(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076460
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】光ファイバケーブル
(51)【国際特許分類】
G02B 6/44 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
G02B6/44 381
G02B6/44 366
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187976
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】五戸 朋章
(72)【発明者】
【氏名】安冨 徹也
(72)【発明者】
【氏名】松浦 昂平
(72)【発明者】
【氏名】森 可奈絵
【テーマコード(参考)】
2H201
【Fターム(参考)】
2H201AX20
2H201BB06
2H201BB08
2H201BB33
2H201BB34
2H201BB54
2H201BB60
2H201BB67
2H201BB76
2H201BB86
2H201DD13
2H201KK08
2H201KK09
2H201KK17
2H201KK34C
(57)【要約】
【課題】 解体作業性に優れた光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】 光ファイバケーブル1は、スロットを用いないスロットレス型ケーブルであり、コア5、テンションメンバ9、引き裂き紐11、外被13等により構成される。コア5は、複数の光ファイバ心線3からなる。光ファイバケーブル1の長手方向に垂直な断面において、コア5の外部には、コア5を中心に対向する部位に一対のテンションメンバ9が設けられる。テンションメンバ9とは周方向の異なる位置に、コア5を挟んで対向するように引き裂き紐11が配置される。また、コア5、引き裂き紐11及びテンションメンバ9の外周には、外被13が設けられる。外被13によって一括してケーブルコア15、引き裂き紐11及びテンションメンバ9が覆われる。外被13において、引き裂き紐11とコア5との間には、空洞部15が形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバ心線からなるコアと、
光ファイバケーブルの長手方向に垂直な断面において、前記コアを中心に対向する部位に設けられるテンションメンバと、
前記テンションメンバとは周方向の異なる位置に配置される引き裂き紐と、
前記コア、前記テンションメンバ及び前記引き裂き紐を覆うように設けられる外被と、
を具備し、
前記外被において、前記引き裂き紐と前記コアとの間には空洞部が形成されることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記テンションメンバは、少なくとも2対以上配置され、前記引き裂き紐は、前記テンションメンバ同士の周方向の略中間に配置されることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記テンションメンバは、前記コアを中心に対向する部位に設けられる少なくとも一対の第1のテンションメンバと、前記第1のテンションメンバ同士の周方向の間に配置され、前記第1のテンションメンバよりも引張剛性が低い複数の第2のテンションメンバとを有することを特徴とする請求項2記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記引き裂き紐は、周方向に隣り合う前記テンションメンバの中心線を結んだ仮想線よりも外方に配置されることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記外被の表面から前記引き裂き紐までの深さが0.4mm~1.3mmであることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項6】
前記引き裂き紐が、前記外被の厚みの中心よりも外側に配置されることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光ファイバ心線からなる光ファイバケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
