(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075874
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】撮像素子及びカメラシステム
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20240529BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H01L27/146 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187090
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 周平
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 英里
【テーマコード(参考)】
4M118
【Fターム(参考)】
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA10
4M118BA14
4M118CA02
4M118CA09
4M118FA06
4M118FA27
4M118GA02
4M118GB03
4M118GB07
4M118GB11
4M118GC08
4M118GC11
4M118GC14
4M118GC20
4M118GD04
(57)【要約】
【課題】被写体の画像の色再現性をより高めた高精度のカラー画像を取得することができる撮像素子を提供する。
【解決手段】基板上にアレイ状に複数の光電変換部を配して撮像素子を形成する。複数の光電変換部は、赤色用の光電変換部、緑色用の光電変換部及び青色用の光電変換部からなる可視光用の光電変換部と、近赤外光波長領域IR1の光を変換する近赤外光用の光電変換部と前記IR1とは異なる近赤外波長領域IR2の光を変換する近赤外光用の光電変換部とを含む構成とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成されアレイ状に配された複数の光電変換部を含む撮像素子であって、
前記複数の光電変換部は可視光用の光電変換部と近赤外光用の光電変換部とを含み、
前記可視光用の光電変換部は赤色用の光電変換部、緑色用の光電変換部、及び青色用の光電変換部を含んでおり、
前記近赤外光用の光電変換部は、近赤外光波長領域IR1の光を変換する近赤外光用の光電変換部と、前記IR1とは異なる近赤外波長領域IR2の光を変換する近赤外光用の光電変換部とを含む撮像素子。
【請求項2】
前記近赤外光波長領域IR1は波長700~800nmの範囲、前記近赤外波長領域IR2は波長800~900nmの範囲である、請求項1に記載の撮像素子。
【請求項3】
前記赤色用の光電変換部、前記緑色用の光電変換部、前記青色用の光電変換部、前記近赤外光波長領域IR1の光を変換する近赤外光用の光電変換部及び前記近赤外波長領域IR2の光を変換する近赤外光用の光電変換部は、モザイク状に配列されている、請求項1又は2に記載の撮像素子。
【請求項4】
前記緑色用の光電変換部は、他の光電変換部に対して配置比率が高く設定されている、請求項1又は2に記載の撮像素子。
【請求項5】
基板には、隣接する光電変換部を分離するシャロートレンチ構造が形成されている、請求項1又は2に記載の撮像素子。
【請求項6】
前記可視光用の光電変換部の光入射面側には、カラーフィルタが配されている、請求項1又は2に記載の撮像素子。
【請求項7】
前記近赤外光波長領域IR1の光を変換する光電変換部の光入射面側には、可視光及び前記近赤外光波長領域IR2の光を遮蔽するフィルタが配されている、請求項1又は2に記載の撮像素子。
【請求項8】
前記前記近赤外光波長領域IR2の光を変換する光電変換部の光入射面側には、可視光及び前記近赤外光波長領域IR1の光を遮蔽するフィルタが配されている、請求項1又は2に記載の撮像素子。
【請求項9】
前記近赤外光波長領域IR1の光を変換する近赤外光用の光電変換部に配されたフィルタは色素を含むものである請求項7に記載の撮像素子。
【請求項10】
前記近赤外光波長領域IR2の光を変換する光電変換部に配されたフィルタは色素を含むものである請求項8に記載の撮像素子。
【請求項11】
被写体像を結像するための光学部と、
基板に形成されアレイ状に配された複数の光電変換部を含む撮像素子と、
前記光電変換部からの信号を処理する信号処理部とを少なくとも備えて、
前記複数の光電変換部は可視光用の光電変換部と近赤外光用の光電変換部とを含み、
前記可視光用の光電変換部は赤色用の光電変換部、緑色用の光電変換部、及び青色用の光電変換部を含んでおり、
前記近赤外光用の光電変換部は、近赤外光波長領域IR1の光を変換する近赤外光用の光電変換部と、前記IR1とは異なる近赤外波長領域IR2の光を変換する近赤外光用の光電変換部とを含む構成を有するカメラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体のカラー画像を取得する撮像素子とこれを備えたカメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被写体の可視光のカラー画像と近赤外画像とを同時に取得できるように構成された撮像素子が提案されている。
