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特開2024-77012フレキシブルセンサ、ソフトグリッパ、形態判定システム、把持特性を検出する方法、および、把持特性を検出するプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077012
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】フレキシブルセンサ、ソフトグリッパ、形態判定システム、把持特性を検出する方法、および、把持特性を検出するプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/16 20060101AFI20240530BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
G01B7/16 R
B25J15/08 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023200011
(22)【出願日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2022188437
(32)【優先日】2022-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100176337
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】杉野 卓司
(72)【発明者】
【氏名】堀内 哲也
(72)【発明者】
【氏名】物部 浩達
(72)【発明者】
【氏名】平井 慎一
(72)【発明者】
【氏名】松野 孝博
【テーマコード(参考)】
2F063
3C707
【Fターム(参考)】
2F063AA25
2F063DA02
2F063DA05
2F063EC04
2F063EC07
3C707DS01
3C707ES04
3C707EV12
3C707EV19
3C707HS14
3C707KS09
3C707KS30
3C707KS32
3C707KV04
3C707KX08
3C707NS26
(57)【要約】
【課題】ソフトグリッパの把持特性を好適に検出できるフレキシブルセンサ、ソフトグリッパ、形態判定システム、把持特性を検出する方法、および、把持特性を検出するプログラムを提供する。
【解決手段】フレキシブルセンサは、物体を把持可能に構成されるソフトグリッパの把持特性を電圧の変化に基づいて検出する。ソフトグリッパは、物体を把持しない第1形態と、物体を把持するように湾曲する第2形態とに変形可能である把持部を有する。フレキシブルセンサは、第1形態および第2形態を検出できるように、ソフトグリッパに取り付け可能に構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を把持可能に構成されるソフトグリッパの把持特性を電圧の変化に基づいて検出するフレキシブルセンサであって、
前記ソフトグリッパは、
前記物体を把持しない第1形態と、前記物体を把持するように湾曲する第2形態とに変形可能である把持部を有し、
前記第1形態および前記第2形態を検出できるように、前記ソフトグリッパに取り付け可能に構成される
フレキシブルセンサ。
【請求項2】
一対の電極と、
前記一対の電極の間に配置されるイオン導電性高分子層と、を有する
請求項1に記載のフレキシブルセンサ。
【請求項3】
一対の電極と、
前記一対の電極の間に積層される絶縁層と、を有し、
前記絶縁層は、イオン液体、および、イオン導電性電気活性高分子を含む
請求項1に記載のフレキシブルセンサ。
【請求項4】
前記把持部は、前記第1形態および前記第2形態の一方から他方に変形する過程で伸縮しない中立線を有し、
前記中立線に配置されるように構成される
請求項1~3のいずれか一項に記載のフレキシブルセンサ。
【請求項5】
前記ソフトグリッパに対する前記物体の滑りが発生したときに前記把持部の振動によって生じる変動を含んだ電圧値を出力する。
請求項1~3のいずれか一項に記載のフレキシブルセンサ。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載のフレキシブルセンサを備える、ソフトグリッパ。
【請求項7】
請求項6に記載のソフトグリッパと、
前記フレキシブルセンサの出力に基づいて、前記把持部の前記第1形態または前記第2形態を判定する制御装置と、を含む
形態判定システム。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記フレキシブルセンサから出力される電圧値をフーリエ変換し、1または複数の特定の周波数における振幅の時間変化に基づいて、前記ソフトグリッパに対する前記物体の滑りが発生したことを検出する
請求項7に記載の形態判定システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記1または複数の特定の周波数における振幅の積分値が閾値以上であることに基づいて、前記ソフトグリッパに対する前記物体の滑りが発生したことを検出する
請求項8に記載の形態判定システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記把持部が前記第2形態のときに検出される前記物体の固有振動数に基づいて、前記物体の質量を推定する
