(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076056
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】薬液揮散器
(51)【国際特許分類】
A61L 9/12 20060101AFI20240529BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20240529BHJP
B65D 85/00 20060101ALI20240529BHJP
A01M 1/20 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
A61L9/12
B65D83/00 F
B65D85/00 A
A01M1/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187419
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平川 宣幸
【テーマコード(参考)】
2B121
3E068
4C180
【Fターム(参考)】
2B121CA02
2B121CA17
2B121CA46
2B121CA51
3E068AA40
3E068CC14
3E068CE19
4C180AA02
4C180CA06
4C180GG12
4C180GG17
4C180HH10
4C180LL20
(57)【要約】
【課題】吸上芯材により薬液を効率よく揮散可能であり、かつ、装飾花を用いて装飾性を向上させても倒れにくい薬液揮散器を提供する。
【解決手段】薬液揮散器1は、薬液を収容する容器2と、下端31が容器2の内底に接触しかつ上端30側の一部分が容器2の口部20から上方に突き出るように容器2内に挿入されて、薬液を吸い上げる少なくとも一つの吸液芯材3と、茎40の少なくとも一部分が口部20から容器2内に挿入されて、容器2に装飾される装飾用花4と、を備える。装飾用花4は、造花及び加工花の少なくとも一方を用いて構成され、吸液芯材3の上端30は、装飾用花4の上方で露出しており、容器2の下端から装飾用花4の重心までの鉛直方向の距離は、容器2の下端から吸液芯材3の上端30までの鉛直方向の距離の半分以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を収容する容器と、
下端が前記容器の内底に接触しかつ上端側の一部分が前記容器の口部から上方に突き出るように前記容器内に挿入されて、前記薬液を吸い上げる少なくとも一つの吸液芯材と、
茎の少なくとも一部分が前記口部から前記容器内に挿入されて、前記容器に装飾される装飾用花と、
を備え、
前記吸液芯材の上端は、前記装飾用花の上方で露出しており、
前記容器の下端から前記装飾用花の重心までの鉛直方向の距離は、前記容器の下端から前記吸液芯材の上端までの鉛直方向の距離の半分以下である、薬液揮散器。
【請求項2】
前記装飾用花は、前記茎の少なくとも一部分を前記口部から前記容器内に挿入した際に前記口部の上端に引っ掛かる係止部を含む、請求項1に記載の薬液揮散器。
【請求項3】
前記茎は、前記係止部が前記口部の上端に引っ掛かった状態で前記茎の下端が前記内底に接触する長さを有する、請求項2に記載の薬液揮散器。
【請求項4】
前記茎は、前記係止部が前記口部の上端に引っ掛かった状態で前記茎の下端が前記内底に接触しない長さを有する、請求項2に記載の薬液揮散器。
【請求項5】
前記容器の胴部の高さ方向に直交する断面における形状が長方形状である、請求項1から4のいずれか一項に記載の薬液揮散器。
【請求項6】
前記装飾用花は、造花及び加工花の少なくとも一方を複数集めて結束部材で束ねたブーケである、請求項1から4のいずれか一項に記載の薬液揮散器。
【請求項7】
前記装飾用花は、ポリエステル製の薄片からなる花弁を少なくとも一つ含む複数の前記造花を含み、
前記薄片は、複数の前記造花の全てで同じ色に着色されている、請求項6に記載の薬液揮散器。
【請求項8】
前記装飾用花は、前記茎の少なくとも一部分が少なくとも一つのワイヤーを用いて構成された前記造花を含み、
前記結束部材から下方に前記ワイヤーの一部分が複数延びており、
前記結束部材から下方に延びる前記ワイヤーの一部分の少なくとも二つがまとめてテープにより巻き付けられている、請求項6に記載の薬液揮散器。
【請求項9】
前記装飾用花は、前記茎の少なくとも一部分が少なくとも一つのワイヤーを用いて構成された複数の前記造花を含み、
一つの前記造花の前記ワイヤーが他の少なくとも一つの前記造花の前記ワイヤーとまとめてテープにより巻き付けられている、請求項6に記載の薬液揮散器。
【請求項10】
前記装飾用花は、前記茎の少なくとも一部分が少なくとも一つのワイヤーを用いて構成された複数の前記造花を含み、
全ての前記造花の全ての前記ワイヤーがまとめてテープにより巻き付けられている、請求項6に記載の薬液揮散器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬液揮散器に関する。
【背景技術】
【0002】
薬液が収容された容器内に、例えばスティック型の吸上芯材を挿入して使用する薬液揮散器が知られている。薬液は、例えば芳香液又は消臭液などの液状の薬剤である。薬液揮散器は、容器内の薬液を吸上芯材により吸い上げ、吸上芯材において容器の口部から上方に突き出た部分から薬液を外部空間に揮散させる。薬液の揮散により、薬液に含まれる機能性成分が外部空間に徐々に放出され、芳香効果などの薬効が外部空間に付与される。
【0003】
薬液揮散器は、リビングや玄関などの人の目に触れる場所に設置される場合が多い。そのため、近年、薬液揮散器は、芳香効果などの薬効の付与という役割に加え、インテリアとしてその装飾性を高めることが求められる傾向にある。薬液揮散器の装飾性を向上させるため、例えば特許文献1では、液体香料を収容するアロマタンク上に、吸上芯材を上方から覆うように造花又は加工花などの装飾花を配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のアロマディフューザは、吸上芯材が装飾花で被覆されており、吸上芯材によってアロマタンク内から吸い上げた液体香料を装飾花の隙間などを通じて外部空間に揮散させる。そのため、液体香料が効率よく揮散しない。液体香料の揮散効率を向上させるために、吸上芯材を長くして吸上芯材の上端部を装飾花よりも上方に突き出させると、アロマディフューザの重心の位置が上がる。特許文献1に記載のアロマディフューザは、装飾花がアロマタンクの上カバーの上に配置されていることもあり、重心の位置が上がると、倒れやすくなり、アロマタンク内から液体香料が漏れ出る可能性がある。
