(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075955
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】炭素繊維強化プラスチック用エポキシ樹脂組成物及び硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/24 20060101AFI20240529BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20240529BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240529BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20240529BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
C08G59/24
C08G59/40
C08L63/00 Z
C08K7/06
C08K5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187244
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 寛之
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4J002CD051
4J002DA016
4J002EF127
4J002EJ037
4J002EJ047
4J002EN047
4J002ER027
4J002EU117
4J002EU137
4J002EV297
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD147
4J002GT00
4J036AC01
4J036AC09
4J036DA01
4J036DB05
4J036DB15
4J036DC02
4J036DC31
4J036DC41
4J036GA02
4J036GA03
4J036JA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】機械物性、特に弾性率と強度に優れ、炭素繊維強化プラスチック用途に適したエポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される化合物を主成分として含有する、炭素繊維強化プラスチック用エポキシ樹脂組成物。
(上記式(1)中、R
1~R
8はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数1~10のアルコキシ基を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物を主成分として含有する、炭素繊維強化プラスチック用エポキシ樹脂組成物。
【化1】
(上記式(1)中、R
1~R
8はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数1~10のアルコキシ基を表す。ただし、R
2及びR
7はグリシジル基を含まない。また、Xは炭素数1~10の脂肪族炭化水素基から選ばれる2価の連結基を表す。)
【請求項2】
エポキシ当量が163g/当量以上300g/当量以下である、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記式(1)中、R1~R8のうちいずれか6つ以上が水素原子を表す、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
更に硬化剤を含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
更に炭素繊維を含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記硬化剤が、多官能フェノール類、アミン系化合物、酸無水物系化合物、イミダゾール系化合物、アミド系化合物、カチオン重合開始剤及び有機ホスフィン類からなる群のうちの少なくとも1つである、請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性率、強度に優れた炭素繊維強化プラスチック用エポキシ樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、機械的強度、耐熱性、耐湿性、電気特性等に優れた硬化物を与えるために電気・電子部品の封止材料、成形材料、注型材料、積層材料、複合材料、接着剤及び塗料等の幅広い分野に利用されている。
その中でも、複合材料分野では炭素繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂として、機械特性、耐熱性及び炭素繊維との接着性に優れるエポキシ樹脂が広く利用されている。
【0003】
炭素繊維強化プラスチックはスポーツ・レジャー用途での採用から始まったが、軽量でありながら高強度・高剛性であるという特徴から、近年関心が高まっている環境問題を解決するための材料として、自動車、航空機及び風力発電ブレード等の様々な産業へとその用途を拡大しており、今後さらなる発展が期待される。それに合わせて、マトリックス樹脂として利用されるエポキシ樹脂にもより一層の性能向上が求められている。
【0004】
各分野において求められる性能向上に対応するため、これまでに様々な構造のエポキシ樹脂が開発されてきた。そんな中、ベンゾフェノン骨格は高い平面性を有することや、水素結合可能なカルボニル基をもつ等の特徴を有することから注目され、ベンゾフェノン骨格を有するエポキシ樹脂の開発が行われてきた。
