(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076903
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】構造体、電子部品装置及び構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/28 20060101AFI20240530BHJP
H01L 23/00 20060101ALI20240530BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240530BHJP
C08L 91/06 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
H01L23/28 F
H01L23/00 C
C08L63/00 C
C08L91/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188727
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白神 真志
(72)【発明者】
【氏名】根来 周平
(72)【発明者】
【氏名】上村 和也
(72)【発明者】
【氏名】江 しん
(72)【発明者】
【氏名】臼井 広司
【テーマコード(参考)】
4J002
4M109
【Fターム(参考)】
4J002AE034
4J002BB254
4J002CA003
4J002CD05W
4J002CD07X
4J002DA030
4J002DJ010
4J002EW016
4J002EX060
4J002EX070
4J002FD143
4J002FD156
4J002GQ05
4M109AA01
4M109BA01
4M109BA04
4M109BA05
4M109BA07
4M109CA21
4M109CA22
4M109EA02
4M109EB02
4M109EB03
4M109EB04
4M109EB07
4M109EB08
4M109EB09
4M109EB12
4M109EB13
4M109EB16
4M109EB18
4M109EE07
(57)【要約】
【課題】樹脂部材と金属膜との密着性に優れる構造体、構造体を含む電子部品装置、及び構造体の製造方法の提供。
【解決手段】樹脂部材と、前記樹脂部材の表面に配置された金属膜と、を備え、前記樹脂部材はワックスを含む、構造体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂部材と、前記樹脂部材の表面に配置された金属膜と、を備え、前記樹脂部材はワックスを含む、構造体。
【請求項2】
前記ワックスはポリオレフィン系ワックスを含む、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記樹脂部材は熱硬化性樹脂の硬化物を含む、請求項1に記載の構造体。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂を含む、請求項3に記載の構造体。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の構造体を含む、電子部品装置。
【請求項6】
樹脂部材を準備することと、前記樹脂部材の表面に金属膜を配置することと、を備え、前記樹脂部材はワックスを含む、構造体の製造方法。
【請求項7】
前記ワックスはポリオレフィン系ワックスを含む、請求項6に記載の構造体の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂部材を下記(A)、(B)及び(C)を含む評価方法から得られる情報に基づいて選択することをさらに備える、請求項7に記載の構造体の製造方法。
(A)樹脂部材と、前記樹脂部材の表面に配置された金属膜と、を有する試験片を準備する。
(B)試験片の前処理として、前記試験片を60℃~100℃及び相対湿度60%~100℃の環境下で15時間以上保持する処理と、前記試験片を最高到達温度が200℃以上となる条件で加熱する処理と、をこの順に行う。
(C)前処理後の試験片を用いて金属膜の剥離試験を実施する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、構造体、電子部品装置及び構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂等の樹脂は、半導体パッケージ等の電子部品装置において電子部品の周囲を保護する封止材の材料として広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の電子機器の小型化及び高機能化に伴い、電子部品装置内の電子部品の実装密度が高まっている。その結果、電子部品装置から発生するノイズが周囲の電子機器との間で電磁波干渉を引き起こすことが問題となっている。
【0005】
電磁波干渉を抑制する方法のひとつとして、電子部品装置の周囲に配置された樹脂部材の表面を金属膜でさらに被覆する手法がある。
しかしながら、電子部品の周囲に配置された樹脂部材の表面を金属膜で被覆した状態で金属膜と樹脂部材に対する密着性の評価を特定の条件下で実施したところ、樹脂部材の種類によって密着性の評価結果が異なることがわかった。
【0006】
上記事情に鑑み、本開示の一実施態様は、樹脂部材とその表面に配置される金属膜との密着性に優れる構造体、及びこの構造体を含む電子部品装置を提供することを課題とする。本開示の別の実施態様は、樹脂部材とその表面に配置される金属膜との密着性に優れる構造体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1>樹脂部材と、前記樹脂部材の表面に配置された金属膜と、を備え、前記樹脂部材はワックスを含む、構造体。
