(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075037
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】皮膚に電気刺激を与えるベクトルポテンシャルコイル装置
(51)【国際特許分類】
A61N 1/40 20060101AFI20240527BHJP
A61N 1/06 20060101ALI20240527BHJP
A61N 1/04 20060101ALI20240527BHJP
A61N 1/32 20060101ALI20240527BHJP
H01F 5/00 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
A61N1/40
A61N1/06
A61N1/04
A61N1/32
H01F5/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186155
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 健治
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】大坊 真洋
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB34
4C053BB36
4C053DD03
4C053DD08
4C053JJ02
4C053JJ04
4C053LL13
(57)【要約】
【課題】 生体の被覆への電気刺激のための電極に起因する不具合の発生を抑制しつつ、電気刺激によって皮膚病または傷の治療または美容施術の促進を行うベクトルポテンシャルコイル装置を得る。
【解決手段】 支持部10は、生体の皮膚を収容する収容空間101を有する。ベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルは、支持部10の収容空間101および外側の少なくとも一方に配置されている。電源部2は、そのベクトルポテンシャルコイルに交流電流を導通させ、収容空間101において交流電流に対応するベクトルポテンシャルを発生させ、ベクトルポテンシャルに基づき生じる電界を生体の皮膚に印加して電気刺激を皮膚に与える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の皮膚を収容する収容空間を有する支持部と、
前記支持部の前記収容空間および外側の少なくとも一方に配置されたベクトルポテンシャルコイルと、
前記ベクトルポテンシャルコイルに交流電流を導通させ、前記収容空間において前記交流電流に対応するベクトルポテンシャルを発生させ、前記ベクトルポテンシャルに基づき生じる電界を前記生体の皮膚に印加して電気刺激を前記皮膚に与える電源部と、
を備えることを特徴とするベクトルポテンシャルコイル装置。
【請求項2】
前記ベクトルポテンシャルコイルは、らせん状のコイル軸に沿って周回するソレノイドコイルであることを特徴とする請求項1記載のベクトルポテンシャルコイル装置。
【請求項3】
前記ベクトルポテンシャルコイルは、湾曲したコイル軸に沿って延びるソレノイドコイルであり、周方向において開口部を備えることを特徴とする請求項1記載のベクトルポテンシャルコイル装置。
【請求項4】
前記ソレノイドコイル内で前記コイル軸に沿って延びる強磁性体部材をさらに備え、
前記強磁性体部材は、導電性を有し、
前記ベクトルポテンシャルコイルの一端と前記強磁性体部材の第1接続点とが互いに電気的に接続されており、
前記電源部は、前記ベクトルポテンシャルコイルの他端および前記強磁性体部材の第2接続点に電圧を印加して前記ベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させること、
を特徴とする請求項2または請求項3記載のベクトルポテンシャルコイル装置。
【請求項5】
前記ベクトルポテンシャルコイルは、同一の前記コイル軸に沿ってそれぞれ延びる内側ソレノイドコイルおよび外側ソレノイドコイルを備え、
前記内側ソレノイドコイルの一端と前記外側ソレノイドコイルの一端が互いに電気的に接続されており、
前記電源部は、前記内側ソレノイドコイルの他端および前記外側ソレノイドコイルの他端に電圧を印加して前記ベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させること、
を特徴とする請求項2または請求項3記載のベクトルポテンシャルコイル装置。
【請求項6】
前記ベクトルポテンシャルコイルを含む複数のベクトルポテンシャルコイルを備え、
前記複数のベクトルポテンシャルコイルは、前記支持部の軸方向または周方向に沿って配列されており、
前記電源部は、前記複数のベクトルポテンシャルコイルに交流電流を導通させ、前記収容空間において前記交流電流に対応するベクトルポテンシャルを発生させ、前記ベクトルポテンシャルに基づき生じる電界を前記生体の皮膚に印加して電気刺激を前記皮膚に与えること、
を特徴とする請求項1記載のベクトルポテンシャルコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に電気刺激を与えるベクトルポテンシャルコイル装置及びその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、皮膚科学及び美容科学への研究が大きく進歩している。従来の薬物療法、例えば外用塗布や内服薬の服用などの手法で十分効果が挙げられないケースも増えている。そのため、レーザ、フォトフェイシャルなどの光療法、または電気・磁気刺激を与える方法も様々な提案もあった。
【0003】
例えば、美容施術のため、使用者の肌に接触し電気的な刺激を付与する肌用電極と、電気的な刺激を発生する刺激発生部と、肌用電極と刺激発生部とを導通し、刺激発生部で発生した電気的な刺激を肌用電極に伝送する導電部を含む美容機器が提案されている。(例えば特許文献1参照)また、顔面皮膚等に接触する2つのローラーの接触面を、それぞれ所定の長さを有する形状にし、所定の間隔をあけて略平行に配置することにより、2つの接触面で挟まれた領域が、相対的に広い面積の施術領域とする美容機械も提案されている。(例えば特許文献2参照)
