御して、前記算出された医療用ガス流量を吸気ガスに供給する。これにより、高精度な制御を行うことなく、一定流量で医療用ガスを供給しても、適切な医療用ガスを吸気ガスに供給することができる。
【0016】
また、吸気ガス経路と医療用ガス導入経路とが合流する合流点では、医療用ガス濃度にムラがある状態の混合ガスを、吸気ガス経路の流路径よりも大径のタンク状構造部に導入することで、タンク状構造部内に発生するガス流れによって、医療用ガス濃度のムラを解消することができる。これにより、医療用ガスの効能を最大限に発揮できる混合ガスを患者に送気できるとともに、酸素濃度も安定することから、患者が低酸素濃度の混合ガスを吸入するおそれがない。
【0017】
さらに、流量計が、ガスの流れる方向を検知可能であったり、或いは、吸気ガス経路に逆止弁を設けることにより、医療用ガス供給装置の入口側の接続部(人工呼吸器の吸気ラインに接続される接続部)と、出口側の接続部(患者の吸気ラインに接続される接続部)とを、誤って逆に接続することがあったとしても、流量計により誤りを検知してアラートを出力させたり、逆止弁により患者の吸気ラインへの混合ガスの流れを遮断したりすることができる。
【0018】
また、医療用ガスの分子量が吸気ガスの分子量よりも小さい、例えば、水素であった場合に、タンク状構造部の上面にガス入口を、下面にガス出口をそれぞれ設けることにより、上面のガス入口から下面のガス出口に向かう下方向のガス流に対して、分子量の小さい医療用ガスが上昇し、上方向のガス流が発生することから、混合ガスが良好に撹拌され医療用ガスの濃度を安定させることができる。特に、医療用ガスが水素ガスの場合では、がタンク構造部の上方に水素ガスが溜まることを防止でき、爆発性ガスが発生するおそれがない。
【0019】
また、前記医療用ガスの分子量が前記吸気ガスの分子量よりも大きい、例えば、二酸化炭素であった場合に、タンク状構造部の下面にガス入口を、上面にガス出口をそれぞれ設けることにより、下面のガス入口から上面のガス出口に向かう上方向のガス流に対して、分子量の大きい医療用ガスが下降し、下方向のガス流が発生することから、混合ガスが良好に撹拌され医療用ガス濃度を安定させることができる。
【0020】
さらに、タンク状構造部のガス入口側にガス拡散部を設けたことにより、タンク状構造部に導入された混合ガスが良好に拡散され、医療用ガス濃度を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1形態例を示す医療用ガス供給装置の構造を示す模式図である。
図2】本発明の第1形態例を示すタンク状構造物を示す断面斜視図である。
図3】同じくタンク状構造物の断面図である。
図4図3のIV-IV断面図である。
図5】人工呼吸器からの吸気ガス流量を測定したグラフである。
図6】水素流量と濃度を測定したグラフである。
図7】本発明の第2形態例を示す医療用ガス供給装置の構造を示す模式図である。
図8】本発明の第2形態例を示すタンク状構造物を示す断面斜視図である。
図9】同じくタンク状構造物の断面図である。
図10図9のX-X断面図である。
図11】タンク状構造物の第3形態例を示す断面斜視図である。
図12】同じくタンク状構造物の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1乃至図6は、本発明の医療用ガス供給装置の第1形態例を示す図である。医療用ガス供給装置1は、人工呼吸器2からの吸気ガス、例えば、空気、酸素、空気と酸素の混合ガスに、水素ガス(本発明の医療用ガス)を供給して混合させる装置であり、医療用ガス供給装置1から導出された混合ガスが患者Pの治療に使用される。
【0023】
この医療用ガス供給装置1は、図1に示すように、人工呼吸器2側の吸気ライン2aに接続する吸気ガス経路L1と、水素ガス供給手段3(本発明の医療用ガス供給手段)に接続する水素ガス導入経路L2(本発明の医療用ガス導入経路)と、吸気ガス経路L1と水素ガス導入経路L2とが合流する合流点4と、合流点4の下流側に設けられるタンク5(本発明のタンク状構造部)と、タンク5に設けられたガス入口6aと前記合流点4とを接続する混合ガス経路L3と、タンク5に設けられたガス出口6bと患者側の吸気ライン2bとを接続する混合ガス供給路L4とを備えている。また、吸気ガス経路L1には吸気ガスの流量を計測する流量計7が、水素ガス導入経路L2には水素ガスの流量を制御する流量制御手段8がそれぞれ設けられ、流量計7と流量制御手段8には制御部9が接続されている。
【0024】
