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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075986
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】ポンプ及び粉体充填装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 45/073 20060101AFI20240529BHJP
   B65B 1/04 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
F04B45/073
B65B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187297
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】成島 勝
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 泰明
(72)【発明者】
【氏名】高野 祐貴
【テーマコード(参考)】
3E118
3H077
【Fターム(参考)】
3E118AA01
3E118AB05
3E118BB21
3E118EA08
3H077CC04
3H077CC08
3H077DD09
3H077EE23
3H077FF07
3H077FF09
(57)【要約】
【課題】チューブ両側が早期に破れるのを抑制できるポンプおよび粉体充填装置を提供する。
【解決手段】ポンプたる空気圧駆動ポンプ5は、内部をポンプ室54として用いる柔軟性を有するチューブ51をポンプハウジング52内に設け、チューブ51の両端がポンプハウジング52に固定され、チューブ51の外周とポンプハウジング52の内周面との間を駆動室53として用いている。駆動室53内の圧力の増減によってチューブ51の膨張と収縮を交互に発生させることで、ポンプ室54の容積を変動させて移送対象物たるトナーを移送している。空気圧駆動装置は、ポンプハウジング52の内周面のうち駆動室53の両側に対応する箇所が、ポンプハウジング52の駆動室53を構成するその他の内周面よりも外側に位置している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部をポンプ室として用いる柔軟性を有するチューブをポンプハウジング内に設け、前記チューブの両端が前記ポンプハウジングに固定され、前記チューブの外周と前記ポンプハウジングの内周面との間を駆動室として用い、前記駆動室内の圧力の増減によって前記チューブの膨張と収縮を交互に発生させることで、前記ポンプ室の容積を変動させて移送対象物を移送するポンプにおいて、
前記ポンプハウジングの内周面のうち前記駆動室の両側に対応する箇所は、前記ポンプハウジングの前記駆動室を構成するその他の内周面よりも外側に位置していることを特徴とするポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプにおいて、
前記移送対象物が吸引される吸引口と、前記移送対象物が吐出される吐出口とに逆流防止弁が設けられていることを特徴とするポンプ。
【請求項3】
請求項1に記載のポンプにおいて、
前記チューブの膨張時に前記チューブは、少なくとも前記ポンプハウジングの前記駆動室を構成する前記その他の内周面に接触することを特徴とするポンプ。
【請求項4】
請求項1に記載のポンプにおいて、
前記駆動室の前記移送対象物の移送方向の長さをL、前記ポンプハウジングの前記駆動室を構成する内周面のうち、前記その他の内周面よりも外側に位置している箇所の移送方向の長さをlとしたとき、
15%≦(2l/L)×100%≦20%
であることを特徴とするポンプ。
【請求項5】
請求項1に記載のポンプにおいて、
前記チューブが自然状態ときの前記ポンプハウジングの前記駆動室を構成する内周面のうち、前記その他の内周面よりも外側に位置している箇所の前記チューブとの隙間を、前記その他の内周面の前記チューブとの隙間に対して、10%以上、15%以下広くしていることを特徴とするポンプ。
【請求項6】
請求項1に記載のポンプにおいて、
前記ポンプハウジングは、断面円形の貫通孔を有し、
前記貫通孔内に前記チューブが収納され、前記チューブの一端は、前記貫通孔の一端の開口縁部に固定され、前記チューブの他端は、前記貫通孔の他端の開口縁部に固定され、
前記貫通孔の両側に他の箇所よりも内径が拡大した拡径部を設けたことを特徴とするポンプ。
