(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076250
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】レーザ溶接方法およびレーザ溶接装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/21 20140101AFI20240529BHJP
B23K 26/073 20060101ALI20240529BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20240529BHJP
【FI】
B23K26/21 L
B23K26/073
B23K26/082
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187731
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 暢康
(72)【発明者】
【氏名】繁松 孝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慶吾
(72)【発明者】
【氏名】松本 諒也
(72)【発明者】
【氏名】安岡 知道
(72)【発明者】
【氏名】高田 一輝
(72)【発明者】
【氏名】寺田 淳
(72)【発明者】
【氏名】酒井 俊明
(72)【発明者】
【氏名】梅野 和行
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA02
4E168BA29
4E168BA87
4E168CB04
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA13
4E168DA24
4E168DA26
4E168DA28
4E168DA29
4E168DA32
4E168EA05
4E168EA08
4E168EA15
4E168JB01
(57)【要約】
【課題】例えば、改善された新規なレーザ溶接方法およびレーザ溶接装置を得る。
【解決手段】レーザ溶接方法は、例えば、端子部の導体とは反対側で第一方向を向いた第一面に、レーザ光を照射し、第一面から端子部を貫通して導体内に至る溶融池を形成する工程と、溶融池を冷却して固化して溶接部を形成する工程と、を備え、溶融池を形成する工程では、第一部位と、溶融池の第一方向の反対方向の先端部と、の間に、導体の非溶融部が介在するとともに、溶融池の第一方向に沿った深さであるDpが、以下の式(1-1)
Dp<T1+T2-Tmax ・・・(1-1)
(ここに、T1は、第一方向に沿った端子部の厚さ、T2は、第一方向に沿った導体の厚さ、Tmaxは、溶融池から非溶融部を介して第一部位へ伝導した熱によって当該第一部位の特性変化が生じる非溶融部の厚さの最大値)を満たす条件で、第一面にレーザ光を照射する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部位と当該第一部位に対して第一方向に重なった導体とを有した回路基板の当該導体と、導電部材の端子部と、を溶接するレーザ溶接方法であって、
前記導体に対して前記端子部を前記第一方向に接した状態に重ねる工程と、
前記端子部の前記導体とは反対側で前記第一方向を向いた第一面に、レーザ光を照射し、前記第一面から前記端子部を貫通して前記導体内に至る溶融池を形成する工程と、
前記溶融池を冷却して固化して溶接部を形成する工程と、
を備え、
前記溶融池を形成する工程では、
前記第一部位と、前記溶融池の前記第一方向の反対方向の先端部と、の間に、前記導体の非溶融部が介在するとともに、
前記溶融池の前記第一方向に沿った深さであるDpが、以下の式(1-1)
Dp<T1+T2-Tmax ・・・(1-1)
(ここに、T1は、前記第一方向に沿った前記端子部の厚さ、T2は、前記第一方向に沿った前記導体の厚さ、Tmaxは、前記溶融池から前記非溶融部を介して前記第一部位へ伝導した熱によって当該第一部位の特性変化が生じる前記非溶融部の厚さの最大値)を満たす条件で、前記第一面に前記レーザ光を照射する、レーザ溶接方法。
【請求項2】
前記溶融池を形成する工程では、前記Dpが、以下の式(2-1)
Dp>Dmin ・・・(2-1)
(ここに、Dminは、前記溶接部による前記導体と前記端子部との所要の接合強度が得られる前記深さの最小値)を満たす条件で、前記第一面に前記レーザ光を照射する、請求項1に記載のレーザ溶接方法。
【請求項3】
前記Tmaxは、20[μm]である、請求項1または2に記載のレーザ溶接方法。
【請求項4】
前記Dminは、50[μm]である、請求項2に記載のレーザ溶接方法。
【請求項5】
前記導体は、銅系材料で作られた、請求項1または2に記載のレーザ溶接方法。
【請求項6】
前記第一部位は、セラミックで作られ、
前記Tmaxは、前記溶融池を形成する工程での前記第一部位の最高温度がセラミックの耐熱衝撃温度となる厚さである、請求項1または2に記載のレーザ溶接方法。
【請求項7】
