(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076743
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法、及び成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20240530BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240530BHJP
C08K 7/04 20060101ALI20240530BHJP
C08L 25/04 20060101ALI20240530BHJP
C08L 69/00 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
C08L67/02
C08L63/00 A
C08K7/04
C08L25/04
C08L69/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188450
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 樹
(72)【発明者】
【氏名】浅井 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】深津 博樹
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC062
4J002CD013
4J002CD023
4J002CD053
4J002CF071
4J002CG002
4J002DA016
4J002DA066
4J002DE096
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE186
4J002DF016
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DL006
4J002FA046
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】寸法精度と耐加水分解性を向上させつつ、異物の発生を低減し得るポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、及びこれを用いて得られる成形品を提供する。
【解決手段】(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、(B)下記式(1)を満たすエポキシ化合物0.10~10質量部と、(C)非晶性樹脂15~80質量部と、(D)繊維状無機充填剤とを含む、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(M×2)+N≦6 式(1)
(式(1)中、Mは、前記(B)エポキシ化合物の1分子中のエポキシ基数を表し、Nは、前記(B)エポキシ化合物の1分子中の水酸基数を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、(B)下記式(1)を満たすエポキシ化合物0.10~10質量部と、(C)非晶性樹脂15~80質量部と、(D)繊維状無機充填剤とを含む、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(M×2)+N≦6 式(1)
(式(1)中、Mは、前記(B)エポキシ化合物の1分子中のエポキシ基数を表し、Nは、前記(B)エポキシ化合物の1分子中の水酸基数を表す。)
【請求項2】
前記(B)エポキシ化合物が非芳香族系エポキシ化合物である、請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)エポキシ化合物が脂環式エポキシ化合物である、請求項2に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)エポキシ化合物が水酸基を含まない、請求項1又は2に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)エポキシ化合物の1分子中のエポキシ基数が2以上である、請求項1又は2に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法であって、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と前記(B)エポキシ化合物と前記(C)非晶性樹脂と前記(D)繊維状無機充填剤とを含む混合物を溶融混練することを含む、方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いて得られる、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、耐熱性、耐薬品性、電気特性、機械的特性、成形加工性などの種々の特性に優れるため、多くの用途に利用されている。例えば自動車分野ではコネクタ、センサー、アクチュエータ、ECUの筐体、ワイパーアーム部品、電気電子分野ではリレー、スイッチ、コイル部品、ギヤ、キャリアケース等にポリブチレンテレフタレートが使用されている。
【0003】
このような分野では、各種基板や、モーター等の熱を発生する内装部品を筐体内に設置したり、他の部品との勘合に寸法精度が必要とされている。また、自動車分野においては長期間室外で使用されるため高い耐久性も必要とされている。
【0004】
しかし、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、分子内にエステル基を有しているため、高温高湿環境下では加水分解により物性が低下しやすい傾向がある。そのため、エポキシ系樹脂等による改良も行われている。特許文献1には、ポリブチレンテレフタレート樹脂の耐加水分解性と寸法精度を改善するため、寸法精度向上剤、エポキシ系樹脂、及び第4級アンモニウム塩を含むポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エポキシ系樹脂等のエポキシ基を含む化合物をポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に添加した場合、溶融加工時に、エポキシ基を含む化合物が増粘したり、スクリュ等に付着物が発生する場合がある。その付着物が炭化したものが、黒色の異物として成形品に混入し、成形品の外観を損ねる原因となり得る。
【0007】
本発明の実施形態は、寸法精度と耐加水分解性を向上させつつ、異物の発生を低減し得るポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、及びこれを用いて得られる成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、(B)下記式(1)を満たすエポキシ化合物0.10~10質量部と、(C)非晶性樹脂15~80質量部と、(D)繊維状無機充填剤とを含む、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に関する。
(M×2)+N≦6 式(1)
(式(1)中、Mは、前記(B)エポキシ化合物の1分子中のエポキシ基数を表し、Nは、前記(B)エポキシ化合物の1分子中の水酸基数を表す。)
