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特開2024-77061研磨情報処理装置、予測装置、および機械学習装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077061
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】研磨情報処理装置、予測装置、および機械学習装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/02 20060101AFI20240531BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240531BHJP
   B24B 9/00 20060101ALI20240531BHJP
   B24B 21/00 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
B24B49/02 Z
H01L21/304 621E
H01L21/304 622R
B24B9/00 601H
B24B21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188873
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】緑川 周吾
【テーマコード(参考)】
3C034
3C049
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034AA17
3C034BB73
3C034BB93
3C034CA03
3C034CA04
3C034CA22
3C034CA26
3C034CB02
3C034CB03
3C034CB04
3C034CB08
3C034CB18
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3C034DD20
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3C049AA18
3C049AC02
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3C158BC02
3C158CB01
3C158CB03
3C158DA17
5F057AA02
5F057AA05
5F057AA19
5F057BA11
5F057BA15
5F057BB03
5F057CA21
5F057CA25
5F057DA06
5F057DA38
5F057EB22
5F057FA01
5F057FA13
5F057FA32
5F057FA34
5F057FA37
5F057FA48
5F057GA01
5F057GA02
5F057GA03
5F057GA06
5F057GA07
5F057GA16
5F057GA17
5F057GA27
5F057GB01
5F057GB02
5F057GB12
(57)【要約】
【課題】所望の基板の周縁部の研磨後プロファイルを得るための適切な研磨条件を自動で精度よく決定することが可能な研磨情報処理装置を提供する。
【解決手段】研磨情報処理装置112は、研磨条件と、ウエハWの周縁部の研磨前後のプロファイルと、を取得する情報取得部241と、学習済みモデルに、新たに取得された研磨条件と、研磨前の基板の周縁部のプロファイルと、を含む情報を入力して、研磨後の基板の周縁部のプロファイルを予測する状態予測部240bと、状態予測部240bで予測された研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルと、ウエハWの周縁部の目標プロファイルとに基づいて、研磨条件を補正する補正部242と、を備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持ステージに保持された基板を回転させながら、研磨液の存在下で研磨具を前記基板の周縁部に研磨ヘッドで押し付けて、前記基板の周縁部を研磨する研磨装置のための研磨情報処理装置であって、
前記基板の周縁部を研磨するための研磨条件と、前記基板の周縁部の研磨前のプロファイルと、前記研磨条件で研磨された前記基板の周縁部の研磨後のプロファイルと、を取得する情報取得部と、
前記情報取得部によって予め取得された、前記研磨条件と、前記研磨前後のプロファイルとの組み合わせを少なくとも含む学習データセットを用いて構築された学習済みモデルに、前記情報取得部により新たに取得された研磨条件と、研磨前の基板の周縁部のプロファイルと、を少なくとも含む情報を入力して、研磨後の基板の周縁部のプロファイルを予測する状態予測部と、
前記状態予測部で予測された前記研磨後の基板の周縁部のプロファイルと、前記基板の周縁部の目標プロファイルとに基づいて、前記新たに取得された研磨条件を補正する補正部と、を備えた、研磨情報処理装置。
【請求項2】
前記研磨条件は、前記保持ステージの状態を表す保持ステージ条件を含み、
前記保持ステージ条件は、前記基板の研磨開始から研磨終了までの間の前記保持ステージの回転数、前記保持ステージの回転速度、前記保持ステージの回転加速度、および前記基板の研磨開始から研磨終了までの間の前記保持ステージの回転時間の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の研磨情報処理装置。
【請求項3】
前記研磨装置は、前記研磨ヘッドを前記基板の周縁部に対して傾けることが可能なチルト機構をさらに備え、
前記研磨条件は、前記研磨ヘッドの状態を表す研磨ヘッド条件を含み、
前記研磨ヘッド条件は、前記研磨ヘッドが前記研磨具を前記基板に押圧する押圧力、前記研磨ヘッドの前記基板の周縁部に対するチルト角度範囲、前記研磨ヘッドが前記研磨具を前記基板に押圧する研磨時間、前記研磨ヘッドが前記基板の周縁部に対して移動するチルト移動速度、および前記研磨ヘッドの移動を所定のチルト角度で一次停止させる際に用いられるチルト固定時間の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の研磨情報処理装置。
【請求項4】
前記研磨具は、研磨テープであり、
前記研磨装置は、前記研磨テープに張力を与えつつ、前記研磨テープを前記研磨ヘッドに供給する研磨テープ供給装置をさらに備え、
前記研磨ヘッド条件は、前記研磨テープの張力、および/または前記研磨テープの供給速度をさらに含む、請求項3に記載の研磨情報処理装置。
【請求項5】
前記研磨装置は、前記基板に前記研磨液を供給する研磨液供給ノズルをさらに備え、
前記研磨条件は、前記研磨液に関連する研磨液条件を含み、
前記研磨液条件は、前記研磨液供給ノズルから吐出される前記研磨液の流量、前記研磨液の圧力、前記研磨液の温度、前記研磨液に含まれる砥粒の濃度、および前記基板に対する前記研磨液供給ノズルの位置の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の研磨情報処理装置。
【請求項6】
前記基板の周縁部は、前記基板の最外周面であるベベル部を含み、
前記学習データセットに含まれる研磨前の基板の周縁部のプロファイル、および前記学習済みモデルで予測された前記研磨後の基板の周縁部のプロファイルは、
前記ベベル部の表面円弧部中心座標、
前記ベベル部の表面円弧部半径、
前記ベベル部の裏面円弧部中心座標、および
前記ベベルの裏面円弧部半径の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の研磨情報処理装置。
【請求項7】
前記基板の周縁部は、前記基板の最外周面であるベベル部と、前記ベベル部よりも半径方向内側に位置する平坦部であるトップエッジ部と、を備え、
前記学習データセットに含まれる研磨後の基板の周縁部のプロファイル、および前記学習済みモデルで予測された前記研磨後の基板の周縁部のプロファイルは、前記トップエッジ部の研磨幅、および/または前記トップエッジ部の研磨深さを含む、請求項1に記載の研磨情報処理装置。
【請求項8】
保持ステージに保持された基板を回転させながら、研磨液の存在下で研磨具を前記基板の周縁部に研磨ヘッドで押し付けて、前記基板の周縁部を研磨する研磨装置で研磨された前記基板の周縁部のプロファイルを予測するための予測装置であって、
前記基板の周縁部を研磨するための研磨条件と、前記基板の周縁部の研磨前のプロファイルと、前記研磨条件で研磨された前記基板の周縁部の研磨後のプロファイルと、を少なくとも含む情報を取得する情報取得処理と、
前記情報取得処理によって予め取得された前記情報を含む学習データセットを用いて構築された学習済みモデルに、前記情報取得処理により新たに取得された研磨条件と、前記基板の周縁部の研磨前のプロファイルと、を入力して、研磨後の基板の周縁部のプロファイルを予測する予測処理と、を実行するプロセッサを備える、予測装置。
