(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007639
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】セメントクリンカの製造装置、クリンカダストの回収装置、セメントクリンカの製造方法、及びクリンカダストの回収方法
(51)【国際特許分類】
C04B 7/44 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
C04B7/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108831
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100212026
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真生
(72)【発明者】
【氏名】田中 健司
(72)【発明者】
【氏名】西光 浩平
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健一
(72)【発明者】
【氏名】厚井 啓佑
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112KA08
(57)【要約】
【課題】クリンカダストの回収に伴う熱効率の低下を抑制する。
【解決手段】本開示の一側面に係るセメントクリンカの製造装置は、セメント原料の焼成を行うロータリキルンと、ロータリキルンでの焼成によって生成されたセメントクリンカを冷却するクリンカクーラと、ロータリキルンとクリンカクーラとの間の隙間から排出されるクリンカダストを捕集する捕集装置と、クリンカクーラ内に開口する吹込口が形成された吹込配管を有し、捕集装置によって捕集されたクリンカダストを、吹込配管を介してクリンカクーラ内に導入する導入装置とを備える。導入装置は、捕集装置によって捕集されたクリンカダストをクリンカクーラ内に吹き込むように、吹込配管の吹込口とは反対側の端部から圧縮された高圧空気を吹込配管内に間欠的に供給するエア供給装置を更に有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント原料の焼成を行うロータリキルンと、
前記ロータリキルンでの焼成によって生成されたセメントクリンカを冷却するクリンカクーラと、
前記ロータリキルンと前記クリンカクーラとの間の隙間から排出されるクリンカダストを捕集する捕集装置と、
前記クリンカクーラ内に開口する吹込口が形成された吹込配管を有し、前記捕集装置によって捕集されたクリンカダストを、前記吹込配管を介して前記クリンカクーラ内に導入する導入装置とを備え、
前記導入装置は、前記捕集装置によって捕集されたクリンカダストを前記クリンカクーラ内に吹き込むように、前記吹込配管の前記吹込口とは反対側の端部から、圧縮された高圧空気を前記吹込配管内に間欠的に供給するエア供給装置を更に有する、セメントクリンカの製造装置。
【請求項2】
前記導入装置は、前記吹込配管の中間部分と前記捕集装置とを接続する抜出配管と、前記抜出配管の開閉状態を切替可能な第1開閉装置とを更に有し、
前記第1開閉装置は、前記抜出配管内に設けられ、前記抜出配管に交差する方向に沿って延びる軸部材と、前記軸部材に設けられた弁部材とを含み、前記弁部材を前記軸部材まわりに回転させることで前記抜出配管の開閉状態を切り替える、請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記導入装置は、前記吹込配管のうちの前記捕集装置からクリンカダストが供給される接続部分と前記吹込口との間の開閉状態を切替可能な第2開閉装置を更に有し、
前記第2開閉装置は、前記吹込配管に交差するように設けられたゲート弁を含み、前記ゲート弁を前記吹込配管に交差する方向に沿って移動させることで前記接続部分と前記吹込口との間の開閉状態を切り替える、請求項1又は2に記載の製造装置。
【請求項4】
前記捕集装置は、
前記ロータリキルンと前記クリンカクーラとの間の隙間に接続された空間を形成し、当該空間に排出されたクリンカダストを貯蔵装置まで導くエアシール装置と、
前記エアシール装置と前記ロータリキルンとの間の隙間から、前記エアシール装置が形成する空間に前記ロータリキルン内の温度よりも低い温度の冷却空気を供給する冷風供給装置とを有する、請求項1又は2に記載の製造装置。
【請求項5】
前記高圧空気の供給を停止した状態が所定時間経過した場合に、前記エア供給装置から前記高圧空気を前記吹込配管に供給させて、クリンカダストが前記クリンカクーラ内に導入されるように前記導入装置を制御する制御装置を更に備える、請求項1又は2に記載の製造装置。
【請求項6】
前記吹込配管に供給される前に前記捕集装置の貯蔵装置に貯められたクリンカダストの量を検出する検出装置と、
前記検出装置による検出値が所定量に達した場合に、前記エア供給装置から前記高圧空気を前記吹込配管に供給させて、クリンカダストが前記クリンカクーラ内に導入されるように前記導入装置を制御する制御装置とを更に備える、請求項1又は2に記載の製造装置。
【請求項7】
セメント原料の焼成を行うロータリキルンと、前記ロータリキルンでの焼成によって生成されたセメントクリンカを冷却するクリンカクーラとの間の隙間から排出されるクリンカダストを捕集する捕集装置と、
前記捕集装置によって捕集されたクリンカダストを、前記クリンカクーラ内に開口する吹込口が形成された吹込配管を介して、前記クリンカクーラ内に導入する導入装置と、を備え、
前記導入装置は、前記捕集装置によって捕集されたクリンカダストを前記クリンカクーラ内に吹き込むように、前記吹込配管の前記吹込口とは反対側の端部から圧縮された高圧空気を前記吹込配管内に間欠的に供給するエア供給装置を有する、クリンカダストの回収装置。
【請求項8】
ロータリキルンにおいてセメント原料の焼成を行う工程と、
前記ロータリキルンでの焼成によって生成されたセメントクリンカをクリンカクーラにおいて冷却する工程と、
前記ロータリキルンと前記クリンカクーラとの間の隙間から排出されるクリンカダストを捕集する工程と、
捕集されたクリンカダストを、前記クリンカクーラ内に開口する吹込口が形成された吹込配管を介して前記クリンカクーラ内に導入する工程とを含み、
クリンカダストを前記クリンカクーラ内に導入する工程は、捕集されたクリンカダストを前記クリンカクーラ内に吹き込むように、前記吹込配管の前記吹込口とは反対側の端部から圧縮された高圧空気を前記吹込配管内に間欠的に供給することを含む、セメントクリンカの製造方法。
【請求項9】
