(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076948
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20240530BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240530BHJP
G03G 15/06 20060101ALI20240530BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240530BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20240530BHJP
G03G 9/113 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
G03G15/08 321B
G03G15/00 303
G03G15/08 390B
G03G15/06 101
G03G21/00 530
G03G9/097 372
G03G9/113 361
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079227
(22)【出願日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2022188322
(32)【優先日】2022-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】熊木 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 卓也
【テーマコード(参考)】
2H073
2H077
2H270
2H500
【Fターム(参考)】
2H073AA10
2H073BA02
2H073BA13
2H073BA28
2H073BA33
2H073BA43
2H073CA03
2H077AA01
2H077AB02
2H077AB14
2H077AB15
2H077AB18
2H077AC02
2H077AD13
2H077AD35
2H077AE06
2H077BA08
2H077CA12
2H077DA03
2H077DA05
2H077DA10
2H077DA18
2H077DA42
2H077DA52
2H077DA62
2H077DB01
2H077DB08
2H077EA03
2H270KA22
2H270LA18
2H270LA28
2H270LA91
2H270MA15
2H270MA18
2H270MB14
2H270MB20
2H270MB33
2H270MB43
2H270SB02
2H270SB03
2H270SC06
2H270ZC03
2H270ZC04
2H500AA09
2H500AB05
2H500CA36
2H500CB10
2H500FA03
(57)【要約】
【課題】潤滑剤粒子を含有させた現像剤を用いる場合に発生し得るトナー落ちを抑制する。
【解決手段】潜像担持体21と、トナーとキャリアとを含む現像剤中の該トナーを現像バイアスにより前記潜像担持体上の潜像に付着させて現像する現像装置26と、を備える画像形成装置1であって、前記現像剤は潤滑剤粒子を含んでおり、湿度を検出する湿度検出手段27と、画像濃度を検知する画像濃度検知手段50と、画像濃度検知手段の検知結果に基づいて、目標現像バイアスにおける画像濃度が目標画像濃度よりも高いときには現像剤中のトナー濃度を低下させる画像濃度調整制御を実行する制御手段55とを有し、制御手段は、湿度検出手段の検出結果に基づいて、低湿環境時には該低湿環境よりも湿度の高い環境時と比較して目標現像バイアスを高く設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像担持体と、
トナーとキャリアとを含む現像剤中の該トナーを現像バイアスにより前記潜像担持体上の潜像に付着させて現像する現像装置と、を備える画像形成装置であって、
前記現像剤は潤滑剤粒子を含んでおり、
湿度を検出する湿度検出手段と、
画像濃度を検知する画像濃度検知手段と、
前記画像濃度検知手段の検知結果に基づいて、目標現像バイアスにおける画像濃度が目標画像濃度よりも高いときには前記現像剤中のトナー濃度を低下させる画像濃度調整制御を実行する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記湿度検出手段の検出結果に基づいて、低湿環境時には該低湿環境よりも湿度の高い環境時と比較して目標現像バイアスを高く設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記潤滑剤粒子はステアリン酸亜鉛を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記湿度検出手段は、絶対湿度を検出することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記現像装置は、現像剤担持体と前記潜像担持体とが対向する現像領域に対して前記潜像担持体の回転方向上流側で該潜像担持体の表面に接する入口シールと、該入口シールの基端を保持する入口シールホルダとを有し、
前記潜像担持体の回転軸方向から見た場合、前記入口シールの先端位置を「P」とし、入口シールホルダの任意の地点を「Q」とし、前記現像剤担持体の表面上の任意の地点を「R」とし、前記潜像担持体の表面上の任意の地点を「S」とし、RQ間の距離とSQ間の距離との和が最小になるときの入口シールホルダの地点を「Q'」とし、前記地点Q'と前記現像領域の潜像担持体回転方向中央位置Oとを結ぶ軸に沿って該中央位置Oを原点とした「Y軸」と定義したとき、前記入口シールの先端位置PのY軸座標よりも前記入口シールホルダの地点Q'のY軸座標の方が前記原点に近いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記現像装置は、現像剤担持体と前記潜像担持体とが対向する現像領域に対して前記潜像担持体の回転方向上流側で該潜像担持体の表面に接する入口シールを有し、
前記入口シールには、前記現像剤担持体と略同電位が付与されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置において、
前記入口シールの両面のうちの前記現像剤担持体側の表面は導電体であり、
前記現像剤担持体と前記入口シールの前記導電体とが短絡されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記キャリアのコート樹脂に硫酸バリウムが含有されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記現像装置は、現像剤の通過を阻止しつつ空気の通過を許容するフィルタを備えた空気排気部を有し、
前記フィルタは、現像装置外側の単位体積当たりの重量密度が現像装置内側の単位体積当たりの重量密度よりも大きいことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、潜像担持体と、トナーのキャリアとを含む現像剤中の該トナーを現像バイアスにより前記潜像担持体上の潜像に付着させて現像する現像装置と、を備える画像形成装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、温湿度変化による画像濃度変化を抑制するために、画像形成装置内の温湿度を検出した結果に基づいて現像バイアスや現像剤中のトナー濃度を制御する画像形成装置が開示されている。この画像形成装置では、常温常湿時のトナー濃度レベルおよび現像バイアスを基準値としたとき、絶対湿度が高い高湿環境では基準値より低いトナー濃度で安定化するように制御し、絶対湿度の低い低湿環境ではトナー濃度は基準値と同じとしたまま現像バイアスを大きくするように制御する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の画像形成装置では、潤滑剤粒子を含有させた現像剤を用いる場合、湿度変化に応じた画像濃度変化を抑制することはできても、潤滑剤粒子を含有させた現像剤を用いる場合に発生し得るトナー落ちに起因した画像汚れの発生を抑制することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、潜像担持体と、トナーとキャリアとを含む現像剤中の該トナーを現像バイアスにより前記潜像担持体上の潜像に付着させて現像する現像装置と、を備える画像形成装置であって、前記現像剤は潤滑剤粒子を含んでおり、湿度を検出する湿度検出手段と、画像濃度を検知する画像濃度検知手段と、前記画像濃度検知手段の検知結果に基づいて、目標現像バイアスにおける画像濃度が目標画像濃度よりも高いときには前記現像剤中のトナー濃度を低下させる画像濃度調整制御を実行する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記湿度検出手段の検出結果に基づいて、低湿環境時には該低湿環境よりも湿度の高い環境時と比較して目標現像バイアスを高く設定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、潤滑剤粒子を含有させた現像剤を用いる場合に発生し得るトナー落ちが抑制され、トナー落ちによる画像汚れの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態における画像形成装置を示す概略構成図。
