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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076090
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20240529BHJP
   B05B 7/26 20060101ALI20240529BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
B05C11/10
B05B7/26
B05C5/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187476
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】西村 秀明
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 大輔
【テーマコード(参考)】
4F033
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4F033QA01
4F033QB03X
4F033QB03Y
4F033QB13Y
4F033QB18
4F033QD06
4F033QD11
4F033QF01X
4F033QF01Y
4F033QF02Y
4F033QF03X
4F033QF03Y
4F033QF07Y
4F033QF08X
4F033QF08Y
4F033QF11X
4F033QF11Y
4F033QF14X
4F033QF14Y
4F033QF21X
4F033QF21Y
4F041AA02
4F041AB01
4F041AB08
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA32
4F041BA35
4F041BA42
4F041BA47
4F041BA59
4F042AA02
4F042BA06
4F042BA09
4F042BA12
4F042BA19
4F042CA01
4F042CA06
4F042CA08
4F042CA09
4F042CB02
4F042CB03
4F042CB08
4F042CB10
4F042CB13
4F042CB19
4F042CB26
4F042CB27
4F042CC04
4F042CC07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】塗布装置において流路の閉塞を防止する。
【解決手段】一態様に係る塗布装置は、超臨界流体と樹脂とを混合する高圧容器6から、混合物を吐出ヘッド10に供給し、吐出ヘッドから吐出された混合物を基材に塗布する塗布装置であって、超臨界流体と樹脂との混合物を吐出ヘッドに供給する第1流路41と、高圧容器と吐出ヘッドとの間において第1流路から分岐する第2流路42と、高圧容器を介さずに吐出ヘッドに超臨界流体を供給するバイパス流路44と、第1流路、第2流路、及びバイパス流路のそれぞれの開閉を切り替える切替部と、を有し、塗布装置が、混合物を含む流体を流して、吐出ヘッドによる吐出状態を維持する第1動作を行う場合、切替部は、第1流路を閉塞し、第2流路を開放し、塗布装置が、超臨界流体を流して、吐出ヘッドによる吐出状態を維持する第2動作を行う場合、切替部は第1流路を閉塞し、第2流路を開放し、バイパス流路を開放する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界流体と樹脂とを混合する高圧容器から、超臨界流体と樹脂との混合物を吐出ヘッドに供給し、前記吐出ヘッドから吐出された前記混合物を基材に塗布する塗布装置であって、
前記超臨界流体と樹脂との前記混合物を前記吐出ヘッドに供給する第1流路と、
前記高圧容器と前記吐出ヘッドとの間において前記第1流路から分岐する第2流路と、
前記高圧容器を介さずに前記吐出ヘッドに前記超臨界流体を供給するバイパス流路と、
前記第1流路、前記第2流路、及び前記バイパス流路のそれぞれの開閉を切り替える切替部と、
を有し、
前記塗布装置が、前記混合物を含む流体を流して、前記吐出ヘッドによる吐出状態を維持する第1動作を行う場合、前記切替部は、前記第1流路を閉塞し、前記第2流路を開放し、
前記塗布装置が、前記超臨界流体を流して、前記吐出ヘッドによる吐出状態を維持する第2動作を行う場合、前記切替部は、前記第1流路を閉塞し、前記第2流路を開放し、前記バイパス流路を開放する、
