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特開2024-75203相分離構造形成用樹脂組成物、相分離構造を含む構造体の製造方法、及び、ブロックコポリマー
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  • 特開-相分離構造形成用樹脂組成物、相分離構造を含む構造体の製造方法、及び、ブロックコポリマー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075203
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】相分離構造形成用樹脂組成物、相分離構造を含む構造体の製造方法、及び、ブロックコポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 81/02 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
C08G81/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186471
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏文
(72)【発明者】
【氏名】磯野 拓也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和重
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 冬威
(72)【発明者】
【氏名】宮城 賢
(72)【発明者】
【氏名】太宰 尚宏
【テーマコード(参考)】
4J031
【Fターム(参考)】
4J031AA13
4J031AA38
4J031AB02
4J031AC03
4J031AD01
4J031AF22
4J031AF26
(57)【要約】
【課題】プロセスマージンを向上することができる相分離構造形成用樹脂組成物の提供。
【解決手段】第1ブロックと第2ブロックと第3ブロックとが結合したブロックコポリマーを含有し、前記第1ブロックを構成するポリマーの構成単位と、前記第3ブロックを構成するポリマーの構成単位とは同一の構造であり、前記第3ブロックを構成するポリマーの数平均分子量(Mn3)は、前記第1ブロックを構成するポリマーの数平均分子量(Mn1)より小さい、相分離構造形成用樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ブロックと第2ブロックと第3ブロックとが結合したブロックコポリマーを含有し、
前記第1ブロックを構成するポリマーの構成単位と、前記第3ブロックを構成するポリマーの構成単位とは同一の構造であり、
前記第3ブロックを構成するポリマーの数平均分子量(Mn3)は、前記第1ブロックを構成するポリマーの数平均分子量(Mn1)より小さい、相分離構造形成用樹脂組成物。
【請求項2】
前記第1ブロックを構成するポリマーの数平均分子量(Mn1)と、前記第3ブロックを構成するポリマーの数平均分子量(Mn3)との比は、Mn1:Mn3=1:0.05~1:0.35である、請求項1に記載の相分離構造形成用樹脂組成物。
【請求項3】
前記第1ブロック及び第3ブロックと、前記第2ブロックとの質量比(前記第1ブロック及び第3ブロックの含有量:前記第2ブロックの含有量)は、25:75~75:25である、請求項1又は2に記載の相分離構造形成用樹脂組成物。
【請求項4】
前記ブロックコポリマーは、前記第2ブロックの側鎖に連結基を介して結合している前記第3ブロックを有する、請求項1又は2に記載の相分離構造形成用樹脂組成物。
【請求項5】
前記第1ブロック及び前記第3ブロックは、芳香族炭化水素基を含む構成単位の繰り返し構造を有するポリマーからなり、
前記第2ブロックは、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位の繰り返し構造を有するポリマーからなる、請求項1又は2に記載の相分離構造形成用樹脂組成物。
【請求項6】
支持体上に、請求項1又は2に記載の相分離構造形成用樹脂組成物を塗布して、前記ブロックコポリマーを含む層を形成する工程と、
前記のブロックコポリマーを含む層を相分離させる工程と
を有する、相分離構造を含む構造体の製造方法。
【請求項7】
第1ブロックと第2ブロックと第3ブロックとが結合し、
前記第1ブロックを構成するポリマーの構成単位と、前記第3ブロックを構成するポリマーの構成単位とは同一の構造であり、
前記第3ブロックを構成するポリマーの数平均分子量は、前記第1ブロックを構成するポリマーの数平均分子量より小さい、ブロックコポリマー。
【請求項8】
前記第1ブロック及び前記第3ブロックは、芳香族炭化水素基を含む構成単位の繰り返し構造を有するポリマーからなり、
前記第2ブロックは、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位の繰り返し構造を有するポリマーからなる、請求項7に記載のブロックコポリマー。
【請求項9】
相分離構造形成用である、請求項7又は8に記載のブロックコポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相分離構造形成用樹脂組成物、相分離構造を含む構造体の製造方法、及び、ブロックコポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)のさらなる微細化に伴い、より繊細な構造体を加工する技術が求められている。
このような要望に対し、互いに非相溶性のブロック同士が結合したブロックコポリマーの自己組織化により形成される相分離構造を利用して、より微細なパターンを形成する技術の開発が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
該ブロックコポリマーは、互いに非相溶性のブロック同士の反発によりミクロな領域で分離(相分離)し、熱処理等を行うことで、規則的な周期構造の構造体を形成する。この周期構造として、具体的には、シリンダー(柱状)、ラメラ(板状)、スフィア(球状)等が挙げられる。
【0004】
ブロックコポリマーの相分離構造を利用するためには、ミクロ相分離により形成される自己組織化ナノ構造を、特定の領域のみに形成し、かつ、所望の方向へ配列させることが必須とされる。これらの位置制御及び配向制御を実現するために、ガイドパターンによって相分離パターンを制御するグラフォエピタキシーや、基板の化学状態の違いによって相分離パターンを制御するケミカルエピタキシー等のプロセスが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-36491号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】プロシーディングスオブエスピーアイイー(Proceedings of SPIE),第7637巻,第76370G-1(2010年).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ブロックコポリマーの自己組織化により形成される相分離構造を利用してパターンを形成する方法については、1つのピッチに対して、それに合わせたL0(=Mn)を持つブロックコポリマーを用意する必要がある。したがって、複数のピッチのデザインに対しては個々にブロックコポリマーを準備する必要がある。
上記のパターン形成方法において、複数のピッチに対して1つのブロックコポリマーで対応できれば、上記のパターン形成方法の適用範囲は大きく広がる。
したがって、上記のパターン形成方法において、プロセスマージンの向上が求められる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、プロセスマージンを向上することができる相分離構造形成用樹脂組成物、当該相分離構造形成用樹脂組成物を用いて製造する相分離構造を含む構造体の製造方法、及び当該相分離構造形成用樹脂組成物の樹脂成分として有用なブロックコポリマーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、第1ブロックと第2ブロックと第3ブロックとが結合したブロックコポリマーを含有し、前記第1ブロックを構成するポリマーの構成単位と、前記第3ブロックを構成するポリマーの構成単位とは同一の構造であり、前記第3ブロックを構成するポリマーの数平均分子量(Mn3)は、前記第1ブロックを構成するポリマーの数平均分子量(Mn1)より小さい、相分離構造形成用樹脂組成物である。
【0010】
