(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075994
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】投影装置
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20240529BHJP
G02B 27/18 20060101ALI20240529BHJP
G02B 13/00 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
G02B26/10 D
G02B26/10 104Z
G02B27/18 Z
G02B13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187315
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(72)【発明者】
【氏名】畑崎 壮哉
(72)【発明者】
【氏名】仲村 直人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕之
(72)【発明者】
【氏名】小崎 由紀夫
【テーマコード(参考)】
2H045
2H087
【Fターム(参考)】
2H045AB01
2H045BA13
2H045BA15
2H087KA06
2H087KA19
2H087LA22
2H087LA25
2H087RA45
(57)【要約】
【課題】広画角化を実現できる投影装置を提供すること。
【解決手段】投影装置は、光源と、光源からの光を走査する光走査部と、少なくとも1枚の正レンズと1枚の負レンズを含み且つ光走査部による走査光の走査角度を拡大する拡大光学系と、を含む光走査光学系を複数有し、複数の光走査光学系のそれぞれが有する光走査部を実装する基板を備える。複数の拡大光学系は、基板の実装面の垂線に対して回転対称に配置され、それぞれの走査光が互いに異なる領域に投影されるように、それぞれの光軸が回転対称軸である垂線に対して互いに異なる角度をなす向きで配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源からの光を走査する光走査部と、少なくとも1枚の正レンズと1枚の負レンズを含み且つ前記光走査部による走査光の走査角度を拡大する拡大光学系と、を含む光走査光学系を複数有し、
複数の前記光走査光学系のそれぞれが有する前記光走査部を実装する基板を備え、
複数の前記拡大光学系は、
前記基板の実装面の垂線に対して回転対称に配置され、
それぞれの前記走査光が互いに異なる領域に投影されるように、それぞれの光軸が回転対称軸である前記垂線に対して互いに異なる角度をなす向きで配置される、
投影装置。
【請求項2】
前記拡大光学系の後段において、前記複数の拡大光学系の前記光軸が前記垂線上で交差する、
請求項1に記載の投影装置。
【請求項3】
前記拡大光学系の前段において、複数の前記光源からの光の光路が交差する、
請求項1に記載の投影装置。
【請求項4】
前記光源から前記光走査部へ入射される光束は、平行光又は収束光である、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の投影装置。
【請求項5】
前記光源と前記光走査部との間の光路上に中間像を形成する中間像形成部を備える、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の投影装置。
【請求項6】
前記光源と前記光走査部との間の光路上に、前記光源からの光の光路を前記光走査部に向けて折り曲げるミラーが配置され、
前記ミラーは、前記垂線が延びる方向において、前記拡大光学系のなかで前記光走査部側に位置するレンズよりも前記光走査部から離れて位置する、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の投影装置。
【請求項7】
前記光源と前記光走査部との間の光路上に、前記光源からの光の光路を前記光走査部に向けて折り曲げるミラーが配置され、
前記垂線を挟んで配置される一対の前記光走査光学系において、前記ミラーの高さ位置が互いにずれるように配置される、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の投影装置。
【請求項8】
前記拡大光学系を通過した前記走査光の全走査角度は、前記光軸と前記垂線とがなす角度の2倍以上である、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の投影装置。
【請求項9】
