(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076986
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】検査システムおよび検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/90 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
G01N21/90 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023194566
(22)【出願日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2022188590
(32)【優先日】2022-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023011076
(32)【優先日】2023-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊茂
(72)【発明者】
【氏名】大杉 史織
(72)【発明者】
【氏名】中重 文宏
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA12
2G051AB02
2G051BA02
2G051BB07
2G051BC02
2G051CA03
2G051CB01
2G051CB05
2G051CC07
2G051DA06
(57)【要約】
【課題】曲面がある被検査物体でも、正確な検査が可能な検査システムおよび検査方法を提供する。
【解決手段】検査システムは、曲面がある被検査物体の、撮影装置による画像を用いて検査を行う検査システムであって、前記被検査物体に向けて第1照明光を照射する第1照明装置と、前記被検査物体に向けて第2照明光を照射する第2照明装置と、前記第1照明装置および前記第2照明装置と、前記被検査物体と、の間に配置され、前記第1照明光および前記第2照明光のそれぞれの一部を通過させる開口を有する遮断部材と、を有し、前記開口と前記被検査物体との最短距離をDとし、前記開口の最小幅をSとし、前記撮影装置の撮影方向と、前記第1照明光の照射方向と、のなす照射角度をθとした場合に、以下の条件を満たす。
1.0×D < S/{2.0×tan(θ)} < 9.0×D
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面がある被検査物体の、撮影装置による画像を用いて検査を行う検査システムであって、
前記被検査物体に向けて第1照明光を照射する第1照明装置と、
前記被検査物体に向けて第2照明光を照射する第2照明装置と、
前記第1照明装置および前記第2照明装置と、前記被検査物体と、の間に配置され、前記第1照明光および前記第2照明光のそれぞれの少なくとも一部を通過させる開口を有する遮断部材と、を有し、
前記開口と前記被検査物体との最短距離をDとし、前記開口の最小幅をSとし、前記撮影装置の撮影方向と、前記第1照明光の照射方向と、のなす照射角度をθとした場合に、以下の条件を満たす、
1.0×D < S/{2.0×tan(θ)} < 9.0×D
ことを特徴とする検査システム。
【請求項2】
前記開口は、前記第1照明光の一部を通過させる第1開口と、前記第2照明光の一部を通過させる第2開口と、前記撮影装置に到達する光の一部を遮断する第3開口と、を含み、
前記開口が、前記第1開口と前記第2開口の、前記第3開口から離れた側のそれぞれの端部間の幅であることを特徴とする請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
7°< θ < 45°の条件を満たす、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記被検査物体は、搬送方向に搬送され、
前記撮影装置の撮影方向は、前記搬送方向に直交する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の検査システム。
【請求項5】
前記第1照明装置は、前記搬送方向における前記被検査物体の上流側から前記第1照明光を照射し、
前記第2照明装置は、前記搬送方向における前記被検査物体の下流側から前記第2照明光を照射し、
前記第1照明装置および前記第2照明装置それぞれの点灯および消灯を制御する制御装置と、を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の検査システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記撮影装置が前記搬送方向における前記被検査物体の下流側の部分を撮影する場合に、前記第1照明装置が点灯し、前記第2照明装置が消灯するように制御するとともに、前記撮影装置が前記搬送方向における前記被検査物体の上流側の部分を撮影する場合に、前記第2照明装置が点灯し、前記第1照明装置が消灯するように制御する、
ことを特徴とする請求項5に記載の検査システム。
【請求項7】
前記第1照明光および前記第2照明光のそれぞれは、ライン状の光であり、
前記撮影装置は、複数の画素が並ぶラインセンサを含む、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の検査システム。
【請求項8】
曲面がある被検査物体の、撮影装置による画像を用いて検査を行う検査システムによる検査方法であって、前記検査システムが、
第1照明装置により、前記被検査物体に向けて第1照明光を照射し、
第2照明装置により、前記被検査物体に向けて第2照明光を照射し、
前記第1照明装置および前記第2照明装置と、前記被検査物体と、の間に配置され、開口を有する遮断部材により、前記第1照明光および前記第2照明光のそれぞれの一部を通過させ、
前記開口と前記被検査物体との最短距離をDとし、前記開口の最小幅をSとし、前記撮影装置の撮影方向と、前記第1照明光の照射方向と、のなす照射角度をθとした場合に、以下の条件を満たす、
1.0×D < S/{2.0×tan(θ)} < 9.0×D
