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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076271
(43)【公開日】2024-06-05
(54)【発明の名称】薄膜の剥離片の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240529BHJP
   B26F 1/00 20060101ALI20240529BHJP
   B26F 1/38 20060101ALI20240529BHJP
   B26D 3/08 20060101ALI20240529BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240529BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20240529BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240529BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEZ
B26F1/00 G
B26F1/38 A
B26D3/08 Z
G02B5/30
C09J7/30
C09J201/00
C09J5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187774
(22)【出願日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂内 将希
【テーマコード(参考)】
2H149
3C060
4F071
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
2H149AA01
2H149AB11
2H149BA05
2H149EA22
2H149FA05Z
2H149FA12Z
2H149FA27W
2H149FA61
2H149FA63
2H149FD32
2H149FD33
3C060AA04
3C060AB01
3C060BA03
3C060BA07
3C060BB07
3C060BB08
3C060BD03
3C060BD04
3C060BG06
4F071AA29
4F071AH19
4F071BB02
4F071BB11
4F071BB13
4F071BC01
4F071BC08
4F071BC12
4J004AA08
4J004FA08
4J040DD021
4J040JA02
4J040JA09
4J040LA01
4J040LA06
4J040MA10
4J040PA00
4J040PA42
(57)【要約】
【課題】薄膜の剥離片の効率的な製造方法。
【解決手段】基材層(A)と前記基材層(A)に接して設けられている水溶性接着剤層と前記水溶性接着剤層に接して設けられている薄膜とを含む、複層フィルムを、支持部材により支持した状態で、前記複層フィルムの前記薄膜の側に、凹凸形状を有する部材を押圧して、前記薄膜を小片に分割する亀裂を形成する工程(A1)と、次いで前記亀裂が形成された複層フィルムから、前記水溶性接着剤層を除去し前記小片を剥離して、薄膜の剥離片を得る工程(A2)とを含む、薄膜の剥離片の製造方法であって、前記支持部材に支持された状態で測定された前記複層フィルムの前記薄膜側のマルテンス硬さが、20mN/mm以上である、薄膜の剥離片の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層(A)と前記基材層(A)に接して設けられている水溶性接着剤層と前記水溶性接着剤層に接して設けられている薄膜とを含む、複層フィルムを、支持部材により支持した状態で、前記複層フィルムの前記薄膜の側に、凹凸形状を有する部材を押圧して、前記薄膜を小片に分割する亀裂を形成する工程(A1)と、次いで
前記亀裂が形成された複層フィルムから、前記水溶性接着剤層を除去し前記小片を剥離して、薄膜の剥離片を得る工程(A2)とを含む、薄膜の剥離片の製造方法であって、
前記支持部材に支持された状態で測定された前記複層フィルムの前記薄膜側のマルテンス硬さが、20mN/mm以上である、薄膜の剥離片の製造方法。
【請求項2】
前記水溶性接着剤層と前記薄膜との接着力が、0.02N/cm以上である、請求項1に記載の薄膜の剥離片の製造方法。
【請求項3】
前記工程(A2)における前記水溶性接着剤層の除去を、前記複層フィルムを水に浸漬することにより行う、請求項1に記載の薄膜の剥離片の製造方法。
【請求項4】
基材層(B)と前記基材層(B)に接して設けられている前記薄膜とを含む、第一中間積層体を用意する工程(B1)と、
前記基材層(A)と前記基材層(A)に接して設けられている前記水溶性接着剤層とを含む、第二中間積層体を用意する工程(B2)と、
前記第一中間積層体と前記第二中間積層体とを、前記薄膜と前記水溶性接着剤層とが対向するように貼合して第三中間積層体を得る工程(B3)と、
前記第三中間積層体から前記基材層(B)を剥離して、前記複層フィルムを得る工程(B4)とを、前記工程(A1)の前に更に含む、請求項1に記載の薄膜の剥離片の製造方法。
【請求項5】
前記工程(A1)における前記亀裂の形成を、前記薄膜をその厚み方向から見て同一形状の小片に分割する亀裂を形成することにより行う、請求項1に記載の薄膜の剥離片の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜の剥離片の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インク用途に用いられる、コレステリック液晶化合物などの薄膜の剥離片を製造する方法として、ベルト上に薄膜を形成し、薄膜をエアジェットによりベルトから剥離する方法が知られている(特許文献1参照)。
また、薄膜を含む複層フィルムに、薄膜側から凹凸形状を有する部材を押圧して薄膜を小片に分割し、薄膜の小片を剥離することにより、薄膜の剥離片を得る方法も知られている(特許文献2参照)。
【0003】
また、各種光学フィルムを製造するためのコーティング組成物として、特定の水溶性重合体を含む組成物が知られている(特許文献3参照)。
液晶化合物を含むエマルジョン組成物に、分散安定剤としてポリビニルアルコールを添加しうることが知られている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5364557号明細書
【特許文献2】特開2021-133441号公報
【特許文献3】国際公開第2018/230564号
【特許文献4】特開2020-126091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、得られる薄膜の剥離片が不定形である。
一方、特許文献2の技術では、得られる薄膜の剥離片の形状を、定型にしうる。
しかし、特許文献2の技術では、凹凸形状を有する部材を複層フィルムに押圧して薄膜に亀裂を形成し、薄膜を小片に分割する際に、分割された薄膜の小片が剥離して、凹凸形状を有する部材に付着する場合がある。凹凸形状を有する部材に薄膜の小片が付着すると、凹凸形状を有する部材のクリーニングが必要となって、製造ラインを停止させる場合がある。薄膜を小片に分割する工程を連続的に行う場合は特に、製造ラインの停止は、薄膜の剥離片の製造効率低下を招きうる。
【0006】
そのため、凹凸形状を有する部材により薄膜に亀裂を形成する際に、凹凸形状を有する部材に付着する薄膜の小片が少ないことが求められる。
