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特開2024-75204ブロックコポリマーの製造方法、及び、ブロックコポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075204
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】ブロックコポリマーの製造方法、及び、ブロックコポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 81/02 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
C08G81/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186472
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏文
(72)【発明者】
【氏名】磯野 拓也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和重
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 冬威
(72)【発明者】
【氏名】宮城 賢
(72)【発明者】
【氏名】太宰 尚宏
【テーマコード(参考)】
4J031
【Fターム(参考)】
4J031AA13
4J031AA38
4J031AB02
4J031AC03
4J031AD01
4J031AF22
4J031AF26
(57)【要約】
【課題】トリブロック体であるブロックコポリマーを量産することができるブロックコポリマーの製造方法、及び、当該製造方法によって得られるブロックコポリマーの提供。
【解決手段】芳香族炭化水素基を含む構成単位の繰り返し構造からなる第1ブロック、及び(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位の繰り返し構造からなる第2ブロックを有するジブロック体であるブロックコポリマーと、芳香族炭化水素基を含む構成単位の繰り返し構造からなる第3ブロック、及び前記第3ブロックの主鎖末端に結合したヒドロキシ基を有するホモポリマーとを反応させて、トリブロック体を得る工程を有し、前記反応は、前記ジブロック体の主鎖末端の(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位と、前記ホモポリマーとのエステル交換反応である、トリブロック体であるブロックコポリマーの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族炭化水素基を含む構成単位の繰り返し構造からなる第1ブロック、及び(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位の繰り返し構造からなる第2ブロックを有するジブロック体であるブロックコポリマーと、
芳香族炭化水素基を含む構成単位の繰り返し構造からなる第3ブロック、及び前記第3ブロックの主鎖末端に結合したヒドロキシ基を有するホモポリマーとを反応させて、トリブロック体を得る工程を有し、
前記反応は、前記ジブロック体の主鎖末端の(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位と、前記ホモポリマーとのエステル交換反応である、トリブロック体であるブロックコポリマーの製造方法。
【請求項2】
前記第1ブロック及び第3ブロックと、前記第2ブロックとの質量比(前記第1ブロック及び第3ブロックの含有量:前記第2ブロックの含有量)が、25:75~75:25となるように、前記ブロックコポリマー及び前記ホモポリマーを反応させる、請求項1に記載のブロックコポリマーの製造方法。
【請求項3】
前記第1ブロックを構成するポリマーの数平均分子量(Mn1)と、前記第3ブロックを構成するポリマーの数平均分子量(Mn3)との比が、Mn1:Mn3=1:0.05~1:0.35となるように、前記ブロックコポリマー及び前記ホモポリマーを反応させる、請求項1又は2に記載のブロックコポリマーの製造方法。
【請求項4】
前記第1ブロックを構成するポリマーの構成単位と、前記第3ブロックを構成するポリマーの構成単位とは同一の構造である、請求項1又は2に記載のブロックコポリマーの製造方法。
【請求項5】
第1ブロックと第2ブロックと第3ブロックとが結合し、
前記第1ブロック及び前記第3ブロックは、芳香族炭化水素基を含む構成単位の繰り返し構造を有するポリマーからなり、
前記第2ブロックは、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位の繰り返し構造を有するポリマーからなり、
前記第2ブロックの側鎖にエステル結合を含む連結基を介して結合している前記第3ブロックを有する、ブロックコポリマー。
【請求項6】
前記第1ブロックを構成するポリマーの構成単位と、前記第3ブロックを構成するポリマーの構成単位とは同一の構造である、請求項5に記載のブロックコポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックコポリマーの製造方法、及び、ブロックコポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)のさらなる微細化に伴い、より繊細な構造体を加工する技術が求められている。
このような要望に対し、互いに非相溶性のブロック同士が結合したブロックコポリマーの自己組織化により形成される相分離構造を利用して、より微細なパターンを形成する技術の開発が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