【0004】
他方、ソレノイドコイルを周回させたベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させてベクトルポテンシャルを発生するベクトルポテンシャル発生装置が開発されている(例えば特許文献3参照)。また、時間変化するベクトルポテンシャルによって電圧が誘起されることを利用してベクトルポテンシャルを検出するベクトルポテンシャル検出装置も開発されている(例えば特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2022/124140
【特許文献2】特開2007-236699
【特許文献3】国際公開WO2015/099147
【特許文献4】特許第6950925号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の電気・磁気刺激方法においては、ローラー式の微弱電流発生装置を皮膚に沿って、手動で、もしくは、機械的に動かしながら電流を付加する必要がある。そのため、治療或いは施術時において、皮膚への侵襲が懸念されるとともに、人力または機械といった動力を必要とするという点が不便である。そのため、微弱電流の効果を備えつつも、皮膚等へのダメージをなるべく最小限に抑え、尚且つ省力化できる治療装置が期待される。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、皮膚に適度な電気・磁気刺激与えると共に、皮膚との接触に起因する不具合の発生を抑制しつつ、電界刺激によって皮膚病や皮膚の傷の治療や美容施術を行う装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るベクトルポテンシャルコイル装置は、生体の皮膚を収容する収容空間を有する支持部と、支持部の収容空間および外側の少なくとも一方に配置されたベクトルポテンシャルコイルと、ベクトルポテンシャルコイルに交流電流を導通させ、収容空間において交流電流に対応するベクトルポテンシャルを発生させ、ベクトルポテンシャルに基づき生じる電界を生体の皮膚に印加して電気刺激を皮膚に与える電源部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば生体の皮膚から数センチから十数センチ離れたところにベクトルポテンシャルコイル装置を置き、そこから電界及び/または電流を付加することができるため、肌への侵襲度を下げ、かつ、省力化が可能である。そのため、生体の皮膚の電気刺激のための電極に起因する不具合の発生を抑制しつつ、電気刺激によって皮膚病や傷の治療や美容施術を行う、省力なベクトルポテンシャルコイル装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係るベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1における支持部10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施の形態2におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態3におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例(一部)を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態4における支持部10およびベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施の形態4におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す側面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態5におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
【
図8】
図8は、実施の形態6におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
【
図9】
図9は、実施の形態7におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
【
図10】
図10は、実施の形態8におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
【
図11】
図11は、実施の形態9におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
【
図12】
図12は、実施の形態10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す側面図である。
【
図13】
図13は、実施の形態10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施の形態11に係るベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルの一例を示す正面図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施の形態11に係るベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルの一例を示す上面図である。
【
図16】
図16は、本発明の実施の形態11に係るベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルの一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
実施の形態1.