ひいては、薄膜の剥離片の効率的な製造方法が、求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するべく、鋭意検討した結果、所定の複層フィルムを用いて、所定の工程を行うことにより、前記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
【0008】
[1] 基材層(A)と前記基材層(A)に接して設けられている水溶性接着剤層と前記水溶性接着剤層に接して設けられている薄膜とを含む、複層フィルムを、支持部材により支持した状態で、前記複層フィルムの前記薄膜の側に、凹凸形状を有する部材を押圧して、前記薄膜を小片に分割する亀裂を形成する工程(A1)と、次いで
前記亀裂が形成された複層フィルムから、前記水溶性接着剤層を除去し前記小片を剥離して、薄膜の剥離片を得る工程(A2)とを含む、薄膜の剥離片の製造方法であって、
前記支持部材に支持された状態で測定された前記複層フィルムの前記薄膜側のマルテンス硬さが、20mN/mm以上である、薄膜の剥離片の製造方法。
[2] 前記水溶性接着剤層と前記薄膜との接着力が、0.02N/cm以上である、[1]に記載の薄膜の剥離片の製造方法。
[3] 前記工程(A2)における前記水溶性接着剤層の除去を、前記複層フィルムを水に浸漬することにより行う、[1]又は[2]に記載の薄膜の剥離片の製造方法。
[4] 基材層(B)と前記基材層(B)に接して設けられている前記薄膜とを含む、第一中間積層体を用意する工程(B1)と、
前記基材層(A)と前記基材層(A)に接して設けられている前記水溶性接着剤層とを含む、第二中間積層体を用意する工程(B2)と、
前記第一中間積層体と前記第二中間積層体とを、前記薄膜と前記水溶性接着剤層とが対向するように貼合して第三中間積層体を得る工程(B3)と、
前記第三中間積層体から前記基材層(B)を剥離して、前記複層フィルムを得る工程(B4)とを、前記工程(A1)の前に更に含む、[1]~[3]のいずれか一項に記載の薄膜の剥離片の製造方法。
[5] 前記工程(A1)における前記亀裂の形成を、前記薄膜をその厚み方向から見て同一形状の小片に分割する亀裂を形成することにより行う、[1]~[4]のいずれか一項に記載の薄膜の剥離片の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、薄膜の剥離片の効率的な製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。以下に示す実施形態の構成要素は、適宜組み合わせうる。
【0011】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。フィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
【0012】
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±3°、±2°又は±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0013】
[1.薄膜の剥離片の製造方法の概要]
本発明の一実施形態に係る、薄膜の剥離片の製造方法は、
基材層(A)と前記基材層(A)に接して設けられている水溶性接着剤層と前記水溶性接着剤層に接して設けられている薄膜とを含む、複層フィルムを、支持部材により支持した状態で、前記複層フィルムの前記薄膜の側に、凹凸形状を有する部材を押圧して、前記薄膜を小片に分割する亀裂を形成する工程(A1)と、次いで
前記亀裂が形成された複層フィルムから、前記水溶性接着剤層を除去し前記小片を剥離して、薄膜の剥離片を得る工程(A2)とを含み、
ここで、前記支持部材に支持された状態で測定された前記複層フィルムの前記薄膜側のマルテンス硬さが、20mN/mm以上である。
【0014】
本実施形態に係る製造方法によれば、工程(A1)において、凹凸形状を有する部材により薄膜に亀裂を形成する際に、凹凸形状を有する部材に付着する薄膜の小片が少なく、凹凸形状を有する同一の部材を用いて連続的に工程(A1)を行いうる。したがって、効率的に薄膜に亀裂を形成しうる。ひいては、効率的に薄膜の剥離片を製造できる。
【0015】
さらに、工程(A2)において、複層フィルムから容易に薄膜の小片を剥離することができる。したがって、複層フィルムから、効率よく、薄膜の剥離片を得うる。
【0016】
(薄膜側のマルテンス硬さ)
本実施形態の製造方法では、支持部材に支持された状態で測定された前記複層フィルムの前記薄膜側のマルテンス硬さが、通常20mN/mm以上、好ましくは25mN/mm以上、より好ましくは30mN/mm以上であり、高いほど好ましいが、例えば10000mN/mm以下であってもよい。
支持部材に支持された状態で測定された複層フィルムの薄膜側のマルテンス硬さが、前記下限値以上であると、凹凸形状を有する部材に付着する薄膜の小片が少なく、効率的に薄膜に亀裂を形成しうる。
【0017】
その理由は、本発明を限定するものではないが、支持部材に支持された状態において、複層フィルムの薄膜側におけるマルテンス硬さが前記下限値以上であると、凹凸形状を有する部材を押圧した際に、前記部材が複層フィルムの厚み方向において沈み込む深さが適度なものとなり、凹凸形状を有する部材の凹部に薄膜の小片が付着しにくくなるためと推察される。
【0018】
複層フィルムの薄膜側におけるマルテンス硬さは、支持部材上に複層フィルムを、薄膜側が支持部材と反対側(上側)となるように設置し、超微小負荷硬さ試験方法(JIS Z2255:2003)に従って測定しうる。測定条件は、圧子:正四角錐型のビッカース圧子(材質:ダイヤモンド、頂角:136°)、最大試験荷重:500mN、最大押し込み深さ:10μm、荷重アプリケーション時間:20秒、クリープ時間:10秒としうる。
【0019】
複層フィルムの薄膜側におけるマルテンス硬さは、支持部材を選択することにより、調整しうる。例えば、支持部材として、硬度の高い材料で形成された部材を選択することにより、複層フィルムの薄膜側におけるマルテンス硬さを大きくしうる。
【0020】
支持部材に支持された状態での複層フィルムのマルテンス硬さとして、複層フィルムを支持する支持部材の表面と同材料で形成された試験板を支持部材の代わりとして用いて測定されたマルテンス硬さの値を、用いうる。
【0021】
(水溶性接着剤層と薄膜との接着力)
水溶性接着剤層と薄膜との接着力は、好ましくは0.02N/cm以上、より好ましくは0.05N/cm以上、更に好ましくは0.1N/cm以上であり、高いほど好ましいが、例えば10kN/cm以下であってもよい。
水溶性接着剤層と薄膜との接着力が、前記下限値以上であると、複層フィルムに凹凸形状を有する部材を押圧して、凹凸形状を有する部材を複層フィルムから離す際に、凹凸形状を有する部材に付着する薄膜の小片を効果的に少なくしうる。その結果、より効率的に、薄膜に亀裂を形成しうる。また、複層フィルムの取り扱いがより容易となる。
【0022】
水溶性接着剤層と薄膜との接着力は、下記の方法により測定しうる。
複層フィルムから、幅25mmの長方形のサンプルを切り出す。
サンプルの薄膜側を、粘着テープを用いて、基板に固定する。
サンプルの幅方向と垂直な方向(長さ方向)の端部における基材層(A)及び水溶性接着剤層を把持して、90°ピール強度を測定し、得られたピール強度を水溶性接着剤層と薄膜との接着力とする。ピール強度の測定は90°ピール試験方法(JIS Z0237)に従って行う。測定環境は、23℃/50%RHとしうる。
【0023】
[2.剥離片の製造方法の実施形態]
以下、本発明の一実施形態に係る、剥離片の製造方法について説明する。