該ブロックコポリマーは、互いに非相溶性のブロック同士の反発によりミクロな領域で分離(相分離)し、熱処理等を行うことで、規則的な周期構造の構造体を形成する。この周期構造として、具体的には、シリンダー(柱状)、ラメラ(板状)、スフィア(球状)等が挙げられる。
【0004】
ブロックコポリマーの相分離構造を利用するためには、ミクロ相分離により形成される自己組織化ナノ構造を、特定の領域のみに形成し、かつ、所望の方向へ配列させることが必須とされる。これらの位置制御及び配向制御を実現するために、ガイドパターンによって相分離パターンを制御するグラフォエピタキシーや、基板の化学状態の違いによって相分離パターンを制御するケミカルエピタキシー等のプロセスが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
ブロックコポリマーの自己組織化により形成される相分離構造を利用してパターンを形成する方法については、1つのピッチに対して、それに合わせたL0(=Mn)を持つブロックコポリマーを用意する必要がある。したがって、複数のピッチのデザインに対しては個々にブロックコポリマーを準備する必要がある。
上記のパターン形成方法において、複数のピッチに対して1つのブロックコポリマーで対応できれば、上記のパターン形成方法の適用範囲は大きく広がる。
したがって、上記のパターン形成方法において、プロセスマージンの向上が求められる。
【0006】
プロセスマージンをより向上する観点から、従来のジブロックポリマーにさらに1つのブロックを追加したトリブロックポリマーが開発されている。
例えば、特許文献2には、ビニル芳香族化合物に由来する構造単位からなる重合体ブロックと、共役ジエンに由来する構造単位からなる重合体ブロックと、炭素数1~20の鎖状または環状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位からなる重合体ブロックとを有するトリブロックポリマーが開示されている。また、該トリブロックポリマーの製造方法として、ビニル芳香族化合物、共役ジエン、及び、炭素数1~20の鎖状または環状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアニオン重合を、この順で段階的に行う製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-36491号公報
【特許文献2】国際公開第2015/046510号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】プロシーディングスオブエスピーアイイー(Proceedings of SPIE),第7637巻,第76370G-1(2010年).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、使用するモノマーによっては、特許文献2のように各モノマーを段階的に重合できない場合がある。
例えば、リビングアニオン重合により、2つのスチレンのブロックとメタクリル酸メチルのブロックとを有するトリブロックポリマー(PS-b-PMMA-b-PS’)を合成することはできない。これは、PS活性末端の求核性が高いためPMMAのカルボニル基などへの副反応が生じるため、一般的には1,1-ジフェニルエチレンを活性末端に反応させ、求核性を落として副反応を抑止しながらPMMAの重合を行うが、その後に高求核性が必要なスチレンは重合が進行しないからである。
また、分散度を最も狭くできるリビングアニオン重合によりトリブロックポリマーを製造する場合、一般的に両末端開始剤としては金属NaまたはKが用いられているため、安全性の観点から量産できないという問題がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、トリブロック体であるブロックコポリマーを量産することができるブロックコポリマーの製造方法、及び、当該製造方法によって得られるブロックコポリマーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、芳香族炭化水素基を含む構成単位の繰り返し構造からなる第1ブロック、及び(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位の繰り返し構造からなる第2ブロックを有するジブロック体であるブロックコポリマーと、芳香族炭化水素基を含む構成単位の繰り返し構造からなる第3ブロック、及び前記第3ブロックの主鎖末端に結合したヒドロキシ基を有するホモポリマーとを反応させて、トリブロック体を得る工程を有し、前記反応は、前記ジブロック体の主鎖末端の(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位と、前記ホモポリマーとのエステル交換反応である、トリブロック体であるブロックコポリマーの製造方法である。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1ブロックと第2ブロックと第3ブロックとが結合し、前記第1ブロック及び前記第3ブロックは、芳香族炭化水素基を含む構成単位の繰り返し構造を有するポリマーからなり、前記第2ブロックは、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位の繰り返し構造を有するポリマーからなり、前記第2ブロックの側鎖にエステル結合を含む連結基を介して結合している前記第3ブロックを有する、ブロックコポリマーである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トリブロック体であるブロックコポリマーを量産することができるブロックコポリマーの製造方法、及び、当該製造方法によって得られるブロックコポリマーを提供することを課題とする。