【請求項7】
請求項1に記載のポンプにおいて、
前記移送対象物は、粉体であることを特徴とするポンプ。
【請求項8】
粉体貯留部と、前記粉体貯留部内の粉体を、粉体充填容器へ移送するポンプとを備える粉体充填装置において、
前記ポンプとして、請求項1に記載のポンプを用いたことを特徴とする粉体充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ及び粉体充填装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内部をポンプ室として用いる柔軟性を有するチューブをポンプハウジング内に設け、前チューブの両端がポンプハウジングに固定され、チューブの外周とポンハウジング内面との間を駆動室として用いるポンプが記載されている。そして、駆動室内の圧力の増減によってチューブの膨張と収縮を交互に発生させることで、ポンプ室の容積を変動させて移送対象物を移送する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
チューブ両側が早期に破れてしまうおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、本発明は、内部をポンプ室として用いる柔軟性を有するチューブをポンプハウジング内に設け、前記チューブの両端が前記ポンプハウジングに固定され、前記チューブの外周と前記ポンプハウジングの内周面との間を駆動室として用い、前記駆動室内の圧力の増減によって前記チューブの膨張と収縮を交互に発生させることで、前記ポンプ室の容積を変動させて移送対象物を移送するポンプにおいて、前記ポンプハウジングの内周面のうち駆動室の両側に対応する箇所は、前記ポンプハウジングの前記駆動室を構成するその他の内周面よりも外側に位置していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、チューブ両側が早期に破れるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施形態のトナー充填装置の概略構成図。
図2】ポンプ駆動部の詳細を示すブロック図。
図3】ポンプ駆動の設定条件の一例を示す図。
図4】ポンプ駆動時の駆動室内の動作圧の時間変化を示す図。
図5】本実施形態の空気圧駆動ポンプの概略構成図。
図6】従来の空気圧駆動ポンプの概略構成図。
図7】従来の空気圧駆動ポンプにおける収縮時のチューブの潰れについて説明する図。
図8】本実施形態の空気圧駆動ポンプにおける収縮時のチューブの潰れについて説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明のポンプを適用可能な粉体充填装置としてのトナー充填装置の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態のトナー充填装置1の概略構成図である。
本実施形態のトナー充填装置1は、移送対象物たる粉体としてのトナーTを貯留した粉体貯留部たるトナー貯留タンク2と、トナーTが充填される粉体充填容器たるトナー充填容器7とを備えている。また、トナー充填装置1は、トナー貯留タンク2のトナーTをトナー充填容器7へ移送するポンプたる空気圧駆動ポンプ5とを備えている。また、トナー充填装置1は、トナー充填容器7に充填されたトナー量を計量する粉体計量手段たる計量器9を有している。
【0008】
トナー貯留タンク2内には、トナー導入管2aが設けられており、このトナー導入管2a内にトナー吸引管4の一端側が配置されている。トナー吸引管4の他端は、空気圧駆動ポンプ5に接続されている。この空気圧駆動ポンプ5には、トナー輸送管6の一端が接続されており、トナー輸送管6の他端は、トナー充填容器7にトナーを吐出するトナー吐出部22に接続されている。
【0009】
トナー吐出部22は、先端にノズル8が接続されたノズル管23を有しており、ノズル昇降機21により昇降可能に設けられている。また、トナー吐出部22には、トナー充填容器7内を脱気する脱気手段としての脱気ポンプ20が設けられている。
【0010】
ノズル管23は、内管と外管の2重管構造となっており、内管には、トナー輸送管6からのトナーが移送され、外管は、脱気ポンプ20により吸引されたトナー充填容器7内の空気が移送される。
【0011】