ことを特徴とする検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査システムおよび検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被検査物体の画像検査を行う検査システムおよび検査方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、ガラス壜の特定部位に投光する照明と、ガラス壜の特定部位を撮像するカメラと、照明から特定部位に投光される光の一部を遮る遮蔽物と、カメラで得られた画像を処理して特定部位のビリを検出する画像処理装置とを備える検査装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、ガラス壜等の被検査物体が凹凸形状を有するものでかつ曲面がある場合、正確な検査ができなかった。
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、曲面がある被検査物体でも、正確な検査が可能な検査システムおよび検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様によれば、検査システムは、曲面がある被検査物体の、撮影装置による画像を用いて検査を行う検査システムであって、前記被検査物体に向けて第1照明光を照射する第1照明装置と、前記被検査物体に向けて第2照明光を照射する第2照明装置と、前記第1照明装置および前記第2照明装置と、前記被検査物体と、の間に配置され、前記第1照明光および前記第2照明光のそれぞれの少なくとも一部を通過させる開口を有する遮断部材と、を有し、前記開口と前記被検査物体との最短距離をDとし、前記開口の最小幅をSとし、前記撮影装置の撮影方向と、前記第1照明光の照射方向と、のなす照射角度をθとした場合に、以下の条件を満たす。
1.0×D < S/{2.0×tan(θ)} < 9.0×D
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、被検査物体が凹凸形状を有するものでかつ曲面がある場合にも、正確な検査が可能な検査システムおよび検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の検査システムの概略構成を示す上視図である。
【
図3】被検査物体および検査システムの横視図である。
【
図5】被検査物体での正反射光による検査不良を示す図である。
【
図7】撮影装置の正面に被検査物体が搬送された図である。
【
図8】時間に対する照明装置の電力供給の状態図である。
【
図10】本実施形態の被検査物体の迷光を示す図である。
【
図11】本実施形態の照明装置の第1照明光および第2照明光それぞれの拡散部分を遮断する遮断部材を示す上視図である。
【
図12】本実施形態の第1照明光および第2照明光それぞれの中心線が交わるクロスポイントを示す図である。
【
図14】本実施形態の照射角度と中心角との関係を示す図である。
【
図15】ボトルに歪が無い場合の正反射光のPETボトルへの写り込みの状態を示す図である。
【
図16】ボトルに歪が有る場合との正反射光のPETボトルへの写り込みの状態を示す図である。
【
図17】本実施形態の遮断部材とクロスポイントとの関係を示す図である。
【
図18】クロスポイントと中心点間の距離と中心角との関係を示す図である。
【
図19】本実施形態の開口中心点と被検査物体の最近傍面との間の距離と検査可能範囲との関係の一例を示す図である。
【
図21】本実施形態の開口中心点と被検査物体の最近傍面との間の距離と検査可能範囲との関係の別の例を示す図である。
【
図22】本実施形態の遮断部材の一例を示す平面図である。
【
図23】変形例に係る遮断部材の開口を示す図である。
【
図24】
図23における第1開口、第2開口および第3開口の一部を拡大表示する図である。
【
図25】内側領域幅の変化に伴う遮断効果の変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。各図面において、同一構成要素には同一符号を付与し、重複した説明を適宜省略する。
【0010】
図1は、本実施形態の検査システム100の概略構成を示す上視図である。検査システム100は、撮影装置110と、第1照明装置120Aと、第2照明装置120Bと、遮断部材160と、を少なくとも備える。また検査システム100は、照明用電源130と、トリガ制御ユニット140と、センサ150と、検査装置170と、をさらに備えていてもよい。これらの構成要素は、互いに電気的に接続される。検査システム100は、被検査物体Tを検査する。
【0011】
まず、本実施形態の検査システム100が検査する被検査物体Tについて説明する。本実施形態の被検査物体Tは、曲面を有し、少なくとも可視光に対して透光性を有する収容器である。なお、少なくとも可視光に対して透光性を有することを、以降では単に「透光性の」という。被検査物体Tの材質は特に限定されないが、PET(Poly Ethylene Terephthalate)等の樹脂やガラスなどが挙げられる。樹脂を用いることにより、ガラスを用いる場合と比較して曲面及び凹凸を被検査物体Tに形成できるため、樹脂を含んで構成される被検査物体Tに本実施形態を適用することが特に好適である。被検査物体Tは、例えばPETボトルである。なお、被検査物体Tは、表面に光沢があってもよい。
【0012】
被検査物体Tは、表面に凹凸形状を含む。この凹凸形状によって、被検査物体Tの観察者は、文字や図形等を認識できる。凹凸形状は、レーザ照射により形成される。
【0013】
従来から収容器には、名称、成分、賞味期限、バーコード、リサイクルマークまたはロゴマーク等を表示するラベルが貼付されたものがある。消費者に訴求するデザインまたは絵をラベルにより表示して商品の個性の発揮または競争力アップを図る試みがなされている。
【0014】
一方、昨今、プラスチックごみによる海洋汚染が取り沙汰され、世界的にプラスチックごみによる汚染をなくしていく動きが活発化しており、収容器の循環型リサイクルへの要求が高まっている。ここで、収容器の循環型リサイクルとは、分別回収された使用済みの収容器をリサイクル業者が収容器の原料となるフレークに変え、再度収容器を製造することをいう。
【0015】
このような循環型リサイクルを円滑に進めるためには、収容器またはラベル等の材質毎に分別回収を徹底することが好ましいが、分別回収のために収容器からラベルを剥がす作業は手間がかかり、分別回収を徹底させるための制約の1つになっている。
【0016】
これに対し、名称または成分等の情報を表示するパターンを、レーザを用いて収容器の表面に直接形成することにより、ラベルを無くすことができる。
【0017】
また、被検査物体Tに光を照射し、撮影装置による被検査物体Tの画像を用いて、被検査物体Tを検査する技術が知られている。
【0018】