【
図2】同画像形成装置に備わっているプロセスカートリッジの構成を示す説明図。
【
図3】トナー濃度センサの出力値(透磁率)とトナー濃度との関係を示すグラフ。
【
図4】トナー補給制御の一例を示すフローチャート。
【
図5】現像装置内にセットされる初期状態の磁性キャリアを部分的に示す拡大断面図。
【
図6】入口シール上に堆積したトナーの凝集体を示す説明図。
【
図7】(a)は入口シール上にトナーの凝集体が付着する様子を示す説明図。(b)はトナーの凝集体が塊の状態で入口シールから脱落する様子を示す説明図。
【
図9】高湿環境時と低湿環境時における現像γの違いを示すグラフ。
【
図10】制御例1におけるトナー濃度低下制御を含む現像γ制御を示すフローチャート。
【
図11】制御例2におけるトナー濃度低下制御を含む現像γ制御を示すフローチャート。
【
図12】目標トナー付着量に対応する現像バイアスVbから現像バイアスを変更したときのトナー付着量の変化を示す説明図。
【
図13】実施形態における現像領域近傍を示す拡大図。
【
図14】現像装置単体時の入口シールの姿勢を示す説明図。
【
図15】実施形態におけるフィルタを説明するための現像装置の部分拡大図。
【
図16】変形例における入口シールの構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明では、潜像担持体である複数の感光体ドラムが像担持体としての中間転写体である中間転写ベルトに対向するように並設されたタンデム型のカラー画像形成装置を例に挙げて説明するが、1ドラム型の画像形成装置であってもよいし、モノクロ画像形成装置であってもよいし、他の形式の画像形成装置であってもよい。
【0009】
図1は、本実施形態における画像形成装置を示す概略構成図である。
本実施形態の画像形成装置1は、原稿を搬送する原稿搬送部2と、原稿の画像情報を読み込む原稿読込部3と、入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部(露光部)4とを備えている。また、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応したプロセスカートリッジ20Y,20M,20C,20BKで形成された複数色のトナー像が重ねて転写される中間転写ベルト40も備えている。
【0010】
また、本実施形態の画像形成装置1は、記録材としての用紙等のシートPが収納される給紙装置61、中間転写ベルト40上に形成されたトナー像をシートPに転写する二次転写ローラ65、シートP上の未定着画像を定着する定着装置66も備えている。また、複数のプロセスカートリッジ20Y,20M,20C,20BKに対応した各現像装置26に各色のトナーを補給するためのトナー容器70、クリーニング装置23(
図2参照)や中間転写ベルトクリーニング装置81で回収された未転写トナーが廃トナーとして回収される廃トナー回収容器80も備えている。
【0011】
また、本実施形態の画像形成装置1には、給紙装置61および給紙ローラ62の近傍には、湿度検出手段としての絶対湿度検出センサ27が配設されている。絶対湿度検出センサ27としては、市販のサーミスタセンサなどを使用することができる。
【0012】
各プロセスカートリッジ20Y,20M,20C,20BKは、
図2に示すように、それぞれ、感光体ドラム21、帯電装置22、クリーニング装置23が一体化されたものである。各プロセスカートリッジ20Y,20M,20C,20BKは、寿命に達したときに画像形成装置1の本体から取り外されて、新品のものに交換される。
【0013】
各現像装置26は、各プロセスカートリッジ20Y,20M,20C,20BKの感光体ドラム21にそれぞれ対向するように設置されている。現像装置26は、寿命に達したときに画像形成装置1の本体から取り外されて、新品のものに交換される。なお、画像形成装置本体に対する現像装置26の着脱操作と、画像形成装置本体に対するプロセスカートリッジ20Y,20M,20C,20BKの着脱操作とは、それぞれ別々に独立して行うことができる。
【0014】
図2は、本実施形態の画像形成装置に備わっているプロセスカートリッジの構成を示す説明図である。
感光体ドラム21は、負帯電性の有機感光体であって、ドラム状導電性支持体上に感光層等を設けたものである。帯電装置22は、導電性芯金の外周に中抵抗の弾性層を被覆してなる帯電ローラである。帯電装置22(帯電ローラ)に電源部から所定の電圧が印加されて、これにより対向する感光体ドラム21の表面を一様に帯電する。
【0015】
クリーニング装置23には、感光体ドラム21に当接するクリーニングブレード25a及びクリーニングローラ25bが設置されている。クリーニングブレード25aは、ウレタンゴム等のゴム材料からなり、感光体ドラム21表面に所定角度かつ所定圧力で当接している。クリーニングローラ25bは、芯金上にブラシ毛が周設されたブラシローラである。
【0016】
現像装置26は、主に、現像剤担持体としての現像ローラ26a、現像ローラ26aに対向する第一搬送スクリュ26b1(第一搬送部材)、仕切部材26eを介して第一搬送スクリュ26b1に対向する第二搬送スクリュ26b2(第二搬送部材)、現像ローラ26aに対向して現像ローラ26a上に担持された現像剤の量を規制するドクターブレード26c(現像剤規制部材)、入口シール26s、等で構成される。
【0017】
現像装置26内には、キャリアとトナーとからなる現像剤(二成分現像剤)が収容されている。現像ローラ26aは、感光体ドラム21に対して微小なギャップをあけて対向して現像領域を形成するように構成されている。現像ローラ26aは、内部に固設されてローラ外周面上に複数の極(磁極)を形成するマグネットと、マグネットの周囲を回転するスリーブと、で構成される。
【0018】
搬送部材としての搬送スクリュ26b1,26b2は、現像装置26の内部に収容された現像剤を長手方向に搬送して循環経路を形成する。すなわち、第一搬送スクリュ26b1による第一搬送経路B1と、第二搬送スクリュ26b2による第二搬送経路B2と、による現像剤の循環経路が形成されている。
【0019】
第一搬送経路B1と第二搬送経路B2とは仕切部材26e(壁部)によって隔絶されていて、2つの搬送経路B1、B2の長手方向両端部は互いに連通口を介して連通している。具体的には、第一搬送経路B1の搬送方向上流側の端部と、第二搬送経路B2の搬送方向下流側の端部とが、第一連通口を介して連通している。また、第一搬送経路B1の搬送方向下流側の端部と、第二搬送経路B2の搬送方向上流側の端部とが、第二連通口を介して連通している。すなわち、仕切部材26eは、長手方向両端部を除く位置に配設されている。
【0020】
第一搬送スクリュ26b1(第一搬送経路B1)は現像ローラ26aに対向するように配設され、第二搬送スクリュ26b2(第二搬送経路B2)は仕切部材26eを介して第一搬送スクリュ26b1(第一搬送経路B1)に対向するように配設されている。第一搬送スクリュ26b1は、現像剤を長手方向に搬送しながら、現像ローラ26aに向けて現像剤を供給するとともに、現像ローラ26aから離脱した現像工程後の現像剤を回収する。第二搬送スクリュ26b2は、第一搬送経路B1から搬送された現像工程後の現像剤と、補給口26dから補給されたフレッシュなトナーとを、長手方向に搬送しながら撹拌・混合する。2つの搬送スクリュ26b1,26b2は、水平方向に並設されている。2つの搬送スクリュ26b1,26b2は、いずれも回転軸にスクリュ部が巻装されたものである。
【0021】