本発明の他の実施形態は、上記実施形態のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法であって、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と前記(B)エポキシ化合物と前記(C)非晶性樹脂と前記(D)繊維状無機充填剤とを含む混合物を溶融混練することを含む方法に関する。
本発明の他の実施形態は、上記実施形態のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いて得られる成形品に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、寸法精度と耐加水分解性を向上させつつ、異物の発生を低減し得るポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、及びこれを用いて得られる成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】平面度の測定に用いる試験片を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好ましい実施形態を説明するが、本発明が下記の実施形態に限定されることはない。
【0012】
<ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物>
本発明の実施形態に係るポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と、(B)エポキシ化合物と、(C)非晶性樹脂と、(D)繊維状無機充填剤とを少なくとも含む。
【0013】
[(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂]
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、少なくともテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステルや酸ハロゲン化物等)を含むジカルボン酸成分と、少なくとも炭素原子数4のアルキレングリコール(1,4-ブタンジオール)又はそのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を含むグリコール成分とを重縮合して得られる樹脂である。PBT樹脂は、ホモポリブチレンテレフタレートに限らず、ブチレンテレフタレート単位を60モル%以上(特に75モル%以上95モル%以下)含有する共重合体であってもよい。
【0014】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂において、テレフタル酸及びそのエステル形成性誘導体以外のジカルボン酸成分(コモノマー成分)としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル等のC8-14の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC4-16のアルカンジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等のC5-10のシクロアルカンジカルボン酸;これらのジカルボン酸成分のエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステル誘導体や酸ハロゲン化物等)が挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
これらのジカルボン酸成分の中では、イソフタル酸等のC8-12の芳香族ジカルボン酸、及び、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC6-12のアルカンジカルボン酸がより好ましい。
【0015】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂において、1,4-ブタンジオール以外のグリコール成分(コモノマー成分)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-オクタンジオール等のC2-10のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等の、ビスフェノールAのC2-4のアルキレンオキサイド付加体;又はこれらのグリコールのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)が挙げられる。これらのグリコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
これらのグリコール成分の中では、エチレングリコール、トリメチレングリコール等のC2-6のアルキレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール、又は、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール等がより好ましい。
【0016】
ジカルボン酸成分及びグリコール成分の他に使用できるコモノマー成分としては、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4-カルボキシ-4’-ヒドロキシビフェニル等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸;プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(ε-カプロラクトン等)等のC3-12ラクトン;これらのコモノマー成分のエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステル誘導体、酸ハロゲン化物、アセチル化物等)が挙げられる。
【0017】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV)は、0.6~1.3dL/gであることが好ましく、0.7~1.0dL/gであることがより好ましい。また、固有粘度が上記範囲のポリブチレンテレフタレート樹脂は、異なる固有粘度を有するポリブチレンテレフタレート樹脂をブレンドして、固有粘度を調整することもできる。例えば、固有粘度0.9dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂と固有粘度0.7dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂とをブレンドすることにより、固有粘度0.8dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂を調製することができる。ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV)は、例えば、o-クロロフェノール中で温度35℃の条件で測定することができる。
