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特開2024-75127(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリレート樹脂、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材、及び半導体装置
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  • 特開-(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリレート樹脂、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材、及び半導体装置 図1
  • 特開-(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリレート樹脂、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材、及び半導体装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075127
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリレート樹脂、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材、及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/10 20060101AFI20240527BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20240527BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240527BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
C08F220/10
C08J5/24 CEY
H05K1/03 610H
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186336
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】迫 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンチャン
(72)【発明者】
【氏名】楊 立宸
【テーマコード(参考)】
4F072
4J100
4M109
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AD11
4F072AD42
4F072AE02
4F072AF14
4F072AF23
4F072AF24
4F072AG03
4F072AL01
4J100AB16Q
4J100AL66P
4J100BA65P
4J100BC43P
4J100BC44P
4J100CA04
4J100DA25
4J100DA55
4J100FA19
4J100JA46
4M109AA01
4M109CA21
4M109EA11
4M109EB07
4M109EB12
4M109EB13
4M109EC07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】硬化物における誘電率と誘電正接がともに低く、反応性難燃剤としても利用可能な(メタ)アクリレート化合物を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表されることを特徴とする(メタ)アクリレート化合物。

[一般式(1)中Rは下記一般式(2-1)又は(2-2)で表される構造部位である。Rは置換基を有していてもよい芳香族基又は脂肪族基である。Rは水素原子又はメチル基である。nは1以上の整数である。]

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする(メタ)アクリレート化合物。
【化1】
[一般式(1)中Rは下記一般式(2-1)又は(2-2)で表される構造部位である。Rは置換基を有していてもよい芳香族基又は脂肪族基である。Rは水素原子又はメチル基である。nは1以上の整数である。]
【化2】
[一般式(2-1)、(2-2)中*は一般式(1)中の酸素原子との結合手である。Rはそれぞれ独立して水素原子、脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子の何れかである。Xは単結合、二価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、カルボニル基、硫黄原子、スルホニル基のいずれかである。一般式(2-1)において、*で表される酸素原子との結合手は互いにオルソ位にあるか、或いは、当該結合手のオルソ位にあるRのうち少なくとも一つが脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子の何れかである。また、一般式(2-2)において、*で表される酸素原子との結合手はXとの結合手のオルソ位にあるか、或いは、当該結合手のオルソ位にあるRのうち少なくとも一つが脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子の何れかである。]
【請求項2】
前記一般式(1)中のRが前記一般式(2-2)で表される構造部位であり、Xが炭素原子数1~6の二価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、カルボニル基、硫黄原子、スルホニル基のいずれかである、請求項1記載の(メタ)アクリレート化合物。
【請求項3】