これを用いたカメラシステムとして、例えば、赤、青及び緑の各色用の光電変換部からなる可視光用の光電変換部と近赤外光用の光電変換部とを含む複数の光電変換部を基板にアレイ状に複数配置した撮像素子を備え、可視光と近赤外光との境界域を吸収するデュアルパスフィルタを介して入射した光を前記各可視光用と赤外光用の光電変換部でそれぞれ電気信号に変換し、信号処理部に出力して可視光のカラー画像と近赤外画像を同時に取得するとともに、近赤外画像をバックグランドノイズとして捉え、これを可視光のカラー画像から除去することで、被写体の画像の色再現性の向上を図った構成のものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、医療分野において、特定の波長の近赤外光を人体に照射し、その透過光又は散乱反射光を受光して生体組織による、前記特定波長の近赤外光の吸収度を測定することにより、生体組織の成分の測定を行う光式生体測定装置が知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-139286号公報
【特許文献2】特開平2-201251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記可視光のカラー画像と近赤外画像とを同時に取得する撮像素子を備えたカメラシステムを医療分野で利用される前述のような測定装置に利用すれば、人体の観察部位や患部を撮影した画像の色再現性を良好にすることができ、診断や治療の精度向上に資すると考えられる。しかし、前記観察部位などの測定対象物によっては、診断に有益な画像を取得できない場合がある。
【0006】
例えば、赤外分光法により人体に照射した赤外線の透過或いは反射光を分光して体内の血中酸素の変化量を測定する装置では、ヘモグロビンが酸素を保持する際の波長の変化、具体的には脱酸素は780nm、中点は805nm、酸素化は830nmを検出し、この変化量から血中酸素を計測するが、前記カメラシステムでは、デュアルパスフィルタの近赤外側透過帯の中心が850nm、その幅が80nm程度に設定されているため、上記のようなヘモグロビンが酸素を保持する際の波長の変化量を検出することはできない。
前記可視光のカラー画像と近赤外画像とを同時に取得する撮像素子を備えたカメラシステムを生体センシングなどに用いるためには、より高精度の近赤外画像を取得し、可視光のカラー画像の色再現性をさらに高める必要がある。
【0007】
本発明は従来の技術が有するこのような問題に鑑み、被写体の画像の色再現性をより高めた高精度のカラー画像を取得することができる撮像素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する本発明の要旨は以下のとりである。
〔1〕 基板に形成されアレイ状に配された複数の光電変換部を含む撮像素子であって、
前記複数の光電変換部は可視光用の光電変換部と近赤外光用の光電変換部とを含み、
前記可視光用の光電変換部は、赤色用の光電変換部、緑色用の光電変換部、及び青色用の光電変換部を含んでおり、
前記近赤外光用の光電変換部は、近赤外光波長領域IR1の光を変換する近赤外光用の光電変換部と、前記IR1とは異なる近赤外波長領域IR2の光を変換する近赤外光用の光電変換部とを含む撮像素子。
〔2〕 前記近赤外光波長領域IR1は波長700~800nmの範囲、前記近赤外波長領域IR2は波長800~900nmの範囲である、前記〔1〕に記載の撮像素子。
〔3〕 前記赤色用の光電変換部、前記緑色用の光電変換部、前記青色用の光電変換部、前記赤外光波長領域IR1の光を変換する光電変換部及び前記近赤外光波長領域IR2の光を変換する光電変換部は、モザイク状に配列されている、前記〔1〕又は〔2〕に記載の撮像素子。
〔4〕 前記緑色用の光電変換部は、他の光電変換部に対して配置比率が高く設定されている、前記〔1〕から〔3〕の何れかに記載の撮像素子。
〔5〕 基板には、隣接する光電変換部を分離するシャロートレンチ構造が形成されている、前記〔1〕から〔4〕の何れかに記載の撮像素子。
〔6〕 前記可視光用の光電変換部の光入射面側には、カラーフィルタが配されている、前記〔1〕から〔5〕の何れかに記載の撮像素子。
〔7〕 前記近赤外光波長領域IR1の光を変換する光電変換部の光入射面側には、可視光及び前記近赤外光波長領域IR2の光を遮蔽するフィルタが配されている、前記〔1〕から〔6〕の何れかに記載の撮像素子。
〔8〕 前記近赤外光波長領域IR2の光を変換する光電変換部の光入射面側には、可視光及び前記近赤外光波長領域IR1の光を遮蔽するフィルタが配されている、前記〔1〕から〔7〕の何れかに記載の撮像素子。
〔9〕 前記近赤外光波長領域IR1の光を変換する光電変換部に配されたフィルタは色素を含むものである前記〔7〕に記載の撮像素子。
〔10〕 前記近赤外光波長領域IR2の光を変換する光電変換部に配されたフィルタは色素を含むものである前記〔8〕に記載の撮像素子。
〔11〕 被写体像を結像するための光学部と、
前記〔1〕から〔10〕の何れかに記載の撮像素子と、
前記光電変換部からの信号を処理する信号処理部とを少なくとも備えた構成を有するカメラシステム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の撮像素子は、赤外線による高度なイメージングを行うことが可能であり、被写体の画像の色再現性をより高めた高精度のカラー画像を取得することができる。本発明の撮像素子は、生体センシングなど幅広い分野で被写体の画像を取得するカメラシステムに用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明を適用した一実施形態のカメラシステムの概略構成を示した図である。