請求項7に記載の形態判定システム。
【請求項11】
フレキシブルセンサを用いて、物体を把持可能に構成されるソフトグリッパの把持特性を検出する方法であって、
前記ソフトグリッパは、
前記物体を把持しない第1形態と、前記物体を把持するように湾曲する第2形態とに変形可能である把持部を有し、
前記フレキシブルセンサは、前記ソフトグリッパの把持特性を電圧の変化に基づいて検出し、前記第1形態および前記第2形態を検出できるように、前記ソフトグリッパに取り付け可能に構成され、
前記フレキシブルセンサの出力に基づいて、前記把持部の前記第1形態または前記第2形態を検出するステップを含む
把持特性を検出する方法。
【請求項12】
フレキシブルセンサを用いて、物体を把持可能に構成されるソフトグリッパの把持特性を検出するプログラムであって、
前記ソフトグリッパは、
前記物体を把持しない第1形態と、前記物体を把持するように湾曲する第2形態とに変形可能である把持部を有し、
前記フレキシブルセンサは、前記ソフトグリッパの把持特性を電圧の変化に基づいて検出し、前記第1形態および前記第2形態を検出できるように、前記ソフトグリッパに取り付け可能に構成され、
前記フレキシブルセンサの出力に基づいて、前記把持部の前記第1形態または前記第2形態を検出するステップをコンピュータに実行させる
把持特性を検出するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルセンサ、このフレキシブルセンサを備えるソフトグリッパ、このソフトグリッパの形態判定システム、ならびに、ソフトグリッパの把持特性を検出する方法、および、そのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、物体をソフトに把持できるように構成されるソフトグリッパを開示している。このソフトグリッパは、例えば、シリコーン等の柔軟な材料によって構成される把持部を有する。把持部は、物体を把持しない第1形態において、圧縮空気が供給されることによって、物体を把持するように湾曲する第2形態に変形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-168691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ソフトグリッパは、物体を適切に把持している状態を検出する点、換言すれば、物体の把持特性を検出する点について、検討されていない。
【0005】
本発明は、ソフトグリッパの把持特性を好適に検出できるフレキシブルセンサ、このフレキシブルセンサを備えるソフトグリッパ、このソフトグリッパの形態判定システム、ならびに、ソフトグリッパの把持特性を検出する方法、および、そのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係るフレキシブルセンサは、物体を把持可能に構成されるソフトグリッパの把持特性を電圧の変化に基づいて検出するフレキシブルセンサであって、前記ソフトグリッパは、前記物体を把持しない第1形態と、前記物体を把持するように湾曲する第2形態とに変形可能である把持部を有し、前記第1形態および前記第2形態を検出できるように、前記ソフトグリッパに取り付け可能に構成される。
【0007】
本発明の第2観点に係るフレキシブルセンサは、第1観点に係るフレキシブルセンサであって、一対の電極と、前記一対の電極の間に配置されるイオン導電性高分子層と、を有する。
【0008】
本発明の第3観点に係るフレキシブルセンサは、第1観点に係るフレキシブルセンサであって、一対の電極と、前記一対の電極の間に積層される絶縁層と、を有し、前記絶縁層は、イオン液体、および、イオン導電性電気活性高分子を含む。
【0009】
本発明の第4観点に係るフレキシブルセンサは、第1観点~第3観点のいずれか1つに係るフレキシブルセンサであって、前記把持部は、前記第1形態および前記第2形態の一方から他方に変形する過程で伸縮しない中立線を有し、前記中立線に配置されるように構成される。
【0010】
本発明の第5観点に係るフレキシブルセンサは、第1観点~第4観点のいずれか1つに係るフレキシブルセンサであって、前記ソフトグリッパに対する前記物体の滑りが発生したときに前記把持部の振動によって生じる変動を含んだ電圧値を出力する。
【0011】
本発明の第6観点に係るソフトグリッパは、第1観点~第5観点のいずれか1つに係るフレキシブルセンサを備える。
【0012】
本発明の第7観点に係る形態判定システムは、第6観点に係るソフトグリッパと、前記フレキシブルセンサの出力に基づいて、前記把持部の前記第1形態または前記第2形態を判定する制御装置と、を含む。
【0013】
本発明の第8観点に係る形態判定システムは、第7観点に係るシステムであって、前記制御装置は、前記フレキシブルセンサから出力される電圧値をフーリエ変換し、1または複数の特定の周波数における振幅の時間変化に基づいて、前記ソフトグリッパに対する前記物体の滑りが発生したことを検出する。
【0014】
本発明の第9観点に係る形態判定システムは、第8観点に係るシステムであって、前記制御装置は、前記1または複数の特定の周波数における振幅の積分値が閾値以上であることに基づいて、前記ソフトグリッパに対する前記物体の滑りが発生したことを検出する。