前記複数の光走査光学系は、前記垂線周りに等間隔で配置される、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の投影装置。
【請求項10】
前記複数の拡大光学系を含む前記複数の光走査光学系の全体が前記垂線に対して回転対称に配置される、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の投影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業現場において作業者の安全性を向上させるための注意喚起や熟練者の技術を継承するための作業指示を表示するデバイスが求められている。例えば、作業者の視野の範囲のなかで注意散漫になっている領域に対して注意喚起用の画像をデバイスで投影することにより、作業者の視線を注意散漫になっている領域へ誘導することが考えられる。
【0003】
投影画像を作業者に視認させるデバイスの形態として、例えば、作業者に装着して使用するウェアラブルデバイスが挙げられる。例えば特許文献1に、ウェアラブルデバイスに内蔵される投影装置であって、画像信号に応じて変調されたレーザ光を2次元方向へ走査するレーザ走査型の投影装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の投影装置において注意散漫になっている領域に画像を投影するためには、広画角化が要求される。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、広画角化を実現できる投影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る投影装置は、光源と、光源からの光を走査する光走査部と、少なくとも1枚の正レンズと1枚の負レンズを含み且つ光走査部による走査光の走査角度を拡大する拡大光学系と、を含む光走査光学系を複数有し、複数の光走査光学系のそれぞれが有する光走査部を実装する基板を備える。複数の拡大光学系は、基板の実装面の垂線に対して回転対称に配置され、それぞれの走査光が互いに異なる領域に投影されるように、それぞれの光軸が回転対称軸である垂線に対して互いに異なる角度をなす向きで配置される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、広画角化を実現できる投影装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るウェアラブルデバイスの概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る投影装置の斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る投影装置に備えられる光走査光学系を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る投影装置に備えられる光走査光学系の配置例を示す図である。
【
図5】肉眼観察における人間の視野角について説明する図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る投影装置による画像の投影範囲を模式的に示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る投影装置の構成を示すブロック図である。
【
図8】本発明の変形例1に係る投影装置に備えられる光走査光学系を示す図である。
【
図9】本発明の変形例1に係る投影装置に備えられる光走査光学系の配置例を示す図である。
【
図10】本発明の変形例2に係る投影装置の斜視図である。
【
図11】本発明の変形例2に係る投影装置に備えられる光走査光学系の配置例を示す図である。
【
図12】本発明の変形例2に係る投影装置による画像の投影範囲を模式的に示す図である。
【
図13】本発明の変形例3に係る投影装置の斜視図である。
【
図14A】本発明の変形例4に係る投影装置の斜視図である。
【
図14B】本発明の変形例4に係る投影装置による画像の投影範囲を模式的に示す図である。
【
図15A】本発明の変形例5に係る投影装置の斜視図である。
【
図15B】本発明の変形例5に係る投影装置による画像の投影範囲を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る投影装置について図面を参照しながら説明する。以下の説明において、共通の又は対応する要素については、同一又は類似の符号を付して、重複する説明を適宜簡略又は省略する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係るウェアラブルデバイス1の概略図である。ウェアラブルデバイス1は、作業者の身体に装着されて使用される。例示的には、ウェアラブルデバイス1は、肩ひもに固定される形態で作業者の胸部に取り付けられたり、ネックストラップを用いて作業者の首から胸部辺りにぶら下げられたりする。