本発明の第2の態様は、支持体上に、第1の態様に係る相分離構造形成用樹脂組成物を塗布して、前記ブロックコポリマーを含む層を形成する工程と、前記のブロックコポリマーを含む層を相分離させる工程とを有する、相分離構造を含む構造体の製造方法である。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1ブロックと第2ブロックと第3ブロックとが結合し、前記第1ブロックを構成するポリマーの構成単位と、前記第3ブロックを構成するポリマーの構成単位とは同一の構造であり、前記第3ブロックを構成するポリマーの数平均分子量は、前記第1ブロックを構成するポリマーの数平均分子量より小さい、ブロックコポリマーである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プロセスマージンを向上することができる相分離構造形成用樹脂組成物、当該相分離構造形成用樹脂組成物を用いて製造する相分離構造を含む構造体の製造方法、及び当該相分離構造形成用樹脂組成物の樹脂成分として有用なブロックコポリマーを提供することを課題とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】相分離構造を含む構造体の製造方法の一実施形態例を説明する概略工程図である。
図2】任意工程の一実施形態例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「フッ素化アルキル基」又は「フッ素化アルキレン基」は、アルキル基又はアルキレン基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基をいう。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「誘導される構成単位」とは、エチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「置換基を有していてもよい」と記載する場合、水素原子(-H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(-CH-)を2価の基で置換する場合との両方を含む。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
「α位(α位の炭素原子)」とは、特に断りがない限り、ブロックコポリマーの側鎖が結合している炭素原子を意味する。メタクリル酸メチル単位の「α位の炭素原子」は、メタクリル酸のカルボニル基が結合している炭素原子を意味する。スチレン単位の「α位の炭素原子」は、ベンゼン環が結合している炭素原子のことを意味する。
「数平均分子量」(Mn)は、特に断りがない限り、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定される標準ポリスチレン換算の数平均分子量である。
「重量平均分子量」(Mw)は、特に断りがない限り、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。Mn又はMwの値に、単位(gmol)を付したものはモル質量を表す。
本明細書及び本特許請求の範囲において、化学式で表される構造によっては不斉炭素が存在し、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るものがあるが、その場合は一つの式でそれら異性体を代表して表す。それらの異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0015】
本明細書において、「構造体の周期」とは、相分離構造の構造体が形成された際に観察される相構造の周期を意味し、互いに非相溶である各相の長さの和をいう。相分離構造が基板表面に対して垂直なシリンダー構造を形成する場合、構造体の周期(L0)は、隣接する2つのシリンダー構造の中心間距離(ピッチ)となる。
【0016】
構造体の周期(L0)は、重合度N、及び、フローリー-ハギンズ(Flory-Huggins)の相互作用パラメータχなどの固有重合特性によって決まることが知られている。すなわち、χとNとの積「χ・N」が大きくなるほど、ブロックコポリマーにおける異なるブロック間の相互反発は大きくなる。このため、χ・N>10.5(以下「強度分離限界点」という)のときには、ブロックコポリマーにおける異種類のブロック間の反発が大きく、相分離が起こる傾向が強くなる。そして、強度分離限界点においては、構造体の周期はおよそN2/3・χ1/6となり、下式(cy)の関係が成り立つ。つまり、構造体の周期は、分子量と、異なるブロック間の分子量比と、に相関する重合度Nに比例する。
【0017】
L0 ∝ a・N2/3・χ1/6 ・・・(cy)
[式中、L0は、構造体の周期を表す。aは、モノマーの大きさを示すパラメータである。Nは、重合度を表す。χは、相互作用パラメータであり、この値が大きいほど、相分離性能が高いことを意味する。]
【0018】
したがって、ブロックコポリマーの組成及び総分子量を調整することによって、構造体の周期(L0)を調節することができる。
【0019】
(相分離構造形成用樹脂組成物)
本実施形態の相分離構造形成用樹脂組成物は、第1ブロックと第2ブロックと第3ブロックとが結合し、前記第1ブロックを構成するポリマーの構成単位と、前記第3ブロックを構成するポリマーの構成単位とは同一の構造であり、前記第3ブロックを構成するポリマーの数平均分子量(Mn3)は、前記第1ブロックを構成するポリマーの数平均分子量(Mn1)より小さい、ブロックコポリマーを含有する。
【0020】
<ブロックコポリマー>
該ブロックコポリマーは、第1ブロックと第2ブロックと第3ブロックとがこの順に結合したブロックコポリマーであることが好ましく、第1ブロックと第2ブロックと第3ブロックとがこの順に結合しており、第2ブロックの側鎖に連結基を介して第3ブロックが結合していることがより好ましい。
なお、該ブロックコポリマーは、第1ブロック、第2ブロック、及び、第3ブロック以外のブロックを有していてもよい。
【0021】
該ブロックコポリマーにおいて、第1ブロックを構成するポリマーの構成単位と、第3ブロックを構成するポリマーの構成単位とは同一の構造であり、第3ブロックを構成するポリマーの数平均分子量(Mn3)(以下、単に「Mn3」という)は、第1ブロックを構成するポリマーの数平均分子量(Mn1)(以下、単に「Mn1」という)より小さい。
より具体的には、Mn1:Mn3は、1:0.05~1:0.35であることが好ましく、1:0.06~1:0.35であることがより好ましく、1:0.07~1:0.35であることがさらに好ましい。
【0022】
Mn1に対するMn3が上記の好ましい下限値以上であれば、プロセスマージンがより向上する。
また、Mn1に対するMn3が上記の好ましい上限値以下であれば、熱運動性が適度に維持され、ディフェクト発生をより抑制することができる。
ここで「ディフェクト」とは、パターンを真上から観察した際に検知される欠陥全般のことである。この欠陥とは、例えば、パターン表面への異物や析出物の付着による欠陥や、パターン間のブリッジ、パターンの穴埋まり等のパターン形状に関する欠陥、及び、誘導自己組織化(directed self-assembly; DSA)リソグラフィ特有のDislocation欠陥等をいう。
【0023】
Mn1として、具体的には、10000~100000であることが好ましく、15000~50000であることがより好ましく、18000~40000であることがさらに好ましい。
Mn1が上記の好ましい範囲内であれば、プロセスマージンがより向上しやすくなり、また、ディフェクト発生をより抑制しやすくなる。
【0024】
Mn3として、具体的には、1200~11500であることが好ましく、1500~11000であることがより好ましく、1800~10500であることがさらに好ましい。
Mn3が上記の好ましい下限値以上であれば、構造体の周期(L0)をより小さくすることができ、より微細なパターンを形成することができる。
Mn3が上記の好ましい上限値以下であれば、熱運動性が適度に維持され、ディフェクト発生をより抑制することができる。
【0025】
該ブロックコポリマーにおいて、第1ブロック及び第3ブロックと、第2ブロックとの質量比(第1ブロック及び第3ブロックの含有量:第2ブロックの含有量)は、25:75~75:25であることが好ましく、30:70~70:30であることがより好ましく、40:60~60:40であることがさらに好ましい。
該ブロックコポリマーの(第1ブロック及び第3ブロックの含有量:前記第2ブロックの含有量)が上記の好ましい範囲内であれば、本実施形態の相分離構造形成用樹脂組成物によって、支持体表面に対して垂直方向に配向したラメラ形状の相分離構造体がより得られやすくなる。また、該構造体を形成する際のプロセスマージンがより向上し、かつ、ディフェクト発生をより抑制することができる。