【0006】
本開示は、上記課題に着目して、吸上芯材により薬液を効率よく揮散可能であり、かつ、装飾花を用いて装飾性を向上させても倒れにくい薬液揮散器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の薬液揮散器は、上記課題を解決するため、以下の項1に記載の薬液揮散器を主題として包含する。
【0008】
項1.薬液を収容する容器と、
下端が前記容器の内底に接触しかつ上端側の一部分が前記容器の口部から上方に突き出るように前記容器内に挿入されて、前記薬液を吸い上げる少なくとも一つの吸液芯材と、
茎の少なくとも一部分が前記口部から前記容器内に挿入されて、前記容器に装飾される装飾用花と、
を備え、
前記吸液芯材の上端は、前記装飾用花の上方で露出しており、
前記容器の下端から前記装飾用花の重心までの鉛直方向の距離は、前記容器の下端から前記吸液芯材の上端までの鉛直方向の距離の半分以下である、薬液揮散器。
【0009】
また、本開示の薬液揮散器は、上記項1に記載の薬液揮散器の好ましい態様として、以下の項2に記載の薬液揮散器を包含する。
【0010】
項2.前記装飾用花は、前記茎の少なくとも一部分を前記口部から前記容器内に挿入した際に前記口部の上端に引っ掛かる係止部を含む、項1に記載の薬液揮散器。
【0011】
また、本開示の薬液揮散器は、上記項2に記載の薬液揮散器の好ましい態様として、以下の項3に記載の薬液揮散器を包含する。
【0012】
項3.前記茎は、前記係止部が前記口部の上端に引っ掛かった状態で前記茎の下端が前記内底に接触する長さを有する、項2に記載の薬液揮散器。
【0013】
また、本開示の薬液揮散器は、上記項2に記載の薬液揮散器の好ましい態様として、以下の項4に記載の薬液揮散器を包含する。
【0014】
項4.前記茎は、前記係止部が前記口部の上端に引っ掛かった状態で前記茎の下端が前記内底に接触しない長さを有する、項2に記載の薬液揮散器。
【0015】
また、本開示の薬液揮散器は、上記項1から項4に記載の薬液揮散器の好ましい態様として、以下の項5に記載の薬液揮散器を包含する。
【0016】
項5.前記容器の胴部の高さ方向に直交する断面における形状が長方形状である、項1から4のいずれか一項に記載の薬液揮散器。
【0017】
また、本開示の薬液揮散器は、上記項1から項5に記載の薬液揮散器の好ましい態様として、以下の項6に記載の薬液揮散器を包含する。
【0018】
項6.前記装飾用花は、造花及び加工花の少なくとも一方を複数集めて結束部材で束ねたブーケである、項1から5のいずれか一項に記載の薬液揮散器。
【0019】
また、本開示の薬液揮散器は、上記項6に記載の薬液揮散器の好ましい態様として、以下の項7に記載の薬液揮散器を包含する。
【0020】
項7.前記装飾用花は、ポリエステル製の薄片からなる花弁を少なくとも一つ含む複数の前記造花を含み、
前記薄片は、複数の前記造花の全てで同じ色に着色されている、項6に記載の薬液揮散器。
【0021】
また、本開示の薬液揮散器は、上記項6及び項7に記載の薬液揮散器の好ましい態様として、以下の項8に記載の薬液揮散器を包含する。
【0022】
項8.前記装飾用花は、前記茎の少なくとも一部分が少なくとも一つのワイヤーを用いて構成された前記造花を含み、
前記結束部材から下方に前記ワイヤーの一部分が複数延びており、
前記結束部材から下方に延びる前記ワイヤーの一部分の少なくとも二つがまとめてテープにより巻き付けられている、項6又は7に記載の薬液揮散器。
【0023】
また、本開示の薬液揮散器は、上記項6及び項7に記載の薬液揮散器の好ましい態様として、以下の項9に記載の薬液揮散器を包含する。
【0024】
項9.前記装飾用花は、前記茎の少なくとも一部分が少なくとも一つのワイヤーを用いて構成された複数の前記造花を含み、
一つの前記造花の前記ワイヤーが他の少なくとも一つの前記造花の前記ワイヤーとまとめてテープにより巻き付けられている、項6又は7に記載の薬液揮散器。
【0025】
また、本開示の薬液揮散器は、上記項6及び項7に記載の薬液揮散器の好ましい態様として、以下の項10に記載の薬液揮散器を包含する。
【0026】
項10.前記装飾用花は、前記茎の少なくとも一部分が少なくとも一つのワイヤーを用いて構成された複数の前記造花を含み、
全ての前記造花の全ての前記ワイヤーがまとめてテープにより巻き付けられている、項6又は7に記載の薬液揮散器。
【発明の効果】
【0027】
本開示の薬液揮散器によれば、吸上芯材により薬液を効率よく揮散可能であり、かつ、装飾用花を用いて装飾性を向上させても薬液揮散器を倒れにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る薬液揮散器の正面図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係る薬液揮散器の背面図である。
【
図3】
図3は、吸液芯材を挿入した状態の容器の縦断面図である。
【
図4】
図4は、装飾用花を取り付けた状態の容器の縦断面図である。
【
図5】
図5は、変形例の装飾用花を取り付けた状態の容器の縦断面図である。
【
図7】
図7は、ブーケ状の装飾用花を形成するために複数の造花を集めて束ねる手順を示す図である。
【
図8】
図8(A)から
図8(D)は、それぞれ別種類の造花の正面図である。
【
図9】
図9(A)及び
図9(B)は、それぞれ別種類の造花の正面図である。
【
図10】
図10(A)及び
図10(B)は、造花の茎の一部分としてワイヤーを茎に固定した状態を示す図である。
【
図11】
図11は、造花の茎の一部分をワイヤー及びフローラルテープで形成する手順を示す図である。
【
図12】
図12は、造花の茎の一部分をワイヤー及びフローラルテープで形成する手順を示す図である。
【
図13】
図13は、合成樹脂で形成した造花の茎にフローラルテープを巻く手順を示す図である。
【
図14】
図14は、茎の一部分がワイヤーで構成されている二つの造花について、二つの茎をまとめてフローラルテープで巻き付ける手順を示す図である。
【
図15】
図15は、複数の造花の全てについて、複数の茎をまとめてフローラルテープで巻き付ける手順を示す図である。
【
図16】
図16は、薬液揮散器の倒れにくさを測定する方法を説明する図である。
【
図17】
