(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077137
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】テラヘルツ波発生装置及びその設計方法並びにテラヘルツ波発生方法
(51)【国際特許分類】
H01S 1/02 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
H01S1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189003
(22)【出願日】2022-11-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構 「B5G超低消費電力高効率ネットワーク構成に向けた高機能材料の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100125298
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 伸
(72)【発明者】
【氏名】河島 整
(72)【発明者】
【氏名】牧野 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】斎木 敏治
(57)【要約】
【課題】製造し易いテラヘルツ波発生装置及びその設計方法並びに前記テラヘルツ波発生装置を用いたテラヘルツ波発生方法を提供すること。
【解決手段】本発明のテラヘルツ波発生装置1は、基板2と、基板2の表面上にギャップを介して対向配置される1対の電極3a,3bを含んで構成されるアンテナ構造体と、前記ギャップの位置に1対の電極3a,3b同士を接続するように配され、閾値以上のエネルギー密度を持ったパルス光P
1を受光してから1ps以内に導電性の相から絶縁性の相へ相変化するとともに熱の印加を受けて前記絶縁性の相から前記導電性の相に相変化する相変化材料を含んで構成される電極接続部4と、を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の表面上にギャップを介して対向配置される1対の電極を含んで構成されるアンテナ構造体と、
前記ギャップの位置に前記1対の電極同士を接続するように配され、閾値以上のエネルギー密度を持ったパルス光を受光してから1ps以内に導電性の相から絶縁性の相へ相変化するとともに熱の印加を受けて前記絶縁性の相から前記導電性の相に相変化する相変化材料を含んで構成される電極接続部と、
を有することを特徴とするテラヘルツ波発生装置。
【請求項2】
相変化材料が、Ge10Sb2Te13及びGe2Sb2Te5のいずれかから選択される請求項1に記載のテラヘルツ波発生装置。
【請求項3】
更に、相変化材料を導電性の相から絶縁性の相へ相変化させる閾値以上のエネルギー密度を持ったパルス光を電極接続部に照射可能とされる光照射部を有する請求項1又は2に記載のテラヘルツ波発生装置。
【請求項4】
更に、パルス熱を電極接続部に印加可能とされるパルス熱印加部を有する請求項1又は2に記載のテラヘルツ波発生装置。
【請求項5】
パルス熱印加部が、印加されるパルス電圧に応答して間欠駆動するヒータで構成される請求項4に記載のテラヘルツ波発生装置。
【請求項6】
光照射部及びパルス熱印加部が、相変化材料を導電性の相から絶縁性の相へ相変化させる第1パルス光と前記相変化材料を前記絶縁性の相から前記導電性の相へ相変化させる第2パルス光とを照射可能とされるレーザ光学系で構成される請求項4に記載のテラヘルツ波発生装置。
【請求項7】
電極接続部が受光するパルス光のモードフィールド径の1/2の径であるビーム径であり、かつ、下記式(9)で表される最適ビーム径a
optと、前記パルス光の中心位置を原点とする面内座標(x,y)において、相変化材料が前記パルス光を受光してから1ps以内に導電性の相から絶縁性の相へ相変化するエネルギー密度の閾値H
thに一致するxの位置として下記式(10)で表される閾値径X
thとに基づき、
前記電極接続部の上面形状が前記閾値径X
thを半径とする円内に収められるように前記電極接続部の前記上面形状が設定され、
かつ、前記設定において、前記式(9)における前記パルス光のエネルギーEが、前記パルス光における最弱パルス強度のエネルギーから決定される請求項1又は2に記載のテラヘルツ波発生装置。
【数1】
【数2】
【請求項8】
請求項1又は2に記載のテラヘルツ波発生装置の設計方法であって、
電極接続部が受光するパルス光のモードフィールド径の1/2の径であるビーム径であり、かつ、下記式(9)で表される最適ビーム径a
optと、前記パルス光の中心位置を原点とする面内座標(x,y)において、相変化材料が前記パルス光を受光してから1ps以内に導電性の相から絶縁性の相へ相変化するエネルギー密度の閾値H