【
図2】
図1のカメラシステムの撮像素子の概略構成を示した図である。
【
図3】カラーフィルタの分光特性を示した図である。
【
図4】実施例におけるカラーフィルタの分光特性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態のものに限定されない。実施形態は例示であり、本発明の主旨を損なわない範囲で適宜に変更して実施可能である。
【0012】
なお、本発明に用いる以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲において適用される。
「カラーフィルタ」とは、電磁波に対するフィルタのうち、可視領域及び赤外領域の光に作用する光学フィルタで、色(波長の違い)に対する特性を目的とするものである。
「可視光」とは波長400~700nmの範囲の波長域の光、「近赤外光光」とは波長700~900nmの範囲の波長域の光をそれぞれ意味する。
【0013】
前述のとおり、本発明の撮像素子は、基板に形成されアレイ状に配された複数の光電変換部を含む撮像素子であって、
前記複数の光電変換部は可視光用の光電変換部と近赤外光用の光電変換部とを含み、
前記可視光用の光電変換部は、赤色用の光電変換部、緑色用の光電変換部、及び青色用の光電変換部を含んでおり、
前記近赤外光用の光電変換部は、近赤外光波長領域IR1の光を変換する近赤外光用の光電変換部と、前記IR1とは異なる近赤外波長領域IR2の光を変換する近赤外光用の光電変換部とを含むことを構成上の特徴としている。
【0014】
前記構成の撮像素子において、近赤外光波長領域IR1は波長700~800nmの範囲、前記近赤外波長領域IR2は波長800~900nmの範囲に規定することができる。
【0015】
また、前記構成の撮像素子において、赤色用の光電変換部、緑色用の光電変換部、青色用の光電変換部、近赤外光波長領域IR1の光を変換する光電変換部及び近赤外光波長領域IR2の光を変換する光電変換部は、モザイク状に配列されている構成とすることができる。
【0016】
前記構成の撮像素子において、緑色用の光電変換部は、他の光電変換部に対して配置比率が高く、つまり緑色用の光電変換部の配置数が他の色の光電変換部の配置数よりも多くなるように設定されている構成とすることができる。
【0017】
前記構成の撮像素子において、基板には、隣接する光電変換部を分離するシャロートレンチ構造が形成されている構成とすることができる。
【0018】
また、前記構成の撮像素子において、可視光用の光電変換部の光入射面側には、カラーフィルタが配されている構成とすることができる。
【0019】
さらに、前記構成の撮像素子において、近赤外光波長領域IR1の光を変換する光電変換部の光入射面側には可視光及び近赤外光波長領域IR2の光を遮蔽するフィルタ、近赤外光波長領域IR2の光を変換する光電変換部の光入射面側には可視光及び前記近赤外光波長領域IR2の光を遮蔽するフィルタがそれぞれ配されている構成とすることができる。
【0020】
またさらに、前記構成の撮像素子において、近赤外光波長領域IR1の光を変換する光電変換部に配されたフィルタ、近赤外光波長領域IR2の光を変換する光電変換部に配されたフィルタは、それぞれ色素を含むものである構成とすることができる。
【0021】
本発明の撮像素子は、例えばCCDイメージセンサーやCMOSイメージセンサーなどに適用され、画像を取得するカメラシステムに用いることができる。これらは、表面照射型であってもよいし裏面照射型であってもよい。
本発明の撮像素子やカメラシステムを用いた装置としては、デジタルスチルカメラやビデオカメラ、カムコーダ、監視カメラ、車両搭載用カメラ、スマートホン用カメラ、ゲーム用のユーザーインターフェースカメラ、生体認証用カメラ、生体情報取得用カメラ装置などを例示することができる。これらの装置は、通常の可視光画像に加えて、近赤外画像を同時に取得可能である。
【0022】
光電変換部が形成される基板としては、半導体基板、特に、シリコン半導体基板を挙げることができる。シリコン半導体基板は、可視光に加えて波長が1μm程度の光も吸収するため、シリコン基板に形成されたフォトダイオードやフォトトランジスタなどといった光電変換素子は、可視光に加え、近赤外光についても光電変換を行うことができる。
【0023】
カラーフィルタとしては、赤色、緑色、青色等の特定波長を透過させるフィルタ層を挙げることができる。カラーフィルタは、顔料や染料等の有機化合物を用いた有機材料系の材料層から構成することができる。なお、場合によって、シアン色、マゼンダ色、黄色等の特定波長を透過させる補色カラーフィルタを用いてもよい。
【0024】
前述のとおり、近赤外光用の光電変換部は、波長700~800nmの範囲の近赤外光波長領域IR1の光を変換する光電変換部と、波長800~900nmの範囲の近赤外光波長領域IR2の光を変換する光電変換部の二つからなり、前記両光電変換部には、その前者の光電変換部の光入射面側に可視光及び近赤外光波長領域IR2の光を遮蔽するフィルタ、後者の光電変換部の光入射面側には可視光及び近赤外光波長領域IR1の光を遮蔽するフィルタがそれぞれ配される。
前記両光電変換部の光入射面側に配されるフィルタは、例えば、可視光を吸収するカットオフ吸収層、及び近赤外域の前記IR1及びIR2で規定される波長透過帯を制御する数十層ないし百数十層に及ぶ誘電体多層膜によって構成することができる。
