(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075250
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成方法、及び、印刷物
(51)【国際特許分類】
G03G 15/01 20060101AFI20240527BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
G03G15/01 J
G03G21/00 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186561
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】田島 咲季
(72)【発明者】
【氏名】一杉 潤
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一己
(72)【発明者】
【氏名】梶村 恵子
(72)【発明者】
【氏名】工藤 経生
(72)【発明者】
【氏名】林 真吾
(72)【発明者】
【氏名】黒巣 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】土屋 真之
【テーマコード(参考)】
2H270
2H300
【Fターム(参考)】
2H270KA04
2H270KA09
2H270KA28
2H270KA32
2H270KA44
2H270KA54
2H270KA55
2H270KA56
2H270KA68
2H270LA14
2H270LA87
2H270LA90
2H270LD03
2H270LD06
2H270MF01
2H270MF08
2H270QA06
2H270QA13
2H270QA23
2H270ZC02
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC08
2H300EA06
2H300EA12
2H300EA17
2H300EB04
2H300EB07
2H300EB12
2H300EC02
2H300EC05
2H300EF03
2H300EF08
2H300EH16
2H300EJ01
2H300EJ10
2H300FF05
2H300GG01
2H300GG02
2H300GG04
2H300GG17
2H300TT01
2H300TT02
2H300TT03
2H300TT04
2H300TT05
(57)【要約】
【課題】所定の光環境下で視認できる画像の色の表現性をより高めること。
【解決手段】本発明の実施形態に係る画像形成装置IFとしての複写機は、複数の現像ステーション18と、複数の現像ステーション18に対して着脱可能な複数のトナーボトル51と、入力される画像データに基づき、複数のトナーボトル51に収容されているトナーを用いて記録シート上に画像を形成する画像形成ユニットGUと、を有する。トナーボトル51Gには、不可視緑色トナー(Gトナー)が収容されており、トナーボトル51Rには、不可視赤色トナー(Rトナー)が収容されている。画像形成ユニットGUは、記録シートSH上でGトナーとRトナーとを重ね合わせる場合、Gトナーよりも先に、不可視光線による発光強度がGトナーより高いRトナーを記録シートSHに付着させるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の現像ステーションと、複数の前記現像ステーションに対して着脱可能な複数の現像器と、入力される画像データに基づき、複数の前記現像器に収容されているトナーを用いて印刷媒体上に画像を形成する画像形成ユニットと、を有する画像形成装置であって、
複数の前記現像器のうちの一つである第1の現像器には、第1のトナーが収容されており、
複数の前記現像器のうちの別の一つである第2の現像器には、不可視光線による発光強度が前記第1のトナーより高い第2のトナーが収容されており、
前記第1のトナー及び前記第2のトナーは、前記不可視光線による発光強度が可視光線による発光強度よりも高い画像を形成するトナーであり、
前記画像形成ユニットは、前記印刷媒体上で前記第1のトナーと前記第2のトナーとを重ね合わせる場合、前記第1のトナーよりも先に前記第2のトナーを前記印刷媒体に付着させるように構成されている、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成ユニットは、前記印刷媒体上で前記第1のトナーと前記第2のトナーとを重ね合わせる場合、前記第2のトナーが、前記第1のトナーよりも前記印刷媒体に近くなるように画像を形成するように構成されている、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
複数の前記現像器に収容されているトナーは、前記不可視光線による発光強度が前記可視光線による発光強度よりも高い赤色の画像を形成する不可視赤色トナーと、前記不可視光線による発光強度が前記可視光線による発光強度よりも高い緑色の画像を形成する不可視緑色トナーと、前記不可視光線による発光強度が前記可視光線による発光強度よりも高い青色の画像を形成する不可視青色トナーと、を含み、
前記第1のトナーは、前記不可視緑色トナーであり、
前記第2のトナーは、前記不可視赤色トナー又は前記不可視青色トナーである、
請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記現像ステーションに取り付けられた前記現像器から識別情報を取得する情報取得部と、
前記識別情報に基づき、前記現像ステーションに取り付けられた前記現像器が、前記現像ステーションに取り付けられる現像器として適切か否かを判定する判定部と、を有する、
請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記識別情報に基づき、複数の前記現像器に収容されているトナーが、前記可視光線の下で視認できるカラー画像を形成する可視色トナーを含むか否かを判定し、
前記画像形成ユニットは、前記可視色トナーを含むと判定された場合には、前記可視色トナーを含まないと判定された場合に使用する画像形成条件とは異なる画像形成条件を使用して前記印刷媒体上に画像を形成する、
請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
複数の現像ステーションと、複数の前記現像ステーションに対して着脱可能な複数の現像器と、入力される画像データに基づき、複数の前記現像器に収容されているトナーを用いて印刷媒体上に画像を形成する画像形成ユニットと、を有する画像形成装置を用いた画像形成方法であって、
複数の前記現像器のうちの一つである第1の現像器には、第1のトナーが収容されており、
複数の前記現像器のうちの別の一つである第2の現像器には、不可視光線による発光強度が前記第1のトナーより高い第2のトナーが収容されており、
前記第1のトナー及び前記第2のトナーは、前記不可視光線による発光強度が可視光線による発光強度よりも高い画像を形成するトナーであり、
当該画像形成方法は、前記第2のトナーを前記印刷媒体に付着させる工程と、前記第1のトナーを、前記印刷媒体に付着した前記第2のトナーに重ね合わせる工程と、を有する、
ことを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
前記第1のトナーが重ね合わされた前記第2のトナーは、前記第1のトナーよりも前記印刷媒体に近い位置にある、
請求項6に記載の画像形成方法。
【請求項8】
複数の前記現像器に収容されているトナーは、前記不可視光線による発光強度が前記可視光線による発光強度よりも高い赤色の画像を形成する不可視赤色トナーと、前記不可視光線による発光強度が前記可視光線による発光強度よりも高い緑色の画像を形成する不可視緑色トナーと、前記不可視光線による発光強度が前記可視光線による発光強度よりも高い青色の画像を形成する不可視青色トナーと、を含み、
前記第1のトナーは、前記不可視緑色トナーであり、
前記第2のトナーは、前記不可視赤色トナー又は前記不可視青色トナーである、
請求項6又は7に記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記現像ステーションに取り付けられた前記現像器から識別情報を取得する工程と、
前記識別情報に基づき、前記現像ステーションに取り付けられた前記現像器が、前記現像ステーションに取り付けられる現像器として適切か否かを判定する工程と、を有する、
請求項6又は7に記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記識別情報に基づき、複数の前記現像器に収容されているトナーが、前記可視光線の下で視認できるカラー画像を形成する可視色トナーを含むか否かを判定する工程と、
前記可視色トナーを含むと判定された場合に、前記可視色トナーを含まないと判定された場合に使用する画像形成条件とは異なる画像形成条件を使用して前記印刷媒体上に画像を形成する工程と、を有する、
請求項9に記載の画像形成方法。
【請求項11】
印刷媒体上で、第1のトナーを、不可視光線による発光強度が前記第1のトナーより高い第2のトナーの上に重ね合わせることによって形成された画像を有する印刷物であって、
前記第1のトナー及び前記第2のトナーは、前記不可視光線による発光強度が可視光線による発光強度よりも高い画像を形成するトナーである、
ことを特徴とする印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成方法、及び、印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、コンサート会場、イベント会場、水族館、博物館、又はアミューズメント施設などでは、来場者が非日常的な体験を享受できるように様々な演出が屋内外で行われている。例えば、コンサート会場では、ペンライトなどを来場者に配布し、会場のライトアップに参加してもらうなど、会場の盛り上げに協力してもらうことにより、来場者に一体感を感じさせるといった演出が行われる場合がある。
【0003】
また、そのような演出の一つとして、来場者が持参する入場チケット、又は、会場で配布されるチラシ、パンフレット、若しくはポスターなど、会場において来場者が持っている各種印刷物を利用する演出も考えられる。
【0004】
来場者が持っている各種印刷物を利用する例としては、例えば、アミューズメント施設などの入場チケットの真偽などを確認するため、入場チケットに印刷された不可視画像(可視光線の下では視認しにくいが赤外線又は紫外線などの不可視光線の下では視認できる画像)を利用する例がある。この場合の不可視画像は、数字、文字、QRコード(登録商標)、又はバーコードなど、一色で表現可能な単純な画像である。この例では、アミューズメント施設のスタッフは、ブラックライトが発する紫外線を入場チケットに当てることにより、その入場チケットが偽物であるか否かなどを確かめることができる。
【0005】
そして、このような不可視画像を各種印刷物に印刷するための装置としては、赤外線吸収材料を含むトナーを用いることにより、赤外線カメラを利用した場合には視認できるが肉眼では視認しにくい画像(不可視画像)を印刷できる装置が知られている(特許文献1参照)。この装置は、カラー印刷又はモノクロ印刷とは異なる特別な色(赤外線カメラを利用した場合には視認できるが肉眼では視認しにくい色)を指定した印刷を可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の装置は、一つの特別なトナーを用いて不可視画像を印刷するように構成されている。すなわち、上述の装置は、不可視画像を一色でしか表現できない。そのため、上述の装置は、コンサート会場、イベント会場、水族館、博物館、又はアミューズメント施設などの来場者に驚きや一体感を感じさせるための演出に利用できるような不可視画像を印刷するには機能的に不十分である。その施設又は会場などの環境に適した装飾画像などの画像を一色で表現するには限度があるためである。
【0007】
開示の技術は、所定の光環境下で視認できる画像の色の表現性をより高めることができる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の技術は、複数の現像ステーションと、複数の前記現像ステーションに対して着脱可能な複数の現像器と、入力される画像データに基づき、複数の前記現像器に収容されているトナーを用いて印刷媒体上に画像を形成する画像形成ユニットと、を有する画像形成装置であって、複数の前記現像器のうちの一つである第1の現像器には、第1のトナーが収容されており、複数の前記現像器のうちの別の一つである第2の現像器には、不可視光線による発光強度が前記第1のトナーより高い第2のトナーが収容されており、前記第1のトナー及び前記第2のトナーは、前記不可視光線による発光強度が可視光線による発光強度よりも高い画像を形成するトナーであり、前記画像形成ユニットは、前記印刷媒体上で前記第1のトナーと前記第2のトナーとを重ね合わせる場合、前記第1のトナーよりも先に前記第2のトナーを前記印刷媒体に付着させるように構成されている、画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、所定の光環境下で視認できる画像の色の表現性をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置によって印刷された印刷物の利用シーンの一例を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る複写機の概略構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る複写機における現像ステーションの概略構成を示す概略構成図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る複写機におけるトナーボトル、トナー補給装置、現像装置、及び感光体を示す模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る複写機の電気回路の要部を示すブロック図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る複写機によって形成されたトナー像及びトナー層の状態の一例を示す模式図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る複写機によって形成されたトナー像及びトナー層の状態の別の一例を示す模式図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る複写機によって形成されたトナー像及びトナー層の状態の更に別の一例を示す模式図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る複写機の現像ステーション、補給前貯留器、及びトナーボトルの配列の一例を示す模式図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る複写機の現像ステーション、補給前貯留器、及びトナーボトルの配列の別の一例を示す模式図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る複写機の処理フローの一例を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の一実施形態に係る複写機によって印刷された印刷物の一例を示す図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る複写機によって印刷された印刷物の使用例を示す図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係る複写機の別の一例の概略構成図である。
【
図15】本発明の一実施形態に係る複写機の現像ステーション、補給前貯留器、及びトナーボトルの配列の更に別の一例を示す模式図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係る複写機の処理フローの一例を示すフローチャートである。
【
図17】本発明の一実施形態に係る複写機の操作表示部に表示されるトナー残量インジケータの一例を示す図である。
【
図18】本発明の一実施形態に係る複写機による効果の一例を示すxy色度図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。各図面において、同一の構成要素には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0012】