前記回路基板は、窒化ケイ素基板である、請求項6に記載のレーザ溶接方法。
【請求項8】
前記第一部位は、合成樹脂材料を含み、
前記Tmaxは、前記溶融池を形成する工程での前記第一部位の最高温度が合成樹脂材料の耐熱温度となる厚さである、請求項1または2に記載のレーザ溶接方法。
【請求項9】
前記回路基板は、ガラスエポキシ樹脂基板である、請求項8に記載のレーザ溶接方法。
【請求項10】
前記溶融池を形成する工程では、前記第一面への前記レーザ光の照射エネルギであるEが、次の式(3-1)
E=(Dp+C1)/C2 ・・・(3-1)
(ここに、C1,C2は係数)を満たす条件で、前記第一面に前記レーザ光を照射する、請求項1または2に記載のレーザ溶接方法。
【請求項11】
前記第一面上に形成される前記レーザ光のスポットの幅が100[μm]である場合に、照射エネルギをE[J]、深さをDp[μm]としたとき、前記C1が21であり、かつ前記C2が135である、請求項10に記載のレーザ溶接方法。
【請求項12】
前記レーザ光は、前記第一面上で走査され、
前記レーザ光の前記第一面上での走査速度が、100[mm/s]以上かつ800[mm/s]以下である、請求項1または2に記載のレーザ溶接方法。
【請求項13】
前記走査速度が、300[mm/s]以上かつ600[mm/s]以下である、請求項12に記載のレーザ溶接方法。
【請求項14】
前記レーザ光は、波長が800[nm]以上の第一レーザ光と波長が550[nm]以下の第二レーザ光とを含む請求項1または2に記載のレーザ溶接方法。
【請求項15】
前記レーザ光の波長は、400[nm]以上である、請求項14に記載のレーザ溶接方法。
【請求項16】
第一部位と当該第一部位に対して第一方向に重なった導体とを有した回路基板の当該導体と、導電部材の端子部と、を溶接するレーザ溶接方法であって、
前記導体に対して前記端子部を前記第一方向に接した状態に重ねる工程と、
前記端子部の前記導体とは反対側で前記第一方向を向いた第一面に、レーザ光を照射し、前記第一面から前記端子部を貫通して前記導体内に至る溶融池を形成する工程と、
前記溶融池を冷却して固化して溶接部を形成する工程と、
を備え、
前記溶融池を形成する工程では、
前記第一部位と、前記溶融池の前記第一方向の反対方向の先端部と、の間に、前記導体の非溶融部が介在するとともに、
前記溶融池の前記第一方向に沿った深さであるDpが、以下の式(1-2)
Dp<T1+T2-20 ・・・(1-2)
(ここに、T1は、前記第一方向に沿った前記端子部の厚さ、T2は、前記第一方向に沿った前記導体の厚さ)を満たす条件で、前記第一面に前記レーザ光を照射する、レーザ溶接方法。
【請求項17】
前記溶融池を形成する工程では、前記Dpが、以下の式(2-2)
Dp>50 ・・・(2-2)
を満たす条件で、前記第一面に前記レーザ光を照射する、請求項16に記載のレーザ溶接方法。
【請求項18】
前記レーザ光は、波長が800[nm]以上の第一レーザ光と波長が550[nm]以下の第二レーザ光とを含む請求項16または17に記載のレーザ溶接方法。
【請求項19】
前記レーザ光の波長は、400[nm]以上である、請求項18に記載のレーザ溶接方法。
【請求項20】
第一部位と当該第一部位に対して第一方向に重なった導体とを有した回路基板の当該導体と、導電部材の端子部と、を溶接するレーザ溶接方法であって、
前記導体に対して前記端子部を前記第一方向に接した状態に重ねる工程と、
前記端子部の前記導体とは反対側で前記第一方向を向いた第一面に、レーザ光を照射し、前記第一面から前記端子部を貫通して前記導体内に至る溶融池を形成する工程と、
前記溶融池を冷却して固化して溶接部を形成する工程と、
を備え、
前記溶融池を形成する工程では、
前記第一部位と、前記溶融池の前記第一方向の反対方向の先端部と、の間に、前記導体の非溶融部が介在するとともに、
前記溶融池の前記第一方向に沿った深さであるDpが、以下の式(1-1)
Dp<T1+T2-Tmax ・・・(1-1)
(ここに、T1は、前記第一方向に沿った前記端子部の厚さ、T2は、前記第一方向に沿った前記導体の厚さ、Tmaxは、前記溶融池から前記非溶融部を介して前記第一部位へ伝導した熱によって当該第一部位の特性変化が生じる前記非溶融部の厚さの最大値)を満たす条件で、前記第一面に前記レーザ光を照射する、レーザ溶接方法、を実行するレーザ溶接装置であって、
前記レーザ光を出力するレーザ装置と、
前記レーザ装置から出力されたレーザ光を前記第一面に照射する光学ヘッドと、