thに一致するxの位置として下記式(10)で表される閾値径X
thとに基づき、
前記電極接続部の上面形状を前記閾値径X
thを半径とする円内に収めるように前記電極接続部の前記上面形状を設定し、
かつ、前記設定において、前記式(9)における前記パルス光のエネルギーEを、前記パルス光における最弱パルス強度のエネルギーから決定することを特徴とするテラヘルツ波発生装置の設計方法。
【数3】
【数4】
【請求項9】
請求項1又は2に記載のテラヘルツ波発生装置を用いるテラヘルツ波発生方法であって、
相変化材料が導電性の相である状態の電極接続部に対し、前記相変化材料を前記導電性の相から絶縁性の相へ相変化させる閾値以上のエネルギー密度を持ったパルス光を照射する非熱的相変化工程を含むことを特徴とするテラヘルツ波発生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ構造体の電極ギャップ部が相変化材料でブリッジされて構成されるテラヘルツ波発生装置及びその設計方法並びにテラヘルツ波発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信環境を現在の5Gから、Beyond 5G/6Gとも呼ばれる次世代環境に進展させるため、より高い周波数の電磁波を用いる技術が必要となる。
そのため、現在、0.1THz~10THz程度の高周波数帯域の電磁波であるテラヘルツ波を用いる技術の開発が進められている。
【0003】
現在、テラヘルツ波発生装置として、低温成長させたGaAs(LT-GaAs)で形成された基板上にアンテナ構造体を配した光伝導素子が広く知られている。
前記光伝導素子では、前記アンテナ構造体をなす一対電極間に静電圧を印加した状態で、これら電極間のギャップ部分にフェムト秒パルス光を照射すると、光伝導効果により前記ギャップ部分の伝導性が過渡的に高まり、過渡的な電流が流れる。そのため、電流の時間微分に応じた時間プロファイルを持つ過渡的な電界として、前記テラヘルツ波を発生させ得る。
しかしながら、前記光伝導素子に用いられるLT-GaAs基板は、製造工程が複雑で製造に時間を要する問題を有する。
【0004】
こうしたことから、前記LT-GaAs基板に代えて、Sb2Te3膜等で構成されたトポロジカル絶縁体薄膜が形成された基板を用いることが提案されている(特許文献1参照)。この提案では、フェムト秒パルス光を前記トポロジカル絶縁体薄膜に照射したときに生成される光励起キャリアが前記トポロジカル絶縁体薄膜の表面を高速移動してアンテナ電極間のギャップ部分に過渡的な電流が流れることに基づき、前記テラヘルツ波を発生させることとしている。
しかしながら、本提案に用いられる前記トポロジカル絶縁体薄膜は、トポロジカル絶縁体としての性質が限られた膜厚条件や成膜条件の下でしか得られないことから、依然として、製造面での問題を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術における前記諸問題を解決し、製造し易いテラヘルツ波発生装置及びその設計方法並びに前記テラヘルツ波発生装置を用いたテラヘルツ波発生方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 基板と、前記基板の表面上にギャップを介して対向配置される1対の電極を含んで構成されるアンテナ構造体と、前記ギャップの位置に前記1対の電極同士を接続するように配され、閾値以上のエネルギー密度を持ったパルス光を受光してから1ps以内に導電性の相から絶縁性の相へ相変化するとともに熱の印加を受けて前記絶縁性の相から前記導電性の相に相変化する相変化材料を含んで構成される電極接続部と、を有することを特徴とするテラヘルツ波発生装置。
<2> 相変化材料が、Ge
10Sb
2Te
13及びGe
2Sb
2Te
5のいずれかから選択される前記<1>に記載のテラヘルツ波発生装置。
<3> 更に、相変化材料を導電性の相から絶縁性の相へ相変化させる閾値以上のエネルギー密度を持ったパルス光を電極接続部に照射可能とされる光照射部を有する前記<1>又は<2>に記載のテラヘルツ波発生装置。
<4> 更に、パルス熱を電極接続部に印加可能とされるパルス熱印加部を有する前記<1>から<3>のいずれかに記載のテラヘルツ波発生装置。
<5> パルス熱印加部が、印加されるパルス電圧に応答して間欠駆動するヒータで構成される前記<4>に記載のテラヘルツ波発生装置。
<6> 光照射部及びパルス熱印加部が、相変化材料を導電性の相から絶縁性の相へ相変化させる第1パルス光と前記相変化材料を前記絶縁性の相から前記導電性の相へ相変化させる第2パルス光とを照射可能とされるレーザ光学系で構成される前記<4>に記載のテラヘルツ波発生装置。
<7> 電極接続部が受光するパルス光のモードフィールド径の1/2の径であるビーム径であり、かつ、下記式(9)で表される最適ビーム径a