前記一般式(1)で表され、nの値が異なる複数の成分を含有する(メタ)アクリレート樹脂であって、nの値の平均値が1.0~5.0の範囲である(メタ)アクリレート樹脂。
【請求項4】
請求項1又は2記載の(メタ)アクリレート化合物或いは請求項3記載の(メタ)アクリレート樹脂を含有する硬化性組成物。
【請求項5】
請求項4に硬化性組成物の硬化物。
【請求項6】
補強基材、及び、前記補強基材に含浸した請求項4に記載の硬化性組成物を有するプリプレグ。
【請求項7】
請求項6に記載のプリプレグ、及び、銅箔を有する積層体である回路基板。
【請求項8】
請求項4に記載の硬化性組成物を含有するビルドアップフィルム。
【請求項9】
請求項4に記載の硬化性組成物を含有する半導体封止材。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体封止材の硬化物を含む半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定構造を有する(メタ)アクリレート化合物及び(メタ)アクリレート樹脂、これらを用いた硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信量の増加に伴い高周波数帯域での情報通信が盛んに行われるようになってきており、これに対応すべく、誘電率と誘電正接がともに低く、高周波数帯域での伝送損失を低減できる樹脂材料が求められている。同時に、回路基板の多層化や薄層化に対応できるよう、耐熱性や難燃性に優れることも重要な要求性能である。
【0003】
樹脂材料の難燃性を向上させる技術としては、ハロゲン原子含有化合物やリン原子含有化合物等の難燃剤を添加する方法が知られており、中でも、環境保護の観点からリン原子含有化合物等の非ハロゲン系難燃剤が好まれる傾向にある。また、よりブリードアウトし難い反応性基を有する難燃剤も多く開発されている(特許文献1参照)。しかしながら、従来既知の難燃剤は添加による誘電特性・耐熱性の低下が著しく、市場要求に応え得るものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-84697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明が解決しようとする課題は、硬化物における誘電率と誘電正接がともに低く、反応性難燃剤としても利用可能な(メタ)アクリレート化合物、これを含有する硬化性組成物、その硬化物、前記硬化性組成物を用いたプリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材、及び半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の分子構造を有するリン原子含有(メタ)アクリレート化合物は、その硬化物における誘電率と誘電正接がともに低く、反応性難燃剤としても有用なことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、(I)下記一般式(1)で表されることを特徴とする(メタ)アクリレート化合物に関する。
【0008】
【化1】
[一般式(1)中Rは下記一般式(2-1)又は(2-2)で表される構造部位である。Rは置換基を有していてもよい芳香族基又は脂肪族基である。Rは水素原子又はメチル基である。nは1以上の整数である。]
【0009】
【化2】
[一般式(2-1)、(2-2)中*は一般式(1)中の酸素原子との結合手である。Rはそれぞれ独立して水素原子、脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子の何れかである。Xは単結合、二価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、カルボニル基、硫黄原子、スルホニル基のいずれかである。一般式(2-1)において、*で表される酸素原子との結合手は互いにオルソ位にあるか、或いは、当該結合手のオルソ位にあるRのうち少なくとも一つが脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子の何れかである。また、一般式(2-2)において、*で表される酸素原子との結合手はXとの結合手のオルソ位にあるか、或いは、当該結合手のオルソ位にあるRのうち少なくとも一つが脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子の何れかである。]
【0010】
本発明は更に、(II)前記一般式(1)中のRが前記一般式(2-2)で表される構造部位であり、*で表される酸素原子との結合手がXとの結合手のパラ位に位置し、Xが炭素原子数1~6の二価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、カルボニル基、硫黄原子、スルホニル基のいずれかである、前記(I)記載の(メタ)アクリレート化合物に関する。
【0011】
本発明は更に、(III)前記一般式(1)で表され、nの値が異なる複数の成分を含有する(メタ)アクリレート樹脂であって、nの値の平均値が1.0~5.0の範囲である(メタ)アクリレート樹脂に関する。
【0012】
本発明は更に、(IV)前記(I)又は(II)記載の(メタ)アクリレート化合物、或いは前記(III)記載の(メタ)アクリレート樹脂を含有する硬化性組成物に関する。
【0013】
本発明は更に、(V)前記(IV)記載の硬化性組成物の硬化物に関する。
【0014】
本発明は更に、(VI)補強基材、及び、前記補強基材に含浸した前記(IV)に記載の硬化性組成物を有するプリプレグに関する。
【0015】
本発明は更に、(VII)前記(VI)記載のプリプレグ、及び銅箔を有する積層体である回路基板に関する。
【0016】
本発明は更に、(VIII)前記(IV)記載の硬化性組成物を含有するビルドアップフィルムに関する。
【0017】
本発明は更に、(IX)前記(IV)記載の硬化性組成物を含有する半導体封止材に関する。
【0018】
