(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076785
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置及びスイッチング制御回路
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188543
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 猛昭
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS04
5H730AS05
5H730BB43
5H730BB57
5H730DD04
5H730EE07
5H730FF02
5H730FG05
5H730FG11
(57)【要約】
【課題】過渡応答特性を改善したスイッチング電源装置及びスイッチング制御回路を提供する。
【解決手段】スイッチング制御回路2は、トランジスタM1がオフのときにフライバック電圧VFLBKに基づいてトランジスタM1のオンオフを制御する。エラーアンプ22は、フライバック電圧VFLBKに応じた帰還信号Vfbと基準電圧Vrefとの誤差信号Verr1を出力する。サンプルホールド回路23は、エラーアンプ22の出力に設けられ、トランジスタM1がオフのときにエラーアンプ22から出力される誤差信号Verr1を保持する。PWM制御回路26が、サンプルホールド回路23から出力される誤差信号Verr1に応じたデューティ比のPWM信号VpwmをトランジスタM1に対して出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を昇圧または降圧する一次巻線及び二次巻線が磁気結合されたトランスと、
前記一次巻線に供給される前記入力電圧をオンオフするトランジスタと、
前記トランジスタがオフのときに前記一次巻線に発生するフライバック電圧に基づいて前記トランジスタのオンオフを制御するスイッチング制御回路とを備えた
フライバック形式のスイッチング電源装置であって、
前記スイッチング制御回路は、
前記フライバック電圧に応じた帰還信号と基準電圧との誤差信号を出力するエラーアンプと、
前記エラーアンプの出力に設けられ、前記トランジスタがオフのときに前記エラーアンプから出力される前記誤差信号を保持するサンプルホールド回路と、
前記サンプルホールド回路から出力される前記誤差信号に応じたデューティ比のPWM信号を前記トランジスタに対して出力するPWM制御回路とを有する、
スイッチング電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング電源装置において、
前記スイッチング制御回路は、
前記フライバック電圧が印加され、前記フライバック電圧に応じた電流が流れる第1の抵抗と、
前記第1の抵抗に流れる電流が流れる第2の抵抗とを有し、
前記第2の抵抗に発生する電圧を前記帰還信号として、前記エラーアンプに入力する、
スイッチング電源装置。
【請求項3】
請求項1に記載のスイッチング電源装置において、
前記スイッチング制御回路は、
前記PWM制御回路の入力に接続された位相補償容量と、
前記帰還信号が前記基準電圧を含む一定範囲から外れたことを検出すると前記位相補償容量を充電または放電する充放電回路とを有する、
スイッチング電源装置。
【請求項4】
入力電圧を昇圧または降圧する一次巻線及び二次巻線が磁気結合されたトランスと、
前記一次巻線に供給される前記入力電圧をオンオフするトランジスタと、
前記トランジスタがオフのときに前記一次巻線に発生するフライバック電圧に基づいて前記トランジスタのオンオフを制御するスイッチング制御回路とを備えた
フライバック形式のスイッチング電源装置であって、
前記スイッチング制御回路は、
前記トランジスタがオフのときの前記フライバック電圧に応じた帰還信号を保持するサンプルホールド回路と、
前記サンプルホールド回路により保持された前記帰還信号と基準電圧との誤差信号を出力するエラーアンプと、
前記エラーアンプから出力される前記誤差信号に応じたデューティ比のPWM信号を前記トランジスタに対して出力するPWM制御回路と、
前記PWM制御回路の入力に接続された位相補償容量と、
前記帰還信号が前記基準電圧を含む一定範囲から外れたことを検出すると前記位相補償容量を充放電する充放電回路と、を有する
スイッチング電源装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のスイッチング電源装置において、
前記充放電回路は、
前記位相補償容量を充電する第1の電流源と、
前記位相補償容量を放電する第2の電流源と、