【0018】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されない。耐加水分解性の観点から、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、30meq/kg以下が好ましく、25meq/kg以下がより好ましく、15meqが更に好ましい。
【0019】
なお、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、市販品を使用してもよく、ジカルボン酸成分と、グリコール成分と、必要により、その他のコモノマーとを、慣用の方法、例えばエステル交換、直接エステル化法等により共重合(重縮合)することにより製造したものを使用してもよい。また、その製造は、溶融状態、固相状態、溶液状態のいずれの状態で行ってもよい。
【0020】
[(B)エポキシ化合物]
(B)エポキシ化合物としては、下記式(1)を満たすエポキシ化合物を用いる。
(M×2)+N≦6 式(1)
式(1)中、Mは、エポキシ化合物の1分子中のエポキシ基数を表し、Nは、エポキシ化合物の1分子中の水酸基数を表す。
【0021】
上述の通り、エポキシ化合物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂の耐加水分解性を向上させるために用いることができる。一方、エポキシ化合物をポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に添加した場合、溶融加工時に、エポキシ化合物が増粘したり、スクリュ等に付着物が発生する場合がある。特にエポキシ化合物中に水酸基を有すると、ポリブチレンテレフタレート樹脂とのエステル交換反応により粘度上昇を引き起こし、スクリュに付着物が発生しやすくなる傾向がある。その付着物が炭化したものが、黒色の異物として成形品に混入し、成形品の外観を損ねる原因となり得る。ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に、式(1)を満たすエポキシ化合物を、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、0.1~10質量部含ませる場合、耐加水分解性を向上させ得るとともに、異物の発生を低減し得る。
【0022】
異物の低減の観点から、式(1)の(M×2)+Nは、6以下が好ましく、4以下がより好ましい。
【0023】
耐加水分解性の観点から、(B)エポキシ化合物は、1分子中のエポキシ基数が2以上であることが好ましい。一方、異物の低減の観点から、(B)エポキシ化合物は、1分子中のエポキシ基数が3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。(B)エポキシ化合物は、1分子中のエポキシ基数が1~3であることが好ましく、2であることがより好ましい。
【0024】
異物の低減の観点から、(B)エポキシ化合物は、1分子中の水酸基数が2以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましく、水酸基を含まないことがさらに好ましい。
【0025】
(B)エポキシ化合物の数平均分子量は特に限定されないが、異物の低減の観点から、エポキシ化合物の数平均分子量は3000以下が好ましく、1500以下がより好ましく、1000以下がさらに好ましい。(B)エポキシ化合物の数平均分子量は、100以上が好ましく、150以上がより好ましく、200以上がさらに好ましい。(B)エポキシ化合物の数平均分子量は、例えば、100~3000が好ましく、150~1500がより好ましく、200~1000がさらに好ましい。エポキシ化合物の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で求めることができる。
【0026】
(B)エポキシ化合物は、1分子中にエポキシ基を1つ以上有し、式(1)を満たすものであれば特に限定されない。
芳香環を含むエポキシ化合物は、スクリュに付着した場合、滞留等により炭化しやすい傾向がある。このような観点から、(B)エポキシ化合物としては、非芳香族系エポキシ化合物が好ましい。非芳香族系エポキシ化合物とは、分子内に芳香環を含まない非芳香族系エポキシ化合物を意味する。エポキシ化合物とポリブチレンテレフタレート樹脂のカルボン酸末端とが反応した後に生じる水酸基のエステル交換の反応性の観点から、非芳香族系エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物がより好ましい。脂環式エポキシ化合物としては、例えば、シクロアルケンオキサイド構造を含む化合物が好ましい。シクロアルケンオキサイド構造は、例えば、シクロヘキセンオキサイド構造、シクロペンテンオキサイド構造等のように、脂肪族環を構成する原子のうちの隣接する2個の炭素原子が酸素原子とともにエポキシ基を形成している構造である。脂環式エポキシ化合物は、1分子中にシクロアルケンオキサイド構造を1個以上含むことが好ましく、2個以上含むことがより好ましい。
【0027】
(B)エポキシ化合物としては、例えば、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル化合物;
テレフタル酸ジグリシジルステル等のグリシジルエステル化合物;
N-グリシジルフタルイミド等のグリシジルイミド化合物;
2,2-ビス(3’,4’-エポキシシクロヘキシル)プロパン、3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環式エポキシ化合物等が挙げられる。
これらのなかで、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,2-ビス(3’,4’-エポキシシクロヘキシル)プロパン、3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の非芳香族系エポキシ化合物が好ましい。
【0028】
(B)エポキシ化合物としては、1種の化合物のみを用いてもよく、2種以上の化合物を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0029】
(B)エポキシ化合物のエポキシ基量は特に限定されない。耐加水分解性の観点から、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の合計量に対する(B)エポキシ化合物のエポキシ基量は、例えば、3mmol/kg以上であってよく、7mmol/kg以上が好ましく、12mmol/kg以上がより好ましく、15mmol/kg以上がさらに好ましい。一方、異物の低減の観点から、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の合計量に対する(B)エポキシ化合物のエポキシ基量は、50mmol/kg以下が好ましく、40mmol/kg以下がより好ましく、30mmol/kg以下がさらに好ましい。ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の合計量に対する(B)エポキシ化合物のエポキシ基量は、例えば、3~50mmol/kgであってよく、7~50mmol/kgが好ましく、12~40mmol/kgよりが好ましく、15~30mmol/kgがさらに好ましくい。エポキシ化合物のエポキシ量はNMRなどにより測定することができる。
