(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077253
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】水溶性フィルムの製造方法、水溶性フィルム、包装体及び薬剤包装体
(51)【国際特許分類】
B29C 48/80 20190101AFI20240531BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20240531BHJP
B29C 48/92 20190101ALI20240531BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
B29C48/80
B29C48/08
B29C48/92
C08J5/18 CEX
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189227
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】牟田 隆敏
(72)【発明者】
【氏名】上田 広大
(72)【発明者】
【氏名】酒井 紀人
【テーマコード(参考)】
4F071
4F207
【Fターム(参考)】
4F071AA29X
4F071AB17
4F071AC05
4F071AE04
4F071AE19
4F071AH04
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC12
4F207AA19
4F207AB07
4F207AG01
4F207AH54
4F207AR06
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK13
4F207KK43
4F207KL36
4F207KM04
4F207KM05
4F207KM14
4F207KM15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、多軸押出機で水溶性高分子と水を混合・溶解する水溶性フィルムの製造方法において、水溶性高分子の未溶解物がなく、外観に優れた水溶性フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】水溶性高分子(A)と水を多軸押出機1にて混合・溶解して得られる、樹脂組成物(Z)を口金30から押し出して製膜する水溶性フィルムの製造方法であって、前記多軸押出機1が、複数の温度調節可能なシリンダー2と、複数のスクリューエレメントを組み合わせて構成される複数本のスクリュー3を有し、前記シリンダー2のシリンダー温度(T)を多軸押出機1の上流から、それぞれT
1、T
2、T
3、・・・、T
m(ただし、mは6以上の整数とする。)としたとき、隣り合う下流側のシリンダーとのシリンダー温度の差の絶対値が全て|15|℃以下である水溶性フィルムの製造方法とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性高分子(A)と水を多軸押出機にて混合・溶解して得られる、樹脂組成物(Z)を口金から押し出して製膜する水溶性フィルムの製造方法であって、
前記多軸押出機が、複数の温度調節可能なシリンダーと、複数のスクリューエレメントを組み合わせて構成される複数本のスクリューを有し、前記シリンダーのシリンダー温度(T)を多軸押出機の上流から、それぞれT1、T2、T3、・・・、Tm(ただし、mは6以上の整数とする。)としたとき、隣り合う下流側のシリンダーとのシリンダー温度の差の絶対値が全て|15|℃以下であることを特徴とする水溶性フィルムの製造方法。
【請求項2】
シリンダー温度T6~Tmがいずれも50~120℃であることを特徴とする請求項1記載の水溶性フィルムの製造方法。
【請求項3】
口金から押し出された直後の樹脂組成物(Z)の樹脂温度が50~100℃であることを特徴とする請求項1または2記載の水溶性フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記水溶性高分子(A)がポリビニルアルコール系樹脂を含むことを特徴とする請求項1または2記載の水溶性フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記口金から押し出された直後の前記樹脂組成物(Z)の含水率が20~60質量%であることを特徴とする請求項1または2記載の水溶性フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記水溶性高分子(A)100質量部に対して、可塑剤(B)を10~60質量部含むことを特徴とする請求項1または2記載の水溶性フィルムの製造方法。
【請求項7】
請求項1または2記載の水溶性フィルムの製造方法で製造されることを特徴とする水溶性フィルム。
【請求項8】
請求項7記載の水溶性フィルムで形成された包装体。
【請求項9】
請求項7記載の水溶性フィルムで形成された包装体と、前記包装体に包装された薬剤とからなる薬剤包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性高分子(A)と水を多軸押出機にて混合・溶解して得られる、水溶性高分子(A)と水の混合物を主成分としてなる樹脂組成物(Z)を口金から押し出して製膜する水溶性フィルムの製造方法、及び、前記製造方法を用いて得られる水溶性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水溶性フィルムは、従来より幅広い分野で用いられており、なかでもポリビニルアルコール系樹脂からなる水溶性フィルムは農薬や洗剤等の薬剤の個包装(ユニット包装)や食品包装にも広く用いられている。
【0003】
水溶性フィルムの製造方法としては通常、ポリビニルアルコール系樹脂等の水溶性高分子を含む原料組成物を水等の溶媒に溶解または分散させ、混合、脱泡して混合物(製膜原料)を調製した後、口金から製膜原料を吐出させ、エンドレスベルトやドラムロールの金属表面やプラスチック基材表面等のキャスト面に流延し、乾燥することにより製膜する方法が知られている。
そして、水溶性高分子を溶媒と混合して溶解または分散させる方法としては、タンク等の容器内で加熱しながら撹拌翼で撹拌して溶解する方法や、押出機内で加熱しながらスクリューで混合、溶解させる方法などが用いられている。
【0004】
水溶性高分子と溶媒を押出機内で混合、溶解させる水溶性フィルムの製造方法としては、例えば、2軸押出機に粉体状のポリビニルアルコール樹脂を供給する工程と、ポリビニルアルコール樹脂を液化するための溶媒を供給する工程を有する製造方法(特許文献1参照。)や、ベント部を有しない多軸押出機を用い、ヘッド部、金型出口、液体の沸点の各温度を制御し、かつ、金型における背圧を所定の範囲に調整することを特徴とする製造方法(特許文献2参照。)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-254492号公報
【特許文献2】特開2015-182372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特に薬剤包装用途に用いられる水溶性フィルムにおいては、優れた冷水溶解性や種々の薬剤に対する保存安定性、その他の様々な物性を満たすことが求められており、主成分となる水溶性高分子や添加剤の種類も多様であるところ、特許文献1や特許文献2のような従来公知の製造方法では、樹脂組成物(製膜原料)中に気泡が残って、得られる水溶性フィルムの外観が損なわれるため、更なる改良が求められるものである。
【0007】
そこで、本発明ではこのような背景下において、多軸押出機で水溶性高分子と水を混合・溶解する水溶性フィルムの製造方法において、気泡がなく、外観に優れた水溶性フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