また、トナー貯留タンク2の底部には、トナーを流動化させる流動化部3が設けられている。流動化部3は、空気を噴出するためのトナーの粒径よりも小さい多数の微細孔が形成された通気板と、通気板の各微細孔へ空気を送り込む空気導入路とで構成されている。流動化部3には流動化エア供給部30が接続されている。流動化エア供給部30により流動化部3の空気導入路に空気が導入され、通気板の各微細孔から空気を噴出することで、トナー貯留タンク内のトナーが流動化される。流動化エア供給部30としては、流動化部3の空気導入路に空気が送り込めればよく、エアコンプレッサー、ファン、ブロワなど公知のものを用いることができる。
【0012】
空気圧駆動ポンプ5は、ポンプハウジング52と、ポンプハウジング52に収納され動作圧により伸縮/拡張するチューブ51とを有している。空気圧駆動ポンプ5には、動作圧を増減させるポンプ駆動部10が接続されている。
【0013】
図2は、ポンプ駆動部10の詳細を示すブロック図である。
ポンプ駆動部10は、方向制御弁たる3ポート電磁切替弁11と、エアコンプレッサーにより送り込まれた圧縮空気を、所定の圧力に調整するためのレギュレータ13とを有している。また、ポンプ駆動部10は、圧縮空気を利用して真空を発生させ、空気圧駆動ポンプ5から空気を抜いてチューブ51にかかる動作圧を減少させる真空エジェクター12を有している。また、ポンプ駆動部10は、電磁切替弁11を制御する制御盤14も備えている。
【0014】
図3は、ポンプ駆動の設定条件の一例を示す図である。
例えば、電磁切替弁11がOFFのときは、真空エジェクター12との通気が遮断され、レギュレータ13との通気が開放される。これにより、エアコンプレッサーにより送り込まれた圧縮空気の圧力(0.45MPa)を、レギュレータ13により50kPaに減圧された圧縮空気が空気圧駆動ポンプ5に送り込まれる。これにより、空気圧駆動ポンプ5の駆動室53内の動作圧が正圧となり、チューブ51が収縮する。その結果、チューブ51内のトナーがトナー輸送管6へ吐出され、トナーがトナー輸送管6へ移送される。
【0015】
一方、電磁切替弁11がONのときは、レギュレータ13との通気が遮断され、真空エジェクターとの通気が開放され、駆動室53内の空気が抜かれる。これにより、駆動室53内の動作圧が-70Kpaまで減圧され、チューブ51が拡張する。その結果、トナー貯留タンク2のトナーが吸い上げられ、トナー吸引管4からチューブ51内へトナーが移送される。
【0016】
制御盤14により電磁切替弁11のON/OFFの切り替えにより、図4に示すように動作圧を変動させることで、チューブ51が収縮と拡張を繰り返し、トナー貯留タンク2のトナーが継続的にトナー充填容器7に移送される。本実施形態では、図3に示すように、正圧(加圧)と負圧(減圧)を、2.0KHzのサイクルで切り替えている。制御盤14により電磁切替弁11のON/OFFの切替速度を変更することで、トナーの充填速度(トナー充填容器7への単位時間当たりのトナー充填量)を切り替えることができる。
なお、図3は、一例であり、装置構成に合わせて、適宜設定すればよい。
【0017】
空気圧駆動ポンプ5によりトナーを移送することで、スクリュウ状の搬送オーガでトナーを移送する場合に比べて、トナーに係る加圧等のストレスを低減することができる。これにより、トナーの外添剤が表面から脱離あるいは埋没を抑制し、外添剤による狙いの効果が損なわれるのを抑制することができる。また、トナー同士の付着を抑制でき、凝集体を抑制することができる。
【0018】
次に、トナー充填装置1の充填動作の一例について説明する。
本実施形態では、早く、溢れずに、精度よくトナー充填が行えるように、初期充填モードたる高速充填モードと、減速充填モードと、精密充填モードとを有している。高速充填モードは、脱気ポンプ20によりトナー充填容器7内の空気を抜きながらトナー充填を行う所謂脱気充填である。
【0019】
まず、流動化エア供給部30を駆動し、トナー貯留タンク2のトナーを空気により流動化する。また、ポンプ駆動部10の電磁切替弁11のON/OFFを、予め設定されたタイミングで切り替えを行い、所定の充填速度でトナー充填を行う。
【0020】
この高速充填モードは、脱気ポンプ20によりトナー充填容器7内の空気を抜きながらトナー充填を行う所謂脱気充填である。脱気充填では、脱気ポンプ20による空気の吸引により、トナー充填容器7が吸い上げられることで、計量器9で精度よくトナー充填容器7内のトナー充填量を計測できない。そのため、高速充填モードでは、計量器9によりトナー充填容器7のトナーの充填量の計測は行わず、所定の目標時間まで充填を行う。
【0021】
高速充填モードが終了したら減速充填モードを実行する。この減速充填モードは、脱気は行わずに、計量器9によりトナー充填容器7のトナー充填量を計測しながら充填を行う所謂計量充填である。脱気を行わないことで、計量器9で精度よくトナー充填容器7内のトナー充填量を計測することができ、精度よく所定のトナー量を充填することができる。