セメント原料の焼成を行うロータリキルンと、前記ロータリキルンでの焼成によって生成されたセメントクリンカを冷却するクリンカクーラとの間の隙間から排出されるクリンカダストを捕集する工程と、
捕集されたクリンカダストを、前記クリンカクーラ内に開口する吹込口が形成された吹込配管を介して、前記クリンカクーラ内に導入する工程とを含み、
クリンカダストを前記クリンカクーラ内に導入する工程は、捕集されたクリンカダストを前記クリンカクーラ内に吹き込むように、前記吹込配管の前記吹込口とは反対側の端部から圧縮された高圧空気を前記吹込配管内に間欠的に供給することを含む、クリンカダストの回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セメントクリンカの製造装置、クリンカダストの回収装置、セメントクリンカの製造方法、及びクリンカダストの回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、セメント又はアルミナ等の焼成設備のクーラ排気抽気系のダスト回収装置が開示されている。特許文献2には、セメントキルンに接続された配管に供給された肉骨粉をセメントキルン側に向けて輸送するための気体を供給するブロアを備えるセメント製造装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭58-92342号公報
【特許文献2】特開2017-132678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、クリンカダストの回収に伴う熱効率の低下を抑制するのに有用なセメントクリンカの製造装置、クリンカダストの回収装置、セメントクリンカの製造方法、及びクリンカダストの回収方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本開示の一側面に係るセメントクリンカの製造装置は、セメント原料の焼成を行うロータリキルンと、ロータリキルンでの焼成によって生成されたセメントクリンカを冷却するクリンカクーラと、ロータリキルンとクリンカクーラとの間の隙間から排出されるクリンカダストを捕集する捕集装置と、クリンカクーラ内に開口する吹込口が形成された吹込配管を有し、捕集装置によって捕集されたクリンカダストを、吹込配管を介してクリンカクーラ内に導入する導入装置とを備える。導入装置は、捕集装置によって捕集されたクリンカダストをクリンカクーラ内に吹き込むように、吹込配管の吹込口とは反対側の端部から圧縮された高圧空気を吹込配管内に間欠的に供給するエア供給装置を更に有する。
【0006】
上記[1]に記載の製造装置では、ロータリキルンとクリンカクーラとの間の隙間から排出されたクリンカダストが、捕集装置と導入装置とによってクリンカクーラ内に戻される。クリンカダストがクリンカクーラに戻される際に、圧縮された高圧空気が間欠的に供給されるので、クリンカクーラ内に空気が吹き込まれる時間が短縮される。そのため、クリンカクーラからロータリキルンに向かう熱ガスの温度低下が抑制される。従って、クリンカダストの回収に伴う熱効率の低下を抑制するのに有用である。
【0007】
[2]上記[1]に記載の製造装置において、導入装置は、吹込配管の中間部分と捕集装置とを接続する抜出配管と、抜出配管の開閉状態を切替可能な第1開閉装置とを更に有してもよい。第1開閉装置は、抜出配管内に設けられ、抜出配管に交差する方向に沿って延びる軸部材と、軸部材に設けられた弁部材とを含み、弁部材を軸部材まわりに回転させることで抜出配管の開閉状態を切り替えてもよい。この場合、弁部材にクリンカダストが溜まった状態で弁部材を移動させても、弁部材をスムーズに開閉することができ、弁部材の損耗を抑制することができる。従って、開閉装置の耐久性の向上に有用である。
【0008】
[3]上記[1]又は[2]に記載の製造装置において、導入装置は、吹込配管のうちの捕集装置からクリンカダストが供給される接続部分と吹込口との間の開閉状態を切替可能な第2開閉装置を更に有してもよい。第2開閉装置は、吹込配管に交差するように設けられたゲート弁を含み、ゲート弁を吹込配管に交差する方向に沿って移動させることで接続部分と吹込口との間の開閉状態を切り替えてもよい。この場合、ゲート弁を動かすための機構を配管内に設けなくてもよいので、高圧空気と共に流れるクリンカダストとの衝突による開閉装置の損傷を防ぐことができる。従って、開閉装置の耐久性の向上に有用である。
【0009】
[4]上記[1]~[3]のいずれかに記載の製造装置において、捕集装置は、ロータリキルンとクリンカクーラとの間の隙間に接続された空間を形成し、当該空間に排出されたクリンカダストを貯蔵装置まで導くエアシール装置と、エアシール装置とロータリキルンとの間の隙間から、エアシール装置が形成する空間にロータリキルン内の温度よりも低い温度の冷却空気を供給する冷風供給装置とを有してもよい。この場合、ロータリキルンとクリンカクーラの隙間から漏れたクリンカダストを上記空間に留めておくことが容易であり、冷却空気によりクリンカダストを冷却することができる。従って、クリンカダストによる製造装置への影響を抑制するのに有用である。
【0010】
[5]上記[1]~[4]のいずれかに記載の製造装置は、高圧空気の供給を停止した状態が所定時間経過した場合に、エア供給装置から高圧空気を吹込配管に供給させて、クリンカダストがクリンカクーラ内に導入されるように導入装置を制御する制御装置を更に備えてもよい。この場合、所定時間が経過すれば、クリンカダストがクリンカクーラ内に導入されるので、作業員がクリンカダストの排出状態を頻繁に確認しなくてもよい。従って、作業員による製造装置の運転状況の確認作業の簡素化に有用である。
【0011】
[6]上記[1]~[4]のいずれかに記載の製造装置は、吹込配管に供給される前に捕集装置の貯蔵装置に貯められたクリンカダストの量を検出する検出装置と、検出装置による検出値が所定量に達した場合に、エア供給装置から高圧空気を吹込配管に供給させて、クリンカダストがクリンカクーラ内に導入されるように導入装置を制御する制御装置とを更に備えてもよい。この場合、クリンカダストの量が所定量に到達すれば、クリンカダストがクリンカクーラ内に導入されるので、作業員がクリンカダストの排出状態を頻繁に確認しなくてもよい。従って、作業員による製造装置の運転状況の確認作業の簡素化に有用である。
【0012】