本実施形態において、現像装置26は、上下に分割可能な2つの現像ケース(現像上ケース26kと現像下ケース26j)が筐体として用いられ、これらによって覆われている。現像下ケース26jには、現像ローラ26a、第一及び第二搬送スクリュ26b1,26b2が回転可能に保持され、ドクターブレード26cが保持されている。また、現像上ケース26kは、現像ローラ26a、第一及び第二搬送スクリュ26b1,26b2、ドクターブレード26cが設置された状態の現像下ケース26jに対してネジ締結などによって着脱可能に設置されている。
【0022】
本実施形態において、現像上ケース26kには、開口部26k1にフィルタ26tが設置されている。フィルタ26tは、現像剤(トナー)の通過を阻止しつつ空気の通過を許容するものであり、フィルタ26tが設置された開口部26k1が空気排気部を構成する。この空気排気部のフィルタ26tについては後述する。
【0023】
また、本実施形態において、現像下ケース26jには、現像ローラ26aを感光体ドラム21に対向させるために現像ローラ26aを露出させる開口部(現像開口部)が形成されており、その現像開口部の感光体回転方向上流側の縁部(入口シールホルダ26h)に入口シール26sが設けられている。入口シール26sは、その基端が入口シールホルダ26hに取り付けられ、その先端が、感光体ドラム21の表面に接するように配置される。
【0024】
また、本実施形態において、第二搬送スクリュ26b2の直下に位置する現像下ケース26jの底部には、現像装置26内の現像剤中のトナー濃度TC[wt%]を検知するトナー濃度センサ26fが配置されている。トナー濃度センサ26fは、現像装置26内における磁性体である磁性キャリアと非磁性体であるトナーとの存在比率を示す物理量であるトナー濃度TC[wt%]に応じて変化する透磁率を読み取る透磁率センサを用いる。
【0025】
図3は、トナー濃度センサ26fの出力値Vt[V](透磁率)とトナー濃度TC[wt%]との関係を示すグラフである。
図3のグラフからわかるとおり、トナー濃度TCが低いほど高い透磁率(出力値Vt)が検知され、トナー濃度TCが高いほど低い透磁率(出力値Vt)が検知され、その関係性は線形である。
【0026】
図4は、トナー補給制御の一例を示すフローチャートである。
一般に、トナー補給制御は、現像装置26内の現像剤中のトナー濃度を一定に保つことと、現像能力を一定に保つことの2つの目的を達成するために行われる。トナー濃度を一定に保つために、まず、現在のトナー濃度TCを得るためにトナー濃度センサ26fの出力値Vtを検知する(S1)。そして、現在のトナー濃度TCに対応する出力値Vtと目標トナー濃度に対応する制御目標値Vtrefとの差分であるΔVtが所定の閾値threshold未満であるか否かを判断する(S2)。このとき、ΔVtが閾値threshold以上である場合(S2のNo)、トナー補給動作が実行される(S3)。これにより、現在のトナー濃度TCが目標トナー濃度から所定の閾値以上低くなったときに規定量のトナー補給が行われ、トナー濃度を一定に保つ制御が行われる。
【0027】
また、現像能力を一定に保つために、所定のタイミングでパッチパターンを作像し(S4のYes)、作像したパッチパターンを後述するフォトセンサ50により検知して画像濃度(トナー付着量)を取得し、その画像濃度が適正濃度であるか否かを判断する(S5)。このとき、適正濃度でないと判断されると(S5のNo)、画像濃度が適切濃度に近づくように、目標トナー濃度に対応する制御目標値Vtrefを変更する(S6)。以上の一連の処理は、印刷が終了するまで行われる(S7)。
【0028】
次に、画像形成装置における通常のカラー画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿は、原稿搬送部2の搬送ローラによって原稿台から搬送されて、原稿読込部3のコンタクトガラス上に載置される。その後、原稿読込部3で、コンタクトガラス上に載置された原稿の画像情報が光学的に読み取られる。そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報が書込み部4に送信される。書込み部4は、各色の画像情報に基づいたレーザ光L(露光光)を、それぞれ、対応するプロセスカートリッジ20Y,20M,20C,20BKの感光体ドラム21の表面に向けて照射する。
【0029】
各感光体ドラム21は、それぞれ、
図1、
図2中の時計回り方向に回転駆動する。感光体ドラム21の表面は、帯電装置22(帯電ローラ)との対向位置で一様に帯電される(帯電工程)。こうして、感光体ドラム21の表面は所定の帯電電位に帯電される。その後、帯電された感光体ドラム21の表面は、それぞれの書込み部4によるレーザ光の照射位置に達して、その位置で画像情報に基づいた静電潜像が形成される(露光工程)。
【0030】
イエロー成分に対応したレーザ光は、
図1、
図2中の左側から1番目のプロセスカートリッジ20Yの感光体ドラム21の表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラーにより、感光体ドラム21の回転軸方向(主走査方向)に走査される。こうして、帯電装置22にて帯電された後の感光体ドラム21上には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
【0031】
同様に、シアン成分のレーザ光は、
図1、
図2中の左側から2番目のプロセスカートリッジ20Cの感光体ドラム21の表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。マゼンタ成分に対応したレーザ光は、
図1、
図2中の左側から3番目のプロセスカートリッジ20Mの感光体ドラム21の表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、
図1、
図2中の左側から4番目のプロセスカートリッジ20BKの感光体ドラム21の表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0032】
その後、各色の静電潜像が形成された感光体ドラム21の表面は、それぞれ、現像装置26との対向位置(現像領域)に達する。そして、各現像装置26から感光体ドラム21上に各色のトナーが供給されて、感光体ドラム21上の静電潜像が現像される(現像工程)。
【0033】
現像工程後の感光体ドラム21の表面は、それぞれ、中間転写ベルト40との対向位置(一次転写領域)に達する。ここで、それぞれの対向位置には、中間転写ベルト40の内周面に当接するように一次転写ローラ24が設置されている。感光体ドラム21上に形成された各色のトナー像は、一次転写ローラ24との対向位置で、中間転写ベルト40上に順次重ねて転写される(一次転写工程)。
【0034】
一次転写工程後の感光体ドラム21の表面は、それぞれ、クリーニング装置23との対向位置に達する。クリーニング装置23は、感光体ドラム21上に残存する未転写トナーを回収する(クリーニング工程)。なお、クリーニング装置23で回収された未転写トナーは、廃トナー搬送経路を通過して、廃トナー回収容器80内に回収される。その後、感光体ドラム21の表面は、除電装置の位置で残留電位が除電されて、感光体ドラム21における一連の作像プロセスが終了する。
【0035】
感光体ドラム21上の各色の画像が重ねて転写された中間転写ベルト40の表面は、図中の矢印の方向に移動して、二次転写ローラ65の位置(二次転写領域)に達する。二次転写ローラ65の位置では、シートP上に中間転写ベルト40上のフルカラーの画像がシートP上に二次転写される(二次転写工程)。
【0036】
その後、中間転写ベルト40の表面は、中間転写ベルトクリーニング装置81の位置に達する。中間転写ベルト40上の未転写トナーが中間転写ベルトクリーニング装置81に回収されることで、中間転写ベルト40上の一連の転写プロセスが完了する。なお、中間転写ベルトクリーニング装置81で回収された未転写トナーは、廃トナー搬送経路を通過して、廃トナー回収容器80内に回収される。
【0037】
二次転写ローラ65の位置に搬送されるシートPは、給紙装置61からレジストローラ64等を経由して搬送されるものである。詳しくは、シートPを収納する給紙装置61から、給紙ローラ62により給送されたシートPが、搬送路を通過した後に、レジストローラ64の位置に導かれる。レジストローラ64の位置に達したシートPは、中間転写ベルト40上のトナー像とタイミングを合わせて、二次転写ローラ65の位置に向けて搬送される。
【0038】