前記両光電変換部の光入射面側に配されるフィルタは、前記可視光及び近赤外光波長領域IR2の光を遮蔽するフィルタ、前記可視光及び近赤外光波長領域IR1の光を遮蔽するフィルタ以外にも、例えば、可視光を吸収するカットオフフィルタ、及び近赤外光波長領域の前記IR1及びIR2で規定される波長を吸収する近赤外吸収フィルタ、近赤外波長領域の前記IR1及びIR2で規定される波長透過帯を制御する数十層ないし百数十層に及ぶ誘電体多層膜によって構成することができる。
【0025】
可視光及び近赤外光波長領域IR2の光を遮蔽するフィルタ、可視光及び近赤外光波長領域IR1の光を遮蔽するフィルタ、カットオフフィルタ、近赤外吸収フィルタが色素を含むものである場合に、含める色素としては周知の顔料や染料を用いることができる。例えば、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、シアニン系化合物といった化合物を例示することができる。耐光性や耐熱性といった観点からは、特に、スクアリリウム系化合物を用いることが好ましい。
【0026】
前記構成の撮像素子にあっては、隣接する光電変換部と光電変換部との間に位置する領域には、例えば、クロム(Cr)や銅(Cu)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)などの金属材料や、誘電体材料などから成る遮光層が設けられている構成とすることができ、これによって、隣接する光電変換部への光の漏れ込みを、効果的に防ぐことができる。なお、基盤に設けられるシャロートレンチ構造に埋め込まれる材料も、上記と同様の材料により構成することができる。
【0027】
前記撮像素子は、必要に応じて層間絶縁層や平坦化層が配されている構成とすることができる。
【0028】
前記撮像素子を構成する層間絶縁層や平坦化層は、各種化学的気相成長法(CVD法)、塗布法、各種物理的気相成長法(PVD法)等の公知の方法に基づき形成することができる。また、パターニング法として、リソグラフィ技術とエッチング技術との組合せや、リフトオフ法などの公知の方法を挙げることができる。
【0029】
層間絶縁層や平坦化層を透明な材料で構成する場合、例えば、光吸収特性を有していない絶縁材料、具体的には、SiOX系材料(シリコン系酸化膜を構成する材料)、SiN、SiON、SiOC、SiOF、SiCN、有機SOGなどの低誘電率絶縁材料、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂などを材料として用いることができる。OCLについても同様である。
【0030】
なお、前記光電変換部の上方には、集光効率を向上させるために、マイクロレンズが配置される。マイクロレンズは前記光電変換部と同様にアレイ状に形成されたものが用いられ、各光電変換部の光入射面側に配置される。
【0031】
次に、本発明の好適な実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態の撮像素子とこれを用いたカメラシステムの概略構成を示した図、
図2は同じく撮像素子の概略構成を示した図である。
【0032】
図1に示されるように、カメラシステム1は、被写体像を結像するための光学部である撮像レンズ2と、基板に形成されアレイ状に配された複数の光電変換部PDを有する撮像素子3と、光電変換部PCの出力信号を処理する信号処理部4とを備えて構成されている。
カメラシステム1は、前記各光電変換部PDの出力信号を信号処理部4で演算処理することで、色再現性をより高めた高精度の被写体のカラー画像を取得することができるように構成されている。
【0033】
図1及び
図2に示されるように、撮像素子3に配置された各画素は、各々可視光用の光電変換部PDと近赤外光用の光電変換部を備えており、これら各光電変換部PDにはその光入射面側に配されたマイクロレンズ31とカラーフィルタ32を介して光が入力し、これを電気信号に変換して配線部33から信号処理部4に出力するように設けてある。
【0034】
前記可視光用の光電変換部PDは、赤色用の光電変換部PD1と緑色用の光電変換部PD2と青色用の光電変換部PDとからなり、近赤外光用の光電変換部PDは、波長700~800nmの範囲の近赤外光波長領域IR1の光を変換する光電変換部PD4と波長800~900nmの範囲の近赤外光波長領域IR2の光を変換する光電変換部PD5の二つからなり、これら五つの光電変換部PDはモザイク状に配列されている。
【0035】
光電変換部PDの光入射面側に配されたカラーフィルタ32は、900nmよりも波長が大きな赤外光を遮蔽するするIRカットフィルタ層321と、赤色、緑色、青色及び近赤外光の特定波長の光を透過させる特定波長透過フィルタ層322により構成されている。
【0036】
特定波長透過フィルタ層322は、赤色の波長の光のみを透過するRフィルタ層322a、緑色の波長の光のみを透過するGフィルタ層322b、青色の波長の光のみを透過するBフィルタ層322c、可視光及び近赤外光波長領域IR2の光を遮蔽し且つ近赤外光波長領域IR1の光のみを透過するIR1フィルタ層322d、及び可視光及び近赤外光波長領域IR1の光を遮蔽し且つ近赤外光波長領域IR2の光のみを透過するIR2フィルタ層322eからなる。
IRカットフィルタ層321と特定波長透過フィルタ層322からなるカラーフィルタ32の分光特性は
図3のように表される。