【0005】
例えば、特許文献1ではベンゾフェノン骨格を有するエポキシ樹脂が硬化性、貯蔵安定性及び接着性に優れる樹脂として開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法で得られるベンゾフェノン骨格を有するエポキシ樹脂を硬化させた硬化物は、弾性率や強度が低く、優れた機械物性を要求される炭素繊維強化プラスチック用途に適用するには課題があった。
したがって、本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、機械物性、特に弾性率と強度に優れ、炭素繊維強化プラスチック用途に適したエポキシ樹脂組成物と、その硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、2,2’位にグリシジルオキシ基をもつベンゾフェノン骨格を有するエポキシ化合物を含有するエポキシ樹脂組成物において、その硬化物が機械物性、特に弾性率と強度に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は以下の[1]~[6]の通りである。
[1]下記式(1)で表される化合物を主成分として含有する、炭素繊維強化プラスチック用エポキシ樹脂組成物。
【化1】
(上記式(1)中、R
1~R
8はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数1~10のアルコキシ基を表す。ただし、R
2及びR
7はグリシジル基を含まない。また、Xは炭素数1~10の脂肪族炭化水素基から選ばれる2価の連結基を表す。)
[2]エポキシ当量が163g/当量以上300g/当量以下である、[1]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[3]前記式(1)中、R
1~R
8のうちいずれか6つ以上が水素原子を表す、[1]又は[2]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[4]更に硬化剤を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
[5]更に炭素繊維を含む、[1]~[4]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
[6]前記硬化剤が、多官能フェノール類、アミン系化合物、酸無水物系化合物、イミダゾール系化合物、アミド系化合物、カチオン重合開始剤及び有機ホスフィン類からなる群のうちの少なくとも1つである、[4]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[7][4]~[6]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機械物性、特に弾性率と強度に優れた、炭素繊維強化プラスチック用途に適したエポキシ樹脂組成物、及びその硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の説明は本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
なお、当業界では、本実施形態のエポキシ樹脂と異なるエポキシ樹脂をさらに含む混合物を「エポキシ樹脂組成物」と表現することもあるが、単に「エポキシ樹脂」と呼称することもある。
【0011】
〔エポキシ樹脂組成物(A)〕
エポキシ樹脂組成物(A)は、下記式(1)で表されるエポキシ樹脂化合物(以下、「エポキシ樹脂(1)」と略記することがある)を含む。
【化2】
【0012】
上記式(1)中、R1~R8はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~10のアルキル基又は炭素数1~10のアルコキシ基を表す。ただし、R2及びR7はグリシジル基を含まない。また、Xは炭素数1~10の脂肪族炭化水素基から選択される2価の連結基を表す。
【0013】
[化学構造]
エポキシ樹脂(1)を表す上記式(1)中、R1~R8はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~10のアルキル基又は炭素数1~10のアルコキシ基である。R1、R3~R6及びR8はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、及びエトキシ基が好ましく、より好ましくは水素原子である。R2及びR7はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基が好ましく、より好ましくは水素原子又はメトキシ基である。また、Xは炭素数1~10の脂肪族炭化水素基から選択される2価の連結基であり、好ましくはアルキル基であり、より好ましくはメチレン基又はエチレン基であり、更に好ましくはメチレン基である。
【0014】
[WPE(エポキシ当量)]
エポキシ樹脂(1)は、WPEが163g/当量以上300g/当量以下であることが好ましい。エポキシ樹脂(1)のWPEが上記範囲であることで、エポキシ樹脂(1)を含む硬化物の機械物性が向上する。WPEの上限値は300g/当量以下であるが、270g/当量以下が好ましく、より好ましくは240g/当量以下である。
【0015】
[その他の液状エポキシ樹脂]
エポキシ樹脂組成物(A)は、エポキシ樹脂(1)を主成分として含む。ここでいう「主成分」とは、エポキシ樹脂組成物(A)中で最も多い割合(質量割合)である成分をいう。エポキシ樹脂組成物(A)中、エポキシ樹脂(1)を40質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことが更に好ましい。