しかし、曲面を有する被検査物体Tの場合、複数の光源が同一平面上に配置されていると照射角度が垂直になっているため、立体形状の被検査物体Tへの照明光が被検査物体Tにより正反射される。正反射された光を用いて被検査物体Tを撮影すると、撮影された画像において被検査物体Tの像が白くなる、いわゆる白飛びが発生し、被検査物体Tを正確に検査できなくなる場合がある。また透光性の収容器の画像を用いて検査する場合、多重反射等の迷光を考慮する必要がある。ここで、特許文献1のようにガラス瓶の微小なクラックを検出するために、照明装置に付随した遮蔽物によって特定範囲に不要な光を遮蔽する技術も知られている。しかしながら、本実施形態の被検査物体Tに対して、単に遮蔽物を適用しただけでは検査可能範囲が狭くなる。更に、迷光の原因となる照明光の拡散部分を遮断する遮断部材を用いた場合、照明光の照射角度を考察する必要もある。
【0019】
本実施形態の検査システム100は、凹凸形状を有するものでかつ曲面があり、正反射が発生し易い被検査物体Tであっても、正確な検査が可能である。また、透光性の被検査物体Tで生じる迷光による検査不良を低減し、信頼性の高い画像検査が可能である。
【0020】
搬送機300は、被検査物体Tを搬送方向TPの上流から下流へ搬送する。搬送機300は、搬送コンベア、AGV(無人搬送車)、および搬送ロボット等のいずれかである。本実施形態では、搬送方向TPの上流側を単に「上流側」と称し、搬送方向TPの下流側を単に「下流側」と称する。例えば、樹脂ボトル形成元又は被検査物体Tへの加工等が行われる側は、上流側である。下流側は、被検査物体Tへの加工又は本実施形態に係る検査の後、梱包又は出荷が行われる側である。
【0021】
撮影装置110は、被検査物体Tを撮影する。なお、画像として撮像する観点では、本実施形態における「撮影」の用語は、「撮像」に置換されてもよい。撮影装置110の撮影方向は、搬送方向TPに直交する。ここでの直交では、±5°以下の角度誤差は許容される。撮影装置110は、例えば、複数の画素が延伸方向に並ぶラインセンサを含むラインセンサカメラである。延伸方向は、被検査物体Tの長手方向である。検査システム100では、撮影装置110としてラインセンサカメラを用いることにより、撮影されるライン状の部分画像を繋ぎ合わせることができ、この結果、高解像度の画像を得ることができる。撮影装置110は、検査装置170に電気的に接続される。撮影装置110は、所定の検査アルゴリズムにより検査装置170により制御される。
【0022】
第1照明装置120Aは、被検査物体Tに向けて第1照明光IL1を照射する。第2照明装置120Bは、被検査物体Tに向けて第2照明光IL2を照射する。第1照明装置120Aおよび第2照明装置120Bは、例えばライン型照明装置である。第1照明光IL1および第2照明光IL2のそれぞれは、延伸方向に延びるライン状の光である。第1照明装置120Aおよび第2照明装置120Bは、撮影装置110の両側に1つずつ配置される。第1照明装置120Aおよび第2照明装置120Bは、照明用電源130に電気的に接続される。なお、本実施形態では第1照明装置120Aおよび第2照明装置120Bを併せて単に照明装置120と表記する場合もある。
【0023】
第1照明装置120Aは、被検査物体Tの搬送方向TPにおける撮影装置110の上流側に配置される。第1照明装置120Aは、撮影装置110の光軸Oに対して第1の角度をなして被検査物体Tに向けて第1照明光IL1を照射する。第2照明装置120Bは、被検査物体Tの搬送方向TPにおける撮影装置110の下流側に配置される。第2照明装置120Bは、撮影装置110の光軸Oに対して第2の角度をなしてから被検査物体Tに向けて第2照明光IL2を照射する。
【0024】
照明用電源130は、例えばストロボ用電源である。照明用電源130は、第1照明装置120A、第2照明装置120B、およびトリガ制御ユニット140に電気的に接続される。照明用電源130は、照明用電力を第1照明装置120Aおよび第2照明装置120Bに供給する。照明用電源130は、トリガ信号をトリガ制御ユニット140から受信して、トリガ信号に応じて第1照明装置120Aおよび第2照明装置120Bの点灯または消灯を制御する。
【0025】
トリガ制御ユニット140は、例えばマイクロコントローラ(Micro Controller Unit)等を備える制御基板である。トリガ制御ユニット140は、センサ150、照明用電源130、および検査装置170に電気的に接続される。トリガ制御ユニット140は、被検査物体Tの検知信号をセンサ150から受信して、トリガ信号を照明用電源130および検査装置170に送信する。
【0026】
センサ150は、例えば光電センサである。センサ150は、被検査物体Tの搬送方向TPにおける撮影装置110よりも上流側に配置される。センサ150は、発光部および受光部を備える。発光部および受光部は、搬送方向TPの両側に一つずつ配置される。発光部から発光された光は、搬送方向TPを横切って受光部で受光される。受光部は、被検査物体Tの通過により光が遮断された場合に、被検査物体Tの検知信号をトリガ制御ユニット140に送信する。
【0027】
遮断部材160は、第1照明装置120Aおよび第2照明装置120Bと、被検査物体Tと、の間に配置される。遮断部材160は、第1照明光IL1および第2照明光IL2のそれぞれの少なくとも一部を通過させる開口161を有する。遮断部材160は、例えば、開口161を有する板状部材である。遮断部材160は、被検査物体Tの手前で第1照明装置120Aおよび第2照明装置120Bから照射され、被検査物体Tに向けて拡散する第1照明光IL1および第2照明光IL2のそれぞれの一部を遮断できる。
【0028】
検査装置170は、第1照明装置120Aおよび第2照明装置120Bそれぞれの点灯および消灯を制御する制御装置の一例に対応する。検査装置170は、例えばPC(Personal Computer)またはサーバ等のコンピュータである。検査装置170は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等を有する。検査装置170は、ROMに記憶されている各種プログラムをRAMにロードし、各種プログラムをCPUで実行することにより、検査システム100の全体を制御する。
【0029】
検査装置170は、トリガ信号をトリガ制御ユニット140から受信して、トリガ信号に応じて撮影装置110により撮影された被検査物体Tの画像を取得する。この画像は、被検査物体Tの一部を撮影した部分画像を繋ぎ合わせた合成画像である。検査装置170は、被検査物体Tの画像に基づいて被検査物体Tの外観を検査する。
【0030】