以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、及び相対的配置などは、特定的な記載がない限り、本発明の範囲を限定することを目的としたものではなく、例示することを目的としたものである。また図面が示す部材の大きさ及び位置関係などは、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0013】
最初に、本発明の一実施形態に係る画像形成装置IFによって印刷された印刷物の利用シーンについて説明する。
図1は、画像形成装置IFによって印刷された印刷物の利用シーンの一例を示す図である。画像形成装置IFによって印刷された各種印刷物は、パンフレットBR、チケットTK、及びポスターPSを含む。パンフレットBR、チケットTK、及びポスターPSは何れも、可視光下(明るい場所)では見えない又は見えにくいがブラックライト下(暗い場所)では見える不可視画像を含む。そして、パンフレットBR、チケットTK、及びポスターPSは、それぞれに印刷された不可視画像が暗い場所(
図1に示す例では水族館の展示室)で視認されるような態様で利用される。
【0014】
次に、本発明の一実施形態に係る画像形成装置IFの一例である、複数の感光体が並列に配置されたタンデム型のカラーレーザー複写機(以下、単に「複写機」とする)について説明する。
【0015】
まず、実施形態に係る複写機の基本的な構成について説明する。
図2は、実施形態に係る複写機の概略構成図である。この複写機は、電子写真方式の画像形成装置であり、プリンター100、給送装置200、スキャナ300、及び原稿自動搬送装置400などを備えている。但し、本発明の実施形態に係る画像形成装置IFは、印刷して印刷物を出力する印刷機能を備えた印刷装置であれば、これらのうちの一部を備えているものでもよく、呼称によって限定されるものでもない。
【0016】
プリンター100は、特殊色(S:Special)、不可視緑色(G:Invisible Green)、不可視赤色(R:Invisible Red)、不可視青色(B:Invisible Blue)、黒色(K:Key plate)の各色の画像を作像するための五つの現像ステーション18S、18G、18R、18B、18Kを具備する画像形成ユニットGUを備えている。各符号の数字(18)の後に付されたS、G、R、B、Kという添字は、それぞれ、特殊色用、不可視緑色用、不可視赤色用、不可視青色用、黒色用の部材であることを示している。以下の説明で使用される他の符号についても同様である。また、以下の説明では、S、G、R、B、Kの文字が、それぞれ、特殊色、不可視緑色、不可視赤色、不可視青色、黒色を示す場合もある。なお、特殊色は、不可視緑色、不可視赤色、不可視青色、及び黒色の何れとも異なる色の総称である。
【0017】
不可視緑色は、不可視光線の下では視認できるが可視光線の下では視認しにくい緑色を意味する。不可視赤色は、不可視光線の下では視認できるが可視光線の下では視認しにくい赤色を意味する。不可視青色は、不可視光線の下では視認できるが可視光線の下では視認しにくい青色を意味する。プリンター100は、不可視緑色、不可視赤色、及び不可視青色を重ね合わせることにより、任意の不可視色(不可視光線の下では視認できるが可視光線の下では視認しにくい色)を表現できる。黒色は、可視光線の下で視認できる黒色を意味し、特殊色は、可視光線の下で視認できる特殊色を意味する。
【0018】
可視光線は、人間によって光として認識される波長を有する電磁波である。不可視光線は、可視光線の波長以外の波長を有する電磁波である。本実施形態では、不可視光線は、ブラックライトなどが発する長波長紫外線である。また、本実施形態では、不可視色は、蛍光灯が発する光及び日光などの可視光線の下では透明であり、ブラックライトが発する紫外線などの不可視光線の下で視認できるようになる。
【0019】
具体的には、不可視緑色の画像は、不可視緑色トナー(以下、「Gトナー」とする)によって実現され、不可視赤色の画像は、不可視赤色トナー(以下、「Rトナー」とする)によって実現され、不可視青色の画像は、不可視青色トナー(以下、「Bトナー」とする)によって実現される。そして、不可視緑色、不可視赤色、及び不可視青色以外の不可視色の画像は、Gトナー、Rトナー、及びBトナーのうちの少なくとも二つの不可視色トナーの重ね合わせによって実現される。なお、不可視光線の下で視認できる黒色である不可視黒色は、Gトナー、Rトナー、及びBトナーを何れも付着させないことによって実現される。また、可視光線の下で視認できる特殊色の画像は、特殊色トナー(以下、「Sトナー」とする)によって実現され、可視光線の下で視認できる黒色の画像は、黒色トナー(以下、「Kトナー」とする)によって実現される。
【0020】
本実施形態では、不可視色トナーは、透明トナー(クリアトナー)と透明蛍光体とを組み合わせることによって生成される。すなわち、不可視色トナーは、典型的には、クリアトナーを母体として生成される。なお、透明蛍光体は、透明蛍光顔料又は透明蛍光染料などである。また、本実施形態では、不可視色トナーは、重合トナーよりも高い定着温度を有する粉砕トナーである。但し、不可視色トナーは、重合トナーであってもよい。
【0021】
プリンター100の筐体内において、現像ステーション18S、18G、18R、18B、18Kの他には、光書込ユニット21、中間転写ユニット17、二次転写装置22、レジストローラ対49、ベルト定着方式の定着装置25などが配設されている。
【0022】
光書込ユニット21は、光源、ポリゴンミラー、f-θレンズ、反射ミラーなどを有し、画像データに基づいて感光体1S、1G、1R、1B、1Kの表面にレーザー光を照射する。
【0023】
現像ステーション18S、18G、18R、18B、18Kは、ドラム状の感光体1S、1G、1R、1B、1Kの他に、帯電ローラ(帯電手段)、現像装置(現像手段)、ドラムクリーニング装置、除電ランプ(除電手段)などを有している。
【0024】
S(特殊色)用の現像ステーション18Sにおける感光体1Sの表面は、帯電手段である帯電ローラによって一様に帯電させられる。帯電処理が施された感光体1Sの表面には、光書込ユニット21によって変調及び偏向されたレーザー光が照射される。すると、照射部(露光部)の電位が減衰する。この減衰により、感光体1Sの表面にS用の静電潜像が形成される。形成されたS用の静電潜像は現像手段である現像装置によって現像されてSトナー像となる。
【0025】
S用の感光体1S上に形成されたSトナー像は、中間転写ベルト110に一次転写される。一次転写後の感光体1Sの表面は、ドラムクリーニング装置によって転写残トナーがクリーニングされる。
【0026】
S用の現像ステーション18Sにおいて、ドラムクリーニング装置によってクリーニングされた感光体1Sは、除電器によって除電される。そして、帯電器によって一様に帯電させられて初期状態に戻る。以上のような一連のプロセスは、他色用(G、R、B、K用)の現像ステーション(18G、18R、18B、18K)においても同様にして行われる。
【0027】
中間転写ユニット17は、無端状の中間転写ベルト110、及び、ベルトクリーニング装置90などを有している。また、駆動ローラ15、二次転写バックアップローラ16、四つの一次転写バイアスローラ62S、62G、62R、62B、62Kなども有している。
【0028】
無端状の中間転写ベルト110は、そのループの内側に配設された駆動ローラ15などの複数の張架ローラによってテンション張架されている。そして、ベルト駆動モーターによって駆動される駆動ローラ15の回転によって図中の時計回り方向に無端移動させられる。
【0029】
S、G、R、B、K用の一次転写バイアスローラ62S、62G、62R、62B、62Kは、中間転写ベルト110の裏面(内周面)に接触するように配設され、電源から出力される一次転写バイアスが印加される。また、中間転写ベルト110をその裏面側から感光体1S、1G、1R、1B、1Kに向けて押圧する。これにより、感光体1S、1G、1R、1B、1Kと、中間転写ベルト110の表面(外周面)とが当接するS、G、R、B、K用の一次転写ニップが形成される。それらの一次転写ニップでは、一次転写バイアスの影響により、感光体1S、1G、1R、1B、1Kと一次転写バイアスローラ62S、62G、62R、62B、62Kとの間に一次転写電界が形成される。
【0030】
S用の感光体1S上に形成されたSトナー像は、この一次転写電界やニップ圧の影響によって中間転写ベルト110上に一次転写される。このSトナー像の上には、G、R、B、K用の感光体1G、1R、1B、1K上に形成されたGトナー像、Rトナー像、Bトナー像、Kトナー像が順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト110上には多色トナー像が形成される。
【0031】
中間転写ベルト110上に形成された多色トナー像は、後述の二次転写ニップで記録シートに二次転写される。二次転写ニップ通過後の中間転写ベルト110の表面に残留する転写残トナーは、駆動ローラ15との間にベルトを挟み込むベルトクリーニング装置90によってクリーニングされる。
【0032】
中間転写ユニット17の下方に配設された二次転写装置22は、二次転写ローラ23を中間転写ベルト110における二次転写バックアップローラ16に対する掛け回し箇所に当接させて二次転写ニップを形成している。二次転写バックアップローラ16には、トナーと同極性の二次転写バイアスが印加されているのに対し、二次転写ローラ23は接地されている。これにより、二次転写ニップには中間転写ベルト110上の多色トナー像をベルト側から二次転写ローラ23側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。レジストローラ対49によって中間転写ベルト110上の多色トナー像に同期するように二次転写ニップに送り込まれた記録シートには、この二次転写電界やニップ圧の作用によって多色トナー像が二次転写される。
【0033】
プリンター100の筐体内の下部に設けられた給送装置200には、内部に複数の記録シートをシート束の状態で複数枚重ねて収容する給送カセット44、及び、ペーパーバンク43が設けられている。給送カセット44及びペーパーバンク43は、紙束の一番上の記録シートに給送ローラ42を押し当てている。そして、給送ローラ42を回転させることにより、一番上の記録シートを給送路46に向けて送り出す。
【0034】
給送カセット44又はペーパーバンク43から送り出された記録シートを受け入れる給送路46は、複数の搬送ローラ対47と、その路内の末端付近に設けられたレジストローラ対49とを有している。そして、記録シートをレジストローラ対49に向けて搬送する。レジストローラ対49に向けて搬送された記録シートは、レジストローラ対49のローラ間に挟まれる。一方、中間転写ユニット17において、中間転写ベルト110上に形成された多色トナー像は、ベルトの無端移動に伴って二次転写ニップに進入する。
【0035】
レジストローラ対49は、ローラ間に挟み込んだ記録シートを二次転写ニップにて多色トナー像に密着させ得るタイミングで送り出す。これにより、二次転写ニップでは、中間転写ベルト110上の多色トナー像が記録シートに密着する。そして、記録シート上に二次転写されて、白色の記録シート上でフルカラー画像となる。このようにしてフルカラー画像が形成された記録シートは、二次転写ローラ23の回転駆動に伴って二次転写ニップを出た後、搬送ベルトを具備するシート搬送ユニットを経由して定着装置25に送られる。
【0036】
定着装置25は、定着ベルト26を二本のローラによって張架しながら無端移動させるベルトユニットと、このベルトユニットの一方のローラに向けて押圧される加圧ローラ27とを有している。定着ベルト26と加圧ローラ27とは互いに当接して定着ニップを形成しており、シート搬送ユニットから受け取った記録シートを定着ニップに挟み込む。ベルトユニットにおける二本のローラのうち、加圧ローラ27から押圧される方の定着ローラは、内部に熱源(ヒータ)を有しており、これの発熱によって定着ベルト26を加熱する。加熱された定着ベルト26は、定着ニップに挟み込まれた記録シートを加熱する。この加熱やニップ圧の影響により、フルカラー画像が記録シートに定着させられる。
【0037】
定着装置25内で定着処理が施された記録シートは、複写機の筐体の左側板に突設されたスタック部上にスタックされるか、もう一方の面にもトナー像を形成するために二次転写ニップに戻されるかする。
【0038】
原稿のコピーがとられる際には、例えばシート原稿の束が原稿自動搬送装置400の原稿台30上にセットされる。但し、その原稿が本状に閉じられている片綴じ原稿である場合には、コンタクトガラス32上にセットされる。このセットに先立ち、複写機本体に対して原稿自動搬送装置400が開かれ、スキャナ300のコンタクトガラス32が露出される。この後、閉じられた原稿自動搬送装置400によって片綴じ原稿が押さえられる。
【0039】
このようにして原稿がセットされた後、コピースタートスイッチが押下されると、スキャナ300による原稿読取動作がスタートする。但し、原稿自動搬送装置400にシート原稿がセットされた場合には、この原稿読取動作に先立って、原稿自動搬送装置400がシート原稿をコンタクトガラス32まで自動搬送する。
【0040】
原稿読取動作では、まず、第1走行体33と第2走行体34とがともに走行を開始し、第1走行体33に設けられた光源から光が発射される。そして、原稿面からの反射光が第2走行体34内に設けられたミラーによって反射され、結像レンズ35を通過した後、読取センサー36に入射される。読取センサー36は、入射光に基づいて画像情報を構築する。
【0041】
このような原稿読取動作と並行して、各現像ステーション(18S、18G、18R、18B、18K)内の各機器や、中間転写ユニット17、二次転写装置22、定着装置25がそれぞれ駆動を開始する。そして、読取センサー36によって構築された画像情報に基づいて、光書込ユニット21が駆動制御されて、感光体1S、1G、1R、1B、1K上にS、G、R、B、Kトナー像が形成される。これらトナー像は、中間転写ベルト110上に重ね合わせ転写されて多色トナー像となる。
【0042】
また、原稿読取動作の開始とほぼ同時に、給送装置200内では給送動作が開始される。この給送動作では、給送ローラ42の一つが選択的に回転させられ、ペーパーバンク43又は給送カセット44から記録シートが送り出される。送り出された記録シートは、分離ローラ45で1枚ずつ分離されて反転給送路に進入した後、搬送ローラ対によって二次転写ニップに向けて搬送される。
【0043】
プリンター100の筐体内には、各機器の制御を司るCPUなどから構成される制御部が配設されている。また、筐体の上面には、液晶ディスプレイ及び各種キーボタンなどから構成される操作表示部500が配設されている。操作者は、この操作表示部500に対する入力操作により、制御部に対して命令を送ることで、記録シートの片面だけに画像を形成するモードである片面プリントモード、又は、両面に画像を形成する両面プリントモードなどを指定することができる。
【0044】
図3は、五つの現像ステーションのうちの一つの概略構成を示す概略構成図である。なお、五つの現像ステーションは同じ構成を有する。そのため、
図3においては、符号の末尾に付すS、G、R、B、Kの添字の記載を省略している。
図3において、感光体1は図中矢印方向(反時計回り方向)に回転しながら、その表面を帯電ローラ3によってマイナス極性に一様に帯電させられている。一様に帯電した感光体1の表面には、光書込ユニット21から照射されたレーザー光Lによって静電潜像が形成され、この静電潜像は現像装置4によって現像されてトナー像になる。
【0045】
現像装置4は、現像ローラ4aを有している。この現像ローラ4aは、筒状の現像スリーブと、これに連れ回らないように内包されるマグネットローラとを具備している。現像スリーブは、図中矢印方向(時計回り方向)に回転しながら、マグネットローラの発する磁力により、トナーと磁性キャリアとを含有する現像剤を表面に担持する。そして、感光体1の表面の静電潜像に現像剤のトナーを付着させて静電潜像を現像する。現像ローラ4aの側方には、現像ローラ4aに現像剤を供給しながら
図3の紙面に直交する方向における奥側から手前側に向けて搬送する供給スクリュー4bが現像ローラ4aに対して平行に配設されている。
【0046】
現像スリーブの周面における供給スクリュー4bとの対向部よりも表面移動方向下流側の箇所には、現像スリーブ上の現像剤の層厚を現像に適した厚さに規制する現像ドクタ4cが所定の間隙を介して対向している。また、供給スクリュー4bの図中左側方には、現像剤を同図の紙面に直交する方向における手前側から奥側に向けて搬送する循環スクリュー4dが配設されている。
【0047】