<2>前記ワックスはポリオレフィン系ワックスを含む、<1>に記載の構造体。
<3>前記樹脂部材は熱硬化性樹脂の硬化物を含む、<1>に記載の構造体。
<4>前記熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂を含む、<3>に記載の構造体の製造方法。
<5><1>~<4>のいずれか1項に記載の構造体を含む、電子部品装置。
<6>樹脂部材を準備することと、前記樹脂部材の表面に金属膜を配置することと、を備え、前記樹脂部材はワックスを含む、構造体。
<7>前記ワックスはポリオレフィン系ワックスを含む、<6>に記載の構造体の製造方法。
<8>前記樹脂部材を下記(A)、(B)及び(C)を含む評価方法から得られる情報に基づいて選択することをさらに備える、<7>に記載の構造体の製造方法。
(A)樹脂部材と、前記樹脂部材の表面に配置された金属膜と、を有する試験片を準備する。
(B)試験片の前処理として、前記試験片を60℃~100℃及び相対湿度60%~100℃の環境下で15時間以上保持する処理と、前記試験片を最高到達温度が200℃以上となる条件で加熱する処理と、をこの順に行う。
(C)前処理後の試験片を用いて金属膜の剥離試験を実施する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施態様によれば、樹脂部材とその表面に配置される金属膜との密着性に優れる構造体、及びこの構造体を含む電子部品装置が提供される。本開示の別の実施態様によれば、樹脂部材とその表面に配置される金属膜との密着性に優れる構造体の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0010】
<構造体>
本開示の構造体は、樹脂部材と、前記樹脂部材の表面に配置された金属膜と、を備え、前記樹脂部材はワックスを含む、構造体である。
【0011】
上記構成を備える構造体は、樹脂部材とその表面に配置される金属膜との密着性に優れている。その理由は、例えば、下記のように考えられる。
後述する評価試験の結果から、樹脂部材とその表面に配置される金属膜との密着性を低下させる要因のひとつとして樹脂部材の吸湿が考えられる。
本開示の構成では、樹脂部材に含まれるワックスが樹脂部材の表面の疎水性を高めるように作用し、その結果、樹脂部材の吸湿が抑制されて金属膜との密着性の低下が抑制されると考えられる。
【0012】
(金属膜)
樹脂部材の表面に配置される金属膜の材質は、特に制限されない。例えば、銅、銀、鉄、ニッケル、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、これらの金属を含む合金等が挙げられる。
金属膜の厚みは特に制限されない。例えば、10nm~1000μmの範囲から選択できる。
【0013】
(ワックス)
樹脂部材に含まれるワックスとして具体的には、酸化ポリエチレンワックス、非酸化ポリエチレンワックス等のポリオレフィン系ワックス、カルナバワックス等の植物系ワックス、モンタンワックス等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス、ステアリン酸等の高級脂肪酸又はその塩などが挙げられる。樹脂部材に含まれるワックスは、1種のみでも2種以上であってもよい。
【0014】
疎水性の観点からはワックスの中でもポリオレフィン系ワックスが好ましく、分散性の観点からは酸化ポリエチレンワックスがより好ましい。
分散の観点からは、ワックスの融点は30℃~200℃であることが好ましく40℃~150℃であることがより好ましく、50℃~130℃であることがさらに好ましい。
【0015】
樹脂部材の表面の疎水性を高める観点からは、樹脂部材に含まれるワックスの含有率は、樹脂部材全体の0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。
密着性の観点からは、樹脂部材に含まれるワックスの含有率は、樹脂部材全体の質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0016】
(シリコーン化合物)
樹脂部材は、シリコーン化合物を含んでもよい。樹脂部材がワックスとともにシリコーン化合物を含んでいると、シリコーン化合物によってワックスの分散性が向上する。その結果、樹脂部材の表面にワックスがより均等に分散し、樹脂部材の表面の疎水性が効果的に向上すると考えられる。
【0017】
樹脂部材に含まれるシリコーン化合物として具体的には、シリコーンオイル、シリコーンパウダー等が挙げられる。樹脂部材に含まれるシリコーン化合物は、1種のみでも2種以上であってもよい。
【0018】
樹脂部材の表面の疎水性を高める観点からは、樹脂部材に含まれるシリコーン化合物の含有率は、樹脂部材全体の0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。
密着力の観点からは、樹脂部材に含まれるシリコーン化合物の含有率は、樹脂部材全体の20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0019】
樹脂部材に含まれる樹脂の種類は特に制限されない。例えば、樹脂部材は熱硬化性樹脂の硬化物を含むものであってもよい。
熱硬化性樹脂として具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、マレイミド樹脂等が挙げられる。
樹脂部材を電子部品装置の封止材として用いる場合、封止材としての特性のバランスの観点からは、熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂が好ましい。