フルカラー画像が転写されたシートPは、定着装置66の位置に導かれ、定着装置66における定着ローラと加圧ローラとのニップにて、カラー画像がシートP上に定着される(定着工程)。定着工程後のシートPは、排紙ローラ69によって画像形成装置1の装置外に出力画像として排出された後に、排紙トレイ5上にスタックされて、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0039】
図5は、現像装置内にセットされる初期状態の磁性キャリアを部分的に示す拡大断面図である。
芯材Ca1の表面には、樹脂コート層Ca2が被覆され、樹脂コート層Ca2中に帯電性微粒子Ca3が分散されている。キャリア表面の大部分は樹脂コート層Ca2となっており、帯電性微粒子Ca3はほとんど表面に出ていない。このため、樹脂コート層Ca2の帯電性が主にトナーの帯電性に寄与している。
【0040】
帯電性微粒子Ca3として用いられる元素は、「日本画像学会(2008),「ケミカルトナー」(シリーズ「デジタルプリンタ技術」)p77-78,東京電機大学出版局」に記載のように、電気陰性度が小さくなるほどプラス帯電性が高くなる傾向にある。電気陰性度には、ポーリングの電気陰性度、オールレッドロコウの電気陰性度、マリケンの電気陰性度などがあるが、本明細書では、ポーリングの電気陰性度を用いて帯電性微粒子Ca3の帯電性について検討する。ポーリングの電気陰性度の詳細は、次の文献に詳しい説明が記載されている。L.Pauling,"TheNatureoftheChemicalBond",CornellUniversityPress(1960);小泉正夫訳,"化学結合論",共立出版(1962)。
【0041】
トナーの添加剤に多く用いられているのは、シリカや酸化チタンであるが、これらに含まれるケイ素は電気陰性度1.8であり、チタンは電気陰性度1.5である。トナーの母材樹脂として一般的に用いられる樹脂材料も、電気陰性度は一般的に1.5以上である。これに対し、反転現像方式では、一般にトナーをマイナスに摩擦帯電させることが多い。よって、キャリアとしてはトナーの母材樹脂や添加剤に対して正帯電性を持つ必要がある。そのため、帯電性微粒子Ca3として、電気陰性度1.4が以下である物質からなるものを用いている。
【0042】
かかる物質としては、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、ルビジウム、ストロンチウムなどを例示することができる。また、イットリウム、ジルコニウム、セシウム、バリウム、ハフニウム、フランシウム、ラジウム、各種ランタノイド、各種アクチノイドなどでもよい。これらによって帯電性微粒子Ca3を構成することで、帯電性微粒子Ca3との摩擦によってトナーをマイナス極性に摩擦帯電させることが可能になっている。
【0043】
前述した物質からなる帯電性微粒子Ca3のうち、環境安全性や入手しやすさ(コスト・物量など)の観点から、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、マグネシウムを含む化合物(ハイドロタルサイト)からなるものが好適である。それらの何れにおいても、トナーを良好に帯電させることができる。環境安定性の観点からすると、ハイドロタルサイトや硫酸バリウムが特に好適である。
【0044】
帯電性微粒子Ca3については、そのまま用いても良いが、樹脂コート層Ca2の下に導電層を設けて、電気抵抗を調整したものを用いてもよい。導電層を構成する物質としては、酸化インジウムスズ(ITO)やリンドープスズ(PTO)、タングステンドープスズ(WTO)などを用いることができる。リンドープスズ(PTO)の場合には、所望の抵抗値を得るために、酸化インジウムスズ(ITO)やタングステンドープスズ(WTO)に対して導電層を厚くしなければならないため、帯電性微粒子を表面に露出させるために必要なストレスが比較的大きくなる。よって、酸化インジウムスズ(ITO)またはタングステンドープスズ(WTO)が好ましい。さらに、コスト・入手しやすさ(レアメタルレス)から、タングステンドープスズ(WTO)がもっとも好ましい。
【0045】
これらのスズの塩水和物層を均一に沈着させる方法としては、たとえばWTOであれば、次のようにすればよい。まず、タングステンの塩(塩化タングステン、オキシ塩化タングステン、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸など)を用意する。また、スズ塩(塩化スズ、硫酸スズ、硝酸スズなどのスズ塩、スズ酸ナトリウム、スズ酸カリウムなどのスズ酸塩、スズアルコキシドなどの有機スズ化合物)も用意する。そして、それらの塩を溶解した酸性水溶液と、滴下されたタングステンおよびスズを水和物の形で顔料粒子表面上に析出・沈着させるためのpH調整剤(塩基性水溶液)とを、帯電性微粒子を分散した水溶液中に同時に滴下する。これにより、酸またはアルカリによる帯電性微粒子の溶解や表面変質を防ぎつつ遂行することができる。酸化インジウムスズ(ITO)、リンドープスズ(PTO)を用いる場合には、上述したタングステンをリン・インジウムに置き換えればよい。
【0046】
もちろん導電性をもたせることができれば、これらの処理方法に限らない。キャリアの電気抵抗を調整する別の方法として、帯電性微粒子Ca3の他に、導電性微粒子を被膜樹脂中に分散させる方法を採用しても良い。具体的には、低抵抗材料を被膜樹脂中に分散させればよい。低抵抗材料としてはカーボン、リンドープスズ(PTO)、タングステンドープスズ(WTO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ、酸化亜鉛、ポリアニリンなどの導電性高分子が挙げられる。このうち、経時帯電を阻害しないという点から、タングステンドープスズ(WTO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズが好ましい。さらにコストや入手安定性(レアメタルレス)の観点から、タングステンドープスズ(WTO)または酸化スズが好ましい。
【0047】
帯電性微粒子Ca3表面に導電層を設けて抵抗を調整しても良い。この場合、無機微粒子を構成する物質としては酸化チタン、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛などが挙げられ、特にアルミナが好適である。前記導電層を構成する物質としては、酸化インジウムスズ(ITO)、タングステンドープスズ(WTO)、リンドープスズ(PTO)を用いることができる。コスト・入手しやすさの面からタングステンドープスズ(WTO)、またはリンドープスズ(PTO)が好ましい。無機微粒子に導電層を設ける方法としては、前述の帯電性微粒子表面に導電層を設ける方法と同様の手法を用いることができる。2種類以上の帯電性微粒子Ca3を併用しても良い。
【0048】
なお、酸化チタン(TiO2)には、電荷授受補助機能があり、酸化チタン(TiO2)を含有しないことで、低湿環境における帯電過上昇を抑制することができる。
【0049】
帯電性微粒子Ca3の粒径は、300[nm]以上、900[nm]以下であることが好ましい。帯電性微粒子Ca3を部分的に樹脂コート層Ca2の表面上に突出させて露出させるためには、帯電性微粒子Ca3の粒径を、樹脂コート層Ca2の厚みよりも大きくするか、小さくするにしても厚みに近い値にする必要がある。後者の場合には、初期では、帯電性微粒子Ca3がキャリア表面上に殆ど露出していないが、樹脂コート層Ca2の削れに伴って、帯電性微粒子Ca3の露出率が高くなっていく。
【0050】
帯電性微粒子Ca3の粒径が300[nm]未満であると、樹脂コート層Ca2の表面から露出する微粒子部分の高さが十分でなくなり、現像装置内でキャリアに強いストレスを与えても、帯電性微粒子Ca3がキャリア表面に露出し難くなる。これにより、キャリアのトナー帯電性能の経時低下を十分に抑えることができなくなる。また、前記高さが十分でないことにより、キャリア全体がトナーのスペント層に覆われてしまうこともある。
帯電性微粒子Ca3の粒径が900[nm]を超えると、キャリアの平均粒子径(20~50[μm])に対して帯電性微粒子Ca3の平均粒径が大きくなり過ぎてしまい、帯電性微粒子Ca3がキャリアから離脱し易くなる。この結果、キャリアのトナー帯電性能の経時低下を十分に抑えることが困難になってしまう。
【0051】