optと、前記パルス光の中心位置を原点とする面内座標(x,y)において、相変化材料が前記パルス光を受光してから1ps以内に導電性の相から絶縁性の相へ相変化するエネルギー密度の閾値H
thに一致するxの位置として下記式(10)で表される閾値径X
thとに基づき、前記電極接続部の上面形状が前記閾値径X
thを半径とする円内に収められるように前記電極接続部の前記上面形状が設定され、かつ、前記設定において、前記式(9)における前記パルス光のエネルギーEが、前記パルス光における最弱パルス強度のエネルギーから決定される前記<1>から<6>のいずれかに記載のテラヘルツ波発生装置。
【数1】
【数2】
<8> 前記<1>から<7>のいずれかに記載のテラヘルツ波発生装置の設計方法であって、電極接続部が受光するパルス光のモードフィールド径の1/2の径であるビーム径であり、かつ、下記式(9)で表される最適ビーム径a
optと、前記パルス光の中心位置を原点とする面内座標(x,y)において、相変化材料が前記パルス光を受光してから1ps以内に導電性の相から絶縁性の相へ相変化するエネルギー密度の閾値H
thに一致するxの位置として下記式(10)で表される閾値径X
thとに基づき、前記電極接続部の上面形状を前記閾値径X
thを半径とする円内に収めるように前記電極接続部の前記上面形状を設定し、かつ、前記設定において、前記式(9)における前記パルス光のエネルギーEを、前記パルス光における最弱パルス強度のエネルギーから決定することを特徴とするテラヘルツ波発生装置の設計方法。
【数3】
【数4】
<9> 前記<1>から<7>のいずれかに記載のテラヘルツ波発生装置を用いるテラヘルツ波発生方法であって、相変化材料が導電性の相である状態の電極接続部に対し、前記相変化材料を前記導電性の相から絶縁性の相へ相変化させる閾値以上のエネルギー密度を持ったパルス光を照射する非熱的相変化工程を含むことを特徴とするテラヘルツ波発生方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来技術における前記諸問題を解決することができ、製造し易いテラヘルツ波発生装置及びその設計方法並びに前記テラヘルツ波発生装置を用いたテラヘルツ波発生方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るテラヘルツ波発生装置の概要を説明するための説明図である。
【
図2】第1実施形態に係るテラヘルツ波発生装置の上面図である。
【
図3(a)】
図2におけるa-a’線断面図である。
【
図3(b)】
図2におけるb-b’線断面図である。
【
図4】アンテナ構造体の1つの変形例を示す説明図である。
【
図5】非熱的相変化工程によるテラヘルツ波発生の様子を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係るテラヘルツ波発生装置の変形例の概要を説明するための説明図である。
【
図7】第2実施形態に係るテラヘルツ波発生装置の概要を説明するための説明図である。
【
図8】第2実施形態に係るテラヘルツ波発生装置の上面図である。
【
図9(a)】
図8におけるa-a’線断面図である。
【
図9(b)】
図8におけるb-b’線断面図である。
【
図9(c)】
図8におけるc-c’線断面図である。
【
図9(d)】
図8におけるd-d’線断面図である。
【
図10(a)】パルス光の強さの揺らぎとテラヘルツ波の電界振幅εの絶対値|ε|の揺らぎとの関係を説明するための説明図である。
【
図10(b)】強度が揃ったテラヘルツ波出力を説明するための説明図である。
【
図11】最弱パルスとそれより強いパルスのビームプロファイルの関係を説明するための説明図である。
【
図12】パルス光のエネルギー密度H(x,y)を座標軸上にプロットした様子を示す図である。
【
図13】パルスエネルギーEを3.92nJで固定し、ビーム径a(=MFD/2)を3通り(1.0μm,2.438μm,4.0μm)に変更したときのエネルギー密度Hをxの位置でプロットしたものを示す図である。
【
図14】閾値径X
thとビーム径aとの関係をプロットしたものを示す図である。
【
図15】パルスエネルギーEと最適ビーム径a
optとの関係をプロットしたものを示す図である。
【
図16】パルスエネルギーEの関数として、最適ビーム径a
optと閾値径X
thとをプロットしたものを示す図である。
【
図17】電極接続部の上面形状を閾値径X
thを半径とする円に内接する辺の長さ√2X
thの正方形で設定する様子を示す図である。
【
図18】マルチイベント実行時におけるテラヘルツ波発生の様子を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係るテラヘルツ波発生装置を