【請求項9】
保持ステージに保持された基板を回転させながら、研磨液の存在下で研磨具を前記基板の周縁部に研磨ヘッドで押し付けて、前記基板の周縁部を研磨する研磨処理後の前記基板の周縁部のプロファイルを出力する学習済みモデルを構築する機械学習装置であって、
前記基板の周縁部を研磨するための研磨条件と、前記基板の周縁部の研磨前のプロファイルと、前記研磨条件で研磨された前記基板の周縁部の研磨後のプロファイルと、の組み合わせにより構成される複数の情報によって構成される学習用データセットを記憶する学習用データ記憶部と、
前記学習用データセットを学習モデルに入力することで、研磨後の基板の周縁部のプロファイルを予測する学習済みモデルを構築する機械学習部と、
前記機械学習部によって構築された学習済みモデルを記憶する学習モデル記憶部と、を備える、機械学習装置。
【請求項10】
保持ステージに保持された基板を回転させながら、研磨液の存在下で研磨具を前記基板の周縁部に研磨ヘッドで押し付けて、前記基板の周縁部を研磨する研磨装置のための研磨情報処理装置であって、
前記基板の周縁部を研磨するための研磨条件と、前記基板の周縁部の研磨前のプロファイルと、前記研磨条件で研磨された前記基板の周縁部の研磨後のプロファイルと、を取得する情報取得部と、
前記情報取得部によって予め取得された、前記研磨条件と、前記研磨前後のプロファイルとの組み合わせを少なくとも含む学習データセットを用いて構築された学習済みモデルに、前記情報取得部により新たに取得された研磨条件と、研磨前の基板の周縁部のプロファイルと、目標プロファイルと、を少なくとも含む情報を入力して、前記基板の周縁部の研磨後のプロファイルを前記目標プロファイルに近づけるための新たな研磨条件を予測する状態予測部と、を備えた、研磨情報処理装置。
【請求項11】
保持ステージに保持された基板を回転させながら、研磨液の存在下で研磨具を前記基板の周縁部に研磨ヘッドで押し付けて、前記基板の周縁部を研磨する研磨装置で用いられる研磨条件を予測するための予測装置であって、
前記基板の周縁部を研磨するための研磨条件と、前記基板の周縁部の研磨前のプロファイルと、前記研磨条件で研磨された前記基板の周縁部の研磨後のプロファイルと、を少なくとも含む情報を取得する情報取得処理と、
前記情報取得処理によって予め取得された前記情報を含む学習データセットを用いて構築された学習済みモデルに、前記情報取得処理により新たに取得された研磨条件と、前記基板の周縁部の研磨前のプロファイルと、目標プロファイルと、を入力して、前記基板の周縁部の研磨後のプロファイルを前記目標プロファイルに近づけるための新たな研磨条件を予測する予測処理と、を実行するプロセッサを備える、予測装置。
【請求項12】
保持ステージに保持された基板を回転させながら、研磨液の存在下で研磨具を前記基板の周縁部に研磨ヘッドで押し付けて、前記基板の周縁部を研磨する研磨処理のための研磨条件を出力する学習済みモデルを構築する機械学習装置であって、
前記基板の周縁部を研磨するための研磨条件と、前記基板の周縁部の研磨前のプロファイルと、前記研磨条件で研磨された前記基板の周縁部の研磨後のプロファイルと、の組み合わせにより構成される複数の情報によって構成される学習用データセットを記憶する学習用データ記憶部と、
前記学習用データセットを学習モデルに入力することで、前記基板の周縁部の研磨後のプロファイルを目標プロファイルに近づけるための新たな研磨条件を出力する学習済みモデルを構築する機械学習部と、
前記機械学習部によって構築された学習済みモデルを記憶する学習モデル記憶部と、を備える、機械学習装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハなどの基板を研磨する研磨装置に設けられる研磨情報処理装置、特に、基板の周縁部を研磨する研磨装置に設けられる研磨情報処理装置に関する。さらに、本発明は、研磨後の基板の周縁部のプロファイルを予測する予測装置、および研磨装置で用いられる研磨条件を予測する予測装置に関する。さらに、本発明は、研磨後の基板の周縁部のプロファイルを予測するための学習済みモデルを構築する機械学習装置、および研磨装置で用いられる研磨条件を予測するための学習済みモデルを構築する機械学習装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造における歩留まり向上の観点から、ウエハなどの基板の表面状態の管理が近年注目されている。半導体デバイスの製造工程では、種々の材料がシリコン基板上に成膜される。このため、基板の周縁部には不要な膜や表面荒れが形成される。近年では、基板の周縁部のみをアームで保持して基板を搬送する方法が一般的になってきている。このような背景のもとでは、周縁部に残存した不要な膜が種々の工程を経ていく間に剥離して基板に形成されたデバイスに付着し、歩留まりを低下させてしまう。
【0003】
そこで、基板の周縁部に形成された不要な膜を除去するために、研磨装置を用いて基板の周縁部が研磨される(例えば、特許文献1参照)。また、近年の集積度を向上させるための基板の積層化において、薄膜化する際の周縁部の断面形状管理が基板割れ等を防止し、歩留まり向上の重要な要素となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6614978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来は、基板周縁部の最適な研磨後プロファイル(表面形状)を得るための最適な研磨条件(研磨レシピ)を作成するために、基板周縁部の研磨前プロファイルを計測し、得られた研磨前プロファイルに基づいて研磨条件を作業者が作成していた。研磨条件を決定するためには、作業者に専門的な知識が必要であり、適切な研磨条件を見出すためには時間を要する。
【0006】
特許文献1に記載の研磨方法であれば、比較的短時間で適切な研磨条件を得ることができる。しかしながら、この方法では、基板の周縁部のタイプごとに予め準備された複数の研磨条件から選択された研磨条件でしか基板の研磨処理をすることができない。実際の研磨プロセスでは、基板の周縁部の様々なプロファイルに応じて適切に研磨条件を決定して、該基板の周縁部を研磨する必要がある。さらに、同一のプロファイルを有する基板であっても、研磨後の製造プロセス、および/または基板の用途に応じて、様々なプロファイルに基板を研磨する必要がある。そのため、基板が様々な研磨前プロファイルを有していても、所望の研磨後プロファイルを得るための最適な研磨条件を決定することが可能な技術が求められている。
【0007】
そこで、本発明は、所望の基板の周縁部の研磨後プロファイルを得るための適切な研磨条件を自動で精度よく決定することが可能な研磨情報処理装置を提供する。
また、本発明は、所望の基板の周縁部の研磨後プロファイルを得るために、研磨後の基板の周縁部のプロファイルを予測する予測装置を提供する。
さらに、本発明は、所望の基板の周縁部の研磨後プロファイルを得るための研磨条件を予測する予測装置を提供する。
さらに、本発明は、所望の基板の周縁部の研磨後プロファイルを得るための学習済みモデルを構築する機械学習装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、保持ステージに保持された基板を回転させながら、研磨液の存在下で研磨具を前記基板の周縁部に研磨ヘッドで押し付けて、前記基板の周縁部を研磨する研磨装置のための研磨情報処理装置であって、前記基板の周縁部を研磨するための研磨条件と、前記基板の周縁部の研磨前のプロファイルと、前記研磨条件で研磨された前記基板の周縁部の研磨後のプロファイルと、を取得する情報取得部と、前記情報取得部によって予め取得された、前記研磨条件と、前記研磨前後のプロファイルとの組み合わせを少なくとも含む学習データセットを用いて構築された学習済みモデルに、前記情報取得部により新たに取得された研磨条件と、研磨前の基板の周縁部のプロファイルと、を少なくとも含む情報を入力して、研磨後の基板の周縁部のプロファイルを予測する状態予測部と、前記状態予測部で予測された前記研磨後の基板の周縁部のプロファイルと、前記基板の周縁部の目標プロファイルとに基づいて、前記新たに取得された研磨条件を補正する補正部と、を備えた、研磨情報処理装置が提供される。
【0009】
一態様では、前記研磨条件は、前記保持ステージの状態を表す保持ステージ条件を含み、前記保持ステージ条件は、前記基板の研磨開始から研磨終了までの間の前記保持ステージの回転数、前記保持ステージの回転速度、前記保持ステージの回転加速度、および前記基板の研磨開始から研磨終了までの間の前記保持ステージの回転時間の少なくとも1つを含む。