エポキシ樹脂組成物(A)は、取扱い性向上のため、エポキシ樹脂(1)の構造とは異なる構造である常温で液状であるエポキシ樹脂(以下、単に「その他の液状エポキシ樹脂」と称す)を更に含んでいてもよい。その他の液状エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、その他の多官能フェノール型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、上記芳香族エポキシ樹脂の芳香環を水素添加したエポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂が挙
げられる。以上に挙げた他のエポキシ樹脂は1種のみで用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ただし、樹脂全体を100質量部とした時に、エポキシ樹脂(1)は5~60質量部含まれる。
【0016】
その他の液状エポキシ樹脂が、エポキシ樹脂(1)を溶解することでエポキシ樹脂組成物(A)の取扱い性が向上し、硬化物が作製しやすくなるため、樹脂全体を100質量部とした時に、60質量部以下含まれることが好ましい。また、その他の液状エポキシ樹脂が多すぎると、エポキシ樹脂(1)に由来する高弾性率、高強度の効果が薄くなるといった問題が生じるため、5質量部以上含まれることが好ましい。
【0017】
[エポキシ樹脂組成物(A)の製造方法]
エポキシ樹脂組成物(A)の製造方法は特に制限されないが、通常、下記式(2)で表せるベンゾフェノン骨格を有するフェノール化合物とエピハロヒドリンとを反応させて得ることができる。下記式(2)のフェノール化合物とエピハロヒドリンとを反応させることで、エポキシ樹脂(1)が生成し、エポキシ樹脂(1)を含むエポキシ樹脂組成物(A)が得られる。また、得られるエポキシ樹脂(1)を含むエポキシ樹脂組成物(A)は、エポキシ当量が163g/当量以上300g/当量以下であることが好ましい。
【化3】
上記式(2)中、R
1~R
8は前記式(1)におけるものと同義である。
【0018】
反応に用いるエピハロヒドリンの量は、上記式(2)で表されるフェノール化合物のフェノール性水酸基の活性水素1当量当たり、通常0.8~30当量、好ましくは0.9~20当量、より好ましくは1~15当量に相当する量である。エピハロヒドリンの量が上記下限以上であると反応を制御しやすく、適切な粘度とすることができるために好ましい。一方、エピハロヒドリンの量が上記上限以下であると生産効率が向上する傾向にあるために好ましい。なお、この反応におけるエピハロヒドリンとしては、通常、エピクロルヒドリン又はエピブロモヒドリンが用いられる。
【0019】
次いで、この溶液を攪拌しながら、アルカリ金属水酸化物を固体又は水溶液の状態で加えて反応させる。アルカリ金属水酸化物の量は、式(2)で表されるフェノール化合物のフェノール性水酸基の活性水素1当量当たり、通常0.5~3.0当量、好ましくは0.7~2.0当量、より好ましくは0.9~1.5当量に相当する量である。アルカリ金属水酸化物の量が上記下限以上であると、未反応のフェノール性水酸基と生成したエポキシ化合物が反応しにくく、反応を制御しやすいために好ましい。また、アルカリ金属水酸化物の量が上記上限以下であると、副反応による不純物が生成しにくいために好ましい。ここで用いられるアルカリ金属水酸化物としては、通常、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが挙げられる。
【0020】
この反応は、常圧下又は減圧下で行うことができ、反応温度は、好ましくは20~150℃であり、より好ましくは20~100℃であり、更に好ましくは30~90℃である。反応温度が上記下限以上であると反応を進行させやすく、かつ反応を制御しやすいため
に好ましい。また、反応温度が上記上限以下であると副反応が進行しにくく、特に塩素不純物を低減しやすいために好ましい。
【0021】
この反応において、必要に応じて所定の温度を保持しながら反応液を共沸させ、揮発する蒸気を冷却して得られた凝縮液を油相と水相に分離し、水分を除いて油分を反応系へ戻す方法により脱水する。アルカリ金属水酸化物の添加は、急激な反応を抑えるために、好ましくは0.1~8時間、より好ましくは0.1~7時間、更に好ましくは0.5~6時間かけて少量ずつを断続的又は連続的に添加する。添加時間が上記下限以上であると急激に反応が進行するのを防ぐことができ、反応温度の制御がしやすくなるために好ましい。添加時間が上記上限以下であると塩素不純物が生成しにくくなるために好ましく、また、経済性の観点からも好ましい。全反応時間は通常1~15時間である。反応終了後、不溶性の副生塩を濾別して除くか、水洗により除去した後、未反応のエピハロヒドリンを減圧留去して除くと、目的のエポキシ樹脂組成物(A)を得ることができる。
【0022】
また、この反応においては、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩;ベンジルジメチルアミン、2,4 ,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第三級アミン;2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール類;エチルトリフェニルホスホニウムアイオダイド等のホスホニウム塩;トリフェニルホスフィン等のホスフィン類等の触媒を用いてもよい。
【0023】
