(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075128
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】組成物及び湿式成膜物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/40 20060101AFI20240527BHJP
C08G 18/44 20060101ALI20240527BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20240527BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
C08G18/40 009
C08G18/44
C08G18/42
C08J5/18 CFF
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186337
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】藤下 章恵
(72)【発明者】
【氏名】前田 亮
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 優子
【テーマコード(参考)】
4F071
4J034
【Fターム(参考)】
4F071AA53
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4J034BA07
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4J034LA08
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4J034QB17
4J034RA09
(57)【要約】
【課題】耐加水分解性に優れた湿式成膜物を形成することが可能なポリウレタンを含む組成物、及び前記組成物の湿式成膜物を提供することである。
【解決手段】ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリイソシアネートの反応物であるポリウレタンと、有機溶剤と、を含有する組成物であって、前記ポリエステルポリオールが、セバシン酸を含むジカルボン酸とジオールとの反応物である、組成物、及び前記組成物の湿式成膜物を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリイソシアネートの反応物であるポリウレタンと、
有機溶剤と、を含有する組成物であって、
前記ポリエステルポリオールが、セバシン酸を含むジカルボン酸とジオールとの反応物である、組成物。
【請求項2】
前記ポリエステルポリオールの含有量に対する前記ポリカーボネートポリオールの含有量の質量比が、30/70以上95/5以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ジオールが、ジエチレングリコールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ジエチレングリコールの含有量が、前記ジオール全量を基準として15質量%以上である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリカーボネートポリオールが、バイオベースポリカーボネートポリオールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリエステルポリオールが、バイオベースポリエステルポリオールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
湿式成膜に用いられる、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物の湿式成膜物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物及びその湿式成膜物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは、柔軟かつ強靭であると共に、優れた風合いを兼ね備えることから、人工皮革・合成皮革に広く利用されている。例えば、特許文献1には、合成皮革の材料として特に好適に使用することができるポリウレタン組成物の湿式成膜物として、ポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)を原料とするポリウレタン樹脂(X)と有機溶剤(Y)とを含有するポリウレタン樹脂組成物の湿式成膜物であって、前記ポリオール(A)が、バイオマス由来のデカンジオ-ルを原料とするポリカーボネートポリオール(A-1)を含有し、前記ポリイソシアネート(B)が、芳香族ポリイソシアネートを含有することを特徴とする湿式成膜物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ポリウレタンの湿式成膜物には、高温高湿環境下に置かれた場合にも水分によって分解しにくいこと(耐加水分解性)が求められる場合がある。本発明者らの検討によれば、従来の湿式成膜物には、耐加水分解性の点で改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明の一側面は、耐加水分解性に優れた湿式成膜物を形成することが可能なポリウレタンを含む組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ポリウレタンの原料となるポリオールとして、ポリカーボネートポリオールに加えて、ポリエステルポリオールを用い、かつ、当該ポリエステルポリオールの原料となるジカルボン酸としてセバシン酸を用いることによって、耐加水分解性に優れた湿式成膜物を形成することが可能になることを見出した。