図2は、被検査物体Tおよび照明装置120の詳細図である。被検査物体Tは、被検査物体Tの一部を所定の方向から第1照明装置120Aにより光を照射される。また、第1照明装置120Aと異なる方向から被検査物体Tの一部を第2照明装置120Bにより光を照射される。第1照明装置120Aおよび第2照明装置120Bは、第1照明光IL1および第2照明光IL2として例えば縦長の直線状のライン状の照明光を照射する。第1照明光IL1および第2照明光IL2それぞれのライン幅は、例えば7mmであり、第1照明光IL1および第2照明光IL2それぞれの中心線から片側への発散角は、例えば4.3°である。
【0031】
図3は、被検査物体Tおよび検査システム100の横視図である。
図3には、撮影装置110の光軸O上に、第1照明装置120Aと被検査物体Tが配置された様子が示されている。
【0032】
図4は、撮影装置110の動作を示す図である。
図4は、被検査物体Tが搬送機300上に搬送方向TPへ搬送されながら、撮影装置110で撮影される動作を示している。被検査物体Tの外観検査では、高速で搬送される被検査物体Tを高速で撮影した画像をもとに検査が行われるため、例えば撮影装置110には短冊状の部分画像IMを取得するラインセンサカメラが用いられる。撮影装置110は、搬送方向TPの上流から下流へ相対移動する被検査物体Tを、例えば幅35μmのラインで連続撮影し、複数の部分画像IMを繋ぎ合わせて1枚の2次元の画像を生成する。
【0033】
図5は、被検査物体Tでの正反射光RLによる検査不良を示す図である。被検査物体Tが搬送機300上に搬送方向TPへ搬送されながら、被検査物体Tを撮影装置110としてラインセンサカメラにより高速で撮影する場合は強い光源が必要になる。そこで、例えば第1照明装置120Aと第2照明装置120Bとしてストロボを用いて被検査物体Tに光を照射する必要がある。しかし、曲面を持つ透光性の収容器等の被検査物体Tでは正反射光RLによる写り込みが発生してしまい、正反射光RLが生じている箇所では文字等を判別できなくなり、適切な画像検査ができない問題が生じる。
【0034】
図5(A)には、第1照明装置120Aのみを常時照射し第2照明装置120Bは照射せず撮影する場合が示されているが、正反射光RLにより被検査物体Tの一部(上流側)の像が見えなくなる現象が生じる。
図5(B)には、第1照明装置120Aは照射せず第2照明装置120Bのみを常時照射して撮影する場合が示されているが、正反射光RLにより被検査物体Tの一部(下流側)の像が見えなくなる現象が生じる。
【0035】
そこで、正反射光RLによる不具合が発生しないように、本実施形態の検査システム100は、被検査物体Tの搬送方向TPにおける被検査物体Tの下流側の部分を撮影する場合は、第1照明装置120Aを点灯し、第2照明装置120Bを消灯する。また検査システム100は、被検査物体Tの搬送方向TPにおける被検査物体Tの上流側の部分を撮影する場合は、第2照明装置120Bを点灯し、第1照明装置120Aを消灯する。つまり検査システム100は、異なる照射角度に配置された第1照明装置120Aおよび第2照明装置120Bを被検査物体Tの部分ごとに順次点灯する制御を行う。
【0036】
第1照明装置120Aからの第1照明光IL1は、第1照明光IL1の照射角度を調節することにより、撮影装置110が正反射光RLを受光しないように被検査物体Tの搬送方向TPにおける被検査物体Tの下流側の表面に対して小さい角度で照射される。また第2照明装置120Bからの第2照明光IL2は、第2照明光IL2の照射角度を調節することにより、撮影装置110が正反射光RLを受光しないように被検査物体Tの搬送方向TPにおける被検査物体Tの上流側の表面に対して小さい角度で照射される。これにより、撮影装置110は、正反射光RLの写り込みがない画像を取得することができる。
【0037】
図6、
図7および
図9を用いて被検査物体Tの画像を取得する第1ステップ、第2ステップおよび第3ステップについて説明する。
図6は、被検査物体Tの下流側を撮影する図である。まず第1ステップとして、検査システム100は、被検査物体Tの搬送方向TPの上流側から搬送されてきた被検査物体Tの下流側の部分を撮影するため、第1照明装置120Aを点灯し、第2照明装置120Bを消灯する。これにより、撮影装置110は、第2照明装置120Bから照射された第2照明光IL2の正反射光RLの影響を受けることなく、被検査物体Tの下流側の部分の画像を取得することができる。
【0038】
続いて
図7は、撮影装置110の正面に被検査物体Tが搬送された図である。第2ステップとして、検査システム100は、撮影装置110の正面に搬送されてきた被検査物体Tを撮影するため、第1照明装置120Aにより第1照明光IL1を照射し、かつ第2照明装置120Bにより第2照明光IL2を照射する。そして検査システム100は、第1照明装置120Aと第2照明装置120Bの照射ムラが最小になるタイミングで、第1照明装置120Aによる照射から第2照明装置120Bによる照射へ切り替える。
【0039】
ここで
図8は、時間に対する照明装置120の電力供給の状態図である。実線は第1照明装置120Aの電力供給状態の時間経過を示し、破線は第2照明装置120Bの電力供給状態の時間経過を示す。時間t0で第1照明装置120Aの照射が開始され、時間t2で第1照明装置120Aの照射が終了する。また、時間t1で第2照明装置120Bの照射が開始され、時間t3で第1照明装置120Aの照射が終了する。時間t1と時間t2間で第1照明装置120Aおよび第2照明装置120Bが照射されている。
【0040】
図9は、被検査物体Tの上流側を撮影する図である。第3ステップとして、検査システム100は、被検査物体Tの搬送方向TPにおける被検査物体Tの上流側の部分を撮影するため、第1照明装置120Aを消灯し、第2照明装置120Bを点灯する。これにより、撮影装置110は、第1照明光IL1の正反射光RLの影響を受けることなく、被検査物体Tの上流側の部分の画像を取得することができる。
【0041】
以上のように第1照明装置120Aおよび第2照明装置120Bの順次点灯制御により、撮影装置110は、第1照明光IL1および第2照明光IL2の正反射の影響を低減し、被検査物体Tの短冊状の複数の部分画像を取得する。検査装置170は、正反射光RLによる不具合のない被検査物体Tの画像をもとに被検査物体Tの画像検査を行う。
【0042】
しかし、PETボトル等の透光性の収容器等では、収容器内で多重反射した迷光が発生し、被検査物体Tの表面に形成された凹凸パターン部を読み取ることができないという検査不良が生じる場合がある。この検査不良は、ラインセンサカメラにより高速で撮影を行う場合に、ストロボ等の強い光源を必要とすることに起因している。強い光源を用いる場合、特に透光性の液体が入った透光性の収容器では、収容器の部分ごとに第1照明装置120Aおよび第2照明装置120Bを順次点灯して撮影を行ったとしても、迷光の発生により正反射と同様に強い反射光が撮影装置110に入る。