更に、この反応においては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;メトキシプロパノール等のグリコールエーテル類;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等の不活性な有機溶媒、及び水を使用してもよい。
【0024】
なお、上記のようにして得られたエポキシ樹脂組成物(A)の全塩素含有量を低減する必要がある場合には再処理して十分に全塩素含有量が低下した精製エポキシ樹脂組成物(A)を得ることができる。つまり、その粗製エポキシ樹脂組成物(A)を、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、ジオキサン、メトキシプロパノール、ジメチルスルホキシド等の不活性な有機溶媒に再溶解しアルカリ金属水酸化物を固体又は水溶液を加え、好ましくは20~120℃、より好ましくは30~110℃、更に好ましくは30~100℃の温度で、好ましくは0.1~15時間、より好ましくは0.3~12時間、更に好ましくは0.5~10時間再閉環反応を行った後、水洗等の方法で過剰のアルカリ金属水酸化物や副性塩を除去し、更に有機溶媒を減圧留去及び/又は水蒸気蒸留を行うと、加水分解性ハロゲン量が低減されたエポキシ樹脂組成物(A)を得ることができる。このとき、粗製エポキシ樹脂組成物(A)を溶解する有機溶媒は単一溶媒でもよいし、2種以上の混合溶媒であってもよい。反応温度が上記下限以上であり、また、反応時間が上記下限以上であると再閉環反応が進行しやすいために好ましい。また、反応温度が上記上限以下であり、また、反応時間が上記上限以下であると反応を制御しやすいために好ましい。
【0025】
〔エポキシ樹脂組成物(B)〕
エポキシ樹脂組成物(B)は、上記エポキシ樹脂組成物(A)と硬化剤とを含む。また、必要に応じて、他のエポキシ樹脂(エポキシ化合物)、硬化促進剤、その他の成分等を適宜配合することができる。
【0026】
[硬化剤]
硬化剤は、エポキシ化合物のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与す
る物質である。なお、本明細書においては通常、「硬化促進剤」と呼ばれるものであってもエポキシ化合物のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質であれば、硬化剤とみなすこととする。
硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂組成物(A)100質量部に対して好ましくは0.1~300質量部であり、より好ましくは250質量部以下であり、更に好ましくは200質量部以下であり、特に好ましくは150質量部以下である。
【0027】
硬化剤としては多官能フェノール類、アミン系化合物、酸無水物系化合物、イミダゾール系化合物、アミド系化合物、カチオン重合開始剤及び有機ホスフィン類からなる群のうちの少なくとも1つを用いることが好ましい。
多官能フェノール類の例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールB、ビスフェノールAD、ビスフェノールZ、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類、4,4’-ビフェノール、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビフェノール等のビフェノール類;カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ジヒドロキシナフタレン類;及びこれらの化合物の芳香環に結合した水素原子がハロゲン基、アルキル基、アリール基、エーテル基、エステル基、硫黄、リン、珪素等のヘテロ元素を含む有機置換基等の非妨害性置換基で置換されたもの等が挙げられる。更に、これらのフェノール類やフェノール、クレゾール、アルキルフェノール等の単官能フェノール類とアルデヒド類の重縮合物であるノボラック類、レゾール類等が挙げられる。これらは1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
アミン系化合物の例としては、脂肪族の一級、二級、三級アミン、芳香族の一級、二級、三級アミン、環状アミン、グアニジン類、尿素誘導体等があり、具体的には、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルエーテル、メタキシレンジアミン、ジシアンジアミド、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-5-ノネン、ジメチル尿素、グアニル尿素等が挙げられる。これらは1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
酸無水物系化合物の例としては、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸と不飽和化合物の縮合物等が挙げられる。これらは1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
イミダゾール系化合物の例としては、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール等が挙げられる。これらは1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、イミダゾール類は後述する硬化促進剤としての機能も果たすが、本明細書においては硬化剤に分類するものとする。
【0031】
