(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075247
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】測定システム、測定装置および測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20240527BHJP
G01N 33/18 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
G01N21/27 Z
G01N33/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186549
(22)【出願日】2022-11-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度 、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業(A-STEP)、研究題目「水処理インフラ遠隔水質管理システム構築に向けたIoCT技術基盤の開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受けるもの。
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】川上 雅之
(72)【発明者】
【氏名】矢野 大作
(72)【発明者】
【氏名】三宅 亮
(72)【発明者】
【氏名】笠間 敏博
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB04
2G059DD03
2G059DD12
2G059EE01
2G059EE13
2G059FF04
2G059MM01
(57)【要約】
【課題】より簡易的な構成で高精度な水質の測定を行う。
【解決手段】試料液11が流通する第1の流路13と、試料液に含まれる対象成分と反応して第1の色に発色する試薬と第1の色の波長とは異なる波長の第2の色の色素とが含まれる試薬液21が流通する第2の流路23と、第1の流路13を流通する試料液11と、第2の流路23を流通する試薬液21とが合流する合流部30と、合流部30の下流に設けられ、第1の色の透過光量と第2の色の透過光量とを測定する測定器41,42と、測定器41,42が測定した第2の色の透過光量に応じた第2の吸光度を用いて、測定器41,42が測定した第1の色の透過光量に応じた第1の吸光度を補正し、補正した第1の吸光度に基づいて、試料液11に含まれる対象成分の濃度を算出する信号処理部43とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料液が流通する第1の流路と、
前記試料液に含まれる対象成分と反応して第1の色に発色する試薬と、前記第1の色の波長とは異なる波長の第2の色の色素とが含まれる試薬液が流通する第2の流路と、
前記第1の流路を流通する前記試料液と、前記第2の流路を流通する前記試薬液とが合流する合流部と、
前記合流部の下流に設けられ、前記第1の色の透過光量と前記第2の色の透過光量とを測定する測定器と、
前記測定器が測定した前記第2の色の透過光量に応じた第2の吸光度を用いて、前記測定器が測定した前記第1の色の透過光量に応じた第1の吸光度を補正する補正部と、
前記補正部が補正した前記第1の吸光度に基づいて、前記試料液に含まれる前記対象成分の濃度を算出する算出部とを有する測定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の測定システムにおいて、
前記補正部は、前記第2の吸光度を用いて前記第1の吸光度を規格化して、該第1の吸光度を補正する測定システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の測定システムにおいて、
前記補正部は、前記合流部にて前記試料液と前記試薬液とが合流してから前記測定器が測定した前記第2の色の透過光量に応じた第2の吸光度がピーク値となるまでの時間と前記第2の吸光度のピーク値との関係を示す関係式と、前記測定器が測定した前記第1の色の透過光量に応じた第1の吸光度のピーク値とに基づいて、前記第1の吸光度を補正する測定システム。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の測定システムにおいて、
前記第1の流路は、第1の槽に貯留された前記試料液の水頭圧を用いて前記試料液が流れる構造であり、
前記第2の流路は、第2の槽に貯留された前記試薬液の水頭圧を用いて前記試薬液が流れる構造である測定システム。
【請求項5】
請求項4に記載の測定システムにおいて、