現像装置4のケーシング内において、供給スクリュー4bが配設されている空間と、循環スクリュー4dが配設されている空間との間には、両空間を仕切る仕切壁が設けられている。但し、両空間は完全には仕切られておらず、仕切壁における同図紙面に直交する方向の奥側の端部と手前側の端部とのそれぞれには、両空間を連通させる連通口が設けられている。以下、供給スクリュー4bが配設されている空間を供給搬送路という。また、循環スクリュー4dが配設されている空間を循環搬送路という。
【0048】
現像スリーブ上において、ステンレスからなる現像ドクタ4cによって薄層化された現像剤の層は、現像スリーブの回転に伴って感光体1との対向部である現像領域まで搬送されて静電潜像を現像する。アルミニウム素管又はステンレス素管からなる現像スリーブの表面はV溝処理され或いはサンドブラスト処理されている。
【0049】
現像に寄与した後の現像剤は、現像スリーブの回転に伴って供給スクリュー4bとの対向位置まで搬送され、マグネットローラの磁極によってその対向位置に形成される反発磁界の作用によって現像スリーブの表面から離脱して供給搬送路内に戻される。そして、供給スクリュー4bの回転に伴って、供給搬送路における同図紙面に直交する方向の手前側端部まで搬送され、ここで仕切壁の連通口を通って循環搬送路内に移動する。
【0050】
循環搬送路内では、現像剤が循環スクリュー4dの回転駆動に伴って同図紙面に直交する方向の手前側から奥側に向けて搬送される。この搬送の過程において、透磁率センサーからなるトナー濃度センサー4eによってトナー濃度が検知される。また、その検知結果に応じて、適切な量のトナーが補給路4fから投入される。これにより、先の現像によってトナー濃度を低下させた現像剤のトナー濃度が所定の目標濃度まで回復する。
【0051】
このようにしてトナー濃度を回復させた現像剤は、循環スクリュー4dの回転駆動に伴って循環搬送路における同図紙面に直交する方向の奥側の端部まで搬送され、仕切壁の連通口を通って供給搬送路に戻る。
【0052】
一次転写ニップを通過した感光体1の表面には、中間転写ベルト110に一次転写されずに残留した転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、ドラムクリーニング装置2のクリーニングブラシ2aやクリーニングブレード2bによって感光体1表面から除去される。
【0053】
図2において、プリンター100の筐体内における上部には、ボトル収容部65が設けられている。このボトル収容部65には、補給用のSトナー、Gトナー、Rトナー、Bトナー、Kトナーを収容するトナーボトル51S、51G、51R、51B、51Kが収容されている。また、このボトル収容部65には、後述するS、G、R、B、K用のトナー補給装置のボトル駆動部52S、52G、52R、52B、52Kが固定されている。S、G、R、B、K用のボトル駆動部52S、52G、52R、52B、52Kは、トナーボトル51S、51G、51R、51B、51Kを着脱自在に保持している。
【0054】
図4は、トナーボトル、トナー補給装置、現像装置、及び感光体を示す模式図である。同図においては、便宜上、符号に付されるS、G、R、B、Kという添字を省略している。図示例では、五つのトナーに関するトナーボトル、トナー補給装置、現像装置、及び感光体は、同じ構成を有するためである。
【0055】
トナー補給装置は、ボトル収容部65に設けられたボトル駆動部52を有している。また、トナー補給装置は、現像装置4の真上に配設された補給前貯留器55、トナー補給部材56、及び吸引ポンプ54を有している。また、トナー補給装置は、ボトル収容部65に設けられたボトル駆動部52の移送前貯留部から、現像装置4の真上に配設された補給前貯留器55へトナーを移送するための搬送路として、フレキシブルチューブからなる移送チューブ53を有している。
【0056】
トナーボトル51の内周面には、螺旋状のレール突起が設けられている。トナーボトル51の頭部を保持しているボトル駆動部52は、ボトル状のトナーボトル51をボトル円周方向に回転駆動させる。すると、トナーボトル51内に収容されているトナーがレール突起の作用によってトナーボトル51の底側から頭部側に向けて移動する。この移動によってトナーボトル51の頭部開口から排出されたトナーは、ボトル駆動部52の移送前貯留部に貯留される。
【0057】
フレキシブルな移送チューブ53は、その一端が吸引ポンプ54に接続されるとともに、他端がボトル駆動部52の移送前貯留部に接続されている。モーノポンプからなる吸引ポンプ54は、その駆動により、移送チューブ53を介してボトル駆動部52の移送前貯留部内のトナーを吸引する。この吸引により、吸引ポンプ54の排出口からトナーが排出されて補給前貯留器55内に落下するとともに、ボトル駆動部52の移送前貯留部内のトナーが移送チューブ53内に吸引されて補給前貯留器55に向けて移送される。
【0058】
吸引ポンプ54による単位時間あたりのトナー吸引量は、トナーの嵩密度、温度、及び、湿度などによって微妙に異なってくる。よって、吸引ポンプ54によってトナーを現像装置4に直接補給すると、単位時間あたりの補給量のばらつきによって、現像剤のトナー濃度を安定して目標濃度に維持することが困難になる。
【0059】
そこで、この複写機においては、吸引ポンプ54によってボトル駆動部52から現像装置4の近くまで移送したトナーを、補給前貯留器55内に一時貯留するようになっている。補給前貯留器55内には、単位駆動時間あたりのトナー補給量のばらつきの少ないトナー補給部材56が配設されている。このトナー補給部材56の回転駆動により、補給前貯留器55内のトナーを補給前貯留器55から送り出し、現像装置4の補給路4f内に投入する。
【0060】
図5は、実施形態に係る複写機の電気回路の要部を示すブロック図である。同図において、メイン制御部80は、複写機の各機器の駆動を制御したり、各種の演算処理をしたりするものであり、CPU80a、フラッシュメモリー80b、RAM80c、ROM80d、及び判定回路80eなどを具備している。このメイン制御部80には、様々な機器及びセンサーが電気接続されるが、同図においては、本発明と関連の深い機器及びセンサーだけを示している。
【0061】
メイン制御部80に接続されているR、G、B、K、S用の吸引モーター58R、58G、58B、58K、58Sは、吸引ポンプ(54R、54G、54B、54K、54S)を駆動するものである。その駆動により、吸引ポンプが駆動すると、ボトル駆動部(52R、52G、52B、52K、52S)から補給前貯留器55R、55G、55B、55K、55SへのRトナー、Gトナー、Bトナー、Kトナー、Sトナーの移送が行われる。
【0062】
メイン制御部80に接続されているR、G、B、K、S用のトナー補給モーター60R、60G、60B、60K、60Sは、補給前貯留器55R、55G、55B、55K、55Sのトナー補給部材(56R、56G、56B、56K、56S)の駆動源である。トナー補給モーター60R、60G、60B、60K、60Sの駆動によってトナー補給部材(56R、56G、56B、56K、56S)が回転すると、Rトナー、Gトナー、Bトナー、Kトナー、Sトナーが現像装置4R、4G、4B、4K、4Sに補給される。
【0063】
メイン制御部80に接続されているR、G、B、K、S用の補給前上限センサー59R、59G、59B、59K、59Sは、補給前貯留器55R、55G、55B、55K、55Sに搭載されているものである。補給前貯留器55R、55G、55B、55K、55S内に貯留されているRトナー、Gトナー、Bトナー、Kトナー、Sトナーのレベルが上限レベルに達しているか否かを検知して、その検知結果をメイン制御部80に送信する。メイン制御部80は、R、G、B、K、S用の補給前上限センサー59R、59G、59B、59K、59Sから送られてくる信号が上限レベル検知信号から非検知信号に変わると、R、G、B、K、S用のトナー補給時間の計時処理を開始する。この計時処理は、トナー補給モーター60R、60G、60B、60K、60Sの駆動時間をR、G、B、K、S用のトナー補給時間として計時する処理である。メイン制御部80は、R、G、B、K、Sのそれぞれについて、トナー補給時間が所定の閾値に達すると、それをゼロにリセットするとともに、トナー移送処理を実施する。このトナー移送処理は、トナー補給時間が所定の閾値に達した色について、吸引モーター(58R、58G、58B、58K、58S)の駆動によってボトル駆動部の移送前貯留部から補給前貯留器へのトナーの移送を行う処理である。より詳しくは、補給前上限センサー(59R、59G、59B、59K、59S)から送られてくる信号が非検知信号から上限レベル検知信号に変わるまで、吸引モーター(58R、58G、58B、58K、58S)を駆動する処理である。
【0064】
メイン制御部80に接続されているR、G、B、K、S用のボトル駆動モーター52cR、52cG、52cB、52cK、52cSは、ボトル駆動部(52R、52G、52B、52K、52S)に搭載されているものである。その駆動により、ボトル駆動部(52R、52G、52B、52K、52S)に装着されたトナーボトル(51R、51G、51B、51K、51S)を回転駆動させる。すると、トナーボトル(51R、51G、51B、51K、51S)内のトナー(Rトナー、Gトナー、Bトナー、Kトナー、Sトナー)が、ボトル駆動部(52R、52G、52B、52K、52S)の移送前貯留部に排出される。
【0065】
メイン制御部80に接続されているR、G、B、K、S用の移送前上限センサー52bR、52bG、52bB、52bK、52bSは、R、G、B、K、S用のボトル駆動部(52R、52G、52B、52K、52S)に搭載されているものであり、R、G、B、K、S用のボトル駆動部の移送前貯留部内に貯留されているRトナー、Gトナー、Bトナー、Kトナー、Sトナーの高さ位置が上限位置になっているか否かを検知し、その検知結果をメイン制御部80に送信する。
【0066】
メイン制御部80は、R、G、B、K、S用の移送前上限センサー52bR、52bG、52bB、52bK、52bSからの信号が上限レベル検知信号から非検知信号に変化すると、トナー排出処理を実施する。このトナー排出処理は、移送前上限センサー52bR、52bG、52bB、52bK、52bSからの信号が非検知信号から上限レベル検知信号に変わるまで、ボトル駆動モーター52cR、52cG、52cB、52cK、52cSを駆動させる処理である。この処理により、トナーボトル(51R、51G、51B、51K、51S)内のトナーがボトル駆動部(52R、52G、52B、52K、52S)の移送前貯留部に排出されて移送前の貯留部内のトナーレベルが上限レベルまで引き上げられる。なお、その過程で、ボトル駆動モーター52cR、52cG、52cB、52cK、52cSの駆動時間が所定の上限時間に達しても信号が上限レベル検知信号に変わらない場合には、メイン制御部80がボトル内トナーエンド警報を操作表示部500に表示させる。
【0067】
メイン制御部80に接続されているR、G、B、K、S用のボトル通信回路52aR、52aG、52aB、52aK、52aSは、R、G、B、K、S用のボトル駆動部52R、52G、52B、52K、52Sに搭載されているものである。一方、R、G、B、K、S用のトナーボトル51R、51G、51B、51K、51Sには、ボトルRFID51aR、51aG、51aB、51aK、51aSが搭載されている。それらボトルRFID51aR、51aG、51aB、51aK、51aSには、ID番号及びトナーの色情報などが格納されている。
【0068】
R、G、B、K、S用のトナーボトル51R、51G、51B、51K、51Sがボトル駆動部52R、52G、52B、52K、52Sに装着された状態では、次のことが可能になる。即ち、R、G、B、K、S用のボトルRFID51aR、51aG、51aB、51aK、51aSと、ボトル通信回路52aR、52aG、52aB、52aK、52aSとの間における無線通信が可能になる。この無線通信によってR、G、B、K、S用のボトル通信回路52aR、52aG、52aB、52aK、52aSが取得したトナーボトル51R、51G、51B、51K、51SのID番号やトナーの色情報は、メイン制御部80に送られる。
【0069】
図2においては、複写機を正面側から示している。ボトル収容部65においては、トナーボトル51及びボトル駆動部52の組み合わせが、複写機の正面側から見て、G、R、B、K、Sという順で並んでいる。図示例では、その組み合わせの並び順は固定されていて、変更できないようになっている。但し、別の実施形態では、その組み合わせの並び順は、変更できるようになっていてもよい。以下、その並び順における位置について、図中左側から順に、一番目、二番目、三番目、四番目、五番目のボトル位置という。
【0070】
メイン制御部80は、一番目のボトル位置に設置されたG用のボトル通信回路52aGから送られてくる色情報がGとは異なる色の色情報であった場合には、操作表示部500にエラーメッセージを表示させる。そして、G用のボトル通信回路52aGからGの色情報が送られてくるようになるまで、プリントジョブのための制御の開始を行わないで待機する。同様にして、二、三、四、五番目のボトル位置に設置されたR、B、K、S用のボトル通信回路52aR、52aB、52aK、52aSから送られてくる色情報がR、B、K、Sとは異なる色の色情報であった場合にも、エラーメッセージを表示させる。そして、R、B、K、S用のボトル通信回路52aR、52aB、52aK、52aSからR、B、K、Sの色情報が送られてくるようになるまで、プリントジョブのための制御の開始を行わないで待機する。このような構成により、一、二、三、四、五番目のボトル位置のそれぞれに対し、本来とは異なる色のトナーボトルを装着してプリントジョブを行ってしまうことによる種々の不具合の発生を回避することができる。
【0071】
図5において、メイン制御部80に接続されたR、G、B、K、S用のトナー濃度センサー4eR、4eG、4eB、4eK、4eSは、データ記憶回路を具備しており、それに自らの色情報を記憶している。メイン制御部80は、R、G、B、K、S用のトナー濃度センサー4eR、4eG、4eB、4eK、4eSのデータ記憶回路に記憶されている色情報を読み込んだり、そのデータ記憶回路に所定の情報を書き込んだりすることができる。
【0072】
図2において、中間転写ベルト110に対するトナー像の一次転写は、S、G、R、B、Kという順で行われる。以下、同図において、S、G、R、B、K用の現像ステーション18S、18G、18R、18B、18Kが装着されている位置を、最上流、二番目、三番目、四番目、最下流のユニット位置という。また、それぞれのユニット位置の真上にある補給前貯留器55S、55G、55R、55B、55Kの設置位置を、最上流、二番目、三番目、四番目、最下流の貯留器位置という。
【0073】
メイン制御部80は、二、三、四番目のユニット位置に装着された現像ステーション18G、18R、18Bのトナー濃度センサー4eG、4eR、4eBのデータ記憶回路に記憶されている色情報がG、R、Bとは異なる色の色情報であった場合には、操作表示部500にエラーメッセージを表示させる。そして、二、三、四番目のユニット位置に対し、G、R、Bの色情報を記憶しているトナー濃度センサーを搭載した現像ステーションが装着されるまで、プリントジョブのための制御の開始を行わないで待機する。このような構成により、二、三、四番目のユニット位置のそれぞれに対し、本来とは異なる色の現像ステーションを装着してプリントジョブを行ってしまうことによる種々の不具合の発生を回避することができる。なお、最上流や最下流のユニット位置における色の正否の確認については、後に詳述する。
【0074】
次に、実施形態に係る複写機の特徴的な構成について説明する。
【0075】
図2においては、S、G、R、B、Kという順でトナー像を中間転写ベルト110に重ね合わせて一次転写するように、各色の現像ステーション18S、18G、18R、18B、18Kが並んでいる。しかしながら、特殊色Sの種類によっては、重ね合わせの色順を変更したい場合がある。
【0076】
例えば、特殊色Sとして透明を採用する場合には、画像に光沢を付与する目的で透明のトナー層を形成するのが一般的である。そして、その場合には、
図2に示されるように、S、G、R、B、Kという重ね合わせの色順(以下、デフォルトの色順と言う)で差し支えない。具体的には、デフォルトの色順の重ね合わせによって中間転写ベルト110上に形成された多色トナー像は、記録シートに二次転写されると、
図6(a)に示されるように、各色トナーのうち、Sトナーを最上位(表層側)に位置させる。このような多色トナー像を記録シートSHとともに定着装置25に通すと、
図6(b)に示されるように、記録シートSHの表面に、Kトナー層、Bトナー層、Rトナー層、Gトナー層、透明トナー層を順に積層した多色トナー像が形成される。そして、最上位の透明トナー層がカラー画像に光沢性を付与する役割を果たす。
【0077】