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「フッ素化アルキル基」又は「フッ素化アルキレン基」は、アルキル基又はアルキレン基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基をいう。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「誘導される構成単位」とは、エチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「置換基を有していてもよい」と記載する場合、水素原子(-H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(-CH-)を2価の基で置換する場合との両方を含む。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
「α位(α位の炭素原子)」とは、特に断りがない限り、ブロックコポリマーの側鎖が結合している炭素原子を意味する。メタクリル酸メチル単位の「α位の炭素原子」は、メタクリル酸のカルボニル基が結合している炭素原子を意味する。スチレン単位の「α位の炭素原子」は、ベンゼン環が結合している炭素原子のことを意味する。
「数平均分子量」(Mn)は、特に断りがない限り、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定される標準ポリスチレン換算の数平均分子量である。
「重量平均分子量」(Mw)は、特に断りがない限り、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。Mn又はMwの値に、単位(gmol)を付したものはモル質量を表す。
本明細書及び本特許請求の範囲において、化学式で表される構造によっては不斉炭素が存在し、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るものがあるが、その場合は一つの式でそれら異性体を代表して表す。それらの異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0015】
本明細書において、「構造体の周期」とは、相分離構造の構造体が形成された際に観察される相構造の周期を意味し、互いに非相溶である各相の長さの和をいう。相分離構造が基板表面に対して垂直なシリンダー構造を形成する場合、構造体の周期(L0)は、隣接する2つのシリンダー構造の中心間距離(ピッチ)となる。
【0016】
構造体の周期(L0)は、重合度N、及び、フローリー-ハギンズ(Flory-Huggins)の相互作用パラメータχなどの固有重合特性によって決まることが知られている。すなわち、χとNとの積「χ・N」が大きくなるほど、ブロックコポリマーにおける異なるブロック間の相互反発は大きくなる。このため、χ・N>10.5(以下「強度分離限界点」という)のときには、ブロックコポリマーにおける異種類のブロック間の反発が大きく、相分離が起こる傾向が強くなる。そして、強度分離限界点においては、構造体の周期はおよそN2/3・χ1/6となり、下式(cy)の関係が成り立つ。つまり、構造体の周期は、分子量と、異なるブロック間の分子量比と、に相関する重合度Nに比例する。
【0017】
L0 ∝ a・N2/3・χ1/6 ・・・(cy)
[式中、L0は、構造体の周期を表す。aは、モノマーの大きさを示すパラメータである。Nは、重合度を表す。χは、相互作用パラメータであり、この値が大きいほど、相分離性能が高いことを意味する。]
【0018】
したがって、ブロックコポリマーの組成及び総分子量を調整することによって、構造体の周期(L0)を調節することができる。
【0019】
(ブロックコポリマーの製造方法)
本実施形態のブロックコポリマーの製造方法は、芳香族炭化水素基を含む構成単位の繰り返し構造からなる第1ブロック、及び(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位の繰り返し構造からなる第2ブロックを有するジブロック体であるブロックコポリマーと、芳香族炭化水素基を含む構成単位の繰り返し構造からなる第3ブロック、及び前記第3ブロックの主鎖末端に結合したヒドロキシ基を有するホモポリマーとを反応させて、トリブロック体を得る工程を有し、前記反応は、前記ジブロック体の主鎖末端の(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位と、前記ホモポリマーとのエステル交換反応である、トリブロック体であるブロックコポリマーの製造方法である。
【0020】
<ジブロック体であるブロックコポリマー>
本実施形態のブロックコポリマーの製造方法におけるジブロック体であるブロックコポリマーは、芳香族炭化水素基を含む構成単位の繰り返し構造からなる第1ブロック、及び(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位の繰り返し構造からなる第2ブロックを有する。
【0021】
該ジブロックコポリマーにおける第1ブロックと第2ブロックとの質量比(第1ブロックの含有量:第2ブロックの含有量)は、25:75~75:25であることが好ましく、30:70~70:30であることがより好ましく、40:60~60:40であることがさらに好ましい。
該ジブロックコポリマーにおける第1ブロックと第2ブロックとの質量比が上記の好ましい範囲内であれば、プロセスマージンがより向上し、かつ、ディフェクト発生をより抑制することができる。
【0022】