【0007】
本発明は、以下の側面を含む。
[1] ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリイソシアネートの反応物であるポリウレタンと、有機溶剤と、を含有する組成物であって、ポリエステルポリオールが、セバシン酸を含むジカルボン酸とジオールとの反応物である、組成物。
[2] ポリエステルポリオールの含有量に対するポリカーボネートポリオールの含有量の質量比が、95/5~30/70である、[1]に記載の組成物。
[3] ジオールが、ジエチレングリコールを含む、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4] ジエチレングリコールの含有量が、ジオール全量を基準として15質量%以上である、[3]に記載の組成物。
[5] ポリカーボネートポリオールが、バイオベースポリカーボネートポリオールである、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6] ポリエステルポリオールが、バイオベースポリエステルポリオールである、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7] 湿式成膜に用いられる、[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の組成物の湿式成膜物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面によれば、耐加水分解性に優れた湿式成膜物を形成することが可能なポリウレタンを含む組成物を提供することができる。当該組成物の他の一側面によれば、湿式成膜性に優れ、かつ低温安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態は、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリイソシアネートの反応物であるポリウレタンと、有機溶剤と、を含有する組成物である。
【0010】
ポリカーボネートポリオールは、ポリカーボネートジオールであってよい。ポリカーボネートポリオール(ポリカーボネートジオール)は、例えば、ジオールと、炭酸エステル及びホスゲンからなる群より選ばれる少なくとも一種との反応物であってよい。
【0011】
ジオールは、脂肪族ジオール又は脂環式ジオールであってよい。脂肪族ジオールは、例えば、炭素数1~12の脂肪族ジオールであってよい。脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,8-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、及び1,12-ドデカンジオールが挙げられる。脂環式ジオールとしては、1,4-シクロヘキサンジメタノール及び1,3-シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。
【0012】
ジオールは、脂肪族ジオールの一種又は二種以上を含んでよく、より一層優れた湿式成膜性が得られる点から、好ましくはデカンジオールを含み、より好ましくは1,10-デカンジオールを含み、更に好ましくは、ブタンジオール及びデカンジオールを含み、特に好ましくは、1,4-ブタンジオール及び1,10-デカンジオールを含む。
【0013】
ジオールがブタンジオール及びデカンジオール(1,4-ブタンジオール及び1,10-デカンジオール)を含む場合、ブタンジオール/デカンジオール(1,4-ブタンジオール/1,10-デカンジオール)の質量比は、10/90以上、20/80以上、又は30/70以上であってよく、90/10以下、80/20以下、又は70/30以下であってよい。
【0014】
炭酸エステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、及びプロピレンカーボネートが挙げられる。これらの炭酸エステルは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0015】
ポリカーボネートポリオールは、好ましくはバイオベースポリカーボネートポリオールである。バイオベースポリカーボネートポリオールは、上述したジオールがバイオマス由来のジオールであるポリカーボネートポリオールであってよい。
【0016】
ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、500以上、700以上、又は1500以上であってよく、100,000以下、10,000以下、又は4,000以下であってよい。ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定される。
【0017】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、三菱ケミカル株式会社製「ベネビオール NL2030DB」、「ベネビオール NL2000D」、「ベネビオール NL3010DB」等の市販品を入手することもできる。
【0018】
ポリエステルポリオールは、セバシン酸を含むジカルボン酸とジオールとの反応物である。ジカルボン酸がセバシン酸を含むことによって、耐加水分解性に優れた湿式成膜物を形成することが可能になる。
【0019】
ジカルボン酸は、セバシン酸のみを含んでよく、セバシン酸とその他のジカルボン酸とを含んでもよく、好ましくはセバシン酸のみを含む。その他のジカルボン酸は、セバシン酸以外の脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、又は芳香族ジカルボン酸であってよい。