しかるに、本発明者らはかかる事情に鑑み鋭意研究した結果、水溶性フィルムの製造において、隣り合う温度調節可能なシリンダーの温度の差の絶対値を特定範囲とすることにより、上記課題が達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の態様を有する。
[1] 水溶性高分子(A)と水を多軸押出機にて混合・溶解して得られる、樹脂組成物(Z)を口金から押し出して製膜する水溶性フィルムの製造方法であって、
前記多軸押出機が、複数の温度調節可能なシリンダーと、複数のスクリューエレメントを組み合わせて構成される複数本のスクリューを有し、前記シリンダーのシリンダー温度(T)を多軸押出機の上流から、それぞれT1、T2、T3、・・・、Tm(ただし、mは6以上の整数とする。)としたとき、隣り合う下流側のシリンダーとのシリンダー温度の差の絶対値が全て|15|℃以下であることを特徴とする水溶性フィルムの製造方法。
[2] シリンダー温度T6~Tmがいずれも50~120℃であることを特徴とする[1]に記載の水溶性フィルムの製造方法。
[3] 口金から押し出された直後の樹脂組成物(Z)の樹脂温度が50~100℃であることを特徴とする[1]または[2]に記載の水溶性フィルムの製造方法。
[4] 前記水溶性高分子(A)がポリビニルアルコール系樹脂を含むことを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の水溶性フィルムの製造方法。
[5] 前記口金から押し出された直後の前記樹脂組成物(Z)の含水率が20~60質量%であることを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載の水溶性フィルムの製造方法。
[6] 前記水溶性高分子(A)100質量部に対して、可塑剤(B)を10~60質量部含むことを特徴とする[1]~[5]のいずれかに記載の水溶性フィルムの製造方法。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の水溶性フィルムの製造方法で製造されることを特徴とする水溶性フィルム。
[8] [7]に記載の水溶性フィルムで形成された包装体。
[9] [7]に記載の水溶性フィルムで形成された包装体と、前記包装体に包装された薬剤とからなる薬剤包装体。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水溶性フィルムの製造方法によれば、気泡がなく、外観に優れる水溶性フィルムを製造することができるものである。また、得られた水溶性フィルムは薬剤等の包装用途に使用した際にも破袋したり、内容物が漏れたりすることがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態で使用する多軸押出機の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
なお、本発明において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」または「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)または「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」または「Y未満であることが好ましい」旨の意も包含する。
なお、本発明において、「x及び/又はy(x,yは任意の構成又は成分)」とは、xのみ、yのみ、x及びy、という3通りの組合せを意味するものである。
また、主成分とは、対象物中の最も多い成分をさし、通常、対象物中の50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0013】
本発明は、水溶性高分子(A)と水を多軸押出機にて混合・溶解して得られる、水溶性高分子(A)と水の混合物を主成分としてなる樹脂組成物(Z)を口金から押し出して製膜する水溶性フィルムの製造方法である。
【0014】
<多軸押出機>
本発明で使用される多軸押出機の一例を
図1に示す。
図1において、多軸押出機1は、複数の温度調節可能なシリンダー2が連結したシリンダー4内に、複数本のスクリュー3を有する。
また、多軸押出機1の下流側には、ヘッド部25があり、ヘッド部25の流路には、ブレーカープレート26を設置することが出来る。また、ブレーカープレート26には、異物を捕捉するためのメッシュを設置することができる。
さらにヘッド部25の下流側には、導管27、ギアポンプ28、フィルターパックやスクリーンチェンジャー等のろ過装置29等を適宜接続することができる。最下流には口金30が設置されている。ここで、下流とは、多軸押出機1内で、組成物が流れる方向を示し、上流とは、その逆を示す。
【0015】
本発明において、上記多軸押出機1としては、二軸押出機の他、三軸以上の押出機を用いることもできるが二軸押出機が設備の導入コストやメンテナンスの点で好ましい。
以下、多軸押出機1の構成について説明する。
【0016】
〔スクリュー〕
スクリュー3は、スクリュー有効長方向に分割されたスクリューエレメントが組み合わせて構成される。また、スクリュー3の寸法は、スクリュー有効長(L)(単位:mm)、スクリュー直径(D)(単位:mm)で表すことができる。
【0017】
本発明においては、スクリュー有効長(L)(単位:mm)とスクリュー直径(D)(単位:mm)との比(L/D)が、40~100であることが好ましく、45~95であることがより好ましく、50~90であることがさらに好ましい。
上記(L/D)が小さすぎると、混合が不十分となり水溶性高分子(A)の未溶解物が生じたり、押出機内の蒸気が逆流したりする場合がある。一方、上記(L/D)が大きすぎると、混合物である樹脂組成物(Z)(製膜原料)に着色が生じたり、得られるフィルムの耐ブロッキングが低下したりする場合がある。
【0018】
前記スクリューエレメントとしては、ニーディングディスクエレメント11、フルフライトエレメント12が挙げられる。
【0019】
前記ニーディングディスクエレメント11とは、押出機内での原料の混錬・混合を行う能力を有するスクリューエレメントである。前記ニーディングディスクエレメント11としては、例えば、ニーディングディスク、ローター、ツイストニーディングディスク、ギアニーディング等が挙げられる。
【0020】
上記ニーディングディスクは、スクリューの軸方向に対して垂直な断面が略楕円形状に形成された板状のニーディングディスクを軸方向に複数連続して並べて構成されている。ニーディングディスクでは、スクリューの回転に伴ってニーディングディスクが回転し、ニーディングディスクとシリンダー内壁との間に材料が導かれて材料が混練される。
ニーディングディスクは、ニーディングディスクの取り付け方(スクリュー軸に対する取り付け角度)により混練強度を調整することができる。
例えば、本発明では、スクリューの逆回転方向に30~60°の所定ピッチで位相差をあけて複数のニーディングディスクが連続して取り付けられた送りニーディングディスクを用いることができる。
また、90°ピッチの位相差でニーディングディスクが連続して取り付けられた中立ニーディングディスクも用いることができる。
さらには、スクリューの回転方向に30~60°の所定ピッチで位相差をあけて複数のニーディングディスクが連続して取り付けられた戻りニーディングディスクも用いることができる。
【0021】
前記送りニーディングディスクは、ニーディングディスクが軸方向にねじれた配置で並んでいるため材料に対する送り能力を有しているが、中立ニーディングディスクは、材料に対する送り能力が殆どない。それゆえ、中立ニーディングディスクでは、材料が混練部に留まって混練が十分に行われやすく、送りニーディングディスクに比べて混練度を高めることができる。また、戻りニーディングディスクは、混練された樹脂組成物(Z)を下流から上流に戻す能力を有するため、さらに混練度を高めることができる。