を備えた、レーザ溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ溶接方法およびレーザ溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部にレーザ溶接によって接合されている導体の接続部分を有した半導体装置が、知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導体同士の溶接においては、所要の接合強度の確保は勿論のこと、導体と接した部位に熱影響を与えないようにすることは、重要である。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、導体同士をレーザ溶接によって接合する場合に、例えば、当該導体と接した部位に対する熱影響を抑制することが可能となるような、改善された新規なレーザ溶接方法およびレーザ溶接装置を得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレーザ溶接方法は、例えば、第一部位と当該第一部位に対して第一方向に重なった導体とを有した回路基板の当該導体と、導電部材の端子部と、を溶接する溶接方法であって、前記導体に対して前記端子部を前記第一方向に接した状態に重ねる工程と、前記端子部の前記導体とは反対側で前記第一方向を向いた第一面に、レーザ光を照射し、前記第一面から前記端子部を貫通して前記導体内に至る溶融池を形成する工程と、前記溶融池を冷却して固化して溶接部を形成する工程と、を備え、前記溶融池を形成する工程では、前記第一部位と、前記溶融池の前記第一方向の反対方向の先端部と、の間に、前記導体の非溶融部が介在するとともに、前記溶融池の前記第一方向に沿った深さであるDpが、以下の式(1-1)
Dp<T1+T2-Tmax ・・・(1-1)
(ここに、T1は、前記第一方向に沿った前記端子部の厚さ、T2は、前記第一方向に沿った前記導体の厚さ、Tmaxは、前記溶融池から前記非溶融部を介して前記第一部位へ伝導した熱によって当該第一部位の特性変化が生じる前記非溶融部の厚さの最大値)を満たす条件で、前記第一面に前記レーザ光を照射する。
【0007】
前記レーザ溶接方法では、前記溶融池を形成する工程において、前記Dpが、以下の式(2-1)
Dp>Dmin ・・・(2-1)
(ここに、Dminは、前記溶接部による前記導体と前記端子部との所要の接合強度が得られる前記深さの最小値)を満たす条件で、前記第一面に前記レーザ光を照射してもよい。
【0008】
前記レーザ溶接方法では、前記Tmaxは、20[μm]であってもよい。
【0009】
前記レーザ溶接方法では、前記Dminは、50[μm]であってもよい。
【0010】
前記レーザ溶接方法では、前記導体は、銅系材料で作られてもよい。
【0011】
前記レーザ溶接方法では、前記第一部位は、セラミックで作られ、前記Tmaxは、前記溶融池を形成する工程での前記第一部位の最高温度がセラミックの耐熱衝撃温度となる厚さであってもよい。
【0012】
前記レーザ溶接方法では、前記回路基板は、窒化ケイ素基板であってもよい。
【0013】
前記レーザ溶接方法では、前記第一部位は、合成樹脂材料を含み、前記Tmaxは、前記溶融池を形成する工程での前記第一部位の最高温度が合成樹脂材料の耐熱温度となる厚さであってもよい。
【0014】
前記レーザ溶接方法では、前記回路基板は、ガラスエポキシ樹脂基板であってもよい。
【0015】
前記レーザ溶接方法では、前記溶融池を形成する工程において、前記第一面への前記レーザ光の照射エネルギであるEが、次の式(3-1)
E=(Dp+C1)/C2 ・・・(3-1)
(ここに、C1,C2は係数)を満たす条件で、前記第一面に前記レーザ光を照射してもよい。
【0016】
前記レーザ溶接方法では、前記第一面上に形成される前記レーザ光のスポットの幅が100[μm]である場合に、照射エネルギをE[J]、深さをDp[μm]としたとき、前記C1が21であり、かつ前記C2が135であってもよい。
【0017】
前記レーザ溶接方法では、前記レーザ光は、前記第一面上で走査され、前記レーザ光の前記第一面上での走査速度が、100[mm/s]以上かつ800[mm/s]以下であってもよい。
【0018】
前記レーザ溶接方法では、前記走査速度が、300[mm/s]以上かつ600[mm/s]以下であってもよい。
【0019】
前記レーザ溶接方法では、前記レーザ光は、波長が800[nm]以上の第一レーザ光と波長が550[nm]以下の第二レーザ光とを含んでもよい。
【0020】
前記レーザ溶接方法では、前記レーザ光の波長は、400[nm]以上であってもよい。
【0021】
また、本発明のレーザ溶接方法は、例えば、第一部位と当該第一部位に対して第一方向に重なった導体とを有した回路基板の当該導体と、導電部材の端子部と、を溶接する溶接方法であって、前記導体に対して前記端子部を前記第一方向に接した状態に重ねる工程と、前記端子部の前記導体とは反対側で前記第一方向を向いた第一面に、レーザ光を照射し、前記第一面から前記端子部を貫通して前記導体内に至る溶融池を形成する工程と、前記溶融池を冷却して固化して溶接部を形成する工程と、を備え、前記溶融池を形成する工程では、前記第一部位と、前記溶融池の前記第一方向の反対方向の先端部と、の間に、前記導体の非溶融部が介在するとともに、前記溶融池の前記第一方向に沿った深さであるDpが、以下の式(1-2)
Dp<T1+T2-20 ・・・(1-2)
(ここに、T1は、前記第一方向に沿った前記端子部の厚さ、T2は、前記第一方向に沿った前記導体の厚さ)を満たす条件で、前記第一面に前記レーザ光を照射する。
【0022】