第1ブロック及び第3ブロックと、第2ブロックとの質量比(第1ブロック及び第3ブロックの含有量:第2ブロックの含有量)は、H-NMRにより算出することができる。
【0026】
ブロックコポリマーのMn1、Mn2及びMn3は、例えば、以下の方法で算出することができる。
例えば、該ブロックコポリマーがPS-b-PMMA-b-PS’であり、PS’がPMMAの側鎖に結合している場合は、加水分解により、PS-b-PMMAと、PS’とに分けることができる。第3ブロックを構成するポリマーPS’についてサイズ排除クロマトグラフィーによりMn3を算出することができる。また、第1ブロック及び第2ブロックを有するブロックコポリマーの数平均分子量Mn12も算出することができる。第1ブロック及び第2ブロックを有するブロックコポリマーについて、H-NMRにより、該ブロックコポリマー中の第1ブロックを構成するポリマーと、第2ブロックを構成するポリマーとの比率を算出することができるため、上記のMn12から、Mn1及びMn2を算出することができる。
また、ブロックコポリマーの数平均分子量(Mn)と、H-NMRにより各ブロックを構成するポリマーの構成単位が分かれば、L0の関係からMn1、Mn2及びMn3を算出することもできる。
【0027】
該ブロックコポリマーの数平均分子量(Mn)は、20000~200000であることが好ましく、30000~100000であることがより好ましく、36000~80000であることがさらに好ましい。
該ブロックコポリマーの数平均分子量(Mn)が上記の好ましい範囲内であれば、プロセスマージンがより向上しやすくなり、また、ディフェクト発生をより抑制しやすくなる。
【0028】
該ブロックコポリマーの分散度(Mw/Mn)は1.0~3.0が好ましく、1.0~1.5がより好ましく、1.0~1.3がさらに好ましい。
【0029】
該ブロックコポリマーとしては、例えば、芳香族炭化水素基を有する構成単位の複数のブロックと、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位のブロックと、を結合させたブロックコポリマー;芳香族炭化水素基を有する構成単位の複数のブロックと、(α置換)アクリル酸から誘導される構成単位のブロックと、を結合させたブロックコポリマー;芳香族炭化水素基を有する構成単位の複数のブロックと、シロキサン又はその誘導体から誘導される構成単位のブロックと、を結合させたブロックコポリマー;アルキレンオキシドから誘導される構成単位の複数のブロックと、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位のブロックと、を結合させたブロックコポリマー;アルキレンオキシドから誘導される構成単位の複数のブロックと、(α置換)アクリル酸から誘導される構成単位のブロックと、を結合させたブロックコポリマー;かご型シルセスキオキサン構造含有構成単位の複数のブロックと、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位のブロックと、を結合させたブロックコポリマー;かご型シルセスキオキサン構造含有構成単位の複数のブロックと、(α置換)アクリル酸から誘導される構成単位のブロックと、を結合させたブロックコポリマー;かご型シルセスキオキサン構造含有構成単位の複数のブロックと、シロキサン又はその誘導体から誘導される構成単位のブロックと、を結合させたブロックコポリマー等が挙げられる。
【0030】
≪芳香族炭化水素基を有する構成単位≫
芳香族炭化水素基を有する構成単位における芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環であってもよい。
芳香族炭化水素基を有する構成単位における芳香族炭化水素基として、具体的には、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0031】
芳香族炭化水素基を有する構成単位としては、上記の中でも、スチレン、スチレン誘導体、1-ビニルナフタレン、4-ビニルビフェニル、1-ビニル-2-ピロリドン、9-ビニルアントラセン、又は、ビニルピリジンから誘導される構成単位であることが好ましく、スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位であることがより好ましい。
スチレン又はスチレン誘導体として、具体的には、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、4-n-オクチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、4-メトキシスチレン、4-t-ブトキシスチレン、4-ヒドロキシスチレン、4-ニトロスチレン、3-ニトロスチレン、4-クロロスチレン、4-フルオロスチレン、4-アセトキシビニルスチレン、4-クロロメチルスチレン等が挙げられる。
【0032】
≪(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位≫
本明細書において、「(α置換)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステル、及び、アクリル酸エステルにおけるα位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されているものを含むものである。
【0033】
(α置換)アクリル酸エステルとしては、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸アントラセン、アクリル酸グリシジル、アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメタン、アクリル酸プロピルトリメトキシシラン等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸アントラセン、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメタン、メタクリル酸プロピルトリメトキシシラン等のメタクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0034】
(α置換)アクリル酸エステルとしては、上記の中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸t-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸t-ブチルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。
【0035】
≪(α置換)アクリル酸から誘導される構成単位≫
本明細書において、「(α置換)アクリル酸」とは、アクリル酸、及び、アクリル酸におけるα位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されているものを含むものである。
【0036】
(α置換)アクリル酸として、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0037】
≪シロキサン又はその誘導体から誘導される構成単位から誘導される構成単位≫
シロキサン又はその誘導体として、具体的には、ジメチルシロキサン、ジエチルシロキサン、ジフェニルシロキサン、メチルフェニルシロキサン等が挙げられる。
【0038】
≪アルキレンオキシドから誘導される構成単位から誘導される構成単位≫
アルキレンオキシドとして、具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソプロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられる。
【0039】
≪かご型シルセスキオキサン構造含有構成単位から誘導される構成単位≫
かご型シルセスキオキサン(POSS)構造含有構成単位としては、下記一般式(a0-1)で表される構成単位が挙げられる。
【0040】
【化1】
[式中、Rは水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基を表す。Vは置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。Rは置換基を有していてもよい1価の炭化水素基を表し、複数のRはそれぞれ同じであってもよく異なっていてもよい。*は結合手を示す。]
【0041】
前記式(a0-1)中、Rの炭素数1~5のアルキル基は、炭素数1~5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。炭素数1~5のハロゲン化アルキル基は、前記炭素数1~5のアルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