本発明は更に、(X)前記(IX)記載の半導体封止材の硬化物を含む半導体装置に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、硬化物における誘電率と誘電正接がともに低く、反応性難燃剤としても利用可能な(メタ)アクリレート化合物、これを含有する硬化性組成物、その硬化物、前記硬化性組成物を用いたプリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材、及び半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1で製造したメタアクリレート樹脂(1)のGPCチャートである。
図2】実施例1で製造したメタアクリレート樹脂(1)のFT-IRチャートである。
図3】実施例2で製造したメタアクリレート樹脂(2)のGPCチャートである。
図4】実施例2で製造したメタアクリレート樹脂(2)のFT-IRチャートである。
図5】実施例3で製造したメタアクリレート樹脂(3)のGPCチャートである。
図6】実施例3で製造したメタアクリレート樹脂(3)のFT-IRチャートである。
図7】比較例1で製造したメタアクリレート樹脂(1’)のGPCチャートである。
図8】比較例1で製造したメタアクリレート樹脂(1’)のFT-IRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の(メタ)アクリレート化合物は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
【0022】
【化3】
[一般式(1)中Rは下記一般式(2-1)又は(2-2)で表される構造部位である。Rは置換基を有していてもよい芳香族基又は脂肪族基である。Rは水素原子又はメチル基である。nは1以上の整数である。]
【0023】
【化4】
[一般式(2-1)、(2-2)中*は一般式(1)中の酸素原子との結合手である。Rはそれぞれ独立して水素原子、脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子の何れかである。Xは単結合、二価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、カルボニル基、硫黄原子、スルホニル基のいずれかである。一般式(2-1)において、*で表される酸素原子との結合手は互いにオルソ位にあるか、或いは、当該結合手のオルソ位にあるRのうち少なくとも一つが脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子の何れかである。また、一般式(2-2)において、*で表される酸素原子との結合手はXとの結合手のオルソ位にあるか、或いは、当該結合手のオルソ位にあるRのうち少なくとも一つが脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子の何れかである。]
【0024】
前記一般式(1)中のRは前記一般式(2-1)又は(2-2)で表される構造部位である。前記一般式(2-1)、(2-2)中のRはそれぞれ独立して水素原子、脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子の何れかである。前記脂肪族炭化水素基は、直鎖のもの、分岐構造を有するもの、不飽和結合を有するもの、環状構造を有するもののいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、アリル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等、炭素原子数が1~6の脂肪族炭化水素基等が挙げられる。前記アルキルオキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等、炭素原子数が1~6のアルキルオキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。中でも、硬化物における耐熱性、難燃性及び誘電特性のバランスに優れる(メタ)アクリレート化合物となることから、脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素原子数が1~6の脂肪族炭化水素基がより好ましい。
【0025】
前記一般式(2-2)中のXは単結合、二価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、カルボニル基、硫黄原子、スルホニル基のいずれかである。前記二価の脂肪族炭化水素基は、直鎖のもの、分岐構造を有するもの、不飽和結合を有するもの、環状構造を有するもののいずれでもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。中でも、硬化物における耐熱性、難燃性及び誘電特性のバランスに優れる(メタ)アクリレート化合物となることから、炭素原子数1~6の二価の脂肪族炭化水素基、酸素原子カルボニル基、硫黄原子、スルホニル基のいずれかであることが好ましく、炭素原子数1~10の二価の脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。
【0026】
前記一般式(2-1)において、*で表される酸素原子との結合手は互いにオルソ位にあるか、或いは、当該結合手のオルソ位にあるRのうち少なくとも一つが脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子の何れかである。また、前記一般式(2-2)において、*で表される酸素原子との結合手はXとの結合手のオルソ位にあるか、或いは、当該結合手のオルソ位にあるRのうち少なくとも一つが脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子の何れかである。これらの要件を満たすことにより、硬化物における耐熱性、難燃性及び誘電特性のバランスに優れる(メタ)アクリレート化合物となる。