データトラフィックの増大に伴い、超多心光ファイバケーブルが普及してきている。超多心光ファイバケーブルは、ケーブル内に多数の光ファイバを実装する必要があるため、スロットレス構造のケーブルが使用されている。例えば、多数の光ファイバ心線からなるコアと、コアの外周の対向する位置に配置された2本のテンションメンバとが、外被で被覆されたものが用いられている(例えば特許文献1)。
【0003】
一般的にスロットレスケーブルはケーブルコアの周囲に外被を覆いつつ、その外被に埋め込んだ抗張力体(テンションメンバ)よって、伸び・曲げなどの外力から保護される。しかし、特許文献1のスロットレスケーブルのように、ケーブルコアの外周の対向する位置に2本のテンションメンバを設けた場合、2本のテンションメンバを結んだ方向には曲がり難く、これら2本のテンションメンバを結ぶ直線と直交する方向には曲がり易くなる。このため、敷設作業において、例えば管路の曲がり部などで、光ファイバケーブルの先端に引っ掛かりなどがあると、光ファイバケーブルの曲がりや波打ちによって、管路内で詰まってしまう恐れがある。
【0004】
これに対し、コアを挟んで対向する位置にテンションメンバを配置し、このテンションメンバを結ぶ線と垂直方向にも、同様のテンションメンバを配置した光ファイバケーブルが提案されている(特許文献2)。すなわち、互いに直交する方向に、コアを挟んでそれぞれテンションメンバを配置した光ファイバケーブルが提案されている。
【0005】
特許文献2の光ファイバケーブルによれば、上述した曲がりやすい方向に対してもテンションメンバが配置されるため、全体としての剛性が高く、敷設作業時において、管路内での光ファイバケーブルの詰まりの発生を抑制することができる。このため、敷設作業が容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-168380号公報
【特許文献2】特開2016-80747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような超多心光ファイバケーブルの敷設ニーズは高まる一方である。その敷設を迅速に行うため、優れた施工性を有する光ファイバケーブルがより一層求められている。例えば、別の光ファイバケーブルとの融着接続加工をする際などには、光ファイバケーブルの端末を解体する必要があるため、端末部の解体作業性の向上が要求される。
【0008】
一方、超多心光ファイバケーブルとして、実装するファイバ数をさらに増やすと、それにより光ファイバケーブルの外径が大きくなり、外被厚みも厚くなる。通常、外被を切り裂いて端末部の解体を行う際には、外被に埋め込まれた引き裂き紐が使用される。しかし、外被が厚くなると、引き裂き抵抗が大きくなるため、引き裂き紐による引き裂き作業が困難となる。
【0009】
特に、特許文献2のように、テンションメンバの本数を増やすと、外被を引き裂き紐で引き裂く際に、引き裂き紐がテンションメンバと干渉しやすくなる。このように、引き裂き紐で外被を引き裂く際にテンションメンバと接触すると、引き裂き紐の引き裂き抵抗がさらに大きくなり、断線のおそれもある。このため、解体作業性が著しく低下するおそれがある。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、解体作業性に優れた光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達するために本発明は、複数の光ファイバ心線からなるコアと、光ファイバケーブルの長手方向に垂直な断面において、前記コアを中心に対向する部位に設けられるテンションメンバと、前記テンションメンバとは周方向の異なる位置に配置される引き裂き紐と、前記コア、前記テンションメンバ及び前記引き裂き紐を覆うように設けられる外被と、を具備し、前記外被において、前記引き裂き紐と前記コアとの間には空洞部が形成されることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0012】