【0022】
前記フルフライトエレメント12とは、螺旋状の溝を有し、前記溝を形成する翼部(フライト)が螺旋状となっているスクリューエレメントである。
フルフライトエレメント12が回転することにより、フルフライトエレメント12の溝中にある組成物は、噛みあい部で他のフライト溝へ輸送され下流へ押し出される。
【0023】
前記フルフライトエレメント12のフライト数(条数)は、一条でもよく、二条でもよく、三条以上でもよいが、効率的な搬送性から、二条であることが好ましい、また、フルフライトエレメント12の長さやフライトピッチには特に制限はないが、後述するニーディングディスク領域前後に位置するフルフライトエレメント12は、充満率を上げるためピッチを短くする方が好ましい。
【0024】
本発明においては、スクリュー3は、上記ニーディングディスクエレメント11が連なったニーディングディスク領域13を有することが好ましい。ニーディングディスク領域13を有することにより、水溶性高分子(A)と水との混合・溶解をより効率的に行うことができる。
【0025】
ニーディングディスク領域13は、一つであっても複数であってもよいが、複数有することが好ましい。
ニーディングディスク領域13が複数ある場合、多軸押出機1の上流から、それぞれK1、K2、K3、・・・、Kn(Knは、最も下流側にあるニーディングディスク領域である。)と配置することができる。また、各ニーディングディスク領域13の間は、フルフライトエレメント12が配置される。
【0026】
本発明において、上記ニーディングディスク領域K1の上流側端が、スクリュー有効長(L)方向に対して上流から50%以内の位置にあることが好ましく、より好ましくは40%以内であり、特に好ましくは35%以内である。
上記ニーディングディスク領域K1の上流側端が、スクリュー有効長(L)方向に対して上流から前記範囲にあることによって、多軸押出機の系中、初期から強いせん断や混練を与え、水溶性高分子(A)の混合・溶解を効率的に行うことができ、水溶性フィルムに未溶解物が残らなくなる傾向がある。
ここで、前記ニーディングディスク領域K1の上流側端とは、ニーディングディスク領域K1を構成するニーディングディスクエレメント11のうち最も上流側に配置されたニーディングディスクエレメントの上流側端の位置である。
また、スクリュー有効長(L)方向に対して上流からX%の位置とは、スクリュー3を構成する全てのスクリューエレメントの内、最上流に配置されたスクリューエレメントの上流側端を0%、最下流に配置されたスクリューエレメントの下流側端を100%としたときの相対位置である。
【0027】
本発明において、上記ニーディングディスク領域Knの下流側端は、スクリュー有効長(L)方向に対して上流から50%以降の位置にあることが好ましく、より好ましくは55%以降であり、特に好ましくは60%以降である。
ニーディングディスク領域Knの下流側端が、スクリュー有効長(L)方向に対して上流から前記範囲にあることにより、多軸押出機の系中、終期に残る小さな未溶解物に対し、強いせん断や混練を与えることで、水溶性高分子(A)の混合・溶解を効率的に行うことができ、水溶性フィルムに未溶解物が残らなくなる傾向がある。
ここで、ニーディングディスク領域Knの下流側端とは、ニーディングディスク領域Knを構成するニーディングディスクエレメントのうち最も下流側に配置されたニーディングディスクエレメントの下流側端の位置である。
【0028】
本発明において、スクリュー有効長(L)に対する各ニーディングディスク領域13の総計長(LKD)の割合(LKD/L)は、0.15以上であることが好ましい。上記(LKD/L)は0.17以上であることがより好ましく、0.19以上であることがさらに好ましい。
各ニーディングディスク領域13の総計長(LKD)とは、上述したK1、K2、K3、・・・、Knの軸方向長さの総計である。上記(LKD/L)を上記範囲とすることより、多軸押出機内で強いせん断や混練を与える時間を確保することができ、水溶性高分子(A)の混合・溶解を効率的に行うことができる傾向がある。
【0029】
また、ニーディングディスク領域13は、ある程度の長さを有することが好ましい。具体的には、ニーディングディスク領域13の軸方向長さはスクリュー有効長(L)に対して、2%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましく、4%以上であることがさらに好ましい。ニーディングディスク領域13が複数ある場合は、各ニーディングディスク領域13が上記範囲であることが好ましい。
ニーディングディスク領域13の軸方向長さが上記範囲であることによって、樹脂組成物が、混練部に留まりやすく、水溶性高分子(A)を溶解しやすくなる傾向がある。
【0030】
〔シリンダー〕
前記シリンダー4は、前述のとおり、複数の温度調節可能なシリンダー2が連結したものであり、水溶性高分子(A)を主成分とする原料を供給する原料供給口と、水を含む原料を供給する原料供給口の少なくとも2つの原料供給口を備える。また、前記複数の温度調節可能なシリンダー2を、多軸押出機1の上流から、それぞれシリンダーC1、C2、C3・・・Cm(Cmは、最も下流側にあるシリンダーであり、mは6以上の整数、好ましくは7~25、特に好ましくは8~22である。)とする。
【0031】
また、本発明においては、水を含む原料を供給する原料供給口を複数有することも好ましい。前記水を含む原料を供給する原料供給口を複数有することにより、口金から押し出しされる樹脂組成物(Z)の含水率を調整することができる。また、水溶性高分子(A)が水に混合・溶解された後に、後述する各種添加剤、例えば、可塑剤(B)、フィラー(C)、界面活性剤(D)等を水に溶解して多軸押出機に供給することにより、熱履歴やせん断を少なくすることができるため、熱やせん断に比較的弱く、分解や溶解しやすい添加剤を添加する場合において、有効となる。
【0032】
前記シリンダー4の上流側は、原料供給口21を備える。また、原料供給口21よりも下流のシリンダー4には、例えば、原料供給口22、原料供給口23等の複数の原料供給口を設置することができる。
【0033】
前記原料供給口22は、液体タンク31に接続された液添ポンプ32から液体を供給することができる。また、原料供給口23では、液体タンク31に接続された液添ポンプ32から液体を供給したり、フィーダー33(サイドフィーダーを含む)によって、固体を多軸押出機1内に供給したりすることができる。
【0034】
また、水を含む原料を供給する原料供給口が設置されているシリンダー2に用いられるスクリューエレメントは、ニーディングディスクエレメント11、フルフライトエレメント12のいずれも用いることができるが、水の供給部での水の溢れや、上流への逆流を抑制する目的で、フルフライトエレメント12を用いることが好ましい。
また、水溶性高分子(A)を主成分する原料が供給される原料供給口と、水を含む原料が供給される原料供給口のうち最も上流に配置された原料供給口の間は、フルフライトエレメント12で構成されていることが好ましい。
【0035】
本発明において、水溶性高分子(A)を主成分とする原料を供給する原料供給口は、原料供給口21であることが好ましく、水を含む原料を供給する原料供給口は、原料供給口22、23であることが好ましい。また、前記原料供給口21は、シリンダーC1に設置されることが好ましい。
【0036】
さらに、シリンダー2には、ベント孔24を設置することも可能であり、本発明においては、押出機内で発生した水分等の揮発成分やガスを脱泡するのためベント孔24を有することが好ましい。ベント孔24では、シリンダー4内に発生した蒸気を脱気したり、真空ポンプと接続して真空引きしたりすることができる。
また、必要に応じて、原料供給口やベント孔は、
図1に記載した数よりも、さらに増やしてもよい。
【0037】
<樹脂組成物(Z)>