[7]本開示の一側面に係るクリンカダストの回収装置は、セメント原料の焼成を行うロータリキルンと、ロータリキルンでの焼成によって生成されたセメントクリンカを冷却するクリンカクーラとの間の隙間から排出されるクリンカダストを捕集する捕集装置と、捕集装置によって捕集されたクリンカダストを、クリンカクーラ内に開口する吹込口が形成された吹込配管を介して、クリンカクーラ内に導入する導入装置と、を備える。導入装置は、捕集装置によって捕集されたクリンカダストをクリンカクーラ内に吹き込むように、吹込配管の吹込口とは反対側の端部から圧縮された高圧空気を吹込配管内に間欠的に供給するエア供給装置を有する。この回収装置では、上述の製造装置と同様に、クリンカクーラからロータリキルンに向かう熱ガスの温度低下が抑制される。従って、クリンカダストの回収に伴う熱効率の低下を抑制するのに有用である。
【0013】
[8]本開示の一側面に係るセメントクリンカの製造方法は、ロータリキルンにおいてセメント原料の焼成を行う工程と、ロータリキルンでの焼成によって生成されたセメントクリンカをクリンカクーラにおいて冷却する工程と、ロータリキルンとクリンカクーラとの間の隙間から排出されるクリンカダストを捕集する工程と、捕集されたクリンカダストを、クリンカクーラ内に開口する吹込口が形成された吹込配管を介してクリンカクーラ内に導入する工程とを含む。クリンカダストをクリンカクーラ内に導入する工程は、捕集されたクリンカダストをクリンカクーラ内に吹き込むように、吹込配管の吹込口とは反対側の端部から圧縮された高圧空気を吹込配管内に間欠的に供給することを含む。この製造方法では、上述の製造装置と同様に、クリンカクーラからロータリキルンに向かう熱ガスの温度低下が抑制される。従って、クリンカダストの回収に伴う熱効率の低下を抑制するのに有用である。
【0014】
[9]本開示の一側面に係るクリンカダストの回収方法は、セメント原料の焼成を行うロータリキルンと、ロータリキルンでの焼成によって生成されたセメントクリンカを冷却するクリンカクーラとの間の隙間から排出されるクリンカダストを捕集する工程と、捕集されたクリンカダストを、クリンカクーラ内に開口する吹込口が形成された吹込配管を介して、クリンカクーラ内に導入する工程とを含む。クリンカダストをクリンカクーラ内に導入する工程は、捕集されたクリンカダストをクリンカクーラ内に吹き込むように、吹込配管の吹込口とは反対側の端部から圧縮された高圧空気を吹込配管内に間欠的に供給することを含む。この回収方法では、上述の製造装置と同様に、クリンカクーラからロータリキルンに向かう熱ガスの温度低下が抑制される。従って、クリンカダストの回収に伴う熱効率の低下を抑制するのに有用である。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、クリンカダストの回収に伴う熱効率の低下を抑制するのに有用なセメントクリンカの製造装置、クリンカダストの回収装置、セメントクリンカの製造方法、及びクリンカダストの回収方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、セメントクリンカの製造装置の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、ロータリキルンとクリンカクーラとの接続部分における断面の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、吹込配管内の開閉装置の一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、抜出配管内の開閉装置の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、制御装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、制御装置が実行する一連の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、制御装置が実行する一連の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
最初に、一実施形態に係るセメントクリンカの製造装置について説明する。
図1に示される製造装置1は、セメント原料を焼成することでセメントクリンカを製造する装置である。製造装置1は、予熱仮焼装置2と、ロータリキルン4と、クリンカクーラ6と、回収装置10と、制御装置80と、を備える。
【0019】
予熱仮焼装置2は、原料工程を行う装置から供給されたセメント原料(セメントクリンカの原料)を予熱及び仮焼する装置である。予熱仮焼装置2は、例えば、ニュー・サスペンション・プレヒータ(NSP)である。この場合、予熱仮焼装置2は、多段サイクロンを構成する複数のサイクロンと、仮焼炉とを有する。予熱仮焼装置2は、最上段のサイクロンに向かうダクトに設けられた供給口から供給されたセメント原料を順次下方のサイクロンへ落下させ、セメント原料が徐々に高温になるように加熱する。また、予熱仮焼装置2は、仮焼炉においてバーナ等の燃焼装置によってセメント原料を加熱(仮焼)する。予熱仮焼装置2は、予熱及び仮焼されたセメント原料をロータリキルン4に供給する。
【0020】
ロータリキルン4は、セメント原料の焼成を行う装置である。詳細には、ロータリキルン4は、予熱仮焼装置2から供給されたセメント原料を加熱することで、セメント原料の焼成を行う。ロータリキルン4でのセメント原料の焼成によって、セメントクリンカが生成される。以下では、セメントクリンカを「クリンカ92」と称する。ロータリキルン4は、その長軸方向に沿った軸線まわりに回転するように構成された回転窯である。ロータリキルン4は、水平な一方向(例えば、
図1に示す方向D1)に沿って延びている。ロータリキルン4は、例えば、セメント原料が下流側に送られるように水平方向に対して若干傾斜したドラム本体(シェル)と、ドラム本体の内部に投入されたセメント原料を焼成するバーナ(不図示)とを有する。ロータリキルン4の下流側の端部4aの少なくとも一部は、方向D1においてクリンカクーラ6と重なっており、クリンカクーラ6の内部に位置している。
【0021】
クリンカクーラ6は、ロータリキルン4での焼成によって生成されたクリンカ92を冷却する装置である。クリンカクーラ6は、ロータリキルン4の端部4aから排出された高温のクリンカ92を冷却用の空気を用いて冷却してもよい。クリンカクーラ6は、例えば、その内部にグレート装置8を有する。グレート装置8は、冷却用の空気を通過させるスリットが設けられた複数のグレート板によって、冷却対象のクリンカ92を輸送する。グレート装置8の下部には、複数の空気室が設けられており、複数の空気室それぞれは、グレート装置8の上方の空間に冷却用の空気を送出する。クリンカクーラ6は、冷却したクリンカ92を下流側の端部から搬送装置等に排出する。
【0022】
図1又は