前記レーザ溶接方法では、前記溶融池を形成する工程において、前記Dpが、以下の式(2-2)
Dp>50 ・・・(2-2)
を満たす条件で、前記第一面に前記レーザ光を照射してもよい。
【0023】
前記レーザ溶接方法では、前記レーザ光は、波長が800[nm]以上の第一レーザ光と波長が550[nm]以下の第二レーザ光とを含んでもよい。
【0024】
前記レーザ溶接方法では、前記レーザ光の波長は、400[nm]以上であってもよい。
【0025】
本発明のレーザ溶接装置は、例えば、第一部位と当該第一部位に対して第一方向に重なった導体とを有した回路基板の当該導体と、導電部材の端子部と、を溶接する溶接方法であって、前記導体に対して前記端子部を前記第一方向に接した状態に重ねる工程と、前記端子部の前記導体とは反対側で前記第一方向を向いた第一面に、レーザ光を照射し、前記第一面から前記端子部を貫通して前記導体内に至る溶融池を形成する工程と、前記溶融池を冷却して固化して溶接部を形成する工程と、を備え、前記溶融池を形成する工程では、前記第一部位と、前記溶融池の前記第一方向の反対方向の先端部と、の間に、前記導体の非溶融部が介在するとともに、前記溶融池の前記第一方向に沿った深さであるDpが、以下の式(1-1)
Dp<T1+T2-Tmax ・・・(1-1)
(ここに、T1は、前記第一方向に沿った前記端子部の厚さ、T2は、前記第一方向に沿った前記導体の厚さ、Tmaxは、前記溶融池から前記非溶融部を介して前記第一部位へ伝導した熱によって当該第一部位の特性変化が生じる前記非溶融部の厚さの最大値)を満たす条件で、前記第一面に前記レーザ光を照射する、溶接方法、を実行するレーザ溶接装置であって、前記レーザ光を出力するレーザ装置と、前記レーザ装置から出力されたレーザ光を前記第一面に照射する光学ヘッドと、を備える。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、導体同士をレーザ溶接によって接合する場合に、例えば、当該導体と接した部位に対する熱影響を抑制することが可能となるような、改善された新規なレーザ溶接方法およびレーザ溶接装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、第1実施形態のレーザ溶接方法を実行するレーザ溶接装置の例示的な概略構成図である。
【
図2】
図2は、照射するレーザ光の波長に対する各金属材料の光の吸収率を示すグラフである。
【
図3】
図3は、第1実施形態のレーザ溶接装置によって形成される加工対象の表面上でのレーザ光のスポットの形状の一例を示す模式的な平面図である。
【
図4】
図4は、実施形態のレーザ溶接方法の手順を示す例示的なフローチャートである。
【
図5】
図5は、第1実施形態のレーザ溶接方法によって形成される溶融池の例示的かつ模式的な断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態のレーザ溶接方法におけるレーザ光による照射エネルギと溶融池の深さとの関係を示す例示的なグラフである。
【
図7】
図7は、第2実施形態のレーザ溶接方法を実行するレーザ溶接装置の例示的な概略構成図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態のレーザ溶接装置に含まれる回折光学素子の原理の概念を示す説明図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態のレーザ溶接装置によって形成される加工対象の表面上でのレーザ光のスポットの形状の一例を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0029】
以下に示される実施形態は、同様の構成を備えている。よって、各実施形態の構成によれば、当該同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。また、以下では、それら同様の構成には同様の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される場合がある。
【0030】
また、各図において、X方向を矢印Xで表し、Y方向を矢印Yで表し、Z方向を矢印Zで表している。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに交差するとともに直交している。Z方向は、例えば、加工対象Wの表面(加工面)の法線方向である。
【0031】
また、本明細書において、序数は、部位や方向等を区別するために便宜上付与されており、優先度や順番を示すものではないし、数を限定するものでもない。
【0032】
[第1実施形態]
[レーザ溶接装置]
図1は、第1実施形態のレーザ溶接装置100A(100)の概略構成図である。
図1に示されるように、レーザ溶接装置100は、レーザ装置111,112と、光ファイバ130と、光学ヘッド120A(120)と、位置調整機構140と、を備えている。
【0033】