本実施形態に係る製造方法は、工程(A1)及び工程(A2)をこの順で含む。本実施形態に係る製造方法は、任意で、工程(B1)、工程(B2)、工程(B3)、及び工程(B4)を、工程(A1)の前に更に含む。
工程(B1)及び工程(B2)は、この順で行われてもよく、同時に行われてもよく、工程(B2)及び工程(B1)の順に行われてもよい。工程(B3)は、通常工程(B1)及び工程(B2)の後に行われる。工程(B4)は、通常工程(B3)の後に行われる。
【0024】
[2.1.工程(B1)]
工程(B1)では、基材層(B)と前記基材層(B)に接して設けられている前記薄膜とを含む、第一中間積層体を用意する。第一中間積層体は、効率的に複層フィルムを製造するために、好ましくは長尺である。
薄膜は、基材層(B)上に直接設けられていてもよく、基材層(B)上に、任意の層を介して間接的に設けられていてもよい。好ましくは、薄膜は基材層(B)上に直接設けられており、薄膜と基材層(B)との間には、任意の層が存在していない。
【0025】
薄膜は、通常第一中間積層体の厚み方向における最も外側に配置されている。
【0026】
[第一中間積層体]
(基材層(B))
基材層(B)は、長尺であることが好ましい。
基材層(B)を形成する材料の例としては、特に限定されず、重合体を含む樹脂、紙、及び金属が挙げられ、可撓性及び機械的強度に優れることから、重合体を含む樹脂が好ましい。
基材層(B)を形成しうる樹脂に含まれる重合体の例としては、セルロース系重合体(例、トリアセチルセルロース);脂環式構造を含有する重合体(例:環状オレフィン重合体);ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート);アクリル重合体(例、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル);及び、ポリカーボネート;が挙げられる。基材層(B)を形成しうる樹脂は、重合体を一種単独で含んでいてもよく、二種以上の組み合わせとして含んでいてもよい。また、重合体は、単独重合体であっても、共重合体であってもよい。樹脂は、重合体の他に、任意の添加剤を含んでいてもよい。
【0027】
脂環式構造を含有する重合体の例としては、環状オレフィン重合体、すなわち、環状オレフィンを重合して得られる構造を有する構成単位を含む重合体が挙げられる。
脂環式構造を含有する重合体の例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン重合体、(3)環状共役ジエン重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物が挙げられる。これらの中でも、透明性及び成形性の観点から、ノルボルネン系重合体及びこれらの水素化物が好ましい。
【0028】
ノルボルネン系重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素化物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体の開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体の付加共重合体が挙げられる。これらの重合体としては、例えば、特開2002-321302号公報等に開示されている重合体が挙げられる。
【0029】
ノルボルネン系重合体及びこれらの水素化物の好適な具体例としては、日本ゼオン社製「ゼオノア」;JSR社製「アートン」;TOPAS ADVANCED POLYMERS社製「TOPAS」が挙げられる。
【0030】
基材層(B)の厚みは、好ましくは12μm以上、より好ましくは25μm以上、更に好ましくは50μm以上であり、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは188μm以下である。基材層(B)の厚みが、前記下限値以上であることにより、基材層(B)の機械的強度をより優れたものとしうる。基材層(B)の厚みが、前記上限値以下であることで、基材層(B)の可撓性を向上させ、製造時のハンドリングを容易としうる。
【0031】
基材層(B)は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0032】
基材層(B)が、多層構造を有している場合、基材層(B)に含まれる各層は、工程(B3)及び工程(B4)において、互いに剥離しない程度の剥離強度を有していることが好ましい。
基材層(B)は、好ましくは単層構造を有する。
【0033】
基材層(B)は、その表面に、ラビング処理、コロナ処理などの処理がされていてもよい。
基材層(B)は、延伸されていない未延伸の層であっても、延伸された層であってもよい。
【0034】
前記のとおり、第一中間積層体は、基材層(B)及び薄膜のみからなる積層体であってもよく、基材層(B)及び薄膜に加えて、任意の層を備えていてもよい。例えば、薄膜を形成する組成物として液晶組成物を用いる場合、液晶組成物を良好に配向させる観点から、第一中間積層体は、基材層(B)と薄膜との間に、配向膜を有していてもよい。配向膜は、例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド等の重合体を含む樹脂により形成しうる。また、これらの重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。配向膜は、前記の重合体を含む溶液を塗工し、乾燥させ、ラビング処理を施すことにより製造しうる。
【0035】
(薄膜)
薄膜は、単層構造、多層構造のいずれの構造であってもよい。また、薄膜は、導電体及び誘電体のいずれであってもよい。さらに薄膜は、無機物の膜及び有機物の膜のいずれであってもよい。薄膜の例としては、アルミニウム、銀などの金属の膜;酸化チタン、酸化シリコン、酸化ニオブ、酸化タンタル、フッ化マグネシウムなどの、誘電体で形成された誘電体多層膜;及び、樹脂膜が挙げられる。
【0036】
樹脂膜を形成するための樹脂材料の例としては、光硬化性の液晶組成物、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、セルロース系重合体(例、トリアセチルセルロース)、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリオレフィン、脂環式構造含有重合体、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、及びこれらの組み合わせが挙げられる。樹脂材料に含まれうる重合体は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。樹脂材料は、重合体の他に、硬化剤、酸化防止剤などの任意の添加剤を含みうる。
【0037】
薄膜の厚みは、薄膜の材料、薄膜の剥離片の使用目的などに応じて適宜設定できるが、薄膜の反射率を確保する観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは、0.3μm以上、0.5μm以上、又は1μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、更に好ましくは10μm以下である。薄膜の厚みを前記上限値以下にすることにより、得られる剥離片を、様々な厚みの印刷層に対応したインクに好適に用いうる。
【0038】