上述したように、本発明は、水溶性高分子(A)と水を多軸押出機にて混合・溶解して得られる、水溶性高分子(A)と水の混合物を主成分としてなる樹脂組成物(Z)を口金から押し出して製膜する水溶性フィルムの製造方法である。以下、樹脂組成物(Z)に含まれる各成分について説明する。
【0038】
〔水溶性高分子(A)〕
上記水溶性高分子(A)としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレングリコール系樹脂、カルボキシメチルセルロース系樹脂、アクリル酸ナトリウム系樹脂、ポリビニルピロリドン、デキストリン、キトサン、キチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、プルラン等が挙げられる。上記水溶性高分子は1種類のみで用いても、2種以上を併用してもよい。
なかでも、ポリビニルアルコール系樹脂を含有するものが好ましい。
【0039】
〔ポリビニルアルコール系樹脂〕
本発明において、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略記する。)系樹脂とは、ポリマーを構成する繰り返し単位において、ビニルアルコール単位を主たる単位成分とした樹脂である。主たる単位成分とは、樹脂中で50モル%以上100モル%以下を占める単位成分のことをいう。PVA系樹脂は熱可塑性樹脂でありながら水溶性を有する樹脂であり、PVA系樹脂を主成分としてなるフィルムは水溶性フィルムとしても利用され、幅広い分野で用いられている。
本発明で用いられるPVA系樹脂としては、未変性PVAや変性PVA系樹脂が挙げられる。
【0040】
本発明で用いるPVA系樹脂の平均ケン化度は、80モル%以上であることが好ましく、特には82~99.9モル%、更には85~98.5モル%、殊には90~97モル%であることが好ましい。また、PVA系樹脂として、未変性PVAを用いる場合には、その平均ケン化度は、80モル%以上であることが好ましく、特には82~99モル%、更には85~90モル%であることが好ましい。そして、PVA系樹脂として、変性PVA系樹脂を用いる場合には、その平均ケン化度は、80モル%以上であることが好ましく、特には85~99.9モル%、更には90~98モル%であることが好ましい。更に、PVA系樹脂として、アニオン性基変性PVA系樹脂を用いる場合には、その平均ケン化度は、85モル%以上であることが好ましく、特には88~99モル%、更には90~97モル%、殊には91~94モル%であることが好ましい。かかる平均ケン化度が小さすぎると、包装する薬剤のpHによっては経時的に水溶性フィルムの水への溶解性が低下する傾向がある。なお、平均ケン化度が大きすぎると水への溶解性が大きく低下する傾向がある。
【0041】
また、本発明で用いるPVA系樹脂の重合度は一般的に水溶液粘度で示すことができ、20℃における4質量%水溶液粘度は、5~50mPa・sであることが好ましく、更には13~45mPa・s、特には17~40mPa・sであることが好ましい。また、PVA系樹脂として、未変性PVAを用いる場合には、未変性PVAの20℃における4質量%水溶液粘度は、5~50mPa・sであることが好ましく、更には13~45mPa・s、特には17~40mPa・sであることが好ましい。そして、PVA系樹脂として、変性PVA系樹脂を用いる場合には、変性PVA系樹脂の20℃における4質量%水溶液粘度は、5~50mPa・sであることが好ましく、更には13~40mPa・s、特には17~30mPa・sであることが好ましい。かかる粘度が小さすぎると、包装材料としての水溶性フィルムの機械的強度が低下する傾向があり、一方、大きすぎると製膜原料の粘度が高く生産性が低下する傾向がある。
【0042】
なお、上記の平均ケン化度は、JIS K 6726 3.5に準拠して測定され、4質量%水溶液粘度は、JIS K 6726 3.11.2に準じて測定される。
【0043】
PVA系樹脂として、変性PVA系樹脂を用いる場合には、その変性量は1~10モル%であることが好ましく、更に好ましくは1.5~8モル%、特に好ましくは2~6モル%、殊に好ましくは2~5モル%である。かかる変性量が少なすぎると、水に対する溶解性が低下する傾向があり、多すぎるとPVA系樹脂の生産性が低下したり、生分解性が低下したりする傾向があり、また、ブロッキングを引き起こしやすくなる傾向がある。
【0044】
本発明において、上記のPVA系樹脂はそれぞれ単独で用いることもできるし、また、未変性PVAと変性PVA系樹脂を併用すること、更に、ケン化度、粘度、変性種、変性量等が異なる2種以上を併用することなどもできる。
【0045】
中でも、薬剤包装用(特には洗濯洗剤包装用)の水溶性フィルムにおいては、溶解性の点で、PVA系樹脂が変性PVA系樹脂を含有することが好ましく、とりわけアニオン性基変性PVA系樹脂を含有することが好ましい。アニオン性基の種類としては、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられるが、水への溶解性や耐薬剤性の点で、カルボキシ基、スルホン酸基が好ましく、特にはカルボキシ基が好ましい。
【0046】
上記カルボキシ基変性PVAのカルボキシ基としては、カルボキシ基を有する単量体を由来とするものであり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシ基含有不飽和化合物、およびこれらのカルボキシ基が、アルカリ化合物(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)等の塩基によって、全体的あるいは部分的に中和されたもの、あるいはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、フマル酸モノメチル、マレイン酸モノメチル等の上記カルボキシル基含有不飽和化合物のモノアルキルエステル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル等、上記カルボキシル基含有不飽和化合物のジアルキルエステルが挙げられる。これらのエステルの炭素数は、経済性と実用性の点から通常炭素数1~20、さらには炭素数1~10が好ましく、特には炭素数1~4が好ましい。これらの中でもマレイン酸系の化合物が好ましく、更にはマレイン酸モノメチルが好ましい。
【0047】
上記PVA系樹脂の製造方法については、例えば特開2017-95679等に記載の従来公知の方法で製造することができる。
【0048】
本発明においては、上記樹脂組成物(Z)には、可塑剤(B)、フィラー(C)、界面活性剤(D)、その他の添加剤を含有してもよい。
【0049】
〔水〕
本発明で用いる水としては、特に限定されないが、イオン交換水やRO水を用いることが好ましい。
前記水としては、シリカの含有量が50μg/L以下、好ましくは5.0μg/L以下、塩化物イオンの含有量が2μg/L以下、好ましくは1μg/L以下であることが好ましい。
【0050】
〔可塑剤(B)〕
本発明においては、可塑剤(B)を含有させることが、フィルムに適度な柔軟性を付与する点で好ましい。可塑剤(B)は1種のみを用いたり、2種以上を併用したりすることができる。フィルムの機械特性や成型性の点から2種以上を併用することも好ましい。
【0051】
かかる可塑剤(B)としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等のグリセリン類、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピリングリコール等のアルキレングリコール類やトリメチロールプロパン、ソルビトール、キシリトールやマルチトール等の糖アルコール等が挙げられる。なかでも、グリセリン、ジグリセリン、ポリエチレングリコールは入手が容易であり少量で可塑効果が得られる点で好ましく、また包装体の経時安定性の点ではソルビトールを用いることが好ましい。これらは単独であるいは2種以上併せて用いられる。
