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特開2024-77155無電解めっき液及び配線基板の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077155
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】無電解めっき液及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/44 20060101AFI20240531BHJP
   C23C 18/18 20060101ALI20240531BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
C23C18/44
C23C18/18
H05K3/18 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189039
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】新宮原 正三
(72)【発明者】
【氏名】齊田 亮太
【テーマコード(参考)】
4K022
5E343
【Fターム(参考)】
4K022AA37
4K022AA42
4K022BA18
4K022CA04
4K022DA01
4K022DB05
4K022DB07
4K022EA01
5E343AA02
5E343BB22
5E343BB52
5E343BB71
5E343DD36
5E343GG20
(57)【要約】
【課題】無電解めっきによってルテニウムを素材上に安定的に析出させるのに有利な技術を提供する。
【解決手段】無電解めっき液は、ルテニウム塩、錯化剤、還元剤、及びpH調整剤を含有し、還元剤は、ヒドラジン-水和物を含み、錯化剤は、カルボキシル基を1個若しくは2個有するカルボン酸を含む。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルテニウム塩、錯化剤、還元剤、及びpH調整剤を含有し、
前記還元剤は、ヒドラジン-水和物を含み、
前記錯化剤は、カルボキシル基を1個若しくは2個有するカルボン酸を含む、無電解めっき液。
【請求項2】
前記錯化剤は、前記カルボン酸としてコハク酸を含み、
前記コハク酸の濃度は、10~150mol/mである、請求項1に記載の無電解めっき液。
【請求項3】
前記錯化剤は、前記カルボン酸として乳酸を含み、
前記乳酸の濃度は、10~100mol/mである、請求項1に記載の無電解めっき液。
【請求項4】
前記ヒドラジン-水和物の濃度は、5mol/m~40mol/mである、請求項1に記載の無電解めっき液。
【請求項5】
11以上のpHを有する請求項1に記載の無電解めっき液。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の無電解めっき液を、基板の配線用の凹部を区画する凹部区画面に接触させた状態で、無電解めっきによって前記凹部にルテニウムを含むめっき体を堆積させる工程を含む、配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記凹部は、ビア及びトレンチのうち少なくともいずれか一方を含む請求項6に記載の配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記凹部区画面は、区画底面及び区画側面を含み、
前記区画底面は、前記無電解めっきによりルテニウムが堆積される金属面を含む、請求項6に記載の配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記凹部区画面は、シード層を含み
前記無電解めっき液を前記シード層に接触させた状態で前記無電解めっきが行われて、前記シード層上にルテニウムが堆積される請求項6に記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記無電解めっきを促進させる触媒が付着している前記凹部区画面に前記無電解めっき液を接触させた状態で、前記無電解めっきが行われる、請求項6に記載の配線基板の製造方法。
【請求項11】
前記凹部に堆積される前記めっき体における酸素の元素比は20%以下である、請求項6に記載の配線基板の製造方法。
【請求項12】