【0027】
前記一般式(1)中のRは置換基を有していてもよい芳香族基又は脂肪族基である。前記置換基を有していてもよい芳香族基は、フェニル基、ナフチル基、下記一般式(3)で表される構造部位、及びこれらの芳香環上に一つないし複数の置換基を有する構造部位等が挙げられる。下記一般式(3)中のYについて、二価の脂肪族炭化水素基は、直鎖のもの、分岐構造を有するもの、不飽和結合を有するもの、環状構造を有するもののいずれでもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。Rが置換基を有していてもよい芳香族基である場合の前記置換基としては、脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。前記脂肪族炭化水素基は、直鎖のもの、分岐構造を有するもの、不飽和結合を有するもの、環状構造を有するもののいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、アリル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等、炭素原子数が1~6の脂肪族炭化水素基等が挙げられる。前記アルキルオキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等、炭素原子数が1~6のアルキルオキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0028】
【化5】
[一般式(3)中のYは単結合、二価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、カルボニル基、硫黄原子、スルホニル基のいずれかである。]
【0029】
前記置換基を有していてもよい脂肪族基は、直鎖のもの、分岐構造を有するもの、不飽和結合を有するもの、環状構造を有するもののいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、アリル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等、炭素原子数が1~6の脂肪族炭化水素基等が挙げられる。Rが置換基を有していてもよい脂肪族基である場合の前記置換基としては、アルキルオキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。前記アルキルオキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等、炭素原子数が1~6のアルキルオキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0030】
中でも、硬化物における耐熱性、難燃性及び誘電特性に一層優れる(メタ)アクリレート化合物となることから、前記Rは置換基を有していてもよい芳香族基であることが好ましい。更に、フェニル基及びその芳香環上に一つないし複数の置換基を有する構造部位であることがより好ましく、フェニル基及びその芳香環上に炭素原子数が1~6の脂肪族炭化水素基を一つないし複数有する物がより好ましく、フェニル基、トリル基、キシリル基が特に好ましい。
【0031】
本発明の(メタ)アクリレート樹脂は、前記一般式(1)で表され、nの値が異なる複数の成分を含有する。本発明の(メタ)アクレート樹脂は、硬化物における耐熱性、難燃性及び誘電特性の他、硬化性にも優れることから、前記一般式(1)中のnの平均値が1.0~5.0の範囲であることが好ましい。nの平均値はGPCによる数平均分子量から算出した値である。また、(メタ)アクリレート樹脂中のnが1である成分の含有量は、GPCチャート図の面積比から算出される値で5~30質量%の範囲であることが好ましい。前記(メタ)アクリレート樹脂の数平均分子量は600~3,000の範囲であることが好ましく、重量平均分子量は600~10,000の範囲であることが好ましい。(メタ)アクリレート樹脂の分子量測定や、nが1である成分の含有量を算出する際のGPCの測定条件は本願実施例に記載したものである。
【0032】
本発明の(メタ)アクリレート化合物或いは樹脂は、どの様な方法にて製造されたものであってもよく、その製造方法は特に限定されない。一例としては、例えば、下記一般式(4-1)又は(4-2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物(a)と、下記一般式(5)で表されるリン酸ハライド(b)とを反応させてポリエステル中間体を得た後、これと(メタ)アクリル酸又はその酸ハロゲン化物とを反応させる方法等が挙げられる。
【0033】
[一般式(4-1)、(4-2)中Rはそれぞれ独立して水素原子、脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子の何れかである。Xは単結合、二価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、カルボニル基、硫黄原子、スルホニル基のいずれかである。一般式(2-1)において二つの水酸基は互いにオルソ位にあるか、或いは、水酸基のオルソ位にあるRのうち少なくとも一つが脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子の何れかである。また、一般式(2-2)において水酸基はXとの結合手のオルソ位にあるか、或いは、水酸基のオルソ位にあるRのうち少なくとも一つが脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子の何れかである。]
【0034】
【化6】
[一般式(5)中のRは置換基を有していてもよい芳香族基又は脂肪族基である。Zは水酸基又ハロゲン原子である。]
【0035】