薄膜として、例えば、樹脂を含む組成物として光硬化性の液晶組成物を用いて硬化させた硬化物からなる膜を用いうる。すなわち、薄膜を形成する樹脂としては、例えば、光硬化性の液晶組成物の硬化物を用いうる。ここで便宜上「液晶組成物」と称する材料は、2種類以上の物質の混合物のみならず、単一の物質からなる材料をも包含する。
【0039】
また、薄膜としては、例えば、コレステリック樹脂層を用いてもよい。コレステリック樹脂層とは、コレステリック規則性を有する樹脂層のことをいう。コレステリック規則性を有する樹脂層が有するコレステリック規則性とは、一平面上では分子軸が一定の方向に並んでいるが、それに重なる次の平面では分子軸の方向が少し角度をなしてずれ、更に次の平面では更に角度がずれるというように、重なって配列している平面を順次透過して進むに従って当該平面中の分子軸の角度がずれて(ねじれて)いく構造である。即ち、層内の分子がコレステリック規則性を有する場合、分子は、樹脂層内において、多数の分子の層をなす態様で整列する。かかる多数の分子の層の中のある層Aにおいては、分子の軸がある一定の方向となるよう分子が整列し、それに隣接する層Bでは、層Aにおける方向と角度を成してずれた方向に分子が整列し、それに更に隣接する層Cでは層Bにおける方向と角度を成して更にずれた方向に分子が整列する。このように、多数の分子の層において、分子の軸の角度が連続的にずれて、分子がねじれる構造が形成される。このように分子軸の方向がねじれてゆく構造は光学的にカイラルな構造となる。
【0040】
コレステリック樹脂層は、通常、円偏光分離機能を有する。すなわち、右円偏光及び左円偏光のうちの一方の円偏光を透過させ、他方の円偏光の一部又は全部を反射させる性質を有する。また、コレステリック樹脂層における反射は、円偏光を、そのキラリティを維持したまま反射する。
【0041】
薄膜として前記のようなコレステリック樹脂層を用いた場合、本実施形態の製造方法によって、円偏光分離機能を活かした樹脂膜の小片からなる剥離片を製造できる。
また、凹凸形状を有する部材として、薄膜をその厚み方向から見て同一形状の小片に分割する亀裂を形成することのできる部材を用いることにより、一定形状を有する小片の割合が多い剥離片を製造できる。
【0042】
薄膜は、薄膜の材料などに応じて、任意の方法により形成できる。例えば、薄膜は、蒸着法、スパッタリング法、塗工法などにより形成できる。ここで、塗工法の例としては、ダイコーティング法、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法、グラビアコーティング法、及びギャップコーティング法が挙げられる。
【0043】
[2.2.工程(B2)]
工程(B2)では、基材層(A)と基材層(A)に接して設けられている水溶性接着剤層とを含む、第二中間積層体を用意する。
第二中間積層体は、効率的に複層フィルムを製造するために、好ましくは長尺である。
好ましくは、水溶性接着剤層は、通常基材層(A)上に直接して設けられており、水溶性接着剤層と基材層(A)との間には、任意の層が存在していない。
水溶性接着剤層は、通常第二中間積層体の厚み方向において最も外側に配置されている。
【0044】
[第二中間積層体]
(基材層(A))
基材層(A)は、長尺であることが好ましい。
基材層(A)の例としては、前記の基材層(B)と同様の例が挙げられる。
基材層(A)の厚みは、前記した基材層(B)の好ましい範囲と同様の範囲としうる。
基材層(A)は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。好ましくは、基材層(A)は単層構造を有する。
基材層(A)は、延伸されていない未延伸の層であっても、延伸された層であってもよい。好ましくは、基材層(A)は延伸されていない、未延伸の層である。
基材層(A)は、易接着処理などの表面処理がされていてもよい。
基材層(A)としては、水溶性接着剤との密着性の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含む層(例:「コスモシャイン(登録商標) A4100」(東洋紡社製))であることが好ましい。
【0045】
(水溶性接着剤層)
水溶性接着剤層は、水溶性接着剤から形成された層である。
水溶性接着剤は、任意の割合で、水と混合しうる。
水溶性接着剤の例としては、特に限定されないが、合成高分子体及び/又は天然高分子体を含む水溶性接着剤が挙げられる。水溶性接着剤に含まれうる合成高分子体の例としては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアミド、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース(CMC)、及びポリエチレンオキシドが挙げられる。水溶性接着剤に含まれうる天然高分子体の例としては、特に限定されないが、澱粉、及びタンパク質が挙げられる。これらの高分子体は、水溶性及び接着性に優れるので好ましい。
水溶性接着剤は、一種単独でこれらの高分子体を含んでいてもよく、二種以上の任意の比率の組み合わせで、これらの高分子体を含んでいてもよい。
【0046】
水溶性接着剤は、これらの高分子体に加えて、任意で添加物を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。水溶性接着剤中の、高分子体の重量割合は、水溶性接着剤中の溶媒を除く固形分を100重量%として、例えば50重量%以上、例えば65重量%以上、例えば80重量%以上であり、通常100重量%以下であり、100重量%であってもよい。
【0047】
水溶性接着剤は、水などの溶媒を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。水溶性接着剤層は、水などの溶媒の一部又は全部が、除去されていてもよい。
【0048】
水溶性接着剤中の高分子体の重量割合は、例えば0.1重量%以上、例えば0.5重量%以上、例えば1重量%以上であり、通常100重量%以下であり、100重量%であってもよい。
【0049】
接着性及び水溶性が良好であり、水溶性接着剤層を後述する工程(A2)において容易に除去する観点から、水溶性接着剤は、ポリビニルアルコールを含む、ポリビニルアルコール系接着剤であることが好ましい。
【0050】
ここで、用語「ポリビニルアルコール」には、完全ケン化されている重合体、部分ケン化されている重合体、及び変性体、並びにこれらの組み合わせが包含される。
【0051】
ポリビニルアルコール系接着剤に含まれるポリビニルアルコールのケン化度は、複層フィルムの取り扱いを容易にする観点から、好ましくは82mol%以上、より好ましくは83mol%以上、更に好ましくは、85mol%以上であり、水溶性接着剤層を水に溶解しやすくする観点から、好ましくは93mol%以下、より好ましくは92mol%以下、更に好ましくは90mol%以下である。
ポリビニルアルコールのケン化度は、JIS K6726(ポリビニルアルコール試験方法)に準拠して測定しうる。
【0052】
ポリビニルアルコールの粘度は、好ましくは、4.8mPa・s以上であり、水溶性接着剤の塗工性をより高め、水溶性接着剤層の水への溶解性を向上させる観点から、好ましくは60mPa・s以下、より好ましくは55mPa・s以下、更に好ましくは50mPa・s以下である。
本明細書においてポリビニルアルコールの粘度は、JIS K6726(ポリビニルアルコール試験方法)に準拠して測定された、4%水溶液、20℃における粘度である。具体的には、ポリビニルアルコールを水に溶かして4%水溶液を調液し、20℃における粘度を「EMS-1000」(KYOTO ELECTORONICS社製)にて球状プローブ 径2mmを用いて1000rpmにて測定した値である。実施例においても同様である。