帯電性微粒子Ca3の粒径は、次のようにして測定することができる。まず、キャリアを包埋樹脂(Devcon社製、2液混合、30分硬化型エポキシ樹脂)に混ぜ込み、一晩以上置いて硬化させ、機械研磨により大まかな断面試料を作製する。これにクロスセクションポリッシャー(JEOL製SM-09010)を用い、加速電圧5.0[kV]、ビーム電流120[μA]の条件で断面の仕上げを行う。その後、走査型電子顕微鏡(CarlZeiss製Merlin)を用いて、加速電圧0.8[kV]、倍率30000倍の条件で撮影する。撮影した画像をTIFF形式で取り込み、MediaCybernetics社製のImage-ProPlusを用いて、100粒の帯電性微粒子Ca3の円相当径を測定し、その平均値を求める。その結果を帯電性微粒子Ca3の粒径とする。
【0052】
初期状態のキャリアにおける帯電性の調整や、帯電性微粒子Ca3の安定分散のために、樹脂コート層Ca2の樹脂材料中には、アミノシランカップリング剤を含有させることが望ましい。初期の帯電性(削れやスペントの発生していない状態での帯電)については、アミノシランカップリング剤の量で調整することができるからである。アミノシランカップリング剤の添加量は、樹脂コート層Ca2の重量に対して0.1~10[重量%]が望ましい。
【0053】
アミノシランカップリング剤の種類は特に限定されない。例えば、r-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、r-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、r-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどを例示することができる。N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-r-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、r-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、r-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランなどでもよい。また、ビニルトリアセトキシシラン、r-クロルプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、r-アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどでもよい。また、オクタデシルジメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、r-クロルプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロルシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、アリルトリエトキシシランなどでもよい。また、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、1,3-ジビニルテトラメチルジシラザンなどでもよい。また、メタクリルオキシエチルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライドなどでもよい。これらは、二種以上を併用してもよい。
【0054】
シランカップリング剤の市販品としては、例えば、AY43-059、SR6020、SZ6023、SH6026、SZ6032、SZ6050、AY43-310M、SZ6030、SH6040、AY43-026などを例示することができる。また、AY43-031、sh6062、Z-6911、sz6300、sz6075、sz6079、sz6083、sz6070、sz6072、Z-6721、AY43-004、Z-6187、AY43-021、AY43-043などでもよい。また、AY43-040、AY43-047、Z-6265、AY43-204M、AY43-048、Z-6403、AY43-206M、AY43-206E、Z6341、AY43-210MC、AY43-083、AY43-101などでもよい。また、AY43-013、AY43-158E、Z-6920、Z-6940などでもよい。何れも、東レ・シリコーン社製のものである。
【0055】
キャリアの体積平均粒径は、20[μm]~50[μm]であることが好ましい。キャリアの体積平均粒径が20[μm]未満であると、一粒子あたりの磁化が弱くなるためにキャリア付着が発生することがある。また、50[μm]を超えると、高解像度な画像が得られ難くなる。キャリアの体積平均粒径は、マイクロトラック粒度分析計(日機装社製)のSRAタイプを用いて測定することができる。0.7[μm]以上、125[μm]以下のレンジ設定で行ったものを用いることができる。また、分散液にはメタノールを使用し、メタノールの屈折率を1.33、キャリアおよび芯材の屈折率を2.42に設定する。
【0056】
樹脂コート層Ca2中の帯電性微粒子Ca3の含有比率は樹脂コート層Ca2の重量に対して20重量%以上、70重量%以下であることが好ましい。含有比率が20重量%未満であると、帯電性微粒子Ca3の量が不足してトナースペント時に十分な帯電能力を得ることができなくなる。また、帯電性微粒子Ca3の含有量が70重量%を超えると、樹脂コート層Ca2中の帯電性微粒子Ca3が過剰になる。この結果、十分な結着力が得られず、帯電性微粒子Ca3が剥離し易くなることから、感光体ドラム21に対するキャリア付着を引き起こし易くなる。
【0057】
本実施形態に使用するトナーは、結着樹脂、ワックス、及び着色剤を含有するトナー母体粒子と、前記トナー母体粒子の表面に外添剤と、を有しており、前記外添剤には、平均一次粒子径が15[nm]以上250[nm]以下のシリカと、平均粒径10[nm]以上50[nm]以下の潤滑剤粒子であるステアリン酸亜鉛が含まれる。すなわち、本実施形態の現像剤は、トナーと、磁性キャリアと、潤滑剤粒子であるステアリン酸亜鉛が含まれている。
【0058】
トナー母体粒子を1としたときの前記ステアリン酸亜鉛の処方公差は0.03以上0.5以下であるのが望ましい。0.03未満であると、ステアリン酸亜鉛の存在量が少なすぎて、潤滑剤としての機能(クリーニング補助機能など)を十分に得ることができない。また、0.5を超えると、ステアリン酸亜鉛の存在量が多すぎて、ステアリン酸亜鉛の飛散など、主目的外の副作用が発生しやすくなる。
【0059】
なお、トナー母体粒子の表面とはトナー母体粒子が外気と接する面を意味する。トナー母体粒子の表面に外添剤を有するとは、トナー母体粒子の流動性や現像性、帯電性を補助することができる程度に有している状態を意味する。
【0060】
本実施形態の画像形成装置1は、上述したとおり、ステアリン酸亜鉛の粒子(潤滑剤粒子)を含有させた現像剤を用いている。この場合、
図6に示すように、ステアリン酸亜鉛の粒子Sを核としてその周囲にトナー粒子Tが付着したトナーの凝集体TGが形成され得る。
【0061】
このようなトナーの凝集体TGは、外形的にはトナーと同極性(マイナス極性)の帯電性を有するので、
図7(a)に示すように、現像電界(トナーを感光体ドラム21側へ移動させる電界)の作用により現像ローラ26aから離脱しやすい。また、このようなトナーの凝集体TGは、個々のトナー粒子Tよりも重量が大きいため、現像ローラ26aの遠心力を受けて現像ローラ26aから離脱しやすい。なお、現像剤中の磁性キャリアCは現像ローラ26aの内部のマグネットによる磁界の作用で現像ローラ26aの表面上に拘束されるが、ステアリン酸亜鉛の粒子Sは非磁性であるため、磁界の作用で現像ローラ26a上に拘束されることもない。したがって、ステアリン酸亜鉛の粒子Sを核としたトナーの凝集体TGは、現像ローラ26aから離脱しやすく、
図7(a)に示すように、例えば現像装置26の入口シール26s上に堆積しやすい。
【0062】
入口シール26sに堆積したトナーの凝集体TGからなるトナー塊TKは、その後、
図7(b)に示すように、地肌電界(トナーを現像剤担持体側へ移動させる電界)を受けたり、現像装置26の振動を受けたりしたときに、入口シール26sからトナー塊TKの状態で落下して、トナー落ちを生じさせる。このトナー落ちが発生すると、落下したトナー塊TKが感光体ドラム21に付着するなどして、画像汚れを引き起こす。
【0063】
ここで、ステアリン酸亜鉛の粒子Sを核としたトナーの凝集体TGが現像装置26の入口シール26s上に堆積するのは、湿度の影響が大きく、特に低湿環境時において堆積量が多くなることが、本発明者らの研究により判明した。その原因は次のように考えられる。
【0064】