一方、特殊色Sとして白色を採用する場合には、白色の下地を作る目的で白色のトナー層を形成するのが一般的である。この場合に、デフォルトの色順の重ね合わせを採用すると、記録シートSHの表面上で白色トナー層を最上位にしてしまうことから、白色の下地を形成することができない。各色の現像ステーション18S、18G、18R、18B、18Kの並び順を入れ替えないで、記録シートSHの表面上で白色トナー層を最下位に位置させて下地として機能させるためには、中間転写ベルト110を二周させて多色トナー像を形成する必要がある。
【0078】
具体的には、まず、中間転写ベルト110の一周目において、
図7(a)に示されるように、Gトナー像、Rトナー像、Bトナー像、Kトナー像を順に中間転写ベルト110に一次転写する。次に、中間転写ベルト110の二周目において、
図7(b)に示されるように、中間転写ベルト110上のKトナー像の上に、白色のSトナー像を一次転写する。その後、中間転写ベルト110上の多色トナー像を
図7(c)に示されるように記録シートSHに二次転写した後、多色トナー像及び記録シートSHを定着装置25に通す。これにより、
図7(d)に示されるように、白色のトナー層を最下位の下地として機能させた記録シートSHを得ることができる。
【0079】
しかしながら、このような構成では、一枚の出力毎に中間転写ベルト110を二周ずつさせる必要があるため、生産性を半分に低下させてしまう。加えて、一周目の中間転写ベルト110の表面に一次転写したGトナー像、Rトナー像、Bトナー像、及びKトナー像を二次転写ニップに通すときに、それらを二次転写ローラ23に転移させてしまわないように、二次転写バイアスの極性を反転させる必要がある。このため、二次転写バイアス電源として、出力バイアスの極性を切り替えることが可能なものを用いる必要が生じて、コストアップを招いてしまう。更には、一周目の中間転写ベルト110の表面上におけるGトナー像、Rトナー像、Bトナー像及びKトナー像をベルトクリーニング装置90によってベルト表面から除去してしまわないように、ベルトクリーニング装置90をベルト表面から離間させる必要がある。このため、ベルトクリーニング装置90の接離機構を設ける必要が生じて、更なるコストアップを招いてしまう。
【0080】
S用の現像ステーション18Sと、K用の現像ステーション18Kとを互いに入れ替えれば、中間転写ベルト110を二周させることなく、記録シートSH上の最下層に位置させた白色の下地を形成することができる。具体的には、前述のような入れ替えを行うと、
図8(a)に示されるように、一周目の中間転写ベルト110の表面に、K、G、R、B、Sのトナー像を順に重ねた多色トナー像を形成することが可能になる。この多色トナー像を記録シートSHに一括二次転写すると、記録シートSH上の多色トナー像は、
図8(b)に示されるように、白色のSトナー像を最下位に位置させたものになる。この多色トナー像及び記録シートSHを定着装置25に通せば、
図8(c)に示されるように、最下位に白色の下地となる白トナー層を位置させた記録シートSHを得ることができる。
【0081】
ところが、このような構成では、現像ステーション18などの入れ替え作業に手間を要してしまうという課題がある。
【0082】
この課題について詳述する。特殊色Sを透明から白色に変更する場合には、まず、最上流のユニット位置(先頭位置)にあるS用の現像ステーション18Sと、最下流のユニット位置(最終位置)にあるK用の現像ステーション18Kとを入れ替える必要がある。但し、これだけでは、混色を引き起こしてしまう。最上流のユニット位置に入れ替えたK用の現像ステーション18Kにトナーを補給する補給前貯留器55Sには、Sトナーが貯留されているからである。更には、最下流のユニット位置に入れ替えたS用の現像ステーション18Sにトナーを補給する補給前貯留器55Kには、Kトナーが貯留されているからである。これらの結果、S用の現像ステーション18S、及び、K用の現像ステーション18Kのそれぞれで混色を引き起こしてしまう。
【0083】
これらの混色を回避するために、S、Kの現像ステーション18S、18Kの入れ替えだけでなく、S、Kの補給前貯留器55S、55Kも入れ替える必要がある。そして、その入れ替えに伴って、S、Kのトナーボトル51S、51Kやボトル駆動部52S、52Kも入れ替えると、非常に手間を要する作業になってしまう。
【0084】
そこで、この複写機においては、S用の移送チューブ53Sと、K用の移送チューブ53Kとについて、それぞれの長さを次のような値に設定している。即ち、S用の補給前貯留器55Sと、K用の補給前貯留器55Kとを、最上流の貯留器位置と、最下流の貯留器位置とで互いに入れ替えたとする。この場合に、S、K用の移送チューブ53S、53Kのトナーボトル側の端部取り付け位置を互いに入れ替えなくても、移送チューブ53S、53Kにおける反対側の端部を入れ替え後の貯留器位置にある補給前貯留器55S、55Kに届かせる値である。つまり、前述のような入れ替えを行っても、S用の移送チューブ53Sの一端を五番目のボトル位置にあるS用のボトル駆動部52Sに接続したままで、他端を最下流の貯留器位置にあるS用の補給前貯留器55Sの吸引ポンプ54Sに届かせる。このような値に、S用の移送チューブ53Sの長さを設定している。加えて、前述のような入れ替えを行っても、K用の移送チューブ53Sの一端を四番目のボトル位置にあるK用のボトル駆動部52Kに接続したままで、他端を最上流の貯留器位置にあるK用の補給前貯留器55Kの吸引ポンプ54Kに届かせる。このような値に、K用の移送チューブ53Kの長さを設定している。
【0085】
このような構成では、S、K用のトナーボトル51S、51K、及びボトル駆動部52S、52Kの入れ替えを省略することが可能であることから、入れ替え作業の手間を軽減することができる。
【0086】
図9は、特殊色Sとして、透明のトナーが用いられる場合における現像ステーション(18S、18G、18R、18B、18K)、補給前貯留器(55S、55G、55R、55B、55K)、及びトナーボトル(51S、51G、51R、51B、51K)の正しい配列を示す模式図である。なお、同図においては、便宜上、ボトル駆動部(52S、52G、52R、52B、52K)の図示を省略している。
【0087】
特殊色Sとして、透明のトナーが用いられる場合には、図示のように、S用の補給前貯留器55Sの正しい設置位置は最上流の貯留器位置であり、且つ、S用の現像ステーション18Sの正しい設置位置は最上流のユニット位置である。また、K用の補給前貯留器55Kの正しい設置位置は最下流の貯留器位置であり、且つ、K用の現像ステーション18Kの正しい設置位置は最下流のユニット位置である。それら四つのそれぞれが正しい設置位置にセットされていると、図示のように、S用の移送チューブ53Sがプリンター100の一端付近から他端付近に向けて大きく延ばされる。これに対し、K用の移送チューブ53Kは、互いに近距離にあるトナーボトル51K(厳密にはトナーボトル51Kではなくボトル駆動部52K)と補給前貯留器55Kとを結ぶ短いものになっている。但し、K用の移送チューブ53Kの実際の長さは図示のように短いものではなく、S用の移送チューブ53Sと同等の長さまで引き延ばすことが可能である。同図に示される状態では、K用の移送チューブ53Kにおける全域のうち、余剰な領域がプリンター100の筐体内に収容されている。
【0088】
図10は、特殊色Sとして、白色が用いられる場合における現像ステーション(18S、18G、18R、18B、18K)、補給前貯留器(55S、55G、55R、55B、55K)、及びトナーボトル(51S、51G、51R、51B、51K)の正しい配列を示す模式図である。同図においても、便宜上、ボトル駆動部(52S、52G、52R、52B、52K)の図示を省略している。
【0089】
特殊色Sとして、白色が用いられる場合には、図示のように、S用の補給前貯留器55Sの正しい設置位置は最下流の貯留器位置であり、且つ、S用の現像ステーション18Sの正しい設置位置は最下流のユニット位置である。また、K用の補給前貯留器55Kの正しい設置位置は最上流の貯留器位置であり、且つ、K用の現像ステーション18Kの正しい設置位置は最上流のユニット位置である。それら四つのそれぞれが正しい設置位置にセットされていると、図示のように、透明トナーが用いられる場合とは逆に、K用の移送チューブ53Kがプリンター100の一端付近から他端付近に向けて大きく延ばされる。これに対し、S用の移送チューブ53Sは、互いに近距離にあるトナーボトル51S(厳密にはトナーボトル51Sではなくボトル駆動部52S)と補給前貯留器55Sとを結ぶ短いものになっている。S用の移送チューブ53Sにおける全域のうち、余剰な領域はプリンター100の筐体内に収容されている。
【0090】
図示例では、操作者の簡易操作によってプリンター100の本体に対して着脱可能になっているのは、S用の補給前貯留器55S、及び、K用の補給前貯留器55Kだけである。また、最上流、二番目、三番目、四番目、最下流の貯留器位置のうち、補給前貯留器55の着脱が可能になっているのは、最上流及び最下流の貯留器位置だけである。このような構成では、入れ替えの必要のない補給前貯留器55の簡易操作による着脱を可能にすることによる補給前貯留器55の位置間違いの発生を回避することができる。なお、簡易操作による着脱が可能であることは、特別な工具を用いることなく、プリンター100本体に対する着脱が可能であることを意味している。但し、別の実施形態では、G用の補給前貯留器55G、R用の補給前貯留器55R、及びB用の補給前貯留器55Bを含む全ての補給前貯留器55が、操作者の簡易操作によってプリンター100の本体に対して着脱可能になっていてもよい。
【0091】
また、図示例では、S、G、R、B、K用の補給前貯留器55S、55G、55R、55B、55Kのうち、S用の補給前貯留器55Sだけには、発信手段としてのディップスイッチ基板57が固定されている。そのディップスイッチ基板57は、
図5に示されるように、第一ディップスイッチ57a、第二ディップスイッチ57b、第三ディップスイッチ57c、及び第四ディップスイッチ57dを具備している。また、それら四つのディップスイッチのそれぞれに対応する端子、入力端子、及び特殊色信号出力端子も具備している。但し、別の実施形態では、全ての補給前貯留器55にディップスイッチ基板57が固定されていてもよく、K用の補給前貯留器55Kを除く、四つの補給前貯留器55にディップスイッチ基板57が固定されていてもよい。
【0092】
プリンター100における最上流の貯留器位置には、第一コネクター71が設置されている。また、最下流の貯留器位置には、第二コネクター72が設置されている。それらコネクターは、ディップスイッチ基板57の六つの端子のそれぞれに個別に係合する六つの端子を具備している。
【0093】
最上流の貯留器位置にS用の補給前貯留器55Sが装着されると、補給前貯留器55Sに固定されているディップスイッチ基板57の六つの端子が、第一コネクター71の六つの端子に係合する。また、最下流の貯留器位置にS用の補給前貯留器55Sが装着されると、補給前貯留器55Sに固定されているディップスイッチ基板57の六つの端子が、第二コネクター72の六つの端子に係合する。同図においては、最上流の貯留器位置に固定された第一コネクター71の端子と、最上流の貯留器位置に装着された補給前貯留器55Sのディップスイッチ基板の端子とが係合している状態を示している。
【0094】
メイン制御部80の判定回路80eは、第一コネクター71の出力端子や、第二コネクター72の出力端子にテスト信号を出力する。ディップスイッチ基板57と第一コネクター71とが係合した状態では、そのテスト信号がディップスイッチ基板57の入力端子からディップスイッチ基板57内の四つのディップスイッチ(第一ディップスイッチ57a~第四ディップスイッチ57d)及び特殊色信号出力端子のそれぞれに送られる。
【0095】
ディップスイッチ基板57の第一ディップスイッチ57aに送られたテスト信号は、第一ディップスイッチ57aがオンになっている場合にだけ、第一スイッチ信号としてディップスイッチ基板57の第一出力端子に送られる。そして、第一コネクター71の第一入力端子を介してメイン制御部80の判定回路80eに戻る。第二ディップスイッチ57b、第三ディップスイッチ57c、第四ディップスイッチ57dに送られたテスト信号も同様にして、それぞれのディップスイッチがオンになっている場合にだけ、第二、第三、第四スイッチ信号としてメイン制御部80の判定回路に戻る。
【0096】
一方、S用の補給前貯留器55Sが最下流のユニット位置に装着されて、補給前貯留器55Sのディップスイッチ基板57と、最下流のユニット位置に固定された第二コネクター72とが係合したとする。すると、メイン制御部80の判定回路80eから出力されたテスト信号が、第二コネクター72の出力端子からディップスイッチ基板57の入力端子に入力する。そして、ディップスイッチ基板57内の四つのディップスイッチ(第一ディップスイッチ57a~第四ディップスイッチ57d)及び特殊色信号出力端子のそれぞれに送られる。その後、それぞれのディップスイッチがオンになっている場合にだけ、スイッチ信号としてメイン制御部80の判定回路80eに戻る。また、特殊色信号出力端子に送られたテスト信号は、最下流特殊色信号として判定回路80eに戻る。
【0097】
判定回路80eは、最上流特殊色信号を受信したことに基づいて、S用の補給前貯留器55Sについて最上流の貯留器位置に装着されたことを把握する。また、最下流特殊色信号を受信したことに基づいて、S用の補給前貯留器55Sについて最下流の貯留器位置に装着されたことを把握する。また、第一スイッチ信号、第二スイッチ信号、第三スイッチ信号、及び第四スイッチ信号のうち、受信している組み合わせに基づいて、特殊色について具体的に何色であるのかを判定する。
【0098】
次に示す表1は、メイン制御部80のフラッシュメモリー80bに記憶されている特殊色データテーブルを示す表である。
【表1】
発信手段たるディップスイッチ基板57は、第一から第四までの四つのディップスイッチにおけるオン、オフの組み合わせで、16通りの情報を発信することが可能である。メイン制御部80の判定回路80eは、16通りの組み合わせのうち、どれに該当するのかに基づいて、特殊色の具体的な色を特定することが可能である。また、表1に示されるように、特殊色データテーブルは、16通りの組み合わせのそれぞれに対し、設置位置の情報を関連付けしている。判定回路80eは、前述した16通りの組み合わせのうち、実際の組み合わせがどれに該当するのかに基づいて、S用の補給前貯留器55Sの設置位置について、最上流、最下流の二通りの貯留器位置のうち、何れであるのかを特定することも可能である。加えて、S用の現像ステーション18Sの設置位置について、最上流、最下流の二通りのユニット位置のうち、何れであるのかを特定することも可能である。そして、それらの設置位置の情報を、CPU80aに送信する。
【0099】
なお、第一から第四までの四つのディップスイッチにおけるオン、オフの組み合わせのうち、全てがオフであるという組み合わせは、工場出荷時におけるディップスイッチ基板57の回路の検査のために用いられるものである。よって、ディップスイッチ基板57は、特殊色の具体的な色として、15通りの色を表現することになる。それらのうち、透明は、特殊色データテーブルにおいて最上流の設置位置に関連付けられている。これに対し、白色は、特殊色データテーブルにおいて最下流の設置位置に関連付けられている。
【0100】
この複写機では、この特殊色データテーブルと、ディップスイッチ基板57から送られてくるスイッチ信号とに基づいて、次の判定を行うことが可能である。即ち、KとSという互いに異なる二つの色で互いの貯留器位置を入れ替えた後の補給前貯留器のそれぞれについて、正しい貯留器位置にあるか否かを判定することが可能である。よって、K用の現像ステーション18Kと、S用の現像ステーション18Sとの入れ替えだけを行って補給前貯留器55K、55Sの入れ替え作業を忘れてしまうことを回避することができる。
【0101】
特殊色トナーをある特殊色トナーから別の特殊色トナーに変更する場合には、現像ステーション18Sや補給前貯留器55Sも、変更後の色で使用する専用のものに変更する必要がある。そこで、操作表示部500には、特殊色変更キーが設けられている。操作者は、その特殊色変更キーを押すことで、これから特殊色を変更することをメイン制御部80に把握させる。
【0102】