【0020】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂として具体的には、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものであるノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等);上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂;上記フェノール化合物及びナフトール化合物と、アルデヒド化合物とを酸性触媒下で共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものである共重合型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のジグリシジルエーテルであるジフェニルメタン型エポキシ樹脂;アルキル置換又は非置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂;スチルベン系フェノール化合物のジグリシジルエーテルであるスチルベン型エポキシ樹脂;ビスフェノールS等のジグリシジルエーテルである硫黄原子含有エポキシ樹脂;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の多価カルボン酸化合物のグリシジルエステルであるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;アニリン、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したものであるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノール化合物の共縮合樹脂をエポキシ化したものであるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;分子内のオレフィン結合をエポキシ化したものであるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,5-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるパラキシリレン変性エポキシ樹脂;メタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるメタキシリレン変性エポキシ樹脂;テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるテルペン変性エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルである多環芳香環変性エポキシ樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるナフタレン型エポキシ樹脂;ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるアラルキル型エポキシ樹脂;などが挙げられる。さらにはアクリル樹脂のエポキシ化物等もエポキシ樹脂として挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
樹脂部材の耐熱性の観点からは、エポキシ樹脂としてはトリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂及びノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0022】
エポキシ樹脂のエポキシ当量(分子量/エポキシ基数)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼等の各種特性バランスの観点からは、100g/eq~1000g/eqであることが好ましく、150g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
【0023】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K 7236:2009に準じた方法で測定される値とする。
【0024】
エポキシ樹脂が固体である場合、その軟化点又は融点は特に制限されない。成形性と耐リフロー性の観点からは40℃~180℃であることが好ましく、取扱い性の観点からは50℃~130℃であることがより好ましい。
【0025】
エポキシ樹脂の融点又は軟化点は、示差走査熱量測定(DSC)又はJIS K 7234:1986に準じた方法(環球法)で測定される値とする。
【0026】
樹脂部材がエポキシ樹脂を含む場合、その含有率は、強度、流動性、耐熱性、成形性等の観点から0.5質量%~50質量%であることが好ましく、2質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0027】
(硬化剤)
樹脂部材がエポキシ樹脂を含む場合、エポキシ樹脂と併用する硬化剤の種類は特に限定されず、樹脂部材の所望の特性等に応じて選択できる。
エポキシ樹脂の硬化剤として具体的には、フェノール硬化剤、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤、活性エステル化合物等が挙げられる。硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