窒素及び水素の混合ガスを使って前記めっき体の熱処理を行う工程を含む、請求項6に記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無電解めっき液及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に金属膜を形成する手法として無電解めっきが利用されている。例えば特許文献1は、無電解銅めっきによって基板の配線溝や配線孔に銅を堆積させる手法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2005/038088号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年における半導体配線の微細化の進展に伴って、配線材料としてルテニウム(Ru)が注目されている。
【0005】
ルテニウムの成膜はCVD(Chemical Vapor Deposition)が利用されて実施可能であるが、無電解めっきによってもルテニウムの成膜を行うことが可能である。特に、無電解めっきは、生産性に優れるとともに、様々な形状の金属膜を形成可能であり、半導体基板の配線などの微細構造体の製造に適している。
【0006】
本開示は、無電解めっきによってルテニウムを素材上に安定的に析出させるのに有利な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、ルテニウム塩、錯化剤、還元剤、及びpH調整剤を含有し、還元剤は、ヒドラジン-水和物を含み、錯化剤は、カルボキシル基を1個若しくは2個有するカルボン酸を含む、無電解めっき液に関する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、無電解めっきによってルテニウムを素材上に安定的に析出させるのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1Aは、配線基板の第1製造方法の一例を示す基板の拡大断面図である。
図1B図1Bは、配線基板の第1製造方法の一例を示す基板の拡大断面図である。
図1C図1Cは、配線基板の第1製造方法の一例を示す基板の拡大断面図である。
図2A図2Aは、配線基板の第2製造方法の一例を示す基板の拡大断面図である。
図2B図2Bは、配線基板の第2製造方法の一例を示す基板の拡大断面図である。
図2C図2Cは、配線基板の第2製造方法の一例を示す基板の拡大断面図である。
図3図3は、配線基板の第3製造方法の一例を示す基板の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の典型的な実施形態について説明する。
【0011】
[無電解めっき液]
本実施形態では、無電解めっきによって、半導体基板(ウエハ)の凹部(例えばトレンチなどの配線溝及びビアなどの配線孔)に、ルテニウム(Ru)が配線として埋め込まれる。
【0012】
したがって本実施形態の無電解めっきで用いられるめっき液は、ルテニウム塩を含有する無電解めっき液(すなわち無電解ルテニウムめっき液)である。無電解ルテニウムめっき液中のルテニウム塩の形態は限定されず、典型的にはイオンや水和物の形態でルテニウムは無電解めっき液中に存在し、無電解ルテニウムめっき液中でルテニウム塩が平衡状態に置かれていてもよい。以下の説明において、無電解めっき液に含まれるルテニウム全般(ルテニウムイオン及びルテニウム水和物を含む)が、単にルテニウム塩とも称されうる。
【0013】
本実施形態で用いられる無電解めっき液は、ルテニウム塩に加え、錯化剤、還元剤、及びpH調整剤を更に含有する。還元剤は、ヒドラジン-水和物を含む。錯化剤は、カルボキシル基を1個若しくは2個有するカルボン酸を含む。
【0014】
本件発明者は、鋭意研究を重ねた結果、上記の無電解めっき液を用いて無電解めっきを行うことで、めっき金属としてルテニウムを素材上に安定的に析出させるのに有利であるという知見を得るに至った。
【0015】
錯化剤が含有可能な「カルボキシル基を1個有するカルボン酸(すなわちモノカルボン酸)」として、典型的には乳酸、酢酸及びギ酸が挙げられる。また錯化剤が含有可能な「カルボキシル基を2個有するカルボン酸(すなわちジカルボン酸)」として、典型的には酒石酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、グルタル酸、アジピン酸及びピメリン酸が挙げられる。
【0016】