図17は、実施例2の薬液揮散器の容器内に残量する薬液の状態を示す写真である。
【
図18】
図18は、実施例3の薬液揮散器の容器内に残量する薬液の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示の薬液揮散器は、揮散性を有する薬液を収容した容器内に吸液芯材を挿入し、吸液芯材により薬液を容器外まで吸い上げることで、薬液を外部空間に揮散させる。本開示の薬液揮散器は、例えば芳香液、消臭液などを薬液とし、芳香効果、消臭効果などの薬効を外部空間に付与する。本開示の薬液揮散器は、室内、車内などの空間の臭気による不快感をなくして快適な空間を生み出す目的で使用される。なお、本開示の薬液揮散器の上述した使用目的はあくまでも一例である。
【0030】
以下、本開示の薬液揮散器の一実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、本開示では、自立する薬液揮散器の高さの方向を上下方向とする。
【0031】
<薬液揮散器の全体構成>
図1及び
図2に示すように、薬液揮散器1は、薬液を収容する容器2と、容器2内に挿入される少なくとも一つの吸液芯材3と、容器2に装飾される装飾用花4と、を備える。容器2は、上部に口部20を有する。
【0032】
薬液は、口部20の上端開口から容器2内に注入することができる。薬液は、揮散性を有し、空気との接触により薬液に含まれる機能性成分を大気中に徐々に放出する。薬液の種類は特に限定されないが、一般的には芳香剤又は消臭剤、あるいはこれらの混合物であり、使用目的に応じて、香料、消臭成分などを機能性成分として含有する。なお、薬液は、必ずしも芳香剤又は消臭剤に限られず、防虫剤など、他の機能を有する薬液であってもよい。薬液は、必要に応じて着色料などの添加剤が含まれていてもよい。また、薬液は、香料、消臭成分などの機能性成分を溶媒に可溶化させるために、溶解剤が含まれていてもよい。
【0033】
薬液に含まれる溶媒は、親水性溶媒又は親油性溶媒、あるいはこれらの混合物とすることができ、使用目的に応じて適宜選択される。薬液が香料を含む場合には、その香り強度を高めるために、溶媒として少なくとも親油性溶媒を含むことが好ましい。親水性溶媒としては、例えば、水又はエタノール、或いはこれらの混合物を使用することができる。親油性溶媒としては、例えば、グリコールエーテル又はイソパラフィン系溶媒、あるいはこれらの混合物を使用することができる。
【0034】
吸液芯材3は、口部20の上端開口から容器2内に挿入することができる。吸液芯材3においては、下端31側の一部分が容器2内で薬液に浸漬し、上端30側の一部分が容器2の口部20から上方に突き出て外部空間に露出している。吸液芯材3は、上下方向に対し傾斜した状態で容器2にセットされる。容器2内の薬液は、吸液芯材3を伝って吸液芯材3の下端31側から上端30側まで上昇し、吸液芯材3の外表面から外部空間に揮散する。これにより、薬液揮散器1の置かれた周囲の外部空間に薬効を付与することができる。
【0035】
装飾用花4は、口部20の上端開口から容器2内に装飾用花4の茎40の少なくとも一部分を挿入することで、容器2に取り付けることができる。装飾用花4の花弁41は、容器2の口部20の上方に位置して外部空間に露出しており、外部から容易に視認可能である。装飾用花4の茎40の少なくとも一部分を容器2内に挿入し、装飾用花4の花弁41を容器2の上で露出させるようにして、装飾用花4を容器2に装飾することで、薬液揮散器1を花を生けた花瓶のように見せることができる。そのため、インテリアとして薬液揮散器1の装飾性を高めることができる。
【0036】
このように、本実施形態の薬液揮散器1によれば、ユーザは、薬液の揮散による芳香などの薬効を期待できるとともに、装飾用花4による華やかな美観を楽しむことができる。
【0037】
次に、本実施形態の薬液揮散器1を構成する容器2、吸液芯材3及び装飾用花4について、順に詳述する。
【0038】
<容器>
図1から
図4に示すように、容器2は、好ましくは一部分又は全体が透明又は半透明である。容器2の少なくとも一部分が透明又は半透明であることで、外部から容器2内の薬液の残量を確認することができる。なお、容器2は、透明及び半透明でなくてもよい。容器2は、無色及び有色のいずれであってもよい。容器2の素材は、特に限定されず、例えばガラス、合成樹脂、陶器などを用いることができる。容器2の美観を向上させてインテリアとして薬液揮散器1の装飾性を高めるためには、容器2をガラス製とすることが好ましい。
【0039】
容器2は、薬液を収容可能な収容空間を画定する胴部21と、胴部21に一体に形成された口部20と、を備える。胴部21は、底壁22と、底壁22の外周縁に上方に延びるように連なる周壁23と、周壁23の上端縁に内側に延びるように連なる上壁24と、を備える。口部20は、上壁24の中央部に上方に延びるように連なる。
【0040】
口部20は、上端及び下端が開口する筒状を呈する。口部20の横断面の形状は例えば円形状である。なお、容器2における横断面とは、上下方向に直交する断面である。口部20は、底壁22及び上壁24の中央部の真上に位置する。口部20の中心と底壁22及び上壁24の中心とは同一直線状にある。なお、口部21は筒状であれば横断面の形状は必ずしも円形である必要はなく、任意の形状とすることができる。
【0041】
胴部21の横断面の形状は、特に限定されず、円形、楕円形、多角形など、任意の形状とすることができる。胴部21の横断面の形状は、好ましくは長方形である。胴部21は、扁平形状であることが好ましい。具体的には、胴部21の左右方向の幅又は上下方向の高さに対し、相対的に前後方向の厚みが小さいことが好ましい。左右方向とは、上下方向に対して直交する方向である。前後方向とは、上下方向及び左右方向の両方に対して直交する方向である。胴部21が扁平形状を呈することで、容器2に装飾した装飾用花4の外観、つまりはユーザが装飾用花4を外部から見たときの美観を良くすることができる。なお、前記長方形には、長辺又は短辺が直線ではなく外側に凸に湾曲した形状(略長方形)も含まれる。
【0042】
胴部21の左右方向の幅と前後方向の厚みとの比率は、特に限定されないが、左右方向の幅は前後方向の厚みに対して1.1倍以上5.0倍以下であることが好ましく、1.5倍以上4.0倍以下であることがより好ましい。例えば、胴部21の左右方向の幅は60mm以上100mm以下であり、胴部21の前後方向の厚みは20mm以上75mm以下である。
【0043】