アミド系化合物の例としては、ジシアンジアミド及びその誘導体、ポリアミド樹脂等が挙げられる。これらは1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
カチオン重合開始剤は、熱又は活性エネルギー線照射によってカチオンを発生するものであり、芳香族オニウム塩等が挙げられる。具体的には、SbF6
-、BF4
-、AsF6
-、PF6
-、CF3SO3
2-、B(C6F5)4
-等のアニオン成分とヨウ素、硫黄、窒素、リン等の原子を含む芳香族カチオン成分とからなる化合物等が挙げられる。特に、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルフォニウム塩が好ましい。これらは1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
有機ホスフィン類としては、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等が例示され、ホスホニウム塩としては、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレート等が例示され、テトラフェニルボロン塩としては、2-エチル-4-メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N-メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等が例示される。これらは1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
多官能フェノール類、アミン系化合物、酸無水物系化合物を用いる場合は、エポキシ樹脂組成物(B)中の全エポキシ基に対する硬化剤中の官能基(多官能フェノール類の水酸基、アミン系化合物のアミノ基又は酸無水物系化合物の酸無水物基)の当量比で0.8~1.5の範囲となるように用いることが好ましい。イミダゾール系化合物を用いる場合、固形分としての全エポキシ樹脂成分100質量部に対して0.5~10質量部の範囲で用いることが好ましい。アミド系化合物を用いる場合、固形分としての全エポキシ樹脂成分とアミド系化合物との合計量に対して0.1~20質量%の範囲で用いることが好ましい。カチオン重合開始剤を用いる場合、固形分としての全エポキシ樹脂成分100質量部に対し、0.01~15質量部の範囲で用いることが好ましい。有機ホスフィン類を用いる場合、固形分としての全エポキシ樹脂成分と有機ホスフィン類との合計量に対して0.1~20質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0035】
エポキシ樹脂組成物(B)には以上に挙げた硬化剤の他、例えば、メルカプタン系化合物、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体等も硬化剤として用いることができる。これらの硬化剤は1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
[溶剤]
エポキシ樹脂組成物(B)において、粘度を調整したい場合等には溶剤を用いてもよい。なお、本明細書においては「溶剤」という語と前述の「溶媒」という語をその使用形態により区別して用いるが、それぞれ独立して同種のものを用いても異なるものを用いてもよい。
用いることのできる溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ヘキサン、シクロヘキサン等のアルカン類、トルエン、キシレン等の芳香族類等が挙げられる。以上に挙げた溶剤は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
【0037】
[その他の成分]
エポキシ樹脂組成物(B)には以上に挙げた成分以外に、その他の成分を含有することができる。その他の成分としては例えば、硬化促進剤(ただし、前記硬化剤に該当するものを除く。)、カップリング剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、反応性希釈剤、顔料、無機充填材、有機充填材等が挙げられる。以上に挙げたその他の成分はエポキシ樹脂組成物(B)の所望の物性により適宜組み合わせて用いることができる。
【0038】
[硬化物]
エポキシ樹脂組成物(B)を硬化させることにより、硬化物を得ることができる。ここ
でいう「硬化」とは熱及び/又は光等によりエポキシ樹脂組成物(B)を意図的に硬化させることを意味するものであり、その硬化の程度は所望の物性、用途により制御すればよい。また、硬化の程度は完全硬化の状態であっても、半硬化の状態であってもよいが、エポキシ基と硬化剤の硬化反応の反応率として、通常、5~99%である。
【0039】
エポキシ樹脂組成物(B)を硬化物とする際のエポキシ樹脂組成物(B)の硬化方法は、エポキシ樹脂組成物(B)中の配合成分や配合量によっても異なるが、通常、60~200℃で60~180分の加熱条件が挙げられる。硬化反応を十分に進行させたい場合には、60~160℃で10~30分の一次加熱と、一次加熱温度よりも40~120℃高い100~200℃で60~150分の二次加熱との二段処理で行うことが好ましい。
硬化物を半硬化物として製造する際には、加熱等により形状が保てる程度にエポキシ樹脂組成物(B)の硬化反応を進行させればよい。エポキシ樹脂組成物(B)が溶剤を含んでいる場合には、加熱、減圧、風乾等の手法で大部分の溶剤を除去するが、半硬化物中に5質量%以下の溶剤を残留させてもよい。
【0040】
〔用途〕
エポキシ樹脂組成物(A)及びエポキシ樹脂組成物(B)は、硬化させた際の機械物性、特に弾性率と強度に優れる。これらの優れた効果を奏するため、炭素繊維強化プラスチックの分野において好適に用いることができる。