塗布装置。
【請求項2】
前記塗布装置が前記吐出ヘッドにより前記混合物を吐出する第3動作を行う場合、前記切替部は、前記第1流路を開放し、前記第2流路を閉塞し、前記バイパス流路を閉塞する、
請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記塗布装置が前記第1動作を行う場合に流れる前記流体は、前記高圧容器における前記超臨界流体と未混合の前記樹脂を含む、
請求項1又は2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記第2流路と連通し、前記第2流路を流れる前記混合物を含む前記流体及び前記超臨界流体を受ける廃液容器を更に有する、
請求項1又は2に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記切替部は、
前記第1流路と前記第2流路との接続箇所に設けられ、前記第1流路と前記第2流路の開閉を切り替える三方弁と、
前記第1流路と前記バイパス流路との接続箇所に設けられ、前記第1流路と前記バイパス流路の開閉を切り替える、前記三方弁とは別の三方弁と、
を有する、
請求項1又は2に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記第1流路の温度を保持する温度保持部を更に有する、
請求項1又は2に記載の塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料を塗布する装置が提供されている。従来の装置で塗布される塗料は、有機溶媒を含むため、塗料の乾燥過程においてVOC(Volatile Organic Compounds)が発生する。そこで、使用されるVOCを超臨界二酸化炭素等の超臨界流体に替えることで、有機溶媒系の塗料と同等の塗膜均一性、平滑性、鮮映性等を確保したまま、VOCの発生を低減する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
超臨界流体と塗料用樹脂との混合器における混合過程で、超臨界流体と未混合の樹脂が、混合器に残る場合がある。有機溶媒を含まない塗料を用いると、未混合の樹脂からなる高粘性の流体が、混合器から噴霧ガンに至る流路に流れることで、噴霧ガンのノズルを含む流路が閉塞する場合がある。
【0004】
開示の技術は、流路の閉塞を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示の技術の一態様に係る塗布装置は、超臨界流体と樹脂とを混合する高圧容器から、超臨界流体と樹脂との混合物を吐出ヘッドに供給し、前記吐出ヘッドから吐出された前記混合物を基材に塗布する塗布装置であって、前記超臨界流体と樹脂との混合物を前記吐出ヘッドに供給する第1流路と、前記高圧容器と前記吐出ヘッドとの間において前記第1流路から分岐する第2流路と、前記高圧容器を介さずに前記吐出ヘッドに前記超臨界流体を供給するバイパス流路と、前記第1流路、前記第2流路、及び前記バイパス流路のそれぞれの開閉を切り替える切替部と、を有し、前記塗布装置が、前記混合物を含む流体を流して、前記吐出ヘッドによる吐出状態を維持する第1動作を行う場合、前記切替部は、前記第1流路を閉塞し、前記第2流路を開放し、前記塗布装置が、前記超臨界流体を流して、前記吐出ヘッドによる吐出状態を維持する第2動作を行う場合、前記切替部は、前記第1流路を閉塞し、前記第2流路を開放し、前記バイパス流路を開放する。
【発明の効果】
【0006】
開示の技術によれば、流路の閉塞を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る塗布装置の全体構成の一例を示す模式図である。
図2】第1実施形態の塗布装置における吐出動作を説明するための模式図である。
図3】第1実施形態の塗布装置における樹脂排出動作を説明するための模式図である。
図4】第1実施形態の塗布装置における第1洗浄動作を説明するための模式図である。
図5】第1実施形態の塗布装置における第2洗浄動作を説明するための模式図である。
図6】第2実施形態に係る塗布装置の全体構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
[第1実施形態]
図1を参照して、第1実施形態に係る塗布装置1を説明する。
【0010】
<塗布装置1の全体構成例>