フェノール硬化剤として具体的には、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の多価フェノール化合物;フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;フェノールアラルキル型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂、メタキシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジシクロペンタジエンとから共重合により合成されるジシクロペンタジエン型フェノール樹脂及びジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂;これら2種以上を共重合して得たフェノール樹脂などが挙げられる。これらのフェノール硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
樹脂部材の耐熱性の観点からは、硬化剤としてはトリフェニルメタン型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、ナフタレンアラルキル型フェノール樹脂及びノボラック型フェノール樹脂が好ましい。
【0030】
硬化剤が固体である場合、その軟化点又は融点は、特に制限されない。成形性と耐リフロー性の観点からは、40℃~180℃であることが好ましく、取扱い性の観点からは、50℃~130℃であることがより好ましい。
【0031】
硬化剤の融点又は軟化点は、エポキシ樹脂の融点又は軟化点と同様にして測定される値とする。
【0032】
エポキシ樹脂と硬化剤との当量比、すなわちエポキシ樹脂中の官能基数に対する硬化剤中の官能基数の比(硬化剤中の官能基数/エポキシ樹脂中の官能基数)は、特に制限されない。それぞれの未反応分を少なく抑える観点からは、0.5~2.0の範囲に設定されることが好ましく、0.6~1.3の範囲に設定されることがより好ましい。成形性と耐リフロー性の観点からは、0.8~1.2の範囲に設定されることがさらに好ましい。
【0033】
(硬化促進剤)
樹脂部材は、硬化促進剤をさらに含有してもよい。
硬化促進剤の種類は、特に制限されず、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)等のジアザビシクロアルケン、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール等の環状アミジン化合物;前記環状アミジン化合物の誘導体;前記環状アミジン化合物又はその誘導体のフェノールノボラック塩;これらの化合物に無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;DBUのテトラフェニルボレート塩、DBNのテトラフェニルボレート塩、2-エチル-4-メチルイミダゾールのテトラフェニルボレート塩、N-メチルモルホリンのテトラフェニルボレート塩等の環状アミジニウム化合物;ピリジン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物;前記三級アミン化合物の誘導体;酢酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、リン酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、酢酸テトラエチルアンモニウム、安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム等のアンモニウム塩化合物;エチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン、ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p-トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン(トリブチルホスフィン等)、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の三級ホスフィンなどの、有機ホスフィン;前記有機ホスフィンと有機ボロン類との錯体等のホスフィン化合物;前記有機ホスフィン又は前記ホスフィン化合物と無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン、アントラキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;前記有機ホスフィン又は前記ホスフィン化合物と4-ブロモフェノール、3-ブロモフェノール、2-ブロモフェノール、4-クロロフェノール、3-クロロフェノール、2-クロロフェノール、4-ヨウ化フェノール、3-ヨウ化フェノール、2-ヨウ化フェノール、4-ブロモ-2-メチルフェノール、4-ブロモ-3-メチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジメチルフェノール、4-ブロモ-3,5-ジメチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジ-t-ブチルフェノール、4-クロロ-1-ナフトール、1-ブロモ-2-ナフトール、6-ブロモ-2-ナフトール、4-ブロモ-4’-ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる、分子内分極を有する化合物;テトラフェニルホスホニウム等のテトラ置換ホスホニウム、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート等のテトラ置換ホスホニウムのテトラフェニルボレート塩、テトラ置換ホスホニウムとフェノール化合物との塩などの、テトラ置換ホスホニウム化合物;ホスホベタイン化合物;ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物などが挙げられる。中でも、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンとキノン化合物との付加物が好ましい。