低湿環境時には、一般に現像γが下がるため、現像γが低下しても画像濃度を確保するために画像濃度調整制御を実行して、現像剤中のトナー濃度が高めに設定される。そのため、現像剤中における弱帯電トナーや非帯電トナー(キャリアに対して静電気力的に引き寄せられないトナー)の存在量が増え、ステアリン酸亜鉛の粒子Sを核としたトナーの凝集体TGの発生量が増加する結果、現像装置26の入口シール26sにトナーの凝集体TGが堆積する堆積量が増えるものと考えられる。
【0065】
図8は、現像γの算出概念を示す説明図である。
本実施形態の画像形成装置1には、
図1に示すように、ブラック用のプロセスカートリッジ20BKの中間転写ベルト表面移動方向下流側に、画像濃度検知手段としてのフォトセンサ50が中間転写ベルト40の表面に対向するように配置されている。フォトセンサ50は、発光ダイオード等の発光素子と、フォトダイオード等の受光素子とから構成され、中間転写ベルト40上に形成される画像の濃度(トナー像のトナー付着量)を検出する。
【0066】
本実施形態では、中間転写ベルト40の幅方向の3つの位置(画像形成装置のフロント側(F)、リア側(R)、センター(C))にそれぞれ対向する3つのフォトセンサ50F,50C,50Rが配置されている。現像γは、これらの3つのフォトセンサ50F,50C,50Rにより検知される画像濃度の検知結果に基づいて算出される。
【0067】
具体的な現像γの算出手順の一例を以下に示す。
まず、作像条件決定処理を開始し、中間転写ベルト40上のフロント(F)、センター(C)、リア(R)のそれぞれに、画像濃度の異なる階調パターンを複数形成する。その後、各階調パターンをフォトセンサ50F,50C,50Rにより検知して、フォトセンサ50F,50C,50Rの出力値を画像濃度としてのトナー付着量M/A[mg/cm2]に変換する。
【0068】
得られたトナー付着量M/A[mg/cm
2]と、対応する階調パターン作像時の現像ポテンシャル(Vb-VL)[-V]とから、
図8に示すようなグラフが得られる。なお、現像ポテンシャルは、現像バイアスVb[-V]とベタ部の静電潜像電位VL[-V]との差分値である。そして、現像ポテンシャル(Vb-VL)[-V]とトナー付着量M/A[mg/cm
2]との関係を線形近似し、このとき生成される直線の傾きを現像γとして得る。なお、本実施形態では、フロント(F)、センター(C)、リア(R)のそれぞれについて得られる現像γの算術平均を取ったものを現像γの値(制御値)として使用する。
【0069】
図9は、高湿環境時と低湿環境時における現像γの違いを示すグラフである。
図9のグラフに示すように、低湿環境時の目標現像γは高湿環境時の目標現像γと比較して小さくなる。そのため、目標のトナー付着量を得るためには、低湿環境時における目標トナー濃度を高湿環境時よりも高く設定して、低湿環境時の目標現像γを高湿環境時の目標現像γに近づける画像濃度調整制御が行われる。
【0070】
しかしながら、目標トナー濃度を高く設定すると、現像装置26内における現像剤中のトナー量が増え、現像剤中における弱帯電トナーや非帯電トナーの存在量が増加する結果、ステアリン酸亜鉛の粒子Sを核としたトナーの凝集体TGの発生量が増加する。その結果、現像装置26の入口シール26sにトナーの凝集体TGが堆積する堆積量が増える。
【0071】
そこで、本実施形態の制御手段としての制御部55は、絶対湿度検出センサ27の検出結果(絶対湿度)に基づいて低湿環境であると判断したときには、当該低湿環境よりも湿度の高い環境(常湿環境又は高湿環境)時と比較して、目標現像バイアスを高くする制御を実行する。この制御が実行されることで、低湿環境時には、所定の画像濃度を得るための目標現像バイアスが高く設定される結果、目標トナー濃度の上げ幅を低めに抑えることができる。その結果、低湿環境時において、ステアリン酸亜鉛を核としたトナーの凝集体TGの発生量を抑制できる。これにより、現像装置の入口シール等にトナーの凝集体が堆積する堆積量を抑制でき、トナー落ちの発生が抑制され、トナー落ちによる画像汚れを抑制することができる。なお、制御部55は、例えば、ROMなどのメモリに格納されたプログラムに含まれる命令をCPUが実行することで実現される。
【0072】
〔制御例1〕
図10は、本実施形態におけるトナー濃度低下制御を含む現像γ制御の一例(以下「制御例1」という。)を示すフローチャートである。
本制御例1の現像γ制御は、制御部55により、例えば、累積出力画像枚数が200枚に達する毎に1回実行される。本制御例1では、現像γ制御が開始されると、まず、絶対湿度検出センサ27により画像形成装置内又は画像形成装置周囲の絶対湿度h[g/m
3]を検出する(S11)。そして、検出された絶対湿度hに対応する目標現像γ(target_γ)を下記の式(1)により算出する(S12)。なお、式(1)は、高湿環境である絶対湿度20.3[g/m
3]時の目標現像γは0.87であり、低湿環境である絶対湿度1.3[g/m
3]時の目標現像γは0.73である例である。
【0073】
【0074】
次に、
図8を用いて説明した手順に従い、階調パターンを作像してフォトセンサ50により画像濃度(トナー付着量M/A[mg/cm
2])を取得する作像条件決定処理を実行して(S13)、現在の現像γ(present_γ)を算出する(S14)。また、トナー濃度センサ26fにより現在のトナー濃度TCを示す出力値Vtを取得する(S15)。
【0075】
ここで、本制御例1では、目標現像γ(target_γ)と現在の現像γ(present_γ)とを比較する(S16)。このとき、画像形成装置の使用環境が低湿環境へ変化した場合には、上述した処理ステップS12により決定される目標現像γ(target_γ)は低く設定されることになる。したがって、この場合、目標現像γ(target_γ)よりも現在の現像γ(present_γ)の方が大きいと判断される(S16のYes)。その結果、現在の現像γ(present_γ)を目標現像γ(target_γ)に近づけるために、現像γを下げるべく、トナー濃度TCを下げるトナー濃度低下制御を実行する。具体的には、目標トナー濃度に対応する制御目標値Vtrefを現在の設定値よりも高くして、現像装置26内の現像剤中のトナー濃度TCを減少させる(S17)。すなわち、画像形成時に実行されるトナー補給量を通常よりも減らして、現像装置26内のトナー量を減少させることで、現像装置26内の現像剤中のトナー濃度TCを減少させる。
【0076】
一方で、目標現像γ(target_γ)よりも現在の現像γ(present_γ)の方が小さいと判断された場合(S16のNo)、現在の現像γ(present_γ)を目標現像γ(target_γ)に近づけるために、トナー濃度TCを上げて現像γを上げる。具体的には、目標トナー濃度に対応する制御目標値Vtrefを現在の設定値よりも低くして、現像装置26内の現像剤中のトナー濃度TCを上昇させる(S18)。
【0077】
以上の処理ステップS16~S18を繰り返し、現在の現像γ(present_γ)が目標現像γ(target_γ)と等しくなったら(S19のYes)、目標現像γに基づいて目標のトナー付着量が出る現像バイアスVb(目標現像バイアス)を算出して(S20)、一連の現像γ制御を終了する。このとき、上述したように低湿環境時の目標現像γが高湿環境時の目標現像γよりも低いものであるため、低湿環境時に算出される現像バイアスVbは、低湿環境時に算出される現像バイアスVbよりも高いものとなる。
【0078】
以上のように、本制御例1によれば、低湿環境時には、該低湿環境よりも湿度の高い高湿環境時と比較して現像バイアスVbが高く設定され、現像装置26内における現像剤中のトナー濃度TCの上昇が抑えられる。その結果、低湿環境時には現像剤中のトナー濃度が低めに設定され、ステアリン酸亜鉛を核としたトナーの凝集体TGの発生量を抑制でき、現像装置26の入口シール26sにトナーの凝集体TGが堆積する堆積量を抑制することができる。したがって、トナー落ちの発生が抑制され、トナー落ちによる画像汚れを抑制することができる。
【0079】
〔制御例2〕
図11は、本実施形態におけるトナー濃度低下制御を含む現像γ制御の他の例(以下「制御例2」という。)を示すフローチャートである。
本制御例2の現像γ制御は、制御部55により、例えば、累積出力画像枚数が10枚につき1回実行される。本制御例2では、現像γ制御が開始されると、上記制御例1と同様、まず、絶対湿度検出センサ27により画像形成装置内又は画像形成装置周囲の絶対湿度h[g/m
3]を検出し(S21)、検出された絶対湿度hに対応する目標現像γ(target_γ)を算出する(S22)。また、上記制御例1と同様、作像条件決定処理を実行して(S23)、現在の現像γ(present_γ)を算出するとともに(S24)、トナー濃度センサ26fにより現在のトナー濃度TCを示す出力値Vtを取得する(S25)。