該ジブロックコポリマーの数平均分子量(Mn)は、20000~200000であることが好ましく、30000~100000であることがより好ましく、36000~80000であることがさらに好ましい。
【0023】
該ジブロックコポリマーにおける第1ブロックを構成するポリマーの数平均分子量(Mn1)(以下、単に「Mn1」という)は、10000~100000であることが好ましく、15000~50000であることがより好ましく、18000~40000であることがさらに好ましい。
Mn1が上記の好ましい範囲内であれば、プロセスマージンがより向上しやすくなり、また、ディフェクト発生をより抑制しやすくなる。
【0024】
該ジブロックコポリマーにおける第2ブロックを構成するポリマーの数平均分子量(Mn2)(以下、単に「Mn2」という)は、10000~100000であることが好ましく、15000~50000であることがより好ましく、18000~40000であることがさらに好ましい。
Mn2が上記の好ましい範囲内であれば、プロセスマージンがより向上しやすくなり、また、ディフェクト発生をより抑制しやすくなる。
【0025】
≪芳香族炭化水素基を有する構成単位≫
芳香族炭化水素基を有する構成単位における芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環であってもよい。
芳香族炭化水素基を有する構成単位における芳香族炭化水素基として、具体的には、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0026】
芳香族炭化水素基を有する構成単位としては、上記の中でも、スチレン、スチレン誘導体、1-ビニルナフタレン、4-ビニルビフェニル、1-ビニル-2-ピロリドン、9-ビニルアントラセン、又は、ビニルピリジンから誘導される構成単位であることが好ましく、スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位であることがより好ましい。
スチレン又はスチレン誘導体として、具体的には、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、4-n-オクチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、4-メトキシスチレン、4-t-ブトキシスチレン、4-ヒドロキシスチレン、4-ニトロスチレン、3-ニトロスチレン、4-クロロスチレン、4-フルオロスチレン、4-アセトキシビニルスチレン、4-クロロメチルスチレン等が挙げられる。
【0027】
≪(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位≫
本明細書において、「(α置換)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステル、及び、アクリル酸エステルにおけるα位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されているものを含むものである。
【0028】
(α置換)アクリル酸エステルとしては、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸アントラセン、アクリル酸グリシジル、アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメタン、アクリル酸プロピルトリメトキシシラン等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸アントラセン、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメタン、メタクリル酸プロピルトリメトキシシラン等のメタクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0029】
(α置換)アクリル酸エステルとしては、上記の中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸t-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸t-ブチルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。
【0030】
本実施形態のブロックコポリマーの製造方法におけるジブロック体であるブロックコポリマーとして、具体的には、スチレンから誘導される構成単位のブロックとアクリル酸メチルから誘導される構成単位のブロックとを有するブロックコポリマー;スチレンから誘導される構成単位のブロックとアクリル酸エチルから誘導される構成単位のブロックとを有するブロックコポリマー;スチレンから誘導される構成単位のブロックとアクリル酸t-ブチルから誘導される構成単位のブロックとを有するブロックコポリマー;スチレンから誘導される構成単位のブロックとメタクリル酸メチルから誘導される構成単位のブロックとを有するブロックコポリマー;スチレンから誘導される構成単位のブロックとメタクリル酸エチルから誘導される構成単位のブロックとを有するブロックコポリマー;スチレンから誘導される構成単位のロックとメタクリル酸t-ブチルから誘導される構成単位のブロックとを有するブロックコポリマー等が挙げられる。
上記の中でも、該ブロックコポリマーとしては、スチレンから誘導される構成単位のブロックとメタクリル酸メチルから誘導される構成単位のブロックとを有するブロックコポリマーが好ましい。
【0031】
<芳香族炭化水素基を含む構成単位の繰り返し構造からなる第3ブロック、及び前記第3ブロックの主鎖末端に結合したヒドロキシ基を有するホモポリマー>