前記一般式(4-1)、(4-2)中のRは、前記一般式(2-1)、(2-2)中のものと同義であり、その好ましいものも前記一般式(2-1)、(2-2)中のものと同様である。また、前記一般式(5)中のRは前記一般式(1)中のものと同義であり、その好ましいものも前記一般式(1)中のものと同様である。
【0036】
前記一般式(4-1)において二つの水酸基は互いにオルソ位にあるか、或いは、水酸基のオルソ位にあるRのうち少なくとも一つが脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子の何れかである。また、前記一般式(4-2)において水酸基はXとの結合手のオルソ位にあるか、或いは、水酸基のオルソ位にあるRのうち少なくとも一つが脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子の何れかである。これらの要件を満たすことにより、硬化物における耐熱性、難燃性及び誘電特性のバランスに優れる(メタ)アクリレート化合物或いは樹脂となる。
【0037】
前記芳香族ジヒドロキシ化合物(a)と前記リン酸ハライド(b)との反応条件は特に限定されないが、例えば、両者を任意の割合で反応容器に仕込み、20~180℃の温度条件下で数時間程度反応させる方法等が挙げられる。反応触媒としては、酸性のものであれば、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化第二鉄、塩化第二錫等のルイス酸、硫酸、p-トルエンスルホン酸等のブレンステッド酸等が挙げられる。このうち、触媒活性の点からルイス酸が好ましく使用される。この場合、発生するハロゲン化水素ガスは系外に排出しながら反応させる。触媒の使用量は、通常、反応性原料の全量100重量部に対して0.01~10重量部が好ましく、0.1~5重量部がより好ましい。また、反応は塩基性条件でも行うことができ、具体的には、3級アミン類やピリジン類などのルイス塩基を触媒として用いることで、反応を進行させることができる。3級アミン類やピリジン類などの触媒は、原料コストや反応速度の観点から、両者を併用しても良い。塩基性触媒を用いる場合、発生するハロゲン化水素が触媒と塩を形成して失活させるため、発生するハロゲン化水素よりも過剰の塩基性触媒が必要となる。反応終了後、副生する触媒のハロゲン化水素塩は、水洗やろ過などの方法により、精製・除去を行うことができる。また、当該反応は必要に応じて溶媒中で行ってもよいし、任意のエステル化触媒を用いてもよい。反応終了後は必要に応じて水洗等の精製操作を行ってもよい。
【0038】
前記芳香族ジヒドロキシ化合物(a)と前記リン酸ハライド(b)との反応割合は、前記(メタ)アクリレート化合物或いは樹脂の所望の分子量等によって適宜調整可能である。特に、前記(メタ)アクリレート化合物或いは樹脂の分子量を前述の好ましい値に調整することが容易となることから、前記リン酸ハライド(b)に対し前記芳香族ジヒドロキシ化合物(a)を過剰量用いることが好ましく、前記リン酸ハライド(b)1モルに対し、前記芳香族ジヒドロキシ化合物(a)が1.2~2.0モルの範囲となる割合で用いることが好ましい。
【0039】
前記溶媒は反応原料の溶解性や反応温度等によって適宜好ましいものを用いることができる。一例としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。これらは、1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は、反応原料の合計質量に対し100~500質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0040】
得られたポリリン酸エステル中間体と(メタ)アクリル酸又はその酸ハロゲン化物、または無水物との反応条件は特に限定されないが、例えば、両者を反応容器に仕込み、50~100℃の温度条件下で数時間~数十時間程度反応させる方法等が挙げられる。当該反応は必要に応じて溶媒中で行ってもよいし、任意のエステル化触媒を用いてもよい。反応終了後は必要に応じて水洗等の精製操作を行ってもよい。
【0041】
前記ポリリン酸エステル中間体と(メタ)アクリル酸又はその酸ハロゲン化物、または無水物との反応割合は、得られる(メタ)アクリレート化合物或いは樹脂が硬化性に優れるものとなることから、前記ポリエステル中間体が含有する水酸基1モルに対し、前記(メタ)アクリル酸又はその酸ハロゲン化物が1.0~2.0モルとなる範囲であることが好ましい。
【0042】
前記溶媒は反応原料の溶解性や反応温度等によって適宜好ましいものを用いることができる。具体例としては前記芳香族ジヒドロキシ化合物(a)と前記リン酸ハライド(b)との反応溶媒として例示したものが挙げられ、当該反応で使用したものを引き続き用いることができる。
【0043】
前記エステル化触媒は公知慣用のものを用いることができるが、触媒能に優れることから、トリエチルアミン等3級アミンを添加した塩基性条件下、ピリジン系触媒を用いることが好ましい。前記3級アミンの添加量は、原料として(メタ)アクリル酸ハライドを用いた場合は、理論上発生するハロゲン化水素の発生量1モルあたり、または、原料として(メタ)アクリル酸無水物を用いた場合は、理論上発生する(メタ)アクリル酸の発生量1モルあたり、1.0~3.0当量の範囲であることが好ましい。また、前記ピリジンの添加量は、原料となるポリリン酸エステル中間体の水酸基1等量に対して、0.001~1当量の範囲であることが好ましい。3級アミンとしては、コストの観点からトリエチルアミンが好ましく、ピリジン系触媒としては、活性の高いジメチルアミノピリジンが好ましい。
【0044】
本発明の硬化性組成物は、前記本発明の(メタ)アクリレート化合物或いは樹脂を含有するものであるが、更に、これら以外のその他の成分を含有していてもよい。その他の成分の具体例としては、例えば、本発明の(メタ)アクリレート化合物或いは樹脂以外のその他の硬化性化合物、熱可塑性樹脂、重合開始剤、各種添加剤等が挙げられる。
【0045】