【0015】
本発明の第10観点に係る形態判定システムは、第7観点~第9観点のいずれか1つに係るシステムであって、前記制御装置は、前記把持部が前記第2形態のときに検出される前記物体の固有振動数に基づいて、前記物体の質量を推定する。
【0016】
本発明の第11観点に係る方法は、フレキシブルセンサを用いて、物体を把持可能に構成されるソフトグリッパの把持特性を検出する方法であって、前記ソフトグリッパは、前記物体を把持しない第1形態と、前記物体を把持するように湾曲する第2形態とに変形可能である把持部を有し、前記フレキシブルセンサは、前記ソフトグリッパの把持特性を電圧の変化に基づいて検出し、前記第1形態および前記第2形態を検出できるように、前記ソフトグリッパに取り付け可能に構成され、前記フレキシブルセンサの出力に基づいて、前記把持部の前記第1形態または前記第2形態を検出するステップを含む。
【0017】
本発明の第12観点に係るプログラムは、フレキシブルセンサを用いて、物体を把持可能に構成されるソフトグリッパの把持特性を検出するプログラムであって、前記ソフトグリッパは、前記物体を把持しない第1形態と、前記物体を把持するように湾曲する第2形態とに変形可能である把持部を有し、前記フレキシブルセンサは、前記ソフトグリッパの把持特性を電圧の変化に基づいて検出し、前記第1形態および前記第2形態を検出できるように、前記ソフトグリッパに取り付け可能に構成され、前記フレキシブルセンサの出力に基づいて、前記把持部の前記第1形態または前記第2形態を検出するステップをプログラムに実行させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に関するフレキシブルセンサ、ソフトグリッパ、形態判定システム、把持特性を検出する方法、および、把持特性を検出するプログラムによれば、ソフトグリッパの把持特性を好適に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態のシステムのブロック図。
図2図1のソフトグリッパの第1形態を示す斜視図。
図3図1のソフトグリッパの第2形態を示す斜視図。
図4図2のソフトグリッパの把持部、および、その近傍の側面図。
図5図4のフレキシブルセンサの構成を示す断面図。
図6】滑り検出制御の一例を示すフローチャート。
図7】実施例1の試験結果を示すグラフ。
図8】比較例1の試験結果を示すグラフ。
図9】比較例3の試験結果を示すグラフ。
図10】実施例2の試験結果を示すグラフ。
図11】比較例2の試験結果を示すグラフ。
図12】比較例4の試験結果を示すグラフ。
図13】実施例1の別の試験結果を示すグラフ。
図14】比較例1の別の試験結果を示すグラフ。
図15】比較例3の別の試験結果を示すグラフ。
図16】変形例のフレキシブルセンサの構成を示す断面図。
図17】別の変形例のシステムのブロック図。
図18】周波数と振幅スペクトルとの関係を示すグラフ。
図19】物体の固有振動数と質量の関係を示すグラフ。
図20】質量推定処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
図21】質量推定処理の結果を示す表。
図22】質量推定処理の別の結果を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る形態システムについて説明する。
【0021】
<1.システムの全体構成>
図1は、本実施形態に係る形態システム10(以下では、「システム10」という)のブロック図である。システム10は、ソフトグリッパ20と、制御装置70と、コンプレッサ80と、を含む。システム10は、ソフトグリッパ20の把持特性を検出できるように構成される。
【0022】
<2.ソフトグリッパの全体構成>
図2は、第1形態のソフトグリッパ20の斜視図である。図3は、第2形態のソフトグリッパ20の斜視図である。図4は、ソフトグリッパ20の把持部40、および、その近傍の側面図である。図5は、ソフトグリッパ20に取り付けられるフレキシブルセンサ60の層構成の一例を示す断面図である。ソフトグリッパ20は、後述する把持部40を例えば、シリコーン等の柔軟な材料によって構成することによって、物体をソフトに把持できるように構成されるグリッパである。ソフトグリッパ20の把持部40は、物体を把持しない第1形態において、コンプレッサ80から圧縮空気が供給されることによって、物体を把持するように湾曲する第2形態に変形する。以下では、把持部40が第1形態であることをソフトグリッパ20が第1形態であると称し、把持部40が第2形態であることをソフトグリッパ20が第2形態であると称する場合がある。
【0023】
ソフトグリッパ20は、例えば、物体の一例である食品を把持するロボットである。ソフトグリッパ20は、例えば、弁当または惣菜を製造する工場で用いられる。ソフトグリッパ20は、例えば、食品を把持し、容器に盛り付ける。ソフトグリッパ20は、ベース30と、複数の把持部40と、複数の連結部50と、フレキシブルセンサ60と、を有する。
【0024】
ベース30は、連結部50を介して複数の把持部40が取り付けられる。ベース30は、コンプレッサ80(図1参照)と連結される。コンプレッサ80から供給される圧縮空気は、ベース30および連結部50を介して複数の把持部40に供給される。
