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特開2024-76870ポリウレタン接着剤用組成物、自動車構造用接着剤、および硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076870
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】ポリウレタン接着剤用組成物、自動車構造用接着剤、および硬化物
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20240530BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20240530BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20240530BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20240530BHJP
   C08G 18/65 20060101ALI20240530BHJP
   C08G 18/12 20060101ALI20240530BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
C09J175/04
C08G18/40 009
C08G18/48
C08G18/44
C08G18/65 011
C08G18/12
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188674
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】篠塚 祐志
【テーマコード(参考)】
4J034
4J040
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034BA08
4J034CA04
4J034CC03
4J034CC26
4J034CC45
4J034CC61
4J034CC62
4J034CC65
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DF02
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG05
4J034DG22
4J034HA01
4J034HA07
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC09
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC45
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC54
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA42
4J034QB14
4J034RA08
4J040EF051
4J040EF281
4J040HB07
4J040JA02
4J040JB02
4J040KA17
4J040MA02
4J040MA10
4J040NA16
(57)【要約】
【課題】高い降伏点伸度を発揮し得るポリウレタン接着剤用組成物、自動車構造用接着剤および硬化物を提供すること。
【解決手段】ポリウレタン樹脂形成性組成物を含み、該組成物は、硬化剤(A)と、イソシアネート基末端プレポリマー(B)とを含み、前記硬化剤(A)は、脂肪族/脂環式ジオール(a-1)と、側鎖に環構造を有するジオール(a-2)と、任意成分の架橋剤(a-3)とを含み、前記プレポリマー(B)は、Mn2500以上のポリカーボネートポリオール(b-1)と、Mn3500以下のポリエーテルポリオール(b-2)と、ポリイソシアネート(b-3)と、任意成分である架橋剤(b-4)との反応生成物であり、前記組成物が前記(a-3)および/または(b-4)を含み、前記ジオール(a-2)は式(1)であり、硬化した樹脂の架橋密度は250mmol/kg以上であり、ウレタン基濃度は2600~4300mmol/kgである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂形成性組成物を含み、
該ポリウレタン樹脂形成性組成物は、
硬化剤(A)と、
イソシアネート基末端プレポリマー(B)と、を含み、
前記硬化剤(A)は、
脂肪族もしくは脂環式ジオール(a-1)と、
側鎖に環構造を有するジオール(a-2)と、
任意成分である架橋剤(a-3)と、を含み、
前記イソシアネート基末端プレポリマー(B)は、
数平均分子量2500以上のポリカーボネートポリオール(b-1)と、
数平均分子量3500以下のポリエーテルポリオール(b-2)と、
ポリイソシアネート(b-3)と、
任意成分である架橋剤(b-4)と、の反応生成物であり、
前記ポリウレタン樹脂形成性組成物が、前記架橋剤(a-3)および前記架橋剤(b-4)のうちの少なくともいずれか一方を含み、
前記ジオール(a-2)は、式(1)で表されるジオールであり、
前記ポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られる樹脂の架橋密度は、250mmol/kg以上であり、
前記ポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られる樹脂のウレタン基濃度は、2600mmol/kg以上4300mmol/kg以下である、ポリウレタン接着剤用組成物:
【化1】
式中、
Lは、
窒素原子、炭素原子、酸素原子、水素原子から選ばれる1種以上からなり、
直鎖である、または、分岐構造を有し、かつ、
直鎖部分の炭素数が10以下である;
Rは、脂環構造、または、芳香環もしくはヘテロ芳香環を有する。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られる樹脂のウレタン基濃度が2600mmol/kg以上4300mmol/kg以下である、請求項1に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
【請求項3】