【0022】
また、減速充填モードでは、電磁切替弁11のON/OFFのサイクルを変更し、高速充填モードよりもトナー充填速度を落としてトナーの充填を行う。このように、トナー充填速度を遅くすることで、トナー充填速度の変動によるトナー充填量のばらつきを抑えることができ、精度よくトナーを充填することができる。そして、計量器9が計測した現在のトナー充填量(重量)が、所定の充填量(重量)となったら減速充填モードを終了し、精密充填モードへ移行する。
【0023】
精密充填モードでは、減速充填モードよりも電磁切替弁11のON/OFFの切り替えサイクルをさらに落として、トナー充填速度をさらに落として充填を行う。これにより、減速充填モードよりもさらに精度の高い充填を行うことができる。精密充填モードも脱気は行わずに計量器9によりトナー充填容器7のトナー充填量を計測しながら充填を行う所謂計量充填である。そして、計量器9が計測した現在のトナー充填量(重量)が、所定の充填量(重量)となったら、精密充填モードを終了する。精密充填モードを終了してから所定時間経過したら、計量器9による最終計量を行い、トナー充填容器7が目標充填量の誤差範囲内であるかの最終判定を行う。
【0024】
次に、本実施形態の特徴部である空気圧駆動ポンプ5について、説明する。
図5は、空気圧駆動ポンプ5の概略構成図である。
空気圧駆動ポンプ5は、断面円形状の貫通孔が形成された円筒形状のポンプハウジング52を有している。ポンプハウジング52は、金属または樹脂からなり、トナーの移送方向である長手方向の中央に、ポンプ駆動部10が接続される接続部52aを有している。ポンプハウジング52の両端は、フランジ部52dが設けれており、このフランジ部52dの外周には、ネジ溝52bが形成されている。
【0025】
ポンプハウジング52の貫通孔内には円筒形状の柔軟性のある材質で構成されたチューブ51が配設されている。チューブ51の材質として、例えば、EPT(エチレンプロピレンゴム)、NR(天然ゴム)、BR(ブチル配合ゴム)、シリコンゴム等が挙げられる。本実施形態では、チューブ51の内径は23mm、チューブ51の長さは、154mmである。チューブ51の両端の外側に略90°折れ曲がった固定部51aが、それぞれ弁ホルダ61、71によってポンプハウジング52の貫通孔の開口縁部であるフランジ部52dに固定されている。これにより、接続部52a以外が閉じられた断面形状が、環状の駆動室53と、両端が開口した断面円形状のポンプ室54とが貫通孔内に形成される。
【0026】
ポンプハウジング52の図中右側の吸引側には、吸引側逆流防止機構60が設けられており、ポンプハウジング52の図中左側の吐出側には、吐出側逆流防止機構70が設けられている。
【0027】
吸引側逆流防止機構60は、吸引側逆止弁62と、吸引側弁ホルダ61と、トナーを吸引する吸引口63bを有する吸引管接続部材63とを有している。吸引側弁ホルダ61は、貫通孔が形成されており、貫通孔内に、吸引側逆止弁62のフランジ部62aが突き当たる突き当て部61bを有している。貫通孔のこの突き当て部61bよりも吸引側の内周面には、雌ネジ61aが形成されている。
【0028】
吸引管接続部材63の図中右側の吸引側端部には、トナー吸引管4(図1参照)の他端が接続される管接続部63aを有しており、吸引管接続部材63の図中左側のポンプハウジング側の外周には、雄ネジ63cが形成されている。そして、吸引管接続部材63を吸引側弁ホルダ61にネジ止めすることで、吸引側逆止弁62が吸引側弁ホルダ61に固定される。
【0029】
吐出側逆流防止機構70は、吐出側逆止弁72と、吐出側弁ホルダ71と、トナーを吐出する吐出口73bを有する輸送管接続部材73とを有している。吐出側弁ホルダ71は、吸引側弁ホルダ61と同様、貫通孔内に、吐出側逆止弁72のフランジ部72aが突き当たる突き当て部71bを有している。また、貫通孔のこの突き当て部71bよりも吐出側の内周面には、雌ネジ71aが形成されている。輸送管接続部材73の図中左側の吐出側端部には、トナー輸送管6(図1参照)の一端が接続される管接続部73aを有しており、図中右側のポンプハウジング側の外周面には雄ネジ73cが形成されている。輸送管接続部材73を吐出側弁ホルダ71にネジ止めすることで、吐出側逆止弁72が吐出側弁ホルダ71に固定される。
【0030】
吸引側逆流防止機構60は、止めナット56aをポンプハウジング52のネジ溝52bにねじ込むことでポンプハウジング52の吸引側端部に締結される。吐出側逆流防止機構70は、止めナット56bをポンプハウジング52のネジ溝52bにねじ込むことでポンプハウジング52の吐出側端部に締結される。