【0012】
図1に示されるように、ウェアラブルデバイス1には、投影装置10が内蔵される。投影装置10は、例えば、作業者の視野の範囲のなかで注意散漫になっている領域に位置する対象物(例えば作業現場の構造物や作業現場に置かれた資材等)に対して画像(例えば注意喚起用の単純な図形)を投影する。
【0013】
図2は、投影装置10の斜視図である。
図2に示されるように、投影装置10は、複数(本例では4つ)の光走査光学系100及び1つの基板200を備える。
【0014】
個々の光走査光学系100を区別して説明する場合、4つの光走査光学系100のそれぞれに、符号100A、100B、100C、100Dを付す。また、個々の光走査光学系100の光軸AXを区別して説明する場合、光走査光学系100A、100B、100C、100Dの光軸AXのそれぞれに、符号AXA、AXB、AXC、AXDを付す。
【0015】
回転対称軸AX
0を示す線は、基板200の実装面の垂線の一例である。
図2に示されるように、光走査光学系100A~100Dは、光軸AX
A~AX
Dが回転対称軸AX
0上で交差し、且つ回転対称軸AX
0に対して回転対称に配置される。光走査光学系100A~100Dの、回転対称軸AX
0周りの配置間隔は、例えば等間隔である。すなわち、光走査光学系100A~100Dは、それぞれ、回転対称軸AX
0周りに90度ずつ回転した位置に配置される。便宜上、光軸AX
A~AX
Dの交点を符号IPで示す。
【0016】
なお、光走査光学系100の光軸AXは、光走査光学系100をなす各光学素子の中心を通る軸である。
【0017】
以下の説明において、回転対称軸AX0が延びる方向(垂線の方向の一例)をz軸方向とし、z軸方向と直交し且つ互いに直交する2つの方向をそれぞれ、x軸方向、y軸方向とする。互いに直交するx軸方向、y軸方向及びz軸方向は、左手系をなす。
【0018】
x軸及びz軸を含むxz平面に、回転対称軸AX0、光軸AXA及びAXBが含まれる。y軸及びz軸を含むyz平面に、回転対称軸AX0、光軸AXC及びAXDが含まれる。
【0019】
光走査光学系100A~100Dは、走査光が、対象物の、互いに異なる領域に投影されるように、それぞれの光軸AXA~AXDが回転対称軸AX0に対して互いに異なる角度をなす向きで配置される。異なる領域に投影された部分画像を合わせることにより、1つの画像が形成される。すなわち、1つの画像が単一の光走査光学系100では投影できない広い領域に投影されるため、広画角化が達成される。
【0020】
附言するに、走査光が、対象物の、互いに異なる領域に投影されるように、光走査光学系100A~100Dが交点IPから同じ間隔に配置され且つ各走査光が交点IPに向かう光線となるように、光走査光学系100A~100Dの各部が配置される。
【0021】
上記の1つの画像は、例えば、作業者の視野の範囲のなかで注意散漫になっている領域に対して投影される、少なくとも1つの注意喚起用の図形を含む。
【0022】
図3は、光走査光学系100の一例である。
図3に示されるように、光走査光学系100は、光源110、ミラー120、光走査部130及び拡大光学系140を含む。
【0023】
光源110は、半導体レーザ112及びコリメートレンズ114を含む。半導体レーザ112より射出された光は、コリメートレンズ114によって平行光に変換される。
【0024】
半導体レーザ112は、例えばLED(Light Emitting Diode)等の別の形態の発光素子に置き換えられてもよい。
【0025】
コリメートレンズ114は、半導体レーザ112より入射される光を、平行光でなく、緩やかな収束光に変換してもよい。コリメートレンズ114より射出される光束を平行光だけでなく緩やかな収束光でも成立するように光走査光学系100を設計することにより、コリメートレンズ114の位置調整がより一層容易となる。
【0026】
ミラー120は、光源110と光走査部130との間の光路上に配置される。ミラー120は、コリメートレンズ114より入射される平行光を光走査部130に向けて反射する。言い換えると、ミラー120は、光源110からの光の光路を光走査部130に向けて折り曲げる。
【0027】