図1,2,3(a),(b)を参照しつつ説明する。
なお、
図1は、第1実施形態に係るテラヘルツ波発生装置の概要を説明するための説明図であり、
図2は、第1実施形態に係るテラヘルツ波発生装置の上面図であり、
図3(a)は、
図2におけるa-a’線断面図であり、
図3(b)は、
図2におけるb-b’線断面図である。
【0011】
これらの図に示すように、第1実施形態に係るテラヘルツ波発生装置1は、基板2と、一対の電極3a,3bで構成されるアンテナ構造体と、電極接続部4とを有する。
【0012】
基板2は、石英基板等で構成される公知の絶縁性基板であり、1対の電極3a,3bは、基板2の表面上にギャップを介して対向配置される。
前記ギャップは、基板2の面内方向における1対の電極3a,3b間の隙間であり、電極接続部4は、このギャップの位置に1対の電極3a,3b同士を接続するように配される。
【0013】
1対の電極3a,3bによる前記アンテナ構造体は、長尺帯状に延在する電極ライン部(アンテナ本体)を有する電極3a,3bが並設されるパラレルライン構造を有する。また、電極3a,3bは、前記電極ライン部の一端側に前記ギャップを挟んで前記電極ライン部同士を近づける方向に延在する部分が形成されるとともに、他端側に大径矩形状の電極パッド部が形成される。
この図示に係る前記アンテナ構造体は、一例であり、
図4に示す1対の電極3a’,3b’で構成されるボウタイアンテナや公知のダイポールアンテナを初めとして、1対の電極がギャップを介して対向配置される公知のアンテナ構造から適宜選択して構成することもできる。
なお、
図4は、前記アンテナ構造体の1つの変形例を示す説明図である。
【0014】
再び
図1,2,3(a),(b)を参照して、電極接続部4は、相変化材料を含んで構成される。
一般に、相変化材料は、一の相から他の相への可逆的変化が生じる熱サイクルを有し、周知の通り、その相変化は、熱印加に基づく比較的長時間で生じる現象である。
しかしながら、一部の前記相変化材料では、これに加えて、前記熱印加による現象とは別の現象で相変化が生じ得ることが知られている。
例えば、Ge
10Sb
2Te
13(GST)は、導電性の結晶相の状態でフェムト秒パルス光を受光すると、0.5ps程度の短時間で絶縁性のアモルファス相へ相変化する(参考文献1参照)。
また、Ge
2Sb
2Te
5(GST225)は、導電性の結晶相の状態でフェムト秒パルス光を受光すると、0.2ps程度の短時間で絶縁性のアモルファス相へ相変化する(参考文献2参照)。
これらの相変化は、閾値以上のエネルギー密度を持ったパルス光を前記相変化材料に照射することによって生じ、熱印加として閾値未満の強度の光を照射して相変化を与える操作と独立して制御可能とされる。加えて、これらの相変化は、熱による相変化時間(100ns程度)とは、桁違いに短い時間(1ps以内)で生じる。
本明細書では、こうした超高速の相変化を、熱の伝搬による相変化(熱的相変化)と区別して「非熱的相変化」と呼ぶ。
本発明では、前記相変化材料の超高速の非熱的相変化を利用した新たな手法によりテラヘルツ波を発生させる。
なお、Ge
10Sb
2Te
13及びGe
2Sb
2Te
5は、超高速の非熱的相変化が生じる代表的な材料であり、電極接続部4の相変化材料としては、閾値以上のエネルギー密度を持ったパルス光を受光してから1ps以内に前記導電性の相から前記絶縁性の相へ相変化するとともに熱の印加を受けて前記絶縁性の相から前記導電性の相に相変化する材料であれば、特に制限がなく、公知の材料から適宜選択することができる。
参考文献1:Mitsutaka Konishi, et al., APPLIED OPTICS Vol.49, No.18, 3470-3473 (2010).
参考文献2:J. Takeda, et al., Appl. Phys. Lett. 104, 261903 (2014).
【0015】
電極接続部4が配される前記ギャップの長さ、つまり、一対の電極3a,3b間の最短距離としては、特に制限はないが、良好なアンテナ機能を得る観点から、1μm~10μm程度であることが好ましい。なお、パルス光を受光する電極接続部4の上面形状としては、特定の構成において好適なサイズがあり、この点については、その構成と共に後述する。
【0016】
電極接続部4の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、スパッタリング法、分子線エピタキシー法、ALD法、CVD法等の公知の形成方法が挙げられる。特に、前記相変化材料がGe10Sb2Te13やGe2Sb2Te5であれば、これらの相変化材料を用いた相変化メモリ等における、半導体デバイス分野で普及した方法を適宜採用して、Ge10Sb2Te13やGe2Sb2Te5による電極接続部4を形成することができる。
【0017】