【0031】
止めナット56aの締結により、ポンプハウジング52の吸引側のフランジ部52dと吸引側弁ホルダ61のフランジ部61cとによりチューブ51の吸引側の固定部51aが挟み込まれる形でポンプハウジング52に固定される。また、チューブ51吐出側の固定部51aが、止めナット56bの締結により、ポンプハウジング52の吐出側のフランジ部52dと吐出側弁ホルダ71のフランジ部71cとにより挟み込まれる形で、ポンプハウジング52に固定される。
【0032】
チューブ51の両端がポンプハウジング52の端部に固定されることで、ポンプハウジング52内にチューブ51によって、ポンプ室54と駆動室53とが形成される。そして、接続部52aに接続されたポンプ駆動部10によって、駆動室53内の動作圧を変動させることで、チューブ51を収縮/膨張させてチューブ内部のポンプ室54の容積を変動させることでトナーを吸引、吐出する。
【0033】
チューブ51の特性によって、駆動室53を同一の負圧力で減圧しても、その膨張量が異なりトナー吸引管4から吸引されるトナー量が異なり、チューブ51の特性によってポンプ性能が異なってしまうおそれある。そのため、本実施形態では、駆動室内を減圧してチューブ51を膨張させたとき、チューブ51の外周が、ポンプハウジング52の内周面に接触するように、ポンプハウジングの内径Dを設定している。これにより、チューブ51の特性によらず、駆動室53を減圧したときのチューブ51の膨張量を一定にでき、トナー吸引管4から吸引されるトナー量のチューブ51の特性による変動を抑制することができ、ポンプ性能を安定させることができる。
【0034】
図7に示すように、チューブ51の収縮時、チューブの両端は、ポンプハウジング52により固定されていることから所定の円形状から変形せず、チューブ51の中央部部分が動作圧で押し潰されるような形で収縮する。両端よりも少し中央側は、固定された端部の影響でほとんど収縮することないが、中央部分の収縮の影響を受けて、楕円形状に変形してしまう。その結果、周方向一部が両端よりも外側に突出する。図6に示すポンプハウジング52の貫通孔の内径が一定の従来例では、図7の楕円形状に変形した箇所の長軸に平行な断面が示すように、チューブ51の端部から少し内側の部分の周方向所定の箇所が、ポンプハウジング52の内周面に強く接触する。
【0035】
両端よりも少し中央側が楕円形状に変形して、周方向一部がポンプハウジング内周面に接触した状態で、さらに中央部が図7の矢印Aに示すように収縮していくと、チューブ51の両端が中央に向けて引っ張れる。その結果、両端よりも少し中央側の楕円形状に変形した箇所のポンプハウジング52の内周面に接触する部分が図7の矢印Bに示すように、ポンプハウジング52の内周面に摺擦する。また、駆動室53を減圧してチューブ51を膨張させるときは引っ張りが解消されていくことで、両端よりも少し中央側の楕円形状に変形した箇所のポンプハウジング52の内周面に接触する部分がポンプハウジング52の内周面に摺擦する。
【0036】
このように、図6に示す従来例では、チューブの収縮/膨張時に、チューブ51の端部の少し内側の箇所の周方向の一部がポンプハウジング52に摺擦することで、チューブ51の端部側の一部が早期に摩耗してしまう。その結果、24時間ポンプ稼働試験において、約3週間の稼働で、チューブ51の端部側破れてしまうという課題があった。
【0037】
これに対し、図5に示す本実施形態の空気圧駆動ポンプ5は、ポンプハウジング52の両側に拡径部52cを設け、チューブ51が膨張、収縮していない自然状態において、駆動室53の両側のチューブ51との隙間を、他の部分よりも大きくしている。これにより、図8に示すように、収縮時に楕円形状に変形するチューブ51の端部よりも少し内側を、ポンプハウジング52に非接触にできる。その結果、ポンプ駆動時のチューブ両側のポンプハウジング52への摺擦を防止できる。このように、ポンプハウジング52の両側に拡径部52cを設けることで、24時間ポンプ稼働試験において、1年以上、チューブに破れが生じることなく稼働することができた。これにより、トナー充填装置1のメンテナンス回数を減らすことができる。
【0038】
拡径部52cの自然状態のチューブ51との隙間は、駆動室53の他の部分の自然状態のチューブ51との隙間に対して、10%以上、15%以下広くするのが好ましい。10%未満の場合は、チューブ51の収縮/膨張時に、チューブ51の端部より少し内側の箇所を収縮時にポンプハウジング52に非接触にできないおそれがある。15%を越えると、ポンプハウジング52の端部の強度が不足するおそれがある。ポンプハウジング52の端部の強度を確保するために、ポンプハウジング52の厚みを厚くする等の対策が必要となり、装置のコストアップや、空気圧駆動ポンプ5が径方向に大型化するおそれがある。