かかる可塑剤を2種以上併用する場合、融点が80℃以上である多価アルコール(b1)(以下、可塑剤(b1)と略記することがある。)と、融点が50℃以下である多価アルコール(b2)(以下、可塑剤(b2)と略記することがある。)を併用することが好ましい。さらに、上記可塑剤(b2)としては、生産性や得られるフィルムの機械物性の点で、室温程度で液体状である化合物が好ましく、融点が30℃以下、特には20℃以下のものが好ましい。なお、融点の下限は通常-95℃であり、好ましくは-40℃、特に好ましくは-15℃、更に好ましくは-5℃である。
【0052】
可塑剤(B)の含有量は、水溶性高分子(A)100質量部に対して10~60質量部であることが好ましく、特に好ましくは15~55質量部、更に好ましくは20~50質量部である。かかる可塑剤(B)の含有量が少なすぎると可塑効果が低く加工性が低下したり、包装体とした場合に経時で水溶性フィルムの強靭さを損なう傾向があり、多すぎるとフィルムの強度が低下したり、ブロッキングが生じやすくなる傾向がある。
【0053】
〔フィラー(C)〕
本発明においては、必要に応じて、更に、フィラー(C)を含有させることができる。
上記フィラー(C)は、耐ブロッキング性の目的で含有されるものであり、有機フィラー(c1)や無機フィラー(c2)が挙げられるが、なかでも有機フィラー(c1)を含有させることが好ましい。フィラー(C)は1種のみを用いたり、2種以上を併用したりすることができる。
フィラー(C)の平均粒子径としては、0.1~50μmであることが好ましく、特に好ましくは1~35μmである。なお、上記フィラー(C)の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した値であり、得られた累計体積分布のD50値(累積50%の粒子径)より算出したものである。
【0054】
上記有機フィラー(c1)とは、有機化合物で構成された針状、棒状、層状、鱗片状、球状などの任意の形状からなる粒子状物質(1次粒子)、もしくはその粒子状物質の集合体(2次粒子)のことを示す。
かかる有機フィラー(c1)としては、主に高分子化合物の中から選択され、例えば、メラミン系樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂の他、澱粉、ポリ乳酸等の生分解性樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリメチル(メタ)アクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、澱粉、等の生分解性樹脂が好ましく、特には水溶性高分子(A)に対する分散性の点から澱粉が好ましい。
【0055】
上記の澱粉としては、例えば、生澱粉(トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、コムギ澱粉、キッサバ澱粉、サゴ澱粉、タピオカ澱粉、モロコシ澱粉、コメ澱粉、マメ澱粉、クズ澱粉、ワラビ澱粉、ハス澱粉、ヒシ澱粉等)、物理的変性澱粉(α-澱粉、分別アミロース、湿熱処理澱粉等)、酵素変性澱粉(加水分解デキストリン、酵素分解デキストリン、アミロース等)、化学分解変性澱粉(酸処理澱粉、次亜塩素酸酸化澱粉、ジアルデヒド澱粉等)、化学変性澱粉誘導体(エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン化澱粉、架橋澱粉等)等が挙げられる。なかでも、生分解性や入手の容易さや経済性の点から、生澱粉、とりわけトウモロコシ澱粉、コメ澱粉を用いることが好ましい。
【0056】
有機フィラー(c1)の平均粒子径は、5~50μmであることが好ましく、特に好ましくは10~40μm、更に好ましくは15~35μmである。かかる平均粒子径が小さすぎるとフィルムのブロッキング性が高くなる傾向があり、大きすぎるとフィラー同士が凝集しやすくなり分散性が低下したり、フィルムを成形加工時に引き伸ばした際にピンホールとなる傾向がある。
【0057】
上記無機フィラー(c2)としては、酸化物系無機化合物、タルクを用いることが好ましく、特には、酸化チタン、タルク、シリカを用いることが好ましく、更には、シリカを用いることが好ましい。
【0058】
無機フィラー(c2)の平均粒子径は、1~20μmであることが好ましく、特に好ましくは2~15μm、更に好ましくは3~10μmである。かかる平均粒子径が小さすぎるとフィルムの柔軟性や靭性が低下したり、ブロッキング性が高くなるなどの傾向があり、大きすぎるとフィルムを成形加工時に引き伸ばした際にピンホールとなる傾向がある。
【0059】
上記フィラー(C)の含有量は、水溶性高分子(A)100質量部に対して1~30質量部であることが好ましく、特に好ましくは1.5~25質量部、更に好ましくは2~20質量部である。かかる含有割合が少なすぎるとフィルムのブロッキング性が高くなる傾向があり、多すぎるとフィルムの柔軟性や強靭性が低下する傾向がある。
【0060】
〔界面活性剤(D)〕
本発明においては、必要に応じて、更に界面活性剤(D)等を含有させることができる。
本発明で用いられる界面活性剤(D)は、フィルム製造時のキャスト面からの剥離性改善の目的で含有されるものであり、通常、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤が挙げられる。例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルノニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ステアリン酸グリセリンエステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なかでも、製造安定性の点でポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルが好適である。
上記界面活性剤(D)は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
かかる界面活性剤(D)の含有量については、水溶性高分子(A)100質量部に対して0.01~3質量部であることが好ましく、特に好ましくは0.05~2.5質量部、更に好ましくは0.1~2質量部である。かかる含有量が少なすぎると製膜装置のキャスト面と製膜したフィルムとの剥離性が低下して生産性が低下する傾向があり、多すぎるとブロッキングしやすくなったりフィルムを用いて包装体とする場合のシール時の接着強度が低下する傾向がある。
【0062】
なお、樹脂組成物(Z)には、発明の目的を阻害しない範囲で、溶媒、香料、防錆剤、着色剤、増量剤、消泡剤、紫外線吸収剤、流動パラフィン類、蛍光増白剤、苦味成分(例えば、安息香酸デナトニウム等)等を含有させることも可能である。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0063】
上記溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。上記溶媒は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0064】
また、本発明においては、酸化防止剤を配合してもよい。かかる酸化防止剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸アンモニウム等の亜硫酸塩、酒石酸、アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム、テコール、ロンガリット等が挙げられ、なかでも、亜硫酸塩、特には亜硫酸ナトリウムが好ましい。かかる配合量は水溶性高分子(A)100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、特に好ましくは0.2~5質量部、更に好ましくは0.3~3質量部である。