【0037】
これらフィルタ層は対応する波長の光を光電変換する各光電変換部PD1~PD5の光入射面側に各々配置されている。すなわち、赤色用の光電変換部PD1にはRフィルタ層322a、緑色用の光電変換部PD2にはGフィルタ層322b、青色用の光電変換部PD3にはBフィルタ層322c、近赤外光波長領域IR1の光を変換する光電変換部PD4にはIR1フィルタ層322d、近赤外光波長領域IR2の光を変換する光電変換部PD5にはIR2フィルタ層322eが各々配置され、前記IRカットフィルタ層321と各特定波長透過フィルタ層322を透過した光が各光電変換部PDに入射されて各々電気信号に変換される。
【0038】
前記構成の撮像素子3を用いたカメラシステム1は、環境光を被写体に照射したときと近赤外光を被写体に照射したときのそれぞれの被写体からの反射光を前記撮像素子3で受光し、光電変換した信号を信号処理部4に出力する。そして、信号処理部4で、環境光を被写体に照射したときの前記可視光用の光電変換部PD1,PD2,PD3の出力信号から生成される可視光画像に対して、赤外光を被写体に照射したときの、近赤外光波長領域IR1用の光電変換部PD4と近赤外光波長領域IR2用の光電変換部PD5の出力信号の成分を、マトリックス演算を行って除去する処理を行うことで、可視光画像の色再現性を高めることができるようになっている。
【0039】
例えば、前記近赤外光波長領域IR1の光を変換する光電変換部PD4と、近赤外光波長領域IR2の光を変換する光電変換部PD5の光入射面に配置するフィルタとして近赤外吸収フィルタを用いた場合、前記
図3中のB部とC部に示す部分は、可視光に対しての近赤外光(IR1及びIR2)による混色成分となる。また、同図中のD部に示す部分は、近赤外光に対しての可視光による混色成分となる。
ここで、例えば、前記
図3中のC部ではRフィルタによる赤色の波長の光の透過率が10%、同じくB部での透過率は20%であるとした場合、上述した混色は以下のマトリックス演算を行うことによって除去することが可能である。
【0040】
詳しくは、赤色用の光電変換部PD1からの原信号を符号RORI、緑色用の光電変換部PD2からの原信号を符号GORI、青色用の光電変換部PD3からの原信号を符号BORI、近赤外光波長領域IR1の光を変換する光電変換部PD4からの原信号を符号IR1ORI、近赤外光波長領域IR2の光を変換する光電変換部PD5からの原信号を符号IR2ORIと表す。そして、赤色用の補正後の信号を符号RCVT、緑色用の補正後の信号を符号GCVT、青色用の補正後の信号を符号BCVT、近赤外光IR1用の補正後の信号を符号IR1CVT、近赤外光IR2用の補正後の信号を符号IR2CVTと表す。
補正後の信号は、信号処理部4において、以下の式で示すマトリックス演算を行うことによって得ることができる。
【式1】
【0041】
【0042】
前述のとおり、近赤外吸収フィルタを用いたときの近赤外光の混色とその除去の処理は以下のように説明することができる。
【0043】
前記式において、赤色用の補正後の信号R
CVTに注目すれば、
(R
CVT=1.02×R
ORI-0.1×IR1
ORI-0.2×IR2
ORI)といった演算が行われる。
これは、近赤外光用の光電変換部PD4とPD5のそれぞれの出力の1割と2割を減ずるといったことを示す。
仮に、前記
図3中のRフィルタにおけるB部の透過率が100%であったとすると、近赤外光領域IR2の領域の光による混色を除去するために、
(R
CVT=1.02×R
ORI-0.1×IR1
ORI-1.0×IR2
ORI)
といった演算が必要となる。
これは、IR2用の光電変換部PD5の出力を全て減ずるといったことを示す。
また、近赤外光のIR1領域用の補正後の信号IR1
CVTに注目すれば、
(IR1
CVT=-0.12×R
ORI-0.05×B
ORI+1.02×IR1
ORI-0.10×IR2
ORI)
なる演算が行われている。
これによって、
図3に示すIR1領域の可視光成分が除去される。
さらに、近赤外光のIR2領域用の補正後の信号IR2
CVTに注目すれば、
(IR2
CVT=-0.12×R
ORI-0.05×B
ORI-0.20×IR1
ORI+1.02×IR2
ORI)
なる演算が行われている。
これによって、前記
図3に示したIR2領域の可視光成分が除去されることとなる。
【実施例0044】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
<緑色着色剤A>
特開平05-345861号公報の実施例30の記載に基づいて合成した、下記一般式(Z1)で表される化学構造を有するフタロシアニン化合物Aを使用した。
【0046】
【0047】
前記式(Z1)中、COOEtはエトキシカルボニル基を表す。
【0048】
<青色着色剤A>
国際公開第2015/080217号の記載に基づいて合成した、下記一般式(Z2)で表される化学構造を有する青色着色剤Aを使用した。
【0049】
【0050】
<赤色着色剤A>
特許第6846739号に基づいて合成した、下記一般式(Z3)で表される化学構造を有する赤色着色剤Aを使用した。
【0051】
【0052】
<黒色着色剤A>
BASF社製、Irgaphor(登録商標) Black S 0100 CF(下記式(Z4)で表される化学構造を有する。)を使用した。
【0053】
【0054】
<分散剤A>