前記テンションメンバは、少なくとも2対以上配置され、前記引き裂き紐は、前記テンションメンバ同士の周方向の略中間に配置されることが望ましい。
【0013】
前記テンションメンバは、前記コアを中心に対向する部位に設けられる一対の第1のテンションメンバと、前記第1のテンションメンバ同士の周方向の間に配置され、前記第1のテンションメンバよりも引張剛性が低い複数の第2のテンションメンバとを有してもよい。
【0014】
前記引き裂き紐は、周方向に隣り合う前記テンションメンバの中心線を結んだ仮想線よりも外方に配置されることが望ましい。
【0015】
前記外被の表面から前記引き裂き紐までの深さが0.4mm~1.3mmであることが望ましい。
【0016】
前記引き裂き紐が、前記外被の厚みの中心よりも外側に配置されることが望ましい。
【0017】
本発明によれば、外被の内部において、引き裂き紐とコアとの間に空洞部が形成される。このため、引き裂き紐をコアの外周部から離れた位置に配置しても、引き裂き紐で外被を引き裂くと、空洞部によって、コアまで外被を分離することができる。すなわち、引き裂き紐によって外被の厚み全てを引き裂く必要がないため、外被の引き裂き作業が容易である。
【0018】
また、コアを中心に互いに異なる方向に、2対以上のテンションメンバを対向配置することで、テンションメンバの曲げの方向性を低減することができる。このため、全体として剛性が高くなり、意図しない光ファイバケーブルの曲がりを抑制することができる。
【0019】
この際、コアを中心に第1のテンションメンバを対向配置して、第1のテンションメンバよりも引張剛性の低い第2のテンションメンバを第1のテンションメンバの周方向の間に配置することで、第1のテンションメンバの対向方向の中心線を曲げ中心とした曲げ方向(以下、単に「曲げやすい方向」という場合がある)の曲げやすさを低減することができる。このため、全体として剛性が高くなり、意図しない光ファイバケーブルの曲がりをより確実に抑制することができる。
【0020】
また、引き裂き紐を、周方向に隣り合うテンションメンバの中心線を結んだ仮想線よりも外方に配置することで、引き裂き紐で外被を引き裂く際に、引き裂き紐がテンションメンバと接触することを抑制することができる。
【0021】
また、外被の表面から前記引き裂き紐までの深さが0.4mm~1.3mmであれば、外被の引き裂き性と耐側圧特性が良好である。
【0022】
また、引き裂き紐が、外被の厚みの中心よりも外側に配置されれば、外被の引き裂き性が良好である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、解体作業性に優れた光ファイバケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、第1の発明の実施形態について説明する。
図1は、光ファイバケーブル1の断面図である。光ファイバケーブル1は、スロットを用いないスロットレス型ケーブルであり、コア5、テンションメンバ9、引き裂き紐11、外被13等により構成される。
【0026】
コア5は、複数の光ファイバ心線3からなる。より詳細には、複数の光ファイバ心線3が撚り合わせられて光ファイバユニットが形成され、複数の光ファイバユニットがさらに撚り合わせられて、コア5が形成される。なお、光ファイバ心線3は、例えば、長手方向に対して間欠的に接着された、間欠接着型の光ファイバテープ心線であってもよい。
【0027】
図1に示すように、コア5(複数の光ファイバ心線3)の外周には、押さえ巻き7が設けられる。押さえ巻き7は、例えばテープ状の部材や吸水性の不織布等であり、縦添え巻きによってコア5の外周を一括して覆うように配置される。すなわち、押さえ巻き7の長手方向が光ファイバケーブル1の軸方向と略一致し、押さえ巻き7の幅方向が光ファイバケーブル1の周方向となるようにコア5の外周に縦添え巻きされる。なお、押さえ巻き7は必ずしも必須ではなく、また、押さえ巻き7を含めてコア5と呼ぶ場合がある。
【0028】
光ファイバケーブル1の長手方向に垂直な断面において、コア5の外部には、コア5を中心に対向する部位に一対のテンションメンバ9が設けられる。テンションメンバ9は、光ファイバケーブル1の張力を受け持つ部材であり、材質は特に限定されないが、例えば、アラミド繊維、ガラス繊維等による繊維補強プラスチック(FRP)等が使用できる。