本実施形態のブロックコポリマーの製造方法におけるホモポリマーは、芳香族炭化水素基を含む構成単位の繰り返し構造からなる第3ブロック、及び前記第3ブロックの主鎖末端に結合したヒドロキシ基を有する。
該芳香族炭化水素基を含む構成単位は、上述した第1ブロックにおける芳香族炭化水素基を含む構成単位と同様のものが挙げられる。
上述した第1ブロックを構成するポリマーの構成単位と、第3ブロックを構成するポリマーの構成単位とは同一の構造であっても、異なった構造であってもよいが、同一の構造であることが好ましく、第1ブロックを構成するポリマーの構成単位と第3ブロックを構成するポリマーの構成単位とは同一の構造であり、かつ、第3ブロックを構成するポリマーの数平均分子量(Mn3)は、第1ブロックを構成するポリマーの数平均分子量(Mn1)より小さいことがより好ましい。
【0032】
該ホモポリマーとして、具体的には、下記一般式(h1)で表されるホモポリマーが挙げられる。
【0033】
【化1】
[式中、Rは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基である。Ar01は、芳香族炭化水素基である。L01は、2価の連結基である。]
【0034】
上記一般式(h1)中、Rは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基であり、水素原子であることが好ましい。
上記一般式(h1)中、Ar01は、芳香族炭化水素基であり、上述した≪芳香族炭化水素基を有する構成単位≫における芳香族炭化水素基と同様の基が挙げられる。
Ar01は、その中でも、フェニル基であることが好ましい。
【0035】
上記一般式(h1)中、L01は、2価の連結基であり、炭素数1~10のアルキレン基であることが好ましい。
炭素数1~10のアルキレン基として、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]等の直鎖状のアルキレン基;-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基、-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基、-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基、-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等の分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。
上記一般式(e1)中のL01は、上記の中でも、炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~5の直鎖状のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数2~5の直鎖状のアルキレン基であることがさらに好ましい。
【0036】
ホモポリマー(第3ブロックを構成するポリマー)の数平均分子量(Mn3)(以下、単に「Mn3」という)は、1200~11500であることが好ましく、1500~11000であることがより好ましく、1800~10500であることがさらに好ましい。
Mn3が上記の好ましい下限値以上であれば、構造体の周期(L0)をより小さくすることができ、より微細なパターンを形成することができる。
Mn3が上記の好ましい上限値以下であれば、熱運動性が適度に維持され、ディフェクト発生をより抑制することができる。
【0037】
本工程において、第1ブロック及び第3ブロックと、第2ブロックとの質量比(第1ブロック及び第3ブロックの含有量:第2ブロックの含有量)が、好ましくは25:75~75:25となるように、より好ましくは30:70~70:30となるように、さらに好ましくは40:60~60:40となるように、上記ブロックコポリマー及び上記ホモポリマーを反応させることが好ましい。
上記の好ましい質量比となるように上記ブロックコポリマー及び上記ホモポリマーを反応させることで、プロセスマージンがより向上し、かつ、ディフェクト発生をより抑制することができる。
第1ブロック及び第3ブロックと、第2ブロックとの質量比(第1ブロック及び第3ブロックの含有量:第2ブロックの含有量)は、H-NMRにより算出することができる。
【0038】
本工程において、Mn1:Mn3が、好ましくは1:0.05~1:0.35となるように、より好ましくは1:0.06~1:0.35となるように、さらに好ましくは1:0.07~1:0.35となるように、上記ブロックコポリマー及び上記ホモポリマーを反応させることが好ましい。
上記の好ましい質量比となるように上記ブロックコポリマー及び上記ホモポリマーを反応させることで、プロセスマージンがより向上し、かつ、ディフェクト発生をより抑制することができる。
【0039】
ブロックコポリマーのMn1、Mn2及びMn3は、例えば、以下の方法で算出することができる。
例えば、該ブロックコポリマーがPS-b-PMMA-b-PS’であり、PS’がPMMAの側鎖に結合している場合は、加水分解により、PS-b-PMMAと、PS’とに分けることができる。第3ブロックを構成するポリマーPS’についてサイズ排除クロマトグラフィーによりMn3を算出することができる。また、第1ブロック及び第2ブロックを有するブロックコポリマーの数平均分子量Mn12も算出することができる。第1ブロック及び第2ブロックを有するブロックコポリマーについて、H-NMRにより、該ブロックコポリマー中の第1ブロックを構成するポリマーと、第2ブロックを構成するポリマーとの比率を算出することができるため、上記のMn12から、Mn1及びMn2を算出することができる。