【0080】
本制御例2でも、目標現像γ(target_γ)と現在の現像γ(present_γ)とを比較する(S26)。ただし、画像形成装置の使用環境が低湿環境へ変化して、目標現像γ(target_γ)よりも現在の現像γ(present_γ)の方が大きいと判断された場合(S26のYes)、
図12の矢印Aで示すように、目標のトナー付着量が出る本来の現像バイアスVbよりも高い現像バイアスVb'に変更する(S27)。
【0081】
これにより、
図4に示したトナー補給制御において、本来よりも高い現像バイアスVb'でパッチパターンが作像される結果、これをフォトセンサ50により検知することで、
図12の矢印A'で示すように、トナー付着量が目標トナー付着量よりも濃い(高い)と判断される。その結果、目標トナー濃度に対応する制御目標値Vtrefが現在の設定値よりも高く設定され、現像装置26内の現像剤中のトナー濃度TCが減少する(S28)。
【0082】
一方で、目標現像γ(target_γ)よりも現在の現像γ(present_γ)の方が大きいと判断された場合(S26のNo)、
図12の矢印Bで示すように、目標のトナー付着量が出る本来の現像バイアスVbよりも低い現像バイアスVb''に変更する(S29)。これにより、
図4に示したトナー補給制御において、本来よりも低い現像バイアスVb''でパッチパターンが作像される結果、これをフォトセンサ50により検知することで、
図12の矢印B'で示すように、トナー付着量が目標トナー付着量よりも薄い(低い)と判断される。その結果、目標トナー濃度に対応する制御目標値Vtrefが現在の設定値よりも低く設定され、現像装置26内の現像剤中のトナー濃度TCが上昇する(S30)。
【0083】
以上の処理ステップS26~S30を繰り返し、現在の現像γ(present_γ)が目標現像γ(target_γ)と等しくなったら(S31のYes)、一連の現像γ制御を終了する。
【0084】
以上のように、本制御例2によれば、低湿環境時には、該低湿環境よりも湿度の高い高湿環境時と比較して現像バイアスVbが高く設定され、現像装置26内における現像剤中のトナー濃度TCの上昇が抑えられる。その結果、低湿環境時には現像剤中のトナー濃度が低めに設定され、ステアリン酸亜鉛を核としたトナーの凝集体TGの発生量を抑制でき、現像装置26の入口シール26sにトナーの凝集体TGが堆積する堆積量を抑制することができる。したがって、トナー落ちの発生が抑制され、トナー落ちによる画像汚れを抑制することができる。
【0085】
次に、トナーの凝集体TGが堆積する入口シール26sの一例について説明する。
図13は、本実施形態における現像領域近傍を示す拡大図である。
本実施形態の現像装置26は、上述のとおり、現像ローラ26aと感光体ドラム21とが対向する現像領域に対して感光体ドラム21の回転方向上流側で感光体ドラム21の表面に接する入口シール26sを備えている。この入口シール26sの基端は、現像下ケース26jの入口シールホルダ26hに保持されている。
【0086】
ここで、
図13に示すように感光体ドラム21の回転軸方向から見た場合、入口シール26sの先端位置を「P」とし、入口シールホルダ26hの任意の地点を「Q」とし、現像ローラ26aの表面上の任意の地点を「R」とし、感光体ドラム21の表面上の任意の地点を「S」とし、RQ間の距離とSQ間の距離との和が最小になるときの入口シールホルダ26hの地点を「Q'」とし、地点Q'と現像領域の感光体ドラム回転方向中央位置Oとを結ぶ軸に沿って当該中央位置Oを原点とした「Y軸」と定義する。また、X軸は当該中央位置O(原点)を通り、Y軸に直交する軸である。
【0087】
このとき、本実施形態の入口シール26sは、先端位置PのY軸座標よりも入口シールホルダの地点Q'のY軸座標の方が原点Oに近いとういう条件を満たすように配置される。入口シール26sは、柔軟な材料で構成されているため、感光体ドラム21の表面に当接されることで、
図13に示すように撓んだ状態で配置される。なお、入口シール26s及び入口シールホルダ26hは現像装置26に付属しており、現像装置26の単体では
図14に示すように入口シール26sは撓むことなく真っすぐな姿勢となっている。
【0088】
上記条件を満たすように入口シール26sが入口シールホルダ26hに対して配置されれば、ステアリン酸亜鉛の粒子Sを核としたトナーの凝集体TGのうち、現像ローラ26aから離脱して入口シール26sに向かうトナーの凝集体TGは、入口シールホルダ26hに阻まれて、入口シール26sに到達しない。したがって、トナーの凝集体TGが入口シール26sに堆積することが抑制され、トナー落ちの発生が抑制される。
【0089】
なお、現像ローラ26aから離脱したトナーの凝集体TGの一部は、現像装置26の現像ローラ26aを露出させる現像開口部から現像装置26の外部へ飛散するが、そのトナーの凝集体TGは感光体ドラム21の表面にキャッチされるため、入口シール26sに堆積することはない。
【0090】
次に、現像装置26に設置されているフィルタ26tについて説明する。
図15は、本実施形態におけるフィルタ26tを説明するための現像装置26の部分拡大図である。
本実施形態における現像装置26は、装置内と装置外とを連通させる開口部26k1にフィルタ26tが設置されている。詳しくは、現像装置26の現像上ケース26kの天井部には、内外に貫通する開口部26k1が形成されている。そして、その開口部26k1を塞ぐようにフィルタ26tが設けられている。フィルタ26tは、現像装置内の現像剤を構成する粒子であるトナーT、磁性キャリアC及びステアリン酸亜鉛Sを捕集して通気するためのものである。
【0091】
フィルタ26tは、トナーT、キャリアC及びステアリン酸亜鉛Sのいずれの粒径よりも小さなメッシュからなり、空気のみが通過できるように形成されている。なお、本実施形態では、開口部26k1が略矩形に開口しており、フィルタ26tは略長方体状に形成されているが、開口部26k1やフィルタ26tの形状には特に制限はない。
【0092】
このようなフィルタ26tが現像装置26に設けられることで、現像装置26の内圧が上昇することが抑制される結果、現像装置26の現像ローラ26aを露出させる現像開口部からの空気の流出が少なくなる。そのため、ステアリン酸亜鉛の粒子Sを核としたトナーの凝集体TGが現像装置26内から現像開口部を介して外部へ流出しにくくなる。よって、フィルタ26tが現像装置26に設けられることで、ステアリン酸亜鉛の粒子Sを核としたトナーの凝集体TGが入口シール26sに堆積することが更に抑制され、トナー落ちが更に抑制される。しかも、フィルタ26tが現像装置26に設けられることで、現像開口部を介してトナー単体が外部へ流出すること(トナー飛散)も抑制されるため、トナー単体が現像装置外部で堆積してトナー塊が落下するトナー落ちも抑制される。
【0093】
特に、本実施形態のフィルタ26tは、現像装置外側のフィルタ部分26t1単位体積当たりの重量密度が現像装置内側のフィルタ部分26t2の単位体積当たりの重量密度よりも大きくなるように構成されている。これにより、フィルタの深い場所でトナーを捕捉することができるため、トナー濃度が高めである時におけるトナー飛散を抑制することができる。
【0094】
また、本実施形態では、現像剤中にステアリン酸亜鉛が含有しているため、高画像面積率の画像形成動作が繰り返されるなどの状況下では、ステアリン酸亜鉛のスペントが発生してトナー帯電能力が低下し、トナーの帯電量が低下しやすい。このトナーの帯電量低下を抑制するため、本実施形態では、磁性キャリアCのコート樹脂に硫酸バリウムを含有させている。これにより、トナーの帯電量低下が抑制され、トナー帯電の経時的な安定性を担保することができる。
【0095】
次に、現像装置26の入口シール26sの変形例について説明する。
図16は、本変形例における入口シール26sの構成を示す説明図である。
本変形例は、入口シール26sに現像ローラ26aと略同電位が付与される構成である。具体的には、絶縁体である入口シール26sの現像ローラ26a側の表層に導電体26s1を設ける(例えば、導電体を塗布したり導電体を貼り付けたりする)。そして、
図16に示すように、現像ローラ26aと入口シール26sの導電体26s1とを短絡させることで、入口シール26sの導電体26s1と現像ローラ26aとを略同電位Vbにしている。
【0096】