光走査部130は、光源110からの光を走査するデバイスであり、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)である。光走査部130は、基板200に実装される。光走査部130は、±n度の範囲で高速に振動することにより、ミラー120からの平行光(又は緩やかな収束光)を振れ角に応じた方向へ反射する。光走査部130の振れ角は、例えば±3.5度である。
【0028】
拡大光学系140は、少なくとも1枚の正レンズと1枚の負レンズを含む光学系であり、例示的には、正レンズL1と負レンズL2よりなる。
【0029】
拡大光学系140は、光走査部130による走査光の走査角度を拡大する。拡大光学系140は、例えば光走査部130による走査光(振れ角±3.5度)を±22.5度(すなわち全角45度)の範囲で走査する。このように、拡大光学系140が走査角度を拡大するため、光走査部130単独では走査できない広い範囲に画像を投影することができる。
【0030】
図3中、符号R
0は、光走査部130の振れ角が0度のときの光線を示す。符号R
Pは、光走査部130の振れ角が+22.5度のときの光線を示す。符号R
Mは、光走査部130の振れ角が-22.5度のときの光線を示す。
【0031】
ミラー120は、回転対称軸AX0が延びるz軸方向(垂線が延びる方向の一例)において、正レンズL1よりも光走査部130から離れた位置に配置される。正レンズL1は、拡大光学系140のなかで光走査部130側に位置するレンズの一例である。より具体的には、正レンズL1は、拡大光学系140のなかで光走査部130に最も近くに位置するレンズの一例である。上記のようにミラー120を配置することで、光走査光学系100の各部を、限られたスペースに集約して配置することができる。そのため、投影装置10を小型化させて、ウェアラブルデバイス1のウェアラブル性を向上させることができる。
【0032】
また、光源110と光走査部130との間の光路上にミラー120を配置することで、光源110の配置の自由度が向上する。例えば、投影装置10全体の形状に合わせて光源110を配置することができる。そのため、投影装置10の小型化に有利となる。
【0033】
図4は、光走査光学系100の配置例を示す図である。
図4では、回転対称軸AX
0を挟んで対向して配置される一対の光走査光学系100(ここでは光走査光学系100Aと光走査光学系100B)が示される。
図4に示されるように、光走査光学系100A、100Bは、それぞれの光軸AX
A、AX
Bがxz平面上で回転対称軸AX
0に対して互いに異なる角度をなす向きで配置される。
【0034】
図5は、肉眼観察における人間の視野角について説明する図である。
【0035】
肉眼観察における人間(観察者)の視野角は、両眼観察の状態で、左右100度(あわせて200度)、上方50度、下方75度(あわせて125度)程度あるといわれている。この視野のなかで、頭部運動及び眼球運動によって無理なく視覚情報として捉えられる視野(安定注視野)は、左右あわせて80度程度、上下あわせて70度程度であるとされている。また、このような人間の視野に関し、広視野角における臨場感の効果が飽和する領域は、安定注視野とほぼ同等の左右50度(あわせて100度)、上方35度及び下方50度(あわせて85度)程度(誘導視野)であるとされている。
【0036】
このように、人間の視野は大きく広がっているものの、そのなかで最も高い分解能で観察できる視野は、たかだか視野中心の直径5度程度の領域(弁別視野)である。眼球運動だけで瞬時に情報が受容できる視野(有効視野)は、左右あわせて30度、上下あわせて20度程度であるとされている。
【0037】
例えば作業現場において、人間が危険性を判断できるのは有効視野の範囲内であり、有効視野外の領域に注意すべき対象があったとしても気付けないことが多い。このような事情に鑑み、本実施形態に係る投影装置10は、安定注視野以上の領域に注意喚起等の画像を投影できる構成となっている。
【0038】
図6は、投影装置10による画像の投影範囲を模式的に示す図である。
図6中、破線で示される円は、各光走査光学系100による部分画像の投影範囲を示す。円Aは、光走査光学系100Aによる部分画像の投影範囲を示す。円Bは、光走査光学系100Bによる部分画像の投影範囲を示す。円Cは、光走査光学系100Cによる部分画像の投影範囲を示す。円Dは、光走査光学系100Dによる画像の投影範囲を示す。
【0039】
図6に示されるように、投影装置10は、4つの光走査光学系100A~100Dを用いて、1つの画像をなす4つの部分画像を互いに異なる領域に投影することにより、広画角化を達成する。附言するに、各部分画像の投影領域は、投影中心が異なる。また、各部分画像の投影領域は、一部が重なり合ってもよい。
【0040】