硬化性組成物中に占める本発明の(メタ)アクリレート化合物或いは樹脂の割合は、その用途や所望の性能等により任意の値を取り得る。具体的には、本発明の(メタ)アクリレート化合物或いは樹脂を硬化性化合物として扱うこともできるし、難燃剤として扱うこともできる。本発明の(メタ)アクリレート化合物或いは樹脂を硬化性化合物として扱う場合には、硬化性組成物中の溶剤以外の合計質量に占める前記本発明の(メタ)アクリレート化合物或いは樹脂の割合が10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。本発明の(メタ)アクリレート化合物或いは樹脂を難燃剤として扱う場合には、硬化性組成物中の溶剤以外の合計質量に占めるリン原子の含有量が1.0~3.0質量%の範囲となるように添加することが好ましい。
【0046】
前記その他の硬化性化合物は、例えば、重合性不飽和基含有化合物、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミン化合物、活性エステル樹脂、シアネートエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等が挙げられる。
【0047】
前記重合性不飽和基含有化合物は、例えば、スチレン、エチルスチレン、ジビニルベンゼン等のビニル基含有化合物、またはそれらを原料とし、一部不飽和結合を残したまま重合してなる不飽和基含有樹脂、水酸基末端ポリフェニレンエーテルの末端をクロロメチルスチレン等でビニルベンジルエーテル修飾したもの、ポリフェニレンエーテル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有化合物、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、フェニルメタンマレイミド、フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン等のマレイミド基含有化合物、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、ジアリルフタレートなどのアリル化合物、1,2-ビニル基含有のポリブタジエン、ブタジエンースチレン共重合体等の1,2-ビニル基含有樹脂等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0048】
前記重合開始剤は、例えば、イソブチルパーオキサイド、α,α’-ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ-n-プロピルパーオキシジカルボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジイソプロピルパーオキシジカルボネート、1-シクロへキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカルボネート、ジ(2-エチルヘキシルパーオキシ)ジカルボネート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、ジメトキシブチルパーオキシジデカネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチルパーオキシ)ジカルボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、m-トルオイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、t-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0049】
前記重合開始剤の添加量は、硬化性に優れる組成物となることから、硬化性組成物中の硬化性成分の合計質量に対し0.05~5質量%の範囲であることが好ましい。なお、硬化性組成物中の硬化性成分とは、前記本発明の(メタ)アクリレート化合物或いは樹脂及びこれら以外のその他の硬化性化合物を指す。
【0050】
前記熱可塑性樹脂は、ポリフェニレンエーテル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイソプレン樹脂、SBS樹脂などの炭化水素系熱可塑性エラストマー樹脂等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0051】
前記各種の添加剤は、例えば、(メタ)アクリレート化合物或いは樹脂以外の難燃剤、無機質充填材、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の各種添加剤等が挙げられる。
【0052】
前記難燃剤は、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム、リン酸アミド等の無機リン化合物;リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10―(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等の有機リン化合物;トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等の窒素系難燃剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等のシリコーン系難燃剤;金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等の無機難燃剤等が挙げられる。これら難燃剤を用いる場合は、硬化性組成物中の溶剤以外の合計質量に対し0.1~20質量%の範囲であることが好ましい。
【0053】