【0030】
(B)エポキシ化合物の水酸基量は特に限定されない。異物の低減の観点から、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の合計量に対する(B)エポキシ化合物の水酸基量は、40mmol/kg以下が好ましく、30mmol/kg以下がより好ましく、10mmol/kg以下がさらに好ましい。
【0031】
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物において、(B)エポキシ化合物の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、0.10~10質量部であることが好ましく、0.12~5質量部であることがより好ましく、0.15~2質量部であることがさらに好ましい。
【0032】
耐加水分解性の観点から、(B)エポキシ化合物の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、0.10質量部以上が好ましく、0.12質量部以上がより好ましく、0.15質量部以上がさらに好ましい。一方、異物の低減の観点から、(B)エポキシ化合物の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。
【0033】
[(C)非結晶性樹脂]
実施形態において、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、非晶性樹脂を含有することにより、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物から得られた成形品の反りを抑制することが可能である。非晶性樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート樹脂との相溶性の良いスチレン系樹脂やポリカーボネート樹脂が好ましい。(C)非晶性樹脂は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
<スチレン系樹脂>
スチレン系樹脂としては、芳香族ビニル化合物から誘導される繰り返し単位を含む重合体及び共重合体が挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-アルキル置換スチレン、核アルキル置換スチレンなどが挙げられる。芳香族ビニル化合物以外のモノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリル酸メチルなどが挙げられる。
スチレン系樹脂としては、ゴムで変性されたものでもよく、ゴムとしては、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、エチレン-プロピレン共重合体などが挙げられる。また、スチレン系樹脂としては、エポキシで変性されたものでもよい。このようなスチレン系樹脂の具体例としては、ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、ABS樹脂、MBS樹脂、AS樹脂、ESBS樹脂などが挙げられ、好ましくはABS樹脂、AS樹脂、ESBS樹脂及びこれらの混合物である。
スチレン系樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
<ポリカーボネート樹脂>
ポリカーボネート樹脂は、溶剤法、即ち塩化メチレン等の溶剤中で公知の酸受容体、分子量調整剤の存在下、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応、または二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応によって製造することができる。ここで好適に使用し得る二価フェノールとしてはビスフェノール類があり、特に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、即ちビスフェノールAが好ましい。また、フェノールAの一部または全部を他の二価フェノールで置換したものであってもよい。
【0036】
ビスフェノールA以外の二価フェノールとしては、例えばハイドロキノン、4,4-ジヒドロキシジフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテルのような化合物、またはビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンのようなハロゲン化ビスフェノール類を挙げることができる。これらの二価フェノールは、二価フェノールのホモポリマーまたは2種以上のコポリマーであってもよい。更にポリカーボネート樹脂は、多官能性芳香族を二価フェノール及び/又はカーボネート前駆体と反応させた熱可塑性ランダム分岐ポリカーボネートであってもよい。ポリカーボネートは、特に高流動性のものが好ましい。
ポリカーボネート樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に配合される(C)非結晶性樹脂の配合量は、得られた成形品の十分な寸法安定性及び低そり性の観点から、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、15質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましい。(C)非結晶性樹脂の配合量は、耐熱性、離型性、及び溶融熱安定性の観点から、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、80質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましい。(C)非結晶性樹脂の配合量は、例えば、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、15~80質量部が好ましく、30~60質量部がより好ましい。
【0038】
[(D)繊維状無機充填剤]
(D)繊維状無機充填剤としては、繊維状、ウィスカー状等の繊維状無機充填剤があげられ、それらは1種類以上で使用されても良い。(D)繊維状無機充填剤の具体例としては、ガラス繊維、セラミック繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、ワラステナイトなどの繊維状、ウィスカー状充填剤が挙げられる。(D)繊維状無機充填剤を含有することで、機械的特性や耐熱性を向上させることができる。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の成形収縮率や線膨張係数を低減することができる。
(D)繊維状無機充填剤の中でもガラス繊維は、シラン系カップリング剤などで予備処理した後、エポキシ樹脂などを表面処理剤として使用することで(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂との密着性が増し、機械的強度や耐加水分解性を向上させることが出来る。
【0039】