一態様では、前記研磨装置は、前記研磨ヘッドを前記基板の周縁部に対して傾けることが可能なチルト機構をさらに備え、前記研磨条件は、前記研磨ヘッドの状態を表す研磨ヘッド条件を含み、前記研磨ヘッド条件は、前記研磨ヘッドが前記研磨具を前記基板に押圧する押圧力、前記研磨ヘッドの前記基板の周縁部に対するチルト角度範囲、前記研磨ヘッドが前記研磨具を前記基板に押圧する研磨時間、前記研磨ヘッドが前記基板の周縁部に対して移動するチルト移動速度、および前記研磨ヘッドの移動を所定のチルト角度で一次停止させる際に用いられるチルト固定時間の少なくとも1つを含む。
一態様では、前記研磨具は、研磨テープであり、前記研磨装置は、前記研磨テープに張力を与えつつ、前記研磨テープを前記研磨ヘッドに供給する研磨テープ供給装置をさらに備え、前記研磨ヘッド条件は、前記研磨テープの張力、および/または前記研磨テープの供給速度をさらに含む。
【0010】
一態様では、前記研磨装置は、前記基板に前記研磨液を供給する研磨液供給ノズルをさらに備え、前記研磨条件は、前記研磨液に関連する研磨液条件を含み、前記研磨液条件は、前記研磨液供給ノズルから吐出される前記研磨液の流量、前記研磨液の圧力、前記研磨液の温度、前記研磨液に含まれる砥粒の濃度、および前記基板に対する前記研磨液供給ノズルの位置の少なくとも1つを含む。
一態様では、前記基板の周縁部は、前記基板の最外周面であるベベル部を含み、前記学習データセットに含まれる研磨前の基板の周縁部のプロファイル、および前記学習済みモデルで予測された前記研磨後の基板の周縁部のプロファイルは、前記ベベル部の表面円弧部中心座標、前記ベベル部の表面円弧部半径、前記ベベル部の裏面円弧部中心座標、および前記ベベルの裏面円弧部半径の少なくとも1つを含む。
一態様では、前記基板の周縁部は、前記基板の最外周面であるベベル部と、前記ベベル部よりも半径方向内側に位置する平坦部であるトップエッジ部と、を備え、前記学習データセットに含まれる研磨後の基板の周縁部のプロファイル、および前記学習済みモデルで予測された前記研磨後の基板の周縁部のプロファイルは、前記トップエッジ部の研磨幅、および/または前記トップエッジ部の研磨深さを含む。
【0011】
一態様では、保持ステージに保持された基板を回転させながら、研磨液の存在下で研磨具を前記基板の周縁部に研磨ヘッドで押し付けて、前記基板の周縁部を研磨する研磨装置で研磨された前記基板の周縁部のプロファイルを予測するための予測装置であって、前記基板の周縁部を研磨するための研磨条件と、前記基板の周縁部の研磨前のプロファイルと、前記研磨条件で研磨された前記基板の周縁部の研磨後のプロファイルと、を少なくとも含む情報を取得する情報取得処理と、前記情報取得処理によって予め取得された前記情報を含む学習データセットを用いて構築された学習済みモデルに、前記情報取得処理により新たに取得された研磨条件と、前記基板の周縁部の研磨前のプロファイルと、を入力して、研磨後の基板の周縁部のプロファイルを予測する予測処理と、を実行するプロセッサを備える、予測装置が提供される。
【0012】
一態様では、保持ステージに保持された基板を回転させながら、研磨液の存在下で研磨具を前記基板の周縁部に研磨ヘッドで押し付けて、前記基板の周縁部を研磨する研磨処理後の前記基板の周縁部のプロファイルを出力する学習済みモデルを構築する機械学習装置であって、前記基板の周縁部を研磨するための研磨条件と、前記基板の周縁部の研磨前のプロファイルと、前記研磨条件で研磨された前記基板の周縁部の研磨後のプロファイルと、の組み合わせにより構成される複数の情報によって構成される学習用データセットを記憶する学習用データ記憶部と、前記学習用データセットを学習モデルに入力することで、研磨後の基板の周縁部のプロファイルを予測する学習済みモデルを構築する機械学習部と、前記機械学習部によって構築された学習済みモデルを記憶する学習モデル記憶部と、を備える、機械学習装置が提供される。
【0013】
一態様では、保持ステージに保持された基板を回転させながら、研磨液の存在下で研磨具を前記基板の周縁部に研磨ヘッドで押し付けて、前記基板の周縁部を研磨する研磨装置のための研磨情報処理装置であって、前記基板の周縁部を研磨するための研磨条件と、前記基板の周縁部の研磨前のプロファイルと、前記研磨条件で研磨された前記基板の周縁部の研磨後のプロファイルと、を取得する情報取得部と、前記情報取得部によって予め取得された、前記研磨条件と、前記研磨前後のプロファイルとの組み合わせを少なくとも含む学習データセットを用いて構築された学習済みモデルに、前記情報取得部により新たに取得された研磨条件と、研磨前の基板の周縁部のプロファイルと、目標プロファイルと、を少なくとも含む情報を入力して、前記基板の周縁部の研磨後のプロファイルを前記目標プロファイルに近づけるための新たな研磨条件を予測する状態予測部と、を備えた、研磨情報処理装置が提供される。
【0014】
一態様では、保持ステージに保持された基板を回転させながら、研磨液の存在下で研磨具を前記基板の周縁部に研磨ヘッドで押し付けて、前記基板の周縁部を研磨する研磨装置で用いられる研磨条件を予測するための予測装置であって、前記基板の周縁部を研磨するための研磨条件と、前記基板の周縁部の研磨前のプロファイルと、前記研磨条件で研磨された前記基板の周縁部の研磨後のプロファイルと、を少なくとも含む情報を取得する情報取得処理と、前記情報取得処理によって予め取得された前記情報を含む学習データセットを用いて構築された学習済みモデルに、前記情報取得処理により新たに取得された研磨条件と、前記基板の周縁部の研磨前のプロファイルと、目標プロファイルと、を入力して、前記基板の周縁部の研磨後のプロファイルを前記目標プロファイルに近づけるための新たな研磨条件を予測する予測処理と、を実行するプロセッサを備える、予測装置が提供される。
【0015】
一態様では、保持ステージに保持された基板を回転させながら、研磨液の存在下で研磨具を前記基板の周縁部に研磨ヘッドで押し付けて、前記基板の周縁部を研磨する研磨処理のための研磨条件を出力する学習済みモデルを構築する機械学習装置であって、前記基板の周縁部を研磨するための研磨条件と、前記基板の周縁部の研磨前のプロファイルと、前記研磨条件で研磨された前記基板の周縁部の研磨後のプロファイルと、の組み合わせにより構成される複数の情報によって構成される学習用データセットを記憶する学習用データ記憶部と、前記学習用データセットを学習モデルに入力することで、前記基板の周縁部の研磨後のプロファイルを目標プロファイルに近づけるための新たな研磨条件を出力する学習済みモデルを構築する機械学習部と、前記機械学習部によって構築された学習済みモデルを記憶する学習モデル記憶部と、を備える、機械学習装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
研磨条件は、学習済みモデルによって予測された研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルと、ウエハWの周縁部の目標プロファイルとに基づいて補正される。あるいは、研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルを、ウエハWの周縁部の目標プロファイルに近づけるための最適な研磨条件が学習済みモデルによって予測される。その結果、適切な研磨条件を、自動的に、かつ精度よく生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、一実施形態に係る研磨装置の全体構成を示す平面図である。
図2図2(a)はストレート型のウエハの断面図であり、図2(b)はラウンド型のウエハの断面図である。
図3図3は、一実施形態に係る研磨モジュールを示す平面図である。
図4図4は、図3に示す研磨モジュールの縦断面図である。
図5図5は、研磨ヘッドの拡大図である。
図6図6は、研磨ヘッドがウエハのベベル部を研磨している様子を示す図である。
図7図7は、研磨ヘッドがウエハのトップエッジ部を研磨している様子を示す図である。
図8図8は、研磨ヘッドがウエハのボトムエッジ部を研磨している様子を示す図である。
図9図9は、一実施形態に係る研磨情報処理装置を示す模式図である。
図10図10は、ベベル部の表面円弧部中心座標、表面円弧部半径、裏面円弧部中心座標、およびベベルの裏面円弧部半径を説明するための模式図である。
図11図11は、研磨処理によってウエハWの周縁部に形成された階段状の窪みを説明するための模式図である。
図12図12は、一実施形態に係るニューラルネットワークの構造を示す模式図である。
図13図13は、他の実施形態に係るニューラルネットワークの構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る研磨装置の全体構成を示す平面図である。図1における矢印は、基板の一例であるウエハWの搬送方向を示している。図1に示す研磨装置は、ウエハWの周縁部を研磨するための装置である。