レーザ装置111は、光源としてのレーザ発振器を有している。一例として、レーザ装置111は、数kWのパワーのレーザ光を出力できるよう構成されている。また、レーザ装置111は、例えば、内部に複数の半導体レーザ素子を有し、当該複数の半導体レーザ素子の合計の出力として数kWのパワーのマルチモードのレーザ光を出力できるよう構成されてもよい。また、レーザ装置111は、ファイバレーザ、YAGレーザ、ディスクレーザ等様々なレーザ光源を備えてもよい。
【0034】
レーザ装置111は、例えば、800[nm]以上かつ1200[nm]以下の波長のレーザ光を出力する。レーザ装置111は、第一レーザ装置とも称され、レーザ装置111が有するレーザ発振器は、第一レーザ発振器とも称されうる。また、レーザ装置111が出力するレーザ光は、第一レーザ光とも称されうる。
【0035】
レーザ装置112も、光源としてのレーザ発振器を有している。一例として、レーザ装置112は、内部に複数の半導体レーザ素子を有し、当該複数の半導体レーザ素子の合計の出力として数kWのパワーのマルチモードのレーザ光を出力できるよう構成される。
【0036】
レーザ装置112は、例えば、550[nm]以下の波長のレーザ光を出力する。レーザ光の波長は、400[nm]以上かつ500[nm]以下であるのが好適である。レーザ装置112は、第二レーザ装置とも称され、レーザ装置112が有するレーザ発振器は、第二レーザ発振器とも称されうる。また、レーザ装置112が出力するレーザ光は、第二レーザ光とも称されうる。
【0037】
光ファイバ130は、それぞれ、レーザ装置111,112から出力されたレーザ光を光学ヘッド120に導く。
【0038】
光学ヘッド120は、レーザ装置111,112から光ファイバ130を介して入力されたレーザ光を、加工対象Wに向けて照射するための光学装置である。光学ヘッド120は、コリメートレンズ121(121-1,121-2)と、ミラー123と、フィルタ124と、ガルバノスキャナ126と、集光レンズ122と、を備えている。これらコリメートレンズ121、ミラー123、フィルタ124、ガルバノスキャナ126、および集光レンズ122は、光学部品とも称されうる。
【0039】
コリメートレンズ121は、光ファイバ130を介して入力されたレーザ光をコリメートする。コリメートされたレーザ光は、平行光になる。
【0040】
ミラー123は、コリメートレンズ121-1で平行光となったレーザ光を反射する。ミラー123で反射されたレーザ光は、フィルタ124へ向かう。なお、光学ヘッド120内の光学部品のレイアウトによっては、ミラー123は不要となる。
【0041】
フィルタ124は、レーザ装置111が出力したレーザ光を透過し、かつレーザ装置112が出力したレーザ光を透過せずに反射するハイパスフィルタである。
【0042】
フィルタ124を経由したレーザ光は、ガルバノスキャナ126へ向かう。ガルバノスキャナ126は、2枚のミラー126a,126bを有しており、当該2枚のミラー126a,126bの角度を制御することで、加工対象Wの表面上でのレーザ光Lの照射位置を移動し、表面上でレーザ光Lを走査することができる装置である。ミラー126a,126bの角度は、それぞれ、例えばモータを含む不図示のアクチュエータによって変更されうる。
【0043】
集光レンズ122は、ガルバノスキャナ126を経由したレーザ光を集光し、レーザ光L(出力光)として、加工対象Wへ照射する。光学ヘッド120から出力され加工対象Wに照射されるレーザ光には、波長が異なる二つのレーザ光、すなわちレーザ装置111が出力したレーザ光と、レーザ装置112が出力したレーザ光とが、含まれることになる。
【0044】
位置調整機構140は、加工対象Wに対する光学ヘッド120の相対位置を変更可能に構成されている。
【0045】
レーザ溶接装置100は、ガルバノスキャナ126および位置調整機構140の少なくとも一方の作動により、加工対象Wの表面上で、レーザ光Lのスポットを走査することができる。ガルバノスキャナ126および位置調整機構140は、走査機構とも称されうる。
【0046】
[加工対象]
加工対象Wは、回路基板10に設けられた導体12と、導電部材20の端子部21と、を含む。レーザ溶接装置100による溶接処理により、導体12と端子部21とが一体化され、回路基板アセンブリ1が形成される。回路基板アセンブリ1は、導体12が設けられた回路基板10と、端子部21を有した導電部材20と、を備えている。
【0047】
回路基板10は、絶縁体11と、導体12と、を有している。回路基板10は、例えば、プリント配線基板である。
【0048】
絶縁体11は、例えば、窒化ケイ素のようなセラミックや、ガラスエポキシ樹脂で作られる。すなわち、回路基板10は、例えば、セラミック基板や、ガラスエポキシ樹脂基板である。ただし、絶縁体11は、これには限定されず、他の材料で作られてもよい。
【0049】
導体12は、比較的高い導電性を有した材料で作られる。一例として、導体12は、純銅や銅合金のような銅系の金属材料で作られる。ただし、これには限定されず、導体12は、他の金属材料で作られてもよい。
【0050】
