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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075848
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240529BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187046
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】吉永 洋
(72)【発明者】
【氏名】山口 嘉紀
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 隆
(72)【発明者】
【氏名】松田 諒平
(72)【発明者】
【氏名】杉山 龍平
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA03
2H033AA24
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA26
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB17
2H033BB21
2H033BB33
2H033BB38
2H033BE03
(57)【要約】
【課題】定着装置における反射部材の過昇温防止と熱の有効利用との両立を図る。
【解決手段】
回転可能な定着部材と、定着部材の外周側に加圧することで当接してニップ部を形成する加圧部材と、定着部材の内周側に配置された熱源と、を備えた定着装置において、少なくとも定着部材の一部に熱源から放射される熱を定着部材の内周側に向かって反射する反射部と、定着部材を介して加圧部材の加圧力を受ける加圧受け部とを有する反射部材を備え、反射部材は、少なくともニップ部上流側からニップ部下流側に向かって定着部材の内周側に対向するように延在する部位である延在部を有し、少なくとも定着部材の回転時には、定着部材の内周側に配置された部材のうちの一部の部材に対して非接触である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な定着部材と、
前記定着部材の外周側に加圧することで当接してニップ部を形成する加圧部材と、
前記定着部材の内周側に配置された熱源と、を備えた定着装置において、
少なくとも前記定着部材の一部に前記熱源から放射される熱を前記定着部材の内周側に向かって反射する反射部と、前記定着部材を介して前記加圧部材の加圧力を受ける加圧受け部とを有する反射部材を備え、
前記反射部材は、
少なくとも前記ニップ部上流側から前記ニップ部下流側に向かって前記定着部材の内周側に対向するように延在する部位である延在部を有し、
少なくとも前記定着部材の回転時には、前記定着部材の内周側に配置された部材のうちの一部の部材に対して非接触であることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記延在部は、前記加圧受け部と連続して一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記定着部材の内周側に配置された部材のうちの一部の部材は、前記加圧部材からの圧力を受けるステー部材であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記定着部材の内周側に配置された部材のうちの一部の部材は、前記定着部材であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
前記加圧受け部は、前記加圧受け部の表面よりも定着部材の内周面に対する摺動性が高い摺動部材を介して前記定着部材の内周面に当接することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項6】
前記定着装置は、前記定着部材の内周側に位置し且つ前記ニップ部を形成するニップ形成部材を有し、
前記ニップ形成部材は、樹脂で形成されたパッド部材を有し、
前記延在部は、前記摺動部材と前記パッド部材とで挟持されていることを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
【請求項7】
前記定着装置は、前記熱源によって前記反射部材が加熱され、前記反射部材に最大の変形量が生じる状態で、前記定着部材と前記反射部材とに間隙を有することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項8】
前記定着装置内に収容される液状または半固体状の揮発性物質を有することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項9】
前記定着装置は、前記定着部材を回転可能に支持する支持部材を有しており、前記反射部材は、少なくとも前記定着部材の回転時において前記支持部材と接触しないことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項10】