【0043】
図10は、本実施形態の被検査物体Tの迷光SLを示す図である。迷光SLは、例えば、第1照明装置120Aから照射された第1照明光IL1の一部が被検査物体T内で多重反射することにより発生する。第1照明光IL1の中心線から片側への発散角は、例えば4.3°である。
【0044】
本実施形態では、遮断部材160により、拡散する第1照明光IL1および第2照明光IL2のそれぞれの一部を遮断することにより迷光SLの影響を低減する。
図11は、本実施形態の照明装置120の第1照明光IL1および第2照明光IL2それぞれの拡散部分を遮断する遮断部材160を示す上視図である。
【0045】
遮断部材160は、第1照明光IL1および第2照明光IL2それぞれの拡散部分を遮断する。例えば、遮断部材160は、迷光SLを引き起こす原因となる透光性の収容器に向かって拡散する第1照明光IL1および第2照明光IL2それぞれの一部を遮断する。
図11には、第1照明装置120Aに対応する遮断部材160の上流側の部分だけが描かれているが、第2照明装置120Bに対応する遮断部材160の下流側の部分も存在する。遮断部材160は、第1照明光IL1の一部と、第2照明光IL2の一部と、を通過させる開口161を有する。
【0046】
第1照明光IL1および第2照明光IL2それぞれのおよそ半分ずつが遮断部材160により遮断された場合、第1照明光IL1の中心線と、第2照明光IL2の中心線とが交わる交点ができる(以下、クロスポイントと称する。)。
図12は、本実施形態の第1照明光IL1および第2照明光Il2それぞれの中心線が交わるクロスポイントCPを示す図である。
【0047】
図12には、クロスポイントCPと、撮影装置110の光軸Oに対する第1照明光IL1の照射角度θと、遮断部材160と、開口161と、最近傍面NSが示されている。照射角度θは、撮影装置110の撮影方向と、第1照明光IL1の照射方向と、のなす角度をいう。撮影装置110の撮影方向は光軸Oと略一致する。第1照明光IL1の照射方向は、第1照明光IL1の中心軸と略一致する。
図12は、第1照明光IL1として、第1照明光IL1の中心軸を表示している。
図12では、最近傍面NSは、クロスポイントCPから水平方向(X軸方向)に延びる被検査物体Tと接する線を含み、開口161と被検査物体Tとの最短距離に位置する被検査物体Tの接平面を指す。なお、第2照明光IL2の照射角度も、第1照明光IL1と同様にθである。以下、説明を簡略化するため、第1照明光IL1と第2照明光IL2とが同じ作用を有する場合には、第1照明光IL1を代表して説明する場合がある。
【0048】
図12には、開口中心点SCと、開口中心点SCと最近傍面NSとの間の距離Dと、が示されている。距離Dは、開口161と被検査物体Tとの最短距離に対応する。
図12では、開口中心点SCは開口161の中心部に設定されている。また、開口中心点SCは光軸Oと開口161の交点である。開口161は、被検査物体Tから距離Dをもって設置されている。
【0049】
クロスポイントCPを被検査物体Tの最近傍面NS上に設定する場合、遮断部材160が第1照明光IL1および第2照明光IL2それぞれのおよそ半分ずつを遮断することにより、得られる画像における左右端部の照度が足りなくなる。画像における中央部と左右端部との間の照度差と、画像における左右端部に写る被検査物体Tの湾曲の強さと、により正確な画像検査ができない場合がある。このことは、特にレーザ照射により形成された被検査物体Tの表面の凹凸形状による散乱光をもとに画像検査を行う場合に顕著になる。
【0050】
図12と同様に第1照明光IL1および第2照明光IL2それぞれのおよそ半分ずつを遮断部材160により遮断し、第1照明光IL1および第2照明光IL2のクロスポイントCPを被検査物体Tの最近傍面NSに設定した場合を
図13に例示する。
図13はより詳細な説明をするために、第2照明光IL2および遮断部材160を簡略化した図であり、
図12よりも中心から少しずれた箇所を検査している状態を示している。
図13には、クロスポイントCPと、撮影装置110の光軸Oに対する第1照明光IL1の照射角度θと、遮断部材160と、開口161と、最近傍面NS、距離D、中心点C、半径R、中心角r、距離S/2が示されている。
【0051】
中心点Cは、被検査物体Tの円の中心を示す点である。半径Rは、被検査物体Tの円の半径の長さを示す。中心角rは、検査可能な範囲を示す角度で、被検査物体Tの中心角rの円周領域が検査可能な範囲である。距離S/2は、開口161の最小幅Sの半分の距離を示す。
【0052】
クロスポイントCPを被検査物体Tの最近傍面NSに設定した場合、第1照明光IL1の照射角度θが大きくなり、第1照明光IL1が被検査物体Tの搬送方向TPにおける被検査物体Tの下流側の部分に入射する角度が浅くなる。そのため、被検査物体Tの表面における凹凸形状を、散乱光を用いて検査する場合は、被検査物体Tの中心角rにより示される検査可能範囲が狭くなる。
【0053】
そこで、発明者は第1照明光ILの照射角度θと、検査可能範囲として中心角rとの関係を鋭意検討した。検査可能範囲として、500mlのPETボトルに8pt(point)の文字をラベル状に書き込み、どれぐらいのボトル中心角度rまで検査が可能かを調査して求めた。
図14は、本実施形態の照射角度θと中心角rとの関係を示す図である。
図15は、PETボトルに歪が無い場合の正反射光のボトルへの写り込みの状態を示す図である。
図16は、PETボトルに歪が有る場合との正反射光のボトルへの写り込みの状態を示す図である。
図15及び
図16において、PETボトルB1は、PETボトルを口部の上方から視た様子を示している。PETボトルB2は、PETボトルを正面から視た様子を示している。正反射光Srは、PETボトルB2に写り込んだライン照明の正反射光を示している。
【0054】
まず、PETボトルには、炭酸水系の液体を入れる厚くて硬いボトルと、ミネラルウォーター系の液体を入れる薄くて柔らかなボトルとが大きく分けて存在するが、特に薄くて柔らかなボトルでは搬送及び保管時に歪(傾き)が生じることがあると判明した。
図15に示すように、歪が無い場合には、ライン照明の正反射光Srは、PETボトルB2に対し縦方向に写り込んだ。この場合には、
図8及び
図9で説明したような交互照射によってその正反射成分を除去することができた。一方、