【0020】
ジオールは、脂肪族ジオール及びポリアルキレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。脂肪族ジオールの炭素数は、2以上であってよく、5以下、4以下、又は3以下であってよい。脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、及びネオペンチルグリコールが挙げられる。ポリアルキレングリコールは、好ましくはポリエチレングリコールであり、より好ましくはジエチレングリコールである。
【0021】
ジオールは、湿式成膜性及び低温安定性に優れる観点から、好ましくはジエチレングリコールを含む。ジオールは、ジエチレングリコールのみを含んでよく、ジエチレングリコールと脂肪族ジオールとを含んでよく、ジエチレングリコールと、エチレングリコール又は1,3-プロパンジオールとを含んでよい。ジエチレングリコールの含有量は、ジオールの全量を基準として、15質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、又は50質量%以上であってよい。
【0022】
ポリエステルポリオールは、好ましくはバイオベースポリエステルポリオールである。バイオベースエステルポリオールは、上述したセバシン酸を含むジカルボン酸とジオールとがいずれもバイオマス由来であるポリエステルポリオールであってよい。
【0023】
ポリエステルポリオールの数平均分子量は、500以上、700以上、又は1500以上であってよく、100000以下、10000以下、又は4000以下であってよい。ポリエステルポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定される。
【0024】
ポリオール中のポリエステルポリオールの含有量に対するポリカーボネートポリオールの含有量の質量比(ポリカーボネートポリオール/ポリエステルポリオール)は、耐加水分解性と溶液安定性により優れる観点から、好ましくは、30/70以上であり、95/5以下である。
【0025】
ポリイソシアネートは、ジイソシアネートであってよい。ジイソシアネートは、更に優れた湿式成膜性が得られる点で、好ましくは芳香族ジイソシアネートである。芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-3,5-フェニレンジイソシアネート、1-エチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-イソプロピル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-4,6-フェニレンジイソシアネート、1,4-ジメチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート、1-メチル-3,5-ジエチルベンゼンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ジエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、1,3,5-トリエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、1-メチル-ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート、ナフタレン-2,7-ジイソシアネート、1,1-ジナフチル-2,2’-ジイソシアネート、ビフェニル-2,4’-ジイソシアネート、ビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3-3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート)等を用いることができる。これらの化合物は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。ポリイソシアネートは、より一層優れた湿式成膜性、機械的強度が得られる点から、好ましくはジフェニルメタンジイソシアネートである。
【0026】
ポリイソシアネートの使用量は、より一層優れた湿式成膜性、機械的強度、及び反応性が得られる点から、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオールの合計100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上であり、好ましくは60質量部以下、より好ましくは55質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。
【0027】
ポリウレタンを得るための原料として、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリイソシアネートに加えて、鎖伸長剤を更に用いてもよい。すなわち、ポリウレタンは、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリイソシアネート、及び鎖伸長剤の反応物であってもよい。鎖伸長剤としては、例えば、水酸基を有する鎖伸長剤及びアミノ基を有する鎖伸長剤が挙げられる。
【0028】
水酸基を有する鎖伸長剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、トリメチロールプロパン、及びグリセリンが挙げられる。
【0029】
アミノ基を有する鎖伸長剤としては、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2-メチルピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、ヒドラジン、ジエチレントリアミン、及びトリエチレンテトラミンが挙げられる。