【0019】
図2(a)および図2(b)は、ウエハの周縁部を示す拡大断面図である。より詳しくは、図2(a)はいわゆるストレート型のウエハの断面図であり、図2(b)はいわゆるラウンド型のウエハの断面図である。図2(a)のウエハWにおいて、ベベル部は、上側傾斜部(上側ベベル部)P、下側傾斜部(下側ベベル部)Q、および側部(アペックス)Rから構成されるウエハWの最外周面(符号Bで示す)である。
【0020】
図2(b)のウエハWにおいては、ベベル部は、ウエハWの最外周面を構成する、湾曲した断面を有する部分(符号Bで示す)である。トップエッジ部E1は、ベベル部Bよりも半径方向内側に位置する領域であって、かつデバイスが形成される領域Dよりも半径方向外側に位置する平坦部である。トップエッジ部E1は、デバイスが形成された領域を含むこともある。ボトムエッジ部E2は、トップエッジ部E1とは反対側に位置し、ベベル部Bよりも半径方向内側に位置する平坦部である。これらトップエッジ部E1およびボトムエッジ部E2は、総称してニアエッジ部と呼ばれることもある。
【0021】
図1に戻り、研磨装置100は、略矩形状のハウジングを備えており、ハウジングの内部は隔壁114,115,116によって研磨ユニット120と洗浄ユニット130とロード/アンロードユニット140とに区画されている。これらの研磨ユニット120、洗浄ユニット130、およびロード/アンロードユニット140は、それぞれ独立に組み立てられ、独立に排気されるものである。また、研磨装置100には、研磨ユニット120、洗浄ユニット130、およびロード/アンロードユニット140の動作を制御する制御装置111が設けられている。
【0022】
さらに、研磨装置100は、ウエハWの周縁部のプロファイル(表面形状)を取得するための形状測定器(プロファイラ)150を備えている。形状測定器150の種類および構成は、ウエハWの周縁部のプロファイルを取得可能である限り任意である。例えば、形状測定器150は、少なくとも1つのカメラ、若しくは、少なくとも1つの赤外線照射器またはレーザー照射器を用いてウエハWの周縁部のプロファイルを取得する非接触式形状測定器であってもよいし、接触子をウエハWの表面に走査させることでウエハWの周縁部のプロファイルを取得する接触式形状測定器であってもよい。
【0023】
図1に示すように、ロード/アンロードユニット140は、ロード/アンロードユニット140の正面に互いに隣り合って配置された複数(図示された例では4つ)のフロントロード部141と、フロントロード部141の配列方向に沿って移動可能な第1搬送ロボット142とを有している。
【0024】
フロントロード部141には、多数のウエハWをストックするウエハカセットが載置される。具体的には、たとえば、フロントロード部141には、オープンカセット、SMIF(Standard Manufacturing Interface)ポッド、またはFOUP(Front Opening Unified Pod)が搭載され得る。ここで、SMIF,FOUPは、内部にウエハカセットを収納し、隔壁で覆うことにより、外部空間とは独立した環境を保つことができる密閉容器である。
【0025】
第1搬送ロボット142は、フロントロード部141の配列方向に沿って移動することにより、各フロントロード部141に搭載されたウエハカセットにアクセス可能である。この第1搬送ロボット142は、上下に2つのハンド(図示せず)を有しており、例えば、ウエハカセットにウエハWを戻すときに上側のハンドを使用し、研磨前のウエハWを搬送するときに下側のハンドを使用して、上下のハンドを使い分けることができるようになっている。
【0026】
図1に示す研磨ユニット120は、ウエハWの研磨処理が行われる領域に相当し、少なくとも1つ(図示された例では2つ)の研磨モジュール121a,121bと、研磨前のウエハWが仮置される第1仮置台123と、研磨後のウエハWが仮置される第2仮置台124と、研磨モジュール121a,121bと第1仮置台123と第2仮置台124との間でウエハWを搬送する第2搬送ロボット122と、を有している。本実施形態では、研磨モジュール121a,121bは、純水および薬液などの液体の存在下で研磨具を基板の周縁部に摺接させて該周縁部を研磨する研磨モジュールである。
【0027】
洗浄ユニット130は、研磨後のウエハWを洗浄し、さらに乾燥させる領域に相当し、洗浄モジュール131と、乾燥モジュール132と、第3搬送ロボット133と、第4搬送ロボット134と、を有している。
【0028】
第3搬送ロボット133は、研磨ユニット120の第2仮置台124と洗浄モジュール131との間に配置されており、研磨後のウエハWを第2仮置台124から洗浄モジュール131に搬送する。第4搬送ロボット134は、洗浄モジュール131と乾燥モジュール132との間に配置されており、洗浄後のウエハWを洗浄モジュール131から乾燥モジュール132に搬送する。
【0029】
洗浄モジュール131としては、たとえば、上下に配置されたロール状のスポンジを回転させてウエハWの表面および裏面に押し付けてウエハWの表面および裏面を洗浄するロールスポンジタイプの洗浄モジュールや、半球状のスポンジを回転させながらウエハWに押し付けて洗浄するペンシルタイプの洗浄モジュールを用いることができる。乾燥モジュール132としては、たとえば、チャックしたウエハWを高速回転させるステージを有しており、ウエハWを高速回転させることで洗浄後のウエハWを乾燥させるスピンドライタイプの乾燥モジュールを用いることができる。
【0030】
図1に示すように、隔壁114は、研磨ユニット120および洗浄ユニット130と、ロード/アンロードユニット140とを区画する隔壁である。研磨ユニット120を区画する隔壁115と、洗浄ユニット130を区画する隔壁116との間には、第2搬送ロボット122が配置される搬送エリア128が形成されている。研磨ユニット120の研磨モジュール121a,121bで研磨処理されたウエハWは、搬送エリア128を通って洗浄ユニット130の洗浄モジュール131に搬送される。
【0031】
次に、研磨モジュール121aについて説明する。本実施形態では、研磨モジュール121bは、研磨モジュール121aと同一の構成を有しているため、その重複する説明を省略する。
【0032】
図3は、一実施形態に係る研磨モジュール121aを示す平面図であり、図4は、図3に示す研磨モジュール121aの縦断面図である。図3および図4に示すように、この研磨モジュール121aは、その中央部に、ウエハWを水平に保持し、回転させる回転保持機構(基板保持部)3を備えている。図3においては、回転保持機構3がウエハWを保持している状態を示している。回転保持機構3は、ウエハWの裏面を真空吸着により保持する皿状の保持ステージ4と、保持ステージ4の中央部に連結された中空シャフト5と、この中空シャフト5を回転させるモータM1とを備えている。ウエハWは、搬送機構のハンド(図示せず)により、ウエハWの中心が中空シャフト5の軸心と一致するように保持ステージ4の上に載置される。
【0033】
中空シャフト5は、ボールスプライン軸受(直動軸受)6によって上下動自在に支持されている。保持ステージ4の上面には溝4aが形成されており、この溝4aは、中空シャフト5を通って延びる連通路7に連通している。一実施形態では、中空シャフト5を通って延びる連通路7に連通する溝4aが形成されたシートを保持ステージ4の上面に貼り付けてもよい。溝4aは、例えば、シートを打ち抜き加工することにより形成される。連通路7は中空シャフト5の下端に取り付けられたロータリジョイント8を介して真空ライン9に接続されている。連通路7は、処理後のウエハWを保持ステージ4から離脱させるための窒素ガス供給ライン10にも接続されている。これらの真空ライン9と窒素ガス供給ライン10を切り替えることによって、ウエハWを保持ステージ4の上面に真空吸着し、離脱させる。
【0034】
中空シャフト5は、この中空シャフト5に連結されたプーリーp1と、モータM1の回転軸に取り付けられたプーリーp2と、これらプーリーp1,p2に掛けられたベルトb1を介してモータM1によって回転される。モータM1の回転軸は中空シャフト5と平行に延びている。このような構成により、保持ステージ4の上面に保持されたウエハWは、モータM1によって回転される。
【0035】
ボールスプライン軸受6は、中空シャフト5がその長手方向へ自由に移動することを許容する軸受である。ボールスプライン軸受6は円筒状のケーシング12に固定されている。したがって、本実施形態においては、中空シャフト5は、ケーシング12に対して上下に直線動作ができるように構成されており、中空シャフト5とケーシング12は一体に回転する。中空シャフト5は、エアシリンダ(昇降機構)15に連結されており、エアシリンダ15によって中空シャフト5および保持ステージ4が上昇および下降できるようになっている。