前記帰還信号と前記一定範囲の上限値とを比較し、比較結果を出力する第1のコンパレータと、
前記第1のコンパレータから前記帰還信号が前記上限値を越えたことを示す比較結果が出力されると、リセット信号が入力されるまで前記第1の電流源及び前記第2の電流源の一方を前記位相補償容量に接続する信号の出力を保持する第1のラッチ回路と、
前記帰還信号と前記一定範囲の下限値とを比較し、比較結果を出力する第2のコンパレータと、
前記第2のコンパレータから前記帰還信号が前記下限値を下回ったことを示す比較結果が出力されると、前記リセット信号が入力されるまで前記第1の電流源及び前記第2の電流源の他方を前記位相補償容量に接続する信号の出力を保持する第2のラッチ回路とを有し、
前記リセット信号は、前記トランジスタのオンオフ周期に同期している、
スイッチング電源装置。
【請求項6】
フライバック形式のスイッチング電源装置が備えたトランスの一次巻線に発生するフライバック電圧に基づいて、前記一次巻線に供給される入力電圧をオンオフするトランジスタのオンオフを制御するスイッチング制御回路であって、
前記フライバック電圧に応じた帰還信号と基準電圧との誤差信号を出力するエラーアンプと、
前記エラーアンプの出力に設けられ、前記トランジスタがオフのときに前記エラーアンプから出力される前記誤差信号を保持するサンプルホールド回路と、
前記サンプルホールド回路から出力される前記誤差信号に応じたデューティ比のPWM信号を前記トランジスタに対して出力するPWM制御回路とを備えた
スイッチング制御回路。
【請求項7】
フライバック形式のスイッチング電源装置が備えたトランスの一次巻線に発生するフライバック電圧に基づいて、前記一次巻線に供給される入力電圧をオンオフするトランジスタのオンオフを制御するスイッチング制御回路であって、
前記トランジスタがオフのときの前記フライバック電圧に応じた帰還信号を保持するサンプルホールド回路と、
前記サンプルホールド回路により保持された前記帰還信号と基準電圧との誤差信号を出力するエラーアンプと、
前記エラーアンプから出力される前記誤差信号に応じたデューティ比のPWM信号を前記トランジスタに対して出力するPWM制御回路と、
前記PWM制御回路の入力に接続された位相補償容量と、
前記帰還信号が前記基準電圧を含む一定範囲から外れたことを検出すると前記位相補償容量を充放電する充放電回路とを備えた
スイッチング制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置及びスイッチング制御回路、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フライバックコンバータとしては、トランスの一次巻線に発生するフライバック電圧を帰還信号とすることでトランスの二次巻線や補助巻線からの帰還信号を使用せずに、フィードバック制御可能な電源回路が開示されている(特許文献1)。
【0003】
このようなフライバック電圧を帰還信号とする電源回路として、
図4に示すものが考えられる。
図4に示すスイッチング制御IC100は、トランスTRの一次巻線L1に流れる電流をトランジスタM1によりオンオフし、その時間比、即ちオンデューティーを制御することで、二次巻線L2に出力される電流が変化し、出力電圧V
OUTが一定となるように制御を行う。
【0004】
ここでトランジスタM1がオフした際、ドレイン端、即ち一次巻線L1にフライバック電圧VFLBKが発生し、このフライバック電圧VFLBKは出力電圧VOUTと比例関係の電圧となる。
【0005】
そしてこのフライバック電圧VFLBKを抵抗RFで電流変換し、スイッチング制御IC100内へ取り込み、帰還信号Vfbとする。抵抗RFで変換された電流は、スイッチング制御IC100に外付けされた抵抗REIに流れることで、帰還信号Vfbへ変換される。
【0006】
帰還信号Vfbは、サンプルホールド回路101を介してエラーアンプ102の反転入力端子に入力される。エラーアンプ102が、サンプルホールドされた帰還信号Vfbと基準電圧Vrefと比較し、比較信号はPWMコンパレータ103へ入力される。エラーアンプ102の出力部には、位相補償用の位相補償容量CC、抵抗RCが接続される。PWMコンパレータ103は、鋸波とエラーアンプ出力信号を比較し、エラーアンプ出力信号に応じたデューティ比を持つPWM信号を生成し、トランジスタM1のゲートを駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、フライバック電圧VFLBKは、トランジスタM1のゲート駆動信号に変換され、出力電圧VOUTを制御する帰還動作を行うが、帰還経路中に次の2点の動作遅れ要素が存在する。
【0009】
