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特開2024-75960主剤、二液型塗床形成材、塗床の形成方法、塗床、及び塗床構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075960
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】主剤、二液型塗床形成材、塗床の形成方法、塗床、及び塗床構造体
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20240529BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20240529BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20240529BHJP
   C08G 18/12 20060101ALI20240529BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20240529BHJP
   C09D 175/08 20060101ALI20240529BHJP
   E04F 15/12 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
C09D175/04
C08G18/48 004
C08G18/75 010
C08G18/12
C08G18/32 037
C09D175/08
E04F15/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187251
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】西村 紀夫
(72)【発明者】
【氏名】松本 高志
(72)【発明者】
【氏名】山崎 理恵
(72)【発明者】
【氏名】入江 博美
【テーマコード(参考)】
2E220
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
2E220AA16
2E220AA25
2E220AA44
2E220AB10
2E220AC05
2E220AC11
2E220CA80
2E220EA01
2E220GA35X
2E220GB32X
2E220GB37X
4J034BA07
4J034CA15
4J034CC12
4J034CC52
4J034CC61
4J034CC65
4J034CC67
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA42
4J034QB13
4J034QB14
4J034RA10
4J038DG131
4J038DG271
4J038JB06
4J038KA03
4J038KA08
4J038KA09
4J038KA10
4J038LA06
4J038MA14
4J038NA11
4J038PB05
(57)【要約】
【課題】イソホロンジイソシアネートを用いた主剤であって、高い引張強さと適度な伸びを両立できる塗床を形成可能な主剤を提供すること。
【解決手段】ポリオールとイソホロンジイソシアネートとの反応物である末端イソシアネート基ウレタンプレポリマーを含有する、二液型塗床形成材用の主剤であって、ポリオールがジオール及びトリオールを含み、ポリオール中の分子量が1500以上のジオールの含有量が5当量%以下であり、ウレタンプレポリマーにおけるイソシアネート基の含有量が4.5~8.5質量%である、主剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールとイソホロンジイソシアネートとの反応物である末端イソシアネート基ウレタンプレポリマーを含有する、二液型塗床形成材用の主剤であって、
前記ポリオールがジオール及びトリオールを含み、
前記ポリオール中の分子量が1500以上のジオールの含有量が5当量%以下であり、
前記ウレタンプレポリマーにおけるイソシアネート基の含有量が4.5~8.5質量%である、主剤。
【請求項2】
前記ジオールがポリオキシアルキレングリコールを含み、前記トリオールがポリオキシアルキレントリオールを含む、請求項1に記載の主剤。
【請求項3】
前記ポリオール中の分子量が1500未満のジオールの含有量が45当量%以上である、請求項1に記載の主剤。
【請求項4】