図1は、第1実施形態に係る塗布装置1の全体構成の一例を示す模式図である。塗布装置1は、超臨界二酸化炭素を生成する生成部30と、生成部30で生成された超臨界二酸化炭素と樹脂とを混合し、双方の混合物を得るための高圧容器6と、高圧容器6から供給される混合物を基材12に吐出する吐出ヘッド10と、高圧容器6と吐出ヘッド10とを接続する配管41の所定箇所から分岐する配管42を介して排出される廃液を受ける廃液容器11と、を有する。なお、超臨界二酸化炭素は、「超臨界流体」の一例である。超臨界流体の他の例として、超臨界水、超臨界窒素等が挙げられる。これらの超臨界流体は、環境負荷が少なく、安価なため好ましい。また、超臨界二酸化炭素と樹脂との混合物を、単に「混合物」と言う場合がある。
【0011】
超臨界二酸化炭素と混合される樹脂の例として、強度、耐熱性、断熱性、難燃性、耐薬品性、電気絶縁性等に優れた熱硬化性樹脂を好適に用いることができる。また、熱硬化性樹脂の例として、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性フラン樹脂等が挙げられる。
【0012】
樹脂に染料、顔料を混合することにより有色の塗膜を形成してもよい。ただし、VOCの発生を避けるため、本実施形態における混合物は、有機溶媒を含まないことが好ましい。
【0013】
混合物が塗布される基材12の例として、樹脂材料、金属材料、並びに、炭素繊維、ガラス繊維、及びセルロース繊維等で形成された多孔質材料等が挙げられる。
【0014】
本実施形態の生成部30は、図1に示されるように、液体二酸化炭素を貯蔵するボンベ2と、高圧弁101を介してボンベ2から供給される液体二酸化炭素を飽和温度以下に冷却する冷却器3と、液体二酸化炭素を所定の圧力まで加圧する高圧ポンプ4と、高圧ポンプ4から供給される液体二酸化炭素を所定の温度に加熱するヒータ5と、高圧ポンプ4から供給される液体二酸化炭素のうち、余剰な液体二酸化炭素を高圧ポンプ4より下流側に戻す背圧弁102と、を有する。
【0015】
冷却器3の例として、冷却水を循環させて、被冷却物を冷却するチラー装置が挙げられる。また、高圧ポンプ4の例として、液体吐出量の制御や脈動を防止可能なダブルプランジャーポンプが挙げられる。ただし、冷却器3や高圧ポンプ4は、これらに限られない。
【0016】
高圧ポンプ4で加圧された液体二酸化炭素をヒータ5で加熱することで、超臨界二酸化炭素が生成される。
【0017】
高圧容器6は、高圧弁103を介して生成部30から供給される超臨界二酸化炭素と、超臨界二酸化炭素とは別経路を通って供給される樹脂とを高圧環境下で混合する。高圧容器6の例として、オートクレーブが挙げられる。ただし、これに限定されない。
【0018】
高圧容器6は、超臨界二酸化炭素と樹脂とを収める容器本体21と、容器本体21内に導入される超臨界二酸化炭素と樹脂とを撹拌する撹拌機構22と、撹拌機構22を駆動するモータ7と、を有する。
【0019】
撹拌機構22の例として、一軸のスクリュウ、互いに噛み合う二軸のスクリュウ、互いに噛み合う又は重なり合う多数の撹拌素子をもつ二軸の混合機、互いに噛み合うらせん形の撹拌素子を有するニーダー、スタティックミキサー等が挙げられる。また、高圧容器6は、容器加温用のヒータ8と、容器内を大気開放するための高圧弁104と、を更に有することが好ましい。
【0020】
高圧容器6の下流側に、高圧弁105が設けられる。高圧弁105が開くことで、高圧容器6内の混合物が、配管41を通り、吐出ヘッド10に供給される。なお、高圧容器6と吐出ヘッド10とを接続する配管41を含む管路を、「第1流路41」と言う場合がある。第1流路41は、高圧容器6から供給される混合物が吐出ヘッド10へ流れる流路に対応する。第1流路41は、高圧容器6からの混合物を、第3三方弁230、第1三方弁210に供給し、第1三方弁210から吐出ヘッド10に供給する。また、第1流路41の一端は、容器本体21の壁部21aの内面から容器本体21の壁部21aの厚み方向に貫通する管路41aに対応する。また、第1流路41の他端は、吐出ヘッド10に臨み、吐出ヘッドのノズルの先端に対応する。
【0021】
第1流路41の周囲に、加熱機構あるいは断熱部材を設けることが好ましい。これにより、第1流路41を所定の温度に保持することができ、第1流路41を流れる二酸化炭素の超臨界状態を維持し、流動性を高めることができる。なお、第1流路41の周囲に設けられる加熱機構や断熱部材は、「温度保持部」の一例である。
【0022】