【0053】
ポリビニルアルコールとして、市販品を用いうる。ポリビニルアルコールの市販品の例としては、三菱ケミカル社製「ゴーセノール(登録商標)シリーズ」(例えば、GL-03、GL-05、GM-14L、GM14、GH-17、GH-20、GH-23、AL-06、P-610、C-500)、クラレ社製「クラレポバール(登録商標)シリーズ」(例えば、25-88KL、32-97KL、3-86SD、105-88KX、200-88KX、SD-1000)、クラレ社製「エクセバール(登録商標)シリーズ」(例えば、AQ-41-4、HR-3010、RS-2117、RS-1717)、デンカ社製「デンカポバール(登録商標)シリーズ」(例えば、H-12、H-17、H-24、B-05、B-17、B-20、B-24、B-33)が挙げられる。
【0054】
水溶性接着剤層の厚みは、水溶性接着剤層の強度と除去のしやすさとのバランスをとる観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは5μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは20μm以下である。
【0055】
水溶性接着剤層は、任意の方法により形成しうる。
例えば、水溶性接着剤層は、水溶性接着剤を、基材層(A)の表面に塗工して塗工層を得て、必要に応じて塗工層を乾燥することにより、得られうる。塗工層を乾燥して水溶性接着剤層を得る場合、乾燥方法の例としては、特に限定されないが、加熱乾燥、減圧乾燥、加熱減圧乾燥が挙げられる。塗工層を加熱して水溶性接着剤層を得る場合、加熱時間は、特に限定されないが、例えば1分以上、例えば5分以上であり、例えば120分以下、例えば60分以下である。また、加熱温度は、基材層(A)のガラス転移温度、水溶性接着剤層の種類にもよるが、例えば30℃以上、例えば60℃以上であり、例えば100℃以下、例えば90℃以下である。
【0056】
水溶性接着剤を基材層(A)の表面に塗工する際には、水溶性接着剤を加熱して、溶融状態としてもよい。
塗工法は、特に限定されず、薄膜を形成する方法として挙げた前記塗工法の例と同様の例が挙げられる。
また、基材層(A)とは別個に、溶融押出、溶液キャストなどの成形方法により水溶性接着剤のフィルムを得て、この水溶性接着剤のフィルムを水溶性接着剤層として、基材層(A)の表面に貼合してもよい。
【0057】
[2.3.工程(B3)]
工程(B3)では、前記第一中間積層体と前記第二中間積層体とを、前記薄膜と前記水溶性接着剤層とが対向するように貼合して第三中間積層体を得る。第三中間積層体は、効率的に複層フィルムを製造するために、好ましくは長尺である。
第三中間積層体は、基材層(B)、薄膜、水溶性接着剤層、及び基材層(A)を、厚み方向にこの順で含む。薄膜と水溶性接着剤層とは、通常、直接している。
【0058】
[2.4.工程(B4)]
工程(B4)では、前記第三中間積層体から前記基材層(B)を剥離して、複層フィルムを得る。複層フィルムは、連続的に薄膜を小片に分割する亀裂を形成できるので、好ましくは長尺である。
複層フィルムは、基材層(A)、基材層(A)に接して設けられている水溶性接着剤層、及び水溶性接着剤層に接して設けられている薄膜を、厚み方向にこの順に含む。
複層フィルムの厚みは、特に限定されないが、例えば、30μm以上500μm以下であってよい。
【0059】
[2.5.工程(A1)]
工程(A1)では、基材層(A)と前記基材層(A)に接して設けられている水溶性接着剤層と前記水溶性接着剤層に接して設けられている薄膜とを含む、複層フィルムを、支持部材により支持した状態で、前記複層フィルムの前記薄膜の側に、凹凸形状を有する部材を押圧して、前記薄膜を小片に分割する亀裂を形成する。
【0060】
工程(A1)において、水溶性接着剤層を含む前記層構成の複層フィルムを用いると、複層フィルムに亀裂を形成する際に、凹凸形状を有する部材に付着する薄膜の小片を少なくすることができる。
【0061】
工程(A1)における亀裂の形成は、好ましくは、薄膜をその厚み方向から見て同一形状の小片に分割する亀裂を形成することにより行う。また、好ましくは、亀裂は、複層フィルムの全面において基材層の薄膜側の表面より深い位置に達するように、形成される。
【0062】
薄膜の厚み方向から見た小片の形状は、特に限定されず、三角形、四角形、六角形などの多角形、十字型、円などが挙げられ、好ましくは三角形、四角形、又は六角形である。
【0063】
薄膜の厚み方向から見た小片の長径は、剥離片をインクに用いた場合に、印刷版にインクが目詰まりすることを抑制する観点から、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは175μm以下、更に好ましくは150μm以下であり、剥離片をインクに用いた場合に、インクにより形成された印刷層の視認性向上の観点から、通常0μmより大きく、好ましくは10μm以上である。ここで、長径は、小片の輪郭に接するように平行線を複数引いたときに、平行線間の距離のうちで最も長い距離をいう。
【0064】
(亀裂の形成方法)
亀裂は、複層フィルムの薄膜の側に、凹凸形状を有する部材を押圧することにより、形成されうる。更に具体的には、複層フィルムを、支持部材により支持した状態で、複層フィルムを支持部材と凹凸形状を有する部材とに挟んで、凹凸形状を有する部材を押圧することにより、亀裂を形成しうる。
【0065】
凹凸形状を有する部材として、複層フィルムの厚み方向から見た亀裂の形状に対応する凸部を表面に有する部材を用いうる。例えば、複層フィルムの厚み方向から見た亀裂の形状が、格子状である場合は、格子状の凸部を表面に有する部材を用いうる。また、複層フィルムの厚み方向からみた亀裂の形状が、ハニカム状である場合は、ハニカム状の凸部を表面に有する部材を用いうる。
【0066】
また、凹凸形状を有する部材として、複数の部材を用いてもよい。例えば、亀裂の一部分に対応する凸部を表面に有する部材及び亀裂の別の一部分に対応する凸部を表面に有する部材を用いてもよい。例えば、亀裂が格子状であって、薄膜をその厚み方向から見て正方形に分割するものである場合は、亀裂を構成する、一の方向の刻み目に対応する凸部を表面に有する、凹凸形状を有する第一の部材と、亀裂を構成する、別の方向の刻み目に対応する凸部を表面に有する、凹凸形状を有する第二の部材とを、複層フィルムに押圧することにより、亀裂を形成してもよい。
【0067】
また、凹凸形状を有する同一の部材を、複層フィルムに対して異なる配置で複数回押圧して、亀裂を形成してもよい。
【0068】
凹凸形状を有する部材を円筒形として、複層フィルムに連続的に亀裂を形成してもよい。
【0069】
凹凸形状を有する部材として、複層フィルムを押圧しても破損が生じない強度を有し、凹凸構造を形成可能な材料を採用しうる。かかる材料の例としては、炭素鋼及びステンレス鋼が挙げられる。また、凹凸形状を有する部材は、耐食性や強度、熱伝導率を高める目的等で、表面に1層又は2層以上の多層の皮膜を有していても良い。このような皮膜としては、特に限定されないが、例えば、ニッケル、ニッケルリン、シリコン、銅等のメッキ皮膜や、セラミック溶射により形成された皮膜等が挙げられる。凹凸形状を有する部材には、例えばヒーター、熱媒、誘電加熱、誘導加熱等を用いた加熱手段や、静電気対策用の除電装置、アース等が取り付けられていてもよい。
【0070】
凹凸形状を有する部材は、従来公知の任意の方法により、製造しうる。例えば、円筒形の金属ロールなどの部材を、ダイヤモンドバイトなどの切削工具を用いて切削したり、レーザ加工装置を用いて加工するなどして、所望の凹凸形状を有する部材を形成しうる。