【0025】
複数の把持部40は、第1形態と第2形態とに変形する。ソフトグリッパ20が有する把持部40の数は、2つ以上であれば任意に選択可能である。本実施形態では、ソフトグリッパ20は、3つの把持部40を有する。ソフトグリッパ20が有する把持部40の数は、2つ、または、4つ以上であってもよい。本実施形態では、複数の把持部40は、ベース30の周方向に等間隔で配置される。本実施形態では、複数の把持部40は、実質的に同一の構成である。
【0026】
把持部40を構成する材料は、物体を把持したときに物体を傷付けないように、軟らかい材料によって構成される。把持部40を構成する材料は、例えば、シリコーンである。把持部40は、第1部材41および第2部材42を有する。
【0027】
第1部材41は、フレキシブルセンサ60が載せられる薄板状の部材である。第1部材41のうちの第2部材42によって覆われる面と反対側には、物体と接触する把持面41Aが形成される。把持面41Aには、物体を把持したときに物体が滑ることを抑制するために、複数の溝41X(図2または図3参照)が形成される。
【0028】
第2部材42は、フレキシブルセンサ60が載せられた第1部材41を覆う。第2部材42は、基部42A、および、基部42Aから立ち上がる複数の突出部42Bを有する。複数の突出部42Bの内部には、コンプレッサ80から圧縮空気が供給される空気室42Xが形成される。
【0029】
フレキシブルセンサ60は、ソフトグリッパ20の把持特性を電圧の変化に基づいて検出する。フレキシブルセンサ60は、例えば、特許第6829358号公報に記載のIPMC(Ionic Polymer-Metal Composite)センサを好適に用いることができる。以下では、フレキシブルセンサ60の構成について、簡単に説明するが、フレキシブルセンサ60は、特許第6829358号公報に記載のフレキシブルセンサの諸元を必要に応じて任意に適用できる。
【0030】
フレキシブルセンサ60は、把持部40の概ね全体にわたり延びている。フレキシブルセンサ60は、一対の電極61A、61Bと、一対の電極61A、61Bの間に配置されるイオン導電性高分子層62と、を有する。一対の電極61A、61Bを構成する材料は、例えば、金である。イオン導電性高分子層62は、イオン導電性高分子ゲルによって構成される。一対の電極61A、61Bには、端子63A、63Bが取り付けられる。端子63A、63Bには、電気線64が接続される。電気線64は、制御装置70と接続される。フレキシブルセンサ60は、例えば、端子63A、63Bが、連結部50と対向する位置となるように配置される。
【0031】
フレキシブルセンサ60は、変形することによってイオン導電性高分子層62のイオンが偏在し、それによって発生した一対の電極61A、61B間の電位差の電圧値を制御装置70に出力する。フレキシブルセンサ60から出力される電圧値は、出力装置73(図1参照)に表示される。制御装置70は、フレキシブルセンサ60から出力される電圧値が、実質的に0の場合、把持部40が第1形態であると判定する。制御装置70は、フレキシブルセンサ60から出力される電圧値が、予め定められる閾値以上の場合、把持部40が第2形態であると判定する。
【0032】
ソフトグリッパ20のうちのフレキシブルセンサ60が取り付けられる位置は、把持部40の第1形態および第2形態を検出できる位置であれば任意に選択可能である。把持部40は、第2形態において、物体と接触する側である内側では、圧縮歪みが生じ、外側では、引張歪みが生じる。本実施形態では、フレキシブルセンサ60は、ソフトグリッパ20のうちの圧縮歪みおよび引張歪みが生じない中立線XAに配置される。フレキシブルセンサ60を構成する材料は伸縮性が小さいものがある。フレキシブルセンサ60をソフトグリッパ20の引っ張り、および、圧縮応力の影響が小さくなるように細く薄い構成にした場合であっても、引っ張り、および、圧縮応力は生じるため、フレキシブルセンサ60の出力は、影響を受けることになる。本実施形態では、フレキシブルセンサ60は、中立線XAに配置されるため、ソフトグリッパ20の引っ張り、および、圧縮応力の影響が抑制される。また、把持部40の内部にフレキシブルセンサ60が配置されるため、例えば、物体が食品等である場合であっても、フレキシブルセンサ60が物体によって汚染されることが抑制される。フレキシブルセンサ60は、例えば、把持面41Aに取り付けられてもよい。
【0033】
<3.制御装置の構成>
制御装置70は、本体71、入力装置72、および、出力装置73を有する。本体71は、記憶部71Aおよび制御部71Bを有する。記憶部71Aおよび制御部71Bは、バス74を介して通信できるように接続される。記憶部71Aは、例えば、ハードディスクまたはソリッドステートドライブである。記憶部71Aは、ソフトグリッパ20が物体を把持したときの滑りの検出に関する1または複数のプログラム(以下では、「滑り検出プログラム71P」という)を記憶する。なお、本実施形態において、物体の滑りとは、把持部40が第1形態から第2形態に変形するときに、物体を好適に把持できずに、物体が把持部40に対して滑る現象のことをいう。物体の滑りが発生した場合、把持部40の把持面41Aと物体とが当接する部分で振動が発生し、その振動がフレキシブルセンサ60にも伝わる。フレキシブルセンサ60では、出力される電圧値が振動によって変動し、後述するように特定の周波数が変動する。なお、物体を好適に把持できない状態とは、把持部40から物体が落下した状態、および、把持部40によって物体が傾いた状態で把持されている状態を含む。