絶縁体11は、板状の形状を有し、Z方向と交差するとともに直交している。また、絶縁体11は、面11aと面11bと、を有している。面11aは、Z方向の反対方向を向き、Z方向と交差するとともに直交している。面11bは、Z方向を向き、Z方向と交差するとともに直交している。絶縁体11は、第一部位の一例である。
【0051】
導体12は、絶縁体11と一体化されており、Z方向に露出した面12aを有している。面12aは、Z方向を向き、Z方向と交差するとともに直交している。面12aは、面11aとは、略面一か、あるいは面11aよりZ方向に突出している。導体12のうち端子部21と溶接される部位は、絶縁体11とZ方向に重なっている。なお、導体12は、これには限定されず、回路基板10に実装された例えばスイッチング素子のような半導体装置や、電気部品、電子部品の導体であってもよい。この場合、面12aは、回路基板10に実装された半導体装置や、電気部品、電子部品の導体の面となる。
【0052】
導電部材20は、端子部21を有している。端子部21は、略一定の厚さを有した板状の形状を有し、Z方向と交差するとともに直交している。また、端子部21は、面21aと面21bと、を有している。面21aは、Z方向の反対方向を向き、Z方向と交差するとともに直交している。面21bは、Z方向を向き、Z方向と交差するとともに直交している。面21bは、第一面の一例である。
【0053】
導電部材20は、比較的高い導電性および比較的高い熱伝導性を有した材料で作られる。一例として、導電部材20は、純銅や銅合金のような銅系の金属材料で作られる。ただし、導体12は、これには限定されず、他の金属材料で作られてもよい。導電部材20は、バスバーとも称されうる。
【0054】
[波長と光の吸収率]
ここで、金属材料の光の吸収率について説明する。
図2は、照射するレーザ光の波長に対する各金属材料の光の吸収率を示すグラフである。
図2のグラフの横軸は波長であり、縦軸は吸収率である。
図2には、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、およびチタン(Ti)について、波長と吸収率との関係が示されている。
【0055】
材料によって特性が異なるものの、
図2に示されている各金属に関しては、一般的な赤外線(IR)のレーザ光(第一レーザ光)を用いるよりも、青や緑のレーザ光(第二レーザ光)を用いた方が、エネルギの吸収率がより高いことが理解できよう。この特徴は、銅(Cu)や、金(Au)等においては顕著となる。
【0056】
使用波長に対して吸収率が比較的低い加工対象Wにレーザ光が照射された場合、大部分の光エネルギは反射され、加工対象Wに熱としての影響を及ぼさない。そのため、十分な深さの溶融領域を得るには比較的高いパワーを与える必要がある。その場合、ビーム中心部は急激にエネルギが投入されることで、昇華が生じ、キーホールが形成される。
【0057】
他方、使用波長に対して吸収率が比較的高い加工対象Wにレーザ光が照射された場合、投入されるエネルギの多くが加工対象Wに吸収され、熱エネルギへと変換される。すなわち、過度なパワーを与える必要はないため、キーホールの形成を伴わない熱伝導型の溶融とすることができる。
【0058】
本実施形態では、レーザ光Lに含まれる第一レーザ光によって加工対象Wにキーホールを形成することにより、迅速に所要の深さの溶融池を形成することができる。また、レーザ光Lに含まれる第二レーザ光によって加工対象Wの当該溶融池を含む広い範囲を効率良く加熱することにより、加工対象Wの場所による急激な温度変化を抑制し、溶融池をより安定化させ、当該溶融池から周囲にスパッタが飛散するのを抑制することができる。レーザ光Lを加工対象Wの表面上で走査する場合は、第一レーザ光の照射領域に対して第二レーザ光の照射領域の少なくとも一部が走査方向の前方に位置するのが好ましい。本実施形態のような第一レーザ光と第二レーザ光とを含むレーザ光Lの照射によるレーザ溶接は、回路基板10の導体12と導電部材20の端子部21との溶接のように、周囲に導体部分が存在する加工対象Wの溶接には好適である。
【0059】
[スポット]
図3は、面21b上に形成されたレーザ光LのスポットSの平面図である。レーザ光Lは、レーザ装置111が出力したレーザ光によるビームBm1と、レーザ装置112が出力したレーザ光によるビームBm2と、を含んでおり、面21b上には、当該ビームBm1,Bm2に対応した照射領域(パワー領域)が形成される。ビームBm2による照射領域は、ビームBm1による照射領域よりも広く、当該ビームBm1による照射領域を少なくとも部分的に含んでいる。ビームBm1による照射領域は、第一パワー領域の一例であり、ビームBm2による照射領域は、第二パワー領域の一例である。
【0060】
スポットSの幅Wb(最大幅、最大直径)は、スポットS内のピーク強度の1/e2以上の強度の領域の幅として定義することができる。スポットSを面21b上で走査する場合、幅Wbは、走査方向に対して直交する方向における幅として定義することができる。
【0061】
[レーザ溶接方法の手順]