図16に示すように、歪(傾き)がある場合には、照射角度θが小さい場合、すなわち照射角度θ=θ1の場合には、ライン照明の正反射光Srの映り込みが中心線を超えてしまう現象があることが分かった。この現象により、照明の交互点灯処理を行っても、正反射光Srが画像から除去できないという不具合が生じた。この不具合を解決するためには、特に照射角度θが大きい場合、すなわち照射角度θ=θ2の場合には、照射角度θ2は45°以内とすることが重要であることが分かった。照射角度θ2を45°以内とすることにより、歪による照明の映り込みを除去可能となった。
【0055】
上述の現象の解消を含め、照射角度θは45°以下であると、中心角rが広がる。逆に照射角度θが45°よりも大きい場合、急激に中心角rが狭まることが判明した。したがって、凹凸形状を有する被検査物体Tに第1照明装置120Aにより第1照明光IL1を照射し、第1照明光IL1の拡散部分を遮断部材160により遮断する場合には、第1照明光IL1の照射角度θを45°以下に設定することが好ましいことが分かった。
図14に示す例では、照射角度θが小さくなるほど中心角rが広くなることが分かった。但し、照射角度θが7°以下になると、第1照明光IL1の正反射光が被検査物体Tの正面に生じ、正面の検査ができなくなった。従って、照射角度θは7°よりも大きいことが好ましいことが分かった。つまり、本実施形態では、以下の式を満足することにより、正確な検査を行えることが分かった。
7°< θ < 45°
【0056】
また、凹凸形状での散乱光によるコントラストの関係上、および非検査表面が斜め方向からの観察によって文字などがつぶれてしまうため、被検査物体Tの中心角rが75°以上の場合に検査が不能となった。したがって中心角rは75°未満が好ましい。
【0057】
図14に示す例では、S/2を10mmとし、開口高さを120mmとし、開口中心点SCと最近傍面NSとの間の距離Dを10mmとし、被検査物体Tの半径Rを36.5mmとした。
【0058】
第1照明光IL1は、被検査物体Tでの迷光SLによる乱反射を防ぐため、被検査物体Tの方向へ拡散する部分の略半分を遮断部材160により遮断した。第1照明装置120Aが照射される位置と、開口161の位置と、により第1照明光ILの照射角度θが規定されるため、照射角度θを変更すると、クロスポイントCPの位置も変わることになる。
図14に示す例では、第1照明装置120Aとして、IDBC-LSR/Leimac製のライン型LED(Light Emitting Diode)を使用した。第1照明装置120Aの発散角は4.3°であり、第1照明装置120Aの照射口から開口161までの距離を120mmとして照射角度θを変更した。
【0059】
また、
図14に示す例では、撮影装置110として、RMSL4K100CL-V1-F/NED製のラインセンサカメラを使用した。撮影装置110の焦点距離は50mmであり、撮影装置110の最小撮影幅は31μmである。撮影装置110の撮影時のラインクロックは30kHzとした。また撮影装置110は、開口中心点SCから200mmの位置に設置した。被検査物体Tにおいて、凹凸形状が形成されている領域の高さ方向の長さは89mmとした。被検査物体Tを搬送機300により300mm/sの速度で搬送させて画像検査を行った。
【0060】
検査システム100は、被検査物体Tの表面の凹凸形状を検査可能である。凹凸形状での散乱光によるコントラストの関係上、検査が可能かどうかは10×100画素の平均輝度値が20以上になるラインを検査可能範囲と規定した。
【0061】
図17は、遮断部材160とクロスポイントCPとの関係を示す図である。
図17は、
図13に対し、距離S/2tanθと距離Rcosrがさらに図示されている。クロスポイントCPと開口中心点SC間の距離は照射角度θと開口161の最小幅Sを用いて、S/2tanθとなっている。照射角度θと、開口161と、により、クロスポイントCPが決まるため、照射角度θをもとに開口中心点SCとクロスポイントCPとの間の距離が計算により求まる。また、クロスポイントCPから水平方向に延伸する線と、該延伸する線と直交して中心点Cを通る線と、の交点を交点C'とすると、交点C'と中心点Cとの間の距離は、Rcosrである。
【0062】
図18は、クロスポイントCPと開口中心点SC間の距離S/2tanθと中心角rとの関係を示す図である。
図18は、
図14の横軸の照射角度θを、クロスポイントCPと中心点SC間の距離に換算している。
図18では、クロスポイントCPと開口中心点SC間の距離S/2tanθが10mm以上で検査可能となる中心角rが広がった。またS/2tanθが85mm以上では正反射光RLを除去できなかった。
【0063】
ここで、
図18の判断基準は、開口161の最小幅Sと、開口中心点SCと被検査物体Tの最近傍面NSとの間の距離Dとが可変であるため、普遍的な最適範囲とは言えないように見える。しかし、実際には、開口161の最小幅Sと、開口中心点SCと被検査物体Tの最近傍面NSとの間の距離Dとは、被検査物体Tの半径Rにより最適な範囲が概ね決まる。凹凸形状を有する被検査物体Tでは、凹凸形状での散乱光によるコントラストの関係上、
図14に示すように中心角rがおよそ75°未満である。被検査物体Tの中心角rが75°以上の場合には、正反射光RLを取り除けないか、あるいは迷光SLにより像として認識できない等の検査の困難性が加味される。すなわち、検査限界点となる中心角rが74°の被検査物体Tの表面に、照射角度θを設定し、開口161の最小幅Sを或る幅に設定したとする。この場合、開口中心点SCと被検査物体Tの最近傍面NSとの間の理想的な距離Dは、以下の式(1)によって決定される。
【数1】
【0064】
開口中心点SCと被検査物体Tの最近傍面NSとの間の距離Dと、被検査物体Tの半径Rとの関係は、式(1)により表される関係が好ましい。被検査物体Tの半径Rと、開口中心点SCと被検査物体Tの最近傍面NSとの間の距離Dと、の関係の誤差は、±50%程度まで許容される。
【0065】
開口161の最小幅Sの値は、被検査物体Tの半径Rの0.5~1.0程度とするのが好ましく、開口161の最小幅Sを狭くし過ぎると通過する光量が少なくなる。また開口中心点SCと被検査物体Tの最近傍面NSとの間の距離Dの値が小さくなり過ぎると、搬送機300に干渉する場合がある。開口161の最小幅Sを広くし過ぎると、迷光SLが発生し易くなったり、または検査システム100が不必要に大きくなったりする場合がある。
【0066】