硬化促進剤は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
樹脂部材に含まれる硬化促進剤の量は、樹脂成分(例えば、エポキシ樹脂と硬化剤の合計量)100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~15質量部であることがより好ましい。硬化促進剤の量が樹脂成分100質量部に対して0.1質量部以上であると、短時間で良好に硬化する傾向にある。硬化促進剤の量が樹脂成分100質量部に対して30質量部以下であると、硬化速度が速すぎず良好な硬化物が得られる傾向にある。
【0035】
(充填材)
樹脂部材は、充填材を含んでもよい。充填材の種類は、特に制限されない。具体的には、溶融シリカ、結晶シリカ、ガラス、アルミナ、タルク、クレー、マイカ等の無機材料が挙げられる。難燃効果を有する無機充填材を用いてもよい。難燃効果を有する無機充填材としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物、硼酸亜鉛などが挙げられる。
【0036】
無機充填材の中でも、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカ等のシリカが好ましく、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましい。無機充填材は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。無機充填材の形態としては粉末、粉末を球形化したビーズ、繊維等が挙げられる。
【0037】
樹脂部材に含まれる充填材の体積平均粒子径は、10μm以下であることが好ましく、1μm~8μmであることが好ましく、2μm~6μmであることがより好ましい。
【0038】
樹脂部材に含まれる充填材の最大粒子径は、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。
【0039】
樹脂部材は、体積平均粒子径が0.1μm以下の充填材を含んでもよい。樹脂部材が体積平均粒子径が0.1μm以下の充填材を含む場合、その含有率は、充填剤全体の10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。上記含有率は、充填剤全体の0.1質量%以上であってもよい。
【0040】
本開示において充填材の体積平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(例えば、株式会社堀場製作所、LA920)を用いて得られる体積基準の粒度分布において小径側からの累積が50%となるときの粒子径(D50)である。
充填材が樹脂部材に含まれた状態である場合、熱分解、溶解等の方法で樹脂部材から取り出した充填材の体積平均粒子径を測定してもよい。
【0041】
樹脂部材に含まれる充填材の含有率は、特に制限されず、流動性及び強度の観点からは、樹脂部材全体の30体積%~90体積%であることが好ましく、35体積%~80体積%であることがより好ましく、50体積%~80体積%であることがさらに好ましい。充填材の含有率が樹脂部材全体の30体積%以上であると、硬化物の熱膨張係数、熱伝導率、弾性率等の特性がより向上する傾向にある。充填材の含有率が樹脂部材全体の90体積%以下であると、樹脂部材の材料の粘度の上昇が抑制され、流動性がより向上して成形性がより良好になる傾向にある。
【0042】
(シラン化合物)
樹脂部材は、シラン化合物をさらに含有してもよい。
シラン化合物として具体的には、ジメトキシジフェニルシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-[ビス(β-ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(β-アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N-(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン及びγ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。シラン化合物は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0043】
樹脂部材がシラン化合物を含有する場合、シラン化合物の含有率は、樹脂部材全体に対して0.1質量%~3質量%以下であることが好ましい。あるいは、樹脂部材に含まれる充填材100質量部に対して0.05質量部~10質量部であることが好ましく、0.1質量部~8質量部であることがより好ましい。
【0044】
(着色剤)
樹脂部材は、着色剤を含んでもよい。着色剤としてはカーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の公知の着色剤を挙げることができる。着色剤の含有量は構造体の用途等に応じて適宜選択できる。着色剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
(イオン交換体)