1つ目の動作遅れ要素は、エラーアンプ102の入力に設けたサンプルホールド回路101である。通常、サンプルホールド回路101は、スイッチと、ホールドコンデンサで構成される。フライバック電圧VFLBKを変換した電流は、抵抗REIで電圧に変換されることを上述したが、この電圧をホールドコンデンサに充電する際に時間的遅れが発生する。この時の遅れ時間は抵抗REIとホールドコンデンサの時定数で概ね決まる。
【0010】
2つ目の動作遅れ要素は、エラーアンプ102の出力部へ接続された位相補償容量CCで、エラーアンプ102から出力される電流により、充放電される。この時の遅れ時間は位相補償容量CCの容量値とエラーアンプ102の出力電流で決まり、エラーアンプ102の出力電流Iの逆数1/Iと位相補償容量CCの積(CC/I)に比例した時間となる。
【0011】
以上のような時間的遅れ要素が帰還制御経路に含まれていると、電源としての応答性に問題が生じる。特に、入力電圧VINの電圧変動や負荷電流の変動が生じた場合には、帰還制御動作としてサンプルホールド回路101のホールドコンデンサの充放電、位相補償容量CCの充放電にかかる時間が長くなり、過渡応答特性の悪化が顕著となる、という問題があった。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、過渡応答特性を改善したスイッチング電源装置及びスイッチング制御回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するために、本発明に係るスイッチング電源装置及びスイッチング制御回路は、下記の[1]~[7]を特徴としている。
[1]
入力電圧を昇圧または降圧する一次巻線及び二次巻線が磁気結合されたトランスと、
前記一次巻線に供給される前記入力電圧をオンオフするトランジスタと、
前記トランジスタがオフのときに前記一次巻線に発生するフライバック電圧に基づいて前記トランジスタのオンオフを制御するスイッチング制御回路とを備えた
フライバック形式のスイッチング電源装置であって、
前記スイッチング制御回路は、
前記フライバック電圧に応じた帰還信号と基準電圧との誤差信号を出力するエラーアンプと、
前記エラーアンプの出力に設けられ、前記トランジスタがオフのときに前記エラーアンプから出力される前記誤差信号を保持するサンプルホールド回路と、
前記サンプルホールド回路から出力される前記誤差信号に応じたデューティ比のPWM信号を前記トランジスタに対して出力するPWM制御回路とを有する、
スイッチング電源装置。
[2]
[1]に記載のスイッチング電源装置において、
前記スイッチング制御回路は、
前記フライバック電圧が印加され、前記フライバック電圧に応じた電流が流れる第1の抵抗と、
前記第1の抵抗に流れる電流が流れる第2の抵抗とを有し、
前記第2の抵抗に発生する電圧を前記帰還信号として、前記エラーアンプに入力する、
スイッチング電源装置。
[3]
[1]に記載のスイッチング電源装置において、
前記スイッチング制御回路は、
前記PWM制御回路の入力に接続された位相補償容量と、
前記帰還信号が前記基準電圧を含む一定範囲から外れたことを検出すると前記位相補償容量を充電または放電する充放電回路とを有する、
スイッチング電源装置。
[4]
入力電圧を昇圧または降圧する一次巻線及び二次巻線が磁気結合されたトランスと、
前記一次巻線に供給される前記入力電圧をオンオフするトランジスタと、
前記トランジスタがオフのときに前記一次巻線に発生するフライバック電圧に基づいて前記トランジスタのオンオフを制御するスイッチング制御回路とを備えた
フライバック形式のスイッチング電源装置であって、
前記スイッチング制御回路は、
前記トランジスタがオフのときの前記フライバック電圧に応じた帰還信号を保持するサンプルホールド回路と、
前記サンプルホールド回路により保持された前記帰還信号と基準電圧との誤差信号を出力するエラーアンプと、
前記エラーアンプから出力される前記誤差信号に応じたデューティ比のPWM信号を前記トランジスタに対して出力するPWM制御回路と、
前記PWM制御回路の入力に接続された位相補償容量と、
前記帰還信号が前記基準電圧を含む一定範囲から外れたことを検出すると前記位相補償容量を充放電する充放電回路と、を有する
スイッチング電源装置。
[5]
[3]又は[4]に記載のスイッチング電源装置において、
前記充放電回路は、
前記位相補償容量を充電する第1の電流源と、
前記位相補償容量を放電する第2の電流源と、
前記帰還信号と前記一定範囲の上限値とを比較し、比較結果を出力する第1のコンパレータと、
前記第1のコンパレータから前記帰還信号が前記上限値を越えたことを示す比較結果が出力されると、リセット信号が入力されるまで前記第1の電流源及び前記第2の電流源の一方を前記位相補償容量に接続する信号の出力を保持する第1のラッチ回路と、