【0039】
本実施形態では、ポンプハウジング52の両側に設けた拡径部52cの内径dを32mm、ポンプハウジング52の他の箇所の内径Dを28mmとし、拡径部52cのチューブ51との隙間を、他の部分に比べて2mm大きくし、他の部分に対して、約13%隙間を広げている。
【0040】
また、各拡径部52cの長さをl、ポンプハウジング52の長さをLとしたとき、((2l/L)×100)は、15~20%が好ましい。15%未満だと、拡径部よりも中央側で楕円形状に変形したチューブ51の外周がハウジングの内周面に接触するおそれがあり、チューブ51の両側の早期摩耗による破損を抑制できないおそれがある。一方、20%を越えると、チューブ51の膨張量をコントロールできず、チューブ51の特性によってポンプ性能がばらつくおそれがある。ポンプ性能の安定性を考慮すれば、拡径部52cの長さlは、なるべく短くするのが好ましく、本実施形態では、各拡径部52cの長さlは、必要最小限の12mmに設定している。
【0041】
本実施形態では、ポンプハウジング52の端部の内径は、他の箇所と同一であり、この端部からテーパ状に拡径するようにして拡径部52cを形成している。ポンプハウジング52の端部の内径を他の箇所と同一とすることで、ポンプハウジング52の開口縁のチューブ51の端部の外側に90°折り曲げられた固定部51aとの接触面積を十分にとれて、良好にチューブ51をポンプハウジング52に固定することができるというメリットがある。また、ポンプハウジング52の端部の内径を他の箇所と同一とすることで、チューブ51の拡径部52cとの対向領域の膨張を抑えることができ、チューブ51の端部側がポンプハウジング52に接触するのを良好に抑制できる。
【0042】
なお、上述では、チューブ51に動作圧をかける圧力媒体として空気(気体)を用いているが、上記圧力媒体としては、油などの液体を用いてもよい。また、上述では、空気圧駆動ポンプは、粉体としてのトナーを移送しているが、粉末状や顆粒状の薬剤および食材であってもよい。また、空気圧駆動ポンプが移送する移送対象物は、粉体に限らず液体でもよい。
【0043】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
ポンプハウジング52と、内部をポンプ室54として用いる柔軟性を有するチューブ51をポンプハウジング52内に設け、チューブ51の両端がポンプハウジング52に固定され、チューブ51の外周とポンプハウジング52の内周面との間を駆動室53として用い、駆動室内の圧力の増減によってチューブ51の膨張と収縮を交互に発生させることで、ポンプ室54の容積を変動させてトナーTなどの移送対象物を移送するポンプにおいて、ポンプハウジング52の内周面のうち駆動室53の両側に対応する箇所は、ポンプハウジングの駆動室53を構成するその他内周面よりも外側に位置している。
実施形態で説明したように、駆動室の動作圧を高めてチューブを収縮させる際、チューブの両端が固定されていることで、チューブの両端は収縮時に変形することはなく、チューブの中央部分が動作圧により押しつぶされるような形で収縮していく。この収縮時においては、固定されているチューブの両端は所定の円形状が維持されている。両端よりも少し中央側は、固定された端部の影響でほとんど収縮することないが、中央部分の収縮の影響を受けて、楕円形状に変形してしまう。その結果、周方向一部が両端よりも外側に突出しポンプハウジングの内周面に接触してしまう。その状態でさらに中央部が収縮していくと、チューブの両端が中央に向けて引っ張れる。その結果、両端よりも少し中央側の楕円形状に変形した箇所のポンプハウジングの内周面に接触する部分がハウジングの内周面に摺擦する。また、駆動室を減圧してチューブを膨張させるときは引っ張りが解消されていくことで、両端よりも少し中央側の楕円形状に変形した箇所のポンプハウジングの内周面に接触する部分がハウジングの内周面に摺擦する。これにより、チューブの両端よりも少し中央側の箇所の周方向の所定の箇所が、ポンプハウジングの内周面との摺擦によって早期に摩耗してしまい、破れてしまうおそれがある。