(D)繊維状無機充填剤を用いる場合、機械強度の点から、その長さは200μm~5mmが好ましく、より好ましくは300μm~3mm程度である。(D)繊維状無機充填剤の直径は、例えば、1~50μmが好ましく、より好ましくは3~30μm程度である。
【0040】
(D)繊維状無機充填剤の断面形状としては、一般的な円形に加え、扁平断面形状を有するものを用いることも好ましい。具体的な断面形状としては、長円形、円形が2本対となるまゆ形、楕円形、半円形、長方形、正方形、その他多角形、星形、またこれらの単繊維、もしくは複数対繊維などが挙げられる。中でも強度や反り変形、流動性などの点から、長円形が好ましい。また、扁平断面の最長径/最長径の比は、1.5以上、6.0以下が好ましい。この比が1.5より小さいと、比が1.0である円形断面ガラス繊維と差異があまりない。ソリ変形の観点から、2.0以上がより好ましい。この比が6.0より大きいと、コンパウンド中にガラス繊維同士がお互いを砕き合うため、機械特性に影響を及ぼす場合がある。機械特性とのバランスから5.0以下がより好ましい。
【0041】
(D)繊維状無機充填剤は、機械的特性の向上の観点から、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましい。一方、靭性の観点から、(D)繊維状無機充填剤の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、90質量部以下であることがより好ましく、80質量部以下であることがさらに好ましい。(D)繊維状無機充填剤の量は、例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、10~100質量部が好ましく、20~90質量部がより好ましく、30~80質量部がさらに好ましい。
【0042】
[他の成分]
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、必要に応じて、上記成分以外のその他の成分を含んでよい。その他の成分としては、板状無機充填剤、粒状無機充填剤、酸化防止剤、安定剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、結晶核剤、着色剤、難燃剤、難燃助剤等の添加剤が挙げられ、これらの1種以上を必要に応じて含有させることができる。
【0043】
<ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法>
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法は、特に限定されない。ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、熱可塑性樹脂組成物の製造方法として知られる種々の方法によって製造することができる。
【0044】
一実施形態において、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法は、上述の(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、上述の(B)エポキシ化合物、上述の(C)非晶性樹脂及び上述の(D)繊維状無機充填剤を含む混合物を溶融混練することを含む。この溶融混練の工程では、少なくとも、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)エポキシ化合物、(C)非晶性樹脂、及び(D)繊維状無機充填剤を含む混合物を溶融混練することができる。溶融混練の工程では、例えば、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)エポキシ化合物、(C)非晶性樹脂、及び(D)繊維状無機充填剤、並びに、必要に応じて、その他の成分を、溶融混練することができる。これらの成分は、一括または分割して溶融混練してもよいし、例えば、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)エポキシ化合物、(C)非晶性樹脂、及び(D)繊維状無機充填剤を溶融混練後にその他の成分を添加し、製造することができる。機械特性の関連から(D)繊維状無機充填剤はサイドフィーダーを用いて添加することがより好ましい。
【0045】
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の好適な製造方法としては、例えば、1軸又は2軸押出機等の溶融混練装置を用いて、各成分を溶融混練して押出しペレットとする方法が挙げられる。
【0046】
<成形品>
本発明の一実施形態は、上述のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いて得られる成形品に関する。
【0047】
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いて成形品を得る方法としては、特に限定はなく、公知の方法を採用することができる。例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を押出機に投入して溶融混練して押出してペレット化し、このペレットを、所定の金型を装備した射出成形機に投入し、射出成形することで作製することができる。
【0048】
本発明の実施形態は下記を含むが、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
<1> (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、(B)下記式(1)を満たすエポキシ化合物0.10~10質量部と、(C)非晶性樹脂15~80質量部と(D)繊維状無機充填剤とを含む、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(M×2)+N≦6 式(1)
(式(1)中、Mは、前記(B)エポキシ化合物の1分子中のエポキシ基数を表し、Nは前記(B)エポキシ化合物の1分子中の水酸基数を表す。)
<2> 前記(B)エポキシ化合物が非芳香族系エポキシ化合物である、<1>に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
<3> 前記(B)エポキシ化合物が脂環式エポキシ化合物である、<2>に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
<4> 前記(B)エポキシ化合物が水酸基を含まない、<1>~<3>のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
<5> 前記(B)エポキシ化合物の1分子中のエポキシ基数が2以上である、<1>~<4>のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
<6> <1>~<5>のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法であって、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と前記(B)エポキシ化合物と前記(C)非晶性樹脂と前記(D)繊維状無機充填剤とを含む混合物を溶融混練することを含む、方法。