吐出ヘッド10は、第1流路41と接続し、高圧容器6から導入された混合物を基材12に吐出する。吐出ヘッド10の例として、インクジェット方式の吐出ヘッド、及びスプレー方式の吐出ヘッド等が挙げられる。また、吐出ヘッド10に、複数のノズルを設けることで、塗布の生産性を高めることができる。また、吐出ヘッド10に、複数のノズルを設けることで、異なる機能を有する複数の樹脂を基材12に同時に吐出することもできる。また、吐出ヘッド10は、ヘッドの温度を制御するためのヒータや温度検出機構を備えてもよい。
【0023】
図1に示されるように、第1流路41の所定箇所から分岐する配管42が設けられる。また、配管42は、廃液容器11に接続する。なお、配管42を含む管路を、「第2流路42」と言う場合がある。
【0024】
第1流路41における第2流路42への接続箇所に、第1三方弁210が設けられる。第1三方弁210は、第1流路41と連通する上流側ポート210a及び下流側ポート210b、第2流路42と連通する分岐ポート210c、並びにこれら各ポートの開閉を切り替える弁体を有する。
【0025】
具体的には、第1三方弁210の弁体が操作されて、上流側ポート210a及び下流側ポート210bが開放されることで、第1流路41が開放され、第2流路42が閉塞される。これに対して、第1三方弁210の弁体が操作されて、上流側ポート210a及び分岐ポート210cが開放されることで、第1流路41が閉塞され、第2流路42が開放される。第1三方弁210を用いることで、流路を切り替えるための弁構成を簡素化することができる。
【0026】
図1に示されるように、生成部30のヒータ5と高圧容器6との間の配管43の所定箇所から分岐する配管44が設けられる。また、配管44は、第1流路41とも接続する。なお、配管43を含む管路を、「第3流路43」と言う場合がある。また、配管44を含む管路を、「バイパス流路44」と言う場合がある。
【0027】
第3流路43とバイパス流路44との接続箇所に、第2三方弁220が設けられる。第2三方弁220は、第3流路43と連通する上流側ポート220a及び下流側ポート220b、バイパス流路44と連通する分岐ポート220c、並びにこれら各ポートの開閉を切り替える弁体を有する。
【0028】
具体的には、第2三方弁220の弁体が操作されて、上流側ポート220a及び下流側ポート220bが開放されることで、第3流路43が開放され、バイパス流路44が閉塞される。これに対して、第2三方弁220の弁体が操作されて、上流側ポート220a及び分岐ポート220cが開放されることで、第3流路43が閉塞され、バイパス流路44が開放される。第2三方弁220を用いることで、流路を切り替えるための弁構成を簡素化することができる。
【0029】
バイパス流路44と第1流路41との接続箇所に、第3三方弁230が設けられる。第3三方弁230は、バイパス流路44と連通する分岐ポート230a、第1流路41と連通する下流側ポート230b及び上流側ポート230c、並びにこれら各ポートの開閉を切り替える弁体を有する。
【0030】
具体的には、第3三方弁230の弁体が操作されて、分岐ポート230a及び下流側ポート230bが開放されることで、バイパス流路44が開放され、第1流路41が閉塞される。なお、この場合、第1流路41の第3三方弁230より下流側と吐出ヘッド10とは連通している。そのため、バイパス流路44を介して第3三方弁230に至る超臨界二酸化炭素は、第1流路41における第3三方弁230より下流側を流れ、吐出ヘッド10に至る。
【0031】
これに対して、第3三方弁230の弁体が操作されて、下流側ポート230b及び上流側ポート230cが開放されることで、バイパス流路44が閉塞され、第1流路41が開放される。第3三方弁230を用いることで、流路を切り替えるための弁構成を簡素化することができる。
【0032】
第1三方弁210、第2三方弁220、第3三方弁230は、「切替部」の一例である。また、第2三方弁220,第3三方弁230及びバイパス流路44を設けることで、第3流路43を通る超臨界二酸化炭素を、高圧容器6を介さず、第1流路41に流すことができる。
【0033】
<塗布装置1の動作>
次に、図2から図5を参照して、塗布装置1における各種動作を説明する。以下で説明する塗布装置1の各種動作において、第1三方弁210、第2三方弁220、第3三方弁230の各ポートの開放及び閉塞が切り替えられる。これにより、第1流路41、第2流路42、第3流路43、バイパス流路44の開閉が切り替えられる。なお、第1三方弁210の上流側ポート210aは、塗布装置1における各種動作の全てで開放される。また、第2三方弁220の上流側ポート220a及び第3三方弁230の下流側ポート230bも同様に、塗布装置1における各種動作の全てで開放される。