本件発明者は、複数種類の無電解めっき液(特に錯化剤としてのカルボン酸の組成及び/又は濃度が異なる複数種類の無電解めっき液)を準備し、それぞれの無電解めっき液に関して無電解めっきを行い、めっき金属(すなわちルテニウム)の析出の評価を行った。
【0017】
その結果、錯化剤としてモノカルボン酸を含む無電解めっき液が、無電解めっきによってルテニウムを素材上に安定的に析出させるのにとりわけ有利であるという知見が得られた。特に、錯化剤がモノカルボン酸として乳酸を含み、当該乳酸の濃度が10mol/m~100mol/mである場合に、無電解めっきによってルテニウムを素材上に品質良く安定的に析出させることができた。
【0018】
また錯化剤としてジカルボン酸を含む無電解めっき液も、無電解めっきによってルテニウムを素材上に安定的に析出させるのにとりわけ有利であるという知見が得られた。特に、錯化剤がジカルボン酸としてコハク酸を含み、当該コハク酸の濃度が10mol/m~150mol/mである場合に、無電解めっきによってルテニウムを素材上に品質良く安定的に析出させることができた。
【0019】
本件発明者は、例えばコハク酸を錯化剤として含有する無電解めっき液に関し、10mol/m~150mol/m(例えば30mol/m、60mol/m及び120mol/m)の濃度のコハク酸を含有する複数種類の無電解めっき液を準備した。これらの無電解めっき液は、コハク酸(錯化剤)の濃度以外の条件は基本的に共通しており、同じ組成及び同じ濃度のルテニウム塩、還元剤、及びpH調整剤を含有していた。
【0020】
本件発明者は、これらの無電解めっき液を使って共通の条件下で無電解めっきを行い、素材上におけるルテニウムの析出態様を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって得られる画像(SEM画像)に基づいて観察及び評価した。具体的には、60℃に調整された無電解めっき液の液膜(パドル)を基板(素材)の処理面(上面)に形成した状態で無電解めっきを行い、処理面上に液膜を形成してから30分後における処理面上でのルテニウムの析出状態(厚み)を確認した。
【0021】
その結果、基板の処理面上に無電解めっき液の液膜を形成してから30分後の時点において、コハク酸(錯化剤)の濃度が増大するほど、ルテニウムの析出(堆積)の速度が増大することが確認された。特に、コハク酸(錯化剤)の濃度(mol/m)とルテニウムの堆積速度(nm/min)との間には実質的な比例関係が確認され、コハク酸(錯化剤)の濃度に応じてルテニウムの堆積速度が概ね線形的に増大した。
【0022】
また本件発明者は、例えば乳酸を錯化剤として含有する無電解めっき液に関し、10mol/m~100mol/m(例えば30mol/m、60mol/m及び100mol/m)の濃度の乳酸を含有する複数種類の無電解めっき液を準備した。これらの無電解めっき液は、乳酸(錯化剤)の濃度以外の条件は基本的に共通しており、同じ組成及び同じ濃度のルテニウム塩、還元剤、及びpH調整剤を含有していた。
【0023】
本件発明者は、これらの無電解めっき液を使って共通の条件下で無電解めっきを行い、素材上におけるルテニウムの析出態様を、SEM画像に基づいて観察及び評価した。具体的には、60℃~70℃に調整された無電解めっき液の液膜を基板の処理面上に形成した状態で無電解めっきを行い、処理面上に液膜を形成してから15分後、30分後及び50分後における処理面上のルテニウムの析出状態(厚み)を確認した。
【0024】
その結果、処理面上に液膜を形成してから15分後、30分後及び50分後のいずれの時点においても、乳酸(錯化剤)の濃度が増大するほど、ルテニウムの析出(堆積)の速度が増大した。また無電解めっきの時間が長くなるほど、ルテニウムの析出量(基板上での厚み)が増大することが確認された。また相対的に低い温度(例えば60℃)の無電解めっき液よりも、相対的に高い温度(例えば70℃)の無電解めっき液の方が、ルテニウムの堆積速度が大きくなる傾向が見られた。
【0025】
なおコハク酸を錯化剤として含有する無電解めっき液を用いた場合に析出されたルテニウムは、乳酸を錯化剤として含有する無電解めっき液を用いた場合に析出されたルテニウムに比べ、表面粗さが小さく、より安定的に基板上に堆積した。
【0026】
また本件発明者は、カルボキシル基を3個有するクエン酸(トリカルボン酸)を錯化剤として含有する無電解めっき液を使って無電解めっきを行い、ルテニウムの析出態様の観察及び評価を行った。この場合の無電解めっきの他の条件は、上述のモノカルボン酸(乳酸)又はジカルボン酸(コハク酸)を錯化剤として含む無電解めっき液を用いた場合と、基本的に同じ条件に設定した。その結果、錯化剤としてクエン酸を含む無電解めっき液では、ルテニウムの析出を確認できなかった。