樹脂部材は、イオン交換体を含んでもよい。例えば、素子を内蔵する電子部品装置として構造体を使用する場合、電子部品装置の耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、イオン交換体を含んでもよい。イオン交換体としてはハイドロタルサイト化合物、並びにマグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の含水酸化物等が挙げられる。イオン交換体は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、下記一般式(A)で表されるハイドロタルサイトが好ましい。
【0046】
Mg(1-X)AlX(OH)2(CO3)X/2・mH2O ……(A)
(0<X≦0.5、mは正の数)
【0047】
(難燃剤)
樹脂部材は、難燃剤を含んでもよい。難燃剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハロゲン原子、アンチモン原子、窒素原子又はリン原子を含む有機又は無機の化合物、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
<電子部品装置>
本開示の電子部品装置は、上述した構造体を含む。
本開示の電子部品装置に含まれる構造体は、樹脂部材と、その表面に配置される金属膜との密着性に優れている。このため、本開示の電子部品装置は優れた電磁波干渉抑制効果を持続的に達成できる。
【0049】
本開示の電子部品装置は、例えば、支持部材と、前記支持部材上に配置された素子と、素子の周囲に配置された樹脂部材と、樹脂部材の表面に配置された金属膜と、を備えるものであってもよい。
【0050】
電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ、有機基板等の支持部材に、素子(半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子など)を搭載し、素子の周囲を樹脂部材で封止したものが挙げられる。
より具体的には、リードフレーム上に素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部とをワイヤボンディング、バンプ等で接続した後、樹脂部材で封止した構造を有するDIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC;テープキャリアにバンプで接続した素子を樹脂部材で封止した構造を有するTCP(Tape Carrier Package);支持部材上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した素子を、樹脂部材で封止した構造を有するCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール等;裏面に配線板接続用の端子を形成した支持部材の表面に素子を搭載し、バンプ又はワイヤボンディングにより素子と支持部材に形成された配線とを接続した後、樹脂部材で素子を封止した構造を有するBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)、MCP(Multi Chip Package)などが挙げられる。
【0051】
<構造体の製造方法>
本開示の構造体の製造方法は、樹脂部材を準備する工程と、前記樹脂部材の表面に金属膜を配置する工程と、を有し、前記樹脂部材はワックスを含む、構造体の製造方法である。
【0052】
本開示の方法では、固体の状態である樹脂部材の表面に金属膜を形成する。このため、例えば、未硬化の熱可塑性樹脂のような流動性を有する材料を金属部材に接触させた状態で当該材料を硬化させて構造体を製造する場合に比べ、樹脂部材と金属膜との密着性が充分に得られない場合がある。
本開示の方法では、樹脂部材に含まれるワックスが樹脂部材の表面の疎水性を高めるように作用する。その結果、樹脂部材の吸湿が抑制されて金属膜との密着性の低下が抑制されると考えられる。
【0053】
本開示の方法で樹脂部材を得る方法は特に制限されず、樹脂部材に含まれる成分等に応じて選択できる。
例えば、樹脂部材は熱硬化性樹脂を含む材料を硬化させて得られるものであってもよい。
熱硬化性樹脂を含む材料を硬化させる方法として具体的には、コンプレッション成形(圧縮成形)法、射出成形法、トランスファ成形法等が挙げられる。
硬化前の熱硬化性樹脂は、液体であっても固体であってもよい。
【0054】
樹脂部材の表面に金属膜を配置する方法は特に制限されない。
例えば、スパッタリング、蒸着、メッキ、ペースト塗布等の方法が挙げられる。
金属膜の材質は特に制限されない。例えば、銅、銀、鉄、ニッケル、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、これらの金属を含む合金等が挙げられる。
金属膜の厚みは特に制限されない。例えば、10nm~1000μmの範囲から選択できる。
【0055】
本開示の方法では、樹脂部材の表面の全体に金属膜を配置しても、樹脂部材の表面の一部に金属膜を配置してもよい。
【0056】
本開示の方法は、構造体に使用する樹脂部材を下記(A)、(B)及び(C)を含む評価方法から得られる情報に基づいて選択することをさらに備えてもよい。
(A)樹脂部材と、前記樹脂部材の表面に配置された金属膜と、を有する試験片を準備する。
(B)試験片の前処理として、前記試験片を60℃~100℃及び相対湿度60%~100℃の環境下で15時間以上保持する処理と、前記試験片を最高到達温度が200℃以上となる条件で加熱する処理と、をこの順に行う。
(C)前処理後の試験片を用いて金属膜の剥離試験を実施する。
【0057】
構造体に使用する樹脂部材の選択を(A)、(B)及び(C)を含む評価方法から得られる情報に基づいて行うことで、密着性に優れる構造体を効果的に製造することができる。
【0058】
樹脂部材と、樹脂部材の表面に配置された金属膜と、を有する試験片を準備する方法は特に制限されない。例えば、本開示の構造体の製造方法に準じた方法を選択してもよい。