【0071】
凹凸形状を有する部材を、複層フィルムの薄膜の側に押圧する際の圧力は、好ましくは0.5MPa以上、より好ましくは1MPa以上、更に好ましくは5MPa以上であり、好ましくは100MPa以下、より好ましくは75MPa以下である。圧力を下限値以上とすることにより、複層フィルムに充分な深さの亀裂を形成することができ、圧力を上限値以下とすることにより複層フィルムの破損を抑制することができる。複層フィルムに亀裂を形成するために、一種以上の凹凸形状を有する部材を複数回複層フィルムに押圧する場合、複数回の押圧は、同一であっても異なっていてもよい。好ましくは、複数回の押圧は、同一の圧力で行う。
【0072】
支持部材は、通常複層フィルムが含む薄膜の側とは反対側の面を支持する支持面を有する。複層フィルムの面を支持する支持面の硬度は、好ましくはD40以上、より好ましくはD60以上、更に好ましくはD70以上であり、好ましくはD99以下、より好ましくはD97以下、更に好ましくはD95以下である。ここで、硬度は、JIS K-6253に従い、デュロメータ(タイプD)により測定した値である。支持部材の支持面の硬度を、前記範囲とすることにより、複層フィルムに、適切な深さの亀裂を容易に形成できる。支持部材としては、凹凸形状を有する部材により複層フィルムを押圧しても破損が生じない強度を有する材料を採用しうる。支持部材の表面の材料としては、例えば、金属、ゴム(例えば、シリコーンゴム)、樹脂(例えば、アクリル樹脂)が挙げられる。
【0073】
支持部材の形状は、例えば、複層フィルムの搬送方法、凹凸形状を有する部材を複層フィルムに押圧する方法に応じて、任意の形状(例えば、ロール形状、平板形状)としうる。長尺の複層フィルムを用いて、連続的に複層フィルムに亀裂を形成できるので、支持部材は、好ましくはロール形状である。
【0074】
[2.6.工程(A2)]
工程(A2)では、前記亀裂が形成された複層フィルムから、前記水溶性接着剤層を除去し前記小片を剥離して、薄膜の剥離片を得る。亀裂が形成された複層フィルムから、水溶性接着剤層を除去することにより、薄膜の小片が基材層(A)から剥離して、剥離片を得ることができる。
【0075】
工程(A2)において、水溶性接着剤層を含む複層フィルムを用いることにより、亀裂が形成された複層フィルムから、効率よく薄膜の小片を剥離させることができる。
【0076】
水溶性接着剤層を除去する方法は、特に限定されないが、複層フィルムを水と接触させる方法が好ましい。複層フィルムを水と接触させる方法の例としては、水を複層フィルムに吹き付ける方法、複層フィルムを水に浸漬する方法が挙げられ、複層フィルムを水に浸漬する方法が好ましい。
【0077】
水を複層フィルムに吹き付けて水溶性接着剤層を除去する場合、吹き付け装置として、公知の流体吐出装置を用いうる。流体吐出装置から吐出される水の圧力は、基材層(A)と薄膜との剥離強度などに応じて、適宜調整しうる。吐出圧力は、特に限定されないが、好ましくは5MPa以上、より好ましくは10MPa以上であり、好ましくは50MPa以下、より好ましくは35MPa以下である。
【0078】
複層フィルムを水に浸漬して複層フィルムから水溶性接着剤層を除去する場合、複層フィルムに水中で水流を当ててもよいし、水流を当てずに複層フィルムを静水に浸漬してもよい。一定形状を有する小片の割合がより多い剥離片を得る観点から、複層フィルムを静水に浸漬して水溶性接着剤層を除去することが好ましい。
【0079】
複層フィルムを水に接触させて水溶性接着剤層を除去する場合、水の温度は、使用される水溶性接着剤の水への溶解度、水溶性接着剤層の厚みなどに応じて、適宜調整しうる。
複層フィルムに接触させる水の温度は、特に限定されないが、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、例えば100℃以下である。
【0080】
亀裂が形成された複層フィルムが、長尺である場合には、連続的に前記の水への接触を行うことで、効率よく剥離片を製造しうる。
【0081】
[2.7.前記工程以外の任意工程]
本実施形態の製造方法は、前記の工程以外に、任意の工程を含んでいてもよい。
例えば、前記剥離片をふるいに通す工程を含んでいてもよい。具体的には、例えば、剥離片を、所定の目開きを有するフィルターを通過させてもよい。
また、剥離片を回収する工程を含んでいてもよい。具体的には、例えば、複層フィルムに水を接触させて剥離片を得た後、剥離片を水とともに回収路に導き、回収器により剥離片を回収してもよい。回収器としては、例えば、サイクロン型の分離器及び各種フィルターを用いうる。
【0082】
[3.剥離片の特性]
工程(A1)における前記亀裂の形成を、前記薄膜をその厚み方向から見て同一形状の小片に分割する亀裂を形成することにより行った場合、得られる薄膜の剥離片は、亀裂に沿った一定形状を有する剥離片の割合が多い。該割合は、例えば以下の方法により評価できる。
剥離片を10重量%の水分散液とする。該水分散液をプレパラート上に滴下し、水分を蒸発させて、剥離片をプレパラートに付着させる。プレパラート上の、剥離片が付着した部分を顕微鏡で観察する。1mm四方の領域内で、一定形状の剥離片の個数(A)と、非定形の剥離片の個数(B)とをカウントし、下記式に従い個数(B)の個数(A)に対する百分率Xを求める。X=B/A×100(%)
百分率Xが小さいほど、全剥離片中、亀裂に沿った一定形状を有する剥離片の割合が高い。
【0083】
剥離片は、百分率Xが、好ましくは5%以下であり、より好ましくは4%以下であり、更に好ましくは3%以下であり、0%であることが好ましいが、0%以上又は1%以上であってもよい。
【実施例0084】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0085】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温(20℃±15℃)及び常圧(1atm)の条件において行った。
【0086】
[評価方法]
(層の厚みの測定)
層の厚みは、ウルトラミクロトーム「Leica Ultracut-UCT」(Leica Biosystems社製)を用いて複層フィルムを厚み方向に沿って切断して断面を作成し、その断面をデジタル顕微鏡「VHX8000」(KEYENCE社製)で観察することにより測定した。
【0087】
(水溶性接着剤層と薄膜との接着力:90°ピール強度)
複層フィルムから、幅25mmの長方形のサンプルを切り出した。サンプルの薄膜側を、粘着テープを用いて、基板に固定した。サンプルの幅方向と垂直な方向(長さ方向)の端部における基材層(A)及び水溶性接着剤層を把持して、90°ピール強度を測定し、得られたピール強度を水溶性接着剤層と薄膜との接着力とした。ピール強度の測定は90°ピール試験方法(JIS Z0237)に従って行った。測定環境は、23℃/50%RHとした。
【0088】
(マルテンス硬さ)
超微小負荷硬さ試験方法(JISZ2255:2003)に従って、支持部材に支持された状態で複層フィルムの薄膜側のマルテンス硬さの測定を行った。
測定装置としては、「PICODENTOR HM500」(Fischer社製)を用いた。
支持部材としては、表に記載のとおり、金属板、アクリル樹脂板、又はシリコーンシートを用いた。金属板として、ステンレス鋼板(厚み0.3mm、光社製)を複層フィルムサンプルよりも大きい寸法で切り出して用いた。アクリル樹脂板として、旭化成社製メタクリル樹脂押出板「デラグラスA」を複層フィルムサンプルよりも大きい寸法で切り出して用いた。シリコーンシートとして、アズワン社製「シリコンゴムシートSI0502」(品番2-9318-02)を複層フィルムサンプルよりも大きい寸法で切り出して用いた。