【0065】
<水溶性フィルムの製造方法>
次に本発明の水溶性フィルムの製造方法について説明する。
本発明の製造方法においては、前述の複数の温度調節可能なシリンダー2のシリンダー温度(T)を多軸押出機の上流から、それぞれT1、T2、T3・・・Tmとしたとき、隣り合う下流側のシリンダー2とのシリンダー温度の差の絶対値が全て|15|℃以下であることが重要であり、好ましくは|13|℃以下、特に好ましくは|10|℃以下である。ここで、前記mは6以上の整数であり、好ましくは7~30、特に好ましくは8~22である。
隣り合う下流側のシリンダー2とのシリンダー温度の差の絶対値を上記範囲とすることにより、気泡がなく、外観に優れる水溶性フィルムを製造することができる。
また、隣り合う下流側のシリンダー2とのシリンダー温度の差が|15|℃を超える場合、樹脂組成物(Z)の急激な粘度変化が生じ、多軸押出機1の負荷が許容を超えてスクリュー3が停止したり、急激な温度変化に伴い樹脂組成物(Z)中の水が気泡となり、樹脂組成物(Z)中に残存したまま押し出され、得られる水溶性フィルムの外観が著しく損なわれる。
【0066】
前記温度調節可能なシリンダー2のシリンダー温度(T)は、10~130℃であることが好ましく、更に好ましくは30~120℃、特に好ましくは40~115℃、殊に好ましくは50~110℃である。
温度が低すぎると混合、溶解が不十分となり、水溶性高分子(A)の未溶解物が生じたり、気泡が残ったりする傾向がある。一方、温度が高すぎると混合物が着色して得られるフィルムの透明性が低下したり、耐ブロッキング性が低下する傾向がある。
【0067】
また、シリンダーC1~C5のシリンダー温度T1~T5は、通常15~105℃であり、20~100℃が好ましく、25~100℃が特に好ましい。
【0068】
さらに、前記シリンダー温度T1とシリンダー温度T5とが、T1≦T5の関係を満たすことが好ましい。
【0069】
また、シリンダーC6~Cmのシリンダー温度T6~Tmは、いずれも50~120℃であることが好ましい。(ただし、mは6以上の整数とする。)
前記シリンダー温度T6~Tmは、更に好ましくは60~118℃、特に好ましくは70~116℃、殊に好ましくは80~114℃である。
シリンダー温度T6~Tmが低すぎると混合、溶解が不十分となり、水溶性高分子(A)の未溶解物が生じたり、気泡が残ったりする傾向がある。一方、シリンダー温度T6~Tmが高すぎると混合物が着色して得られるフィルムの透明性が低下したり、耐ブロッキング性悪くなる傾向がある。
【0070】
本発明の製造方法においては、少なくとも以下の工程を有することが好ましい。
工程[I]:多軸押出機に水溶性高分子(A)を主成分とする原料供給する工程
工程[II]:多軸押出機の少なくとも1か所から水を含む原料を供給する工程
工程[III]:多軸押出機で各原料を混合・溶解して樹脂組成物(Z)を調製する工程
工程[IV]:樹脂組成物(Z)を口金からキャスト面に押し出して製膜する工程
【0071】
〔工程[I]:多軸押出機に水溶性高分子(A)を供給する工程〕
上記水溶性高分子(A)を主成分とする原料を供給する方法としては、例えば、前述の
図1に示す多軸押出機1のシリンダー2に設置された原料供給口より供給する方法が挙げられる。上記水溶性高分子(A)を主成分とする原料を多軸押出機に供給する原料供給口は、1か所であっても、2か所以上であってもよい。
本発明においては、複数設置された原料供給口のうち、最上流に位置する原料供給口21から、水溶性高分子(A)を主成分とする原料が供給されることが製造効率の観点で好ましい。また、複数設置された原料供給口のうち、最上流に位置する原料供給口21から、一部の水溶性高分子(A)を主成分とする原料を供給し、残りの水溶性高分子(A)を後述する水に溶解させ、後述する水を含む原料として供給することも好ましい。
【0072】
上記供給される水溶性高分子(A)の形状は、特に限定されず、例えば、粉体、粒状、ペレットなどであってもよい。
また、前記水溶性高分子(A)を主成分とする原料には、可塑剤(B)、フィラー(C)、界面活性剤(D)、その他の添加剤や溶媒が含まれていてもよい。
【0073】
〔工程[II]:多軸押出機の少なくとも1か所から水を含む原料を供給する工程〕
次いで、多軸押出機1の少なくとも1か所から多軸押出機に水を含む原料を供給する工程について説明する。
前記水を含む原料には、水以外に、水溶性高分子(A)、可塑剤(B)、フィラー(C)、界面活性剤(D)、その他の添加剤や溶媒が含まれていてもよい。
なかでも、水を含む原料には、可塑剤(B)、フィラー(C)が含まれることが好ましい。
【0074】
原料供給口が設置されたシリンダー2の温度は、15~105℃が好ましく、20~100℃がより好ましく、25~100℃がさらに好ましい。シリンダー温度が15℃未満の場合、下流側で混合物を加熱する際にエネルギーを多く消費することとなり生産性が低下する傾向がある。また、シリンダー温度が105℃を超える場合、蒸気が上流側に戻り、水溶性高分子(A)の供給口から蒸気が昇り、水溶性高分子(A)をブロッキングさせ、生産性が低下する傾向がある。
【0075】
前記可塑剤(B)、フィラー(C)、界面活性剤(D)、その他の添加剤や溶媒を、水溶性高分子(A)を主成分とする原料や、水を含む原料に配合しない場合、これらの原料を、例えば、水添ポンプ32、フィーダー、サイドフィーダー33等を用いて、個別に原料供給口から多軸押出機1に供給してもよい。その場合は、水を含む原料よりも下流で供給することが好ましい。
【0076】
フィラー(C)を含有させる場合は、前述のとおり、水溶性高分子(A)を主成分とする原料や、水を含む原料に配合してもよいが、可塑剤(B)に分散させて用いることも分散性の点で好ましい。
【0077】
また、フィラー(C)を多軸押出機1に供給する場合、その供給位置は、スクリュー上流から50%以降の位置にあることが好ましく、60%以降の位置にあることがより好ましく、特に好ましくは70%以降、更に好ましくは75%以降の位置にあることがさらに好ましい。
フィラー(C)を多軸押出機1に供給する位置が、スクリュー上流から50%以降であることにより、フィルム中に、耐ブロッキング性を保持するために必要な凹凸を付与することができる大きさでフィラー(C)を含有させることができる傾向がある。
特にフィラー(C)として有機フィラー(c1)を用いる場合に、耐ブロッキング性や水シール性に優れたフィルムを得る点で好ましい。
【0078】
〔工程[III]:多軸押出機で各原料を混合・溶解して組成物(Z)を調製する工程〕
上記多軸押出機1で各原料を混合・溶解して樹脂組成物(Z)を調製する工程は、多軸押出機1のシリンダー4内部に設置されたスクリュー3が回転することにより行われる。
この工程で、上記水溶性高分子(A)は水に溶解し、混合物(製膜原料)である樹脂組成物(Z)が調製される。
【0079】
スクリュー3の回転数は、通常、50~1000rpmであり、好ましくは100~800rpmであり、より好ましくは150~600rpmである。
スクリュー3の回転数が小さすぎると吐出が不安定になる傾向があり、大きすぎると得られるフィルムが着色する場合がある。
また、回転方向が同方向のスクリューであることが適度なせん断により十分な混練が得られる点で好ましい。
【0080】
本発明において、前記多軸押出機内における前記樹脂組成物(Z)の含水率が20~60質量%であることが好ましい。また、前記樹脂組成物(Z)の含水率は、25~55質量%であることがより好ましく、30~50質量%であることがさらに好ましい。
かかる含水率が低すぎると上記水溶性高分子が充分に溶解せず未溶解物が残ったり、製膜原料の粘度が高くなり脱泡が不十分となり気泡を含有したり、製膜時にダイラインが発生したりして、得られる水溶性フィルムの外観が悪くなる傾向があり、高すぎると膜厚の精度が低下したり、製膜時の乾燥効率が低下して水溶性フィルムの生産性が低下する傾向がある。