【0030】
上記の鎖伸長剤は、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。鎖伸長剤は、湿式成膜物の経時的な変色を抑制しやすい点から、好ましくは水酸基を有する鎖伸長剤であり、より好ましくは、エチレングリコール及び1,4-ブタンジオールから選ばれる少なくとも一種であり、更に好ましくはエチレングリコールである。
【0031】
鎖伸長剤の使用量は、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオールの合計100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
【0032】
ポリウレタンは、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリイソシアネート(更には必要に応じて鎖伸長剤)を一括で仕込み、反応させることにより得られる。反応は、例えば、30~100℃の温度で、3~10時間行うことが好ましい。また、上記の反応の際に、後述する有機溶剤を更に加えてもよい。
【0033】
ポリウレタンの数平均分子量は、5000以上又は10000以上であってよく、1000000以下又は500000以下であってよい。ポリウレタンの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定された値を意味する。
【0034】
ポリウレタンの含有量は、組成物全量を基準として、10質量%以上又は15質量%以上であってよく、90質量%以下又は80質量%以下であってよい。
【0035】
有機溶剤としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソブチル、酢酸第2ブチル等のエステル溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール溶剤などを用いることができる。これらの有機溶剤は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0036】
有機溶剤の含有量は、作業性及び粘度の点から、組成物全量を基準として、20質量%以上であってよく、90質量%以下であってよい。
【0037】
組成物は、ポリウレタン及び有機溶剤に加えて、その他の成分を更に含有してもよい。その他の成分としては、例えば、顔料、難燃剤、可塑剤、軟化剤、安定剤、ワックス、消泡剤、分散剤、浸透剤、界面活性剤、フィラー、防黴剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐候安定剤、蛍光増白剤、老化防止剤、増粘剤等を用いることができる。これらの成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0038】
組成物の粘度は、70dPa・s以上、90dPa・s以上、又は100dPa・s以上であってよく、2000dPa・s以下、1800dPa・s以下、又は1600dPa・s以下であってよい。組成物の粘度は、25℃においてB型粘度計(H7ローター、20回転)にて測定した値を示す。
【0039】
以上説明した組成物は、湿式成膜に好適に用いられ、耐加水分解性に優れた湿式成膜物を形成できる。言い換えれば、本発明の一実施形態は、上述した組成物の湿式成膜物である。湿式成膜物は、多孔体(例えば多孔フィルム)であってよい。
【0040】
湿式成膜物(多孔体)は、上記の組成物を、基材表面に塗布又は含浸し、次いで、該塗布面又は含浸面に水や水蒸気等を接触させることによってポリウレタンを凝固させることで得られる。
【0041】
基材としては、例えば、不織布、織布、編み物からなる基材;樹脂フィルム等を用いることができる。前記基材を構成するものとしては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維、ポリ乳酸繊維等の化学繊維;綿、麻、絹、羊毛、これらの混紡繊維などを用いることができる。基材の表面には、必要に応じて制電加工、離型処理加工、撥水加工、吸水加工、抗菌防臭加工、制菌加工、紫外線遮断加工等の処理が施されていてもよい。
【0042】
基材表面に組成物を塗布又は含浸する方法としては、例えば、グラビアコーター法、ナイフコーター法、パイプコーター法、コンマコーター法が挙げられる。その際、組成物の粘度を調整し塗工作業性を向上するため、必要に応じて、有機溶剤(B)の使用量を調製してもよい。塗布又は含浸された組成物からなる塗膜の膜厚は、0.5mm以上であってよく、5mm以下又は3mm以下であってよい。
【0043】
塗布面に水又は水蒸気を接触させる方法としては、例えば、塗布面を含む基材を水浴中に浸漬する方法;塗布面上にスプレー等を用いて水を噴霧する方法などが挙げられる。浸漬は、5~60℃の水浴中に、2~20分程度行うことが好ましい。
【0044】
得られた湿式成膜物は、常温の水や温水を用いてその表面を洗浄して有機溶剤を抽出除去し、次いで乾燥することが好ましい。洗浄は5~60℃の水で20~120分程度行なうことが好ましく、洗浄に用いる水は1回以上入れ替えるか、あるいは、流水で連続して入れ替えるのが好ましい。乾燥は、80~120℃に調整した乾燥機等を用い、10~60分程度行うことが好ましい。
【実施例0045】
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0046】
(組成物の調製)