このように構成される第1実施形態に係るテラヘルツ波発生装置1の動作を
図1を参照しつつ説明する。
先ず、初期状態として、電極接続部4における前記相変化材料の相を導電性の相にセットする。一対の電極3a,3b間に静電圧を印加した状態で、前記相変化材料の相を導電性の相にセットすると、電極接続部4が通電状態となり、電極接続部4を介して一対の電極3a,3bに電流が流れる。
なお、前記相変化材料の相を導電性の相にセットする方法としては、ヒータや光照射により熱を印加する方法が挙げられ、好適な態様については、その態様とともに後述する。
【0018】
次に、電極接続部4に対し、レーザ光源1からパルス光P1を照射する(非熱的相変化工程)。この際、パルス光P1は、前記相変化材料が前記導電性の相から前記絶縁性の相へ相変化する閾値以上のエネルギー密度を持つものとする。閾値としては、前記相変化材料ごとに与えられ、例えば、前記相変化材料がGe10Sb2Te13であれば、中心波長800nmの光パルスを使う場合、エネルギー密度の値として0.15×10μJ/μm2である。なお、ここでのパルス光P1のパルス幅としては、前記非熱的相変化に要する相変化時間(1ps以内)よりも短い時間幅であることが好適であり、フェムト秒オーダのパルス幅とされる。
なお、レーザ光源1(光照射部)としては、公知のものから適宜選択することができ、ユーザが保有のものを適用してもよい。また、レーザ光源1から電極接続部4への光路に集光レンズ、ビームスプリッタ、ハーフミラー等の公知の光学要素を配して前記光照射部を構成してもよい。
【0019】
パルス光P
1を受光した電極接続部4では、
図5に示すように、前記相変化材料が前記導電性の相から前記絶縁性の相へと超高速で相変化し、電極接続部4を流れる電流の値が急下降する急峻な電流変化が生じる(電流の瞬断効果)。その結果、前記アンテナ構造体から電流の時間微分に応じた時間プロファイルを持つ過渡的な電界として、テラヘルツ波が放射される。例えば、前記相変化材料がGe
10Sb
2Te
13であると、0.5ps程度の短時間で電流の瞬断効果が作用し、帯域2THz程度の白色テラヘルツ波が発生する。また、前記相変化材料がGe
2Sb
2Te
5であると、0.2ps程度の短時間で電流の瞬断効果が作用し、帯域5THz程度の白色テラヘルツ波が発生する。なお、前記導電性の相から前記絶縁性の相への相変化時間が0.1ps程度であると、帯域10THz程度の白色テラヘルツ波が得られ、前記導電性の相から前記絶縁性の相への相変化時間が1ps程度であると、帯域1THz程度の白色テラヘルツ波が得られる。また、
図5は、非熱的相変化工程によるテラヘルツ波発生の様子を示す図である。
【0020】
なお、第1実施形態に係るテラヘルツ波発生装置1では、1度の電流瞬断効果に応じた半周期振動のテラヘルツ波が放射される。以下では、このような半周期振動のテラヘルツ波放射を「シングルイベント」と呼ぶ。
【0021】
次に、第1実施形態に係るテラヘルツ波発生装置1の変形例を
図6を参照しつつ説明する。この変形例は、前記シングルイベントを連続で繰り返し発生させるマルチイベント用の実施形態に係る。なお、
図6は、第1実施形態に係るテラヘルツ波発生装置の変形例の概要を説明するための説明図である。
【0022】
図6に示すように、本変形例では、第1実施形態として説明したテラヘルツ波発生装置1の構成(基板2、一対の電極3a,3bで構成されるアンテナ構造体及び電極接続部4)に、レーザ光学系Oが加えられる。
【0023】
レーザ光学系Oは、フェムト秒パルス光P1を照射可能なレーザ光源1と、パルス光P1よりも長周期のパルス光P2を照射可能なレーザ光源2と、これら2つの光源から照射されるパルス光P1,P2を電極接続部4に導く光学素子(ビームスプリッタ、ハーフミラー)を有する。
【0024】
フェムト秒パルス光P1を照射可能なレーザ光源1は、テラヘルツ波発生装置1において説明した事項を適用することができ、パルス光P1を受光した電極接続部4では、前記相変化材料が非熱的相変化により前記絶縁性の相に相変化する。
一方、レーザ光源2は、パルス光P1よりも時間幅の広いパルス光P2を照射して電極接続部4にパルス熱を印加し、パルス光P2を受光した電極接続部4では、前記相変化材料が熱的相変化により前記導電性の相に相変化する。
【0025】
なお、レーザ光学系Oとしては、前記相変化材料を非熱的相変化により前記導電性の相から前記絶縁性の相に相変化させるパルス光を照射する光照射部と、熱的相変化により前記相変化材料を熱的相変化により前記絶縁性の相から前記導電性の相に相変化させるパルス熱を印加するパルス熱印加部との2つの役割を有するものであればよく、図示の例に代えて、集光レンズ、ビームスプリッタ、ハーフミラー等の公知の光学要素が適宜配される任意の構成を採用することもできる。
【0026】