【0029】
また、テンションメンバ9とは周方向の異なる位置に、コア5を挟んで対向するように引き裂き紐11が配置される。図示した例では、引き裂き紐11は、テンションメンバ9の対向方向と略直交する方向に配置される。
【0030】
また、コア5、引き裂き紐11及びテンションメンバ9の外周には、外被13が設けられる。外被13によって一括してコア5、引き裂き紐11及びテンションメンバ9が覆われる。すなわち、テンションメンバ9及び引き裂き紐11は、外被13に埋設される。外被13は、光ファイバケーブル1を被覆して保護するための層である。
【0031】
図2は、光ファイバケーブル1の引き裂き紐11近傍の拡大図である。引き裂き紐11は、コア5(押さえ巻き7)の外周に接するように配置されるのではなく、コア5から離れた位置に配置される。外被13において、引き裂き紐11とコア5との間には、空洞部15が形成される。すなわち、引き裂き紐11に対応する部位の外被13の内面側には、溝状の凹部が形成される。なお、引き裂き紐11及び空洞部15は、光ファイバケーブル1の長手方向に略直線状に配置される。
【0032】
なお、空洞部15の断面形状は特に限定されないが、図示したように、略U字状であって、先端(最外部)がなだらかな曲面形状であることが望ましい。引き裂き紐11は、空洞部15の先端と接するように配置される。
【0033】
ここで、空洞部15の幅(図中A)は、1mm以下であることが望ましい。空洞部15の幅が広くなりすぎると、外被13の当該部位の強度が低下する。また、空洞部15の幅の最小値は特に限定されず、わずかでも空洞部15の両側方の壁部が互いに融着せずに、分離した状態が維持されればよい。
【0034】
また、外被13の表面から引き裂き紐11までの深さ(図中E)は、0.4mm~1.3mmであることが望ましい。外被13の表面から引き裂き紐11までの深さが浅すぎると(引き裂き紐11が外表面に近くなりすぎると)、外被13の当該部位の強度が低下する。外被13の表面から引き裂き紐11までの深さが深すぎると(引き裂き紐11がコア5に近くなりすぎると)、引き裂き紐11によって引き裂く外被13の厚みが厚くなり、本実施形態による効果が小さくなる。なお、引き裂き紐11による引き裂き作業性を良好にするため、引き裂き紐11は、外被13の厚みの中心よりも外側に配置されることが望ましい。
【0035】
次に、光ファイバケーブル1の製造方法について説明する。光ファイバケーブル1は、通常の製造方法と同様の方法で製造可能であるが、外被の押出の際に、空洞部15の形状に応じた形状を有するニップルを使用することで、外被13の所定の位置に空洞部15を形成することができる。その際、コア5に対して、引き裂き紐11の位置を空洞部15の位置に合わせて外被13を押し出すことで、光ファイバケーブル1を製造することができる。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態によれば、引き裂き紐11が外被13の最深部(コア5側)に配置されるのではなく、コア5から離間した位置に配置されるため、引き裂き紐11と外被13の外表面までの距離を短くすることができる。このため、引き裂き紐11による外被13の引き裂き抵抗が小さくなり、解体作業が容易となる。この際、引き裂き紐11よりもコア5側の外被13は引き裂き紐11によって引き裂かれないが、予め空洞部15が形成されるため、外被13を容易に解体することができる。
【0037】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図3は、第2の実施形態にかかる光ファイバケーブル1aを示す断面図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同一の機能を奏する構成については、
図1と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0038】
光ファイバケーブル1aは、光ファイバケーブル1と略同様の構成であるが、テンションメンバの形態が異なる。光ファイバケーブル1aは、コア5、第1テンションメンバ9a、第2テンションメンバ9b、引き裂き紐11、外被13等により構成される。
【0039】