胴部21の底壁22は上側面及び下側面を有する。底壁22の上側面は、容器2の内底である。底壁22の下側面は、容器2の下端である。
【0044】
底壁22の上側面は、平坦でもよいが、好ましくは一部分が上方に隆起している。例えば、底壁22の上側面は、中央部が外周部よりも上方に隆起するように形成される。これにより、容器2内の薬液の残量が少なくなった場合に、薬液は底壁22の外周部に溜まる。一方で、吸液芯材3は上下方向に対し傾斜した状態で容器2にセットされ、吸液芯材3の下端31は、通常、底壁22の外周部で底壁22に接触する。よって、残った薬液に吸液芯材3が接触しやすく、薬液を薬液2内にできる限り残すことなく吸液芯材3により吸い上げることができる。
【0045】
あるいは、
図1から
図4に示す本実施形態のように、胴部21の横断面形状が長方形である場合に、底壁22の上側面は、長辺方向の一方の端部から他方の端部に向かって上方に隆起した後に沈降する、つまりは、長辺方向の両端部から中央部に向かって上方に隆起するように形成される。これにより、容器2内の薬液の残量が少なくなった場合に、薬液は底壁22の長辺方向の両端部に溜まる。一方で、吸液芯材3は上下方向に対し傾斜した状態で容器2にセットされ、吸液芯材3の下端31は、通常、底壁22の長辺方向の両端部で底壁22に接触する。よって、残った薬液に吸液芯材3が接触しやすく、薬液を薬液2内にできる限り残すことなく吸液芯材3により吸い上げることができる。
【0046】
底壁22の下側面は、平坦でもよいが、好ましくは中央部22Aが外周部22Bよりも隆起している。これにより、容器2を水平な台などの上に載置した場合に、底壁22の下側面の外周部22Bが台などに接触する。そのため、容器2を台などの上に安定して載置することができる。なお、容器2の下端は、底壁22の下側面において最も下方に位置する部分であり、台などの上に載置した場合に台などに接触する部分である。
【0047】
周壁23と底壁22との間及び周壁23と上壁24との間の角部に丸みが付けられている。これにより、ユーザが容器2を把持しやすくなる。なお、周壁23と底壁22の間及び周壁23と上壁24との間の角部は必ずしも丸みが付けられている必要はない。また、周壁23の外表面は、全周にわたって平滑であるが、凹凸が交互に繰り返す凹凸面であってもよい。
【0048】
周壁23は、
図1から
図4に示す本実施形態では、前側の正面壁23A及び後ろ側の背面壁23Bと、左側の側壁23C及び右側の側壁23Dと、を備える。正面壁23A及び背面壁23Bは対向し、互いに概ね平行である。左側の側壁23C及び右側の側壁23Dも対向し、互いに概ね平行である。正面壁23A及び背面壁23Bの外表面は、横断面において、左右方向に沿って平坦であってもよいし、外側に向かって凸に湾曲していてもよい。また、正面壁23A及び背面壁23Bの外表面は、上下方向に平行な縦断面において上下方向に沿って平坦であってもよいし、外側に向かって凸に湾曲していてもよい。左側の側壁23C及び右側の側壁23Dの外表面は、横断面において、前後方向に沿って平坦であってもよいし、外側に向かって凸に湾曲していてもよい。また、左側の側壁23C及び右側の側壁23Dの外表面は、縦断面において上下方向に沿って平坦であってもよいし、外側に向かって凸に湾曲していてもよい。
【0049】
胴部21の上壁23は、外周縁から口部20が連なる内周縁に向かうに連れて高くなるよう傾斜している。なお、上壁23は、必ずしも傾斜している必要はなく、外周縁と内周縁とで高さが同じとなるように水平であってもよい。
【0050】
<吸液芯材>
図1から
図3に示すように、吸液芯材3は、細長い棒状を呈する。吸液芯材3は、上端30及び下端31の間を直線的に延びていてもよいし、一部又は全体が湾曲していてもよいし、蛇行していてもよい。吸液芯材3の長さ方向に直交する横断面における形状は、特に限定されず、略円形、略楕円形、略多角形、星形など、任意の形状とすることができる。
【0051】
容器2内に挿入された状態では、吸液芯材3の下端31が容器2の内底に接触し、吸液芯材3の上端30側の一部分が容器2の口部20から上方に突き出る。そのため、吸液芯材3の長さは、容器2の高さに対して十分に大きい。吸液芯材3において、容器2に装飾された状態の容器2よりも上方に突き出る部分の長さは、吸液芯材3により薬液を効果的に揮散させるためには、70mm以上であることが好ましく、100mm以上であることが好ましい。加えて、吸液芯材3は、容器2内に挿入された状態では、吸液芯材3の上端30が容器2に装飾された装飾用花4の上方で露出する。そのため、吸液芯材3の長さは、容器2の高さに加え、容器2に装飾された状態の装飾用花4の高さに対して十分に大きい。吸液芯材3において、容器2に装飾された状態の装飾用花4よりも上方に突き出る部分の長さは、特に限定されないが、吸液芯材3により薬液を効果的に揮散させるためには、10mm以上であることが好ましい。
【0052】
吸液芯材3は、多数が同時に使用されるのが一般的である。吸液芯材3が細すぎると折れやすく、太すぎると美感を損ねるため、吸液芯材3の太さは、2.5mm以上6.0mm以下であることが好ましい。なお、吸液芯材3の使用本数、太さは特に限定されるものではなく、吸液芯材3の使用本数は一つを含む少数であってもよく、多少太い吸液芯材3が使用されてもよい。
【0053】
吸液芯材3は、容器2内から薬液を毛細管現象により吸い上げて外部空間に揮散させることができる限り、吸液芯材3の材質及び形状は特に限定されない。吸液芯材3は、例えば、外周に複数の凹状の溝を周方向に間隔をあけて有する棒状体、内部に複数の微細孔を有する棒状体、あるいは、前記複数の溝及び前記複数の微細孔を有する棒状体を用いて構成することができる。これらの溝、微細孔は、吸液芯材3の長さ方向に沿って下端31から上端30まで筋状に延びている。吸液芯材3の素材は、例えば、柳枝又はラタンなどの天然素材、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアセタールなどの合成樹脂、ガラス、綿、紙、パルプなどを用いることができる。
【0054】
<装飾用花>
図1、
図2、
図4及び
図6に示すように、装飾用花4は、容器2に取り付けられ、容器2を装飾するための部材である。装飾用花4は、茎40と、花弁41と、を少なくとも備える。茎40は、上側の部分において、茎40から枝分かれした複数の枝を備え、茎40ないしは各枝に花弁41が付けられている。なお、装飾用花4は、茎40及び枝の少なくとも一方に、実、葉などが付けられていてもよい。また、装飾用花4は、花弁41がない花であってもよく、花穂を備える花であってもよい。