このように構成される第1実施形態に係るテラヘルツ波発生装置1の変形例では、電極接続部4に対するパルス光P2(パルス熱)の照射により前記相変化材料を前記絶縁性の相から前記導電性の相に相変化させる熱的相変化工程と、電極接続部4に対するパルス光P1の照射により前記相変化材料を前記導電性の相から前記絶縁性の相に相変化させる非熱的相変化工程とで前記シングルイベントを実行した後、再び、前記熱的相変化工程及び前記非熱的相変化工程による前記シングルイベントを任意の回数で実行することで、前記シングルイベントを連続して繰り返し実行することができ、前記マルチイベントを実行することができる。
【0027】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るテラヘルツ波発生装置を
図7,8,9(a)~(d)を参照しつつ説明する。
本実施形態は、パルス熱印加部をパルス光によりパルス熱を印加する構成に代えて、印加されるパルス電圧に応答して間欠駆動するヒータで構成する実施形態である。
なお、
図7は、第2実施形態に係るテラヘルツ波発生装置の概要を説明するための説明図であり、
図8は、第2実施形態に係るテラヘルツ波発生装置の上面図であり、
図9(a)は、
図8におけるa-a’線断面図であり、
図9(b)は、
図8におけるb-b’線断面図であり、
図9(c)は、
図8におけるc-c’線断面図であり、
図9(d)は、
図8におけるd-d’線断面図である。
【0028】
これらの図に示すように、第2実施形態に係るテラヘルツ波発生装置10は、基板12と、一対の電極13a,13bで構成されるアンテナ構造体と、電極接続部14と、加熱部15a,15bと、電極パッド16a,16bとを有する。
ここで、前記アンテナ構造体(電極13a,13b)及び電極接続部14とは、第1実施形態に係るテラヘルツ波発生装置1における前記アンテナ構造体(電極3a,3b)及び電極接続部4と同様に構成される。以下では、主として第1実施形態に係るテラヘルツ波発生装置1と相違する事項を説明する。
【0029】
基板12は、石英基板等で構成される絶縁性の基板主材層12a上にSiO
2酸化膜等の絶縁層12bが積層されて構成される(
図9(a)~(d)参照)。
加熱部15a,15bは、基板主材層12a上に形成されるとともに絶縁層12bにより被覆される。即ち、加熱部15a,15bは、基板主材層12aと絶縁層12bとの間に埋設される埋め込み部材である(
図9(b)~(d)参照)。
【0030】
加熱部15a,15bは、それぞれ長尺帯状に延在する形状を有し、上面視において、これらの間に電極接続部14が挟む位置に対向配置される(
図8参照)。
加熱部15a,15bは、それぞれ、一の端部位置において電極パッド16aと電気的に接続され、他の端部位置において電極パッド16bと電気的に接続される。即ち、絶縁層12bには、加熱部15a,15bの各端部位置に接続用のコンタクト孔が穿設され、前記コンタクト孔を通じて加熱部15a,15bと電極パッド16a,16bとが電気的に接続される(
図9(b),(d)参照)。
これら加熱部15a,15b及び電極パッド16a,16bは、電極パッド16a,16bに印加されるパルス電圧P
2に応答して間欠駆動するヒータを構成する(
図7参照)。
パルス電圧P
2は、公知の電圧コントローラ(不図示)により入力タイミングを設定することができ、目的に応じたタイミングで電極接続部14にパルス熱を印加することができる。
【0031】
これら基板12、加熱部15a,15b及び電極パッド16a,16bとしては、半導体デバイス分野において普及した公知の方法を適宜選択して形成することができる。
なお、前記ヒータ(加熱部15a,15b及び電極パッド16a,16b)としては、印加されるパルス電圧に応答して間欠駆動し、電極接続部14における前記相変化材料を熱的相変化により前記絶縁性の相から前記導電性の相に相変化させるパルス熱を印加するパルス熱印加部としての役割を有するものであればよく、図示の例に代えて、加熱部15a,15bの配設位置や形状等を変更した任意の構成を採用することもできる。
【0032】
このように構成される第2実施形態に係るテラヘルツ波発生装置10では、電極接続部14に対するパルス電圧P
2の印加により前記相変化材料を前記絶縁性の相から前記導電性の相に相変化させる熱的相変化工程と、電極接続部14に対するパルス光P
1の照射により前記相変化材料を前記導電性の相から前記絶縁性の相に相変化させる非熱的相変化工程とで前記シングルイベントを実行することができる(
図7参照)。
また、再び、前記熱的相変化工程及び前記非熱的相変化工程による前記シングルイベントを任意の回数で実行することで、前記シングルイベントを連続して繰り返し実行することができ、前記マルチイベントを実行することができる。
【0033】
[テラヘルツ波強度の調整]