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る生体の皮膚に電気刺激を与えるためのベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すベクトルポテンシャルコイル装置1は、支持部10、ベクトルポテンシャルコイル11、電源部2、および制御部3を備える。
【0015】
支持部10は、生体の皮膚の一部を収容する収容空間を有する部材であって、生体の皮膚に面する照射面を有する。実施の形態1では、支持部10は、パイプ状の部材である。ただし、支持部10は、板状の部材、円弧状の部材、または半球状の部材などでもよい。また、上述の生体とは、ヒトでもよいし、動物でもよい。
【0016】
支持部10には、一部に光透過性のある部材(例えば透明な樹脂製の部材)が使用されても良い。そうすれば、ベクトルポテンシャルコイル装置1には更なる光治療素子を搭載することができ、電気及び光刺激を同時に皮膚に与えることもできる。
【0017】
図2は、実施の形態1における支持部10およびベクトルポテンシャルコイル部1の一例を示す図である。
【0018】
例えば
図2に示すように、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、支持部10の収容空間101および外側の少なくとも一方(ここでは外側)に配置されたベクトルポテンシャルコイル(以下、VPコイルともいう)11を備える。実施の形態1では、例えば
図2に示すように、VPコイル11は、らせん状のコイル軸に沿って周回するソレノイドコイルである。ここでは、支持部10は、円筒状の部材であって、VPコイル11は、円状に周回するらせん状のコイル軸を有する。
【0019】
また、電源部2は、商用電源や電池(1次電池または2次電池)などの電力に基づいて交流電流を生成し、その交流電流をVPコイル11に導通させ、上述の収容空間101において交流電流に対応して時間変化するベクトルポテンシャルを発生させ、そのベクトルポテンシャルに基づき生じる電界を上述の皮膚に印加して電気刺激を上述の生体の皮膚に与える。具体的には、上述の生体の皮膚が導電性良い場合には、上述の皮膚には交流の電界が印加されるとともに、その電界による電圧に対応する交流電流が上述の皮膚を良く導通する。これにより、電界による電気刺激と電流による電気刺激の両方が上述の皮膚に与えられる。一方、上述の皮膚が導電性低い場合には、上述の生体の皮膚には交流の電界が印加されるが、上述の交流電流は導通されても低く、上述の生体の皮膚には主に電界刺激が印加される。そのため、必要に応じて皮膚の表面に導電性良い薬液を塗布して導電性を改善して電界による電気刺激と電流による電気刺激の両方を同時に得られる。
【0020】
振幅Imのsin波である交流電流をVPコイル11に導通させた場合、収容空間101には、次式に示す交流電圧V2が、交流電流によって発生するベクトルポテンシャルの時間変化に応じて生じ、その交流電圧に応じた交流電流が収容空間101内の生体の皮膚を導通する。
【0021】
【0022】
ここで、μ0は真空透磁率であり、nはVPコイル11におけるソレノイドの単位長あたりの巻数であり、N1は、らせん状のVPコイル11の単位長あたりの巻数であり、SはVPコイル11におけるソレノイドの断面積であり、ωは交流電流の角周波数であり、aは、らせん状のVPコイル11の断面半径であり、Lは、VPコイル11の長さ(両端間の距離)であり、tは時間である。
【0023】
また、制御部3は、制御プログラムを実行するコンピュータなどであって、電源部2を制御して、所定の周波数の交流電流を所定のタイミング(常時、所定時間間隔など)でVPコイル11に導通させる。例えば、制御部3は、電源部2に、高周波で短時間、パルス状の交流電流を導通させるようにしてもよい。
【0024】
次に、上記ベクトルポテンシャルコイル装置の動作について説明する。
【0025】
制御部3は、図示せぬセンサ及び計時装置から信号を取り入れながら、電源部2を制御して、電源部2に、交流電流をVPコイル11へ供給させる。
【0026】
その際、電源部2は、所定のタイミングで、所定の波形(振幅および周波数)で、交流電流を生成し、VPコイル11へ供給する。
【0027】
VPコイル11を導通する電流によって磁場がコイル軸に沿って発生し、その電流に平行にベクトルポテンシャルが発生し、VPコイル11の湾曲内側方向(つまり、収容空間101)におけるベクトルポテンシャルの強度が、VPコイル11の湾曲外側方向におけるベクトルポテンシャルより大きくなる。
【0028】
そして、収容空間101において、ベクトルポテンシャルが交番するため、その時間的変化に応じた交流電圧が上述のように発生し、その交流電圧に応じた交流電流が収容空間101内の生体の皮膚に導通し、収容空間101内の皮膚に電気刺激が与えられる。これにより、収容空間101内の皮膚病の治療或いは美容施術が促進される。
【0029】
所定時間経過後、制御部3は、電源部2に対して交流電流をとめる信号を送信してVPコイル11への電流を止める。
【0030】
以上のように、上記実施の形態によれば、支持部10は、生体の皮膚を収容する収容空間101を有する。VPコイル11は、支持部10の収容空間101および外側の少なくとも一方に配置されている。電源部2は、VPコイル11に交流電流を導通させ、収容空間101において交流電流に対応するベクトルポテンシャルを発生させ、ベクトルポテンシャルに基づき生じる電界を生体の皮膚に印加して電気刺激を皮膚に与える。
【0031】
これにより、生体の皮膚に電極を接触させることなく皮膚に電気刺激が与えられる。したがって、生体の皮膚への電気刺激のための電極に起因する不具合の発生を抑制しつつ、電気刺激によって皮膚病の治療或いは美容施術が促進される。
【0032】
さらに、塗布用治療薬や美容液などの液体を用いる場合、これらの薬や液を皮膚の表面に塗布してから、本発明のベクトルポテンシャルコイル装置1を装着すると、薬または美容液の成分がイオン化され、肌の内部までより効率よく浸透することもできる。
【0033】
実施の形態2.