前記無機質充填材は、例えば、本発明の硬化性組成物を半導体封止材料用途に用いる場合などに配合される。前記無機質充填材は、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。中でも、無機質充填材をより多く配合することが可能となることから、前記溶融シリカが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、且つ、硬化性組成物の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いることが好ましい。更に、球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は硬化性組成物中の溶剤以外の合計質量に対し0.5~95質量%の範囲で配合することが好ましい。
【0054】
本発明の硬化性組成物を導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0055】
本発明の(メタ)アクリレート化合物或いは樹脂は硬化物における誘電率と誘電正接がともに低い特徴を有し、また、耐熱性も高い。更に、リン原子を含有することから反応性難燃剤としても有用である。本発明の(メタ)アクリレート化合物或いは樹脂を含有する硬化性組成物は、これらの特徴を生かし、プリプレグ、ビルドアップフィルム、半導体封止材料、レジスト材料等の電子材料用途、塗料や接着剤、成型品等、幅広い用途に利用することができる。
【0056】
本発明の硬化性組成物をプリプレグ用途に用いる場合、当該プリプレグは補強基材に硬化性組成物を含浸させる等の方法で得ることができる。前記補強基材は、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等が挙げられる。補強材は織布や不織布、一方向材、マット、紙途等、どの様な形状であってもよい。前記プリプレグ中の硬化性樹脂組成物と補強基材の質量割合は特に限定されず、用途や所望の性能等に応じて適宜調整されるが、一般には、プリプレグ中の硬化性樹脂組成物が20~60質量%となることが好ましい。含浸後は、必要に応じてBステージ化工程等を設けてもよい。
【0057】
本発明の硬化性組成物をビルドアップフィルム用途に用いる場合、一般には有機溶剤を配合して希釈して用いることが好ましい。前記有機溶剤は、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン等が挙げられる。有機溶剤の種類や配合量は硬化性組成物の使用環境に応じて適宜選択される。一般には、不揮発分が30~60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0058】
本発明の硬化性組成物を半導体封止材料用途に用いる場合、一般には無機質充填材を配合することが好ましい。半導体封止材料は、例えば、押出機、ニーダー、ロール等を用いて配合物を混合して調製することができる。得られた半導体封止材料を用いて半導体パッケージを成型する方法は、例えば、該半導体封止材料を注型或いはトランスファー成形機、射出成型機などを用いて成形し、更に50~250℃の温度条件下で1~10時間加熱する方法が挙げられ、このような方法により、成形物である半導体装置を得ることが出来る。
【実施例0059】
以下に、本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、「部」及び「%」は特に断わりのない限り、質量基準である。
【0060】
実施例1~3及び比較例1
下記の要領でメタアクリレート樹脂(1)~(3)及び(1’)を得た。
【0061】
本願実施例において、メタアクリレート樹脂のGPCチャート図は以下の測定装置、測定条件にて得たものである。
測定装置:東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準:前記「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料:メタクリレート樹脂の樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)
【0062】
本願実施例において、メタアクリレート樹脂のFT-IRチャート図は以下の測定装置、測定条件にて得たものである。
測定装置:日本分光株式会社製FT/IR-4100
試料:各樹脂溶液をKBrプレートへ塗布し、熱風にて乾燥したもの
【0063】
実施例1 メタアクリレート樹脂(1)の製造
撹拌機、温度計、滴下ロートおよびコンデンサーを備えた容量2リットルの4つ口フラスコに、フェニルジクロロホスフェート79.1g(0.375mol)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェノール)128g(0.500mol)、溶剤としてトルエン668gを仕込んだ。混合溶液を撹拌しながら温度65℃まで加熱し、65℃で維持しながら、トリエチルアミン83.5g(0.82mol)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、65℃で2時間撹拌して反応生成物を得た。得られた反応生成物を水で洗浄し、副生したトリエチルアミン塩酸塩を除去した。水洗後の反応生成物を約85℃まで加熱し、ジメチルアミノピリジン1.52g(0.00125mol)とトリエチルアミン31.5g(0.31mol)を添加した。固体がすべて溶解した後に、メタクリル酸クロリド28.7g(0.274mol)を徐々に添加した。混合溶液を攪拌しながら85℃で20時間維持した。得られた反応生成物を水で洗浄し、副生したトリエチルアミン塩酸塩、余剰の原料類を除去した。加熱減圧条件下で脱水及び脱溶剤を行って不揮発分含有量を調整し、目的のメタアクリレート樹脂(1)のトルエン溶液を得た。メタアクリレート樹脂(1)のGPCチャート図を図1に、FT-IRチャートを図2に示す。
メタアクリレート樹脂(1)の数平均分子量は1,102、重量平均分子量は2,116であった。GPCチャート図の面積比から算出した前記一般式(1)におけるnが1である成分の割合は12.4%であった。数平均分子量から算出した前記一般式(1)におけるnの平均値は1.8であった。
【0064】