前記ポリオール中の前記トリオールの含有量が15当量%以上である、請求項1に記載の主剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の主剤と、
活性水素を有する化合物を含有する硬化剤と、を備える、二液型塗床形成材。
【請求項6】
前記硬化剤における活性水素当量に対する前記主剤におけるイソシアネート基当量の比が0.9~1.3である、請求項5に記載の二液型塗床形成材。
【請求項7】
被塗床部に対して、請求項1~4のいずれか一項に記載の主剤と、活性水素を有する化合物を含有する硬化剤とを混合して塗工する工程を備える、塗床の形成方法。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項に記載の主剤と、活性水素を有する化合物を含有する硬化剤との反応物を含む、塗床。
【請求項9】
被塗床部と、
前記被塗床部上に形成された請求項8に記載の塗床と、を備える、塗床構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主剤、二液型塗床形成材、塗床の形成方法、塗床、及び塗床構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタンの塗床は、学校、病院、高齢者施設等においてしばしば用いられ、コンクリート構造物の床を被覆するように施工される。ウレタンの塗床は、その柔軟性により、下地のコンクリートの動きやひび割れに追従し、亀裂が生じにくくシームレスを保持できると共に、耐衝撃性及び摩耗性に優れ、滑り難いという利点を有している。
【0003】
ウレタンの塗床は、一般的に、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより得られるウレタンプレポリマーを含む主剤と、硬化剤とを混合することにより形成される。当該ポリイソシアネートとしては、従来、トリレンジイソシアネート(TDI)が用いられてきたが、TDIは特定化学物質に指定されているため、TDIをできる限り使用しないことが望ましい。これに対し、例えば特許文献1には、ポリイソシアネートとポリオールからなるイソシアネート基末端プレポリマーを含む主剤であって、当該ポリイソシアネートがイソホロンジイソシアネートを含む主剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6706887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウレタンの塗床には高い引張強さと適度な伸びが求められるが、本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載されているようなイソホロンジイソシアネートを用いた主剤から得られる塗床においては、高い引張強さと適度な伸びの両立の点で改善の余地がある。
【0006】
そこで、本発明の一側面は、イソホロンジイソシアネートを用いた主剤であって、高い引張強さと適度な伸びを両立できる塗床を形成可能な主剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、イソホロンジイソシアネートを用いた主剤において、ポリオールとしてジオール及びトリオールを用い、分子量が1500以上のジオールの含有量を特定値以下にすると共に、ウレタンプレポリマーにおけるイソシアネート基の含有量を特定の範囲とすることにより、高い引張強さと適度な伸びを両立できることを見出した。
【0008】
本発明は、以下の側面を含む。
[1] ポリオールとイソホロンジイソシアネートとの反応物である末端イソシアネート基ウレタンプレポリマーを含有する、二液型塗床形成材用の主剤であって、ポリオールがジオール及びトリオールを含み、ポリオール中の分子量が1500以上のジオールの含有量が5当量%以下であり、ウレタンプレポリマーにおけるイソシアネート基の含有量が4.5~8.5質量%である、主剤。
[2] ジオールがポリオキシアルキレングリコールを含み、トリオールがポリオキシアルキレントリオールを含む、[1]に記載の主剤。
[3] ポリオール中の分子量が1500未満のジオールの含有量が45当量%以上である、[1]又は[2]に記載の主剤。
[4] ポリオール中のトリオールの含有量が15当量%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の主剤。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の主剤と、活性水素を有する化合物を含有する硬化剤と、を備える、二液型塗床形成材。