前記ポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られる樹脂のウレタン基濃度が2800mmol/kg以上4100mmol/kg以下である、請求項2に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
【請求項4】
前記ポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られる樹脂の架橋密度は、250mmol/kg以上1000mmol/kg以下である、請求項1または2に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
【請求項5】
前記ポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られる樹脂の架橋密度は、300mmol/kg以上700mmol/kg以下である、請求項4に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
【請求項6】
Rは、脂環構造、または、芳香環を有する炭化水素基である、請求項1または2に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
【請求項7】
前記ジオール(a-2)の含有量が、前記ポリウレタン樹脂形成性組成物中、40mmol/kg以上600mmol/kg以下である、請求項1または2に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
【請求項8】
溶剤の含有量が1.0質量%以下である、請求項1または2に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
【請求項9】
前記硬化剤(A)および前記イソシアネート基末端プレポリマー(B)のうちの少なくとも一方が、25℃および1気圧で液状である、請求項1または2に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
【請求項10】
25℃および1気圧で液状である、請求項1または2に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
【請求項11】
請求項1または2に記載のポリウレタン接着剤用組成物を含む、自動車構造用接着剤。
【請求項12】
請求項1または2に記載のポリウレタン接着剤用組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリウレタン接着剤用組成物、自動車構造用接着剤、および硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、建築、船舶等の様々な分野において、種々の材料を接着し得る接着剤としてウレタン系接着剤が注目されている。
例えば特許文献1は、ポリイソシアネートと特定の分子量のポリオールとを反応させて得られるプレポリマー及び特定の配合量のフィラーを含有する第1液と、特定の分子量のポリオール及び触媒を含有する第2液とからなり、第1液中のポリオール及び第2液中のポリオールに由来する水酸基のモル数が特定の関係を有するウレタン系接着剤組成物を開示している。特許文献1によれば、かかるウレタン系接着剤組成物は、良好な接着性能が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/047962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、降伏点伸度は可逆的な変化領域の広さを示す指標として考えられる。すなわち、降伏点伸度が大きいほど、大きな変位となった後にも元の状態に戻ることができるといえる。
ここで、ウレタン系接着剤においても降伏点伸度が大きいほど、大きな変位となった後にも元の接着状態に戻ることができる。このため、高い降伏点伸度を発揮し得るウレタン系接着剤は、例えば、自動車の振動により接着面に作用する応力や複数の自動車構造部材の熱膨張率の違いにより接着面に発生する応力等の影響を受ける自動車構造用などの分野においても好適に適用可能であるといえる。
しかしながら、特許文献1に記載のウレタン系接着剤組成物では、降伏点伸度(降伏ひずみ)が充分ではなく、降伏点伸度がさらに高いウレタン系接着剤用組成物が求められている。
【0005】
そこで、本開示の一態様は、高い降伏点伸度を発揮し得るポリウレタン接着剤用組成物、自動車構造用接着剤、およびポリウレタン接着剤用組成物の硬化物を提供することに向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、以下の(1)~(12)の各態様が提供される。
(1) ポリウレタン樹脂形成性組成物を含み、
該ポリウレタン樹脂形成性組成物は、
硬化剤(A)と、
イソシアネート基末端プレポリマー(B)と、を含み、
前記硬化剤(A)は、
脂肪族もしくは脂環式ジオール(a-1)と、
側鎖に環構造を有するジオール(a-2)と、
任意成分である架橋剤(a-3)と、を含み、
前記イソシアネート基末端プレポリマー(B)は、
数平均分子量2500以上のポリカーボネートポリオール(b-1)と、
数平均分子量3500以下のポリエーテルポリオール(b-2)と、
ポリイソシアネート(b-3)と、
任意成分である架橋剤(b-4)と、の反応生成物であり、
前記ポリウレタン樹脂形成性組成物が、前記架橋剤(a-3)および前記架橋剤(b-4)のうちの少なくともいずれか一方を含み、
前記ジオール(a-2)は、式(1)で表されるジオールであり、
前記ポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られる樹脂の架橋密度は、250mmol/kg以上であり、
前記ポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られる樹脂のウレタン基濃度は、2600mmol/kg以上4300mmol/kg以下である、ポリウレタン接着剤用組成物:
【0007】
【化1】
【0008】
式中、
Lは、
窒素原子、炭素原子、酸素原子、水素原子から選ばれる1種以上からなり、
直鎖である、または、分岐構造を有し、かつ、
直鎖部分の炭素数が10以下である;
Rは、脂環構造、または、芳香環もしくはヘテロ芳香環を有する。