前記第2の流路から前記合流部へ流通する前記試薬液の量を調整する制御弁を有する測定システム。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の測定システムにおいて、
前記合流部と前記測定器との間に、前記試料液と前記試薬液とを混合する反応管を有する測定システム。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の測定システムにおいて、
前記第1の流路が内部に設けられ、外部から前記試料液が流入するタンクと、
前記試薬液が貯留され、前記タンク内に設けられ、前記第2の流路と接続されて外気と触れない構造を持つ可撓性の袋状容器とを有し、
前記袋状容器に貯留された前記試薬液は、前記タンク内の前記試料液の圧力によって前記第2の流路に流入する測定システム。
【請求項8】
試料液と試薬液とが混合された液体から、該試料液に含まれる対象成分と該試薬液に含まれる試薬とが反応して発色する第1の色の透過光量と、前記試薬液に含まれる色素の色である、前記第1の色の波長とは異なる波長の第2の色の透過光量とを測定する測定部と、
前記測定部が測定した前記第2の色の透過光量に応じた第2の吸光度を用いて、前記測定部が測定した前記第1の色の透過光量に応じた第1の吸光度を補正する補正部と、
前記補正部が補正した前記第1の吸光度に基づいて、前記試料液に含まれる前記対象成分の濃度を算出する算出部とを有する測定装置。
【請求項9】
試料液と試薬液とが混合された液体から、該試料液に含まれる対象成分と該試薬液に含まれる試薬とが反応して発色する第1の色の透過光量を測定する処理と、
前記試料液と前記試薬液とが混合された液体から、前記試薬液に含まれる色素の色である、前記第1の色の波長とは異なる波長の第2の色の透過光量を測定する処理と、
前記測定した前記第2の色の透過光量に応じた第2の吸光度を用いて、前記測定した前記第1の色の透過光量に応じた第1の吸光度を補正する処理と、
前記補正した第1の吸光度に基づいて、前記試料液に含まれる前記対象成分の濃度を算出する処理とを行う測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定システム、測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料液に含まれる溶存化学成分の濃度の時間変化をオンサイトにて取得する計器として、需要家の近くの水道配管末端に設置され、水道水に含まれる対象成分である残留塩素濃度を監視するためのフロー式の水道水質計が実用化されている。水質計の内部へ取り込まれた試料液を、ポンプを用いて一定速度で細管内に流通させ、その細管に対象成分に特異的に反応する試薬を所定量添加する。試料液と試薬とを反応させるために、例えば、試料液と試薬との混合液を加熱して温度調節を行う部材を流路上で移動させて、試料液と試薬とを反応させるための加熱の効率を高める装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。試薬が添加された試料液は対象成分の濃度に応じた発色を呈する。この発色の度合いを光学的に計測することで試料液に含まれる対象成分の濃度が導き出される。このような水質計は、屋内の化学実験室にて行われる分析化学の操作が自動化されたものであり、分析精度の面で卓上機と同等の性能を有している。一方、オンサイトに水質計を設置する場合、設置環境からの振動や水圧の変動などの外的要因の影響を受け、流路内部の試料液の流通の状態が変化する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オンサイトにて高精度な水質の測定を行うために、上述したような流通の状態の変化を抑える必要がある。流通の状態の変化を抑えるためには、堅牢な管路や制御弁、高精度なポンプが必要となり、システムの規模が大きくなってしまう。そのため、設置場所の確保やコストの観点からシステムの導入を容易に行うことができないという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、より簡易的な構成で高精度な水質の測定を行うことができる測定システム、測定装置および測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の測定システムは、
試料液が流通する第1の流路と、
前記試料液に含まれる対象成分と反応して第1の色に発色する試薬と、前記第1の色の波長とは異なる波長の第2の色の色素とが含まれる試薬液が流通する第2の流路と、
前記第1の流路を流通する前記試料液と、前記第2の流路を流通する前記試薬液とが合流する合流部と、
前記合流部の下流に設けられ、前記第1の色の透過光量と前記第2の色の透過光量とを測定する測定器と、
前記測定器が測定した前記第2の色の透過光量に応じた第2の吸光度を用いて、前記測定器が測定した前記第1の色の透過光量に応じた第1の吸光度を補正する補正部と、