態様1では、ポンプハウジングの内周面のうち駆動室の両側に対応する箇所が外側に拡張されていることで、チューブが収縮も膨張もしていない自然状態で、チューブとポンプハウジングの内周面との間の隙間が、他よりも広くなる。その結果、収縮時にチューブの両端よりも少し中央側が楕円形状に変形したとき、ポンプハウハウジングの内周面と非接触にできる。これにより、チューブの両端よりも少し中央側の部分が、摩耗するのを抑制することができ破れてしまうのを抑制できる。
【0044】
(態様2)
態様1において、トナーなどの移送対象物が吸引される吸引口と、移送対象物が吐出される吐出口とに逆流防止弁が設けられている。
これによれば、チューブ51を交互に収縮・膨張させることでポンプ室54の容積を変動させて、トナーなどの移送対象物を移送することができる。
【0045】
(態様3)
態様1または2において、チューブ51の膨張時にチューブ51は、少なくともポンプハウジング52の駆動室53を構成するその他の内周面に接触する。
これによれば、実施形態で説明したように、チューブ51の膨張量をコントロールすることができ、チューブの特性によるポンプ性能のばらつきを抑制できる。
【0046】
(態様4)
態様3において、駆動室53の移送対象物の移送方向の長さをL、ポンプハウジング52の駆動室53を構成する内周面のうち、拡径部52cなどのその他の内周面よりも外側に位置している箇所の移送方向の長さをlとしたとき、
15%≦(2l/L)×100%≦20%
である。
これによれば、実施形態で説明したように、チューブ51の両側の早期破損を抑制し、かつ、良好にチューブ51の膨張量をコントロールできる。
【0047】
(態様5)
態様1乃至4いずれかにおいて、チューブ51が自然状態ときのポンプハウジング52の駆動室を構成する内周面のうち、拡径部52cなどの前記その他の内周面よりも外側に位置している箇所のチューブ51との隙間を、その他の内周面のチューブとの隙間に対して、10%以上、15%以下広くしている。
これによれば、実施形態で説明したように、チューブ51の両側の早期破損を抑制し、かつ、ポンプハウジングの強度低下を抑制することができる。
【0048】
(態様6)
態様1乃至5何れかにおいて、ポンプハウジング52は、断面円形の貫通孔を有し、貫通孔内にチューブ51が収納され、チューブ51の一端は、貫通孔の一端の開口縁部に固定され、チューブ51の他端は、貫通孔の他端の開口縁部に固定され、貫通孔の両側に他の箇所よりも内径が拡大した拡径部52cを設けた。
これによれば、チューブ51によりポンプハウジングの貫通孔内に駆動室53を形成し、ポンプハウジング52の内周面のうち駆動室53の両側に対応する箇所を、ポンプハウジングの駆動室53を構成するその他内周面よりも外側に位置させることができる。
【0049】
(態様7)
態様1乃至6いずれかにおいて、移送対象物は、トナーなどの粉体である。
これによれば、トナーなどの粉体を移送することができる。
【0050】
(態様8)
トナー貯留タンク2などの粉体貯留部と、粉体貯留部内のトナーなどの粉体を、トナー充填容器7などの粉体充填容器へ移送する空気圧駆動ポンプ5などのポンプとを備えるトナー充填装置などの粉体充填装置において、ポンプとして、態様1乃至7いずれかのポンプを用いた。
これによれば、粉体充填装置のメンテナンス回数を減らすことができる。
【符号の説明】
【0051】
1 :トナー充填装置
5 :空気圧駆動ポンプ
6 :トナー輸送管
7 :トナー充填容器
8 :ノズル
9 :計量器
10 :ポンプ駆動部
11 :電磁切替弁
12 :真空エジェクター
13 :レギュレータ
14 :制御盤
20 :脱気ポンプ
21 :ノズル昇降機
22 :トナー吐出部
23 :ノズル管
30 :流動化エア供給部
51 :チューブ
51a :固定部
52 :ポンプハウジング
52a :接続部
52b :ネジ溝
52c :拡径部
52d :フランジ部
53 :駆動室
54 :ポンプ室
56a :止めナット
56b :止めナット
60 :吸引側逆流防止機構
61 :吸引側弁ホルダ
61a :雌ネジ
61b :突き当て部
61c :フランジ部
62 :吸引側逆止弁
62a :フランジ部
63 :吸引管接続部材
63a :管接続部
63b :吸引口
63c :雄ネジ
70 :吐出側逆流防止機構
71 :吐出側弁ホルダ
71a :雌ネジ
71b :突き当て部
71c :フランジ部
72 :吐出側逆止弁
72a :フランジ部
73 :輸送管接続部材
73a :管接続部
73b :吐出口
73c :雄ネジ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0052】
【特許文献1】特開平3-189389号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8