[6] 硬化剤における活性水素当量に対する主剤におけるイソシアネート基当量の比が0.9~1.3である、[5]に記載の二液型塗床形成材。
[7] 被塗床部に対して、[1]~[4]のいずれかに記載の主剤と、活性水素を有する化合物を含有する硬化剤とを混合して塗工する工程を備える、塗床の形成方法。
[8] [1]~[4]のいずれかに記載の主剤と、活性水素を有する化合物を含有する硬化剤との反応物を含む、塗床。
[9] 被塗床部と、被塗床部上に形成された[8]に記載の塗床と、を備える、塗床構造体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一側面によれば、イソホロンジイソシアネートを用いた主剤であって、高い引張強さと適度な伸びを両立できる塗床を形成可能な主剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ポリオールとイソホロンジイソシアネートとの反応物である末端イソシアネート基ウレタンプレポリマー(以下、単に「ウレタンプレポリマー」ともいう)を含有する、二液型塗床形成材用の主剤である。
【0011】
ウレタンプレポリマーは、ポリオールとイソホロンジイソシアネートとを反応させることにより得られる。ポリオール及びイソホロンジイソシアネートを反応させる際、ウレタンプレポリマーが末端にイソシアネート基を有するように、ポリオールの水酸基に対するイソホロンジイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH当量比)が調整される。NCO/OH当量比は、1.5以上、1.6以上、又は1.7以上であってよく、主剤と硬化剤との混合初期の増粘を抑制することで塗工が容易となり、優れたレベリング性及び消泡性が得られる観点から、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.95以下である。
【0012】
ポリオールは、ジオール及びトリオールを含む。ジオールは、好ましくは、ポリオキシアルキレングリコールを含む。ポリオキシアルキレングリコールは、好ましくは、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールから選ばれる少なくとも一種を含む。
【0013】
ポリオール中のジオールの含有量は、ポリオール全量を基準として、45当量%以上、50当量%以上、又は55当量%以上であり、85当量%以下、70当量%以下、又は65当量%以下であってよい。
【0014】
ジオールは、好ましくは、分子量が1500未満のジオールである。ポリオール中の分子量が1500未満のジオールの含有量は、塗床の伸びと強度のバランスを取る観点から、ポリオール全量を基準として、好ましくは45当量%以上、より好ましくは50当量%以上、更に好ましくは55当量%以上であり、85当量%以下、80当量%以下、又は75当量%以下であってよい。
【0015】
ポリオール中の分子量が1500以上のジオールの含有量は、塗床の伸びが大きくなりすぎることを抑制する観点から、少なくなっており、具体的には、ポリオール全量を基準として、5当量%以下であり、好ましくは3当量%以下、より好ましくは1当量%以下、更に好ましくは0.5当量%以下、特に好ましくは0当量%である(すなわち、ポリオールは分子量が1500以上のジオールを含まない)。
【0016】
トリオールは、好ましくは、ポリオキシアルキレントリオールを含む。ポリオキシアルキレングリコールは、好ましくはポリオキシプロピレントリオールを含む。ポリオール中のトリオールの含有量は、塗床の引張強さが更に優れる観点から、ポリオール全量を基準として、好ましくは15当量%以上、より好ましくは20当量%以上、更に好ましくは25当量%以上であり、55当量%以下、50当量%以下、又は45当量%以下であってよい。
【0017】
トリオールは、塗床の引張強さが更に優れ、伸びが低くなりすぎない観点から、好ましくは分子量が1500以上のトリオールを含むことがより好ましい。
【0018】
ポリオール中の分子量が1500以上のトリオールの含有量は、塗床の引張強さが更に優れる観点から、ポリオール全量を基準として、好ましくは10当量%以上、より好ましくは15当量%以上、更に好ましくは20当量%以上であり、50当量%以下、45当量%以下、又は40当量%以下であってよい。
【0019】