【0027】
また「塩化アンモニウムを追加的に含む錯化剤」を含有する無電解めっき液を使った場合には、無電解めっきにおけるルテニウムの析出性(例えば堆積速度)の向上が確認された。ここで言う「塩化アンモニウムを追加的に含む錯化剤」は、具体的にはモノカルボン酸(乳酸等)及び塩化アンモニウムを含む錯化剤、及び、ジカルボン酸(コハク酸等)及び塩化アンモニウムを含む錯化剤である。なお、乳酸(モノカルボン酸)又はコハク酸(ジカルボン酸)のみを錯化剤として含む無電解めっき液(すなわち塩化アンモニウムを含まない無電解めっき液)を使った場合であっても、無電解めっきによってルテニウムを適切に析出できた。
【0028】
本件発明者は、錯化剤の組成及び/又は濃度が異なる複数種類の無電解めっき液のサンプルを用いて無電解めっきにより析出させたルテニウムに対し、0℃~600℃の範囲で加熱温度を変えて熱処理(アニール処理)を行って表面電気抵抗率を測定した。具体的には、ある複数のサンプルに関しては、雰囲気圧力が1×10-3(Pa)の真空中で、フォーミングガスを用いることなく、ルテニウムの熱処理を行った。また別の複数のサンプルに関しては、窒素及び水素の混合ガスにより構成されるフォーミングガスを用いてルテニウムの熱処理を行った。その結果、フォーミングガスを用いない場合及びフォーミングガスを用いた場合の双方に関し、加熱温度が高い程、ルテニウム(めっき体)の表面電気抵抗率が小さくなる傾向があった。特に、加熱温度が200℃~400℃の範囲において、ルテニウム(めっき体)の表面電気抵抗率の低下度が大きい傾向があった。またフォーミングガスを用いない熱処理に比べ、フォーミングガスを用いた熱処理を行った場合、加熱温度が0℃~400℃の範囲において、ルテニウム(めっき体)の表面電気抵抗率の低下度が大きい傾向があった。
【0029】
モノカルボン酸又はジカルボン酸を含む錯化剤、還元剤(ヒドラジン-水和物)及びpH調整剤を含有する溶液にルテニウム塩が投入された全てのサンプルで、常温(5℃~35℃)でルテニウム塩は溶液中に溶解し、無電解めっき液中で金属沈殿はなかった。ただし無電解めっき液を60℃~70℃に加熱した際、乳酸、酒石酸及びコハク酸の各々が錯化剤として用いられた無電解めっき液では沈殿物は確認されなかったが、クエン酸を錯化剤として含有する無電解めっき液では沈殿物が目視された。またルテニウム塩、錯化剤(例えば乳酸又はコハク酸)、還元剤(ヒドラジン-水和物)、及びpH調整剤を含有する無電解めっき液のサンプルでは、めっき体としてのルテニウムが基板の凹部に、空隙を生じることなく、安定的に堆積した。またルテニウム塩、錯化剤(例えば乳酸又はコハク酸)、還元剤(ヒドラジン-水和物)、及びpH調整剤を含有する無電解めっき液のサンプルを使った無電解めっきでは、ルテニウムの堆積速度及び表面電気抵抗率が許容範囲内であった。
【0030】
特に、ヒドラジン-水和物(還元剤)のモル濃度が5mol/m~40mol/mであるサンプルでは、塩化アンモニウムの溶解性、ルテニウムの堆積性、及びルテニウムの堆積速度及び表面電気抵抗率の評価結果が、総合的な観点から良好であった。モノカルボン酸又はジカルボン酸に加えて塩化アンモニウムを錯化剤として含有する無電解めっき液に関しては、塩化アンモニウムのモル濃度が10~1000mol/mであるサンプルでは、ルテニウムの堆積速度及び表面電気抵抗率の評価結果が良好であった。またpH調整剤によって調整後の無電解めっき液がアルカリ性を有する場合、特に11以上のpH(例えば13以下のpH)を有する場合、安定的にルテニウムを基板上に堆積させることができた。
【0031】
なお本件発明者は、純水に対してルテニウム塩を投入したが、ルテニウム塩は純水に溶解しなかった。また本件発明者は、塩化アンモニウムのみを含む溶液にルテニウム塩を投入したが、ルテニウム塩は当該溶液に溶解しなかった。
【0032】
また本件発明者は、錯化剤として塩化アンモニウムのみを含む無電解ルテニウムめっき液を使って無電解めっきを行ったが、基板上にルテニウムは堆積しなかった。
【0033】
[配線基板の製造方法]
次に、上述の無電解めっき液を使った配線基板の製造方法の典型例について説明する。
【0034】
まず、配線基板の第1製造方法について説明する。図1A図1Cは、配線基板の第1製造方法の一例を示す基板10の拡大断面図である。