(2) 前記ポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られる樹脂のウレタン基濃度が2600mmol/kg以上4300mmol/kg以下である、(1)に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
(3) 前記ポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られる樹脂のウレタン基濃度が2800mmol/kg以上4100mmol/kg以下である、(2)に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
(4) 前記ポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られる樹脂の架橋密度は、250mmol/kg以上1000mmol/kg以下である、(1)または(2)に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
(5) 前記ポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られる樹脂の架橋密度は、300mmol/kg以上700mmol/kg以下である、(4)に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
(6) Rは、脂環構造、または、芳香環を有する炭化水素基である、(1)または(2)に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
(7) 前記ジオール(a-2)の含有量が、前記ポリウレタン樹脂形成性組成物中、40mmol/kg以上600mmol/kg以下である、(1)または(2)に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
(8) 溶剤の含有量が1.0質量%以下である、(1)または(2)に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
(9) 前記硬化剤(A)および前記イソシアネート基末端プレポリマー(B)のうちの少なくとも一方が、25℃および1気圧で液状である、(1)または(2)に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
(10) 25℃および1気圧で液状である、(1)または(2)に記載のポリウレタン接着剤用組成物。
(11) (1)または(2)に記載のポリウレタン接着剤用組成物を含む、自動車構造用接着剤。
(12) (1)または(2)に記載のポリウレタン接着剤用組成物の硬化物。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、高い降伏点伸度を発揮し得るポリウレタン接着剤用組成物、自動車構造用接着剤、およびポリウレタン接着剤用組成物の硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の各態様を実施するための例示的な実施形態を詳細に説明する。
【0011】
[ポリウレタン接着剤用組成物]
本開示の一態様にかかるポリウレタン接着剤用組成物は、
ポリウレタン樹脂形成性組成物を含み、
該ポリウレタン樹脂形成性組成物は、
硬化剤(A)と、
イソシアネート基末端プレポリマー(B)と、を含み、
前記硬化剤(A)は、
脂肪族もしくは脂環式ジオール(a-1)と、
側鎖に環構造を有するジオール(a-2)と、
任意成分である架橋剤(a-3)と、を含み、
前記イソシアネート基末端プレポリマー(B)は、
数平均分子量2500以上のポリカーボネートポリオール(b-1)と、
数平均分子量3500以下のポリエーテルポリオール(b-2)と、
ポリイソシアネート(b-3)と、
任意成分である架橋剤(b-4)と、の反応生成物であり、
前記ポリウレタン樹脂形成性組成物が、前記架橋剤(a-3)および前記架橋剤(b-4)のうちの少なくともいずれか一方を含み、
前記ジオール(a-2)は、式(1)で表されるジオールであり、
前記ポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られる樹脂の架橋密度は、250mmol/kg以上であり、
前記ポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られる樹脂のウレタン基濃度は、2600mmol/kg以上4300mmol/kg以下である、ポリウレタン接着剤用組成物である:
【0012】
【化2】
【0013】
式中、
Lは、
窒素原子、炭素原子、酸素原子、水素原子から選ばれる1種以上からなり、
直鎖である、または、分岐構造を有し、かつ、
直鎖部分の炭素数が10以下である;
Rは、脂環構造、または、芳香環もしくはヘテロ芳香環を有する。
【0014】
[[ポリウレタン樹脂形成性組成物]]
ポリウレタン樹脂形成性組成物は、
硬化剤(A)と、
イソシアネート基末端プレポリマー(B)と、を含む。
【0015】
[[[硬化剤(A)]]]
硬化剤(A)は、
脂肪族もしくは脂環式ジオール(a-1)と、
側鎖に環構造を有するジオール(a-2)と、
任意成分である架橋剤(a-3)と、を含む。
【0016】
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ネオペンチルグリコール;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール;等が挙げられる。
【0017】
脂環式ジオールとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、イソヘキシド、トリシクロ5.2.1.02,6デカン-4,8-ジメタノール、およびこれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0018】
ジオール(a-1)は、これらの1種のみを含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
【0019】
ジオール(a-1)は、数平均分子量が500g/mol以下であることが好ましく、250g/mol以下であることがより好ましい。