図6から、各光走査光学系100による部分画像の投影範囲間に隙間を空けず且つ各投影範囲の重なり部分を小さく抑えることによって広画角化が達成されることが判る。ここで、光走査光学系100は、全角45度の範囲に画像を投影する。この場合、対向する光学系の向きを45度変えることにより、各光走査光学系100による部分画像の投影範囲間に隙間を空けず且つ各投影範囲の重なり部分が小さく抑えられる。
【0041】
このように、各光走査光学系100による部分画像の投影範囲間に隙間を生じさせないため、拡大光学系140を通過した走査光の全走査角度(例えば45度)は、光軸AXと回転対称軸AX0とがなす角度(例えば22.5度)の2倍又は2倍を超える角度に設定される。
【0042】
図4に示されるように、光走査光学系100Aは、xz平面において、回転対称軸AX
0に対して-22.5度をなす向きで配置される。光走査光学系100Bは、xz平面において、回転対称軸AX
0に対して+22.5度をなす向きで配置される。これと同様に、光走査光学系100Cは、yz平面において、回転対称軸AX
0に対して+22.5度をなす向きで配置される。光走査光学系100Dは、yz平面において、回転対称軸AX
0に対して-22.5度をなす向きで配置される。
【0043】
この結果、本実施形態に係る投影装置10は、作業者の有効視野以上の領域に画像を投影することができる。例示的には、投影装置10は、最大で全角90度、最低でも全角70度の範囲、すなわち、安定注視野以上の領域に画像を投影することができる。
【0044】
補足すると、本実施形態では、光走査光学系100A~100Dを回転対称軸AX0周りに回転対称に配置し且つ拡大光学系140の後段において各拡大光学系140の光軸AXが回転対称軸AX0上で交差する構成とした結果、各光走査光学系100による部分画像の投影範囲が交点IP’(投影される対象物と回転対称軸AX0との交点)を含む、交点IP’周りの位置に形成される。4つの円状の投影範囲が交点IP’を含む位置で重なるため、各投影範囲が隙間なく(又はほぼ隙間なく)配置されることとなる。
【0045】
図7は、投影装置10の構成を示すブロック図である。
図7に示されるように、基板200には、各光走査光学系100の光走査部130に加えて、MPU(Micro Processor Unit)210が実装される。半導体レーザ112、光走査部130及びMPU210は、バッテリ30より供給される電力によって動作する。
【0046】
MPU210は、例えば有線又は無線で端末装置20と接続される。端末装置20は、例えばPC(Personal Computer)、タブレット端末、スマートフォン等である。
【0047】
MPU210は、投影画像データを端末装置20より受信する。MPU210は、受信した投影画像データを半導体レーザ112用の駆動制御信号と光走査部130用の駆動制御信号に変換し、これらの駆動制御信号を、各光走査光学系100の半導体レーザ112、光走査部130のそれぞれに出力する。各光走査光学系100(半導体レーザ112及び光走査部130)は、入力される駆動制御信号に従い、投影する部分画像に応じて独立に動作する。各光走査光学系100による部分画像が合わさることで、広画角な1つの画像が対象物に投影される。
【0048】
光走査部130によるスキャン方式は、ベクタスキャンであってもよく、また、ラスタスキャンであってもよい。ベクタスキャンの場合、例えば単純な図形を高輝度で投影することができる。ラスタスキャンの場合、低輝度の画像を広い範囲に投影することができる。作業現場等で注意喚起を行う場合、例えば輝度を優先してベクタスキャンを採用してもよい。
【0049】
本実施形態では、複数の光走査光学系100を回転対称軸AX0周りに回転対称に配置したことにより、各光走査光学系100の光走査部130が回転対称軸AX0付近に集約して配置される。そのため、各光走査光学系100の光走査部130を単一の制御基板である基板200に実装することができ、投影装置10の小型化が達成される。
【0050】
図8は、本発明の変形例1に係る光走査光学系100を示す図である。
図9は、本発明の変形例1に係る光走査光学系100の配置例を示す図である。変形例1に係る光走査光学系100は、光路上に中間像Iを形成する点以外、上記の実施形態に係る光走査光学系100と同様の構成となっている。
【0051】
変形例1では、コリメートレンズ114は、半導体レーザ112より入射される光を収束させて、ミラー120と光走査部130との間の光路上に中間像Iを形成する。このように、コリメートレンズ114は、光源110と光走査部130との間の光路上に中間像Iを形成する中間像形成部の一例である。
【0052】