図4は、レーザ溶接方法の手順を示すフローチャートである。
図4に示されるように、まずは、回路基板10および導電部材20を、
図1に示されるように、導体12と端子部21とがZ方向に重なるとともに、端子部21が導体12に対してZ方向に接した状態に、セットする(S1)。次に、端子部21の面21bにレーザ光Lを照射することにより、面21bから端子部21を貫通して導体12内に至る溶融池を形成する(S2)。次に、溶融池を自然冷却または強制冷却によって固化する(S3)。固化した溶融池が溶接部(溶接金属)となり、当該溶接部によって導体12と端子部21とが接合され、これにより導体12と端子部21とが電気的に接続される。導体12、導電部材20、および溶接部は、電気的な回路の一部を構成する。Z方向は、第一方向の一例である。
【0062】
[溶融池の深さ]
図5は、S2において形成される溶融池Mの断面図である。
図5に示されるように、溶融池Mは、面21bから端子部21を貫通し、導体12内に至っている。ここで、本実施形態では、S2においては、溶融池Mの先端部、すなわちZ方向の反対方向の端部Maが、絶縁体11には至らず、導体12のうち当該端部Maと絶縁体11との間の部位が、非溶融部12bとなるよう、レーザ溶接の諸条件を設定する。
【0063】
ここで、溶融池MのZ方向に沿った深さをDp、端子部21のZ方向に沿った厚さをT1、導体12のZ方向に沿った厚さをT2、非溶融部12bのZ方向に沿った厚さをT3、とした場合、次の式(1-0)が成り立つ。
Dp=T1+T2-T3 ・・・(1-0)
発明者らの鋭意研究の結果、S12においては、絶縁体11のうち端部Maに最も近い点Pの温度が最も高くなり、当該温度は、非溶融部12bの厚さT3が薄い(小さい)ほど高くなることが判明した。このため、非溶融部12bの厚さT3を、溶融池Mから非溶融部12bを介して絶縁体11の点Pへ伝導した熱によって特性変化が生じないように厚くすれば、絶縁体11の略全体において、熱による特性変化が生じないことになる。溶融池Mの導体12との境界部分の温度は、導体12の融点であるため、非溶融部12bの厚さと点Pの温度との関係は、シミュレーションや実験により求めることができる。すなわち、シミュレーションや実験により、溶融池Mから非溶融部12bを介して絶縁体11の点Pへ伝導した熱によって当該点Pにおいて特性変化が生じる当該非溶融部12bの厚さの最大値Tmaxを求めた上で、次の式(1-1)を満たす深さDpの溶融池Mを形成すればよい。
Dp<T1+T2-Tmax ・・・(1-1)
絶縁体11が、例えば窒化ケイ素のようなセラミックである場合、最大値Tmaxは、S2における絶縁体11中の最高温度、すなわち点Pの温度が耐熱衝撃温度(例えば、約800[℃])となる厚さとすればよい。また、絶縁体11が、例えばガラスエポキシ樹脂のように合成樹脂材料を含む場合、最大値Tmaxは、S2における絶縁体11中の最高温度、すなわち点Pの温度が耐熱温度(例えば、約240[℃])となる厚さとすればよい。また、発明者らの鋭意研究により、このような条件を満たす最大値Tmaxは、20[μm]であることが判明した。この場合、式(1-1)は、次の式(1-2)となる。
Dp<T1+T2-20 ・・・(1-2)
【0064】
さらに、深さDpについては、所要の接合強度が得られることが前提となる。すなわち、溶融池Mが固化した溶接部30による導体12と端子部21との所要の接合強度が得られる溶融池Mの深さの最小値をDminとすると、次の式(2-1)を満たす深さDpの溶融池Mを形成すればよい。
Dp>Dmin ・・・(2-1)
発明者らの鋭意研究により、このような条件を満たす最小値Dminは、典型的には50[μm]であることが判明した。この場合、式(2-1)は、次の式(2-2)となる。
Dp>50 ・・・(2-2)
【0065】
[照射エネルギ]
レーザ光による照射エネルギが大きくなるほど、溶融池Mの深さDpは深くなる。
図6は、照射エネルギEと、深さDpとの関係を実験的に求めたグラフである。発明者らの鋭意研究により、照射エネルギEと深さDpとの間には、
図6に示されるような線形性があり、一方を他方の1次関数として近似的に表せることが判明した。
図6の場合、
Dp=C2×E-C1 ・・・(3-0)
(ここに、C1,C2は係数)と表すことができる。式(3-0)を変形して、照射エネルギEは、次の式(3-1)で表すことができる。
E=(Dp+C1)/C2 ・・・(3-1)
発明者らの鋭意研究により、面21b上のスポットSの幅Wbが100[μm]である場合、照射エネルギE[J]は、深さDp[μm]に応じた次の式(3-2)で表せることが判明した。
E=(Dp+21)/135 ・・・(3-2)
この場合、C1=21、C2=135である。式(3-1)、(3-2)を用いることにより、S2において、所要の深さDpを得るための照射エネルギEを決定することができる。
【0066】
[走査速度]