【0036】
ケーシング12と、その外側に同心上に配置された円筒状のケーシング14との間にはラジアル軸受18が介装されており、ケーシング12は軸受18によって回転自在に支持されている。このような構成により、回転保持機構3は、ウエハWをその中心軸Crまわりに回転させ、かつウエハWを中心軸Crに沿って上昇下降させることができる。
【0037】
図3に示すように、回転保持機構3に保持されたウエハWの周囲には4つの研磨ヘッド組立体(研磨部)1A,1B,1C,1Dが配置されている。研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dの径方向外側には研磨テープ供給機構2A,2B,2C,2Dがそれぞれ設けられている。研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dと研磨テープ供給機構2A,2B,2C,2Dとは隔壁20によって隔離されている。隔壁20の内部空間は研磨室21を構成し、4つの研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dおよび保持ステージ4は研磨室21内に配置されている。一方、研磨テープ供給機構2A,2B,2C,2Dは隔壁20の外側(すなわち、研磨室21の外)に配置されている。研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dは互いに同一の構成を有し、研磨テープ供給機構2A,2B,2C,2Dも互いに同一の構成を有している。以下、研磨ヘッド組立体1Aおよび研磨テープ供給機構2Aについて説明する。
【0038】
研磨テープ供給機構2Aは、研磨具の一例である研磨テープ23を研磨ヘッド組立体1Aに供給する供給リール24と、ウエハWの研磨に使用された研磨テープ23を回収する回収リール25とを備えている。供給リール24は回収リール25の上方に配置されている。供給リール24および回収リール25にはカップリング27を介してモータM2がそれぞれ連結されている(図1には供給リール24に連結されるカップリング27とモータM2のみを示す)。それぞれのモータM2は、所定の回転方向に一定のトルクをかけ、研磨テープ23に所定のテンション(張力)をかけることができるようになっている。
【0039】
研磨テープ23は長尺の帯状の研磨具であり、その片面が研磨面を構成している。研磨テープ23は、PETシートなどからなる基材テープと、基材テープの上に形成されている研磨層とを有している。研磨層は、基材テープの一方の表面を被覆するバインダ(例えば、樹脂)と、バインダに保持された砥粒とから構成されており、研磨層の表面が研磨面を構成している。研磨具として、研磨テープ23に代えて、帯状の研磨布を用いてもよい。
【0040】
研磨テープ23は供給リール24に巻かれた状態で研磨テープ供給機構2Aにセットされる。研磨テープ23の側面は巻き崩れが生じないようにリール板で支持されている。研磨テープ23の一端は回収リール25に取り付けられ、研磨ヘッド組立体1Aに供給された研磨テープ23を回収リール25が巻き取ることで研磨テープ23を回収するようになっている。研磨ヘッド組立体1Aは研磨テープ供給機構2Aから供給された研磨テープ23をウエハWの周縁部に当接させるための研磨ヘッド30を備えている。研磨テープ23は、研磨テープ23の研磨面(前面)がウエハWを向くように研磨ヘッド30に供給される。
【0041】
研磨テープ供給機構2Aは複数のガイドローラ31,32,33,34を有しており、研磨ヘッド組立体1Aに供給され、研磨ヘッド組立体1Aから回収される研磨テープ23がこれらのガイドローラ31,32,33,34によってガイドされる。研磨テープ23は、隔壁20に設けられた開口部20aを通して供給リール24から研磨ヘッド30へ供給され、使用された研磨テープ23は開口部20aを通って回収リール25に回収される。
【0042】
図4に示すように、ウエハWの上方には上側供給ノズル(上側研磨液供給ノズル)36が配置され、回転保持機構3に保持されたウエハWの上面中心に向けて研磨液を供給する。また、ウエハWの裏面と回転保持機構3の保持ステージ4との境界部(保持ステージ4の外周部)に向けて研磨液を供給する下側供給ノズル(下側研磨液供給ノズル)37を備えている。研磨液には通常純水が使用されるが、研磨テープ23の砥粒としてシリカを使用する場合などはアンモニアを用いることもできる。さらに、研磨装置は、研磨処理後に研磨ヘッド30を洗浄する洗浄ノズル38を備えており、研磨処理後にウエハWが回転保持機構3により上昇した後、研磨ヘッド30に向けて洗浄水を噴射し、研磨処理後の研磨ヘッド30を洗浄できるようになっている。
【0043】
中空シャフト5がケーシング12に対して昇降した時にボールスプライン軸受6やラジアル軸受18などの機構を研磨室21から隔離するために、図4に示すように、中空シャフト5とケーシング12の上端とは上下に伸縮可能なベローズ19で接続されている。図4は、中空シャフト5が下降している状態を示し、保持ステージ4が研磨位置にあることを示している。研磨処理後には、エアシリンダ15によりウエハWを保持ステージ4および中空シャフト5とともに搬送位置まで上昇させ、この搬送位置でウエハWを保持ステージ4から離脱させる。
【0044】
隔壁20は、ウエハWを研磨室21に搬入および搬出するための搬送口20bを備えている。搬送口20bは、水平に延びる切り欠きとして形成されている。したがって、搬送機構に把持されたウエハWは、水平な状態を保ちながら、搬送口20bを通って研磨室21内を横切ることが可能となっている。隔壁20の上面には開口20cおよびルーバー40が設けられ、下面には排気口(図示せず)が設けられている。研磨処理時は、搬送口20bは図示しないシャッターで閉じられるようになっている。したがって、排気口から図示しないファン機構により排気をすることで研磨室21の内部には清浄空気のダウンフローが形成されるようになっている。この状態において研磨処理がされるので、研磨液が上方へ飛散することが防止され、研磨室21の上部空間を清浄に保ちながら研磨処理をすることができる。
【0045】
図1に示すように、研磨ヘッド30はアーム60の一端に固定され、アーム60は、ウエハWの接線方向に平行な回転軸Ctまわりに回転自在に構成されている。アーム60の他端はプーリーp3,p4およびベルトb2を介してモータM4に連結されている。モータM4が時計回りおよび反時計回りに所定の角度だけ回転することで、アーム60が軸Ctまわりに所定の角度だけ回転する。本実施形態では、モータM4、アーム60、プーリーp3,p4、およびベルトb2によって、ウエハWの表面に対して研磨ヘッド30を傾斜させるチルト機構が構成されている。
【0046】
チルト機構は、移動台61に搭載されている。移動台61は、ガイド62およびレール63を介してベースプレート65に移動自在に連結されている。レール63は、回転保持機構3に保持されたウエハWの半径方向に沿って直線的に延びており、移動台61はウエハWの半径方向に沿って直線的に移動可能になっている。移動台61にはベースプレート65を貫通する連結板66が取り付けられ、連結板66にはリニアアクチュエータ67がジョイント68を介して連結されている。リニアアクチュエータ67はベースプレート65に直接または間接的に固定されている。
【0047】
リニアアクチュエータ67としては、エアシリンダや位置決め用モータとボールネジとの組み合わせなどを採用することができる。このリニアアクチュエータ67、レール63、ガイド62によって、研磨ヘッド30をウエハWの半径方向に直線的に移動させる移動機構が構成されている。すなわち、移動機構はレール63に沿って研磨ヘッド30をウエハWへ近接および離間させるように動作する。一方、研磨テープ供給機構2Aはベースプレート65に固定されている。
【0048】
図5は、研磨ヘッド30の拡大図である。図5に示すように、研磨ヘッド30は、研磨テープ23の研磨面をウエハWに対して所定の力で押圧する押圧機構41を備えている。また、研磨ヘッド30は、研磨テープ23を供給リール24から回収リール25へ送るテープ送り機構42を備えている。研磨ヘッド30は複数のガイドローラ43,44,45,46,47,48,49を有しており、これらのガイドローラはウエハWの接線方向と直交する方向に研磨テープ23が進行するように研磨テープ23をガイドする。
【0049】