Rとしては、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子またはメチル基が最も好ましい。
【0042】
前記式(a0-1)中、Rにおける1価の炭化水素基は、炭素数1~20が好ましく、より好ましくは1~10であり、さらに好ましくは1~8である。ただし、該炭素数には、後述の置換基における炭素数を含まないものとする。
における1価の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよく、なかでも脂肪族炭化水素基であることが好ましく、1価の脂肪族飽和炭化水素基(アルキル基)であることがより好ましい。
前記アルキル基として、より具体的には、鎖状の脂肪族炭化水素基(直鎖状または分岐鎖状のアルキル基)、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
直鎖状のアルキル基は、炭素数が1~8が好ましく、1~5がより好ましく、1~3がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、n-プロピル基が好ましく、メチル基、エチル基又はイソブチル基がより好ましく、エチル基又はイソブチル基がさらに好ましく、エチル基が特に好ましい。
分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が3~5が好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられ、イソプロピル基又はtert-ブチル基であることが最も好ましい。
構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を1個除いた基)、該環状の脂肪族炭化水素基が前述した鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合するか、又は該環状の脂肪族炭化水素基が前述した鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が3~8であることが好ましく、4~6であることがより好ましく、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式基としては、炭素数3~6のモノシクロアルカンから1つ以上の水素原子を除いた基が好ましく、該モノシクロアルカンとしては、シクロペンタン、シクロヘキサン等が例示できる。多環式基としては、炭素数7~12のポリシクロアルカンから1つ以上の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとして具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0043】
鎖状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1~5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、炭素数1~5のアルキル基、フッ素原子、炭素数1~5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0044】
における1価の炭化水素基が芳香族炭化水素基となる場合、該芳香族炭化水素基としては、芳香環を少なくとも1つ有する1価の炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素数は5~30であることが好ましく、5~20がより好ましく、6~15がさらに好ましく、6~12が特に好ましい。ただし、該炭素数には、後述の置換基における炭素数を含まないものとする。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(たとえばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(たとえば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基)等が挙げられる。
前記アリール基又はヘテロアリール基に結合するアルキレン基の炭素数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。置換基としては、炭素数1~5のアルキル基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1~5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0045】
前記式(a0-1)中、Vにおける2価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。
における2価の炭化水素基としての脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
該脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0046】
前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1~10であることが好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましく、1~3が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0047】
前記構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては前記と同様のものが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素数が3~20であることが好ましく、3~12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0048】
芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素数は5~30であることが好ましく、5~20がより好ましく、6~15がさらに好ましく、6~12が特に好ましい。ただし、該炭素数には、後述の置換基における炭素数を含まないものとする。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を2つ除いた基(アリーレン基またはヘテロアリーレン基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(たとえばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を2つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基)の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(たとえば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基におけるアリール基から水素原子をさらに1つ除いた基)等が挙げられる。
前記アリール基又はヘテロアリール基に結合するアルキレン基の炭素数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0049】
以下に、前記式(a0-1)で表される構成単位の具体例を示す。以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
【0050】
【化2】
【0051】
該ブロックコポリマーとして、より具体的には、スチレンから誘導される構成単位の複数のブロックとアクリル酸メチルから誘導される構成単位のブロックとを有するブロックコポリマー;スチレンから誘導される構成単位の複数のブロックとアクリル酸エチルから誘導される構成単位のブロックとを有するブロックコポリマー;スチレンから誘導される構成単位の複数のブロックとアクリル酸t-ブチルから誘導される構成単位のブロックとを有するブロックコポリマー;スチレンから誘導される構成単位の複数のブロックとメタクリル酸メチルから誘導される構成単位のブロックとを有するブロックコポリマー;スチレンから誘導される構成単位の複数のブロックとメタクリル酸エチルから誘導される構成単位のブロックとを有するブロックコポリマー;スチレンから誘導される構成単位の複数のブロックとメタクリル酸t-ブチルから誘導される構成単位のブロックとを有するブロックコポリマー;かご型シルセスキオキサン(POSS)構造含有構成単位の複数のブロックとアクリル酸メチルから誘導される構成単位のブロックとを有するブロックコポリマー等が挙げられる。
【0052】