前記補正部が補正した前記第1の吸光度に基づいて、前記試料液に含まれる前記対象成分の濃度を算出する算出部とを有する。
【0007】
また、本発明の測定装置は、
試料液と試薬液とが混合された液体から、該試料液に含まれる対象成分と該試薬液に含まれる試薬とが反応して発色する第1の色の透過光量と、前記試薬液に含まれる色素の色である、前記第1の色の波長とは異なる波長の第2の色の透過光量とを測定する測定部と、
前記測定部が測定した前記第2の色の透過光量に応じた第2の吸光度を用いて、前記測定部が測定した前記第1の色の透過光量に応じた第1の吸光度を補正する補正部と、
前記補正部が補正した前記第1の吸光度に基づいて、前記試料液に含まれる前記対象成分の濃度を算出する算出部とを有する。
【0008】
また、本発明の測定方法は、
試料液と試薬液とが混合された液体から、該試料液に含まれる対象成分と該試薬液に含まれる試薬とが反応して発色する第1の色の透過光量を測定する処理と、
前記試料液と前記試薬液とが混合された液体から、前記試薬液に含まれる色素の色である、前記第1の色の波長とは異なる波長の第2の色の透過光量を測定する処理と、
前記測定した前記第2の色の透過光量に応じた第2の吸光度を用いて、前記測定した前記第1の色の透過光量に応じた第1の吸光度を補正する処理と、
前記補正した第1の吸光度に基づいて、前記試料液に含まれる前記対象成分の濃度を算出する処理とを行う。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、より簡易的な構成で高精度な水質の測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の測定システムの第1の実施の形態を示す図である。
【
図2】
図1に示した信号処理部に具備された構成要素の一例を示す図である。
【
図3】
図1に示した測定システムにおける測定方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図4】本発明の測定システムの第2の実施の形態を示す図である。
【
図5】
図4に示した測定システムにおける測定方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図6】本発明の測定システムの第3の実施の形態を示す図である。
【
図7】
図6に示した信号処理部に具備された構成要素の一例を示す図である。
【
図8(a)】第2のポンプの動作開始からの時間に対する第2の測定器が測定した透過光量に応じた吸光度の変化の様子の一例を示すグラフである。
【
図8(b)】第2のポンプの動作開始から第2の測定器が測定した透過光量に応じた吸光度がピーク値となるまでの時間と吸光度のピーク値との関係の一例を示すグラフである。
【
図9】本発明の測定システムの第4の実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
【0012】
図1は、本発明の測定システムの第1の実施の形態を示す図である。本形態は
図1に示すように、第1の流路13と、第2の流路23と、合流部30と、反応管31と、第1の測定器41と、第2の測定器42と、信号処理部43とを有する。第1の測定器41と、第2の測定器42と、信号処理部43とから測定装置1を構成する。
【0013】
第1の流路13は、第1の槽10に貯留された試料液11が流通する試料液用細管である。第1の槽10に貯留された試料液11は、第1のポンプ12を用いて第1の流路13へ送液される。第2の流路23は、第2の槽20に貯留された試薬液21が流通する試薬液用細管である。第2の槽20に貯留された試薬液は、第2のポンプ22を用いて第2の流路23へ送液される。試薬液21には、試料液11に含まれる対象成分と反応して第1の色に発色する試薬と、その発色の波長とは異なる波長の第2の色の色素とが混合されている。試薬液21に含まれる試薬は、試料液11に含まれる対象成分と混合した際に試薬過剰にならないように、試薬液21における濃度が調整されている。合流部30は、第1の流路13と第2の流路23とを接続する。つまり、合流部30において、第1の流路13を送液されてきた試料液と、第2の流路23を送液されてきた試薬液とが合流する。反応管31は、合流部30の下流に連結され、試料液と試薬液とを混合する。試料液11に含まれる対象成分として塩素を用いる場合、例えば、試薬液21に含まれる試薬としてDPD試薬(赤色に発色)が用いられ、試薬液21に含まれる色素としてDPD試薬による発色域と異なるブリリアントブルーFCF(青色)が用いられても良い。試料液11に含まれる対象成分を塩素以外とする場合、試薬液21に含まれる試薬を他の試薬に交換することで他の対象成分の連続計測にも容易に適用可能である。