ポリオール中の分子量が1500未満のトリオールの含有量は、ポリオール全量を基準として、1当量%以上、3当量%以上、又は5当量%以上であってよく、伸びが低くなりすぎない観点から、好ましくは20当量%以下、より好ましくは15当量%以下、更に好ましくは10当量%以下であってよい。
【0020】
イソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネートが必須であるが、イソホロンジイソシアネートに加えて、その他のイソシアネートが更に含まれていてもよい。その他のイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアナート、ノルボルネンジイソシアナート、水添化トリレンジイソシアナート、水添化キシリレンジイソシアナート、水添化ジフェニルメタンジイソシアナート、水添化テトラメチルキシリレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、テトラメチルキシリレンジイソシアナートが挙げられる。ただし、トリレンジイソシアネートは特定化学物質に指定されているため、イソシアネートはトリレンジイソシアネートを含まないことが好ましい。
【0021】
ウレタンプレポリマーにおけるイソシアネート基の含有量は、塗床の引張強さ及び伸びを高くする観点から、ウレタンプレポリマー全量を基準として、4.5~8.5質量%である。当該含有量の下限値は、塗床の引張強さを更に高くする観点から、4.8質量%、5.0質量%、5.5質量%、5.8質量%、又は6.0質量%であってもよい。当該含有量の上限値は、塗床の伸びを更に高くする観点から、8.0質量%、7.7質量%、7.5質量%、6.5質量%、又は6.1質量%であってもよい。
【0022】
主剤は、ウレタンプレポリマーに加えて、溶剤を更に含有してもよい。溶剤は、例えば、炭化水素溶剤であってよく、ナフテン系炭化水素溶剤であってよい。これらの炭化水素溶剤は、環境対応炭化水素溶剤であってもよい。
【0023】
ウレタンプレポリマーの含有量は、主剤全量を基準として、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は95質量%以上であってよく、100質量%であってもよい。
【0024】
以上説明した主剤は、硬化剤と組み合わせられて、二液型塗床形成材として用いられる。すなわち、本発明の他の一実施形態は、上述した主剤と硬化剤とを備える二液型塗床形成材である。
【0025】
硬化剤は、活性水素を有する化合物を含有する。活性水素を有する化合物は、アミンであってよく、好ましくはポリアミンであり、より好ましくは芳香族ポリアミンである。芳香族ポリアミンは、好ましくは、ジエチルトルエンジアミンを含む。芳香族ポリアミンは、ジエチルトルエンジアミンに加えて、その他の芳香族ポリアミンを更に含んでもよい。その他の芳香族ポリアミンとしては、4,4’-メチレンビス(2-エチル-6-メチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-エチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-iso-プロピルアニリン、4,4’-メチレンビス(N-sec-ブチルアニリン)、ジメチルチオトルエンジアミン等が挙げられる。芳香族ポリアミンは、好ましくは、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MBOCA)を含まない。
【0026】
硬化剤中の活性水素を有する化合物の含有量は、硬化剤における活性水素当量に対する主剤におけるイソシアネート基当量の比(主剤/硬化剤当量比)が適切な範囲となるように、適宜設定される。主剤/硬化剤当量比は、0.9~1.3であってよい。主剤/硬化剤の下限値は、0.95、0.97、又は0.99であってもよい。主剤/硬化剤の上限値は、1.2以下、1,15以下、又は1.1以下であってもよい。
【0027】
硬化剤は、ポリオールを更に含有してもよい。ポリオールとしては、例えば、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0028】
硬化剤は、可塑剤を更に含有してもよい。可塑剤としては、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)などのフタル酸エステル類、ジイソノニルアジペート(DINA)、脂肪族二塩基酸エステル類、リン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、セバシン酸エステル類、エポキシ脂肪酸エステル類、グリコールエステル類、動植物油系脂肪酸エステル類、石油・鉱物油系可塑剤、アルキレンオキサイド重合系可塑剤等が挙げられる。