面21b上でレーザ光LのスポットSを走査する場合、走査速度が遅すぎると、レーザ光Lによる照射エネルギが過多となって溶融池Mが深くなり、絶縁体11の点Pにおいて特性変化が生じてしまう。逆に、走査速度が速すぎると、レーザ光Lによる照射エネルギが過少となって溶融池Mが浅くなり、溶接部30による所要の接合強度が得られなくなる。このような観点から、発明者らの鋭意研究により、式(3-1)、(3-2)を満たすような典型的なレーザ光Lの照射条件にあっては、走査速度は、100[mm/s]以上かつ800[mm/s]以下であるのが好ましく、300[mm/s]以上かつ600[mm/s]以下であるのがより好ましいことが判明した。
【0067】
以上、説明したように、本実施形態によれば、導体12と端子部21とをレーザ溶接によって接合する場合に、例えば、絶縁体11のような導体12と接した部位に対する熱影響を抑制することが可能となるような、改善された新規なレーザ溶接方法およびレーザ溶接装置100を得ることができる。
【0068】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態のレーザ溶接装置100B(100)の概略構成図である。
図7に示されるように、レーザ溶接装置100Bは、第1実施形態のレーザ溶接装置100Aが有していたレーザ装置112および当該レーザ装置112の出力したレーザ光(第二レーザ光)を伝送するためのコリメートレンズ121-2やフィルタ124のような光学部品を備えていない。また、本実施形態では、光学ヘッド120B(120)は、コリメートレンズ121とミラー123との間に、回折光学素子125(diffractive optical element、以下、DOE125と称する)を有している。これらの点を除き、レーザ溶接装置100Bは、第1実施形態のレーザ溶接装置100Aと同様の構成を備えている。
【0069】
DOE125は、レーザ光のビームの形状(以下、ビーム形状と称する)を成形する。
図8は、DOE125の原理の概念を示す説明図である。
図8に示されるように、DOE125は、例えば、周期の異なる複数の回折格子125aが重ね合わせられた構成を備えている。DOE125は、平行光を、各回折格子125aの影響を受けた方向に曲げたり、重ね合わせたりすることにより、ビーム形状を成形することができる。DOE125は、ビームシェイパとも称されうる。
【0070】
図9は、加工対象Wの面21b上に形成されたレーザ光LのスポットSの例示的かつ模式的な平面図である。
図9に示されるように、DOE125の作用により、レーザ光Lは、面21b上に、複数のビームBmの照射領域を形成することができる。
図9の例では、複数のビームBmは、面21b上に、中央部に少なくとも一つ(
図9の例では1個)のビームBm1(Bm)により形成されるパワー領域と、その周囲を取り囲む複数の(
図9の例では16個)のビームBm2(Bm)により形成される略環状のパワー領域と、を形成している。DOE125の適宜な設計により、面21b上には、
図9の例に限らず、ビームの数、ビームの配置、形状、大きさ、パワー密度等のスペックが異なる種々のパワー領域を形成することができる。また、DOE125を有した構成にあっては、DOE125を有しない構成に比べて、面21b上に、より広いスポットSを形成しやすくなり、溶融池の周辺部分のより広い範囲を加熱しやすい。よって、本実施形態によっても、加工対象Wの場所による急激な温度変化を抑制し、溶融池をより安定化させ、当該溶融池から周囲にスパッタが飛散するのを抑制することができる。なお、スポットSの幅Wbは、互いに最も離れたビームBmの最も離れた外縁間の距離として定義することができる。この場合も、スポットSを面21b上で走査する場合、幅Wbは、走査方向に対して直交する方向における幅として定義することができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0072】
例えば、上述した条件を満たす照射を実行できれば、レーザ光は、第一レーザ光および第二レーザ光を含まなくてもよいし、DOEによってビームモード制御されなくてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…回路基板アセンブリ
10…回路基板
11…絶縁体(第一部位)
11a…面
11b…面
12…導体
12a…面
12b…非溶融部
20…導電部材
21…端子部
21a…面
21b…面(第一面)
30…溶接部
100,100A,100B…レーザ溶接装置
111,112…レーザ装置
120,120A,120B…光学ヘッド
121,121-1,121-2…コリメートレンズ
122…集光レンズ
123…ミラー
124…フィルタ
125…DOE(回折光学素子)
125a…回折格子
126…ガルバノスキャナ(走査機構)
126a,126b…ミラー
130…光ファイバ
140…位置調整機構(走査機構)
Bm,Bm1,Bm2…ビーム
C1,C2…係数
Dmin…最小値
Dp…深さ
E…照射エネルギ
L…レーザ光
M…溶融池
Ma…端部(先端部)
P…点
S…スポット
S1~S3…工程
T1,T2,T3…厚さ
Tmax…最大値
W…加工対象
Wb…幅
X…方向
Y…方向
Z…方向(第一方向)