【0014】
第1の測定器41は、対象成分に反応して発色する波長域のみの透過光量を測定する。第2の測定器42は、色素の波長域近傍のみの透過光量を測定する。具体的には、第1の測定器41および第2の測定器42は、反応管31にて混合された液体にそれぞれ所定の波長の光を照射し、その透過光について、対応する波長の透過光量を測定する。第1の測定器41と第2の測定器42とは、反応管31の下流に配置され、互いにどちらが上流に配置されていても良い。試料液11に含まれる対象成分は反応管31内を流れる際に試薬液21と混じり合い発色反応を呈する。この発色の程度は反応管31内での試料液11に含まれる対象成分の濃度と試薬液21に含まれる試薬の濃度との積値に比例する。発色した反応液は反応管31を流れる際に管路方向に拡散しながら流れる。その結果、第1の測定器41を通過する際に透過光量は一旦低下し、その後増加する時間変化を起こす。一方、試薬液21に含まれる色素は、反応管31内を流れる際に、反応液と同様に管路方向に拡散しながら流れる。その結果、第2の測定器42を通過する際に透過光量は一旦低下し、その後増加する時間変化を起こす。第1の測定器41および第2の測定器42それぞれは、それぞれが測定した透過光量の値を信号処理部43へ出力する。ここで、第1の測定器41と第2の測定器42とのそれぞれが測定(検出)する吸収波長域が互いに異なる。そのため、試薬液21に含まれる色素が第1の測定器41を通過する際には、第1の測定器41が測定する透過光量に、試薬液21に含まれる色素の透過光量は影響を与えない。なお、第1の測定器41と第2の測定器42とが、1つの測定器に含まれていても良い。
【0015】
信号処理部43は、第1の測定器41が測定した透過光量の値と、第2の測定器42が測定した透過光量の値とに基づいて、試料液11に含まれる対象成分の濃度を算出する。
図2は、
図1に示した信号処理部43が具備する構成要素の一例を示す図である。
図1に示した信号処理部43は
図2に示すように、補正部431と、算出部432とを有する。なお、
図2には、
図1に示した信号処理部43が具備する構成要素のうち、本形態に関わる主要な構成要素のみを示した。
【0016】
補正部431は、第1の測定器41から出力されてきた透過光量値を吸光度値(第1の吸光度)へ変換する。補正部431は、第2の測定器42から出力されてきた透過光量値を吸光度値(第2の吸光度)へ変換する。透過光量値を吸光度値へ変換するアルゴリズムは、一般的に用いられているもので良く、特に規定しない。補正部431は、変換した第2の吸光度を用いて、第1の吸光度を補正する。具体的な補正方法について説明する。
【0017】
補正部431が変換した第1の吸光度は、時間経過とともに徐々に上昇し、ピーク値Iを採った後、減少する信号プロファイルを示す。このピーク値は上述した積値と相関を持つ。また、補正部431が変換した第2の吸光度は、時間経過とともに徐々に上昇し、ピーク値IRを採った後、減少する信号プロファイルを示す。このピーク値IRは、合流部30での試薬液21の添加量と相関を持つ。補正部431は、第1の吸光度を、第2の吸光度を用いて規格化して、第1の吸光度を補正する。このとき、補正部431は、第2の吸光度のピーク値IRを用いて、第1の吸光度のピーク値Iを補正する。第1の測定器41が測定した第1の色の透過光量および第2の測定器42が測定した第2の色の透過光量は、それぞれ互いに同レベルの外的要因の影響を受けた値である。例えば、動作中に、設置環境等からの外乱や第2のポンプ22の劣化等により試薬液21の吐出ばらつきが発生し、その添加量が減少する場合を想定する。この場合、反応管31内での反応液に含まれる試薬の濃度が減少するため、反応液に含まれる対象成分の濃度が一定であっても第1の測定器41から得られた吸光度信号のピーク値Iも減少する。しかしながら、同時に第2の測定器42から得られた色素に関する吸光度信号のピーク値IRも同じ比率で減少する。このピーク値IRは反応管31内の試薬の濃度と相関を持つため、IをIRで規格化することで、対象成分の濃度値を求めることができる。そのため、補正部431は、第1の測定器41が測定した第1の色の透過光量に応じた第1の吸光度を第2の測定器42が測定した第2の色の透過光量に応じた第2の吸光度を用いて規格化することで、第1の測定器41が測定した第1の色の透過光量に応じた第1の吸光度を外的要因の影響を受けていない値に補正する。
【0018】
算出部432は、補正部431が補正した第1の吸光度に基づいて、試料液11に含まれる対象成分の濃度を算出する。透過光量または吸光度に基づいて、当該対象成分の濃度を算出する方法については、既存の方法を用いても良い。算出部432は、算出した濃度を示す値を出力する。算出部432からの値に出力方法は、表示であっても良いし、他の装置への送信であっても良く、その値の使用方法に応じた出力方法で良い。