【0034】
図3は、実施の形態2におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
【0035】
実施の形態2では、例えば
図3に示すように、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、VPコイル11の他、VPコイル11を構成するソレノイドコイル内でコイル軸に沿って延びる強磁性体部材11Aをさらに備える。
【0036】
この強磁性体部材11Aは、導電性を有するパーマロイなどの材料で形成されている。そして、VPコイル11の一端と強磁性体部材11Aの一端11A1(第1接続点)とが互いに電気的に接続されており、電源部2は、VPコイル11の他端および強磁性体部材11Aの他端11A2(第2接続点)に電圧を印加してVPコイル11に交流電流を導通させる。
【0037】
このように、強磁性体部材11Aが上述の交流電流の経路となり、VPコイル11のいずれか一方の端部側に2つの端子が配置されるため、電源部2からVPコイル11および強磁性体部材11Aまでの配線の敷設が簡単になるとともに、その配線を流れる経路が囲む面積が比較的狭くなり、この配線を流れる電流に起因して発生する不要な磁場が抑制される。
【0038】
なお、実施の形態2に係るベクトルポテンシャルコイル装置1のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0039】
実施の形態3.
【0040】
図4は、実施の形態3におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例(一部)を示す図である。
【0041】
実施の形態3では、例えば
図4に示すように、VPコイル11は、同一のコイル軸に沿ってそれぞれ延びコイル径の互いに異なる内側ソレノイドコイル11-1および外側ソレノイドコイル11-2を備える。そして、内側ソレノイドコイル11-1の一端と外側ソレノイドコイル11-2の一端が互いに電気的に接続されている。内側ソレノイドコイル11-1および外側ソレノイドコイル11-2は、それぞれ1本のVPコイルとして機能するものである。したがって、実施の形態4のVPコイル11は、電気的には、2本のVPコイルを同相で直列接続した構成となっている。そして、電源部2は、内側ソレノイドコイル11-1の他端および外側ソレノイドコイル11-2の他端に電圧を印加してベクトルポテンシャルコイルに交流電流を導通させる。これにより、内側ソレノイドコイル11-1によるベクトルポテンシャルと外側ソレノイドコイル11-2によるベクトルポテンシャルとが同一方向に発生する。
【0042】
なお、実施の形態3に係るベクトルポテンシャルコイル装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0043】
実施の形態4.
【0044】
図5は、実施の形態4におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
図6は、実施の形態4におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す側面図である。
【0045】
実施の形態4では、例えば
図5及び
図6に示すように、VPコイル12は、支持部10の収容空間101および外側に配置されている。具体的には、VPコイル12は、収容空間101支持部10の外側に配置されている。
【0046】
また、実施の形態4では、VPコイル12は、湾曲したコイル軸に沿って延びるソレノイドコイルであり、周方向において開口部を備える。つまり、VPコイル12のコイル軸は1周以上周回されていない。
【0047】
例えば、VPコイル12の上述のコイル軸は円弧状であり、そのコイル軸(つまり、円弧)を含む円の中心(ここでは、収容空間101の中心軸)から見たVPコイル12(のコイル軸)の一端から他端までの角度(中心角)は、360度未満とされる。これにより、上述の開口部が形成される。例えば、その中心角は、180度でもよく、また、180度未満でもよい。ただし、中心角が大きいほど、湾曲内側方向のベクトルポテンシャルの強度が大きくなるため、中心角が大きいほうが好ましい。この中心角は、0度より大きく360度未満のいずれかの角度とされ、さらに、(a)0度より大きく180度以下のいずれかの角度とされてもよく、(b)0度より大きく90度以下のいずれかの角度とされてもよく、(c)0度より大きく45度以下のいずれかの角度とされてもよく、あるいは、(d)0.5度以上であり360度未満のいずれかの角度とされてもよく、さらに、(e)0.5度以上であり180度以下のいずれかの角度とされてもよく、(f)0.5度以上であり90度以下のいずれかの角度とされてもよく、(e)0.5度以上であり45度以下のいずれかの角度とされてもよく、(f)0.5度以上であり25度以下のいずれかの角度とされてもよく、あるいは、(g)2度以上であり360度未満のいずれかの角度とされてもよく、さらに、(h)2度以上であり180度以下のいずれかの角度とされてもよく、(i)2度以上であり90度以下のいずれかの角度とされてもよく、(j)2度以上であり45度以下のいずれかの角度とされてもよく、(k)2度以上であり25度以下のいずれかの角度とされてもよく、あるいは、(l)5度以上であり360度未満のいずれかの角度とされてもよく、さらに、(m)5度以上であり180度以下のいずれかの角度とされてもよく、(n)5度以上であり90度以下のいずれかの角度とされてもよく、(o)5度以上であり45度以下のいずれかの角度とされてもよく、(p)5度以上であり25度以下のいずれかの角度とされてもよい。