前記帰還信号と前記一定範囲の下限値とを比較し、比較結果を出力する第2のコンパレータと、
前記第2のコンパレータから前記帰還信号が前記下限値を下回ったことを示す比較結果が出力されると、前記リセット信号が入力されるまで前記第1の電流源及び前記第2の電流源の他方を前記位相補償容量に接続する信号の出力を保持する第2のラッチ回路とを有し、
前記リセット信号は、前記トランジスタのオンオフ周期に同期している、
スイッチング電源装置。
[6]
フライバック形式のスイッチング電源装置が備えたトランスの一次巻線に発生するフライバック電圧に基づいて、前記一次巻線に供給される入力電圧をオンオフするトランジスタのオンオフを制御するスイッチング制御回路であって、
前記フライバック電圧に応じた帰還信号と基準電圧との誤差信号を出力するエラーアンプと、
前記エラーアンプの出力に設けられ、前記トランジスタがオフのときに前記エラーアンプから出力される前記誤差信号を保持するサンプルホールド回路と、
前記サンプルホールド回路から出力される前記誤差信号に応じたデューティ比のPWM信号を前記トランジスタに対して出力するPWM制御回路とを備えた
スイッチング制御回路。
[7]
フライバック形式のスイッチング電源装置が備えたトランスの一次巻線に発生するフライバック電圧に基づいて、前記一次巻線に供給される入力電圧をオンオフするトランジスタのオンオフを制御するスイッチング制御回路であって、
前記トランジスタがオフのときの前記フライバック電圧に応じた帰還信号を保持するサンプルホールド回路と、
前記サンプルホールド回路により保持された前記帰還信号と基準電圧との誤差信号を出力するエラーアンプと、
前記エラーアンプから出力される前記誤差信号に応じたデューティ比のPWM信号を前記トランジスタに対して出力するPWM制御回路と、
前記PWM制御回路の入力に接続された位相補償容量と、
前記帰還信号が前記基準電圧を含む一定範囲から外れたことを検出すると前記位相補償容量を充放電する充放電回路とを備えた
スイッチング制御回路。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るスイッチング電源装置及びスイッチング制御回路によれば、過渡応答特性を改善したスイッチング電源装置及びスイッチング制御回路を提供することができる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第1実施形態における本発明のスイッチング電源装置としてのフライバックコンバータを示す回路図である。
【
図2】
図2は、第2実施形態における本発明のスイッチング電源装置としてのフライバックコンバータを示す回路図である。
【
図3】
図3は、第3実施形態における本発明のスイッチング電源装置としてのフライバックコンバータを示す回路図である。
【
図4】
図4は、従来のフライバックコンバータの一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
本発明に関する具体的な第1実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0018】
図1に示すスイッチング電源装置としてのフライバックコンバータ1は、入力端子INに供給される直流の入力電圧V
INをトランスTRにより昇圧または降圧して出力端子OUTから直流の出力電圧V
OUTとして出力する。
【0019】
フライバックコンバータ1は、一次巻線L1及び二次巻線L2が磁気結合されたトランスTRと、一次巻線L1に供給する入力電圧VINをオンオフするトランジスタM1と、二次巻線L2に流れる電流を整流するダイオードD1と、出力コンデンサCOUTと、トランジスタM1のオンオフを制御するスイッチング制御回路2とを備えている。
【0020】
一次巻線L1,二次巻線L2は、トランスTRのコアに巻き付けられている。一次巻線L1の一端には、入力端子INが接続されている。一次巻線L1の他端には、トランジスタM1のドレインが接続されている。トランジスタM1は、Nchの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM1は、ゲートがスイッチング制御IC10の端子T5に接続され、ソースがグランドに接続されている。
【0021】
二次巻線L2は、一端がダイオードD1のアノードに接続され、他端がグランドに接続されている。ダイオードD1は、二次巻線L2の一端と出力端子OUTとの間に接続されている。出力コンデンサCOUTは、出力端子OUTとグランドとの間に接続されている。
【0022】