図2に示されるように、クリンカクーラ6のロータリキルン4に近い側壁6aには、ロータリキルン4の端部4aが挿入される挿入穴6bが設けられている。側壁6aは、ロータリキルン4が延びる方向に交差する方向(例えば、方向D1に直交する方向)に沿って延びている。挿入穴6bは、グレート装置8よりも上方に位置しており、これにより、ロータリキルン4の端部4aから排出されるクリンカ92が、グレート装置8のグレート板上に供給され、グレート装置8上にはクリンカ92の塊が形成される。挿入穴6bの径(例えば、直径)は、ロータリキルン4の端部4aの外径よりも大きい。
【0023】
以上の構成では、ロータリキルン4とクリンカクーラ6との間には、隙間gが形成される。
図2に示されるように、隙間gは、側壁6aに形成された挿入穴6bの内周面とロータリキルン4のシェル4b(シェル4bの端部)の外表面との間の空間である。隙間gは、ロータリキルン4が回転する上記軸線(以下、「ロータリキルン4の軸線」という。)まわりの円周に沿って延びており、円環状に形成される。この隙間gが形成されることで、ロータリキルン4は、その延在方向に沿った軸線まわりに回転可能となる。なお、シェル4bの端部の外径は、シェル4bの他の領域の外径に比べて大きくてもよい。
【0024】
一例では、ロータリキルン4で生成された直後のクリンカ92(クリンカ鉱物)は、1300℃~1600℃程度の温度を有しており、クリンカクーラ6は、それらのクリンカ92を空気で急速に冷却している。クリンカクーラ6において、冷却のために使用された空気は、クリンカ92から多量の熱を吸収している。クリンカ92から熱を吸収した熱ガスを効率的に利用するため、その熱ガスは、ロータリキルン4及び予熱仮焼装置2の仮焼炉等のセメント設備内での燃焼、又は、セメント原料の乾燥に利用される。このように、クリンカクーラ6において冷却に使用された空気の一部は、
図1に示されるように、端部4aからロータリキルン4の内部に熱ガスとして導入される。
【0025】
クリンカクーラ6において冷却に使用された後の熱ガスには、クリンカ92の微粒子であるダスト(以下、「クリンカダスト94」という。)が含まれている。このクリンカダスト94は、設備損傷又は堆積による通風障害の要因となり得る。
図1では、クリンカクーラ6内の熱ガス中に含まれるクリンカダスト94が例示されている。ロータリキルン4とクリンカクーラ6とは互いに接触しておらず、上述のように、ロータリキルン4とクリンカクーラ6との間には隙間gが形成されている。クリンカダスト94を含んだ状態の熱ガスがロータリキルン4に導入される際に、その熱ガスの一部が隙間gから装置外に排出され得るので、回収装置10が設けられる。
【0026】
(回収装置)
回収装置10は、ロータリキルン4とクリンカクーラ6との間の隙間gから排出されたクリンカダスト94を回収する装置である。回収装置10は、ロータリキルン4及びクリンカクーラ6の外に隙間gから排出されたクリンカダスト94を捕集し、捕集したクリンカダスト94をクリンカクーラ6内に導入する。回収装置10は、隙間gから排出されたクリンカダスト94を捕集した後に一時的に貯めて、貯めたクリンカダスト94を圧縮された高圧の空気(以下、「高圧空気」という。)を用いてクリンカクーラ6内に導入する。高圧空気は、加圧することによって体積を縮小させた状態の空気(圧縮空気)である。回収装置10は、捕集装置20と、導入装置30とを有する。
【0027】
<捕集装置>
捕集装置20は、ロータリキルン4とクリンカクーラ6との間の隙間gから排出されるクリンカダスト94を捕集する装置である。捕集装置20は、隙間gに接続された空間を形成したうえで、当該空間に排出されたクリンカダスト94を捕集する。捕集装置20は、捕集したクリンカダスト94を一時的に貯める機能を有する。捕集装置20は、例えば、エアシール装置22と、貯蔵装置24と、冷風供給装置28とを有する。
【0028】
エアシール装置22は、隙間gに接続された空間Sを形成し、当該空間Sに排出されたクリンカダスト94を貯蔵装置24まで導く装置である。エアシール装置22は、円環状の隙間gに接続された円環状の空間Sを形成する。
図2には、ロータリキルン4の軸線を含む平面に沿った縦断面が示されており、この断面において、空間Sの面積は、隙間gの面積よりも大きい。エアシール装置22は、ロータリキルン4からクリンカクーラ6(側壁6a)を見たときに、隙間gを覆うように設けられている。エアシール装置22は、例えば、周壁22aと、側壁22bと、隔壁22cとを有する。
【0029】
周壁22aは、その一端が挿入穴6bよりも外側の位置で側壁6aに接続されており、方向D1に沿って延びている。周壁22aは、ロータリキルン4の軸線まわりに円環状に形成されており、シェル4bの一部(シェル4bの端部のうちの挿入穴6bよりも外側に位置する部分)を覆っている。
【0030】
側壁22bは、周壁22aの上記他端に接続されており、当該他端からロータリキルン4の軸線に向かって延びている。側壁22bは、ロータリキルン4の軸線まわりに円環状に形成されており、側壁6aのうちの挿入穴6bまわりの一部を覆っている。側壁22bの内側の端(周壁22aとの接続部分とは反対側の端)は、シェル4bの外表面に接触していない。側壁22bの内側の端とシェル4bの外表面との間には隙間g1が形成されている。エアシール装置22が形成する空間Sは、周壁22a及び側壁22bと、側壁6aの挿入穴6bまわりの一部と、シェル4bの端部とによって区画されている。
【0031】
隔壁22cは、方向D1に沿った熱ガス及びクリンカダスト94の流れを阻止し、方向D1に交差する向きの流れを形成する。隔壁22cは、その一端がシェル4b上に接続されており、シェル4b上からロータリキルン4の軸線から外側に向かって延びている。隔壁22cは、ロータリキルン4の軸線まわりに円環状に形成されている。隔壁22cは、方向D1において、側壁6aと側壁22bとの間に位置している。エアシール装置22は、複数の隔壁22cを有してもよく、複数の隔壁22cは、方向D1に沿って並んでいてもよい。
【0032】
貯蔵装置24は、エアシール装置22によって形成される空間Sに排出されたクリンカダスト94を貯める装置である。貯蔵装置24が形成するクリンカダスト94を貯めるための空間は、空間Sに接続されている。貯蔵装置24は、円環状に形成された空間S(エアシール装置22)の下部に接続されている。例えば、エアシール装置22の周壁22aのうちの貯蔵装置24が設けられる位置では、周壁22aを貫通する接続穴が形成されている。エアシール装置22内の空間Sに流入したクリンカダスト94は、シェル4b上又はエアシール装置22の周壁22a(内壁)を伝わって、貯蔵装置24内の空間に落下する。
【0033】