【0034】
<<塗布装置1の吐出動作>>
図2を参照して、塗布装置1における混合物の吐出動作を説明する。図2は、塗布装置1における混合物の吐出動作を説明するための模式図である。なお、図2の矢印Aは、塗布装置1における吐出動作での流体の通過経路を示す。
【0035】
まず、ボンベ2に貯蔵される液体二酸化炭素が、高圧弁101を経由して冷却器3で飽和温度以下に冷却される。
【0036】
続いて、冷却器3を通過した超臨界二酸化炭素が、高圧ポンプ4のサクション部に導入される。サクション部から高圧ポンプ4に導入された液体二酸化炭素は、高圧ポンプ4内で所定の圧力(例えば、二酸化炭素の臨界圧力である7.3MPa)以上に加圧される。また、定圧運転時、高圧ポンプ4に導入された液体二酸化炭素が、背圧弁102により高圧ポンプ4のサクション部に戻される。
【0037】
続いて、加圧された液体二酸化炭素は、ヒータ5により所定の温度(例えば、二酸化炭素の臨界温度である31℃)以上に加熱される。これにより、液体二酸化炭素から超臨界二酸化炭素が生成される。
【0038】
続いて、生成された超臨界二酸化炭素は、第2三方弁220及び高圧弁103を経由して、ヒータ8によって所定の温度に加熱された高圧容器6に投入される。また、超臨界二酸化炭素は、別経路で高圧容器6に投入された樹脂と、モータ7に接続された撹拌機構22によって溶融混合される。これにより、超臨界二酸化炭素と樹脂との混合物が得られる。
【0039】
続いて、第1三方弁210の下流側ポート210bが開放されると共に、第1三方弁210の分岐ポート210cが閉塞され、且つ、第3三方弁230の上流側ポート230cが開放されると共に、第3三方弁230の分岐ポート230aが閉塞された状態で、高圧弁105が開放される。すなわち、第1三方弁210及び第3三方弁230における各ポートの開閉の切り替えによって、第1流路41を開放し、第2流路42を閉塞し、バイパス流路44を閉塞する。これにより、高圧容器6に収容される混合物は、吐出ヘッド10に供給される。それに伴い、吐出ヘッド10は、対向する基材12に混合物を吐出する。
【0040】
<<塗布装置1の樹脂排出動作>>
図3を参照して、塗布装置1における樹脂排出動作を説明する。図3は、塗布装置1における樹脂排出動作を説明するための模式図である。なお、図3の矢印Bは、塗布装置1における樹脂排出動作での流体の通過経路を示す。
【0041】
ところで、超臨界二酸化炭素と樹脂との混合過程において、超臨界二酸化炭素と未混合の樹脂が、高圧容器6に僅かに残る場合がある。本実施形態では、高圧容器6に有機溶媒が投入されないため、高圧容器6から吐出ヘッド10に混合物が供給されるに伴い、未混合の樹脂に起因する高粘性の流体が、吐出ヘッド10側に流れる。その結果、吐出ヘッド10のノズルを含む第1流路41が閉塞する場合がある。このような事態を避けるため、混合物の吐出動作に先だって、以下の樹脂排出動作が行われる。すなわち、樹脂排出動作は、吐出ヘッド10による吐出状態を維持する動作の1つである。
【0042】
まず、高圧ポンプ4及びヒータ5を通過して生成された超臨界二酸化炭素が、第3流路43を介して、高圧容器6に導入される。
【0043】
続いて、高圧容器6において、超臨界二酸化炭素と樹脂とが混合される。このとき、高圧容器6には、超臨界二酸化炭素と未混合の樹脂も含まれる。続いて、第1三方弁210の分岐ポート210cが開放されると共に、第1三方弁210の下流側ポート210bが閉塞され、且つ、第3三方弁230の上流側ポート230cが開放されると共に、第3三方弁230の分岐ポート230aが閉塞された状態で、高圧弁105が開放される。すなわち、第1三方弁210及び第3三方弁230における各ポートの開閉の切り替えによって、第1流路41を閉塞し、第2流路42を開放し、バイパス流路44を閉塞する。これにより、高圧容器6に残る未混合の樹脂と混合物とを含む高粘性の流体が、第1流路41から第2流路42に流れる。第2流路を流れた未混合の樹脂と混合物とを含む高粘性の流体は、最終的に廃液容器11に排出される。
【0044】
その結果、未混合の樹脂と混合物とを含む高粘性の流体が、吐出ヘッド10に供給されることを防ぎ、吐出ヘッド10のノズルを含む第1流路41が閉塞する事態を防止することができる。
【0045】
<<塗布装置1の第1洗浄動作>>