請求項1に記載の定着装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転する定着部材と、定着部材の外周面に当接して形成されたニップ部を通過する記録材を加圧する加圧部材と、定着部材の内側に配置された熱源と、定着部材の内側に配置され、熱源から放射される輻射熱を定着部材の内周面に向かって反射する反射部材とを備える定着装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、回転可能なエンドレス(無端状の)ベルトと、エンドレスベルトの内側に設けられ、エンドレスベルトを加熱する熱源と、エンドレスベルトの外側に設けられ、エンドレスベルトと共に記録材上のトナー像を定着するニップ部を形成する回転体と、エンドレスベルトの内側に設けられ、回転体と協働してニップ部を形成するための金属製のニップ形成部材であって、回転体の長手方向と直交する断面形状においてニップ部を介して回転体と反対側が開放されているコの字形状である第1の部材と、その内側に設けられた第2の部材と、を有するニップ形成部材と、ニップ部とニップ形成部材との間に設けられ、エンドレスベルトの内周面と接触する接触部材と、熱源からニップ形成部材に向かう放射熱をエンドレスベルトの内周面へ向けて反射する反射部と、接触部材と当接し、反射部の熱を接触部材に伝達する伝熱部と、第1の部材と第2の部材の間に設けられた断熱部材と、を有し、断熱部材の厚みt(um)と熱伝導率λ(W/m・K)は、t≧100(μm)、0.02(W/m・K)≦λ≦0.05(W/m・K)なる関係を満足する定着装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には 回転可能に設けられる定着ベルトと、定着ベルトに圧接して定着ニップを形成し、回転可能に設けられる加圧部材と、定着ベルトの径方向内側に配置され、輻射熱を放射する熱源と、熱源から放射される輻射熱を定着ベルトの内周面に向かって反射する反射部と、定着ベルトを加圧部材側に向かって押圧する押圧部と、定着ベルトの内周面に接触するガイド部と、を一体に有する反射部材と、を備えている定着装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、内部が中空の表面無端移動体と、表面無端移動体の外周面と当接する加圧部材と、表面無端移動体の内周側に配置され表面無端移動体を介して加圧部材と当接してニップ部を形成するニップ形成部材と、表面無端移動体の内周側に配置され表面無端移動体を輻射熱により加熱する熱源とを備え、ニップ部に記録材を通過させて画像を記録材に定着させる定着装置において、熱源と表面無端移動体との間に、熱源から表面無端移動体の非通紙幅領域への輻射熱を遮蔽する遮蔽位置と、遮蔽位置から退避した退避位置との間で移動可能な遮蔽部材を複数設けており、各遮蔽部材の動作を制御する制御手段を有する定着装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、定着装置における反射部材の過昇温防止と熱の有効利用との両立を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、回転可能な定着部材と、前記定着部材の外周側に加圧することで当接してニップ部を形成する加圧部材と、前記定着部材の内周側に配置された熱源と、を備えた定着装置において、少なくとも前記定着部材の一部に前記熱源から放射される熱を前記定着部材の内周側に向かって反射する反射部と、前記定着部材を介して前記加圧部材の加圧力を受ける加圧受け部とを有する反射部材を備え、前記反射部材は、少なくとも前記ニップ部上流側から前記ニップ部下流側に向かって前記定着部材の内周側に対向するように延在する部位である延在部を有し、少なくとも前記定着部材の回転時には、前記定着部材の内周側に配置された部材のうちの一部の部材に対して非接触であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、定着装置における反射部材の過昇温防止と熱の有効利用との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の説明図。
図2】比較例1における課題を説明するための図。
図3】比較例2における課題を説明するための図。
図4】本発明に係る定着装置の説明図。
図5】本発明に係る定着ベルトの回転軸方向の端部を支持する構成を示した図。
図6】本発明に係る定着装置におけるリフレクタとの位置関係を示した図。
図7】ホットプレートの温度とフッ素グリス、シリコーンオイルから発生する微粒子濃度の関係を示した図。
図8】サンプル容器の斜視図。
図9】本発明に係る定着装置を備えた画像形成装置において連続する作像時間に対するフランジの温度を示した図。
図10】本発明に係る定着装置においてグラフェンを用いた場合の説明図。
図11】グラフェンの原子結晶構造を示す図。
図12】グラファイトの原子結晶構造を示す図。
図13】グラフェンとグラファイトとの関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を、図面を用いて以下に説明する。
【0011】
まず、本発明を適用する画像形成装置について説明する。
【0012】
以下、本発明を、電子写真式の画像形成装置であるレーザープリンタ(以下、「プリンタ」という。)に適用した実施形態について説明する。図1は本実施形態の画像形成装置1の概略構成図である。この画像形成装置1は、記録材である用紙P上に画像を形成する画像形成部100を備えている。画像形成部100は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の色ごとの作像部10Y,10M,10C,10Kが中間転写体としての中間転写ベルト20の回転方向に沿って配列されたタンデム型の画像形成装置である。各作像部10Y,10M,10C,10Kは、それぞれ、潜像担持体としての感光体11Y,11M,11C,11Kを備えている。
【0013】
また、各作像部10Y,10M,10C,10Kは、感光体11Y,11M,11C,11Kの周囲に、帯電手段としての帯電装置と、静電潜像形成手段としての光書込装置9と、現像手段としての現像装置とを備えている。さらに、感光体11Y,11M,11C,11Kの周囲には、一次転写手段としての一次転写装置と、クリーニング手段としてのクリーニング装置も備えている。帯電装置は、感光体表面を一様に所定電位に帯電するものであり、光書込装置9は、帯電装置によって一様に帯電された感光体表面上に画像情報に応じて露光して静電潜像を書き込むものである。現像装置は、感光体上の静電潜像にそれぞれの色(Y、M、C、K)のトナーを付着させる現像処理によりトナー像を作成するものである。一次転写装置は、感光体上のトナー像を中間転写ベルト20上に転写するものであり、クリーニング装置は、感光体上の転写残トナーを除去してクリーニングするものである。