【0048】
VPコイル12を導通する電流によるベクトルポテンシャルは、電流から離れるにつれて弱くなるが、上述のようにVPコイル12(のコイル軸)は、湾曲しているため、湾曲の内側方向(円弧状の場合はその曲率中心)では、VPコイル12の各位置の電流で発生したベクトルポテンシャルが重なり合うので強度が大きくなる。
【0049】
また、実施の形態4に係るベクトルポテンシャルコイル装置は、互いに同一な複数のVPコイル12を備えている。そのVPコイル12は、パイプ状の支持部10の軸方向に沿って配列されている。
【0050】
電源部2は、複数のVPコイル12に交流電流を導通させ、収容空間101において交流電流に対応するベクトルポテンシャルを発生させ、ベクトルポテンシャルに基づき生じる電圧に対応する交流電流を、収容空間101内の液体に導通させて電気刺激を生体の皮膚に与える。VPコイル12は、電気的に、互いに直列または並列に接続されており、各時点で同一方向にベクトルポテンシャルを発生させる。
【0051】
なお、実施の形態4に係るベクトルポテンシャルコイル装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0052】
実施の形態5.
【0053】
図7は、実施の形態5におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
【0054】
実施の形態5では、例えば
図7に示すように、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、VPコイル12としてのソレノイドコイル内でコイル軸に沿って延びる強磁性体部材12Aをさらに備える。強磁性体部材12Aは、導電性を有するパーマロイなどの材料で形成されている。また、VPコイル12の一端と強磁性体部材12Aの一端12A1(第1接続点)とが互いに電気的に接続されている。電源部2は、VPコイル12の他端および強磁性体部材12Aの他端12A2(第2接続点)に電圧を印加してVPコイル12に交流電流を導通させる。
【0055】
強磁性体部材12Aの実効透磁率に応じてベクトルポテンシャルが増強されるため、湾曲の内側方向(円弧状の場合はその曲率中心)では、ベクトルポテンシャルの強度が大きくなる。
【0056】
VPコイル12のコイル軸は1周以上周回していないので、VPコイル12の両端の距離が大きくなるが、強磁性体部材12Aが電流の経路となり、VPコイル12のいずれか一方の端部側に2つの端子が配置されるため、電源部2からVPコイル12および強磁性体部材12Aまでの配線の敷設が簡単になるとともに、その配線を流れる経路が囲む面積が比較的狭くなり、この配線を流れる電流に起因して発生する不要な磁場が抑制される。
【0057】
なお、実施の形態5に係るベクトルポテンシャルコイル装置のその他の構成および動作については、実施の形態4と同様であるので、その説明を省略する。
【0058】
実施の形態6.
【0059】
図8は、実施の形態6におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
【0060】
実施の形態6では、例えば
図8に示すように、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、VPコイル12としてのソレノイドコイル内でコイル軸に沿って延びる強磁性体部材12Bをさらに備える。強磁性体部材12Bは、導電性を有し、VPコイル12の一端と強磁性体部材12Bの接続点12B1(VPコイル12の一端側の箇所、第1接続点)とが互いに電気的に接続されている。電源部2は、VPコイル12の他端および強磁性体部材12Bの接続点12B2(VPコイル12の他端側の箇所、第2接続点)に電圧を印加してVPコイル12に交流電流を導通させる。
【0061】
さらに、強磁性体部材12Bの接続点12B1,12B2から外側(湾曲外側方向)へ向かって湾曲しており、強磁性体部材12Bは、ギャップGを介して閉磁路を形成している。なお、ギャップGによってVPコイル12の湾曲の外側の部分を電流が導通しないようになっている。
【0062】
また、強磁性体部材12Bにおける内側部分と外側部分との移行部分は、磁束の漏洩や曲げ加工による透磁率減少の影響を小さくするために、急峻な屈曲箇所のないように、連続的に滑らかな曲線状とされることが好ましい。また、強磁性体部材11Bは複数部材を連結して形成されるようにしてもよい。
【0063】
なお、実施の形態6に係るベクトルポテンシャルコイル装置のその他の構成および動作については、実施の形態4と同様であるので、その説明を省略する。
【0064】
実施の形態7.