制御部9は、流量計7で計測された所定時間の吸気ガス流量に基づいて、混合ガス中の水素ガス濃度が所定の濃度になるように流量制御手段8を制御するもので、詳しくは、制御部9によって流量計7で計測された所定時間の吸気ガス流量に基づいて、一定時間の吸気ガス流量の平均値を算出するとともに、該平均値から供給する水素ガス流量を算出し、量制御手段8により水素ガス流量を制御して、前記算出された水素ガス流量を吸気ガスに供給する。これにより、水素ガスを適切な流量で吸気ガスに供給することができる。
【0025】
また、流量計7は、ガスが流れる方向も検知できるもので、ガスの流れが逆となるマイナス流量が発生した際にはアラートが出力される。
【0026】
タンク5は、図2乃至図4に示されるように、吸気ガス経路L1の流路径よりも大径の縦長円筒状に形成されたケーシング5aの上面と下面とを天井板5bと底板5cとでそれぞれ閉塞して形成され、天井板5bの中央部にガス入口6aが、底板5cの中央部に前記ガス出口6bがそれぞれ設けられている。
【0027】
また、天井板5bのタンク内側には、ガス入口6aに隙間を介して面する邪魔板5d(ガス拡散部)が配置されている。邪魔板5dは、ガス入口6aよりも大径の円形状に形成され、邪魔板5dの外周部と天井板5bのタンク内側面とを、2本の支持部材5e,5eで連結している。
【0028】
上述のように形成された医療用ガス供給装置1を使用する際は、まず、第1接続部10を介して、人工呼吸器2の吸気ライン2aと吸気ガス経路L1とを接続するとともに、第2接続部11を介して患者P側の吸気ライン2bと混合ガス供給経路L3とを接続する。
【0029】
患者Pへの人工呼吸を開始すると、人工呼吸器2から吸気ガス経路L1に吸気ガスが、水素ガス供給手段3から水素ガス導入経路L2に水素ガスがそれぞれ導入される。吸気ガス経路3Lに導入された吸気ガスは、図5に示されるように、患者Pの呼吸状態に応じて換気モードが定められており、吸気ガス流量は定められたサイクルで変動を繰り返す状態で合流点4に導入される。
【0030】
一方、水素ガス導入経路L2に導入された水素ガスは、制御部9によって吸気ガス流量に応じた最適な流量が算出され、流量制御手段7によって最適な流量で合流点4に導入される。例えば、図5に示されるような吸気ガス流量では、制御部9で、吸気ガスの平均流量は20.5L/minと算出され、このような吸気ガス流量に対して、図6に示す水素供給・濃度グラフのような水素濃度2vol%となる混合ガスを得ようとした際には、20L/min×0.02=410mL/minの水素ガスを供給すればよいと判断され、流量制御手段7によって、水素ガス流量が最適な流量に制御される。
【0031】
合流点4で合流し、混合ガス経路L3に導入された吸気ガスと水素ガスとの混合ガスは、水素ガス濃度にムラがある状態のまま、ガス入口6aからタンク5に導入される。
【0032】
ガス入口6aからタンク5に導入された混合ガスは、邪魔板5dに当接し、邪魔板5dとガス入口6aとの間に設けられた隙間を抜けて、ケーシング5aの周壁方向に拡散しながら下方に流れる。この下方向のガス流に対して、吸気ガスよりも分子量の小さい水素ガスが上昇し、上方向のガス流が発生することから、混合ガスが良好に撹拌され水素濃度をムラなく安定させることができる。さらに、水素ガスがタンク5の上方に溜まることを防止でき、爆発性ガスが発生するおそれがない。
【0033】
このような医療用ガス供給装置1によれば、流量が変動する人工呼吸器2からの吸気ガスに対して、高精度な制御をすることなく一定流量で水素ガスを供給しても、適切な流量の水素ガスを提供できるとともに、水素ガス濃度を安定させることができる。これにより、水素ガスの効能を最大限に発揮できる混合ガスを患者に送気できるとともに、酸素濃度も安定することから、患者が低酸素濃度の混合ガスを吸入するおそれがない。
【0034】
また、医療用ガス供給装置1を接続する際に、誤って、第1接続部10に患者P側の吸気ライン2bを、第2接続部11に人工呼吸器2の吸気ライン2aを接続してしまった際には、ガスの流れが逆となるマイナス流量が発生することから、流量計7からアラートが出力され、医療用ガス供給装置1を誤作動させることがない。
【0035】
図7乃至図10は、本発明の第2形態例を示すもので、第1形態例と同様の構成要素を示すものには、同一の符号をそれぞれ付して、その詳細な説明は省略する。
【0036】
本形態例の医療用ガス供給装置20では、吸気ガス経路L1に逆止弁21を設けている。これにより、医療用ガス供給装置20を接続する際に、誤って、第1接続部10に患者P側の吸気ライン2bを、第2接続部11に人工呼吸器2の吸気ライン2aをそれぞれ接続してしまった際に、逆止弁21によりガスの流れが遮断され、人工呼吸器2からアラートが出力される。