【実施例0041】
以下、実施例を用いて本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0042】
[実施例1]
・エポキシ樹脂組成物(A―1)の合成
撹拌装置、還流冷却管及び温度計を備えた容量3Lの4つ口フラスコに2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン(東京化成工業株式会社製)156g、エピクロルヒドリン(水酸基の活性水素1当量当たり12.0当量)1265g、2-プロパノール(エピクロルヒドリン1当量当たり0.6当量)492g、水(エピクロルヒドリンと2-プロパノールの混合物の単位質量当たり0.1当量)176gを仕込み、均一に分散した後、40℃~65℃まで90分間かけて昇温しながら、48.5質量%水酸化ナトリウム(水酸基の活性水素1当量当たり1.15当量)水溶液109gを150分間かけて滴下した。その後、65℃で30分間保持して反応を完了し、水洗により副製塩及び過剰の水酸化ナトリウムを除去した。生成物から減圧下で過剰のエピクロルヒドリンと2-プロパノールを留去して、粗エポキシ樹脂組成物を得た。
【0043】
この粗エポキシ樹脂組成物をシクロヘキサノンに溶解し、48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液40gを加え、65℃で1時間反応させた。反応液に第一リン酸水素ナトリウム水溶液を加えて過剰の水酸化ナトリウムを中和し、水洗して副生塩を除去した。次いで、加温減圧下でシクロヘキサノンを完全に除去することにより目的のエポキシ樹脂組成物(A-1)196gを得た。得られたエポキシ樹脂組成物中の、エポキシ化合物のエポキシ当量は232g/当量であった。
このエポキシ樹脂組成物(A-1)を用い、以下に示す方法により樹脂板を作成し、硬化物の機械物性を評価した。その結果を表-1に示す。
【0044】
・エポキシ樹脂組成物(B-1)の製造
エポキシ樹脂組成物(A-1)60質量部とビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製 jER(登録商標)828)40質量部とを混合し、80℃で20分間攪拌した後、60℃まで温度を下げて変性芳香族アミン系硬化剤(三菱ケミカル株式会社製jERキュア(登録商標)WA)を混合(エポキシ樹脂組成物(A-1)のエポキシ基1モルに対して変性芳香族アミン系硬化剤が1.0モルとなるように混合)し、5分間攪拌してエポキシ樹脂組成物(B-1)を得た。
【0045】
・樹脂板(硬化物)の作成
ガラス板の片面に離型PETフィルムを貼り付けたものを2枚用意し、その内の1枚を、フィルムを貼り付けた側が上にくるように置いた。この上にシリコン製チューブをU字型にセットし、またガラス板の四隅に金属製スペーサーを置いた上で、もう1枚のフィルム付ガラス板をフィルム側が向かい合うようにして重ね合わせ、小型万力で2枚のガラス板を固定して硬化物作成用の型を準備した。なお樹脂板の厚みは4mmとなるように使用する金属スペーサーとシリコンチューブを選んだ。次にエポキシ樹脂組成物(B-1)をホットプレート上で80℃に加熱し、減圧下で脱泡した後、準備した型の中に流し入れ、セーフベンドライヤー中、100℃で2時間、更に175℃で4時間加熱して硬化させることで樹脂板を得た。
【0046】
・エポキシ当量の測定
エポキシ当量は、「1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量」と定義され、JIS K7236に準じて測定した。
・機械物性評価:曲げ試験
厚さ4mmの樹脂板を長さ100mm、幅10mmに切り出し、切り出した面をサンドペーパー#1200で処理して試験片を作製した。この試験片について、インストロン社製 精密万能試験機「INSTRON 5582型」を使用し、JIS K7161に準じて、温度23℃、湿度50%RHの環境下、3点曲げ治具で曲げ試験を行い、曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した。
【0047】
[実施例2]
・エポキシ樹脂組成物(A-2)の合成
2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン(東京化成工業株式会社製)の代わりに、2,2’-ジヒドロキシベンゾフェノン(東京化成工業株式会社製)を使用したこと以外はエポキシ樹脂組成物(A-1)の合成と同様にしてエポキシ樹脂組成物(A-2)を得た。得られたエポキシ樹脂組成物中の、エポキシ化合物のエポキシ当量は184g/当量であった。
また、エポキシ樹脂組成物(A-1)の代わりに、エポキシ樹脂組成物(A-2)を使用してエポキシ樹脂組成物(B-2)を作成したこと以外は、実施例1と同様に硬化物を作成し、機械物性を評価した。その結果を表-1に示す。
【0048】
[実施例3]
・エポキシ樹脂組成物(A-3)の合成
2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン(東京化成工業株式会社製)の代わりに、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(東京化成工業株式会社製)を使用したこと以外はエポキシ樹脂組成物(A-1)の合成と同様にしてエポキシ樹脂組成物(A-3)を得た。得られたエポキシ樹脂組成物中の、エポキシ化合物のエポキシ当量は209g/当量であった。
また、エポキシ樹脂組成物(A-1)の代わりに、エポキシ樹脂組成物(A-3)を使用してエポキシ樹脂組成物(B-3)を作成したこと以外は、実施例1と同様に硬化物を作成し、機械物性を評価した。その結果を表-1に示す。