【0019】
以下に、
図1に示した測定システムにおける測定方法について説明する。
図3は、
図1に示した測定システムにおける測定方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【0020】
まず、第1のポンプ12を起動し、試料液11を第1の槽10から第1の流路13、合流部30および反応管31を経由して第1の測定器41および第2の測定器42に到達するように流す。また、第2の流路23はあらかじめ試薬液21で満たされている。試料液11が第1の流路13を満たした後、所定のタイミングで第2のポンプ22が所定時間動作して試料液11の流れに対して試薬液21を注入する(ステップS1)。
【0021】
その後、反応管31が混合した液体に含まれる反応液の透過光量を第1の測定器41が測定する(ステップS2)。また、反応管31が混合した液体に含まれる色素の透過光量を第2の測定器42が測定する(ステップS3)。第1の測定器41は、測定した第1の色の透過光量を示す値を信号処理部43へ出力する。また、第2の測定器42は、測定した第2の色の透過光量を示す値を信号処理部43へ出力する。すると、信号処理部43の補正部431は、第1の測定器41から出力されてきた第1の色の透過光量を示す値を第1の吸光度に変換する。また、信号処理部43の補正部431は、第2の測定器42から出力されてきた第2の色の透過光量を示す値を第2の吸光度に変換する。続いて、補正部431は、変換した第2の吸光度を用いて、第1の吸光度を補正する(ステップS4)。補正の方法は、上述した通りである。補正部431は、補正した第1の吸光度を算出部432へ出力する。すると、算出部432は、補正部431から出力されてきた第1の吸光度に基づいて、試料液11に含まれる対象成分の濃度を算出する(ステップS5)。
【0022】
このように本形態においては、試料液に含まれる対象成分と反応する試薬と、対象成分が試薬と反応した際の発色の波長とは異なる波長の色素とが含まれる試薬液を、試料液と混合させ、発色の第1の透過光量と色素の第2の透過光量とを測定し、測定した第1の透過光量に応じた第1の吸光度を、測定した第2の透過光量に応じた第2の吸光度を用いて補正し、補正した値に基づいて、試料液に含まれる対象成分の濃度を算出する。これにより、設置環境からの外乱や試薬を添加するポンプの劣化等により、試薬の添加量にばらつきが発生しても対象成分の濃度を精度良く求めることができる。より簡素な流体要素の構成が可能となり、長期的に性能変化があっても高精度な水質の測定を行うことができる。
(第2の実施の形態)
【0023】
図4は、本発明の測定システムの第2の実施の形態を示す図である。本形態は
図4に示すように、第1の流路13と、第2の流路23と、合流部30と、反応管31と、第1の測定器41と、第2の測定器42と、信号処理部43とを有する。第1の測定器41と、第2の測定器42と、信号処理部43とから測定装置1を構成する。それぞれの構成要素は、第1の実施の形態におけるものとそれぞれ同じである。
【0024】
本形態では、第1の実施の形態に具備されていた、第1の槽10に貯留された試料液11を第1の流路13へ送液する第1のポンプ12を具備しない。また、本形態では、第1の実施の形態に具備されていた、第2の槽20に貯留された試薬液21を第2の流路23へ送液する第2のポンプ22を具備しない。第1の槽10および第2の槽20は、合流部30よりも上方に設けられている。この構造により、合流部30から第1の槽10および第2の槽20までの高さおよび第1の槽10内の試料液11の量と第2の槽20内の試薬液21の量に応じた水頭圧を用いて、第1の槽10に貯留されている試料液11が第1の流路13へ送液され、第2の槽20に貯留されている試薬液21が第2の流路23へ送液される。第2の流路23には、制御弁24が設けられている。制御弁24は、第2の流路23から合流部30へ流通する試薬液21の量を調整する開閉バルブである。制御弁24は、外部からの制御信号に基づいて開閉を行う。制御信号は、試料液11に試薬液21を添加するタイミングに応じて制御弁24の開閉を制御するための信号である。
【0025】
以下に、
図4に示した測定システムにおける測定方法について説明する。
図5は、
図4に示した測定システムにおける測定方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【0026】
まず、試料液11を第1の槽10から第1の流路13、合流部30および反応管31を経由して第1の測定器41および第2の測定器42に到達するように流す。試料液11が第1の流路13を満たした後、制御弁24を開放させ、試料液11の流れに対して試薬液21を注入する(ステップS11)。制御弁24の開放時間は、試料液11に注入する試薬の量に応じた時間である。