窒素原子含有官能基を有するAブロックと、親溶媒性基を有するBブロックからなるメタクリル系A-Bブロック共重合体を使用した。下記式(1a)で表される繰り返し単位、下記式(2a)で表される繰り返し単位、下記式(3a)で表される繰り返し単位、下記式(4a)で表される繰り返し単位、及び下記式(5a)で表される繰り返し単位を有する。アミン価は120mgKOH/gであり、酸価は1mgKOH/g未満である。
【0055】
全繰り返し単位中における下記式(1a)、(2a)、(3a)、(4a)、及び(5a)で表される繰り返し単位の含有割合は、それぞれ1モル%未満、34.5モル%、6.9モル%、13.8モル%、及び6.9モル%である。
【0056】
【0057】
<分散剤B>
側鎖に4級アンモニウム塩基及び3級アミノ基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基及び3級アミノ基を有さないBブロックからなる、アクリル系A-Bブロック共重合体を使用した。分散剤BのAブロック中には、下記式(1a)及び(2a)の繰り返し単位が含まれ、Bブロック中には下記式(3a)の繰り返し単位が含まれる。アミン価は70mgKOH/gであり、酸価は1mgKOH/g以下である。
【0058】
全繰り返し単位中における下記式(1a)、(2a)、及び(3a)の繰り返し単位の含有割合は、それぞれ11.1モル%、22.2モル%、及び6.7モル%である。
【0059】
【0060】
<バインダー樹脂A>
反応槽として冷却管を付けたセパラブルフラスコを準備し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート400質量部を仕込み、窒素置換した後、攪拌しながらオイルバスで加熱して反応槽の温度を90℃まで昇温した。
【0061】
一方、モノマー槽中にジメチル-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート30質量部、メタクリル酸60質量部、メタクリル酸シクロヘキシル110質量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート5.2質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40質量部を仕込み、連鎖移動剤槽にn-ドデシルメルカプタン5.2質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート27質量部を仕込み、反応槽の温度が90℃に安定してからモノマー槽及び連鎖移動剤槽から滴下を開始し、重合を開始させた。温度を90℃に保ちながら滴下をそれぞれ135分かけて行い、滴下が終了して60分後に昇温を開始して反応槽を110℃にした。
【0062】
3時間、110℃を維持した後、セパラブルフラスコにガス導入管を付け、酸素/窒素=5/95(v/v)混合ガスのバブリングを開始した。次いで、反応槽に、メタクリル酸グリシジル39.6質量部、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)0.4質量部、トリエチルアミン0.8質量部を仕込み、そのまま110℃で9時間反応させた。
室温まで冷却し、GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが9000、酸価が101mgKOH/g、二重結合当量が550g/molのバインダー樹脂Aを得た。
【0063】
<バインダー樹脂B>
下記構造式で表されるエポキシ化合物(DIC社製 EPICLON HP7200HH、ジシクロペンタジエン・フェノール重合物のポリグリシジルエーテル、重量平均分子量1000、エポキシ当量270)155質量部、アクリル酸41質量部、p-メトキシフェノール0.1質量部、トリフェニルホスフィン2.5質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート130質量部を反応容器に仕込み、100℃で酸価が3.0mgKOH/g以下になるまで加熱撹拌をした。酸価が目標に達するまで9時間を要した(酸価2.9mgKOH/g)。次いでさらにテトラヒドロ無水フタル酸74質量部を添加し、120℃で4時間反応させ、酸価98mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)3500のバインダー樹脂B溶液を得た。
【0064】
【0065】
<バインダー樹脂C>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145質量部を窒素置換しながら攪拌し120℃に昇温した。ここにスチレン10.4質量部、グリシジルメタクリレート85.2質量部及びトリシクロデカン骨格を有するモノメタクリレート(日立化成社製 FA-513M)66.0質量部を滴下し、2.2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル8.47質量部の混合液を3時間かけて滴下し、さらに90℃で2時間攪拌し続けた。
次に反応容器内を空気置換に変え、アクリル酸15.1質量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.3質量部及びハイドロキノン0.06質量部を投入し、120℃で6時間反応を続けた。その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)59.3質量部、トリエチルアミン1.4質量部を加え、120℃で3.5時間反応させた。