【0014】
各感光体11Y,11M,11C,11K上に形成された各色トナー像は、一次転写装置によって、中間転写ベルト20上に互いに重なり合うように一次転写され、中間転写ベルト20上にカラートナー像が形成される。中間転写ベルト20上のカラートナー像は、中間転写ベルト20の回転に伴って二次転写装置30との対向領域(二次転写領域)へと搬送される。
【0015】
一方、画像形成部100の下部には、保持する用紙Pを給送する給送部としての給紙カセット60が配置されている。給紙カセット60からピックアップローラ61により用紙Pが1枚ずつ給紙される。そして、搬送経路に沿って、レジストローラ対62により二次転写領域へと用紙Pが搬送される。
【0016】
中間転写ベルト20上のカラートナー像は、二次転写領域において、所定のタイミングでレジストローラ対62により搬送されてくる用紙P上に、二次転写装置30により二次転写される。カラートナー像が形成された用紙Pは、その後、定着手段としての定着装置40へと搬送され、熱と圧力の作用により、カラートナー像が用紙P上に定着される。定着後の用紙Pは、搬送経路に沿って搬送され、排紙ローラ63により排紙トレイ70へと排出される。
【0017】
<本発明に係る定着装置について>
ここで、図4は、本発明に係る定着装置の説明図である。また、図4は、定着ベルト42の回転軸方向から見た図である。そして、図4(a)は、定着装置の構成の概略図であり、図4(b)は、本発明に係るリフレクタの構成を示す図である。まずは、図4(a)を用いて説明する。定着装置40は、加圧ローラ41(加圧部材の一例)と定着ベルト42(定着部材の一例)と、熱源43(図4の例では、ハロゲンヒータ)とを備え、加熱加圧によって定着を行う。
【0018】
定着ベルト42内には、定着ステー44(ステー部材の一例)によって保持されたニップ形成部材45(ニップ形成部材の一例)が配置されている。ニップ形成部材45は、ニップ面に配置される摺動部材であり熱移動部材である均熱部材45a(摺動部材の一例)と、これを支持する樹脂パッド45b(パッド部材の一例)とで構成されている。樹脂パッド45bの役割のひとつは断熱であり、ニップ形成部材45を介した定着ステー44への定着ベルト42の熱吸収を抑制してウォームアップタイムやTEC値の増加を抑制する。均熱部材45aは、定着ベルト42の回転軸方向(幅方向)に延在するものであり、例えばパット形状である。この均熱部材45aは定着ベルト42の回転軸方向の温度を平均化するために配置される。すなわち、定着ベルト42の温度が高い箇所から熱を奪い、奪った熱を定着ベルト42の温度の低い箇所へ移動させて定着ベルト42の軸方向の温度を均一化する。
【0019】
定着ニップ部N(ニップ部の一例)の形状は平坦であるが、凹形状やその他の形状であってもよい。凹形状の定着ニップ部Nを形成することで、用紙先端の排出方向がより加圧ローラ寄りになり、用紙の定着ベルト42に対する分離性が向上するのでジャムの発生が抑制される。
【0020】
均熱部材45aは、熱伝導率が50[W/m・K]以上の熱伝導性の高いアルミや銅などの金属部材であり、均熱部材45aの表面に摺動性能に優れたコーティングが施されている。コーティングの材料としては、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、または飽和ポリエステル樹脂などの樹脂ベースのものが挙げられる。または、このような樹脂ベースのコーティング材に、ガラス繊維、カーボン,グラファイト,フッ化グラファイト,炭素繊維,二硫化モリブデン,フッ素樹脂など混合してもよい。
【0021】
また、コーティングの材料として、金属ベースのものも用いることができる。金属ベースのコーティング材としては、二硫化モリブデン,ニッケル,ニッケルとフッ素樹脂の複合めっきなどが挙げられる。また、金属ベースのコーティング材としては、アルマイトもしくはアルマイトに樹脂や金属を含浸したものも挙げられる。また、コーティング材としてセラミックを用いることもできる。コーティング材として用いるセラミックとしては、炭化ケイ素セラミック、室化ケイ素セラミック、アルミナセラミックおよびそれらと二硫化モリブデン、フッ素樹脂など混合したものを挙げることができる。
【0022】
また、アルミニウムもしくはアルミニウム合金にて形成された均熱部材45aの表層にアルマイト層を形成し、そのアルマイト層の微細孔に二次電解にて生成した二硫化モリブデンを微細孔の最深部から最表層に亘って充填したものなども有効である。
【0023】
また、均熱部材は、例えばシート状に構成したグラフェン又はグラファイトにより構成されていてもよい。
【0024】
図13は、グラフェンとグラファイトとの関係を示す図である。そして、図13に示すように、グラファイトは炭素原子から構成される層が大量に積み重なることで構成されており、グラファイトを構成する層1枚がグラフェンである。グラフェンはグラフェンシートと呼ばれることもある。
【0025】
図10は、均熱部材にグラフェン、グラファイトを用いた場合における定着装置の説明図である。グラフェン、グラファイトはシート状の部材であり、金属部材で構成された均熱部材45aのような剛性を有していない。このため、本発明への実施構成では、グラフェン(グラファイトシート)45cを定着ニップ部Nの上流側でリフレクタ48に対して耐熱性の両面テープ45d等で接着し、リフレクタ48と定着ベルト42の内周で挟み込む形態としている。
【0026】
図11は、グラフェンの原子結晶構造を示す図である。グラフェンは薄片状の粉体であり、図11に示されるように、炭素原子の平面状の六角形格子構造から成る。グラフェンシートとは、シート状のグラフェンであり、通常、単層である。また、グラフェンシートは、炭素の単一層に不純物を含んでいてもよいし、フラーレン構造を有するものであってもよい。フラーレン構造は、一般的に、同数の炭素原子が5員環および6員環でかご状に縮環した多環体を形成して成る化合物として認識されており、例えば、C60、C70およびC80フラーレン又は3配位の炭素原子を有する他の閉じたかご状構造である。