図11は、メイン制御部80によって実施される特殊色変更処理の処理フローを示すフローチャートである。メイン制御部80は、特殊色変更処理を開始すると、まず、Sトナー強制消費処理を実施する(ステップ1:以下、ステップをSと記す)。このSトナー強制消費処理は、S用のボトル駆動部52Sの移送前貯留部内に貯留されているSトナーのほぼ全量を、S用の補給前貯留器55Sに移送するための処理である。単純に移送するだけでは、移送先の補給前貯留器55Sでトナー溢れを発生させるおそれがある。このため、Sの全ベタ画像を作像しつつ、その作像に起因する補給前貯留器55SにおけるSトナーの貯留量の減少に基づいてボトル駆動部52Sの移送前貯留部から補給前貯留器55SへのSトナーの移送を実施する。Sトナー強制消費処理の開始後におけるS用の吸引モーター58Sの駆動時間が所定の閾値に達するまで、Sトナー強制消費処理が実施される。なお、このSトナー強制消費処理においては、二次転写バイアス電源から通常の二次転写バイアスとは逆極性の逆バイアスを出力する。これにより、Sの全ベタ画像を二次転写ニップで二次転写ローラ23に転移させることなく、中間転写ベルト110に付着させたまま二次転写ニップから排出して、ベルトクリーニング装置90によってベルト表面から除去する。
【0103】
Sトナー強制消費処理を終えたメイン制御部80は、次に、S用のトナーボトル51S、補給前貯留器55S、及び現像ステーション18Sの取り外しを操作者に指示するメッセージを操作表示部500に表示させる(S2)。そして、操作者によってそれらの全てがプリンター100から取り外されたことを検知すると(S3でYES)、新たなS用のトナーボトル51のボトル駆動部52Sへの装着を操作者に指示するメッセージを操作表示部500に表示させる(S4)。その後、S用のボトル駆動部52Sに対して新たなトナーボトル51が装着されるまで、具体的には、S用のボトル通信回路52aSから新たなID情報が送られてくるようになるまで、待機する(S5でNO)。そして、新たなトナーボトル51が装着されると(S5でYES)、ボトル通信回路52aSから送られてくる色情報について、新たな特殊色の色情報であるか否かを判定する(S6)。この判定において、新たな特殊色の色情報ではない場合(S6でNO)には、S用のボトル駆動部52Sに装着したトナーボトル51を、新たなS用のトナーボトル51Sに交換する作業を操作者に指示するメッセージを操作表示部500に表示させる(S7)。そして、その指示に従った操作者によってS用のボトル駆動部52Sのトナーボトルが操作者によって交換されたことを検知すると(S8)、上記S6の工程に処理フローをループさせる。
【0104】
一方、メイン制御部80は、S用のボトル駆動部52Sに装着されたトナーボトル51Sが新たな特殊色に対応するものであることを確認すると(S6でYES)、次に、S用のボトル通信回路52aSから送られてきた新たな特殊色Sの色情報を記憶する(S9)。そして、上述した特殊色データテーブルから、その色情報に対応する設置位置の情報を特定する(S10)。次いで、その特定結果に基づいて、Kの設置位置を特定する(S11)。より詳しくは、新たな特殊色Sに対応する設置位置が最上流である場合には、Kの設置位置をその逆の最下流であると特定する。これに対し、新たな特殊色Sに対応する設置位置が最下流である場合には、Kの設置位置をその逆の最上流であると特定する。
【0105】
その後、メイン制御部80は、Kの補給前貯留器55K及び現像ステーション18Kの入れ替えの要否を判定する(S12)。具体的には、直前に特定したKの設置位置が現状のKの設置位置と異なる場合には入れ替えについて必要であると判定するのに対し(S12でYES)、現状のKの設置位置と同じである場合には入れ替えについて不要であると判定する(S12でNO)。
【0106】
Kの入れ替えが必要である場合(S12でYES)、メイン制御部80は、S13からS19までの処理フローを実施した後に、S20からS32までの処理フローを実施する。これに対し、Kの入れ替えが不要である場合には(S12でNO)、S13からS19までの処理フローを実施せずに、S20からS32までの処理フローを実施する。以下、前者の処理フローをK入れ替え処理フローという。また、後者の処理フローをS交換処理フローという。
【0107】
K入れ替え処理フローにおいては、まず、K用の現像ステーション18Kの入れ替え作業を操作者に指示するメッセージを操作表示部500に表示させる(S13)。具体的には、現状のKの設置位置が最上流である場合には、最上流のユニット位置にある現像ステーション18Kを最下流のユニット位置に移動させるように操作者に指示するメッセージを表示させる。これに対し、現状のKの設置位置が最下流である場合には、最下流のユニット位置にある現像ステーション18Kを最上流のユニット位置に移動させるように操作者に指示するメッセージを表示させる。
【0108】
次に、メイン制御部80は、Kの移動先のユニット位置において、新たな現像ステーション18の装着を検知すると、その現像ステーション18のトナー濃度センサー4eのデータ記憶回路から色情報を読み込む。そして、その色情報がKの色情報である場合には、K用の現像ステーション18Kについて、正しく入れ替えられたと判定する(S14でYES)。これに対し、その色情報がKの色情報でない場合には、K用の現像ステーション18Kについて、正しく入れ替えられていないと判定する(S14でNO)。この場合、ユニット位置に装着した現像ステーション18がK用の現像ステーション18Kではないので、K用の現像ステーション18Kに交換するように操作者に指示するメッセージを表示させた後(S15)、処理フローを上記S14にループさせる。
【0109】
K用の現像ステーション18Kが正しく入れ替えられると(S14でYES)、メイン制御部80は、次に、K用の補給前貯留器55Kの入れ替え作業を操作者に指示するメッセージを操作表示部500に表示させる(S16)。具体的には、現状のKの設置位置が最上流である場合には、最上流の貯留器位置にある補給前貯留器55Kを最下流の貯留器位置に移動させるように操作者に指示するメッセージを表示させる。これに対し、現状のKの設置位置が最下流である場合には、最下流の貯留器位置にある補給前貯留器55Kを最上流の貯留器位置に移動させるように操作者に指示するメッセージを表示させる。
【0110】
次に、メイン制御部80は、Kの移動先の貯留器位置に設けられた貯留器検知センサーから貯留器検知信号が送られてくると、その貯留器位置からディップスイッチ基板57に由来する特殊色信号が送られてきているか否かを確認する。特殊色信号(最上流特殊色信号又は最下流特殊色信号)が送られている場合、Kの移動先の貯留器位置にKではなくS用の補給前貯留器55Sが装着されたことになるので、K用の補給前貯留器55Kについて正しく入れ替えられていないと判定する(S17でNO)。この場合、Kの移送先の貯留器位置には、Kではなく、間違ってS用の補給前貯留器55Sがセットされてしまったので、それをK用の補給前貯留器55Kに交換するように操作者に指示するメッセージを操作表示部500に表示させる(S18)。その後、処理フローを上記S17にループさせる。
【0111】
なお、間違ってS用の補給前貯留器55Sがセットされてしまった場合のエラー処理として、例えば操作者への指示を画面に表示させるのに加えて、又は代えて、次のような報知アクションを行ってもよい。即ち、ランプを光らせるなど、操作者に対して異常発生を知ってもらうための何らかの報知アクションである。前述のように間違ってセットされてしまった場合には、トナーを搬送する処理を実行しないことから、異なる種類のトナーを混ぜてしまうことはない。
【0112】
一方、Kの移送先の貯留器位置からディップスイッチ基板57に由来する特殊色信号が送られてきていない場合には、K用の補給前貯留器55Kについて正しく入れ替えられたと判定する(S17でYES)。この場合、Kトナー準備処理を実施する(S19)。このKトナー準備処理では、まず、K用のボトル駆動モーター52cKの駆動によってK用のトナーボトル51K内のトナーをボトル駆動部52Kの移送前貯留部に排出させる。その後、K用の吸引モーター58Kの駆動によって移送前貯留部からK用の補給前貯留器55KへのKトナーの移送を開始する。そして、補給前貯留器55Kの補給前上限センサー59Kによって上限レベルが検知されたことに基づいて、吸引モーター58Kの駆動を停止させる。また、ボトル駆動部52Kの移送前上限センサー52bKによって上限レベルが検知されたことに基づいて、ボトル駆動モーター52cKの駆動を停止させる。
【0113】
このようにしてKトナー準備処理を実施したメイン制御部80は、次に、S交換処理フローを開始する。
【0114】
S交換処理フローにおいては、まず、新たなS用の補給前貯留器55Sの装着作業を操作者に指示するメッセージを操作表示部500に表示させる(S20)。そして、新たな補給前貯留器55Sの装着を検知すると(S21でYES)、ディップスイッチ基板57から送られてくる四つのスイッチ信号のオン、オフの組み合わせと、上述した特殊色データテーブルとに基づいて、特殊色Sの色を特定する(S22)。次いで、その色について、上記S9で記憶した色情報が示す色と一致するか否かを判定する(S23)。そして、一致しない場合には(S23でNO)、S用の補給前貯留器55Sを、上記S9で記憶した色情報が示す色と同じ色に対応するものに交換するように操作者に指示するメッセージを操作表示部500に表示させる(S24)。その後、補給前貯留器55Sが交換されると(S25でYES)、処理フローを上記S23にループさせる。
【0115】
新たに装着されたS用の補給前貯留器55Sの色と、上記S9で記憶した色情報が示す色とが一致すると(S23でYES)、メイン制御部80は、新たなS用の現像ステーション18Sの装着作業を操作者に指示するメッセージを操作表示部500に表示させる(S26)。そして、新たな現像ステーション18Sの装着を検知すると(S27でYES)、その現像ステーション18Sに搭載されたトナー濃度センサー4eSのデータ記憶回路から色情報を読み込む(S28)。次いで、その読み込み結果について、上記S9で記憶した色情報と一致するか否かを判定する(S29)。そして、一致しない場合には(S29でNO)、S用の現像ステーション18Sを、上記S9で記憶した色情報が示す色と同じ色に対応するものに交換するように操作者に指示するメッセージを操作表示部500に表示させる(S30)。その後、現像ステーション18Sが交換されると(S31でYES)、処理フローを上記S29にループさせる。
【0116】
新たに装着されたS用の現像ステーション18Sの色と、上記S9で記憶した色情報が示す色とが一致すると(S29でYES)、メイン制御部80は、Sトナー準備処理を実施した後(S32)、一連の特殊色変更処理を終える。なお、Sトナー準備処理は、Sトナーについて、上述したKトナー準備処理と同様の内容の処理を実施するものである。
【0117】
以上の特殊色変更処理を実施する複写機においては、第一コネクター71、第二コネクター72、ディップスイッチ基板57、及びメイン制御部80の組み合わせが、貯留器の設置位置で貯留器に貯留されるトナーの色情報を取得する取得手段として機能している。また、メイン制御部80が、取得手段による取得結果に基づいてそれぞれの貯留器について正しい設置位置にあるか否かを判定する判定手段として機能している。
【0118】
操作者は、Kの設置位置の入れ替えが必要になった場合、現像ステーション18Kについては、新たな移動先のユニット位置に移動させる作業が必要であることを容易に認識する。この一方で、補給前貯留器55Sについては、移動の必要性を忘れてしまい易くなる傾向にある。また、Kの設置位置の入れ替えが必要になるのは、特殊色Sをある色から別の色に変更することに起因していることから、S用の補給前貯留器55Sの設置位置も現状の貯留器位置から新たな移動先の貯留器位置に移動させる必要がある。この移動の必要性についても、操作者は忘れてしまい易くなる傾向になる。
【0119】
そこで、この複写機においては、上記S17の工程で、K用の補給前貯留器55Kについて、正しく入れ替えられたか否かを確認する。更に、上記S23の工程で、新たに装着されたS用の補給前貯留器55Sの色について、上記S9で記憶した色情報が示す色と一致するか否かを確認する。これらにより、S用の補給前貯留器55SやK用の補給前貯留器55Kの入れ替え作業を忘れたままでプリントジョブを実施してしまうことによる混色の発生を回避することができる。
【0120】
これまでの説明では、特殊色トナーとして、白色トナー又は透明トナーを採用した例を挙げたが、特殊色トナーとして、金属色トナー又は蛍光色トナーなど、種々の特殊色トナーを用いた場合にも、本発明の適用が可能である。更に、トナーの色情報を判断情報としているが、色のみならず、トナーの添加物や、その物性値による違いなど、トナーの色の区別をすることが可能な情報であれば、その情報を色情報に代えて取得してもよい。
【0121】
ここで、
図12を参照し、本発明の一実施形態に係る複写機によって印刷された印刷物について説明する。
図12は、上述の複写機によって不可視色の画像が印刷された印刷物の三つの例を示している。具体的には、
図12(a)及び
図12(b)は、Rトナーによって形成された不可視赤色の単色画像D1、Gトナーによって形成された不可視緑色の単色画像D2、及びBトナーによって形成された不可視青色の単色画像D3が互いに重ならないように印刷された紙片を表紙として含むパンフレットBRの平面図である。
図12(c)及び
図12(d)は、Rトナー、Gトナー、及びBトナーを重ね合わせることによって形成された不可視色のフルカラー画像D4が印刷された短冊状の用紙であるチケットTKの平面図である。
図12(e)及び
図12(f)は、Rトナー、Gトナー、及びBトナーを重ね合わせることによって形成された不可視色の文字D5が印刷された大型の紙片であるポスターPSが貼り付けられた立て看板(床置き型のポスター)の斜視図である。
【0122】
より具体的には、
図12(a)は、蛍光灯下(可視光線下)に置かれたパンフレットBRの状態を示し、
図12(b)は、ブラックライト下(不可視光線下)に置かれたパンフレットBRの状態を示す。なお、
図12(a)では、明瞭化のため、可視光線下で視認可能な文字及び図柄などの図示は省略されている。また、
図12(c)は、蛍光灯下(可視光線下)に置かれたチケットTKの状態を示し、
図12(d)は、ブラックライト下(不可視光線下)に置かれたチケットTKの状態を示す。また、
図12(e)は、蛍光灯下(可視光線下)に置かれた立て看板(ポスターPS)の状態を示し、
図12(f)は、ブラックライト下(不可視光線下)に置かれた立て看板(ポスターPS)の状態を示す。なお、
図12(e)では、明瞭化のため、可視光線下で視認可能な文字及び図柄などの図示は省略されている。
【0123】
図示例では、ブラックライトは、不可視色トナーの励起波長範囲に含まれる波長である第1の波長(例えば360nm)の紫外線を放射する電灯である。このブラックライトの下では、不可視色トナーの発光強度は、Bトナー、Rトナー、Gトナーの順で弱く(低く)なる。そのため、上述の複写機では、不可視色トナーに関する現像ステーションは、
図2に示すように、上流側から、現像ステーション18G、現像ステーション18R、現像ステーション18Bの順に配置されている。Gトナー、Rトナー、及びBトナーを重ね合わせて不可視色の画像を印刷媒体上に形成する際に、発光強度の最も強い(高い)Bトナーを印刷媒体に最も近い側に位置付け、発光強度の最も弱い(低い)Gトナーを印刷媒体から最も遠い側に位置付けることにより、不可視色の画像の色味の最適化を図るためである。すなわち、
図18を参照して後述するように、発光強度が相対的に弱い(低い)不可視色トナーを、発光強度が相対的に強い(高い)不可視色トナーよりも印刷媒体に近い側に位置付けると、発光強度が相対的に強い(高い)不可視色トナーによって、発光強度が相対的に弱い(低い)不可視色トナーの発色が不所望に制限されてしまうためである。
【0124】
なお、ブラックライトは、例えば、第1の波長とは異なる第2の波長(例えば352nm)の紫外線を放射するものであってもよい。この場合、不可視色トナーの発光強度は、第1の波長の場合とは異なり、例えば、Rトナー、Bトナー、Gトナーの順で弱く(低く)なる。そのため、第2の波長の紫外線を放射するブラックライトの下で印刷物が視認される状況が想定される場合には、上述の複写機における現像ステーション18Rのユニット位置と現像ステーション18Bのユニット位置とは入れ替えられてもよい。RトナーとBトナーとを重ね合わせて不可視色の画像を形成する際に、発光強度が相対的に強い(高い)Rトナーを、発光強度が相対的に弱い(低い)Bトナーよりも印刷媒体に近い側に位置付けることにより、Bトナーの発色が不所望に制限されてしまうのを回避して不可視色の画像の色味の最適化を図るためである。
【0125】
このように、本発明の一実施形態に係る複写機によって印刷された印刷物であるパンフレットBR、チケットTK、及びポスターPSは、ブラックライト下では視認できるが蛍光灯下では視認できない画像(不可視色の画像)を有することができる。そのため、これらの印刷物を作製する作製者は、これらの印刷物を利用した様々な演出を実現できる。
【0126】
ここで、
図13を参照し、パンフレットBR、チケットTK、及びポスターPSを利用した演出の一例について説明する。