【0065】
図9は、実施の形態7におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
【0066】
実施の形態7では、例えば
図9に示すように、VPコイル12は、同一のコイル軸に沿ってそれぞれ延び互いに異なるコイル径の内側ソレノイドコイル12-1および外側ソレノイドコイル12-2を備える。内側ソレノイドコイル12-1の一端と外側ソレノイドコイル12-2の一端が互いに電気的に接続されている。電源部2は、内側ソレノイドコイル12-1の他端および外側ソレノイドコイル12-2の他端に電圧を印加してVPコイル12に交流電流を導通させる。
【0067】
内側ソレノイドコイル12-1および外側ソレノイドコイル12-2は、それぞれ1本のVPコイルとして機能するものである。したがって、実施の形態7のVPコイル12は、電気的には、2本のVPコイルを同相で直列接続した構成となっている。そして、電源部2は、内側ソレノイドコイル12-1の他端および外側ソレノイドコイル12-2の他端に電圧を印加してベクトルポテンシャルコイルに交流電流を導通させる。これにより、内側ソレノイドコイル12-1によるベクトルポテンシャルと外側ソレノイドコイル12-2によるベクトルポテンシャルとが同一方向に発生する。
【0068】
なお、実施の形態7に係るベクトルポテンシャルコイル装置のその他の構成および動作については、実施の形態4と同様であるので、その説明を省略する。
【0069】
実施の形態8.
【0070】
図10は、実施の形態8におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
【0071】
実施の形態8では、例えば
図10に示すように、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、VPコイル12としての内側ソレノイドコイル12-1および外側ソレノイドコイル12-2のコイル軸に沿って延びる強磁性体部材12Cをさらに備える。なお、強磁性体部材12Cは、内側ソレノイドコイル12-1および外側ソレノイドコイル12-2とは電気的に接続されていない。
【0072】
なお、実施の形態8に係るベクトルポテンシャルコイル装置のその他の構成および動作については、実施の形態7と同様であるので、その説明を省略する。
【0073】
実施の形態9.
【0074】
図11は、実施の形態9におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
【0075】
実施の形態9では、例えば
図11に示すように、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、VPコイル12としての内側ソレノイドコイル12-1および外側ソレノイドコイル12-2のコイル軸に沿って延びる強磁性体部材12Dを備える。
【0076】
さらに、強磁性体部材12Dは、VPコイル12の両端から外側へ向かって湾曲しつつ延びており、閉磁路を形成している。なお、強磁性体部材12Dは、内側ソレノイドコイル12-1および外側ソレノイドコイル12-2とは電気的に接続されていない。強磁性体部材12Dは、導電性を有していなくてもよく、ギャップは設けられていない。実施の形態9では、交流電流が内側ソレノイドコイル12-1および外側ソレノイドコイル12-2を導通し強磁性体部材12Dを導通しないため、強磁性体部材12Dは導電性やギャップを必要としない。
【0077】
なお、実施の形態9に係るベクトルポテンシャルコイル装置のその他の構成および動作については、実施の形態7と同様であるので、その説明を省略する。
【0078】
実施の形態10.
【0079】
図12は、実施の形態10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す側面図である。
図12は、実施の形態10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す上面図である。
【0080】
実施の形態10に係るベクトルポテンシャルコイル装置は、例えば
図12および
図13に示すように、互いに同一な複数のVPコイル13を備えている。実施の形態10では、各VPコイル13は、互いに同一な、直線状のコイル軸のソレノイドコイルである。それらのVPコイル13は、パイプ状の支持部10の周方向に沿って配列されている。
【0081】
電源部2は、複数のVPコイル13に交流電流を導通させ、収容空間101において交流電流に対応するベクトルポテンシャルを発生させ、ベクトルポテンシャルに基づき生じる電圧に対応する交流電流を、収容空間101内の液体に導通させて電気刺激を生体の皮膚に与える。VPコイル13は、電気的に、互いに直列または並列に接続されており、各時点で同一方向にベクトルポテンシャルを発生させる。
【0082】
収容空間101の中心から所定の中心角θの角度範囲内に、(ここでは均等な角度間隔で)複数のVPコイル13が配列されている。2つのVPコイル13の間の中間位置では2つのVPコイル13のベクトルポテンシャルが相殺されるため、例えば、この中心角θは180度未満のいずれかの角度とされる。
【0083】
なお、実施の形態10に係るベクトルポテンシャルコイル装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0084】
実施の形態11.