【0027】
グラフェンシートは人工物であり、例えば化学気相蒸着(CVD)法により作製され得る。グラフェンシートには市販品を用いることができる。
【0028】
グラフェンシートの長手方向(定着ベルト42の回転軸方向)の熱伝導率が600[W/m・K]であり、厚み方向の熱伝導率10[W/m・K]に対して熱伝導効率が高いため、均熱部材をグラフェンシートにより構成することにより、伝熱効率が厚み方向(つまり、部材の積層方向)に比べて大きくなり、長手方向に熱伝導率の高い均熱部材を形成できる。このため、長手方向の温度ムラをより効果的に抑制できる。
【0029】
グラフェンシートの大きさ、厚み、あるいはグラファイトシートの層数などは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定される。
【0030】
また、グラフェンを多層化したグラファイトは大きな熱伝導異方性を持つ。グラファイトは、図12に示すように、炭素原子の縮合六員環層面が平面状に広がった層を有し、この層が何重にも重なった結晶構造を有する。この結晶構造における炭素原子間は、層内での隣接する炭素原子同士は共有結合をなし、層間の炭素原子同士はファン・デル・ワールス結合をなす。そして、共有結合はファン・デル・ワールス結合に比べてその結合力が大きく、層内での結合と層間での結合とでは大きな異方性を持つ。
【0031】
均熱部材をグラファイトにより構成することによっても、均熱部材における長手方向の伝熱効率が厚み方向(つまり、部材の積層方向)に比べて大きくなり、長手方向に熱伝導率の高い均熱部材を形成できる。このため、長手方向の温度ムラを効果的に抑制できる。
【0032】
再び図4(a)を用いて説明する。加圧ローラ41は、金属ローラの外周にシリコーンゴム層が設けられており、離型性を得るためにシリコーンゴム層の表面に離型層(PFAまたはPTFE層)が設けてある。また、加圧ローラ41はスプリングなどにより定着ベルト側に押し付けられており、ゴム層が押しつぶされて変形することにより、所定のニップ幅を有している。
【0033】
加圧ローラ41は、画像形成装置に設けられたモータ等の駆動源からギヤを介して駆動力が伝達され回転する。なお、加圧ローラ41は、図4(a)における矢印Tの方向に回転している。そして、定着ベルト42は、定着ニップ部Nで加圧ローラ41から駆動力が伝達されることにより連れ回り回転する。なお、定着ベルト42は、図4(a)における矢印Rの方向に回転している。加圧ローラ41は、中実のローラであってもよいが、中空のほうが熱容量は少ないため好ましい。また、加圧ローラ41にハロゲンヒータなどの加熱源を有していてもよい。シリコーンゴム層はソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ内部にヒータが無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルトの熱が奪われにくくなるので、より望ましい。
【0034】
定着ベルト42は、ニッケルやSUSなどの金属ベルトやポリイミドなどの樹脂材料を基材とする無端ベルト(もしくはフィルム)である。定着ベルト42の表層はPFAまたはPTFE層などの離型層を有し、トナーが付着しないように離型性をもたせている。
【0035】
定着ベルト42の基材と離型層の間にはシリコーンゴムの層などで形成する弾性層があってもよい。シリコーンゴム層がない場合は熱容量が小さくなり、定着性が向上するが、未定着画像を押しつぶして定着するときにベルト表面の微妙な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部にユズ肌状の跡が残るという不具合が生じる。これを改善するにはシリコーンゴム層を100μm以上設ける必要がある。シリコーンゴム層の変形により、微妙な凹凸が吸収されユズ肌画像が改善する。
【0036】
図5は、定着ベルト42の回転軸方向の端部を支持する構成を示した図である。定着装置40は、定着ベルト42を回転軸方向の端部で支持するフランジ50(支持部材の一例)を備えている。また、フランジ50は、定着ベルト42の挿入部である筒部51を備えている。そして、当該筒部51に定着ベルト42を挿入することで、筒部51は定着ベルト42の内周側から定着ベルト42を回転可能に支持することができる。
【0037】
再び図4(a)を用いて説明する。定着ステー44は、中空のパイプ状金属体であり、アルミ、又は鉄、ステンレスなどの金属からなる。本実施形態では、定着ステー44は、角型であるが、その他の断面形状であってもよい。加圧ローラ41により圧力を受けるニップ形成部材45の撓みを防止し、回転軸方向で均一なニップ幅が得られるようにしている。
【0038】
定着ベルト42を昇温させる熱源は、定着ベルト42の内部に2つ設けられている。本実施形態では熱源43は、ハロゲンヒータであり、定着ベルト42は、内周側から熱源43の輻射熱で直接加熱される。ここで、熱源43は、定着ベルト42を加熱できればよく、例えば、カーボンヒータ等であってもよい。
【0039】
また、定着装置40内には、定着装置内の構成部品の摺動性を向上し、定着装置のトルク低減と耐久性向上を図る目的で、液状又は半固体状の揮発性物質(潤滑剤)を使用している。なお、本実施形態においては、使用する潤滑剤として、フッ素グリス、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0040】