【0034】
制御部71Bは、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、後述する機能を実行する。制御部71Bは、入力装置72からの要求に応じて記憶部71Aに記憶されている滑り検出プログラム71Pを実行する。制御部71Bが滑り検出プログラム71Pを実行することによって、制御装置70には、後述する1または複数の機能ブロックが構築される。
【0035】
入力装置72は、例えばキーボードであり、本体71と接続される。出力装置73は、例えば、液晶ディスプレイであり、本体71から出力された信号を受信できるように、本体71と接続される。なお、本体71、入力装置72、および、出力装置73は、ノート型パーソナルコンピュータ、または、タブレット端末等のように、一体的に構成されてもよい。
【0036】
制御部71Bが記憶部71Aに記憶されている滑り検出プログラム71Pを実行することによって構成される機能ブロックは、例えば、滑り検出部71Xを含む。制御装置70に滑り検出部71X等の機能ブロックが構築されることによって、物体の滑りを検出する滑り検出処理が実行される。
【0037】
<4.滑り検出処理>
図6を参照して、滑り検出処理の処理手順の一例について説明する。滑り検出部71Xは、例えば、入力装置72によってソフトグリッパ20の動作を開始する信号が入力されたことに基づいて滑り検出処理を開始する。滑り検出部71Xは、ソフトグリッパ20の動作中、滑り検出処理を繰り返し実行する。滑り検出部71Xは、入力装置72によってソフトグリッパ20の動作を終了する信号が入力されたことに基づいて、滑り検出処理を終了する。
【0038】
ステップS11では、滑り検出部71Xは、フレキシブルセンサ60から出力される電圧値を取得する。
【0039】
ステップS12では、滑り検出部71Xは、取得した電圧値を高速フーリエ変換する。電圧値を高速フーリエ変換する場合の条件は、任意に選択可能である。本実施形態では、高速フーリエ変換の条件は、以下のとおりである。
サンプリングタイムΔt:1/10000[s]
離散フーリエ観測数N:2048
離散フーリエ角周波数の間隔:Δω=2π/NΔt
角周波数ωk=kΔω(k=0~N-1)
【0040】
ステップS13では、滑り検出部71Xは、特定の周波数における振幅の積分値Y(t)を算出する。例えば、k=0、1、2、・・・に対応する周波数が、以下のような場合とする。なお、以下の数値は、一例である。
k=0(0rad/s、0Hz)
k=1(30.66rad/s、4.88Hz)
k=2(61.33rad/s、9.76Hz)
【0041】
滑り検出部71Xは、上記の周波数について、1または複数の特定の周波数における振幅の時間変化に基づいて、ソフトグリッパ20の把持状態を推定する。本実施形態では、滑り検出部71Xは、ソフトグリッパ20における物体の滑りを検出するために、k=1における振幅|Xk=1|を特定の周波数の振幅と設定し、|Xk=1|≧αとなる条件で以下の式(1)に基づいて積分値Y(t)を算出する。式(1)におけるt0は、|Xk=1|≧αを満たした時刻である。式(1)におけるtは、現在の時刻である。滑り検出部71Xは、|Xk=1|<αとなった場合、Y=0にリセットする。本実施形態では、αは、5に設定される。αは、任意に設定可能である。
【0042】
【0043】
ステップS14では、滑り検出部71Xは、積分値Y(t)が閾値Yth以上か否かを判定する。閾値Ythは、試験によって予め決められる値である。本実施形態では、閾値Ythは、39に設定される。
【0044】
ステップS14が肯定判定の場合、換言すれば、積分値Y(t)が閾値Yth以上である場合、ステップS15において、滑り検出部71Xは、滑りが発生したと判定する。一方、ステップS14が否定判定の場合、換言すれば、積分値Y(t)が閾値Yth未満である場合、ステップS16において、滑り検出部71Xは、滑りが発生していないと判定する。滑り検出部71Xによって滑りが発生したと判定されたあと、例えば、把持部40が物体を把持していない状態の場合、制御部71Bは、把持部40が再度、把持動作を実行するようにコンプレッサ80に信号を出力する。また、把持部40が物体を把持している状態の場合、制御部71Bは、コンプレッサ80の動作性能を高めて把持部40の把持力を高め、物体をしっかり把持させるような信号をコンプレッサ80に出力する。
【0045】
<5.特徴>
従来からIPMCセンサは公知であったが、ソフトグリッパ20の把持特性を検出するためには用いられていなかった。本願発明者(ら)は、IPMCセンサをソフトグリッパ20に用いることによって、ソフトグリッパの把持特性を好適に検出できることを見出した。本実施形態のシステム10によれば、ソフトグリッパ20は、IPMCセンサであるフレキシブルセンサ60を有するため、把持部40の第1形態および第2形態を好適に検出できる。換言すれば、システム10によれば、ソフトグリッパ20の把持特性を好適に検出できる。
【0046】