被検査物体Tの半径Rは被検査物体Tの大きさであるため、基本的に被検査物体Tの半径Rの許容範囲は無い。しかし、被検査物体Tの半径Rが大き過ぎると、検査システム100が大きくなって生産現場で扱い難くなる。被検査物体Tの半径Rが小さ過ぎると、搬送機300のサイズ、および、被検査物体Tの搬送ホルダとの関係上、開口中心点SCと被検査物体Tの最近傍面NSとの間の距離Dが被検査物体Tの半径Rに対して大きくなり過ぎる。すなわち開口中心点SCと被検査物体Tの最近傍面NSとの間の距離Dが式(1)において好ましい値にならない。したがって、被検査物体Tの半径Rは20mmから100mm程度が望ましい。
【0067】
開口中心点SCと被検査物体Tの最近傍面NSとの間の距離Dの値が小さ過ぎると、被検査物体Tの搬送ホルダに干渉する場合がある。開口中心点SCと被検査物体Tの最近傍面NSとの間の距離Dの値が大き過ぎると、検査システム100の無駄な肥大化、あるいは光の回り込み等による検査不良が生じる場合がある。
【0068】
以上のように、変数となる、開口中心点SCと被検査物体Tの最近傍面NSとの間の距離Dは、被検査物体の半径Rにより概ね決定される。クロスポイントCPの位置を表すために
図18の横軸のように〔mm〕という単位ではなく、
図19に示すように開口中心点SCと被検査物体Tの最近傍面NSとの間の距離Dをもとにした換算値で表すことが好ましい。
【0069】
図19は、本実施形態の開口中心点SCと被検査物体Tの最近傍面NSとの間の距離Dと、検査可能範囲rとの関係を示す図である。例えば
図19の横軸の値が2の場合、開口中心点SCとクロスポイントCPとの間の距離S/2tanθは2Dという換算値で
表されていることを示す。これにより、被検査物体Tの大きさとしての半径Rと、開口161の最小幅Sと、により求まる、開口中心点SCと被検査物体Tの最近傍面NSとの間の距離Dの変数としてS/2tanθを使用できる。
【0070】
図19に示すように、開口中心点SCとクロスポイントCPとの間の距離S/2tanθは、開口中心点と被検査物体Tの最近傍面NSとの間の距離Dよりも大きい位置において中心角rを拡大できることが判明した。さらに好ましくは、以下の式(2)を満たす範囲でクロスポイントCPの位置を決定すれば良いことが判明した。
1.0×D < S/{2.0×tan(θ)} < 9.0×D・・・(2)
本実施形態では、上記の式(2)を満たすことにより、被検査物体Tが凹凸形状を有するものでかつ曲面がある場合にも、正確な検査が可能な検査システム100および検査方法を提供することができる。
【0071】
ここで、
図20は、遮断部材160の別の一例を示す図である。
図20は、本実施形態の開口中心点と被検査物体の最近傍面との間の距離と検査可能範囲との関係の別の例を示す図である。スリットをライン状照明と別に設定するのではなく、
図20に示すようにライン状照明上に設置して余分な照明を遮断する方法である。これについても本発明が有用であるかを調査した。ここでの実験ではDを70mm、Sを150mm、θを44°、R-Rcosrを7.3、S/2を77.3mmとした。この設定において
図20と同様にD換算したS/2tanθと検査可能範囲との関係を求めたところ、
図21のように
図19とほぼ同等な結果を得ることができた。このように遮断部材160の形態を変更しても、本発明はほぼ同等の効果を発現することが分かった。
【0072】
本実施形態では、
図12に示したように、第1照明装置120Aおよび第2照明装置120Bにおける片側の光をそれぞれの遮断部材160で遮断する。片側の光は、第1照明光IL1における片側半分の領域の光、および第2照明光IL2における片側半分の領域の光を意味する。
図22は、遮断部材160の一例を示す平面図である。
図22に示すように、遮断部材160は、略矩形の外形形状と、平面視における内側に開口161と、を有する板状部材である。最小幅Sは、開口161の最小幅に対応する。遮断部材160の最小幅Sを変化させることにより、第1照明装置120Aおよび第2照明装置120Bそれぞれからの光における、片側の光の遮断光量を変化させることができる。
【0073】
図23は、変形例に係る遮断部材160の開口161aを示す図である。開口161aは、第1照明光IL1の一部を通過させる第1開口161Aと、第2照明光IL2の一部を通過させる第2開口161Bと、撮影装置110に到達する光の一部を遮断する第3開口161Cと、を含む。第1開口161Aおよび第2開口161Bは、第3開口161Cの両側に配置される。
【0074】
最小幅Sa1は、第1開口161Aの最小幅である。最小幅Sa2は、第2開口161Bの最小幅である。最小幅Sa3は、第3開口161Cの最小幅である。撮影装置110は、例えば35μmほどの細い短冊状の画像を撮影するため、最小幅Sa3は1mm程度であればよい。ここで矩形として例示された遮断部材160および160aの外形形状は特に限定されない。
【0075】
図24は、
図23における第1開口161A、第2開口161Bおよび第3開口161Cの一部を拡大表示する図である。
図25は、内側遮断領域幅SaCの変化に伴う遮断効果の変化の一例を示す図である。内側遮断領域幅SaCは、遮断部材160の中心線162と、第1開口161Aにおける中心線162側の端部と、の間の距離を意味している。
図25のデータを取得するための実験条件は、
図18における実験条件とほぼ同じとし、開口中心点SCとクロスポイントCPとの間の距離を40mmとした。
【0076】
図25のデータを取得するための実験では、第1照明装置120Aの片側点灯のみを行い、交互点灯を行わないようにして、正反射光が発生する条件で実験を行った。また、搬送速度200mm/s、撮影装置110のラインクロック6.3kHzの条件下で実験を行った。
【0077】
図25において、縦軸は、画像の明るさの指標であるdigit値Diを表している。横軸は、内側遮断領域幅SaCを表している。実線グラフDi1は、被検査物体Tの撮影画像における被検査物体Tの凹凸形状領域に対応する画像領域の50×50画素の輝度値を平均化したdigit値Diである。被検査物体Tの凹凸形状領域は、レーザ照射により凹凸形状が形成された領域である。破線グラフDi2は、被検査物体Tの撮影画像における迷光から生じる反射光に対応する画像領域の250×10画素の輝度値を平均化したdigit値である。digit値を取得する領域が異なるのは、被検査物体Tの凹凸形状領域に対応する正方形に近い画像領域と、迷光から生じる反射光に対応する、物体の高さ方向に細長い画像領域と、の間で形状が異なるためである。但し、各画像領域を構成する画素数は等しい。
【0078】