ここで、拡大光学系140のパワーはゼロに近いほど好ましい。そのため、中間像Iと拡大光学系140との光路上の距離が離れるほど好ましい。そこで、変形例1では、中間像Iは、光走査部130よりも光源110側の光路上に形成される。
【0053】
光源110と光走査部130との間の光路上に中間像Iを形成する構成を採用することにより、コリメートレンズ114の位置調整がより一層容易となる。
【0054】
図10は、本発明の変形例2に係る投影装置10の斜視図である。
図11は、本発明の変形例2に係る光走査光学系100の配置例を示す図である。変形例2に係る光走査光学系100は、上記の実施形態(
図2~
図7参照)に係る光走査光学系100と光路が異なる点以外、上記の実施形態に係る光走査光学系100と同様の構成となっている。
【0055】
図10及び
図11に示されるように、変形例2では、光走査光学系100A~100Dを回転対称軸AX
0周りに回転対称に配置し且つ拡大光学系140の前段において各光源110からの光の光路が交差する構成となっている。
【0056】
また、
図11に示されるように、光走査光学系100Aの拡大光学系140は、xz平面において、回転対称軸AX
0に対して+22.5度をなす向きで配置される。光走査光学系100Bの拡大光学系140は、xz平面において、回転対称軸AX
0に対して-22.5度をなす向きで配置される。これと同様に、光走査光学系100Cの拡大光学系140は、yz平面において、回転対称軸AX
0に対して-22.5度をなす向きで配置される。光走査光学系100Dの拡大光学系140は、yz平面において、回転対称軸AX
0に対して+22.5度をなす向きで配置される。
【0057】
図12は、変形例2に係る投影装置10による画像の投影範囲を模式的に示す図である。
【0058】
図12に示されるように、変形例2においても、投影装置10は、4つの光走査光学系100A~100Dを用いて、1つの画像をなす4つの部分画像を互いに異なる領域に投影することにより、広画角化を達成する。
【0059】
変形例2では、光走査光学系100A~100Dを回転対称軸AX
0周りに回転対称に配置し且つ拡大光学系140の前段において各光源110からの光の光路が交差する構成とした結果、上記の実施形態(
図2~
図7参照)と比べて、より広い範囲に画像を投影可能となっている(
図12参照)。
【0060】
附言するに、各光走査光学系100による部分画像の投影範囲間に隙間が生じにくくなるように、拡大光学系140を通過した走査光の全走査角度(例えば45度)は、光軸AXと回転対称軸AX0とがなす角度(例えば22.5度)の2倍又は2倍を超える角度に設定される。
【0061】
変形例2では、回転対称軸AX
0を挟んで対向して配置される一対の光走査光学系100においてミラー120の高さ位置を揃えると、ミラー120でケラレが発生して、適正な光が光走査部130へ入射しない。このようなケラレの発生を避けるため、変形例2では、
図11に示されるように、対向して配置される一対の光走査光学系100において、光源110及びミラー120の高さ位置が互いにずれるように配置される。
【0062】
光源110及びミラー120の高さ位置をずらして配置することにより、上記の実施形態(
図2~
図7参照)と比べて、光走査光学系100の各部を省スペースに配置することができる。そのため、投影装置10のより一層の小型化が達成される。
【0063】
図13は、本発明の変形例3に係る投影装置10の斜視図である。変形例3に係る光走査光学系100は、光路上に中間像Iを形成する点以外、変形例3に係る光走査光学系100と同様の構成となっている。
【0064】
光源110と光走査部130との間の光路上に中間像Iを形成する構成を採用することにより、変形例2と比べて、コリメートレンズ114の位置調整がより一層容易となる。
【0065】
光走査光学系100の数は4つに限らない。
図14Aは、本発明の変形例4に係る投影装置10の斜視図である。
図14Bは、変形例4に係る投影装置10による画像の投影範囲を模式的に示す図である。
【0066】
図14Aに示されるように、変形例4に係る投影装置10は、回転対称軸AX
0を挟んで対向して配置された一対の光走査光学系100Aと光走査光学系100Bを有する。変形例4では、
図14Bに示されるように、投影装置10は、一対の光走査光学系100A~100Bを用いて、1つの画像をなす2つの部分画像を互いに異なる領域に投影することにより、広画角化を達成する。
【0067】
なお、投影装置10として全角70度の投影範囲を達成するため、個々の光走査光学系100に対して全角40度×90度程度の範囲に画像を投影可能な性能が要求される。そのため、変形例4では、光走査光学系100を4つ備える構成と比べて、拡大光学系140による拡大倍率が大きく設定される。