フレキシブルセンサ60が、例えば、圧電式センサである場合、把持部40が、第1形態および第2形態の一方から他方に変形した瞬間の加速度変化を検出できるが、第1形態または第2形態である状態が継続されている定常状態を検出することができない。本実施形態のフレキシブルセンサ60は、IPMCセンサであるため、把持部40が第1形態および第2形態の一方から他方に変形した瞬間、および、把持部40の定常状態を好適に検出できる。
【0047】
本実施形態のフレキシブルセンサ60は、把持部40の中立線XAに配置される。フレキシブルセンサ60が、例えば、誘電エラストマーセンサである場合、中立線XAに配置した場合、誘電エラストマーセンサが実質的に伸縮しないため、把持部40の変形に伴う信号を検出できない。本実施形態のフレキシブルセンサ60は、IPMCセンサであるため、中立線XAに配置した場合であっても、把持部40が変形することによって、イオンの移動が生じるため、把持部40の把持特性を好適に検出できる。
【0048】
フレキシブルセンサ60が誘電エラストマーセンサである場合、外部電源が必要である。本実施形態のフレキシブルセンサ60は、IPMCセンサであるため、把持部40の変形に伴い、イオン導電性高分子層62の素子自身から電圧が発生するため、フレキシブルセンサ60のための外部電源が不要である。このため、システム10を簡素化できる。
【0049】
<6.実施例>
本願発明者(ら)は、実施例1、2、および、比較例1~4のシステムを構築し、ソフトグリッパの把持特性の検出に関する試験を実施した。以下では、説明の便宜上、実施形態と同一の要素については、実施形態と同一の符号を付して説明する場合がある。
【0050】
実施例1、2のシステム10は、実施形態に関するシステム10である。実施例1のシステム10では、フレキシブルセンサ60は、把持部40の把持面41Aに取り付けられている。実施例2のシステム10では、フレキシブルセンサ60は、把持部40の内部の中立線XAに取り付けられている。
【0051】
比較例1、2のシステム10は、実施形態のシステム10と比較して、フレキシブルセンサ60が圧電式センサである点で異なり、その他の構成は、システム10と同様である。比較例1のシステム10では、圧電式センサは、把持部40の把持面41Aに取り付けられている。比較例2のシステム10では、圧電式センサは、把持部40の内部の中立線XAに取り付けられている。
【0052】
比較例3、4のシステム10は、実施形態のシステム10と比較して、フレキシブルセンサ60が誘電エラストマーセンサである点で異なり、その他の構成は、システム10と同様である。比較例3のシステム10では、誘電エラストマーセンサは、把持部40の把持面41Aに取り付けられている。比較例2のシステム10では、誘電エラストマーセンサは、把持部40の内部の中立線XAに取り付けられている。
【0053】
図7は、実施例1の試験結果である。図8は、比較例1の試験結果である。図9は、比較例3の試験結果である。図7図9における時刻T0と時刻T2と間の時刻Tα1は、ソフトグリッパ20が第1形態から第2形態に変形することによって、物体を把持した時刻である。時刻T6と時刻T8との間の時刻Tα2は、ソフトグリッパ20が第2形態から第1形態に変形することによって、把持していた物体を開放した時刻である。
【0054】
図7に示されるように、実施例1のシステム10では、ソフトグリッパ20の第1形態および第2形態の一方から他方に変形する瞬間、および、第2形態が維持されている定常状態を好適に検出することが確認された。
【0055】
図8に示されるように、比較例1のシステム10は、第2形態が維持されている定常状態を検出することができないことが確認された。
【0056】
図9に示されるように、比較例3のシステム10は、実施例1のシステム10よりも、ソフトグリッパ20が第2形態から第1形態に変形した瞬間のソフトグリッパ20の揺れを好適に検出できないことが確認された。これは、誘電エラストマーセンサは、瞬間の変動だけで変化が小さく判定が難しいうえ、その出力信号の演算処理が必要となりレスポンスが遅くなるおそれがあるためと考えられる。
【0057】
図10は、実施例2の試験結果である。図11は、比較例2の試験結果である。図12は、比較例4の試験結果である。図10図12における時刻T0と時刻T2との間の時刻Tβ1は、ソフトグリッパ20が第1形態から第2形態に変形することによって、物体を把持した時刻である。時刻T6と時刻T8との間の時刻Tβ2は、ソフトグリッパ20が第2形態から第1形態に変形することによって、把持していた物体を開放した時刻である。
【0058】
図10に示されるように、実施例2のシステム10では、フレキシブルセンサ60を把持部40の内部の中立線XAに配置した場合であっても、ソフトグリッパ20の第1形態および第2形態の一方から他方に変形する瞬間、および、第2形態が維持されている定常状態を好適に検出することが確認された。図11に示されるように、比較例2のシステム10は、第2形態が維持されている定常状態を検出することができないことが確認された。図12に示されるように、比較例4のシステム10は、実施例2のシステム10と比較して、ソフトグリッパ20の第1形態および第2形態の一方から他方に変形する瞬間、および、第2形態が維持されている定常状態を好適に検出することができないことが確認された。比較例4のシステム10では、誘電エラストマーセンサがソフトグリッパ20の把持部40の内部の中立線XAに配置されるため、誘電エラストマーセンサの伸縮の程度が小さかったためであると考えられる。