上述したトランジスタM1をオンすると、入力電圧VINが一次巻線L1に供給され、一次巻線L1に電流が流れる。この電流によりトランスTRのコアに磁気エネルギーが蓄えられる。このとき、二次巻線L2には誘導起電力が発生するが、ダイオードD1により遮断され、二次巻線L2には電流が流れず、トランスTRのエネルギーは流出しない。また、このとき、出力コンデンサCOUTが図示しない負荷により放電される。
【0023】
次に、トランジスタM1をオフすると、トランスTRのコアに蓄えられた磁気エネルギーが二次巻線L2、ダイオードD1を介して電流として出力コンデンサCOUTに出力され、出力コンデンサCOUTが充電される。次に、再びトランジスタM1をオンして、これを繰り返す。すなわち、二次巻線L2から出力される電流は出力コンデンサCOUTにより平滑化されて直流の出力電圧VOUTとして出力される。
【0024】
スイッチング制御回路2は、トランジスタM1がオフのときにトランスTRの一次巻線L1に発生する誘導電圧であるフライバック電圧VFLBKが所望の電圧となるようにトランジスタM1のオンオフを制御する。フライバック電圧VFLBKは、出力電圧VOUTに応じた電圧である。
【0025】
スイッチング制御回路2は、電流変換回路21と、第2の抵抗としての抵抗REIと、エラーアンプ22と、サンプルホールド回路23と、電流変換回路24と、位相補償回路25と、PWM制御回路26とを備えている。本実施形態では、電流変換回路21を構成する後述するトランジスタM21,M22、電流源211、エラーアンプ22、サンプルホールド回路23、電流変換回路24、PWM制御回路26が、スイッチング制御IC(Integrated Circuit;集積回路)10内に内蔵される。また、電流変換回路21を構成する第1の抵抗としての抵抗RF、第2の抵抗としての抵抗REI、位相補償回路25が、スイッチング制御IC10外に外付けされている。
【0026】
電流変換回路21は、フライバック電圧VFLBKを電流に変換する。電流変換回路21は、抵抗RFと、ゲートが共通接続されたトランジスタM21,M22と、電流源211とを有している。抵抗RFは、一次巻線L1とトランジスタM1のドレインとの接続点と、スイッチング制御IC10の端子T1との間に接続されている。
【0027】
トランジスタM21,M22は、Pchの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM21のソースは、入力端子INに接続された端子T2に接続されている。トランジスタM21のドレインは、自身のゲートと電流源211に接続されている。トランジスタM22は、ソースが端子T1に接続され、ゲートがトランジスタM21のゲート,ドレインに接続されている。トランジスタM22のドレインは、端子T3に接続される。
【0028】
以上の構成によれば、端子T2の電圧は入力電圧VINと等しくなる。トランジスタM21,M22はゲートが共通接続されているため、電流源211と同等の電流がトランジスタM22に流れることで、トランジスタM21,M22のゲート・ソース電圧がほぼ等しくなり、端子T1の電圧は端子T2の電圧(=入力電圧VIN)と等しくなる。よって、抵抗RFの両端に、フライバック電圧VFLBKが印加され、抵抗RFには、フライバック電圧VFLBKに応じた電流が流れる。
【0029】
抵抗REIは、端子T3とグランドとの間に接続され、抵抗RFに流れる電流と同等の電流が流れる。抵抗REIの両端には、抵抗RFに流れる電流、すなわちフライバック電圧VFLBKに応じた電圧の帰還信号Vfbが発生する。
【0030】
トランジスタM1のドレインは、入力電圧VINにフライバック電圧VFLBKを加算した高電圧となる。このため、上述したように電流変換回路21によりフライバック電圧VFLBKを一旦電流に変換した後、抵抗REIにより再び電圧に変換することにより、スイッチング制御IC10に入力電圧VINを越える電圧が印加されないようにしている。
【0031】
エラーアンプ22は、非反転入力に端子T3が接続され、帰還信号Vfbが入力される。エラーアンプ22は、反転入力に基準電圧Vrefが入力される。エラーアンプ22は、帰還信号Vfbと基準電圧Vrefとの誤差に応じた誤差信号Verr1を出力する。基準電圧Vrefは、フライバック電圧VFLBKが所望の電圧となったときに抵抗REIに発生する電圧に設定されている。エラーアンプ22は、帰還信号Vfbが高くなるに従って、高くなる誤差信号Verr1を出力する。
【0032】
サンプルホールド回路23は、トランジスタM1がオフのときにオンされるスイッチSWと、ホールドコンデンサCSとを有している。スイッチSWは、エラーアンプ22の出力とホールドコンデンサCSの一端に接続されている。ホールドコンデンサCSの他端はグランドに接続されている。サンプルホールド回路23は、トランジスタM1がオフのときにエラーアンプ22から出力される誤差信号Verr1をホールド(保持)する。サンプルホールド回路23を設けることにより、トランジスタM1がオンされてフライバック電圧VFLBKが発生していない間も誤差信号Verr1を出力し続けることができる。