[実施例1]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、バイオベースのポリカーボネートポリオールPC-1(三菱ケミカル株式会社製「ベネビオール NL2030DB」、数平均分子量:2000)90質量部と、バイオベースのポリエステルポリオールPEs-1(バイオベースのジエチレングリコール(DEG)/バイオベースのセバシン酸(Seb)=1.2/1(モル比)の反応物、数平均分子量:2000)10質量部と、エチレングリコール8質量部と、N,N-ジメチルホルムアミド355質量部とを加え十分に攪拌混合した。攪拌混合後、ジフェニルメタンジイソシアネート44.3質量部を加え、80℃で3時間反応させてポリウレタンを生成させ、固形分30質量%、粘度610dPa・sの組成物(バイオ比率:33%)を得た。
【0047】
[実施例2]
PC-1及びPEs-1の含有量を、PC-1 35質量部及びPEs-1 65質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、固形分30質量%、粘度580dPa・sの組成物(バイオ比率:53%)を得た。
【0048】
[実施例3]
PEs-1に代えて、バイオベースのポリエステルポリオールPEs-2(バイオベースのジエチレングリコール(DEG)/バイオベースの1,3-プロパンジオール(PDO)/バイオベースのセバシン酸(Seb)=0.6/0.6/1(モル比)の反応物、数平均分子量:2000)を用いた以外は、実施例1と同様にして、固形分30質量%、粘度600dPa・sの組成物(バイオ比率:33%)を得た。
【0049】
[実施例4]
PEs-1に代えて、バイオベースのポリエステルポリオールPEs-3(バイオベースのジエチレングリコール(DEG)/バイオベースのエチレングリコール(EG)/バイオベースのセバシン酸(Seb)=0.6/0.6/1(モル比)の反応物、数平均分子量:2000)を用い、PC-1及びPEs-3の含有量を、PC-1 85質量部及びPEs-3 15質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、固形分30質量%、粘度640dPa・sの組成物(バイオ比率:35%)を得た。
【0050】
[実施例5]
PC-1に加えて、バイオベースのポリカーボネートポリオールPC-2(三菱ケミカル株式会社製「ベネビオール NL2000D」、数平均分子量:2000)を用い、PC-1、PC-2及びPEs-1の含有量を、PC-1 80質量部、PC-2 5質量部及びPEs-1 15質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、固形分30質量%、粘度620dPa・sの組成物(バイオ比率:42%)を得た。
【0051】
[実施例6]
PC-1、PC-2及びPEs-1の含有量を、PC-1 50質量部、PC-2 10質量部及びPEs-1 40質量部に変更した以外は、実施例5と同様にして、固形分30質量%、粘度630dPa・sの組成物(バイオ比率:47%)を得た。
【0052】
[実施例7]
PEs-3に代えて、バイオベースのポリエステルポリオールPEs-4(バイオベースの1,4-ブタンジオール(BG)/バイオベースのセバシン酸(Seb)=1.2/1(モル比)の反応物、数平均分子量:2000)を用いた以外は、実施例4と同様にして、固形分30質量%、粘度610dPa・sの組成物(バイオ比率:35%)を得た。
【0053】
[実施例8]
PEs-3に代えて、バイオベースのポリエステルポリオールPEs-5(バイオベースのプロパンジオール(PDO)/バイオベースのセバシン酸(Seb)=1.2/1(モル比)の反応物、数平均分子量:2000)を用いた以外は、実施例4と同様にして、固形分30質量%、粘度700dPa・sの組成物(バイオ比率:35%)を得た。
【0054】
[実施例9]
PEs-3に代えて、バイオベースのポリエステルポリオールPEs-6(バイオベースのエチレングリコール(EG)/バイオベースのセバシン酸(Seb)=1.2/1(モル比)の反応物、数平均分子量:2000)を用いた以外は、実施例4と同様にして、固形分30質量%、粘度610dPa・sの組成物(バイオ比率:35%)を得た。
【0055】
[比較例1]
PEs-3に代えて、バイオベースのポリエステルポリオールPEs-7(バイオベースのジエチレングリコール(DEG)/アジピン酸(AA)=1.2/1(モル比)の反応物、数平均分子量:2000)を用いた以外は、実施例4と同様にして、固形分30質量%、粘度620dPa・sの組成物(バイオ比率:32%)を得た。
【0056】
(湿式成膜物の作製)
実施例及び比較例で得られた各組成物100質量部をN,N-ジメチルホルムアミド60質量部で更に希釈した配合液を、PETフィルム上に1mmのクリアランスを設けて塗工した。次いで、塗工膜付きPETフィルムを、25℃の水中に10分間浸漬した。続いて、40℃の水で1時間洗浄し、100℃の乾燥機で30分乾燥させ、湿式成膜物(多孔フィルム)を得た。
【0057】
(耐加水分解性の評価)
得られた湿式成膜物(多孔フィルム)を、70℃/95%の高温高湿環境下で7週間静置した。静置後の湿式成膜物(多孔フィルム)の外観及び触感を確認した。外観及び触感に異常がない場合を「A」、外観(特に艶)に変化がある、及び/又は、触感にベタツキが生じた場合を「B」として評価した。
【0058】
(湿式成膜性の評価)
得られた湿式成膜物(多孔フィルム)をSEMにより確認し、均一な形状の多孔が確認できた場合を「A」、不均一な多孔が確認された場合を「B」として評価した。
【0059】
(低温安定性の評価)
実施例・比較例の各組成物を5℃の低温環境下で1ヶ月間静置した。静置後の組成物が流動した場合を「A」、流動しなかった場合を「B」として評価した。
【0060】
ポリカーボネートポリオール(PC)とポリエステルポリオール(PEs)の配合量、ポリエステルポリオール(PEs)の構成、及び、評価結果を表1に示す。
【0061】