光ファイバケーブル1の長手方向に垂直な断面において、コア5を中心に対向する部位には第1テンションメンバ9aが設けられる。また、第1テンションメンバ9a同士の周方向の間には、複数の第2テンションメンバ9bが配置される。第2テンションメンバ9bは、第1テンションメンバ9aよりも引張剛性(軸剛性=軸方向力/軸方向変形量)が低い。例えば、それぞれの第1テンションメンバ9aの径(断面積)は、それぞれの第2テンションメンバ9bの径(断面積)よりも大きい。
【0040】
第1テンションメンバ9a、第2テンションメンバ9bは、光ファイバケーブル1の張力を負担する。なお、第1テンションメンバ9aは、光ファイバケーブル1の張力を主に負担し、第2テンションメンバ9bは、光ファイバケーブル1の張力を補助的に負担する。第1テンションメンバ9a、第2テンションメンバ9bの材質は特に限定されないが、例えば、アラミド繊維、ガラス繊維等による繊維補強プラスチック(FRP)等が使用できる。また、第1テンションメンバ9aと第2テンションメンバ9bとは、異なる材質であってもよい。
【0041】
図示した例では、第2テンションメンバ9bが、第1テンションメンバ9a同士の周方向の間にそれぞれ3本ずつ配置される。すなわち、第1テンションメンバ9a同士の周方向の間に、第2テンションメンバ9bは合計6本配置される。なお、第1テンションメンバ9aの断面積の総計は、第2テンションメンバ9bの断面積の総計よりも大きいことが望ましく、さらに、それぞれの第1テンションメンバ9aの断面積を、第2テンションメンバ9bの総断面積よりも大きくしてもよい。
【0042】
また、第2テンションメンバ9bと第1テンションメンバ9aは、周方向に略等間隔で配置される。すなわち、第1テンションメンバ9aは、180°の間隔で配置され、第2テンションメンバ9b同士及び隣り合う第1テンションメンバと第2テンションメンバ9bは、それぞれ約45°間隔で配置される。なお、第2テンションメンバ9bの本数は特に限定されない。
【0043】
ここで、光ファイバケーブル1aは、第1テンションメンバ9aの対向方向に平行な中心線(図中の中心線C)を曲げ中心とした方向(図中の上下方向)が、曲げやすい方向であり、それ以外の方向(例えば、中心線Cに直交する中心線B)が曲げにくい方向となる。
【0044】
また、第1テンションメンバ9a及び第2テンションメンバ9bとは異なる周方向位置であって、コア5を挟んで互いに対向する位置には引き裂き紐11が設けられる。引き裂き紐11は、隣り合うテンションメンバ(第2テンションメンバ9b)の周方向の中央に配置される。すなわち、光ファイバケーブル1aでは、テンションメンバが、少なくとも2対以上配置され、引き裂き紐11は、テンションメンバ同士の周方向の略中間に配置される。例えば図示した例では、隣り合う第2テンションメンバ9bと引き裂き紐11は、約22.5°の間隔で配置される。
【0045】
図4は、光ファイバケーブル1aの引き裂き紐11近傍の拡大図である。前述したように、引き裂き紐11とコア5との間には、空洞部15が設けられる。引き裂き紐11は、周方向に隣り合う第2テンションメンバ9bの中心線を結んだ仮想線(図中D)よりも外方に配置される。すなわち、引き裂き紐11と外被13の外周面までの距離(図中E)は、第2テンションメンバ9bと外被13の外周面までの距離(図中F)よりも小さい。
【0046】
このように、引き裂き紐11を隣り合う第2テンションメンバ9bよりも外周面側に配置することで、引き裂き紐11によって外被13を引き裂く際に、引き裂き紐11と第2テンションメンバ9bとが接触し、引き裂き紐11が破断することを抑制することができる。
【0047】
第2の実施の形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第2テンションメンバのない従来の光ファイバケーブル(例えば特許文献1の光ファイバケーブル)と比較すると、光ファイバケーブル1は、曲げやすい方向の曲げやすさが、第2テンションメンバ9bによって低減する(すなわち曲げにくくなる)。すなわち、曲げやすい方向の曲げ剛性を大きくすることができる。このため、例えば圧送時における光ファイバケーブルの曲がりの発生と、これによる詰まりの発生を抑制することができる。
【0048】