【0033】
電流変換回路24は、ホールドされた誤差信号Verr1を電流に変換し、位相補償回路25の位相補償容量CCを充放電する。位相補償回路25は、位相補償を行うと共に、電流変換回路24による充放電に応じた誤差信号Verr2を出力する。
【0034】
電流変換回路24は、電流源241と、トランジスタM3とを有している。トランジスタM3は、Nchの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM3は、ドレインが電流源241に接続され、ソースがグランドに接続されている。トランジスタM3は、ゲートがホールドコンデンサCSの一端に接続されている。トランジスタM3は、ドレインが端子T4に接続されている。位相補償回路25は、端子T4とグランドとの間に直列接続された抵抗RC、位相補償容量CCを有している。
【0035】
トランジスタM3は、誤差信号Verr1が高くなるに従って大きな電流が流れる。
帰還信号Vfbが基準電圧Vrefより高く、誤差信号Verr1が高いと、トランジスタM3に流れる電流が電流源241から供給される定電流より大きくなり、位相補償容量CCは放電される。位相補償容量CCが放電されると、端子T4から出力される誤差信号Verr2は低くなる。帰還信号Vfbが基準電圧Vrefより低く、誤差信号Verr1が低いと、トランジスタM3に流れる電流が電流源241から供給される定電流より小さくなり、位相補償容量CCは充電される。位相補償容量CCが充電されると、端子T4から出力される誤差信号Verr2は高くなる。
【0036】
PWM制御回路26は、誤差信号Verr2に応じたデューティ比のPWM信号VpwmをトランジスタM1のゲートに対して出力する。誤差信号Verr2は、上述したように誤差信号Verr1に応じた電圧である。
【0037】
PWM制御回路26は、PWMコンパレータ261と、一定周期の鋸波を出力する発振回路262とを有している。PWMコンパレータ261は、非反転入力に端子T4が接続され、誤差信号Verr2が入力される。PWMコンパレータ261は、反転入力にOSC262の出力が接続され、OSC262から出力される鋸波が入力される。PWMコンパレータ261の出力は、端子T5を介して、トランジスタM1のゲートが接続されている。
【0038】
PWMコンパレータ261は、誤差信号Verr2と鋸波とを比較して、誤差信号Verr2が鋸波より高い間にHiレベルとなるPWM信号Vpwmを出力する。すなわち、PWMコンパレータ261は、誤差信号Verr2が低くなるに従ってデューティが小さくなるPWM信号Vpwmを出力する。これにより、フライバック電圧VFLBKが所望の電圧を越えて高くなると、デューティが小さいPWM信号Vpwmが出力され、フライバック電圧VFLBKが低くなり、所望の電圧となる。
【0039】
また、PWMコンパレータ261は、誤差信号Verr2が高くなるに従ってデューティが大きくなるPWM信号Vpwmを出力する。これにより、フライバック電圧VFLBKが所望の電圧を下回ると、デューティが大きいPWM信号Vpwmが出力され、フライバック電圧VFLBKが上昇して、所望の電圧となる。
【0040】
上述した実施形態によれば、サンプルホールド回路23をエラーアンプ22の出力に設けている。ホールドコンデンサCSの充放電時定数は、エラーアンプ22の出力抵抗とホールドコンデンサCSの容量によって決まる。エラーアンプ22の出力抵抗は、外付けの抵抗REIに比べて小さく設計することができる(抵抗REIは、抵抗値を小さくするとエラーアンプ22に入力する電圧が低下してしまうため、小さく設計することができない)。
【0041】
また、ホールドコンデンサCSも外部からのノイズ影響などを受けにくいスイッチング制御IC10内に取り込むことで小さい容量で設計することができる。これらの結果、サンプルホールド回路23におけるホールドコンデンサCSの充放電時定数を下げることができ、過渡応答特性を改善できる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図2を参照して説明する。
図2においては、
図1について上述した第1実施形態で既に説明した部分と同等の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0043】