【0085】
図14は、本発明の実施の形態11に係るベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルの一例を示す正面図である。
図15は、本発明の実施の形態11に係るベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルの一例を示す上面図である。
図16は、本発明の実施の形態11に係るベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルの一例を示す側面図である。
【0086】
実施の形態11に係るベクトルポテンシャルコイル装置1は、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5を備える。例えば
図14~
図16に示すように、この複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5は、それぞれ、湾曲したコイル軸に沿って巻回されており、コイル軸の湾曲内側方向(つまり、コイル軸を含む平面)が互いに交差するように配列されている。例えば、
図16に示すように、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5のコイル軸を含む平面がY軸方向に対して平行になり、かつX軸方向に対する、それらの平面の傾斜角の角度間隔が略同一となるように、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5が配置される。また、ここでは、ベクトルポテンシャルコイル31-1についての傾斜角が90度となっている。
【0087】
なお、ここでは、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、5本のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5を備えているが、2~4本および6本以上のいずれかの本数Mの、同様のベクトルポテンシャル31-1~31-Mを備えていてもよい。
【0088】
例えば、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5のコイル軸が単一の部分球面(例えば半球面)に含まれるように、コイル軸の形状(曲率など)および配置が決定され、その部分球面を含む球面の中心(つまり、すべてのコイル軸の曲率中心)に、印加対象が配置される。なお、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5のコイル軸が単一の部分球面以外の曲面(部分的な非球面)に含まれるように、コイル軸の形状(曲率など)および配置を決定するようにしてもよい。
【0089】
なお、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5は、上述の実施の形態と同様にして交流電流に応じたベクトルポテンシャルをそれぞれ発生させ、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5によるベクトルポテンシャルが合成され、ベクトルポテンシャルVP(t)が得られる。ここでは、合成されたベクトルポテンシャルVP(t)の振幅が最大となるように(例えば互いに同相で)、電源部2が複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5に交流電流を導通させる。
【0090】
なお、実施の形態11に係るベクトルポテンシャル発生装置10のその他の構成および動作については他の実施の形態のいずれかと同様であるので、その説明を省略する。つまり、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5のコイル軸に沿って、上述の強磁性体部材のいずれかがそれぞれ配置されていてもよい。
【0091】
以上のように、上記実施の形態11に係るベクトルポテンシャル発生装置10によれば、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5の湾曲内側方向にベクトルポテンシャルを集中させて、高い強度のベクトルポテンシャルを印加対象に印加させることができる。
【0092】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0093】
例えば、上記実施の形態2,7~10では、VPコイル12が、径方向において、内側ソレノイドコイル12-1および外側ソレノイドコイル12-2の2層構造となっているが、層数が偶数であれば、4層以上の層数でもよい。その場合、すべての層のソレノイドコイル12-iが電気的に直列接続されるように、ソレノイドコイル12-iのいずれかの端部で次層のソレノイドコイル12-(i+1)に接続される。
【0094】
また、上記実施の形態3~11では、VPコイル11,12,13または31-1~31-5が生体の皮膚の一方のみに配置されているが、VPコイル11が生体外側の両方ないし多方に配置されていてもよい。また、VPコイル11,12,13または31-1~31-5の収容空間101内の電界強度が場所によって異なるため、必要に応じて生体の皮膚を収容空間内の異なる場所に置くこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、例えば、生体の皮膚病の治療或いは美容施術に適用可能である。特に、ニキビ、多汗症の治療、火傷や手術した皮膚の縫合部分の治療への使用が期待できる。
【符号の説明】
【0096】
1 ベクトルポテンシャルコイル装置
2 電源部
3 制御部
10 支持部
11,12,13 31-1~31~5 ベクトルポテンシャルコイル
11A,11B,12A,12B,12C,12D 強磁性体部材
101 収容空間