【0068】
図15Aは、本発明の変形例5に係る投影装置10の斜視図である。
図15Bは、変形例5に係る投影装置10による画像の投影範囲を模式的に示す図である。
【0069】
図15Aに示されるように、変形例5に係る投影装置10は、回転対称軸AX
0周りに120度間隔で回転対称に配置された3つの光走査光学系100A~100Cを有する。変形例5では、
図15Bに示されるように、投影装置10は、3つの光走査光学系100A~100Cを用いて、1つの画像をなす3つの部分画像を互いに異なる領域に投影することにより、広画角化を達成する。
【0070】
なお、投影装置10として全角70度の投影範囲を達成するため、個々の光走査光学系100に対して全角60度×60度程度の範囲に画像を投影可能な性能が要求される。そのため、変形例5においても、光走査光学系100を4つ備える構成と比べて、拡大光学系140による拡大倍率が大きく設定される。
【0071】
光走査光学系100の数は2つ~4つに限らない。光走査光学系100の数は5つ以上あってもよい。
【0072】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施形態等又は自明な実施形態等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
【0073】
例えば、
図2において、光走査光学系100A~100Dは、光軸AX
A~AX
Dが回転対称軸AX
0上で交差するが、本発明の構成はこれに限らない。一例として、光軸AX
A~AX
Dは、回転対称軸AX
0付近の位置(回転対称軸AX
0からずれた位置)で交差してもよい。回転対称軸AX
0と交点IPとのずれ量は、投影に影響が出ない程度のずれ量であれば許容することができる。
【0074】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
光源と、前記光源からの光を走査する光走査部と、少なくとも1枚の正レンズと1枚の負レンズを含み且つ前記光走査部による走査光の走査角度を拡大する拡大光学系と、を含む光走査光学系を複数有し、
複数の前記光走査光学系のそれぞれが有する前記光走査部を実装する基板を備え、
複数の前記拡大光学系は、
前記基板の実装面の垂線に対して回転対称に配置され、
それぞれの前記走査光が互いに異なる領域に投影されるように、それぞれの光軸が回転対称軸である前記垂線に対して互いに異なる角度をなす向きで配置される、
投影装置。
[付記2]
前記拡大光学系の後段において、前記複数の拡大光学系の前記光軸が前記垂線上で交差する、
付記1に記載の投影装置。
[付記3]
前記拡大光学系の前段において、複数の前記光源からの光の光路が交差する、
付記1に記載の投影装置。
[付記4]
前記光源から前記光走査部へ入射される光束は、平行光又は収束光である、
付記1から付記3の何れか1つに記載の投影装置。
[付記5]
前記光源と前記光走査部との間の光路上に中間像を形成する中間像形成部を備える、
付記1から付記4の何れか1つに記載の投影装置。
[付記6]
前記光源と前記光走査部との間の光路上に、前記光源からの光の光路を前記光走査部に向けて折り曲げるミラーが配置され、
前記ミラーは、前記垂線が延びる方向において、前記拡大光学系のなかで前記光走査部側に位置するレンズよりも前記光走査部から離れて位置する、
付記1から付記5の何れか1つに記載の投影装置。
[付記7]
前記光源と前記光走査部との間の光路上に、前記光源からの光の光路を前記光走査部に向けて折り曲げるミラーが配置され、
前記垂線を挟んで配置される一対の前記光走査光学系において、前記ミラーの高さ位置が互いにずれるように配置される、
付記1から付記5の何れか1つに記載の投影装置。
[付記8]
前記拡大光学系を通過した前記走査光の全走査角度は、前記光軸と前記垂線とがなす角度の2倍以上である、
付記1から付記7の何れか1つに記載の投影装置。
[付記9]
前記複数の光走査光学系は、前記垂線周りに等間隔で配置される、
付記1から付記8の何れか1つに記載の投影装置。
[付記10]
前記複数の拡大光学系を含む前記複数の光走査光学系の全体が前記垂線に対して回転対称に配置される、
付記1から付記9の何れか1つに記載の投影装置。
【符号の説明】
【0075】
1 :ウェアラブルデバイス
10 :投影装置
20 :端末装置
30 :バッテリ
100 :光走査光学系
110 :光源
112 :半導体レーザ
114 :コリメートレンズ
120 :ミラー
130 :光走査部
140 :拡大光学系
200 :基板
210 :MPU