【0049】
[実施例4]
・エポキシ樹脂組成物(B-4)の製造
エポキシ樹脂組成物(A-3)60質量部とビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製 jER(登録商標)828)40質量部とを混合し、80℃で20分間攪拌した後、60℃まで温度を下げてジシアンジアミド微粉砕品(三菱ケミカル株式会社製jERキュア(登録商標)DICY7)と促進剤である3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(東京化成工業株式会社製)を混合し、5分間攪拌してエポキシ樹脂組成物(B-4)を得た。
【0050】
・樹脂板(硬化物)の作成
ガラス板の片面に離型PETフィルムを貼り付けたものを2枚用意し、その内の1枚を、フィルムを貼り付けた側が上にくるように置いた。この上にシリコン製チューブをU字型にセットし、またガラス板の四隅に金属製スペーサーを置いた上で、もう1枚のフィルム付ガラス板をフィルム側が向かい合うようにして重ね合わせ、小型万力で2枚のガラス板を固定して硬化物作成用の型を準備した。なお樹脂板の厚みは4mmとなるように使用する金属スペーサーとシリコンチューブを選んだ。次にエポキシ樹脂組成物(B-4)をホットプレート上で60℃に加熱し、減圧下で脱泡した後、準備した型の中に流し入れ、セーフベンドライヤー中、80℃で1時間、更に130℃で1.5時間加熱して硬化させることで樹脂板を得た。その後、機械物性を評価した。その結果を表-1に示す。
【0051】
[比較例1]
・エポキシ樹脂組成物(A-4)の合成
2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン(東京化成工業株式会社製)の代わりに、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン(東京化成工業株式会社製)を使用したこと以外はエポキシ樹脂組成物(A-1)の合成と同様にしてエポキシ樹脂組成物(A-4)を得た。得られたエポキシ樹脂組成物中の、エポキシ化合物のエポキシ当量は183g/当量であった。
また、エポキシ樹脂組成物(A-1)の代わりに、エポキシ樹脂組成物(A-4)を使用してエポキシ樹脂組成物(B-5)を作成したこと以外は、実施例1と同様に硬化物を作成し、機械物性を評価した。その結果を表-1に示す。
【0052】
[比較例2]
・エポキシ樹脂組成物(A-5)の合成
2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン(東京化成工業株式会社製)の代わりに、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン(東京化成工業株式会社製)を使用したこと以外はエポキシ樹脂組成物(A-1)の合成と同様にしてエポキシ樹脂組成物(A-5)を得た。得られたエポキシ樹脂組成物中の、エポキシ化合物のエポキシ当量は191g/当量であった。
また、エポキシ樹脂組成物(A-1)の代わりに、エポキシ樹脂組成物(A-5)を使用してエポキシ樹脂組成物(B-6)を作成したこと以外は、実施例1と同様に硬化物を作成し、機械物性を評価した。その結果を表-1に示す。
【0053】
[比較例3]
エポキシ樹脂組成物(A-1)の代わりに、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ化合物(三菱ケミカル株式会社製 jER(登録商標)604 エポキシ当量118)を使用してエポキシ樹脂組成物(B-7)を作成したこと以外は、実施例1と同様に硬化物を作成し、機械物性を評価した。その結果を表-1に示す。
【0054】
[比較例4]
エポキシ樹脂組成物(A-3)を使用せず、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三
菱ケミカル株式会社製 jER(登録商標)828)100質量部を使用してエポキシ樹脂組成物(B-8)を作成したこと以外は、実施例4と同様に硬化物を作成し、機械物性を評価した。その結果を表-1に示す。
【0055】
[比較例5]
エポキシ樹脂組成物(A-3)の代わりに、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製 jER(登録商標)807)を使用してエポキシ樹脂組成物(B-9)を作成したこと以外は、実施例4と同様に硬化物を作成し、機械物性を評価した。その結果を表-1に示す。
【0056】
【0057】
[評価結果]
表-1に示すように実施例1~3は比較例1と比べて弾性率が良好であることが分かる。
また、4,4’位にグリシジル基があるエポキシ樹脂を使用した比較例2では弾性率が最も劣る結果であることが分かる。さらに、実施例1~3は4官能のグリシジルアミン型エポキシ樹脂を使用した比較例3と比べても弾性率が良好であることが分かる。
また、実施例4ではジシアンジアミド微粉砕品(三菱ケミカル株式会社製jERキュア(登録商標)DICY7)を硬化剤に用いることで、弾性率が4GPaを超えた。これは同様にジシアンジアミド微粉砕品(三菱ケミカル株式会社製jERキュア(登録商標)DICY7)を硬化剤に用いた比較例4、5と比べても良好であることが分かる。
また、実施例1~3は比較例1~3と比べて曲げ強度が良好であることが分かる。同様に、実施例4は比較例4、5と比べて曲げ強度が良好であることが分かる。
以上から、2,2’位にグリシジル基を持つ骨格は、他の置換位置にグリシジル基を持つ骨格よりも特異的に高い弾性率及び強度を示す事が分かる。