冷風供給装置28は、エアシール装置22が形成する空間Sに、ロータリキルン4内の温度よりも低い温度の空気(以下、「冷却空気」という。)を供給する装置である。冷風供給装置28は、例えば、常温の空気を、冷却空気として隙間g1から空間Sに供給する。隙間g1から空間S内に冷却空気が供給されることで、隙間g1から空間Sの外へのクリンカダスト94の漏れが抑制される。円環状の隙間g1からのクリンカダスト94の漏れを防ぐように、ロータリキルン4のシェル4bのまわりに、複数の冷風供給装置28が配置されていてもよい。冷風供給装置28は、製造装置1が稼働中において、隙間g1からの冷却空気の供給を継続してもよく、ロータリキルン4とクリンカクーラ6との間の接続部分の周辺の状態(例えば、圧力)に応じて、隙間g1からの冷却空気の供給状態を切り替えてもよい。
【0034】
ロータリキルン4とクリンカクーラ6との接続部分では、正常状態において、ロータリキルン4側にガスが引き込まれるように負圧となっている。負圧となっている場合には、エアシール装置22が形成する空間Sに、クリンカダスト94を含む熱ガスが漏れ難いが、製造装置1の稼働中での上記接続部分での圧力変動によって正圧となると、クリンカダスト94を含む熱ガスが空間Sに排出される。圧力変動はすぐに解消するため、空間Sに排出された熱ガスは、ロータリキルン4の内部に引き込まれる。一方、空間Sに排出されたクリンカダスト94は、そのまま空間Sに残り、貯蔵装置24内に導かれる。
【0035】
<導入装置>
図1に戻り、導入装置30は、捕集装置20によって捕集されたクリンカダスト94をクリンカクーラ6内に導入する装置である。導入装置30は、クリンカクーラ6内に開口する吹込口(流入口)が形成された配管を有し、その配管を介してクリンカクーラ6内にクリンカダスト94を導入する。導入装置30は、吹込配管32と、エア供給装置34と、抜出配管36と、開閉装置42(第2開閉装置)と、開閉装置52(第1開閉装置)とを有する。
【0036】
吹込配管32は、捕集されたクリンカダスト94を高圧空気によってクリンカクーラ6内に吹き込むための配管である。吹込配管32は、その内部にクリンカダスト94及び高圧空気を通すライン(供給路)を形成するパイプである。吹込配管32は、断面が円環状に形成された金属製のパイプであってもよい。吹込配管32の一方の端部には、クリンカクーラ6内に開口する吹込口32aが形成されている。すなわち、吹込配管32内の空間は、吹込口32aを介してクリンカクーラ6内の空間に接続されている。吹込口32aは、側壁6aよりも内側に配置されていてもよく、側壁6aに設けられていてもよい。
【0037】
吹込配管32の吹込口32aは、ロータリキルン4の端部4aからクリンカクーラ6内に排出されているクリンカ92(ロータリキルン4の端部4aから落下するクリンカ92)に干渉しないように設けられていてもよい。吹込配管32のうちの吹込口32aを含む一部は、方向D1に沿って延びるように形成されていてもよい。吹込配管32の吹込口32aとは反対側の端部には、高圧空気を吹込配管32内に供給するための供給口32bが形成されている。この場合、吹込配管32は、供給口32bから吹込口32aまで延びるライン(供給路)を形成する。供給口32bには、エア供給装置34が設けられている。
【0038】
エア供給装置34は、吹込配管32の吹込口32aとは反対側の端部から圧縮された高圧空気を間欠的に供給する装置である。本開示において、高圧空気を間欠的に供給するとは、高圧空気を供給している状態と、高圧空気の供給を停止した状態とを交互に繰り返すことを意味する。エア供給装置34は、供給口32bから吹込配管32内に高圧空気を供給することで、吹込口32aからクリンカクーラ6内に高圧空気を吹き込む。この際、吹込配管32内にクリンカダスト94が存在すると、エア供給装置34によって供給された高圧空気によって、吹込口32aからクリンカクーラ6内にクリンカダスト94が吹き込まれる(導入される)。エア供給装置34は、いずれの方式で高圧空気を生成及び噴射する装置であってもよく、その具体例としては、ブラスターが挙げられる。
【0039】
抜出配管36は、捕集装置20によって捕集されたクリンカダスト94を、吹込配管32に供給するための配管である。抜出配管36は、抜出配管36の中間部分と捕集装置20とを接続し、その内部にクリンカダスト94を通すライン(抜出路)を形成するパイプである。抜出配管36は、断面が円環状に形成された金属製のパイプであってもよい。
【0040】
抜出配管36は、鉛直方向(図示の方向D2)に沿って延びるように配置されていてもよい。一例では、抜出配管36の上端は、捕集装置20の貯蔵装置24の下端に接続され、抜出配管36の下端は、吹込配管32のうちの方向D1に沿って延びる部分のいずれかの箇所に接続される。以下では、抜出配管36の下端と吹込配管32との接続箇所を「接続部分32c」と称する。抜出配管36を介して、貯蔵装置24に貯められていたクリンカダスト94が、接続部分32cから吹込配管32内に供給される。
【0041】
開閉装置42は、吹込配管32のうちの捕集装置20からクリンカダスト94が供給される接続部分32cと吹込口32aとの間の開閉状態を切替可能な装置である。開閉装置42は、エア供給装置34が設けられる供給口32bとクリンカクーラ6内に開口する吹込口32aが接続される状態と、供給口32bと吹込口32aとの間が遮断される状態とに切り替え可能である。開閉装置42によって、供給口32bと吹込口32aとの間が接続された状態で、エア供給装置34が高圧空気を吹込配管32内に供給することで、吹込配管32内のクリンカダスト94が高圧空気によってクリンカクーラ6内に導入される。
【0042】
開閉装置42は、吹込配管32内の開閉状態を切替可能であれば、どのように構成されてもよいが、一例では、スライドゲート等の差込式の開閉装置である。開閉装置42は、吹込配管32に交差するように設けられたゲート弁を含み、そのゲート弁を吹込配管32に交差する方向に沿って移動させることで、吹込配管32内の開閉状態を切り替える開閉装置であってもよい。
【0043】
図3に示されるように、開閉装置42は、例えば、ゲート弁44と、駆動部46とを含む。ゲート弁44は、吹込配管32内の空気等の流れを遮断できるように構成された弁であり、方向D1に交差(例えば、直交)する方向に沿って延びている。ゲート弁44は、吹込配管32内の開度が略0%となる閉位置と、吹込配管32内の開度が略100%となる開位置との間で移動可能となるように設けられてもよい。駆動部46は、モータ等の動力源を含み、制御装置80の動作指示に基づきゲート弁44を上記閉位置と上記開位置との間で移動させる。
【0044】