また、ブロックコポリマーの数平均分子量(Mn)と、H-NMRにより各ブロックを構成するポリマーの構成単位が分かれば、L0の関係からMn1、Mn2及びMn3を算出することもできる。
【0040】
本工程は塩基触媒の存在下に行ってもよい。
該塩基触媒として、具体的には、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)等が挙げられる。
【0041】
本工程の反応温度は、好ましくは50~200℃、より好ましくは80~180℃である。
本工程の反応時間は、10~300時間であることが好ましい。
【0042】
本実施形態のブロックコポリマーの製造方法によって、トリブロック体であるブロックコポリマーが得られるが、本実施形態のブロックコポリマーの製造方法によって得られるブロックコポリマーの中には、3つ以上のブロックを有するブロックコポリマーも含まれ得る。
本実施形態のブロックコポリマーの製造方法において、ジブロック体であるブロックコポリマーの主鎖末端の(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位と、上記ホモポリマーとがエステル交換反応するが、第2ブロック中の(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位と、上記ホモポリマーとがエステル交換反応することもある。
したがって、トリブロック体であるブロックコポリマー以外に、複数の第3ブロックを有するブロックコポリマーも副生し得る。
【0043】
(ブロックコポリマー)
本実施形態のブロックコポリマーは、第1ブロックと第2ブロックと第3ブロックとが結合し、前記第1ブロック及び前記第3ブロックは、芳香族炭化水素基を含む構成単位の繰り返し構造を有するポリマーからなり、前記第2ブロックは、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位の繰り返し構造を有するポリマーからなり、前記第2ブロックの側鎖にエステル結合を含む連結基を介して結合している前記第3ブロックを有する、ブロックコポリマーである。
【0044】
該ブロックコポリマーとしては、上記の中でも、第1ブロック及び第3ブロックは、下記一般式(u1)で表される構成単位の繰り返し構造を有するポリマーからなり、第2ブロックは、下記式(u2)で表される構成単位の繰り返し構造を有するポリマーからなり、第2ブロック側の主鎖末端が下記一般式(e1)で表される末端構造であるブロックコポリマーであることが好ましい。
また、第1ブロック及び第3ブロックはいずれも一般式(u1)で表される構成単位の繰り返し構造を有するが、繰り返し単位の数が異なり、第3ブロックの方が繰り返し単位の数が少ない(Mn3が、Mn1より小さい)ことが好ましい。
【0045】
【化2】
[式中、Rは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基である。Ar01は、芳香族炭化水素基である。]
【0046】
【化3】
[式中、R2は、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基である。Ra01は、炭素数1~10のアルキル基である。]
【0047】
【化4】
[式中、R及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基である。Ra01は、炭素数1~10のアルキル基である。Ar01は、芳香族炭化水素基である。L01は、2価の連結基である。]
【0048】
[一般式(u1)で表される構成単位]
上記一般式(u1)中、Rは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基であり、水素原子であることが好ましい。
上記一般式(u1)中、Ar01は、芳香族炭化水素基であり、上述した≪芳香族炭化水素基を有する構成単位≫における芳香族炭化水素基と同様の基が挙げられる。
Ar01は、その中でも、フェニル基であることが好ましい。
【0049】
[一般式(u2)で表される構成単位]
上記一般式(u2)中、R2は、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基であり、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
上記一般式(u2)中、Ra01は、炭素数1~10のアルキル基であり、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0050】
[一般式(e1)で表される末端構造]
上記一般式(e1)中、R及びR2は、それぞれ一般式(u1)中のRと、一般式(u2)中のR2と同一である。
上記一般式(e1)中のRa01は、上記一般式(u2)中のRa01と同一である。
上記一般式(e1)中のAr01は、上記一般式(u1)中のAr01と同一である。
【0051】
上記一般式(e1)中のL01は、2価の連結基であり、炭素数1~10のアルキレン基であることが好ましい。
炭素数1~10のアルキレン基として、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]等の直鎖状のアルキレン基;-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基、-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基、-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基、-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等の分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。