図4を参照して、塗布装置1における第1洗浄動作を説明する。図4は、塗布装置1における第1洗浄動作を説明するための模式図である。なお、図4の矢印Cは、塗布装置1における第1洗浄動作での流体の通過経路を示す。
【0046】
ここで、第1洗浄動作とは、樹脂が付着した第1流路41を、超臨界二酸化炭素を用いて洗浄する動作を言う。すなわち、第1洗浄動作は、吐出ヘッド10による吐出状態を維持する動作の1つである。
【0047】
まず、第2三方弁220の分岐ポート220cが開放される共に、第2三方弁220の下流側ポート220bが閉塞され、超臨界二酸化炭素の流路が、第3流路43からバイパス流路44に切り替わる。また、第3三方弁230の分岐ポート230aが開放されると共に、第3三方弁230の上流側ポート230cが閉塞される。すなわち、第2三方弁220及び第3三方弁230における各ポートの開閉の切り替えによって、バイパス流路44を開放する。また、バイパス流路44を流れる超臨界二酸化炭素が、第1流路41に至り、吐出ヘッド10側に流れる。
【0048】
これにより、超臨界二酸化炭素が、第3流路43、バイパス流路44、第1流路41の順に流れた後、吐出ヘッド10から基材12に吐出され、吐出ヘッド10のノズルを含む第1流路41が洗浄される。
【0049】
第1洗浄動作の場合、高圧ポンプ4の出力を高め、より高圧の液体二酸化炭素を供給するようにしてもよい。これにより、各流路を通る超臨界二酸化炭素の流速を高めることができる。その結果、各流路の洗浄性を更に高めることができる。
【0050】
<<塗布装置1の第2洗浄動作>>
次に、図5を参照して、塗布装置1における第2洗浄動作を説明する。図5は、塗布装置1における第2洗浄動作を説明するための模式図である。なお、図5の矢印Dは、塗布装置1における第2洗浄動作での流体の通過経路を示す。
【0051】
ここで、第2洗浄動作とは、樹脂排出動作の際に未混合の樹脂が通過した第1流路41及び第2流路42を、超臨界二酸化炭素を用いて洗浄する動作を言う。すなわち、第2洗浄動作は、吐出ヘッド10による吐出状態を維持する動作の1つである。
【0052】
第2洗浄動作において、第1洗浄動作と同様、第2三方弁220の分岐ポート220cが開放される共に、第2三方弁220の下流側ポート220bが閉塞され、且つ、第3三方弁230の分岐ポート230aが開放されると共に、第3三方弁230の上流側ポート230cが閉塞される。すなわち、第2三方弁220及び第3三方弁230における各ポートの開閉の切り替えによって、バイパス流路44を開放する。更に、第1三方弁210の分岐ポート210cが開放されると共に、第1三方弁210の下流側ポート210bが閉塞される。すなわち、第1三方弁210における各ポートの開閉の切り替えによって、第1流路を閉塞し、第2流路を開放する。それに伴い、第1流路41を通る超臨界二酸化炭素の流路が、第2流路42に切り替わる。
【0053】
これにより、超臨界二酸化炭素が、第3流路43、バイパス流路44、第1流路41、第2流路42の順に流れた後、廃液容器11に排出される。その結果、超臨界二酸化炭素を用いて、第1流路41及び第2流路42を洗浄することができる。
【0054】
第2洗浄動作の場合も、高圧ポンプ4の出力を高め、より高圧の液体二酸化炭素を供給するようにしてもよい。これにより、各流路を通る超臨界二酸化炭素の流速を高めることができる。その結果、各流路の洗浄性を更に高めることができる。
【0055】
<<弁の開閉のまとめ>>
塗布装置1の各種動作における、各弁の開閉関係は、表1の通りである。なお、塗布装置1における樹脂排出動作を「第1動作」と言う場合がある。また、塗布装置1における第2洗浄動作を「第2動作」と言う場合がある。また、塗布装置1における吐出動作を「第3動作」と言う場合がある。
【0056】
【表1】
【0057】
<<各動作の順序の例>>
塗布装置1における各動作は、例えば以下の順序で行われることが好ましい。まず、超臨界二酸化炭素が、塗布装置1の高圧容器6に導入される。これにより、高圧容器6で超臨界二酸化炭素と樹脂とが混合される。続いて、塗布装置1は、樹脂排出動作、吐出動作を順に行う。これにより、高圧容器6内の未混合の樹脂を含む流体を廃液容器11に廃液してから、混合物を吐出ヘッド10側に流すことができる。その結果、良好な吐出状態が担保される。また、塗布装置1は、吐出動作の後、第1洗浄動作、第2洗浄動作を順に行うことが好ましい。これにより、樹脂排出動作及び吐出動作が行われたことで、第1流路41、第2流路42、吐出ヘッド10のそれぞれに付着した残留樹脂を洗い流すことができる。
【0058】
[第2実施形態]