【0059】
試験片の前処理では、試験片を60℃~100℃及び相対湿度60%~100℃の環境下で15時間以上保持する処理(以下、吸湿処理ともいう)と、(2)試験片を最高到達温度が200℃以上となる条件で加熱する処理(以下、加熱処理ともいう)と、をこの順に行う。
【0060】
吸湿処理では、試験片を60℃~100℃及び相対湿度60%~100℃の環境下で15時間以上保持する。
吸湿処理の温度は、60℃~100℃の範囲内であれば特に制限されず、例えば85℃であってもよい。
吸湿処理の相対湿度は、60%~100℃の範囲内であれば特に制限されず、例えば85%であってもよい。
吸湿処理の時間は、15時間以上であれば特に制限されず、例えば15時間~200時間であってもよく、24時間であってもよい。
【0061】
加熱処理では、試験片を最高到達温度が200℃以上となる条件で加熱する。
加熱処理の最高到達温度は、200℃以上であれば特に制限されず、例えば200℃~300℃であってもよく、260℃であってもよい。
加熱処理は、大気中で実施しても、窒素等の不活性雰囲気中で実施してもよい。金属膜が銅のような酸化しやすい金属からなる場合は、加熱処理は不活性雰囲気中で実施することが好ましい。
加熱処理の回数は、特に制限されない。評価精度の観点からは、加熱処理を2回以上実施することが好ましく、3回以上実施することがより好ましい。
【0062】
試験片の剥離試験を実施する方法は特に制限されない。例えば、クロスカット試験、ピール試験、スクラッチ試験、碁盤目試験等が挙げられる。
【0063】
剥離試験で得られた結果を評価する基準は特に制限されず、所望の評価精度が達成されるように設定できる。
【実施例0064】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
<試験片の作製>
表1に示す材料を含む組成物を用いて、樹脂部材の表面に金属膜が配置された状態の試験片を作製した。
具体的には、基板上に金型温度175℃、成形時間120秒の条件で表1に示す材料を含む組成物を成形した。その後基板を剥離し、175℃で5時間の後硬化を行って、235mm×65mm×0.7mmの硬化物を得た。得られた硬化物の主面の一方と側面にスパッタリングで銅膜(厚み:500μm)を形成して、試験片を得た。
【0066】
<密着性の評価>
試験片に対し、85℃、相対湿度85%の環境下で24時間保持する吸湿処理を実施した。その後、窒素雰囲気中で最高温度が260℃となる加熱処理を3回実施した。
上記処理後の試験片に対し、JIS K5600に準拠するクロスカット試験を実施した。N数は3とした。
具体的には、試験片の金属膜に1mm間隔で切り込みを入れて25個(縦5個×横5個)のマス目を形成し、その上にテープを貼り付けた。テープを貼り付けてから5分以内に60°の角度で0.5秒~1.0秒の間に一気にテープをはがした。
テープをはがした後に金属膜が残存する割合(面積基準)に応じて、下記の基準により金属の膜の密着性を評価した。結果を表1に示す。
【0067】
1:5%未満
2:5%以上15%未満
3:15%以上35%未満
4:35%以上65%未満
5:65%以上
【0068】
<流動性の評価>
EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、表1に示す材料を含む組成物を成形圧力6.9MPa、硬化時間120秒、成形条件180℃の条件で成形し、流動距離(cm)を求めた。結果を表1に示す。
【0069】
<曲げ弾性率、曲げ強さ、及び破断伸びの評価>
表1に示す材料を含む組成物を成形圧力6.9MPa、硬化時間120秒、成形温度:175℃の条件で成形し、70mm×10mm×3mmの形状の試験片を作製した。A&D社のテンシロンを用い、JIS-K-6911(2006)に準拠した3点支持型曲げ試験を25℃にて行い、試験片の曲げ弾性率、曲げ強さ、及び破断伸びをそれぞれ求めた。結果を表1に示す。なお、曲げ弾性率Eは下記式にて定義される。
下記式中、Eは曲げ弾性率(MPa)、Pはロードセルの値(N)、yは変位量(mm)、lはスパン=48mm、wは試験片幅=10mm、hは試験片厚さ=3mmである。
【0070】
【0071】
【0072】
表1に示す材料の詳細は、下記の通りである。
エポキシ樹脂1…ビフェニル型エポキシ樹脂、エポキシ当量192
エポキシ樹脂2…トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、エポキシ当量169
ワックス1…酸化ポリエチレンワックス(Licowax PED-153、Clariant)
ワックス2…酸化ポリエチレンワックス(Licowax PED-522、Clariant)
ワックス3…酸化ポリエチレンワックス(Licowax PED-A、Clariant)
硬化剤…フェノールアラルキル型フェノール樹脂、水酸基当量106
硬化促進剤…トリフェニルホスフィンとp-ベンゾキノンとの付加物
カップリング剤1…N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン
カップリング剤2…γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
着色剤…カーボンブラック
充填剤1…溶融シリカ、体積平均粒子径15μm、比表面積2.7m2/g
充填剤2…溶融シリカ、体積平均粒子径0.5μm、比表面積6.3m2/g
充填剤3…溶融シリカ、体積平均粒子径0.1μm以下、比表面積205m2/g
【0073】
以上の結果に示すように、ワックスを含む組成物を用いて作製した実施例の試験片は、ワックスを含まない組成物を用いて作製した比較例の試験片に比べて優れた金属膜の密着性の評価を示した。