【0037】
また、本形態例のタンク22は、天井板5bのタンク内側に、ガス入口6aに隙間を介して面する上下2枚のパンチングメタル22a,22a(ガス拡散部)が配置されている。パンチングメタル22a,22aは、ガス入口6aよりも大径の円形状に形成され、隙間を介して上下に配置される。また、各パンチングメタル22a,22aの外周部と天井板5bのタンク内側面とを、2本の支持部材22b,22bで連結している。
【0038】
これにより、ガス入口6aからタンク22に導入された混合ガスは、パンチングメタル22a,22aに当接し、上部側のパンチングメタル22aとガス入口6aとの間に設けられた隙間、及び、上下のパンチングメタル22a,22aの間に設けられた隙間を抜けて、ケーシング5aの周壁方向に拡散しながら下方に流れ、或いは、パンチングメタル22a,22aに形成された複数の通孔を通って下方に流れる。また、この下方向のガス流に対して、分子量の小さい水素ガスが上昇し、上方向のガス流が発生することから、混合ガスが良好に撹拌され水素濃度をムラなく安定させることができる。さらに、水素ガスがタンク22の上方に溜まることを防止できる。
【0039】
図11及び図12は、タンクの第3形態例を示すもので、第1形態例と同様の構成要素を示すものには、同一の符号をそれぞれ付して、その詳細な説明は省略する。
【0040】
本形態例のタンク31は、ガス出口6bからガス入口6a側に延出する円筒部32aと、該円筒部32aの側面に設けられた複数の開口部32bとを有するガス拡散部32を備えている。円筒部32aの内径は、ガス出口6bに接続される混合ガス供給経路L4と略同径に形成され、混合ガス供給経路L4に連通するように底板5cに取り付けられ、先端面32cは、ガス入口6aに隙間を介して面している。
【0041】
これにより、ガス入口6aからタンク31に導入された混合ガスは、円筒部32aの先端面32cに当接し、先端面32cとガス入口6aとの間に設けられた隙間を抜けて、ケーシング5aの周壁方向に拡散しながら下方に流れる。また、この下方向のガス流に対して、分子量の小さい水素ガスが上昇し、上方向のガス流が発生することから、混合ガスが良好に撹拌され水素濃度をムラなく安定させることができる。さらに、混合ガスは、複数の開口部32bを通って円筒部32aの内側に導入され、混合ガス供給経路L4に導入される。
【0042】
なお、上述の各形態例では、医療用ガスとして、吸気ガスよりも分子量の小さい水素ガスを用いているが、本発明の医療用ガス供給装置はこれに限るものではなく、医療用ガスとして、吸気ガスよりも分子量よりも大きい、例えば、二酸化炭素を用いるものにも適用できる。
【0043】
この場合では、タンクの下面にガス入口を、上面にガス出口を設け、ガス入口からタンクに導入された二酸化炭素を含む混合ガスは、タンクの上面に設けられたガス出口に向けて上方に流れる。この上方向のガス流に対して、吸気ガスよりも分子量の大きい二酸化炭素が下降し、下方向のガス流れが発生することから、混合ガスが良好に撹拌され二酸化炭素濃度をムラなく安定させることができる。
【0044】
このように、本発明の医療用ガス供給装置は、用いる医療用ガスの分子量に応じて、タンクに設けるガス入口とガス出口の位置を変更することにより、どのような医療用ガスにも適用することができる。
【0045】
なお、第1形態例のように、吸気ガス経路L1に逆止弁が設けられていない場合であっても、第2形態例及び第3形態例で示した構造のタンク5を用いてもよい。また、第2形態例のように、吸気ガス経路L1に逆止弁が設けられている場合であっても、第1形態例及び第3形態例で示した構造のタンク5を用いてもよい。さらに、タンクに設けるガス拡散部の形状は上述のいずれの形態例のものに限らず任意である。さらに、タンクにガス拡散部を設けていなくても差し支えない。
【符号の説明】
【0046】
1…医療用ガス供給装置、2…人工呼吸器、2a,2b…吸気ライン、3…水素ガス供給手段、4…合流点、5…タンク、5a…ケーシング、5b…天井板、5c…底板、5d…邪魔板、6a…ガス入口、6b…ガス出口、7…流量計、8…流量制御手段、9…制御部、10…第1接続部、11…第2接続部、20…医療用ガス供給装置、21…逆止弁、22…タンク、22a…パンチングメタル、22b…支持部材、31…タンク、32ガス拡散部…、32a…円筒部、32b…開口部、32c…先端面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12