【0020】
ジオール(a-1)の含有量は、ポリウレタン樹脂形成性組成物中、80mmol/kg以上2000mmol/kg以上であることが好ましく、200mmol/kg以上1500mmol/kg以下であることがより好ましい。
【0021】
なお、本開示における数平均分子量は、高精度に測定できる測定方法で得られるものであればよく、例えば、JIS K 0070-1992に準拠した方法(滴定法)で測定したものを採用できる。
【0022】
硬化剤(A)は、側鎖に環構造を有するジオール(a-2)を含む。ジオール(a-2)は、式(1)で表されるジオールである:
【0023】
【化3】
【0024】
式中、
Lは、
窒素原子、炭素原子、酸素原子、水素原子から選ばれる1種以上からなり、
直鎖である、または、分岐構造を有し、かつ、
直鎖部分の炭素数が10以下である;
Rは、脂環構造、または、芳香環もしくはヘテロ芳香環を有する。
【0025】
Lは、直鎖構造であることが好ましい。
【0026】
Rは、脂環構造、または、芳香環を有する炭化水素基であることが好ましい。Rの環構造を形成する炭素数は、10以下であることが好ましい。
【0027】
式(1)で表されるジオールとしては、例えば、3-フェニル-1,5-ペンタンジオール、2-(フェニルメチル)-1,4-ブタンジオール、2,4-ジメチル-3-フェニル-1,5-ペンタンジオール、3-フェニル-1,4-ペンタンジオール、2-(2-フェニルエチル)-1,3プロパンジオール、3-メチル-3-フェニル-1,5-ペンタンジオール、3-(4-メチルフェニル)-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-3-(4-メチルフェニル)-1,5-ペンタンジオール、2-[2-(4-エチルフェニル)エチル]-1,3-プロパンジオール、2-[4-(1-メチルエチル)フェニル]-1,4-ブタンジオール、2,2’-(p-トリルイミノ)ジエタノール、(2,2’-[(4-メチルシクロヘキシル)イミノ]ビス[エタノール])、(2,2’-[(4-エチルシクロヘキシル)アザンジイル]ジエタノール)、(3-[(2-ヒドロキシエチル)(4-メチルシクロヘキシル)アミノ]-1-プロパノール)、等が挙げられる。
【0028】
ジオール(a-2)の含有量は、ポリウレタン樹脂形成性組成物中、40mmol/kg以上600mmol/kg以上であることが好ましく、60mmol/kg以上500mmol/kg以下であることがより好ましい。
【0029】
硬化剤(A)は、任意成分である架橋剤(a-3)を含む。すなわち、硬化剤(A)は、架橋剤(a-3)をさらに含んでいてもよい。
架橋剤(a-3)としては、例えば、平均官能基数が3以上のポリオールが挙げられる。
平均官能基数が3以上のポリオールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、N,N-ビスヒドロキシプロピル-N-ヒドロキシエチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミンプロピレンオキサイド変性体のモノマーポリオール、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性体のモノマーポリオール、ペンタエリスリトールプロピレンオキシド変性体が挙げられる。また、これらの他にも、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオールを開始剤として、ε-カプロラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトンなどの環状エステル類を開環付加させることにより得られる、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。
【0030】
架橋剤(a-3)は、これらの1種のみを含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
【0031】
[[[イソシアネート基末端プレポリマー(B)]]]
イソシアネート基末端プレポリマー(B)は、
数平均分子量2500以上のポリカーボネートポリオール(b-1)と、
数平均分子量3500以下のポリエーテルポリオール(b-2)と、
ポリイソシアネート(b-3)と、
任意成分である架橋剤(b-4)と、の反応生成物である。
換言すると、イソシアネート基末端プレポリマー(B)は、
数平均分子量2500以上のポリカーボネートポリオール(b-1)の反応残基と、
数平均分子量3500以下のポリエーテルポリオール(b-2)の反応残基と、
ポリイソシアネート(b-3)の反応残基と、
任意成分である架橋剤(b-4)の反応残基と、を含む反応生成物である。
【0032】
数平均分子量2500以上のポリカーボネートポリオール(b-1)としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール等のポリオール類の1種類以上と;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート類、ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジアントリルカーボネート、ジフェナントリルカーボネート、ジインダニルカーボネート等のカーボネート類の1種類以上と;の脱アルコール反応や脱フェノール反応から得られるものが挙げられる。
【0033】
ポリカーボネートポリオール(b-1)の数平均分子量は、2500以上10000以下であることが好ましく、2500以上7000以下であることがさらに好ましい。
【0034】
ポリカーボネートポリオール(b-1)の含有量は、ポリウレタン樹脂形成性組成物中、10mmol/kg以上300mmol/kg以下であり、50mmol/kg以上250mmol/kg以下であることがより好ましい。
【0035】