【0059】
次に、本願発明者(ら)は、実施例1のシステム10、および、比較例1、3のシステム10について、物体の滑りの検出に関する試験を実施した。物体は、みかんが用いられた。
【0060】
図13は、実施例1の物体の滑りの検出に関する試験の試験結果である。図14は、比較例1の物体の滑りの検出に関する試験の試験結果である。図15は、比較例3の物体の滑りの検出に関する試験の試験結果である。図13図15における時刻T0と時刻T2との間の時刻Tγ1は、ソフトグリッパ20が第1形態から第2形態に変形することによって、物体を把持した時刻である。時刻T4は、物体の滑りが発生した時刻である。時刻T6と時刻T8との間の時刻Tγ2は、ソフトグリッパ20が第2形態から第1形態に変形することによって、把持していた物体を開放した時刻である。
【0061】
図13に示されるように、物体の滑りの検出に関する試験において、実施例1のシステム10では、ソフトグリッパ20の第1形態および第2形態の一方から他方に変形する瞬間、第2形態が維持されている定常状態、および、物体の滑りを好適に検出することが確認された。
【0062】
図14に示されるように、物体の滑りの検出に関する試験において、比較例1のシステム10は、第2形態が維持されている定常状態を検出することができないことが確認された。図15に示されるように、物体の滑りの検出に関する試験において、比較例3のシステム10は、実施例1のシステム10よりも、物体の滑りが発生した瞬間、および、ソフトグリッパ20が第2形態から第1形態に変形した瞬間のソフトグリッパ20の揺れも図9と同様に好適に検出できないことが確認された。
【0063】
<7.変形例>
上記実施形態は本発明に関するフレキシブルセンサ、ソフトグリッパ、形態判定システム、把持特性を検出する方法、および、把持特性を検出するプログラムが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関するフレキシブルセンサ、ソフトグリッパ、形態判定システム、把持特性を検出する方法、および、把持特性を検出するプログラムは、実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の幾つかの変形例を示す。なお、以下の各変形例は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
【0064】
<7-1>
上記実施形態では、フレキシブルセンサ60は、IPMCセンサであったが、フレキシブルセンサ60の構成は、これに限定されない。図16は、変形例のフレキシブルセンサ160の層構成の一例を示す断面図である。
【0065】
フレキシブルセンサ160は、一対の電極161A、161Bと、一対の電極161A、161Bの間に積層される絶縁層162と、を有する。一対の電極161A、161Bは、例えば、カーボンナノチューブによって構成される。絶縁層162は、イオン液体、および、イオン導電性電気活性高分子を含む。イオン導電性電気活性高分子は、例えば、ポリビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)である。
【0066】
<7-2>
上記実施形態では、フレキシブルセンサ60と制御装置70とは、有線接続であったが、フレキシブルセンサ60と制御装置70とは、無線接続であってもよい。制御装置70が、例えば、スマートフォンまたはタブレット端末である場合、ソフトグリッパ20の把持特性を容易に確認することができる。
【0067】
<7-3>
上記実施形態において、制御装置70は、把持部40が第2形態のときに検出される物体の固有振動数に基づいて、物体の質量を推定するように構成されてもよい。具体的には、図17に示されるように、制御装置70の記憶部71Aには、質量推定プログラム71PXが記憶されていてもよい。制御部71Bは、入力装置72からの要求に応じて記憶部71Aに記憶されている質量推定プログラム71PXを実行する。制御部71Bが記憶部71Aに記憶されている質量推定プログラム71PXを実行することによって構成される機能ブロックは、例えば、質量推定部71Yを含む。制御装置70に質量推定部71Y等の機能ブロックが構築されることによって、第2形態の把持部40が把持している物体の質量を推定する質量推定処理が実行される。
【0068】
質量推定処理において、質量推定部71Yは、物体の固有振動数fnと、物体の質量Mとの関係を規定した後述する式(2)を用いて、物体の質量を推定する。
【0069】
固有振動数fnは、例えば、第2形態の把持部40が物体を把持した状態で把持部40を揺らし、把持部40が静止した後に検出される物体の周波数と振幅スペクトルとの関係に基づいて算出される。なお、振幅スペクトルは、検出された電圧値をフーリエ変換することによって得られる。
【0070】
図18は、互いに質量が異なる物体X、物体Y、および、物体Zについて、把持部40が静止した後に検出される周波数と振幅スペクトルとの関係を示すグラフである。物体X、物体Y、物体Zは、質量のみ異なる同じ物体である。物体X、物体Y、物体Zは、それぞれ、カップ、および、カップに収容される粘土を含む。すなわち、物体X、物体Y、物体Zの質量は、カップの質量と粘土の質量との和である。物体Xの質量は、例えば、50gである。物体Yの質量は、例えば、30gである。物体Zの質量は、例えば、10.5gである。