図1に戻り、開閉装置52は、抜出配管36の開閉状態を切替可能な装置である。開閉装置52は、捕集装置20の貯蔵装置24と吹込配管32の接続部分32cとが接続される状態と、貯蔵装置24と接続部分32cとの間が遮断される状態とに切り替え可能である。開閉装置52の切替え動作によって、貯蔵装置24と接続部分32cとが接続されることで、貯蔵装置24及び吹込配管32のうちの開閉装置52の上流側に貯められたクリンカダスト94が、吹込配管32内に供給される。
【0045】
開閉装置52は、抜出配管36内の開閉状態を切替可能であれば、どのように構成されてもよいが、一例では、ボール弁又はバタフライ弁等を含む回転式の開閉装置である。開閉装置52は、バタフライダンパであってもよい。開閉装置52は、例えば、
図4に示されるように、軸部材54と、弁部材56と、駆動部58とを含む。軸部材54は、抜出配管36内に設けられており、吹込配管32に交差する方向に沿って延びている。
図4に示される例では、軸部材54は、方向D1と方向D2との双方に直交する方向に沿って延びている。軸部材54は、その延在方向に沿った軸線まわりに回転可能となるように、抜出配管36に設けられている。
【0046】
弁部材56は、軸部材54に設けられており、抜出配管36内のクリンカダスト94の流れ(落下)を遮断できるように構成された弁である。弁部材56のうちの軸部材54との接続部分と反対側の面の面積は、抜出配管36内の開度を略0%にできるように、抜出配管36内の開口面積に略一致する。弁部材56は、抜出配管36内の開度が略0%となる状態では、方向D2に直交するように配置される。弁部材56は、軸部材54まわりに回転可能である。
【0047】
弁部材56は、例えば、抜出配管36内の開度が略0%となる閉位置と、方向D2に沿うように配置される開位置との間で回転可能である。駆動部58は、モータ等の動力源を含み、制御装置80の動作指示に基づき、弁部材56が閉位置と開位置との間で移動するように軸部材54を回転させる。以上のように、開閉装置52は、弁部材56を軸部材54まわりに回転させることで抜出配管36内の開閉状態を切り替える。
【0048】
(制御装置)
図1に示される制御装置80は、回収装置10を制御するコンピュータである。制御装置80は、少なくとも、吹込配管32の吹込口32aとは反対側の供給口32bから高圧空気をエア供給装置34により間欠的に供給させて、吹込口32aからクリンカクーラ6内にクリンカダスト94を導入させるように回収装置10を制御することを実行するように構成されている。
【0049】
制御装置80は、
図5に示されるように、回路81を有する。回路81は、少なくとも一つのプロセッサ82と、メモリ84と、ストレージ86と、入出力ポート88と、タイマ89とを含む。ストレージ86は、回収装置10を制御するためのプログラムを記録する。ストレージ86は、ハードディスク、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク等の、コンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0050】
メモリ84は、ストレージ86からロードされたプログラム、プロセッサ82の演算結果等を一時的に記憶する。プロセッサ82は、メモリ84と協働してプログラムを実行することで、回収装置10に対する制御を実行する。入出力ポート88は、プロセッサ82からの指令に応じ、エア供給装置34、開閉装置42、及び開閉装置52等の間で電気信号の入出力を行う。タイマ89は、プロセッサ82からの指令により所定周期のクロックパルスをカウントして経過時間を計測する。
【0051】
[セメントクリンカの製造方法]
上述の製造装置1を用いて、クリンカ92を製造することができる。クリンカ92の製造方法は、例えば、予熱仮焼工程と、焼成工程と、冷却工程と、回収工程とを含む。予熱仮焼工程では、予熱仮焼装置2によってセメント原料の予熱及び仮焼が行われる。焼成工程では、予熱及び仮焼されたセメント原料が、予熱仮焼装置2からロータリキルン4の窯尻に供給され、ロータリキルン4での焼成によってクリンカ92が生成される。冷却工程では、焼成工程で生成されたクリンカ92が、クリンカクーラ6によって冷却される。
【0052】
これらの予熱仮焼工程、焼成工程、及び冷却工程は、前工程からのセメント原料の供給が続けられたうえで、継続して実行される。上記回収工程は、焼成工程及び冷却工程と並行して実行される。回収工程(クリンカダストの回収方法)は、ロータリキルン4とクリンカクーラ6との間の隙間gから排出されるクリンカダスト94を捕集する工程と、捕集されたクリンカダスト94を、クリンカクーラ6内に開口する吹込口32aが形成された吹込配管32を介して、クリンカクーラ6内に導入する工程とを含む。クリンカダスト94をクリンカクーラ6内に導入する工程は、捕集されたクリンカダスト94をクリンカクーラ6内に吹き込むように、吹込配管32の吹込口32aとは反対側の端部から圧縮された高圧空気を吹込配管32内に間欠的に供給することを含む。
【0053】
制御装置80は、上記回収工程を実行するように回収装置10を制御する。
図6は、回収工程において制御装置80が実行する一連の処理の一例を示すフローチャートである。この一連の処理では、開閉装置42及び開閉装置52が閉状態に維持された状態で製造装置1の稼働が開始され、焼成工程及び冷却工程が継続されている間に、制御装置80が、ステップS11を実行する。
【0054】
ステップS11では、例えば、制御装置80が、開閉装置52により抜出配管36を閉状態から開状態に切り替える。一例では、制御装置80は、閉位置に位置する弁部材56が、方向D2に沿う開位置まで軸部材54まわりに回転するように駆動部58を制御する。これにより、貯蔵装置24と吹込配管32の接続部分32cとが互いに接続され、弁部材56にって流れが止められていたクリンカダスト94及び貯蔵装置24に貯められていたクリンカダスト94が、吹込配管32内に供給され始める。
【0055】
次に、制御装置80は、ステップS12,S13を実行する。ステップS12では、例えば、制御装置80が、ステップS11の実行から所定の抜出時間が経過するまで待機する。抜出時間は、例えば、クリンカクーラ6内に1回で導入する(吹き込む)ことが可能な量のクリンカダスト94が吹込配管32に供給されるように予め設定されている。ステップS13では、例えば、制御装置80が、開閉装置52により抜出配管36を開状態から閉状態に切り替える。一例では、制御装置80は、開位置に位置する弁部材56が、抜出配管36内を遮断する閉位置まで軸部材54まわりに回転するように駆動部58を制御する。
【0056】