こうして得られたバインダー樹脂CのGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは約9000、酸価は80mgKOH/g、二重結合当量は480g/molであった。この樹脂溶液に固形分が40質量%になるようプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えて、バインダー樹脂Cとして用いた。
【0066】
<バインダー樹脂D>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145質量部を窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温した。ここにスチレン10質量部、グリシジルメタクリレート85.2質量部及びトリシクロデカン骨格を有するモノメタクリレート(日立化成社製FA-513M)66質量部を滴下し、及び2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル8.47質量部を3時間かけて滴下し、さらに90℃で2時間攪拌し続けた。次に反応容器内を空気置換に変え、アクリル酸43.2質量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7質量部及びハイドロキノン0.12質量部を投入し、100℃で12時間反応を続けた。その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)56.2質量部、トリエチルアミン0.7質量部を加え、100℃3.5時間反応させた。
こうして得られたバインダー樹脂Dの重量平均分子量(Mw)は約8400、酸価は80mgKOH/g、二重結合当量は480g/molであった。
【0067】
<近赤外線吸収着色剤A>
Kousik Kundu,Sarah F. Knight,Seungjun Lee,W. Robert Taylor,and Niren Murthy,Angew.Chem.Int.Ed.,2010,49,6134-6138に基づいて合成した、以下の化学構造を有する化合物を使用した。
【0068】
【0069】
<近赤外線吸収着色剤B>
Hui Zhang,Gaetan Wicht,Christina Gretener,Matthias Nagel,Frank Nuesch,Yaroslav Romanyuk,Jean-Nicolas Tisserant,Roland Hany,Solar Energy Materials & Solar Cells,2013,118,157-164に基づいて合成した、以下の化学構造を有する化合物を使用した。
【0070】
【0071】
<溶剤>
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
MB:3-メトキシ-1-ブタノール
【0072】
<赤色着色剤分散液Aの調製>
表1に記載のとおり、赤色着色剤Aを12.6質量部、分散剤として分散剤Aを固形分換算で3.2質量部、分散樹脂としてバインダー樹脂Aを固形分換算で4.2質量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート76.0質量部(分散剤及び分散樹脂由来の溶剤を含む。)及びプロピレングリコールモノメチルエーテル4.0質量部と、直径0.5mmのジルコニアビーズ225質量部をステンレス容器に充填し、ペイントシェーカーにて6時間分散処理を行った。分散終了後、フィルタによりビーズと分散液を分離して、赤色着色剤分散液Aを調製した。
【0073】
<赤色着色剤分散液Bの調製>
表1に記載のとおり、赤色着色剤B(C.I.ピグメントレッド177)を15.0質量部、分散剤として分散剤Aを固形分換算で2.0質量部、分散樹脂としてバインダー樹脂Aを固形分換算で6.0質量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート77.0質量部(分散剤及び分散樹脂由来の溶剤を含む。)と、直径0.5mmのジルコニアビーズ225質量部をステンレス容器に充填し、ペイントシェーカーにて6時間分散処理を行った。分散終了後、フィルタによりビーズと分散液を分離して、赤色着色剤分散液Bを調製した。
【0074】
<黄色着色剤分散液Aの調製>
表1に記載のとおり、黄色着色剤A(ランクセス社製 E4GN-GT(以下、「NiAzo-Y」と略す。))を11.4質量部、分散剤として分散剤Aを固形分換算で2.9質量部、分散樹脂としてバインダー樹脂Aを固形分換算で5.7質量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート80.0質量部(分散剤及び分散樹脂由来の溶剤を含む。)と、直径0.5mmのジルコニアビーズ225質量部をステンレス容器に充填し、ペイントシェーカーにて6時間分散処理を行った。分散終了後、フィルタによりビーズと分散液を分離して、黄色着色剤分散液Aを調製した。
【0075】
<黄色着色剤分散液Bの調製>