数平均分子量3500以下のポリエーテルポリオール(b-2)としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールA、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール等の低分子ポリオール類;または、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン等の低分子ポリアミン類;等のような活性水素基を2個有する化合物を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のようなアルキレンオキサイド類を付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。また、ポリエーテルポリオールとしては、例えば、メチルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、フェニルグリシジルエーテル等のアリールグリシジルエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテルモノマーを開環重合することで得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0036】
ポリエーテルポリオール(b-2)の数平均分子量は、650以上3500以下であることが好ましく、850以上3500以下であることがより好ましく、1000以上3500以下であることがさらに好ましい。
【0037】
ポリエーテルポリオール(b-2)の含有量は、ポリウレタン樹脂形成性組成物中、5mmol/kg以上120mmol/kg以下であり、10mmol/kg以上100mmol/kg以下であることがより好ましい。
【0038】
ポリイソシアネート(b-3)としては、分子中に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートが挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、有機ポリイソシアネートを用いることができ、有機ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、反応性や粘度の観点から、芳香族ポリイソシアネートを用いることが好ましい。また、ポリイソシアネート(b-3)は、少なくとも、分子中に2つのイソシアネート基を有するポリイソシアネートを含むことが好ましい。
【0039】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート/2,6-トリレンジイソシアネート混合物、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート/4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート混合物、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート/4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート混合物、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート/2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート/4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート混合物、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。
【0040】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート/1,4-キシリレンジイソシアネート混合物、1,3-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、1,3-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン/1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン混合物、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン等が挙げられる。
【0041】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、2,2’-ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3-ブタジエン-1,4-ジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアネート-5-イソシアネートメチルオクタン、ビス(イソシアネートエチル)カーボネート、ビス(イソシアネートエチル)エーテル、1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテル-α,α’-ジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、2-イソシアネートエチル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート、2-イソシアネートプロピル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート等が挙げられる。
【0042】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンジイソシアネート、2,2’-ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ビス(4-イソシアネート-n-ブチリデン)ペンタエリスリトール、水素化された水添ダイマー酸ジイソシアネート、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-5-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-6-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-5-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-6-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-5-