【0055】
装飾用花4において茎40が枝分かれしている上側の部分Aは、茎40が枝分かれしていない下側の部分Bよりも横断面において大きい。装飾用花4の下側の部分B、つまりは、茎40が枝分かれしていない部分は容器2の口部20の内側を通過可能である。一方、装飾用花4の上側の部分Aは、横断面視の大きさで容器2の口部20の内径よりも大きく、容器2の口部20の内側を通過不可能である。そのため、装飾用花4は、上側の部分Aと下側の部分Bとの間に、茎40から容器2内に挿入した際に口部20の上端に接触する係止部Cを含んでいる。
【0056】
この係止部Cが口部20の上端に引っ掛かることで、装飾用花4は、これ以上の容器2内への挿入が規制される。よって、装飾用花4は、係止部Cが容器2の口部20に接触するまで容器2内に挿入するだけで、容器2に取り付けることができる。また、装飾用花4は容器2に取り付けられると、口部20の上に安定して配置されるので、装飾用花4の重心G2の位置を安定させることができる。
【0057】
装飾用花4は、重心G2が次の条件(1)を満たすように形成されている。
【0058】
条件(1):
装飾用花4を容器2に取り付けた状態で、容器2の下端から装飾用花4の重心G2までの鉛直方向の距離H2が、容器2の下端から容器2内に挿入された吸液芯材3の上端30までの鉛直方向の距離H1(
図3に示す)の半分以下である。
【0059】
吸液芯材3において前記距離H1の半分の位置G1は、おおよそ吸液芯材3の重心の位置である。装飾用花4の重心G2が吸液芯材3の前記位置G1と上下方向において同じ位置にある又は前記位置G1よりも下方の位置にあることで、薬液揮散器1全体の重心の位置を下げることができる。よって、薬液揮散器1を台などの上に載置した際の安定性が高くなり、台などが揺れたり薬液揮散器1に外部から多少の衝撃が加わっても薬液揮散器1を倒れにくくすることができる。
【0060】
なお、複数の吸液芯材3が容器2内に挿入されている状態で、上端30の上下方向の位置がばらついていて、容器2の下端から吸液芯材3の上端30までの鉛直方向の距離H1が均一でない場合は、平均値を前記条件(1)の距離H1とする。
【0061】
装飾用花4を容器2に取り付け、装飾用花4が係止部Cで容器2の口部20に引っ掛かって支持されている状態において、茎40の下端は、
図4に示す本実施形態のように容器2の内底、つまりは底壁22の上側面に接触していなくてもよいし、
図5に示すように容器2の内底に接触していてもよい。
【0062】
図5に示すように、茎40が容器2の内底まで到達する長さを有していると、
図4に示すような茎40が容器2の内底まで到達しない長さを有する場合と比較して、装飾用花4の重心の位置を下げることができる。そのため、薬液揮散器1全体の重心の位置を下げることができ、薬液揮散器1を倒れにくくすることができる。
【0063】
なお、図示は省略するが、茎40が容器2の内底まで到達するものの、茎40が長すぎて装飾用花4の上側の部分Aが容器2の口部20の上端に引っ掛からない場合は、装飾用花4の重心の位置及び薬液揮散器1全体の重心の位置が上がりすぎる。よって、薬液揮散器1が倒れやすくなる。しかし、
図4に示すように、茎40が容器2の内底まで到達していなくても、装飾用花4が係止部Cで口部20の上端に引っ掛かることで、装飾用花4の重心G2の位置が下がり、薬液揮散器1全体の重心の位置も下げる。よって、薬液揮散器1を倒れにくくすることができる。
【0064】
このように、容器2の下端から装飾用花4の重心G2(重心G2´)までの鉛直方向の距離H2(距離H2´)を、容器2の下端から吸液芯材3の上端30までの鉛直方向の距離H1の半分以下であることで、薬液揮散器1を倒れにくくすることができる。この効果は、本実施形態のように、容器2が扁平形状である場合に特に有効である。つまり、容器2が扁平形状であると、容器2は厚みの小さな前後方向に倒れやすい。一方で、容器2が扁平形状であると容器2に装飾する装飾用花4を外部から見たときの美観が良くなる。上記効果により、薬液揮散器1の容器2に扁平形状のものを採用した際の欠点を克服して薬液揮散器1を倒れにくくすることができ、そのうえ容器2に扁平形状のものを採用した際の利点である装飾用花4の美観の向上が可能であり、インテリアとして薬液揮散器1の装飾性を高めることができる。
【0065】
装飾用花4は、造花及び加工花の少なくとも一方を用いて構成することができる。造花は、例えば生花を模して作られた人工物であり、アートフラワー、シルクフラワー、アーティフィシャルフラワーなどを含む。なお、本開示の造花には、花弁、花穂を備えず、葉、実だけを備える花、植物も含まれる。加工花は、例えば生花を加工して作られた加工物であり、ドライフラワー、プリザーブドフラワーなどを含む。造花及び加工花は、生花よりも長期保存が可能であり、生花のように水交換の必要がなく生花と比べて日々の手入れが容易である。そのため、装飾用花4によって長期間にわたり装飾性に優れた薬液揮散器1を提供することができる。
【0066】
装飾用花4は、一つの造花又は加工花を用いて構成されていてもよいが、複数の造花、複数の人工花、もしくは、複数の造花及び加工花の組み合わせを用いて構成されていて、ブーケの形状を呈することが好ましい。これにより、装飾用花4の美観が向上し、インテリアとして薬液揮散器1の装飾性を高めることができる。
【0067】
本実施形態では、装飾用花4は、複数の造花4Aから造花4F(
図8及び
図9に示す)を含み、複数の造花4Aから造花4Fを集めて結束部材5で束ねることでブーケ状とされている。結束部材5は、
図7に示すように、紐5A、テープ5Bなどの公知のものを用いることができる。本実施形態では、複数の造花4Aから造花4Fの茎40において、それぞれ枝42(
図8及び
図9に示す)が分岐する手前の部分を、
図7(A)に示すように、まずは紐5Aで縛って複数の造花4Aから造花4Fの茎40を束ねる。そして、
図7(B)に示すように、紐5Aの上から複数の造花4Aから造花4Fの茎40の周りにテープ5Bを巻き付けている。紐5Aは、例えばワイヤーである。
【0068】
テープ5Bは、例えば紙、布、不織布などの帯状の基材の一方面に粘着剤層が設けられたものである。テープ5Bには、フラワーアレンジメントなどで従来から使用されているフローラルテープを好ましく用いることができる。フローラルテープは、基材の色が緑色、黄緑色、薄緑色など、任意の色のものを用いることができる。