図13は、パンフレットBR、チケットTK、及びポスターPSの使用例を示す図である。図示例では、パンフレットBRは、水族館を説明するための小冊子であり、チケットTKは、水族館の入場チケットであり、ポスターPSは、水族館の各展示室に展示されている生物を説明する大型の紙片である。パンフレットBR、チケットTK、及びポスターPSには、Kトナーなどの可視色トナーによる不図示の可視色の画像とは別に、不可視色の画像が印刷されている。なお、チケットTKには、チケットTKの真偽を確認するための数字、文字、QRコード、又はバーコードなどの別の不可視色の画像が印刷されていてもよい。
【0127】
具体的には、
図13は、水族館の展示室の様子を示している。この展示室は、ブラックライトに反応して蛍光する珊瑚、深海魚、又はクラゲなどの生物(展示物)の展示室であり、海の中であることを表現するために可能な限り暗い状態にされる一方、展示物が発光(蛍光)するように展示室全体がブラックライトによって照射されている。ブラックライトは、蛍光剤などの蛍光体を含まないものは発光させないため、蛍光灯などとは異なり、周囲を明るくすることはない。そのため、ブラックライトは、この展示室のような、海の中であることを表現するための空間を可能な限り暗い状態としながら、特定のもの(展示物、及び、展示物に関する読み物など)だけは見えるようにするという要望に応えることができる。
【0128】
水族館の来場者が持っているチケットTKは、来場者がこの展示室に入ると、この展示室に入るまでの可視光線下では何も描かれていないように見えた部分、何かが描かれているようではあるが何が描かれているかが明確には見えにくい部分、又は、別の可視色の画像が描かれていた部分などに、不可視色のフルカラー画像D4を浮かび上がらせる。図示例では、不可視色のフルカラー画像D4は、水槽内を泳いでいる魚と同じ魚の画像を含む。この演出は、チケットTKを持っている来場者に驚きを与え、来場者に非日常的な体験を共有させることができる、或いは、共通の体験を通じて来場者の一体感を高めることができるといった効果をもたらす。水族館の来場者が持っているパンフレットBRに印刷された不可視画像による演出についても同様である。
【0129】
展示室内に設置された立て看板に貼り付けられたポスターPSは、ブラックライトの照射を受けて不可視色の文字D5を浮かび上がらせている。図示例では、不可視色の文字D5は、水槽内を泳いでいる魚の種類である「深海魚」を示している。この演出は、暗い展示室内であっても来場者が文字D5を読むことができ、水槽内の生物に関する情報を得ることができるようになるという効果をもたらす。
【0130】
このような演出は、コンサート会場、イベント会場、博物館、又はアミューズメント施設などの水族館以外の場所でも、所定の光環境が実現される場所であれば、屋内外を問わず実現可能である。
【0131】
また、上述のような、配布されたチケットTK若しくはパンフレットBRなど、所定の光環境が実現される場所において来場者が持っている印刷物、又は、立て看板に貼り付けられたポスターPSなど、所定の光環境が実現される場所に設置された印刷物以外の印刷物を利用した演出も実現可能である。例えば、手提げ袋又は衣服などに貼り付けられるラベルなどの印刷物を利用した演出も実現可能である。
【0132】
次に、
図14及び
図15を参照し、複写機の別の一例について説明する。
図14は、複写機の別の一例の概略構成図であり、
図2に対応している。
図15は、
図14に示す複写機の現像ステーション、補給前貯留器、及びトナーボトルの配列の一例を示す模式図であり、
図10に対応している。
【0133】
図14に示す複写機は、不可視色トナーに関する現像ステーション18、補給前貯留器55、及びトナーボトル51を、可視色トナーに関する現像ステーション18、補給前貯留器55、及びトナーボトル51に置き換えることができる点で、
図1に示す複写機と異なるが、他の点で
図2に示す複写機と同じである。
【0134】
また、
図14に示す例では、プリンター100は、特殊色(S:Special)、黄色(Y:Yellow)、赤紫色(M:Magenta)、青緑色(C:Cyan)、黒色(K:Key plate)の各色の画像を形成するための五つの現像ステーション18S、18Y、18M、18C、18Kを具備する画像形成ユニットGUを備えている。各符号の数字(18)の後に付されたS、Y、M、C、Kという添字は、それぞれ、特殊色用、黄色用、赤紫色用、青緑色用、黒色用の部材であることを示している。以下の説明で使用される他の符号についても同様である。また、以下の説明では、S、Y、M、C、Kの文字が、それぞれ、特殊色、黄色、赤紫色、青緑色、黒色を示す場合もある。なお、特殊色は、黄色、赤紫色、青緑色、及び黒色の何れとも異なる色の総称である。
【0135】
黄色は、可視光線の下で視認できる黄色を意味する。赤紫色は、可視光線の下で視認できる赤紫色を意味する。青緑色は、可視光線の下で視認できる青緑色を意味する。
図14に示すプリンター100は、黄色、赤紫色、及び青緑色を重ね合わせることにより、任意の可視色(可視光線の下で視認できる色)を表現できる。
【0136】
黄色の画像は、黄色トナー(以下、「Yトナー」とする)によって実現され、赤紫色の画像は、赤紫色トナー(以下、「Mトナー」とする)によって実現され、青緑色の画像は、青緑色トナー(以下、「Cトナー」とする)によって実現される。そして、黄色、赤紫色、及び青緑色以外の可視色の画像は、Yトナー、Mトナー、及びCトナーのうちの少なくとも二つの可視色トナーの重ね合わせによって実現される。なお、特殊色の画像は、Sトナーによって実現され、黒色の画像は、Kトナーによって実現される。本実施形態では、可視色トナーは、粉砕トナーよりも低い定着温度を有する重合トナーである。但し、可視色トナーは、粉砕トナーであってもよい。
【0137】
具体的には、
図14に示す複写機では、現像ステーション18Gが装着されていた左から二番目のユニット位置に現像ステーション18Yが装着され、現像ステーション18Rが装着されていた左から三番目のユニット位置に現像ステーション18Mが装着され、現像ステーション18Bが装着されていた左から四番目のユニット位置に現像ステーション18Cが装着されている。すなわち、
図14に示す複写機は、三つの不可視色に関する部材(トナーボトル51G、51R、51B、ボトル駆動部52G、52R、52B、移送チューブ53G、53R、53B、吸引ポンプ54G、54R、54B、補給前貯留器55G、55R、55B)と、三つの可視色に関する部材(トナーボトル51Y、51M、51C、ボトル駆動部52Y、52M、52C、移送チューブ53Y、53M、53C、吸引ポンプ54Y、54M、54C、補給前貯留器55Y、55M、55C)とを入れ替えることができるように構成されている。なお、
図14及び
図15に示す例では、移送チューブ53は、不可視色トナーと可視色トナーとを入れ替える際に清掃される。すなわち、移送チューブ53は、不可視色トナーと可視色トナーとで共用される。ボトル駆動部52、吸引ポンプ54、及び補給前貯留器55は、
図14及び
図15に示す例では、不可視色トナーと可視色トナーとを入れ替える際に取り替えられるが、移送チューブ53のように清掃されてもよい。すなわち、ボトル駆動部52、吸引ポンプ54、及び補給前貯留器55のうちの少なくとも一つは、不可視色トナーと可視色トナーとで共用されてもよい。
【0138】
また、
図14及び
図15に示す例では、S、Y、M、C、K用の補給前貯留器55S、55Y、55M、55C、55Kは、操作者の簡易操作によってプリンター100の本体に対して着脱可能になっている。また、Y、M、C用の補給前貯留器55Y、55M、55Cと交換可能なG、R、B用の補給前貯留器55G、55R、55Bも、操作者の簡易操作によってプリンター100の本体に対して着脱可能になっている。
【0139】
そして、S、Y、M、C、K、G、R、B用の補給前貯留器55S、55Y、55M、55C、55K、55G、55R、55Bのそれぞれには、発信手段としてのディップスイッチ基板57S、57Y、57M、57C、57K、57G(図示せず)、57R(図示せず)、57B(図示せず)が固定されている。ディップスイッチ基板57S、57Y、57M、57C、57K、57G、57R、57Bは、
図5を参照して説明されたディップスイッチ基板57と同様の構成を有する。
【0140】
次に、
図16を参照し、
図14に示す複写機の可視色トナーを不可視色トナーに入れ替えるための作業である色替え作業の流れについて説明する。
図16は、色替え作業が行われる際の複写機の処理フローの一例を示すフローチャートである。なお、
図16を参照する以下の説明は、可視色トナーを不可視色トナーに入れ替えるための作業に関するが、不可視色トナーを可視色トナーに入れ替える作業にも同様に適用される。
【0141】
複写機の操作者(作業者)は、操作表示部500に設けられた色変更キーを押すことでこの色替え作業を開始させることができる。
【0142】
メイン制御部80は、色変更キーが押されたことを検知すると、色替え作業の手順に関する情報を示す入れ替え方法の説明画面を液晶ディスプレイに表示させる(S50)。
【0143】
作業者は、液晶ディスプレイに表示された説明にしたがって作業を行う。具体的には、作業者は、複写機に取り付けられている可視色用の移送チューブ53Y、53M、53Cを取り外して清掃する。以下では、清掃後の可視色用の移送チューブ53Y、53M、53Cは、不可視色用の移送チューブ53G、53R、53Bとして利用される。
【0144】
その後、作業者は、可視色用の現像ステーション18Y、18M、18Cを不可視色用の現像ステーション18G、18R、18Bに交換し、且つ、可視色用の補給前貯留器55Y、55M、55Cを不可視色用の補給前貯留器55G、55R、55Bに交換する。すなわち、作業者は、可視色用の現像ステーション18Y、18M、18C及び可視色用の補給前貯留器55Y、55M、55Cをトナー補給装置から取り外した後で、不可視色用の現像ステーション18G、18R、18B及び不可視色用の補給前貯留器55G、55R、55Bをトナー補給装置に取り付ける。その後、作業者は、トナー補給装置に取り付けられた不可視色用の補給前貯留器55G、55R、55Bに、清掃後の不可視色用の移送チューブ53G、53R、53Bを装着する。
【0145】
入れ替え方法の説明画面を液晶ディスプレイに表示させた後で、メイン制御部80は、適切な現像ステーション(不可視色用の現像ステーション18G、18R、18B)及び適切な補給間貯留器(不可視色用の補給前貯留器55G、55R、55B)が装着されたか否かを判定する(S51)。
【0146】
図14に示す複写機では、メイン制御部80は、現像ステーション18Yのユニット位置において、現像ステーション18Gの装着を検知すると、トナー濃度センサー4eのデータ記憶回路から色情報を読み込む。そして、メイン制御部80は、その色情報がGの色情報である場合には、適切な現像ステーション(現像ステーション18G)が装着されたと判定する(S51でYES)。これに対し、その色情報がGの色情報でない場合には、メイン制御部80は、不適切な現像ステーション(現像ステーション18G以外の現像ステーション)が装着されたと判定する(S51でNO)。この場合、メイン制御部80は、不適切な現像ステーションが装着された旨を作業者に知らせるメッセージを液晶ディスプレイに表示させてもよい。また、
図16に示す例では、メイン制御部80は、適切な現像ステーションが装着されたと判定できるまでこの判定を繰り返す。現像ステーション18R及び18Bについても同様である。
【0147】
また、
図14に示す複写機では、メイン制御部80は、不可視色用の補給前貯留器55G、55R、55Bのそれぞれに固定されているディップスイッチ基板57G、57R、57Bの出力に基づき、適切な補給前貯留器(補給前貯留器55G、55R、55B)が装着されたか否かを判定する。不適切な補給前貯留器が装着されたと判定した場合、メイン制御部80は、その旨を作業者に知らせるメッセージを液晶ディスプレイに表示させてもよい。また、
図16に示す例では、メイン制御部80は、適切な補給前貯留器が装着されたと判定できるまでこの判定を繰り返す。
【0148】
不可視色用の現像ステーション18G、18R、18B及び不可視色用の補給前貯留器55G、55R、55Bが装着されたと判定した後(S51でYES)、メイン制御部80は、適切なトナーボトル(不可視色用のトナーボトル51G、51R、51B)が装着されたか否かを判定する(S52)。この判定に先立って、メイン制御部80は、作業者にトナーボトルの交換を促すメッセージを液晶ディスプレイに表示させてもよい。
【0149】
作業者は、液晶ディスプレイに表示されたメッセージに応じ、可視色用のトナーボトル51Y、51M、51Cを不可視色用のトナーボトル51G、51R、51Bに交換する。
【0150】
図14に示す複写機では、メイン制御部80は、ボトルRFID51aとボトル通信回路52aとの間の無線通信によって得られたトナーの色情報に基づき、適切なトナーボトル(不可視色用のトナーボトル51G、51R、51B)が装着されたか否かを判定する。
【0151】
メイン制御部80は、例えば、トナーボトル51Yが装着されていた場所にトナーボトル51G以外のトナーボトルが装着された場合、適切なトナーボトルが装着されていないと判定し(S52でNO)、不適切なトナーボトルが装着された旨を作業者に知らせるメッセージを液晶ディスプレイに表示させてもよい。トナーボトル51Mが装着されていた場所にトナーボトル51R以外のトナーボトルが装着された場合、及び、トナーボトル51Cが装着されていた場所にトナーボトル51B以外のトナーボトルが装着された場合についても同様である。また、
図16に示す例では、メイン制御部80は、適切なトナーボトルが装着されたと判定できるまでこの判定を繰り返す。すなわち、メイン制御部80は、適切なトナーボトルが装着されたと判定できるまでは複写機の動作を開始させることはない。そのため、メイン制御部80は、不適切なトナーボトルが装着されたままの状態で複写機が動作してしまうのを防止できる。
【0152】
適切なトナーボトル(不可視色用のトナーボトル51G、51R、51B)が装着されたと判定した場合(S52でYES)、メイン制御部80は、画像形成条件をCMYモードにおける画像形成条件からRGBモードにおける画像形成条件に変更する(S53)。CMYモードは、可視色トナーを用いて印刷媒体上に可視色のフルカラー画像を形成する際に利用される動作モードであり、RGBモードは、不可視色トナーを用いて印刷媒体上に不可視色のフルカラー画像を形成する際に利用される動作モードである。画像形成条件は、例えば、プロセスコントロール制御、転写バイアス制御、及び温度制御などに関するパラメータのような、画像の形成に関するパラメータの組み合わせである。図示例では、メイン制御部80は、可視色の画像の形成に適した各種パラメータの組み合わせを、CMYモードにおける画像形成条件としてフラッシュメモリー80bに書き換え可能に記憶し、且つ、不可視色の画像の形成に適した各種パラメータの組み合わせを、RGBモードにおける画像形成条件としてフラッシュメモリー80bに書き換え可能に記憶している。そして、メイン制御部80は、適切なトナーボトル(不可視色用のトナーボトル51G、51R、51B)が装着されたと判定した場合、RGBモードの画像形成条件(各種パラメータの組み合わせ)をフラッシュメモリー80bから読み出し、RAM80cなどに記憶されている現在の画像形成条件(YMCモードの画像形成条件)に、読み出した画像形成条件(RGBモードの画像形成条件)を上書きする。
【0153】
図示例では、RGBモードのプロセスコントロール制御では、Rトナー、Gトナー、及びBトナーの各目標付着量(印刷媒体に付着するトナー量の目標値)は、Sトナーとしてクリアトナーが採用された場合に利用される探索テーブル(LUT:Look Up Table)を用いて設定される。すなわち、Rトナー、Gトナー、及びBトナーの各目標付着量は、Cトナー、Mトナー、及びYトナーの各目標付着量とは異なり、クリアトナーの目標付着量と同様の目標付着量となるように設定される。
【0154】
また、RGBモードのプロセスコントロール制御では、トナーの物性値が不可視色トナーと可視色トナーとで異なるため、RGBモードでの目標現像γパラメータは、CMYモードでの目標現像γパラメータとは異なるように設定される。なお、目標現像γパラメータは、現像能力の目標値であり、トナーの物性値、印刷媒体の物性値、又は、現像ステーション18の配置などに応じて調整される。
【0155】
また、RGBモードのプロセスコントロール制御では、トナーの形状が不可視色トナー(粉砕トナー)と可視色トナー(重合トナー)とで異なるため、RGBモードでの色差補正係数及び付着量計算補正係数などの付着量検知設計パラメータは、CMYモードでの付着量検知設計パラメータとは異なるように設定される。なお、付着量検知設計パラメータは、光反射特性を表すパラメータである。