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-6-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-5-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-6-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-〔2.2.1〕-ヘプタン、2,5-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、水素化された水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素化された水添トリレンジイソシアネート、水素化された水添キシレンジイソシアネート、水素化された水添テトラメチルキシレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0043】
ポリイソシアネートは、これらの中の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
ポリイソシアネート(b-3)の含有量は、ポリウレタン樹脂形成性組成物中、500mmol/kg以上2500mmol/kg以下であることが好ましく、750mmol/kg以上2500mmol/kg以下であることがより好ましい。
【0045】
イソシアネート基末端プレポリマー(B)は、(b-1)~(b-3)に加えて、任意成分である架橋剤(b-4)を構成成分とする反応生成物を含む。すなわち、イソシアネート基末端プレポリマー(B)は、架橋剤(b-4)の反応残基をさらに有する反応生成物であってもよい。
架橋剤(b-4)としては、例えば、架橋剤(a-3)と同様のものが挙げられる。ただし、架橋剤(b-4)は、前記ポリカーボネートオール(b-1)、前記ポリエーテルポリオール(b-2)、および前記ポリイソシアネート(b-3)には該当しないものである。したがって、例えば分子中に3つ以上のイソシアネート基を有する(平均官能基数が3以上の)ポリイソシアネートは、架橋構造をもたらすものであるが、本態様においては架橋剤(b-4)には含まれず、ポリイソシアネート(b-2)に含まれる。なお、分子中に3つのイソシアネート基を有するポリイソシアネートは、架橋剤(b-4)には含まれないが、後述する架橋密度に寄与するものである。
【0046】
ここで、架橋剤は、以下の(1)および(2)のいずれか一方の態様でポリウレタン接着剤用組成物中に含有されていてもよく、(1)および(2)のいずれにも該当する態様でポリウレタン接着剤用組成物中に含有されていてもよい。
(1)硬化剤(A)が、架橋剤(a-3)をさらに含む。
(2)イソシアネート基末端プレポリマー(B)が、
数平均分子量2500以上のポリカーボネートオール(b-1)と、
数平均分子量3500以下のポリエーテルポリオール(b-2)と、
ポリイソシアネート(b-3)と、
架橋剤(b-4)と、の反応生成物である。
ただし、ポリウレタン樹脂形成性組成物は、架橋剤(a-3)および架橋剤(b-4)のうちの少なくともいずれか一方を含む。
【0047】
ポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られる樹脂の架橋密度は、ポリウレタン樹脂形成性組成物中、250mmol/kg以上であり、250mmol/kg以上1000mmol/kg以下であることが好ましく、300mmol/kg以上700mmol/kg以下であることが特に好ましい。架橋密度がこの範囲であると、降伏点伸度が高く、優れた柔軟性を有するため好ましい。
【0048】
ここで、架橋密度は、樹脂中の架橋密度を測定装置で測定して得られた値であってもよいし、ポリウレタン樹脂形成性組成物中の架橋を形成する官能基(未反応)と、すでに架橋を形成している官能基(反応残基)と、の合計として算出して得られた値であってもよい。
したがって、未反応の3官能のポリオール(例えば、グリセリン)を例に挙げて説明すると、1分子中の1個の水酸基が架橋を形成し、残りの2個の水酸基は架橋には寄与しないものであるため、この場合であれば架橋を形成する官能基(未反応)が1個である。また、すでに架橋を形成している3官能のポリオールを例に挙げて説明すると、1分子中の1個の水酸基がすでに架橋を形成した反応残基として存在し、残りの2個の水酸基は架橋を形成しない反応残基として存在しているため、この場合であれば、すでに架橋を形成している官能基が1個である。すなわち、3官能のポリオールの場合、架橋密度とは、3官能のポリオールが1つの架橋を形成する官能基(未反応)を、または、1つのすでに架橋を形成している官能基を有するため、ポリウレタン樹脂形成性組成物中の3官能のポリオールの含有量と同義である。
ただし、架橋を形成し得る官能基が過剰量である場合、その架橋を形成し得る官能基の一部または全部が未反応のまま樹脂中に残存するため、当該未反応のまま樹脂中に残存する官能基は、架橋密度の算出からは除外する。
【0049】
イソシアネート基末端プレポリマー(B)が、
数平均分子量2500以上のポリカーボネートポリオール(b-1)と、
数平均分子量3500以下のポリエーテルポリオール(b-2)と、
ポリイソシアネート(b-3)と、
架橋剤(b-4)と、
数平均分子量が250以上1000未満のジオール(b-5)と、の反応生成物であることがより好ましい。
ジオール(b-5)としては、例えば、ポリカーボネートポリオール(b-1)と同様であって、数平均分子量が250以上1000未満であるジオールが挙げられる。
【0050】
イソシアネート基末端プレポリマー(B)は、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、イソシアネート基末端プレポリマー(B)および後述する硬化剤(A)が有する官能基と反応しないもの(例えば、フィラー、着色剤、帯電防止剤、防腐剤)が好ましい。
【0051】
ポリオール(b-1)およびポリイソシアネート(b-2)のうちの少なくとも一方が、25℃および1気圧で液状であることが好ましい。
【0052】
硬化剤(A)およびイソシアネート基末端プレポリマー(B)のうちの少なくとも一方が、25℃および1気圧で液状であることが好ましい。
【0053】