【0029】
硬化剤は、無機充填材を更に含有してもよい。無機充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、ベントナイト、水酸化アルミニウム、水酸化バリウム等が挙げられる。無機充填材は、好ましくは炭酸カルシウムである。炭酸カルシウムとしては、重質酸炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、表面処理コロイダル炭酸カルシウム等を使用することができる。
【0030】
硬化剤は、その他の添加剤を更に含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、湿潤剤、消泡剤、顔料、耐候性付与剤、チキソ付与剤等が挙げられる。
【0031】
以上の主剤及び硬化剤(二液型塗床形成材)は、塗床の形成に好適に用いられる。本発明の他の一実施形態は、被塗床部に対して、上記の主剤と上記の硬化剤とを混合して塗工する工程を備える、塗床の形成方法である。
【0032】
この実施形態において、被塗床部は、コンクリート構造物であってよく、コンクリート構造物上に下地層が設けられたものであってもよく、より具体的には、立体駐車場、地下駐車場、高架橋構造物等であってよい。
【0033】
以上の方法により、被塗床部上に塗床が形成される。本発明の他の一実施形態は、被塗床部と、被塗床部上に形成された塗床と、を備える、塗床構造体である。塗床は、上記の主剤と上記の硬化剤との反応物を含む。この塗床は、上述した主剤を用いることにより、高い引張強さと適度な伸びを両立できる。
【0034】
具体的には、塗床の引張強さは6.5N/mm以上になり、塗床の伸びは200~400%になる。塗床の引張強さは、好適な柔軟性が得られる観点から、10N/m以下であってもよい。本明細書における引張強さ及び伸びは、公共建設工事標準仕様書(平成31年版)、内装工事、合成樹脂塗床、弾性ウレタン樹脂系塗床の品質に記載されるJIS K6251(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方)に従って測定される引張強さ及び伸びを意味する。本実施形態の塗床は、上記のような公共建設工事標準仕様書(平成31年版)、内装工事、合成樹脂塗床、弾性ウレタン樹脂系塗床の品質として求められる引張強さ及び伸びを満たし得るものであり、例えば450%以上の伸びが求められる防水材とは異なるものである。すなわち、本実施形態の塗床には、防水材は含まれない。
【実施例0035】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下において、「部」及び「%」は、特に断りのない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0036】
[実施例1]
(ウレタンプレポリマー(A-1)を含む主剤の作製)
数平均分子量1000のポリオキシプロピレングリコール287.6g(0.58モル)、数平均分子量3000のポリオキシプロピレントリオール605.5g(0.61モル)、及びジプロピレングリコール30.0g(0.45モル)のポリオール混合物に、イソホロンジイソシアネート344g(3.09モル)を加え(NCO/OH当量比:1.90)、窒素気流下で80℃にて8時間フラスコ中で反応させて、イソシアネート基の含有量が4.86%のウレタンプレポリマー(A-1)を得た。得られたウレタンプレポリマー(A-1)に、ナフテン系の環境対応炭化水素系溶剤210gを加え、理論不揮発分86%の主剤を得た。
【0037】
(硬化剤の作製)
ジエチルトルエンジアミン6.31g、4,4’-メチレンビス[N-(1-メチルプロピル)アニリン](「エタキュア420、三井化学株式会社)3.66g、ポリプロピレングリコール(「アクトコール T-5000、三井化学株式会社)2.82g、フタル酸ジイソノニル(DINP、可塑剤)35.00g、炭酸カルシウム(「NS-200、日東粉化工業株式会社)45.00g、及びエチレンαオレフィンオリゴマー(消泡剤、「ルーカントHC-600」、三井化学株式会社)0.50gを含む硬化剤(活性水素当量0.0962、芳香族アミン/活性水素当量98.24%)を調製した。
【0038】