【0027】
その後、反応管31が混合した液体に含まれる反応液の透過光量を第1の測定器41が測定する(ステップS12)。また、反応管31が混合した液体に含まれる色素の透過光量を第2の測定器42が測定する(ステップS13)。第1の測定器41は、測定した第1の色の透過光量を示す値を信号処理部43へ出力する。また、第2の測定器42は、測定した第2の色の透過光量を示す値を信号処理部43へ出力する。すると、信号処理部43の補正部431は、第1の測定器41から出力されてきた第1の色の透過光量を示す値を第1の吸光度に変換する。また、信号処理部43の補正部431は、第2の測定器42から出力されてきた第2の色の透過光量を示す値を第2の吸光度に変換する。続いて、補正部431は、変換した第2の吸光度を用いて、第1の吸光度を補正する(ステップS14)。補正の方法は、上述した通りである。補正部431は、補正した第1の吸光度を算出部432へ出力する。すると、算出部432は、補正部431から出力されてきた第1の吸光度に基づいて、試料液11に含まれる対象成分の濃度を算出する(ステップS15)。
【0028】
このように本形態においては、試料液に含まれる対象成分と反応する試薬と、対象成分が試薬と反応した際の発色の波長とは異なる波長の色素とが含まれる試薬液を、試料液と混合させ、発色の第1の透過光量と色素の第2の透過光量とを測定し、測定した第1の透過光量に応じた第1の吸光度を、測定した第2の透過光量に応じた第2の吸光度を用いて補正し、補正した値に基づいて、試料液に含まれる対象成分の濃度を算出する。これにより、設置環境からの外乱や試薬の添加を制御する制御弁の劣化等により、試薬の添加量にばらつきが発生しても対象成分の濃度を精度良く求めることができる。より簡素な流体要素の構成が可能となり、長期的に性能変化があっても高精度な水質の測定を行うことができる。さらに、第1の槽10に貯留されている試料液11と第2の槽20に貯留されている試薬液21とのそれぞれを、水頭圧を用いて第1の流路13および第2の流路23へ送液する。そのため、より簡素な構成が可能となる。
【0029】
第1の槽10に貯留されている試料液11の液量が少なくなると、水頭圧が小さくなるため第1の流路13への試料液11の流量が減少する。また同様に、第2の槽20に貯留されている試薬液21の液量が少なくなると、水頭圧が小さくなるため第2の流路23からの試薬の添加量も減少する。さらに、第1の流路13や第2の流路23中に気泡が付着したり、内面に汚れが付着したり、第1の流路13や第2の流路23が変形したりした場合も、合流部30における試料液11の流量や試薬液21の添加量が変化する。このような外的要因によって生じる試薬液21の添加量の変化により、第1の測定器41が測定する対象成分の透過光量に応じた吸光度が変化するが、これは第1の実施の形態と同様の方法を用いることで、補正することができる。
(第3の実施の形態)
【0030】
図6は、本発明の測定システムの第3の実施の形態を示す図である。本形態は
図3に示すように、第1の流路13と、第2の流路23と、合流部30と、反応管31と、第1の測定器41と、第2の測定器42と、信号処理部44とを有する。第1の測定器41と、第2の測定器42と、信号処理部44とから測定装置2を構成する。信号処理部44以外の構成要素のそれぞれは、第1の実施の形態におけるものと同じものである。
【0031】
図7は、
図6に信号処理部44に具備された構成要素の一例を示す図である。
図6に信号処理部44は
図6に示すように、補正部441と、算出部432とを有する。算出部432は、第1の実施の形態におけるものと同じものである。補正部441は、第1の実施の形態における補正部431が具備する機能に加えて、時間に関する補正を行う機能を具備する。具体的な動作については、後述する。なお、
図2には、
図1に示した信号処理部43が具備する構成要素のうち、本形態に関わる主要な構成要素のみを示した。
【0032】
本形態は、第1のポンプ12や第2のポンプ22の動作に変動があった場合の試料液11に含まれる対象成分の濃度を算出するための形態である。
図6において、試薬液21に含まれる色素が第2の測定器42を通過する際に得られる吸光度信号の時間プロファイルには、試薬液21が合流部30で試料液11に添加されてから第2の測定器42に至るまでの時間に関する情報が含まれる。例えば、試薬液21に含まれる色素の透過光量に応じた吸光度のピーク値を第2の測定器42が測定した時刻をT
2とし、試薬液21を試料液11に添加するために第2のポンプ22の動作を開始した時刻をT
1とすると、その差分時間(T
2-T
1)は、第1のポンプ12の動作により供給される試料液11の合流部30から第1の測定器41までの到達時間とほぼ同じであると考えられる。
【0033】