そして、定着ベルト42内には、熱源43からの輻射熱のロスをできるかぎり低減するために、定着ベルト側へ熱を反射させる反射部48a(反射部の一例)を有する反射部材としてのリフレクタ48(反射部材の一例)が配置されている。リフレクタ48には金属部材としての高純度のアルミ材をベースとして表層に複数の増反射膜や保護膜を形成した高輝度アルミなどが用いられる。また、構成によってはアルミ板の上に銀を蒸着させて、さらに反射率を向上させたものなどを用いてもよい。また、本実施例において、リフレクタ48は板金といった板材をプレス加工して成型しているが、本発明はこれに限られない。
【0041】
そして、本発明に係る定着装置40は、熱源43によってリフレクタ48が加熱されることでリフレクタ48に最大の変形量が生じる状態で、定着ベルト42とリフレクタ48とに間隙を有する構成としている。リフレクタ48が熱源43からの加熱により変形した場合でも、定着ベルト42と接触しないためである。
【0042】
なお、このリフレクタは、本発明の特徴部になり、これについての詳細は後述することとする。
【0043】
<本発明における特徴部について>
次に、本発明における特徴部について説明する。ここで、特徴部について説明する前に、比較対象となる構成(比較例)を挙げ、その課題について説明することにする。
【0044】
<比較例1について>
図2は、比較例1に係る構成における課題を説明するための図である。また、図2は、定着ベルト42の回転軸方向から見た図である。
【0045】
比較例1に係る定着装置におけるリフレクタ148の反射率は、約95~98%であり、熱源43の輻射熱を100%反射できるわけでなく、リフレクタ自身もわずかに輻射熱を吸収するため、次第に温度上昇していく。特に、大量の連続通紙を行った場合などは、図2に示す比較例1に係る定着装置においては、300℃~400℃程度までリフレクタ148の温度が上昇していた。
【0046】
リフレクタ148にある一定以上の熱負荷が加えられるとリフレクタ148のアルミや銀層が変色を起こしてしまう。そうなると反射率が低下して本来の性能を出せないだけでなく、熱負荷の課題は安全面の観点からも好ましくない。よって比較例1に係る構成は、その温度域まで到達しないような生産性までしか出すことはできず、マシンの生産性向上に対してはボトルネックとなっていた。
【0047】
<比較例2について>
図3は、比較例2に係る構成における課題を説明するための図である。また、図3は、定着ベルト42の回転軸方向から見た図である。
【0048】
比較例2は、比較例1に係る構成の課題を踏まえて、次のような構成となる。図3においてリフレクタ248は、均熱部材45aと樹脂パッド45bとの間で、加圧ローラ41からの加圧力を受ける領域に延在された加圧受け部248bを有している。なお、加圧受け部248bは、均熱部材45aと接触している。また、加圧受け部248bは、加圧ローラ41の加圧力を受ける加圧領域に位置している。そして、比較例2に係る構成は、この加圧受け部を設けたことが、上記した比較例1に係る構成とは、主に異なる点である。
【0049】
比較例2に係るリフレクタ248は、上述したように熱伝導性の良い金属部材としてのアルミで構成されている。そのため、反射部248aで吸収された熱は、すばやく部品全体に伝導する。そして、リフレクタ248の熱は、加圧受け部248bと接触する均熱部材45aに移動する。その後、その移動したリフレクタ248の熱は、均熱部材45aを通して定着ベルト42に伝わり、トナー溶融に利用されるようになる。
【0050】
上記の構成にしている理由としては、リフレクタ248の熱を定着ステー44等の他の部材へ排熱する場合に比べて、リフレクタ248の熱を有効利用でき、熱源43の点灯時間の短縮化および消費電力の低減を図ることを目的とするためである。
【0051】
ここで、比較例2に係る構成では、リフレクタ248の熱源43側の端部248Cが他の部材に支持されていない。仮に、その端部248Cを定着ステー44等に接触支持させるとする。しかしながら、その場合は、反射部248aで吸収された熱が定着ステー44等に伝達してしまうため、リフレクタ248の熱の有効利用という目的とは反する構成となってしまう。また、比較例2に係る構成では、定着ベルト42は、定着ニップ部Nで用紙等の記録媒体(転写材)に熱を受け渡すため、定着ニップ部Nの通過後から熱源43からの輻射熱が輻射されるまでの範囲は比較的に低温となっている。なお、定着ニップ部Nの通過前後では、温度差が15~20°C程度ある。そのため、比較例2に係る構成では、定着ベルト42の周内で温度ムラが生じてしまう。
【0052】
また、これとは別に、リフレクタ248の熱源43側の端部248Cの位置精度を維持するためには、フランジ50で、リフレクタ248における定着ベルト42の回転軸方向の端部248Cを支持する構成を用いる方法も挙げられる。しかしながら、リフレクタ248の熱がフランジ50に移動して、その結果として、フランジ50の温度が高くなることがある。
【0053】
定着装置内には、定着装置内の構成部品の摺動性を向上し、定着装置のトルク低減と耐久性向上を図る目的で、液状又は半固体状の揮発性物質(潤滑剤)を使用している。一方で、潤滑剤は、所定の温度以上になると微粒子を発生させることが知られている。熱がフランジ50に移動してフランジ50の温度が高くなり、潤滑剤の温度が所定の温度以上になるとする。すると潤滑剤は流動性が良いため、定着装置内での定着ベルト42の回転に伴ってフランジ50にも微粒子が微量に付着するという課題が生じ、望ましくない。
【0054】
<本発明に係る本実施形態におけるリフレクタについて>
そこで、上記課題が発生することを防止するため、本発明に係る実施形態におけるリフレクタは、以下に述べる構成となっている。その詳細について、図4を用いて説明する。なお、本発明に係る構成と比較例2に係る構成においては、主としてリフレクタの構成が異なり、その他の構成については同様であるとする。
【0055】