図6を参照して、第2実施形態に係る塗布装置1aを説明する。
【0059】
図6は、第2実施形態に係る塗布装置1aの全体構成の一例を示す模式図である。第2実施形態に係る塗布装置1aは、第1実施形態と異なり、高圧容器6と第1三方弁210との間の高圧弁105を備えない。すなわち、第2実施形態に係る塗布装置1aにおいて、高圧容器6と第1三方弁210とが、第1流路41を介して接続される。
【0060】
この構成によれば、塗布装置1aに含まれる構成部材を削減することができる。これにより、製造コストの上昇を抑えることができる。また、この構成によれば、高圧容器6から吐出ヘッド10に至る流路長、高圧容器6から廃液容器11に至る流路長を短縮することができる。これにより、各流路の洗浄性を更に向上させることができる。
【0061】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。第1三方弁210、第2三方弁220、及び第3三方弁230の切替動作を、制御装置によって制御するようにしてもよい。
【0062】
例えば、実施形態における樹脂排出動作の後、吐出動作が行われるよう、制御装置は、各三方弁の切替動作を制御してもよい。更に、実施形態の吐出動作の後、第1洗浄動作、第2洗浄動作が行われるよう、制御装置は、各三方弁の切替動作を制御してもよい。このとき、吐出動作の後、第1洗浄動作、第2洗浄動作の順に、洗浄動作が行われてもよいし、吐出動作の後、第2洗浄動作、第1洗浄動作の順に、洗浄動作が行われてもよい。
【0063】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 超臨界二酸化炭素と樹脂とを混合する高圧容器から、超臨界二酸化炭素と樹脂との混合物を吐出ヘッドに供給し、前記吐出ヘッドから吐出された前記混合物を基材に塗布する塗布装置であって、
前記超臨界二酸化炭素と樹脂との前記混合物を前記吐出ヘッドに供給する第1流路と、
前記高圧容器と前記吐出ヘッドとの間において前記第1流路から分岐する第2流路と、
前記高圧容器を介さずに前記吐出ヘッドに前記超臨界二酸化炭素を供給するバイパス流路と、
前記第1流路、前記第2流路、及び前記バイパス流路のそれぞれの開閉を切り替える切替部と、
を有し、
前記塗布装置が、前記混合物を含む流体を流して、前記吐出ヘッドによる吐出状態を維持する第1動作を行う場合、前記切替部は、前記第1流路を閉塞し、前記第2流路を開放し、
前記塗布装置が、前記超臨界二酸化炭素を流して、前記吐出ヘッドによる吐出状態を維持する第2動作を行う場合、前記切替部は、前記第1流路を閉塞し、前記第2流路を開放し、前記バイパス流路を開放する、
塗布装置。
<2> 前記塗布装置が前記吐出ヘッドにより前記混合物を吐出する第3動作を行う場合、前記切替部は、前記第1流路を開放し、前記第2流路を閉塞し、前記バイパス流路を閉塞する、
前記<1>に記載の塗布装置。
<3> 前記塗布装置が前記第1動作を行う場合に流れる前記流体は、前記高圧容器における前記超臨界二酸化炭素と未混合の前記樹脂を含む、
前記<1>又は前記<2>に記載の塗布装置。
<4> 前記第2流路と連通し、前記第2流路を流れる前記混合物を含む前記流体及び前記超臨界二酸化炭素を受ける廃液容器を更に有する、
前記<1>から前記<3>のいずれか1つに記載の塗布装置。
<5> 前記切替部は、
前記第1流路と前記第2流路との接続箇所に設けられ、前記第1流路と前記第2流路の開閉を切り替える三方弁と、
前記第1流路と前記バイパス流路との接続箇所に設けられ、前記第1流路と前記バイパス流路の開閉を切り替える、前記三方弁とは別の三方弁と、
を有する、
前記<1>から前記<4>のいずれか1つに記載の塗布装置。
<6> 前記第1流路の温度を保持する温度保持部を更に有する、
前記<1>から前記<5>のいずれか1つに記載の塗布装置。
【符号の説明】
【0064】
1,1a 塗布装置
101,103,104,105 高圧弁
102 背圧弁
2 ボンベ
3 冷却器
4 高圧ポンプ
5,8 ヒータ
6 高圧容器
7 モータ
10 吐出ヘッド
11 廃液容器
12 基材
21 容器本体
22 撹拌機構
30 生成部
41 第1流路
42 第2流路
43 第3流路
44 バイパス流路
210,220,230 三方弁
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【特許文献1】特許第5429928号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6