次に、制御装置80は、ステップS14,S15を実行する。ステップS14では、例えば、制御装置80が、開閉装置42により吹込配管32を閉状態から開状態に切り替える。一例では、制御装置80は、閉位置に位置するゲート弁44が、方向D1に沿って開位置まで移動するように駆動部46を制御する。ステップS15では、例えば、制御装置80が、吹込配管32の供給口32bからの高圧空気の供給をエア供給装置34に開始させる。これにより、クリンカクーラ6内へのクリンカダスト94の導入(吹込み)が開始される。
【0057】
次に、制御装置80は、ステップS16,S17を実行する。ステップS16では、例えば、制御装置80が、ステップS15の実行から所定の吹込時間が経過するまで待機する。吹込時間は、例えば、エア供給装置34が高圧空気の供給を継続することが可能な時間に基づいて予め設定されている。ステップS17では、例えば、制御装置80が、吹込配管32の供給口32bからの高圧空気の供給をエア供給装置34に停止させる。これにより、クリンカクーラ6内へのクリンカダスト94の導入が停止する。
【0058】
次に、制御装置80は、ステップS18を実行する。ステップS18では、例えば、制御装置80が、開閉装置42により吹込配管32を開状態から閉状態に切り替える。一例では、制御装置80は、開位置に位置するゲート弁44が、方向D1に沿って閉位置まで移動して吹込配管32を遮断するように駆動部46を制御する。これにより、導入装置30の状態は、ステップS11の実行前の初期状態と同じ状態に戻る。
【0059】
次に、制御装置80は、ステップS19を実行する。ステップS19では、例えば、制御装置80が、ステップS18の実行から所定の停止時間が経過するまで待機する。停止時間は、クリンカクーラ6内にクリンカダスト94を導入させない時間である。この停止時間は、例えば、エア供給装置34が高圧空気を供給可能な状態となるまでの待機時間、又は、貯蔵装置24に単位時間あたりに貯められるクリンカダスト94の過去の実績量に基づいて予め設定されている。
【0060】
ステップS18の実行から所定の停止時間が経過すると、制御装置80が実行する処理は、ステップS11に戻る。以降、制御装置80は、ステップS11~S19の一連の処理を繰り返し実行する。これにより、エア供給装置34から高圧空気が吹込配管32内に供給されてクリンカクーラ6内にクリンカダスト94が導入される状態(ステップS15~ステップS17)と、クリンカクーラ6内にクリンカダスト94が導入されない状態(ステップS18,S19,S11~S14)とが、交互に繰り返される。これらの状態が交互に繰り返される際に、制御装置80は、高圧空気の供給を停止した状態が所定の停止時間経過した場合に、エア供給装置34から高圧空気を吹込配管32に供給させて、クリンカダスト94がクリンカクーラ6内に導入されるように導入装置30を制御する。ステップS11~S19の一連の処理が繰り返されている間に、制御装置80は、エアシール装置22が形成する空間Sへの冷却空気の供給を継続するように冷風供給装置28を制御してもよい。
【0061】
上述した一連の処理は一例であり、適宜変更可能である。上記一連の処理において、制御装置80は、一のステップと次のステップとを並列に実行してもよく、上述した例とは異なる順序で各ステップを実行してもよい。制御装置80は、いずれかのステップを省略してもよく、いずれかのステップにおいて上述の例とは異なる処理を実行してもよい。例えば、制御装置80は、ステップS13とステップS14とを並行して実行してもよい。
【0062】
上述の例では、制御装置80は、所定の停止時間の経過ごとに、エア供給装置34からの高圧空気の供給によりクリンカクーラ6内にクリンカダスト94を導入させるように導入装置30を制御している。間欠的に高圧空気を供給(間欠的にクリンカダスト94を導入)する方法は、この例に限られない。制御装置80は、所定量のクリンカダスト94が貯蔵装置24に貯められる度に、エア供給装置34からの高圧空気の供給によりクリンカクーラ6内にクリンカダスト94を導入させるように導入装置30を制御してもよい。
【0063】
回収装置10は、例えば、回収装置10及び捕集装置20に加えて、検出装置70を更に有してもよい。
図2に示されるように、検出装置70は、貯蔵装置24に設けられており、吹込配管32に供給される前に貯蔵装置24に貯められたクリンカダスト94の量を検出する装置である。検出装置70は、貯蔵装置24内のクリンカダスト94の量を検出可能であれば、いかなる方式で検出してもよい。検出装置70は、例えば、貯蔵装置24内のクリンカダスト94の重さを検出するセンサであってもよく、貯蔵装置24内に貯められているクリンカダスト94の塊の高さを検出するセンサであってもよい。検出装置70は、クリンカダスト94の量の検出値を制御装置80に出力する。
【0064】
図7は、回収工程において制御装置80が実行する一連の処理の別の例を示すフローチャートである。この一例の処理において、制御装置80は、
図6に例示する一連の処理でのステップS19に代えて、ステップS29を実行する。ステップS29では、例えば、制御装置80が、検出装置70による検出値(クリンカダスト94の検出量)が所定量に到達するまで待機する。所定量は、例えば、クリンカクーラ6内に1回で導入する(吹き込む)ことが可能なクリンカダスト94の量に基づいて予め設定されている。この場合、ステップS12で待機する抜出時間は、上記所定量のクリンカダスト94が吹込配管32に供給されるように設定されていてもよい。
【0065】
図7に例示する一連の処理では、制御装置80は、検出装置70による検出値が所定量に達した場合に、エア供給装置34から高圧空気を吹込配管32に供給させて、クリンカダスト94がクリンカクーラ6内に導入されるように導入装置30を制御する。制御装置80は、ステップS11~S18,S29の一連の処理を繰り返すことで、検出装置70による検出値が所定量に達する度に、エア供給装置34からの高圧空気の供給によりクリンカクーラ6内にクリンカダスト94を導入させるように導入装置30を制御する。
【0066】
制御装置80は、ステップS19とステップS29との処理を組み合わせて、導入装置30を制御してもよい。制御装置80は、例えば、所定時間ごとの高圧空気の供給を基本として、所定時間の経過前に検出装置70による検出値が所定量に達した場合に、エア供給装置34からの高圧空気の供給によりクリンカクーラ6内にクリンカダスト94を導入するように導入装置30を制御してもよい。制御装置80は、例えば、検出装置70による検出値が所定量に達する度に高圧空気を供給することを基本として、検出装置70の検出値が所定量に達する前に、停止している時間が所定時間を経過した場合に、エア供給装置34からの高圧空気の供給によりクリンカクーラ6内にクリンカダスト94を導入するように導入装置30を制御してもよい。