上記含水率は、JIS K 6726 3.4に準拠して測定され、回収物の揮発分の値を含水率とする。
【0081】
本発明において、前記多軸押出機内における前記樹脂組成物(Z)のpHは、4~10であることが好ましく、4.8~9.5であることがより好ましい。
【0082】
<工程[IV]:樹脂組成物(Z)を口金からキャスト面に押し出して製膜する工程>
工程[IV]では、工程[III]で調製された前記樹脂組成物(Z)を口金30からキャスト面に押し出して膜状に賦形し、必要に応じて乾燥処理を施すことで水溶性フィルムを製膜する。
【0083】
上記口金30の種類としては従来公知の口金を用いることができるが、T型スリットダイが好ましい。また、上記多軸押出機と口金30との間にギアポンプ28が接続されていることが好ましい。ギアポンプ28を用いることにより、フィルムの流れ方向の厚み分布が揃いやすくなるため好ましい。
【0084】
前記口金30から押し出された直後の前記樹脂組成物(Z)の温度は、50~100℃であることが好ましく、特に好ましくは60~95℃、更に好ましくは70~90℃である。かかる温度が低すぎると製膜原料の粘度が増加して水溶性フィルムの生産性が低下する傾向があり、高すぎると発泡等が生じる傾向がある。
【0085】
本発明において、前記口金30から押し出された直後の前記樹脂組成物(Z)の含水率が20~60質量%であることが好ましい。また、前記樹脂組成物(Z)の含水率は、25~55質量%であることがより好ましく、30~50質量%であることがさらに好ましい。
かかる含水率が低すぎると上記水溶性高分子が充分に溶解せず未溶解物が残っていたり、製膜原料の粘度が高くなり脱泡が不十分で気泡を含有していたり、製膜時にダイラインが発生したりして、得られる水溶性フィルムの外観が悪くなる傾向があり、高すぎると膜厚の精度が低下したり、製膜時の乾燥効率が低下して水溶性フィルムの生産性が低下する傾向がある。
上記含水率は、口金30から押し出された直後の前記樹脂組成物(Z)を回収し、JIS K 6726 3.4に準拠して測定され、回収物の揮発分の値を含水率とする。
なお、上記「押し出された直後」とは、口金30から押し出されてから10秒以内を意味する。
【0086】
また、前記口金から押し出された前記樹脂組成物(Z)は、エンドレスベルトやドラムロールの金属表面やポリエチレンテレフタレートフィルム等のプラスチック基材表面等のキャスト面に押し出した後、キャスト面上で前記樹脂組成物(Z)を乾燥させることが好ましい。
乾燥にあたっては、通常、キャスト面を加熱することにより行う。上記キャスト面の表面温度は、50~150℃であることが好ましく、特に好ましくは60~140℃である。かかる表面温度が低すぎると、乾燥不足でフィルムの含水率が高くなり、ブロッキングしやすくなる傾向があり、高すぎると前記樹脂組成物(Z)が発泡し、製膜不良となる傾向がある。
また、製膜時の乾燥においては、熱ロールによる乾燥、フローティングドライヤーを用いてフィルムに熱風を吹き付ける乾燥や遠赤外線装置、誘電加熱装置による乾燥等を併用することもできる。
【0087】
製膜された水溶性フィルムは、キャスト面等から剥離され、搬送され芯管に巻き取ることによりフィルムロールとなる。得られたフィルムロールは、そのまま製品として供給することもできるが、好ましくは水溶性フィルムを所望サイズのフィルム幅にスリットしたフィルムロールとして供給することもできる。
【0088】
水溶性フィルムには、耐ブロッキング性、加工時の滑り性、製品同士の密着性軽減、及び外観の点から、フィルムの片面あるいは両面にエンボス模様や微細凹凸模様、特殊彫刻柄、等の凹凸加工を施してもよい。
【0089】
<水溶性フィルム>
本発明の水溶性フィルムは、水溶性高分子(A)を主成分として含有し、常温(20℃)の水に溶解するフィルムである。そして、前記水溶性フィルムは、本発明の特徴的な製法によって得られたものであるため、気泡がなく、外観に優れたものである。
【0090】
水溶性フィルムの厚みとしては、用途等により適宜選択されるものであるが、好ましくは10~120μm、特に好ましくは15~110μm、更に好ましくは20~100μmである。かかる厚みが薄すぎるとフィルムの機械強度が低下する傾向があり、厚すぎると水への溶解速度が遅くなる傾向があり、製膜効率も低下する傾向がある。
【0091】
水溶性フィルムの幅としては、用途等により適宜選択されるものであるが、好ましくは300~5000mm、特に好ましくは500~4000mm、更に好ましくは600~3000mmである。かかる幅が狭すぎると生産効率が低下する傾向があり、広すぎると弛みや膜厚の制御が困難になる傾向がある。
【0092】
水溶性フィルムの長さとしては、用途等により適宜選択されるものであるが、好ましくは100~20000m、特に好ましくは800~15000m、更に好ましくは1000~10000mである。かかる長さが短すぎるとフィルムの切り替えに手間を要するため生産効率が低下する傾向があり、長すぎると巻き締まりによる外観不良が発生する傾向がある。
【0093】
また、得られた水溶性フィルムの含水率は、機械強度やヒートシール性の点で3~15質量%であることが好ましく、特に好ましくは5~9質量%、更に好ましく6~8質量%である。かかる含水率が低すぎるとフィルムが硬くなりすぎて、包装体とする際の成型性や包装体の耐衝撃性が低下する傾向があり、高すぎるとブロッキングが生じやすくなる傾向がある。かかる含水率に調整するに際しては、乾燥条件や調湿条件を適宜設定することにより達成することができる。
なお、上記含水率は、JIS K 6726 3.4に準拠して測定され、得られた揮発分の値を含水率とする。
【0094】
得られた水溶性フィルムの表面粗さ(Ra)が、0.2~1.0μmであることが好ましく、特に好ましくは0.25~0.8μm、更に好ましくは0.3~0.6μmである。
かかる表面粗さが小さすぎると耐ブロッキングが低下する傾向があり、大きすぎるとシール性が低下する傾向がある。
また最大高低差(Rz)が2~10μmであることが好ましく、特に好ましくは3~8μm、更に好ましくは4~7μmである。
なお、上記表面粗さ(Ra)や最大高低差(Rz)は、JIS B0601-2001に基づきレーザー顕微鏡を用いて測定することができる。
【0095】
本発明の水溶性フィルムは、単層で用いてもよいし、他のフィルムや樹脂層を積層した多層構造として用いてもよい。
【0096】
<包装体・薬剤包装体>
本発明の一実施形態である包装体は、得られた水溶性フィルムで形成されるものである。また、本発明の一実施形態である薬剤包装体は、得られた水溶性フィルムで薬剤を内包してなる包装体である。この薬剤包装体によれば、薬剤が水溶性フィルムで包装されているため、包装体ごと水に投入し、水溶性フィルムが溶解した後に、薬剤が水に溶解または分散して、薬剤の効果を発現するため、1回分などの比較的少量の薬剤が包装されている薬剤包装体に好適である。
【0097】
内包する薬剤としては、例えば、殺虫剤、殺菌剤、除草剤等の農薬、肥料、洗剤等が挙げられ、特に洗濯用洗剤、食器洗浄用洗剤等の洗剤が好ましい。薬剤の形状は、液体であっても固体であってもよく、液体の場合は、液状であり、固体の場合は、顆粒状、錠剤状、粉状等が挙げられる。薬剤は、水に溶解または分散させて用いる薬剤が好ましく、本発明においては、とりわけ液体洗剤を内包することが好ましい。また、薬剤のpHは、アルカリ性、中性、酸性のいずれであってもよい。
【0098】
上記の液体洗剤としては、水に溶解または分散させた時のpH値が6~12であることが好ましく、特には6.5~11、殊には7~8が好ましい。また、液体洗剤の水分量が15質量%以下であることが好ましく、特に好ましくは0.1~10質量%、更に好ましくは0.1~7質量%であり、水溶性フィルムがゲル化したり不溶化したりすることがなく水溶性に優れることとなる。