まず、リフレクタ48は、熱源43からの輻射熱を定着ベルト42側へ熱を反射させる反射部48aと、加圧ローラ41の加圧力を受ける加圧受け部48bとを有している。また、反射部48aは、熱源43と定着ステー44との間に配置されている。そして、加圧受け部48bは、摺動部材たる均熱部材45aと樹脂パッド45bとに挟まれる形で配設されている。これにより、均熱部材45aへリフレクタ48の熱が移動し、リフレクタ48の温度上昇を抑制することができる。また、加圧受け部48bは、加圧ローラ41の加圧力を受ける加圧領域に位置している。これにより、均熱部材45aと加圧受け部48bとの密着性が上がり、熱の伝達性を向上させ、リフレクタ48の排熱効率を高めることができる。
【0056】
また、加圧受け部48bは、加圧受け部48bの表面よりも定着ベルト42の内周面に対する摺動性が高い摺動部材を介して定着ベルト42の内周面に当接するように構成されている。これにより、リフレクタ48の加圧受け部48bを定着ベルト42の内周面に接触させてリフレクタ48の熱を、均熱部材45aを介さずに定着ベルト42に排熱する場合に比べて、定着ベルトの摺動抵抗を低減できる。そのため、定着ベルト42を回転させるためのトルクの上昇を抑制することができ、かつ、定着ベルト42の内周面の摩耗も抑制できる。
【0057】
ここで、上述した比較例2に係る構成では、リフレクタ48と熱源43との位置関係を適切に維持する必要がある。そのため、リフレクタ48については、定着装置を構成する部材のうちのいずれかの部材に支持する必要がある。一般的にいえば、例えば、定着ステー44、もしくは定着ベルト42の長手方向の端部(回転軸方向の端部)に備えたフランジ50に支持する構成を採用する場合が多い。しかしながら、それらに支持する構成を採用することは、リフレクタ48の過昇温防止と熱の有効利用との両立の観点からは、好ましくない。
【0058】
そこで、本発明に係る構成では、図4(a)に示すように、比較例2に係る構成におけるリフレクタ248の端部248C、すなわちリフレクタ248の定着ベルト42の回転方向(周方向)における切れ目を定着ニップ部Nの下流側(出口側)に向けて延在させるようにし、その延在した部分を均熱部材45a、樹脂パッド45bで挟持するものとしている。具体的には、図4(b)に示すように、リフレクタ48に延在部48c(図4(b)におけるリフレクタ48の黒く塗った部分)を設けている。そして、この延在部48cは、反射部48aと連続している。また、延在部48cは、少なくとも定着ニップ部上流側から定着ニップ部下流側に向かって定着ベルト42の内周側に対向するように延在しており、熱源43から放射される熱を直接受けない部位である。すなわち、本発明に係るリフレクタ48は、熱源43から放射される熱を直接受ける部位(反射部48a)と熱源43から放射される熱を直接受けない部位(延在部48c)とを有している。ここで、図4において、延在部48cは、定着ニップ部下流側においては、破線部K1-K2(樹脂パッド45bの右側(定着ニップ部Nの出口側)の端部付近)の位置まで延在させており、均熱部材45aと樹脂パッド45bとで挟持することを可能としている。さらに、延在部48cは、加圧受け部48bと連続している。このように、延在部48cを均熱部材45aと樹脂パッド45bで挟持している理由としては、定着ニップ部Nを加熱することが熱の有効利用につながることと、延在部48cを支持することの両方の効果が得られることを考慮したためである。なお、当該効果が得られるためには、延在部48cは、少なくとも均熱部材45aと接触していればよい。また、上記したように均熱部材45aは、上記したように金属であるため、所定の剛性を有する。これらを踏まえて、均熱部材45aを備える本構成においては、延在部48cは、例えば、図4(b)に示す破線部K3-K4の位置のような、定着ニップ部Nの定着ベルト42の回転方向下流側の樹脂パッド45bから離れた位置までで留める構成にしてもよい。
【0059】
また、本発明である図10に係る構成においては、均熱部材45aに代わってグラフェン45cが使用されている点が主に図4に係る構成と異なっている。この構成における延在部48cは、定着ニップ部下流側においては、破線部L1-L2(樹脂パッド45bの右側(定着ニップ部Nの出口側)の端部付近)の位置まで延在させている。このようにすることで、延在部48cを、定着ニップ部Nで挟持・支持し、且つグラフェン45cと樹脂パッド45bとで挟持することを可能としている。このとき、グラフェン45cを備える本構成においては、延在部48cは、例えば、図4(b)に示す破線部K3-K4に相当する位置のような、定着ニップ部Nの定着ベルト42の回転方向下流側の樹脂パッド45bから離れた位置までで留めるのでなく、破線部L1-L2の位置まで延在させる必要がある。このようにしている理由としては、上記したように定着ニップ部Nを加熱することが熱の有効利用につながることと、延在部48cを支持することの両方の効果が得られることを考慮したためであるが、さらに別の理由も挙げられる。ここで、グラフェン45cはシート状部材である。そのため、グラフェン45cは剛性がない。一方で、延在部48c(の端部)を支持するためには何かしらの部材で挟持する必要がある。そして、例えば、仮に、延在部48cが破線部L1-L2の位置まで延在しておらず、加圧受け部48bが比較例2に係る構成のような定着ニップ部出口直後までしかない場合には、挟持する部材がないため、延在部48c(の端部)を支持することが困難になってしまう。そのような場合には、延在部48c(の端部)がフリーな状態となり、定着ベルト42の内周部や定着ステー44に接触し、熱の有効利用という目的に反するおそれがある。そこで、これを防止する観点から上記構成としている。
【0060】
このようにすることで、本発明に係るリフレクタ48は、定着ベルト42の回転軸方向から見たとき、定着ニップ部上流側から定着ニップ部下流側に向かって定着ベルト42の内周側を一周するように定着ベルト42に対向して配置されている構成となっている。また、リフレクタ48は、定着ステー44や定着ベルト42といった定着ベルト42内の内周側に配置された部材のうちの一部の部材には、少なくとも定着ベルト42の回転時において、接触しないように(非接触となるように)構成されている。
【0061】