【0067】
制御装置80による自動制御に代えて、作業員によって、エア供給装置34、開閉装置42、及び開閉装置52等が操作されることで、エア供給装置34から間欠的に吹込配管32に高圧空気が供給されて、クリンカクーラ6内にクリンカダスト94が間欠的に導入されてもよい。この場合、開閉装置42及び開閉装置52それぞれは、駆動部を有しなくてもよい。
【0068】
捕集装置20の構成は、上述の例に限られない。上述の例では、エアシール装置22と貯蔵装置24とが直接接続されているが、エアシール装置22と貯蔵装置24との間に、クリンカダスト94を輸送する装置が設けられてもよい。本開示において説明した複数の例のうちの1つの例で説明した事項の少なくとも一部が、他の例に適用されてもよい。
【0069】
[実施形態の効果]
クリンカダスト94を含んだ熱ガスがクリンカクーラ6からロータリキルン4に入る際に、ロータリキルン4とクリンカクーラ6との隙間gから製造装置1での処理空間外(系外)にクリンカダスト94が漏れ得る。しかしながら、上記実施形態に係る製造装置1では回収装置10が設けられるので、ロータリキルン4とクリンカクーラ6との間の隙間gから排出されたクリンカダスト94が、捕集装置20と導入装置30とによってクリンカクーラ6内に戻される。クリンカダスト94をクリンカクーラ6内に戻す方法として、クリンカクーラ6内に開口する吹込口32aを介して、常圧の空気を連続して供給することでクリンカダスト94をクリンカクーラ6内に導入することも考えられる。しかしながら、この場合、クリンカダスト94の導入に伴い多くの空気がクリンカクーラ6内に吹き込まれ、クリンカクーラ6からロータリキルン4に向かう熱ガスの温度が大きく低下してしまうおそれがある。
【0070】
これに対して、上記実施形態に係る製造装置1では、クリンカダスト94がクリンカクーラ6に戻される際に、圧縮された高圧空気が間欠的に供給されるので、クリンカクーラ6内に空気が吹き込まれる時間が短縮される。そのため、クリンカクーラ6からロータリキルン4に向かう熱ガスの温度低下が抑制される。従って、クリンカダストの回収に伴う熱効率の低下を抑制するのに有用である。
【0071】
高圧空気を用いてクリンカダスト94を導入することで、吹込口32aに堆積したクリンカダスト94を、回収したクリンカダスト94の導入と共にクリンカクーラ6内に導入できる。また、クリンカクーラ6内のクリンカ92の塊上の広範囲に回収したクリンカダスト94を散布できるので、回収されたクリンカダスト94の偏在を抑制できる。さらに、上記実施形態に係る製造装置1では、クリンカクーラ6での冷却終了位置までクリンカダスト94を輸送する装置を設ける必要がないので、セメントクリンカを製造する装置の簡素化に有用である。
【0072】
導入装置30は、吹込配管32の中間部分(接続部分32c)と捕集装置20とを接続する抜出配管36と、抜出配管36の開閉状態を切替可能な開閉装置52とを更に有してもよい。開閉装置52は、抜出配管36内に設けられ、抜出配管36に交差する方向に沿って延びる軸部材54と、軸部材54に設けられた弁部材56とを含み、弁部材56を軸部材54まわりに回転させることで抜出配管36の開閉状態を切り替えてもよい。この場合、差込式の開閉装置を抜出配管36に設ける場合に比べて、弁部材56上にクリンカダスト94が溜まった状態で弁部材56を移動させても、弁部材56をスムーズに開閉することができ、クリンカダスト94による弁部材56の損耗を抑制することができる。従って、開閉装置の耐久性の向上に有用である。
【0073】
導入装置30は、吹込配管32のうちの捕集装置20からクリンカダスト94が供給される接続部分32cと吹込口32aとの間の開閉状態を切替可能な開閉装置42を更に有してもよい。開閉装置42は、吹込配管32に交差するように設けられたゲート弁44を含み、ゲート弁44を吹込配管32に交差する方向に沿って移動させることで接続部分32cと吹込口32aとの間の開閉状態を切り替えてもよい。この場合、回転式の開閉装置を吹込配管32に設ける場合に比べて、ゲート弁44を動かすための機構を配管内に設けなくてもよいので、高圧空気と共に流れるクリンカダスト94との衝突による開閉装置の損傷を防ぐことができる。従って、開閉装置の耐久性の向上に有用である。
【0074】
捕集装置20は、隙間gに接続された空間Sを形成し、当該空間Sに排出されたクリンカダスト94を貯蔵装置24まで導くエアシール装置22と、エアシール装置22とロータリキルン4との間の隙間g1から、エアシール装置22が形成する空間Sにロータリキルン4内の温度よりも低い温度の冷却空気を供給する冷風供給装置28とを有してもよい。この場合、ロータリキルン4とクリンカクーラ6との隙間gから漏れたクリンカダスト94を上記空間Sに留めておくことが容易であり、冷却空気によりクリンカダスト94を冷却することができる。従って、クリンカダスト94による製造装置1への影響を抑制するのに有用である。
【0075】
製造装置1は、高圧空気の供給を停止した状態が所定時間経過した場合に、エア供給装置34から高圧空気を吹込配管32に供給させて、クリンカダスト94がクリンカクーラ6内に導入されるように導入装置30を制御する制御装置80を更に備えてもよい。この場合、所定時間が経過すれば、クリンカダスト94がクリンカクーラ6内に導入されるので、作業員がクリンカダスト94の排出状態を頻繁に確認しなくてもよい。従って、作業員による製造装置1の運転状況の確認作業の簡素化に有用である。
【0076】
製造装置1は、吹込配管32に供給される前に捕集装置20の貯蔵装置24に貯められたクリンカダスト94の量を検出する検出装置70と、検出装置70による検出値が所定量に達した場合に、エア供給装置34から高圧空気を吹込配管32に供給させて、クリンカダスト94がクリンカクーラ6内に導入されるように導入装置30を制御する制御装置80とを更に備えてもよい。この場合、クリンカダスト94の量が所定量に到達すれば、クリンカダスト94がクリンカクーラ6内に導入されるので、作業員がクリンカダストの排出状態を頻繁に確認しなくてもよい。従って、作業員による製造装置1の運転状況の確認作業の簡素化に有用である。
【符号の説明】
【0077】
1…セメントクリンカの製造装置、4…ロータリキルン、6…クリンカクーラ、10…回収装置、20…捕集装置、22…エアシール装置、24…貯蔵装置、28…冷風供給装置、30…導入装置、32…吹込配管、34…エア供給装置、36…抜出配管、42…開閉装置、44…ゲート弁、52…開閉装置、54…軸部材、56…弁部材、70…検出装置、80…制御装置、94…クリンカダスト。