該ブロックコポリマーとしては、上記の中でも、第1ブロック及び第3ブロックは、芳香族炭化水素基を含む構成単位の繰り返し構造を有するポリマーからなり、第2ブロックは、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位の繰り返し構造を有するポリマーからなることが好ましい。
すなわち、スチレンから誘導される構成単位の複数のブロックとアクリル酸メチルから誘導される構成単位のブロックとを有するブロックコポリマー;スチレンから誘導される構成単位の複数のブロックとアクリル酸エチルから誘導される構成単位のブロックとを有するブロックコポリマー;スチレンから誘導される構成単位の複数のブロックとアクリル酸t-ブチルから誘導される構成単位のブロックとを有するブロックコポリマー;スチレンから誘導される構成単位の複数のブロックとメタクリル酸メチルから誘導される構成単位のブロックとを有するブロックコポリマー;スチレンから誘導される構成単位の複数のブロックとメタクリル酸エチルから誘導される構成単位のブロックとを有するブロックコポリマー;スチレンから誘導される構成単位の複数のブロックとメタクリル酸t-ブチルから誘導される構成単位のブロックとを有するブロックコポリマーが好ましく、スチレンから誘導される構成単位の複数のブロックとメタクリル酸メチルから誘導される構成単位のブロックとを有するブロックコポリマーがより好ましい。
【0053】
該ブロックコポリマーとしては、上記の中でも、第1ブロック及び第3ブロックは、下記一般式(u1)で表される構成単位の繰り返し構造を有するポリマーからなり、第2ブロックは、下記式(u2)で表される構成単位の繰り返し構造を有するポリマーからなり、第2ブロック側の主鎖末端が下記一般式(e1)で表される末端構造であるブロックコポリマーであることが好ましい。
なお、第1ブロック及び第3ブロックはいずれも一般式(u1)で表される構成単位の繰り返し構造を有するが、繰り返し単位の数が異なり、第3ブロックの方が繰り返し単位の数が少ない(Mn3が、Mn1より小さい)。
【0054】
【化3】
[式中、Rは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基である。Ar01は、芳香族炭化水素基である。]
【0055】
【化4】
[式中、R2は、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基である。Ra01は、炭素数1~10のアルキル基である。]
【0056】
【化5】
[式中、R及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基である。Ra01は、炭素数1~10のアルキル基である。Ar01は、芳香族炭化水素基である。L01は、2価の連結基である。]
【0057】
[一般式(u1)で表される構成単位]
上記一般式(u1)中、Rは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基であり、水素原子であることが好ましい。
上記一般式(u1)中、Ar01は、芳香族炭化水素基であり、上述した≪芳香族炭化水素基を有する構成単位≫における芳香族炭化水素基と同様の基が挙げられる。
Ar01は、その中でも、フェニル基であることが好ましい。
【0058】
[一般式(u2)で表される構成単位]
上記一般式(u2)中、R2は、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基であり、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
上記一般式(u2)中、Ra01は、炭素数1~10のアルキル基であり、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0059】
[一般式(e1)で表される末端構造]
上記一般式(e1)中、R及びR2は、それぞれ一般式(u1)中のRと、一般式(u2)中のR2と同一である。
上記一般式(e1)中のRa01は、上記一般式(u2)中のRa01と同一である。
上記一般式(e1)中のAr01は、上記一般式(u1)中のAr01と同一である。
【0060】
上記一般式(e1)中のL01は、2価の連結基であり、炭素数1~10のアルキレン基であることが好ましい。
炭素数1~10のアルキレン基として、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]等の直鎖状のアルキレン基;-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基、-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基、-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基、-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等の分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。
上記一般式(e1)中のL01は、上記の中でも、炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~5の直鎖状のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数2~5の直鎖状のアルキレン基であることがさらに好ましい。
【0061】
<有機溶剤成分>
本実施形態の相分離構造形成用樹脂組成物は、上述したブロックコポリマーを有機溶剤成分に溶解することにより調製できる。
有機溶剤成分としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、樹脂を主成分とする組成物の溶剤として公知のものの中から任意のものを用いることができる。
【0062】
有機溶剤成分としては、例えば、γ-ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物;前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤などが挙げられる。
有機溶剤成分は、単独で用いてもよいし、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン、ELが好ましい。
【0063】
また、PGMEAと極性溶剤とを混合した混合溶剤も好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは1:9~9:1、より好ましくは2:8~8:2の範囲内とすることが好ましい。
たとえば極性溶剤としてELを配合する場合は、PGMEA:ELの質量比は、好ましくは1:9~9:1、より好ましくは2:8~8:2である。また、極性溶剤としてPGMEを配合する場合は、PGMEA:PGMEの質量比は、好ましくは1:9~9:1、より好ましくは2:8~8:2、さらに好ましくは3:7~7:3である。また、極性溶剤としてPGMEおよびシクロヘキサノンを配合する場合は、PGMEA:(PGME+シクロヘキサノン)の質量比は、好ましくは1:9~9:1、より好ましくは2:8~8:2、さらに好ましくは3:7~7:3である。
【0064】
また、相分離構造形成用樹脂組成物中の有機溶剤成分として、その他には、PGMEAもしくはEL、又は前記PGMEAと極性溶剤との混合溶剤と、γ-ブチロラクトンと、の混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者との質量比が好ましくは70:30~95:5とされる。
相分離構造形成用樹脂組成物に含まれる有機溶剤成分は、特に限定されるものではなく、塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定され、一般的には固形分濃度が0.2~70質量%、好ましくは0.2~50質量%の範囲内となるように用いられる。
【0065】
<任意成分>
本実施形態の相分離構造形成用樹脂組成物は、上述したブロックコポリマー及び有機溶剤成分以外の任意成分を含有してもよい。
任意成分としては、他の樹脂、界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料、増感剤、塩基増殖剤、塩基性化合物等が挙げられる。
【0066】
以上説明した本実施形態の相分離構造形成用樹脂組成物は、第1ブロックと第2ブロックと第3ブロックとが結合したブロックコポリマーであり、第1ブロックを構成するポリマーの構成単位と、第3ブロックを構成するポリマーの構成単位とは同一の構造であり、第3ブロックを構成するポリマーの数平均分子量(Mn3)は、第1ブロックを構成するポリマーの数平均分子量(Mn1)より小さい、ブロックコポリマーを含有する。