なお、上記pH値は、JIS K 3362 8.3に準拠して測定される。また、水分量は、JIS K 3362 7.21.3に準じて測定される。
【0099】
本発明の水溶性フィルムを用いて、液体洗剤等の薬剤を包装して薬剤包装体とするに際しては、公知の方法を採用することができる。
例えば、2枚の水溶性フィルムを用いて貼り合わせることにより製造され、成型装置の下部にある金型の上に、フィルム(ボトムフィルム)を固定し、装置の上部にもフィルム(トップフィルム)を固定する。その後、成型されたフィルムに液体洗剤等の薬剤を投入した後、トップフィルムとボトムフィルムを圧着する。圧着した後は真空を解放し、包装体を得ることができる。
【0100】
薬剤を投入後のフィルムの圧着方法としては、例えば、(1)熱シールする方法、(2)水シールする方法、(3)糊シールする方法等が挙げられ、なかでも、上記(2)水シールする方法が汎用的で有利である。
【実施例0101】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、例中、「部」とあるのは、質量基準を意味する。
【0102】
水溶性フィルムの材料成分として、以下のものを用意した。
〔水溶性高分子(A)〕
・PVA系樹脂(a1):20℃における4%水溶液粘度24mPa・s、平均ケン化度94モル%、マレイン酸モノメチルエステルによる変性量2.0モル%のカルボキシ基変性PVA系樹脂
〔水〕
・イオン交換水
〔可塑剤(B)〕
・可塑剤(b1):ソルビトール
・可塑剤(b2):グリセリン
【0103】
<実施例1>
スクリュー有効長方向に対して、温度調節することができるシリンダー(C1、C2、C3、・・・、C8)を8個有する二軸押出機の下流側の先端にヘッド部、導管、Tダイを設置した。
このとき、スクリュー構成は、スクリュー有効長900mmとし、スクリュー有効長方向に対して上流から33~40%の位置にニーディングディスク領域K1、上流から47~54%の位置にニーディングディスク領域K2、上流から61~68%の位置にニーディングディスク領域K3を配置し、それ以外には、フルフライトエレメントを配置した。各ニーディングディスク領域の総計長(LKD)の割合(LKD/L)は0.21であった。
さらにシリンダーC1、C2に原料供給口を設置した。
シリンダーC1の原料供給口から、PVA系樹脂(a1)をフィーダーにて供給した。
さらに、可塑剤(b1)15質量%濃度、可塑剤(b2)15質量%濃度の水溶液を調液し、C2の原料供給口から、液添ポンプを用いて水溶液を添加した。
このとき、PVA系樹脂(a1)/可塑剤(b1)/可塑剤(b2)/水=43質量%/8.5質量%/8.5質量%/40質量%となるように、フィード量とポンプ送液量を調整してそれぞれ供給した。
なお、PVA系樹脂(a1)のフィーダー部や、水溶液のタンク、ポンプ部は常温とした。
シリンダーC1~C8の設定温度(T1~T8)は、それぞれT1=90℃、T2=90℃、T3=90℃、T4=90℃、T5=90℃、T6=90℃、T7=90℃、T8=90℃とし、ヘッド部、導管、Tダイの設定温度を90℃とし、押し出しを行い、口金からフィルム状の樹脂組成物を得た。
口金から押し出された直後の樹脂組成物の樹脂温度は89℃であった。また、口金から押し出された直後の樹脂組成物の含水率は、40質量%であった。その後、口金から押し出されたフィルム状の樹脂組成物をチルロールにて引き取り、厚さ100μmの水溶性フィルムを得た。得られた水溶性フィルムの外観を目視で確認した結果、透明なフィルムが得られ、未溶解物は確認されず、気泡も確認されなかった。
【0104】
<実施例2>
シリンダーC1~C8の設定温度(T1~T8)を、それぞれT1=90℃、T2=90℃、T3=90℃、T4=90℃、T5=100℃、T6=100℃、T7=100℃、T8=90℃とした以外は、実施例1と同様にして押し出しを行い、口金からフィルム状の樹脂組成物を得た。口金から押し出された直後の樹脂組成物の樹脂温度は89℃であった。また、口金から押し出された直後の樹脂組成物の含水率は、37質量%であった。その後、口金から押し出されたフィルム状の樹脂組成物をチルロールにて引き取り、厚さ100μmの水溶性フィルムを得た。得られた水溶性フィルムの外観を目視で確認した結果、透明なフィルムが得られ、未溶解物は確認されず、気泡も確認されなかった。
【0105】
<実施例3>
スクリュー構成を、スクリュー有効長方向に対して上流から35~42%の位置にニーディングディスク領域K1、上流から50~61%の位置にニーディングディスク領域K2、上流から70~77%の位置にニーディングディスク領域K3を配置し、それ以外には、フルフライトエレメントを配置し、シリンダーC1~C8の設定温度(T1~T8)を、それぞれT1=90℃、T2=90℃、T3=100℃、T4=100℃、T5=100℃、T6=95℃、T7=82℃、T8=80℃とし、ヘッド部、導管、Tダイの設定温度を70℃とした以外は、実施例1と同様にして押し出しを行い、口金からフィルム状の樹脂組成物を得た。なお、各ニーディングディスク領域の総計長(LKD)の割合(LKD/L)は0.29であった。
口金から押し出された直後の樹脂組成物の樹脂温度は73℃であった。また、口金から押し出された直後の樹脂組成物の含水率は、40質量%であった。その後、口金から押し出されたフィルム状の樹脂組成物をチルロールにて引き取り、厚さ100μmの水溶性フィルムを得た。得られた水溶性フィルムの外観を目視で確認した結果、透明なフィルムが得られ、未溶解物は確認されず、気泡も確認されなかった。
【0106】
<比較例1>
シリンダーC1~C8の設定温度(T1~T8)を、それぞれT1=90℃、T2=90℃、T3=90℃、T4=90℃、T5=110℃、T6=110℃、T7=110℃、T8=90℃とした以外は、実施例1と同様にして押し出しを行い、口金からフィルム状の樹脂組成物を得た。口金から押し出された直後の樹脂組成物の樹脂温度は90℃であった。また、口金から押し出された直後の樹脂組成物の含水率は、38質量%であった。また、この際、口金から樹脂組成物が流れにくいものであった。その後、口金から押し出されたフィルム状の樹脂組成物をチルロールにて引き取り、厚さ100μmの水溶性フィルムを得た。得られた水溶性フィルムの外観を目視で確認した結果、未溶解物は確認されなかったものの、多量の気泡が見られ、外観が著しく損なわれたフィルムであった。
【0107】
<比較例2>
シリンダーC1~C8の設定温度(T1~T8)を、それぞれT1=90℃、T2=90℃、T3=100℃、T4=100℃、T5=100℃、T6=95℃、T7=70℃、T8=70℃とし、ヘッド部、導管、Tダイの設定温度を70℃とした以外は、実施例3と同様にして押し出しを行い、口金からフィルム状の樹脂組成物を得た。口金から押し出された直後の樹脂組成物の樹脂温度は70℃であった。また、口金から押し出された直後の樹脂組成物の含水率は、40質量%であった。その後、口金から押し出されたフィルム状の樹脂組成物をチルロールにて引き取り、厚さ100μmの水溶性フィルムを得た。得られた水溶性フィルムの外観を目視で確認した結果、未溶解物は確認されなかったものの、多量の気泡が見られ、外観が著しく損なわれたフィルムであった。
【0108】
実施例1~3、比較例1、2の水溶性フィルムの製造条件と、得られた水溶性フィルムの外観評価の結果を下記の表1に示す。
【0109】
【0110】
上述した実施例1~3で製造された水溶性フィルムは、PVA系樹脂の未溶解物や気泡が見られず、優れた外観を有するフィルムであることが分かった。
一方で、比較例1、2で製造された水溶性フィルムは気泡が多く見られ、外観が著しく損なわれたフィルムであった。比較例1、2で得られた水溶性フィルムを包装体とする場合、フィルムが破断したり、ピンホール等が発生して包装体から内容物が漏れるたりするおそれがあり、実用には至らないものであることがわかる。