研磨ヘッド30に設けられたテープ送り機構42は、テープ送りローラ42aと、テープ把持ローラ42bと、テープ送りローラ42aを回転させるモータM3とを備えている。モータM3は研磨ヘッド30の側面に設けられ、モータM3の回転軸にテープ送りローラ42aが取り付けられている。テープ把持ローラ42bはテープ送りローラ42aに隣接して配置されている。テープ把持ローラ42bは、図5の矢印NFで示す方向(テープ送りローラ42aに向かう方向)に力を発生するように図示しない機構で支持されており、テープ送りローラ42aを押圧するように構成されている。
【0050】
モータM3が図5に示す矢印方向に回転すると、テープ送りローラ42aが回転して研磨テープ23を供給リール24から研磨ヘッド30を経由して回収リール25へ送ることができる。テープ把持ローラ42bはそれ自身の軸まわりに回転することができるように構成され、研磨テープ23が送られるに従って回転する。
【0051】
押圧機構41は、研磨テープ23の裏面側に配置された押圧パッド50と、この押圧パッド50をウエハWの周縁部に向かって移動させるエアシリンダ(駆動機構)52とを備えている。エアシリンダ52はいわゆる片ロッドシリンダである。エアシリンダ52へ供給する空気圧を制御することによって、研磨テープ23をウエハWに対して押圧する力が調整される。ウエハWの周囲に配置された4つの研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dのチルト機構、押圧機構41、テープ送り機構42、および各研磨ヘッド組立体を移動させる移動機構は、それぞれ独立に動作が可能なように構成されている。
【0052】
図6は、研磨ヘッド30がウエハWのベベル部を研磨している様子を示す図である。ウエハWのベベル部を研磨するときは、図6に示されるように、上述のチルト機構により研磨ヘッド30の傾斜角度を断続的または連続的に変化させながら、押圧パッド50により研磨テープ23をウエハWのベベル部に押し当てる。研磨中に、研磨テープ23をテープ送り機構42により所定の速度で送ってもよい。
【0053】
さらに、本実施形態の押圧パッド50を有する研磨ヘッド30は、ウエハWのトップエッジ部およびボトムエッジ部を研磨することができる。すなわち、図7に示されるように、上述のチルト機構により研磨ヘッド30を上方に傾けて、突起部54aにより研磨テープ23をウエハWのトップエッジ部に押圧し、トップエッジ部を研磨することができる。さらに、図8に示されるように、研磨ヘッド30を下方に傾けて、突起部54bにより研磨テープ23をウエハWのボトムエッジ部に押圧し、ボトムエッジ部を研磨することができる。
【0054】
このように、本実施形態の研磨ヘッド30は、トップエッジ部E1、ベベル部B、およびボトムエッジ部E2を含むウエハWの周縁部全体を研磨することができる。研磨ヘッド組立体1A~1D(図3参照)は、この研磨ヘッド30をそれぞれ有している。したがって、研磨装置のスループットを向上させるために、全ての研磨ヘッド組立体1A~1Dがトップエッジ部E1、ベベル部B、およびボトムエッジ部E2を含むウエハWの周縁部全体を研磨してもよい。あるいは、研磨ヘッド組立体1Aでトップエッジ部E1を研磨し、研磨ヘッド組立体1Bでベベル部Bを研磨し、研磨ヘッド組立体1Cでボトムエッジ部E2を研磨してもよい。
【0055】
次に、このような構成からなる研磨装置100における研磨方法の一例を説明する。
【0056】
図1に示すように、まず、ロード/アンロードユニット140において、第1搬送ロボット142が、フロントロード部141のウエハカセットから研磨前のウエハWを取り出して、形状測定器150に搬送し、形状測定器150は、研磨前のウエハWの周縁部のプロファイルを取得する。取得された研磨前のウエハWの周縁部のプロファイルは、形状測定器150から制御装置111に送られ、制御装置111は、研磨前のウエハWの周縁部のプロファイルを記憶する。次いで、第1搬送ロボット142は、形状測定器150からウエハWを取り出して、第1仮置台123に仮置する。
【0057】
第2搬送ロボット122は、第1仮置台123上の研磨前のウエハWをハンドでクランプして、第1研磨モジュール121a(または第2研磨モジュール121b)に搬入する。そして、第1研磨モジュール121a(または第2研磨モジュール121b)は、搬入されたウエハWの周縁部の研磨処理を所定の研磨条件(研磨レシピ)で実行する。
【0058】
次いで、第1研磨モジュール121a(または第2研磨モジュール121b)でのウエハWの研磨処理が完了すると、第2搬送ロボット122は、研磨後のウエハWを第1研磨モジュール121a(または第2研磨モジュール121b)から取り出して、第2仮置台124に仮置する。
【0059】
第2仮置台124に研磨後のウエハWが仮置されると、第3搬送ロボット133は、研磨後のウエハWを第2仮置台124から洗浄モジュール131に搬送し、洗浄モジュール131はウエハWの洗浄処理を実行する。次いで、第4搬送ロボット134は、洗浄後のウエハWを洗浄モジュール131から乾燥モジュール132に搬送し、乾燥モジュール132はウエハWの乾燥処理を実行する。
【0060】
次いで、ロード/アンロードユニット140の第1搬送ロボット142は、乾燥後のウエハWを乾燥モジュール132から取り出して、形状測定器150に搬送し、形状測定器150は、研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルを取得する。取得された研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルは、形状測定器150から制御装置111に送られ、制御装置111は、研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルを記憶する。その後、第1搬送ロボット142は、形状測定器150からウエハWを取り出して、該ウエハWをフロントロード部141のウエハカセットに収納する。
【0061】
図1に示すように、本実施形態に係る制御装置111には、ウエハ(基板)Wの周縁部の所望の研磨後プロファイルを得るための適切な研磨条件を決定する研磨情報処理装置112が内蔵されている。図示はしないが、制御装置111を、研磨情報処理装置として使用してもよいし、研磨情報処理装置112を、制御装置111とは別に設けてもよい。研磨情報処理装置112が制御装置111とは別に設けられる場合、研磨情報処理装置112は、制御装置111と無線または有線で情報を送受信可能に連結される。このような研磨情報処理装置112は、パーソナルコンピュータであってもよいし、サーバ装置であってもよいし、ネットワーク上のクラウド環境に構築されたクラウドサーバであってもよい。
【0062】
図9は、一実施形態に係る研磨情報処理装置を示す模式図である。図9に示す研磨情報処理装置112は、プログラム、およびデータなどを格納可能な記憶装置240aと、記憶装置240aに格納されているプログラムに従って演算を行うCPU(中央処理装置)またはGPU(グラフィックプロセッシングユニット)などのプロセッサ(処理装置)240bと、ウエハWの周縁部を研磨するための研磨条件と、研磨前後のウエハWの周縁部のプロファイルと、を取得する情報取得部241と、を備えている。
【0063】
情報取得部241は、制御装置111と形状測定器150(図1参照)に連結されており、ウエハWを研磨するたびに、制御装置111から研磨条件を取得し、形状測定器150から研磨前後のウエハWの周縁部のプロファイル(すなわち、研磨前のウエハWの周縁部のプロファイルと、取得した研磨条件で研磨された後のウエハWの周縁部のプロファイル)を取得する。さらに、情報取得部241は、取得した研磨条件と、研磨前後のウエハWの周縁部のプロファイルと、の組み合わせからなる情報をプロセッサ240bに送り、プロセッサ240bは、受信した研磨条件を、受信した研磨前後のウエハWの周縁部のプロファイルに関連付けて記憶装置240aに格納する。
【0064】
さらに、プロセッサ240bは、後述する機械学習装置300の学習用データ記憶部301に、情報(すなわち、研磨条件と、この研磨条件に関連付けられた研磨前後のウエハWの周縁部のプロファイルの組み合わせ)を送信して、該情報を学習用データ記憶部301に格納させる。機械学習装置300は、学習用データ記憶部301に予め格納された大量の情報を用いて、情報取得部241によって新たに取得された研磨条件と、研磨前の基板の周縁部のプロファイルと、を少なくとも含む情報を入力した際に、研磨後の基板の周縁部のプロファイルを予測する(または、出力する)学習済みモデルを構築する。
【0065】
本実施形態では、研磨情報処理装置112のプロセッサ240bは、情報取得部241に、研磨条件と、ウエハWの周縁部の研磨前のプロファイルと、前記研磨条件で研磨された前記基板の周縁部の研磨後のプロファイルと、を少なくとも含む情報を取得させる動作と、機械学習装置300によって構築された学習済みモデルに、情報取得部241によって新たに取得された研磨条件と、研磨前の基板の周縁部のプロファイルと、を少なくとも含む情報を入力して、研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルを予測する動作と、を実行する予測装置としても機能する。