【0069】
図8及び
図9に示す造花4Aから造花4Fは、例えば合成樹脂で形成することができる。
図8(A)及び
図8(B)に示す造花4A及び造花4Bの茎40、花弁41及び枝42は、例えばポリエチレンなどの合成樹脂を素材として用いている。なお、造花4Bの葉43は、例えばポリエステルなどの合成樹脂製の薄片を用いて構成されている。葉43を構成する薄片は、装飾性を発揮するべく、着色(染色を含む)されていることが好ましい。染色剤としては、染料、顔料を使用することができる。
【0070】
図8(C)に示す造花4Cの茎40の一部分及び枝42、並びに、
図8(D)に示す造花4Dの茎40及び枝42は、例えばポリエチレンなどの合成樹脂を素材として用いている。一方、造花4C,4Dの花弁41は、例えばポリエステルなどの合成樹脂製の薄片を用いて構成されている。花弁41を構成する薄片は、装飾性を発揮するべく、着色(染色を含む)されていることが好ましい。染色剤としては、染料、顔料を使用することができる。
【0071】
花弁41を構成するポリエステル製の薄片は、複数の造花(造花4C及び造花4D)の間で異なる色で着色されていてもよいが、全て同じ色で着色されていることが好ましい。花弁41を構成する薄片が複数の色で着色されている場合には、全ての薄片が同じ複数の色で着色されていることが好ましい。ポリエステル製の薄片からなる花弁41は、吸液芯材3で吸い上げた薬液が接触して濡れた状態になると、花弁41同士がくっついた際に色移りする可能性がある。ある色に着色された花弁41に他の色に着色された花弁41がくっついて色移りすると、花弁41の色が変化し、花弁41の装飾性が低下する。花弁41を構成する薄片が全て同じ色で着色されていると、色移りしても花弁41の色の変化を抑えることができるため、花弁41の装飾性の低下を防止することができる。
【0072】
図9(A)及び
図9(B)に示す造花4E及び造花4Fは、花弁41の代わりに葉43を備えている。造花4E及び造花4Fの茎40の一部分、枝42及び葉43は、例えばポリエチレンなどの合成樹脂を素材として用いている。
【0073】
図8(C)に示す造花4C、並びに、
図9(A)及び
図9(B)に示す造花4E及び造花4Fの茎40の一部分は、
図10から
図12に示すように、ワイヤー6及びテープ7で形成されている。
【0074】
図8(C)に示す造花4Cでは、
図10(A)に示すように、合成樹脂製の茎40から枝42が分岐している箇所にU字状に折り曲げた一つのワイヤー6をその折り返し部を引っ掛けることで固定する。そして、
図11(A)から
図11(C)に示すように、ワイヤー6の折り返しにより二重となって下方に延びるワイヤー6の一部分にテープ7を幾重に巻き付けている。テープ7は、ワイヤー6の取付部位を隠すように合成樹脂製の茎40から巻き始められ、結束部材5(
図6に示す)から下方に延びるワイヤー6の先端部分まで巻き付けられる。これにより、合成樹脂製の茎40とワイヤー6及びテープ7で形成された茎40とで一つの造花4Cの茎40が形成されている。
【0075】
図9(B)に示す造花4Fでは、
図10(B)に示すように、合成樹脂製の茎40に一つのワイヤー6を巻き付けることで固定する。そして、
図12(A)から
図12(C)に示すように、ワイヤー6の合成樹脂製の茎40から二重に下方に延びるワイヤー6の一部分にテープ7を幾重に巻き付けている。テープ7は、ワイヤー6の取付部位を隠すように合成樹脂製の茎40から巻き始められ、結束部材5(
図6に示す)から下方に延びるワイヤー6の先端部分まで巻き付けられる。これにより、合成樹脂製の茎40とワイヤー6及びテープ7で形成された茎40とで一つの造花4Fの茎40が形成されている。
【0076】
なお、ワイヤー6を合成樹脂製の茎40の固定する方法は特に限定されず、その他、合成樹脂製の茎40にワイヤー6を突き刺して固定する方法など、任意の固定方法を用いることができる。また、茎40の一部分を形成するためのワイヤー6の数は一つに限定されず、二つ以上のワイヤー6を用いてもよい。
【0077】
図9(A)に示す造花4Eの茎40については説明を省略するが、同様に、合成樹脂製の茎40にワイヤー6を任意の方法で固定し、ワイヤー6に合成樹脂製の茎40とともにテープ7を幾重にも巻き付けることで、形成することができる。その他の造花4A、造花4B及び造花4Dについても、同様に、茎40の一部分をワイヤー6及びテープ7で形成することができる。
【0078】
ワイヤー6は、金属製の線材であり、手で容易に折り曲げることが可能な柔軟性を有し、かつ、折り曲げても折れにくい性質を有する。ワイヤー6の太さは、茎40の太さ、強度、用いるワイヤーの数などに応じて適宜選択される。
【0079】
テープ7は、例えば紙、布、不織布などの帯状の基材の一方面に粘着剤層が設けられたものである。テープ7には、フラワーアレンジメントなどで従来から使用されているフローラルテープを好ましく用いることができる。フローラルテープは、基材の色が緑色、黄緑色、薄緑色など、任意の色のものを用いることができる。
【0080】
造花4A、造花4B及び造花4Dの茎40は合成樹脂製であるため、予め緑色、黄緑色、薄緑色などの色が付いていれば茎40にテープ7を巻き付ける必要はない。ただし、
図13に示すように茎40にテープ7を幾重に巻き付けることで、装飾用花4を構成する全ての造花(造花4Aから造花4F)の茎40の見た目が同じとなるため、装飾用花4の美観を向上できる。
【0081】
<薬液揮散器の作用・効果>
以上説明したように、本実施形態の薬液揮散器1によれば、装飾用花4は、容器2内に茎40の少なくとも一部分が挿入されることで、容器2に取り付けられており、装飾用花4の美観を感じさせる部分の花弁41が容器2の口部20の上方に位置して外部空間に露出している。このように装飾用花4を容器2に装飾することで、薬液揮散器1を花を生けた花瓶のように見せることができるので、インテリアとして薬液揮散器1の装飾性を高めることができる。
【0082】
加えて、吸液芯材3の上端30は装飾用花4の上方で露出しており、吸上芯材3は装飾用花4により完全に被覆されていない。そのため、装飾用花4の上方で露出した吸液芯材3の上端30側の部分で、容器2内から吸い上げた薬液を外部空間に効率よく揮散させることができ、ユーザに芳香などの薬効を十分に付与することができる。
【0083】