また、本発明に係るリフレクタ48は、定着ベルト42の回転方向の上流側および下流側の両側で加圧受け部48bと延在部48cを含めたリフレクタ48の他の部位とが連続して一体化となる構成としている。そのため、定着ニップ部Nの上流側および下流側の両側でニップ形成部材45とリフレクタ48が熱的に連続であることにより、熱的な損失をより防止できる。なお、本発明に係るリフレクタ48は、定着ベルト42の回転方向の上流側および下流側の両側で加圧受け部48bとリフレクタ48の他の部位とが一体となる構成としているが、熱的に連続であれば、この構成に限らなくてもよい。また、本発明に係るリフレクタ48は、一枚の金属の板を加工することにより形成しているが、これに限らず、複数の金属の板をつなげて形成してもよい。なお、一枚の金属の板を加工して形成する方が、剛性を確保でき、さらに熱的に連続させる観点では優れているため、こちらの形成の方がより望ましい。
【0062】
また、リフレクタ48の基材は、アルミ等の金属で、所定の剛性を有するために定着ベルトの周方向に安定した形状を保つことが可能である。そのため、リフレクタ48は、定着ステー44や、定着ベルト42とは、非接触に維持することが可能となる。
【0063】
これにより、熱が定着ベルト42内の内周側に配置された部材に移動することがないため、熱の有効利用をすることが可能となる。加えて、リフレクタ48を均熱部材45a(あるいはグラフェン45c)に接触させているため、リフレクタ48の温度上昇による過昇温を防止することも可能となる。
【0064】
また、上記のような構成にすることで、リフレクタ48の熱Hは、図4(a)に示すように延在部48cを伝わって定着ニップ部下流側に向かい移動するようになる。そして、その熱Hの一部である熱hがリフレクタ48から定着ベルト42に伝わるようになる。なお、熱Hの移動量や熱hの伝わる量は、定着装置の立ち上がり、温間時、あるいは連続通紙時等の状況に応じたり、定着装置のユニットによって温度分布が異なるものであるため、一律ではない。そして、比較例2に係る構成おいては、定着ベルト42における定着ニップ部Nの通過後から熱源43からの輻射熱が輻射されるまでの範囲は比較的低温になっている。一方で、本発明に係る構成は、上記したように延在部48cを設けているため、当該範囲における低温の課題を解消することができる。
【0065】
すなわち、本発明においては、リフレクタ48によって反射された熱は、定着ベルト42の内周全体にわたって伝わるようになる。そのため、定着ベルト42の周内での温度ムラの発生を防止することができる。
【0066】
図6は、本発明に係る定着装置におけるリフレクタとフランジとの位置関係を示した図である。また、図6は、定着ベルト42の回転軸方向から見た図である。なお、図6では、フランジ50においては、筒部51のみを示している。ここで、図6に示すように、リフレクタ48とフランジ50の筒部51とは非接触となっていることがわかる。本発明に係る定着装置においては、リフレクタ48を定着ニップ部Nの上流側(入口側)、定着ニップ部Nの下流側(出口側)の両側で支持することが可能となるため、リフレクタ48をフランジ50で支持する必要がない。そのため、リフレクタ48からの熱移動によるフランジ50の昇温を防止することが可能となる。このことによって、フランジ50に付着している液状又は半固体状の揮発性物質(潤滑剤)から発生する微粒子を低減することができ、環境への負荷低減に寄与することも可能となる。
【0067】
なお、本発明に係る定着装置においては、フランジ50の筒部51が定着ベルト42の回転軸方向における両端部と勘合する構成となっているが、フランジ50が定着ベルト42の挙動(回転軌跡)を規制する構成ではない。また、定着ベルト42の回転時と停止時では、軌跡が異なり、そして、定着ベルト42とリフレクタ48との相対的な位置関係も同一ではないものとする。本発明は、少なくとも定着ベルト42の回転時の熱移動を主目的としており、仮に、定着ベルト42の回転の停止時にリフレクタ48がニップ形成部材45以外の定着ベルト42等の定着装置の部材に接触しても、本発明の目的を逸脱するものではない。
【0068】
図7は、ホットプレートの温度とフッ素グリス、シリコーンオイルから発生する微粒子濃度(1cmあたりの微粒子の発生個数)の関係を示した図である。なお、図7において、実線はフッ素グリスを示し、一点鎖線はシリコーンオイルを示している。ここで、図7に示される関係を調べる本試験においては、JIS A 1901に準拠した1立米チャンバー(換気回数:5回)内で、サンプル容器内のフッ素グリスおよびシリコーンオイルを加熱した。
【0069】
図8は、サンプル容器の斜視図である。この図8に示されるように、サンプル容器52は、50mm×50mm×5mmのアルミ板に、φ22mmで深さ2mmの窪み52aを設けたものを使用し、この窪み52aにサンプルを配置する。サンプルが配置されたサンプル容器52を加熱装置(アズワン製クリーンホットプレートMH-180CS、アズワン製コントローラMH-3CS)のホットプレート上に置き、設定温度250℃でサンプルを加熱した。ホットプレートの温度をモニターしながら、チャンバー内の微粒子濃度を測定装置(高速応答型パーティクルサイザーFMPS:Fast Mobility Particle Sizer,TSI;Model 3091)を用いて測定した(Export時のUse Averaging Ineterval:30秒)。サンプル量(フッ素グリスの量、シリコーンオイルの量)は、36μlとした。
【0070】
再び図7を用いて説明する。図7においては、横軸にホットプレートの温度が示されているが、ホットプレートの温度上昇と潤滑剤の温度上昇はほぼ同期して変化するため、ここでは、ホットプレートの温度をフッ素グリスの温度やシリコーンオイルの温度とみなす。
【0071】
そして、図7に示されるように、微粒子濃度は、フッ素グリスの温度が190℃に達したあたりから発生し始め、温度が190℃を超えたあたりから発生する微粒子濃度が急激に上昇した。この急激に当該濃度が上昇する190℃以上においては、チャンバー内の微粒子濃度が4000個/cm以上となった。