【0156】
また、RGBモードのプロセスコントロール制御では、RGBモードでのトナー濃度の上下限、及び、現像ポテンシャルの上下限は、それぞれ、CMYモードでのトナー濃度の上下限、及び、現像ポテンシャルの上下限とは異なるように設定される。トナーが印刷媒体に付着するときのトナー濃度、トナーの飛散が発生するときのトナー濃度、及び、現像ポテンシャルの閾値などが不可視色トナーと可視色トナーとで異なるためである。
【0157】
また、RGBモードのプロセスコントロール制御では、トナーの搬送性が不可視色トナー(粉砕トナー)と可視色トナー(重合トナー)とで異なるため、RGBモードでのトナー補給能力パラメータは、CMYモードでのトナー補給能力パラメータとは異なるように設定される。なお、トナー補給能力パラメータは、トナーを搬送するための装置を駆動する時間である駆動時間などを含む。所定の駆動時間で搬送できるトナー量は不可視色トナー(粉砕トナー)と可視色トナー(重合トナー)とで異なるためである。
【0158】
また、RGBモードのプロセスコントロール制御では、トナーの嵩密度が不可視色トナー(粉砕トナー)と可視色トナー(重合トナー)とで異なるため、RGBモードでの嵩密度補正パラメータは、CMYモードでの嵩密度補正パラメータとは異なるように設定される。なお、嵩密度補正パラメータは、環境又は経時によって変化する嵩密度感(トナー濃度検知ズレ感度)を補正するためのパラメータである。
【0159】
また、RGBモードの転写バイアス制御では、転写の際に印加する電圧及び電流などを適切に制御するために、RGBモードでの転写電圧パラメータは、CMYモードでの転写電圧パラメータとは異なるように設定される。トナーが持つ電荷量、感光体から転写ベルトへの転写の際の転写効率、及び、転写ベルトから印刷媒体への転写の際の転写効率などが不可視色トナー(粉砕トナー)と可視色トナー(重合トナー)とで異なるためである。
【0160】
また、RGBモードの定着温度制御では、RGBモードでの定着温度パラメータは、CMYモードでの定着温度パラメータとは異なるように設定される。トナーの粘弾性及び定着特性などが不可視色トナー(粉砕トナー)と可視色トナー(重合トナー)とで異なるためである。例えば、不可視色トナー(粉砕トナー)は、可視色トナー(重合トナー)よりも高い定着温度を有するためである。そのため、RGBモードの定着温度制御では、RGBモードでの印刷速度は、CMYモードでの印刷速度よりも小さくなるように設定されてもよい。定着ニップにおいて不可視色トナーに与えられるべき熱量を確保するためである。
【0161】
具体的には、メイン制御部80は、定着ベルト26と接触するローラの内部に設けられる熱源(ヒータ)による定着ベルト26の加熱時間を制御することにより、定着ベルト26を介して印刷媒体上のトナーに適切な熱を伝えるようにする。すなわち、
図14の複写機は、定着ローラと加圧ローラ27とで定着ニップを形成し、その定着ニップで印刷媒体を挟むことにより、熱と圧力の作用を利用してトナーを印刷媒体に溶融定着させることができる。
【0162】
また、RGBモードの用紙設定制御では、RGBモードでの用紙設定パラメータは、CMYモードでの用紙設定パラメータとは異なるように設定される。具体的には、RGBモードでの用紙設定パラメータは、クリアトナーを使用する場合に採用される用紙設定パラメータと同じになるように設定される。図示例では、不可視色トナーは、クリアトナーを母体として生成されるためであり、クリアトナーと同じ転写条件及び定着条件が適用可能となるためである。或いは、RGBモードでの用紙設定パラメータは、クリアトナー用の用紙設定パラメータが初期値として設定され、用紙の種類などに応じ、用紙の種類毎の推奨設定に変更されてもよい。なお、用紙の種類は、例えば、普通紙、コート紙(光沢紙若しくはマット紙など)、又は、メタリック紙などを含む。また、普通紙は、厚さ又は重さなどの違いに応じて複数の種類に更に細かく分類されていてもよい。そして、RGBモードでの用紙設定パラメータは、その普通紙の種類に応じた適切な転写条件及び定着条件となるように設定されてもよい。
【0163】
また、適切なトナーボトル(不可視色用のトナーボトル51G、51R、51B)が装着されたと判定した場合(S52でYES)、メイン制御部80は、CMYモード用のユーザーインターフェースをRGBモード用のユーザーインターフェースに変更する(S54)。図示例では、メイン制御部80は、操作表示部500に表示されるCMYモード用のトナー残量インジケータをRGBモード用のトナー残量インジケータに切り換える。
【0164】
図17は、操作表示部500に表示されるトナー残量インジケータの一例を示す図である。具体的には、
図17の上図は、CMYモード用のトナー残量インジケータの一例を示し、
図17の下図は、RGBモード用のトナー残量インジケータの一例を示している。
【0165】
図示例では、メイン制御部80は、不可視色用のトナーボトル51G、51R、51Bが装着されたと判定した場合、
図17の上図に示すCMYモード用のトナー残量インジケータを、
図17の下図に示すCMYモード用のトナー残量インジケータに切り換える。なお、
図17に示す例では、各色の残量を表す横長のバーグラフメータは、横方向に並ぶように配置されているが、縦方向に並ぶように配置されていてもよい。また、
図17に示す例では、各色の残量はバーグラフメータ及びパーセント表示によって示されているが、バーグラフメータ及びパーセント表示の何れか一方は省略されてもよい。
【0166】
その後、メイン制御部80は、不可視色の画像に関する画像データが入力されると、その画像データを現像ステーション18に対する入力データに変換し、その入力データに基づいて感光体1の表面にレーザー光を照射して静電潜像を形成する。感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段である現像装置によって現像されてトナー像となる。そして、感光体1上に形成されたトナー像は、中間転写ベルト110に一次転写され、更に、中間転写ベルト110上に一次転写されたトナー像は、二次転写ニップで印刷媒体に二次転写され、印刷媒体上で不可視色のフルカラー画像となる。
【0167】
上述のような構成により、
図14に示す複写機では、CMYモードにおける画像形成条件とRGBモードにおける画像形成条件とが簡単に切り換えられる。そのため、
図14に示す複写機は、中間転写ベルト110上のトナー付着量の検知結果に誤差が生じ、適切なトナー付着量の制御ができなくなり、色味変動、異常画像、又は機械動作異常などが発生してしまうといった状況が発生するのを抑制できるという効果をもたらす。また、
図14に示す複写機は、適切な場所に適切なトナーボトル51が取り付けられたことを検知できるため、不適切な順序でトナーの重ね合わせが行われてしまい、形成されるフルカラー画像の色味が不所望に変化してしまうのを抑制できるという効果をもたらす。
【0168】
上述のように、本発明の一実施形態に係る画像形成装置IFの一例である複写機は、
図2に示すように、五つの現像ステーション18S、18G、18R、18B、18Kと、五つの現像ステーション18S、18G、18R、18B、18Kに対して着脱可能な五つの現像器(トナーボトル51S、51G、51R、51B、51K)と、入力される画像データに基づき、五つの現像器(トナーボトル51S、51G、51R、51B、51K)に収容されているトナーを用いて印刷媒体(記録シートSH)上に画像を形成する画像形成ユニットGUと、を有する。五つの現像器(トナーボトル51S、51G、51R、51B、51K)のうちの一つである第1の現像器(トナーボトル51G)には、第1のトナー(Gトナー、すなわち、不可視緑色トナー)が収容されている。また、五つの現像器(トナーボトル51S、51G、51R、51B、51K)のうちの別の一つである第2の現像器(トナーボトル51R又はトナーボトル51B)には、不可視光線による発光強度が第1のトナー(Gトナー)より高い第2のトナー(Rトナー又はBトナー)が収容されている。第1のトナー(Gトナー)及び第2のトナー(Rトナー又はBトナー)は、不可視光線による発光強度が可視光線による発光強度よりも高い画像を形成するトナーである。そして、画像形成ユニットGUは、印刷媒体(記録シートSH)上で第1のトナー(Gトナー)と第2のトナー(Rトナー又はBトナー)とを重ね合わせる場合、第1のトナー(Gトナー)よりも先に第2のトナー(Rトナー又はBトナー)を印刷媒体(記録シートSH)に付着させるように構成されている。
【0169】
具体的には、五つの現像器(トナーボトル51S、51G、51R、51B、51K)のうちの一つである第1の現像器(トナーボトル51G)には、不可視光線の下での視認性が可視光線の下での視認性よりも高い画像を形成するトナーの一つである第1のトナー(Gトナー、すなわち、不可視緑色トナー)が収容されている。また、五つの現像器(トナーボトル51S、51G、51R、51B、51K)のうちの別の一つである第2の現像器(トナーボトル51R又はトナーボトル51B)には、不可視光線の下での視認性が可視光線の下での視認性よりも高い画像を形成するトナーの別の一つである第2のトナー(Rトナー、すなわち、不可視赤色トナー、又は、Bトナー、すなわち、不可視青色トナー)が収容されている。そして、画像形成ユニットGUは、印刷媒体(記録シートSH)上で第1のトナー(Gトナー)と第2のトナー(Rトナー又はBトナー)とを重ね合わせる場合、不可視光線の下での視認性が相対的に低い第1のトナー(Gトナー)よりも先に、不可視光線の下での視認性が相対的に高い第2のトナー(Rトナー又はBトナー)を印刷媒体(記録シートSH)に付着させるように構成されている。なお、不可視光線の下での視認性が可視光線の下での視認性よりも高い画像を形成するトナーは、不可視光線による発光強度が可視光線による発光強度よりも高い画像を形成するトナーの一例である。すなわち、不可視光線の下での視認性が可視光線の下での視認性よりも高い画像は、不可視光線による発光強度が可視光線による発光強度よりも高い画像を形成するトナーによって実現される。そして、不可視光線の下での視認性が相対的に低いトナーは、不可視光線による発光強度が相対的に低いトナーの一例であり、不可視光線の下での視認性が相対的に高いトナーは、不可視光線による発光強度が相対的に高いトナーの一例である。また、不可視光線による発光強度が可視光線による発光強度よりも高い画像を形成するトナーは、不可視光線の下での判読性(可読性)が可視光線の下での判読性(可読性)よりも高い文章(文字画像)を形成するトナーであってもよい。また、不可視光線の下での視認性が可視光線の下での視認性よりも高い画像を形成するトナーは、例えば、誘目性において、不可視光線の下での発光色が可視光線の下での発光色よりも高い画像を形成するトナー(励起波長に応じて発光色が変化するトナー)であってもよい。なお、人の注意を引き付ける度合いを表す「誘目性」は、例えば、発光色が暖色系に近いほど高く、寒色系に近いほど低い。
【0170】
この構成により、この複写機は、不可視光線下のような所定の光環境下で視認可能な画像を一色で表現する装置に比べ、色の表現性を高めることができるという効果をもたらす。この複写機は、不可視光線下のような所定の光環境下で視認可能な画像を複数の色で表現できるためである。そのため、この複写機は、所望の場所の光環境に応じた印刷をより効率的に或いはより正確に行うことができるという効果をもたらす。また、この複写機は、例えば
図13に示すように、所定の波長を有する不可視光線で照射される水族館の水槽付近において、来場者が持っている入場券(チケットTK)に印刷された不可視色のフルカラー画像D4が発光するといった状況を創り出すことができる。不可視色のフルカラー画像D4をチケットTKに印刷できるためである。そして、不可視色のフルカラー画像D4が印刷されたチケットTKは、水族館の来場者に驚きを与えて強い印象を残すことができるといった効果をもたらす。水族館の特定のエリアに入った途端に、水族館の入口では何も描かれてなかったチケットTKの一部にフルカラー画像が浮かび上がるといった演出を実現できるためである。
【0171】
次に、
図18を参照し、上述の複写機による効果の一例の詳細について説明する。
図18は、上述の複写機による効果の一例を示すxy色度図である。
図18では、実線で囲まれた範囲はsRGB色空間Z0を示し、破線で囲まれた範囲は、Gトナー、Rトナー、及びBトナーの第1の組み合わせによって実現される第1の色域Z1を示し、一点鎖線で囲まれた範囲は、Gトナー、Rトナー、及びBトナーの第2の組み合わせによって実現される第2の色域Z2を示す。また、
図18では、説明を分かりやすくするため、文字「R」、「G」、「B」が追加され、実線で囲まれたsRGB色空間Z0のうち文字「R」に近い位置ほど赤色に近く、文字「G」に近い位置ほど緑色に近く、文字「B」に近い位置ほど青色に近いことを示している。第1の色域Z1及び第2の色域Z2についても同様である。なお、
図18における「色」は、不可視色(不可視光線の下では視認できるが可視光線の下では視認しにくい色)である。
【0172】
具体的には、第2の組み合わせは、第1の組み合わせに比べ、Rトナーの発光強度が低く、不可視赤色の発色が弱い。そのため、第2の色域Z2は、第1の色域Z1における赤色に近い部分である右側部分を欠いた範囲となっている。なお、Rトナーの発光強度は、例えば、Rトナーに含まれる原料(透明蛍光体)の量によって決まる。また、原料(透明蛍光体)には、Rトナーを成立させるための最大量及び最小量が存在する。すなわち、原料(透明蛍光体)の量が最小量を下回ると、Rトナーの均一性が悪くなり、Rトナーは画像内で均一に発光しなくなってしまう。また、原料(透明蛍光体)の量が最大量を上回ると、Rトナーとして成立しなくなり、画像が形成できなくなってしまう。Gトナー及びBトナーについても同様である。
【0173】
上述の複写機は、第1の色域Z1を実現する、Gトナー、Rトナー、及びBトナーの第1の組み合わせを採用している。そのため、上述の複写機は、Gトナー、Rトナー、及びBトナーの第2の組み合わせによって実現される第2の色域Z2よりも広い色域である第1の色域Z1を実現し、sRGB色空間Z0内のほぼ全ての色を印刷媒体(記録シートSH)上に表現できる。なお、上述の複写機は、必要に応じ、第2の色域Z2を実現する、Gトナー、Rトナー、及びBトナーの第2の組み合わせなど、より狭い色域を実現するGトナー、Rトナー、及びBトナーの組み合わせを採用してもよい。すなわち、Gトナー、Rトナー、及びBトナーのそれぞれの発光強度を決める原料(透明蛍光体)の量は必要に応じて増減されてもよい。
【0174】
また、上述の複写機では、Gトナーは、Rトナーに比べ、不可視光線の下での視認性が低い。そのため、画像形成ユニットGUは、Gトナーよりも先にRトナーを印刷媒体(記録シートSH)に付着させてGトナーとRトナーとを重ね合わせるように構成されている。具体的には、現像ステーション18Gは、現像ステーション18Rの左側のユニット位置に配置されている。この構成により、画像形成ユニットGUは、GトナーとRトナーとを重ね合わせて不可視黄色を表現する場合に所望の色(不可視黄色)を結果色として出力できる。
【0175】
仮に、Gトナーの後にRトナーを印刷媒体(記録シートSH)に付着させた場合、画像形成ユニットGUは、所望の色(不可視黄色)を実現できず、不可視赤色により近い色を結果色として出力してしまう。なお、
図18の破線円で示す位置P1は、sRGB色空間Z0における所望の色(不可視黄色)の位置を示し、
図18の破線円で示す位置P2は、Gトナーの後にRトナーを印刷媒体(記録シートSH)に付着させた場合のsRGB色空間Z0における結果色の位置を示している。
【0176】
所望の色(不可視黄色)と結果色との間のこのようなズレを抑制するために、上述の複写機の画像形成ユニットGUは、記録シートSH上でGトナーとRトナーとを重ね合わせる場合、不可視光線の下での視認性が相対的に低いGトナーよりも先に、不可視光線の下での視認性が相対的に高いRトナーを記録シートSHに付着させるように構成されている。記録シートSH上でGトナーとBトナーとを重ね合わせる場合、及び、記録シートSH上でRトナーとBトナーとを重ね合わせる場合についても同様である。このような構成により、上述の複写機は、操作者が狙った通りの色を出力でき、操作者にとって最適な色味を表現できるという効果をもたらす。
【0177】