加えて、容器2の下端から装飾用花4の重心G2(重心G2´)までの鉛直方向の距離H2(距離H2´)は、容器2の下端から吸液芯材3の上端30までの鉛直方向の距離H1の半分以下である。装飾用花4の重心G2(重心G2´)が、前記距離H1の半分以下の位置、つまりは、吸液芯材3の重心に近い位置G1と上下方向において同じ位置にある又は前記位置G1よりも下方の位置にあることで、薬液揮散器1全体の重心の位置を下げることができる。よって、薬液揮散器1を台などの上に載置した際の安定性が高くなり、台などが揺れたり薬液揮散器1に外部から多少の衝撃が加わっても薬液揮散器1を倒れにくくすることができる。
【0084】
上述したように、本実施形態の薬液揮散器1によれば、吸上芯材3により薬液を効率よく揮散可能であり、かつ、装飾用花4を用いて装飾性を向上させても薬液揮散器1を倒れにくくすることができる。
【0085】
また、本実施形態の薬液揮散器1によれば、装飾用花4は、茎40の少なくとも一部分を容器2内に挿入した際に容器2の口部20の上端に引っ掛かる係止部Cを含む。この係止部Cが口部20の上端に引っ掛かることで、装飾用花4は、これ以上の容器2内への挿入が規制される。このように、装飾用花4は、容器2に取り付けられた状態では係止部Cにおいて容器2の口部20により下方から支持されているので、口部20の上に安定して配置される。よって、装飾用花4の重心G2(重心G2´)の位置を安定させることができる。
【0086】
また、本実施形態の薬液揮散器1によれば、装飾用花4の茎40は、係止部Cが容器2の口部20の上端に引っ掛かった状態で茎の40下端が容器2の内底に接触する長さを有する。これにより、装飾用花4の重心の位置が下がるため、薬液揮散器1全体の重心の位置を下げることができる。よって、薬液揮散器1を倒れにくくすることができる。
【0087】
また、本実施形態の薬液揮散器1によれば、容器2の胴部21は、高さ方向に直交する断面、すなわち横断面における形状が長方形状であり、容器2は扁平形状である。容器2が扁平形状であると、容器2は厚みの小さな前後方向に倒れやすい一方で、容器2に装飾した装飾用花4の美観が向上する。そのため、薬液揮散器1が倒れにくくなるとの効果により、薬液揮散器1の容器2に扁平形状のものを採用した際の欠点を克服したうえで、装飾用花4の美観の向上という利点を実現可能である。よって、インテリアとして薬液揮散器1の装飾性を高めることができる。
【0088】
また、本実施形態の薬液揮散器1によれば、装飾用花4は、複数の造花(造花4Aから造花4F)を集めて束ねたブーケの形状を呈する。装飾用花4は、ポリエステル製の薄片からなる花弁41を少なくとも一つ含む複数の造花(造花4C及び造花4D)を含み、花弁41を構成する薄片は複数の造花(造花4C及び造花4D)の全てで同じ色に着色されている。ポリエステル製の薄片からなる花弁41は、吸液芯材3で吸い上げた薬液が接触して濡れた状態になると、花弁41同士がくっついた際に色移りする可能性がある。しかし、花弁41を構成する薄片が全て同じ色で着色されていると、色移りしても花弁41の色の変化を抑えることができるため、花弁41の装飾性の低下を防止することができる。
【0089】
<変形例>
以上、本開示の薬液揮散器の一実施形態について説明したが、本開示の薬液揮散器は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。例えば、以下の変形が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0090】
上述した実施形態では、茎40の一部分がワイヤー6を用いて構成されている複数の造花(造花4C、造花4E及び造花4F)について、それぞれ別々に、自己の茎40を構成するワイヤー6のみがテープ7により巻き付けられている。装飾用花4が容器2に取り付けられた状態では、各造花の茎40の少なくとも一部分が薬液に浸漬している。そのため、茎40に巻き付けられたテープ7も薬液に浸漬する。特に、
図5に示すように、茎40が容器2の内底まで到達する長さを有していると、装飾用花4の重心が低くなる一方で、薬液に浸漬するテープ7の量が多くなる。ここで、フローラルテープなどのテープ7が薬液に長時間浸漬していると、テープ7の粘着剤層の影響で、薬液が白濁する可能性があることが本発明者により確認された。そのため、テープ7の使用量が多いと、薬液の白濁を増長させる可能性があることから、テープ7の使用量は少ないことが好ましい。
【0091】
そこで、一変形例として、
図14に示すように、茎40の一部分がワイヤー6を用いて構成されている三つの造花(造花4C、造花4E及び造花4F)の例えば二つの造花(造花4C及び造花4F)について、茎40の一部分を構成する複数のワイヤー6をまとめてテープ7により巻き付けるようにしてもよい。これにより、テープ7の使用量が抑えられるので、薬液の白濁を抑制することができる。したがって、装飾用花4の重心を低くするために茎40を長くする必要がある場合でも、薬液が白濁しにくくなる。変形例の薬液揮散器は、倒れにくさと薬液の白濁の抑制を両立できる。なお、この変形例は、二つの造花4C、及び造花4Fの茎40をまとめており、造花の数(二つ)と茎40の数(一つ)とが合わないため、当業者が通常考えるような態様ではない。
【0092】
また、図示は省略するが、三つの造花(造花4C、造花4E及び造花4F)の全てについて、茎40の一部分を構成する複数のワイヤー6をまとめてテープ7により巻き付けるようにしてもよい。これにより、テープ7の使用量がさらに抑えられるので、薬液の白濁をより効果的に抑制することができる。
【0093】
このように、茎40の一部分がワイヤー6を用いて構成されている造花の数が複数ある場合において、二つ以上、三つ以上、四つ以上、最終的には全ての造花について、茎40を構成する複数のワイヤー6をまとめてテープ7により巻き付けるようにすれば、テープ7の使用量を順に抑えられるので、薬液の白濁を効果的に抑制することができる。
【0094】
上述した実施形態では、茎40が合成樹脂製の造花4A、造花4B及び造花4Dについても、
図13に示すように、茎40にテープ7を巻き付けている。一変形例として、茎40が合成樹脂製の造花4A、造花4B及び造花4Dについて、茎40にテープ7を巻き付けないようにしてもよい。これにより、テープ7の使用量がさらに抑えられるので、薬液の白濁をより効果的に抑制することができる。
【0095】
テープ7の使用量を最も効果的に抑えるためには、
図15に示すように、装飾用花4を構成する全ての造花(造花4Aから造花4F)について、合成樹脂で形成された複数の茎40、及び、茎40を構成する複数のワイヤー6を全てまとめてテープ7により巻き付けるようにしてもよい。