【0071】
図18において、物体Xの振幅スペクトルが最大になる周波数が物体Xの固有振動数fnである。物体Yの振幅スペクトルが最大になる周波数が物体Yの固有振動数fnである。物体Zの振幅スペクトルが最大になる周波数が物体Zの固有振動数fnである。図18に示されるように、物体の質量が大きい程、検出される固有振動数fnは、小さい。換言すれば、物体の質量が小さい程、検出される固有振動数fnは、大きい。
【0072】
図19は、物体X、物体Y、および、物体Zの固有振動数fnと物体の質量Mとの関係を示すグラフである。物体の固有振動数fnと質量Mとの関係から、物体の質量Mを推定する以下の式(2)が算出される。なお、式(2)における係数α、βは、物体によって変化する。式(2)を用いることによって、同じ物体であれば、検出された固有振動数を用いて、任意の質量の物体の質量を推定することができる。
M=(α/fn 2)-β・・・(2)
【0073】
図19に示される例では、物体X、物体Y、および、物体Zの結果に関する3点を用いて式(2)を算出したが、2点に基づいて式(2)を算出してもよく、4点以上の結果に基づいて式(2)を算出してもよい。
【0074】
図20を参照して、質量推定処理の処理手順の一例について説明する。質量推定部71Yは、例えば、入力装置72によってソフトグリッパ20の動作を開始する信号が入力されたことに基づいて質量推定処理を開始する。質量推定部71Yは、ソフトグリッパ20の動作中、質量推定処理を繰り返し実行する。質量推定部71Yは、入力装置72によってソフトグリッパ20の動作を終了する信号が入力されたことに基づいて、質量推定処理を終了する。
【0075】
ステップS21では、質量推定部71Yは、フレキシブルセンサ60からの出力に基づいて、把持部40が第2形態か否かを判定する。ステップS21が否定判定の場合、質量推定部71Yは、ステップS21の処理を繰り返し実行する。
【0076】
ステップS21が肯定判定の場合、ステップS22では、制御部71Bは、把持部40を所定時間揺らすようにソフトグリッパ20に信号を出力する。
【0077】
ステップS23では、制御部71Bは、把持部40が静止するように、ソフトグリッパ20に信号を出力する。
【0078】
ステップS24では、質量推定部71Yは、周波数と振幅スペクトルとの関係を算出する。
【0079】
ステップS25では、質量推定部71Yは、振幅スペクトルが最大となる周波数を把持している物体の固有振動数として検出する。
【0080】
ステップS26では、質量推定部71Yは、式(2)に基づいて把持部40が把持している物体の質量Mを推定する。
【0081】
図21は、物体の実際の質量と、質量推定処理によって推定された物体の質量との関係を示す表である。図21に示される例では、質量が15g、20g、25g、30g、35g、40g、45g、50gの物体について、それぞれ、質量推定処理をそれぞれ5回ずつ実施し、その平均値を質量推定処理によって推定された物体の質量としている。なお、図21における推定された物体の質量は、図19において星の形状でプロットされている。
【0082】
図21に示されるように、質量推定処理では、物体の実際の質量に近い大きさの質量が推定できることが確認された。
【0083】
図20に示される質量推定処理では、把持部40が所定時間揺れた後、静止してから検出される固有振動数に基づいて物体の質量が推定された。しかし、把持部40が物体を把持した状態でA地点からB地点までに移動する過程において静止したときに検出される固有振動数に基づいて物体の質量を推定することもできる。
【0084】
図22は、把持部40が物体を把持した状態でA地点からB地点までに移動する過程において静止したときに検出される固有振動数に基づいて推定される物体の質量と、物体の実際の質量との関係を示す表である。図22に示される例では、質量が20g、30g、40g、50gの物体について、それぞれ、質量推定処理をそれぞれ5回ずつ実施し、その平均値を質量推定処理によって推定された物体の質量としている。
【0085】
図22に示されるように、物体がA地点からB地点までに移動する過程において静止した場合であっても、質量推定処理において、物体の実際の質量に近い大きさの質量が推定できることが確認された。
【0086】
なお、本変形例では、質量推定処理において、質量推定部71Yは、把持部40が静止している状態の物体の固有振動数に基づいて物体の質量を推定した。しかし、質量推定処理において、質量推定部71Yは、把持部40が物体を把持している状態で移動している最中の物体の固有振動数に基づいて、物体の質量を推定してもよい。
【符号の説明】
【0087】
10 :システム
20 :ソフトグリッパ
40 :把持部
XA :中立線
60、160 :フレキシブルセンサ
61A、161A:電極
61B、161B:電極
62 :イオン導電性高分子層
70 :制御装置
71X :滑り検出部
71Y :質量推定部
71P :滑り検出プログラム
71PX :質量推定プログラム
80 :コンプレッサ
162 :絶縁層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22