また、上述の複写機は、中間転写ベルト110から記録シートSHへの一回の転写によって画像全体を形成できるため、第1のトナーの付着位置と第2のトナーの付着位置との間の位置ズレが発生してしまうのを抑制できる。すなわち、上述の複写機は、1パスで不可視色のカラー画像(不可視光線の下では視認できるが可視光線の下では視認しにくいカラー画像)を印刷できるため、複数パスで不可視色のカラー画像を印刷する場合に比べ、不可視色のカラー画像の品質を向上させることができる。なお、複数パスで不可視色のカラー画像を印刷する方法は、例えば、SトナーとしてGトナー、Rトナー、Bトナーを順次入れ替えながら3パスで不可視色のカラー画像を印刷する方法を含む。そして、この方法では、トナーボトル51の交換及び移送チューブ53の清掃などが3回行われるため、手間が掛かるという問題がある。また、現像ステーション18Sはスクリーン設計に対応していない場合があり、Sトナーとして不可視色トナーが用いられた場合、狙い通りの画像(色)が得られないという問題が発生し得る。上述の複写機は、このような問題を解決することができるという効果ももたらす。
【0178】
なお、上述の実施形態では、第1のトナー及び第2のトナーは、Gトナー、Rトナー、Bトナーといった不可視色トナーであるが、不可視光線の下での視認性が可視光線の下での視認性よりも高い画像を形成できるのであれば、可視色トナーであってもよい。この場合、三つの不可視色トナーの組み合わせは、例えば、ネオンイエロー色のトナー、ネオンピンク色のトナー、及びネオンブルー色のトナーの組み合わせで置き換えられてもよい。
【0179】
また、上述の複写機では、画像形成ユニットGUは、印刷媒体(記録シートSH)上で第1のトナー(Gトナー)と第2のトナー(Rトナー又はBトナー)とを重ね合わせる場合、不可視光線の下での発光強度が相対的に高い第2のトナー(Rトナー又はBトナー)が、不可視光線の下での発光強度が相対的に低い第1のトナー(Gトナー)よりも印刷媒体(記録シートSH)に近くなるように画像を形成するように構成されていてもよい。
【0180】
この構成により、上述の複写機は、第1のトナー(Gトナー)が第2のトナー(Rトナー又はBトナー)よりも印刷媒体(記録シートSH)に近くなるように画像を形成する場合に比べ、第1のトナー(Gトナー)と第2のトナー(Rトナー又はBトナー)との重ね合わせによって実現される不可視色を所望の不可視色に近付けることができる。すなわち、上述の複写機は、第1のトナー(Gトナー)と第2のトナー(Rトナー又はBトナー)との重ね合わせによって実現される不可視色の最適な色味を実現できる。
【0181】
第1のトナー(Gトナー)が第2のトナー(Rトナー又はBトナー)よりも印刷媒体(記録シートSH)に近い場合、発光強度の高い第2のトナー(Rトナー又はBトナー)の下に発光強度の低い第1のトナー(Gトナー)が位置することになってしまうためである。そして、その重ね合わせによって実現される不可視色では、第2のトナー(Rトナー又はBトナー)による影響(発光又は発色)が過剰になり、第1のトナー(Gトナー)による影響(発光又は発色)が不足してしまうためである。換言すれば、第2のトナー(Rトナー又はBトナー)が第1のトナー(Gトナー)よりも印刷媒体(記録シートSH)に近い場合、発光強度の高い第2のトナー(Rトナー又はBトナー)の上に発光強度の低い第1のトナー(Gトナー)が位置することになり、その重ね合わせによって実現される不可視色では、第1のトナー(Gトナー)による発光及び第2のトナー(Rトナー又はBトナー)による発光が何れも過不足のない状態になるためである。
【0182】
また、上述の複写機では、
図2に示すように、五つの現像器(トナーボトル51S、51G、51R、51B、51K)に収容されているトナーは、不可視光線の下では視認できるが可視光線の下では視認しにくい赤色の画像を形成する不可視赤色トナー(Rトナー)と、不可視光線の下では視認できるが可視光線の下では視認しにくい緑色の画像を形成する不可視緑色トナー(Gトナー)と、不可視光線の下では視認できるが可視光線の下では視認しにくい青色の画像を形成する不可視青色トナー(Bトナー)と、を含んでいてもよい。この場合、第1のトナーは、不可視緑色トナー(Gトナー)であり、第2のトナーは、不可視赤色トナー(Rトナー)又は不可視青色トナー(Bトナー)であってもよい。なお、図示例では、第2のトナーは、不可視赤色トナー(Rトナー)であり、不可視青色トナー(Bトナー)は、Rトナーよりも発光強度が高い第3のトナーとされる。そして、上述の複写機は、GトナーとBトナーとを重ね合わせる場合には、Gトナーよりも前にBトナーを印刷媒体(記録シートSH)に付着させ、RトナーとBトナーとを重ね合わせる場合には、Rトナーよりも前にBトナーを印刷媒体(記録シートSH)に付着させるように構成されている。
【0183】
この構成により、上述の複写機は、不可視色の高品質なフルカラー画像を印刷媒体(記録シートSH)上に形成できるという効果をもたらす。また、上述の複写機は、1パスで不可視色のフルカラー画像を形成できるため、重ね合わされる少なくとも二つの不可視色トナーのそれぞれの位置が互いにずれてしまうのを抑制できるという効果をもたらす。
【0184】
また、上述の複写機は、
図5に示すように、現像ステーション18(現像ステーション18S、18G、18R、18B、18K)に取り付けられた現像器(トナーボトル51S、51G、51R、51B、51K)から識別情報を取得する情報取得部(ボトル通信回路52aS、52aG、52aR、52aB、52aK)と、その識別情報に基づき、現像ステーション18(現像ステーション18S、18G、18R、18B、18K)に取り付けられた現像器(トナーボトル51S、51G、51R、51B、51K)が、現像ステーション18に取り付けられる現像器として適切か否かを判定する判定部(判定回路80e)と、を有していてもよい。
【0185】
この構成により、上述の複写機は、例えば、Rトナーが収容されているトナーボトル51Rが現像ステーション18Gに取り付けられた場合に警報を出力することにより、Rトナーが収容されているトナーボトル51Rが誤って現像ステーション18Gに取り付けられてしまうのを抑制できる。
【0186】
また、
図14に示す複写機では、判定部(判定回路80e)は、識別情報に基づき、五つの現像器(トナーボトル51)に収容されているトナーが、可視光線の下で視認できるカラー画像を形成する可視色トナー(Yトナー、Mトナー、Cトナー)を含むか否かを判定してもよい。そして、画像形成ユニットGUは、可視色トナー(Yトナー、Mトナー、Cトナー)を含むと判定された場合には、可視色トナー(Yトナー、Mトナー、Cトナー)を含まないと判定された場合に使用する画像形成条件とは異なる画像形成条件を使用して印刷媒体(記録シートSH)上に画像を形成してもよい。なお、画像形成条件は、例えば、プロセスコントロール制御、転写バイアス制御、及び温度制御などに関するパラメータのような、画像の形成に関するパラメータの組み合わせを含んでいてもよい。
【0187】
この構成により、上述の複写機は、不可視色トナーに適した画像形成条件によって可視色トナーを使用した画像形成が行われてしまうのを抑制できる。また、上述の複写機は、可視色トナーに適した画像形成条件によって不可視色トナーを使用した画像形成が行われてしまうのを抑制できる。
【0188】
また、本発明の一実施形態に係る画像形成方法は、第2のトナー(Rトナー又はBトナー)を印刷媒体(記録シートSH)に付着させる工程と、第1のトナー(Gトナー)を、印刷媒体(記録シートSH)に付着した第2のトナー(Rトナー又はBトナー)に重ね合わせる工程と、を有する。
【0189】
具体的には、本発明の一実施形態に係る画像形成方法は、不可視光線の下での視認性が相対的に高い第2のトナー(Rトナー又はBトナー)を印刷媒体(記録シートSH)に付着させる工程と、不可視光線の下での視認性が相対的に低い第1のトナー(Gトナー)を、印刷媒体(記録シートSH)に付着した第2のトナー(Rトナー又はBトナー)に重ね合わせる工程と、を有する。例えば、本発明の一実施形態に係る画像形成方法は、不可視光線の下での発光強度が相対的に高い前記第2のトナー(Rトナー又はBトナー)を印刷媒体(記録シートSH)に付着させる工程と、不可視光線の下での発光強度が相対的に低い第1のトナー(Gトナー)を、印刷媒体(記録シートSH)に付着した第2のトナー(Rトナー又はBトナー)に重ね合わせる工程と、を有する。
【0190】
この画像形成方法は、複数の不可視色トナーを重ね合わせることによって不可視色の画像を形成できるようにするため、紫外線照射下といった所定の光環境下で視認できる画像の色の表現性を高めることができるという効果をもたらす。また、この画像形成方法は、記録シートSH上において、第2のトナー(Rトナー又はBトナー)に第1のトナー(Gトナー)を重ね合わせるため、第1のトナー(Gトナー)が第2のトナー(Rトナー又はBトナー)によって覆われてしまい、第1のトナー(Gトナー)の発色に悪影響を及ぼしてしまうのを抑制できるという効果をもたらす。
【0191】
また、本発明の一実施形態に係る印刷物(チケットTK)は、印刷媒体上で、第1のトナー(Gトナー)を、不可視光線による発光強度が第1のトナー(Gトナー)より高い第2のトナー(Rトナー又はBトナー)の上に重ね合わせることによって形成された画像を有する。
【0192】
具体的には、本発明の一実施形態に係る印刷物(チケットTK)は、印刷媒体(記録シートSH)上で、不可視光線の下での視認性が可視光線の下での視認性よりも高い画像を形成するトナーの一つである第1のトナー(Gトナー)を、不可視光線の下での視認性が可視光線の下での視認性よりも高い画像を形成するトナーの別の一つである、不可視光線の下での視認性が第1のトナー(Gトナー)よりも高い第2のトナー(Rトナー又はBトナー)の上に重ね合わせることによって形成された画像を有する。例えば、本発明の一実施形態に係る印刷物(チケットTK)は、不可視光線の下での発光強度が第1のトナー(Gトナー)よりも高い第2のトナー(Rトナー又はBトナー)の上に第1のトナー(Gトナー)を重ね合わせることによって形成された画像を有する。
【0193】
この印刷物は、複数の不可視色トナーの重ね合わせによる不可視色のカラー画像が印刷されているため、所定の光環境下に置かれた際に、不可視色のカラー画像を浮かび上がらせることができるという効果をもたらす。そのため、この印刷物は、例えば、所定の光環境下で不可視色のカラー画像を浮かび上がらせることにより、その印刷物を所持する者に驚きや感動を与えることができるといった効果をもたらす。
【0194】
上述してきたような各施設やイベントの主催者などは、このような驚きや感動をもたらす演出により、その施設やイベントでの感動や経験と結びついて、チケット、チラシ、パンフレット、又はポスターなどの各種印刷物の内容が来場者の記憶に強く残ることを期待できる。
【0195】
以上、実施形態を説明したが、本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなしに、種々の変形や変更を取り入れることができる。
【0196】
本発明の態様としては、例えば、以下の通りである。
<1>複数の現像ステーションと、複数の前記現像ステーションに対して着脱可能な複数の現像器と、入力される画像データに基づき、複数の前記現像器に収容されているトナーを用いて印刷媒体上に画像を形成する画像形成ユニットと、を有する画像形成装置であって、
複数の前記現像器のうちの一つである第1の現像器には、第1のトナーが収容されており、
複数の前記現像器のうちの別の一つである第2の現像器には、不可視光線による発光強度が前記第1のトナーより高い第2のトナーが収容されており、
前記第1のトナー及び前記第2のトナーは、前記不可視光線による発光強度が可視光線による発光強度よりも高い画像を形成するトナーであり、
前記画像形成ユニットは、前記印刷媒体上で前記第1のトナーと前記第2のトナーとを重ね合わせる場合、前記第1のトナーよりも先に前記第2のトナーを前記印刷媒体に付着させるように構成されている、
ことを特徴とする画像形成装置である。
<2>前記画像形成ユニットは、前記印刷媒体上で前記第1のトナーと前記第2のトナーとを重ね合わせる場合、前記第2のトナーが、前記第1のトナーよりも前記印刷媒体に近くなるように画像を形成するように構成されている、
前記<1>に記載の画像形成装置である。
<3>複数の前記現像器に収容されているトナーは、前記不可視光線による発光強度が前記可視光線による発光強度よりも高い赤色の画像を形成する不可視赤色トナーと、前記不可視光線による発光強度が前記可視光線による発光強度よりも高い緑色の画像を形成する不可視緑色トナーと、前記不可視光線による発光強度が前記可視光線による発光強度よりも高い青色の画像を形成する不可視青色トナーと、を含み、
前記第1のトナーは、前記不可視緑色トナーであり、
前記第2のトナーは、前記不可視赤色トナー又は前記不可視青色トナーである、
前記<1>又は<2>に記載の画像形成装置である。
<4>前記現像ステーションに取り付けられた前記現像器から識別情報を取得する情報取得部と、
前記識別情報に基づき、前記現像ステーションに取り付けられた前記現像器が、前記現像ステーションに取り付けられる現像器として適切か否かを判定する判定部と、を有する、
前記<1>から前記<3>の何れかに記載の画像形成装置である。
<5>前記判定部は、前記識別情報に基づき、複数の前記現像器に収容されているトナーが、前記可視光線の下で視認できるカラー画像を形成する可視色トナーを含むか否かを判定し、
前記画像形成ユニットは、前記可視色トナーを含むと判定された場合には、前記可視色トナーを含まないと判定された場合に使用する画像形成条件とは異なる画像形成条件を使用して前記印刷媒体上に画像を形成する、
前記<4>に記載の画像形成装置である。
<6>複数の現像ステーションと、複数の前記現像ステーションに対して着脱可能な複数の現像器と、入力される画像データに基づき、複数の前記現像器に収容されているトナーを用いて印刷媒体上に画像を形成する画像形成ユニットと、を有する画像形成装置を用いた画像形成方法であって、
複数の前記現像器のうちの一つである第1の現像器には、第1のトナーが収容されており、
複数の前記現像器のうちの別の一つである第2の現像器には、不可視光線による発光強度が前記第1のトナーより高い第2のトナーが収容されており、
前記第1のトナー及び前記第2のトナーは、前記不可視光線による発光強度が可視光線による発光強度よりも高い画像を形成するトナーであり、
当該画像形成方法は、前記第2のトナーを前記印刷媒体に付着させる工程と、前記第1のトナーを、前記印刷媒体に付着した前記第2のトナーに重ね合わせる工程と、を有する、
ことを特徴とする画像形成方法である。
<7>前記第1のトナーが重ね合わされた前記第2のトナーは、前記第1のトナーよりも前記印刷媒体に近い位置にある、
前記<6>に記載の画像形成方法である。
<8>複数の前記現像器に収容されているトナーは、前記不可視光線による発光強度が前記可視光線による発光強度よりも高い赤色の画像を形成する不可視赤色トナーと、前記不可視光線による発光強度が前記可視光線による発光強度よりも高い緑色の画像を形成する不可視緑色トナーと、前記不可視光線による発光強度が前記可視光線による発光強度よりも高い青色の画像を形成する不可視青色トナーと、を含み、
前記第1のトナーは、前記不可視緑色トナーであり、
前記第2のトナーは、前記不可視赤色トナー又は前記不可視青色トナーである、
前記<6>又は<7>に記載の画像形成方法である。
<9>前記現像ステーションに取り付けられた前記現像器から識別情報を取得する工程と、
前記識別情報に基づき、前記現像ステーションに取り付けられた前記現像器が、前記現像ステーションに取り付けられる現像器として適切か否かを判定する工程と、を有する、
前記<6>から前記<8>に記載の画像形成方法である。
<10>前記識別情報に基づき、複数の前記現像器に収容されているトナーが、前記可視光線の下で視認できるカラー画像を形成する可視色トナーを含むか否かを判定する工程と、
前記可視色トナーを含むと判定された場合に、前記可視色トナーを含まないと判定された場合に使用する画像形成条件とは異なる画像形成条件を使用して前記印刷媒体上に画像を形成する工程と、を有する、
前記<9>に記載の画像形成方法である。
<11>印刷媒体上で、第1のトナーを、不可視光線による発光強度が前記第1のトナーより高い第2のトナーの上に重ね合わせることによって形成された画像を有する印刷物であって、
前記第1のトナー及び前記第2のトナーは、前記不可視光線による発光強度が可視光線による発光強度よりも高い画像を形成するトナーである、
ことを特徴とする印刷物である。
【符号の説明】
【0197】
1:感光体
17:中間転写ユニット
18:現像ステーション
51:トナーボトル(現像器)
52a:ボトル通信回路(情報取得部)
53:移送チューブ
55:補給前貯留器(現像器)
57:ディップスイッチ基板
80:メイン制御部(判定部)
100:プリンター
110:中間転写ベルト
GU:画像形成ユニット
IF:画像形成装置
SH:記録シート(印刷媒体)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0198】