【0096】
本開示の薬液揮散器は、上述したテープ7が薬液に長時間浸漬すると、テープ7の粘着剤層の影響で薬液が白濁する可能性があるとの課題を解決するため、以下の項1´に記載の薬液揮散器についても主題として包含する。
【0097】
項1´.薬液を収容する容器と、
下端が前記容器の内底に接触しかつ上端側の一部分が前記容器の口部から上方に突き出るように前記容器内に挿入されて、前記薬液を吸い上げる少なくとも一つの吸液芯材と、
茎の少なくとも一部分が前記口部から前記容器内に挿入されて、前記容器に装飾される装飾用花と、
を備え、
前記装飾用花は、前記茎の少なくとも一部分が少なくとも一つのワイヤーを用いて構成された複数の造花を少なくとも含み、前記複数の造花を集めて束ねたブーケの形状を呈し、
前記複数の造花の二つ以上の前記造花について、前記茎を構成する複数の前記ワイヤーがまとめてテープにより巻き付けられている、薬液揮散器。
【0098】
また、本開示の薬液揮散器は、上記項1´に記載の薬液揮散器の好ましい態様として、以下の項2´に記載の薬液揮散器を包含する。
【0099】
項2´.前記複数の造花の三つ以上の前記造花について、前記茎を構成する複数の前記ワイヤーがまとめてテープにより巻き付けられている、項1´に記載の薬液揮散器。
【0100】
また、本開示の薬液揮散器は、上記項1´に記載の薬液揮散器の好ましい態様として、以下の項3´に記載の薬液揮散器を包含する。
【0101】
項3´.前記複数の造花の全ての前記造花について、前記茎を構成する複数の前記ワイヤーがまとめてテープにより巻き付けられている、項1´に記載の薬液揮散器。
【0102】
本開示の上述した薬液揮散器によれば、テープの使用量が抑えられるので、使用に伴い薬液の白濁を抑制することができる。
【実施例0103】
以下、本開示の薬液揮散器の実施例について説明する。
【0104】
<試験1>
実施例1及び比較例1ともに、胴部が左右方向の幅及び上下方向の高さに対して前後方向の厚みが小さい扁平形状を呈する容器に薬液を注入し、長さが約260mm、太さが約4.0mmの小林製薬株式会社製の5本の吸液芯材を口部から容器内に挿入した。また、7つの造花を束ねてブーケ状とした装飾用花を、茎の一部分を口部から容器内に薬液に浸漬するまで挿入することで、容器に取り付けた。実施例1及び比較例1ともに、容器の下端から吸液芯材の上端までの鉛直方向の距離は260mmであった。一方、実施例1では、容器の下端から装飾用花の重心までの鉛直方向の距離が120mmであり、比較例1では、容器の下端から装飾用花の重心までの鉛直方向の距離が140mmであった。そのため、実施例1では、容器の下端から装飾用花の重心までの鉛直方向の距離は、容器の下端から吸液芯材の上端までの鉛直方向の距離の半分以下であり、比較例1では、容器の下端から装飾用花の重心までの鉛直方向の距離は、容器の下端から吸液芯材の上端までの鉛直方向の距離の半分より大きかった。
【0105】
実施例1及び比較例1ともに、
図16に示すように、薬液揮散器を水平な台に対して任意の傾斜角度θで傾けることが可能な金属製板の上に載置した。薬液揮散器は、厚みが小さい前後方向が金属製板の傾斜する方向を向くようにして金属製板の上に載置した。なお、
図16では容器だけが示されているが、実際は容器には上述した吸液芯材及び装飾用花が設けられており、
図16では吸液芯材及び装飾用花の図示を省略している。
【0106】
最初、傾斜角度θが0°の状態で、金属製板の上に薬液揮散器を載置し、5秒間倒れないことを確認した。なお、薬液揮散器が金属製板の上を滑り落ちないように、薬液揮散器の胴部において、前側の正面壁の下部を養生テープにより金属製板に固定した。そして、薬液揮散器が転倒するまで金属製板の傾斜角度θを徐々に大きくしていき、薬液揮散器が転倒しなかった傾斜角度を計測した。実施例1及び比較例1ともに、試験を3回繰り返し行い、薬液揮散器が転倒しなかった最大の傾斜角度を計測値とした。その結果、実施例1では傾斜角度θが12°まで薬液揮散器が転倒せず、比較例1では傾斜角度θが10°を超えると薬液揮散器が転倒した。
【0107】
上記試験1により、容器の下端から装飾用花の重心までの鉛直方向の距離が、容器の下端から吸液芯材の上端までの鉛直方向の距離の半分以下であると、薬液揮散器が倒れにくいことが確認された。
【0108】
<試験2>
実施例2及び実施例3ともに、胴部が左右方向の幅及び上下方向の高さに対して前後方向の厚みが小さい扁平形状を呈する容器に、薬液として着香料を10質量%、溶媒を約90質量%含有する芳香液を注入し、長さが約260mm、太さが約4.0mmの小林製薬株式会社製の5本の吸液芯材を口部から容器内に挿入した。また、十四つの造花を束ねてブーケ状とした装飾用花を、茎の一部分を口部から容器内に薬液に浸漬するまで挿入することで、容器に取り付けた。
【0109】
十四つの造花のうち、十二つの造花の茎の一部分はワイヤー及びテープで形成されており、残りの二つの造花はポリエチレン製であり、茎にテープは巻かれていない。ワイヤーの一端側の一部分は造花の茎の合成樹脂製の他の部分に固定され、ワイヤーの他端側の一部分は造花の結束部材よりも下方に延びている。実施例2では、茎の一部分がワイヤーで構成された十二つの造花について、それぞれの造花のワイヤーを別々にテープにより巻き付けている。実施例3では、茎の一部分がワイヤーで構成された十二つの造花について、二つずつの造花のワイヤーをまとめてテープにより巻き付けており、テープの使用量が実施例2よりも少ない。テープには、株式会社日本デキシー製のフローラルテープを用いた。なお、
【0110】
実施例2及び実施例3ともに、容器内の薬液がなくなるまで室温にて静置した。薬液がなくなった後、容器内に新たな薬液を注入し、使用済の吸液芯材を別の新たな吸液芯材に取り替えてから、再度、容器内の薬液がなくなるまで室温にて静置した。再び薬液がなくなった後、容器内に新たな薬液を注入し、使用済の吸液芯材を別の新たな吸液芯材に取り替えてから、再度、容器内の薬液の残量が20%程度になるまで室温にて静置した。容器内に残った薬液の状態を観察した結果を
図17及び
図18に示す。
【0111】
図17は実施例2の容器内に残った薬液の状態を示し、
図18は実施例3の容器内に残った薬液の状態を示している。
図17及び
図18を比較すると、テープの使用量が少ない実施例3の方が実施例2よりも薬液の白濁が抑制されていることが分かる。よって、上記試験2により、複数の造花のワイヤーをまとめてテープにより巻き付けると、薬液の白濁を抑制できることが確認された。