フライバックコンバータ1Bは、一次巻線L1及び二次巻線L2が磁気結合されたトランスTRと、トランジスタM1と、ダイオードD1と、出力コンデンサCOUTと、スイッチング制御回路2Bとを備えている。
【0044】
スイッチング制御回路2Bは、電流変換回路21、抵抗REIと、エラーアンプ22と、サンプルホールド回路23と、電流変換回路24と、位相補償回路25と、PWM制御回路26と、充放電回路27とを備えている。第2実施形態のスイッチング制御回路2Bと第1実施形態のスイッチング制御回路2とで異なる点は、充放電回路27を備えている点である。第2実施形態では、充放電回路27はスイッチング制御IC10Bに内蔵されている。
【0045】
スイッチング制御回路2Bは、第1実施形態のスイッチング制御回路2と同様に、帰還信号Vfbと基準電圧Vrefとが等しくなるようにトランジスタM1をオンオフ制御している。よって、定常状態では帰還信号Vfbと基準電圧Vrefとはほぼ等しく、帰還信号Vfbは、基準電圧Vrefを中心とした一定範囲内で変動している。入力電圧VINや負荷電流が変動すると、フライバック電圧VFLBKが大きく変動し、フライバック電圧VFLBKに応じた帰還信号Vfbも一定範囲を越えて大きく変動する。
【0046】
充放電回路27は、帰還信号Vfbが基準電圧Vrefを中心とした一定範囲から外れたことを検出すると、位相補償容量CCを放電または充電して、過渡応答特性を改善させる回路である。充放電回路27は、第1の電流源としての電流源271と、第2の電流源としての電流源272と、第1のコンパレータとしてのコンパレータ273と、第1のラッチ回路としてのラッチ回路274と、第2のコンパレータとしてのコンパレータ275と、インバータ276と、第2のラッチ回路としてのラッチ回路277とを有している。
【0047】
電流源271は、端子T4と電源との間に設けられている。電流源271を端子T4に接続すると、位相補償容量CCを電流ICHで充電する。電流源272は、端子T4とグランドとの間に設けられている。電流源272を端子T4に接続すると、位相補償容量CCを電流IDCHで放電する。
【0048】
コンパレータ273は、帰還信号Vfbと一定範囲の上限値VROVとを比較する。コンパレータ273は、非反転入力に帰還信号Vfbが入力され、反転入力に上限値VROVが入力されている。コンパレータ273は、帰還信号Vfbが上限値VROVよりも高い場合、Hiレベルの比較信号を出力し、帰還信号Vfbが上限値VROVよりも低い場合、Loレベルの比較信号を出力する。
【0049】
ラッチ回路274は、コンパレータ273から帰還信号Vfbが上限値VROVを越えたことを示す比較結果(Hiレベルの比較信号)が出力されると、リセット信号RSTが入力されるまでHiレベルの信号の出力を保持する。ラッチ回路274からHiレベルの信号が出力されると、電流源272が端子T4に接続され、位相補償容量CCが放電される。リセット信号RSTは、トランジスタM1のオンオフ周期に同期しており、ラッチ回路274はトランジスタM1がオフするとリセットされる。
【0050】
よって、帰還信号Vfbが上限値VROVを越えると、位相補償容量CCは、電流変換回路24による放電に加えて、電流源272からの電流IDCHによっても放電される。このため、電流IDCHによる放電分、誤差信号Verr2が迅速に低下し、PWM信号Vpwmのデューティを迅速に小さくすることができるため、過渡応答特性を改善できる。
【0051】
コンパレータ275は、帰還信号Vfbと一定範囲の下限値VRLVとを比較する。コンパレータ275は、非反転入力に帰還信号Vfbが入力され、反転入力に下限値VRLVが入力されている。コンパレータ275は、帰還信号Vfbが下限値VRLVよりも高い場合、Hiレベルの比較信号を出力し、帰還信号Vfbが下限値VRLVよりも低い場合、Loレベルの比較信号を出力する。
【0052】
インバータ276は、コンパレータ275の出力を反転させて、ラッチ回路277に入力する。ラッチ回路277は、インバータ276から帰還信号Vfbが下限値VRLVを越えたことを示す比較結果(Hiレベルの比較信号)が出力されると、リセット信号RSTが入力されるまでHiレベルの信号の出力を保持する。ラッチ回路277からHiレベルの信号が出力されると、電流源271が端子T4に接続され、位相補償容量CCが充電される。リセット信号RSTは、トランジスタM1のオンオフ周期に同期しており、ラッチ回路277はトランジスタM1がオフするとリセットされる。
【0053】
よって、帰還信号Vfbが下限値VRLVを越えると、位相補償容量CCは、電流変換回路24による充電に加えて、電流源271からの電流ICHによっても充電される。このため、電流ICHによる充電分、誤差信号Verr2が迅速に上昇し、PWM信号Vpwmのデューティを迅速に大きくすることができるため、過渡応答特性を改善できる。