ところで、従来の前記LT-GaAs基板を用いた前記光伝導素子では、フェムト秒パルス光のパルス列をポンプ光として前記LT-GaAs基板に連続的に照射することで、前記マルチイベントが実行される。
この際、放射されるテラヘルツ波の振幅εが照射されるパルス光のピーク強度に比例した大きさを持つことから、放射されるテラヘルツ波の電界振幅の絶対値|ε|は、
図10(a)に示すように、パルス光の強さの揺らぎを反映して揺らぐこととなる。このテラヘルツ波出力の揺らぎは、テラヘルツ波の応用に悪影響を与える。
よって、前記マルチイベントを実行する場合、
図10(b)に示すように、強度|ε|が揃ったテラヘルツ波を出力することが望まれる。
なお、
図10(a)は、パルス光の強さの揺らぎとテラヘルツ波の強度|ε|の揺らぎとの関係を説明するための説明図であり、
図10(b)は、強度が揃ったテラヘルツ波出力を説明するための説明図である。
【0034】
こうした問題は、本発明の前記テラヘルツ波発生装置にも共通する課題である。
そこで、以下では、前記マルチイベントを実行する場合において強度が揃ったテラヘルツ波出力を得る手法について検討する。
【0035】
本発明の前記テラヘルツ波発生装置では、前記相変化材料の非熱的相変化における電流の瞬断効果を利用してテラヘルツ波を出力する。
この非熱的相変化は、要因となるパルス光のエネルギー密度に明確な閾値を持つ。
パルス光強度の揺らぎに対し、非熱的相変化を起こすパルス光エネルギー密度の閾値を関係させることで、強度が揃ったテラヘルツ出力を得ることを検討する。
【0036】
今、パルス光側の視点から揺らぐパルス光をみてみると、
図11に示すように、ピーク値が変動しても、ビームの空間的広がりであるFWHM(半値全幅)は変動しない。つまり、強度に差が生じる場合であっても、パルス光のビーム径に変わりがない。なお、
図11は、最弱パルスとそれより強いパルスのビームプロファイルの関係を説明するための説明図である。
一方、前記テラヘルツ波発生装置側の視点からみてみると、パルス光強度が変動しても、同じビーム径であれば、非熱的相変化が生じ得る前記電極接続部の領域サイズに変わりがない。非熱的相変化が生じ得る前記電極接続部の領域サイズが同じであると、この変化が生じるか生じないかだけの差異となり、生じる場合の前記電極接続部の電流変動(抵抗変化)がパルス光強度の変動による影響を受けないことから、強度の揃ったテラヘルツ出力が得られることとなる。
後は、最弱パルス強度のエネルギーが非熱的相変化の閾値条件を満たしているかどうかだけを関心事とすればよい。換言すれば、最弱パルスのパルス光エネルギーに着目した設定を行うことで、強度が揃ったテラヘルツ波出力を得ることができる。
なお、本明細書では、前記光照射部から照射されるフェムト秒パルス光の強度をオシロスコープ等を用いて測定する試験を1,000回程度実施したとき、これらの測定結果中、これらの測定結果中、最小の絶対強度を持つパルス光の強度から、最弱パルス光のエネルギーを決める。
以下、具体的な設定方法について説明する。
【0037】
パルス光強度の面内密度W(t,x,y)は、パルス光の進行方向に垂直な面内座標x(μm),y(μm)の関数であると同時に、時間(t)依存の関数である。なお、面内座標は、パルス光ビームの中心位置(光軸位置)を原点とする。
このパルス光強度の面内密度Wは、ビームプロファイルと呼ばれる空間依存部分と、時間依存部分とを変数分離して、次式(1)で表すことができる。
【0038】
【0039】
ただし、前記式(1)中、a(μm)は、ビーム径を示し、モードフィールド径(Mode Field Diamter, MFD)の1/2である。モードフィールド径は、パルス光のエネルギー密度Hがビーム中心位置におけるエネルギーの面密度p(t)の1/e2に減少する径であり、モードフィールド径におけるx,y,aは、x2+y2=a2となる関係を有する。
【0040】
パルス光強度I(t)は、面内密度W(t,x,y)をビーム面内で積分することで与えられ、下記式(2)で表される。
【0041】
【0042】
一方、パルス光のエネルギー密度Hは、面内密度W(t,x,y)を時間積分することで与えられるが、下記式(3)の条件を与えた式変形により、最終的に下記式(4)で表すことができる。
【0043】
【数7】
【数8】
【数9】
ここで、p0は、ビーム中心位置におけるエネルギーの面密度p(t)の時間積分であり、面密度p(t)を規格化(∫dt C(t) = 1)した時間プロファイルC(t)による下記式(5)の条件を与えると、下記式(6)で表すことができる。
【0044】
【0045】
これら式(3),(5),(6)による処理は、パルス列による連続したパルス光の照射において、パルス列を構成する個々のパルス光を記述するための処理であり、パルス列においてパルス光の強度が揺らぐことは、下記式(7)で表されるパルス光強度I(t)について、時間プロファイルC(t)とビーム径aとが変動せず、1つのパルス光におけるビーム中心位置におけるエネルギーの面密度p0のみが変動することに対応する。