この構成によれば、入口シール26sと現像ローラ26aとの間の電位差がなくなるので、ステアリン酸亜鉛の粒子Sを核としたトナーの凝集体TGを現像ローラ26aから入口シール26sへ向かわせる電界が形成されない。よって、トナーの凝集体TGが入口シール26sに堆積しにくくなり、トナー落ちが抑制される。
【0097】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、潜像担持体(例えば感光体ドラム21)と、トナーTとキャリアCとを含む現像剤中の該トナーを現像バイアスVbにより前記潜像担持体上の潜像に付着させて現像する現像装置26と、を備える画像形成装置1であって、前記現像剤は潤滑剤粒子(例えばステアリン酸亜鉛S)を含んでおり、湿度を検出する湿度検出手段(例えば絶対湿度検出センサ27)と、画像濃度を検知する画像濃度検知手段(例えばフォトセンサ50)と、前記画像濃度検知手段の検知結果に基づいて、目標現像バイアスにおける画像濃度が目標画像濃度よりも高いときには前記現像剤中のトナー濃度TCを低下させる画像濃度調整制御を実行する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記湿度検出手段の検出結果に基づいて、低湿環境時には該低湿環境よりも湿度の高い環境時と比較して目標現像バイアスを高くすることを特徴とするものである。
一般に、潜像担持体へのトナー添加剤の付着抑制や潜像担持体の摩耗抑制などの目的で、潜像担持体上に潤滑剤粒子を付着させる画像形成装置が存在する。そして、潜像担持体上への潤滑剤粒子の供給方法として、現像剤中に潤滑剤粒子を含有させた現像剤を用いる方法が知られている。
潤滑剤粒子を含有させた現像剤を用いる場合、潤滑剤粒子を核としてその周囲にトナーが付着したトナーの凝集体が形成され得る。このようなトナーの凝集体は、外形的にはトナーと同極性の帯電性を有するので、現像電界(トナーを潜像担持体側へ移動させる電界)の作用により現像剤担持体から離脱しやすい。また、このようなトナーの凝集体は、個々のトナー粒子よりも重量が大きいため、現像剤担持体の遠心力を受けて現像剤担持体から離脱しやすい。なお、現像剤中のキャリアは一般に磁界の作用によって現像剤担持体上に拘束されるが、潤滑剤粒子は非磁性であることが通常であるため、磁界の作用によって現像剤担持体上に拘束されることもない。したがって、潤滑剤粒子を核としたトナーの凝集体は、現像剤担持体から離脱して現像装置の入口シール等に堆積しやすい。現像装置の入口シール等に堆積したトナーの凝集体からなるトナー塊は、その後、地肌電界(トナーを現像剤担持体側へ移動させる電界)を受けたり、現像装置の振動を受けたりしたときに、入口シール等からトナー塊の状態で落下して、トナー落ちを生じさせる。このトナー落ちが発生すると、落下したトナー塊が潜像担持体に付着して、画像汚れを引き起こす。
本発明者らの研究の結果、潤滑剤粒子を核としたトナーの凝集体が現像装置の入口シール等に堆積するのは、湿度の影響が大きく、特に低湿環境時において堆積量が多くなることを見出した。これは、低湿環境時には、一般に現像γが下がるため、現像γが低下しても画像濃度を確保するために画像濃度調整制御を実行して、現像剤中のトナー濃度が高めに設定される。そのため、潤滑剤粒子を核としたトナーの凝集体の発生量が増加する結果、現像装置の入口シール等にトナーの凝集体が堆積する堆積量が増えるためであると考えられる。
本態様においては、湿度検出手段の検出結果に基づき、低湿環境である時には、低湿環境よりも湿度の高い環境時と比較して目標現像バイアスを高くする。これにより、低湿環境時には、所定の画像濃度を得るための目標現像バイアスが高く設定される結果、画像濃度を確保するための画像濃度調整制御による現像剤中のトナー濃度の上げ幅を低めに抑えることができる。その結果、低湿環境時において、潤滑剤粒子を核としたトナーの凝集体の発生量を抑制することができ、現像装置の入口シール等にトナーの凝集体が堆積する堆積量を抑制することができる。したがって、トナー落ちの発生が抑制され、トナー落ちによる画像汚れを抑制することができる。
【0098】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記潤滑剤粒子はステアリン酸亜鉛を含むことを特徴とするものである。
これによれば、ステアリン酸亜鉛を核としたトナーの凝集体が現像装置の入口シール等に堆積するのを抑制することができる。
【0099】
[第3態様]
第3態様は、第1又は第2態様のいずれかにおいて、前記湿度検出手段は、絶対湿度を検出することを特徴とするものである。
これによれば、トナーの凝集体が現像装置の入口シール等に堆積するのをより適切に抑制することができる。
【0100】
[第4態様]
第4態様は、第1乃至第3態様のいずれかにおいて、前記現像装置は、現像剤担持体(例えば現像ローラ26a)と前記潜像担持体とが対向する現像領域に対して前記潜像担持体の回転方向上流側で該潜像担持体の表面に接する入口シール26sと、該入口シールの基端を保持する入口シールホルダ26hとを有し、前記潜像担持体の回転軸方向から見た場合、前記入口シールの先端位置を「P」とし、入口シールホルダの任意の地点を「Q」とし、前記現像剤担持体の表面上の任意の地点を「R」とし、前記潜像担持体の表面上の任意の地点を「S」とし、RQ間の距離とSQ間の距離との和が最小になるときの入口シールホルダの地点を「Q'」とし、前記地点Q'と前記現像領域の潜像担持体回転方向中央位置Oとを結ぶ軸に沿って該中央位置Oを原点とした「Y軸」と定義したとき、前記入口シールの先端位置PのY軸座標よりも前記入口シールホルダの地点Q'のY軸座標の方が前記原点に近いことを特徴とするものである。
これによれば、潤滑剤粒子を核としたトナーの凝集体のうち、現像剤担持体から離脱して入口シールに向かうトナーの凝集体は、入口シールホルダに阻まれて、入口シールに到達しない。したがって、トナーの凝集体が入口シールに堆積することが抑制され、トナー落ちの発生が抑制される。
【0101】
[第5態様]
第5態様は、第1乃至第4態様のいずれかにおいて、前記現像装置は、現像剤担持体(例えば現像ローラ26a)と前記潜像担持体とが対向する現像領域に対して前記潜像担持体の回転方向上流側で該潜像担持体の表面に接する入口シール26sを有し、前記入口シールには、前記現像剤担持体と略同電位が付与されることを特徴とするものである。
これによれば、入口シールと現像剤担持体との間の電位差がなくなるので、潤滑剤粒子を核としたトナーの凝集体を現像剤担持体から入口シールへ向かわせる電界が形成されない。よって、トナーの凝集体が入口シールに堆積しにくくなり、トナー落ちが抑制される。
【0102】
[第6態様]
第6態様は、第5態様において、前記入口シールの両面のうちの前記現像剤担持体側の表面は導電体26s1であり、前記現像剤担持体と前記入口シールの前記導電体とが短絡されていることを特徴とするものである。
これによれば、簡易な構成で、入口シールに現像剤担持体と略同電位を付与することができる。
【0103】
[第7態様]
第7態様は、第1乃至第6態様のいずれかにおいて、前記キャリアのコート樹脂に硫酸バリウムが含有されていることを特徴とするものである。
これによれば、トナーの帯電量低下が抑制され、トナー帯電の経時的な安定性を担保することができる。
【0104】
[第8態様]
第8態様は、第1乃至第7態様のいずれかにおいて、前記現像装置は、現像剤の通過を阻止しつつ空気の通過を許容するフィルタ26tを備えた空気排気部を有し、前記フィルタは、現像装置外側の単位体積当たりの重量密度が現像装置内側の単位体積当たりの重量密度よりも大きいことを特徴とするものである。
これによれば、フィルタの深い場所でトナーを捕捉することができるため、トナー濃度が高めである時におけるトナー飛散を抑制することができる。
【符号の説明】
【0105】
1 :画像形成装置
20 :プロセスカートリッジ
21 :感光体ドラム
26 :現像装置
26a :現像ローラ
26b1 :第一搬送スクリュ
26b2 :第二搬送スクリュ
26c :ドクターブレード
26d :補給口
26e :仕切部材
26f :トナー濃度センサ
26h :入口シールホルダ
26j :現像下ケース
26k :現像上ケース
26k1 :開口部
26s :入口シール
26s1 :導電体
26t :フィルタ
27 :絶対湿度検出センサ
40 :中間転写ベルト
50 :フォトセンサ
55 :制御部
C :磁性キャリア
L :レーザ光
O :原点
P :シート
S :ステアリン酸亜鉛
T :トナー
TC :トナー濃度
TG :トナーの凝集体
TK :トナー塊
【先行技術文献】
【特許文献】
【0106】