【0066】
図9に示す研磨情報処理装置112は、さらに、学習済みモデルで予測された研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルと、ウエハWの周縁部の目標プロファイルとに基づいて、新たに取得した研磨条件を補正する補正部242を備える。目標プロファイルは、記憶装置240aに予め格納されていてもよいし、制御装置111に予め格納されていてもよい。補正部242で行われる研磨条件の補正では、勾配降下法などの既知の補正方法を用いることができる。このような補正方法では、例えば、予測された研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルと、ウエハWの周縁部の目標プロファイルとの差分に基づいて研磨条件が補正される。
【0067】
補正部242は、補正後の研磨条件をプロセッサ240bに送り、プロセッサ240bは、補正後の研磨条件を制御装置111に送る。制御装置111は、補正後の研磨条件でウエハWの周縁部を研磨する。
【0068】
情報取得部241によって取得される研磨条件、および/または補正部242によって補正される研磨条件は、例えば、保持ステージ4(図4参照)の状態を表す保持ステージ条件、研磨ヘッド30(図5参照)の状態を表す研磨ヘッド条件、および研磨液供給ノズル36,37(図4参照)から吐出される研磨液に関連する研磨液条件の少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0069】
保持ステージ条件は、ウエハWの研磨開始から研磨終了までの間の保持ステージ4の回転数、保持ステージ4の回転速度、保持ステージ4の回転加速度、およびウエハWの研磨開始から研磨終了までの間の保持ステージ4の回転時間の少なくとも1つを含んでいる。保持ステージ4の回転加速度は、ウエハWの研磨開始から研磨終了までの間に保持ステージ4の回転速度が変化する場合に、保持ステージ4の回転速度の瞬時の変化量に相当する。
【0070】
研磨ヘッド条件は、研磨ヘッド30が研磨テープ23(研磨具)をウエハWに押圧する押圧力、研磨ヘッド30がチルト機構によってウエハWの周縁部に対して移動する際の、研磨ヘッド30のウエハWの周縁部に対するチルト角度範囲、研磨ヘッド30が研磨テープ23をウエハWに押圧する研磨時間、研磨ヘッド30がチルト機構によってウエハWの周縁部に対して移動する際のチルト移動速度、および研磨ヘッド30の移動を所定のチルト角度で一次停止させる際に用いられるチルト固定時間の少なくとも1つを含んでいる。
【0071】
研磨ヘッド条件は、上記研磨ヘッド条件の代わりに、またはこれらに加えて、研磨テープ供給装置によって加えられる研磨テープ23の張力、および/または研磨テープ供給装置によって送られる研磨テープ23の供給速度を含んでいてもよい。
【0072】
研磨液条件は、研磨液供給ノズル36および/または研磨液供給ノズル37から吐出される研磨液の流量、研磨液の圧力、研磨液の温度、研磨液がスラリーの場合に該研磨液に含まれる砥粒の濃度、およびウエハWに対する研磨液供給ノズル36および/または研磨液供給ノズル37の位置の少なくとも1つを含んでいる。
【0073】
情報取得部241によって取得される研磨前後のウエハWの周縁部のプロファイル、および学習済みモデルで予測された研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルは、ベベル部の表面円弧部中心座標、ベベル部の表面円弧部半径、ベベル部の裏面円弧部中心座標、およびベベルの裏面円弧部半径の少なくとも1つを含んでいる。これらの値は、形状測定器150によって取得される。
【0074】
図10は、ベベル部の表面円弧部中心座標、表面円弧部半径、裏面円弧部中心座標、およびベベルの裏面円弧部半径を説明するための模式図である。ベベル部の表面円弧部中心座標、および表面円弧部半径を求めるために、ウエハWの中心を通って延びる縦断面でウエハWを見たときに、ウエハWの表面側の円弧部B1の中心O1を原点とする極座標系が設定される。この極座標系において、表面円弧部中心座標は原点O1に相当し、表面円弧部半径は、原点O1からウエハWの表面側の円弧部B1の表面までの距離r1に相当する。
【0075】
同様に、ベベル部の裏面円弧部中心座標、および裏面円弧部半径を求めるために、ウエハWの中心を通って延びる縦断面でウエハWを見たときに、ウエハWの裏面側の円弧部B2の中心O2を原点とする極座標系が設定される。この極座標系において、裏面円弧部中心座標は原点O2に相当し、裏面円弧部半径は、原点O2からウエハWの裏面側の円弧部B2の表面までの距離r2に相当する。図10に示した例では、原点O2は、原点O1に一致し、距離r2は距離r1と同一である。しかしながら、原点O1と原点O2が一致している必要は無いし、距離r2と距離r1が同一である必要も無い。
【0076】
図7に示すように、本実施形態に係る研磨装置の研磨ヘッド30は、ウエハWの周縁部のトップエッジ部を研磨することができる。この場合、図11に示すように、研磨装置は、ウエハWの周縁部に階段状の窪みが形成されるようにトップエッジ部を研磨することができる。図11は、研磨処理によってウエハWの周縁部に形成された階段状の窪みを説明するための模式図である。
【0077】
図11に示すように、ウエハWの周縁部に階段状の窪みが形成される場合、情報取得部241によって取得される研磨前後のウエハWの周縁部のプロファイル、および学習済みモデルで予測された研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルは、ウエハWに表面から研磨されるトップエッジ部の部位の深さ(研磨深さDp)、および/またはウエハWの最外周端Weから研磨されるトップエッジ部の部位の幅(研磨幅Wp)を含んでいてもよい。
【0078】
本実施形態によれば、学習済みモデルによって予測された研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルと、ウエハWの周縁部の目標プロファイルとに基づいて、研磨条件が補正される。その結果、研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルを目標プロファイルに近づけるための適切な研磨条件を、自動的に、かつ精度よく生成することができる。
【0079】
一実施形態では、予測された研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルと、ウエハWの周縁部の目標プロファイルとの差分に対する閾値を設けてもよい。閾値は、予め記憶装置240aに記憶されるか、制御装置111に記憶されている。プロセッサ240bは、予測された研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルと、ウエハWの周縁部の目標プロファイルとの差分が閾値を超えている場合に、補正後の研磨条件と、研磨前のウエハWの周縁部のプロファイルを、再度、学習済みモデルに入力する。そして、補正後の研磨条件で研磨された研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルを補正部242に送り、補正部242は、補正後の研磨条件で研磨されたウエハWの周縁部のプロファイルと目標プロファイルとに基づいて、補正後の研磨条件を再補正する。
【0080】
プロセッサ240bは、補正後の研磨条件で研磨されたウエハWの周縁部のプロファイルと目標プロファイルとの差分が閾値以下であれば、再補正された研磨条件を制御装置111に送り、制御装置111は、再補正された研磨条件でウエハWの周縁部を研磨させる。プロセッサ240bは、補正後の研磨条件で研磨されたウエハWの周縁部のプロファイルと目標プロファイルとの差分が閾値よりも大きければ、再補正後の研磨条件と、研磨前のウエハWの周縁部のプロファイルを、学習済みモデルに入力して、再補正後の研磨条件で研磨されたウエハWの周縁部のプロファイルを予測させる。このように、プロセッサ240bは、学習済みモデルから出力された研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルと目標プロファイルとの差分が閾値以下となるまで、学習済みモデルから研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルを出力させる動作を繰り返してもよい。
【0081】