上記一般式(e1)中のL01は、上記の中でも、炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~5の直鎖状のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数2~5の直鎖状のアルキレン基であることがさらに好ましい。
【0052】
(相分離構造形成用樹脂組成物)
本実施形態の相分離構造形成用樹脂組成物は、上記ブロックコポリマーと、有機溶剤成分とを含有する。
【0053】
<有機溶剤成分>
本実施形態の相分離構造形成用樹脂組成物は、上述したブロックコポリマーを有機溶剤成分に溶解することにより調製できる。
有機溶剤成分としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、樹脂を主成分とする組成物の溶剤として公知のものの中から任意のものを用いることができる。
【0054】
有機溶剤成分としては、例えば、γ-ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物;前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤などが挙げられる。
有機溶剤成分は、単独で用いてもよいし、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン、ELが好ましい。
【0055】
また、PGMEAと極性溶剤とを混合した混合溶剤も好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは1:9~9:1、より好ましくは2:8~8:2の範囲内とすることが好ましい。
たとえば極性溶剤としてELを配合する場合は、PGMEA:ELの質量比は、好ましくは1:9~9:1、より好ましくは2:8~8:2である。また、極性溶剤としてPGMEを配合する場合は、PGMEA:PGMEの質量比は、好ましくは1:9~9:1、より好ましくは2:8~8:2、さらに好ましくは3:7~7:3である。また、極性溶剤としてPGMEおよびシクロヘキサノンを配合する場合は、PGMEA:(PGME+シクロヘキサノン)の質量比は、好ましくは1:9~9:1、より好ましくは2:8~8:2、さらに好ましくは3:7~7:3である。
【0056】
また、相分離構造形成用樹脂組成物中の有機溶剤成分として、その他には、PGMEAもしくはEL、又は前記PGMEAと極性溶剤との混合溶剤と、γ-ブチロラクトンと、の混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者との質量比が好ましくは70:30~95:5とされる。
相分離構造形成用樹脂組成物に含まれる有機溶剤成分は、特に限定されるものではなく、塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定され、一般的には固形分濃度が0.2~70質量%、好ましくは0.2~50質量%の範囲内となるように用いられる。
【0057】
<任意成分>
本実施形態の相分離構造形成用樹脂組成物は、上述したブロックコポリマー及び有機溶剤成分以外の任意成分を含有してもよい。
任意成分としては、他の樹脂、界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料、増感剤、塩基増殖剤、塩基性化合物等が挙げられる。
【実施例0058】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
<ブロックコポリマーの合成例>
実施例1~7のブロックコポリマーの製造方法により、ブロックコポリマー(BCP1~7)を以下の方法で合成した。
各例のブロックコポリマーの製造方法で用いたスチレンのブロックとメタクリル酸メチルのブロックとを有するブロックコポリマー(PS-b-PMMA)及び下記式(PS-OH)で表される化合物のMn及び共重合組成比(PS/PMMA)は、表1に示す通りである。
【0060】
【化5】
【0061】
グリースレスバルブ付きフラスコ(30mL)に撹拌子、PS-b-PMMA 500mg、及び、上記式(PS-OH)で表される化合物を表1に示す量加え、アルミバスにて100℃で真空引きを行い一晩乾燥させた。乾燥後、該フラスコにトルエン5mLに溶解させたTBD 5mg(0.0357mmol)を加え、アルミバスにて150℃で撹拌した。撹拌後、室温に戻したのちに安息香酸を約5mg加えた。常温MeOHにて再沈殿を行い、真空乾燥を行った。サンプル(300mg分のみ)をシクロヘキサンに分散させ、75℃で15分撹拌し遠心分離後に溶媒を除去。この工程を3回行った。遠心分離後、再沈殿、真空乾燥を行い、各ブロックコポリマー(PS-b-PMMA-b-PS’)を合成した。
【0062】
【表1】
【0063】
【化6】
【0064】
表2の(PS-b-PMMA-b-PS’)のMnは、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定した標準ポリスチレン換算の数平均分子量である。
PS’置換率は、原料として用いた(PS-b-PMMA)のMnと、上記(PS-b-PMMA-b-PS’)のMnとから算出した。なお、置換率が100%を超えているものは、PS-b-PMMAのPMMA末端だけでなく、PMMAブロック中のメタクリル酸メチルから誘導される構成単位と、PS-OHとがエステル交換されていることを意味する。
表2の(PS-b-PMMA-b-PS’)の共重合組成比は、H-NMRにより算出した。
【0065】
【表2】
【0066】
表2に示す通り、実施例のブロックコポリマーの製造方法により、トリブロック体であるブロックコポリマーを製造できることが確認できた。