従来のMn1=Mn3である、AブロックとBブロックとAブロックとが結合したトリブロックポリマー(ABA)は、異種のブロック鎖をつなぐ結合点が2つある。そのため、トリブロックポリマー(ABA)の分子は、ミクロドメイン中で、結合点が異なる界面状に位置するブリッジ型と、結合点が同一界面上に位置するループ型の分子形態を示す。L0が同じ場合、トリブロックポリマー(ABA)の1分子は、ジブロックポリマー(AB)の2分子分の長さをもつことになるため、Mnが2倍となる。したがって、トリブロックポリマー(ABA)は、L0がより大きいガイドピッチ側のマージンが増大する。しかしながら、Mnが大きくなることでアニール時の熱運動性が低下し、限られたプロセス時間では相分離が十分に行われずディフェクトが増大してしまう。
これに対して、本実施形態の相分離構造形成用樹脂組成物が含有するブロックコポリマーは、Mn3がMn1より小さいため、トリブロックポリマー(ABA)よりもMnが大きくなり過ぎず、熱運動性が維持されるため、プロセスマージンが向上しつつ、ディフェクト発生を抑制することができる。
【0067】
(相分離構造を含む構造体の製造方法)
本実施形態の相分離構造を含む構造体の製造方法は、支持体上に、上述した実施形態の相分離構造形成用樹脂組成物を塗布して、ブロックコポリマーを含む層を形成する工程(以下「工程(i)」という。)と、前記のブロックコポリマーを含む層を相分離させる工程(以下「工程(ii)」という。)と、を有する。
以下、かかる相分離構造を含む構造体の製造方法について、図1を参照しながら具体的に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではない。
【0068】
図1は、相分離構造を含む構造体の製造方法の一実施形態例を示す。
図1に示す実施形態では、まず、支持体1上に下地剤を塗布して、下地剤層2を形成する(図1(I))。
次に、下地剤層2上に、上述した実施形態の相分離構造形成用樹脂組成物を塗布して、上記ブロックコポリマーを含む層(BCP層)3を形成する(図1(II);以上、工程(i))。
次に、加熱してアニール処理を行い、BCP層3を、相3aと相3bとに相分離させる(図1(III);工程(ii))。
かかる実施形態の製造方法、すなわち、工程(i)及び工程(ii)を有する製造方法によれば、下地剤層2が形成された支持体1上に、相分離構造を含む構造体3’が製造される。
【0069】
[工程(i)]
工程(i)では、支持体1上に、相分離構造形成用樹脂組成物を塗布して、BCP層3を形成する。
図1に示す実施形態においては、まず、支持体1上に、下地剤を塗布して、下地剤層2が形成されている。
支持体1上に下地剤層2を設けることによって、支持体1表面と、ブロックコポリマーを含む層(BCP層)3と、の親水疎水バランスが図れる。
【0070】
下地剤:
下地剤としては、樹脂組成物を用いることができる。
下地剤用の樹脂組成物は、ブロックコポリマーを構成するブロックの種類に応じて、薄膜形成に用いられる従来公知の樹脂組成物の中から適宜選択することができる。
下地剤用の樹脂組成物は、例えば熱重合性樹脂組成物であってもよく、ポジ型レジスト組成物やネガ型レジスト組成物等の感光性樹脂組成物であってもよい。その他、化合物を表面処理剤とし、該化合物を塗布して形成された非重合性膜を下地剤層としてもよい。たとえば、フェネチルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン等を表面処理剤として形成されたシロキサン系有機単分子膜も、下地剤層として好適に用いることができる。
【0071】
下地剤用の樹脂組成物としては、たとえば、スチレンとメタクリル酸メチルとの両方を構成単位として有する樹脂を含有する組成物や、芳香環等のスチレンと親和性の高い部位と、メタクリル酸メチルと親和性の高い部位(極性の高い官能基等)と、の両方を含む化合物又は組成物を用いることが好ましい。
スチレンとメタクリル酸メチルとの両方を構成単位として有する樹脂としては、スチレンとメタクリル酸メチルとのランダムコポリマー、スチレンとメタクリル酸メチルとの交互ポリマー(各モノマーが交互に共重合しているもの)等が挙げられる。
また、スチレンと親和性の高い部位と、メタクリル酸メチルと親和性の高い部位と、の両方を含む組成物としては、例えば、モノマーとして、少なくとも、芳香環を有するモノマーと、極性の高い官能基を有するモノマーと、を重合させて得られる樹脂を含有する組成物が挙げられる。芳香環を有するモノマーとしては、フェニル基、ビフェニル(biphenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントリル(anthryl)基、フェナントリル基等の、芳香族炭化水素の環から水素原子を1つ除いたアリール基、又は、これらの基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基等を有するモノマーが挙げられる。また、極性の高い官能基を有するモノマーとしては、トリメトキシシリル基、トリクロロシリル基、エポキシ基、グリシジル基、カルボキシ基、水酸基、シアノ基、アルキル基の水素原子の一部がヒドロキシ基で置換されたヒドロキシアルキル基等を有するモノマーが挙げられる。
その他、スチレンと親和性の高い部位と、メタクリル酸メチルと親和性の高い部位と、の両方を含む化合物としては、フェネチルトリクロロシラン等のアリール基と極性の高い官能基との両方を含む化合物や、アルキルシラン化合物等のアルキル基と極性の高い官能基との両方を含む化合物等が挙げられる。
【0072】
下地剤用の樹脂組成物は、前述の樹脂を溶媒に溶解させて製造することができる。
かかる溶媒としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、たとえば、上述した実施形態の相分離構造形成用樹脂組成物についての説明の中で例示した有機溶剤成分と同様のものが挙げられる。
【0073】
支持体1は、その表面上に樹脂組成物を塗布し得るものであれば、その種類は特に限定されない。例えば、金属(シリコン、銅、クロム、鉄、アルミニウム等)、ガラス、酸化チタン、シリカ、マイカなどの無機物からなる基板;SiO等酸化物からなる基板;SiN等窒化物からなる基板;SiON等の酸化窒化物からなる基板;アクリル、ポリスチレン、セルロース、セルロースアセテート、フェノール樹脂などの有機物からなる基板が挙げられる。これらの中でも、金属の基板が好適であり、例えばシリコン基板(Si基板)又は銅基板(Cu基板)において、ラメラ構造の構造体が形成されやすい。中でも、Si基板が特に好適である。
支持体1の大きさや形状は、特に限定されるものではない。支持体1は、必ずしも平滑な表面を有する必要はなく、様々な形状の基板を適宜選択できる。例えば、曲面を有する基板、表面が凹凸形状の平板、薄片状などの形状の基板が挙げられる。
【0074】
支持体1の表面には、無機系及び/又は有機系の膜が設けられていてもよい。
無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)が挙げられる。
無機系の膜は、例えば、シリコン系材料などの無機系の反射防止膜組成物を、支持体上に塗工し、焼成等することにより形成できる。
有機系の膜は、例えば、該膜を構成する樹脂成分等を有機溶剤に溶解した有機膜形成用材料を、基板上にスピンナー等で塗布し、好ましくは200~300℃、好ましくは30~300秒間、より好ましくは60~180秒間の加熱条件でベーク処理することにより形成できる。この有機膜形成用材料は、レジスト膜のような、光や電子線に対する感受性を必ずしも必要とするものではなく、感受性を有するものであってもよく、有しないものであってもよい。具体的には、半導体素子や液晶表示素子の製造において一般的に用いられているレジストや樹脂を用いることができる。
また、BCP層3を加工して形成される、ブロックコポリマーからなるパターン、を用いて有機系の膜をエッチングすることにより、該パターンを有機系の膜へ転写し、有機系の膜パターンを形成できるように、有機膜形成用材料は、エッチング、特にドライエッチング可能な有機系の膜を形成できる材料であることが好ましい。中でも、酸素プラズマエッチング等のエッチングが可能な有機系の膜を形成できる材料であることが好ましい。このような有機膜形成用材料としては、従来、有機BARCなどの有機膜を形成するために用いられている材料であってよい。例えば、日産化学工業株式会社製のARCシリーズ、ロームアンドハース社製のARシリーズ、東京応化工業株式会社製のSWKシリーズなどが挙げられる。
【0075】
下地剤を支持体1上に塗布して下地剤層2を形成する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法により形成できる。