支持部材上に、複層フィルムを薄膜側が支持部材と反対側(上側)となるように設置し、測定条件を、下記のとおりとして測定を行った。
圧子:正四角錐型のビッカース圧子(材質:ダイヤモンド、頂角:136°)
最大試験荷重:500mN
最大押し込み深さ:10μm
荷重アプリケーション時間:20秒
クリープ時間:10秒
【0089】
(剥離片の形状一致性の評価)
各例で得られた剥離片を、10重量%の水分散液とした。次いで、該水分散液をプレパラート上に滴下し、水分を蒸発させて、剥離片をプレパラートに付着させた。プレパラート上の、剥離片が付着した部分を光学顕微鏡で観察した。1mm四方の領域内で、各例における凹凸形状を有する部材の凹凸に対応する、定形の剥離片の個数(A)と、非定形の剥離片の個数(B)とをカウントし、下記式に従い個数(B)の個数(A)に対する百分率Xを求めた。X=B/A×100(%)
百分率Xが小さいほど、亀裂に沿った一定形状を有する剥離片の割合が高い。すなわち形状一致性が高い。
下記基準に従い剥離片の形状一致性を評価した。
A:X<3%、
B:3%≦X<5%
C:5%≦X<10%、
D:10%≦X、又は、A=0
【0090】
(薄膜に亀裂を形成する際の効率)
複層フィルムに亀裂を形成した後、亀裂を形成した複層フィルムの全面積(C)、複層フィルムにおいて剥離した薄膜の面積(D)を計測し、下記式に従い面積(D)の全面積(C)に対する百分率Yを求めた。Y=D/C×100(%)
百分率Yが小さいほど、凹凸形状を有する部材により薄膜に亀裂を形成する際に、凹凸形状を有する部材に付着して剥離する小片が少なく、連続的に薄膜を小片に分割できる。すなわち、より効率的に薄膜に亀裂を形成しうる。
下記基準に従い、薄膜に亀裂を形成する際の効率を評価した。
A:Y<5%
B:5%≦Y<10%
C:10%<Y
【0091】
(薄膜の剥離効率)
亀裂が形成された複層フィルムのサンプル(10cm×10cm)を、直径20cmの円筒容器に入れた1Lの水(20℃)の中に、静かに浸漬した。浸漬してから30秒後、静かにサンプルを水中から引き上げた。次いで、顕微鏡の200倍率でサンプルを確認し、1mm四方の範囲で、剥離しなかった正方形である薄膜小片の個数(E)を確認した。1mm四方中の剥離操作前における薄膜小片の総数(100個)と、剥離しなかった薄膜小片の個数(E)から、下記式に従い剥離しなかった薄膜小片の個数(E)の薄膜小片の総数100個に対する百分率Zを求めた。Z=E/100×100(%)
1つのサンプルにおいてランダムに選定した5か所において同様に百分率Zを計算し、その平均値をサンプルの値Zavとして用いた。百分率平均Zavが大きいほど剥離しなかった小片が多く、すなわち剥離効率が悪い。水に浸漬した場合に溶けにくい水溶性接着剤層であると、剥離効率は悪くなる傾向がある。
下記基準に従い、剥離効率を評価した。
A:Zav<5%
B:5%≦Zav<10%
C:10%≦Zav
【0092】
[実施例1]
(1-1.工程(B1):第一中間積層体の用意)
(1-1-1.光硬化性の液晶組成物の調製)
BASF社製光重合性液晶性化合物「Paliocolor LC242」を18.1部、カイラル剤としてBASF社製「LC756」を1.3部、光重合開始剤としてチバ・ジャパン社製「イルガキュアOXEO2」を0.6部、界面活性剤としてネオス社製「フタージェント209F」を0.02部、及びシクロペンタノンを80部を混合して、光硬化性の液晶組成物を調製した。
【0093】
(1-1-2.長尺の第一中間積層体の製造)
基材層(B)として、長尺のシクロオレフィン重合体(COP)フィルム(日本ゼオン社製「ZF16-100」;厚み100μm、以下COPフィルムともいう。)を用意した。このCOPフィルムをフィルム搬送装置の繰り出し部に取り付け、当該COPフィルムを長手方向に搬送しながら以下の操作を行った。まず、搬送方向と平行な長手方向にラビング処理を施した。次に、ラビング処理を施した面に、(1-1-1)で調製した液晶組成物をダイコーターを使用して塗工した。これにより、基材層(B)としてのCOPフィルムの片面上に、未硬化状態の液晶組成物の膜を形成した。
【0094】
得られた液晶組成物の膜に100℃で5分間配向処理を施し、その後、液晶組成物の膜に、窒素雰囲気下で800mJ/cmの紫外線を照射して、液晶組成物の膜を完全に硬化させた。これにより、基材層(B)としての長尺のCOPフィルムの片面上に、5μmの厚みの樹脂からなる薄膜を備える、第一中間積層体を得た。第一中間積層体は、(基材層(B)としてのCOPフィルム)/(樹脂からなる薄膜)の層構成を有する。樹脂からなる薄膜は、コレステリック樹脂層としての機能を有していた。
【0095】
(1-2.工程(B2):第二中間積層体の用意)
(1-2-1.水溶性接着剤の調製)
ポリビニルアルコール(PVA)(三菱ケミカル社製「ゴーセノール(登録商標)GL-05」、ケン化度87mol%、4%水溶液(20℃)の粘度4.8mPa・s)を、水に溶解して、水溶性接着剤としてのPVAの10重量%水溶液を調製した。調製の際は、PVAが水に溶解するように、攪拌及び加熱を行った。
【0096】
(1-2-2.長尺の第二中間積層体の製造)
基材層(A)として、長尺のポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(東洋紡社製「コスモシャイン(登録商標) A4100」)を用意した。このポリエステルフィルム上にワイヤーバー(安田精機製作所社製)を用いて、前記(1-2-1)で調製した水溶性接着剤を塗工して塗工層を形成した。塗工層の厚みは、複層フィルムにおいて水溶性接着剤層が、表に示す厚みとなるように調整した。これにより、基材層(A)としてのポリエステルフィルムと、ポリエステルフィルムの片面の上に直接して設けられている水溶性接着剤層(塗工層)とを含む、第二中間積層体を得た。
【0097】
(1-3.工程(B3):第三中間積層体の製造)
次いで、第二中間積層体の塗工層(水溶性接着剤層)と第一中間積層体の薄膜とが対向するように、また塗工層と薄膜との間に気泡が入らないように、第二中間積層体上に第一中間積層体を重ねて、第二中間積層体と第一中間積層体とを貼合し、得られた積層体を100℃の乾燥炉に5分間入れて、塗工層を乾燥させ、第三中間積層体を作成した。
【0098】
(1-4.工程(B4):複層フィルムの製造)
その後、第三中間積層体から、基材層(B)としてのCOPフィルムを剥離することにより、複層フィルムを得た。複層フィルムは、基材層(A)としてのポリエステルフィルム、水溶性接着剤層、及び薄膜をこの順に備えていた。
【0099】
(1-5.工程(A1))
(1-5-1.凹凸形状を有する部材(ロール)の用意)
表面に無電解ニッケルメッキ(NiPメッキ)が施された、ステンレス鋼で形成された金属ロールを用意した。メッキが施されたロールの表面をダイヤモンドバイト(頂角60°)で切削し、複数の凸部を有するロールA及びロールBを得た。
ロールAでは、複数の凸部を、ロール軸と平行なロール周面上の直線に対して、右上がりに45°の角度をなす方向に凸部が延びるように、また、凸部のピッチが100μmとなるように、更に凸部が延びる方向に垂直な断面において、凸部の頂点の角度が、60°となるように形成した。
ロールBでは、複数の凸部を、ロール軸と平行なロール周面上の直線に対して、左上がりに45°の角度をなす方向に凸部が延びるように、また、凸部のピッチが100μmとなるように、更に凸部が延びる方向に垂直な断面において、凸部の頂点の角度が、60°となるように形成した。