表1に記載のとおり、黄色着色剤B(C.I.ピグメントイエロー138)を11.4質量部、分散剤として分散剤Aを固形分換算で2.9質量部、分散樹脂としてバインダー樹脂Aを固形分換算で5.7質量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを76.0質量部(分散剤及び分散樹脂由来の溶剤を含む。)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルを4.0質量部と、直径0.5mmのジルコニアビーズ225質量部をステンレス容器に充填し、ペイントシェーカーにて6時間分散処理を行った。分散終了後、フィルタによりビーズと分散液を分離して、黄色着色剤分散液Bを調製した。
【0076】
<緑色着色剤分散液Aの調製>
表1に記載のとおり、緑色着色剤Aを9.9質量部、分散剤として分散剤Aを固形分換算で0.1質量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを72.0質量部(分散剤由来の溶剤を含む。)、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルを18.0質量部と、直径0.5mmのジルコニアビーズ225質量部とをステンレス容器に充填し、ペイントシェーカーにて6時間分散処理を行った。分散終了後、フィルタによりビーズと分散液を分離して、緑色着色剤分散液Aを調製した。
【0077】
<黒色着色剤分散液Aの調製>
表1に記載のとおり、黒色着色剤Aを5.6質量部、分散剤として分散剤Bを固形分換算で1.1質量部、分散樹脂としてバインダー樹脂Bを固形分換算で2.8質量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを72.4質量部(分散剤由来の溶剤を含む。)、及び3-メトキシ-1-ブタノールを18.1質量部と、直径0.5mmのジルコニアビーズ225質量部とをステンレス容器に充填し、ペイントシェーカーにて6時間分散処理を行った。分散終了後、フィルタによりビーズと分散液を分離して、黒色着色剤分散液Aを調製した。
【0078】
【0079】
<光重合性モノマーA>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物(新中村化学工業社製 A-9550)を使用した。
<光重合性モノマーB>
トリメチロールプロパントリアクリレート(共栄化学株式会社製 ライトアクリレートTMP-A)を使用した。
<光重合性モノマーC>
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートにヘキサメチレンジイソシアネートが結合したウレタン骨格を持つモノマー(日本化薬社製 DPHA-40H)を使用した。
【0080】
<光重合開始剤A>
以下の化学構造(4-アセトキシイミノ-5-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-5-オキソペンタン酸メチル)を有するオキシムエステル系化合物を使用した。
【0081】
【0082】
式中、OMeはメトキシ基を表す。
【0083】
<光重合開始剤B>
以下の化学構造を有するオキシムエステル系化合物を使用した。
【0084】
【0085】
<界面活性剤A>
メガファックF-554(DIC社製)を使用した。
<添加剤A>
BYK-330(ビックケミー社製)を使用した。
【0086】
<着色樹脂組成物の調製>
表2に記載の各成分を、記載の固形分比率で混合し、RORI、GORI、BORI、IR1ORI、IR2ORIの着色樹脂組成物を調製した。
【0087】
【0088】
<色特性の測定>
50mm角、厚さ0.7mmのガラス基板(AGC社製 AN100)上に、各実施例で得られた着色樹脂組成物をスピンコート法で塗布し、減圧乾燥させた後、ホットプレート上にて90℃で90秒間プリベークした。次いで、2kW高圧水銀灯により、40mJ/cm
2の露光量、照度30mW/cm
2で全面露光処理を行った。その後、0.04質量%水酸化カリウム水溶液を使用し、現像液温度23℃で60秒間現像処理を行った。次いで、1kg/cm
2の水圧で10秒間スプレー水洗処理を行った。その後、クリーンオーブンにて230℃で20分間の熱硬化処理を行い、着色基板を作成した。
得られた着色基板について、日立製作所社製分光光度計U-3310により透過スペクトルを測定した。その結果を
図4に示す。
【0089】
図4の透過スペクトルは、以下の式で示すマトリックス演算を信号処理部で行うことによって光波長600-700nmのみを透過するR
CVT、光波長500-600nmのみを透過するG
CVT、光波長400-500nmのみを透過するB
CVT、光波長700-800nmのみを透過するIR1
CVT、光波長800-900nmのみを透過するIR2
CVTに変換することができる。
【0090】
なお、本明細書において、「XからY」又は「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意味とともに、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
本発明によれば、被写体の画像の色再現性をより高めた高精度のカラー画像を取得することができ、IR1とIR2の近赤外画像も同時に取得できる撮像素子を提供することができる。
1 カメラシステム、2 光学部、3 撮像素子、31 マイクロレンズ、32 カラーフィルタ、321 IRカットフィルタ層、322 特定波長透過フィルタ層、322a Rフィルタ層、322b Gフィルタ層、322c Bフィルタ層、321d IR1フィルタ層、322e IR2フィルタ層、33 配線部、PD1~PD5 光電変換部、4 信号処理部