【0035】
まず図1Aに示すように、配線用の凹部11を有する基板10が準備される。図1A図1Cには一つの凹部11のみが示されているが、基板10は多数の凹部11を有しうる。
【0036】
凹部11の具体的な形状及びサイズは限定されず、典型的にはトレンチ(配線溝)及びビア(配線孔)のうちの少なくともいずれか一方が凹部11の概念に含まれうる。
【0037】
凹部11を区画する凹部区画面12は、区画底面12a及び区画側面12bを含む。本例の区画底面12aは、無電解めっきによりルテニウムが堆積される下地として働く金属面を含む。図1A図1Cに示す例では、ルテニウムを含む下層配線22によって区画底面12aが構成されるが、下層配線22はルテニウム以外の材料を含んでもよい。
【0038】
一方、本例の区画側面12bは、絶縁膜20を被覆するバリア膜21によって形成される。バリア膜21は、凹部11に埋め込まれるルテニウムが絶縁膜20に拡散するのを防ぐための膜であり、例えば任意の金属(例えばTa(タンタル)やTaN(窒化タンタル))によって構成可能である。
【0039】
その後、基板10上に無電解めっき液50が付与されて無電解めっき液50のパドルが形成され、図1Bに示すように凹部11の全体が無電解めっき液50によって満たされる。これにより、無電解めっき液50を凹部区画面12(特に区画底面12a)の全体に接触させた状態が確保される。ここで用いられる無電解めっき液50は、上述の無電解ルテニウムめっき液である。
【0040】
その後、凹部11が無電解めっき液50により満たされている状態が維持され、無電解めっき液50を凹部区画面12(特に区画底面12a)に接触させた状態で、無電解めっきが行われる。その結果、凹部11にルテニウムを含むめっき体40が堆積され、最終的には凹部11の全体に、めっき体40としてのルテニウムが埋め込まれる(図1C参照)。
【0041】
特に本例の無電解めっきでは、区画側面12b上にはルテニウム(めっき体40)が全く又は殆ど堆積することなく、区画底面12a上にルテニウム(めっき体40)が選択的に堆積するボトムアップ式の堆積態様をとる。そのため本例によれば、凹部11に空隙が残存することを効果的に回避しつつ、凹部11の全体にルテニウム(めっき体40)を埋め込むことが可能である。
【0042】
このようにして凹部11に埋め込まれるルテニウムのめっき体40は、配線として利用可能である。
【0043】
なお上述の無電解ルテニウムめっき液のサンプルを用いて凹部11に堆積されるめっき体40中の酸素の元素比は20%以下であり、ルテニウムの元素比は80%以上であった。
【0044】
また、窒素及び水素の混合ガスにより構成されるフォーミングガスを使って凹部11内のめっき体40の熱処理が更に行われてもよい。この場合、凹部11に堆積されるめっき体40における酸素の元素比を10%以下にして、ルテニウムの元素比を90%以上にすることが可能であり、凹部11に埋め込まれるめっき体40中のルテニウムの純度を向上させることができる。
【0045】
その後、基板10は、所望の半導体基板構成を実現するための任意の処理を受けることができる。
【0046】
次に、配線基板の第2製造方法について説明する。
【0047】
図2A図2Cは、配線基板の第2製造方法の一例を示す基板10の拡大断面図である。図2A図2Cに示す第2製造方法において、上述の図1A図1Cに示す第1製造方法と同一又は対応の要素には同一の符号を付し、第1製造方法と同様の事項については、その詳細な説明は省略する。
【0048】
本例では、図2Aに示すように、絶縁膜20上にシード層25が設けられている基板10が準備される。
【0049】
シード層25は、無電解めっきにおいてめっき金属(ルテニウム)の析出を促し、当該めっき金属が堆積される。シード層25は、めっき金属としてのルテニウムの析出を促すことができる任意の組成を有しうる。一例として、CVDによって絶縁膜20上に形成されるルテニウムの薄膜を、シード層25として活用することが可能である。
【0050】
凹部11を区画する凹部区画面12(すなわち区画底面12a及び区画側面12b)は、シード層25により形成される。本例の凹部区画面12は、その全体にわたってシード層25を含むが、凹部区画面12のうちの一部のみがシード層25を含んでもよい。
【0051】