【0100】
(1-5-2.亀裂の形成)
前記(1-4)で製造した複層フィルムに、樹脂薄膜側から、(1-5-1)で製造したロールAを押圧し(プレス圧10MPa)、次いでロールBを押圧して(プレス圧10MPa)、複層フィルムに亀裂を形成した。その際、複層フィルムの樹脂薄膜とは反対側(基材層(A)側)を、支持部材としての、アクリル樹脂板(旭化成社製メタクリル樹脂押出板「デラグラスA」)で支持した。これにより、複層フィルムの樹脂薄膜を、樹脂薄膜の厚み方向から見て、一辺が100μmである正方形の小片に分割した。
【0101】
亀裂を形成した複層フィルムについて、前記の方法により、薄膜に亀裂を形成する際の効率を評価した。
【0102】
(1-6.工程(A2):剥離片の製造)
亀裂が形成された複層フィルム(10cm×10cm)を、直径20cmの円筒容器に入れた1Lの水(20℃)の中に、静かに浸漬した。浸漬してから30秒後、静かに複層フィルムを水中から引き上げた。
水中から引き揚げた複層フィルムについて、前記の方法により、薄膜の剥離効率を評価した。
【0103】
円筒容器から複層フィルムをを静かに引きあげた後、円筒容器に残った1Lの水と、その水中に剥離した剥離片とを目開き53μmを有するフィルターに通過させた。その後、フィルターごと乾燥させることで水中の剥離片を回収した。
【0104】
得られた剥離片について、前記の方法により、剥離片の形状一致性を評価した。
【0105】
[実施例2]
前記(1-5-2)において、支持部材として、金属板(ステンレス鋼板(厚み0.3mm、光社製))を用いて複層フィルムを支持した。
以上の事項以外は、実施例1と同様に操作して、薄膜に亀裂を形成する際の効率、薄膜の剥離効率、及び剥離片の形状一致性を評価した。
【0106】
[実施例3]
(1-2-2)において、塗工層の厚みを、複層フィルムにおいて水溶性接着剤層が表に示す厚みとなるように調整した。
(1-5-2)において、支持部材として、シリコーンシート(アズワン社製「シリコンゴムシートSI0502」(品番2-9318-02))を用いて複層フィルムを支持した。
以上の事項以外は、実施例1と同様に操作して、薄膜に亀裂を形成する際の効率、薄膜の剥離効率、及び剥離片の形状一致性を評価した。
【0107】
[実施例4]
(1-2-1)において、ポリビニルアルコールの代わりに、澱粉接着剤(日澱化學社製「HMスターチ52」)を用いて、水溶性接着剤を調製した。
以上の事項以外は、実施例1と同様に操作して、薄膜に亀裂を形成する際の効率、薄膜の剥離効率、及び剥離片の形状一致性を評価した。
【0108】
[実施例5]
(1-2-1)において、ポリビニルアルコールの代わりに、澱粉接着剤(日澱化學社製「HMスターチ52」)を用いて、水溶性接着剤を調製した。
(1-2-2)において、塗工層の厚みを、複層フィルムにおいて水溶性接着剤層が表に示す厚みとなるように調整した。
(1-5-2)において、支持部材として、シリコーンシート(アズワン社製「シリコンゴムシートSI0502」(品番2-9318-02))を用いて複層フィルムを支持した。
以上の事項以外は、実施例1と同様に操作して、薄膜に亀裂を形成する際の効率、薄膜の剥離効率、及び剥離片の形状一致性を評価した。
【0109】
[実施例6]
(1-1)の代わりに、下記(6-1)を行った。
(6-1.工程(B1):第一中間積層体の用意)
基材層(B)として、長尺のシクロオレフィン重合体(COP)フィルム(日本ゼオン社製「ZF16-100」;厚み100μm、以下COPフィルムともいう。)を用意した。
このCOPフィルムに金属アルミニウムを蒸着装置により300nmの厚みで蒸着して、基材層(B)としてのCOPフィルムの片面上に、300nmの厚みのアルミニウムからなる薄膜を備える、第一中間積層体を得た。第一中間積層体は、(基材層(B)としてのCOPフィルム)/(金属アルミニウムからなる薄膜)の層構成を有する。
【0110】
以上の事項以外は、実施例1と同様に操作して、薄膜に亀裂を形成する際の効率、薄膜の剥離効率、及び剥離片の形状一致性を評価した。
【0111】
[比較例1]
(1-2-2)において、塗工層の厚みを、複層フィルムにおいて水溶性接着剤層が表に示す厚みとなるように調整した。
(1-5-2)において、支持部材として、シリコーンシート(アズワン社製「シリコンゴムシートSI0502」(品番2-9318-02))を用いて複層フィルムを支持した。
以上の事項以外は、実施例1と同様に操作して、薄膜に亀裂を形成する際の効率、薄膜の剥離効率、及び剥離片の形状一致性を評価した。
【0112】
[比較例2]
(1-2-1)において、ポリビニルアルコールの代わりに、澱粉接着剤(日澱化學社製「HMスターチ52」)を用いて、水溶性接着剤を調製した。
(1-2-2)において、塗工層の厚みを、複層フィルムにおいて水溶性接着剤層が表に示す厚みとなるように調整した。
(1-5-2)において、支持部材として、シリコーンシート(アズワン社製「シリコンゴムシートSI0502」(品番2-9318-02))を用いて複層フィルムを支持した。
以上の事項以外は、実施例1と同様に操作して、薄膜に亀裂を形成する際の効率、薄膜の剥離効率、及び剥離片の形状一致性を評価した。
【0113】
[比較例3]
(1-1-2)において、基材層(B)であるCOPフィルムの代わりに、長尺のPETフィルム(東洋紡社製「コスモシャイン(登録商標) A4100」;厚み100μm、以下PETフィルムともいう。)を用意した。
COPフィルムのかわりに、PETフィルムを用いた以外は、(1-1-2)と同様に操作した。
これにより、長尺のPETフィルムの片面上に、5μmの厚みの樹脂からなる薄膜を備える、積層フィルムとしての積層体を得た。この積層体は、(基材層(A)としてのPETフィルム)/(樹脂からなる薄膜)の層構成を有する。樹脂からなる薄膜は、コレステリック樹脂層としての機能を有していた。
【0114】
複層フィルムを前記の操作で得た以外は、実施例1と同様に操作して、薄膜に亀裂を形成する際の効率、薄膜の剥離効率、及び剥離片の形状一致性を評価した。
【0115】
[実施例及び比較例の製造条件及び結果]
実施例及び比較例における、薄膜の剥離片の製造条件及び評価結果を、下表に示す。
表中の略号は下記の意味を表す。
「PET」:ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(東洋紡社製「コスモシャイン(登録商標) A4100」)
「GL-05」:ポリビニルアルコール(PVA)(三菱ケミカル社製「ゴーセノール(登録商標)GL-05」)
「HM52」:澱粉接着剤(日澱化學社製「HM52」)
「CLC」:コレステリック樹脂層
「アクリル樹脂板」:旭化成社製メタクリル樹脂押出板「デラグラスA」
「金属板」:ステンレス鋼板(厚み0.3mm、光社製)
「シリコーンシート」:アズワン社製「シリコンゴムシートSI0502」(品番2-9318-02)
「接着剤層」:水溶性接着剤層
「接着力」:水溶性接着剤層と薄膜との接着力(90°ピール強度)
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
複層フィルムのマルテンス硬さが20N/mm以上である、実施例に係る製造方法では、亀裂形成効率の評価がA又はBであって、良好である。一方、複層フィルムのマルテンス硬さが20N/mm未満である、比較例1、2に係る製造方法では、亀裂形成効率の評価がCであって、不良である。
複層フィルムのマルテンス硬さが20N/mm以上であっても、複層フィルムが水溶性接着剤層を備えていない、比較例3に係る製造方法では、亀裂形成効率の評価がCであって、不良である。