図25に示すように、内側遮断領域幅SaCを広げ第1開口161A幅の内側を狭くしても、迷光を低減する効果はほとんど得られず、正反射光を低減する効果も得られず、かえって撮影画像における凹凸形状領域に対応する領域が暗くなった。また、正反射光も内側遮断領域幅SaCを広げていくと、ある程度狭まったものの、内側遮断領域幅SaCを広げた場合での遮断では完全に消し去る前に、凹凸形状領域の明るさの極端な低下が生じて検査ができなくなった。
【0079】
図25に示した結果から、
図23に示したような第1開口161A、第2開口161Bおよび第3開口161Cを有する遮断部材160を用いた場合にも、本実施形態の効果は、遮断部材160における第1開口161Aおよび第2開口161Bの外側を遮断する領域で得られることが分かった。つまり、遮断部材160が第1開口161A、第2開口161Bおよび第3開口161Cを有する場合において、
図22の開口161の最小幅Sは、
図23に示したそれら第1開口161A、第2開口161Bおよび第3開口161Cという3つの開口の左端部から右端部までの幅であるSaと同義であることが分かった。換言すると、
図22の最小幅Sと、
図23における第3開口からそれぞれ離れた側の端部、すなわち第1開口161Aの左端から第2開口161Bの右端までの端部間の幅Saとを同じ扱いで本発明に適用することで、遮断部材の形状が異なっても遮断部材160による遮断効果が得られることが分かった。
【0080】
なお、遮断部材160は、撮影装置110が第1照明光IL1および第2照明光IL2のそれぞれを多く取り込むため、迷光が生じない範囲で第1照明光IL1および第2照明光IL2のそれぞれの半分よりも少なく遮断可能である。
【0081】
また被検査物体Tは、円筒体ではなく、六面体または八面体等の多面体の被検査物体Tであっても、本発明の範囲で検査を行うことにより、画像検査を適切に実行可能な画像を生成することができ、かつ迷光による検査不良を低減することが可能である。
【0082】
また第1照明装置120Aおよび第2照明装置120Bはライン型照明装置に限定されるものではない。同様に、撮影装置110はラインセンサカメラに限定されるものではない。
【0083】
また遮断部材160は第1照明光IL1および第2照明光IL2の拡散部分を遮断する例を示したが、遮断部材160は、照明用光源の種類に応じて正反射光RLまたは迷光SLが撮影装置110で受光されないように第1照明光IL1および第2照明光IL2のそれぞれの一部ずつを遮断すればよい。
【0084】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0085】
また、上述した実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【0086】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
<1> 曲面がある被検査物体の、撮影装置による画像を用いて検査を行う検査システムであって、前記被検査物体に向けて第1照明光を照射する第1照明装置と、前記被検査物体に向けて第2照明光を照射する第2照明装置と、前記第1照明装置および前記第2照明装置と、前記被検査物体と、の間に配置され、前記第1照明光および前記第2照明光のそれぞれの少なくとも一部を通過させる開口を有する遮断部材と、を有し、前記開口と前記被検査物体との最短距離をDとし、前記開口の最小幅をSとし、前記撮影装置の撮影方向と、前記第1照明光の照射方向と、のなす照射角度をθとした場合に、以下の条件を満たす、
1.0×D < S/{2.0×tan(θ)} < 9.0×D
ことを特徴とする検査システムである。
<2> 前記開口は、前記第1照明光の一部を通過させる第1開口と、前記第2照明光の一部を通過させる第2開口と、前記撮影装置に到達する光の一部を遮断する第3開口と、を含み、前記開口が、前記第1開口と前記第2開口の、前記第3開口から離れた側のそれぞれの端部間の幅であることを特徴とする前記<1>に記載の検査システムである。
<3> 7°< θ < 45°の条件を満たす、ことを特徴とする前記<1>または前記<2>に記載の検査システムである。
<4> 前記被検査物体は、搬送方向に搬送され、前記撮影装置の撮影方向は、前記搬送方向に直交する、ことを特徴とする前記<1>から前記<3>のいずれか1つに記載の検査システムである。
<5> 前記第1照明装置は、前記搬送方向における前記被検査物体の上流側から前記第1照明光を照射し、前記第2照明装置は、前記搬送方向における前記被検査物体の下流側から前記第2照明光を照射し、前記第1照明装置および前記第2照明装置それぞれの点灯および消灯を制御する制御装置と、を有することを特徴とする前記<4>に記載の検査システムである。
<6> 前記制御装置は、前記撮影装置が前記搬送方向における前記被検査物体の下流側の部分を撮影する場合に、前記第1照明装置が点灯し、前記第2照明装置が消灯するように制御するとともに、前記撮影装置が前記搬送方向における前記被検査物体の上流側の部分を撮影する場合に、前記第2照明装置が点灯し、前記第1照明装置が消灯するように制御する、ことを特徴とする前記<5>に記載の検査システムである。
<7> 前記第1照明光および前記第2照明光のそれぞれは、ライン状の光であり、前記撮影装置は、複数の画素が並ぶラインセンサを含む、ことを特徴とする前記<1>から前記<6>のいずれか1つに記載の検査システムである。
<8> 曲面がある被検査物体の、撮影装置による画像を用いて検査を行う検査システムによる検査方法であって、前記検査システムが、第1照明装置により、前記被検査物体に向けて第1照明光を照射し、第2照明装置により、前記被検査物体に向けて第2照明光を照射し、前記第1照明装置および前記第2照明装置と、前記被検査物体と、の間に配置され、開口を有する遮断部材により、前記第1照明光および前記第2照明光のそれぞれの一部を通過させ、前記開口と前記被検査物体との最短距離をDとし、前記開口の最小幅をSとし、前記撮影装置の撮影方向と、前記第1照明光の照射方向と、のなす照射角度をθとした場合に、以下の条件を満たす、
1.0×D < S/{2.0×tan(θ)} < 9.0×D
ことを特徴とする検査方法である。
【符号の説明】
【0087】
100 検査システム
110 撮影装置
120A 第1照明装置
120B 第2照明装置
130 照明用電源
140 トリガ制御ユニット
150 センサ
160 遮断部材
161 開口
170 検査装置
300 搬送機
TP 搬送方向
T 被検査物体
IL1 第1照明光
IL2 第2照明光
RL 正反射光
SL 迷光
O 光軸
θ 照射角度
CP クロスポイント
NS 最近傍面
SC 開口中心点
S 最小幅
D 距離
r 中心角
【先行技術文献】
【特許文献】
【0088】