【0072】
また、図7に示されるように、微粒子濃度は、シリコーンオイルの温度が200℃に達したあたりから発生し始め、温度が210℃を超えたあたりから発生する微粒子濃度が急激に上昇した。この急激に当該濃度が上昇する210℃以上においては、チャンバー内の微粒子濃度が4000個/cm以上となった。
【0073】
このようなことから、潤滑剤として使用しているシリコーンオイルは200℃、フッ素グリスは180℃を超えると微粒子が発生する。そこで、10分間印刷における微粒子の量を規定している欧州の環境規格(ブルーエンジェル)においては、10分間連続印刷後にフランジ50の温度が200℃以下、さらに好ましくは180℃以下になっていることが望ましい。
【0074】
図9は、本発明に係る定着装置(図4の定着装置)を備えた画像形成装置(フルカラー、70cpm)において連続する作像時間に対するフランジ50の温度を示した図である。なお、図9において、実線は本発明を示し、破線は比較例2を示しているものとする。
【0075】
図9に示すように、リフレクタ48における回転軸方向の端部をフランジ50で支持する比較例2に係る定着装置を備えた画像形成装置(フルカラー、70cpm)では、フランジ50の温度が200[sec]経過時点で200℃を超えてしまう。一方で、リフレクタ48をフランジ50で支持しない本発明に係る定着装置を備えた画像形成装置(フルカラー、70cpm)では、10分間連続印刷後にフランジ50の温度が、180℃に維持することが可能となる。
【0076】
以上説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0077】
[第1態様]
第1態様は、回転可能な定着部材(例えば、定着ベルト42)と、前記定着部材の外周側に加圧することで当接してニップ部(例えば、定着ニップ部N)を形成する加圧部材(例えば、加圧ローラ41)と、前記定着部材の内周側に配置された熱源(例えば、熱源43)と、を備えた定着装置において、少なくとも前記定着部材の一部に前記熱源から放射される熱を前記定着部材の内周側に向かって反射する反射部(例えば、反射部48a)と、前記定着部材を介して前記加圧部材の加圧力を受ける加圧受け部(例えば、加圧受け部48b)とを有する反射部材(例えば、リフレクタ48)を備え、前記反射部材は、少なくとも前記ニップ部上流側から前記ニップ部下流側に向かって前記定着部材の内周側に対向するように延在する部位である延在部(例えば、延在部48c)を有し、少なくとも前記定着部材の回転時には、前記定着部材の内周側に配置された部材のうちの一部の部材に対して非接触であることを特徴とするものである。
【0078】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記延在部は、前記加圧受け部と連続して一体化されていることを特徴とするものである。
【0079】
[第3態様]
第3態様は、第1態様または第2態様において、前記定着部材の内周側に配置された部材のうちの一部の部材は、前記加圧部材からの圧力を受けるステー部材(例えば、定着ステー44)であることを特徴とするものである。
【0080】
[第4態様]
第4態様は、第1態様乃至第3態様のいずれかにおいて、前記定着部材の内周側に配置された部材のうちの一部の部材は、前記定着部材であることを特徴とするものである。
【0081】
[第5態様]
第5態様は、第1態様乃至第4態様のいずれかにおいて、前記加圧受け部は、前記加圧受け部の表面よりも定着部材の内周面に対する摺動性が高い摺動部材(例えば、均熱部材45a、グラフェン45c)を介して前記定着部材の内周面に当接することを特徴とするものである。
【0082】
[第6態様]
第6態様は、第5態様において、前記定着装置は、前記定着部材の内周側に位置し且つ前記ニップ部を形成するニップ形成部材(例えば、ニップ形成部材45)を有し、前記ニップ形成部材は、樹脂で形成されたパッド部材(例えば、樹脂パッド45b)を有し、前記延在部は、前記摺動部材と前記パッド部材とで挟持されていることを特徴とするものである。
【0083】
[第7態様]
第7態様は、第1態様乃至第6態様のいずれかにおいて、前記定着装置は、前記熱源によって前記反射部材が加熱され、前記反射部材に最大の変形量が生じる状態で、前記定着部材と前記反射部材とに間隙を有することを特徴とするものである。
【0084】
[第8態様]
第8態様は、第1態様乃至第7態様のいずれかにおいて、前記定着装置内に収容される液状または半固体状の揮発性物質を有することを特徴とするものである。
【0085】
[第9態様]
第9態様は、第1態様乃至第8態様のいずれかにおいて、前記定着装置は、前記定着部材を回転可能に支持する支持部材(例えば、フランジ50)を有しており、前記反射部材は、少なくとも前記定着部材の回転時において前記支持部材と接触しないことを特徴とするものである。
【0086】
[第10態様]
第10態様は、第1態様乃至第9態様のいずれかの定着装置を備えた画像形成装置である。
【符号の説明】
【0087】
40 定着装置
41 加圧ローラ
42 定着ベルト
43 熱源
44 定着ステー
45 ニップ形成部材
45a 均熱部材
45b 樹脂パッド
45c グラフェン(グラファイトシート)
45d 両面テープ
48、148、248 リフレクタ
48a、248a 反射部
48b 、248b 加圧受け部
48c 延在部
50 フランジ
51 筒部
52 サンプル容器
52a 窪み
100 画像形成部
P 用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0088】
【特許文献1】特開2019-015943号公報
【特許文献2】特開2015-194633号公報
【特許文献3】特開2014-235308号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13