図9に示す機械学習装置300は、情報取得部241によって取得された研磨条件と、研磨前後のプロファイルとの組み合わせからなる情報を少なくとも含む学習データセットを用いて学習済みモデルを構築するための装置である。図9に示すように、機械学習装置300は、学習用データセットを記憶する学習用データ記憶部301と、学習用データ記憶部301に記憶された学習用データセットを用いて学習済みモデルを構築する機械学習部303と、機械学習部303で構築された学習済みモデルを記憶する学習モデル記憶部304と、を備えている。
【0082】
上述したように、学習用データセット記憶部301に記憶される学習用データセットは、研磨装置でウエハWの周縁部を研磨するたびに情報取得部241によって取得された研磨条件と、研磨前後のウエハWの周縁部のプロファイルと、の組み合わせからなる多数の情報である。研磨条件と、研磨前後のウエハWの周縁部のプロファイルと、の組み合わせからなる情報は、ウエハWを研磨するたびに、学習用データセット記憶部301に学習用データセットとして蓄積されていく。
【0083】
機械学習部303では、学習済みモデルを構築するために学習用データセットを用いた機械学習が行われる。機械学習は、人工知能(AI:Artificial Intelligence)のアルゴリズムである学習アルゴリズムによって実行され、機械学習によって、研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルを予測する学習済モデルが構築される。学習済みモデルを構築するための学習アルゴリズムは特に限定されない。例えば、研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルを学習するための学習アルゴリズムとして、「教師あり学習」、「教師なし学習」、「強化学習」、「ニューラルネットワーク」などの公知の学習アルゴリズムを採用できる。
【0084】
一実施形態では、機械学習部303が実行する機械学習は、ニューラルネットワークを用いた機械学習、特に、ディープラーニングであってもよい。ディープラーニングは、隠れ層(中間層ともいう)が多層化されたニューラルネットワークをベースとする機械学習法である。本明細書では、入力層と、二層以上の隠れ層と、出力層で構成されるニューラルネットワークを用いた機械学習をディープラーニングと称する。
【0085】
図12は、一実施形態に係るニューラルネットワークの構造を示す模式図である。図12に示すニューラルネットワークは、入力層350と、複数の隠れ層351と、出力層352を有している。ニューラルネットワークは、情報取得部241によって取得された研磨条件と、研磨前後のウエハWの周縁部のプロファイルとの多数の組合せからなる学習用データセットに基づいて、研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルを学習する。すなわち、ニューラルネットワークは、研磨条件および研磨前のウエハWの周縁部のプロファイルと、研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルとの関係を学習する。このような機械学習は所謂「教師あり学習」と称される。教師あり学習では、状態変数としての研磨条件および研磨前のウエハWの周縁部のプロファイルと、この状態変数に関連付けられた研磨後のウエハWの周縁部のプロファイル(ラベル)の組み合わせを大量にニューラルネットワークに入力することで、それらの関係性を帰納的に学習する。
【0086】
本実施形態では、機械学習部303は、学習用データセットを用いて、研磨条件と、研磨前のウエハWの周縁部のプロファイルとを入力したときに、この研磨条件で研磨された後のウエハWの周縁部のプロファイルを出力する学習済みモデルを構築する。このように構築された学習済モデルは、学習モデル記憶部304に記憶される。
【0087】
学習モデル記憶部304に記憶された学習済みモデルは、新たなウエハWが研磨される前に、予測装置として機能するプロセッサ240bに呼び出され、プロセッサ240bは、情報取得部241によって取得された新しいウエハW用の研磨条件と、新しいウエハWの研磨前のプロファイルを学習済みモデルに入力して、研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルを予測する。さらに、プロセッサ240bは、予測された研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルと目標プロファイルとを補正部242に送り、補正部242に、新しいウエハW用の研磨条件を補正させる。
【0088】
プロセッサ240bは、新たなウエハWの研磨条件と、研磨前後の新たなウエハWの周縁部のプロファイルを追加の教師データとして学習用データセット記憶部301に蓄積してもよい。この場合、機械学習装置300は、教師データおよび追加の教師データを基にした機械学習を通じて、学習済みモデルを更新していく。これにより、学習済みモデルから出力される研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルの精度を向上させることができる。
【0089】
図13は、他の実施形態に係るニューラルネットワークの構造を示す模式図である。なお、本実施形態で特に説明しない構成は、上述した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0090】
図13に示すニューラルネットワークを用いる実施形態では、機械学習装置300は、学習用データセットを用いて、入力層350に、状態変数としての研磨条件、研磨前プロファイル、および目標プロファイルを入力したときに、ウエハWの周縁部の研磨後のプロファイルを目標プロファイルに近づける(または、一致させる)ための新たな研磨条件を予測する(出力する)学習済みモデルを構築する。学習用データセットは、上述した実施形態と同様に、研磨条件と、研磨前後のウエハWの周縁部のプロファイルとの組み合わせからなる情報を少なくとも含んでいる。
【0091】
本実施形態では、予測装置としても機能する研磨情報処理装置112のプロセッサ240bは、情報取得部241に、研磨条件と、ウエハWの周縁部の研磨前のプロファイルと、目標プロファイルと、を少なくとも含む情報を取得させる動作と、機械学習装置300によって構築された学習済みモデルに、情報取得部241によって新たに取得された研磨条件と、研磨前の基板の周縁部のプロファイルと、目標プロファイルと、を少なくとも含む情報を入力して、ウエハWの周縁部の研磨後のプロファイルを目標プロファイルに近づけるための新たな研磨条件を予測する動作と、を実行させる。
【0092】
なお、本実施形態では、図9に示す研磨情報処理装置112の補正部242が省略される。予測装置としても機能するプロセッサ240bは、予測された新しい研磨条件を制御装置111に送り、制御装置111は、新しい研磨条件でウエハWの周縁部を研磨する。
【0093】
本実施形態では、学習済みモデルによって、ウエハWの周縁部の研磨後のプロファイルを目標プロファイルに近づけるための新たな研磨条件が予測され、該新しい研磨条件でウエハWの周縁部が研磨される。すなわち、研磨後のウエハWの周縁部のプロファイルを目標プロファイルに近づけるための適切な研磨条件を、自動的に、かつ精度よく生成することができる。
【0094】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0095】
1A~1D 研磨ヘッド組立体(研磨部)
2A~2D 研磨テープ供給機構
3 回転保持機構(基板保持部)
4 保持ステージ
5 中空シャフト
6 ボールスプライン軸受
7 連通路
9 真空ライン
10 窒素ガス供給ライン
15 エアシリンダ
20 隔壁
24 供給リール
25 回収リール
30 研磨ヘッド
41 押圧機構
42 テープ送り機構
43~49 ガイドローラ
50 押圧パッド
52 エアシリンダ(駆動機構)
67 リニアアクチュエータ
100 研磨装置
111 制御装置
112 研磨情報処理装置
120 研磨ユニット
121a,121b 研磨モジュール
122 第2搬送ロボット
128 搬送エリア
130 洗浄ユニット
131 洗浄モジュール
132 乾燥モジュール
133 第3搬送ロボット
134 第4搬送ロボット
140 ロード/アンロードユニット
141 フロントロード部
142 第1搬送ロボット
150 形状測定器
240a 記憶装置
240b プロセッサ(処理装置)
241 情報取得部
242 補正部
300 機械学習装置
301 学習用データ記憶部
303 機械学習部
304 学習モデル記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13