【0046】
【0047】
この対応関係と同様に、前記式(4)で表されるパルス光のエネルギー密度Hは、時間プロファイルC(t)とビーム径aとが変動せず、1つのパルス光におけるビーム中心位置におけるエネルギーの面密度p0のみが変動することに対応するものである。
パルス光のエネルギー密度H(x,y)を座標軸上にプロットした様子を
図12に示す。
【0048】
パルスエネルギーE(μJ)は、エネルギー密度H(x,y)をビーム面内で積分した下記式(8)で表され、先の対応関係と同様に、時間プロファイルC(t)とビーム径aとが変動せず、1つのパルス光におけるビーム中心位置の面密度p0のみが変動することに対応するものである。 なお、前掲
図10(a),(b)におけるポンプ光(=フェムト秒光パルス列)強度の縦方向のバーの高さは、面密度p0を介して変動する、パルス光強度I(t)とパルスエネルギーEとの両方を表している。
【0049】
【0050】
パルスエネルギーEを3.92nJで固定し、ビーム径a(=MFD/2)を3通り(1.0μm,2.438μm,4.0μm)に変更したときのエネルギー密度Hをxの位置でプロットしたものを
図13に示す。
非熱的相変化を生じるエネルギー密度の閾値H
thは、例えば、Ge
10Sb
2Te
13について、15mJ/cm
2=0.15×10μJ/μm
2とされる。
図13中の破線は、閾値H
th=0.15×10μJ/μm
2の閾値ラインを示している。
なお、パルスエネルギーEを固定し、ビーム径aを変更することは、パルス光の集光条件を変更することに該当する。また、パルス光は、円形のスポットで等方的なため、以下では、(x,y)=(x,y=0)として説明を続ける。
【0051】
エネルギー密度Hが閾値H
thと等しいx(μm)の位置条件、つまり、エネルギー密度H(x)がエネルギー密度の閾値H
thに一致するxの位置である閾値径X
th(xの位置に関する閾値条件)は、ビーム径が小さい(a=1.0μm)場合に小さいが、ビーム径が大きい場合(a=4.0μm)も小さく、途中(a=2.438μm)で極大となる。
閾値径X
thとビーム径aとの関係をプロットしたものを
図14に示す。
この閾値径X
thが極大となるビーム径aとして、パルスエネルギーEが所定の値(=3.92nJ)であるときの最適ビーム径a
opt(=2.438μm)が与えられる。
【0052】
任意の値を持つパルスエネルギーEに対する最適ビーム径a
optは、下記式(9)で与えられる。
パルスエネルギーEと最適ビーム径a
optとの関係をプロットしたものを
図15に示す。
【0053】
【0054】
また、最適ビーム径a
optと、エネルギー密度H(x)がエネルギー密度の閾値H
thに一致するxの位置である閾値径X
thとの間には、下記式(10)で表される関係が成り立つ。
パルスエネルギーEの関数として、最適ビーム径a
optと閾値径X
thとをプロットしたものを
図16に示す。
【0055】
【0056】
閾値径X
thを半径とする円内であれば、エネルギー密度の閾値H
th以上となることから、最弱パルス強度のエネルギーが非熱的相変化の閾値条件を満たすように前記電極接続部のサイズ自身を設定する場合、前記電極接続部の上面(受光面)形状を次のように設定することが合理的である。
即ち、前記電極接続部の上面形状を閾値径X
thを半径とする円内に収まるように設定する。例えば、前記電極接続部の上面形状を閾値径X
thを半径とする円に内接する矩形に設定する。特に、
図17に示す、前記電極接続部の上面形状を閾値径X
thを半径とする円に内接する辺の長さ√2X
thの正方形で設定することが合理的である。
このような設定の下、最弱パルス強度のパルスエネルギーEから設定された最適ビーム径a
optのパルス光の光軸を前記電極接続部の上面形状の中心(閾値径X
thを半径とする円の中心)に合わせて照射することで、最弱パルス強度のエネルギーであっても非熱的相変化の閾値条件を満足させることができる。
その結果、パルス光が持つ揺らぎの影響が排除され、強度が揃ったテラヘルツ波を発生させることが可能となる。
【0057】
以上の手法によれば、前記マルチイベントを実行する本発明の前記テラヘルツ波発生装置から
図18に示すスキームで、強度が揃った理想的なテラヘルツ波を発生させることができる。なお、
図18は、前記マルチイベント実行時におけるテラヘルツ波発生の様子を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1,10 テラヘルツ波発生装置
2,12 基板
3a,3b,13a,13b 電極
4,14 電極接続部
12a 基板主材層
12b 絶縁層
15a,15b 加熱部
16a,16b 電極パッド