図8(a)は、第2のポンプ22の動作開始からの時間に対する第2の測定器42にて測定される透過光量に応じた吸光度の変化の様子の一例を示すグラフである。
図8(a)には、3つのケースを示している。ケース1とケース2とを比較すると、ケース1よりもケース2の方が、第2のポンプ22の動作開始から第2の測定器42が測定した吸光度がピーク値となるまでの時間が長く、そのピーク値が小さな値であることがわかる。また、ケース2とケース3とを比較すると、ケース2よりもケース3の方が、第2のポンプ22の動作開始から第2の測定器42が測定した吸光度がピーク値となるまでの時間が長く、そのピーク値が小さな値であることがわかる。上述したように、第1のポンプ12の動作により供給される試料液11の合流部30から第1の測定器41までの到達時間は、第2のポンプ22の動作開始(試薬液21が試料液11と合流して)から第2の測定器42が測定した吸光度がピーク値となるまでの時間とほぼ同じであると考えられる。そのため、第2のポンプ22の動作開始から第2の測定器42が測定した吸光度がピーク値となるまでの時間が長くなることは、第1のポンプ12の動作により供給される試料液11の合流部30から第1の測定器41までの到達時間が長くなることを意味する。第1のポンプ12の動作により供給される試料液11の合流部30から第1の測定器41までの到達時間が長くなることは、試料液11の流速が遅くなることを示し、同じ長さの管路であっても管路方向の拡散が進み濃度のピーク値が低下する。このように第2のポンプ22の動作開始から第2の測定器42が測定した透過光量に応じた吸光度がピーク値となるまでの時間およびピーク値が変化するのは、上述したような第2のポンプ22の劣化等によるものである。
【0034】
図8(b)は、第2のポンプ22の動作開始から第2の測定器42が測定した透過光量に応じた吸光度がピーク値となるまでの時間と吸光度のピーク値との関係の一例を示すグラフである。
図8(b)に示すように、第2の測定器42が測定した透過光量に応じた吸光度信号のピーク値は到達時間が長くなるほど低下する。信号処理部44の補正部441には、
図8(b)に示した時間とピーク値との関係が関係式としてあらかじめ記録されている。補正部441は、その関係式と、第1の測定器41が測定した透過光量に応じた吸光度のピーク値とに基づいて、第1の測定器41が測定した透過光量に応じた吸光度の値を補正する。
【0035】
このように本形態においては、第2のポンプ22の動作開始から第2の測定器42が測定した透過光量に応じた吸光度がピーク値となるまでの時間と吸光度のピーク値との関係を関係式としてあらかじめ記憶しておき、記憶された関係式と、第1の測定器41が測定した透過光量に応じた吸光度のピーク値とに基づいて、第1の測定器41が測定した透過光量に応じた吸光度の値を補正する。これにより、第1の実施の形態における効果に加えて、試料液11の流量の低下による第1の測定器41での吸光度信号の低下を補正することができる。
(第4の実施の形態)
【0036】
図9は、本発明の測定システムの第4の実施の形態を示す図である。
図9には、第1~3の実施の形態において示した、測定装置1または測定装置2を省略している。本形態は
図9に示すように、タンク100内に、細管である第1の流路13と、試薬液21が貯留された試薬バッグ25とが設けられている。タンク100には、外部から試料液11が流入する。試料液11および試薬液21のそれぞれは、第1~3の実施の形態におけるものとそれぞれ同じものである。タンク100は、上面が開放された筒型の形状であり、開放された上面から流入される試料液11で内部が満たされる。また、タンク100は、タンク100から溢れた試料液11を外部へ流し出す流出機構101を有する。第1の流路13の上端の入口は開放されており、入口からタンク100内の試料液11の一部が連続して導入されるように、上端がタンク100の上部液面よりも低い位置になるように設置されている。試薬バッグ25は、接続部102と接続され、制御弁24を介して微細流路形成基板32への第2の流路23と接続されて外気と触れない構造を持つ可撓性の袋状容器である。試薬バッグ25は支持外装治具を用いて正立されている。試薬バッグ25は、接続部102から着脱可能である。試薬バッグ25に貯留された試薬液21は、円筒形のタンク100に貯留された試料液11の圧力によって制御弁24へ送液される。制御弁24は、試薬液21の微細流路形成基板32への送液を調整する開閉バルブである。制御弁24は、外部からの制御信号に従って開閉する。
【0037】
微細流路形成基板32には、微細の反応流路(第1~3の実施の形態において示した反応管31に相当)が形成されている。反応流路の入口103に第1の流路13から試料液11が流入し、反応流路の途中口104に試薬バッグ25から制御弁24を介して試薬液21が流入する。反応流路の出口105にはフローセル検知器45が設けられている。微細流路形成基板32に形成された反応流路を集積化することで微細流路形成基板32のサイズを小型化している。