その後、基板10上に無電解めっき液50が付与されて無電解めっき液50のパドルが形成され、図2Bに示すように凹部11の全体が無電解めっき液50によって満たされる。これにより、無電解めっき液50を凹部区画面12(すなわちシード層25)に接触させた状態が確保される。ここで用いられる無電解めっき液50は、上述の無電解ルテニウムめっき液である。
【0052】
その後、凹部11が無電解めっき液50により満たされている状態が維持され、無電解めっき液50を凹部区画面12(すなわちシード層25)に接触させた状態で、無電解めっきが行われる。その結果、シード層25上にルテニウムが徐々に堆積され、最終的には凹部11の全体にめっき体40としてのルテニウムが埋め込まれる(図2C参照)。
【0053】
次に、配線基板の第3製造方法について説明する。
【0054】
図3は、配線基板の第3製造方法の一例を示す基板10の拡大断面図である。図3に示す第3製造方法において、上述の第1製造方法及び第2製造方法と同一又は対応の要素には同一の符号を付し、第1製造方法及び第2製造方法と同様の事項については、その詳細な説明は省略する。
【0055】
本例では、図3に示すように、絶縁膜20上にバリア膜21が設けられ、凹部11を区画する凹部区画面12(すなわち区画底面12a及び区画側面12b)がバリア膜21により形成されている基板10が準備される。
【0056】
バリア膜21(特に凹部区画面12を含む表面範囲)には触媒粒子29が付着している。
【0057】
触媒粒子29は、無電解めっきにおいてめっき金属(ルテニウム)の析出を促す触媒核である。触媒粒子29は、めっき金属としてのルテニウムの析出を促す任意の組成(例えばパラジウム(Pd))を有しうる。一例として、触媒粒子29のもとになる金属イオンが分散する液体(金属イオン含有液)を基板10(バリア膜21)上に付与し、リンス液等を使って当該金属イオン含有液をバリア膜21上から除去することで、触媒粒子29をバリア膜21に付着させうる。
【0058】
その後、基板10上に無電解めっき液が付与されて無電解めっき液のパドルが形成され、凹部11の全体が無電解めっき液50によって満たされる。そして凹部11が無電解めっき液により満たされている状態が維持され、触媒粒子29が付着している凹部区画面12に無電解めっき液を接触させた状態で、無電解めっきが行われる。その結果、触媒粒子29によってルテニウムの堆積が促され、最終的には凹部11の全体にめっき体40としてのルテニウムが埋め込まれる。
【0059】
以上説明したように本実施形態によれば、上述の無電解ルテニウムめっき液を、基板10の配線用の凹部11を区画する凹部区画面12に接触させた状態で、無電解めっきによって凹部11にルテニウムを含むめっき体40を堆積させることができる。
【0060】
特に、無電解めっき液がモノカルボン酸(乳酸等)又はジカルボン酸(コハク酸等)を錯化剤として含むことで、当該無電解めっき液においてルテニウム塩を安定的に溶解させることができる。その一方で、無電解めっき液がヒドラジン-水和物を還元剤として含むことで、無電解めっきによってルテニウムを素材上に安定的に析出させることができる。
【0061】
なお、本明細書で開示されている実施形態及び変形例は全ての点で例示に過ぎず限定的には解釈されないことに留意されるべきである。上述の実施形態及び変形例は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態での省略、置換及び変更が可能である。例えば上述の実施形態及び変形例が部分的に又は全体的に組み合わされてもよく、また上述以外の実施形態が上述の実施形態又は変形例と部分的に又は全体的に組み合わされてもよい。
【0062】
また上述の技術的思想を具現化する技術的カテゴリーは限定されない。例えば上述の装置が他の装置に応用されてもよい。また上述の方法に含まれる1又は複数の手順(ステップ)をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムによって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。またそのようなコンピュータプログラムが記録されたコンピュータが読み取り可能な非一時的(non-transitory)な記録媒体によって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 基板
11 凹部
12 凹部区画面
40 めっき体
50 無電解めっき液
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3