具体的には、可塑剤及びポリプロピレングリコールを釜内に投入し、ジエチルトルエンジアミン及び4,4’-メチレンビス[N-(1-メチルプロピル)アニリン]を加え、ディスパーで撹拌し混合した。次に、炭酸カルシウムを投入し、減圧下において、2000rpmで10分間混合し、炭酸カルシウムを十分分散させた。続いて、ウェッティングさせた後、残りの成分を投入し、2000rpmで5分間攪拌し、硬化剤を得た。
【0039】
[実施例2]
(ウレタンプレポリマー(A-2)を含む主剤の作製)
ポリオール混合物を、数平均分子量1000のポリオキシアルキレングリコール64.0g(0.13モル)、数平均分子量3000のポリオキシアルキレントリオール477.5g(0.61モル)、数平均分子量1500のポリオキシアルキレントリオール64.0g(0.13モル)、及びジプロピレングリコール60.0g(0.89モル)のポリオール混合物に変更した以外は、ウレタンプレポリマー(A-1)と同様にして、イソシアネート基の含有量が6.10%のウレタンプレポリマー(A-2)を得た。得られたウレタンプレポリマー(A-2)に、ナフテン系の環境対応炭化水素系溶剤180gを加え、理論不揮発分85%の主剤を得た。
【0040】
(硬化剤の作製)
実施例1の硬化剤と同様にして、ジエチルトルエンジアミン7.84g、4,4’-メチレンビス[N-(1-メチルプロピル)アニリン]4.55g、ポリプロピレングリコール0.41g、フタル酸ジイソノニル35.00g、炭酸カルシウム45.00g、及びエチレンαオレフィンオリゴマー0.50gを含む硬化剤(活性水素当量0.1177、芳香族アミン/活性水素当量99.79%)を調製した。
【0041】
[実施例3]
(ウレタンプレポリマー(A-3)を含む主剤の作製)
ポリオール混合物を、数平均分子量1000のポリオキシアルキレングリコール64.0g(0.13モル)、数平均分子量3000のポリオキシアルキレントリオール253.9g(0.25モル)、数平均分子量1500のポリオキシアルキレントリオール64.0g(0.13モル)、及びジプロピレングリコール75.0g(1.12モル)のポリオール混合物に変更した以外は、ウレタンプレポリマー(A-1)と同様にして、イソシアネート基の含有量が7.69%のウレタンプレポリマー(A-3)を得た。得られたウレタンプレポリマー(A-3)に、ナフテン系の環境対応炭化水素系溶剤140gを加え、理論不揮発分85%の主剤を得た。
【0042】
(硬化剤の作製)
実施例1の硬化剤と同様にして、ジエチルトルエンジアミン10.78g、4,4’-メチレンビス[N-(1-メチルプロピル)アニリン]6.26g、フタル酸ジイソノニル30.77g、炭酸カルシウム45.00g、及びエチレンαオレフィンオリゴマー0.50gを含む硬化剤(活性水素当量0.1615、芳香族アミン/活性水素当量100.00%)を調製した。
【0043】
[実施例4]
(ウレタンプレポリマー(A-4)を含む主剤の作製)
ポリオール混合物を、数平均分子量1000のポリオキシアルキレングリコール64.0g(0.13モル)、数平均分子量3000のポリオキシアルキレントリオール179.3g(0.18モル)、数平均分子量1500のポリオキシアルキレントリオール64.0g(0.13モル)、及びジプロピレングリコール80.0g(1.19モル)のポリオール混合物に変更した以外は、ウレタンプレポリマー(A-1)と同様にして、イソシアネート基の含有量が8.42%のウレタンプレポリマー(A-4)を得た。得られたウレタンプレポリマー(A-4)に、ナフテン系の環境対応炭化水素系溶剤130gを加え、理論不揮発分85%の主剤を得た。
【0044】
(硬化剤の作製)
実施例1の硬化剤と同様にして、ジエチルトルエンジアミン6.31g、ポリプロピレングリコール39.40g、フタル酸ジイソノニル29.21g、炭酸カルシウム17.88g、及びエチレンαオレフィンオリゴマー0.50gを含む硬化剤(活性水素当量0.0946、芳香族アミン/活性水素当量75.00%)を調製した。
【0045】
[実施例5]
(ウレタンプレポリマー(A-1)を含む主剤の作製)
実施例1と同様にして、ウレタンプレポリマー(A-1)及びそれを含む主剤を得た。
【0046】
(硬化剤の作製)
実施例1の硬化剤と同様にして、ジエチルトルエンジアミン11.50g、ポリプロピレングリコール53.82g、フタル酸ジイソノニル33.43g、炭酸カルシウム45.00g、及びエチレンαオレフィンオリゴマー0.50gを含む硬化剤(活性水素当量0.1615、芳香族アミン/活性水素当量80.00%)を調製した。