また、第2テンションメンバ9bが周方向に略等間隔に配置されているため、第2テンションメンバ9bによる曲げやすさの方向性をなだらかに変化させることができる。
【0049】
一方、第1テンションメンバ9aを互いに直交する方向にそれぞれ対向させて、いずれの方向にも曲げにくくした光ファイバケーブル(例えば特許文献2の光ファイバケーブル)と比較すると、光ファイバケーブル1には、曲げにくい方向と曲げやすい方向とが存在する。すなわち、中心線Cを曲げ中心とする方向へは、他の方向と比較して相対的に曲げやすく、曲げやすい方向となる。
【0050】
このため、光ファイバケーブル1aをドラム等に巻き付ける際には、曲げやすい方向に光ファイバケーブル1aを曲げてドラム等に巻き付けることができるため、ドラム等のサイズが大型化することを抑制することができる。このように、異なるテンションメンバを併用して、曲げやすい方向と曲げにくい方向とを残しつつ、曲げやすい方向の曲げ剛性を高めて、方向による曲げやすさのバランスを適正にすることで、取り扱い性や敷設作業性に優れた光ファイバケーブルを得ることができる。
【0051】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
図5は、第3の実施形態にかかる光ファイバケーブル1aを示す断面図である。光ファイバケーブル1bは、光ファイバケーブル1aと略同様の構成であるが、第1テンションメンバ9aの形態が異なる。前述した光ファイバケーブル1aでは、2本の第1テンションメンバ9aが、コア5を挟んで対向する位置に1本ずつ配置されたが、光ファイバケーブル1bでは、計4本の第1テンションメンバ9aが、コア5を挟んで対向する位置にそれぞれ2本ずつ配置される。
【0052】
それぞれの部位において、第1テンションメンバ9aは、周方向に隙間をあけて配置される。このように、コア5を中心として互いに対向する位置に、それぞれ複数の第1テンションメンバ9aを周方向に離間して配置することで、第1テンションメンバ9aを、第1テンションメンバ9a同士の対向方向に平行な中心線C上からずれた位置にそれぞれ配置することができる。
【0053】
ここで、通常、部材を曲げると、曲げの外側では引張変形となり、曲げの内側では圧縮変形となるところ、曲げ中心線上は引張及び圧縮の中立軸となる。このため、中心線近傍の変形量は小さく、中心線上の構造による曲げ剛性への影響が小さくなる。このため、前述したように、第1テンションメンバ9aの対向方向の中心線Cを曲げ中心とする曲げ方向が、光ファイバケーブル1bの曲げやすい方向となる。すなわち、前述した光ファイバケーブル1aのように中心線C上に第1テンションメンバ9aを配置することで、この方向の曲げに対して、第1テンションメンバ9aによる曲げ剛性の向上を最小化することができ、当該方向へは曲げやすくなる。
【0054】
一方、光ファイバケーブル1bでは、中心線Cからずれた位置に第1テンションメンバ9aが配置されるため、光ファイバケーブル1aと比較して、第1テンションメンバ9aによる曲げ剛性への影響が大きくなる。すなわち、中心線Cからずれた位置に第1テンションメンバ9aを配置することで、中心線Cを曲げ中心とした曲げ方向の曲げ剛性が向上し、第2テンションメンバ9bを配置した効果をさらに補完することができる。
【0055】
なお、第1テンションメンバ9aがそれぞれの部位に複数配置される場合には、その周方向の中央位置を第1テンションメンバ9aの代表位置とする。例えば、第1テンションメンバ9a同士のそれぞれの間に3本の第2テンションメンバ9bを配置する場合には、第1テンションメンバ9a(の代表位置)と第2テンションメンバ9bとの配置角度が45°となる。
【0056】
第3の実施形態によれば、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、コア5を中心として対向する位置に、それぞれ第1テンションメンバ9aを複数配置し、中心線Cからずれた位置に第1テンションメンバ9aを配置することで、曲げやすい方向への曲げ剛性を向上させることができる。
【実施例0057】
引き裂き紐の配置等を変化させた種々の光ファイバケーブルについて評価した。評価に供した光ファイバケーブルは、概ね