実施例2 メタアクリレート樹脂(2)の製造
実施例1の4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェノール)を4,4’-(ジメチルメチレン)ビス(2,6-ジメチルフェノール)142g(0.5mol)に置き換えた以外は実施例1と同じ操作を行い、メタアクリレート樹脂(2)のトルエン溶液を得た。メタアクリレート樹脂(2)のGPCチャート図を図3に、FT-IRチャートを図4に示す。
メタアクリレート樹脂(2)の数平均分子量は933、重量平均分子量は1,593であった。GPCチャート図の面積比から算出した前記一般式(1)におけるnが1である成分の割合は17.7%であった。数平均分子量から算出した前記一般式(1)におけるnの平均値は1.2であった。
【0065】
実施例3 メタアクリレート樹脂(3)の製造
実施例1の4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェノール)を4,4’-(1-メチルエチリデン)ビス(2-メチルフェノール)128g(0.5mol)に置き換えた以外は実施例1同じ操作を行い、メタアクリレート樹脂(3)のトルエン溶液を得た。メタアクリレート樹脂(3)のGPCチャート図を図5に、FT-IRチャートを図6に示す。
メタアクリレート樹脂(3)の数平均分子量は921、重量平均分子量は1,545であった。GPCチャート図の面積比から算出した前記一般式(1)におけるnが1である成分の割合は16.4%であった。数平均分子量から算出した前記一般式(1)におけるnの平均値は1.3であった。
【0066】
比較例1 メタアクリレート樹脂(1’)の製造
実施例1の4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェノール)をビスフェノールA114g(0.5mol)に置き換えた以外は実施例1と同じ操作を行い、メタアクリレート樹脂(1’)のトルエン溶液を得た。
メタアクリレート樹脂(1’)のGPCチャート図を図7に、FT-IRチャートを図8に示す。
【0067】
実施例4~6及び比較例2
下記の要領で硬化性組成物を調製し、その硬化物について各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
硬化性組成物及び硬化物の作成
先で得たメタアクリレート樹脂のトルエン溶液とジビニルベンゼン(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製「DVB570」)とを、メタアクリレート樹脂の固形分70質量部、ジビニルベンゼン30質量部となる割合で混合し、70℃で1時間減圧乾燥し、硬化性組成物を得た。これを厚さ1.8mmの型に流し込んだのち、200℃で2時間加熱して硬化物を得た。
【0069】
耐熱性の評価
先で得た硬化物を厚さ1.8mm、幅5mm、長さ54mmのサイズに切り出し、これを試験片とした。この試験片の動的粘弾性を下記装置及び条件にて測定し、ガラス転移温度にて耐熱性を評価した。
測定装置:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置「RSAII」
レクタンギュラーテンション法:周波数1Hz、昇温速度3℃/分
【0070】
硬化物の誘電率及び誘電正接の測定
先で得た硬化物を絶乾後、23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後ものを試験片とした。JIS-C-6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製ネットワークアナライザ「E8362C」を用いて、空洞共振法にて、試験片の10GHzでの誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)を測定した。
【0071】
【表1】
【0072】
実施例7~9及び比較例3
下記の要領で硬化性組成物を調製し、その硬化物について各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0073】
硬化性組成物及び硬化物の作成
表2に示す値(メタアクリレート樹脂は樹脂固形分換算)で各成分を配合し、70℃で1時間減圧乾燥した後、更に70℃の真空乾燥機で2時間乾燥させ、硬化性組成物を得た。これを厚さ1.8mmの型に流し込んだのち、200℃で2時間加熱して硬化物を得た。
・「SA-9000-111」:SABIC社製ポリフェニレンエーテル(メタ)アクリレート
・「TAIC」:東京化成工業株式会社製トリアリルイソシアヌレート
・重合開始剤:日油株式会社製「パーブチルP」(α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン)
【0074】
耐熱性の評価
先で得た硬化物を厚さ1.8mm、幅5mm、長さ54mmのサイズに切り出し、これを試験片とした。この試験片の動的粘弾性を下記装置及び条件にて測定し、ガラス転移温度にて耐熱性を評価した。
測定装置:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置「RSAII」
レクタンギュラーテンション法:周波数1Hz、昇温速度3℃/分
【0075】
硬化物の誘電率及び誘電正接の測定
先で得た硬化物を絶乾後、23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後ものを試験片とした。JIS-C-6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製ネットワークアナライザ「E8362C」を用いて、空洞共振法にて、試験片の1GHzでの誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)を測定した。
【0076】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8