たとえば、下地剤を、スピンコート又はスピンナーを用いる等の従来公知の方法により支持体1上に塗布して塗膜を形成し、乾燥させることにより、下地剤層2を形成できる。
塗膜の乾燥方法としては、下地剤に含まれる溶媒を揮発させることができればよく、たとえばベークする方法等が挙げられる。この際、ベーク温度は、80~300℃が好ましく、180~270℃がより好ましく、220~250℃がさらに好ましい。ベーク時間は、30~500秒間が好ましく、60~400秒間がより好ましい。
塗膜の乾燥後における下地剤層2の厚さは、10~100nm程度が好ましく、40~90nm程度がより好ましい。
【0076】
支持体1に下地剤層2を形成する前に、支持体1の表面は、予め洗浄されていてもよい。支持体1表面を洗浄することにより、下地剤の塗布性が向上する。
洗浄処理方法としては、従来公知の方法を利用でき、例えば酸素プラズマ処理、オゾン酸化処理、酸アルカリ処理、化学修飾処理等が挙げられる。
【0077】
下地剤層2を形成した後、必要に応じて、溶剤等のリンス液を用いて下地剤層2をリンスしてもよい。該リンスにより、下地剤層2中の未架橋部分等が除去されるため、ブロックコポリマーを構成する少なくとも1つのブロックとの親和性が向上し、支持体1表面に対して垂直方向に配向されたラメラ構造からなる相分離構造が形成されやすくなる。
尚、リンス液は、未架橋部分を溶解し得るものであればよく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、乳酸エチル(EL)等の溶剤、又は市販のシンナー液等を用いることができる。
また、該洗浄後は、リンス液を揮発させるため、ポストベークを行ってもよい。このポストベークの温度条件は、80~300℃が好ましく、100~270℃がより好ましく、120~250℃がさらに好ましい。ベーク時間は、30~500秒間が好ましく、60~240秒間がより好ましい。かかるポストベーク後における下地剤層2の厚さは、1~10nm程度が好ましく、2~7nm程度がより好ましい。
【0078】
次いで、下地剤層2の上に、ブロックコポリマーを含む層(BCP層)3を形成する。
下地剤層2の上にBCP層3を形成する方法としては、特に限定されるものではなく、例えばスピンコート又はスピンナーを用いる等の従来公知の方法により、下地剤層2上に、上述した実施形態の相分離構造形成用樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、乾燥させる方法が挙げられる。
【0079】
BCP層3の厚さは、相分離が起こるために充分な厚さであればよく、支持体1の種類、又は、形成される相分離構造の構造周期サイズもしくはナノ構造体の均一性等を考慮すると、20~100nmが好ましく、30~80nmがより好ましい。
例えば、支持体1がSi基板の場合、BCP層3の厚さは、好ましくは10~100nm、より好ましくは30~80nmに調整される。
【0080】
[工程(ii)]
工程(ii)では、支持体1上に形成されたBCP層3を相分離させる。
工程(i)後の支持体1を加熱してアニール処理を行うことで、ブロックコポリマーの選択除去によって、支持体1表面の少なくとも一部が露出するような相分離構造が形成する。すなわち、支持体1上に、相3aと相3bとに相分離した相分離構造を含む構造体3’が製造される。
アニール処理の温度条件は、用いられているブロックコポリマーのガラス転移温度以上であり、かつ、熱分解温度未満で行うことが好ましく、例えばブロックコポリマーがポリスチレン-ポリメチルメタクリレート(PS-PMMA)ブロックコポリマー(重量平均分子量5000~100000)の場合には、180~270℃が好ましく、200~270℃がより好ましく、220~260℃がさらに好ましい。
加熱時間は、1分から1時間が好ましく、2~45分がより好ましく、5~30分がさらに好ましい。
また、アニール処理は、窒素等の反応性の低いガス中で行われることが好ましい。
【0081】
以上説明した実施形態の相分離構造を含む構造体の製造方法は、上述した実施形態の相分離構造形成用樹脂組成物が用いられているため、良好なプロセスマージンを有する。
【0082】
加えて、本実施形態の相分離構造を含む構造体によれば、支持体表面に、位置及び配向性がより自在にデザインされたナノ構造体を備える支持体を製造し得る。
例えば、本実施形態の相分離構造を含む構造体の製造方法によれば、形成される構造体は、ラメラ構造からなる相分離構造をとりやすい。
【0083】
[任意工程]
相分離構造を含む構造体の製造方法は、上述した実施形態に限定されず、工程(i)及び(ii)以外の工程(任意工程)を有してもよい。
【0084】
かかる任意工程としては、BCP層3のうち、ブロックコポリマーを構成するブロックのうちの少なくとも一種類のブロックからなる相を選択的に除去する工程(以下「工程(iii)」という。)、ガイドパターン形成工程等が挙げられる。
【0085】
・工程(iii)について
工程(iii)では、下地剤層2の上に形成された、BCP層のうち、ブロックコポリマーを構成するブロックのうちの少なくとも一種類のブロックからなる相を選択的に除去する。これにより、微細なパターン(高分子ナノ構造体)が形成される。
【0086】
ブロックからなる相を選択的に除去する方法としては、BCP層に対して酸素プラズマ処理を行う方法、水素プラズマ処理を行う方法等が挙げられる。
例えば、前記ブロックコポリマーを含むBCP層を相分離した後、該BCP層に対して酸素プラズマ処理や水素プラズマ処理等を行うことにより、第1及び第3ブロックからなる相は選択的に除去されず。第2ブロックからなる相が選択的に除去される。
【0087】
図2は、工程(iii)の一実施形態例を示す。
図2に示す実施形態においては、工程(ii)で支持体1上に製造された構造体3’に、酸素プラズマ処理を行うことによって、相3aが選択的に除去され、離間した相3bからなるパターン(高分子ナノ構造体)が形成されている。
【0088】
上記のようにして前記ブロックコポリマーからなるBCP層3の相分離によってパターンが形成された支持体1は、そのまま使用することもできるが、さらに加熱することにより、支持体1上のパターン(高分子ナノ構造体)の形状を変更することもできる。
加熱の温度条件は、用いるブロックコポリマーのガラス転移温度以上であり、かつ、熱分解温度未満が好ましい。また、加熱は、窒素等の反応性の低いガス中で行われることが好ましい。
【0089】
・ガイドパターン形成工程について
相分離構造を含む構造体の製造方法においては、下地剤層上にガイドパターンを設ける工程(ガイドパターン形成工程)を有してもよい。これにより、相分離構造の配列構造制御が可能となる。
例えば、ガイドパターンを設けない場合に、ランダムな指紋状の相分離構造が形成されるブロックコポリマーであっても、下地剤層表面にレジスト膜の溝構造を設けることにより、その溝に沿って配向した相分離構造が得られる。このような原理で、下地剤層2上にガイドパターンを設けてもよい。また、ガイドパターンの表面が、上記ブロックコポリマーを構成するいずれかのブロックと親和性を有することにより、支持体表面に対して垂直方向に配向されたラメラ構造からなる相分離構造が形成しやすくなる。
【0090】
ガイドパターンは、例えばレジスト組成物を用いて形成できる。
ガイドパターンを形成するレジスト組成物は、一般的にレジストパターンの形成に用いられるレジスト組成物やその改変物の中から、上記ブロックコポリマーを構成するいずれかのブロックと親和性を有するものを適宜選択して用いることができる。該レジスト組成物としては、レジスト膜露光部が溶解除去されるポジ型パターンを形成するポジ型レジスト組成物、レジスト膜未露光部が溶解除去されるネガ型パターンを形成するネガ型レジスト組成物のいずれであってもよいが、ネガ型レジスト組成物であることが好ましい。ネガ型レジスト組成物としては、例えば、酸発生剤と、酸の作用により有機溶剤を含有する現像液への溶解性が酸の作用により減少する基材成分とを含有し、該基材成分が、酸の作用により分解して極性が増大する構成単位を有する樹脂成分、を含有するレジスト組成物が好ましい。
ガイドパターンが形成された下地剤層上に相分離構造形成用樹脂組成物が流し込まれた後、相分離を起こすためにアニール処理が行われる。このため、ガイドパターンを形成するレジスト組成物としては、耐溶剤性と耐熱性とに優れたレジスト膜を形成し得るものであることが好ましい。
【0091】
(ブロックコポリマー)
本実施形態のブロックコポリマーは、第1ブロックと第2ブロックと第3ブロックとが結合し、第1ブロックを構成するポリマーの構成単位と、第3ブロックを構成するポリマーの構成単位とは同一の構造であり、第3ブロックを構成するポリマーの数平均分子量は、第1ブロックを構成するポリマーの数平均分子量より小さい、ブロックコポリマーである。
【0092】