図5に示す断面形態である。まず、光ファイバ12本を間欠的に接着し12心の光ファイバテープ心線を作成した。この光ファイバテープ心線を12本撚り合わせ、144心の光ファイバユニットを構成した。144心の光ファイバユニットを48本サプライし、撚り合わせた上で、押さえ巻き部材を縦添えし、フォーミング治具で丸め、6912心のコアを作成した。
【0058】
こうして作成したコアと、テンションメンバと、外被を引き裂く引き裂き紐をケーブル長手に沿って配置し、空洞部を形成可能なニップルを用いて、外被材を円筒状に押出被覆し、20℃まで冷却して光ファイバケーブルを作成した。
【0059】
ここで、テンションメンバとしては、φ2.0mmのG-FRP(ガラス繊維補強樹脂)製の4本の第1テンションメンバと、φ0.7mmのK-FRP(アラミド繊維補強樹脂)製の6本の第2テンションメンバを用いた。なお、φ2.0mmのG-FRP製の第1テンションメンバは、対向する位置にそれぞれ2本配置し、φ0.5mmのK-FRP製の第2のテンションメンバは、第1テンションメンバの間に等間隔(45°間隔)で配置した。
【0060】
なお、外被材はPEとした。光ファイバケーブルの外径は30.9mm、外被厚は1.7~3.8mmとした。引き裂き紐は、第2テンションメンバ同士の間に互いに22.5°の周方向位置に配置した。なお、引き裂き紐としては、ポリエステル撚糸(750d/1×3)を用いた。
【0061】
空洞部は、幅(
図2のA)を1mmとし、外被表面から引き裂き紐までの距離(
図2、
図4のE)を0.2~1.5mmとした。なお、第2テンションメンバから外被表面までの距離(
図4のF)は1.4mmとした。
【0062】
一方、比較例1としては、上記実施例と略同様の断面構成とするが、
図5に示す断面形状に対して空洞部を設けないものとした。また、比較例2としては、
図1に示す断面形状に対して空洞部を設けないものとした。各条件及び結果を表1に示す。
【0063】
【0064】
機械特性としては、側圧試験(IEC60794-1-21 Crush)、繰り返し曲げ試験(IEC60794-1-21 Repeated Bending)、耐衝撃試験(IEC60794-1-21 Impact)及び捻回性(IEC60794-1-21 Torsion)について評価した。側圧試験は、繰り返し曲げ試験、耐衝撃試験、捻回性試験は、いずれも試験後の損失増加量が0.10dB/km(1.55μm)以下のものを合格とした。
【0065】
なお、機械特性の評価としては、上記4つの試験の全てが合格であったものを◎とし、3つが合格であったものを○とし、それ以外を×とした。
【0066】
外被切り裂き性は、引き裂き紐によって外被を切り裂き、解体時に紐の脱落がなく、引き裂き時に小さな力で容易に外被を引き裂けたものを◎とし、引き裂き時にやや抵抗はあるが、外被を引き裂けたものを○とし、テンションメンバとの干渉等によって引き裂き時に過大な力を要した場合や断線した場合を×とした。
【0067】
敷設性は、敷設を模擬したフィールドで、テンションメンバの座屈がなく円滑に敷設できたものを◎とし、座屈等によって敷設が困難であったものを×とした。
【0068】
総合評価としては、各評価で×が一つでもあれば×とし、×はないが○が一つでもあれば〇とし、全てが◎のものを◎とした。
【0069】
表に示すように、空洞部を設けた実施例1~5は、評価が○以上となった。なお、実施例1は、外被厚が薄いため、機械特性が○(側圧試験のみが不合格)となった。また、実施例5は、テンションメンバとの接触による破断はなかったものの、引き裂き紐から外被表面までの距離が大きいため、引き裂き抵抗がやや大きく、外被切り裂き性が○評価となった。
【0070】
一方、比較例1は、空洞部を有さないため、外被の全厚を引き裂き紐で切り裂く必要があるとともに、引き裂き紐がテンションメンバと接触してしまい、引き裂き紐の破断が生じたため、切り裂き性が×となった。また、比較例2は、引き裂き紐とテンションメンバとの接触はなかったが、外被の全厚を引き裂き紐で切り裂く必要があるため、引き裂き抵抗が過大であり、切り裂き性は×であった。また、第2テンションメンバを有さないため、曲げの方向性が大きいため、敷設性も×となった。
【0071】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。