<7> <1>~<6>のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いて得られる、成形品。
【実施例0049】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
<ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造>
下記表1に、各実施例及び比較例のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の組成を示す。下記表1に示す成分を、下記表1に示す部数(質量部)で混合し、30mmφのスクリュを有する2軸押出機(株式会社日本製鋼所製TEX30)にて、シリンダ温度260℃及びスクリュ回転数130rpmで溶融混練して押し出し、ペレット状のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を得た。
【0051】
表中の各成分の詳細は以下の通りである。
【0052】
(1)ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂
A:ポリプラスチックス株式会社製ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂(固有粘度:0.69dL/g)
【0053】
(2)エポキシ化合物
B1:2,2-ビス(3’,4’-エポキシシクロヘキシル)プロパン(分子量236)
B2:ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル(数平均分子量約830)
B3:三菱ケミカル株式会社製「エピコート1001」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、数平均分子量約900)
B4:三菱ケミカル株式会社製「エピコート1004」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、数平均分子量約1650)
B5:ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル
B6:フェノールノボラックエポキシ樹脂
【0054】
(3)非晶性樹脂
C1:テクノUMG株式会社製アクリロニトリルスチレン樹脂「AP-20」
C2:帝人株式会社製ポリカーボネート樹脂「パンライト L-1225」
【0055】
(4)繊維状無機充填剤
D1:日東紡績株式会社製ガラス繊維「CS 3J-948」(直径10μm)
D2:日東紡績株式会社製ガラス繊維「CSH-3PA830S」(長径/短径の比=4 短径7μm)
【0056】
(5)安定剤
E:BASFジャパン株式会社製「Irganox 1010」
【0057】
(6)滑剤
F:理研ビタミン株式会社製「B-74」(ジグリセリン脂肪酸エステル)
【0058】
表1中の各成分の含有量の単位は質量部である。
【0059】
<評価>
得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットを用いて以下の評価を行った。
【0060】
(1)異物評価(スクリュの黒色付着物)
上記で得られた各実施例及び比較例のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットを140℃で3時間乾燥させた後、以下の手順で溶融混練、及びスクリュの黒色付着物の目視観察を行った。
手順1:東洋精機社製ラボプラストミルを用いて、シリンダ温度275℃、スクリュ回転数20rpmにて、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を10分間押し出す。
手順2:シリンダ温度275℃のままスクリュを停止し、シリンダ内のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を120分間滞留させる。
手順3:シリンダ温度275℃、スクリュ回転数20rpmとして、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物にて10分間パージする。
手順4:シリンダ温度275℃、スクリュ回転数60rpmとして、ポリエチレン樹脂にて5分間パージする。
手順5:シリンダ温度200℃、スクリュ回転数60rpmとして、トーヨーカラー株式会社製パージ材「リオクリン-Z」にて5分間パージする。
手順6:スクリュを引き抜き、綿ネルで軽く拭き、パージ材を除去した後、スクリュの黒色付着物の量を目視観察する。
【0061】
手順6のスクリュの黒色付着物の目視観察において、スクリュの黒色付着物の量が著しく多いものを「C」、スクリュの黒色付着物の量が少ないものを「B」、スクリュの黒色付着物がほとんど見られないものを「A」とした。結果を表1に示す。
【0062】
(2)耐加水分解性
上記で得られた各実施例及び比較例のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットを、140℃で3時間乾燥させた後、シリンダ温度260℃、金型温度80℃の条件での射出成形により、ISO3167に準拠した多目的試験片を作製し、ISO527-1,2に準拠して島津製作所製万能試験機オートグラフを用いて引張強さ(MPa)の初期値を測定した。
上記で得た試験片を、プレッシャークッカーテスト(PCT)装置を用いて、121℃、100%RH下で48時間処理(湿熱処理)した後、上記測定方法と同様に引張強さ(MPa)を測定し、その測定値と初期値とから、初期値に対する湿熱処理後の引張強さの保持率(%)を求めた。結果(初期値に対する湿熱処理後の引張強さの保持率(%))を表1に示す。
【0063】
(平面度)
上記で得られた各実施例及び比較例のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットを、140℃で3時間乾燥させた後、シリンダ温度260℃、金型温度60℃、保圧力80MPa、サイドゲートで、120mm×120mm×2mmtの平板を射出成形して作製し、23℃×50%RHの空調室で24時間以上調整した後、
図1に示す9点をミツトヨ製画像測定装置により測定し、最高点と最低点の高さの差より平面度を求めた。表1に平面度(単位:mm)を示す。平面度は5mm以下のものが優れていると判断した。
【0064】
【0065】
表1に示されるように、実施例1~7は、異物評価においてスクリュの黒色付着物が少ないか、又はほとんど見られず、耐加水分解性も良好であり、平面度も良好であった。
これに対して、エポキシ化合物を含まない、またはエポキシ化合物の含有量が少ない比較例1及び3は、耐加水分解性で引張強さ保持率が低い値であった。また、非晶性樹脂を含まない、または非晶性樹脂の含有量が少ない比較例2~4は、平面度に劣っていた。また、式(1)を満たさない(すなわち、「(M×2)+N」の値が6より大きい)エポキシ化合物を含むポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が用いられた比較例5~7では、いずれも、異物評価において、スクリュの黒色付着物の量が著しく多かった。