該ブロックポリマーにおいて、第1ブロック及び第3ブロックは、芳香族炭化水素基を含む構成単位の繰り返し構造を有するポリマーからなり、第2ブロックは、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位の繰り返し構造を有するポリマーからなることが好ましい。
【0093】
本実施形態のブロックコポリマーは、上述した相分離構造形成用樹脂組成物におけるブロックコポリマーと同一である。
本実施形態のブロックコポリマーは、構造体を形成する際のプロセスマージンがより向上できる観点から、相分離構造を含む構造体の製造方法に用いるのに好適なブロックコポリマー(相分離構造形成用ブロックコポリマー)である。
【0094】
(ブロックコポリマーの製造方法)
本実施形態におけるブロックコポリマーは、公知の方法で製造することができる。
例えば、第1ブロックを構成するポリマーの構成単位を誘導するモノマーと、第2ブロックを構成するポリマーの構成単位を誘導するモノマーと、第3ブロックを構成するポリマーの構成単位を誘導するモノマーとをリビング重合して、本実施形態におけるブロックコポリマーを得ることができる。
一方で、例えば、モノマーとしてスチレンとメタクリル酸メチルとを用いる場合、以下に示す工程(工程A及びB)を有する製造方法により製造することができる。
工程A:スチレンとメタクリル酸メチルとを重合して、ブロックコポリマー(PS-b-PMMA)を得る工程
工程B:工程Aで得たブロックコポリマー(PS-b-PMMA)と、主鎖末端にヒドロキシ基を有するポリスチレンとをエステル交換反応させる工程
【0095】
工程A:
スチレンとメタクリル酸メチルとの重合は、ブロックコポリマー(PS-b-PMMA)を容易に得られることから、リビング重合が好ましい。好ましいリビング重合の方法としては、リビングアニオン重合、リビングラジカル重合が挙げられ、狭分散化がより図れることから、リビングアニオン重合が特に好ましい。
【0096】
工程B:
工程Bにおける主鎖末端にヒドロキシ基を有するポリスチレンとしては、例えば、下記式(PS-OH)で表される化合物が挙げられる。
【0097】
【化6】
【0098】
工程Bは塩基触媒の存在下に行ってもよい。
該塩基触媒として、具体的には、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)等が挙げられる。
【0099】
工程Bの反応温度は、好ましくは50~200℃、より好ましくは80~180℃である。
工程Bの反応時間は、10~300時間であることが好ましい。
【実施例0100】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0101】
<ブロックコポリマーの合成例>
実施例1~10の相分離構造形成用樹脂組成物が含有するブロックコポリマー(BCP1~10)を以下の方法で合成した。BCP1~10を合成するために用いたスチレンのブロックとメタクリル酸メチルのブロックとを有するブロックコポリマー(PS-b-PMMA)及び下記式(PS-OH)で表される化合物のMn及び共重合組成比(PS/PMMA)は、表2に示す通りである。
【0102】
【化7】
【0103】
グリースレスバルブ付きフラスコ(30mL)に撹拌子、PS-b-PMMA 500mg、及び、上記式(PS-OH)で表される化合物を表1に示す量加え、アルミバスにて100℃で真空引きを行い一晩乾燥させた。乾燥後、該フラスコにトルエン5mLに溶解させたTBD 5mg(0.0357mmol)を加え、アルミバスにて150℃で撹拌した。撹拌後、室温に戻したのちに安息香酸を約5mg加えた。常温MeOHにて再沈殿を行い、真空乾燥を行った。サンプル(300mg分のみ)をシクロヘキサンに分散させ、75℃で15分撹拌し遠心分離後に溶媒を除去。この工程を3回行った。遠心分離後、再沈殿、真空乾燥を行い、各ブロックコポリマー(PS-b-PMMA-b-PS’)を合成した。
【0104】
【表1】
【0105】
【化8】
【0106】
<相分離構造形成用樹脂組成物の調製>
各ブロックコポリマーを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させ混合し、各例の相分離構造形成用樹脂組成物(固形分濃度1.3質量%)をそれぞれ調製した。
なお比較例1~4の用いたブロックコポリマーは、第1ブロック及び第2ブロックのみを有するPS-b-PMMAであり、比較例5で用いたブロックコポリマーは、第1ブロックと第3ブロックが同一の構造及び分子量であるブロックコポリマー(PS-b-PMMA-b-PS)である。
表2の(PS-b-PMMA-b-PS’)のMnは、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定した標準ポリスチレン換算の数平均分子量である。
PS’置換率は、原料として用いた(PS-b-PMMA)のMnと、上記(PS-b-PMMA-b-PS’)のMnとから算出した。なお、置換率が100%を超えているものは、PS-b-PMMAのPMAA末端だけでなく、PMMAブロック中のメタクリル酸メチルから誘導される構成単位と、PS-OHとがエステル交換されていることを意味する。
表2の(PS-b-PMMA-b-PS’)の共重合組成比は、H-NMRにより算出した。
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
[構造体の周期(L0)の評価]
12インチシリコンウェハ上に濃度2wt%のPGMEA溶液に調整した中性化膜樹脂組成物(スチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸2-ヒドロキシエチル=82/12/6)をスピンナーを用いて塗布し、250℃300秒間焼成して乾燥させることにより膜厚60nmの中性化膜からなる層を基板上に形成した。
次いで、中性化膜の基板密着部以外の部分を溶剤OK73シンナー(東京応化工業製)で除去し、100℃60秒間ポストベークを行い、中性化膜からなる層上に各例の相分離構造精製用樹脂組成物をスピンコートした後、90℃60秒間ソフトベークし、膜厚35nmのBCP層を形成した。
この基板を窒素気流下250℃30分間加熱させてアニールすることにより、相分離構造を含む構造体を形成した。その後、ブロックの選択的除去処理を行い、Finger printパターンを形成した。形成されたパターンは日立ハイテク社製の測長走査型電子顕微鏡CG6300で画像を取得した。取得した画像100枚を日立ハイテク社製の画像解析ソフトのDSA-APPSで解析し、算出された100枚のL0の平均値を求めた。その結果を「L0(nm)」として表4及び5に示す。また、相分離構造の形状を「形状」として表4及び5に示す。
【0110】
[プロセスマージンの評価]
反射防止膜として窒化ケイ素を製膜した12インチシリコンウェハ上に濃度0.4wt%のPGMEA溶液に調整したポリスチレン化膜樹脂組成物(スチレン/ビニルベンゾシクロブテン)を、スピンナーを用いて塗布し、250℃300秒間焼成して乾燥させることにより膜厚8nmのポリスチレン化膜からなる層を基板上に形成した。
その後、液浸用ArFフォトレジストを塗布し、90℃で60秒間ベークした。
ArF液浸露光機(ASML NXT1900iスキャナー、NA:1.35、quadrupole、0.87、0.72)で露光した後、露光後ベークを110℃60秒間行った。
現像後、酸素/窒素系を用いたプラズマエッチング、その後のレジスト剥離、100℃60秒間のポストベークにより、ポリスチレン化膜のパターン形成を行った。その後2wt%のPGMEA溶液に調整した中性化膜樹脂組成物(スチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸ヒドロキシエチル)を塗布し、250℃で300秒間ベークし、OK73シンナーでリンスをして、100℃60秒間のポストベーク後、評価ガイド基板を作成した。
得られたガイド基板は、繰り返しパターンごとに小片に分割し評価に用いた。
【0111】
各例の相分離構造精製用樹脂組成物をガイド基板に塗布し90℃で60秒間ベーク後250℃で30分間アニールを行い、相分離パターン形成を行った。
その後酸素プラズマアッシングで表面に凹凸を付けたあと白金蒸着を行いSU8000でSEM観察を行った。ガイドピッチ(X方向)とガイド寸法(Y方向)が振られたガイドで、96セル中の欠陥がないセルの数を確認した。欠陥がないセルの数が多いほど、複数のピッチに対して1つのブロックコポリマーで対応が可能であることを意味する。その結果を「プロセスマージン」として表4及び5に示す。
【0112】
【表4】
【0113】
【表5】
【0114】
表4及び5に示す通り、実施例の相分離構造形成用樹脂組成物は、比較例の相分離構造形成用樹脂組成物に比べてプロセスマージンが良好であることが確認できた。
図1
図2