【0054】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について
図3を参照して説明する。
図3においては、
図2について上述した第2実施形態で既に説明した部分と同等の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0055】
フライバックコンバータ1Cは、一次巻線L1及び二次巻線L2が磁気結合されたトランスTRと、トランジスタM1と、ダイオードD1と、出力コンデンサCOUTと、スイッチング制御回路2Cとを備えている。
【0056】
スイッチング制御回路2Cは、電流変換回路21、抵抗REIと、エラーアンプ22Cと、サンプルホールド回路23Cと、PWM制御回路26と、充放電回路27とを備えている。第2実施形態のスイッチング制御回路2Bと、第3実施形態のスイッチング制御回路2Cとの異なる点は、サンプルホールド回路23Cの配置位置である。サンプルホールド回路23Cは、スイッチング制御IC10Cに内蔵されている。
【0057】
サンプルホールド回路23Cは、トランジスタM1がオフのときの帰還信号Vfbをホールドしてエラーアンプ22Cに出力する回路である。サンプルホールド回路23Cは、
図3からは省略しているが、第1実施形態と同様に、スイッチSWと、ホールドコンデンサCSとから構成されている。
【0058】
エラーアンプ22Cは、第1、第2実施形態のエラーアンプ22と電流変換回路24とから構成され、帰還信号Vfbが基準電圧Vrefより高いと、位相補償容量CCを放電し、帰還信号Vfbが基準電圧Vrefより低いと、位相補償容量CCを充電する。
【0059】
サンプルホールド回路23Cの配置位置を変えても、充放電回路27により過渡応答特性を改善できる。
【0060】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0061】
上述した実施形態では、電流変換回路24は、電源側に電流源241を接続し、グランド側にトランジスタM3を接続していたが、これに限ったものではない。電源側にトランジスタM3を接続し、グランド側に電流源241を接続してもよい。
【0062】
上述した実施形態では、エラーアンプ22の非反転入力に帰還信号Vfbを入力し、反転入力に基準電圧Vrefを入力し、PWMコンパレータ261の非反転入力に誤差信号Verr2を入力し、反転入力に鋸波を入力していたが、これに限ったものではない。エラーアンプ22の反転入力に帰還信号Vfbを入力し、非反転入力に基準電圧Vrefを入力し、PWMコンパレータ261の反転入力に誤差信号Verr2を入力し、非反転入力に鋸波を入力してもよい。
【0063】
上述したようにエラーアンプ22、PWMコンパレータ261の入力を逆にした場合、ラッチ回路274から出力される信号により、電流源271が端子T4に接続され、位相補償容量CCが充電されるようにし、ラッチ回路277から出力される信号により電流源272が端子T4に接続され、位相補償容量CCが放電されるようにする。すなわち、充放電回路27は、帰還信号Vfbが上昇するとPWM信号Vpwmのデューティが迅速に小さくなるように位相補償容量CCを放電し、帰還信号Vfbが低下するとPWM信号Vpwmのデューティが迅速に大きくなるように位相補償容量CCを充電する構成となっていればよい。
【0064】
また、トランスTRの二次巻線L2は複数あっても良い。トランスTRの二次巻線L2が複数存在する場合でも、一次巻線L1へ入力電圧VINが供給されていない間に発生するフライバック電圧VFLBKを帰還信号Vfbとしてフィードバック制御を行うことで、上述の実施形態と同等の動作が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1,1B,1C フライバックコンバータ(スイッチング電源装置)
2,2B,2C スイッチング制御回路
22,22C エラーアンプ
23,23C サンプルホールド回路
26 PWM制御回路
27 充放電回路
271 電流源(第1の電流源)
272 電流源(第2の電流源)
273 コンパレータ(第1のコンパレータ)
274 ラッチ回路(第1のラッチ回路)
275 コンパレータ(第2のコンパレータ)
277 ラッチ回路(第2のラッチ回路)
CC 位相補償容量
M1 トランジスタ
TR トランス
L1 一次巻線
L2 二次巻線
REI 抵抗(第2の抵抗)
RF 抵抗(第1の抵抗)
RST リセット信号
VROV 上限値
VRLV 下限値
Verr1,Verr2 誤差信号
Vfb 帰還信号
VFLBK フライバック電圧
VIN 入力電圧
Vpwm PWM信号
Vref 基準電圧