【0047】
[比較例1]
(ウレタンプレポリマー(A-5)を含む主剤の作製)
ポリオール混合物を、数平均分子量1000のポリオキシアルキレングリコール511.2g(1.02モル)、及び数平均分子量3000のポリオキシアルキレントリオール605.5g(0.61モル)のポリオール混合物に変更した以外は、ウレタンプレポリマー(A-1)と同様にして、イソシアネート基の含有量が4.21%のウレタンプレポリマー(A-5)を得た。得られたウレタンプレポリマー(A-5)に、ナフテン系の環境対応炭化水素系溶剤250gを加え、理論不揮発分85%の主剤を得た。
【0048】
(硬化剤の作製)
実施例1の硬化剤と同様にして、ジエチルトルエンジアミン5.45g、4,4’-メチレンビス[N-(1-メチルプロピル)アニリン]3.16g、ポリプロピレングリコール4.19g、フタル酸ジイソノニル35.00g、炭酸カルシウム45.00g、及びエチレンαオレフィンオリゴマー0.50gを含む硬化剤(活性水素当量0.0841、芳香族アミン/活性水素当量97.01%)を調製した。
【0049】
[比較例2]
(ウレタンプレポリマー(A-6)を含む主剤の作製)
ポリオール混合物を、数平均分子量1000のポリオキシアルキレングリコール64.0g(0.13モル)、数平均分子量3000のポリオキシアルキレントリオール104.9g(0.10モル)、数平均分子量1500のポリオキシアルキレントリオール64.0g(0.13モル)、及びジプロピレングリコール80.0g(1.19モル)のポリオール混合物に変更した以外は、ウレタンプレポリマー(A-1)と同様にして、イソシアネート基の含有量が9.30%のウレタンプレポリマー(A-6)を得た。得られたウレタンプレポリマー(A-6)に、ナフテン系の環境対応炭化水素系溶剤115gを加え、理論不揮発分85%の主剤を得た。
【0050】
(硬化剤の作製)
実施例1の硬化剤と同様にして、ジエチルトルエンジアミン12.00g、4,4’-メチレンビス[N-(1-メチルプロピル)アニリン]6.97g、フタル酸ジイソノニル28.83g、炭酸カルシウム45.00g、及びエチレンαオレフィンオリゴマー0.50gを含む硬化剤(活性水素当量0.1798、芳香族アミン/活性水素当量100.00%)を調製した。
【0051】
[比較例3]
(ウレタンプレポリマー(A-7)を含む主剤の作製)
ポリオール混合物を、数平均分子量2000のポリオキシアルキレングリコール260.0g(0.26モル)、数平均分子量3000のポリオキシアルキレントリオール325g(0.33モル)、及びジプロピレングリコール70.0g(1.04モル)のポリオール混合物に変更した以外は、ウレタンプレポリマー(A-1)と同様にして、イソシアネート基の含有量が6.16%のウレタンプレポリマー(A-7)を得た。得られたウレタンプレポリマー(A-7)に、ナフテン系の環境対応炭化水素系溶剤180gを加え、理論不揮発分85%の主剤を得た。
【0052】
(硬化剤の作製)
実施例1の硬化剤と同様にして、ジエチルトルエンジアミン7.90g、4,4’-メチレンビス[N-(1-メチルプロピル)アニリン]4.59g、フタル酸ジイソノニル30.80g、炭酸カルシウム45.00g、及びエチレンαオレフィンオリゴマー0.50gを含む硬化剤(活性水素当量0.1184、芳香族アミン/活性水素当量100.00%)を調製した。
【0053】
[引張強さ及び伸びの測定]
実施例及び比較例で得られた主剤と硬化剤とを、主剤/硬化剤の質量比=1/1で混合し、硬化後の厚みが2mmになるように、離型処理したガラス板上に塗布した。温度23℃、湿度50%の条件で7日間養生を行った後、硬化後の塗膜から3号ダンベル形状の大きさの試験片を打ち抜いた。公共建設工事標準仕様書(平成31年版)、内装工事、合成樹脂塗床、弾性ウレタン樹脂系塗床の品質に記載されるJIS K6251(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方)に従って、引張強さ及び伸びを測定した。
【0054】
実施例及び比較例における測定結果を表1及び表2に示す。また、表1及び表2には、ポリオール中の分子量が1500以上のジオールの含有量(当量%)、分子量が1500未満のポリオールの含有量(当量%)、及びトリオールの含有量(当量%)と、ウレタンプレポリマーにおけるイソシアネート基の含有量(質量%)を併せて示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】