硬化剤(A)およびイソシアネート基末端プレポリマー(B)は、他の成分を含んでいてもよく、ポリウレタン接着剤用組成物は、硬化剤(A)およびイソシアネート基末端プレポリマー(B)以外に、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、硬化剤(A)とイソシアネート基末端プレポリマー(B)とを混合したときに、他の成分と反応しないもの(例えば、フィラー、着色剤、帯電防止剤、防腐剤)が好ましい。
【0054】
ポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られる樹脂のウレタン基濃度は、2600mmol/kg以上4300mmol/kg以下であり、2800mmol/kg以上4100mmol/kg以下であることがより好ましく、3000mmol/kg以上3500mmol/kg以下であることがさらに好ましい。
ここで、ウレタン基濃度は、樹脂中のウレタン基濃度を測定装置で測定して得られた値であってもよいし、ポリウレタン樹脂形成性組成物中のウレタン基を形成する官能基(未反応)と、すでに形成されているウレタン基と、の合計として算出して得られた値であってもよい。
したがって、例えば水酸基と、水酸基に対して過剰量のイソシアネート基と、の反応でウレタン基が形成される場合、水酸基の濃度が樹脂中のウレタン基濃度として加算される。また、イソシアネート基末端プレポリマー(B)中にウレタン基が形成されている場合、このウレタン基の濃度は、樹脂中のウレタン基の濃度として加算される。
なお、ウレタン化反応に寄与しない水酸基やイソシアネート基はウレタン基濃度の算出からは除外する。
【0055】
ポリウレタン接着剤用組成物は、ハンドリング性の観点から、25℃及び1気圧で液状であること(すなわち流動性があること)が好ましい。
硬化剤(A)およびイソシアネート基末端プレポリマー(B)のうちの少なくとも一方が、25℃および1気圧で液状であることが好ましい。
【0056】
ポリウレタン接着剤用組成物は、硬化剤(A)と、イソシアネート基末端プレポリマー(B)と、を含む。これらは別個に分かれて存在する2液タイプであってもよく、これらが混合された1液タイプであってもよい。また、これらに加えて他の成分を別液とした、3液タイプまたは2液タイプであってもよい。硬化剤(A)と、イソシアネート基末端プレポリマー(B)と、を混合するときの温度及び時間は、例えば、10~35℃で、1~60分間とすることができる。
【0057】
硬化剤(A)とイソシアネート基末端プレポリマー(B)とを混合する方法は、特に制限されず、例えば、ヘラで手動により混合してもよく、機械式回転ミキサー、スタティックミキサー等を用いて混合する方法であってもよい。
【0058】
ポリウレタン接着剤用組成物は、溶剤の含有量が1.0質量%以下であることが好ましい。
また、ポリウレタン接着剤用組成物は、実質的に溶剤を含まない、すなわち無溶剤系であってもよい。ただし、不純物として溶剤が含まれるような場合は、実質的に溶剤を含まないという範疇に属するものである。
【0059】
[自動車構造用接着剤]
本開示の一態様にかかる自動車構造用接着剤は、上述したポリウレタン接着剤用組成物を含む。
【0060】
[硬化物]
本開示の一態様にかかる硬化物は、上述したポリウレタン接着剤用組成物の硬化物である。
【実施例0061】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
[ウレタン樹脂形成性組成物の調製]
以下の化合物を、表1~4に記載される配合量で混合し、ポリウレタン接着剤用組成物を調製した。
[原料]
・「MT」;ミリオネートMT(モノメリックMDI、東ソー社製)
平均分子量250、f=2
・「TMP」;トリメチロールプロパン(三菱ガス化学社製)
トリメチロールプロパン、平均分子量134、f=3
・「PTMG3000」;ポリテトラメチレンエーテルグリコール
(三菱ケミカル社製、平均分子量3000、f=2)
・「PTMG2000」;ポリテトラメチレンエーテルグリコール
(三菱ケミカル社製、平均分子量2000、f=2)
・「PTMG250」;ポリテトラメチレンエーテルグリコール
(三菱ケミカル社製、)
・「PCD500」;ポリカーボネートポリオール N-976
(東ソー社製、平均分子量500、f=2)
・「PCD3000」;ポリカーボネートポリオール N-969
(東ソー社製、平均分子量3000、f=2)
・「BG」;ブチレングリコール(三菱ケミカル社製)
1,4-ブタンジオール、平均分子量90、f=2
・「CHDM」;1,4-シクロヘキサンジメタノール(東京化成工業社製)
・「p-TolylDEA」;2,2’-(p-トリルイミノ)ジエタノール(富士フイルム和光純薬社製)
【0063】
(実施例1~14、比較例1~5)
窒素を満たした2Lの撹拌容器内に、硬化剤の各原料、を表1~4に示す処方に従って投入撹拌し、撹拌容器内の温度を70~80℃に保ちながら、1~3時間程度、混合撹拌することで、各種硬化剤(A)を得た。
【0064】
また、窒素を満たした2Lの撹拌容器内に主剤(イソシアネート基末端プレポリマー)(B)の各原料を表1~4に示す処方に従って投入し、撹拌した。その後、撹拌容器内の温度を70~80℃に保ちながら、2~5時間程度ウレタン化反応を進めることで、各種イソシアネート基末端プレポリマー(B)を得た。
【0065】
[シート成形]
硬化剤(A)と主剤(イソシアネート基末端プレポリマー)(B)を30秒攪拌混合した後、30秒脱泡し、厚さ2mmの金型へ流しんだ。ついで、25℃×30分および180℃×30分の順で二段階処理により硬化した。
【0066】
[降伏点伸度(降伏ひずみ)]
厚さ2mmのシートを3号ダンベルで型抜きし、試験片端部より40mmの部分にそれぞれ標線をつけた。引張試験機のチャック間距離が40mmとなるように準備し、引いた二本の標線の中央とチャック間の中央が同一となるように調整し、500mm/minの速さで引張試験を行った。
引張試験より得られた応力―ひずみ曲線における極大値(降伏点)に対応するひずみ量を読み取り、降伏点伸度を算出した。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
実施例1~14では、降伏点伸度が13.5%以上であり、高い降伏点伸度であることがわかる。