【0038】
フローセル検知器45は、赤色、緑色、青色の順序で周期的に発光するLED素子を備えた、光の透過量を測定する測定器である。フローセル検知器45は、第1~3の実施の形態における第1の測定器41および第2の測定器42に相当する。フローセル検知器45は、廃液管106と接続され、光の透過量が測定された液体が廃液管106から廃液される。フローセル検知器45は、測定した値を信号処理装置(不図示、第1~3の実施の形態における信号処理部43,44に相当)へ送信する。
【0039】
図9に示した構成で以下のように動作する。試料液11がタンク100の上方から開放された上面に向けて連続して供給される。試料液11はタンク100を満たすと、タンク100から溢れた試料液11は流出機構101から外部へ流出される。タンク100内の試料液11の一部は、第1の流路13を経由して微細流路形成基板32に形成された反応流路の入口103に供給される。タンク100内の試料液11の液面は一定高さに維持されるため、微細流路形成基板32に形成された反応流路の入口103への試料液11の供給圧は一定となる。この状態で、反応流路に導入された試料液11は、出口105に至り、フローセル検知器45を経て、廃液管106から排出される。
【0040】
一方、試薬バッグ25はタンク100内に保持されているため、常時、タンク100内部の試料液11の水圧を受けている。そのため、制御弁24を一定時間開放することで、試薬バッグ25内部の試薬液21を所定量放出させることができる。放出された試薬液21は、第2の流路23を介して微細流路形成基板32に形成された反応流路の途中口104において、反応流路を流動中の試料液11に添加される。添加された試薬液21は、反応流路を流動する際に試料液11中の目的とする対象成分と徐々に反応し、発色を呈する。この発色した反応液は、フローセル検知器45を通過して流れる際に、赤色、緑色、青色の発光の下、それぞれの波長域における透過光量の変化をフローセル検知器45が周期的に測定する。
【0041】
制御弁24の開放タイミングや開放時間間隔は、外部からの信号を用いて制御される。また、フローセル検知器45にて測定された3色の透過光量の時間変化信号は、フローセル検知器45から信号処理装置等の信号を処理する外部の装置へ送信される。信号処理装置等の信号を処理する外部の装置において、第1~3の実施の形態にて説明した信号処理が行われ、最終的な対象成分濃度の補正値が取得される。取得された値は、クラウドストレージ等の記憶手段に記録されても良い。
【0042】
ここで、試薬バッグ25は、タンク100内の試料液11の圧力に圧縮され、試薬バッグ25内部に貯留された試薬液21の量の減少とともに変形する。変形に伴い途中口104にて試料液11に添加される試薬液21の量が変動することが起こるが、第1の実施の形態にて説明したように、試薬液21に含まれる色素の透過光量を用いた補正を実施することができる。また、第1の流路13内に気泡などが混入したり、試料液11中に異物が混入したりした場合、試料液11の出口105までの通水抵抗が増大し、流速が変化する。その場合においても、第3の実施の形態で説明した信号処理を用いることで、正確な値(濃度値)を取得することができる。
【0043】
このように本形態においては、試薬液21を可撓性の袋状容器である試薬バッグ25に貯留し、試料液11が外部から供給されて貯留されるタンク100内部に配置する。試薬バッグ25に貯留された試薬液21は、タンク100に貯留されている試料液11の圧力を用いて反応流路へ送液され、反応流路を流れている試料液11に添加される。これにより、第1~3の実施の形態における効果に加えて、試料液11および試薬液21の送液に特別な機構を設けることが不要となり、より簡素な流体要素の構成が可能となる。
【0044】
以上、各構成要素に各機能(処理)それぞれを分担させて説明したが、この割り当ては上述したものに限定しない。また、構成要素の構成についても、上述した形態はあくまでも例であって、これに限定しない。また、各実施の形態を組み合わせたものであっても良い。
【符号の説明】
【0045】
1,2 測定装置
10 第1の槽
11 試料液
12 第1のポンプ
13 第1の流路
20 第2の槽
21 試薬液
22 第2のポンプ
23 第2の流路
24 制御弁
25 試薬バッグ
30 合流部
31 反応管
32 微細流路形成基板
41 第1の測定器
42 第2の測定器
43,44 信号処理部
45 フローセル検知器
100 タンク
101 流出機構
102 接続部
103 入口
104 途中口
105 出口
106 廃液管
431,441 補正部
432 算出部